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飽くことなき向上心(解説:今中和人氏)-1093

 全米521施設での、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)のstroke発生率の経時的推移を見た論文である。対象は2011年11月~2017年5月まで5年余の間の10万1,430例(年齢中央値83歳、女性47%)で、20%に中等度以上の弁逆流があり、三尖以外の形態の弁が10%、透析患者が4%含まれていた。塞栓防止フィルターの使用については、本文中には詳細な記述がない。 全調査期間のstroke発生率は2.3%(うち約5%が出血性梗塞)、一過性脳虚血は0.4%で、イベント発生はTAVR当日が半数、中央値は2日だった。発生率は調査期間を通じて不変で、リスク因子は、有意ではあるが年齢も84歳vs.82歳。そのほか、女性、stroke既往、PAD合併、頸動脈狭窄合併、STSスコア高値などが挙がっていて、n数が大きいので有意差はついたが、臨床の現場でselectionに資するほどの違いはない。施設ごとの経験症例数(カットオフ100例)や、いかにも関係ありそうな糖尿病や心筋梗塞既往、腎障害や心房細動の有無もstroke発生率に有意差はなかった。過日、問題となった血栓弁と抗凝固療法についても、観察期間が30日とごく短いこともあってstrokeと無関係だった。 塞栓防止フィルター関連の論文だと、MRIでの新規病変を検討したりするのでstroke発生率は10%内外となるが、臨床的に問題となるdisabling strokeについては、大抵1~2%程度である。本論文の著者らは、stroke発生頻度に目立った減少傾向がないことを「残念な現状」というニュアンスで書いているが、外科的大動脈弁置換を行う立場からすると、あんなゴリゴリに石灰化した弁を強引にへし折るようなまねをして、この程度しかstrokeが起きないことのほうが驚きであり、ご立派としか言いようがない。 外科的弁置換では石灰化病変を破砕・露出させるうえ、必ずしも健常でない大動脈に遮断鉗子をかけ、切開し、縫合する。近年は上行大動脈の性状が悪い患者が増えていることもあり、同程度にstrokeが発生する。コマゴマした破片も神経質につまみ出し、こぼれ落ちたかもしれない破片を排除すべく、祈りを込めて何度も洗浄している私たち外科医って一体何やってるんだろう、と、TAVRの2%内外という成績に技術革新の波動を体感する思いがする。TAVRという治療の荒っぽさを思えばおのずと限界はあるはずで、すでにその限界近くに到達している気もするが、2%を容認せずさらなる低下を目指す「飽くことなき向上心」をたたえ、今後の展開に期待したい。 本邦では本稿執筆時点で170弱のTAVR実施施設が認定されており、極端な施設や地域では外科的大動脈弁置換という術式がほぼ消滅したとも聞く。感染症例は言うに及ばず、二尖弁では塊状の石灰化がまれでないためかstrokeは多少増えるようだし、機械弁が適している症例も少なくないはずで、医者側も患者側も、そこまでの傾倒はいかがなものかと思う。先行する欧米もそんな状況にはなっていない。弁輪破裂などの重大事故のほか、いまだ高率な房室ブロックやリークなどの課題、デバイスがきわめて高額なこと(しかも最新鋭ではない!)など、TAVRも良いことずくめではないが、低侵襲性は議論の余地もない。急ピッチのデバイス改良が続き、今やターゲットはintermediate surgical riskからlow riskの患者へと移りつつある。スムーズな治療経過が次の症例を呼び込むわけなので、TAVRが導入されないままの循環器部門は、今後、施設集約化の波にのみ込まれてゆく可能性が高いと思われる。

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第17回 実は脂質が多い!外食の人気メニュー【実践型!食事指導スライド】

第17回 実は脂質が多い!外食の人気メニュー医療者向けワンポイント解説外で食事をする際に、カロリー表示を気にする方は多くいますが、脂質や三大栄養素の配分について考えている方はほとんどいません。「肉だから大丈夫」「野菜が入っているからバランスが良い」そう考えていても、実は脂質の割合が多い外食メニューはたくさんあります。今回は代表的な脂質の多いメニュー3品を、タンパク質量が多く、脂質の少ないヒレステーキと比較しました。●ハンバーグファミレスをはじめ、ステーキの専門店などでもハンバーグを注文する方は多くいます。ハンバーグを割った際のじゅわっとあふれる汁を「旨味成分の肉汁」と考えている方も多いようですが、「溶けた脂質」がほとんどです。脂質なので、旨味成分としては正解ですが、脂質量やカロリーは過多になります。ハンバーグの原材料であるひき肉は、赤身と脂肪を一定の割合で混ぜて作ります。つまり、純粋な赤身肉部分だけよりも脂質の割合が高くなっているわけです。<参考>デニーズ:All Beefハンバーグ~デミグラスソース(デミグラスソースハンバーグ)556Kcal、タンパク質29.5g、脂質38.1g、炭水化物24g●カレーカレールゥの原材料表示を見ると、どのメーカーも小麦粉と食用油脂(牛脂、豚脂、牛脂豚脂混合油、パーム油など)のどちらかが必ず1番目と2番目にきます。この食用油脂のメインは動物性脂質です。つまり、カレールゥは「スパイスのかたまり」ではなく、「小麦粉と動物性脂質のかたまり」にスパイスを加えたものということです。あまり具材の入っていないカレーを食べる場合、栄養バランスはご飯(炭水化物)にルゥ(脂質)をかけて食べるというイメージになります。具材が多く含まれるカレーを選ぶことが大切です。<参考>CoCo壱番屋:ポークカレールゥ(ポークカレーからライス300gを抜いて計算)251kcal、タンパク質4g、脂質19.1g、炭水化物15.2g*ポークカレーは755kcal、タンパク質11.5g、脂質20g、炭水化物126.5g●牛丼牛丼チェーン店の牛肉は、やわらかく旨味のあるバラ肉を使用しています。牛肉がたくさんのっていると考えている方も多いですが、脂肪部分が半分程度を占めるため脂質の割合が高くなります。脂質だけではなく、糖分や塩分も高くなりがちなメニューです。<参考>吉野家:牛丼(並盛)アタマ(ご飯230gを抜いて計算)266kcal、タンパク質14.4g、脂質19.7g、炭水化物7.5g*牛丼(並盛)は652kcal、タンパク質20.2g、脂質20.4g、炭水化物92.8g●比較対象のヒレステーキ300kcal分ヒレ部分は肉の中でも脂質が少ない部位です。また、ステーキは調味料で焼くだけのシンプルな調理法です。外食でタンパク質を摂取しよう、脂質を低くしようと考える場合、ヒレや赤身、胸肉、ささみなどの低脂肪な部位をシンプルに調理したメニューを意識すると、脂質が減り、タンパク質を摂取できるので良いでしょう。<参考>牛ヒレ(輸入牛)ステーキ250gエネルギー333kcal、タンパク質51.3g、脂質12g、炭水化物0.8g

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鉄剤と葉酸の漫然投与を見抜き中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第2回

