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残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案

 医師の時間外労働の上限について、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会(第16回)」が1月11日開かれ、事務局案として2つの上限水準が示された。この水準は時間外労働規制として2024年4月から適用予定のもので、今後は事務局案を基に議論を進め、今年度中に結論を出す見通しとなっている。時間外労働、年960時間/1,900時間の働き方を具体的にみると… 一般労働者においては、2019年4月から適用される時間外労働の上限時間は年360時間・月45時間とされており、年6ヵ月に限定した例外措置が設定されている1)。医師における時間外労働の上限として、検討会では下記(A)~(C)3つの枠組みを設けることを検討している。(C)については水準を別途設けるべきかを含め、今後議論される予定で、今回は(A)(B)について具体的な数値案が示された。なお、(B)は地域医療提供体制確保の観点から、やむを得ず(A)の水準を超えざるを得ないとして特定の医療機関(2024年4月までに検討・決定予定)に適用される形が想定されており、2035年度末を目途に解消を目指すとされている2)。(A)原則:年960時間・月100時間(例外あり)※休日労働含む(B)地域医療確保暫定特例水準:年1,900~2,000時間・月100時間(例外あり)※休日労働含む(C)一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする医師向けの水準:〇〇 同検討会で並行して議論されている「勤務間インターバル9時間、当直明けは18時間確保」を適用のうえ、(A)(B)を満たす働き方として示された具体例は下記のとおり。(A)時間外労働年960時間程度≒週20時間の働き方の例・週1回の当直(宿日直許可なし)を含む週6日勤務・当直日とその翌日を除く4日間のうち1日は半日勤務で、それ以外の3日間は1日1時間程度の時間外労働・当直明け勤務は昼まで・年間80日程度の休日(おおむね4週6休に相当)(B)時間外労働年1,900時間程度≒週40時間の働き方の例・週1回の当直(宿日直許可なし)を含む週6日勤務・当直日とその翌日を除く4日間は早出または残業を含め1日14時間程度の勤務・当直明け勤務は昼まで・年間80日程度の休日(おおむね4週6休に相当) これらの具体例の提示を受け、赤星 昂己氏(東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 医師)は「1,900~2,000時間と聞くと長いという印象を受けたが、具体例をみてみると余裕でありうる設定だと感じた。ただし、現状の人数のままでインターバル9時間の実現は難しいと思われ、集約化を進めないと難しいだろう。懸念としては、暫定特例水準が認められた病院が若手に避けられてしまわないか、という点がある。」とコメントした。現状でも6割は960時間以内、著しく超過しているのは1割 厚労省の時間外労働時間についての調査では、病院勤務医の約6割が現状でも年960時間以内、約3割が年960時間から1,900~2,000時間、そして約1割を占める2万人がそれ以上と報告されている。年1,920時間以上の該当者がいる病院の割合をみると、大学病院の88%、救急機能を有する病院の34%、救命救急機能を有する病院の82%であった。また病床数別にみると、400床以上で68%、200床以上400床未満で21%、200床未満で13%というデータも示されている。 構成員からは、「地域で1次・2次の救急を担っている病床数の少ない病院にも該当者がいるのではないか。そのデータをしっかりみて、今後の議論を進めていくべき。医師数が少ないところは看護師数も少ない。そこでどうタスクシフトするのか、その点についてももっと詳細に考えなくてはいけない(片岡 仁美氏、岡山大学医療人キャリアセンターMUSCAT センター長)」、「水準の適用後、時間の達成状況だけでなく、地域医療の質に対する影響の調査が重要になるのではないか(城守 国斗氏、日本医師会常任理事)」などの意見が上がった。■参考1)厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」2)厚生労働省「第16回医師の働き方改革に関する検討会」資料

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第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】

第5回 糖尿病患者とフレイル・ADLQ1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。画像を拡大する(表上部)画像を拡大する(表下部)外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります(第4回参照)。Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてくださいフレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0~1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。つまり、体重60㎏の人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2~1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。エネルギー量は従来、高齢者は体重×25~30kcalとして計算することが多かったと思いますが、フレイル予防を考えた場合、体重当たり30~35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50㎏の女性では、1,600kcalの食事となります。Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てることです。特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10~20㎎/日で使用します。フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。1)Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.2)Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]3)Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.4)Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.5)Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.6)Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.7)Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.8)Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.9)Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.

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ニボルマブ、食道がん第III相試験でOS延長(ATTRACTION-3)/小野薬品

 小野薬品工業株式会社は、2019年1月9日、ニボルマブ(商品名: オプジーボ)について、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐となった切除不能な進行または再発食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3:ONO-4538-24/CA209-473)の最終解析において、ニボルマブ群が化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示したと発表。 ニボルマブは、切除不能な進行または再発食道がんにおいて、腫瘍細胞のPD-L1発現を問わない集団全体においてOSの有意な延長を示した世界で初めての免疫チェックポイント阻害薬となる。なお、本試験の結果については、今後、関連学会にて公表する予定とのこと。

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再入院削減プログラム、死亡率を増大?/JAMA

 米国のメディケア受給者では、再入院削減プログラム(Hospital Readmissions Reduction Program:HRRP)により、心不全および肺炎による入院患者の退院後30日以内の死亡率がむしろ増加することが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのRishi K. Wadhera氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。HRRPは、「患者保護ならびに医療費負担適正化法(ACA)」の下で2010年に成立し、2012年からは、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)に、心不全、急性心筋梗塞、肺炎患者の30日再入院率が予想を上回った病院に対し制裁金を課すことが求められている。その成果として、HRRPはこれらの疾患による再入院率を抑制することが示されたが、死亡率への影響は知られていなかった。公布、施行の前後で死亡率の変化を評価 研究グループは、HRRPと患者死亡率の変化との関連をレトロスペクティブに評価するコホート研究を行った(Richard A. and Susan F. Smith Center for Outcomes Research in Cardiologyの助成による)。 2005年4月1日~2015年3月31日の期間に、心不全、急性心筋梗塞、肺炎で入院した65歳以上の出来高払いのメディケア受給者を調査の対象とした。HRRP公布前の2005年4月~2007年9月を第1期、2007年10月~2010年3月を第2期とし、HRRP公布後の2010年4月~2012年9月を第3期、HRRP施行後の2012年10月~2015年3月を第4期とした。 主要アウトカムは、心不全、急性心筋梗塞、肺炎で入院した後の、退院から30日以内の逆確率重み付け法で補正した死亡率(退院後死亡率)とし、再入院なしの死亡、再入院ありの死亡、再入院ありの非死亡、再入院なしの非死亡に分けて検討した。また、初回入院から45日以内の死亡率(入院後死亡率)を疾患別に評価した。心筋梗塞患者では公布後に死亡率低下 コホートには、832万6,688件の心不全、急性心筋梗塞、肺炎による入院が含まれた。このうち、794万8,937件(平均年齢79.6[SD 8.7]歳、女性53.4%、白人85.6%)が退院時に生存していた。心不全による入院が約320万件、急性心筋梗塞による入院が約180万件、肺炎による入院は約300万件であり、退院後30日以内の死亡はそれぞれ27万517件、12万8,088件、24万6,154件であった。 心不全患者では、退院後30日死亡率がHRRP公布前の時期には増加していた(第1期から第2期までに0.27%増加)。このベースライン時の動向と比較して、HRRPの公布(第2期から第3期までに0.49%増加、第1期から第2期と第2期から第3期の変化の差:0.22%、p=0.01)およびその施行(第3期から第4期までに0.52%増加、第1期から第2期と第3期から第4期の変化の差:0.25%、p=0.001)により、30日死亡率は有意に上昇した。 急性心筋梗塞患者の退院後30日死亡率は、HRRP公布後(公布前は0.18%増加、公布後は0.08%低下、変化の差:-0.26%、p=0.01)には有意に低下したが、施行後の変化は有意ではなかった(施行後は0.15%増加、変化の差:-0.03%、p=0.69)。また、肺炎患者の退院後30日死亡率は、HRRP公布前はほぼ安定していた(第1期から第2期に0.04%増加)が、公布後(0.26%増加、変化の差:0.22%、p=0.01)および施行後(0.44%増加、変化の差:0.40%、p<0.001)にはそれぞれ有意に増加した。 心不全および肺炎患者の死亡率の増加は、主として退院後30日以内に再入院せずに死亡した患者のアウトカムと関連していた。また、3つの疾患とも、HRRP公布前の動向と比較して、入院後45日死亡率の増加とは関連を認めなかった。 著者は、「試験デザインおよび入院後45日以内の死亡率とHRRPに有意な関連がないことを考慮すると、退院後30日死亡率の増加は施策の帰結かという問題を理解するためには、さらなる検討を要する」としている。

