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再発性多発軟骨炎〔RP:relapsing polychondritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)は、外耳の腫脹、鼻梁の破壊、発熱、関節炎などを呈し全身の軟骨組織に対して特異的に再発性の炎症を繰り返す疾患である。眼症状、皮膚症状、めまい・難聴など多彩な症状を示すが、呼吸器、心血管系、神経系の病変を持つ場合は、致死的な経過をたどることがまれではない。最近、この病気がいくつかのサブグループに分類することができ、臨床的な特徴に差異があることが知られている。■ 疫学RPの頻度として米国では100万人あたりの症例の推定発生率は3.5人。米国国防総省による有病率調査では100万人あたりの症例の推定罹患率は4.5人。英国ではRPの罹患率は9.0人/年とされている。わが国の全国主要病院に対して行なわれた疫学調査と人口動態を鑑みると、発症年齢は3歳から97歳までと広範囲に及び、平均発症年齢は53歳、男女比はほぼ1で、患者数はおおよそ400~500人と推定された。RPは、平成27年より新しく厚生労働省の指定難病として認められ4~5年程度経過したが、筆者らが疫学調査で推定した患者数とほぼ同等の患者数が実際に医療を受けているものと思われる。生存率は1986年の報告では、10年生存率55%とされていた。その後の報告(1998年)では、8年生存率94%であった。筆者らの調査では、全症例の中の9%が死亡していたことから、90%以上の生存率と推定している。■ 病因RPの病因は不明だが自己免疫の関与が報告されている。病理組織学的には、炎症軟骨に浸潤しているのは主にCD4+Tリンパ球を含むリンパ球、マクロファージ、好中球や形質細胞である。これら炎症細胞、軟骨細胞や産生される炎症メディエーターがマトリックスメタロプロテナーゼ産生や活性酸素種産生をもたらして、最終的に軟骨組織やプロテオグリカンに富む組織の破壊をもたらす。その発症に関する仮説として、初期には軟骨に向けられた自己免疫反応が起こりその後は、非軟骨組織にさらに自己免疫反応が広がるという考えがある。すなわち、病的免疫応答の開始メカニズムとしては軟骨組織の損傷があり、軟骨細胞または細胞外軟骨基質の免疫原性エピトープを露出させることにある。耳介の軟骨部分の穿孔に続いて、あるいはグルコサミンコンドロイチンサプリメントの摂取に続いてRPが発症したとする報告は、この仮説を支持している。II型コラーゲンのラットへの注射は、耳介軟骨炎を引き起こすこと、特定のHLA-DQ分子を有するマウスをII型コラーゲンで免疫すると耳介軟骨炎および多発性関節炎を引き起こすこと、マトリリン-1(気管軟骨に特異的な蛋白の一種)の免疫はラットにRPの呼吸障害を再現するなどの知見から、軟骨に対する自己免疫誘導の抗原は軟骨の成分であると考えられている。多くの自己免疫疾患と同様にRPでも疾患発症に患者の腫瘍組織適合性抗原は関与しており、RPの感受性はHLA-DR4の存在と有意に関連すると報告されている。臨床的にも、軟骨、コラーゲン(主にII型、IX、XおよびXIの他のタイプを含む)、マトリリン-1および軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)に対する自己抗体はRP患者で見出されている。いずれの自己抗体もRP患者の一部でしか認められないために、RP診断上の価値は認められていない。多くのRP患者の病態に共通する自己免疫反応は明らかにはなっていない。■ 症状1)基本的な症状RPでは時間経過とともに、あるいは治療によって炎症は次第に治まるが、再発を繰り返し徐々にそれぞれの臓器の機能不全症状が強くなる。軟骨の炎症が基本であるが、必ずしも軟骨細胞が存在しない部位にも炎症が認められる事があり、注意が必要である。特有の症状としては、軟骨に一致した疼痛、発赤、腫脹であり、特に鼻根部(鞍鼻)や耳介の病変は特徴的である。炎症は、耳介、鼻柱、強膜、心臓弁膜部の弾性軟骨、軸骨格関節における線維軟骨、末梢関節および気管の硝子軟骨などのすべての軟骨で起こりうる。軟骨炎は再発を繰り返し、耳介や鼻の変形をもたらす。炎症発作時の症状は、軟骨部の発赤、腫脹、疼痛であるが、重症例では発熱、全身倦怠感、体重減少もみられる。突然の難聴やめまいを起こすこともある。多発関節炎もよく認められる。関節炎は通常、移動性で、左右非対称性で、骨びらんや変形を起こさない。喉頭、気管、気管支の軟骨病変によって嗄声、窒息感、喘鳴、呼吸困難などさまざまな呼吸器症状をもたらす。あるいは気管や気管支の壁の肥厚や狭窄は無症状のこともあり、逆に二次性の気管支炎や肺炎を伴うこともある。わが国のRPにおいてはほぼ半数の症例が気道病変を持ち、重症化の危険性を有する。呼吸器症状は気道狭窄によって上記の症状が引き起こされるが、狭窄にはいくつかの機序が存在する。炎症による気道の肥厚、炎症に引き続く気道線維化、軟骨消失に伴う吸・呼気時の気道虚脱、両側声帯麻痺などである。気道狭窄と粘膜機能の低下はしばしば肺炎を引き起こし、死亡原因となる。炎症時には気道過敏性が亢進していて、気管支喘息との鑑別を要することがある。この場合には、吸引、気管支鏡、気切、気管支生検などの処置はすべて死亡の誘因となるため、気道を刺激する処置は最小限に留めるべきである。一方で、気道閉塞の緊急時には気切および気管チューブによる呼吸管理が必要になる。2)生命予後に関係する症状生命予後に影響する病変として心・血管系症状と中枢神経症状も重要である。心臓血管病変に関しては男性の方が女性より罹患率が高く、また重症化しやすい。これまでの報告ではRPの患者の15~46%に心臓血管病変を認めるとされている。その内訳としては、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や僧帽弁閉鎖不全症、心筋炎、心膜炎、不整脈(房室ブロック、上室性頻脈)、虚血性心疾患、大血管の動脈瘤などが挙げられる。RP患者の10年のフォローアップ期間中において、心血管系合併症による死亡率は全体の39%を占めた。筆者らの疫学調査では心血管系合併症を持つRP患者の死亡率は35%であった。心血管病変で最も高頻度で認められるものはARであり、その有病率はRP患者の4~10%である。一般にARはRPと診断されてから平均で7年程度の経過を経てから認められるようになる。大動脈基部の拡張あるいは弁尖の退行がARの主たる成因である。MRに関してはARに比して頻度は低く1.8~3%と言われている。MRの成因に関しては弁輪拡大、弁尖の菲薄化、前尖の逸脱などで生じる。弁膜症の進行に伴い、左房/左室拡大を来し、収縮不全や左心不全を呈する。RP患者は房室伝導障害を合併することがあり、その頻度は4~6%と言われており、1度から3度房室ブロックのいずれもが認められる。高度房室ブロックの症例では一次的ペースメーカが必要となる症例もあり、ステロイド療法により房室伝導の改善に寄与したとの報告もある。RP患者では洞性頻脈をしばしば認めるが、心房細動や心房粗動の報告は洞性頻脈に比べまれである。心臓血管病変に関しては、RPの活動性の高い時期に発症する場合と無症候性時の両方に発症する可能性があり、RP患者の死因の1割以上を心臓血管が担うことを鑑みると、無症候であっても診察ごとの聴診を欠かさず、また定期的な心血管の検査が必要である。脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などの中枢神経障害もわが国では全経過の中では、およそ1割の患者に認める。わが国では中枢神経障害合併症例は男性に有意に多く、これらの死亡率は18%と高いことが明らかになった。眼症状としては、強膜炎、上強膜炎、結膜炎、虹彩炎、角膜炎を伴うことが多い。まれには視神経炎をはじめより重症な眼症状を伴うこともある。皮膚症状には、口内アフタ、結節性紅斑、紫斑などが含まれる。まれに腎障害および骨髄異形成症候群・白血病を認め重症化する。特に60歳を超えた男性RP患者において時に骨髄異形成症候群を合併する傾向がある。全般的な予後は、一般に血液学的疾患に依存し、RPそのものには依存しない。■ RP患者の亜分類一部の患者では気道病変、心血管病変、あるいは中枢神経病変の進展により重症化、あるいは致命的な結果となる場合もまれではない。すなわちRP患者の中から、より重症になり得る患者亜集団の同定が求められている。フランスのDionらは経験した症例に基づいてRPが3つのサブグループに分けられると報告し、分類した。一方で、彼らの症例はわが国の患者群の臨床像とはやや異なる側面がある。そこで、わが国での実態を反映した本邦RP患者群の臨床像に基づいて新規分類について検討した。本邦RP症例の主要10症状(耳軟骨炎、鼻軟骨炎、前庭障害、関節炎、眼病変、気道軟骨炎、皮膚病変、心血管病変、中枢神経障害、腎障害)間の関連検討を行った。その結果、耳軟骨炎と気道軟骨炎の間に負の相関がみられた。すなわち耳軟骨炎と気道軟骨炎は合併しない傾向にある。また、弱いながらも耳軟骨炎と、心血管病変、関節炎、眼病変などに正の相関がみられた。この解析からは本邦RP患者群は2つに分類される可能性を報告した。筆者らの報告は直ちに、Dionらにより検証され、その中で筆者らが指摘した気管気管支病変と耳介病変の間に存在する強い負の相関に関しては確認されている。わが国においても、フランスにおいても、気管気管支病変を持つ患者群はそれを持たない患者群とは異なるサブグループに属していることが確認されている。そして、気管気管支病変を持たない患者群と耳介病変を持つ患者群の多くはオーバーラップしている。すなわち、わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆された。■ 予後重症度分類(案)(表1)では、致死的になりうる心血管、神経症状、呼吸器症状のあるものは、その時点で重症と考える。腎不全、失明の可能性を持つ網膜血管炎も重症と考えている。それ以外は症状検査所見の総和で重症度を評価する。わが国では、全患者中5%は症状がすべて解消された良好な状態を維持している。67%の患者は、病勢がコントロール下にあり、合計で71%の患者においては治療に対する反応がみられる。その一方、13%の患者においては、治療は限定的効果を示したのみであり、4%の患者では病態悪化または再発が見られている。表1 再発性多発軟骨炎重症度分類画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在ではRPの診断にはMcAdamの診断基準(1976年)やDamianiの診断基準(1976年)が用いられる(表2)。実際上は、(1)両側の耳介軟骨炎(2)非びらん性多関節炎(3)鼻軟骨炎(4)結膜炎、強膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症(5)喉頭・気道軟骨炎(6)感音性難聴、耳鳴り、めまいの蝸牛・前庭機能障害、の6項目の3項目以上を満たす、あるいは1項目以上陽性で、確定的な組織所見が得られる場合に診断される。これらに基づいて厚生労働省の臨床調査個人票も作成されている(表3)。表2 再発性多発軟骨炎の診断基準●マクアダムらの診断基準(McAdam's criteria)(以下の3つ以上が陽性1.両側性の耳介軟骨炎2.非びらん性、血清陰性、炎症性多発性関節炎3.鼻軟骨炎4.眼炎症:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎5.気道軟骨炎:喉頭あるいは気管軟骨炎6.蝸牛あるいは前庭機能障害:神経性難聴、耳鳴、めまい生検(耳、鼻、気管)の病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である●ダミアニらの診断基準(Damiani's criteria)1.マクアダムらの診断基準で3つ以上が陽性の場合は、必ずしも組織学的な確認は必要ない。2.マクアダムらの診断基準で1つ以上が陽性で、確定的な組織所見が得られる場合3.軟骨炎が解剖学的に離れた2ヵ所以上で認められ、それらがステロイド/ダプソン治療に反応して改善する場合表3 日本語版再発性多発軟骨炎疾患活動性評価票画像を拡大するしかし、一部の患者では、ことに髄膜炎や脳炎、眼の炎症などで初発して、そのあとで全身の軟骨炎の症状が出現するタイプの症例もある。さらには気管支喘息と診断されていたが、その後に軟骨炎が出現してRPと診断されるなど診断の難しい場合があることも事実である。そのために診断を確定する目的で、病変部の生検を行い、組織学的に軟骨組織周囲への炎症細胞浸潤を認めることを確認することが望ましい。生検のタイミングは重要で、軟骨炎の急性期に行うことが必須である。プロテオグリカンの減少およびリンパ球の浸潤に続発する軟骨基質の好塩基性染色の喪失を示し、マクロファージ、好中球および形質細胞が軟骨膜や軟骨に侵入する。これらの浸潤は軟骨をさまざまな程度に破壊する。次に、軟骨は軟骨細胞の変性および希薄化、間質の瘢痕化、線維化によって置き換えられる。軟骨膜輪郭は、細胞性および血管性の炎症性細胞浸潤により置き換えられる。石灰化および骨形成は、肉芽組織内で観察される場合もある。■ 診断と重症度判定に必要な検査RPの診断に特異的な検査は存在しないので、診断基準を基本として臨床所見、血液検査、画像所見、および軟骨病変の生検の総合的な判断によって診断がなされる。生命予後を考慮すると軽症に見えても気道病変、心・血管系症状および中枢神経系の検査は必須である。■ 血液検査所見炎症状態を反映して血沈、CRP、WBCが増加する。一部では抗typeIIコラーゲン抗体陽性、抗核抗体陽性、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性となる。サイトカインであるTREM-1、MCP-1、MIP-1beta、IL-8の上昇が認められる。■ 気道病変の評価呼吸機能検査と胸部CT検査を施行する。1)呼吸機能検査スパイロメトリー、フローボリュームカーブでの呼気気流制限の評価(気道閉塞・虚脱による1秒率低下、ピークフロー低下など)2)胸部CT検査(気道狭窄、気道壁の肥厚、軟骨石灰化など)吸気時のみでなく呼気時にも撮影すると病変のある気管支は狭小化がより明瞭になり、病変のある気管支領域は含気が減少するので、肺野のモザイク・パターンが認められる。3)胸部MRI特にT2強調画像で気道軟骨病変部の質的評価が可能である。MRI検査はCTに比較し、軟骨局所の炎症と線維化や浮腫との区別をよりよく描出できる場合がある。4)気管支鏡検査RP患者は、気道過敏性が亢進しているため、検査中や検査後に症状が急変することも多く、十分な経験を持つ医師が周到な準備をのちに実施することが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)全身の検索による臓器病変の程度、組み合わせにより前述の重症度(表2)と活動性評価票の活動性(表3)を判定して適切な治療方針を決定することが必要である。■ 標準治療の手順軽症例で、炎症が軽度で耳介、鼻軟骨に限局する場合は、非ステロイド系抗炎症薬を用いる。効果不十分と考えられる場合は、少量の経口ステロイド剤を追加する。生命予後に影響する臓器症状を認める場合の多くは積極的なステロイド治療を選ぶ。炎症が強く呼吸器、眼、循環器、腎などの臓器障害や血管炎を伴う場合は、経口ステロイド剤の中等~大量を用いる。具体的にはプレドニゾロン錠を30~60mg/日を初期量として2~4週継続し、以降は1~2週ごとに10%程度減量する。これらの効果が不十分の場合にはステロイドパルス療法を考慮する。ステロイド減量で炎症が再燃する場合や単独使用の効果が不十分な場合、免疫抑制剤の併用を考える。■ ステロイド抵抗性の場合Mathianらは次のようなRP治療を提唱している。RPの症状がステロイド抵抗性で免疫抑制剤が必要な場合には、鼻、眼、および気管の病変にはメトトレキサートを処方する。メトトレキサートが奏功しない場合には、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)またはミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)を次に使用する。シクロスポリンAは他の免疫抑制剤が奏功しない場合に腎毒性に注意しながら使用する。従来の免疫抑制剤での治療が失敗した場合には、生物学的製剤の使用を考慮する。現時点では、抗TNF治療は、従来の免疫抑制剤が効かない場合に使用される第1選択の生物学的製剤である。最近では生物学的製剤と同等以上の抗炎症効果を示すJAK阻害薬が関節リウマチで使用されている。今後、高度の炎症を持つ症例で生物学的製剤を含めて既存の治療では対応できない症例については、JAK阻害薬の応用が有用な場合があるかもしれない。今後の検討課題と思われる。心臓弁膜病変や大動脈病変の治療では、ステロイドおよび免疫抑制剤はあまり有効ではない。したがって、大動脈疾患は外科的に治療すべきであるという意見がある。わが国でも心臓弁膜病変や大動脈病変の死亡率が高く、PRの最重症病態の1つと考えられる。大動脈弁病変および近位大動脈の拡張を伴う患者では、通常、大動脈弁置換と上行大動脈の人工血管(composite graft)置換および冠動脈の再移植が行われる。手術後の合併症のリスクは複数あり、それらは術後ステロイド療法(および/または)RPの疾患活動性そのものに関連する。高安動脈炎に類似した血管病変には必要に応じて、動脈のステント留置や手術を行うべきとされる。呼吸困難を伴う症例には気管切開を要する場合がある。ステント留置は致死的な気道閉塞症例では適応であるが、最近、筆者らの施設では気道感染の長期管理という視点からステント留置はその適応を減らしてきている。気管および気管支軟化病変の患者では、夜間のBIPAP(Biphasic positive airway pressure)二相性陽性気道圧または連続陽性気道圧で人工呼吸器の使用が推奨される。日常生活については、治療薬を含めて易感染性があることに留意すること、過労、ストレスを避けること、自覚的な症状の有無にかかわらず定期的な医療機関を受診することが必要である。4 今後の展望RPは慢性に経過する中で、臓器障害の程度は進展、増悪するためにその死亡率はわが国では9%と高かった。わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆されている。今後の課題は、治療のガイドラインの策定である。中でも予後不良な患者サブグループを明瞭にして、そのサブグループにはintensiveな治療を行い、RPの進展の阻止と予後の改善をはかる必要がある。5 主たる診療科先に行った全国疫学調査でRP患者の受診診療科を調査した。その結果、リウマチ・免疫科、耳鼻咽喉科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓内科に受診されている場合が多いことが明らかになった。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 再発性多発軟骨炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)聖マリアンナ医科大学 再発性多発軟骨炎とは(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再発性多発軟骨炎患者会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)1)McAdam P, et al. Medicine. 1976;55:193-215.2)Damiani JM, et al. Laruygoscope. 1979;89:929-946.3)Shimizu J, et al. Rheumatology. 2016;55:583-584.4)Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:148-149.5)Shimizu J, et al. Medicine. 2018;97:e12837.公開履歴初回2020年02月24日

