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処方薬が自主回収に 処方理由を掘り下げた代替薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第16回

 製薬会社からの「自主回収のお知らせ」は、ある日突然アナウンスされます。「代替薬はどうしますか?」と医師に丸投げするのではなく、服用理由や副作用リスクを考慮しながら代替薬を提案しましょう。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患:慢性心不全、心房細動、高血圧症、糖尿病、症候性てんかん、甲状腺機能低下症既 往 歴:1年前に外傷性くも膜下出血で入院服薬管理:一包化処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠60mg 2錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後5.レボチロキシンナトリウム錠50μg 1錠 分1 朝食後6.カルベジロール錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝夕食後8.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後9.テルミサルタン錠20mg1錠 分1 朝食後10.ラメルテオン錠8mg 1錠 分1 夕食後11.ミアンセリン錠10mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんの訪問薬剤管理指導を始めてから3ヵ月目に、MSDよりミアンセリン錠10mgの自主回収(クラスII)のアナウンスが入りました。理由は、安定性モニタリングにおいて溶出性が承認規格に適合せず、効果発現が遅延する可能性があるとのことで、使用期限内の全製品の回収と出荷停止が行われました。そこで、医師にミアンセリンから代替薬への変更を提案することにしました。服用契機は、入院中にせん妄が生じたため処方されたと記録されていました。また、以前からこの患者さんには不眠傾向があり、睡眠薬の代替としていることも考えられました。高齢者では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬により、せん妄や意識障害のリスクが懸念されるため、5HT2a受容体遮断作用により睡眠の質を改善するとともに、H1受容体遮断作用により睡眠の量も改善するミアンセリンが代替薬として少量投与されることがあります。なお、ラメルテオンもせん妄リスクのある患者で有効とするデータもあり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリスクを回避しつつ、せん妄と不眠症の両方の改善を目指していると思われました1)。これらの背景を考慮したうえで、代替薬としてトラゾドンを考えました。トラゾドンは、弱いセロトニン再取り込み阻害作用と、強い5HT2受容体遮断作用を併せ持つ薬剤です。睡眠に関しては、全体の睡眠時間を増加させ、持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らす効果を期待して処方されることもあり、せん妄と不眠症を有するこの患者さんには最適と考えました。処方提案と経過医師に「ミアンセリン自主回収に伴う代替薬」という表題の処方提案書を作成し、トラゾドンへの変更を提案しました。標準用量では過鎮静やふらつき、起立性低血圧など薬剤有害事象の懸念があると考え、少量の25mgを提案し、認知機能や運動機能低下の有害事象をモニタリング項目として観察することを記載しました。その結果、医師の承認を得ることができました。処方変更後、過鎮静やふらつきなどはなく、せん妄の再燃や入眠困難、中途覚醒などの症状もなく経過しています。1)Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 2014;71:397-403.2)山本雄一郎著. 日経ドラッグインフォメーション編. 薬局で使える 実践薬学. 日経BP社;2017.3)Sateia MJ, et al. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017:13;307-349.doi: 10.5664/jcsm.6470.

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初回エピソード統合失調症患者に対する抗うつ薬や気分安定薬の使用の現状

 統合失調症の第1選択薬は、抗精神病薬であるが、しばしば抗うつ薬や気分安定薬などによる補助療法が行われている。しかし、初回エピソード統合失調症患者に対する情報は限られている。フィンランド・東フィンランド大学のArto Puranen氏らは、初回エピソード統合失調症患者に対する抗うつ薬および気分安定薬の使用や関連する要因について調査を行った。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2020年1月15日号の報告。 1996~2014年にフィンランドで統合失調症の入院治療を行い、初回入院治療時に抗うつ薬または気分安定薬を使用しなかった患者を特定するため、レセプトデータベースを用いた。対象患者は7,667例、平均年齢は40.2±18.2歳であった。1995~2017年の処方データは、National Prescription registerより取得し、PRE2DUP法でモデル化した。抗うつ薬および気分安定薬の使用開始は、初回統合失調症診断より3年間のフォローアップを行った。抗うつ薬または気分安定薬の使用に関連する要因は、Cox比例ハザードモデルを用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・初回エピソード統合失調症患者において、診断後3年以内に抗うつ薬を開始した患者は35.4%、気分安定薬の使用を開始した患者は14.1%であった。・抗うつ薬および気分安定薬の使用開始の高リスクと関連していた要因は、女性、若年、ベンゾジアゼピン使用であった。・過去の精神疾患数は、抗うつ薬の使用リスクの減少および気分安定薬の使用リスクの増加との関連が認められた。 著者らは「臨床ガイドラインでは、統合失調症の補助療法として、抗うつ薬や気分安定薬の使用を推奨することはほとんどないが、実際にはしばしば使用されている。これら薬剤の補助療法としてのリスクを評価するためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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胎児・乳児・小児期のタバコ曝露と小児乾癬のリスク

 タバコは成人の乾癬における関連要因として知られているが、小児の乾癬においても同様であることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のJonathan Groot氏らは、同国出生コホートから2万5,812例のデータを集め、胎児期、乳児期(月齢6ヵ月まで)、小児期(11歳まで)のタバコ曝露と小児乾癬の関連を調べた。その結果、胎児期のタバコ曝露が線形にリスクを増大することが示唆され、小児乾癬においてもタバコが発症原因の役割を果たす可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年1月20日号掲載の報告。 研究グループは、デンマーク出生コホートの参加者データを集めて、胎児期、乳児期、小児期のタバコ曝露が小児乾癬のリスクを増大するかを検討した。 データは、おおよそ在胎12週時および月齢6ヵ月時(乳児期)と11歳時(小児期)に集められ、完全データを得られた2万5,812例について、タバコ曝露と小児乾癬との関連オッズ比(OR)を推算して評価した。 なお、本研究はアウトカム状況の報告が母親によってなされている、という点から結果は限定的であるとしている。 主な結果は以下のとおり。・小児期の乾癬リスクが、胎児期にタバコに曝露していた集団で観察された(補正後OR:1.39、95%信頼区間[CI]:1.06~1.82)。・毎日の喫煙(紙巻きタバコ)量が多いほど、曝露反応関係が観察された(1日16本以上喫煙の補正後OR:2.92、95%CI:1.20~7.10、傾向のp=0.038)。・乳児期(補正後OR:1.17、95%CI:0.76~1.79)、および小児期(補正後OR:1.10、95%CI:0.77~1.58)のタバコ曝露との関連性は、出生前曝露で調整後は減弱することが示された。

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退院後に陽性のCOVID-19症例、CTに悪化みられず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者の一部にウイルスキャリアの可能性が示唆されたー。中国・武漢大学中南医院のLan Lan氏らは、中国で退院または隔離解除の基準を満たしたCOVID-19の4症例(臨床症状とCT異常所見の消失、および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応[RT-PCR]法による検査で2回とも陰性)が、退院・隔離解除5〜13日後にRT-PCR検査で陽性になったことを明らかにした。JAMA誌オンライン版2020年2月27日号のリサーチレターに報告した。 研究者らは2020年1月1日~2月15日までの期間、同病院に入院していた1例と隔離されていた3例(すべて医療者)について、RT-PCR検査で判定した。退院または隔離解除については、次のすべての基準を満たすものとした。(1)平熱が3日以上持続(2)呼吸器症状の改善(3)CT検査で胸部の急性滲出性病変の大幅な改善(4)1日以上あけて実施したRT-PCR検査の結果が2回連続で陰性 検査は咽頭スワブによって採取した検体を用いRT-PCR検査を実施。人口統計、検査所見、および放射線学的な特徴を電子カルテから収集した。退院・隔離解除後、患者には再度RT-PCR検査実施のための来院を要請した。 結果は以下のとおり。・4症例全員が医療従事中に感染した。うち2例は男性で、年齢範囲は30〜36歳だった。3例は発熱、咳嗽、またはその両症状を呈した。また、1例は、最初は無症候性だったが、感染患者への接触が認められたのでthin-section CTを受けた。・全症例のRT-PCR検査の結果は陽性であり、CT画像では肺のすりガラス状影(GGO:Ground-glass Opacification)またはmixed GGOと硬化が確認された。疾患重症度は軽度~中等度だった。・全症例に抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビル75mgを12時間ごとに経口投与)を投与。症状発現から回復までに12〜32日間を要した。これにより3例の臨床症状やCT異常所見が改善。残り1例のCT所見では、わずかなGGOが示された。・退院・隔離解除後も、患者は自宅で5日間の隔離状態を継続した。5〜13日後にRT-PCR検査が繰り返された結果、全員陽性だった。その後4〜5日間に3回のRT-PCR検査を繰り返したが、全員陽性だった。別メーカーのキットを使用し、追加RT-PCR検査を実施しても、全症例で陽性だった。・退院・隔離解除後、患者は問診では無症状、胸部CT所見も以前の画像から変化がみられなかった。・全症例とも呼吸器症状を有する人との接触はなく、家族の感染はなかった。