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高カロリーなのはファストフードだけではない/BMJ

 外食のエネルギー量は、フルサービス食およびファストフード食のいずれもきわめて高く、むしろファストフード食のほうが低い傾向があり、これは広範な地域でみられる現象で、世界的な肥満の下支えとなっている可能性が、米国・タフツ大学のSusan B. Roberts氏らの調査で明らかとなった。肥満の有病率は多くの国で増加し続けている。大規模にチェーン展開しているレストランの栄養情報によると、ファストフードは世界的な肥満の最も重要な寄与因子とされるが、他の形式のレストランの食事については、エネルギー量の測定データがなく、肥満への寄与の程度はほとんど知られてないという。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。世界6都市223種の外食を調査 研究グループは、5ヵ国のフルサービスおよびファストフードのレストランの、注文数の多い食事のエネルギー量を測定し、米国と比較する横断的調査を行った(研究資金の一部として米国農務省の助成を受けた)。 6ヵ国の主要都市(ブラジルのリベイラン・プレト、中国の北京、フィンランドのクオピオ、ガーナのアクラ、インドのバンガロール、米国のボストン)で無作為に選出された111店のフルサービス(接客係が給仕し、店内で着席して食事を摂る)およびファストフード(カウンターで供され、店内または店外で食事を摂る)のレストランで提供される223種(フルサービス食:136種、ファストフード食:87種)の一般的な食事の代表サンプルを用いてエネルギー量を測定した。フィンランドでは、5つの職場の社員食堂で提供される10種の食事も含まれた。当該レストランで注文の多い食事を観察単位とし、食事のエネルギー量の測定にはボンブ熱量計が用いられた。米国より低いのは中国のみ 米国と比較して、レストランの食事のエネルギー量の加重平均値が低かったのは、中国だけであった(719kcal[95%信頼区間[CI]:646~799] vs.1,088kcal[1,002~1,181]、p<0.001)。 分散モデル分析では、ファストフード食のエネルギー量はフルサービス食よりも33%低かった(p<0.001)。フィンランドでは、社員食堂の食事がフルサービスやファストフードレストランよりもエネルギー量が25%低かった(平均880[SD 156]kcal vs.1,166[298]kcal、p=0.009)。 多元配置分散分析では、国、レストラン形式、食事の食材数、重量は、食事のエネルギー量を予測した(R2=0.62、p<0.001)。フルサービス食の94%、ファストフード食の72%が、600kcal以上であった。 モデル解析では、中国を除くと、現在のフルサービス食またはファストフード食を毎日1食摂ると、追加食や飲み物、間食、前菜、デザートを摂らなくても、あまり体を動かさない女性に求められる1日のエネルギー量の70~120%が供給される可能性が示唆された。 著者は、「一般的な思い込みに反し、ファストフード食のエネルギー量は、フルサービスのレストランの食事よりも3割以上も低かった」とまとめ、「高エネルギーのレストランの食事は、世界的な肥満蔓延の重大な寄与因子であり、公衆衛生的介入における影響力の大きい標的として妥当である」と指摘している。

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入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。 本研究は、前後比較研究として催眠鎮静薬の使用や合併症発症などについて、薬剤師による介入前と介入後で比較を行った。催眠鎮静薬の使用に関するデータを2ヵ月間レトロスペクティブに収集し、分析のために100例の患者サンプルをランダムに選択した。2ヵ月間のフォローアップでは、薬剤師1名が日々の処方を検討し、必要に応じて不要薬の中止や催眠鎮静薬の新規処方の勧告を行った。介入前後における結果は、患者の人口統計学的要因の違い、複数の催眠鎮静薬の処方、合併症の記録について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・薬剤師の介入により、97例の患者の25%が催眠鎮静薬を中止した。・複数の催眠鎮静薬を投与されている患者数は、介入後のほうが介入前よりも有意に少なかった(15例 vs.34例、p=0.0026)。・合併症の発生率は、介入前後で有意な差は認められなかった(過鎮静:p=0.835、転倒:p=0.185、せん妄:p=0.697)。 著者らは「救命救急を除く入院患者において、催眠鎮静薬の使用は広まっている。また、多くの患者が複数の催眠鎮静薬を服用している可能性もあり、潜在的な問題が蓄積する可能性がある。薬剤師介入により、催眠鎮静薬を処方されている入院患者の25%が使用を中止し、複数の催眠鎮静薬使用患者も有意に減少した。入院患者に対する不必要な催眠鎮静薬の使用を避け、薬剤師によるモニタリングが最適化されるよう、さらなる努力を行うべきである」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデートメラトニン使用でベンゾジアゼピンを簡単に中止できるのか

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子供がいる米国女医、職場内差別を経験/BMJ

 米国・カリフォルニア大学のMeghan C. Halley氏らが実施した大規模な質的研究の結果、子供を持つ女性医師は、母親ゆえに、頻繁で持続的な、時には露骨な差別を経験していることが明らかになった。そうした母親差別の経験は、他の専門職の女性らの報告と合致する一方で、医師研修に特有の側面もあること、また母親差別を助長する同僚(medical profession)が存在することも示唆されたという。先行研究で、女性医師の3分の2以上が性的な差別を、また女性臨床研究医の3分の1はセクシャルハラスメントを経験しているという報告はあったが、母親ゆえの差別あるいはその後の医師としてのキャリアへの影響に関するデータは限られていた。今回の結果を受けて著者は、「医学・医療分野における母親差別の影響を緩和するためには、出産・育児休暇、保育への取り組みの構造的な変化が必要である」と見解を述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。Facebookグループで調査、差別の経験についての回答を自由記述形式で 研究グループは、子供がいるために受けた差別の経験を自身の言葉で報告することを目的に、米国の子供を持つ女性医師のオンラインコミュニティであるFacebookグループ「Physician Moms Group」において、子供を持つ女性医師の健康と福祉に関するオンライン調査を行った。 調査期間は2016年6月17日~8月末で、調査を完遂した参加者は計5,782人であった。同調査では、人口統計学的情報、身体的健康、リプロダクティブ・ヘルス、差別の経験、職場の変更の可能性、および燃え尽き症候群などに関する質問が含まれた。差別に関しては、「職場で次のような差別を経験したことがありますか(当てはまるものをすべて選択してください)」という質問に続き、経験を自由記述式で回答してもらった。研究グループは今回、この回答で得られた自由記述を分析した。報酬の不平等、昇進機会の制限など、さまざまな差別が明らかに 差別に関する自由記述は1,009人から得られ、3人の分析者がグラウンデッド・セオリー法を用いてデータを定性分析した。最終分析には、女性または母親ゆえの差別とは無関係の記述(62例)を除く947人の記述が含まれた。 参加者は、母親ゆえのさまざまな差別経験を鮮明に記述していた。特定された重要な問題は、差別意識に基づく仕事への期待(同僚より高いレベルが求められる)、報酬の不平等(同レベルの男性医師より報酬が低く、無償労働が多い)、昇進機会の制限、妊娠中および出産後の支援不足、ワークライフバランスの困難さなどであった。加えて参加者の記述から、母親差別の潜在的ないくつかの構造的誘因が示されるとともに、こうした母親差別は、その医師自身、キャリア、家族、ヘルスケアシステムに影響を及ぼすことが示唆された。 なお、著者は、調査への参加は自主的なもので回答が偏っている可能性があることや、差別によって専門職をすでに辞していた場合は差別感の度合いが過小評価されているといった点で、結果は限定的であると述べている。