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化学療法の毒性リスクが最も低い患者は?/Cancer

 化学療法を受けるがん患者の毒性リスクに関して、栄養状態がキーを握ることが報告された。米国・フォックス・チェイスがんセンターのEfrat Dotan氏らが、固形腫瘍を有する高齢者において、治療前のBMI値、アルブミン値ならびに過去6ヵ月の意図しない体重減少(UWL)と、化学療法の毒性との関連を評価した結果、BMIが高くアルブミン値正常でGrade3以上の毒性リスクが低くなることが示されたという。著者は、「高齢のがん患者において、栄養状態が罹病率と死亡率に直接影響を及ぼすことが示された」とまとめ、「栄養マーカーの臨床的重要性を明らかにし、今後、介入していくためにも、さらなる研究が必要である」と提言している。Cancer誌オンライン版2020年1月24日号掲載の報告。 研究グループは、前向き多施設研究で化学療法を受けた65歳以上の高齢者について2次解析による検討を行った。 治療前に、高齢者機能評価、BMI値、アルブミン値、およびUWLのデータを収集し、多変量ロジスティック回帰モデルにより、栄養因子とGrade3以上の化学療法毒性リスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は750例で、年齢中央値は72歳、ほとんどがStageIVのがんであった。・治療前のBMI中央値は26、アルブミン中央値は3.9mg/dLであった。・約50%の患者がUWLを報告し、10%超のUWLがみられた患者は17.6%であった。・多変量解析の結果、10%超のUWLとGrade3以上の化学療法毒性リスクとの間に関連性は認められなかった(補正後オッズ比[AOR]:0.87、p=0.58)。・一方、BMI 30以上では、Grade3以上の化学療法毒性リスクが減少する傾向がみられ(AOR:0.65、p=0.06)、アルブミン低値(≦3.6mg/dL)では、Grade3以上の化学療法毒性リスクの増加と関連した(AOR:1.50、p=0.03)。・BMIとアルブミンを組み合わせて解析した結果、BMI 30以上かつアルブミン値正常の患者において、Grade3以上の化学療法毒性が最も低いことが示された(AOR:0.41、p=0.008)。

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祭りで目を失った子供【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第157回

祭りで目を失った子供photoACより使用イスラム教シーア派の宗教行事として「アーシューラー(Ashura)」があります。アーシューラーとは、イスラーム暦の最初の月、ムハッラムの10日目にあたる日のことです。また、3代目イマームであるフサインの命日にあたるため、シーア派にとってはきわめて重要な日なのです。アーシューラーは元々危険なものではないのですが、一部の国では自傷行為や爆竹・花火を使った過激な祭典になっていることもあります。今回はアーシューラーの危険性を記した医学論文を紹介しましょう。Moustaine MO, et al.Ashura: a festival of charity associated with a serious and disabling eye injury (report of 12 cases).Ann Burns Fire Disasters. 2017 Mar 31;30(1):65-67.本来アーシューラーは、子供が参加したとき、おもちゃやお菓子をあげるような、ハロウィーンに似た穏やかな祭典だったのですが、近年どんどん過激化していることが問題視されています。この論文は、カサブランカにある小児眼科で治療を受けたアーシューラー時の重度眼損傷の被害児12例をまとめて報告したものです。12人の小児(平均年齢8.5歳、男児8人、女児4人)のうち、3人が両眼を損傷しました。全体の3分の2が爆竹による爆発が原因でした。8例は視機能が回復しましたが、3例は永続的な視力低下に至り、1例については穿孔により眼そのものを失うこととなりました。この論文では、輸入された爆竹のほとんどが粗悪な中国製であり、想定よりも火力が強いことが危険であると書かれています。本場中国ですら、北京市や深セン市などの大都市では使用に一定の規制が設けられています。最近は花火や爆竹をやろうにも規制が強くなり、近所の公園ですらNGになりました。そのため、爆竹なんてものを最近の子供は知らないそうで、これもそのうち死語になるかもしれませんね。

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肺がんEGFR変異の検出、凍結生検でより高く/Lung Cancer

 生検技術が、EGFR変異陽性の検出に影響するという検討結果が示された。ドイツ・エバーハルト・カール大学のMaik Haentschel氏らは、単一施設でのレトロスペクティブ研究を行い、気管支鏡下凍結生検によって得られた組織におけるEGFR変異の検出率を、ほかの標準的な組織標本採取法技と比較した。その結果、気管支鏡下凍結生検は、ほかの組織採取法と比較し、進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR変異の検出率が高いことが示されたという。EGFR変異陽性の検出は、NSCLCの個別化治療にとってきわめて重要となっているが、これまで生検の手技が、EGFR変異の検出率にどのように影響を及ぼすかは不明であった。著者は、「今回の結果は、進行NSCLC患者の個別治療を最適化するのに役立つと思われる。ただし後ろ向きの解析であるため、最終的な評価には前向き研究が必要である」とまとめている。Lung Cancer誌オンライン版2020年1月号掲載の報告。 研究グループは、2008年3月~2014年7月に組織学的にNSCLCと診断されEGFR変異の有無が既知の414例について後ろ向きに解析した。 気管支鏡下凍結生検により得られた腫瘍組織標本群(125例)と、ほかの手法で得られた腫瘍組織標本群(298例)のEGFR変異検出率を比較した。主な結果は以下のとおり。・気管支鏡下凍結生検組織では、125例中27例(21.6%)で29のEGFR変異が検出された。・一方、非凍結生検法(気管支鏡鉗子生検、穿刺吸引、画像ガイド下経胸壁および外科的手技)で得られた生検組織では、298例中40例(13.8%)で42のEGFR変異が検出された。検出率は、凍結生検組織が非凍結生検組織よりも有意に高率であった(p<0.05)。・凍結生検は、鉗子生検と比較して中枢型腫瘍におけるEGFR変異の検出率が高く(19.6% vs.6.5%、p<0.05)、末梢型腫瘍についてもわずかだが高い傾向が認められた(33.3% vs.26.9%)。

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心原性ショックのAMI、軸流ポンプLVAD vs.IABP/JAMA