 処方提案をする際には、副作用や相互作用による影響を検討するだけでなく、患者さんの希望を聞き取り、前向きに治療を受けられるようにすることも重要です。今回は、多剤併用に悲観的な患者さんに漫然投与されていた薬剤の中止提案を行った症例を紹介します。患者情報施設入居、70歳、女性、身長:140cm、体重:50kg現病歴:関節リウマチ、高血圧、骨粗鬆症処方内容アムロジピン錠2.5mg 1錠 朝食後エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 朝食後クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 朝食後アルファカルシドール錠0.5μg 2錠 朝食後センナ・センナ実顆粒1g 朝夕食後葉酸錠5mg 2錠 朝夕食後アレンドロン酸錠35mg 1錠 起床時・木曜日症例のポイントこの患者さんは、「処方される薬が多いのは自分が重い病気だからであり、これ以上楽になることはない」と考え、悲観的になっていました。多剤併用が苦痛だったようです。上記の薬剤を継続することによって、心理的負荷の増加、鉄剤継続に伴う便秘や肝機能障害、胃腸障害などの懸念もありました。そこで、薬剤の削減ができないか見直しました。関節リウマチなどの炎症性疾患の患者さんでは貧血が比較的多くみられますが、それらによる二次性貧血の場合は原疾患の治療の見直しが必要になることがあります。また、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠が長期間投与されていますが、メトトレキサートの副作用予防のための葉酸というわけでもないため患者さん自身はあまりメリットを感じておらず、投与量の見直しも行われていないようです。そこで、鉄欠乏性貧血もしくはリウマチに伴う二次性貧血の見極めの必要性、そして葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の漫然投与の可能性を考え、血液検査からのアプローチを行いました。鉄欠乏性貧血は、貯蔵鉄が枯渇することでHb(ヘモグロビン)合成材料の血清鉄が不足して起こる。鉄の貯蔵と血清鉄の維持を行うフェリチンは鉄の貯蔵状態を反映しており、鉄剤治療を行う際の重要なモニタリング項目となる。貯蔵鉄を運搬するTIBC(トランスフェリン)は鉄欠乏の状態で増加することから、TIBCの増加は鉄の全体量としての不足を意味する。本来、鉄欠乏性貧血は、Hb:男性12g/dL未満・女性11g/dL未満、フェリチン:12ng/dL未満、TIBC:360μg/dL以上が治療対象となる。処方提案と経過往診同行の際に、医師に葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の評価を提案しました。葉酸錠については葉酸、クエン酸第一鉄ナトリウム錠についてはフェリチンとTIBCの検査オーダーを依頼し、下記の血液検査結果(1)の結果が得られました。TIBCが正常であり、葉酸は充足過剰かつフェリチンが十分であることからリウマチの二次性貧血が疑われますが、めまい・ふらつき・倦怠感などの自覚症状もないことから、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の処方中止を医師に提案し、中止となりました。血液検査結果(1)(介入時提案)MCV:97、Hb:9.9g/dL(↓)、Alb:3.0g/dL、AST:13U/L、ALT:4U/LBUN:14.0mg/dL、Scr:0.61mg/dL、Na:139mEq/L、K:3.5mEq/L、Ca:9.1mg/dLFe:35μg/dL(↓)、TIBC:420μg/dL、フェリチン:203.5ng/mL、葉酸:706.0ng/mL(↑)両剤を中止後、自覚症状の出現や増悪などもなく2週間が経過し、服用錠数が減ったことで気持ちも楽になったことを患者さんより聞き取りました。フォロー中の血液検査結果(2)でも血清鉄こそ基準値に満たないものの、フェリチンは充足しており、自覚症状の出現もなく安定した体調を維持しています。本症例は、関節リウマチによる二次性貧血の可能性が高く、原疾患の治療コントロールを目標に現在もフォローを継続しています。血液検査結果(2)(処方変更3ヵ月後の検査結果)MCV:96、Hb:11.6g/dL、Alb:3.7g/dL、AST:16U/L、ALT:5U/L、BUN:16.2mg/dL、Scr:0.55mg/dL、Na:137mEq/L、K:4.0mEq/L、Ca:9.0mg/dLFe:30μg/dL(↓)、TIBC:385μg/dL、フェリチン:192.5ng/mL、葉酸:4.7ng/mL日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会 編. 鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第3版. 響文社;2015.

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糖尿病外来患者の検査、施設でばらつき

 「全国のレセプトデータを調査し、糖尿病診療の質指標を測定した研究」について、国立国際医療研究センターと東京大学大学院医学系研究科などで構成される研究グループが、7月30日に研究結果を発表し、“Diabetes Research and Clinical Practice”1)にも掲載された(発表者:杉山 雄大氏[国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター 医療政策研究室長])。 糖尿病診療では、血糖・血圧などのコントロールの他に、合併症を早期診断するために合併症検査を定期的に行うことが重要だとされている、しかし、これまで一部の保険者や施設の実施割合の報告はあったものの、全国における状況を調べた研究はなかったことから今回行われたものである。 本研究では、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いて、2015年度に糖尿病薬の定期処方を受けている外来患者(約415万例)が、『糖尿病治療ガイド』(日本糖尿病学会 編・著)などで推奨されている糖尿病関連の検査を受けている割合を糖尿病診療の質指標として測定した。同時に、都道府県別、日本糖尿病学会認定教育施設としての認定有無別の指標も計算し、さらに施設単位の指標のばらつきを観察した。網膜症検査と尿検査の実施割合の低さが顕著 主な結果は以下のとおり。・血糖コントロール指標(HbA1c またはグリコアルブミン)を測定したのは96.7%・網膜症検査を受けたのは46.5%(都道府県別範囲:37.5−51.0%、認定有無別:44.8%(認定無し)対59.8%(認定有り))・尿定性検査を受けたのは67.3%(都道府県別範囲:54.1−81.9%、認定有無別:66.8%対92.8%)・尿アルブミンまたは蛋白の定量検査を受けたのは19.4%(都道府県別範囲:10.8−31.6%、認定有無別:18.7%対54.8%) 以上から血糖コントロール指標の測定は良好ではあるものの、網膜症検査と尿検査の実施割合が低く、また詳細な解析においては都道府県別・施設別のばらつきが課題であることが判明した。着実な検査の実施が糖尿病診療の質の向上に寄与 研究グループでは、新しい検査・治療の開発などにより、取るべき指標や指標の定義も変わることもあるとしながらも、「これらの数値は糖尿病診療の質指標と捉えることができ、医療従事者が着実な検査実施に注意を払うことで、今後の糖尿病診療の質が向上することが期待されるとともに、都道府県が医療計画などを立案する際や診療報酬改定に関して議論を行う際の資料になるなど、エビデンスに基づいた政策立案を推進することが考えられる」と展望を述べている。

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抗凝固療法終了後のVTE、10年で3分の1以上が再発/BMJ

 非誘発性の静脈血栓塞栓症(VTE)の初回エピソードを発症し、3ヵ月を超える抗凝固療法を終了した患者における累積VTE再発率は、2年で16%、5年で25%、10年では36%に達することが、カナダ・オタワ大学のFaizan Khan氏らMARVELOUS共同研究グループの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年7月24日号に掲載された。抗凝固療法は、非誘発性VTEの初回エピソード後のVTE再発リスクの抑制において高い効果を発揮するが、この臨床的な有益性は抗凝固療法を中止すると維持されなくなる。抗凝固療法を無期限に中止または継続すべきかの判断には、中止した場合のVTE再発と、継続した場合の大出血という長期的なリスクとのバランスの考慮が求められるが、中止後のVTE再発の長期的なリスクは明確でないという。中止後の長期のVTE再発率をメタ解析で評価 研究グループは、非誘発性VTEの初回エピソード例において、抗凝固療法中止後のVTE再発を評価し、最長10年の累積VTE再発率を検討する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 2019年3月15日までに、医学データベースに登録された文献を検索した。対象は、非誘発性VTEの初回イベントを発症し、3ヵ月以上の抗凝固療法を終了した患者において、治療中止後の症候性VTEの再発について報告した、無作為化対照比較試験または前向きコホート研究とした。 2人の研究者が独立的に試験選出・データ抽出を行い、バイアスリスクを評価。適格と判定された試験のデータについて、各論文執筆者に確認を求めた。個々の研究の抗凝固療法中止後のVTE再発イベントの発生率および追跡期間の人年を算出し、変量効果メタ解析でデータを統合した。男性で再発率が高い傾向、再発による死亡は4% 18件の研究(7,515例)が解析に含まれた。4件が前向き観察コホート研究、14件は無作為化対照比較試験であった。すべての研究が、Newcastle-Ottawaスケールで「質が高い」と判定された。 抗凝固療法中止後100人年当たりのVTE再発率は、1年時が10.3件(95%信頼区間[CI]:8.6~12.1)、2年時が6.3件(5.1~7.7)、3~5年が3.8件/年(3.2~4.5)、6~10年は3.1件/年(1.7~4.9)であった。また、累積VTE再発率は、2年時が16%(13~19)、5年時が25%(21~29)、10年時は36%(28~45)であった。 男女別の抗凝固療法中止後1年の100人年当たりのVTE再発率は、男性が11.9件(95%CI:9.6~14.4)、女性は8.9件(6.8~11.3)であり、10年時の累積再発率はそれぞれ41%(28~56)および29%(20~38)であった。 VTE再発率は、孤立性肺塞栓症患者と比較して、近位深部静脈血栓症患者(率比:1.4、95%CI:1.1~1.7)および肺塞栓症+深部静脈血栓症患者(1.5、1.1~1.9)で高かった。また、遠位深部静脈血栓症患者における中止後1年時の100人年当たりのVTE再発率は1.9件(95%CI:0.5~4.3)であった。VTE再発による死亡率は4%(2~6)だった。 著者は、「これらのデータは、非誘発性VTEの診療ガイドラインの策定に役立ち、患者に予後を説明する際の信頼度を高め、長期のマネジメントに関する意思決定の支援に有用と考えられる」としている。

