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内科的救急の診療実態をお聞きしました

CareNet.comでは、会員医師の方々に内科的な救急診療に関するアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので、詳報いたします。調査は、2018年1月22日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上で実施され、回答者総数は329名でした。その内訳は、20代:2%、30代:16%、40代:29%、50代:34%、60代:16%、70代:2%でした。また、所属別では勤務医師が79%、開業医師が21%でした。結果概要8割近くが救急場面に遭遇設問1「直近3年以内に場所を問わず、救急診療を行った経験の有無」を尋ねたところ、「ある」との回答が75%、「ない」が25%と、回答した会員医師の4分の3が過去3年以内に救急対応を経験しているという結果でした。■設問1 直近3年以内に場所を問わず、救急診療を行った経験はありますか。1) ある2) ない救急対応の9割は病院またはクリニック内設問2「過去に、救急診療をした場所(複数回答)」について尋ねたところ、圧倒的に病院内での対応が多く、院内急変事例に遭遇するケースが多いことがうかがわれました。また、少数ながら航空機や電車内での対応という回答もみられました。なお、海外の外出先や選択肢以外の場所の回答はありませんでした。■設問2 直近3年以内にかかわらず、過去に救急診療をされたことがある場合、診療の場所はどこでしたか。(複数回答)1) 病院2) 診療所・クリニック3) 航空機、船舶など4) 新幹線、電車、バスなどの公共交通機関5) 自宅6) 国内の外出先7) 海外の外出先8) その他(具体的に)9) 救急診療の経験はない画像を拡大する「意識障害」など予後を左右する症候が上位設問3「救急診療の具体的な症候(複数回答)」について尋ねたところ、上位3位は「意識障害」(191回答)、「呼吸困難」(153回答)、「腹痛」(143回答)の順で多く、生命予後に直結する症候で占められました(参考までに「胸痛」[131回答]は6位、「頭痛」[121回答]は9位でした)。また、よくある不定愁訴の「腹痛」(143回答)、「発熱」(142回答)、「めまい」(136回答)も多くありました。■設問3 救急診療をされたときの具体的な症候は、次のどれでしたか。(複数回答)1) 意識障害2) 失神3) 頭痛4) めまい5) 痙攣6) 呼吸困難7) 窒息(感)8) 胸痛9) 血痰、喀血10) 背部痛11) 動悸12) 悪心、嘔吐13) 腹痛14) 吐血、下血15) 黄疸16) 発熱17) 異常体温18) 異常血圧19) 薬物中毒20) 尿閉21) 浮腫22) ショック23) その他(具体的に)24) 救急診療の経験はない画像を拡大するやっぱり知りたい「意識障害」への対応設問4で「内科的な救急診療で詳しく知りたいと思う症候(複数回答)」について尋ねたところ、「意識障害」(176回答)、「失神」(139回答)、「痙攣」(130回答)の順で多く、いずれも診断時に患者からの応答が妨げられる症候が上位3位を占めました。とくに意識障害は、設問3のよく診る症候でも1位であり、遭遇する機会が多いけれど、実は対応に苦慮していることがうかがわれました。■設問4 先生が、内科的な救急診療で詳しく知りたいと思う症候について、教えてください。(複数回答)1) 意識障害2) 失神3) 頭痛4) めまい5) 痙攣6) 呼吸困難7) 窒息(感)8) 胸痛9) 血痰、喀血10) 背部痛11) 動悸12) 悪心、嘔吐13) 腹痛14) 吐血、下血15) 黄疸16) 発熱17) 異常体温18) 異常血圧19) 薬物中毒20) 尿閉21) 浮腫22) ショック23) その他(具体的に)画像を拡大する転送の見極め、どこまで対応するかが難題最後に設問5として「内科的な救急診療で知りたい、日頃疑問に思っていること」を自由記入で質問したところ、「めまい」に関しての疑問が一番多く、そのほかにも「意識障害」「胸痛」「腹痛」「薬物・劇物中毒」「転送・搬送」などへの疑問が寄せられました。コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)症候・症状「めまい」についてCT検査が必要な緊急性の判断突然のめまいに対する処置非専門医が診療する場合の対応「意識障害」について失神などとの鑑別診断転倒などでの意識障害の評価「胸痛」について背部痛との鑑別診断帰宅判断の根拠検査機器が一切ない環境下での診断「腹痛」について(効率的な)鑑別診断腹部症状、画像検査でわからない危険な腹痛外科的処置を要する腹痛の判断「薬物・劇物中毒」について初期対応と治療様子をみてよいものとその根拠診療後の警察・関係諸機関への連絡・連携の方法「循環器疾患」について発作性心房細動への対応治療を要する不整脈の鑑別心蘇生術開始の見極め「内分泌代謝疾患」についてショックの際のサイン浮腫や脱水の治療急性・慢性の電解質異常「精神科疾患」について緊急の転送が必要なケース向精神薬を内服中の救急患者への対応精神科単科病院での転送の実際そのほかの症候手軽な神経所見の取り方小児領域の救急疾患全般吐血と喀血の鑑別点難聴と耳鳴りへの対処問診、理学所見のみでの転送判定の可能性異常体温の救急処置下肢浮腫がリンパ浮腫か深部静脈血栓によるかの鑑別低体温の治療呼吸困難の鑑別高齢者の過降圧や注意すべき事項高齢者独特の愁訴痙攣の鑑別と治療感染症の救急対処、感染のフォーカスを早く見極める診察法喘息・アレルギーの治療アナフィラキシーショックの処置がん患者の救急対応原因不明の不規則な発熱の検査と治療診断全般、転送・搬送など「転送・搬送」について紹介のタイミング効果的な紹介方法転送の必要性の判断搬送すべき疾患のリスト鑑別診断、応急処置の最近の知見危険な症状(胸部不快感、動悸、倦怠感、頭痛、背部痛)の判断帰していい患者、帰してはいけない患者見逃してはいけない症候自院で受け入れ可能かどうかの判断2次救急の外来でどこまで処置するかクリニック、診療所の守備範囲非専門医が最低限するべき対応重症感のない患者の病態の見極め次々と検査を要求してくる患者や家族への対処法蘇生機械などがない、飛行機や電車内での救急対応 アンケート概要内容『内科的な救急診療について、先生のご経験をお聞かせください』実施日2018年1月22日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師329名属性アンケート調査へのご協力、ありがとうございました。