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高齢者未治療CLLに対するイブルチニブの有用性~化学免疫療法との比較~(解説:大田雅嗣 氏)-992

 イブルチニブ(ibrutinib:以下IBR)はブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。BTKは非受容体型チロシンキナーゼTecファミリーの1つで、B細胞のアポトーシス制御、B細胞の成熟・分化、活性化、細胞接着や遊走などB細胞の生存に関与し1)、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の細胞表面から核内遺伝子へ増殖シグナルを伝達する。BTK阻害薬はこの増殖シグナルをブロックすることで抗腫瘍効果を発揮する2)。 オハイオ州立大学からの報告(米国、カナダ219施設による共同研究)で、イブルチニブが未治療高齢者CLLに有用であることを従来の化学免疫療法と比較した第III相試験の結果としてNEJM誌に12月1日発表した3)。イブルチニブは2016年、未治療CLLの治療薬として米国FDAが認可したが、わが国では2016年5月、再発・難治性CLLに対する薬剤として薬価収載、その後2018年7月に未治療CLLに対しても保険適用となった。 従来欧米では65歳以上の高齢者CLLの治療として、chlorambucilとオビヌツズマブとの併用療法、あるいはベンダムスチン(B)とリツキシマブ(R)との併用が有用であるとされてきた。一方IBRに関しては治療抵抗性CLLでの有効性(無増悪生存期間PFSの中央値52ヵ月)4)、CLL初期治療で奏効例での2年PFSの割合が89%であったこと5)、初発CLLでchlorambucilとの比較試験での有用性6)が明らかになっているものの、これまでIBR単剤と化学免疫療法との比較はなされていなかった。またIBRにリツキシマブを加えた場合の上乗せ効果も議論となっており7)、今回の比較試験が組まれた。 2013年12月~2016年5月に新たに診断された65歳以上の未治療CLL 547例をB+R、IBR単独、IBR+Rの3群にランダムに1:1:1に割り付け、エンドポイントとして無増悪生存期間PFS、全生存期間OSを評価、また血液毒性、非血液毒性につき解析した。PFSはB+R群のみ中央値38ヵ月に達し、IRB、IBR+R群は中央値に達せず、2年推定PFSはB+R群で79%、IBR 87%、IBR+R 88%で、B+R群で有意に劣ったものの、IBR単独群とIBR+R群では有意差を認めなかった。2年OSでは3群間に有意差を認めなかった。Grade3以上の血液毒性はB+R群で高率であったものの、Grade3以上の非血液毒性はIBRあるいはIBR+R群で多かった。とくに発熱性好中球減少症、高血圧が有意に高率であった。30日以内の早期死亡もIBRあるいはIBR+R群で多かった。結論は治療効果の有用性でIBRあるいはIBR+R群が優っていたが、リツキシマブの上乗せ効果はみられなかったとされた。さらに予後不良因子とされているdel(17p)、del(11q)症例でのサブ解析でも、IBRあるいはIBR+R群でのPFSの優位性が示された。しかしながら観察期間がまだ短く、治療研究全体の評価のためには長期のフォローが必要と考えられた。 わが国では初発CLLに対してはフルダラビン(F)単独、F+エンドキサン、B単独、IBR単独療法が保険適用となっている。Rの併用はSLLでは可能である。欧米で通常用いられているchlorambucilはわが国では長らく未承認薬であり、分子標的薬である抗CD20抗体オファツムマブ、抗CD25抗体アレムツズマブも再発・難治例に使用が制限されている。日本におけるいわゆる“drug lag”の問題は解決していくべきだが、わが国では発症頻度が低く高齢者に多いCLLにおいて、いかに手持ちの治療薬を効果的に使っていくか検討すべき課題は多い。 余談だがIBRがマウス虚血脳モデルで、好中球のカスパーゼ-1活性化を媒介するインフラマソームの活性化を阻害することがわかり、虚血性脳梗塞の分子標的治療薬となりうることが示されており8)、BTK阻害薬のターゲットの多様性について注目していきたい。■参考文献1)Maas A, et al. Dev Immunol. 2001;8:171-181.2)Woyach JA, et al. Blood 2014;123:1207-1213.3)Woyach JA, et al. N Engl J Med. 2018;379:2517-2528.4)O'Brien S, et al. Blood 2018;131:1910-1919.5)Barr PM, et al. Haematologica 2018;103:1502-1510.6)Burger JA, et al. N Engl J Med. 2015;373:2425-2437.7)Burger JA, et al. Blood. 2018 Dec 7. [Epub ahead of print]8)Ito M, et al. Nat Commun. 2015;6:7360.

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心房細動は待つのではなく見つけに行く時代(解説:矢崎義直 氏)-993

 心房細動は最もメジャーな不整脈の1つであるが、無治療だと塞栓症のリスクが高く、とくに心原性脳梗塞は重症化し死亡率も高い。心房細動を早期に診断し、適切な抗凝固療法を行うことが重要であるが、症状のない心房細動も多く、定期的な通常の心電図検査では検出が困難なこともある。そこで、心房細動のスクリーニングとして長時間の心電図モニタリングが可能なシステムの開発が進んでいる。 mSToPS試験(mHealth Screening to Prevent Strokes trial)は自己装着型の2週間記録可能なパッチ型心電計を使用し、心房細動の新規検出率を検討した。対象は年齢が75歳以上、もしくは高血圧や糖尿病などのリスクを1つ以上持った55歳以上の男性か65歳以上の女性とし、過去に心房性不整脈の既往があれば除外した。被験者の募集はAetnaやMedicareなどの医療保険システムに登録されている対象者に、郵便もしくはeメールで試験参加を勧誘した。オンラインで同意が得られれば試験に登録され、患者データなどはネット経由で得るという、登録が完全にデジタル化された新しい試みと言える。この方法により、通常の治験登録よりも登録時間を短縮でき、コストも抑えられ、普段治験とは疎遠なpopulationにもアプローチでき、よりリアルワールドに近い対象を選出できるという利点がある。 最終的に2,659例(平均年齢72.4歳、38.6%が女性)が選出され、パッチ型心電計を早期に装着する群(先行開始群)と4ヵ月遅らせて装着する群(遅延開始群)に無作為に割付をした。登録後4ヵ月の時点では、先行開始群が遅延開始群と比較し、心房細動の検出率が有意に高かった(3.9% vs.0.9%、絶対差:3.0%、95%信頼区間:1.8~4.1%)。また、この先行開始群と遅延開始群を合わせた症例の中で合計30分以上パッチ型心電計を使用し、解析ができた1,738例(全体の65.4%)を1年間フォローした。これらとマッチさせたコホート群3,476例と心房細動の検出率を比較しところ、パッチ型心電計使用群の方が、心房細動を多く検出した(6.7/100人年 vs.2.6/100人年、絶対差:4.1、95%信頼区間:3.9~4.2)。そのほか、パッチ型心電計使用群で抗凝固薬開始率、循環器科外来受診率が高かったが、心房細動による救急外来受診や入院率に差はなかった。 本試験の結論として、パッチ型心電計は心房細動発症のハイリスク群において、心房細動の検出に有用である事が示された。このように今後、長時間心電図モニタリングにより早期の心房細動の診断が可能となり、適切な治療が行われれば、脳梗塞や死亡率の減少など、clinical outcomeの改善も期待される。 一方、長時間心電図モニタリングにはまだ課題も残されている。1つは、心電計の装着率の問題である。本試験中にパッチ型心電計を少しも使用しなかった症例が917例、全体の34.5%に及ぶ。また心電計を装着した症例のうち40例がパッチによる皮膚炎を起こし、うち32例が装着中止を余儀なくされている。モニタリング期間は長ければ長いほど、当然心房細動の検出率は上がってくるが、アドヒアランスの問題も念頭に置かなければならない。 また、本試験では、長時間のモニタリングのおかげで、通常の心電図検査では到底捉えることのできなかったであろう短い持続時間の心房細動が多く検出されている。何分以上、もしくは何時間以上持続した心房細動を塞栓症のリスクと考えるかまだ明確な答えはない。 このように長時間心電図モニタリングならではの課題もあるが、その症例の塞栓症のリスク、出血のリスク、年齢、心房細動の持続時間を考慮し、抗凝固療法の適応を決める必要がある。