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認知症の有無によるせん妄の影響

 せん妄エピソード後の機能や認知機能の低下および死亡率に対し、認知症の有無が影響を及ぼすかについて、オランダ・Meander Medical CentreのSofie van Roessel氏らが、レビューを行った。Maturitas誌2019年7月号の報告。 認知症およびせん妄について、MEDLINE、EMBASEよりシステマティックに検索を行った。研究結果をスクリーニングした後、関連性および妥当性を評価し、データを抽出した。認知機能低下は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアの低下と定義した。機能低下は、バーセル尺度(BI)、手段的日常生活動作(IADL)スコアの低下または施設入所と定義した。 主な結果は以下のとおり。・潜在的に関連する研究5,092件より、8研究がレビューに含まれた。・1年死亡率は、認知症患者で11~45%、非認知症患者で22~44%、全体絶対率は34%(95%CI:0.32~0.36)であった。・プールされたデータに、グループ間で有意な差は認められなかった。・MMSEスコアとBIは、6ヵ月後に両群において改善が認められたが、IADLスコアの減少が認められた。・しかし、認知症患者は非認知症患者と比較し、すべての時点におけるスコアが有意に低かった。・さらに、せん妄発症後の施設入所リスクは、非認知症患者が20%であったのに対し、認知症患者は33%であった(95%CI:0.06~0.20)。 著者らは「せん妄後の1年死亡率は34%と高く、これは認知症の有無にかかわらず有意な差が認められなかった。認知症患者では、機能や認知機能のスコアが有意に低く、せん妄後の施設入所リスクが高かった。患者および介護者は、この情報を共有すべきであり、事前のケア計画にも役立つ可能性がある」としている。

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子供の体脂肪量測定、正確で簡便な方法を開発/BMJ

 身長、体重、年齢、性別、民族という5つの因子に基づき、子供の体脂肪量をBMIより正確に測定する可能性のある新たなモデルが開発された。英国・ロンドン大学のMohammed T. Hudda氏らが、BMJ誌2019年7月24日号で報告した。体重に基づく尺度として、BMIは非脂肪量(lean mass)と脂肪量(fat mass)を判別せず、既定のBMIの集団でも脂肪量に大きなばらつきがあり、心血管代謝疾患のリスクとの関連にも違いが生じる可能性があるという。子供の体脂肪量の評価を改善するために、日常的に利用しやすい測定値に基づく、より正確で簡便な方法が求められている。4つの横断研究をメタ解析で統合し、モデルを導出 研究グループは、複雑な評価形式を要さず、身長や体重などの人口統計学的な情報を使用した子供の体脂肪量の予測モデルを開発し、妥当性を検証する目的で、個人レベルのデータを用いたメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成による)。 予測モデルの開発には、英国の4つの横断研究に参加した4~15歳の多民族で構成される2,375例(男児1,136例[47.8%])のデータを用いた。外的妥当性の検証には、11~12歳176例の形態測定値と重水希釈法による体脂肪量のデータを使用した。 内的妥当性の評価では、optimism(モデルの過大評価)を推算し、bootstrap法(1,000サンプル)を用いてこの過大評価を調整することで予測能を修正した。 身長、体重、年齢、性別、民族の予測変数を含む最終モデルは、きわめて高い予測能(optimismの調整R2:94.8%、95%信頼区間[CI]:94.4~95.2)を示すとともに、実測値と予測値の優れた較正(calibration)が達成され、過大評価の最小化と良好なモデルの一般化可能性がもたらされた。 外的妥当性の検討では、体脂肪量の実測値と予測値の良好な較正(較正slope:1.02、95%CI:0.97~1.07)とともに、モデルの有望な一般化可能性(R2:90.0%、95%CI:87.2~92.8)が示された。体脂肪量の実測値と予測値の平均差は-1.29kg(95%CI:-1.62~-0.96)だった。BMIに比べ、正確性が改善する可能性 4~15歳の子供の体脂肪量推定値の予測計算式は以下のとおり。 体脂肪量=weight-exp[0.3073×height2-10.0155×weight-1+0.004571×weight+0.01408×BA-0.06509×SA-0.02624×AO-0.01745×other-0.9180×ln(age)+0.6488×age0.5+0.04723×male+2.8055] ・exp:指数関数、ln:自然対数変換 ・子供が黒人(BA)、南アジア系(SA)、他のアジア系(AO)、その他の民族(other)の場合の数値は1、これら以外の場合の数値は0とする。 ・子供の民族が不明の場合は白人として扱う。 ・身長はメートル(m)、体重はキログラム(kg)、年齢は歳(years)、体脂肪量はキログラム(kg)。 たとえば、12歳の身長1.6m、体重42kgの黒人少女の体脂肪量は、42−exp[0.3073×1.62-10.0155×42-1+0.004571×42+0.01408×1-0.06509×0-0.02624×0-0.01745×0-0.9180×ln(12)+0.6488×120.5+0.04723×0+2.8055]=42−exp[3.5262]=42-33.9929=8.01kgとなる。 著者は「この予測モデルは、肥満の効果的な調査や予防、マネジメントにおいて、子供の体脂肪量の評価の正確性を、BMIと比較して改善する可能性がある。また、このモデルを国際的に適用するには、さまざまな集団におけるさらなる妥当性の検証を要する」としている。