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日本人肺がんにおける免疫関連有害事象とニボルマブの効果/JAMA Oncol

 メラノーマにおける免疫関連有害事象(irAE)とPD-1阻害薬の有効性の相関については報告されてるが、非小細胞肺がん(NSCLC)においては明らかになっていない。この研究は、近畿大学を含む複数の機関の診療録データを基に、再発・進行NSCLCにおける、ニボルマブの有効性とirAEの有無の関係を評価した多施設後ろ向き観察研究である。リードタイムバイアスを最小限にするためにランドマーク解析を用いて、関連性を検討している。近畿大学 原谷浩司氏らにより、JAMA Oncology誌2018年Vol.4で報告された。・2015年12月~2016年8月に試験施設において2次治療以降でニボルマブの単剤治療を受けた進行・再発NSCLC患者に対し、ランドマーク日(6週間)までのirAE発症の有無で治療効果を比較した。・主要評価項目は6週間後の無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は全生存期間(OS)。 主な結果は以下のとおり。・105例の患者が解析対象となり、irAEあり群は44例、irAEなしは61例であった。・6週間のランドマーク解析によるPFS中央値は、irAEなし群の4.8ヵ月に比べ、あり群では9.2ヵ月で有意に良好であった。・多変量解析の結果においても、PFS、OS共に、irAEあり群が有意に良好であった。 CareNet.comでは、筆頭著者である原谷浩司氏による本研究の解説を掲載している。■関連記事筆頭著者原谷浩司氏による本研究の解説「irAEと免疫チェックポイント阻害薬の効果:日本人患者のランドマーク解析」

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CVD-REAL2試験、SGLT2阻害薬で心血管リスク低下

 アジア太平洋、中東、北米の6ヵ国の40万例超の2型糖尿病患者を対象としたCVD-REAL試験の新たな解析(CVD-REAL2)により、SGLT2阻害薬投与患者は他の血糖降下薬と比べて、患者特性にかかわらず心血管イベントリスクが低いことが示された。本結果は第67回米国心臓病学会年次学術集会(ACC2018)で発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2018年3月7日号にも掲載された。CVD-REAL2試験でのSGLT2阻害薬のHRは全死亡で0.51 これまでに無作為化試験で、心血管リスクの高い2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬治療により心血管イベントリスクが低下することが示されている。また、リアルワールドデータでも、広範なリスクプロファイルを有する2型糖尿病患者において同様の効果が示唆されているが、評価項目は心不全と全死亡に焦点が当てられ、また欧米に限られていた。 CVD-REAL2試験では、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、イスラエル、カナダにおけるレセプトデータベース、診療記録、国家レジストリから、SGLT2阻害薬および他の血糖降下薬の新規使用者を特定した。それぞれの国で、SGLT2阻害薬開始の傾向スコアを用いて1:1でマッチングさせた。全死亡、心不全による入院(HHF)、全死亡もしくはHHF、心筋梗塞、脳卒中のハザード比(HR)を国ごとに評価し、重み付きメタ分析を用いて統合した。 CVD-REAL2試験の主な結果は以下のとおり。・傾向スコアによるマッチングにより各群23万5,064例となった。うち74%は心血管疾患の既往がなかった。両群で患者特性のバランスがとれていた。・SGLT2阻害薬の使用薬剤の割合は、ダパグリフロジン75%、エンパグリフロジン9%、イプラグリフロジン8%、カナグリフロジン4%、トホグリフロジン3%、ルセオグリフロジン1%であった。・他の血糖降下薬と比較したSGLT2阻害薬のHRは以下のようであった。  全死亡:0.51(95%CI:0.37~0.70、p<0.001)  HHF:0.64(95%CI:0.50~0.82、p=0.001)  全死亡もしくはHHF:0.60(95%CI:0.47~0.76、p<0.001)  心筋梗塞:0.81(95%CI:0.74~0.88、p<0.001)  脳卒中:0.68(95%CI:0.55~0.84、p<0.001)・結果は、国によらず、心血管疾患の有無などの患者サブグループにかかわらず、方向性は一致していた。

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低脂肪食でも低炭水化物食でも減量効果は変わらない(解説:吉岡成人 氏)-830

