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CABG:内胸動脈グラフトの10年転帰、両側vs.片側/NEJM

 多枝冠動脈病変があり冠動脈バイパス術(CABG)を施行予定の患者において、両側内胸動脈グラフトと片側内胸動脈+静脈グラフトの長期予後を検討した無作為化非盲検試験(Arterial Revascularization Trial:ART)の結果、10年後の全死因死亡率の有意差は認められなかった。英国・ジョン・ラドクリフ病院のDavid P. Taggart氏らが明らかにした。CABG後の生存期間は、動脈グラフトを1本使用するより複数使用することで改善する可能性が示唆されていたが、5年時の中間解析では両群の臨床転帰に有意差は確認されていなかった。NEJM誌2019年1月31日号掲載の報告。7ヵ国28施設で約3,100例を10年追跡 研究グループは2004年6月~2007年12月の間に、7ヵ国28施設においてCABG予定患者を両側内胸動脈グラフト群または片側内胸動脈グラフト群のいずれかに無作為に割り付けた。適応があれば、追加で動脈/静脈グラフトを使用した。 主要評価項目は、10年時の全死因死亡、副次評価項目は全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合で、log-rank法およびCox比例ハザード回帰モデルを用いて解析した。 両側内胸動脈グラフト(両側グラフト)群に1,548例、片側内胸動脈グラフト(片側グラフト)群に1,554例が無作為に割り付けられた。10年時も、主要アウトカムの全死因死亡に有意差なし 両側グラフト群において、13.9%の患者が片側グラフトのみを使用した。一方、片側グラフト群では、21.8%の患者が橈骨動脈グラフトも使用した。2.3%の患者について、10年時の生存状況が不明であった。 intention-to-treat解析において、10年時点で両側グラフト群では315例(20.3%)、片側グラフト群では329例(21.2%)の死亡が確認された(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.12、p=0.62)。死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントに関しては、両側グラフト群で385例(24.9%)、片側グラフト群で425例(27.3%)にいずれかのイベントが発生した(HR:0.90、95%CI:0.79~1.03)。 著者は、両群で差が得られなかった理由として、CABG術後の静脈グラフト失敗が確認された患者が多かったこと、2001年時点では橈骨動脈グラフトの有効性が知られていなかったこと、両側グラフト群の14%が片側グラフト使用に術式変更となったことなどを挙げ、「複数の動脈グラフトを使用するほうが、1本の内胸動脈グラフトを使用するよりも良好な転帰が得られるかどうかについて、今後さらなる検証が必要である」と述べている。

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申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革

 医師の時間外労働規制の方向性について議論する、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会(第18回)」が、2月6日開催された。上限規制がスタートする2024年4月までの5年間の具体的な流れ、現状案に基づく場合の勤務医の働き方の変化(イメージ)、健康確保措置案としての“代償休息”の設定などが事務局から示され、構成員らが議論を進めた。上限は“バイトも含む労働時間”という位置づけ まず前提として、これまでの議論で提示された、原則:月100時間未満・年960時間以下(A)、特例:月100時間未満・年1,900~2,000時間以下(B)という案は、あくまで「臨時的な必要がある場合」に36協定上で規定できる上限時間数であることを整理(一般労働者では[休日労働を含まない形で] 月100時間未満・年720時間以下)。それ以外の平時については、一般労働者同様の数字(月45時間・年360時間)を原則としてはどうか、という事務局案が示された。 なお、これらの労働時間数にはアルバイトの時間も含む、という認識が事務局側から示されている。これに対し、構成員からは「日本の地域医療では、とくに中小の病院はアルバイトの医師が支えている。大学病院勤務の医師のうち、地域でアルバイトしていない医師はほぼおらず、生計を担う側面もある(岡留 健一郎氏、福岡県済生会福岡総合病院 名誉院長)」、「地域の当直医はほぼ大学病院から派遣されている。“時間制限で行けません”となったら成り立たない(山本 修一氏、千葉大学医学部附属病院 院長)」などの指摘が相次ぎ、「労働時間通算の考え方については、改めて整理してから具体案として示していくべきでは(森本 正宏氏、全日本自治団体労働組合総合労働局長)」と慎重な検討を求める声があがった。規制開始までの5年間、何が行われていくのか 特例を認める(B)水準の医療機関をどうやって決めるのかを含め、規制をスタートさせるための前提としての準備期間が非常に重要になる。2024年4月までの5年間の基本的な方向性として、「医療機関は自らの状況を適切に分析し、計画的に労働時間短縮に取り組んでいく必要があり、なるべく多くの医療機関が(A)水準の適用となることを目指す」とされた。 そのうえで、下記3つのステップが具体的な流れとして示されている。[ステップ1:労働時間管理の適正化]・まず、各医療機関において時間外労働時間の実態を的確に把握する必要がある。「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」のフォローアップ調査においても、労働時間管理にかかる取組が全医療機関で適切に行われている状況には程遠いため、個別の状況確認を含めた強力なてこ入れを行う。・また、本検討会で議論した宿日直や研鑽の取扱いについて、通達の発出とともに、その周知をきめ細かく行う。[ステップ2:適用される上限水準の検討]・そのうえで、各医療機関は5年間で医師の労働時間を着実に短縮する必要があるが、その「短縮幅」は、適用される上限の水準によって変わってくる。(B)水準の適用対象となる地域医療提供体制における機能を有するかどうか、また、やむなく長時間労働となり(A)水準まで到達できないか等について、各医療機関において現状および5年後を見通して検討する必要がある。[ステップ3:医師の労働時間短縮の取組]・実際に医師の労働時間を短縮していくべく、各医療機関において医師労働時間短縮計画を作成し、PDCAサイクルによる取り組みを進めていく必要がある。 また、(B)水準となる医療機関については、遅くとも2023年度中に、都道府県知事による特定が終了している必要がある、とされた。都度/時間単位での取得が可能な“代償休息”を提案 設定された連続勤務時間制限・勤務間インターバルを、日々の患者ニーズ等からやむなく守れなかった場合の健康確保措置として、今回新たに“代償休息”を設けてはどうかという事務局案が示された。当案について示された具体的内容としては以下の通り。 1~2日単位で確実に疲労を回復していくべきという発想に立ち、・1日の休暇分(8時間分)が累積してからではなく、発生の都度・時間単位での休息をなるべく早く付与する・休暇の形でまとめて取得することも認める その付与方法は、対象となった時間数について、・所定労働時間中における時間休の取得による付与・勤務間インターバルの幅の延長 のいずれかによることとし、代償休息を生じさせる勤務が発生した日の属する月の翌月末までに必ず付与する。 構成員からは、勤務医の立場から負担軽減に役立つとして評価する声、使用者の立場から細切れの時間管理の大変さを指摘する声があがった。また、「便利な仕組みだとは思うが、これは有給という受け取り方でよいか?(黒澤 一氏、東北大学環境・安全推進センター 教授)」という疑問を受け、事務局は「労使の取り決めにより有給でも無給でもあり得るのではないか」と回答した。勤務医の働き方は大きく変化?しかし実現には課題も 最後に、今回示された(現状案を前提とした場合の)「想定される働き方の変化イメージ(勤務医からみて)」を以下、紹介する。・当直明けも夕方までは連続勤務/夜遅くなっても翌朝は早いという現状→時間外労働が年960時間を超える医師に対しては、「連続勤務時間制限28時間・インターバル9時間確保」が義務化され、休息を確保・厚労省調査で1人平均約40分/日あるとされた「医師でなくてもできる仕事」→医師は医師でなければできない仕事に集中。この実現のため、「緊急的な取組」で求めている基本のタスク・シフティング項目(初療時の予診、検査手順や入院の説明等)は必ず行う。・労働時間管理がされていない、勤務時間に見合った支払いがされていないという現状→労働時間がきちんと管理されるようになる。時間外割増賃金がきちんと支払われるようになる(寝ることができない、宿日直許可を受けていない当直は待機時間も含め時間外労働とみなされる)。 これらの明示を受け、黒澤氏は「これまで把握されていなかった労働時間がある中で、把握することで賃金を支払う必要が生じ、またタスクシフトに伴うコメディカルへの報酬等含めると、経営上多大なお金がかかると思われる。仕組みの中で何らかのサポートがないと難しいのではないか」と指摘している。 今後は、事務局側に提示が要請されている、より詳細な労働時間分析データをもとに、上限時間数の最終決定などが進められていく見通しとなっている。■関連記事残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案宿日直や自己研鑽はどう扱う?~医師の働き方改革医師のアルバイト代、時給が高い診療科は医師のアルバイト代、時給が高い診療科は