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第25回 心電図の壁~復刻版~(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第25回:心電図の壁~復刻版~(後編)さて、前回に引き続き復刻版の『心電図の壁』*をお届けします。Dr.ヒロの自伝的回想録から、心電図に苦手意識を持つ人の困難を乗り越えるためのヒントになるようお届けします。では、後半戦のはじまり~!*杉山裕章. 内科医の道[電子版エッセイ]. 医学書院;2012.第48回. (※2018年に公開終了)3年目からは循環器レジデント生活だった。有名な先生もいる病院で、今度こそ心電図を教えてもらえるかと思った。でも、当時は専門医取得に向けての研修カリキュラムなども明確ではなく、上司の先生は皆あまりに多忙過ぎだった。しかも、大半のレジデントにとって紙カルテから抽出したデータを用いて学会発表をする、あるいは作りたての院内データベースを使って論文を書くことが“ステータス”であり、多くの者たちがそれを競った。けれども、当時の自分は、レジデントとして知りたいこと・やりたいことを別の部分に見いだしていた(理由はいくつかあるが、生来のヘソ曲がりが悪く作用したのか!?)。当然、データ集計も滞りがち、統計解析も“数遊び”に思えてしまい、なぜかあまり興味がわかなかった(その後、大学院生になった時、一から学び直すのに苦労したが)。結果、また一つ“劣等生”の称号が増えたのかもしれなかった。ただ、この病院で初めて本格的な不整脈の世界に触れた。ちょうど国内で普及し始めた植込み型除細動器(ICD)や両心室ペーシングを用いた心臓再同期療法(CRT)、さらにCARTO®などの三次元マッピングシステムや心房細動を含むカテーテルアブレーション…見るモノ聞くモノすべてが新鮮だった。同僚たちが冠動脈造影やインターベンション(PCI)のとりこになるなか、かつてマニアック路線だった不整脈分野の技術革新を肌で感じ、基本技能の習得に邁進することができた。しかしながら“道”は決して容易ではなかった。現在の日常臨床に広く浸透した12誘導心電図は体表から記録される、いわば“地上”の情報だが、“地下”で起きている電気現象を観察する心臓電気生理学検査(EPS)1)の存在が自分にとっては新たなハードルとなった。しかも、“地上”の心電図は静止画だが、“地下”の世界は動画だった。今ではほとんど何の苦労もなく理解できる心内心電図にも目が泳いだ。何でも出だしにつまずく自分は、カンファレンスで発表しなくてはならない不整脈解析にも当初は5〜6時間くらいかかった2)。横に座って丁寧に教えてくれる“個別指導”的な先生などはおらず(そういうのも何だかムズがゆく感じる性分だが…)、ほとんど独学のOJT(On-the-Job training)に近かったと思う。文字通りの真っ暗闇からスタートした“地下”探索は、体表面心電図の“壁”よりもさらに苦しいものだった。現在も業界のトップを走る大家の先生に、「先生、そんなレベルだと一生EPなんて読めるようにはならないと思うよ」と言われひどく落ち込んだ記憶が今も時々思い起こされる。でも、なぜかここでも諦めなかった。2年ほど続けると、12誘導心電図の“地上”情報だけを見せられても、その裏、すなわち“地下”でどんな現象が起きているかが想像できるようになった。院内では優秀な同僚たちにだいぶと水をあけられたが、“心電図の壁”が崩落する音が微かに聞こえた気がした。今思い返せば、心の耳に聞こえた独特の感覚は、おぼろげながら“何か”をつかんだ瞬間だったのだと思う。いつしか、心電図も不整脈もそれほど怖くはなくなっていた。今、不整脈をどう考えるかを伝える時、なるべくわかりやすい形で“地下”の世界を紹介しようと思っているのも、この経験からだ3)。1:いわゆるイーピー(EP:電気生理学)・スタディと呼ばれている検査で、カテーテルアブレーションでの基本情報ともなる。心臓の中に留置した電極カテーテルから記録する「心内心電図」という理解で良く、10~20、時には30近いカラフルな波形が同時に画面上に描かれる。2:週に2~3件を担当するなか、1症例にこれだけの時間をかけていたとは…“電気部屋”と呼ばれた解析装置のある部屋に深夜、週末問わずに入り浸った。元々こもるタイプなのかもしれないな、ボクは(笑)3:個人的には、専門性の高い心内心電図を誰もが習得すべき内容だとは思わない(循環器専門医でも苦労する人が多い)。ただ、それをデフォルメしたラダーグラム(laddergram)は、“動く地下”の様子を静止画にしたもので、不整脈心電図の理解に有用である。これが理解できると、心臓の中で今どんな電気の流れが起きているのか、想像力もかき立てられワクワクする。その後、自身の出た大学に戻った。不整脈中心の臨床業務もこなしたが、大学院生にはレジデント時代よりも時間に余裕があった。執筆業が加速したのもこの時期だ。また、某企業のホルター心電図解析センターで判読レポート作成のアルバイトも始めた。数年間で4,000件以上のホルター冊子と向き合うこととなり、ささやかながら研究成果4)、書籍化5)にもつながる貴重な体験だった。EPSとも12誘導とも異なる視点で心電図を眺め続けたのも能力アップにつながったように思う。いつしか心電図が“大好き”に変わっていた。三度の飯より、いや、それどころか決して裏切らない“友達”にすら思えた。そして、ある時ふと心電図の「読み方」はどう形成されるのかに興味を持った。そんなことをマジメに相談する人は誰もいなかったので、一人であれこれ考えた。自分が過去に感じた“心電図の壁”を感じている人が決して少なくないことも既に知っていた。苦労しているのは皆同じなのだ、と。でも何故? 学生時代から研修医、レジデント時代まで、自分が心電図にここまで苦労したか振り返ってみると、それは“art”としての「読み方」を伝える授業や実習などがないのが原因ではないか。医学教育がブームになっており、ジェネラリスト志向が高まる中でも、心電図に関する新しい教育システムの話はあまり耳にしない6)。4:膨大な件数をスピーディにこなすため、音声認識ソフトを用いて所見付けを行い、その有用性を報告した。杉山 裕章ほか. 心電図. 2011;31:158-164.や杉山 裕章ほか. 心電図. 2012;32:239-247.など。5:『個人授業 心電図・不整脈 ホルター心電図でひもとく循環器診療』の執筆につながった。6:「令和」時代の現在でも、状況はあまり大きく変わらないように思う。この気づきが、ボクの提唱する「心電図の読み“型”」の基盤である。心電図が読める人の頭の中には、これが正常、という心電図波形の“テンプレート”ができている。それを自分の目の前の心電図と瞬時に比較して、必要な部分だけ“異常”として抽出するカンのようなものを習得している7)。そのやり方・手順は個人それぞれで、自分には明文化できないけれど、一度、心電図と友達になった人は決して見落としがない。この“テンプレート”をどう作っていくか、何をどう比べればいいのかなどが口承伝授されにくいのではないか。ちまたにあふれている所見や診断基準の羅列本はもちろん、“ココだけ”や“速効”、あるいは“わずかな時間で”と、うたうテキスト8)では心電図“テンプレート”は築かれないと思う9)。絶対に。「読み方」に徹底的にこだわった講義や教科書が必要だと思う。先般述べた心電図ゼミや添削指導の類いが、学部や初期研修医・レジデントの教育過程に取り入れられるべきだ10)。波形の各パーツ別に“テンプレート”との差異を抽出する作業は訓練せずして決して身につかず、場数はもちろん、相応の個人努力が必要だ。それを乗り越えた人だけが心電図のうまみを享受しており、そうでない人にとっての心電図は、友達の正反対、永遠に“距離を置きたい存在”以外の何ものでもないのだ。 7:肢誘導の上肢電極の左右つけ間違いを扱った回でも、これを踏まえた表現を登場させているボクとしては、それが心電図の「正常」を知るということなのだと思う。 8:でも、悲しいかな。魅力的な表紙やキャッチーなタイトルの心電図本がAmazonランキングなどでも上位となる傾向がある…。 9:この後、「“正常”な心電図とは何か?」を突きつめた名作(他著)も出版されており、ぜひとも探し求めて欲しい。10:一部の大学医学部や実績・人気のある研修病院では行われているところもあると聞く。このall or none的な状況を何とか打破できないものか。自分は人よりたくさん回り道をしたと思うが、特別“鈍感”だっただめか、あまり“心電図の壁”を強く意識せず、心電図と友達になるプロセスでは最終的に挫折せずに済んだ。心電図ゼミやそのほかの経験も含め、部分的にはラッキーな出来事もあったからかもしれない。ただ、人によってはこうしたチャンスに恵まれないこともあるだろう。丁寧な指導医11)だってどこにでもいるわけじゃない。つまり、運なのか…?いや、否。現在の臨床医学における心電図の汎用性・簡便性・有用性などを考えれば、それじゃダメじゃないかと思う。すべての医師に一定の心電図診断能力が問われているのだ。今もしも、劣等生が経験した、人一倍の苦労の先に得たartたる心電図の「読み方」をカタチにできたら…誰もがきっと今よりずっとスムーズに“心電図の壁”を乗り越えられるのではないか? それは来年10年目を迎える自分の新しい目標の一つになった。「心電教育学」12)と勝手に名付けているが、「読み方」を身体に染み込ませるような新しい教育システムが今後重要視され、そのためのツールが開発されて欲しい13)。何事も一歩を踏み出さなくては始まらない。たとえ“1”でも“0”に比べると無限大倍なのだ14)。11:現在では、DVDやオンライン教材があって素晴らしい!12:残念ながらこの言葉はあまり流行らず、いつしかボク自身も口にするのを忘れていたが、これを機にまたハッと思い出し、わが専門分野の一つとして標榜したいくらいだ(笑)13:この時点で実は『心電図のみかた、考え方[基礎編]』、および『同[応用編]』の原稿がほぼ完成しており、確固たる意志を遠巻きに表明していた。これは教科書であり、講義としては、本連載の『Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター』がボクなりのアンサーの1つ。14:「とにかく一歩踏み出せ」-作業興奮に自分がdriveされたら勝機あり。これが仕事におけるボクのモットーの1つ。人の評価や評判を気にするあまり、せっかくの熱意・才能を無駄にしてしまうのは実にもったいないから。今後「心電教育学」が発展することで、より多くの人が“心電図の壁”を克服できる日が来ることを切に願う。当然ながら、微力ながら自分自身も努力してゆきたいと鼻息を荒くしている。近い日に“その日”が来ることを夢見て。(執筆:2012年7月12日)さて、2回に分けてお送りした『心電図の壁』、いかがだったでしょうか。“プロジェクトX”(中島みゆきの『地上の星』が聞こえてきそうな…)ばりに、劣等生がゼロから“心電図の壁”に挑み、それを乗り越えた過程が、いま心電図や不整脈に悩む方への参考になったらと願っています。Take-home Message正常な心電図波形の“テンプレート”を頭の中にインプットしよう。波形のパーツごとに異常を抽出する練習をくり返すべし-“系統的判読”の重要性きちんと勉強すれば心電図は決して裏切らない“友達”になる!【古都のこと~鷺森神社~】「寺社を散歩するなら早朝」-鷺森(さぎのもり)神社(左京区修学院)で試してみましょう。修学院離宮や曼殊院(門跡)にほど近く、平安時代(貞観年間:859-877)創建の由緒ある神社1)です。到着は6時。「おはようございます」、まずは境内の掃除されている方にごあいさつ。続いて本命、スサノヲノミコト2)にお参りを済ませます。お賽銭、ガラガラ鈴、二礼二拍手一礼。そして振り向くと圧倒的な存在感の御神木が目に飛び込んできます。近づいて周囲の柵に目をやると「区民誇りの木スギ」の説明書きが! 名前そのほかスギに縁のある人なら少しだけ気分が上がります。そして、移動中は大きく息を吸い込みます。静かで深遠な空気は朝だけしか味わえません。鳥居をくぐってここまで約20分。春は桜、夏は青モミジ、そして秋は紅葉で楽しませてくれるでしょう。さぁ、帰ってシャワーを浴びれば極上の休日が始まります。1)もとは比叡山麓にあり、修学院離宮山林中(応仁の乱)を経て、江戸時代(元禄年間:1688-1704)に現在地(鷺の社)に遷座された。2)この神社の八重垣は、祭神であり古事記・日本書紀などに登場する「素戔鳴尊(スサノヲノミコト)」による日本最古の和歌『八雲立つ 出雲八重垣 妻籠(つまご)みに八重垣作る その八重垣を』にちなむ。八岐大蛇(やまたのおろち)から櫛名田比売(くしなだひめ)を救い、姫を妻に得て須賀に新宮を構える際に詠んだ和歌と伝わる。