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第4回 痛みの強さの測定法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第4回 痛みの強さの測定法痛みは第5のバイタルサインと呼ばれています。そのために、患者さんを診察するうえで痛みについての関心が高まってきておりますが、痛みは患者さん自身にしかわからない主観的な感覚であるために、それを科学的に研究する対象とはなりにくかったと思われます。その一方で、痛みは病気の兆候として最も多く、誰もが苦しむ原因となっています。「痛みはない」と患者さんがおっしゃれば、それでよろしいと思われますが、痛みが存在する場合には、その強さの程度を測定することは、痛みを治療するためにも重要な検査となります。今回は、現在用いられている「痛みの強さの測定法」についてお話しします。痛みの強さを測る代表スケール1)視覚的評価スケール(Visual Analogue Scale:VAS)従来、臨床の場で広く使用されている評価尺度です。100mmの直線上に、左端(0mm)を「痛みなし」、右端(100mm)を「想像できる最高の痛み」あるいは「今まで経験した最大の痛み」として、患者さん自身に現在の痛みがその直線の上でどの位置にあるかをチェックしてもらう測定法です。痛みの強さを左端からの長さ(mm)で表示します。画像を拡大する2)顔表現的評価スケール(Face Pain Rating Scale:FRS)VASに比較して小児や高齢者にとって、わかりやすく痛みの強さを示すことが期待できます。「0:痛みのない顔」から「5:我慢ができない流涙の顔」までの5ないし6段階の顔の苦痛表現を用いて、患者さんに自分の痛みの程度に相当する表情の顔を指し示してもらう測定法です。3歳から判定できると考えられています。もちろん顔と顔の間は、患者さんに想像していただかなくてはなりません。画像を拡大する3)数値的評価スケール(Numerical Rating Scale:NRS)痛みの強さを0~10までの11段階で表し、0は「痛みなし」、10は「これ以上ない痛み」として、現在の痛みの強さを数値で記載する測定法です。VASに比較して数値が明確なので、患者さんにもわかりやすいようです。画像を拡大する4)口頭式評価スケール(Verbal Rating Scale:VRS)「1:痛くない、2:すこし痛い、3:痛い、4:すごく痛い」というように、数段階の痛みの強さを表す言葉を用いて患者さんに示してもらう測定法です。VRSは、患者さんにとっても理解しやすく、おおまかな変化を知るうえで有用です。画像を拡大する5)カラード・フェイス・ビジュアル・アナログ・スケール(Colored Face Visual Analogue Scale)痛みの程度を色で表し、顔の変化も加えています。暖かい色は比較的楽な状態で、青い色は痛みが強くなり顔も厳しくなります。また、0mmはこれから痛みが始まる顔です。したがって、そこに至るまで痛みを感じない状態ですので、もっと笑顔が見られてもよいと思います。画像を拡大する6)フェイス・ビジュアル・アナログ・スケール(Faced Visual Analogue Scale)FRSとVASを組み合わせて、裏面にVASに変換しやすいようにセッティングした測定器です。とくに、高齢者に使いやすいと考えられています。画像を拡大する7)マクギル痛みの簡易質問表(Short Form of McGill Pain Questionnaire)痛みの程度もさることながら、その性質を質問するツールです。画像を拡大する痛みを測定して患者さん間で比較する前述のこれらの痛みの評価方法は、同一患者さん自身での経時的変化や治療効果の判定に対しては威力を発揮してきましたが、患者さんの間での比較は不可能です。それに対しては、患者さんの間で比較できるような装置が使用されています。・知覚・痛覚定量分析装置(Pain VisionTM)患者さんが感じている痛みを、痛みを伴わない異種感覚に置き換えて定量的に評価する装置です。現在、臨床使用ができます。画像を拡大するこれによって、痛みの程度を患者さんの間で比較評価できる可能性が高まりました。痛みを発生させないようなAβおよびAδ線維をパルス状電流波(低周波電流、50Hz、0~150μA、パルス幅0.5ms)を用いて皮膚の刺激量を増大させながら、患者さんが電気刺激を最初に感じた値を「最小感知電流」と定義します。また、患者さんが有する痛みと一致した感覚刺激の大きさになった電流値を「痛み対応電流」と定義します。それらの2点値から痛み度を算出します。痛み度=100×(痛み対応電流-最小感知電流)/最小感知電流下図は痛みの程度(痛み度)を測定しているところです。画像を拡大するVAS値と痛み度の変化は相関していますが、同じVAS値において痛み度が同様とは限らず、患者さんによって、さまざまな痛み度を呈しています。VASは、他の患者さんとの比較はできないですが、痛み度においては、他の患者さんとの比較ができます。VAS値が高く、激痛を訴えている患者さんでも意外と痛み度は低く、患者さんが思っているほどでもないことがわかると、患者さん自身も安心することがあります。逆にVAS値が低くても、痛み度が高く、痛みに対する我慢度が高い患者さんも存在します。また、疾患別に痛み度の強さが異なるのか、痛みの表現によって痛み度が異なるのか、治療法によって痛み度の低下に差異があるのか、性差があるのかなど、さらなる検討が必要です。それによって、痛み度に関して臨床への応用度が今後高まるものと考えられます。以上のいずれの測定法でも痛みの程度が観察できます。日常診療のときに、痛みの有無、痛みの程度が測定されることを望んでおります。次回は「全身痛」について解説する予定です。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:10-13.

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高齢入院患者におけるせん妄と抗コリン薬に関する観察研究

 せん妄は、高齢入院患者において平均5人に1人が発症する神経精神症候群であり、認知および機能の悪化、患者および介護者の負担増加、死亡率の上昇を含む多くの悪影響と関連している。抗コリン作用を有する薬物療法は、高齢入院患者におけるせん妄症状の臨床的重症度と関連しているといわれるが、この関連性はまだよくわかっていない。イタリア・Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario Negri IRCCSのLuca Pasina氏らは、累積抗コリン作用性負荷がせん妄リスクを増加させるという仮説を検証するため、せん妄と抗コリン作用性負荷との関連性を評価した。Drugs & Aging誌オンライン版2018年11月27日号の報告。 2014年6月~2015年1月までにイタリア・モンツァのSan Gerardo Hospitalの急性期高齢者病棟(Acute Geriatric Unit:AGU)に入院した高齢者を対象に、レトロスペクティブ横断研究を実施した。せん妄の診断は、良好な感度や特異性を示す有効なスクリーニングツールである4'A'sテスト(4AT)を用いて入院時に行った。各患者における抗コリン作用性負荷は、高齢患者の中枢神経系への悪影響リスクを予測する、抗コリン薬のランク付けであるAnticholinergic Cognitive Burden(ACB)スケールで測定した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の477例中、151例(31.7%)がせん妄を有していた。・ACBスケールでは、377例(79.0%)が1剤以上の抗コリン薬を使用していた。・強力な抗コリン作用を有するクエチアピンを除いて、最も一般的に用いられる抗コリン薬は、潜在的に抗コリン作用を有するが、ACBスケール(スコア1)においては、臨床的に関連する認知機能への影響は不明であった。・せん妄を有する患者では、非せん妄患者と比較し、抗コリン作用性負荷が高く、単変量解析で有意であった総ACBスコアとせん妄との間に用量効果関係が認められた。・定常リスクはスコア0~2の患者で認められたが、スコア3以上の患者では、抗コリン薬未使用患者よりも、せん妄リスクは約3~6倍高かった。・用量反応関係は、年齢および性別で調整された多変量モデルで維持されたが(オッズ比[OR]:5.88、95%信頼区間[CI]:2.10~16.60、p=0.00007)、認知症およびMini Nutritional Assessmentで調整されたモデルでは、有意な差は認められなかった(OR:2.73、95%CI:0.85~8.77、p=0.12)。 著者らは「抗コリン薬は、抗ムスカリン作用を有する複数の薬物療法の累積効果によって、せん妄の発症に影響を及ぼす可能性がある。しかしこの影響は、認知症および栄養不良で調整後、多変量ロジスティック回帰分析では明らかな差が認められなかった。認知症および栄養不良を含む高齢入院患者において、抗コリン作用性負荷とせん妄との関連を明らかにするためには、より大規模な多施設共同研究が必要とされる」としている。■関連記事長期抗コリン薬使用、認知症リスク増加が明らかに注意が必要、高齢者への抗コリン作用認知症における抗コリン薬負荷と脳卒中や死亡リスクとの関連