 2015~17年に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した心原性ショックの急性心筋梗塞(AMI)患者において、軸流ポンプ左心補助人工心臓(LVAD)(Impellaデバイス)の使用は大動脈バルーンパンピング(IABP)と比較し、院内死亡および大出血合併症のリスクを増大することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanket S. Dhruva氏らが、機械的循環補助(MCS)デバイスによる治療を受けた、心原性ショックを伴うAMIでPCIを実施した患者のアウトカムを検討した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。AMIの心原性ショックは、その後の後遺症や死亡と関連する。軸流ポンプLVADはIABPより良好な血行動態補助を提供するが、臨床アウトカムについてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2020年2月10日号掲載の報告。軸流ポンプLVAD(Impella)使用例とIABP使用例で院内死亡/大出血を比較 研究グループは、2015年10月1日~2017年12月31日に、米国NCDR(National Cardiovascular Data Registry)のCathPCIレジストリとChest Pain-MIレジストリのデータを用い、PCIを実施した心原性ショックを伴うAMI患者について解析した(最終追跡期間2017年12月31日)。 患者を軸流ポンプLVAD単独使用、IABP単独使用、およびその他(たとえば、経皮的体外設置型心室補助システム、体外式膜型人工肺の使用、またはMCS併用)に分類するとともに、人口統計、既往歴、症状、梗塞部位、冠動脈の解剖学および臨床検査データに関して軸流ポンプLVAD使用患者とIABP使用患者でマッチングした。 主要評価項目は、院内死亡と院内大出血であった。Impella使用例で院内死亡/大出血リスクが有意に増大 心原性ショックを伴うAMIでPCIを施行した患者は2万8,304例(平均[±SD]年齢65.0±12.6歳、男性67.0%、ST上昇型心筋梗塞81.3%、心停止43.3%)で、このうち軸流ポンプLVAD単独使用患者は6.2%、IABP単独使用患者は29.9%であった。 傾向スコアでマッチングした軸流ポンプLVAD群1,680例およびIABP群1,680例において、軸流ポンプLVAD群はIABP群より院内死亡リスクが有意に高く(45.0% vs.34.1%、絶対リスク差:10.9ポイント[95%信頼区間[CI]:7.6~14.2]、p<0.001)、院内大出血のリスクも有意に高い(31.3% vs.16.0%、15.4ポイント[12.5~18.2]、p<0.001)ことが認められた。この関連は、PCI開始前後で患者が機器を使用したタイミングにかかわらず一貫していた。 著者は、観察研究であり、残余交絡が存在するなど研究の限界を挙げたうえで、「心原性ショックのAMI患者に対する適切な医療機器の選択について理解を深めるため、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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皮膚病理所見のオンライン提示、臨床病理医はその影響をどう見るか

 米国ではすでに多くの患者が、オンライン(patient portal)を介して、病理検査の結果報告にアクセスしている状況にあるという。米国・ワシントン大学のHannah Shucard氏らは、そうした状況について、病理医の観点での検証がほとんど行われていないとして臨床皮膚科病理医を対象とするサーベイ調査を行った。その結果、大半が「病理検査の結果をオンラインで利用できるようにすることはよい考えである」と評価しつつも、患者の心配と混乱が増大していることへの懸念を抱く病理医も多いことが明らかになった。著者は、「患者のオンラインアクセスが増えていく中で、患者の理解の改善や潜在的ネガティブコンセンサスを減少するために、どのような報告が最適かを考えることが重要だ」と指摘し、「患者と臨床医双方にとって、最善の行為および効果となるように留意して、さらなる研究を行う必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年1月29日号掲載の報告。 研究グループは、患者が病理検査結果をオンラインアクセスで得ていることに関して、皮膚科病理医の経験および認識の状況を明らかにするサーベイ調査を行った。 対象者は、米国で臨床に従事する、皮膚病理の教育を受けた認定専門医および/または研究医160例で、2018年7月15日~2019年9月23日に集められた。対象者は、前年までに色素細胞生病変の皮膚生検を解釈した報告を行っており、その後2年間、それらの解釈を行い続けると考えている者であった。 主要評価項目は、対象者の人口統計学的および臨床的特性、病理検査結果報告への患者オンラインアクセスの経験の有無、患者オンラインアクセスに対する潜在的行動および反応、オンライン報告を読んだ患者への効果であった。 主な結果は以下のとおり。・調査は、226例の適格参加者のうち160例から回答を得た(回答率71%)。・160例のうち男性107例(67%)、平均(SD)年齢は49(9.7)歳(範囲:34~77)であった。・91例(57%)が、自身が書いた病理検査報告について、患者からオンラインアクセスを受けた経験があった。・一部の回答者は、略語および/または専門用語の使用が減った(57例[36%])、がんが疑われる病変の記述方法が変わった(29例[18%])ことを認識しており、また患者が報告書を読む場合には、患者とのコミュニケーションの専門的な訓練を受ける必要がある(39例[24%])と認識していた。・大部分の回答者はオンラインの利用によって、患者の理解が増すこと(97例[61%])、患者-医師間のコミュニケーションの質が向上すること(98例[61%])が期待できると認識していた。・同時に、患者の心配が増す(114例[71%])、混乱が増す(116例[73%])と考えている病理医も少なからず存在していた。・しかし、結局のところは大部分の回答者は、患者がオンラインで病理検査の結果報告を入手できることはよい考えであると同意を示した(114例[71%])。

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CAR-NK細胞、再発/難治性CD19陽性がんに有効/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)を導入されたナチュラルキラー(NK)細胞は、再発または難治性のCD19陽性がん患者の治療において高い有効性を示し、一過性の骨髄毒性がみられるものの重大な有害事象は発現せず、相対的に安全に使用できる可能性があることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEnli Liu氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。CAR導入細胞療法では、すでに抗CD19 CAR-T細胞療法のB細胞がんの治療における著明な臨床的有効性が確認されている。一方、CAR-T細胞は重大な毒性作用を誘発する可能性があり、細胞の作製法が複雑である。抗CD19 CARを発現するように改変されたNK細胞は、これらの限界を克服する可能性があるという。進行中の第I/II相試験の初期結果 研究グループは、再発/難治性のCD19陽性がんの治療におけるCAR-NK細胞の有効性と安全性を評価する目的で、第I/II相試験を進めており、今回は最初の11例の結果を報告した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 解析には、再発/難治性CD19陽性がん(非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ性白血病[CLL])の患者11例が含まれた。患者は、臍帯血由来のHLAミスマッチ抗CD19 CAR-NK細胞の投与を受けた。 NK細胞への遺伝子導入には、抗CD19 CAR、インターロイキン-15、安全スイッチとしての誘導型カスパーゼ9をコードする遺伝子を発現させたレトロウイルスベクターを用いた。この細胞を体外で増殖させ、リンパ球除去化学療法を行った後、3つの用量のCAR-NK細胞(用量1:1×105、用量2:1×106、用量3:1×107/kg体重)の1つが単回投与された。最大耐用量には未到達、奏効率は73% 2017年6月~2019年2月の期間に15例が登録され、4例(増悪、移植片対宿主病、検出可能病変の不在、製剤への細菌混入が各1例)が治療を受けなかった。11例の年齢中央値は60歳(範囲:47~70)、女性が4例で、前治療レジメン数中央値は4(3~11)であった。用量は、用量1が3例、2と3が各4例だった。 5例がCLL(リヒター症候群へ形質転換、移行期へ進行の2例を含む)、6例がリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫2例、濾胞性リンパ腫4例)であった。CLLの5例全例に増悪の既往歴があり、イブルチニブの投与歴があった。また、リンパ腫の6例のうち、4例は自家造血幹細胞移植後の増悪で、2例は難治性病変を有していた。 CAR-NK細胞の投与後に、サイトカイン放出症候群や神経毒性、血球貪食性リンパ組織球症は発現しなかった。また、患者と製剤はHLAミスマッチにもかかわらず、移植片対宿主病は発生しなかった。 予測どおり、全例で一過性の可逆的な血液学的毒性イベントがみられ、主にリンパ球除去化学療法関連のものであったが、CAR-NK細胞の寄与の評価はできなかった。好中球減少は、Grade3が2例、Grade4が8例に、リンパ球減少はGrade4が10例にみられた。腫瘍崩壊症候群は認められず、Grade3/4の非血液学的毒性も発現しなかった。最大耐用量には達しなかった。 追跡期間中央値13.8ヵ月(範囲:2.8~20.0)の時点で、8例(73%)で客観的奏効が得られた。このうち7例(CLL 3例、リンパ腫4例)で完全寛解が達成され、1例ではリヒター症候群に転換した腫瘍の寛解が得られたものの、CLLは持続した。すべての用量で、効果の発現は迅速で、投与から30日以内にみられた。 CAR-NK細胞の増殖は、投与から3日という早い時期にみられ、12ヵ月以上低値で持続した。CAR-T細胞で報告されているのと同様に、奏効例は非奏効例に比べ、早期のCAR-NK細胞の増殖の程度が高かった(投与後28日時のゲノムDNAコピー数中央値:3万1,744 vs.903コピー/μg、p=0.02)。 また、インターロイキン-6や腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインの値は、ベースラインに比べて増加しなかった。 著者は、「本研究で使用したリンパ球除去化学療法レジメンは、多くのCAR-T細胞研究が用いているものとほぼ同様で、客観的奏効にある程度寄与している可能性はあるが、本研究の患者は登録時に化学療法抵抗性の病変を有していたと考えられることに注意するのが重要である」と指摘している。

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【延期:日時未定】ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと2020 in 東京~

【開催延期のお知らせ】2020年2月18日付で案内いたしました大腸がん疾患啓発に係る市民公開講座 「ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと 2020 in 東京」 につきまして、今般の新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑み、開催が<延期>されることになりました。今後の開催予定につきましては、随時、下記ホームページ等にてお知らせします。(2月21日)https://www.cancernet.jp/28277************************************************************<元のご案内文> 2020年3月20日(金・祝)に、大腸がん疾患啓発イベント「ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと~」が開催される。同イベントは、大腸がんの診断・検査から外科的治療・薬物療法について広く知ってもらうことを目的に、国際的な大腸がん啓発月間である3月に毎年開催されている。会場は、東京医科歯科大学M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂で、予約申し込み不要・参加費無料。当日は、来場者全員にオリジナル冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」が配布される。また、ブルーを身に着けて来場した方には粗品のプレゼントも用意されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年3月20日(金・祝)《セミナー》 13:00~16:50《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】無料【予定内容】《セミナー》総合司会 中井 美穂氏(アナウンサー/認定NPO法人キャンサーネットジャパン理事)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 がん先端治療部)13:05~13:20 講演1「15分で学ぶ!大腸がんの基礎知識」  岡崎 聡氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:20~13:45 講演2「いろいろ選べる、大腸の検査」 福田 将義氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 光学医療診療部)13:45~14:10 講演3「大腸がんの手術療法~開腹手術からロボット手術まで~」 絹笠 祐介氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科)14:10~14:30 休憩(20分)14:30~14:50 講演4「大腸がん薬物療法の現状」 石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)14:50~15:05 体験談「家族の立場から」 酒田 亜希氏(大腸がん患者さんのご家族)15:05~15:30 講演5「大腸がん治療における放射線療法の位置づけ」 伊藤 芳紀氏(昭和大学病院 放射線治療科)15:30~15:55 講演6「がんゲノム医療とは? 大腸がんに対して何ができるのか?」 砂川 優氏(聖マリアンナ医科大学病院 腫瘍内科/ゲノム医療推進センター)15:55~16:10 休憩(15分)16:10~16:45 Q&A「Q&Aトークセッション 質問票にお答えします!」 座長:杉原 健一氏(大腸癌研究会 会長/東京医科歯科大学名誉教授)  パネリスト:演者16:45~16:50 閉会挨拶 植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)《ブース展示》12:00~17:00会場では、大腸がんの検査・治療に使用する機器などのブース展示を開催します。展示スペースはどなたでもご自由にご観覧いただけます。[出展協力]・東京医科歯科大学 医学部附属病院 がん相談支援センター/がんゲノム診療科・東京医科歯科大学 医学部附属病院 臨床栄養部・東京医科歯科大学 歯学部口腔保健学科・東京都立中央図書館・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社・株式会社メディコン・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社・アミン株式会社・コヴィディエンジャパン株式会社・アルフレッサファーマ株式会社・公益財団法人日本オストミー協会/若い女性オストメイトの会 ブーケ【問い合わせ先】ブルーリボンキャンペーン事務局 認定NPO法人キャンサーネットジャパン〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶ノ水K&Kビル 2階TEL:03-5840-6072(平日10~17時)FAX:03-5840-6073MAIL:info@cancernet.jp【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科/大腸・肛門外科/がん先端治療部/大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【後援】東京医科歯科大学医師会/東京都/文京区/東京都医師会/日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会/大腸癌研究会/公益社団法人 日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会/認定NPO法人西日本がん研究機構詳細はこちら

