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食事療法の見直しへ日本糖尿病学会が動き出す

 食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人における食事療法の見直しが迫られている。2018年11月5日、日本糖尿病学会が主催する「食事療法に関するシンポジウム」が、5年ぶりに開催された。講演には、座長に羽田 勝計氏(「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会委員長)と荒木 栄一氏(「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会委員長)を迎え、5名の糖尿病専門医らが登壇した。 また、パネルディスカッションには、さまざまな観点からの意見を求めるべく、5つの団体(日本老年医学会、日本腎臓学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本病態栄養学会、日本糖尿病協会)の代表が参加した。 本稿では講演の概要をお届けする。糖尿病食事療法でのBMI 22を基準としたエネルギー設定の問題点 宇都宮 一典氏(食事療法に関する委員会委員長)は「総エネルギー摂取量設定法をめぐる課題」をテーマに講演を行った。宇都宮氏は、食事療法の目的は、糖尿病の代謝異常の是正による合併症の抑制にあるとし「患者の条件を考慮した個別化の検討が必要」と述べた。なかでも、エネルギー設定が最も重要であることから、「これまで、標準体重を基に一律に総エネルギー摂取量を設定してきたが、エネルギー必要量には個人差が著しく、個々のさまざまなデータ(脂質、血圧など)の改善度を評価し、順守性もみながら設定すべき」と、改めて強調した。 また、死亡率の低いBMI 22を、標準体重としてエネルギー設定することの問題点として、海外と日本のデータを基にコメント。1)患者の死亡率が低いBMIは20~25の幅があり、また、75歳以上の後期高齢者の場合、そのBMIは25以上2)体重が増えるほど消費エネルギーは増加し、肥満者ほどエネルギー設定との乖離が増す3)国際的には実体重当たりで表記されており、比較することが難しいなどを挙げた。ただし、日本ではBMI 22を標準体重とすることが広く普及しており、十分なコンセンサスの形成が必要、と結んだ。糖尿病患者の食事療法におけるエネルギー必要量は? 勝川 史憲氏(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)は「糖尿病患者のエネルギー必要量:エビデンスと歴史的経緯について」を講演した。 糖尿病患者の体重当たりの総エネルギー必要量に対して、「根拠となるデータが公表されていない」と指摘する勝川氏は、エネルギー消費量の計算においてゴールデンスタンダードな二重標識水法について解説。この方法は、自由行動下のエネルギー消費量を精度高く測定する方法であるが、コストが高く多人数の測定が困難であるという。 同氏がこの方法を用いた海外を含む4つの文献データを基に、総エネルギー消費量とBMIをプロットしたところ、「糖尿病患者のエネルギー必要量は健康な人と差がない、もしくは5~6%程度高め」という結果となった。これを踏まえ、食事療法における過少なエネルギー処方が、減量の不良や高齢者の虚弱に繋がることを指摘した。また、種々の食事調査と二重標識水法による総エネルギー消費量を評価した研究結果を挙げ、「太った人の食事調査ほど当てにならない」とコメントした。 最後に、時代変遷と食品の変化について語った同氏は、「昭和から平成にかけて食事のポーションサイズが大きくなっている」と述べ、「戦後間もない時代はMサイズの卵が80kcal/個だったのが、現在は同サイズが100kcal/個へと大きくなっている」と現状に適したわかりやすいエネルギー単位の検討について訴えた。高齢者糖尿病の食事療法の目的にフレイル・サルコペニアの予防 荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター/日本老年医学会)は「健康寿命を目指した高齢者糖尿病の食事療法」について、J-EDIT試験を中心に講演を行った。 高齢者糖尿病の食事療法の目的は、過剰摂取だけではなく、合併症予防やQOLの維持・向上、そして、これからは老年症候群と言われる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防が重要となる。荒木氏はさまざまな国内外の文献を示しながら、糖尿病患者のフレイル・サルコペニアのリスクを提示し、筋肉量、筋力や歩行速度の低下を指摘。同氏は、「ビタミンD低下はサルコペニア、ビタミンB2やカロチン摂取低下は認知機能低下、タンパク質摂取低下は筋肉量および下肢機能低下などのフレイルに関連する」と述べ、「タンパク質1.0g~1.5g/kg体重の摂取がサルコペニアの予防に大切である」と解説した。このほか、ロイシンを考慮した食事療法も推奨した。 J-EDIT試験の結果を踏まえ同氏は、「後期高齢者はタンパク質摂取が低い群で死亡リスクが高くなる。さらに、「緑黄色野菜の摂取量がHbA1cや中性脂肪値にも影響する」と、栄養成分ごとのリスクについて訴えた。糖尿病の食事療法で肥満患者以外へのカロリー制限を中止 “現在の糖尿病診療ガイドラインの食事法は根拠がない”と訴える山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター)は「エビデンスで考える(日本人)2型糖尿病の食事療法」をテーマに講演した。 かつて、同氏が所属する病院でも、カロリー制限や脂質制限を推奨してきた。しかし、2016年にカロリー食によるサルコペニアリスクを示す論文報告を受けたのを機に、肥満患者以外へのカロリー制限を中止したという。 そもそも、欧米の糖尿病患者は太っていることが多い。一方で、日本人の糖尿病患者はBMI 24前後の患者が多く、体重管理のためのエネルギー処方は不要と考えられる。同氏は、「現在の治療法は、高血糖ではなく肥満の治療法である。非肥満患者に肥満治療食が提供されていてナンセンスである」とコメント。また、カロリー制限では脂質・タンパク質摂取によるインクレチン分泌を利用できないため、血糖管理には向かない。「理論的意義も実際の有効性も安全性も担保されていない」と、指摘した。 現在、ハーバード大学におけるメタボリックドミノの新モデルでは、糖質の過剰摂取が最上流として着目されており、実際、日本国内外で糖質制限食のエビデンスはそろっている。今後の糖尿病診療ガイドライン改訂に向けて同氏は、「日本人の糖尿病食事療法にエビデンスのある、多様な食事法の導入を目指していくべき」と提言した。糖尿病食事療法のための食品交換表は食事の実態と乖離 綿田 裕孝氏(「食品交換表」編集委員会委員長)が「糖尿病食事療法の指導状況の調査ー食品交換表の使用実態を中心にー」をテーマに講演した。 2013年11月に改訂された「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」は、現在の食品成分を緻密に反映した内容となっており、患者が摂取した食品を正確に把握すれば食事療法の実践に有効である。一方で、「現代社会において簡単に使いやすい、いろいろな食習慣・環境の人が使えるという定義どおりのものになっているかどうかは疑問が残る」と同氏は指摘。 この食品交換表の活用における実態を把握するために、今年6月に日本糖尿病学会に所属する管理栄養士らを対象にアンケート調査が行われた。その結果、食品交換表をあまり使用しない、まったく使用しないと回答した人が約40%に上り、その理由として、食事療法の対象となる患者のうち、調理する習慣がない、調理ができなくなった、中食・外食・コンビニ利用者が約90%占めるなど、現代の患者背景を考えると、調理を基盤とした食品交換表を使用するのが困難である、といった問題が浮き彫りとなった。 この結果より、同氏は、「食品交換表が食事の実態や指導したい内容と乖離している点が問題である。一方、写真が多い表は好まれて使用されているので、これらの結果を踏まえて検討していきたい」と締めくくった。■関連記事糖尿病発症や最適な食事療法を個別提示糖尿病食事療法の選択肢を増やす「緩やかな糖質制限」ハンドブック