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頭頸部がんとIO、HPV陽性中咽頭がん【侍オンコロジスト奮闘記】第71回

第71回:頭頸部がんとIO、HPV陽性中咽頭がんキーワードペムブロリズマブKEYNOTE-048HPV陽性中咽頭がんRTOG1016ペムブロリズマブ、単剤と化療併用で頭頸部扁平上皮がん1次治療のOS改善(KEYNOTE-048)/ESMO2018Gillison ML,et al. Radiotherapy plus cetuximab or cisplatin in human papillomavirus-positive oropharyngeal cancer (NRG Oncology RTOG 1016): a randomised, multicentre, non-inferiority trial.Lancet.2019;393:40-50.

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統合失調症患者に対する早期の持効性抗精神病薬治療と入院率との関連

 統合失調症に対する抗精神病薬治療の早期開始は、アウトカムの改善に関与している。米国・Partnership for Health Analytic ResearchのJennifer Munday氏らは、新規の統合失調症エピソードを有する患者に対して、早期の持効性注射剤(LAI)による抗精神病薬治療が、実臨床での入院率の低下や医療費の削減と関連するかについて検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2019年1月16日号の報告。 Truven Health Analytics MarketScan Commercial、メディケイド、メディケア・サプリメントのデータベースを用いて、2007年1月~2016年6月におけるレトロスペクティブコホート分析を実施した。新規の統合失調症エピソードを有する18歳以上の成人患者を対象に、初回の統合失調症診断日からLAI開始日(インデックス日)までの時間に基づき、2つの相互排他的なコホートを同定した。LAIを1年以内に開始した患者を早期開始群、1年超で開始した患者を後期開始群とした。1年間のフォローアップ期間における入院率・医療費、患者の人口統計学的・臨床的特徴、保険の種類、ベースライン時の全原因による入院・救急外来受診、ベースライン時の精神科での薬の使用について、ロジスティック回帰モデルおよび一般線形回帰モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・早期開始群32%(1,388例)、後期開始群68%(2,978例)であった。・リスク調整モデルでは、全原因による入院率は、早期開始群で22.2%(95%CI:19.9~24.6)、後期開始群で26.9%(95%CI:25.2~28.7)であった(p=0.002)。・精神科への入院率は、早期開始群で14.1%(95%CI:12.3~16.1)、後期開始群で19.2%(95%CI:17.7~20.8)であった(p<0.001)。・調整後の精神科での医療費の平均は、早期開始群が2万1,545ドル(95%CI:2万355~2万2,734)であり、後期開始群の2万4,132ドル(95%CI:2万3,330~2万4,933)と比較して、有意に少なかった(p<0.001)。 著者らは「新規の統合失調症エピソードから1年以内のLAI治療開始は、1年超の開始と比べて、入院率の低下および医療費の削減をもたらす」としている。■関連記事急性期統合失調症に対するアリピプラゾール持効性注射剤の効果を解析実臨床における抗精神病薬持効性注射剤のメリット統合失調症治療の医療資源利用とコストにおける持効性注射剤と経口剤との比較

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FDA、cabozantinibの肝がん2次治療承認

 EXELIXI, Inc.は、2019年1月14、ソラフェニブ既治療の肝細胞がん(HCC)に対するマルチキナーゼ阻害薬cabozantinibが米国食品医薬品局(FDA)で承認されたと発表。 今回の承認は、ソラフェニブ既治療の進行HCC患者に対するcabozantinibの第III相CELESTIAL試験の結果に基づいている。CELESTIA試験は、ソラフェニブ既治療の進行HCC患者を対象に、cabozantinibとプラセボを比較した無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、世界19ヵ国で実施されている。 CELESTIAL試験におけるOS中央値は、cabozantinib群10.2ヵ月、プラセボ群8.0ヵ月と、cabozantinib群で統計学的に有意な改善を示した(HR:0.76、95%CI:0.63~0.92、p=0.0049)。無増悪生存期間中央値は、cabozantinib群5.2ヵ月、プラセボ群1.9ヵ月であった(HR:0.44、95%CI:0.36~0.52、p<0.0001)。客観的奏効率は、cabozantinib4%、プラセボ0.4%であった(p=0.0086)。疾患コントロール率は、プラセボ群33%に対し、cabozantinib群では64%であった。 CELESTIAL試験におけるcabozantinibの有害事象は、既知の安全性プロファイルと一致した。プラセボ群と比較して、cabozantinib群に多くみられる(10%以上)Grade3/4の有害事象は、手足症候群(17%)、高血圧(16%)、AST上昇(12%)、疲労感(10%)、下痢(10%)であった。 CELESTIAL試験の独立データモニタリング委員会は、2017年10月、OSの結果から、2回目の中間分析の後に試験の有効中止を推奨している。■参考CELESTIAL試験(Clinical Trials.gov)

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第5回 呼吸数、脈拍、血圧の測定方法 【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