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ミネブロ錠:3剤目のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬

2019年5月13日、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬、ミネブロ錠(一般名:エサキセレノン)が高血圧治療薬として新たに販売開始となった。高血圧治療に残された課題日本の高血圧患者は4,300万人と推計され、そのうち治療によって適切に血圧がコントロールされているのはわずか1,200万人。残りの3,100万人は治療をしていてもコントロール不良、もしくは治療を行っていないという。このような状況の中、日本高血圧学会は2019年に、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を発表し、高血圧対策を進めていく必要性を訴えた。今回の改訂では合併症のない75歳未満の成人、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者は130/80mmHg未満に、75歳以上の高齢者は140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられている。降圧目標達成のためには個人レベルでの取り組みだけでなく、社会全体での積極的な取り組みが必要であることが強調されており、降圧目標達成率や疾患啓発など、高血圧治療に課題が残されていることがうかがえる。新しく登場したミネブロ錠は高血圧治療の新しい選択肢となり、課題解決に寄与する可能性がある。MR拮抗薬の作用機序について尿細管に存在するMRへ、アルドステロンが過剰に結合し続けると、尿中のナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進させ、循環血量の増加により、血圧が上昇する。ミネブロ錠はMRをブロックし、ナトリウム排泄を促進することで血圧低下効果を発揮する。このMRをブロックするという作用機序から、食塩感受性高血圧の患者さんや原発性アルドステロン症の患者さんで有効性を示すことが期待されている。国内臨床試験成績:中等度腎機能障害に使えるMR拮抗薬国内第III相試験において、I度またはII 度の本態性高血圧症患者を対象に、単剤および他の降圧薬との併用の両方で試験が行われた。単剤投与では2.5mgを1日1回、12週間投与した結果、収縮期血圧は13.7mmHg低下し、エプレレノン(投与量:50mg)に対する非劣性が検証された。また、長期投与試験では52週を通して安定した降圧効果の持続が確認されただけでなく、ARBやCa拮抗薬との併用でも観察期に比べて有意な降圧効果を示している。さらに、中等度腎機能障害を合併した患者やアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併した患者を対象とした試験では1.25mgを1日1回投与し、どちらの患者でも収縮期血圧は10mmHg以上低下している。ARBやCa拮抗薬を用いても降圧目標を達成できず、あと10mmHg程度を下げたいケースに追加する薬剤として良いだろう。そして、最大の特徴の1つは、これまでのMR拮抗薬では禁忌であった中等度腎障害の患者にも使用できるようになっている点である。ただし、副作用である高カリウム血症には注意が必要であり、とくに腎機能が低下している患者では、注意を払いながら使用していくことが求められる。カリウム値のモニタリングを行うなどして、患者に合わせて投与量を調整しながら使用していくことが重要となってくる。今後の可能性ミネブロ錠は単独投与、併用投与どちらでも10mmHg以上の血圧低下効果を示している。今後は、あともう少し血圧を下げたい場合や、これまでMR拮抗薬を使いたいが使えなかった症例において、新しい選択肢の1つとなるのではないか。さらに、MR拮抗薬はアルドステロンの作用を阻害するため、腎臓や心臓などの臓器保護効果を示す可能性があり、ミネブロ錠は高血圧症以外の適応拡大を目指して、糖尿病性腎症患者を対象とした第III相臨床試験が進められている。

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PD-1阻害薬のILD、GGOタイプは予後不良?/日本臨床腫瘍学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、非小細胞肺がん(NSCLC)に有効かつ持続的な効果をもたらすが、ICIによる間質性肺炎(ILD)は致死的となる場合もある。しかし、ILDの画像パターンと抗腫瘍効果、さらに患者の生存との関係は明らかになっていない。新潟大学の渡部 聡氏らはPD-1阻害薬治療患者によるILDの放射線学的特徴と臨床結果の後ろ向き観察試験を実施し、その結果を第17回日本臨床腫瘍学術集会で報告した。 2016年1月~2017年10月に、Niigata Lung Cancer Treatment Group(11施設)の診療記録から、1~3次治療でPD-1阻害薬投与を受けたNSCLC患者を評価した。ILDは各施設の担当医が診断し、画像データを元に独立した1名の放射線科医と2名の呼吸器科医がILDの画像分類を行った。リードタイムバイアスを最小限にするため、PD-1阻害薬開始43日時点(PD-1阻害薬開始からILD発症までの中央値)でのランドマーク解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・231例がPD-1阻害薬治療を受けており、ILD発症は33例(14%)であった。・扁平上皮がんの割合はILD非発症群32%に対しILD発症群では52%とILD発症群で有意に高かった。組織型以外の患者背景は両群で同様であった。・ILD発症33例の画像パターンは、COP(cryptogenic organizing pneumonia-like)16例、GGO(ground glass opacities)16例、NOS(pneumonia not otherwise specified)1例であった。・ランドマーク解析による無増悪生存期間(PFS)中央値は、ILD発症群未達、ILD非発症群8.6ヵ月とILD発症群で有意に長かった(p=0.032)。・全生存期間(OS)中央値は、ILD発症群14.8ヵ月、ILD非発症群24.5ヵ月と両群間に差はみられなかった(p=0.611)。・ILDパターン別のOS中央値は、COP未達、GGO7.8ヵ月、NOS3.3ヵ月であり、COPとGGOの比較ではCOPで有意に長かった(COP対GGO、p=0.018)。・ILD発症後のOS中央値は、COP未達、GGO7.3ヵ月、NOS3.3ヵ月であり、COPとGGOの比較ではCOPで長い傾向にあった(COP対GGO、p=0.05)。 渡部氏らは、この試験の結果から、ILDのパターンとPD-1阻害薬治療後の予後に関連が示唆されるとの見解を示した。