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飲酒運転の再発と交通事故、アルコール関連問題、衝動性のバイオマーカーとの関連

 危険な運転行為において、個々の生物学的な傾向が役割を担うはずである。衝動性、アルコール使用、過度なリスクのマーカーとして、血清モノアミンオキシダーゼ(MAO)、ドパミントランスポーター遺伝子(DAT1)、神経ペプチドS1受容体(NPSR1)遺伝子多型が同定されている。エストニア・タルトゥ大学のTonis Tokko氏らは、衝動性の神経生物学的因子が、飲酒運転や一般的な交通行動に及ぼす影響について検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2018年11月26日号の報告。 飲酒ドライバー群203人および対照群211人の交通行動とアルコール関連の問題、パーソナリティ尺度、3つのバイオマーカーとの関連を縦断的に調査した。募集後10年以内に飲酒運転違反(DWI)をしたかどうかに基づいて対象者の差異を分析し、個々のバイオマーカーがDWIや他の交通違反・事故に対してどのように予測するかを調査した。 主な結果は以下のとおり。・飲酒ドライバー群では血小板MAO活性が低かったが、将来のDWI群ではこの測定値と有意な関連が認められなかった。・DWIを繰り返すリスクに、NPSR1 T-アレルキャリアが関連していた。・全サンプルにおいて、DAT1 9Rキャリアは10Rホモ接合体と比較し、自らの過失による交通事故(能動的な事故)に、より多く関連していた。・DWI群は非DWI対照群と比較し、アルコール関連の問題が有意に多く、衝動性スコアがより高かった。 著者らは「アルコール使用および衝動性の生物学的マーカーは、日々の交通行動と関連付けられ、より個別化された予防活動の必要性を理解するために役立つであろう」としている。■関連記事精神疾患ドライバー、疾患による特徴の違い車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は男性の飲酒とうつ病との関係

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糖尿病患者の認知症リスク、活動的・社会的な生活で減らせるか

 糖尿病関連認知症に対する健康的な生活習慣の効果はまだわかっていない。今回、活動的な生活習慣と豊かな社会的ネットワークが糖尿病患者の認知症リスクの増加を防げるかどうか、スウェーデン・ストックホルム大学のAnna Marseglia氏らが検討した。その結果、活動的で社会的な生活習慣が、認知症リスクにおける糖尿病の有害作用を打ち消す可能性があることが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2018年12月6日号に掲載。 本研究は、Swedish National Study on Aging and Care in Kungsholmen(n=2,650)の認知症ではない高齢者の10年間の追跡調査。糖尿病は、病歴、薬剤使用、医療記録により、もしくはHbA1c 6.5%以上、HbA1c 5.7~6.5%(前糖尿病)で確定した。認知症は標準的な基準に従って専門医が診断した。「活動的な生活習慣」は、中程度~高レベルの余暇活動、もしくは社会的つながりとサポートが中程度~豊富な社会的ネットワークと定義された。認知症リスクのハザード比(HR)は、Cox回帰モデルから算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査中に246人に認知症が発症した。・前糖尿病(n=921)を除く糖尿病患者(n=243)は、糖尿病ではない参加者よりも認知症リスクが高かった(調整HR:2.0、95%信頼区間[CI]:1.4~2.9)。・糖尿病で余暇活動レベルが低い人(HR:4.2、95%CI:2.2~8.2)もしくは社会的ネットワークが乏しい人(HR:3.4、95%CI:1.9~6.1)は、余暇活動が中程度~高レベルもしくは社会的ネットワークが中程度~豊富な糖尿病でない参加者に比べて、認知症リスクが高かった。・糖尿病の参加者では、活動的な生活習慣(余暇活動レベルが高い、もしくは社会的ネットワークが豊富)が少ないリスク上昇と関連していた(HR:1.9、95%CI:1.1~3.4)。

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クリスマス休暇中の退院、30日死亡/再入院リスク増大/BMJ

 12月のクリスマス休暇中に退院した患者は、退院後1~2週間以内の経過観察受診率が低く、30日以内の死亡/再入院リスクが高いことが、カナダ・トロント総合病院のLauren Lapointe-Shaw氏らによる、地域住民を対象とした後ろ向きコホート研究の結果、示された。多くの研究で、休日に入院した患者の院内死亡リスクの増加が見いだされている。また、金曜日や週末に退院した患者の再入院リスク増加を明らかにした研究もいくつかあるが、これまでに12月のクリスマス休暇中に退院した患者のアウトカムは明らかにされていなかった。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告。クリスマス休暇中に退院した患者約22万例について対照と比較 研究グループは、健康保険番号を有するすべての住民に関する保険診療データを収集しているInstitute for Clinical Evaluative Sciences(ICES)のデータベースを用い、2002年4月1日~2016年1月31日に、カナダ・オンタリオ州の急性期病院に緊急入院した後、2週間のクリスマス休暇期間中に退院した小児・成人(クリスマス休暇退院群)と、対照期間(クリスマス休暇開始日前後の4週間)の11月後半と1月に退院した小児・成人(対照群)について、後ろ向きに解析した。 主要評価項目は、30日以内の死亡または再入院(救急外来受診または緊急再入院)、副次評価項目は、退院後7日以内および14日以内の死亡/再入院、経過観察の外来受診であった。患者背景を補正し一般化推定方程式による多重ロジスティック回帰分析を行った。 解析対象は、クリスマス休暇退院群が21万7,305例(32.4%)、対照群が45万3,641例(67.6%)であった。両群の、ベースライン時の患者特性と過去の医療サービス利用歴は類似していた。退院後1~2週間以内の経過観察のための外来受診率は低率 クリスマス休暇退院群は対照群と比較し、退院後7日以内(36.3 vs.47.8%、補正オッズ比[aOR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.60~0.62)、および14日以内(59.5 vs.68.7%、aOR:0.65、95%CI:0.64~0.66)に、医師による経過観察の外来受診をする可能性が低かった。 クリスマス休暇退院群は対照群と比較し、30日死亡/再入院のリスクも増加した(25.9 vs.24.7%、aOR:1.09、95%CI:1.07~1.10)。死亡/再入院の相対的なリスク増加は、退院後7日以内(13.2 vs.11.7%、aOR:1.16、95%CI:1.14~1.18)および14日以内(18.6 vs.17.0%、aOR:1.14、95%CI:1.12~1.15)でも同様に確認された。 患者10万人当たりでみると、クリスマス休暇中の退院では、退院後14日以内の外来受診予約が2,999件少なく、死亡は26件、再入院が188件、救急外来受診が483件多かった。 なお、著者は研究の限界として、残余交絡や休暇中の州外への旅行増加による過小評価の可能性があることなどを挙げている。

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第15回 尿の出方の薬をお飲みの方は、目の手術時に医師へ相談を!【使える!服薬指導箋】

第15回 尿の出方の薬をお飲みの方は、目の手術時に医師へ相談を!1)日本排尿機能学会 男性下部尿路症状診療ガイドライン 2008年版2)日本泌尿器科学会 前立腺肥大症診療ガイドライン 2011年版3)Chang DF, et al. J Cataract Refract Surg. 2008;34:2153-2162.4)Intraoperative Floppy Iris Syndrome (IFIS) Associated with Systemic Alpha‐1 Antagonists ASCRS and AAO Educational Update Statement