薬剤師である皆さんが患者さんのご自宅を訪問する時、患者さんは慢性的な病態であることが多く、容態の急変はないと思いがちです。しかし、慢性疾患であっても、急に容態が変化・悪化することはあります。そのような時、主治医や訪問看護師にすぐに連絡した方がよいかどうか迷うことがあるかもしれません。今回は、急を要するか否かの判断の仕方と、その判断に必要なバイタルサインの測定法について紹介します。1─呼吸数の測定方法呼吸の観察をする時には、患者さんに観察していることを知られないようにします。気付かれてしまうと、呼吸数や呼吸の様式が変わってしまうことがあるからです。方法としては、例えば脈拍を数えた後、脈をとり続けながら、胸や腹部の動きをみて呼吸数を数えます。30秒間の回数を2倍して1分あたりの回数にするとよいでしょう。通常、成人では1分間の呼吸回数はおよそ12~20回であり、12回未満の時は徐呼吸、24回以上の時は頻呼吸と言います(表1)。つまり、1回の呼吸に5~6秒以上かかっていたり、1回目の呼吸の始まりから3秒以内に次の呼吸が始まったりした時には異常といえます。具合の悪い患者さんでは、意識がなくなり、あごを上下させるような呼吸をすることがあります(下顎呼吸とか死戦期呼吸といいます)が、生命の危険性が差し迫った時にみられ、通常の呼吸ではありませんから注意が必要です。表1 呼吸数の評価2─脈拍の測定方法脈拍は、患者さんの動脈(手首内側の親指側の動脈)に、第2・3・4指をあてて測定します(写真1)。脈拍数は1分あたりの脈の数ですが、15秒間測定して4倍しても、20秒間測定して3倍してもよいです。正常の脈は規則的で、1分間に60~100回程度です。60回/分未満を徐脈、100回/分以上を頻脈といいます(表2)。熟練した医師は、脈拍数だけでなく、脈の強さや振幅の大きさ、脈の立ち上がりの速さまでも感じ取りますが、その域に達するにはそれなりの修行が必要です(笑)。写真1 橈骨動脈の触知の仕方 / 表2 脈拍数の評価3─血圧の測定方法水銀血圧計(写真2)を使いこなすには、少々練習が必要です。マンシェット(腕に巻く布製の部分)を巻き、ゴム球とバルブ(ネジの部分)を片手で扱いながら、水銀柱の圧を見つつ、聴診器を使って肘窩の動脈の音(コロトコフ音といいます)を聴いて...、などなど。しかし、今はボタンひとつで血圧と脈拍を測定してくれる自動血圧計がありますから、それを使用するとよいと思います。簡便な自動血圧計でも注意は必要です。マンシェットを巻く前に、血液透析用の血管の手術(シャント手術)を受けていないかを確認しましょう。その場合は他方の腕で血圧を測定します。また、まくりあげた衣服の袖が上腕を締め付けていないかを確認しましょう。腕は少し持ちあげて、肘窩の上腕動脈が心臓の高さ(およそ左右の乳頭を結んだ線の高さ)になるようにします。マンシェットは、上腕に、その下端が肘窩から1~3cmくらいになるように巻きます。きつすぎず、ゆるすぎず、指が1、2本入るくらいとします。緊張したり運動したりすると血圧が上がってしまいますから、少なくとも5分間は静かに座り、リラックスした状態で測定します。緊張して血圧が高く出てしまったと考えられる場合は、時間をおいて再度測定します。安定した値の2回の平均を血圧値としますが、医療従事者が測定した値だけでなく、本人が日頃測定する家庭血圧も有用です。手首で血圧を測定することもできますが、高血圧治療ガイドライン1)では上腕での測定が推奨されています。現在のガイドラインで示されている血圧値の分類を(表3)に示します。表3 成人における血圧値の分類日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.東京,ライフサイエンス出版,2014.太田富雄,他.急性期意識障害の新しいgradingとその表現方法.第3回脳卒中の外科研究会講演集.東京,にゅーろん社,1975,61-69.Teasdale G, et al. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet.1974; 2: 81-84.脳卒中合同ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2009.東京,協和企画,2009.

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眼瞼脂腺がんの手術、モース顕微鏡vs.広範切除

 眼瞼の脂腺がん(SC)に対し、モース顕微鏡手術(Mohs micrographic surgery:MMS)または広範切除術(wide local excision:WLE)のどちらを実施するかについては、さまざまな議論がある。中国・上海交通大学医学院のChuandi Zhou氏らは後ろ向きコホート研究を行い、眼窩病変のないSCに対してはMMSのほうが局所再発を抑制できるものの、MMSは転移やがん関連死といった長期アウトカムには影響を及ぼさないことを明らかにした。なお、パジェット病による上皮内腫瘍を伴う患者に対しては、補助療法を要する可能性が示唆された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年1月9日号掲載の報告。 研究グループは、眼瞼のSCに対する初回治療としてのMMSとWLEにおける局所再発、転移およびがん関連死を比較する目的で、多施設共同後ろ向きコホート研究を行った。 適格患者全例における再発、転移およびがん関連死に関する要因を診療記録から割り出し、すべての交絡因子を調整した後、Cox回帰分析により初回手術の予後への影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は360例で、初回手術としてMMSを受けた患者は115例(31.9%)、WLEを受けた患者は245例(68.1%)であった。・追跡調査期間中央値は60.0ヵ月で、局所再発と転移はそれぞれ、MMS群18例(15.7%)、9例(7.8%)、WLE群97例(39.6%)、38例(15.5%)であり、転移を有するSCでの死亡は、それぞれ6例(5.2%)、21例(8.6%)であった。・Cox回帰分析の結果、WLE群と比較してMMS群の局所再発は有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.24~0.73、p=0.002)が、転移率(HR:1.38、95%CI:0.60~3.18、p=0.453)と、がん関連死(HR:1.70、95%CI:0.59~4.93、p=0.329)は同等であった。・ただし、この有益性はパジェット病による上皮内腫瘍では認められなかった(HR:1.73、95%CI:0.37~8.21、p=0.488)。

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若年者の運動時高血圧、高血圧発症を予測か【Dr.河田pick up】

 若年者での運動負荷試験を施行中、極度な高血圧が観察されることは珍しくない。また、アスリートは運動能力が高いため、ピーク時に血圧が上昇することが多い。この運動中の高血圧がどのような意味をもつのかはわかっておらず、どのようなフォローが必要なのかも疑問である。イタリア・ローマのStefano Caselli氏らヨーロッパのグループが、この問題についてEuropean Heart Journal誌オンライン版1月1日号に報告している。平均年齢26歳のアスリートを運動時高血圧群と正常血圧群で比較 いずれも正常血圧で、運動時高血圧を有するアスリート141例(運動時高血圧群)と、性別、年齢、体の大きさとスポーツの種類でマッチさせた運動時も正常血圧のアスリート141例(正常血圧群)における高血圧症の発症率を比較した。平均6.5±2.8年のフォローアップ期間中、心イベントの発生はなかったが、全体で24例(8.5%)が高血圧症と診断された。平均6.5年のフォローアップ期間中に運動時高血圧群では19例が高血圧症発症 うち19例は運動時高血圧群であり、正常血圧群で高血圧症と診断されたのは5例であった(p=0.003)。カプランマイヤー分析の結果、運動時高血圧群で高血圧発症率がより高いことが示された(ログランクχ2乗検定によるp=0.009)。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析でも、ベースラインにおける安静時血圧と運動時高血圧が高血圧症に対して最も有力な予測因子であった(χ2乗値:30.099、p<0.001)。とくに運動時高血圧は、高血圧症発症に対するハザード比が3.6(95%信頼区間:1.3~9.9)であった。 フォローアップ期間中、運動能力、エコーにおける心臓の形態学的および機能的評価に有意な違いは認められなかった。運動時高血圧を有すると高血圧症発症の可能性が高い このスタディーは、高度なトレーニングを受け、血圧が正常なアスリートでみられる運動時の極端な血圧の上昇が、中期的な期間における高血圧症の発生を予測することを示した。若年者と言えど、運動時高血圧を示した場合、将来的な高血圧を想定したフォローアップが必要なのかもしれない。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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結節性硬化症〔TS : tuberous sclerosis, Bourneville-Pringle病〕