 体重を減らすために有効なのは、低脂肪食なのか、低炭水化物食なのか…、多くの臨床研究が行われ、いまだ意見の一致が得られていない。 今回紹介する臨床研究では、肥満者における遺伝子多型と減量の関連に注目し、PPARG、ADRB2、FABP2の遺伝子多型を組み合わせて、脂質制限に対する感受性が高いと想定される低脂肪遺伝子型、炭水化物に対する感受性が高い低炭水化物遺伝子型、どちらに対しての感受性も高くない遺伝子型をもつ3群に分類したうえで、食事の組成と減量の効果を検討し、さらに、75gOGTTにおける30分後のインスリン分泌能と食事の組成、減量効果の関連の有無にも検討を加えた臨床試験である。青壮年の非糖尿者が対象 対象者は609人、BMIは28~40(平均33)m/kg2、18~50(平均40)歳、女性が57%を占めていた。対象者を無作為に低脂肪食群、低炭水化物食群に分類し、前者では調理や味付けに使用する油、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品(低脂質ではない牛乳やヨーグルトなどの乳製品)、ナッツなどを制限し、後者ではシリアル、穀類、米、イモ類などの炭水化物の多い野菜、豆類を制限し、それぞれを1日20g程度まで抑えたうえで、定期的に1年間に22回の食事介入を行いつつ脂質や炭水化物の摂取量を漸増させて、2群間での脂肪摂取と炭水化物摂取の差が最大となるようにデザインして実施された。主要エンドポイントは12ヵ月間における体重の減少であり、食事組成と減量の程度、遺伝子多型、インスリン分泌能の関連について検討している。低脂肪食でも低炭水化物食でも体重の減少は同様であった 12ヵ月間における炭水化物、脂質、たんぱく質の摂取比率は、低脂肪食群でそれぞれ、48%、29%、21%、低炭水化物食群では30%、45%、23%であり、体重は低脂肪食群で5.3㎏、低炭水化物食群で6.0㎏とそれぞれ減少し、群間では差がなかった。遺伝子多型やインスリン分泌能と、食事の内容、体重減少の程度とも有意な関連はなかったと報告されている。脂質プロフィールに関しては、低脂肪食群でLDL-コレステロールが減少、低炭水化物食群ではHDL-コレステロールが上昇し、トリグリセライドが減少した。群間におけるLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライドの差はそれぞれ5%、5%、15%であった。 総エネルギー摂取量は各群ともに平均で2,200kcalから1,700kcalまで減少させることができており、低脂肪食であっても低炭水化物食であっても、食品の組成や遺伝因子、インスリン分泌能に関係なく減量が可能であるというこの試験の結果は、痩せることに最も重要なのは、エネルギーの総摂取量を減らすことであるというきわめてシンプルなことを科学的に示している。

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irAEと免疫チェックポイント阻害薬の効果:日本人患者のランドマーク解析 第14回【肺がんインタビュー】

肺がんinvestigatorインタビュー出演:近畿大学医学部 内科学教室 腫瘍内科部門 原谷 浩司氏Haratani K, et al. Association of Immune-Related Adverse Events With Nivolumab Efficacy in Non–Small-Cell Lung Cancer.JAMA Oncol. 2017 Sep 21.[Epub ahead of print]

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PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

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議論が続く多枝疾患患者への冠血行再建法、CABGかPCIか?(中川義久 氏)-829

 これまでも、多枝冠動脈疾患患者における長期成績は、CABGのほうがPCIよりも良好であることが複数の無作為化比較試験および患者登録研究の結果から示されてきた。しかし、その優位性は真のエンドポイントである死亡の差としてではなく、新規心筋梗塞発生リスクや、再血行再建リスクなども含めて解析した場合にCABGのほうが勝るという結論にとどまっていた。死亡に差がないのであれば、侵襲度の違いを念頭に置けばPCIの立ち位置を高く考慮してもよいという意見もあった。 今回、ここに新しい知見が加わった。オランダ・エラスムス大学のStuart J. Head氏らが、11の無作為化比較試験の総数約11,500例を対象に行ったプール解析の結果から、CABGがPCIよりも死亡に関して優位性があることをLancet誌で報告した。とくに、糖尿病を持つ患者や、冠動脈の病変が複雑でSYNTAXスコアが高値である患者ほど、その傾向は強かったという。 死亡という真のエンドポイントで差を示したことは、インパクトがある。一方で、このような過去のデータからのプール解析で常に問題になるのは、データの陳腐化という問題である。PCIの治療成績は常に改善してきている。SYNTAX II study1)は、PCIの治療成績の改善を印象付けた代表的な報告である。ステントの進化だけではなく、PCI治療成績向上の原動力として大きいのは、PCIの適応決定にFFRやiFRなどの生理学的評価を用いること、PCI手技の質をIVUSなどのイメージングデバイスを駆使することである。さらに、冠危険因子を管理する内科的治療の進歩も大きい。もちろんCABGにおいても、心臓血管外科の手術技術の進化がある。 現在、日本循環器学会/日本心臓血管外科学会の合同で、冠動脈血行再建ガイドライン改訂が進行中である。今回のStuart J. Head氏らの解析の結果は、このガイドライン策定作業においても議論の俎上に載ることであろう。日常臨床においては、これらのエビデンスを考慮しつつ個々の患者の病態や希望を含め、ハートチームとして循環器内科医・心臓外科医で共に議論していくことが肝要であろう。

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日本人アルツハイマー病に対するメマンチンのメタ解析

 第一三共株式会社のKaoru Okuizumi氏らは、アルツハイマー病(AD)患者に対する臨床的に有用な薬物治療を明らかにするため、臨床的悪化を評価するレスポンダー解析を用いて評価を行った。Expert opinion on pharmacotherapy誌オンライン版2018年3月6日号の報告。 本研究は、2つの24週間多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究のメタ解析として実施した。対象は、中等度~重度の日本人AD患者633例(メマンチン[20mg/日]群318例、プラセボ群315例)。 主な結果は以下のとおり。・メマンチン群とプラセボ群を比較した臨床的悪化の減少に対する全体的なオッズ比(OR)は、それぞれの総合評価尺度において統計学的に有意であった。 ◆重度認知症患者向けの認知機能評価尺度日本語版(Severe Impairment Battery:SIB-J)OR:0.52、95%CI:0.37~0.73、p=0.0001 ◆アルツハイマー病行動病理学尺度(Behavioral Pathology in AD Rating Scale: BEHAVE-AD)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.75、p=0.0003 ◆SIB-Jと臨床面接による認知症変化印象尺度日本語版(Clinician's Interview-Based Impression of Change:CIBIC-plus-J)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.77、p=0.0009・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、SIB-J、BEHAVE-AD、CIBIC-plus-Jを組み合わせた評価尺度において、3重の悪化リスクの有意な減少が認められた(OR:0.38、95%CI:0.22~0.65、p=0.0003)。 著者らは「メマンチンは、AD患者の認知障害だけでなく、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を含むより広範な症状に対する治療選択肢でもある」としている。■関連記事中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度認知症患者の興奮症状に対するメマンチンの効果を検討