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統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤切り替え~ドイツにおけるコスト比較

 ドイツ・Institute of Empirical Health EconomicsのChristoph Potempa氏らは、統合失調症治療において経口抗精神病薬からアリピプラゾール持効性注射剤へ切り替えることによるコスト推進要因を調査し、ドイツのヘルスケア環境における予算影響分析(BIA)を行った。Health Economics Review誌2018年11月23日号の報告。 単一レトロスペクティブ非介入前後比較研究として実施された。統合失調症患者132例を対象に、経口抗精神病薬治療およびアリピプラゾール持効性注射剤治療における精神科入院率と関連費用の比較を行った。両治療期間におけるヘルスケア関連費用を比較するため、BIAを用いた。結果のロバスト性を評価するため、単変量感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール持効性注射剤への切り替えは、経口抗精神病薬治療と比較し、6ヵ月の治療期間における精神科入院率を有意に減少させた(14% vs.55.1%、p<0.001)。・患者は、18.2%が就労者で、29.2%が就労不能であった。・患者1人当たりの統合失調症エピソード数は、アリピプラゾール持効性注射剤治療群は0.41エピソードであり、経口抗精神病薬治療群の2.58エピソードと比較し、有意に少なかった(p<0.001)。・アリピプラゾール持効性注射剤治療群は、経口抗精神病薬治療群と比較し、患者1人当たりの平均入院回数(0.16回 vs.0.63回、p<0.001)および入院日数(5.56日 vs.27.39日、p<0.001)を有意に減少させた。・さらに、診療所および精神科救急における平均滞在時間に、有意な減少が認められた(7.29日 vs.46.13日、p<0.01)。・1年間の観察期間中における統合失調症患者1人当たりのコストは、経口抗精神病薬治療群で9935.38ユーロ(直接費用:9498.36ユーロ)、アリピプラゾール持効性注射剤治療群で4557.56ユーロ(直接費用:4449.83ユーロ)であった。・ドイツのヘルスケアシステムの観点からみると、総コストは、経口抗精神病薬治療で65億1,760万6,265.43ユーロ、アリピプラゾール持効性注射剤治療で29億8,975万6,603.05ユーロであった。・この結果は、感度分析においてもロバスト性が示され、アリピプラゾール持効性注射剤治療は費用対効果の高い治療戦略であることが示唆された。 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤治療は、ドイツの法定健康保険におけるコスト削減のための大きな可能性を秘めていることを示唆している」としている。■関連記事統合失調症、双極性障害に対する持効性注射剤使用と関連コスト統合失調症の再発、コスト増加はどの程度世界で最も高齢化している日本における認知症の推定コスト

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がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価 本研究は、化学療法を開始した外来がん患者の静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(カナダ保健研究機構およびBristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたがんまたは完全/部分寛解後に進行した既知のがんを有し、治療期間が最短でも3ヵ月の化学療法を新たに開始する患者であった。Khoranaスコア(0~6点、点数が高いほど静脈血栓塞栓症のリスクが高い)は、≧2(中等度~高度のリスク)とした。 被験者は、アピキサバン(2.5mg×2回/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要な有効性評価項目は180日後の静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の発現であり、主な安全性評価項目は大出血エピソードとした。 2014年2月~2018年4月の期間に、カナダの13施設で574例(アピキサバン群291例、プラセボ群283例)が無作為割り付けの対象となり、563例(288例、275例)が修正intention-to-treat解析に含まれた。静脈血栓塞栓症の発生率はアピキサバン群が有意に低い 全体の平均年齢は61歳、女性が58.2%であった。がん種は多い順に、婦人科がん(25.8%)、リンパ腫(25.3%)、膵がん(13.6%)であった。転移病変を有する固形がんの患者が、アピキサバン群に73例、プラセボ群には67例含まれた。治療期間中央値はそれぞれ157日、155日、追跡期間中央値は両群とも183日だった。 追跡期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、アピキサバン群が4.2%(12/288例)と、プラセボ群の10.2%(28/275例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.26~0.65、p<0.001)。治療期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、それぞれ1.0%(3例)、7.3%(20例)であり、アピキサバン群で有意に低かった(0.14、0.05~0.42)。 一方、大出血エピソードの発生率は、アピキサバン群は3.5%(10/288例)であり、プラセボ群の1.8%(5/275例)に比し有意に高かった(HR:2.00、95%CI:1.01~3.95、p=0.046)。治療期間中の大出血の発生率は、それぞれ2.1%(6例)、1.1%(3例)であり、有意差は認めなかった(1.89、0.39~9.24)。 死亡率はアピキサバン群が12.2%(35例)、プラセボ群は9.8%(27例)であった(HR:1.29、95%CI:0.98~1.71)。死亡した62例中54例(87%)の死因は、がんまたはがんの進行に関連していた。 著者は、「全生存に差がないのは、最も一般的な死因である進行がんの患者が多かったという事実を反映している可能性がある。静脈血栓塞栓症の予防が死亡率の低減に結びつくのが理想だが、この課題に取り組むには、異なるデザインの、より大規模な試験を要するだろう」としている。

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アトピー性皮膚炎患者、皮膚以外の感染症リスク上昇

 アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚への細菌定着や感染の増加、皮膚以外の感染症の多数のリスク因子に関連している。しかし、ADが皮膚以外の感染症の増加と関連しているかどうかについては、これまでの研究では相反する結果が得られていた。米国・ノースウェスタン大学のLinda Serrano氏らはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、AD患者は、皮膚以外の感染症リスクが高いことが明らかとなった。著者は「今後、これらの関連を確認し、その機序を明らかにする必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年11月21日号掲載の報告。 研究グループは、ADにおいて、皮膚以外での細菌感染およびマイコバクテリア感染が増加するかどうかを検討した。 MEDLINE、EMBASE、GREAT、CochraneおよびWeb of Scienceにおいて、AD患者に対する皮膚以外の感染症に関する、すべての比較対照試験を特定し、システマティックレビューを行うとともに、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。ただし、個々の情報は入手できなかった。 主な結果は以下のとおり。・7件の研究が選択基準を満たし、解析に組み込まれた。・7件すべてにおいて、ADで1つ以上の皮膚以外の感染症(心内膜炎、髄膜炎、脳炎、骨・関節の感染症、敗血症)の可能性が高まることが認められた。・メタ解析の結果、小児および成人のADは、耳感染症(オッズ比[OR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.16~1.43)、レンサ球菌咽頭炎(OR:2.31、95%CI:1.66~3.22)、尿路感染症(OR:2.31、95%CI:1.66~3.22)の発症と関連していた。・肺炎(OR:1.72、95%CI:0.75~3.98)とは、関連していなかった。・出版バイアスは検出されなかった。

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脳卒中後の機能回復にfluoxetineは有効か/Lancet