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低~中所得国の高血圧ケア、その継続性は?/Lancet

 低~中所得国(LMIC)では、高血圧ケアを継続中の患者が、どの段階でケアを受けなくなるかに関する全国調査のエビデンスが少ない。一方、この情報は、保健医療サービス介入の効果的な対象の設定や、高血圧ケアの改善の進展評価において重要だという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のPascal Geldsetzer氏らは、LMICにおける高血圧ケアの中断の現況を調査・評価し、Lancet誌オンライン版2019年7月18日号で報告した。44のLMICで4段階の高血圧ケアカスケードを評価 研究グループは、44ヵ国のLMICにおいて、ケアの過程(ケアの必要性から治療の成功まで)の個々の段階でその消失を評価することにより、4段階の高血圧ケアカスケード(血圧測定、高血圧の診断、治療、高血圧コントロール)の達成状況を、国別および集団別に検討する目的で、横断研究を実施した(Harvard McLennan Family Fundなどの助成による)。 最新のWHO Stepwise Approach to Surveillance(STEPS)などのデータセットを用いて、44のLMICにおける2005年以降の個人レベルの集団ベースのデータを収集し、統合した。国別および4地域別(中南米/カリブ海、欧州/地中海東岸、東南アジア/西太平洋、サハラ以南のアフリカ)に解析を行った。 高血圧は、血圧が140/90mmHg以上、または高血圧の薬物療法の報告があることとした。高血圧患者のケアカスケードとして、(1)かつて血圧測定を受けた、(2)高血圧と診断された、(3)高血圧で治療を受けた、(4)高血圧のコントロールが達成された者の割合を算出した。 これらの高血圧ケアカスケードを、年齢、性別、教育、世帯収入、BMI、喫煙状況、国、地域別に評価した。線形回帰モデルを用いて、各カスケードの段階別に、1人当たり国内総生産(GDP)に基づく国のパフォーマンスを推定することで、パフォーマンスが95%予測区間(prediction interval)の範囲外の国を同定した。血圧測定73.6%、診断39.2%、治療29.9%、コントロール10.3% 110万507例(年齢中央値39.5歳[範囲34.8~44.5]、女性割合中央値58.2%[53.2~62.5])が解析の対象となった。このうち19万2,441例(17.5%)が高血圧であった。 高血圧患者のうち、73.6%(95%信頼区間[CI]:72.9~74.3)が血圧測定を受けたことがあり、39.2%(38.2~40.3)が調査以前に高血圧と診断されており、29.9%(28.6~31.3)が治療を受け、10.3%(9.6~11.0)で高血圧のコントロールが達成されていた。 中南米/カリブ海地域は、4つのケアカスケードすべての割合が最も高く、サハラ以南のアフリカは4つすべてが最も低かった。高血圧コントロールの達成率が5%未満の国の割合は、サハラ以南のアフリカ地域が16ヵ国中10ヵ国(63%)であったのに対し、東南アジア/西太平洋地域は8ヵ国中3ヵ国(38%)、欧州/地中海東岸地域は10ヵ国中1ヵ国(10%)、中南米/カリブ海は10ヵ国中0ヵ国(0%)だった。 4つのすべてのケアカスケードの達成が、調査年の1人当たりGDPに基づく予測値を実質的に上回っていたのは、バングラデシュ、ブラジル、コスタリカ、エクアドル、キルギス、ペルーであった。これに対し、4つのカスケードがすべて予測値を有意に下回っていたのは、アルバニア、インドネシア、タンザニア、ウガンダ、南アフリカ共和国だった。 女性、年齢が高い、調査時に非喫煙、世帯収入が多いことは、単変量および多変量解析の双方で、4つのケアカスケードの達成と正の相関を示した。また、学歴が高いことは、多変量解析において4つのケアカスケードの達成との関連が認められた。 著者は、「今回の研究は、LMICにおける高血圧の保健医療の施策やサービスの計画および対象設定に関して、重要なエビデンスをもたらす」とし、「LMICの中には他のLMICに比べ実質的に高血圧ケアカスケードの達成が良好な国が存在する理由や、異なる環境でケアカスケードを最も効果的に改善する方策を知るには、さらなる研究が求められる」と指摘している。

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続・アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-1089

 心房細動に対するカテーテルアブレーション(CA)が患者予後そのものを改善するか?ということについては、以前CASTLE-AF研究が発表された際にも当シリーズでコメントさせていただいた。CASTLE-AFは「重症心不全のAF患者」を対象とした無作為ランダム化試験(RCT)であり、コントロール群と比較しCA群で死亡・心不全入院が約4割減少するという衝撃的なまでの予後改善効果を提示した(第847回)。では、より一般的な「心不全でないAF」に対するCAの効果はどうなのか? 同稿の最後にも記したが、そこは長らくCABANAという名前の他施設共同国際臨床試験の結果が待たれていた(南国的でゴキゲンな名称であるが、試験が行われたのは北米)。 今回、そのCABANA試験の結果が満を持して発表された(JAMA誌に2報同時に掲載され、第1報は患者予後に関する主解析であり[予後改善効果はなし]、第2報はQOLを扱ったものであった[CAにQOL改善効果あり])。 自分が今回担当させていただくのは後者のQOLに関する論文の講評である(前者に関しては小田倉先生が説明されている)。先ほどさっくりと述べたとおり、コントロール群(抗不整脈薬のみを使用)と比較しCA群でQOL改善の方向で確かに統計的な有意差はついた。だが、今回自分がポイントとして取り上げたいのは、そのQOL改善の程度である。 CABANA研究では AFEQT(※)という質問表を使って患者QOLの評価が行われている。このAFEQTを用いてCA群でのQOL改善の態度は12ヵ月で 5.3ポイントというものであった(95%信頼区間は3.7~6.9)。専門的な話となるが、だいたいAFEQTの5ポイントの増減は、心房細動生活スケール(EHRA:※※)のクラス1つ分の変動と同様と考えられており、確かにこれは臨床的にも有意な変化といえる。※AFEQT(Atrial Fibrillation Effect on QualiTy-of-life)とは心房細動患者に特化したQOLを評価するために開発された質問紙表であり、心房細動による症状(4問)、日常生活の制限(8問)、治療の不安(6問)の3つの項目から全体のQOLスコアを算出する仕組みをとっている(0〜100点:0点が最もQOLが悪く、100点が最もQOLが良い)。実際の質問紙表では上記の3項目に治療の満足度(2問)に関する質問を加えた20問から構成され、すべての質問の回答に要する時間は約5~10分程度である(http://www.afeqt.org)。※※ EHRAスケール1.無症状2.心房細動の症状に困っているが、通常の日常生活に影響はない3.高度の心房細動の症状により、通常の日常生活に影響を与えている4.通常の日常生活を送るのが困難であるしかし、この論文をさらに読み進めてみると、実に興味深いグラフが後半に提示されている。長期的に見ると12ヵ月時点の5.3ポイントという差は、2群間(抗不整脈薬のみのコントロール群とCA群の間)で次第に縮まり、60ヵ月後の時点では2.6 ポイント差にまで縮小している。この変化はCA群でQOLが低下したわけではなく、薬物治療群で持続的にQOLが改善してもたらされたものであるが、2.6ポイントという差に臨床的な意味があるかどうかというところはかなり議論が分かれるところであろう。 CABANA試験を語るうえで、抗不整脈にアサインされた群のCAへのクロスオーバー率(27.5%)がしばしば問題点として指摘されるが、このことについては抗不整脈薬をまず使ってみて、そしてその後にCAが必要になったほうが27.5%だった、と解釈するのが妥当ではないだろうか(そのように診療を行ってもハードエンドポイントに差はつかない)。これは安定狭心症に対するPCIの予後改善効果を検証したCOURAGE試験でも同様の議論が行われ、こちらでもハードエンドポイントに差がないことから、今では最初にOptimized Medical Therapy(至適薬物療法)を行ってから必要に応じてPCIを考えるという診療パターンでよいとされている。 このほかに、CABANA試験は非盲検の臨床試験であることもLimitation(限界)として指摘されており、ランダム化された後に両群ともに治療への期待からより自身のQOLを高く評価してしまった可能性がある(この傾向は侵襲の度合いが強いCA群でより顕著であったと考えられる)。なお、この点を克服するにはシャム手技(sham procedure)を取り入れた試験のデザインが必要である。 「歴史は繰り返す」というが、CAがたどってきた道は安定狭心症に対するPCIがたどった道によく似ている。安定狭心症に対するPCIの純粋な予後改善効果はCOURAGE試験によって否定され(2007年)、その後同試験のサブ解析によりQOLの改善効果も限定的(2~3年の短期的なもの)であることが示された(2008年)。また、昨年報告されたORBITA試験では、sham procedureを取り入れてPCIの効果をコントロール群と比較した場合、その短期的なQOLの改善効果すらプラセボ効果によってもたらされた可能性が高いことが指摘されている。 PCIがその力をフルに発揮するのは、急性心筋梗塞をはじめとするACSの症例に対してであり、こちらははっきりと予後改善効果がRCTによって示されている。CAも心不全例に関しては同様であるが、心不全のないAFに対するCAの選択は(安定狭心症に対するPCIと同様)慎重であるべきだろう。「CAでAFを根治できる」などという説明は行うべきではなく、少なくとも予後改善でなくQOL改善を目的とするという説明の仕方がフェアであるように思われる。QOLが維持できているAF患者さんに対するCAの用途は、今回の結果を見てみてもきわめて限定的であるといえるのではないか。謝辞 本稿の作成に当たっては当科の池村 修寛医師の協力を得た。池村医師はAFEQTを用いた研究で成果を挙げており(Ikemura N, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e191145.、Ikemura N, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2019;12:e005573.)、氏の協力なくしてCABANA試験のQOL解析に関する本質的な洞察は不可能であった。この場を借りて感謝を申し上げたい。