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英外食チェーン、推奨エネルギー量の料理は9%のみ/BMJ

 英国の主要外食チェーンで提供される主な食事のうち、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量が600kcal以下の食事はわずか9%である一方、47%に及ぶかなり多くの食事が1,000kcal以上とエネルギー量が過度であることが明らかになった。英国・リバプール大学のEric Robinson氏らが、英国の外食チェーン27社の食事を調査した結果で、著者は「ファストフード店の食事の栄養価は不十分だがきちんと表示はされている。一方で、英国のフルサービスで提供するレストランの食事のエネルギー量は過度な傾向がみられ、懸念の元である」と述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。レストラン21社とファストフード6社を調査 研究グループは、英国の主要外食チェーン27社を対象に、主な食事1万3,396種のエネルギー量を調査した。調査対象とした外食チェーンのうち、21社がフルサービスレストラン、6社がファストフード店を展開していた。 主要評価項目は、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量600kcal以下の食事の割合と、1,000kcal以上と過度なエネルギー量の食事の割合だった。レストランの食事のほうがファストフードより平均268kcal高い 計1万3,396種の食事の平均エネルギー量は、977kcal(95%信頼区間[CI]:973~983)だった。 英国公衆衛生局の推奨エネルギー量600kcal以下の食事の割合は9%(1,226種)だったが、1,000kcal以上のエネルギー量過多な食事の割合は47%(6,251種)とかなり多かった。 また、ファストフード店に比べてフルサービスレストランの食事は、エネルギー量が有意に過度であり、その差は平均268kcal(95%CI:103~433)だった。

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リナグリプチンのCARMELINA試験を通して血糖降下薬の非劣性試験を再考する(解説:住谷哲氏)-991

 eGFRの低下を伴う腎機能異常を合併した2型糖尿病患者における血糖降下薬の選択は、日常臨床で頭を悩ます問題の1つである。血糖降下薬の多くは腎排泄型であるため腎機能に応じて投与量の調節が必要となる。DPP-4阻害薬の1つであるリナグリプチンは数少ない胆汁排泄型の薬剤であり、腎機能に応じた投与量の調節が不要であるため腎機能異常を合併した患者に投与されることが多い。 これまでにDPP-4阻害薬の安全性を評価した心血管アウトカム試験CVOTでは、サキサグリプチンのSAVOR-TIMI 53、アログリプチンのEXAMINE、シタグリプチンのTECOSが発表されている。リナグリプチンの安全性を評価した本試験の報告により、DPP-4阻害薬の安全性を評価したすべてのCVOTが出そろったことになる。本試験の最大の特徴は、リナグリプチンが胆汁排泄型であることに基づいて、これまで報告されたCVOTの中で最多の腎機能異常合併2型糖尿病患者を組み入れた点にある。 6,979例がエントリーされたが、その半数以上がeGFR<60mL/min/1.73m2であり、eGFR<30mL/min/1.73m2の患者も約15%含まれていた。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中からなる3-point MACEであったが、副次評価項目にはESRDへの移行、腎関連死、ベースラインから40%以上のeGFRの低下の持続からなる腎複合エンドポイントが含まれている。中央値2.2年の観察期間において、プラセボ群の3-point MACE発症率は5.63/100人年であり、これまで実施されたCVOTの中で最も高リスクであった。このことは腎機能異常合併2型糖尿病患者の心血管リスクがきわめて高いことを示している。既報のDPP-4阻害薬のCVOTと同様に、主要評価項目ではプラセボ群に対する非劣性が証明されたが優越性は証明されなかった。期待された腎複合エンドポイントでも優越性は証明されなかった。多くの探索的アウトカムexploratory outcomeの中でプラセボ群と有意差を認めたのはアルブミン尿の進展HR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)、複合細小血管エンドポイントHR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)のみであった。重症低血糖の頻度もプラセボ群との間に有意差を認めなかった。また観察期間中のHbA1cはリナグリプチン群で0.36%有意に低下した。 本試験も含めて既報のCVOTはすべて非劣性試験non-inferiority trialであり、その結果をどのように解釈して日常臨床に適用すればよいのだろうか? 確かにすべての非劣性試験は製薬企業が新たな薬剤を販売するための臨床試験であり、われわれ臨床家にとっても患者にとってもメリットはないとの指摘にも一理ある1)。非劣性試験で証明されるのは、対象である新たな血糖降下薬(試験薬)が既存の血糖降下薬と比較して3-point MACEなどの心血管イベントを非劣性マージン(多くはハザード比の95%信頼区間の上限が1.3に設定される)を超えて増加させないことのみである。これをクリアすればその試験薬は「安全な血糖降下薬」としてのお墨付きを当局から得られる。つまり心血管イベントを29%増加させる可能性があっても血糖降下薬としては許容されることになる(この点については議論があるが本稿では割愛する)。そうであれば何も高価な新薬(試験薬)を使う必要はなく、プラセボ群で使用された従来の安価な血糖降下薬を使えばよいではないか、との反論も当然あるだろう。 血糖降下薬を投与する目的は心血管イベントなどの真のアウトカムを改善することにあり、HbA1cなどはあくまで代用のアウトカムsurrogate outcomeである。HbA1cを低下させれば腎症を含めた細小血管障害リスクが低下することはこれまでに証明されている。つまり将来の細小血管障害リスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは正当化される。本試験においてリナグリプチンは代用のアウトカムであるHbA1cと、同じく代用のアウトカムである尿アルブミンを有意に減少させたが、これはHbA1cの低下による可能性が高い。一方、心血管イベントについては、RCTのメタ解析によると厳格な血糖管理により非致死性心筋梗塞を含めた冠動脈疾患は減少するが、脳卒中、全死亡は減少しないと報告されている2)。つまり将来の心血管イベントリスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは、細小血管障害の場合と同じ程度に正当化されるとは言い難い。 CVOTでは、血糖降下作用とは独立した心血管イベントリスクの上昇の有無を検証するために、試験デザインとしてプラセボ群と試験薬群とのglycemic equipoise(血糖コントロールつまりHbA1cが両群で試験期間中に同等であること)が要求されている。しかし本試験も含めた既報のすべてのCVOTにおいては試験薬群のHbA1cが有意に低下している。この点について、プラセボ群で血糖管理が強化されなかったのは倫理的に問題であるとの意見もあるが、筆者の見解は少しく異なる。実際にはCVOTに組み入れられたようなきわめて心血管イベント高リスクの患者で、かつ、すでに複数の血糖降下薬を併用してHbA1cが8.0%程度の患者において、インスリンを増量、SU薬を増量、他の血糖降下薬を追加することはACCORDの結果が報告されて以降、容易ではないのが現実ではないだろうか。血糖降下薬を増量、追加して血糖管理を強化するbenefitとharmを天秤に掛けると、clinical inertiaとの批判もあるが、現状維持を選択する判断になることが多い。さらに本試験に組み入れられたような腎機能異常を合併した患者においては、より一層その傾向が顕著である。つまりプラセボ群では血糖管理を強化しなかったのではなく、従来の血糖降下薬では強化できなかったのが事実に近いだろう。言い方を変えれば、試験薬により血糖管理を少しではあるが強化できたと言ってよい。そのような条件下においても、リナグリプチンが心血管イベントリスクを増加させずに血糖降下作用を発揮できることは本試験において証明されたと考えてよい。 非劣性試験は前述したように、患者にとって真のアウトカムの改善をもたらす薬剤を生み出す試験ではない。CVOTにおいて優越性を示した血糖降下薬はこれまでに複数存在するが、特殊な対象患者群、短い観察期間を考えるとすべての2型糖尿病患者にbenefitをもたらすかは不明である。今後はCVOTで優越性を示した薬剤を用いて、幅広い患者群に対する長期間の優越性試験superiority trialが実施されることを期待したい3)。