 急性脳卒中患者へのfluoxetineの6ヵ月毎日投与により、うつ病の発症は低下するものの骨折が増加し、機能的アウトカムの改善は得られない可能性が、英国・エディンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)fluoxetineによる脳卒中後の機能的アウトカムの改善効果を示唆する小規模なプラセボ対照試験の結果が報告されており、コクランレビューでは、SSRIは脳卒中後の機能障害を抑制する可能性が示唆されている。しかし、これらのデータだけでは、治療ガイドラインの改訂には十分でなく、便益と有害反応が相殺される懸念も軽減されないという。6ヵ月後の身体機能をプラセボと比較 本研究は、英国の103施設が参加したプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2012年9月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(英国脳卒中協会と国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に急性脳卒中と診断され、発症後2~15日の期間に無作為割り付けが行われ、割り付け時に神経脱落症状がみられた患者であった。 被験者は、fluoxetine 20mgまたはプラセボを毎日経口投与する群に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。主要評価項目は、修正Rankinスケール(mRS、0[無症状]~6[死亡])で評価された6ヵ月時の身体機能とした。 3,127例が登録され、fluoxetine群に1,564例(平均年齢71.2[SD 12.4]歳、女性38%)、プラセボ群には1,563例(71.5[12.1]歳、39%)が割り付けられた。うつ病、気分障害も12ヵ月後には有意差が消失 6ヵ月時のmRS分類の分布は両群でほぼ同等であった(0:fluoxetine群7%、プラセボ群8%、1:19%、20%、2:10%、10%、3:33%、33%、4:8%、8%、5:14%、13%、6:8%、8%)。最小化変数で補正した共通オッズ比(OR)は0.951(95%信頼区間[CI]:0.839~1.079、p=0.439)だった。 Stroke Impact Scale(SIS)の9項目(筋力、手の機能、移動、日常生活動作、記憶、コミュニケーション、感情、参加、回復)は、いずれも両群間に差はみられなかった。また、疲労(SF36の「活力」で評価、p=0.6726)および健康関連QOL(EQ5D-5Lで評価、p=0.5866)にも差はなかった。気分障害(Mental Health Inventory[MHI-5]で評価)は、6ヵ月時にはfluoxetine群で良好であった(p=0.0100)が、12ヵ月時には差はなくなった。 6ヵ月時に新たにうつ病と診断された患者の割合は、fluoxetine群が13.43%(210例)と、プラセボ群の17.21%(269例)に比べ有意に低かった(p=0.0033)が、12ヵ月時には群間差は消失した。一方、6ヵ月時の骨折の発生率は、fluoxetine群が2.88%(45例)と、プラセボ群の1.47%(23例)に比し有意に高かった(p=0.0070)。生存を含め、12ヵ月時の他の副次評価項目にも両群間に有意な差は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、脳卒中後のうつ病の予防や機能回復の促進を目的としたfluoxetineのルーチンの使用を支持しない」としている。

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第2世代抗精神病薬と代謝変化に対する腸内微生物の役割

 第2世代抗精神病薬(SGA)の中で、代謝機能不全を誘発する薬剤がいくつか知られている。このような副作用の発現には、さまざまな要因が影響している。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのKarolina Skonieczna-Zydecka氏らは、SGAがディスバイオーシス(バランス失調)を引き起こすかの調査、腸内細菌叢の変化が体重や代謝に及ぼす影響の評価、動物やヒトを対象とした研究におけるSGA治療誘発性代謝異常のメカニズムについての検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2018年7月3日までにSGAで治療された患者の微生物および体重変化について報告した研究を、データベース(PubMed、Medline、Embase、ClinicalTrials.gov、PsychInfo)よりシステマティックに文献検索した。 主な結果は以下のとおり。・マウス(8試験)およびラット(3試験)において報告された研究、7文献が抽出された。・オランザピンが5試験、リスペリドンが6試験に使用されていた。・ヒトにおいて報告された研究の3文献(4試験)のみが、リスペリドンおよび混合SGAの使用基準に適合していた。・バクテロイデス門と比較し、フィルミクテス門の増加が微生物の変化に直接的(げっ歯類5試験、ヒト4試験)または間接的(げっ歯類4試験)に影響を及ぼすことが確認された。これは、げっ歯類(8試験)およびヒト(4試験)における体重増加と同様であった。・オランザピンでは、げっ歯類における肥満、脂質生成、血漿遊離脂肪酸、酢酸塩レベルの上昇といった代謝変化(3試験)および炎症(2試験)の両方を誘発することが確認された。一方、リスペリドンでは、げっ歯類における安静時代謝率の抑制(5試験)、ヒトにおける空腹時血糖、TG、LDL、hs-CRP、antioxidant SOD、HOMA-IRの上昇が認められた(1試験)。・げっ歯類の研究において、体重に対するディスバイオーシスの性別依存的な影響が認められた(1試験)。 著者らは「抗精神病薬治療に関連する腸内微生物の変化は、体重増加や代謝異常に潜在的な影響を及ぼす。炎症や安静時代謝率の抑制は、代謝異常の発生に重要な役割を果たすと考えられる」としている。■関連記事オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析抗精神病薬の代謝への影響に関するランダム化比較試験