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EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」【肺がんインタビュー】 第41回

第41回 EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」EGFR変異陽性非小細胞肺がん1次治療における、ゲフィチニブ単剤とゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法を比較した第III相試験「NEJ009試験」の結果がJournal of Clinical Oncology誌で発表された。試験統括医師である東北大学大学院の井上 彰氏に聞いた。EGFR-TKI単剤を上回る治療効果―試験実施の背景について教えていただけますか。われわれは約10年前に、ゲフィチニブ単剤とプラチナ併用化学療法を比較するNEJ002試験を実施しました。その結果、ゲフィチニブの有用性が示され、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)には、ゲフィチニブなどのEGFR-TKI単剤が標準治療となりました。とはいえ、TKI単剤で病勢が抑えられるわけではなく、その後に化学療法を使うことになります。しかし、NEJ002試験の後解析で、ゲフィチニブ治療の後、3分の1くらいの患者さんが標準化学療法を受けられていないことが明らかになりました。その患者さんたちに、しっかりTKIとプラチナ併用化学療法を使うことができれば、さらに生存成績が改善できるのではないか。では、どうすればTKIとプラチナ併用化学療法をすべて受けられるか、それを検討するためにNEJ005試験を行いました。この試験では、ゲフィチニブとプラチナ併用化学療法を同時に用いる方法と、交互に用いる方法を比較しました。その結果、同時療法は交互療法より手間がかからずに実施でき、さらに安全性は交互療法と同程度、有効性の面では、むしろ同時療法のほうが良好である可能性が示されました。そこで、この同時療法と標準治療となったゲフィチニブ単剤とを比較することとなりました。それがこのNEJ009試験を実施した背景です。―NEJ009試験の概要と主な結果について教えていただけますか。NEJ009試験では、EGFR変異陽性NSCLC初回治療において、ゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法という3剤併用群とゲフィチニブ単剤群を比較しました。エンドポイントは、まず無増悪生存期間(PFS)、そして最終的に全生存期間(OS)をみていくデザインで始めました。対象患者は46施設から345例が登録されています。結果、初回治療のPFSはゲフィチニブ単剤群で11.9ヵ月、ゲフィチニブ+化学療法併用群では20.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.490、p<0.001)と、併用群で有意に延長しました。また、奏効率も84%対67%(p<0.001)と、併用群で10%ほど上乗せできています。また、Waterfallプロットで腫瘍縮小率を見ると、効果が深い(deep response)ことがわかります。このようにNEJ009レジメンの初回治療としての能力は、かなり高いことが示されました。また、それが50.9ヵ月対38.8ヵ月(HR:0.722、p=0.021)というOS中央値に反映されたと考えています。この50ヵ月を超える併用群のOSは、肺がんでは今まではあり得なかったような成績です。有害事象については、それぞれの薬剤で既知のものであり、肺がん治療に慣れている先生方であれば、十分対処できるものでした。EGFR変異陽性NSCLCの選択肢の幅を広げる―この試験結果が臨床に与えるインパクトはどのようなものでしょうか。今ではEGFR変異NSCLCの初回治療では多くの方がオシメルチニブを使うでしょう。しかし、どの患者さんでもそれでよいのか。たとえば、体力があって、効果の高い治療を受けたいと希望している患者さんにも、オシメルチニブ一辺倒でよいのかは疑問です。最近の研究成績を見ていると、EGFR-TKI単剤での初回治療の限界が見えてきたのかもしれないと思います。元気で、高い治療効果を望む患者さんには、TKIに化学療法を上乗せするという選択肢を、少なくとも提示しなければいけないと思います。―NEJ009試験はこれで最終報告となりますか。NEJ009と同様のレジメンは、インドの臨床試験でも有効性が示されています。このことからも、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療におけるEGFR-TKIと化学療法の併用の成績については、ある程度結論が付いたと思います。長期追跡データや付随データは出ると考えられますが、NEJ009本体の発表はこれで完了です。―読者の方々にメッセージをお願いします。肺がんでは今、多くの薬剤が開発され、一昔前に比べ、治療しがいのある状態になったと思います。その中で、EGFR変異陽性NSCLCの患者さんに対しては、従来のEGFR-TKI単独に加え、さらに高い効果が得られる可能性のある併用レジメンが、新たな選択肢として、エビデンスを持って現れました。この治療に耐えられる全身状態と本人の要望がある場合には、選択肢として積極的に勧めてよいと考えています。参考Hosomi Y, et al. J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38:115-123.

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妊娠中のマクロライド系抗菌薬、先天異常への影響は/BMJ

 妊娠第1期のマクロライド系抗菌薬の処方は、ペニシリン系抗菌薬に比べ、子供の主要な先天形成異常や心血管の先天異常のリスクが高く、全妊娠期間の処方では生殖器の先天異常のリスクが増加することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHeng Fan氏らの調査で示された。妊娠中のマクロライド系抗菌薬処方に関する最近の系統的レビューでは、流産のリスク増加には一貫したエビデンスがあるが、先天異常や脳性麻痺、てんかんのリスク増加には一貫性のあるエビデンスは少ないと報告されている。また、妊娠中のマクロライド系抗菌薬の使用に関する施策上の勧告は、国によってかなり異なるという。BMJ誌2020年2月19日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬の処方と子供の主要な先天異常を評価 研究グループは、妊娠中のマクロライド系抗菌薬の処方と、子供の主要な先天異常や神経発達症との関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(筆頭著者は英国Child Health Research CIOなどの助成を受けた)。 解析には、UK Clinical Practice Research Datalinkのデータを使用した。対象には、母親が妊娠4週から分娩までの期間に、単剤の抗菌薬治療としてマクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)またはペニシリン系抗菌薬の投与を受けた、1990~2016年に出生した10万4,605人の子供が含まれた。 2つの陰性対照コホートとして、母親が妊娠前にマクロライド系抗菌薬またはペニシリンを処方された子供8万2,314人と、研究コホートの子供の同胞5万3,735人が解析に含まれた。妊娠第1期(4~13週)、妊娠第2~3期(14週~分娩)、全妊娠期間に処方を受けた妊婦に分けて解析した。 主要アウトカムとして、欧州先天異常監視機構(EUROCAT)の定義によるすべての主要な先天異常および身体の部位別の主要な先天異常(神経、心血管、消化器、生殖器、尿路)のリスクを評価した。さらに、神経発達症として、脳性麻痺、てんかん、注意欠陥多動性障害、自閉性スペクトラム障害のリスクも検討した。マクロライド系抗菌薬は研究が進むまで他の抗菌薬を処方すべき 主要な先天異常は、母親が妊娠中にマクロライド系抗菌薬を処方された子供では、8,632人中186人(1,000人当たり21.55人)、母親がペニシリン系抗菌薬を処方された子供では、9万5,973人中1,666例(1,000人当たり17.36人)で発生した。 妊娠第1期のマクロライド系抗菌薬の処方はペニシリン系抗菌薬に比べ、主要な先天異常のリスクが高く(1,000人当たり27.65人vs.17.65人、補正後リスク比[RR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.19~2.03)、心血管の先天異常(同10.60人vs.6.61人、1.62、1.05~2.51)のリスクも上昇した。 全妊娠期間にマクロライド系抗菌薬が処方された場合は、生殖器の先天異常のリスクが増加した(1,000人当たり4.75人vs.3.07人、補正後RR:1.58、95%CI:1.14~2.19、主に尿道下裂)。また、妊娠第1期のエリスロマイシンは、主要な先天異常のリスクが高かった(同27.39 vs.17.65、1.50、1.13~1.99)。 他の部位別の先天異常や神経発達症には、マクロライド系抗菌薬の処方は統計学的に有意な関連は認められなかった。また、これらの知見は、感度分析の頑健性が高かった。 著者は、「マクロライド系抗菌薬は、妊娠中は注意して使用し、研究が進むまでは、使用可能な他の抗菌薬がある場合は、それを処方すべきだろう」としている。