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人工呼吸器からのウィーニング方法についての検討(解説:小林英夫氏)-1091

 病態が改善してきた人工呼吸器装着症例において、どのような手順でウィーニングを成功させるかというテーマは、数十年前から議論されてきたが今もって完全な結論は得られていない。本論文を簡潔化すると、圧制御換気(pressure support換気)がTピース換気よりも人工呼吸から離脱しやすいようである、と結論している。この結論は、近年の多くの論文、総説と同様の結果であり、解説者も特段の異論は有していない。 さて、集中治療領域は別にして、大半の本サイト閲覧氏にとって人工呼吸は日々関わることのない特殊分野であろう。圧制御換気は吸気時に一定圧を機械で補助する方式、Tピース換気はT字型に組み合わせたチューブを取り付ける昔ながらの方式である。これまで種々の見解が報告されてきたが、今世紀の論文では圧制御換気優位とする見解が主流で、2017年の米国胸部・呼吸器学会合同作成ガイドラインも圧制御換気優位としていた(Ouellette DR, et al. Chest. 2017;151:166-180. 、Girard TD, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2017;195:120-133. )。しかしその後もウィーニング関連研究は続き、本論文はJAMA当該号のEditorialで取り上げられた。一般論では、人工呼吸は非生理的であり可及的早期に解放すべき手技であるが、拙速な離脱は病態再悪化に結び付いてしまう。適切なタイミングとウィーニング法の選択が求められるが、多数の検討でも最終結論に至っていない。その理由には、多様な原疾患が混在する対象群、他臓器障害の程度、ウィーニング後治療が標準化されていない、制御圧の値が種々、対象群をランダマイズしても治療法は盲検ではない、自発呼吸トライアル時間も未定、など未解決要素が多々存在する。現実的には難しいものの、これらのバイアスを解消できる研究がなされなければ、本論文のような繰り返しが続くのであろう。同時に、人工呼吸管理の適応病態自体もこれまで以上に検討すべき重要課題である。 なお、人工呼吸器から離脱することはweaning、ウィーニング、ウイニングなどとの記載が一般的であったが、上記2017年のガイドラインではliberation(解放)との表現を用いている。

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新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第144回

新型タバコで急性好酸球性肺炎になった人いらすとやより使用急性好酸球性肺炎(AEP)といえば、初めて喫煙をした若い男性が起こす強いアレルギー性肺炎で、末梢血や気管支肺胞洗浄液中の好酸球比率は数十%に及びます。全身性ステロイド投与によって著明に改善するので、予後は極めて良いです。呼吸器内科医としては、「初めての喫煙」というキーワードで必ず鑑別に挙げなければならない疾患です。基本的には燃焼式の紙巻きたばこによって起こるのですが、電子タバコや加熱式タバコでも起こりうるという症例が報告されています。Thota D, et al.Case report of electronic cigarettes possibly associated with eosinophilic pneumonitis in a previously healthy active-duty sailor.J Emerg Med. 2014;47:15-17.1例目はこれまで既往歴のない水兵さんです。電子タバコを吸った直後にAEPになり、ステロイドと抗菌薬で治療されました。海外の電子タバコは、日本では基本的に輸入以外では用いられず、加熱式タバコとは別物です。海外では、リキッドタイプのものが主流です。Arter ZL, et al.Acute eosinophilic pneumonia following electronic cigarette use.Respir Med Case Rep. 2019;27:100825.2例目は、電子たばこを吸い始めて2ヵ月目に呼吸不全で救急搬送された18歳女性です。ICUに入室するほどひどい状態でしたが、ステロイド投与してわずか6日目に退院したそうです。Kamada T, et al.Acute eosinophilic pneumonia following heat-not-burn cigarette smoking.Respirol Case Rep. 2016;4:e00190.3例目は、加熱式タバコによって起こった急性好酸球性肺炎の日本の症例報告です。加熱式タバコ開始から6ヵ月後に急性好酸球性肺炎を起こし、入院しました。加熱式タバコによる急性好酸球性肺炎は、実はこの症例が世界初の報告とされています。内因性に急性好酸球性肺炎を起こしやすい患者さんが、たまたま偶発的に新型タバコを始めた後に同疾患を発症したのかどうかは、疫学的研究を立案しないことにはわかりません。ですが呼吸器内科医としては、紙巻きタバコを止められないときの代替案として新型タバコを提示したくはないですね。

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アジアの非喫煙女性の肺腺がんの危険因子

 アジアの非喫煙女性において、結核が肺がん発生の危険因子であることを支持する研究結果が、米国・国立がん研究所のJason Y. Y. Wong氏らにより報告された。この研究は、Female Lung Cancer Consortium in Asiaにおける結核ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を用いて、結核への遺伝的な感受性が非喫煙者の肺腺がん発生に影響するかどうか調査したものである。Genomics誌オンライン版2019年7月12日号に掲載。 本研究では、5,512例の肺腺がん症例と6,277例のコントロールのGWASデータを使用し、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連をadaptive rank truncated product法によるパスウェイ解析を用いて評価した。なお、遺伝子セットは、以前の結核GWASでの遺伝的変異体と関連が知られている、もしくは示唆される31個の遺伝子から成る。続いて、以前の東アジアの結核GWASでの3つのゲノムワイドの有意な変異体を用いて、メンデルランダム化により結核と肺腺がんとの関連を評価した。 その結果、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連が認められた(p=0.016)。さらに、メンデルランダム化で、結核と肺腺がんとの関連が示された(OR:1.31、95%CI:1.03~1.66、p=0.027)。

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がん慢性疼痛の薬物治療に有意な差/JCO

 がん慢性疼痛に処方するオピオイドの効果は、どれでも同じではないようだ。中国・雲南省第一人民病院のRongzhong Huang氏らは、Bayesianネットワークメタ解析にて、がん慢性疼痛治療について非オピオイド治療を含む有効性の比較を行った。その結果、現行のがん慢性疼痛治療の有効性には、有意な差があることが示されたという。また、特定の非オピオイド鎮痛薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)について、オピオイドと同程度の有効性を有する可能性が示唆されたことも報告した。がん慢性疼痛にはオピオイドが主要な選択肢となっている。一方で多くの非オピオイド鎮痛薬は現在、その有効性について公表されたエビデンスが少ないまま、がん慢性疼痛に処方されているという。Journal of Clinical Oncology誌2019年7月10日号掲載の報告。 検討は、がん慢性疼痛の治療において、あらゆる全身性薬剤による治療および/またはそれらの組み合わせを比較している無作為化対照試験(RCT)を、電子データベースを検索して行われた。 主要アウトカムは、オッズ比(OR)で報告されている全体的な有効性とし、副次アウトカムは、標準化平均差(SMD)で報告されている疼痛強度の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・検索によりRCT81件、患者1万3例、11種の薬物治療のデータを、解析に包含した。・大部分のRCT(80%)は、バイアスリスクが低かった。・全体的な有効性が高い薬物クラスは上位から、非オピオイド鎮痛薬(ネットワークOR:0.30、95%確信区間[CrI]:0.13~0.67)、NSAIDs(0.44、0.22~0.90)、オピオイド(0.49、0.27~0.86)の順であった。・上位にランクされた薬物は、リドカイン(ネットワークOR:0.04、95%CrI:0.01~0.18、累積順位曲線下表面解析[SUCRA]スコア:98.1)、コデイン+アスピリン(0.22、0.08~0.63、81.1)、プレガバリン(0.29、0.08~0.92、73.8)であった。・疼痛強度の低減については、プラセボに対して優越性を示す薬物クラスを見いだせなかった。・一方で、プラセボに対して優越性を示す薬物で上位にランクされたのは、ziconotide(ネットワークSMD:-24.98、95%CrI:-32.62~-17.35、SUCRAスコア:99.8)、dezocine(-13.56、-23.37~-3.69、93.5)、ジクロフェナク(-11.22、-15.91~-5.80、92.9)であった。