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第9回 QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第9回:QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~QRS電気軸が「正常軸」か「◯軸偏位」かについては、I誘導とaVF(またはII)誘導のQRS波の「向き」だけを見れば説明可能でしたね。今回の問題となる「角度は何度か」については、そこから少し工夫するだけで求めることができるため、ちょっとした“ゲーム感覚”で楽しいですよ。電気軸の本質に近づく、そんなレクチャーをDr.ヒロが提供します。症例提示47歳、女性。不定期の胸痛を主訴に来院。安静時心電図を以下に示す(図1)。(図1)受診時心電図画像を拡大する【問題】心電図のQRS電気軸は何度か?解答はこちら+30°(または自動診断の+35゚)解説はこちらQRS電気軸に関する定性的な議論であれば、I誘導とaVF(II)誘導のQRS波の「向き」に着目すればカンタンです。右軸・左軸偏位の頭の整理法も含めて前回述べました(第8回)。図1も、I、II、aVF誘導のQRS波がいずれも上向きなので、「正常軸」となりますね。でも、今回の問題では“何度か?”と尋ねられています。そんな時はまず、心電計にお伺いを立てましょう。上の自動診断の欄を見ると「軸:35度」となっているので、これを丸々写しても正解とします。今回は、心拍数のオリジナル計算法(検脈法:第3回)と同様に、定規もコンパスも計算機もなーんにも使わなくとも、己の頭だけで電気軸のおおまかな数値が言えるよ、というやり方を伝授しましょう。今回、ボクが紹介する方法を“トントン法”と名付けています。『またふざけたネーミング…(怒)』なんて言わないで。この手法を使えば、キチンと数値でQRS電気軸が言えるようになります。もともと難しいと敬遠されがちな電気軸の話なので、あまり考え込まずに“ゲーム感覚”で捉えましょう。何でもそうですが、心電図も各所で楽しむことが長く続けるコツだと思います。まず、次の図で説明します(図2)。図中のカメラ片手の宇宙人を自分の目線と考えてください。この宇宙人、ボクの大のお気に入りで今後も各所で登場します(笑)。(図2)心電図波形描写の基本事項画像を拡大する杉山 裕章. 心電図のみかた、考えかた[基礎編]. 中外医学社;2013.p.54.を改変心臓は、電気の流れ(刺激)を収縮(興奮)が後追いします。ボクが常々大切だと思っていることの一つに、「誘導は視点と言い換えよ」というものがあります。そして、心電図の基本ルールでは視点(誘導)に興奮が向かってくる時に、その誘導(視点)は上向き(陽性)の波として描かれます(図2、A点)。逆に、電気を見送る(離れていく)側なら、完全に下向き(陰性)の波となります(図2、B点)。これが「単極誘導」の考え方になります。では、電気興奮の流れと垂直方向かつ中点であるC点での波形はどうなるか、考えてみてください。最初の半分は興奮が近づいてきて、残り半分は遠ざかっていきますでしょ?…すると、時間経過も加味して前半が「上向き」、後半が「下向き」の波形となりますが、A点とB点のちょうど真ん中がC点ならば、両者の波の高さ・深さが同じになるはず。つまり“トントン”なんです。実は、これがトントン法のミソ、というか、逆転の発想をしようということなんです。実際のやり方は、今回の問題の心電図(図1)を使って解説します。電気軸ですから、方向性に強い肢誘導に注目するのは変わりません。上からザーッと見て“トントン”になっているQRS波を探すのです。すると…ありますでしょ。この症例ではIII誘導が該当します(図3)。基線に対して上向き(R波),下向き(S波)とも4mmちょっとの波となっています。(図3)症例のIII誘導を抜粋画像を拡大するこの部分を“トントン・ポイント(略してTP)”と、ボクは言っています。これに出くわすと、嬉しくなるのはボクだけ?これを“肢誘導の世界”で考えてみましょう。円座標で表現される心臓の前額断、だいぶ見慣れましたか?I誘導が±0゜で、II、III誘導はおのおの60°、120°と時計方向に回った場所でした(第8回)。この場合のTPはIII誘導ですから、「+120°」となるわけです(図3)。TPさえわかったら、もうひと頑張り。“ゴール”は近いですよ。(図4)“トントン法”によるQRS電気軸の求め方画像を拡大する先述の基本事項(図2)を意識して下さい。心室興奮が向かう方向(QRS電気軸)は、TPであるIII誘導(+120°)に垂直な矢印A(+30°)ないし、その正反対の矢印B(-150°)となります。さあ、正解は一つ。さて、どちらでしょう?それはI誘導が教えてくれますよ。これはイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)チームの一員で、心臓を真左から観察する誘導でした。心電図(図1)では、I誘導のQRS波はバッチリ上向き(陽性)です。つまり、全体的な心室興奮はI誘導に近づいて来ているはずで、矢印Aか矢印Bで選ぶなら左向きな前者の「+30°」が“真の方向”となります。これでQRS電気軸の方向が求まりました。最後にトントン法の概略をまとめておきます。■トントン法によるQRS電気軸の求め方■1)“方向性”に強い肢誘導のQRS波に着目する2)“トントン”(上向き波≒下向き波)となっている誘導(TP:トントンポイント)を探す。3)TPに直交する2方向のいずれかが真の電気軸で、I誘導などのQRS波の向きがうまく説明できるほうを選択する。さて、どうでしたか? トントン法って、なんだかゲームみたいでしょ? 細かいことがわからなくても、なんだかビシッと当たると嬉しくないですか? もしも、上下トントンの誘導が見当たらない場合、上向きと下向きの差が一番小さい誘導を“仮TP”として同じ議論をしてください。補足ですが、第8回で「正常軸」と判定した心電図の電気軸もこの考え方を使えば、TPであるaVL誘導(-30゚)を見て「+60°」と求めることができますよ(自動計測は“57度”となっています)。このように、肢誘導の世界は各誘導が“30°刻み”であり、おおむね電気軸も30°単位で求めることができるので、皆さんもぜひ試してみてください。かつて、ボクがP波も何もわからなかった時期、一章まるまる電気軸の求め方に割いた英書の日本語訳本を持っていました。残念ながら、卒業・転居そのほかに紛れて、その本は現在、ボクの手元にはありません(現在は絶版となっている様子)。ただ、この本での基本が頭に鮮明に残っていて、“トントン法”という愛称をつけて、皆さんにわかりやすく紹介することにしました(日本でもよく読まれているMarriottの心電図テキスト*でも、簡潔な既述ながら同様の方法が紹介されています)。でも、オリジナルの方法に何か少ーし物足りなかったDr.ヒロは、トントン法を改良し、もう少し細かい議論ができる“トントン法Neo”を完成させました。第11回で紹介しますので、乞うご期待!(*Wagner GS, et al. Marriott Practical Electrocardiography 12th ed. Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkins;2013.p.54-57.)Take-home Message1)“トントン法”を活用すればQRS電気軸(角度)は自分でも求めることができる。2)“遊び心”が心電図の勉強を楽しくする!【古都のこと~善峯寺~】西国三十三所の第二十番、善峯寺(山号:西山)は、平安中期の長元2年(1029年)開山で、言わずと知れた紅葉の名所です。この素敵な紅葉に出会うには、広大な敷地を足で稼がねばなりません。周遊途上で遭遇する遊龍の松や幸福地蔵、桂昌院(徳川綱吉公の生母)ゆかりの品々…紹介に値するものが多く、1枚の写真では到底表現できません。さらに、京都市街の眺望が圧巻だったこと! 市内の観光スポットとはまた異なる秋の趣が、筋肉痛とともに心身に刻まれました。