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プロピオン酸血症〔PA:Propionic acidemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義生体内で生じる各種の不揮発酸が代謝障害によって蓄積し、代謝性アシドーシスを主徴とする各種の症状・異常所見を呈する疾患群を「有機酸代謝異常症」と総称する。主な疾患は、分枝鎖アミノ酸の代謝経路上に多く、中でもプロピオン酸血症(Propionic acidemia:PA)は最も代表的なものである。本疾患では、3-ヒドロキシプロピオン酸、メチルクエン酸などの短鎖カルボン酸が体液中に蓄積し、典型的には重篤な代謝性アシドーシスを主徴とする急性脳症様の症状で発症するほか、各種臓器に慢性進行性の病的変化をもたらす。■ 疫学新生児マススクリーニング試験研究(1997~2012年、被検者数195万人)による国内での罹患頻度は約45,000人に1人と、高頻度に発見された。ただし、これには後述する「最軽症型」が多く含まれ、典型的な症状を示す患者の頻度は約40万人に1人と推計されている。■ 病因(図)バリン・イソロイシン代謝経路上の酵素「プロピオニオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC)」の活性低下に起因する、常染色体劣性遺伝性疾患(OMIM#606054)である。PCCはミトコンドリア基質に発現しており、αサブユニットとβサブユニットからなる多量体である。各サブユニットは、それぞれPCCA遺伝子(MIM*232000、局在13q32.3)とPCCB遺伝子(MIM*232050、局在3q22.3)にコードされている。図 プロピオン酸血症に関連する代謝経路画像を拡大する■ 症状典型的には新生児期から乳児期にかけて、重度の代謝性アシドーシスと高アンモニア血症が出現し、哺乳不良、嘔吐、呼吸障害、筋緊張低下などから、けいれんや嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患が契機となることが多い。コントロール困難例では、経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。1)中枢神経障害急性代謝不全の後遺症として、もしくは代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い。急性増悪を契機に、あるいは明らかな誘因なく、両側大脳基底核病変(梗塞様病変)を生じて不随意運動が出現することもある。2)心臓病変急性代謝不全による発症歴の有無に関わらず、心筋症や不整脈を併発しうる。心筋症は拡張型の報告が多いが、肥大型の報告もある。不整脈はQT延長が本疾患に特徴的である。3)その他汎血球減少、免疫不全、視神経萎縮、感音性難聴、膵炎などが報告されている。■ 分類1)発症前型新生児マススクリーニングで発見される無症状例を指す。そのうち多数を占めるPCCB p.Y435C変異のホモ接合体は、特段の症状を発症しないと目されており、「最軽症型」と呼ばれる。2)急性発症型呼吸障害、多呼吸、意識障害などで急性に発症し、代謝性アシドーシス、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症などの検査異常を呈する症例を指す。3)慢性進行型乳幼児期からの食思不振、反復性嘔吐などが認められ、身体発育や精神運動発達に遅延が現れる症例を指すが、経過中に急性症状を呈しうる。■ 予後新生児期発症の重症例は、急性期死亡ないし重篤な障害を遺すことが少なくない。遅発例も急性発症時の症状が軽いとは限らず、治療が遅れれば後遺症の危険が高くなる。また、急性代謝不全の有無に関わらず、心筋症、QT延長などの心臓合併症が出現・進行する可能性があり、特に心筋症は慢性期死亡の主要な原因に挙げられている。一方、新生児マススクリーニングで発見された87例(最長20歳まで)の予後調査では、患者の大半が少なくとも1アレルにPCCB p.Y435C変異を有しており、疾患との関連が明らかな症状の回答はなかった。したがって、この群の予後は総じて良好と思われるが、より長期的な評価(特に心臓への影響)には、さらに経過観察を続ける必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)一般血液・尿検査急性期には、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスをはじめ、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、汎血球減少などが認められる。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)、クレアチニンキナーゼの上昇を伴うことも多い。2)タンデム質量分析法(タンデムマス、MS/MS)による血中アシルカルニチン分析プロピオニルカルニチン(C3)の増加を認め、アセチルカルニチン(C2)との比(C3/C2)の上昇を伴う。これはメチルマロン酸血症と共通の所見であり、鑑別には尿中有機酸分析が必要である。C3/C2の上昇を伴わない場合は、異化亢進状態(=アセチルCoA増加)に伴う非特異的変化と考えられる。3)ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)による尿中有機酸分析診断確定に最も重要な検査で、3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸の排泄が増加する。メチルマロン酸血症との鑑別には、メチルマロン酸の排泄増加が伴わないことを確認する。4)PCC酵素活性測定白血球や皮膚線維芽細胞の破砕液を粗酵素源として測定可能であり、低下していれば確定所見となるが、実施しているのは一部の研究機関に限られる。5)遺伝子解析PCCA、PCCBのいずれにも病因となる変異が報告されている。遺伝学的検査料の算定対象である。※ 2)、3)は「先天性代謝異常症検査」として保険診療項目に収載されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性代謝不全の治療タンパク摂取を中止し、輸液にて80kcal/kg/日以上を確保する。有機酸の排泄促進に静注用L-カルニチンを投与する。未診断の段階では、ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症の可能性に対するヒドロキソコバラミン(商品名:フレスミンS)またはシアノコバラミン(同:同名、ビタミンB12ほか)の投与をはじめ、チアミン(同:塩酸チアミン、メタボリンほか)、リボフラビン(同:強力ビスラーゼ、ハイボンほか)、ビオチン(同:同名)などの各種水溶性ビタミン剤も投与しておく。高アンモニア血症を認める場合は、安息香酸ナトリウムやカルグルミン酸を投与する。速やかに改善しない場合は、持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)を開始するか、実施可能施設へ転送する。■ 亜急性期〜慢性期の治療急性期所見の改善を評価しつつ、治療開始から24~36時間以内にアミノ酸輸液を開始する。経口摂取・経管栄養が可能になれば、母乳や育児用調製粉乳などへ変更し、自然タンパク摂取量を漸増する。必要エネルギーおよびタンパク量の不足分は、イソロイシン・バリン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去粉乳(同:雪印S-22)で補う。薬物療法としては、L-カルニチン補充を続けるほか、腸内細菌によるプロピオン酸産生の抑制にメトロニダゾールやラクツロースを投与する。■ 肝移植・腎移植早期発症の重症例を中心に生体肝移植の実施例が増えている。食欲改善、食事療法緩和、救急受診・入院の大幅な減少などの効果が認められているが、移植後に急性代謝不全や中枢神経病変の進行などを認めた事例の報告もある。4 今後の展望新生児マススクリーニングによる発症前診断・治療開始による発症予防と予後改善が期待されているが、「最軽症型」が多発する一方で、最重症例の発症にはスクリーニングが間に合わないなど、その効果・有用性には限界も看取されている。また、臨床像が類似する尿素サイクル異常症では、肝移植によって根治的効果を得られるが、本疾患では中枢神経障害などに対する効果は十分ではない。これらの課題を克服する新規治療法としては、遺伝子治療の実用化が期待される。5 主たる診療科小児科・新生児科が診療に当たるが、急性期の治療は、先天代謝異常症専門医の下、小児の血液浄化療法に豊富な経験を有する医療機関で実施することが望ましい。成人期に移行した患者については、症状・病変に応じて内分泌代謝内科、神経内科、循環器内科などで対応しながら、小児科が並診する形が考えられる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本マススクリーニング学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)タンデムマス・スクリーニング普及協会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)先天代謝異常症患者登録制度JaSMIn(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)島根大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)福井大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」(患者とその家族および支援者の会)1)日本先天代謝異常学会編集. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン. 診断と治療社;2019.2)山口清次編集. よくわかる新生児マススクリーニングガイドブック. 診断と治療社; 2019.公開履歴初回2020年03月02日