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アレキサンダー病〔Alexander disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義最初の報告は1949年にAlexanderが記載した精神遅滞、難治性痙攣、および水頭症を認めた生後15ヵ月の乳児剖検例である。この症例の病理学的特徴は、大脳白質、上衣下および軟膜下のアストロサイト細胞質内に認められた多数のフィブリノイド変性で、後にこれはローゼンタル線維と同一であることが判明した。以後約50年間にわたりアレキサンダー病は「病理学的にアストロサイト細胞質にローゼンタル線維を認める乳児期発症の予後不良の進行性大脳白質疾患」と認識されてきた。しかし、2001年にBrennerらによりローゼンタル線維の構成成分の1つであるグリア線維性酸性タンパク(GFAP)をコードする遺伝子GFAPが病因遺伝子として報告されて以降、乳児期発症例とは臨床像がまったく異なる成人期発症で緩徐進行性の経過を示す症例が相次いで報告された。現在ではアレキサンダー病は「乳児期から成人期まで幅広い年齢層で発症するGFAP遺伝子変異による一次性アストロサイト疾患で、病理学的にはアストロサイト細胞質のローゼンタル線維を特徴的所見とする」と定義される。■ 疫学新生児期から70歳以上の高齢者まで幅広い年齢層で発症がみられる。わが国の有病者率は270万人あたり1人と推定される。しかし、未診断の症例や他の神経変性疾患(パーキンソン症候群や脊髄小脳変性症など)と診断されている症例が、少なからず存在すると思われる。臨床病型別頻度は、延髄・脊髄優位型が約半数と最も多く、大脳優位型が1/4強、中間型が1/4弱である(臨床病型については後述の「症状・分類」を参照)。わが国での全国調査によると延髄・脊髄優位型の約65%で常染色体優性遺伝形式を示唆する家族内発症がみられるが、遺伝学的あるいは病理学的検査により確定診断された家系の報告は非常に少なく、浸透率も不明である。一方、大脳優位型はほぼ全例がde novo変異である。■ 病因GFAP遺伝子変異による機能獲得性機序が考えられているが、病態には変異GFAPの発現量増加が重要と考えられている。これは、(1)ヒト野生型GFAPを過剰発現させたトランスジェニックマウスにおいてGFAP発現量に比例した寿命の短縮とローゼンタル線維の出現を認める、(2)変異GFAP遺伝子を単一コピーのみ導入したモデルマウスは臨床表現型を十分に示さない、という動物モデルの知見に基づく。ヒトのアレキサンダー病においてはGFAP遺伝子のmultiplicationの報告はなく、変異GFAPの量的変化に影響を与える遺伝的および環境因子の存在が示唆される。変異GFAPによるアストロサイトの機能障害としてプロテアソーム系の機能低下、ストレス経路への影響、異常なカルシウムシグナル変化、炎症性サイトカインの増加、グルタミン酸トランスポーターの発現低下と機能異常などが報告されている。もう1つの病理学的特徴である脱髄については、モデルマウスの研究からK緩衝系の異常によるミエリン形成や維持の障害が推測されているが詳細な機序は不明である。■ 症状・分類発症年齢により乳児型(2歳未満の発症)、若年型(2~12歳未満の発症)および成人型(12歳以上の発症)に分類されるが、近年、神経症状および画像所見に基づいた病型分類が提唱されており、本稿ではこの新しい病型分類を記載する。1)大脳優位型(1型)主に乳幼児期発症で、機能予後不良の重症例が多い。痙攣、大頭症、精神運動発達遅延が主な症状である。痙攣は難治性とされるが、コントロール良好で学童期ごろには軽減する症例も散見される。大頭症は乳児期に目立つ。経過とともに痙性麻痺、構音障害、発声障害、嚥下障害などの延髄・脊髄症状が顕在化する。新生児期発症例では水頭症、頭蓋内圧亢進、難治性痙攣を来し、生命予後は不良である。2)延髄・脊髄優位型(2型)四肢筋力低下、痙性麻痺、四肢・体幹失調、構音障害、発声障害、嚥下障害、自律神経障害(起立性低血圧、膀胱直腸障害、睡眠時無呼吸)といった延髄・脊髄症状が、種々の組み合わせで認められる。筋力低下にはしばしば左右差が認められる。上記以外の症候として約20%に筋強剛、約15%に口蓋振戦を認める(自施設解析データ)。大頭症、精神運動発達遅延は通常認めない。前頭側頭型認知症に類似した認知症を呈する症例もある。一過性の「反復性嘔吐」が唯一の症状で、MRIにて両側延髄背側に結節状病変を示す小児の報告がある。3)中間型(3型)発症時期は幼児期から成人期まで幅広い。大脳優位型および延髄・脊髄優位型の両者の特徴を有する。大脳優位型の長期生存例、および精神運動発達遅延を伴う延髄脊髄優位型のパターンが含まれる。精神運動発達遅延については、初診時まで医療機関で評価されず、小学生時に学力低下により支援学級に編入したなどの経歴をもつ症例がある。また、熱性痙攣やてんかんの既往歴をもつ症例も少なからず存在する。複視や側彎などの脊柱異常を伴うことも多い。■ 予後大脳優位型の生命予後は約14年と報告されている。新生児期発症例は、生後数週~数ヵ月で死亡することが多い。難治性痙攣や栄養障害、感染症などのため学童期までに死亡する症例が多いが、一方で学童期までに痙攣などが消失するなど、大脳症状が安定化する症例も少なからず認められる。このような症例は、学童期以降に歩行障害や嚥下障害などの延髄・脊髄症状が緩徐に進行して中間型に移行する。延髄・脊髄優位型の生命予後は、約25年と大脳優位型と比較すると良好だが、無症候あるいは非常に軽微な異常にとどまる症例から運動麻痺・球症状・呼吸症状が急激に増悪する症例まで症例差が大きい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)頭部および脊髄MRI検査による特徴的な所見がアレキサンダー病を疑う手がかりとなる。確定診断は遺伝子検査および病理学的検査による。近年は、遺伝子検査にて確定診断が行われる傾向にあるが、新規変異や非典型例では慎重な判定が必要となる。■ MRI検査1)大脳優位型前頭部優位の広範な大脳白質異常が特徴的である。その他、脳室周囲の縁取り(T2強調画像で低信号、T1強調画像で高信号を示す)、基底核と視床の異常、脳幹の異常(特に中脳と延髄)、造影効果がみられうる。2)延髄・脊髄優位型延髄・頸髄の萎縮・異常信号が特徴的である。典型的には橋が保たれた延髄・上位頸髄の著明な萎縮が認められ、その形状はオタマジャクシ様の特徴的な所見を示す(tadpole appearance)。高齢者や軽症例では延髄・頸髄の萎縮が目立たないことがあるが、このような症例では延髄錐体の異常信号と延髄外側および最後野付近の萎縮を伴い、水平断にて延髄にメダマチョウの眼状紋様の所見がみられる(eye spot sign)。大脳・中脳・橋の錘体路の異常信号は通常認めない。10代前半から20歳代の若年例では延髄の結節・腫瘤様異常がみられることが多い。その他、小脳歯状核門の信号異常やFLAIR像にて中脳の縁取り(midbrain periventricular rim)も高率にみられる所見である。大脳MRIではT2強調画像にて“periventricular garland”と表現される側脳室壁に沿った花弁状の高信号が認められる。この病変は造影効果を示すこともあり、この部分にはローゼンタル線維が多いとされる。3)中間型大脳優位型と延髄脊髄優位型の両者の特徴をもつ型と定義した通り、比較的広範な大脳白質病変と延髄・頸髄の萎縮・異常信号を認める。成人症例では大脳白質病変は嚢胞化を伴う傾向があり、延髄・頸髄の萎縮は高度である。■ 遺伝子検査これまで100種類以上のGFAP遺伝子変異が報告されている。大多数がミスセンス変異であるが、インフレーム挿入/欠失変異、終止コドン近傍のフレームシフト変異およびスプライス変異の報告もある。CpGが関与するR79、R88、R239、R416が置換される変異は、人種を越えて認められる。前3者が置換される変異は、大脳優位型および中間型に認められ、R416が置換される変異はすべての型で報告されている。一方、延髄・脊髄優位型において頻度の高い変異は特に存在しない。■ 病理学的検査大脳白質、上衣下および軟膜下のアストロサイト細胞質内に特徴的なローゼンタル線維を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現時点では対症療法にとどまる。痙攣に対する抗てんかん薬の投与、栄養管理、併発する感染症に対する抗菌薬の投与、学習障害や認知機能障害に対する療育・ケアが行われる。痙性麻痺に対して抗痙縮薬や抗てんかん薬の投与が使用されることがある。4 今後の展望変異GFAP発現抑制を治療標的としたアンチセンス核酸とドラッグリポジショニングに関する動物実験レベルの報告がある。アンチセンス核酸を投与したモデルマウスの報告では安全性、髄液中のGFAP蛋白量の劇的な減少、ローゼンタル線維の消失が確認されている。近年、核酸医薬の技術発展は目覚ましく、神経難病領域においても脊髄性筋萎縮症では実用化されている現状を鑑みると、本症に対する治療開発も期待される。一方、ドラッグリポジショニングの候補薬剤としてセフトリアキソン、クルクミン、リチウムが報告されているが、いずれも現時点では臨床応用には至っていない。5 主たる診療科小児科(小児神経科)、脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「遺伝性白質疾患・知的障害をきたす疾患の診断・治療・研究システム構築」班 ホームページ(診断基準や典型的な画像所見なども掲載)難病情報センター アレキサンダー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Alexander WS. Brain. 1949;72:373-381.2)Brenner M, et al. Nat Genet. 2001;27:117-120.3)Yoshida T, et al. J Neurol. 2011;258:1998-2008.4)Prust M, et al. Neurology. 2011;77:1287-1294.5)Messing A, et al. Am J Pathol. 1998;152:391-398.6)Hagemann TL, et al. Ann Neurol. 2018;83:27-39.公開履歴初回2020年02月17日