1 疾患概要■ 概念・定義主に間葉系起源の異常細胞が皮膚、中枢神経など全身諸臓器に各種の過誤腫性病変を起こす遺伝性疾患である。従来、顔面の血管線維腫、痙攣発作、知能障害が3主徴とされているが、しばしば他に多くの病変を伴い、また患者間で症状に軽重の差が大きい。疾患責任遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。■ 疫学わが国の患者は約15,000人と推測されている。最近軽症例の報告が比較的多い。■ 病因・発症機序常染色体性優性の遺伝性疾患で、浸透率は不完全、突然変異率が高く、孤発例が60%を占める。軽微な症例は見逃されている可能性もある。本症の80%にTSC1(9q34)遺伝子とTSC2(16p13.3)遺伝子のいずれかの変異が検出される。TSC1遺伝子変異は生成蛋白のtruncationを起こすような割合が高く、また家族発症例に多い。TSC2遺伝子変異は孤発例に、また小さな変異が多い。一般に臨床症状と遺伝子異常との関連性は明らかではない。両遺伝子産物はおのおのhamartin、tuberinと呼ばれ、前者は腫瘍抑制遺伝子産物の一種で、低分子量G蛋白Rhoを活性化し、アクチン結合蛋白であるERMファミリー蛋白と細胞膜裏打ち接着部で結合する。後者はRap1あるいはRab5のGAP(GTPase-activating protein)の触媒部位と相同性を有し、細胞増殖抑制、神経の分化など多様で重要な機能を有する。Hamartinとtuberinは複合体を形成してRheb(Ras homolog enriched in brain)のGAPとして作用Rheb-GTPを不活性化し、PI3 kinase/S6KI signaling pathwayを介してmTOR(mammalian target of rapamycin)を抑制、細胞増殖や細胞形態を制御している。Hamartinとtuberinはいずれかの変異により、m-TOR抑制機能が失われることで、本症の過誤腫性病変を惹起すると推定されている。近年、このm-TOR阻害薬(エベロリムスなど)が本症病変の治療に使われている。■ 臨床症状皮膚、中枢神経、その他の諸臓器にわたって各種病変がさまざまの頻度で経年齢的に出現する(表1)。画像を拡大する1)皮膚症状学童期前後に出現する顔面の血管線維腫が主徴で80%以上の患者にみられ頻度も高い。葉状白斑の頻度も比較的高く、乳幼児期から出現する木の葉状の不完全脱色素斑で乳幼児期に診断価値の高い症候の1つである。他に結合織母斑の粒起革様皮(Shagreen patch)、爪囲の血管線維腫であるKoenen腫瘍、白毛、懸垂状線維腫などがある。2)中枢神経症状幼小児早期より痙攣発作を起こし、精神発達遅滞、知能障害を来すことが多く、かつての3主徴の2徴候である。2012年の“Consensus Conference”で(1)脳の構造に関与する腫瘍や皮質結節病変、(2)てんかん(痙攣発作)、(3)TAND(TSC-associated neuropsychiatric disorders)の3症状に分類、整理された。(1)高頻度に大脳皮質や側脳室に硬化巣やグリア結節を生じ、石灰化像をみる。数%の患者に上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が発生する。SEGAは小児期から思春期にかけて急速に増大することが多く、脳圧亢進症状などを来す。眼底の過誤腫や色素異常をみることもあり、通常は無症状であるが、時に視力障害を生ずる。(2)TSC患者に高頻度にみられ、生後5、6ヵ月頃に気付かれ、しばしば初発症状である。多彩な発作で、治療抵抗性のことも多い。点頭てんかんが過半数を占め、その多くが精神発達遅滞、知能障害を来す。(3)TSCに合併する攻撃的行動、自閉症・自閉的傾向、学習障害、他の神経精神症状などを総括した症状を示す。3)その他の症状学童期から中年期に後腹膜の血管筋脂肪腫で気付かれることもある。無症候性のことも多いが、時に増大して出血、壊死を来す。時に腎嚢腫、腎がんが出現する。周産期、新生児期に約半数の患者に心臓横紋筋腫を生ずるが、多くは無症候性で自然消退すると言われる。まれに、腫瘍により収縮障害、不整脈を来して突然死の原因となる。成人に肺リンパ管平滑筋腫症(lymphangiomyomatosis:LAM)や多巣性小結節性肺胞過形成(MMPH)を生ずることもある。前者は気胸を繰り返し、呼吸困難が徐々に進行、肺全体が蜂の巣状画像所見を呈し、予後不良といわれる。経過に個人差が大きい。後者(MMPH)は結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。■ 予後と経過各種病変がさまざまな頻度で経年的に出現する(表1)。それら病変がさまざまに予後に影響するが、中でも痙攣発作の有無・程度が患者の日常生活、社会生活に大きく影響する。従来、生命的予後が比較的短いといわれたが、軽症例の増加や各種治療法・ケアの進展によって生命的、また生活上の予後が改善方向に向かいつつあるという。死因は年代により異なり、10歳までは心臓横紋筋腫・同肉腫などの心血管系異常、10歳以上では腎病変が多い。SEGAなどの脳腫瘍は10代に特徴的な死因であり、40歳以上の女性では肺のLAMが増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)遺伝子診断が確実であり、可能であるが、未知の遺伝子が存在する可能性、検査感度の問題、遺伝子変異と症状との関連性が低く、変異のホットスポットもない点などから一般的には通常使われない。遺伝子検査を受けるときは、そのメリット、デメリットをよく理解したうえで慎重に判断する必要がある。実際の診断では、ほとんどが臨床所見と画像検査などの臨床検査による。多彩な病変が年齢の経過とともに出現するので、症状・病変を確認して診断している。2018年に日本皮膚科学会が、「結節性硬化症の新規診断基準」を発表した(表2)。画像を拡大する■ 診断のポイント従来からいわれる顔面の血管線維腫、知能障害、痙攣発作の3主徴をはじめとする諸症状をみれば、比較的容易に診断できる。乳児期に数個以上の葉状白斑や痙攣発作を認めた場合は本症を疑って精査する。■ 検査成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので、定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。顔面の結節病変、血管線維腫は、通常病理組織検査などはしないが、多発性丘疹状毛包上皮腫やBirt-Hogg-Dube syndromeなどの鑑別に、また、隆起革様皮でも病理組織学的検査で他疾患、病変と鑑別することがある。痙攣発作を起こしている患者あるいは結節性硬化症の疑われる乳幼児では、脳波検査が必要である。大脳皮質や側脳室の硬化巣やグリア結節はMRI検査をする。CTでもよいが精度が落ちるという。眼底の過誤腫や色素異常は眼底検査で確認できる。乳幼児では心エコーなどで心臓腫瘍(横紋筋腫)検査を、思春期以降はCTなどで腎血管筋脂肪腫を検出する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 基本治療方針多臓器に亘って各種病変が生ずるので複数の専門診療科の連携が重要である。成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。本症の治療は対症療法が基本であるが、各種治療の改良、あるいは新規治療法の開発が進んでいる。近年本症の皮膚病変や脳腫瘍、LAMに対し、m‐TOR阻害薬(エベロリムス、シロリムス)の有効性が報告され、治療薬として使われている。■ 治療(表3)画像を拡大する1)皮膚病変顔面の血管線維腫にはレーザー焼灼、削皮術、冷凍凝固術、電気凝固術、大きい腫瘤は切除して形成・再建する。最近、m-TOR阻害薬(シロリムス)の外用ゲル製剤を顔面の血管線維腫に外用できるようになっている。シャグリンパッチ、爪囲線維腫などは大きい、機能面で問題があるなどの場合は切除する。白斑は通常治療の対象にはならない。2)中枢神経病変脳の構造に関与する腫瘍、結節の中では上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が主要な治療対象病変である。一定の大きさがあって症状のない場合、あるいは増大傾向をみる場合は、外科的に切除、あるいはm-TOR阻害薬(エベロリムス)により治療する。急速進行例は外科的切除、頭蓋内圧軽減のためにシャント術も行う。本症の重要な症状である痙攣発作の治療が重要である。点頭てんかんにはビガバトリン(同:サブリル)、副腎皮質(ACTH)などが用いられる。ケトン食治療も試みられる。痙攣発作のフォーカス部位が同定できる難治例に、外科的治療が試みられることもある。点頭てんかん以外のてんかん発作には、発作型に応じた抗てんかん薬を選択し、治療する。なお、m-TOR阻害薬(エベロリムス)は、痙攣発作に対して一定の効果があるとされる。わが国での臨床使用は今後の課題である。精神発達遅滞や時に起こる自閉症に対しては、発達訓練や療育などの支援プログラムに基づいて適切にケア、指導する。定期的な受診、症状の評価などをきちんとすることも重要である。また、行動の突然の変化などに際しては、結節性硬化症の他病変の出現、増悪などがないかをチェックする。3)その他の症状(1)後腹膜の血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)腫瘍径が4cm以上、かつ増大傾向がある場合は出血や破裂の可能性もあり、腫瘍の塞栓療法、腫瘍切除、腎部分切除などを考慮する。希少疾病用医薬品としてm-TOR阻害薬(エベロリムス)が本病変に認可されている。無症候性の病変や増大傾向がなければ検査しつつ経過を観察する。(2)周産期、新生児期の心臓横紋筋腫収縮障害、伝導障害など心障害が重篤であれば腫瘍を摘出手術する。それ以外では心エコーや心電図で検査をしつつ経過を観察する。(3)呼吸器症状LAMで肺機能異常、あるいは機能低下が継続する場合は、m-TOR阻害薬(エベロリムス)が推奨されている。肺機能の安定化、悪化抑制が目標で、治癒が期待できるわけではない。一部の患者には、抗エストロゲン(LH-RHアゴニスト)による偽閉経療法、プロゲステロン療法、卵巣摘出術など有効ともいわれる。慢性閉塞性障害への治療、気管支拡張を促す治療、気胸の治療など状態に応じて対応する。時に肺移植が検討されることもある。MMPHは、結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。4 今後の展望当面の期待は治療法の進歩と改良である。本症病変にm-TOR阻害薬(エベロリムス)が有効であることが示され、皮膚病変、SEGAとAMLなどに使用できる。本症治療の選択肢の1つとしてある程度確立されている。しかしながら効果は限定的で、治癒せしめるにはいまだ遠い感がある。病態研究の進歩とともに、新たな分子標的薬剤が模索され、より効果の高い創薬、薬剤の出現を期待したい。もとより従来の診断治療法の改善・改良の努力もされており、今後も発展するはずである。患者のケアや社会生活上の支援体制の強化が、今後さらに望まれるところである。5 主たる診療科小児科(神経)、皮膚科、形成外科、腎泌尿器科、呼吸器科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本結節性硬化症学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)結節性硬化症のひろば(主に患者と患者家族向けの診療情報)患者会情報TSつばさ会(患者とその家族および支援者の会)1)金田眞理ほか. 結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン-改訂版.日皮会誌. 2018;128:1-16.2)大塚藤男ほか. 治療指針、結節性硬化症. 厚生科学研究特定疾患対策研究事業(神経皮膚症候群の新しい治療法の開発と治療指針作成に関する研究).平成13年度研究報告書.2002:79.3)Krueger DA, et al. Pediatric Neurol. 2013;48:255-265.4)Northrup H, et al. Pediatric Neurol. 2013;49:243-254.公開履歴初回2013年2月28日更新2019年2月5日(謝辞)本稿の制作につき、日本皮膚科学会からのご支援、ご協力に深甚なる謝意を表します(編集部)。