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職場におけるうつ病予防のための心理学的および教育的介入効果~メタ解析

 うつ病予防に対する心理学的および教育的介入は、小~中程度の効果があるといわれている。しかし、職場における効果については、あまり知られていない。スペイン・マラガ大学のJuan Angel Bellon氏らは、職場におけるうつ病予防のための心理学的および教育的介入効果を評価するため、無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。Scandinavian Journal of Work, environment & health誌オンライン版2018年11月30日号の報告。 PubMed、PsycINFO、EMBASE、CENTRAL、CIS-DOC、Open Greyより検索を行った。引用文献リストに記載された、関連するメタ解析および試験も検索対象とした。うつ病の発症率または抑うつ症状の軽減のいずれかを評価したRCTを抽出し、ベースライン時のうつ病患者は除外した。職場で募集された対象者に対し、検証された機器を用いて測定を行った試験を対象とした。独立した評価者により、試験の選択、リスクバイアス評価(Cochrane Collaboration's tool)、RCT抽出が行われた。固定効果モデルを用いて複合オッズ比(OR)を推定し、異質性はI2統計量およびCochrane's Qで評価した。 主な結果は以下のとおり。・1,963件のアブストラクトをレビューし、69件の全文レビューを行った。・基準を満たしたRCTは3件のみで、対象者は3つの国と大陸からの労働者1,246例であった。・複合ORは0.25(95%信頼区間[CI]:0.11~0.60、p=0.002)、I2=0%、Q=0.389(p=0.823)であった。・バイアスリスクは、1件は低、2件は中~高であった。 著者らは「職場における心理学的および教育的介入は、エビデンスの質は低いものの、うつ病を予防する可能性がある」としている。■関連記事職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

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アトピー性皮膚炎にtapinarofクリームは有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対する安全かつ有効な局所治療が必要とされている。米国・PRA Health SciencesのJohnny Peppers氏らは、青年期および成人のADに対しtapinarof(GSK2894512 cream)は有効で忍容性が良好であることを、第II相無作為化用量設定試験で明らかにした。著者は、「大規模な臨床試験で確認する必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2019年1月号(オンライン版2018年7月3日号)掲載の報告。 研究グループはADに対し、tapinarofクリームの安全性と有効性を評価する目的で、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。対象は、ベースライン時に体表面積の5~35%において、医師による全般評価(IGA)スコアが3以上(中等度~重度)のAD病変を有する12~65歳の患者であった。患者は無作為化され、tapinarof 0.5%濃度、tapinarof 1%濃度、プラセボをそれぞれ1日1回もしくは2回投与する6群に均等に割り付けられた。 主要評価項目は、投与12週時のIGAスコアが0または1(皮膚病変が消失またはほぼ消失)および2段階以上改善(治療成功)した患者の割合とした。副次評価項目は、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアが75%以上改善した患者の割合、痒みに対するnumeric rating scale(NRS)スコアのベースラインからの減少などであった。 主な結果は以下のとおり。・12週時の治療成功率は、tapinarof 1%群では53%(1日2回投与)および46%(1日1回投与)、tapinarof 0.5%群では37%および34%、プラセボ群では24%および28%であった。・1日2回投与集団の治療成功率は、tapinarof 1%群(53%)がプラセボ投与群(24%)より統計学的に有意に高かった。・治療が成功した患者では、tapinarofの投与終了後、4週間にわたって改善状態が持続した。・治療下で発現した有害事象は、プラセボ群(41%、34/82例)よりtapinarof群(56%、93/165例)で多かった。有害事象の程度は、いずれも軽度~中等度であった。

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mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。mFOLFIRINOX群に247例、GEM群に246例を割り付け 研究グループは、膵がん切除例において、術後補助療法としてのmFOLFIRINOXレジメンの有効性と安全性をGEMと比較する非盲検無作為化第III相試験を行った(R&D Unicancerなどの助成による)。 mFOLFIRINOXレジメンは、従来のFOLFIRINOXレジメンに含まれるフルオロウラシルのボーラス投与を行わないことで、血液毒性や下痢の発生を抑制し、重症度の軽減を図るもので、進行膵がんでは治療効果は低下しないことが確認されている。 対象は、年齢18~79歳、組織学的に膵管腺がんが確認され、割り付けの3~12ヵ月前に肉眼的完全切除術(R0:すべての切除断端から1mm以内にがん細胞がない、R1:1つ以上の切除断端から1mm以内にがん細胞がある)を受け、転移病変や悪性腹水、胸水のエビデンスがない患者であった。 被験者は、mFOLFIRINOX群(オキサリプラチン[85mg/m2体表面積]、イリノテカン[180mg/m2、プロトコールで規定された安全性解析後は150mg/m2に減量]、ロイコボリン[400mg/m2]、フルオロウラシル[2,400mg/m2]を、2週ごとに12サイクル投与)またはGEM群(4週を1サイクルとし、1、8、15日目に1,000mg/m2を静脈内投与、6サイクル)に無作為に割り付けられ、24週の治療が行われた。 主要エンドポイントは無病生存期間(割り付け日から初回がん関連イベント、2次がん、全死因死亡までの期間)とし、副次エンドポイントには全生存期間、安全性などが含まれた。 2012年4月~2016年10月の期間に、フランスの58施設とカナダの19施設で493例が登録され、mFOLFIRINOX群に247例、GEM群には246例が割り付けられた。mFOLFIRINOX群で無病生存期間が8.8ヵ月、全生存期間は19.4ヵ月延長 ベースラインの年齢中央値は、mFOLFIRINOX群が63歳(範囲:30~79)、GEM群は64歳(30~81)、男性がそれぞれ57.5%、54.9%であった。リンパ管浸潤(73.7% vs. 63.1%、p=0.02)を除き、人口統計学データや疾患特性に差はなかった。治療期間中央値は、mFOLFIRINOX群が24.6週、GEM群は24.0週だった。 フォローアップ期間中央値は33.6ヵ月であった。無病生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群が21.6ヵ月と、GEM群の12.8ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.73、p<0.001)。3年無病生存率は、それぞれ39.7%、21.4%であった。イリノテカンの減量は無病生存期間に影響しなかった(p=0.87)。 全生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群は54.4ヵ月であり、GEM群の35.0ヵ月に比し有意に良好であった(層別化HR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)。3年全生存率は、それぞれ63.4%、48.6%だった。 mFOLFIRINOX群は、無転移生存期間(割り付け日から初回遠隔転移または死亡までの期間、30.4ヵ月vs.17.7ヵ月、p<0.001)およびがん特異的生存期間(割り付け日から治療対象がんまたは治療関連合併症による死亡までの期間、未到達vs.36.4ヵ月、p=0.003)も有意に優れた。 Grade3/4の有害事象は、mFOLFIRINOX群が75.9%、GEM群は52.9%で発現した。血液毒性の発現には両群間に差はないものの、好中球減少/発熱性好中球減少へのG-CSFの投与がmFOLFIRINOX群で多く(62.2% vs.3.7%、p<0.001)、非血液毒性の多く(疲労、下痢、悪心、腹痛、嘔吐、感覚性末梢神経障害、異常感覚、粘膜炎)がmFOLFIRINOX群で有意に発現率が高かった。GEM群の1例が治療関連毒性(間質性肺炎)により死亡した。 著者は、「予想どおりmFOLFIRINOXの安全性プロファイルはGEMに比べ不良であったが、管理可能だった。フルオロウラシルのボーラス投与の非施行(およびイリノテカンの減量)により、Grade3/4の好中球減少は既報(PRODIGE試験)のFOLFIRINOXの46%から、本試験では28%に減少した」としている。