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第37回 高電位(差)の基準、いくつ知ってる?(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第37回:高電位(差)の基準、いくつ知ってる?(前編)ボクが提唱する「系統的判読」。“クルッと”の部分では、Q波に続いてスパイク状のR波をチェックします。ここは「向き」「高さ」「幅」の3項目を見ますが、今回と次回で「高さ」、とくに“高すぎる”異常を取り上げます、まずはこれまでの復習も兼ねて、伏線となる知識をDr.ヒロがレクチャーします!症例提示35歳、男性。腎移植後の急性拒絶反応のため、血液透析を再導入。その後、10年以上維持透析中。特別な自覚症状はなし。血圧150/90mmHg、脈拍82/分。Hb:11.9g/dL、BUN:67mg/dL、Cre:14.2mg/dL、K:4.8mEq/L。定期検査として施行された心電図を示す(図1)。(図1)定期検査の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)において、QRS電気軸を求め、定性的評価も加えよ。解答はこちら「-50°」、左軸偏位解説はこちら今回は、若年ながら長期間の血液透析を受けている男性の心電図を扱います。レクチャーのポイントとして2つ用意しました。まずは1つ目、電気軸。“ドキ心”のでは、Dr.ヒロが開発した“トントン法”あるいはその進化版(Neo)を利用して求めますよ。忘れている方は、第9回と第11回を見直してくださいね。“QRS電気軸の求め方を覚えてますか?”久しぶりに登場した「QRS電気軸」ですが、皆さんの印象はどうですか?“難しい”や“ニガテ“という声も聞くので、簡単に復習しておきましょう。定性的な評価というのは「~軸偏位」という呼び方のことですね。I誘導とaVF誘導のQRS波の「向き」を見ればいいのです。aVFの代わりにII誘導(時にIII誘導も)が用いられますが、ニサンエフはみんな“ご近所”なので肢誘導界(第5回)における方向性は、ほぼ同じです。今回の心電図(図1)では、QRS波はIが上向き、aVFもIIも共に下向きとなっているので、このパターンは「左軸偏位」と呼ぶのでした(第8回)。次の円座標をもう一度復習しておきましょう(図2)。(図2)肢誘導の世界とQRS電気軸画像を拡大する次に定量的な議論はできますか? これは電気軸の角度を「~°」と具体的な数値として求めることを意味します。一般的には自動診断で表示される値を見るでしょうか。今回は図1のQRS軸部分を伏せておきましたが、「QRS軸:-47°」と記録されており、これを転記するのも一手です(Dr.ヒロ流に言うと“カンニング法”)ただ、この方法、「本当に機械は正しいのだろうか」という一抹の不安があります。とくに、さまざまなQRS波形が混在するような心電図の場合、ボクは心電計の電気軸推定の精度は万全ではないという印象を持っています。やはり“人の目”が入ることが大切で、そのための知恵を持っておく必要があります。ドキ心で言うならば、それは“トントン法”やそれの進化バージョンである“トントン法Neo”ですね。肢誘導界の乗っている前額断[冠状断]の円座標をaVL誘導から時計回りに目で追ってみましょう。aVL → I → 「-aVR」 → II → aVF → III ・・・このような並びは「カブレラ配列」(Cabrera sequence)と呼ばれますが、この配列の名前を覚えなくとも円座標さえ頭に描ければ、それで十分です。(図3)リバイバル! トントン法Neo画像を拡大する「-aVR」とはaVRを上下反転させた誘導で、これを導入すると各肢誘導を見事に30°ずつ対応させることができます。トントン法では、上向き・下向きが等しくなる“トントン・ポイント”(TP)を見つけるのがミソでしたが、QRS軸の向きの逆転は「-aVR」(+30°)と「II」(+60°)の間で起きており、TPは10°刻みでよりトントンに近い「-aVR」寄り、すなわち「+40°」と予想されます(第11回)。あとは、±90°方向転換させることでIが上向きになる方向を選ぶと…「-50°」が求める電気軸となります。「へぇ~、すごいじゃん!」…そう思ってもらえたら嬉しいです。【問題2】以下のうち、心電図(図1)の正しい診断を選べ。1)完全右脚ブロック2)完全左脚ブロック3)左脚前枝ブロック4)左脚後枝ブロック5)仮装脚ブロック解答はこちら 3)解説はこちらさて2問目。オマケ問題を出題しました。ここでもまだテーマの「QRS波高」は登場せず、「向き」と「幅」に関連する事項を問うています。選択肢には「~ブロック」が5つもあって ややこしいですよね。さらに「洞ブロック」や「房室ブロック」など…心電図の世界では、このようにさまざまな“ブロック塀”が学習者の行く手を阻みます(笑)。若かりし頃、ボクもだいぶ苦労したなぁと思い返します。最も有名なのは1)と2)で、「心室内伝導障害」の“2大スター”です。QRS幅がワイド(120ms以上)になり、いわゆる「脚ブロック」と言えば、普通はこの2つを指します。でも今回の心電図のQRS幅は100ms前後(自動計測値103ms)であり、該当しません。また、一つだけやや毛色が変わった5)のブロック。この用語を知っていますか? 詳細は省きますが、これは「右脚ブロック」と「左脚ブロック」とが“チャンポン”されたようなまれな異常で、一部の心疾患で見られます。心電図としても面白い波形なので、いずれ機会があったら扱いましょう。ここで扱いたいのは、前問で解説した軸偏位と深い関係性のある「束枝ブロック」で、代表的な3)と4)について説明したいと思います。“刺激伝導系のおさらい”話がQRS波の「高さ」から脱線して恐縮ですが、これも次回の本論の“伏線”として大事な事項なんです。「左脚前枝ブロック」(LAFB)と「左脚後枝ブロック」(LPFB)は、いわゆる「束枝ブロック」(fascicular block)と呼ばれるものです。ここで今一度、「脚(きゃく)」についての解剖学的な基礎知識を整理します。刺激伝導系は、房室結節、ヒス(His)束を越えて心室内で右脚と左脚に分かれ、左脚はさらに左室前上方を走る「前枝」と後側方に向かう「後枝」という2本の束枝(fascicle)に枝分かれします1)。前者の伝導が途切れたのが「左脚前枝ブロック」(LAFB)、後者なら「左脚後枝ブロック」(LPFB)と言います。実はもう一つ、「中隔枝」*という脚枝があるそうです。“3本目”の束枝、あるいは「後枝」から分かれて、文字通り心室中隔につながる“電線”との理解で良さそうです(個々人でバリエーションがある)。ただ、事の心電図に関しては、「左脚は2分枝」と考えたほうが理解しやすく、冠動脈と同じく、脚も「右1本、左2本」という構造なんだと理解することをオススメします。なお、教科書などによっては「ヘミブロック」(hemiblock)と記載されている場合がありますが、これも束枝ブロックとほぼ同義と考えて良いと思います。*:ときどき「“左脚中隔枝ブロック”の心電図所見」などという記載を目にしますが、マニアック過ぎて大半の人は“見なかった”ことにしてOKだと思っています。“左軸偏位の程度分類は?”実臨床で問題になる束枝ブロックの大半は「LAFB」なので、こちらだけ診断できれば十分でしょう(慣れると「後枝」のほうはほぼ“その逆”と理解できる)。「LAFB」の診断ポイントは“高度の”左軸偏位に尽きると言っても過言ではありません。この「高度の」部分が理解できるかが大切です。以前、「-30~0°」のゾーンを「軽度の左軸偏位」と言いました(第8回)。では、残りの「中等度」、そして「高度」はどこで区切るのでしょうか。本来なら「-90°」まで30°ずつ刻めば良いのですが、Dr.ヒロのオススメは「-45°」(数字としては大きくなることに注意)を「高度」と「中等度」の境界とするルールです。つまり、-30~0° … 軽度   -45~-30° … 中等度   -90~-45° … 高度ということです。「中等度」に関しては、ボク自身は単に「左軸偏位」と呼んでいますけどね。これを理解すると、「LAFB」では、「高度」(-45°以下)の左軸偏位がマストということになります。なので、正確に言うと、自分で電気軸が求められない人は「LAFB」と原理的に診断できないのです(半定量的な議論はできるかもしれませんが)。その点“トントン法Neo”がいかにすごい手法か、実感してもらえるんじゃないかな~。“左脚前枝ブロックの心電図診断”さて、皆さんがお持ちの教科書で「左脚前枝ブロック」の診断基準を確認してみましょう。 QRS電気軸の範囲が示されている時点で初学者への“殺傷能力”はハンパないのですが、ほかにいくつかの条件が書かれていると思います。代表的な診断基準を踏まえ、ボク流にアレンジしたものを以下に示します。■左脚前枝ブロック(LAFB)の診断■1. 高度の左軸偏位:-90°<QRS電気軸≦-45°2.(I)aVLで「qR型」(上向き:左室パターン)3.(II)III(aVF)で「rS型」(下向き:右室パターン)ほかに若干の注意事項はあるものの、メインは上の3つ1~3です。慣れてないと相当複雑に感じますよね。でも大丈夫。あくまでも1が診断の肝と強調しておきます。2はイチエル(I、aVL)、3はニサンエフ(II、III、aVF)に関するものです。ここで確認。「左軸偏位」である以上、QRS波はI誘導が上向き、そしてaVF(IIも)は下向きなはずですよね? かつて「正常なQRS波形は2パターンしかない!」と述べた時に紹介した「左室パターン」と「右室パターン」の話を思い出してください(第17回)。「左室パターン」とは、側壁誘導のイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)で見られる「qR型」波形で、左室興奮を間近で観察するため立派な上向き「R波」が特徴でした。一方、「右室パターン」とは、右室興奮の反映ではなく、左室興奮を側壁誘導の反対側(右室側≒右方)から眺めた下向きの「rS型」QRS波形のことでした。これはちょうど左室パターン(qR型)を上下逆さまにした波形になっています。「LAFB」にはこの2つの波形がそのまま登場します。つまり上向きのI(およびaVL)では「qR型」(左室パターン)となり、下向きのII・aVF(およびIII)が「rS型」となるのです。ね、覚える必要などないでしょ?(図2)を見てもらうと、今回の心電図が見事にこの基準を満たしているんです。細かいことを言うと、かっこ書きした「aVL」が「qR型」でその対側**の「III」が上下反転させた「rS型」というのが実は必須条件で、軸偏位との兼ね合いで解説したIやII・aVFは「“ご近所”は波形が似てる」というルールで理解するというのが根源的な理解なのですが。まぁ、でも都合良く考えた者勝ちですね。**:心筋梗塞の診断で用いる「対側誘導」を思い出しましょう。ちなみに、この「LAFB」の心電図診断について、拙著では“覚えなくていい診断基準”の代表として取り上げています2)。“関連知識も少々”「LAFB」の診断ができるようになれば、ひとまず今回の目的は達成ですが、最後に次回につながる関連知識を述べて終わります。一般的に病的意義がさほど高くないと言われる「LAFB」ですが、心電図的には興味深い点(a~d)があります。【左脚前枝ブロック(LAFB)の関連知識】(a)QRS幅は正常~軽度延長(120msは越えない)(b)肢誘導のQRS波高が“伸びる”(c)胸部誘導のQRS波形にも影響が及ぶことも(d)「下壁梗塞」では診断できない!まず、(a)。「LAFB」の場合、後枝経由の伝導があるため、右脚・左脚ブロックのようにQRS幅がワイド(≧120ms[0.12秒])とはなりません。ただ、一部に遅延伝導があるのは事実であり、パッと見“ややワイド”くらいになることもしばしばです(たくさん見るとわかってくるでしょう)。2つ目の(b)。「LAFB」では、心室内の電気の流れが正常でなくなるため、QRS波高に影響が出ます。とくにaVLが代表的で、心筋重量増加がなくても縦方向に“伸びる”傾向があり、いわゆる「左室高電位(差)」の診断時に注意が必要になるのです3)。この点を次回取り上げます。(c)については、「LAFB」の波形変化は基本的に肢誘導の乗っている前額断(冠状断)で完結して欲しいのですが、ときに胸部誘導(水平断)にも異常が波及します***。そして、最後(d)。下壁領域の心筋梗塞になると、ニサンエフで「異常Q波」が出ますが(第35回)、このQ波が深くなってキツめの左軸偏位を呈しても、「LAFB」とは言いません。原理的に下壁誘導のQRS波形が「rS型」にならないため、上記診断(1)~(3)を意識すれば誤診することはないですが…(仮にあっても)「診断できない」というのが真実のようです。***:R波の増高不良(V1~V3)や時計回転(V5、V6でR波高が小さく深いS波あり)など…これを知っている方は完全な“物知り”です。以上、軽視されがちな「LAFB」について、どこよりも熱いレクチャーをお届けしました。次回は同じ症例を用いて、QRS波高について考えたいと思います。お楽しみに!Take-home Message具体的なQRS電気軸の数値が知りたければ、“トントン法Neo”がベストな方法かも!?「左脚前枝ブロック」は強い左軸偏位が最大の特徴!1:Elizari MV, et al. Circulation. 2007;115:1154-1163.2:杉山裕章. 心電図のはじめかた. 中外医学社;2017.p.25-37.3:Hancock EW, et al. Circulation. 2009 Mar 17.[Epub ahead of print]【古都のこと~御香宮神社】2月初旬の休日、雪の舞う早朝に家を出て職場で残務を終え、予定通り伏見に向かう頃には晴れていました。お目当ては御香宮神社。“ごこうぐう”とも“ごこうのみや”とも読みます。創建年は不明ですが、元は「御諸(みもろ)神社」と称していました。平安時代の貞観4年(862年)に境内から「香」の良い水が湧き出たことを奇瑞に、清和天皇より「御香宮」の名を賜ったのだそう。今でも手水舎に「御香水」*1が使用されているので、それで手を清めます。うーん、冷たい。そしてクンクン(笑)。ここは神功皇后*2を主祭神とし、安産・子育ての御神徳があるとされます。実際、子供を授かったであろうカップルにも何組か出会いました。そんな母性的な反面、御香宮は“天下人”にも愛されたのでした。豊臣秀吉が伏見城の築城の際、城内に鬼門除けの神として勧請し*3、後に徳川家康が元の位置に戻して本殿を造営しています*4。たしかに造り・装飾は “ド派手”、言い換えれば豪壮華麗の桃山様式です。拝殿にお参りをしたら、忘れずに社務所に立ち寄りましょう。伏見奉行であった小堀遠州(政一)ゆかりの素敵な石庭に出会えます。城南宮(第35回)でも登場した中根金作*5の手にかかったものだそう。床の間で再び神功皇后の人形に拝礼し、何かホッコリ、伏見を満喫して帰途に就きました。*1:社名の由来となった清泉「石井の御香水」は伏見の七名水の一つ。徳川家も産湯に使ったとされる。昭和61年(1986年)、「名水百選」にも選ばれた。*2:日本第一安産守護之大神。応仁天皇の母。*3:拝殿が御車寄の拝領というのは伝え誤りとされるが、表門は伏見城大手門(重要文化財)の遺構。*4:慶長10年(1605年)、板倉勝重を請奉行として着手建立された。重要文化財。*5:中根造園研究所前所長