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神経性やせ症に対するオランザピンとプラセボの無作為化比較試験

 神経性やせ症の成人外来患者に対するオランザピンの有用性について、米国・コロンビア大学アービング医療センターのEvelyn Attia氏らが、プラセボと比較し評価した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年1月18日号の報告。 神経性やせ症の成人外来患者152例(女性の割合:96%、平均BMI:16.7)を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験を、北米の5ヵ所で実施した。対象患者は、オランザピン群またはプラセボ群に1:1にランダムに割り付けられ、16週にわたり毎週評価された。主要アウトカムは体重と強迫観念の変化率とし、Yale-Brown強迫観念・強迫行為尺度(YBOCS)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群75例、プラセボ群77例であった。・統計学的に有意な、治療と時間経過の相互作用が観察され、オランザピン群では経時的なBMI増加が大きかったことが示唆された(0.259/月[SD=0.051]vs.0.095/月[SD=0.053])。・経時的なYBOCS強迫観念サブスケールスコアの変化において、両群間で有意な差は認められず(-0.325ポイント/月vs.-0.017ポイント/月)、潜在的な代謝障害を評価する血液検査において、両群間に異常頻度の有意な差は認められなかった。 著者らは「神経性やせ症の成人外来患者におけるオランザピン治療は、プラセボと比較し、体重に対する治療効果がわずかに認められたが、心理的症状に対する効果は認められなかった。しかし、この疾患における体重コントロールは重要な課題であり、体重についての本知見は注目に値する」としている。■関連記事摂食障害への薬物療法、最新知見レビュー摂食障害プログラム、オランザピンの使用は拒食に抗精神病薬、その是非は

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同種移植、鎌状赤血球貧血児の脳卒中リスクを軽減/JAMA

 経頭蓋超音波ドプラ(TCD)で血流速度の持続的な上昇がみられるため、継続的な輸血を要する鎌状赤血球貧血(SCA)の患児では、適合同胞ドナー造血幹細胞移植(MSD-HSCT)により、標準治療に比べて1年後のTCD血流速度が有意に低下し、脳卒中リスクが軽減するとの研究結果が、フランス・Centre Hospitalier Intercommunal de CreteilのFrancoise Bernaudin氏らが実施したDREPAGREFFE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年1月22日号に掲載された。SCA児では、TCD血流速度の上昇が脳卒中リスクと関連し、継続的な輸血によってリスクは軽減することが知られている。MSD-HSCTは多くのSCA児に治癒をもたらすとともに脳血流量を低下させるが、輸血と比較する前向き対照比較試験は行われていなかった。脳血流速度を比較する非無作為化試験 本研究は、SCA児において、MSD-HSCTと、虚血性脳卒中発症の代替指標としてのTCD血流速度との関連の評価を目的とする非盲検非無作為化対照比較介入試験(フランスAssistance Publique-Hopitaux de Parisの助成による)。 対象は、年齢15歳未満、TCDで血流速度の持続的な上昇がみられるため継続的な輸血を要し、同じ両親を持つ1人以上の非SCAのきょうだいがいるSCAの子供であった。家族は、ヒト白血球抗原(HLA)の抗体検査の実施に同意し、適合同胞ドナーが見つかった場合は移植を、適合同胞ドナーがいない場合は標準治療を施行することに同意することとした。 標準治療は、1年以上の輸血を行い、その後はhydroxyureaへの切り換えも可とした。傾向スコアマッチング法を用いて、MSD-HSCT群と標準治療群を比較した。 主要アウトカムは、1年後の、TCDで測定した8つの脳動脈における時間平均最大血流速度(time-averaged mean of maximum velocities:TAMV)とした。4項目の副次アウトカムでも有意差 患者登録は、2010年12月~2013年6月の期間にフランスの9施設で行われ、2017年1月まで3年間のフォローアップが実施された。67例(年齢中央値7.6歳、女児35例[52%])が登録され、MSD-HSCT群に32例、標準治療群には35例が割り付けられた。傾向スコアでマッチさせた、それぞれ25例ずつの患者の解析を行った。 1年時のTAMVは、MSD-HSCT群が129.6cm/sと、標準治療群の170.4cm/sに比べ有意に低下した(差:-40.8cm/s、95%信頼区間[CI]:-62.9~-18.6、p<0.001)。 29項目の副次アウトカムのうち25項目の解析が行われた。以下の4項目で有意差が認められ、いずれもMSD-HSCT群で良好だった。 3年時のTAMV(MSD-HSCT群112.4cm/s vs.標準治療群156.7cm/s、差:-44.3cm/s、95%CI:-71.9~-21.1、p=0.001)、1年時の血流速度の正常化(TAMV<170cm/s)(80.0% vs.48.0%、32.0%、0.2~58.6%、p=0.045)、1年時のフェリチン値(905ng/mL vs.2,529ng/mL、-1,624ng/mL、-2,370~-879、p<0.001)、3年時のフェリチン値(382 ng/mL vs.2,170ng/mL、-1,788ng/mL、-2,570~-1,006、p<0.001)。 MSD-HSCT群の5例で、皮膚症状のみを伴う急性の移植片対宿主病(GVHD)が観察された(Grade I:2例、Grade II:2例、Grade III:1例)。Grade II以上の急性GVHDの累積発症率は9.4%であった。静脈閉塞性疾患は認めなかった。 その他の有害事象として、痙攣を伴う可逆性後頭葉白質脳症(2例)、無症候性のサイトメガロウイルス再活性化(11例)、EBウイルス感染症(6例)、出血性膀胱炎(4例)などがみられた。 著者は、「MSD-HSCTが臨床アウトカムに及ぼす影響を評価するために、さらなる検討を要すると考えられる」としている。