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SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患を合併した2型糖尿病には有用かもしれないが日本人では?(解説:桑島巖氏)-988

 今、2型糖尿病の新規治療薬SGLT2阻害薬の評価が医師の間で大きく分かれている。一方は積極的に処方すべしという循環器科医師たち、もう一方は慎重であるべきという糖尿病治療の専門医師たちである。 自らの専門の立場によって分かれる理由は、このレビューを読み込むとよくわかる。そして一般臨床医は個々の症例にどのように処方すべきか、あるいは処方すべきでないかが理解できる内容である。 このレビューはSGLT2阻害薬に関して、これまでに発表された3つの大規模臨床試験、EMPA-REG、CANVAS Program、DECLARE-TIMI58を結果について独立した立場から俯瞰し、レビューした論文である。 総じて、SGLT2阻害薬は動脈硬化疾患既往例における心血管イベント抑制には効果が期待でき、とくに心不全や腎疾患例では動脈硬化疾患の有無にかかわらず、再入院予防や末期腎不全への進展予防に有用である可能性が示されている。 しかし半面、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化性疾患の既往のない例では、心血管イベントや心血管死の予防には有用性が認められないことも明らかにしている。 3つのトライアルには、以下のような違いがある。1.EMPA-REG試験は動脈硬化性疾患(脳卒中や虚血性心疾患)既往例が100%を占めているのに対して、DECLAREは40.6%にすぎない。このバックグラウンドの違いは結果に大きく影響している。2.そして、EMPA-REG試験では動脈硬化性疾患既往での心不全入院、心血管死予防における効果がDECLARE試験よりも2倍も大きい。3.EMPA-REG試験とCANVAS試験では動脈硬化疾患既往例のMACE(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)予防効果は認められたのに対して、DECLARE試験では認められなかった。 上記3項目は各々の試験の対象バックグラウンドの違いと、後で述べる用量の違い*がこの結果に影響していると思われる。4.心不全入院、心血管死予防効果は、EMPA-REG試験では、心不全既往のない例で顕著だったが、心不全既往例では認められなかった。一方、DECLARE試験では心不全既往のあるなしにかかわらず予防効果はあってもわずかである。5.腎機能障害例での心不全入院予防効果はEMPA-REG試験とCANVAS試験では認められたが、DECLARE試験ではみられなかった。6.AMPUTATIONと骨折のリスク増加はCANVAS(カナグリフロジン)のみにみられ、他の2剤ではみられなかった。共通点1.動脈硬化疾患既往を有さない2型糖尿病では、いずれの薬剤もMACEの予防効果や心不全入院、心血管死の抑制効果はなかった。つまり再発予防にのみ有用であって、脳卒中や心筋梗塞既往のない例でのMACE予防にはあまり効果は期待できない。2.動脈硬化疾患既往例での腎機能悪化予防と腎臓死抑制効果は3剤とも非常に大きい。心不全入院予防と腎不全悪化予防効果は、心不全や腎不全の既往にかかわらず3剤とも認められる傾向がある。3.心不全入院、腎不全の悪化予防効果の機序としては、HbA1c低下作用は、いずれのSGLT2阻害薬もプラセボ群との間の差が0.4~0.6%にすぎないことから、血糖抑制作用よりも、SGLT2阻害薬が有するナトリウム利尿作用が大きく関与していると思われる。まとめ SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患既往例では、心不全入院と心血管死の予防効果とMACEの発症予防に対して有用性は期待できるが、すべての試験が日本での適用用量でのエビデンスではない。 動脈硬化性疾患既往のない高リスクだけの2型糖尿病例では、有用性は期待できない。このことは、動脈硬化性疾患既往歴が半数以下しか含まれていないDECLARE試験では、MACE予防効果は認められず、心不全入院や心血管死の予防効果も軽度にとどまることから明らかである。*用量についての補足説明 CANVAS試験で用いられた薬剤用量が、わが国の最大適用用量をかなり上回っていることは注意すべきである。すなわち、CANVAS試験ではカナグリフロジン300mg/日まで用いられており、日本で保険収載の最大用量(100mg)を大幅に超えている。

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【GET!ザ・トレンド】脳神経細胞再生を現実にする(5)