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全身性エリテマトーデス治療薬の開発最前線

治療の基本はステロイド剤だが、無効例、高用量非忍容例では古典的免疫抑制剤も併用される。状況が動いたのは2015年だ。新たな機序を有する免疫抑制剤「ミコフェノール酸モフェチル」(商標名:セルセプト・カプセル)とマラリア治療薬「ヒドロキシクロロキン」(同:プラケニル錠)が、エリテマトーデス治療薬として承認をうけた。さらに2017年には、可溶型Bリンパ球刺激因子(BLyS)標的モノクローナル抗体製剤「ベリムマブ」(同:ベンリスタ注射薬)も承認に至った。現在、開発中の薬剤としては、インターロイキン(IL)-12、23を標的とするモノクローナル抗体でありウステキヌマブ(商標名:ステラーラ)のエリテマトーデスへの応用が検討され、2018年には、第II相試験の結果が以下の通り報告された。従来治療下において活動性を示す全身性エリテマトーデス102例を対象としたランダム化試験において、プラセボに比べ、24週間後の「SRI4レスポンダー」率はプラセボ群に比べ28%の有意高値だった(62% vs. 33%) [van Vollenhoven RF et al. Lancet 2018; 392: 1330] 。さらに48週間追跡でも、ウステキヌマブ群における「SRI4レスポンダー」率は63.3%を維持。56週間までの観察で、死亡、発がん、日和見感染、結核は1例もなし。1年間の有害事象発現率は、プラセボ群からの24週時クロスオーバー33例を含む、全ウステキヌマブ投与例の81.7%。重篤な有害事象に限れば、15.1%だった [van Vollenhoven RF et al. Arthritis Rheumatol. 2019 Nov 25] 。これらの結果を受け現在、500例を登録予定の第III相試験が、2023年12月末終了を目標に進行中である(NCT03517722)。本試験ではわが国でも患者登録が進められており、IL-12/23を標的とする唯一の薬剤として、期待が集まっている。また、完全ヒト化IgG1モノクローナル抗体(mAb)のBIIB059も、申請に近づいた。同剤は、形質細胞様樹状細胞に発現した血液樹状細胞抗原2(BDCA2)受容体に結合し、その結果、炎症性サイトカインであるタイプ-I インターフェロン(IFN-I)の産生を低下させる。IFN-Iはすでに、全身性エリテマトーデスの病態形成における極めて重要な役割が知られていた。2019年3月には、全身性エリテマトーデス12例を対象としたランダム化試験において、BIIB059によるBDCA2受容体の細胞内部移行、さらに皮膚病変部におけるIFN-I誘導たんぱくの減少が報告された [Furie R et al. J Clin Invest. 2019; 129: 1359] 。そして同年12月にはさらに、全身性エリテマトーデス132例を対象としたランダム化試験 “LILAC”の結果、BIIB059がプラセボに比べ、24週間後の「活動性を有する関節」数を有意に減少させたとの情報が、製造社より公表された(NCT02847598)。ただし現時点では、申請など今後の予定は、明らかにされていない。

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ASCO- GI 2020レポート 消化器がん

インデックスページへ戻るレポーター紹介今回、2020年1月23日~25日に米国・サンフランシスコにおいて開催されたASCO GI 2020に参加し、すでに現地速報という形で注目演題を報告させていただいているが、音声などが乱れたこともあり、補足とともにそこで取り上げることができなかった演題を報告させていただきます。DAY1 Cancers of the Esophagus and StomachOral SessionRESONANCE試験:The Randomized, Multicenter, Controlled Evaluation of S-1 and Oxaliplatin (SOX) as Neoadjuvant Chemotherapy for Chinese Advanced Gastric Cancer Patients.(abstract #280)Chen L, et al.中国から発表された局所進行胃がんに対する術前S-1/オキサリプラチン併用療法(SOX)の有効性に関する無作為化第III相試験である。本試験はStageII/IIIの切除可能胃がんおよび接合部がんを対象とし、手術+術後SOX療法(AC群:adjuvant group)に対する術前SOX療法+手術+術後補助化学療法(NC群:Neoadjuvant group)の優越性を検証した。AC群は術後補助化学療法としてSOX療法を8サイクル施行し、一方NC群は術前SOX療法を2~4サイクル施行後に手術を行い、術後SOX療法は術前投与を含め計8サイクル施行する。SOX療法は共にS-1(80~120mg/day、day1~14、3週ごと)およびオキサリプラチン(130mg/m2、day1、3週ごと)である。主要評価項目は3年間の無病生存割合(3y-DFS)であった。772例が登録され、各群に386例が割り付けられた。両群間の患者背景に偏りはなく、cT3はNC群:AC群=64%:66%、cT4はNC群:AC群=12%:13%であり、cStageIIはNC群:AC群=39%:42%、cStageIIIはNC群:AC群=61%:58%であった。NC群において術前SOX療法は91.9%において投与完遂し、術後補助化学療法を含め8サイクル投与が53.2%において完遂可能であったのに比し、AC群における8サイクル投与完遂率は47.7%であった。R0切除率はNC群においてAC群よりも有意に良好であり(94.8% vs.83.8%)、NC群では46.4%にダウンステージングを認め、術後病理学的完全奏効(pCR)を23.6%に認めた。コメント中国で実施された局所進行胃がんに対する術前SOX療法の有効性を検証した第III相試験の第1報である。主要評価項目である3y-DFSの結果はいまだ不明であるが、術前SOX療法を施行することによりR0切除率の向上とダウンステージングが示唆された。ただし、抄録とR0切除率や治療奏効割合(pRR)の結果が異なるなどいくつか気になる点があり、評価には最終的な報告を待つ必要があると考える。POSTER SessionAPOLLO-11試験:Feasibility and pathological response of TAS-118 + oxaliplatin as perioperative chemotherapy for patients with locally advanced gastric cancer(abstract #351)Takahari D, et al.進行胃がんに対するTAS-118(S-1+ロイコボリン)とオキサリプラチンの併用療法(TAS-118/L-OHP)は、2019世界消化器がん会議(WCGC)においてS-1/CDDP併用療法との比較第III相試験(SOLAR試験)として公表されているが、今回、局所進行胃がん症例に対する周術期化学療法での忍容性を検討する単群第II相試験であるAPOLLO-11試験(UMIN000024688)の第1報が報告された。本試験はリンパ節転移を伴うcT3-4局所進行胃がんを対象とし、術前治療としてTAS-118(80~120mg/日、day1~7、2週ごと)およびL-OHP(85mg/m2、day1、2週ごと)併用療法を4コース施行後、胃切除+D2郭清が実施され、術後補助化学療法としてTAS-118単剤x12コース(Step1)もしくはTAS-118/L-OHP併用療法x8コース(Step2)が行われた。主要評価項目は(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性と(2)術後補助化学療法の忍容性であり、今回の報告では(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性結果が報告された。45例が登録され、術前TAS-118/L-OHP併用療法4コースが完遂されたのが40例(89%)であり、最終的に43例(96%)において外科的切除が完遂可能であった。患者背景は年齢中央値=64歳、男性=82%、胃原発/接合部がん=89%/11%、腸型/びまん型=69%/31%、cT3/4a=29%/71%、cN1/2/3=56%/38%/7%、臨床病期IIB/IIIA/IIIB/IIIC=24%/36%/33%/7%であった。術前化学療法における各薬剤の相対薬物濃度(RDI)中央値はTAS-118=91.7%、L-OHP=100.0%であった。術前TAS-118/L-OHP併用療法におけるGrade3以上の有害事象として、下痢(17.8%)、好中球減少症(8.9%)、食欲不振(4.4%)、口腔粘膜炎(4.4%)、白血球減少症(2.2%)、悪心(2.2%)、倦怠感(2.2%)を認めた。R0切除率は95.6%(90%CI:86.7~99.2%)であった。術後標本による病理学的治療効果(Grade1b-3)を62.2%(90%CI:48.9~74.3%)に認め、うち病理学的完全奏効割合(pCR)は13.3%であり、ダウンステージが68.9%(90%CI:55.7~80.1%)の症例において得られた。コメント局所進行胃がんに対する術前TAS-118/L-OHP併用療法に関する初めての報告であり、術前化学療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性が確認された。今後、術後補助化学療法パートの忍容性結果が報告予定であり、長期予後と合わせてその結果が期待される。EPOC1706試験:An open label phase 2 study of lenvatinib plus pembrolizumab in patients with advanced gastric cancer(abstract #374)Kawazoe A, et al.KN-061試験(胃がん2次治療)やKN-062試験(胃がん1次治療)の結果よりPD-L1陽性胃がんに対するペムブロリズマブ単剤療法の奏効割合は約15%と報告されている。一方、マルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブは腫瘍関連マクロファージを減少させ、CD8陽性T細胞の浸潤を増強することによる抗PD-1抗体の抗腫瘍効果増強が報告されており、進行胃がんに対するレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法の単群第II相試験であるEPOC1706試験(NCT03609359)の結果が報告された。本試験は進行胃がんを対象とし、レンバチニブ(20mg/日内服)とペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)の併用療法を病勢進行や毒性などの理由による治療中止まで継続するスケジュールで実施された。主要評価項目は担当医判定による全奏効割合(ORR)である。29例が登録され、患者背景は年齢中央値=70歳、男性=90%、腸型/びまん型=52/48%、初回治療/2次治療=48/52%、HER2陽性=17%、dMMR/pMMR=7/93%、EBV陽性=3%、PD-L1 CPS≧1/<1=66/34%であった。腫瘍縮小効果は非常に良好であり、主要評価項目である担当医判定によるORRはCR1例を含む69%(95%CI:48~85%)、病勢制御割合(DCR)は100%(95%CI:88~100%)であった。無増悪生存期間中央値は7.1ヵ月(95%CI:4.2~10.0)、生存期間中央値には至っていなかった。レンバチニブによる有害事象としてGrade3以上の高血圧(38%)、蛋白尿(17%)を認め、ほとんどの症例においてレンバチニブの1段階以上の減量が必要であったが、減量により毒性はマネジメント可能であった。コメント進行胃がんに対する、非常に切れ味良好な腫瘍縮小効果を認める新規併用療法である一方、immatureではあるがその効果の継続が治療継続期間中央値6.9ヵ月(範囲:2.8~12.0)、PFS 7.1ヵ月と限られており、今後の追加報告が期待される。ATTRACTION-2試験 3年フォローアップ:A phase 3 Study of Nivolumab in Previously Treated Advanced Gastric or Gastric Esophageal Junction Cancer(abstract #383)Chen LT, et al.2レジメン以上の化学療法に対して不応の切除不能進行再発胃がん・接合部がんを対象にニボルマブの有効性をプラセボ比較で検証した第III相試験であるATTRACTION-2試験の3年追跡結果報告である。2017年のLancet誌報告時のニボルマブ投与群の生存期間中央値(mOS)は5.26ヵ月、1年生存割合(1y-OS)は26%であり、2018年のESMOで発表された2年追跡結果における2y-OSは10.6%、2年無増悪生存割合(2y-PFS)は3.8%であった。今回新たに1年間の追加観察期間を設けた報告において、ニボルマブ群の3y-OSは5.6%、3y-PFSは2.4%であった。ニボルマブ群の15例とプラセボ群の3例が3年以上の長期生存を認めており、プラセボ群の3例のうち2例は病勢進行後にニボルマブによる加療を受けていた。ニボルマブ群のうち、最良効果(BOR:best overall response)がCRもしくはPRであった32例(9.7%)の生存期間中央値は26.88ヵ月であり、1y-OSは87.1%、2y-OSは61.3%、3y-OSは35.5%であった。BORがSDであった76例(23%)の生存期間中央値は8.87ヵ月であり、1y-OSは36.1%、2y-OSは7.4%、3y-OSは3.0%であった。ニボルマブ群のうち55.5%の症例において免疫関連の有害事象を認め、これら免疫関連有害事象を認めた症例のmOSは7.95ヵ月であり、認めなかった症例のmOSは3.81ヵ月であった(HR=0.49)。コメント今回、3年の観察期間を設けた報告によりニボルマブ投与によって3年以上の長期生存を得られる症例が5%程度いることが示唆され、またBORがCRもしくはPRとなりえる約10%程度の症例においては、約3分の1において3年以上の生存が得られる可能性が示唆された。毒性に関して、ほとんどの場合、既報のごとくニボルマブによる治療開始後3ヵ月以内に発生していたが、なかには治療開始後2年以上の経過の後に免疫関連有害事象として肺障害や腎障害が出現したケースも認め、ニボルマブ投与に当たってはその投与終了後にも免疫関連有害事象の出現に関して引き続き注意が必要であることが示唆された。MSI status in > 18,000 Japanese pts:Nationwide large-scale investigation of microsatellite instability status in more than 18,000 patients with various advanced solid cancers.(abstract #803)Akagi K, et al.本邦におけるMSI-Hの頻度に関して、2018年12月~2019年11月の1年間にMSI検査キット(FALCO)による解析が実施された2万5,789例を対象に検討。2万5,563例(99.1%)で解析可能であり、うち959例(3.75%)がMSI-Hであった。MSI-Hは10~20代の若年者(7.43%)および80代以上の超高齢者(5.77%)において認める傾向が強く、また既報のごとく早期病期(StageI~III)に比べ進行期(StageIV)においてその頻度は少なかった(StageI~III:StageIV=6.02%:3.05%)。がん種別のMSI-Hの頻度は子宮体がん(17.00%)、小腸がん(9.23%)、胃がん(6.73%)、十二指腸がん(5.79%)、大腸がん(3.83%)、NET/NEC(3.60%)、前立腺がん(3.04%)、胆管がん(2.26%)、胆嚢がん(1.55%)、肝がん(1.15%)、食道がん(1.00%)、膵がん(0.74%)であった。コメントMSI-H腫瘍に関して、既報と照らし合わせても最も多くの対象で検討した非常に貴重な報告であり、日本人MSI-H腫瘍の状況を反映していると考える。DAY2 Cancers of the Pancreas, Small Bowel, and Hepatobiliary TractOral SessionPROs from IMbrave150試験:Patient-reported Outcomes From the Phase 3 IMbrave150 Trial of Atezolizumab + Bevacizumab Versus Sorafenib as First-line Treatment for Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma.(abstract #476)Galle PR, et al.切除不能肝細胞がんの1次治療例を対象に、標準治療であるソラフェニブに対するアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)/ベバシズマブ(抗VEGF抗体)併用療法の優越性がESMO-Asia 2019において報告されており、主要評価項目である生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の両エンドポイントにおいてアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法が有意に良好であった(OS-HR:0.58、p=0.0006、PFS-HR:0.59、p<0.0001)。今回、副次評価項目である患者報告(PRO:patient-reported outcomes)によるQOL評価、身体機能評価、症状評価(疲労感、疼痛、食欲低下、下痢、黄疸)の結果が発表された。評価はEORTC QLQ-C30およびQLQ-HCC18により行われ、治療中は3週ごとに、治療中止後は3ヵ月ごとに1年間実施された。92%以上の症例においてアンケートが回収可能であり、QOL、身体機能、症状の悪化までの期間(TTD:time to deterioration)はいずれもアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法においてソラフェニブより良好であった。コメント切除不能肝細胞がんに対する1次化学療法において、新たな標準療法であるアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法のソラフェニブに対する有効性および安全性が報告された。本邦においても早期の臨床導入に期待したい。Poster SessionStudy117:A Phase 1b Study of Lenvatinib Plus Nivolumab in Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma(abstract #513)Kudo M, et al.切除不能肝臓がんに対する標準治療の一つであるレンバチニブと、ソラフェニブ治療後の治療選択肢であるニボルマブの併用療法の至適投与量を検討した第Ib相試験である。本試験はBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer) Stage B(肝動脈化学塞栓療法が不応)またはStage C、Child-Pugh分類Aの切除不能肝臓がん症例を対象に、レンバチニブ(12mgもしくは8mg/day)+ニボルマブ(240mg、2週ごと)併用療法を投与した。本試験はPart1とPart2で構成され、Part1では用量制限毒性(DLT:dose-limiting toxicities)を評価目的に6例登録し、Part2はexpansion cohortとして全身化学療法歴のない切除不能肝臓がん患者が24例登録された。主要評価項目は忍容性および併用療法の安全性である。患者背景は年齢中央値=70歳、男性=80%、BCLC Stage B/C=57%/43%、Child-Pugh 5/6=77%/23%、B型肝炎/C型肝炎/アルコール性/不明/その他=20%/20%/30%/23%/6.7%、肝外病変あり/なし=43%/57%である。レンバチニブによる毒性中止を2例(6.7%)に認め、ニボルマブによる毒性中止を4例(13.3%)に認めた。頻度の高い有害事象として手足症候群(60%)、発声障害(53%)、食欲低下(47%)、下痢(47%)、蛋白尿(40%)を認めたが、Grade3以上の有害事象は手足症候群(3.3%)、発声障害(3.3%)、食欲低下(3.3%)、下痢(3.3%)、蛋白尿(6.7%)であった。担当医評価による腫瘍縮小割合(ORR)は76.7%であり、Part2登録例における腫瘍縮小が得られるまでの期間は1.87ヵ月であり、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.39ヵ月であった。コメント切除不能肝臓がんの治療に関して、マルチキナーゼ阻害薬(レゴラフェニブ、レンバチニブ)と免疫check point阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の併用療法が検討されており、本学会においてもほかにレゴラフェニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関する発表があった(#564)。その中でもレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関しては、AACR2019で発表された第Ib相試験であるKEYNOTE-524/Study 116試験(#CT061/18)の中間解析結果に基づき、切除不能肝臓がんの1次治療としてFDAよりBreakthrough Therapy指定を受けており、今後の追加報告が期待される。PACS-1 study:A Multicenter Clinical Randomized Phase II Study of Investigating Duration of Adjuvant Chemotherapy with S-1 (6 versus 12 months) for Patients with Resected Pancreatic Cancer. (abstract #669)Yamashita Y, et al.本邦における膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間を検討した無作為化第II相試験。本試験は膵がん切除後例(T1-4、N0-1、M0)を対象とし、術後補助化学療法としてS-1内服を半年間投与する群と1年間投与する群に1:1の割合で割り付けされた。主要評価項目は2年間の生存割合(2y-OS)である。両群間の患者背景に偏りはなかった。術後S-1半年投与群は64.7%において治療完遂が可能であったが、1年間投与群においては44.0%が完遂可能であった。生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)において、統計学的有意差はないものの術後S-1投与期間は半年間群のほうが1年間群より良好な傾向であった。(2年OS:半年間群 vs.1年間=71% vs.65% [HR=1.239、 p=0.3776 ])、( 2年DFS:半年間群 vs.1年間=57% vs.51%[HR=1.182、p=0.3952]) コメント膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間は6ヵ月と考える。DAY3 Cancers of the Colon, Rectum, and AnusOral SessionJCOG1007(iPACS):A randomized phase III trial comparing primary tumor resection plus chemotherapy with chemotherapy alone in incurable stage IV colorectal cancer:JCOG1007 study(abstract #7)Kanemitsu Y, et al.切除不能StageIV大腸がんのうち無症状症例に対して、原発切除を化学療法に先行して行うことの優越性を検証した無作為化第III相試験である。本試験は腫瘍による狭窄などの症状を有さず、待機手術としての原発切除を予定できる治癒切除不能のStageIV大腸がん初回治療例を対象とし、標準治療であるA群:オキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法群とB群:原発切除後にオキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法を受ける群に無作為割り付けされた。主要評価項目は全生存期間である。当初770例を目標に試験が開始されたが、症例登録が伸びなかったために統計設定が見直され280例を登録目標とされたが、160例登録時の初回中間解析の結果、試験群であるB群の生存曲線が対照群であるA群を下回っていたため途中中止となり今回結果が発表された。両群間の患者背景に偏りはなかった。主要評価項目である全生存期間においてA群:B群=26.7ヵ月:25.9ヵ月(HR=1.10、one-sided p=0.69)であり、B群の優越性は認めなかった。副次評価項目であるPFSはA群:B群=12.1ヵ月:10.4ヵ月(HR=1.08)であり、原発切除先行群(B群)において術後死亡例を3例(4%)に認めた。コメント今回の結果より、腫瘍随伴症状を有さないStageIV大腸がんに対して、一律に原発切除を化学療法に先行して行うことは推奨されず、同症例に対しては化学療法の先行を検討すべきと考える。同様の対象に対して、欧州において無作為化比較試験(SYNCHRONOUS試験-ISRCTN30964555、CAIRO4試験)が進行中であり、今後これらの報告にも注意が必要と考える。BEACON CRC QoL:Encorafenib plus cetuximab with or without binimetinib for BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer:Quality-of-life results from a randomized, three-arm, phase III study versus the choice of either irinotecan or FOLFIRI plus cetuximab(abstract #8)Kopetz S, et al.治療歴を有するBRAF V600E遺伝子変異陽性進行再発大腸がん例に対する治療としてMEK阻害薬であるビニメチニブ、BRAF阻害薬であるエンコラフェニブおよび抗EGFR抗体であるセツキシマブの3剤併用療法と、エンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法、セツキシマブと化学療法の併用(対照群)を比較する第III相試験であるBEACON CRC試験における患者報告によるQOL評価と最新の生存データが発表された。本試験の結果はすでに2019年9月にNEJM誌において報告されており、全生存期間の中央値は対照群で5.4ヵ月、3剤併用群で9.0ヵ月(HR=0.52、pレポーター紹介インデックスページへ戻る