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使える英語上達のカギは「とにかく聴き、ひたすら話す」に尽きる!【臨床留学通信 from NY】第7回

第7回:使える英語上達のカギは「とにかく聴き、ひたすら話す」に尽きる!今回は、私なりの英語の勉強の仕方をお伝えします。とはいえ、実のところ英語に対しては渡米して1年半経過した今でも苦手意識があり、自信を持ってこれが正解と言えるのかわかりませんが、発音の改善、そして「話す・聴く」に相当な時間をかけること、この2つが非常に大事だということは強調しておきます。オンライン教室やドラマのセリフで生きた英会話を体得するまず、発音に関してはスコット・ペリーの教材を買いました。日本人的な英語の発音から、それらしく聞こえる発音になるいくつかのtipsを紹介しており、短期間で発音が良くのなるのが実感できます。発音が良くなれば、USMLE Step2CSにおいて相手により伝わりやすくなり、音の違いがわかるようになればリスニングに生かせます。また、英会話において初心者であっても自信を持って会話できるというメリットがあります。そのため、まず発音から入るのは理に適っていると思います。次に、話すこと・聴くことですが、可能であればやはり毎日2~3時間は確保したいところです。話すことについては、数あるオンライン英会話教室からいくつか試してみてやるのがいいでしょう。(私はnative campというのを最終的に利用しました。時間が無制限なのがポイントです) 聞くことについてはPodcastのnewsなり、好きな洋画ドラマを活用するといいと思います(私はフレンズやERなどを観ました)。とにかく、移動などの隙間時間をすべてPodcastのリスニングに費やすのです。ちなみに、映画は言葉が少ないので、ドラマのほうがいいと思います。嫌にならない程度に英語字幕で観てから、<字幕なし>にトライし、また<字幕あり>に戻るといった具合に、多少繰り返しやっていましたが、この方法だと飽きてくるので、<字幕あり>だけを通してみるのもいいでしょう。ただ<字幕あり>では、耳ではなく目で単語を追ってしまうため、理想としては聞き取れなかったところを字幕で確認し、再び<字幕なし>で聴き取れるまで繰り返しトレーニングするのがいいと思います。渡米して1年半、曲がりなりにも臨床医として働いている私ですが、英語に依然苦労していて、今でもドラマを観ては勉強を続けています。毎日の地道な積み重ねの先に、口をついて出てくる英語があるStep2CSの勉強開始の時点では、英語が全く口から出なかった訳ですが、CSの勉強は定型文を丸覚えしてそれを声に出してみるという練習をひたすら行いました。その際に、オンライン英会話教室も利用して、日常英会話も含めた会話の相手だけでなく、CSの模擬患者役もしてもらいました。CSの対策は、半年あまりの短い期間にかなりの詰め込んだ勉強をしましたが、USMLEを受けると決めた時点からオンライン英会話教室などを利用して少しでも早い時期から話す訓練を始めるべきです。1日30分程度から始めて、軌道に乗ったら1日2~3時間できれば理想的です。それでも、上達には年単位でかかるものだというのが、私が経験から得た実感です。Column画像を拡大する米国に来て当初3年の目標であった、JACC誌に論文を掲載するという目標がまず達成できました1,2)。米国の研修医をやりながら、合間に時間を見つけて臨床研究をやるのはなかなかハードでしたが、形になりホッとしております。とくにこの論文はメタ解析であり、数百本の論文に目を通しScreeningする作業を1年前のICUの夜勤中の合間にやったのは本当に大変でした。今回の画像は、私の職場Mount Sinai Beth Israelです。ここで日夜臨床と研究に取り組んでおり、今回の論文も執筆しました。1)https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S07351097193849062)https://www.carenet.com/news/general/carenet/49510

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がん免疫療法の主役となる「T細胞」の秘密【そこからですか!?のがん免疫講座】第2回

はじめに前回は、「がん細胞も細菌やウイルスと同じように非自己として認識されれば、免疫にとっては排除の対象となり、それが“がん免疫”」という話をしました。そして免疫系は自然免疫と獲得免疫に分けられ、さまざまな細胞が関わっていることを紹介しました。今回はそうした中で「がん免疫にとって最も重要なもの」を解説します。主役はT細胞のうちの「CD8陽性T細胞」すでにタイトルにあるように、がん免疫の主役は「獲得免疫」、とくにT細胞といわれており、現状のがん免疫療法はT細胞を上手に利用しています。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)はT細胞を活性化してがん細胞を攻撃していますし1)、血液腫瘍領域で話題のCAR-T細胞療法はがん細胞を攻撃するT細胞を人工的に作って体に戻す、という治療法です2)。前回も出てきたように、T細胞は「獲得免疫」に属しますので、がん細胞を特異的に見分けて攻撃しているわけなんですが、ここで少しややこしいのがT細胞の中にもいろいろな種類がある点です。T細胞は、表面に出ている分子によって、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞にざっくりと分けられます。ウイルスなどの病原体が感染した細胞は、異常な細胞として免疫系にとっての排除対象になります。この異常細胞を攻撃・排除するための免疫を細胞性免疫と呼んでおり、CD8陽性T細胞が主にこの役割を担っています。「細胞を攻撃・傷害するT細胞」ということで、細胞傷害性T細胞とも呼ばれています。勘の鋭い方はもうおわかりかもしれませんが、ウイルスに感染した細胞だけではなく、がん細胞も異常な細胞として認識されれば、この細胞性免疫の攻撃・排除の対象となります。したがって、がん免疫の主役となり、がん細胞を攻撃・排除する細胞はCD8陽性T細胞だと考えられています。実際に、CD8陽性T細胞を除去したマウスは、がん細胞に対する免疫が働かないため、腫瘍を埋めるとその腫瘍増殖は速くなり、ICIが効かなくなります。ここで、非常に重要なことを思い出していただきたいのですが、獲得免疫は「記憶」することで同じ病原体に出合ったときに効率的に排除できることが特徴、でした。これががん細胞に働いてくれれば長期の効果が期待できます。これが、ICIが分子標的薬や抗がん剤と決定的に異なる点であり、ICIを使った患者さんの中にまるで完治したかのように長期に再発のない方がいる理由の1つと考えられています。がん細胞を攻撃・排除するT細胞活性化の7ステップこの「CD8陽性T細胞=細胞傷害性T細胞」によるがん細胞を攻撃・排除するプロセスは、以下の7つのステップにまとめられます(図1)3)。画像を拡大する1)がん細胞から免疫応答を引き起こす物質(がん抗原)が放出される。2)抗原提示細胞が、がん抗原を主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の上に提示する。3)T細胞が、MHC上のがん抗原をT細胞受容体(TCR)で認識し、認識がうまくいけば活性化する。4)活性化したT細胞が遊走する。5)遊走したT細胞ががん細胞のところへ浸潤する。6)再度、T細胞がTCRでがん細胞のMHC上に提示されたがん抗原を介してがん細胞を認識する。7)T細胞が、がん細胞をうまく認識できたら攻撃・排除する3)。一気によくわからない言葉がたくさん出てきたと思いますので、少し説明を追加しましょう。がん抗原という言葉は今後もよく出てきますので、少し難しいですがぜひ覚えておいてください。免疫応答を引き起こす物質を総称して「抗原」と呼んでいますが、がん由来の「抗原」なので単純にがん抗原と呼んでいます。一般的に言えば、「タンパク質の切れ端」みたいなものと思っていただければいいでしょう。MHCについては、もしかしたら皆さんはHLAと言ったほうが、なじみがあるかもしれません。ヒトの場合はMHCのことをHLAと呼んでいます。よく移植医療のときに「HLAが一致している」などという言葉が出てきますよね。MHCはお皿のようになっていて、細胞の外に出て抗原を乗せており(「提示」と呼んでいます)、T細胞はMHCによって外に提示された抗原をTCRという受容体で認識します(図2)。がん細胞も含む体中のあらゆる細胞はこのMHCに抗原を乗せて外に提示していますが、とくに抗原を提示することを専門とし、免疫を活性化する細胞のことを、抗原提示細胞という単純な名前で呼んでいます(図2)。抗原提示細胞は総称であり、前回登場した自然免疫に属する樹状細胞などが含まれます。画像を拡大するちょっと複雑になってきたので、ICIの作用機序などについては、次回ゆっくりお話ししましょう。1)Zou W, et al. Sci Transl Med. 2016;8:328rv4.2)June CH, et al. N Engl J Med. 2018;379:64-73.3)Chen DS, et al. Immunity. 2013;39:1-10.