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プライマリケアからのPSA検査の紹介は有益か/JAMA

 プライマリケア施設における前立腺特異抗原(PSA)検査の紹介は、前立腺がんの検出率を改善するが、前立腺がん特異的な10年死亡には影響を及ぼさないことが、英国・ブリストル大学のRichard M Martin氏らが行ったCAP試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年3月6日号に掲載された。PSAスクリーニングは、過剰検出と過剰治療による弊害が、死亡リスクの低減またはQOLのベネフィットを上回る可能性があるため、議論が続いている。573施設、40万例以上のクラスター無作為化試験  CAPは、PSA検査を用いたスクリーニングによる単回介入が、前立腺がんの検出および前立腺がん特異的死亡に及ぼす効果を評価するプライマリケア・ベースのクラスター無作為化試験(Cancer Research UKなどの助成による)。 2001~09年の期間に、イングランドとウェールズの99地域のプライマリケア施設が、年齢50~69歳の男性患者について、PSA検査を受けるために検査施設を紹介する群(介入群)または標準的な診療のみを行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。介入群のうち、検査結果がPSA値≧3ng/mLの患者には前立腺生検を行うこととした。 主要アウトカムは、フォローアップ期間中央値10年時の前立腺がん特異的死亡であった。副次アウトカムは、同定された前立腺がんのStageおよびGleason分類(2~10点、スコアが高いほど予後が不良)、全死因死亡、操作変数分析によるPSA検査施設の受診と前立腺がん死の因果関係などであった。フォローアップは2016年3月31日に終了した。 911施設が無作為化の対象となり、573施設(73%、介入群:271施設、対照群:302施設)が解析に含まれた。無作為化の対象となった41万5,357例の男性のうち、40万8,825例(98%、介入群:18万9,386例、対照群:21万9,439例)について解析を行った。住民ベース・スクリーニングに単回PSA検査は支持されない  ベースラインの年齢中央値は、介入群が58.5歳(IQR:54.3~63.5)、対照群は58.6歳(54.3~63.5)であり、都市部の居住者の割合は両群とも86%であった。 介入群のうち、実際にPSA検査施設を受診したのは7万5,707例(40%)で、PSA検査を受けたのは6万7,313例(36%)であり、適切な検査結果が得られたのは6万4,436例であった。このうち6,857例(11%)がPSA値3~19.9ng/mLであり、前立腺生検を受けたのは5,850例(85%)だった。 フォローアップ期間中央値10年時に、介入群の549例(0.30/1,000人年)、対照群の647例(0.31/1,000人年)が前立腺がんで死亡し、両群の前立腺がん特異的死亡率に、有意な差は認めなかった(死亡率の差:-0.013/1,000人年、95%信頼区間[CI]:-0.047~0.022、死亡率比[RR]:0.96、95%CI:0.85~1.08、p=0.50)。 一方、前立腺がんと診断された患者の割合は、介入群が4.3%(8,054例)と、対照群の3.6%(7,853例)に比べ有意に高かった(RR:1.19、95%CI:1.14~1.25、p<0.001)。また、Gleasonスコア≦6の低リスク前立腺がんの同定の割合は、介入群が1.7%(3,263/18万9,386例)と、対照群の1.1%(2,440/21万9,439例)に比べ有意に高かった(1,000例当たりの差:6.11、95%CI:5.38~6.84、p<0.001)。 全死因死亡数は、介入群が2万5,459例、対照群は2万8,306例であり、両群間に有意な差は認めなかった(RR:0.99、95%CI:0.94~1.03、p=0.49)。また、操作変数分析では、アドヒアランスで補正した因果関係のRRは0.93(95%CI:0.67~1.29、p=0.66)であり、PSA検査施設への受診が前立腺がん死を抑制するとのエビデンスは得られなかった。 著者は、「より長期のフォローアップを進めているが、これらの知見は住民ベースのスクリーニングにおける単回PSA検査を支持しない」としている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第55回