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Dr.須藤のやり直し酸塩基平衡

第1回 基本的な生理学的知識 第2回 酸塩基平衡異常の基本第3回 血液ガスの読み方とケーススタディ01&02第4回 ケーススタディ03&04 第5回 K代謝の生理学とケーススタディ05 第6回 ケーススタディ06 第7回 ケーススタディ07 第8回 ケーススタディ08 第9回 ケーススタディ09 そして低K血症の鑑別診断の手順 第10回 尿中電解質の使い方 酸塩基平衡に苦手意識を持っていませんか?酸塩基平衡は、最低限の生理学的な基本を理解したうえで、個々の患者さんに応用できるようになると、これほど面白い分野はないといっても過言ではありません。このシリーズでは、達人Dr.須藤が酸塩基平衡の基本ルールをしっかりとレクチャー。シリーズ後半には、症例を基に、実用的な応用について、解説します。これで、あなたも酸塩基平衡が好きになる!第1回 基本的な生理学的知識 まずは、酸塩基平衡の生理学的な基本知識から解説します。酸の生成や負荷に対する生体の反応そして、基本用語の整理など、これまでぼんやりと知っていたことが、すっきりと整理され、理解できます。また、覚えづらいHenderson-Hasserbalch 式など、Dr.須藤ならではの覚えるコツもお教えします。第2回 酸塩基平衡異常の基本 酸塩基平衡異常は何らかの病的プロセス(代謝性・呼吸性)、(アシドーシス・アルカローシス)が複数参加した綱引きです。正常な状態であれば、綱は地面に置かれており、中央はpH7.40であるが、何らかの異常があると綱引き開始!綱引き勝負の行方は?Dr.須藤ならではの綱引きの図を使って、詳しく解説します。まずは、代謝性アシドーシスと代謝性アルカロ―シスの機序についてしっかりと理解してください。第3回 血液ガスの読み方とケーススタディ01&02 今回は基本的な血液ガスの読み方をレクチャー。血ガスは基本的な6つのステップをきちんと踏んでいくことで、患者さんの状態を読み解いていくことができます。また、今回から症例の解析に入ります。Dr.須藤が厳選した症例で、基本ルールのマスターと臨床の応用について学んでいきましょう。第4回 ケーススタディ03&04 今回は、2症例を基に混合性の酸塩基平衡異常を解説します。“Medical Mystery”と名付けられた症例03。pHは一見正常、でも患者の状態は非常にsick。さあ、患者にいったい何が起こっているのでしょう。そして、酸塩基平衡や電解質の異常をたくさん持っているアルコール依存症の患者の症例を取り上げるのは症例04。それらをどう解読していくのか、Dr.須藤の裏ワザも交えて解説します。第5回 K代謝の生理学とケーススタディ05 カリウム代謝異常(とくに低Kを血症)合併することが多い酸塩基平衡異常。今回は、カリウム代謝に関する基本的な腎生理学から学んでいきましょう。まずは、重要な尿細管細胞について。NHE3?NKCC2?ROMK?ENAC?・・・が何だか!!!心配いりません。Dr.須藤がこのような難しいことを一切省いて、臨床に必要なところに絞って、シンプルに解説します。第6回 ケーススタディ06 ケース06は「原因不明の腎機能障害を認めたの48歳の小柄な男性」。多彩な電解質異常、酸塩基平衡異常を来した今回の症例。Dr.須藤が“浅はか”だったと当時の苦い経験を基に解説します。ピットフォールはなんだったのか?また、AG正常代謝性アシドーシスの鑑別診断に、重要な意味を持つ尿のAnion GAPについても確認しておきましょう。第7回 ケーススタディ07 「クローン病治療にて多数の腸切除と人工肛門増設がある41歳男性の腎機能障害」の症例を取り上げます。さまざまな病態、酸塩基異常、電解質異常などを呈するこの患者をどう診断し、どこからどのように治療していくのか。臨床経過-血液ガスの数値と治療(輸液)の経過-を示しながら、診断と治療について詳しく解説します。第8回 ケーススタディ08 今回の症例は「腎機能障害と原因不明の低K血症で紹介された48歳女性」検査所見は、低K血症とAG正常代謝性アシドーシス、そして、尿のAGはマイナス!そう、この組み合わせで一番に考えられるのは「下剤濫用」。しかしながら、導き出される鑑別と、患者から得られる病歴が一致しない。時間稼ぎにクエン酸NaとスローKで外来で経過をみながら考えることを選択。だが、完全に補正されない・・・。思考停止に陥ったDr.須藤。その原因と診断は?第9回 ケーススタディ09 そして低K血症の鑑別診断の手順 「著明な低カリウム血症の35歳女性」を取り上げます。Dr.須藤の初診から1週間後、診察室に訪れた患者。なんと30分間も罵倒され続けることに!!一体患者に、、Dr.須藤に何が起こったのか!そして、いくつかのケーススタディでみてきた低カリウム血症の鑑別診断を、手順に沿って、シンプルにわかりやすく解説します。これまで何度も出てきた“KISS”と“尿血血”というキーワード。ついにその全貌が明らかに!第10回 尿中電解質の使い方 「クローン病治療にて多数の腸切除と人工肛門増設がある41歳男性の腎機能障害」の症例を取り上げます。さまざまな病態、酸塩基異常、電解質異常などを呈するこの患者をどう診断し、どこからどのように治療していくのか。臨床経過-血液ガスの数値と治療(輸液)の経過-を示しながら、診断と治療について詳しく解説します。

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オシメルチニブの耐性機序【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第3回

第3回 オシメルチニブの耐性機序1)Piotrowska Z, Isozaki H, Lunnerz JK, et al. Landscape of Acquired Resistance to Osimertinib in EGFR-Mutant NSCLC and Clinical Validation of Combined EGFR and RET Inhibition with Osimertinib and BLU-667 for Acquired RET Fusion. Cancer Discov. 2018 Sep 26. [Epub ahead of print]2)Oxnard GR,et al. Assessment of Resistance Mechanisms and Clinical Implications in Patients With EGFR T790M-Positive Lung Cancer and Acquired Resistance to Osimertinib.JAMA Oncol.2018;4:1527-1534.3)Papadimitrakopoulou,et al. Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from the AURA3 study. ESMO2018LBA51EGFR遺伝子変異陽性例に対する最善の治療として脚光を浴びるオシメルチニブ。徐々にではあるが、耐性機序についても報告が増えてきている。今回、MGH(マサチューセッツ総合病院)のグループからCancer Discovery誌に新規の報告が出ていたので、紹介する。MGHで治療されたオシメルチニブ耐性41例における腫瘍組織・cfDNAの解析を報告したもの。ほぼ全例が2次・3次治療、つまりT790M変異陽性例に対してオシメルチニブを用いた後の耐性。組織検体35例の解析において、2例で小細胞がん、1例で扁平上皮がんへの転化が確認されている。変異解析では、19%でEGFR C797S変異が認められたが、いずれもcis配置であった。その他の変異として、22%にMET増幅が確認されている。複数箇所の生検が得られた患者において、異なる変異(C797S変異と野生型、MET増幅あり・なし)などが認められた。少数ではあるが、3例でRET融合遺伝子異常が確認された。融合遺伝子異常は過去のMGHのパネルでは検索されていなかったため、さかのぼって検討したところ、RETやBRAF融合遺伝子異常が1例ずつ確認された。前臨床研究では、RET陽性細胞株に対してRET阻害剤単独では効果不十分であり、オシメルチニブとRET阻害剤の併用が有効であった。こうした結果を基に、上記のオシメルチニブ耐性のRET陽性例に対してRET阻害剤+オシメルチニブ併用が行われ、著明な腫瘍の縮小が認められた。オシメルチニブの耐性機序については、2015年に報告された、C797Sが有名である(Thress KS, et al. Nature Med. 2015;21:560-562.)。ただしこれは15例中6例と非常に少数例の解析であった。その後にOxnardらが140例程度の解析においてC797Sの頻度は22%と報告している(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。さらに今年のESMOではAURA3試験の耐性機序が報告され、C797S変異(14%)・MET増幅(19%)・細胞周期に関する遺伝子異常(12%)・HER2増幅(5%)・PIK3CA異常(5%)など、とされている(Papadimitrakopoulou, ESMO2018)。当初提唱されていた「C797S陽性例に第1・2世代EGFR-TKIが有効かもしれない」という仮説については、これまでの実臨床における報告の大多数がcis配置とのことであり、期待感が少し下がりつつある一方で、昨今言われているようにオシメルチニブの耐性機序が非常に多彩であることがクローズアップされている。このOxnard論文でも、今読み返すと、RETやBRAF融合遺伝子が認められているし、SCLCへの転化も複数例報告されている。今後、実臨床では、FLAURA試験の結果を受けてオシメルチニブの初回治療へとシフトしていくと思われる。その場合の耐性機序がT790M変異陽性例とどの程度異なるのかは、気になる点である(Ramalingham, JCO2018などに少数ながら耐性機序の報告あり)。また、このように耐性機序が細分化していくと大規模な臨床試験で有効性を確認してはじめて承認される、というこれまでの流れを考え直す必要が出てくるかもしれない(本試験でも個人向けのoff labelプロトコールを施設で通した、との記載あり)。遺伝子変異陽性例の臨床研究には新たなルールの確立が急務であるように思われる。

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自閉スペクトラム症における非感情性精神病性障害や双極性障害のリスク