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スタチンは卵巣がんの発生を抑制するか/JAMA

 スタチン治療薬のターゲット遺伝子の抑制は、上皮性卵巣がんのリスク低下と有意に関連することが、英国・ブリストル大学のJames Yarmolinsky氏らによるメンデルランダム化解析の結果、示された。ただし著者は、「今回の所見は、スタチン治療薬がリスクを低減することを示す所見ではない。さらなる研究を行い治療薬においても同様の関連性が認められるかを明らかにする必要がある」と述べている。これまで前臨床試験および疫学的研究において、スタチンが上皮性卵巣がんリスクに対して化学的予防効果をもたらす可能性が示唆されていた。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の治療的抑制をGWASメタ解析データで解析 研究グループは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)還元酵素(HMG-CoA還元酵素の機能低下と関連する遺伝子異型、スタチン治療薬のターゲット遺伝子)と、一般集団における上皮性卵巣がんの関連性、およびBRCA1/2変異遺伝子との関連性を調べる検討を行った。 HMG-CoA還元酵素、Niemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)、proprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)の治療的抑制の代替として、HMGCR、NPC1L1、PCSK9における一塩基遺伝子多型(SNPs)とLDLコレステロール低下との関連が示されている、ゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析データ(19万6,475例以下で構成)を用いた。 このGWASメタ解析のデータを用いたOvarian Cancer Association Consortium(OCAC)による浸潤上皮性卵巣がんの症例対照解析での上記SNPsに関するサマリー統計(6万3,347例)と、Consortium of Investigators of Modifiers of BRCA1/2(CIMBA)によるBRCA1/2変異遺伝子キャリアにおける上皮性卵巣がんの後ろ向きコホート解析のサマリー統計(3万1,448例)を入手して評価した。2つのコンソーシアムにおける被験者は、1973~2014年に登録され、2015年まで追跡を受けていた。OCAC被験者は14ヵ国から、CIMBA被験者は25ヵ国から参加していた。 SNPsは、multi-allelicモデルに統合され、ターゲットの終身阻害を意味するメンデルランダム化推定値を、逆分散法ランダム効果モデルを用いて算出した。 主要曝露は、HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害、副次曝露は、NPC1L1とPCSK9の遺伝的プロキシ阻害および遺伝的プロキシLDLコレステロール値で、主要評価項目は、総合的および組織型特異的な浸潤上皮性卵巣がん(一般集団対象)、上皮性卵巣がん(BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象)、卵巣がんオッズ(一般集団対象)およびハザード比(BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象)とした。HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害は卵巣がんリスク低下と有意に関連 OCACのサンプル例は浸潤上皮性卵巣がんの女性2万2,406例と対照4万941例であり、CIMBAのサンプル例は上皮性卵巣がんの女性3,887例と対照2万7,561例であった。コホート年齢中央値は41.5~59.0歳の範囲にわたっており、全被験者が欧州人であった。 主要解析において、遺伝的プロキシLDLコレステロール値1mmol/L(38.7mg/dL)低下に相当するHMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害が、上皮性卵巣がんのオッズ低下と関連することが示された(オッズ比[OR]:0.60[95%信頼区間[CI]:0.43~0.83]、p=0.002)。 また、BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象の解析では、HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害と卵巣がんリスク低下の関連が示された(ハザード比[HR]:0.69、[95%CI:0.51~0.93、p=0.01)。 副次解析では、NPC1L1(OR:0.97[95%CI:0.53~1.75]p=0.91)およびPCSK9(0.98[0.85~1.13]、p=0.80)の遺伝的プロキシ阻害、LDLコレステロール値(0.98[0.91~1.05]、p=0.55)のいずれも上皮性卵巣がんとの有意な関連は認められなかった。

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学生の認知機能に対する朝食の影響~ADHDとの関連

 米国・アメリカン大学のElizabeth T. Brandley氏らは、大学生の認知機能に対する栄養バランスの取れた朝食の効果について、注意欠如多動症(ADHD)の有無の影響を考慮し検討を行った。American Journal of Health Promotion誌オンライン版2020年2月4日号の報告。 18~25歳の大学生でADHD(19例)および非ADHD(27例)を対象に、食事介入前後の認知機能の変化を測定した。対象者は、一晩の絶食後および栄養バランスの取れた朝食シェイクの摂取1時間後に、コンピューターによる認知機能評価(CNS Vital Signs)を受けた。カテゴリ変数の比較にはカイ二乗検定を、群間および群内の連続データの比較にはウィルコクソンの順位和検定と符号順位検定をそれぞれ用いた。多変量ロジスティック回帰を用いて、年齢、性別、成績評価値(GPA)、学年で調整した後、朝食摂取による認知機能改善に対するADHDの影響を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ADHDの有無にかかわらず、多くの学生がベースライン時に朝食を摂取していなかった(ADHD群:47%、非ADHD群:33%)。・バランスの取れた朝食シェイクの摂取1時間後、両群ともに4つの認知機能ドメインの改善が認められた。・ADHD群は、非ADHD群と比較し、反応時間がより改善する可能性が高かった(オッズ比:1.07、95%CI:1.00~1.15、p=0.04)。 著者らは「学生がバランスの取れた朝食を摂取することで、ADHDの有無にかかわらず、認知機能に好影響を与える可能性が示唆された。この結果を確認するためには、さらなる調査が求められる」としている。

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COVID-19、家族クラスターにおける感染の経過/Lancet

 中国・深セン市の家族7人における、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染および臨床経過が報告された。香港大学のJasper Fuk-Woo Chan氏らによる、Lancet誌2月15日号(オンライン版1月24日号)掲載の報告。 2019年12月29日から2020年1月4日まで武漢市に滞在した家族6人を、1月10日から登録。うち5人で感染が確認された。さらに、旅行していないもう1人において、家族のうち4人と数日間接触した後、SARS-CoV-2陽性が確認された。本研究では、同家族の疫学的、臨床的、実験的、放射線学的、および微生物学的所見を報告している。 各人のベースライン特性と検査結果は以下の通り(疾患歴/検査結果)。患者1(母親、65歳):高血圧および治療済の良性腫瘍/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性患者2(父親、66歳):高血圧/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性患者3(娘、37歳):なし/RT-PCR陰性、CTスキャン陽性患者4(義理の息子、36歳):慢性副鼻腔炎/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性患者5(孫・男児、10歳):なし/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性患者6(孫・女児、7歳):不明/RT-PCR陰性、CTスキャン陰性患者7(患者4の母・旅行歴なし、63歳):糖尿病/RT-PCR陽性、CTスキャン陽性 主な疫学的・臨床的・放射線学的・微生物学的特徴は以下の通り。・家族の誰も武漢の市場や動物への接触はなかったが、患者1~6は武漢に住む親類と滞在中毎日接触し、患者1と患者3は武漢の病院を訪れていた。・患者1~4は発熱、上気道または下気道症状、下痢、これらの組み合わせを曝露(武漢到着)後3~6日に示した。患者5は無症候性であった。・60歳以上の患者は、より全身性の症状、広範なすりガラス状病変、リンパ球減少、血小板減少のほか、CRPおよびLDHの増加を示した。・30代の患者では、下痢のほか、咽頭痛、鼻詰まり、鼻漏などの上気道症状がみられた。・point-of-care multiplex RT-PCRでは、6例とも既知の呼吸器病原性菌に対し陰性。SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRp)をエンコードするRT-PCRでは5例が陽性で、同ウイルス表面のスパイク状タンパク質を認め、サンガーシークエンス法により確定された。陰性の1例(患者3)は、武漢の病院への曝露という疫学的に強い関連があり、多発性のすりガラス状病変が確認されたため、感染症例とみなされた。・患者2の血清サンプルのみが陽性であり、他のすべての患者の血清、尿、および糞便サンプルは、SARS-CoV-2について陰性であった。・6例全員が隔離され、支持療法下で入院。2020年1月20日時点で病状は安定していた。