第55回:重篤な患者とのコミュニケーションで役立つ3つの「W」キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらダートマス大学 腫瘍内科の白井敬祐です。今回お話ししたいと思うのは、前に少し触れた、“Serious Illness Conversation”ガイドラインです。重篤な病気になったときに、どういう話をすれば良いのか、ということを『Compication』とか『Checklist』とか『Being Mortal』という本で有名な、ハーバード大学の外科医であるAtul Gawande氏が主催する財団の1つの取り組みなのですが、重篤な病気になった時(心不全だったり、心筋梗塞だったり、COPDの末期だったり、必ずしもがんである必要はないんですけれども)、どのようにしたら、もっと良い準備をしてもらえるかといいうことで、オペ室で外科医あるいは看護師さんがチェックリストを使うのと同じように、そういった会話にもガイドラインがあれば、医療者側も患者さんも家族もストレスを減らしながら、かつ大事な要点を網羅しながら、話ができるんじゃないか、ということで進められているプロジェクトです。腫瘍内科は、Stage 4、根治が望めない患者さんに話をすることも多いので、そういう話を上手く持っていこうということです。それをいかにフェローに教えるか、インストラクターのためのワークショップが、先月ありました。病院から離れたところで、1日こもって、ポケベルは残念ながら鳴るんですけれども、そういうところに離れて、みっちりとワークショップをしたので、そのことについてお話しをしたいと思います。リーダーは2人の緩和医療ドクターです。夫婦2人とも“緩和医療 命”みたいな感じの仲の良い夫婦なんですけれども、その2人がコーチになって、肺がん専門の医者2人、消化器の専門の医者1人、頭頸部がんの専門家1人の計4人が選ばれて、本当のムースのはく製が飾ってあるような、山小屋に閉じ込められて、1日話をしました。たとえば「もし上手くいかなかったらどういうふうにしたいですか」とか「(バケットストとアメリカではよく言うんですけども)あなたの残された夢は何かありますか」「家族に言いたいことあれば、どんなことですか」とか。医療者側が、その話をするはタイミングが難しいんですね。治療が上手くいっていると、その話には触れにくいし、治療が上手くいってないと、逆にその話がメインになってしまって、準備をするというところまで行かないことも多いです。そういったタイミングを探さなくても、こういうマニュアルや、このリストに沿って話をしましょうと(いうことです)。面白いところは、このリストは、患者さんに見せても良いということになっています。たとえば、患者さんや家族の強みであったり、心配されてることとか、そういうトピックを選びながら「今日はこの話をしましょう」と話すことで、お互いにある程度心の準備ができるので、比較的ストレスが減るのではないかと(いうことです)。もしストレスが減れば、100%にはならないにしても、現在言われてよりは多くの人が、そういった会話に入れるのではないか、という趣旨で始められた企画です。ここで覚えてもらいたいのは、2つの“W、W、W”(です)。(まず)患者さんに話すとき、上手くいかなかった時の“Wish、Worry、Wonder”です。“I wish”ステートメントは、上手くいって欲しかったんだけど、残念がら上手くいかない、そうしたら「I worried、私はあなたのことを心配しています」、「あなたのことを考えてますよ」というメッセージを出して、「I wonder」と進めるんですね。たとえば、患者さんが、もっとアグレッシブなことを望んでおられるときに、医療者から見て、むしろ症状の緩和のほうに力を入れたほうが良いと思ったときには、「I wonder」から始めて、話を進める。“Wish、Worry、Wonder”というステートメントは、迷ったときに非常に便利だと思います。このガイドのミソは、詰まった時に助け船になってくれる(ことです)。患者さんもその逆にそのリスト見ながら、「今、こういうところに会話はあるんだな」と確認できるというメリットがあります。もう一つの“W、W、W”。これはSerious Illness Conversation”ガイドを、フェローや学生に教える時に(使います)。患者さんの気持ちに、ちょっと寄り添えていなかったり…あるいは僕たちがよく説明する時に言うんですけれども…インスリンの量も血糖値が変わると変わりますよね、それと同じように、われわれのコミュニケーションの仕方も、患者さんの反応の仕方によって調節する必要があると。ともすると、「いや、ここはこうしたほうが良かった」「僕ならこうするよ」っていうアドバイスから入りがちなんですけど、どんなフィードバックでも“W、W、W”で始めなさいということを徹底されました。今日も外来で研修を受けた同僚に「How was your WWW? 」とか冗談を言っているのですけれども、それは何かというと“What went well? ”です。「どうしたら良かったのか」とか「もっと上手くできなかったか」とネガティブなことを聞くのではなく、「どこが上手くいったと思う? 」と問いかけることで、教えられる側も改善点がないか考えるきっかけになる。上手くいったというところから始めることで、上手くいかなかったところにも気が付いてもらいやすい(ということです)。“What went well? ”ステートメント、よろしければ明日からの、研究医やスタッフとの会話に冗談で使ってみても良いかも知れません。 (ところで、)ダートマス大学はビジネススクールが有名で、Ron Adnerという教授がいるんですけれども、彼は(日本語訳にもなっている)『Wide Lens』という本を出しています。会社というのは良い製品ができると「これは絶対に市場に受け入れられるはずだ」と、そこばかりを追求して、結局上手くいかないことがあると(言っています)。それはなぜかというと、商品は良くて、それを手にする消費者が喜んでも、流通や小売店など、すべての場所でメリットがないと上手くいかないと(いうことです)。視野を広く持たないと、死角ができて失敗する。Wide Lensを持つことで、できるかぎり失敗を減らせるのではないか、ということを書いたビジネス書なのです。なぜスチーブ・ジョブス(のiPod)は成功して、ほかのMP3プレーヤーが失敗したのかとか、(医療カルテは米国ではEpicという会社が独占しているのですが)GoogleやIBMやOracleオラクルといった大会社も電子カルテにか関わっていたのに上手くいかず、なぜ小さなEpicがのし上がったのか、ということも解説しているので、興味があったら読んでみてください。(前出の)Atul Gawandeが、その『Wide Lens』を読んで共感したようで(広く見ることで、死が運命付けられたような病気にかかったときに、そういう会話を上手くできるということですね)、Ron Adnerにコンタクトを取ってきて、今度話をするみたいです。ちょっとその話を教えてもらいたいと思います。なぜRon Adnerなのかというと、娘が高校の水泳部に入っていて、車で送り迎えをするのですが、その時の待ち友達の1人が、Ron Adnerです。Atul Gawande著 ComplicationAtul Gawande著 The Checklist Manifesto: How To Get Things RightAtul Gawande著 Being MortalThe Conversation ProjectRon Adner著 The Wide Lens

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乳がんの手術方法とうつ病発症に関するメタ解析

 術後の平均期間1年以上の乳がん女性において、異なる術式により、うつ病の発症率に違いがあるかについて、中国・上海交通大学医学院のChengjiao Zhang氏らが、文献のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。World journal of surgery誌オンライン版2018年2月9日号の報告。 PubMed、Web of Science、EMBASE、OvidSP、EBSCO、PsycARTICLESより、システマティックに文献検索を行った。異なる術式群におけるうつ病発症率を比較し、経験的な所見を確認した観察的臨床研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・乳がん患者のうつ病に関する研究は、乳房全摘術と乳房温存術の比較研究5件、乳房全摘術と乳房再建術の比較研究4件、乳房温存術と乳房再建術の比較研究2件、すべての術式の比較研究5件の合計16件であった。・乳がん女性のうつ病に関して多変量解析を実施した5件中、うつ病発症に対する術式の有意な影響が認められた研究は1件のみであった。・本メタ解析の結果では、いずれの術式においても、うつ病発症に有意な影響は認められなかった。 ◆乳房温存術 vs.乳房全摘術(相対リスク:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.06) ◆乳房再建術 vs.乳房全摘術(相対リスク:0.87、95%CI:0.71~1.06、p=0.16) ◆乳房温存術 vs.乳房再建術(相対リスク:1.10、95%CI:0.89~1.35、p=0.37) 著者らは「術後の平均期間1年以上の乳がん患者において、うつ病の発症に、3つの術式(乳房全摘術、乳房温存術、乳房再建術)による統計学的に有意な差は認められなかった」としている。■関連記事がん患者のうつ病を簡単にスクリーニングするには抗うつ薬治療は乳がんリスクに影響しているのか抑うつ症状は、がん罹患有無に関係なく高齢者の死亡に関連

