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AFIRE試験が世界に投げかけたこと(解説:香坂俊氏)-1281

AFIRE試験がNEJM誌に発表された。そのデザインや主要な結果に関しては、さまざまな学会や研究会で議論がなされており、その解釈に関しても広く議論がなされている。AFIREのデザインと主要な結果・心房細動を持つ安定冠動脈疾患の患者さんを対象に「リバーロキサバン(経口抗凝固 薬)単独」と「リバーロキサバン+抗血小板薬併用」との比較を行ったわが国の多施 設共同のランダム化比較研究。・2017年9月末までに2,240例が登録され、2年以上の観察期間を予定していたが、データ 安全性モニタリング委員会の勧告に基づき2018年7月に研究を早期終了。・最終的に2,215例(1,107例の単独療法vs.1,108例の併用療法)が研究解析対象となり、 患者さんの平均年齢は74歳、男性79%、PCI施行70.6%[CABG施行11.4%]) であった。・有効性主要評価(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を必要とする不安定 狭心症、総死亡の複合エンドポイント)では、リバーロキサバン単独療法群がsuperior (優越)であり、さらに安全性主要評価(重大な出血性合併症)においても、 リバーロキサバン単独療法群が優越であった。さまざまなメッセージを含んでいる試験であるが、自分としては日本独自の用量設定を行った試験で世界に向けて結果を出した、というところに注目したい。リバーロキサバンは薬効動態評価の結果を踏まえて15mgあるいは10mgという日本独自の用量設定で認可されている(国際的には20mgあるいは15mgという用量設定)。自分はこうした国別の独自の用量設定というのにかなり懐疑的な人間であったのだが(国際的なRCTの結果のほうを信用する傾向がある)、ただ抗凝固薬や抗血小板薬が日本人に効きすぎるというのは帰国してからの日常臨床でも経験し、また自分達で出したデータでも確かにそのような傾向がみられた(Numasawa Y, et al. J Clin Med. 2020;9:1963.)。AFIRE試験は、このような事情を踏まえてわが国独自の用量設定を用いて行われた試験であるが、その結果がNEJMという最高峰のジャーナルに取り上げられたことの意義は大きい。とくに抗凝固療法・抗血小板薬(抗血栓薬として総称される)に関してはGlobalにも個別の用量設定を考えていかなければならないということを語ってくれているように思われる。この試験は、いろいろな場面における抗凝固療法の使い方に指針を示してくれたことも事実であるが、自分としてはわが国独自の抗血栓薬のDosingについて「世界はどう思うのか?」というより幅広い側面での議論の活性化も期待したい。

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COVID-19流行下、3次医療機関でのがん患者の入院は安全か/JCO

 オーストリア・ウィーンの3次医療機関で、COVID-19に対する政府や施設の感染対策実施後に、入院中のがん患者のSARS-CoV-2感染率を調査したところ、一般集団と同様であり、また、がん以外の患者よりも低かったことが報告された。今回の結果から、人口全体および施設の厳格な感染対策が実施された場合には、大規模な3次医療機関において積極的ながん治療や通院が実現可能で安全であることが示唆された。Medical University of ViennaのAnna S. Berghoff氏らによる報告が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年8月14日号に掲載された。 本研究の対象は、2020年3月21日~5月4日、当院で定期的に鼻腔または咽頭スワブを用いたRT-PCRによりSARS-CoV-2 RNAを検査していたがん患者。このコホートでの結果を、代表的な全国ランダムサンプル研究のコホート(対照コホート1)および当院のがん以外の患者のコホート(対照コホート2)のSARS-CoV-2の感染率と比較した。 主な結果は以下のとおり。・連続した1,016例のがん患者に1,688回のSARS-CoV-2検査を実施した。1,016例中270例(26.6%)がネオアジュバントまたはアジュバント治療を受け、560例(55.1%)が緩和療法を受けていた。・1,016例中53例(5.2%)がCOVID-19の疑われる症状を自己申告し、4例(0.4%)でSARS-CoV-2が検出された。SARS-CoV-2陽性の4例とも当科での検査時には無症状で、2人は症候性COVID-19から回復した患者であった。また4例中3例で、陽性判定から14〜56日後に陰性となった。・がんコホートの対照コホート1に対するSARS-CoV-2感染の推定オッズ比は1.013(95%CI:0.209〜4.272、p=1)、対照コホート2のがんコホートに対する推定オッズ比は18.333(95%CI:6.056〜74.157)であった。 著者らは「無症状のウイルス保有者を発見し、ウイルス蔓延を回避するために、がん患者の定期的なSARS-CoV-2検査が勧められる」としている。

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カナグリフロジンの下肢切断リスク、65歳以上CVD患者で増大/BMJ