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多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)のリスク評価モデルpooled cohort equations(PCE)と多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)を組み合わせることで、CAD発症の予測精度がわずかではあるが統計学的に有意に改善し、一部の個人集団においてリスク分類を改善することが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJoshua Elliott氏らが、観察研究の結果を報告した。著者は、「PCEでの遺伝情報の使用は、臨床で実施される前にさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。多遺伝子リスクスコアのみvs.PCEのみvs.両方の組み合わせで検証 研究グループは、2006~10年にUK Biobankに登録された参加者のうち、一般的なCADを有する1万5,947例、およびそれらと年齢・性別をマッチングした同数の対照例を用いて、公表されているゲノムワイド関連解析の要約統計に基づくCADの多遺伝子リスクスコアの予測性能を最適化した。 また、独立した35万2,660例(2017年まで追跡)のコホートを使用し、多遺伝子リスクスコア、PCEおよびその両方の組み合わせについて、CAD発症の予測精度を評価した。 主要評価項目はCAD(心筋梗塞とそれに関連する後遺症)で、リスク閾値を7.5%として判別(discrimination)、較正(calibration)、再分類について評価した。PCEに多遺伝子リスクスコア追加でCAD予測精度がわずかに改善 検証モデルの予測精度評価に用いた35万2,660例(平均年齢55.9歳、女性20万5,297例[58.2%])において、追跡調査期間中央値8年でCADイベントの発生が6,272例確認された。 CAD判別のC統計量は、多遺伝子リスクスコアのみが0.61(95%信頼区間[CI]:0.60~0.62)、PCEのみが0.76(95%CI:0.75~0.77)、および両方の組み合わせでは0.78(95%CI:0.77~0.79)であった。後者の2モデル(PCEのみと両方の組み合わせ)間のC統計量の変化は、0.02(95%CI:0.01~0.03)であった。 モデルのキャリブレーション(較正)については、PCEによるリスクの過大評価が示唆され、再較正後に修正された。 リスク閾値を7.5%としてPCEに多遺伝子リスクスコアを追加すると、ネット再分類改善(net reclassification improvement:NRI)は、CAD発症例で4.4%(95%CI:3.5~5.3)、非発症例で-0.4%(95%CI:-0.5~-0.4)であった(全体のNRIは4.0%、95%CI:3.1~4.9)。

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オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第11回

第11回 オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで1)Leonetti A, Sharma S, Minari R, et al. Resistance Mechanisms to Osimertinib in EGFR-mutated Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2019;121:725-737.2)G.R.Oxnard, J.C.-H.Yang, H Yu, et al. TATTON: A multi-arm, phase Ib trial of osimertinib combined with selumetinib, savolitinib or durvalumab in EGFR-mutant lung cancer. Ann of Oncol. In press.FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性例に対する初回治療はオシメルチニブというコンセンサスが得られたものの、日本ではサブセットに関する賛否両論もある。一方、今後の治療戦略を考えるうえで、オシメルチニブの多彩な耐性機序を整理しておくことは非常に重要であり、今回British Journal of Cancer誌によくまとまったレビューが掲載されているので紹介したい(論文1 Fig 1は必見)。本稿では耐性機序をOn-target / Off-target /組織型の転化に分け、頻度は初回治療・既治療(T790M陽性)に基づいて記載した。末尾にそれぞれに関する治療戦略も付記しているが、多くの治療が前臨床・治験レベルであることはご了解いただきたい。1. On-target(EGFR遺伝子)の獲得耐性頻度 初回治療 7%(FLAURA)   既治療 21%(AURA3)いずれにおいてもC797X変異が最多であり、それ以外にもL792X、G796X、L718Qなどが報告されている。L792Xは他のEGFR変異と併存することが多く、逆にL718QはC797Xとは独立して生じるようで、これらが今後の薬剤選択にどのように影響するのかは現時点で不明。FLAURAでは、T790Mの出現は認められていない。T790M陽性例では、治療期間が短い一因として、耐性時にT790M変異が消失している例が挙げられ、こうした症例ではKRAS変異(最近注目のG12Cではない)やMET遺伝子増幅など他の耐性機序を生じている症例が多かった。2. Off-target(EGFR遺伝子以外)の獲得耐性Off-targetによる耐性は、初回治療としてオシメルチニブを用いた場合に多くなる傾向があり、EGFR変異は保持されたままであることが多い。これは腫瘍のheterogeneityを反映しているのでは、と考察されている。機序は多種多様だが、報告されている中ではMET遺伝子増幅が最多。頻度 初回治療 15%(FLAURA)   既治療 19%(AURA3)またMET遺伝子の近傍に位置するCDK6やBRAFなどの遺伝子増幅を同時に認める症例があるとのこと(Le X, et al. Clin Cancer Res. 2018;24:6195-6203.PMID: 30228210)。近年いくつかの薬剤の有効性が示されているMET exon14 skippingも症例報告レベルではあるが報告されている(Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。ほかにはHER2遺伝子増幅(FLAURA 2%、AURA3 5%)、NRAS変異、KRAS G12S変異、BRAF V600E変異(同3%、3%)、PIK3CA変異(4%、4%)、cyclin D1などcell cycle関連の変異(同12%、10%)、融合遺伝子変異(FGFR・RET/NTRK1・ROS1・BRAFなど3~10%、初回投与では少ない?)などがそれぞれ報告されている。3. 組織型の転化小細胞肺がんへの転化が4~15%でみられ、これらの症例では治療前からRB1やTP53の不活性化が確認されている。最近では扁平上皮がんへの転化も報告されている(治療ラインにかかわらず7%前後、Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。4. 有効な治療方針は?耐性例ではとくに、空間的・時間的な不均一性が問題になることが指摘されている(現時点で何か解決策があるわけではないが)。つまり1ヵ所の再生検のみでは全体を十分に把握できていない可能性がある。一方で上記の頻度は解析材料(組織生検か、リキッドバイオプシーか)にも左右されうることには注意が必要。耐性時点でのT790M変異消失は予後不良とする報告がある(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。耐性機序が多彩であることを踏まえてNEJ009レジメンに倣った化学療法の併用について前臨床での報告がなされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2019;38:222.)。C797S変異:前臨床の段階だが第4世代EGFR-TKI(EAI045)やアロステリック阻害薬(JBJ-04-125-02)の開発が進行中(To C, et al. Cancer Discov. 2019;9:926-943.)。MET遺伝子増幅/変異に対してはクリゾチニブをはじめとしたc-MET阻害薬の併用やcabozantinibの有効性が少数ながら報告されている(Kang J, et al. J Thorac Oncol. 2018;13: e49-e53.)。HER2遺伝子増幅例に対しては前臨床でオシメルチニブとT-DM1の併用が有望とされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2017;36:174.)。その他BRAF阻害薬、AXL阻害薬、ベバシズマブ、Bcl-2阻害薬、mTORC阻害薬、CDK4/6阻害薬など多くの薬剤が検討中であるが、総じて臨床データは乏しい。最近ではTATTON試験においてc-MET阻害薬savolitinibやMEK阻害薬selumetinibとの併用が報告された。安全性は確認されたものの、対象が雑多なこともあり有効性について目立った成果は示せていない(Oxnard GR, et al. Ann Oncol. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print])。特殊な治療として、本論文の末尾にはCRISPRを用いた‘molecular surgeon’についても紹介されていた(Tang H, et al. EMBO Mol Med. 2016;8:83-85.)。