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低脂肪食で乳がん死亡リスクは減るか~無作為化比較/JCO

 食事による脂肪摂取量と乳がんの関連について、観察研究では結果が一貫していない。米国・Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らは、乳がん発症における低脂肪食の影響を検討したWomen's Health Initiative(WHI)Dietary Modification(DM)試験の追加解析で、乳がん後の死亡リスクとの関連を検討した。その結果、閉経後女性において、野菜、果物、穀物の摂取を増やした低脂肪の食事パターンが、乳がんによる死亡リスクを減らす可能性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年2月7日号に掲載。 WHI DM試験の対象は、米国の40施設において、乳がんの既往がなく食事性脂肪でエネルギーの32%以上を摂取している50~79歳の閉経後女性4万8,835人。通常の食事群(60%)もしくは食事介入群(40%)に無作為に割り付けた。 主な結果は以下のとおり。・食事介入8.5年における乳がん発症および乳がんによる死亡は、介入群で低かったが有意ではなかった。一方、乳がん後の死亡は、介入期間中および16.1年(中央値)のフォローアップ期間を通して有意に低かった。 ・長期フォローアップ後(中央値:19.6年)も、介入群における乳がん後の死亡の有意な低下は持続した(359例[0.12%]vs.652例[0.14%]、HR:0.85、95%CI:0.74〜0.96、p=0.01)。また、乳がんによる死亡の低下も有意になった(132例[年当たりリスク0.037%]vs.251例[0.047%]、HR:0.79、95%CI:0.64〜0.97、p=0.02)。

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最適な抗うつ薬投与量~システマティックレビュー

 固定用量で行われる抗うつ薬の試験では、承認された用量の中でも低用量で有効性と忍容性の最適なバランスが実現されている。副作用が許容される範囲内での抗うつ薬の増量がベネフィットをもたらすかについて、京都大学の古川 壽亮氏らが検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2019年12月31日号の報告。 急性期うつ病治療に対するSSRI、ベンラファキシン、ミルタザピンを検討したプラセボ対照ランダム化試験をシステマティックにレビューした。主要アウトカムは治療反応とし、うつ病重症度の50%以上減少と定義した。副次アウトカムは、有害事象による脱落および何らかの理由による脱落とした。抗うつ薬の承認最小用量を超える漸増をプラセボと比較した試験および固定用量とプラセボを比較した試験におけるオッズ比(ROR)を算出するため、ランダム効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・公開および未公開のランダム化比較試験123件(2万9,420例)を解析した。・抗うつ薬の漸増に、固定低用量を超える有効性は認められなかった。 ●SSRI(ROR:0.96、95%CI:0.73~1.25) ●ベンラファキシン(ROR:1.24、95%CI:0.96~1.60) ●ミルタザピン(ROR:0.77、95%CI:0.33~1.78)・ベンラファキシンの75mg固定用量と比較し、75~150mgの漸増において優れた有効性が認められたが(ROR:1.30、95%CI:1.02~1.65)、それ以外では、忍容性またはサブグループ解析において、重要な差は認められなかった。 著者らは「有効性、忍容性や受容性の観点から、SSRIまたはミルタザピンの承認最小用量を超えた漸増の効果は認められなかった。ただし、ベンラファキシンでは、最大150mgまで増量することで効果が期待できることが示唆された」としている。

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成人後に5kg増えると閉経前乳がんリスクは?~63万人のプール解析