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腹を突き破って出てきた異物【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第132回

腹を突き破って出てきた異物 いらすとやより使用 世にもまれな異物論文です。今回は消化器系。 Yacoub W, et al.Self extrusion on an ingested foreign body: a case reportTunis Med. 2018;96:314-316.2歳の男の子が、腹部にポコっと膨らんだところがあるといって来院しました。炎症を伴っているようです。検査では、白血球とCRPがメチャメチャ上昇しており、腹部の感染症が強く疑われました。腹部超音波検査とCT検査を行ったところ、腹壁に明らかな異物があることがわかりました。外からおなかに刺さっているのではなくて、中からおなかの外に出てこようとしている。映画の『エイリアン』か!!※※知らない人、スイマセン。私は何回も見ましたが、今の若手は見たことがない人が多いみたい。さて、腹壁から飛び出そうとしていた異物は無事外科医によって取り出されました。なんと、出てきたのは、木片でした。一瞬、魚骨に見えましたが、いや、これは木だ。実は子供には発達障害があり、普段からよく木を食べていたそうです。そのため、肛門から排泄されなかった木の一部が、消化管を突き破って皮膚に出てきてしまったのかもしれません。いずれにしても、皮膚の外に向かって飛び出した異物というのは、きわめてまれな異物症例だそうです。その後、男の子がどうなったのか、論文には書いてありませんでした。もう、木を食べないでほしいですね。

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ビタミンB12値、がんの早期発見に利用できるか

 ビタミンB12(以下、B12)値の上昇は短期のがんリスク増加と関連しているが、プライマリケアにおけるがんの早期発見における意義は検討されていない。今回、デンマーク・Aarhus University HospitalのJohan F. Arendt氏らが、英国のプライマリケアデータベースを用いたコホート研究で検討したところ、血漿B12値が上昇していると正常値より1年がんリスクが高く、数種のがんがB12代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。著者らは「B12値上昇は、不顕性がんがあることを示すかもしれない」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2019年1月14日号に掲載。 本研究では、英国のThe Health Improvement Network(THIN)プライマリケアデータベースにおいて、血漿B12値が測定されている患者をサンプリングした。B12値が低い患者、B12値測定日より前にがんを罹患していた患者やB12の治療を受けた患者は除外した。がん発症はReadコードにより識別した。対象患者を血漿B12値(単位:pmol/L)で4群(150~600:基準、601~800、801~1,000、1,000超)に分けて検討した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした75万7,185例のうち、追跡期間中、3万3,367例にがんが発症した。・B12値正常者と比べ、B12値が上昇していた2万5,783例(3.4%)において、1年がんリスクが高かった。・ライフスタイル因子および社会的隔離に関する多変量調整後、B12値が1,000pmol/L超の患者の1年罹患率比は4.72であった(95%信頼区間:3.99~5.58)。この関連は非線形の用量反応パターンを示し、層別解析においても変わらなかった。・B12値が上昇していた患者において、とくに肝がん、膵臓がん、骨髄性悪性腫瘍のリスクが高かった。■関連記事患者説明用スライド「ビタミンB12ってなあに?」

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【GET!ザ・トレンド】大動脈から全身を探る(後編)

日本血管映像化研究機構の研究が、Journal of the American College of Cardiology誌2018年6月26日号(筆頭執筆者、小松 誠:大阪暁明館病院)」に掲載された1)。300例以上の心血管疾患の診断または疑い患者の80%で、大動脈に動脈硬化性粥腫がびまん性に高密度に散在し、常に無症状の自発的破綻を起こしていることが血流維持型血管内視鏡で観察された。さらに、そのサイズは、従来考えられていたものよりもはるかに小さいものであった。大動脈の粥状硬化とコレステロール・クリスタル実臨床における多数例の大動脈内腔観察の実績から「大動脈にはおびただしい数の粥状硬化病変が認められる。粥状硬化は若年から進行し、自発的破綻を繰り返している」と児玉氏は述べる。また、多くの大動脈粥腫の破綻時に、粥腫のdebrisと共にコレステロールの結晶である「コレステロール・クリスタル」が大量に遊離されていることが、児玉氏らのDual Infusion血流維持型血管内視鏡で確認されている。これらは大動脈を通して、すべての臓器に流れていく。とくに、コレステロール・クリスタルは、末梢動脈にトラッピングを起こし、その結果、虚血性細胞死を引き起こすと考えられる。毛細血管は平均8μm、一方コレステロール・クリスタルは平均50~60μmである。毛細血管でトラッピングされる可能性はきわめて高い。実際に、コレステロール・クリスタルは「動脈血中のみに存在し、静脈血ではほとんど観察されないことから、末梢組織で濾過され、全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性がある。大動脈がこういったごみを流し続ければ、すべての臓器に大きなダメージを引き起こす可能性がある」と児玉氏は言う。この現象は、脳、眼、耳、消化器、腎臓、筋肉、四肢などあらゆる臓器に、時間を経るに従い顕著となり、種々の悪影響を引き起こす。実際に、無症候性脳虚血、脳梗塞を併発した認知症、網膜動脈閉塞による失明、腸間膜閉塞、CKD(慢性腎臓病)、PAD(末梢動脈疾患)といった症例で、大動脈内の粥腫破綻とコレステロール・クリスタルの内視鏡所見が一致することが、児玉氏らの血流維持型血管内視鏡で確認されている。臨床研究によるエビデンス形成多くの所見が確認されているとはいえ、エビデンスを作っていく必要がある。現在、同法人の理事長 平山 篤志氏を中心に、内視鏡所見と臨床経過を突き合わせていくレジストリ研究が始まっている。また、国立循環器病研究センターに保存されている脳梗塞の標本についても再検討が始められ、コレステロール・クリスタルの存在を確認する作業が進められているという。前述のWilliam Osler博士による「人は血管と共に老いる」という言葉に対し、児玉氏は、「いまや“人は大動脈と共に老いる”ではないか」と提言する。今年で13回目となる日本血管映像化研究機構主催のTCIF(Trans Catheter Imaging Forum)が4月26日・27日に大阪で開催される。テーマは上記の「人は大動脈と共に老いる」である。近年、循環器科にとどまらず、脳神経外科、放射線科、眼科などに参加者は拡大しているという。さまざまな未知の病態が、この日本発の技術の進歩と共に解明されていくことを期待する。1)Komatsu S, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:2893-2902.参考第13回 TCIF 2019関連記事世界初、大動脈プラーク破綻の撮影に成功<<前編に戻る

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第4回 重症度と緊急度、救急のABC【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