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NCCNガイドラインの適応外推奨はエビデンスが弱い/BMJ

 National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は新薬/ブランド薬について、米国食品医薬品局(FDA)未承認の適応をしばしば推奨しているが、このような適応外使用を推奨する根拠のエビデンスレベルは低いことが明らかにされた。米国・オレゴン健康科学大学のJeffrey Wagner氏らが、抗がん剤についてNCCNガイドラインでの推奨とFDA承認との差異を、また適応外使用の推奨を正当化するためにNCCNが採用したエビデンスについて、後ろ向きに調査し報告した。NCCNによる適応外使用推奨のパターンや、こうした推奨がその後、FDA承認に至っているのかを検証した解析はこれまでなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「弱いエビデンスに基づいた高価で有害ながん治療薬の保険償還を、NCCNが正当化していることに懸念を禁じ得ない」とまとめている。BMJ誌2018年3月7日号掲載の報告。FDAで承認された新薬47種の適応症とNCCNの推奨を比較 NCCNが公表しているがん診療ガイドラインは、米国のメディケア・メディケイドサービスセンターが保険償還を決定するために使用する5つの医薬品集(compendiums)のうちの1つで、民間保険会社でも使用されている。 研究グループは、2011~15年の期間にFDAが承認した新規抗がん剤47種について、2016年3月25日時点で、FDAが承認したすべての適応症(新規および追加)とNCCNの推奨を比較した。FDA承認外でNCCNが推奨していた場合、その推奨を分類し、採用されたエビデンスについて調査した。適応外推奨は約4割、その後の追加承認はわずか 47種の抗がん剤について、FDA承認の適応症は69個に対し、NCCNでは113個の適応症が推奨されていた。113個のうち69個(62%)はFDA承認の適応症と重複していたが、44個(39%)は承認適応外で追加推奨されていた。適応外推奨数の平均値は0.92であった。 追加推奨のうち無作為化試験のエビデンスに基づくものは10個(23%)で、第III相試験のエビデンスに基づくものは7個(16%)であった。 21ヵ月の追跡期間中、FDAが適応症追加を承認したのは44個のうちわずか6個(14%)であった。

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統合失調症におけるパリペリドンパルミチン酸とリスペリドンの持効性注射剤の比較

 統合失調症患者の初回入院期間、再入院リスク、治療期間に関して、パリペリドンパルミチン酸(PP)またはリスペリドン持効性注射剤(RLAI)による治療の影響を、フランス・Corentin-Celton HospitalのFrederic Limosin氏らが、比較検討を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌2018年2月号の報告。 初回入院時にPPまたはRLAI治療を開始した統合失調症患者を対象に、フランスの43施設で観察的レトロスペクティブコホート研究を実施した。フォローアップは、RLAI群では2012年9月より開始し(フォローアップ期間中央値:233日間)、PP群では2013年6月より開始した(フォローアップ期間中央値:259日間)。統計分析は、患者の特性を考慮して傾向スコア加重を用い、Cox回帰モデルに基づいて実施された。 主な結果は以下のとおり。・分析には、347例(PP群197例、RLAI群150例)が含まれた。・PP群は、RLAI群と比較し、精神疾患以外の合併症の併発、過去に抗精神病薬での治療歴、前年に精神科治療のための入院歴を有する傾向が有意に強かった。・初回入院時の在院期間は、両群間に統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:1.13、95%CI:0.97~1.31)。・PP群の1回目の再入院までの期間は、RLAI群と比較し同様であった(ハザード比:0.92、95%CI:0.65~1.30)。 著者らは「潜在的な統計力の欠如のため、PP群とRLAI群の間に、初回入院期間および再入院までの期間に関する有意な差は認められなかった。治療中止までの期間に関しては、PP群において良い傾向が認められたものの、この結果は、RLAIからPPへの切り替えが行われた患者において低下した」としている。■関連記事統合失調症の再入院に対する抗精神病薬の比較2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果

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血漿中遊離アミノ酸の変化で大腸がんリスクを予測

 大腸がん(CRC)の術後再発は依然として重要な問題である。CRCの症状は明らかなものはなく、早期では自覚症状はない。 一方、最近の液体クロマトグラフィー/質量分析といった分析技術やメタボロミクスの進歩が、がんなどのさまざまな疾患で報告されている。その結果、血漿中遊離アミノ酸(PFAA)プロファイルは、健康人と、がんなどの罹患者で異なっていることが報告されている。そのような中、血液サンプル中の6種のPFAAを定量することで、がんの早期発見を可能にした、アミノインデックスがんスクリーニング(AminoIndex Cancer Screening、以下AICS)システムが開発された。神奈川県立がんセンター片山 佳代子氏らによるこの研究では、AICSを用いて、CRC患者における手術前と手術後のPFAAを比較した。BMC Surgery誌2018年2月21日号に報告された。 この研究は、神奈川県立がんセンターでCRCの治癒切除を受けた62例の患者コホートから成る。切除1週間前および切除後0.5~6.5年に絶食状態で血液サンプルを採取し、PFAAレベルを液体クロマトグラフィー/質量分析によって測定し、AICS値を算出した(高値ほどがんの確率が高い)。AICS値から計算されたリスクは、AICSランクとしてA、B、Cに分けられた(ランクCが最高リスク)。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者はAICSランクB(25例)かC(37例)であった。・AICS値は62例中57例(92%)で、AICSランクは62例中49例(79%)で、術前に比べ術後で有意に低下した(p<0.001)。・AICSランクCに限ってみると、AICS値は37例中35例(95%)で、AICSランクは37例中29例(78%)で、術前に比べ術後で有意に低下した(p<0.001)・StageI~IIIのすべての患者でAICS値が術前に比べ術後に低下した。・右側腫瘍のすべての患者でAICS値が術前に比べ術後に低下した。・AICS値の低下は、左側腫瘍に比べ、右側腫瘍で大きかった(右側8.0→2.3、左側8.2→4.7、p<0.001)。・腫瘍マーカー(CA19-9およびCEA)レベルが基準範囲内にあった患者は、手術前は70~80%であったが、手術後では80~90%となった。 この研究から、PFAAプロファイルは担がん状態では、変化していることが示唆される。少量の血液で測定可能なAICSは、腫瘍切除後のCRC患者の予後予測および再発のモニタリングに使用できる可能性がある、と述べている。