 SGLT2阻害薬カナグリフロジンの下肢切断リスクについて、心血管疾患のある65歳以上において最も明白な増大が認められること、追加有害アウトカムの発生に関する必要治療数(NNT)は6ヵ月で556例(切断例はカナグリフロジン投与1万例当たり18例超)であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のMichael Fralick氏らによる検討で明らかにされた。GLP-1受容体作動薬投与群と比較した下肢切断リスクは1.73倍で、発生率の差は1,000人年当たり3.66であったという。先行研究のカナグリフロジンの心血管アウトカムを検討した試験「CANVAS試験」では、カナグリフロジン群がプラセボ群よりも下肢切断リスクが2倍近く高いことが確認されており、同試験対象者が従前試験よりも10歳以上高齢であったこと、またベースラインの心血管リスクが高かったことから、切断リスクの上昇は限定される可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、日常的ケアにおけるカナグリフロジン投与の、切断リスクを明らかにするものである」と述べている。BMJ誌2020年8月25日号掲載の報告。カナグリフロジンによる下肢切断リスクをCVDの有無と65歳以上・未満で検証 研究グループは、新たにカナグリフロジンを投与された成人における、年齢および心血管疾患別にみた下肢切断率を推算する住民ベースのコホート試験を行った。 2013~17年の、米国の2つの民間の保険請求データベース(MarketScan、Optum)とメディケア保険請求データベースを基に、新たにカナグリフロジンを処方された患者を抽出し、1対1の割合の傾向スコアマッチングで抽出したGLP-1受容体作動薬を新たに処方された患者と、下肢切断術の発生について比較した。 被験者を以下の4グループに分類し、下肢切断率についてハザード比(HR)と1,000人年当たりの率差を算出。(1)ベースラインで心血管疾患のない65歳未満、(2)ベースラインで心血管疾患のあった65歳未満、(3)ベースラインで心血管疾患のない65歳以上、(4)ベースラインで心血管疾患のあった65歳以上。 メタ解析にて、各グループの統合HRと1,000人年当たりの率差を求め評価した。カナグリフロジン群の下肢切断に関するHRは65歳以上CVD患者で有意差 3つのデータベースから傾向スコアマッチングで、新規のカナグリフロジン処方群または新規のGLP-1受容体作動薬処方群31万840例を抽出し、解析を行った。 カナグリフロジン群のGLP-1受容体作動薬群に対する、下肢切断に関するHRおよび1,000人年当たり率差は、グループ(4)「ベースラインで心血管疾患のあった65歳以上」で、HRが1.73(95%信頼区間[CI]:1.30~2.29)、率差3.66(同:1.74~5.59)と、いずれも有意差が認められた。 一方、その他のグループでは有意差は認められなかった。グループ(1)のHRは1.09(95%CI:0.83~1.43)、率差0.12(同:-0.31~0.55)、グループ(2)はそれぞれ1.18(0.86~1.62)と1.06(-1.77~3.89)、グループ(3)はそれぞれ1.30(0.52~3.26)と0.47(-0.73~1.67)であった。

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第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?