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世界のCKD患者、27年間で3割増/Lancet

 2017年の世界の慢性腎臓病(CKD)の推定有病率は9.1%で、1990年から29.3%増大していたことが明らかにされた。また、同年の全世界のCKDによる推定死亡者数は120万人に上ることも示され、CKDの疾病負荷は、社会人口指数(SDI)五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中しているという。イタリア・Mario Negri研究所のBoris Bikbov氏ら「GBD Chronic Kidney Disease Collaboration」研究グループが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ヘルスシステムの計画策定には、CKDを注意深く評価する必要があるが、CKDに関する罹患率や死亡率といったデータは乏しく、多くの国で存在すらしていないという。研究グループは、世界的、および地域、国ごとのCKDの疾病負荷の状況、さらには腎機能障害に起因した心血管疾患および痛風の疾病負荷を調べるGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017を行った。Lancet誌オンライン版2020年2月13日号掲載の報告。CKDの罹患率や有病率を透析や腎移植に関するデータから推算 研究グループは、PubMedやEmbaseを基にシステマティックレビューを行い、1980年以降に発表された研究結果を選び出した。また、2017年までに報告された腎代替療法に関する年間レジストリから、透析や腎移植に関するデータを抽出した。 それらのデータを基に、Cause of Death Ensembleモデル(CODEm)とベイズ・メタ回帰分析ツールを用いて、CKDの罹患率や有病率、障害生存年数(YLD)、死亡率、損失生存年数(YLL)、障害調整生存年数(DALY)を推算した。比較リスク評価アプローチにより、腎機能障害に起因する心血管疾患の割合や痛風の負荷についても推算した。1990~2017年でCKD有病率は3割増加した 2017年の全世界のCKDによる推定死亡者数は、120万人だった(95%不確定区間[UI]:120万~130万)。1990~2017年にかけて、CKDによる世界の全年齢死亡率は41.5%(95%UI:35.2~46.5)増加したが、年齢調整死亡率に有意な変化はなかった(2.8%、-1.5~6.3)。 2017年のステージを問わない全世界の推定CKD症例数は6億9,750万例(95%UI:6億4,920万~7億5,200万)で、全世界の有病率は9.1%(95%UI:8.5~9.8)だった。その3分の1は、中国(1億3,230万例、95%UI:1億2,180万~1億4,370万)とインド(1億1,510万例、1億680万~1億2,410万)で占められていた。また、バングラデシュ、ブラジル、インドネシア、日本、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ロシア、米国、ベトナム各国のCKD症例数がいずれも1,000万例超だった。195ヵ国のうち79ヵ国において2017年のGBDにおけるCKDの有病症例が100万例超だった。 全世界の全年齢CKD有病率は、1990年から29.3%(95%UI:26.4~32.6)増加した一方で、年齢調整有病率は安定的に推移していた(1.2%、-1.1~3.5)。 CKDによる2017年のDALYは3,580万DALY(95%UI:3,370万~3,800万)で、その約3分の1は糖尿病性腎症によるものだった。また、CKDの疾病負荷のほとんどが、SDIの五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中していた。 腎機能障害に起因する心血管疾患関連死は140万例(95%UI:120万~160万)、心血管疾患DALYは2,530万例(2,220万~2,890万)と推定された。 結果を踏まえて著者は、「腎疾患は、世界の人々の健康に重大な影響を与えており、世界の罹患や死亡の直接的な要因であり、心血管疾患の重大なリスク因子となっている」と述べ、「CKDの多くは予防および治療が可能であり、世界のヘルス政策の意思決定で最も注目に値するものである。とくに低・中SDIの国や地域では注視すべきである」とまとめている。

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HER2低発現乳がんへのtrastuzumab deruxtecanの効果と安全性/JCO

 trastuzumab deruxtecan(T-DXd)は2019年12月、米国食品医薬品局(FDA)より「転移乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能または転移乳がん」に対して迅速承認された。今回、HER2低発現(IHC 1+もしくは2+ / ISH-)の乳がん患者における推奨展開用量(RDE)の効果と安全性について、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのShanu Modi氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年2月14日号で報告。本剤の有望な抗腫瘍活性が示され、毒性は消化管または血液毒性がほとんどだったが、重要なリスクとして間質性肺疾患(ILD)が特定された。 本試験の適格患者は、標準治療に不応/不耐の進行/転移HER2低発現乳がん患者(米国は18歳以上、日本は20歳以上)。T-DXdを、同意の撤回、許容できない毒性発現、または病勢進行まで、3週ごとに1回、5.4または6.4mg/kgを静脈内投与し、抗腫瘍活性と安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2016年8月~2018年8月に54例が登録され、RDEで1回以上T-DXdを投与した。・前治療の中央値は7.5であった。・独立中央判定による奏効率は20/54(37.0%、95%CI:24.3~51.3%)、奏効期間中央値は10.4ヵ月(95%CI:8.8ヵ月~未達)であった。・治療関連有害事象(TEAE)は、患者のほとんど(53/54、98.1%)で1つ以上認められた(Grade3以上:34/54、63.0%)。・Grade3以上の主な(5%以上)TEAEは、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、貧血、低K血症、AST上昇、食欲不振、下痢などであった。・6.4mg/kgで治療された3例で、T-DXdによる間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎関連の致死的イベントを認めた(独立中央判定委員会による)。

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SSRI治療抵抗性うつ病患者に対する第2選択治療

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)単独療法の2週間後に治療反応が不十分であったうつ病患者に対するノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)併用または切り替え療法の有効性について、中国・首都医科大学のLe Xiao氏らが、検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2020年1月14日号の報告。 中国の5つの病院より18~60歳の中等度以上のうつ病患者を募集し、二重盲検ランダム化プラセボ対照3アーム試験を実施した。対象患者には、2週間の非盲検期間にパロキセチンを投与し、改善が認められなかった患者をSSRI群(パロキセチン+プラセボ)、NaSSA群(ミルタザピン+プラセボ)、併用群(パロキセチン+ミルタザピン)にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、ランダム化6週間後のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)スコアの改善とした。 主な結果は以下のとおり。・SSRI単独療法の2週間後に治療反応が不十分であったうつ病患者204例は、3群にランダムに割り付けられた。アウトカム評価対象患者は、164例であった。・8週間後のHAMD-17スコアの最小二乗平均変化は、NaSSA群12.98点、SSRI群12.50点、併用群13.27点であり、3群間に有意な差は認められなかった。・SSRI群は、副作用発現の患者が最も少なかった。 著者らは「2週間の抗うつ薬治療後に治療反応を示さないうつ病患者に対する併用療法または抗うつ薬切り替え療法は、ルーチンな治療法として推奨されるものではない」としている。