 女性は成人初期以降に体重が大きく増減することがある。これまでに体の大きさと閉経前乳がんリスクとの関係は報告されているが、体重変化と閉経前乳がんリスクとの関係は不明である。今回、英国・The Institute of Cancer ResearchのMinouk J. Schoemaker氏らが、17件の前向き研究の個人データをプール解析したところ、成人初期の体重に関係なく、成人初期から45〜54歳までの体重増加が閉経前乳がんリスクの低下と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2020年2月3日号に掲載。 本研究では、成人初期の体重、体重変化時期、他の乳がんリスク因子、乳がんサブタイプを考慮し、体重変化と閉経前乳がんリスクとの関連を調査した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・62万8,463人の女性のうち、1万886人が閉経前に乳がんと診断された。・18〜24歳時の体重および他の乳がんリスク因子で調整したモデルにおいて、18〜24歳から35〜44歳まで、もしくは45〜54歳までの体重増加が乳がん全体(例:45〜54歳までの5kg増当たりのHR:0.96、95%CI:0.95~0.98)およびエストロゲン受容体(ER)陽性乳がん(45~54歳までの5kg増当たりのHR:0.96、95%CI:0.94~0.98)と逆相関することが示された。・25~34歳からの体重増加はER陽性乳がんのみと逆相関し、35~44歳からの体重増加はリスクと関連していなかった。・これらの体重増加はいずれもER陰性乳がんリスクとは関連していなかった。・体重減少については、成人初期の体重を調整すると、全体またはER有無別のリスクと関連していなかった。 なお、日本人女性コホートのプール解析では、閉経前乳がんとBMIとの間に正の関連がみられたとの報告(Wada K, et al. Ann Oncol. 2014;25:519-524.)があることから、日本人女性では欧米人女性とは傾向が異なる可能性もある。

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長期透析中AF患者へのDOAC、臨床的メリットは

 脳卒中リスク低減のため、心房細動(AF)には直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されているが、長期間に渡って透析治療を受けている患者は出血リスクが高く、臨床的メリットは不明である。米国・マウントサイナイ・ベスイスラエル病院の工野 俊樹氏らは、長期透析中のAF患者に対するDOACの有効性および安全性についてネットワークメタ解析の手法を用いて調査を行った。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2020年1月28日号に掲載。DOACが長期透析中のAF患者の血栓塞栓症のリスク低下と関連しない 本調査では、2019年6月10日までにMEDLINEおよびEMBASEに登録された文献データを検索。その結果、AFのある長期透析患者に関する16件の観察研究(7万1,877例)が特定され、うち2件がDOACについて調査を行っていた。有効性のアウトカムは、虚血性脳卒中/全身性血栓塞栓症(SE)および全死因死亡、安全性のアウトカムには大出血だった。ただし、ダビガトランとリバロキサバンのアウトカムは、主要な出血イベントに限定されていた。 長期透析中AF患者へのDOACの有用性について調査した主な結果は以下の通り。・アピキサバンとワルファリンは、抗凝固薬なしと比べ脳卒中/SEの有意な減少と関連していなかった(アピキサバン5mg;ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.30〜1.17、アピキサバン2.5mg;HR:1.00、95%CI:0.52~1.93、ワルファリン;HR:0.91、95%CI:0.72~1.16)。・アピキサバン5 mgは、死亡リスクが有意に低かった(vs.ワルファリン;HR:0.65、95%CI:0.45~0.93、vs.アピキサバン2.5 mg;HR:0.62、95%CI:0.42~0.90、vs.抗凝固薬なし;HR:0.61、95%CI:0.41~0.90)。・ワルファリンは、アピキサバン5mg/2.5mgおよび抗凝固薬なし、よりも大出血のリスクが有意に高かった(vs.アピキサバン5mg;HR:1.41、95%CI:1.07~1.88、vs.アピキサバン2.5mg;HR:1.40、95%CI:1.07~1.8、vs.抗凝固薬なし;HR:1.31、95%CI:1.15~1.50)。・ダビガトランおよびリバロキサバンは、アピキサバンおよび抗凝固薬なしよりも重大な出血リスクが有意に高かった。 今回のネットワークメタ解析では、DOACが長期透析中のAF患者の血栓塞栓症のリスク低下と関連しないことを示しており、ワルファリン、ダビガトラン、およびリバロキサバンは、アピキサバンおよび抗凝固薬なしと比べ有意に高い出血リスクと関連していた。著者らは、「透析中のAF患者の抗凝固薬に関してはアピキサバンの有効性と安全性を調べたランダム化試験が必要であり、ワルファリンとの比較だけではなく抗凝固薬なしとの比較も必要である」と述べている。

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ROS1陽性肺がんの血栓塞栓イベント/Lung Cancer

 オーストラリアの6施設がROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の静脈および動脈血栓塞栓症(TE)の発生率、転帰に関するプール解析を行った。Lung Cancer誌オンライン版2020年1月22日号の掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・登録患者42例の患者のうち、20例(48%)がTEを経験した。・TEの内訳は、動脈塞栓症1例(2%)、肺塞栓症13例(31%)、深部静脈血栓症12例(29%)であった。・TE患者のうち、6例(30%)が複数のイベントを経験した。・TEは診断期前・中・後いずれの時期にも発現した。・TEはまた治療戦略に関係なく発生した。・TE合併患者の全生存期間中央値は、TE合併患者21.3ヵ月、TE非合併患者では28.8ヵ月であった(HR:1.16、95%CI:0.43~3.15)。・化学療法1次治療群の全奏効率(ORR)は、TE合併患者で50%、TE非合併患者では44%であった。・標的治療薬1次治療群のORRは、TE合併患者で67%、TE非合併患者で50%であった。 ROS1融合遺伝子陽性肺がんでは、治療戦略に関係なく、診断期間を超えてTEリスクが持続的することがリアルワールドデータで示された。著者らは、ROS1融合遺伝子陽性肺がんでは、1次血栓予防の検討が推奨されると述べている。

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COPD、在宅呼吸器療法と臨床転帰との関連は?/JAMA

 高二酸化炭素血症を伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、在宅での二相性気道陽圧(BPAP)による非侵襲的陽圧換気(NIPPV)はデバイスなしと比較して、死亡リスク、全入院および挿管リスクの低下と関連し、QOLについて有意差はなかったことが、また非侵襲的在宅人工呼吸(HMV)はデバイスなしと比較して、入院リスク低下と有意に関連し、死亡リスクに有意差はなかったことが示された。米国・メイヨー・クリニックEvidence-based Practice CenterのMichael E. Wilson氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。COPD増悪に対する院内NIPPVの使用は確立されているが、高二酸化炭素血症を伴うCOPDにおける在宅NIPPVとアウトカムの関連については不明であった。JAMA誌2020年2月4日号掲載の報告。約5万例についてメタ解析 研究グループは1995年1月1日~2019年11月6日の期間で、MEDLINE、EMBASE、SCOPUS、Cochrane Central Registrar of Controlled Trials、Cochrane Database of Systematic Reviews、National Guideline Clearinghouseに公表された英語論文を検索し、1ヵ月以上在宅NIPPVを使用した高二酸化炭素血症を伴うCOPD成人患者を対象とする無作為化臨床試験(RCT)および比較観察研究を解析に組み込んだ。 データ抽出は2人の評価者が独立して行った。バイアスリスクは、RCTではCochrane Collaboration risk of bias tool、非RCTではNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。 主要評価項目は、長期追跡期間中の死亡、あらゆる原因による入院(全入院)、挿管、QOLであった。 検索により、解析にはRCTが21件、比較観察研究が12件、合計5万1,085例(平均[SD]年齢65.7[2.1]歳)の被験者データが組み込まれた。このうち死亡は434例、挿管は27例であった。在宅BPAPで死亡・入院・挿管リスクが低下、エビデンスの質は低い~中程度 BPAP群はデバイスなし群と比較して、死亡率(22.31 vs.28.57%、リスク差[RD]:-5.53%[95%信頼区間[CI]:-10.29~-0.76]、オッズ比[OR]:0.66[95%CI:0.51~0.87]、p=0.003、13試験、患者1,423例、エビデンスの強さ[strength of evidence:SOE]:中程度)、全入院率(39.74 vs.75.00%、RD:-35.26%[95%CI:-49.39~-21.12]、OR:0.22[95%CI:0.11~0.43]、p<0.001、1試験、患者166例、SOE:低い)、挿管率(5.34 vs.14.71%、RD:-8.02%[95%CI:-14.77~-1.28]、OR:0.34[95%CI:0.14~0.83]、p=0.02、3試験、患者267例、SOE:中程度)が有意に低下した。 全入院の合計(率比:0.91[95%CI:0.71~1.17]、p=0.47、5試験、患者326例、SOE:低い)とQOL(標準化平均差:0.16[95%CI:-0.06~0.39]、p=0.15、9試験、患者833例、SOE:不十分)の有意差は確認されなかった。 非侵襲的HMV群はデバイスなし群と比較して、全入院数の低下と有意な関連が確認されたが(率比:0.50[95%CI:0.35~0.71]、p<0.001、1試験、患者93例、SOE:低い)、死亡率の有意差は確認されなかった(21.84 vs.34.09%、RD:-11.99%[95%CI:-24.77~0.79]、OR:0.56[95%CI:0.29~1.08]、p=0.49、2試験、患者175例、SOE:不十分)。 有害事象は、デバイスなしとNIPPV使用患者とで統計学的有意差は確認されなかった(0.18/例vs.0.17/例、p=0.84、6試験、患者414例)。

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日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。 本研究では40~64歳の男性すべてを登録し、被験者数は、1958年628人、1977年539人、1982年602人、1989年752人、1999年402人、2009年329人、2018年160人であった。1958~89年は24時間思い出し法、1958~89年は食事摂取頻度調査票を用いて、食事摂取パターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日当たりの総エネルギー摂取量は、2,837kcal(1958年)から2,096kcal(2018年)に減少した。・炭水化物摂取量の全体に対する割合は84%から53%に著しく減少したが、脂肪摂取量の割合は5%から24%に大幅に増加した。・年齢調整後の平均コレステロール値は167.9mg/dLから209.4mg/dLに急激に上昇し、BMIも21.7から24.4に増加した。・喫煙率は69%から30%に減少した。・脳卒中およびがんによる死亡率は低下したが、心筋梗塞および突然死による死亡率は低いまま安定していた。

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フルベストラント+capivasertib、AI耐性進行乳がんでPFS延長(FAKTION)/Lancet Oncol

 capivasertibは、セリン/スレオニンキナーゼAKTの3つのアイソフォームすべてを強力に阻害するAKT阻害薬である。本剤の無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験(FAKTION試験)において、アロマターゼ阻害薬(AI)に耐性の進行乳がん患者に対し、フルベストラントにcapivasertibを追加することで無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することを、英国・カーディフ大学のRobert H. Jones氏らが報告した。Lancet Oncology誌オンライン版2020年2月5日号に掲載。 本試験の対象は、英国の19病院において、18歳以上、ECOG PS 0〜2、エストロゲン受容体(ER)陽性、HER2陰性で、AIで再発/進行した手術不能の転移/局所進行乳がんの閉経後女性。登録された参加者は無作為に1対1に割り付けられ、病勢進行、許容できない毒性、追跡不能、同意の撤回まで、フルベストラント500mg(1日目)を28日ごとに投与(1サイクル目の15日目に負荷用量を追加)、capivasertib 400mgまたはプラセボを4日間投与3日間休薬の週間スケジュール(1サイクル目の15日目から開始)で1日2回経口投与した。主要評価項目はPFS(片側α:0.20)。参加者募集は終了し、試験は追跡期間中である。 主な結果は以下のとおり。・2015年3月16日~2018年3月6日にスクリーニングされた183例中140例(76%)が適格基準を満たし、フルベストラント+capivasertib(capivasertib 群、69例)またはフルベストラント+プラセボ(プラセボ群、71例)に無作為に割り付けられた。・PFSの追跡期間中央値は4.9ヵ月であった(IQR:1.6〜11.6)。・PFSの初回解析時(2019年1月30日)までにPFSイベントが112例に発生し、capivasertib群は69例中49例(71%)、プラセボ群は71例中63例(89%)であった。・PFS中央値はcapivasertib群が10.3ヵ月(95%CI:5.0~13.2)、プラセボ群が4.8ヵ月(同:3.1~7.7)で、未調整のハザード比(HR)は0.58(95%CI: 0.39~0.84)でcapivasertib群が優位であった(両側p=0.0044、片側log rank検定p=0.0018)。・Grade3/4の主な有害事象は、高血圧(capivasertib群69例中22例[32%]vs.プラセボ群71例中17例[24%]、下痢(10例[14%]vs.3例[4%])、発疹(14例[20%]vs. 0例)、感染症(4例[6%]vs. 2例[3%])、疲労(1例[1%]vs.3例[4%])であった。・重篤な有害事象はcapivasertib群でのみ発生し、急性腎障害(2例)、下痢(3例)、発疹(2例)、高血糖(1例)、意識喪失(1例)、敗血症(1例)、嘔吐(1例)であった。・非定型肺炎による死亡1例は、capivasertibの治療関連と評価された。・capivasertib群のもう1例の死亡原因は不明で、それ以外の両群における死亡(capivasertib群19例、プラセボ群31例)はすべて疾患関連であった。

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