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吸入ステロイド4倍量を許容する自己管理で、喘息増悪リスク2割減/NEJM

 吸入ステロイド使用にもかかわらず過去1年以内に増悪を発症した成人および思春期の喘息患者について、吸入ステロイドを4倍量までの増量を含む自己管理計画(患者自身が喘息を管理する計画)を導入することで、増量を行わない計画と比べて重度増悪リスクは約2割減少することが示された。英国・National Institute for Health Research Biomedical Research CentreのTricia McKeever氏らが、1,922例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年3月8日号で発表した。1年以内の重度喘息増悪イベントまでの期間を比較 研究グループは2013年5月~2016年1月にかけて、吸入ステロイドの投与を受けている、過去12ヵ月間に1回以上の増悪を呈した成人・思春期の患者1,922例を対象に、プラグマティックな非盲検無作為化試験を開始した。被験者の、他の治療の有無については問わなかった。 被検者を無作為に2群に分け、一方には4倍量までの吸入ステロイド増量を含む自己管理計画を、もう一方には増量を行わない自己管理計画を12ヵ月間実施し、アウトカムを比較した。 主要評価項目は、初回の重度喘息増悪までの期間とし、その定義は全身性ステロイドによる治療または喘息による予定外の受診とした。重度増悪リスクはステロイド4倍量群で0.81倍 無作為化を行った被検者のうち、主要解析には1,871例を包含した。被検者の平均年齢は57歳(標準偏差:15)、うち女性は68%だった。 無作為化後1年以内に重度喘息増悪を発症したのは、ステロイド4倍量群は420例(45%)、対照群は484例(52%)だった。初回重度喘息増悪に関する4倍量群のハザード比は、0.81(95%信頼区間:0.71~0.92、p=0.002)だった。 主に吸入ステロイドの局所作用による有害事象発生率が、4倍量群で対照群より有意に高かった。

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心房細動と認知症リスク~1万3千人を20年追跡

 これまでに心房細動(AF)と認知機能低下および認知症との関連が報告されている。しかし、これらの研究は追跡期間が限られ、ほとんどが白人や選択された集団に基づいており、また認知機能の減衰を考慮していなかった。今回、ミネソタ大学のLin Y. Chen氏らは、ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究において、認知機能の20年間の変化(減衰を考慮)および認知症発症との関連を評価した。その結果、虚血性脳卒中と関係なく、AFが認知機能のより大きな低下や認知症リスクの増加と関連することが示された。Journal of the American Heart Association誌2018年3月7日号に掲載。 本研究(ARIC-NCS:ARIC Neurocognitive Study)は、1万2,515人の参加者(1990~92年における平均年齢:56.9歳[SD:5.7歳]、女性56%、黒人24%)の1990~92年から2011~13年までのデータを分析。AF発症は心電図検査と退院コードで確認した。認知テストは、1990~92年、1996~98年、2011~13年に実施し、認知症発症は臨床医の判断とした。AFと認知テストにおけるZ scoreの変化および認知症発症との時間依存性の関連について、一般化推定方程式(GEE)とCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・20年間に2,106人がAFを発症し、1,157人が認知症を発症した。・虚血性脳卒中などの心血管リスク因子を調整後、global cognitive Z scoreの20年にわたる低下の平均は、AFがない参加者よりAFのある参加者のほうが大きく、0.115 (95%CI:0.014~0.215)であった。MICE(連鎖方程式による多変量補定)により減弱を調整すると、関連はさらに強くなった。・さらに、虚血性脳卒中を含む心血管リスク因子について調整すると、AF発症は認知症リスクの増加と関連していた(ハザード比:1.23、95%CI:1.04~1.45)。 著者らは、「認知機能低下は認知症の前段階であるため、この結果から、AF患者の認知機能低下を遅らせ、認知症を予防するAFの治療法を調べるために、さらなる調査が推進される」としている。

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男女における握力とうつ病との関連

 筋力は、高齢者のメンタルヘルスにおける、修正可能な保護的要因である。性差のエビデンスにおいて、メンタルヘルスとその関連は限られている。アイルランド・リムリック大学のCillian P. McDowell氏らは、握力とうつ症状やうつ状態との横断的および将来的な関連について、性差の評価を行った。Experimental gerontology誌オンライン版2018年2月14日号の報告。 対象は、50歳以上の一般成人4,505例(女性:56.5%)。筋力の尺度として、ベースライン時に、手持ち式の握力計を用いて利き手の握力(kg)を測定した。対象者は、握力別に三分位に振り分けられた。ベースライン時と2年後のうつ症状は、疫学研究用うつ病尺度(CES-D:Center for Epidemiological Studies Depression Scale)で評価し、16点以上をうつ病例とした。 主な結果は以下のとおり。・うつ症状は、ベースライン時では女性において有意に高かった(p<0.001)。・将来モデルは、年齢、性別、腹囲、社会階級、喫煙、健康状態で調整した。・男性におけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で32.9%減少し(p=0.21)、上位で9.9%減少したが(p=0.74)、それぞれ有意な関連ではなかった。・女性におけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で28.5%減少し(p=0.13)、有意な差は認められなかったが、上位では43.4%の有意な減少が認められた(p=0.01)。・全サンプルにおけるうつ病発症オッズは、三分位の中位で31.5%減少し(p=0.04)、上位で34.1%減少しており(p=0.02)、それぞれ有意な関連が認められた。・性別と握力の相互の影響は、統計学的に有意ではなかった(p=0.25)。 著者らは「高齢者において、握力とうつ病との逆相関が認められた。この関連は、男性よりも女性において強かった」としている。■関連記事少し歩くだけでもうつ病は予防できるうつ病患者への運動介入、脱落させないコツは高齢者うつ病患者への運動療法は有効