薬剤師である皆さんが患者さんのご自宅を訪問する時、患者さんは慢性的な病態であることが多く、容態の急変はないと思いがちです。しかし、慢性疾患であっても,急に容態が変化・悪化することはあります。そのような時、主治医や訪問看護師にすぐに連絡した方がよいかどうか迷うことがあるかもしれません。今回は、急を要するか否かの判断の仕方と、その判断に必要なバイタルサインの測定法について紹介します。急を要するか否かの判断の仕方◎重症度と緊急度まず、「重症度」と「緊急度」の違いについて説明しましょう。「重症度が高い」とは、「生命の危険や後遺症の危険が高い」状態を指します。それに対して、緊急度は時間の要素を加えた概念です。「緊急度が高い」とは、「速やかに治療が行われないと生命の危険や後遺症の危険が高い」ことを意味します。私たち医療従事者が具合の悪そうな患者さんを前にする時、「急がなくてはならないかどうか」、つまり「緊急度が高いかどうか」をまず判断しなくてはいけません。例えば、末期がんの患者さんについて考えてみましょう。末期がんであることは生命の危険性が高いわけですから重症度は高いといえます。しかし小康状態を保っていれば、今すぐに新たな治療を開始しなくてはならない状態ではないので、緊急度は高くありません。一方で、この患者さんがご飯を食べている時に食物をのどに詰まらせて呼吸ができなくなってしまったとすると、一刻も早く詰まったものを取り除かなくては命にかかわります。つまり緊急度が高いということになります。◎急を要するか否か? 「緊急度」の判断のために救急のABCを知っていますか?気道(A:Airway)・呼吸(B:Breathing)・循環(C:Circulation)です。生命を維持させるためには、これらが安定していることが必須の条件であるため、このABCが危機に陥っている時、急を要する状態(緊急度が高い)と判断します。そこで、ABCの状態を評価するために、私たちはバイタルサインといわれる5つの生命徴候(呼吸・脈拍・血圧・体温・意識レベル)をチェックします。バイタルサインを観察・評価することにより、気道・呼吸・循環の状態を知り、それにより急を要するか否かを判断します。すなわち、バイタルサインに異常がある時には「緊急度が高い」と考えられるわけです。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.東京,ライフサイエンス出版,2014.太田富雄,他.急性期意識障害の新しいgradingとその表現方法.第3回脳卒中の外科研究会講演集.東京,にゅーろん社,1975,61-69.Teasdale G, et al. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet.1974; 2: 81-84.脳卒中合同ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2009.東京,協和企画,2009.

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転移を有する乳がんの生存期間、1990年以降20年で1.8倍に/JNCI Cancer Spectr

 近年、転移のある乳がん(MBC)の治療は著しく変化したものの、転移後の生存期間の改善については明らかになっていない。そのような中、1970年以降の2つの時期における、再発(MBC全体、ER陽性再発MBC、ER陰性再発MBC)およびde novo Stage IV MBCにおける生存期間(OS)をロジスティック回帰モデルを用い経時的に検証した米国のシステマチックレビューが、JNCI Cancer Spectrum誌2018年12月24日号で発表された。 主な結果は以下のとおり。・再発MBCについては15件の研究(n=18,678例、ER陽性3,073例、ER陰性1,239例)が、de novo stage IV MBCでは8件の研究(n=35,831)を対象にした。・1980~1990年には、再発MBC患者のOSの改善は認められなかった。・1990~2010年には、再発MBC患者のOSは21ヵ月(95%CI:18~25)から38ヵ月(95%CI:31~47)に伸長した。・1990~2010年のER陽性MBC患者におけるOSは32ヵ月(95%CI:23~43)から57ヵ月(95%CI:37~87)に伸長した。・1990~2010年のER陰性MBC患者におけるOSは14ヵ月(95%CI:11〜19)から33ヵ月(95%CI:21〜51)に伸長した。・1990~2010年のde novo Stage IV MBC患者におけるOSは20ヵ月(95%CI:16~24)から31ヵ月(95%CI:24~39)に伸長した。

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配偶者ががんと診断された人、1年以内の死亡率が2倍

 がん患者と一緒に暮らす配偶者において、心理社会的健康への悪影響だけでなく死亡リスクも増加する可能性が指摘されている。今回、東北大学の中谷 直樹氏らは、日本人集団の大崎コホート2006研究で、配偶者のがん診断と死亡率との関連について前向きコホート研究デザインにて検討した。その結果、配偶者のがん診断に起因する死亡率が診断後早期に有意に高いことが示され、がん治療の集学的チームが配偶者の死を防ぐために重要である可能性が示された。Acta Oncologica(Stockholm)誌オンライン版2019年1月21日号に掲載。 本研究の対象は、2006年12月に宮城県大崎市在住の40歳以上の住民。配偶者ペアの同定は大崎市の世帯番号および続柄を利用した。また、アンケート調査後の配偶者のがん診断は地域がん登録情報で確認した。住民基本台帳の調査により、対象者の死亡および異動を最大4年間追跡した後、Coxの比例ハザード回帰を用いて全死因死亡のハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2万5,938人(1万2,969組)を特定し、分析に組み入れた。アンケート調査後、計1,308人(5.0%)が、がんと診断された配偶者と同居していた。・配偶者ががんと診断された人における、されていない人と比べた全死因死亡率の多変量HRは1.35(95%信頼区間[CI]:0.99~1.83、p=0.055)で、配偶者のがん診断と全死因死亡率とに関連は認められなかった。・一方、配偶者のがん診断からの期間別に解析したところ、配偶者のがん診断から1年以内における全死因死亡率が有意に増加することが示された(HR:2.18、95%CI:1.44~3.30、p<0.01)。

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米国の外来抗菌薬処方、7例に1例は不適正/BMJ

 2016年の米国の外来診療における0~64歳(民間保険加入者)への抗菌薬処方のうち、23.2%が不適正で、28.5%は最新の診断コードに該当しないことが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。国際疾病分類第9版改編版(ICD-9-CM)の診断コードおよび2015年以前のデータを使用した米国の研究では、外来患者への不適正な抗菌薬処方が広範に及ぶことが示されているが、2015年10月1日に、ICD-9-CMに替わって導入されたICD-10-CMに含まれる包括的な診断コード分類に基づく適正使用の検討は行われていなかった。約1,920万例のデータを解析 研究グループは、ICD-10-CMの包括的な診断コード分類を用いて、民間保険に加入する子供(0~17歳)および非高齢成人(18~64歳)の外来患者に処方された抗菌薬の適切性を評価する目的で横断的研究を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]の助成による)。 解析には、Truven MarketScan Commercial Claims and Encountersのデータベースに登録された2016年の患者データ(0~64歳)を用いた。ICD-10-CMの9万1,738項目の個々の診断コードにつき、抗菌薬の使用が正当化されるかを判定する分類体系を新たに開発した。 主要アウトカムは、4つの相互排他的なカテゴリー(適正、適正の可能性あり、不適正、該当する診断コードなし)別の処方箋の割合とした。 1,920万3,264例のコホート参加者のうち、1,457万1,944例(75.9%)が成人、463万1,320例が子供(24.1%)で、993万5,791例(51.7%)が女性であった。約7例に1例で1つ以上の不適正な処方 1,545万5,834件(1,000例当たり805件の処方)の外来患者への抗菌薬処方のうち、最も使用頻度が高い抗菌薬はアジスロマイシン(293万1,242件、19.0%)であり、次いでアモキシシリン(281万8,939件、18.2%)、アモキシシリン/クラブラン酸配合剤(178万4,921件、11.6%)であった。また、91万7,140件(5.9%)がリフィル処方箋によるものだった。 2016年に、抗菌薬は762万5,438例(コホートの39.7%)に処方されていた。このうち399万5,690例(52.4%)が1回、181万5,305例(23.8%)が2回、85万2,979例(11.2%)が3回、96万1,464例(12.6%)は4回以上の処方を受けていた。平均処方数は2.0回だった。 1,545万5,834件の処方のうち、197万3,873件(12.8%)が適正、548万7,003件(35.5%)は適正の可能性あり、359万2,183件(23.2%)は不適正、440万2,775件(28.5%)は該当する診断コードはないと判定された。 不適正処方箋(359万2,183件)のうち、254万1,125件(70.7%)が診察室で作成され、22万2,804件(6.2%)は緊急外来診療施設(urgent care center)で、16万8,396件(4.7%)は救急診療部(emergency department)で記載されたものであった。 2016年に、1,920万3,264例中269万7,918例(14.1%)で1つ以上の不適正処方が行われ、そのうち子供(463万1,320例)が49万475例(10.6%)、成人(1,457万1,944例)は220万7,173例(15.2%)であった。 著者は、「2016年は、約7例に1例が、1つ以上の不適正な抗菌薬処方を受けたことになる」とまとめ、「ICD-10-CMの診断コード分類体系は、将来的に、米国の外来診療における抗菌薬の適正使用を包括的に評価する取り組みを促進する可能性があり、ICD-10の診断コードを使用する他国にも適用できると考えられる」としている。