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皮膚がんの診断、スマホアプリは信頼できるか/BMJ

 現在のアルゴリズムベースのスマートフォンアプリケーション(アプリ)は、悪性黒色腫や他の皮膚がん患者の検出において信頼性がなく、実際には研究結果よりもさらに検査性能が劣る可能性があることが、英国・バーミンガム大学のKaroline Freeman氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2020年2月10日号に掲載された。皮膚がんは世界で最も頻度の高いがんの1つであり、罹患率は上昇している。アルゴリズムベースのスマートフォンアプリは、皮膚がんリスクを即時に評価し、より早期に発見して治療することで、生存の延長をもたらすと期待される。一方、これらのアプリの妥当性を検証した2つの研究に関するコクランレビューでは、皮膚がんを見逃す可能性が高いと示唆されている。診断精度研究の系統的レビュー 研究グループは、がんが疑われる皮膚病変の皮膚がんリスクを評価するアルゴリズムベースのスマートフォンアプリの精度を評価した研究の妥当性を検証する目的で、診断精度研究の系統的レビューを行った(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 2019年4月10日現在、医学データベースとインターネット上の臨床試験レジストリに登録された文献を検索した。対象は、皮膚がんが疑われる皮膚病変の画像を評価するアルゴリズムベースのスマートフォンアプリについて検討したあらゆるデザインの研究とした。 解析には、評価した病変が皮膚がんか否かの決定を、アプリの判定をマスクした状態で、病変を切除した場合は組織学的診断で、切除しなかった場合はフォローアップで確定した試験、および専門家による推奨で検証するために、アプリで評価したすべての病変を皮膚科専門医が直接再評価した試験が含まれた。 2人の研究者が、別個にデータを抽出し、QUADAS-2(Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies 2 tool)を用いて妥当性の評価を行った。個々のアプリの感度と特異度を算出した。多くの試験で、病変選択や画像取得は主に医師 6種のスマートフォンアプリ(SkinScan、SkinVision、Dr Mole、SpotMole、MelApp、Mole Detective)を評価した9件の研究が解析の対象となった。6件(725病変)の研究は組織病理学的な参照基準による診断またはフォローアップで、3件(407病変)は専門医の推奨を用いて結果を検証していた。 6種のアプリのうち、解析の時点で使用可能であったのは2種(SkinScan、SkinVision)のみであった。また、2件の試験はアプリ名を開示していなかった(1件は1種のアプリ、1件は3種のアプリを評価)。 すべての研究は小規模で、参加者を選択的に登録したり、評価不能な画像の割合が高いなど、方法論的質が不良であった。患者選択のバイアスが低リスクと判定されたのは2件の研究のみだった。また、病変の選択(5件が医師、2件が参加者、2件は報告なし)や、画像の取得(9件すべてが医師)は、スマートフォン使用者ではなく、主に医師によって行われていた。 SkinScanは1件の研究(15病変、5病変で悪性黒色腫を検出)で検討されており、悪性黒色腫を検出する感度は0%(95%信頼区間[CI]:0~52)、特異度は100%(69~100)であった。 また、SkinVisionは2件の研究(252病変、61病変でがん病変または前がん病変を検出)で検討され、がん病変または前がん病変を検出する感度は80%(95%CI:63~92)、特異度は78%(67~87)であった(病変の特徴や症状に関するアプリ内の質問に回答した患者を含む)。 著者は、「皮膚病変を懸念する成人の皮膚がんリスクの評価において、これらのアプリの使用を支持するエビデンスの質は低い。また、臨床的に適切な集団で、本来のアプリ使用者が操作した場合、ここで報告した結果よりも検査性能が劣る可能性がある」としている。

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日本人HER2+早期乳がんへのトラスツズマブ、長期予後解析(JBCRG-cohort study 01)

 日本人のHER2陽性早期乳がん患者に対する、周術期のトラスツズマブ療法による5年および10年時の予後への影響が評価された。大規模試験において予後改善が示されてきたが、日本人患者における長期的有効性は明らかではない。また、新たな抗HER2薬などが登場する中で、治療を強化すべき患者と、軽減すべき患者の判断基準が課題となっている。そのため、治療選択のための再発予測モデルの構築が試みられた。天理よろづ相談所病院の山城 大泰氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年2月14日号掲載の報告より。 本研究は、浸潤性HER2陽性乳がんStageI~IIICと組織学的に診断され、周術期にトラスツズマブによる治療を少なくとも10ヵ月以上受けた20歳以上の患者を対象とした観察研究。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2009年7月~2016年6月の間に、国内56施設から2,024例を登録。適格基準を満たさなかった43例を除き、1,981例が解析対象とされた。・ベースライン時の治療歴は、術前化学療法を35.4%、術後化学療法を99.6%が受けていた。トラスツズマブ投与は術前のみが1.3%、術前および術後が22.2%、術後のみが76.5%であった。乳房温存術を51.6%、乳房切除術を48.4%が受けていた。また、術後ホルモン療法は48.2%、術後放射線療法は57.5%が受けていた。・追跡期間中央値は80.9ヵ月(5.0~132.2ヵ月、平均80.2ヵ月)。・5年DFS率は88.9%(95%信頼区間[CI]:87.5~90.3%)、10年DFS率は82.4%(95%CI:79.2~85.6%)。・5年OS率は96%(95%CI:95.1~96.9%)、10年OS率は92.7%(95%CI:91.1~94.3%)。・多変量解析により、再発のリスク因子は≧70歳、≧T2、臨床的に認められたリンパ節転移、組織学的腫瘍径>1cm、組織学的に認められたリンパ節転移(≧n2)、および術前治療の実施であった。・標準治療下での5年再発率は、構築された再発予測モデルでスコアが3以上の患者で10%超と推定された。 著者らは、単群の観察研究データに基づくことの限界に触れたうえで、この再発予測モデルがStageI~IIICの患者の治療選択を改善する可能性があると結んでいる。

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オゾン10μg/m3増加で、死亡率0.18%上昇/BMJ

 オゾンが10μg/m3増加すると、死亡の相対リスクは0.18%上昇し、大気質基準(air quality standards)がより厳格であれば、オゾン関連死は低下する可能性があることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAna M. Vicedo-Cabrera氏らの検討で示された。地表オゾンと死亡との短期的な関連の研究の多くは、測定場所の数が少なく、地理的地域が限定的で、さまざまなデザインやモデル化の方法を用いて行われてきたという。ほとんどの研究が、地表オゾンと死亡には関連があるとしているが、結果は不均一であり、統計学的な検出力は限定的で研究間にも差異があるため、さまざまな国や地域での重要性の高い比較は困難とされる。BMJ誌2020年2月10日号掲載の報告。日本の45都市を含む時系列研究 本研究は、オゾン曝露に関連する短期的な死亡リスクと死亡率の増加の評価を目的とする2段階時系列研究である(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。 Multi-Country Multi-City(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースから、1985~2015年の20ヵ国406都市(2011~15年の日本の45都市を含む)のデータを抽出した。研究期間内に各都市で記録された死亡例のデータを用いて、1日当たりの総死亡率を評価した。 平均期間13年における406都市の合計4,516万5,171件の死亡について解析した。国別で0.06~0.35%の幅、日本は0.20% オゾン曝露と死亡リスクには関連性が認められ、当日と前日のオゾンの平均10μg/m3の増加により、全体の死亡の相対リスクは0.18%上昇した(相対リスク:1.0018、95%信頼区間[CI]:1.0012~1.0024)。 この相対リスクの上昇には、参加国間にある程度の異質性が認められた(I2=29.8%、Cochran Q:p<0.001)。英国(相対リスク:1.0035)、南アフリカ共和国(1.0027)、エストニア(1.0023)、カナダ(1.0023)でリスクの上昇が大きかったのに対し、オーストラリア、中国、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、日本(1.0020)、韓国、スウェーデン、スイス、米国は1.0014~1.0020の範囲で近似しており、ギリシャ(1.0011)、メキシコ(1.0008)、ポルトガル(1.0011)、スペイン(1.0006)、台湾(1.0010)はリスクの上昇の割合が小さく、不明確だった。 最大バックグラウンド濃度(70μg/m3)を超えるオゾンへの曝露による短期的な死亡率の上昇は0.26%(95%CI:0.24~0.28)であり、これは406都市全体で年間8,203件(3,525~1万2,840)の死亡数の増加に相当した。また、WHOガイドラインの基準値(100μg/m3)を超えた日に限定しても、死亡率の上昇は0.20%(95%CI:0.18~0.22)と実質的に残存しており、これは年間6,262件の死亡数の増加に相当した。 さらに、大気質基準の閾値が高くなるに従って、死亡率の上昇の割合は、欧州(欧州連合指令:120μg/m3)が0.14%、米国(米国環境大気質基準[NAAQS]:140μg/m3)が0.09%、中国(中国環境大気質基準[CAAQS]のレベル2:160μg/m3)は0.05%と、漸進的に低下した。 著者は、「これらの知見は、国内および国際的な気候に関する施策の中で策定された効率的な大気清浄介入や軽減戦略の実施と関連がある」としている。

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