 自閉スペクトラム症(ASD)を有する患者では、非感情性精神病性障害(NAPD)および双極性障害(BD)のリスクが高いといわれている。しかし、ASDとNAPDまたはBDの併発を検討したこれまでの研究では、診断バイアスや選択バイアスは考慮されていなかった。オランダ・マーストリヒト大学のR. Schalbroeck氏らは、オランダの精神医学的症例レジストリからの縦断データを用いて、ASD患者のNAPDまたはBDリスクを評価し、これまでのオランダ人集団における研究結果との比較を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2018年11月21日号の報告。 ASD患者1万7,234例を対象に、16~35歳までフォローアップ調査を行った。NAPDまたはBDリスクは、カプランマイヤー法を用いて算出した。バイアスを減少させるために、16歳までにASDと診断された患者8,337例の分析を含めた個別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ASD患者のうち、35歳までにNAPDと診断された患者は23.50%(95%信頼区間[CI]:21.87~25.22)、BDと診断された患者は3.79%(95%CI:3.06~4.69)であった。・一般集団における診断率は、NAPDで0.91%(95%CI:0.63~1.28)、BDで0.13%(0.08~0.20)であった。・リスク推定値は、おおむね低値だったが、一般集団と比べると高値だった。16歳までにASDと診断された患者に限定すると、25歳までに1.87%(95%CI:1.33~2.61)がNAPDと診断され、0.57%(95%CI:0.21~1.53)がBDと診断された。・一般集団における上記の診断率は、NAPDで0.63%(95%CI:0.44~0.86)、BDで0.08%(95%CI:0.05~0.12)であった。 著者らは「ASD患者のNAPDまたはBD発症リスクは高かった。この結果には、診断バイアスや選択バイアスは影響していないと考えられる」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は自閉スペクトラム症におけるうつ病や自殺念慮のリスクと保護因子自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較

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STEMIでの至適DAPT期間は6ヵ月それとも12ヵ月?(解説:上田恭敬氏)-974

オリジナルニュースSix months versus 12 months dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation in ST-elevation myocardial infarction (DAPT-STEMI): randomised, multicentre, non-inferiority trial(2018/10/2掲載) 第2世代DESによって治療されたSTEMI症例で6ヵ月間イベントがなかった症例を、その時点でDAPTからSAPT(アスピリン単独)へ変更する群とそのままさらに6ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、その後18ヵ月(PCIからは24ヵ月)までの全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中、出血(TIMI major)の複合頻度を主要評価項目として非劣性が検討された。 432症例がSAPT群、438症例がDAPT群に割り付けられた。主要評価項目の発生頻度は、SAPT群で4.8%、DAPT群で6.6%となり、非劣性が示された。 本試験では1,100症例のSTEMIが6ヵ月間観察された後に各群に割り付けられているが、割付の時点で92症例は基準を満たしていたにもかかわらず割り付けられずに脱落している。イベント発生頻度がいずれの群においても予想より低かったことと合わせて、このことはlimitationとして記載されており、より低リスクの症例だけがエントリーされたとも考えられる。本試験の10倍以上の症例数で検討されたDAPT試験で認められた、DAPT継続群での心筋梗塞の減少や出血イベントの増加は、本試験では認められなかった。やはり、虚血イベントのリスクも出血イベントのリスクも低い症例が登録されたための結果ではないだろうか。 よって、本試験の結果について、「一般的に」STEMI症例でPCI後のDAPT期間を12ヵ月から6ヵ月に短縮しても大丈夫と解釈すべきではなく、「特定の症例を選択すれば」DAPT期間を12ヵ月から6ヵ月に短縮しても大丈夫と解釈すべきだろう。ただし、どんな特定の症例かは不明であり、そのような症例ではDAPT期間を短縮しても虚血イベントは増えないが、出血イベントが減るわけでもないという結果なので、積極的にDAPT期間を短縮する必要もないのかもしれない。逆に、出血イベントが減るメリットのある症例群では、その代わりに虚血イベントは増えてしまうかもしれない。臨床的に真に欲しいエビデンスを得るための臨床試験を実施するのは非常に難しいと思う。

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第13回 魚アレルギー患者はEPA/DHA製剤や魚油サプリを服用できる?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 薬局で勤務していると、魚アレルギーを自認している患者さんに出会う機会があるかと思います。自認と書いたのは、魚アレルギーといっても、実際はアニサキスアレルギーや鮮度の落ちた魚中のヒスタミンによるアレルギー様食中毒である場合もあり、新鮮な魚を食べても起こる本当の魚アレルギーと区別が必要なこともあるためです。このため、自称・魚アレルギーの患者さんからEPA/DHA製剤や魚油サプリメントを摂取してよいかというご質問にはやや答えづらいと思っています。反射的にダメと言ってしまうこともありそうですが、本当に魚アレルギーとEPA/DHA製剤やサプリメントは関連があるのでしょうか。この辺りのエビデンスは豊富ではないようで、思ったようには見つかりませんでしたが、現状調べてみた情報を紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。まず、EPA/DHA製剤であるイコサペント酸エチル(商品名:エパデール)とオメガ-3脂肪酸エチル(同:ロトリガ)の添付文書を参照すると、前者には魚アレルギー患者に投与禁忌との記載はなく、後者では「本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者は禁忌」という記載のみで、魚アレルギーとの関連について明示的な記載はありません。魚アレルギーの原因物質は皮に含まれる魚ゼラチンというタンパク質であるとの研究を紹介します1)。この研究では、魚アレルギーを有する小児の魚ゼラチン(1型コラーゲン)に対するIgE抗体の分析を行うため、血清サンプルを以下の3グループから採取しています。1.魚アレルギーを有し、魚肉に特異的IgEを有する10例2.魚肉とウシゼラチンの両方に対するアレルギーおよび特異的IgEを有する2例 3.アトピー性皮膚炎で魚肉に特異的IgEを有する15例 これらのグループの魚ゼラチンに対するIgE抗体をELISAおよびイムノブロッティングを用いて分析したところ、1の群では10例中3例、2の群では全例、3の群では15例中5例が魚ゼラチンに対する特異的IgEを有していました。このことから、魚ゼラチンは魚に過敏な患者さんのアレルゲンである可能性があるという結果が示唆されています。ただし、高純度の医薬品であれば、理論上魚ゼラチンなどの不純物は入らないはずですので、EPA/DHA製剤を服用したところでアレルゲンとなることは考えにくいのではないかと推察できます。明確な関連は不明だが、アレルギー症状が生じた事例も存在サプリメントの場合でも、魚アレルギーを持つ患者6例が、2種類の魚油サプリメントを1時間ごとに経口摂取して皮膚アレルギーテストを行ったところ、いずれも陰性だったという試験もあり2)、かなり関連性は薄いと考えられます。なお、総合医薬品データベースのLexicompにおけるOmega-3-acid ethyl esters(fish oil) の項目では、「Fish allergy: Use with caution in patients with known allergy or sensitivity to fish and/or shellfish.」と記載があり、注意レベルにとどまっています。ただし明確な根拠を示しているコメントではなさそうです。一方で、魚介類アレルギーがある女性の症例報告で、魚油カプセル服用開始4日後に息切れ、胸部圧迫感など重度のアレルギー症状を呈し、中止後5日以内に鎮静化したというケースも報告されています3)。一定の注意を払ってもよさそうですが、明確に関連を語れるほどの根拠とまでは言えず、即時型アレルギーを誘発していない方の服用をストップするほどではないかもしれません。これから服用を開始したいと考える方に関しては、冒頭で述べたように本当は魚アレルギーではない可能性もあるため、アレルギー検査をすすめたり、体内でEPA/DHAに変換されるαリノレン酸を多く含むえごま油やあまに油を提案したりするのもよいかもしれません。1)Sakaguchi M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2000;106:579-584.2)Mark BJ, et al. Allergy Asthma Proc. 2008;29:528-529.3)Howard-Thompson A, et al. Int J Clin Pharm. 2014;36:1126-1129.