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肺がんのニボルマブ治療、スタチン使用者で効果高い

 既治療進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブの臨床的な効果予測因子の報告は多いが、ニボルマブの有効性を予測できる単一の因子を決定する十分なエビデンスはない。今回、がん・感染症センター都立駒込病院/日本医科大学の大森 美和子氏らによる前向き調査の結果、既治療進行NSCLCに対してニボルマブを受けた患者において、スタチン使用群で奏効割合が高く、治療成功期間(TTF)の延長も示された。なお、全生存期間(OS)の有意な延長は示されなかった。Molecular and Clinical Oncology誌2019年1月号に掲載。 2016~17年にニボルマブを受けた計67例の既治療進行NSCLC患者を前向きに観察調査した。臨床的因子として、年齢、性別、ECOG PS、組織型、EGFR変異、化学療法歴、喫煙状態、スタチン使用、フィブラート使用、DPP-4阻害薬使用、メトホルミン使用について検討した。統計分析はKaplan-Meier法およびリスク因子を調整したCox回帰を用いた。ニボルマブの奏効はRECIST version1.1により評価した。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は67歳(範囲:36~87歳)で、男性46例、女性21例が登録された。PS0/1は59例であった。・腺がん(41例)、扁平上皮がん(17例)、その他(9例)に分類され、EGFR変異は13例(19.4%)に認められた。・検討した臨床的因子に関して、OSで統計学的に有意な因子はなかった。・奏効割合は、スタチンを使用した患者群について統計学的に有意であった(p=0.02)。・TTFは、スタチン使用群が未達(95%信頼区間[CI]:1.9~NR)、スタチン非使用群が4.0ヵ月(95%CI:2.0~5.4)であった(p=0.039)。・OS中央値は、スタチン使用群が未達(95%CI:8.7~NR)、スタチン非使用群が16.5ヵ月(95%CI:7.5~NR)であった(p=0.058)。・本研究の限界として、スタチン投与患者が少数(10例)であること、スタチン投与量と期間、末梢血中のコレステロール値が不明なこと、治療前の腫瘍細胞のPD-L1発現が不明なことが挙げられる。

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出生児の有害アウトカム、不妊治療が原因か?/Lancet

 自然妊娠の子供に比べmedically assisted reproduction(MAR)で妊娠した子供は、有害な出生アウトカムのリスクが高いが、そのほとんどはMAR以外の要因によることが、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のAlice Goisis氏らの検討で示された。すでにMARで出生した子供は500万人以上に上り、これらの子供のウェルビーイング(wellbeing)に及ぼすMARの影響の検討が活発化しているという。MARとは、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)に加え、排卵誘発、調節卵巣刺激、配偶者/パートナーまたはドナーの精液を用いた子宮内・子宮頸管内・膣内受精などによる生殖を含めた概念である。ARTは、妊娠を促す目的で、卵母細胞と精子の双方あるいは胚を体外で操作する処置または治療であり、体外受精や胚移植のほか、配偶子卵管内移植、接合子卵管内移植、配偶子・胚の凍結保存、卵母細胞・胚の提供、代理母出産などが含まれる。Lancet誌オンライン版2019年1月14日号掲載の報告。フィンランドの0~14歳児の家族内分析 研究グループは、MARに起因する過剰なリスクに、治療の有害な影響および両親の背景因子がどの程度寄与するかの評価を目的に調査を行った(欧州研究会議[ERC]などの助成による)。 解析には、2000年末の時点で、0~14歳の子供のいる世帯のうち20%の無作為標本を含むフィンランドの行政登録データを用いた。MARまたは自然生殖による妊娠で出生した子供の出生時体重、妊娠期間、低出生体重児リスク、早産リスクを検討した。 観測因子(多胎出生、出生順位、両親の社会人口統計学的背景)で補正した標準的な多変量解析法を用いて、一般人口における妊娠の方法の違いによる出生アウトカムの差を解析した(家族間分析)。次いで、同胞比較アプローチを用いた家族内分析として、MARで妊娠した子供を、自然妊娠の同胞と比較した。家族間の有意差が、同胞との比較ではほぼ消失 2000年末までにフィンランドで出生した6万5,723人の子供のうち、1995~2000年の期間にMARで妊娠したのは2,776人(4%)であり、残りの6万2,947人が自然妊娠であった(家族間分析の対象)。このうち578の家族に、MARで妊娠した1人以上の子供(625人)と、自然妊娠の1人の同胞(620人)がいた(家族内分析の対象)。 家族間分析では、MARで妊娠した子供は自然妊娠の子供に比べ、子供の観測因子および両親の背景因子で補正したすべてのアウトカムが不良であった。出生時体重は、60g(95%信頼区間[CI]:-86~-34、p<0.0001)低く、妊娠期間は2日(-2.6~-1.5、p<0.0001)短く、低出生体重児リスクが1.61%(0.68~2.55、p=0.001)高く、早産リスクは2.15%(1.07~3.24、p<0.0001)高かった。 同胞と比較する家族内分析では、家族間分析でみられた出生アウトカムの乖離は縮小し、MARと有害な出生アウトカムの関連は実質的に減弱しており、有意差はなくなった。出生時体重の差は、-31g(95%CI:-85~22、p=0.252)、妊娠期間の差は-1.3日(-2.6~0.0、p=0.059)、低出生体重児リスクの増加は1.42%(-0.66~3.51、p=0.18)、早産リスクの増加は1.56%(-1.26~4.38、p=0.278)だった。 自然妊娠の同胞より先に出生したMAR妊娠の子供744人では、ベースラインの未補正の4つのアウトカムはいずれも有意に不良であったが、自然妊娠の同胞より後に出生したMAR妊娠の子供464人では、出生時体重がむしろ重く(有意差はない)、低出生体重児リスクおよび早産リスクにも有意差はなかった。子供の性別と多胎出生で補正すると、出生時体重の差は、先に出生したMAR妊娠の子供では163g(95%CI:-220~-105、p<0.0001)低かったのに対し、後に出生したMAR妊娠の子供ではむしろ58g(-28~144、p=0.183)重かった。 著者は、「不妊治療としてMARを考慮しているカップルや、MARのリスクについて患者に助言を行う医師、および公衆衛生政策の立案者にとって、MAR関連リスクの理解はきわめて重要である」としている。

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