「わずかn=61で有意差が出るとは。信じられなかった」。JCHO東京新宿メディカルセンター 脳神経外科 主任部長 今井 英明氏のこの一言でインタビューは始まった。慢性期の外傷性脳損傷(TBI)患者に対する第II相STEMTRA試験で、骨髄由来の間葉系幹細胞から作成した再生細胞薬であるSB623が、運動機能改善に有意な改善を示した。この試験結果がどのようなことを意味するのか、試験開始時からこの治験に関わる今井氏に聞いた。頭部外傷後遺症の問題解決は世の中の要請わが国の慢性期TBIの状況、問題点はどのようなものでしょうか。わが国の頭部外傷受傷者は年間4万人、その3割は退院時に重度障害を後遺していると推測されます。片麻痺、高次脳機能障害、重症の場合は寝たきりとなりますが、慢性期の治療薬はなく、リハビリによる運動機能改善しか手段がありません。とはいえ、わが国では、リハビリテーションをいつまでも受けられるわけではなく、施設や自宅で無治療のまま過ごしている患者さんも少なくないと考えられます。この治験の開始がマスコミで取り上げられた途端に、脳梗塞などの後遺症で苦しむ全国の患者さんからの問い合わせが引きも切らなくなりました。後遺症に苦しむ患者さんがどれだけ多く、これは世の中の要請であると実感しました。この厳しい状況の試験でポジティブな結果が出たのは脅威STEMTRA試験の概要は?STEMTRA試験は、慢性のTBI患者に対するSB623細胞の効果と安全性を評価するため日米で行われた第II相試験です。世界27施設、そのうち日本では5施設で実施され、最終的には世界で61例が登録されました。試験は二重盲検で、定位脳手術でSB623を投与する実薬群に加え、対照群として偽手術群を設定しているエビデンスレベルの高い試験です。わが国では、当時私が在籍していた東京大学において1例目の手術を実施しました。この試験のプロトコールは非常に厳密です。また、盲検性の維持も非常に厳密で、手術に関わる治療者(脳外科医)と評価者は別人です。つまり、患者だけでなく評価者も割り付けを知らず、評価にバイアスがかからない状況なのです。この試験の結果には、どのような意義があるのでしょうか。この試験では、適格基準の範囲内であるものの、傷害部位や重症度なども多様であり、薬の投与部位も治験担当医の裁量に任されている多様性のある集団です。均一なかつ多数の対象でやっても結果が出ない試験が多い中、このようなばらつきの大きい集団で、かつn数の少ない試験で統計学的に有意な結果はまず出ないだろうと、当初は主張していました。しかし、ご存じのとおり、試験結果は有意にポジティブでした。わずか61のn数で、しかもヘテロな集団で有意差が出たのは、驚くべきことです。この厳しい状況を凌駕するほどのパワーが出たということで、夢のようなことが起きたと考えています。STEMTRA試験の概要運動機能障害を伴う慢性期の外傷性脳損傷患者に対するSB623細胞の効果を評価する日米第II相プラセボ対照二重盲検比較試験。対象:受傷後1年以上経過した運動障害を有する外傷性脳損傷患者。GOS-E(The Extended Glasgow Outcome Scale[拡張グラスゴー転帰尺度])3~6(中等度~重度障害)など。試験薬:SB623(それぞれ、2.5×106、5.0×106、10.0×106)を定位脳手術で投与対照:偽手術主要有効性評価項目:Fugl-Meyer Motor Scale4群(偽手術群、SB623 2.5×106群、SB623 5.0×106群、SB623 10.0×106群)に1:1:1:1で無作為割り付け。投与部位と刺入経路は治験担当医の裁量で、運動神経経路の損傷部位に最も近い投与部位を選択。主要有効性評価項目結果:24週時点のFugl-Meyer Motor Scaleのベースラインからの改善量は、SB623投与群の8.7点、コントロール群2.4点で、SB623群で統計学的有意に改善。SB623治療群ではFugl-Meyer Motor Scaleが8.7点改善していますが、どの程度のものなのでしょうか。ワンランク改善するという感覚です。たとえば、車いすでの生活がギリギリできる患者さんが、なんとか杖で歩行可能になる。ドラマのような劇的な変化とは言えませんが、自然経過の中では改善は望めない患者さんに対しての結果であり、患者さんにとっては非常に大きな改善だと言えます。どのようなメカニズムでこの改善効果が表れるのでしょうか。運動機能障害があるということは、運動野の細胞体から伸びる軸索の束、錐体路などと言いますが、そこが傷害されていることです。傷害があった軸索を目標にSB623細胞を移植するのですが、切断された軸索がつながるとは考えられません。あくまで推測ですが、非臨床試験の結果などから考えると、移植細胞が新たな構造を作るのではなく、この細胞から栄養因子(サイトカイン)が分泌され、傷ついた細胞を修復し機能を改善することで、電気信号が正確に筋肉に伝達されるようになった可能性があります。患者さんが「希望を持って生きる」が現実にSTEMTRA試験の結果から、TBIに対する細胞治療は実現に近づいたといえますか。SB623は他家移植細胞なので、ストックして必要時にいつでも使えます。他家移植で問題となる免疫応答もほとんどなく、免疫抑制剤を使用する必要がありません。また、安全性も高く、細胞による副作用も認められていません。今回、バイアスがかからない状況での試験でポジティブな結果が出たという事実は誰も否定できないことだと思います。今後、条件付承認を経て、その後リアルワールドで評価される日も遠くはないでしょう。夢のようなことが現実に迫っていると思います。慢性期TBIをはじめ、脳神経分野の細胞治療には、どのような可能性があるでしょうか。慢性期TBIに関しては、今後の解析から、SB623に対して、効果のある人、効果のある投与部位などが明らかになってくると思います。今回は運動機能の改善を評価していますが、それと連動して、知的機能も上がっていくことが考えられ、高次脳機能障害への発展も十分ありえると思います。また、TBIだけでなく、脳梗塞、脳出血への応用も可能だと思います。大脳白質の軸索障害という病態と考えると、これらの疾患の病態生理に違いはありません。今回のSTEMTRA試験の対象は外傷性ですが、外傷による軸索切断よりむしろ、外傷による血腫で圧迫された虚血傷害の患者さんがほとんどでした。今回の治験で、患者さんが“希望を持って生きる”ということが最も重要だということを勉強させていただきました。今回のこの厳密な第II相試験でのポジティブな結果は、現在の医学では現状維持が精一杯という患者さんにとって、明らかに福音となるのでしょう。“希望を持って生きる”ということが、現実味を帯びてきたと言えます。

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仕事のストレスとベンゾジアゼピン長期使用リスクとの関連

 ストレスを伴う仕事とベンゾジアゼピン長期使用との関連について、フランス・パリ第5大学のGuillaume Airagnes氏らが調査を行った。American Journal of Public Health誌オンライン版2018年11月29日号の報告。 フランスの人口ベースCONSTANCESコホートへ2012~16年に参加した男性1万3,934例、女性1万9,261例を対象に、日々の仕事を調査し、ストレス頻度の評価を行った。ベンゾジアゼピン長期使用は、drug reimbursement administrativeレジストリを用いて検討を行った。ベンゾジアゼピン長期使用のオッズ比(OR)の算出には、性別で層別化し、年齢、教育、地理的剥奪指標(area deprivation index)で調整し、ロジスティック回帰を行った。職業グレード、職場ストレス、うつ病、健康状態自己評価、アルコール使用障害を、追加の層別化変数とした。 主な結果は以下のとおり。・ベンゾジアゼピン長期使用は、ストレス曝露と正の相関が認められた。高ストレス群(しばしば/いつも)vs.低ストレス群(まれに/まったく)のORは、男性で2.2(95%信頼区間[CI]:1.8~2.8)、女性で1.6(95%CI:1.4~1.9)であり、用量依存性が認められた(傾向p<0.001)。・調整後や他の個人的または環境的脆弱性因子を有さないサブグループ解析においても、同様の結果が得られた。 著者らは「ストレスの多い仕事は、ベンゾジアゼピン長期使用リスクを高める。ベンゾジアゼピン長期使用による負荷の低減を目的とした予防プログラムは、このような特定集団において有益であろう」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は重度のストレスやうつ病からの復職に効果的なリハビリはストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性

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肥大型閉塞性心筋症へのアルコール中隔アブレーションの長期成績【Dr.河田pick up】

アルコールによる中隔アブレーションは安全か? 症候性の肥大型閉塞性心筋症(HOCM)患者に対する非薬物療法としては、外科的中隔心筋切除術とアルコールによる中隔アブレーション(経皮的中隔心筋焼灼術;PTSMA)が挙げられる。外科的中隔心筋切除術はPTSMAに比べて成功率が高く、効果が現れるのも早い。一方PTSMAは開心術に比べると低侵襲ではあるが、冠動脈解離、房室ブロックや心室性不整脈を起こす可能性があり、若年者では外科的中隔心筋切除術のほうが好まれる。しかしながら、PTSMA後の長期的な効果や成績に関する報告は少ない。症例数が豊富なドイツのグループから、PTSMA後の長期成績が報告された。Angelika Batzner氏らによるJournal of American College of Cardiology誌12月号掲載の報告。 HOCM患者において、アルコールによる中隔心筋の梗塞が、心疾患による死亡を増やすのではないかと議論されてきた。この研究は、HOCM患者に対してエコーガイド下で行われたPTSMAの長期成績を明らかにする目的で行われた。対象は952例のHOCM患者、大半がNYHAクラスIII~IV 2000年5月から2017年6月までに952例の患者(55.7±14.9歳、男性:59.2%、NYHAクラス III~IV:73.3%、失神:50.3%、突然死の家族歴:10.3%)に対してPTSMAが行われた。臨床症状のフォローが全症例で行われ、平均フォローアップ期間は6.0±5.0年であった。5年後の生存率95.8%、心臓関連イベント非発生率は98.9% 平均で2.1±0.4ccのアルコールが注入され、クレアチニンキナーゼ(CK)の最高値は872±489U/Lであった。2例(0.2%)が術後3日後と33日後に死亡した。100例(10.5%)の患者でペースメーカーが植め込まれた。急性期エコーでの圧格差は、安静時で63.9±38.2 mmHgから33.6±29.8mmHgに減少し、バルサルバ法施行時には104.6±44.0mmHgから56.5±41.0mmHgへ減少した(いずれもp

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