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治療抵抗性統合失調症患者に対する集中的ECTのパイロット研究

 薬物治療が奏効しない治療抵抗性統合失調症(TRS)患者に対し、電気けいれん療法(ECT)の追加療法がしばしば行われる。イラン・Kermanshah University of Medical SciencesのOmran Davarinejad氏らは、TRS患者に対する8日間毎日の集中的ECTが、短期的(治療終了4週間後)および中期的(治療終了12週間後)に精神症状をどの程度改善できるかについて、検討を行った。Neuropsychobiology誌オンライン版2018年11月21日号の報告。 対象は、DSM-5の基準に基づくTRS患者14例。ECTは、8日間連続して毎日実施された。ベースライン時、治療終了時、治療終了4週間後、治療終了12週間後において、トレーニングを受けた精神科医が、疾患重症度(陽性症状、陰性症状、精神病理)および認知機能の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・精神症状(陽性症状、陰性症状、精神病理)は、ベースライン時から治療終了時および治療終了4週間後まで改善した。・治療終了12週間後には、精神症状が再び増加した。・認知機能は、ベースライン時から治療終了時および治療終了4週間後まで減少した。・しかし、治療終了12週間後には、認知機能は、ベースライン時のレベルまで戻っていた。 著者らは「TRS患者に対する集中的ECTは、短期的および中期的に精神症状を改善させた。治療終了4週間後から12週間後にかけての精神症状増加は、ECT追加セッションのベネフィットを示唆している」としている。■関連記事治療抵抗性統合失調症、ECT併用は有益か治療抵抗性統合失調症に対する電気けいれん療法とクロザピンとの併用統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査

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DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬は胆管がんリスクを大幅増/BMJ

 インクレチンベースのDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、それ以外の抗糖尿病薬の第2・第3選択薬と比べて、胆管がんリスクを大幅に増大する可能性があることが明らかにされた。カナダ・Jewish General HospitalのDevin Abrahami氏らが、糖尿病患者15万例超を対象とした集団ベースのコホート試験で明らかにし、BMJ誌2018年12月5日号で発表した。アンバランスな胆道系がんの発症が、インクレチンベースの抗糖尿病薬の大規模無作為化試験においてみられているが、リアルワールドでの観察試験では調査されていなかった。DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬と、それ以外の抗糖尿病薬と比較 研究グループは、英国の臨床データベース「Clinical Practice Research Datalink(CPRD)」を基に、2007年1月1日~2017年3月31日の間に新たに糖尿病の診断を受けた成人15万4,162例について、2018年3月31日まで追跡を行った。 DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用を時変共変数としてモデル化し、それ以外の第2・第3選択薬の抗糖尿病薬と比較。がん潜伏期間と逆の因果関係を最小化するために、すべての曝露から1年間の遅延期間を設定した。 Cox比例ハザードモデルを用いて、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用に関連した胆管がん発生のハザード比(HR)を95%信頼区間(CI)とともに、それぞれについて算出した。また、世界保健機関(WHO)の個別症例安全性報告のデータベース「VigiBase」を使って、事後のファーマコビジランス解析を行い、胆管がんの報告オッズ比(ROR)を推算した。DPP-4阻害薬、胆管がんリスク1.77倍増大 61万4,274人年の追跡期間中に発生した胆管がんは、105例(17.1/10万人年)だった。 DPP-4阻害薬の服用は、胆管がんリスクを77%増大した(HR:1.77、95%CI:1.04~3.01)。また、GLP-1受容体作動薬の服用も胆管がんリスクの増大が示されたが、95%CI値は広範囲にわたった(HR:1.97、95%CI:0.83~4.66)。 ファーマコビジランス解析では、DPP-4阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用は、SU薬やチアゾリジン系薬の使用と比べて、いずれも胆管がんのRORは増大と関連していた(DPP-4阻害薬のROR:1.63[95%CI:1.00~2.66]、GLP-1受容体作動薬のROR:4.73[同:2.95~7.58])。

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治療抵抗性うつ病に対する増強療法~メタ解析

 うつ病は、最も高い障害負荷を有する疾患の1つである。治療抵抗性うつ病(TRD)は、その負荷の重要な因子であるが、そのための最良の治療アプローチ、とくに実践可能な増強療法の有効性については、あまり知られていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRebecca Strawbridge氏らは、TRDに対する心理学的および薬理学的な増強療法のエビデンスについて、システマティックレビュー、メタ解析を行った。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2種類以上のうつ薬治療に対し効果不十分なうつ病患者をTRDと定義した。治験において、1種類以上の増強療法に無作為化された患者を対象とした。事前事後解析では、治療有効性を評価し、比較介入群と独立したエフェクトサイズ(ES)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・28試験が抽出された。内訳は、心理学的増強療法3件、薬理学的増強療法25件であった。・事前事後解析では、N-メチル-D-アスパラギン酸を標的とする薬剤が、最も高いESを示した(ES:1.48、95%CI:1.25~1.71)。・3試験以上行われていた薬剤は、アリピプラゾール(4試験、ES:1.33、95%CI:1.23~1.44)、リチウム(3試験、ES:1.00、95%CI:0.81~1.20)のみであった。・全体として、薬理学的増強療法(ES:1.19、95%CI:1.80~1.30)および心理学的増強療法(ES:1.43、95%CI:0.50~2.36)は、プラセボ群(ES:0.78、95%CI:0.66~0.91)および心理学的コントロール群(ES:0.94、95%CI:0.36~1.52)よりもESが大きかった。 著者らは「実臨床で広く使用されているにもかかわらず、TRDに対する増強療法のエビデンスは、あまり多くない。事前事後解析は、直接比較の欠如により制限を受けるものの、治療方法全体にわたる有望な根拠を見いだすことができる」としている。■関連記事リアルワールドデータにおける治療抵抗性うつ病治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかSSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較

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第一三共のADC U3-1402、乳がん第I/II相試験で良好な結果

 第一三共株式会社は、2018年12月6日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018で発表された、乳がん患者を対象としたU3-1402(HER3に対する抗体薬物複合体)の第I/II相臨床試験における安全性と有効性に関する最新データの概要を公表した。 安全性については、HER3陽性の乳がん患者42例において、Grade3以上の主な有害事象(発現率>10 %)として、血小板数減少(35.7 %)、好中球数減少(28.6 %)、白血球数減少(21.4 %)、貧血(16.7 %)、ALT増加(11.9 %)がみられた。また治療に関連した重篤な有害事象がみられた患者は16.7 %であった。 予備的有効性については、前治療を受けたHER3陽性の再発・転移性乳がん患者42例において、全奏効率は42.9%(18例/42例)、病勢コントロール率は90.5%(38例/42例)、奏効期間は中央値に未到達、無増悪生存期間中央値は8.3ヵ月であった。 U3-1402は、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)に続き、同社で2番目に臨床開発入りした抗体薬物複合体(ADC)で、現在、上記試験に加え、非小細胞肺がんを対象とした第I相臨床試験を実施中。

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