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オンライン英会話再び【Dr. 中島の 新・徒然草】(283)

二百八十三の段 オンライン英会話再び昔、私がオンライン英会話で勉強をしていたこと(百三十三の段)、最近は女房が頑張っていることは以前に述べました(二百七十の段)。スカイプを使ってフィリピン人の講師に教えてもらうシステムですが、いつの間にか私はやらなくなっていました。ところが先月から、スマホを使って<CAMBLY>という別のオンライン英会話を始めました。こちらは講師が全員ネイティブというのがウリで、私の場合、1回の授業が15分です。実際にやってみると、確かに当たった講師は全員が英語圏出身の人たちでした。面白いのは、色々な国に住んでいる講師がいるということです。フィリピンに住んでいるカナダ人、トルコに住んでいるアメリカ人、ついには東京に住んでいるイギリス人まで登場しました。この先生は日本人女性と結婚し、7歳の娘さんがおられます。家では英語で、外では日本語で喋っているのだとか。今のところ特に固定した講師がいないので、毎回、自己紹介から始めています。中島「日本の大阪からです」講師「そいつはいい」中島「大阪を知ってますか?」講師「知ってるよ、行ったことないけど」大阪の知名度もまあまあってとこでしょうか。中島「職業は医師です」講師「すごーい」中島「専門は neurosurgery(脳神経外科)です」講師「Oh, OK」ちょっと引かれているような気が。講師「ちょっときいていいかな?」中島「ええ」講師「手術の対象は何になるわけ? 脊髄とか末梢神経とか脳とか」中島「脳ですね」講師「Oh, OK」脳ってのは、どこの国でも禁断の臓器なのかもしれません。講師「脳の手術って難しいんだろうね」中島「ええ、やはり自分が術者の時はプレッシャーがありますね」こういう簡単な表現が難しいのです。そもそも「プレッシャーがある」ってのは、何ていうのかな。講師「なんだって医者になったんだい」中島「高校の成績が良かったからですね」これまた出てきません。「高校の成績が良かった」って、どない言ったらエエねん。後で調べたら、"my grades were excellent in high school" という表現が見つかりました。でも、こんな英語で詰まっているようでは「成績が良かった」というのも全然説得力がありません。苦難は続きます。中島「医学部を受験してみようかなって言ったら、引っ込みがつかなくなって」この「引っ込みがつかない」というのも言われんがな。"I was backed into a corner." という表現を後で知りました。これは「要らんこと言って追いつめられてしまった」というニュアンスか?というわけで15分間、汗だくの英会話ですが、簡単な表現が難しい!ウンウン唸りながらその場をしのぎ、後でネットを調べます。「ホントはこう言ったら良かったのか」などと考え、今度は英作文に挑戦。外国人相手に流暢な英語を喋っている自分を頭に思い描いて、文字にするわけです。これを<IDIY>という英文添削サイトで直してもらうのですが、今度は冠詞や複数形がボロボロ。まあ、実際の会話では冠詞や複数形の間違いくらいは大目に見てもらえるでしょう。やはり、言いたい事がパッと英語で出てくるか否かの問題ですね。亀のようにノロノロと進む毎日ですが、とりあえず1ヵ月続けることを目標にしたいと思います。最後に1句汗だくで ウンウンうなる 英会話

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。独自のメタアナリシスを実施したCQも そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。各領域で取り上げられているCQ[総論] CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?[造血器] CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か? CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?[消化器] CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか? CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか? CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?[呼吸器] CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか? CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか? CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?[乳腺] CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか? CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か? CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

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重度の日本人アルコール依存症に対するナルメフェンのランダム化比較試験(第III相試験)

 アルコール摂取量を減らすことは、アルコール依存症患者にとっての治療アプローチの1つである。東京慈恵会医科大学の宮田 久嗣氏らは、飲酒リスクレベル(drinking risk level:DRL)が高い、または非常に高い日本人アルコール依存症患者を対象に、ナルメフェンの多施設共同ランダム化二重盲検比較試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年7月12日号の報告。 対象患者は、心理社会的治療と併せて、必要に応じてナルメフェン20mg群、10mg群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、24週間治療を行った。主要評価項目は、大量飲酒日数(heavy drinking day:HDD)のベースラインから12週目までの変化とした。副次的評価項目は、総アルコール摂取量(total alcohol consumption:TAC)のベースラインから12週目までの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・12週目の主要評価項目の分析対象症例数は、ナルメフェン20mg群206例、ナルメフェン10mg群154例、プラセボ群234例であった。・ナルメフェン群は、プラセボ群と比較し、12週目のHDDの有意な減少が認められた(20mg群:-4.34日/月[95%CI:-6.05~-2.62、p<0.0001]、10mg群:-4.18日/月[95%CI:-6.05~-2.32、p<0.0001])。・同様に、ナルメフェン群は、プラセボ群と比較し、12週目のTACの有意な減少が認められた(p<0.0001)。・治療に起因する有害事象の発生率は、ナルメフェン20mg群87.9%、ナルメフェン10mg群84.8%、プラセボ群79.2%であった。これらの重症度は、ほとんどが軽度または中程度であった。 著者らは「ナルメフェン20mgまたは10mgは、DRLが高い、または非常に高い日本人アルコール依存症患者に対し、アルコール摂取量を効果的に減少させ、忍容性も良好であった」としている。

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長期介護における抗精神病薬再投与の要因

 抗精神病薬は、有害事象などが懸念されるにもかかわらず、認知症の周辺症状(BPSD)に対して一般的に用いられる。長期介護における抗精神病薬の使用中止(Halting Antipsychotic Use in Long-Term care:HALT)試験では、抗精神病薬の減量に成功したが、抗精神病薬の再使用または中止に達しなかった患者が19%でみられた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のLiesbeth Aerts氏らは、抗精神病薬の再使用の理由や現在使用中の要因と、介護スタッフの要望や行動変化との関連について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年7月5日号の報告。 HALT試験に参加した133例中39例は、抗精神病薬の使用を中止したことがないか、定期または頓服で使用されていた。これらの結果に至るまでの状況に関する看護スタッフ、総合診療医、家族の見解について、アンケートベースのアプローチを介して収集した。これらの情報は、観察と詳細ファイル(経過記録、医療記録、処方チャート、インシデントレポート、退院サマリー)を用いて三角法で測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬再使用の最も一般的な要因は、看護師(63.2%)であり、次いで家族(39.5%)、総合診療医(23.7%)、専門医(13.2%)、病院スタッフ(10.5%)であった。・参加者の46.2%において、抗精神病薬使用のための複数のドライバーが認められた。・客観的尺度でこれらの変化が時間とともに識別されなかったとしても、抗精神病薬の再使用の最も多かった理由は、興奮性および攻撃性行動の増加によるものであった。・同意や抗精神病薬使用の習慣は、教育を行ったにもかかわらず不十分なままであった。 著者らは「男性患者の興奮や攻撃性が認められ、介護スタッフによりとくに悪化していると認識されることが、抗精神病薬使用の重要なドライバーとなっていた。HALT試験で使用されたトレーナーモデルは、行動変化に対応する際、スタッフの能力と非薬理学的アプローチを適応することへの自信を向上させるためには不十分であった可能性がある」としている。

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