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健康状態に関係なく余暇身体活動で死亡率低下~アジア50万人調査

 余暇身体活動(LTPA)と死亡リスクの関連を評価する研究は、ほとんど欧州系の健康人で実施されている。今回、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのYing Liu氏らが東アジアの健康人および慢性疾患患者のコホートで調査を実施し、アジアの中高齢者において、定期的なLTPAが健康状態にかかわらず死亡率低下と関連していることが示唆された。International journal of epidemiology誌オンライン版2018年2月27日号に掲載。 本研究では、アジアコホートコンソーシアムに含まれる9件の前向きコホートに参加した東アジアの46万7,729人でプール解析を行い、LTPAと全死因および原因別死亡率の関連を調べた。年齢、性別、教育、婚姻状況、喫煙状況の調整後、Cox比例ハザード回帰を用いてLTPAに関連するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間の13.6年に、6万5,858人の死亡が確認された。・LTPAが1時間/週未満の人と比較したところ、LTPA量と全死因および原因別死亡率との間に逆相関が認められた(傾向のp<0.001)。・逆相関は、心血管疾患による死亡、がん以外による死亡で強かった。・LTPAと全死因死亡率との逆相関については、重度でしばしば生命を脅かす疾患である、がん、脳卒中、冠動脈疾患の患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.81、95%CI:0.73~0.89)と、糖尿病や高血圧などのその他慢性疾患患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.86、95%CI:0.80~0.93)で認められた。・性別、BMI、喫煙状況による明らかな修飾効果は確認されなかった。

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複雑性尿路感染症に対するメロペネム/vaborbactamの効果(解説:吉田 敦 氏)-826

 多剤耐性グラム陰性桿菌、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の増加と蔓延は、抗菌薬療法の限界を示唆する耐性菌、いわゆる「悪魔の耐性菌」として今や人類の脅威となっている。現在使用できる抗菌薬が限られている中で、セリン型のクラスAおよびクラスC βラクタマーゼを阻害するボロン酸であるvaborbactamとカルバペネム(メロペネム)を配合したメロペネム/vaborbactam(以下MEPM/VBT)が登場し、体内動態に関する第I相試験が行われていたが、今回第III相試験の結果が発表された。 本試験は国際多施設参加ランダム化比較試験であり、18歳以上の複雑性尿路感染症あるいは腎盂腎炎の症例を無作為にMEPM/VBT投与群(2g/2gを3時間かけて投与、1日3回)とピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)投与群(4g/0.5gを30分で投与、1日3回)に割り付けた。15回以上投与した後、あらかじめ定めた臨床的な改善基準を満たした場合、経口のレボフロキサシンに変更可能とし、治療期間は計10日間とした。primary end pointにはFDA基準(臨床的改善・治癒と、静注薬終了時の尿細菌数が104 CFU/mL未満)とEMA(欧州医薬品庁)基準(治療終了後に治癒確認を目的に診察した際の尿細菌数が103 CFU/mL未満)を用いた。 最終的に17ヵ国550例を対象とすることができ、272例がMEPM/VBT投与群に、273例がPIPC/TAZ投与群に割り付けられた。このうち腎盂腎炎は59%、尿中菌数が105 CFU/mL以上であったのは69%であり、原因微生物のうち65%は大腸菌、15%はK. pneumoniaeであった。なお大腸菌のうちPIPC/TAZ耐性率は5%、MEPM耐性菌はなく、K. pneumoniaeのうちPIPC/TAZ耐性率は42%、MEPM耐性率は5%であった。Primary end pointを達成した成功率は、FDA基準ではMEPM/VBT群98.4%、PIPC/TAZ群94.0%であり、MEPM/VBTはPIPC/TAZに非劣性であるばかりか、それよりも優れていた。EMA基準では、MEPM/VBT群66.7%、PIPC/TAZ群55.7%であり、これでも非劣性が判明した。有害事象はMEPM/VBT群39.0%、PIPC/TAZ群35.5%で報告されたが、抗菌薬に関連したものはそれぞれ15.1%、12.8%であり、重度のものは2.6%、4.8%であった。MEPM/VBT群で多かったのは頭痛や下痢、ALT上昇などであったが、副作用のために投与を中止したのは2.6%とPIPC/TAZ群の5.1%より少なかった。 今回の報告は、βラクタマーゼ・カルバペネム配合剤のヒト感染症例でのランダム化比較試験としては、初めてのものである。この結果を受けて、FDAは2017年8月に成人の複雑性尿路感染症を対象に本剤を認可した(Vabomere)。ただし本試験にはいくつかの限界が存在する。SIRSの基準を満足している割合が1/3以下と高くないこと、原因微生物がメロペネム耐性菌である割合が低く(PIPC/TAZ耐性率は高い)、そもそもカルバペネム耐性菌を主対象とした研究でないことである。そしてこれまでの検討で、MEPM/VBTはCPEのうちKlebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)には有効であるが、クラスBのメタロβラクタマーゼ産生菌(代表的なのはNDM)にはあまり有効でないことが指摘されている1)。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌による複数の感染症に対し、本剤の有効性を調べた続発試験(TANGO II)が行われたとも聞く。KPCが多い地域と、メタロβラクタマーゼ産生菌が多い本邦やアジアでは、本剤が適応となる状況は異なると思われる。メタロβラクタマーゼ産生菌に使用できる選択肢が増えることが、さらに望まれる状況にある。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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