論文5本に捏造・改ざんこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。安倍首相が総理大臣の職を辞する意向を突然表明しました。病気とはいえ、コロナ禍の中、「仕事を投げ出した」感は否めません。退任表明の記者会見で「レガシーは?」と聞かれた首相は「歴史が判断していくのかな」と語っていましたが、数十年後、安倍首相は歴史の教科書にどのように記載されるのでしょうか。気になります。今回は2週間ほど前に発覚した、大阪大学と国立循環器病センター(国循)の論文不正について、考えてみたいと思います。大阪大と国循は8月18日、大阪大学医学部附属病院に以前所属し、国循で室長も務めていた医師が発表した論文5本に捏造・改ざんがあったと発表しました。5本のうちの1本は、心不全の治療に用いられる「hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)」に肺がんの転移を抑える効果があるかを調べる大規模な臨床研究の安全性の根拠を示す参考論文になっており、大阪大と国循はこの研究に参加した患者などに謝罪しました。hANPと肺がん再発の関係を明らかにしたスター研究者捏造・改ざんがあったとされるのは、同医師が2013年から2016年にかけて、同医師が筆頭著者や責任著者として発表した、hANPやチオトロピウム、グレリンなどの5本の論文(hANP関連はうち3本)です。各紙の報道によると、5本の論文のうち、調査委員会が、社会的影響がとくに大きいと考えたのは、肺がんの手術の際にhANPを使うと合併症が抑えられるとした2013年の論文とのことです。その後、同医師らは2015年、hANPを投与した患者群で肺がんの再発が有意に少ないことをプロスペクティブな検討で発見した論文1)を筆頭筆者として発表。一連の研究成果をもとに、がんの転移を防ぐ作用を期待して、大規模な臨床研究(「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第II相比較試験(JANP study)」)がスタートしました。問題とされる2013年の論文は、この臨床研究の安全性の根拠を示す参考とされていました。この臨床研究は全国10施設で実施され、患者335人が参加。うち160人にhANPが投与されました。現在は参加者の募集もhANPの投与も終わり、観察期間中です。今のところ安全性に問題は認められていない、とのことです。同医師は「単純なミスだった」として不正を認めていないと報道されていますが、大阪大は8月18日付で懲戒解雇相当の処分を下しています。ちなみに2015年の、hANPが肺がんの再発が有意に少ないことを明らかにした論文は研究者に与えられるさまざまな賞を受賞しており、2017年にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」の中でも「世界初!心臓からの"メッセージ”で『がん転移予防』」として、大規模臨床研究が始まったことも含め、大きく取り上げられています。同医師は、このまま順調に行けば大学教授になっていたかもしれない、スター研究者だった、と言えそうです。2年8ヵ月もの長期にわたった調査さて、今回の論文不正事件、いくつか気になる点があります。大阪大と国循の調査結果概要などによれば、不正発覚の経緯は次のようなものでした。発端は、2017年12月、大阪大と国循に、前述の医師が筆頭著者または責任著者として発表した21本の論文に「ねつ造や改ざんが認められる」とする申し立てが届いたことでした。つまり、同業の研究者とみられる人物からの申し立てによって発覚したわけです。それを受け、大阪大と国循は予備調査を実施。そこでは、同医師がカルテを基に論文執筆に向けてまとめた二次的なデータと論文に記載された数値に矛盾がないことなどが確認されたものの、論文の一部で、患者背景が異なる論文なのに術後の検査数値の変化が同一だったり、コントロールデータの使い回しが疑われたりしたことから、本調査の実施が決定しました。予備調査から数えると、2年8ヵ月という長期の調査が行われ、上述のように5本の論文についてねつ造や改ざんが認定されたのです。前述したように、5本のうち社会的影響が大きいとされたのが、COPD合併肺がん手術症例を対象に、hANPを投与していた患者としていなかった患者を比較し、hANP群で術後合併症が有意に低いとしていた論文です。同論文に掲載されていた、術後合併症(白血球数、CRP)の経時変化を比較した図について、調査委員会がカルテ情報を基に再現したところ、hANP群のグラフを再現できず、論文で認められていた有意差が認められなかった、ということです(対照群は再現できました)。この論文が、hANPの臨床研究の参考論文になっていて、安全性の根拠の1つとされていたため、大々的な報道になったと考えられます。ただ、hANP投与群がコントロール群より白血球やCRPの数値がよくなれば望ましいですが、今回再現されたデータではコントロール群とほとんど変わらないので、安全性そのものに疑義が出るほどのことなのか、そのあたりはなかなか微妙な問題と言えます。有名論文は申し立てに入らず今回不正が認定されたのは、申し立てがあった21本のうち5本。また、「論文中のあらゆる図表が再現できなかった」といったものではないので、STAP細胞のときのような、研究そのものが根底から覆るような不正と比べるとそれほど悪質ではない、と考えることもできそうです。しかし、各メディアは、医師の実名も大きく報じており、今後、同医師がこれまで通り最先端の研究者としてやっていくのは難しそうです。この事件、仮に研究者間の力関係や怨嗟が原因で起きたと考えるならば、一つの大きな“ナゾ”が浮かび上がってきます。同医師の研究成果のうち、世間で大きな話題となった上述のhANPが肺がんの再発が有意に少ないことを明らかにした論文は、申し立ての対象になっていなかったことです。その理由は、申し立てを行った本人に聞かなければ分かりませんが、ともかく同論文は申し立てに入っておらず、現時点では調査は行われていないようです。大規模臨床研究の行方は?大阪大は今後、肺がん手術後のhANPの効果を探るJANP studyについて安全性の観察に重点を置き進めていくようです。同臨床試験の主要評価項目は、術後2年の無増悪生存期間とされています。観察期間を終えてフタを開けてみたら、きわめて有効、という結果が出る可能性も十分あります。この臨床研究をリードしてきた医師は、今回の論文不正でNGの烙印が押されてしまいましたが、将来、もしhANPが肺がんや他のがんの術後の再発を大きく抑える効果が証明されたとしたら、懲戒解雇処分となった同医師の“復権”はあるのでしょうか? あるいは、成果は処分を下した阪大の誰かが持っていってしまうのでしょうか。ところで、調査委員会では追加の調査が行われる、との情報もあります。もし、その調査の結果、2015年の論文にも捏造・改ざんの事実があったとしたら、そちらの方が大事件です。追加調査の結果に加え、この臨床研究の今後がとても気になります。参考1)Nojiri T et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2015 Mar 31;112;4086-91.

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入院中の成人アトピー性皮膚炎患者、全身性感染症リスク増大

 成人アトピー性皮膚炎(AD)と全身性感染症との関連について、デンマーク・コペンハーゲン大学のCatherine Droitcourt氏らが全国規模のコホート研究を行った結果、入院治療中のAD患者において全身性感染症のリスクが増大していることが明らかになった。ADと全身性感染症との関連は指摘されていたが、これまでに行われた大規模研究はわずかで、関連性は明確にはなっていなかった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年8月1日号掲載の報告。 研究グループは成人AD患者について、入院治療と関連した全身性感染症リスクの上昇が認められるかどうかを調べるため、全国レジストリベースのコホート研究を行った。 被験者は1995~2017年にレジストリに登録されたデンマーク成人。Coxモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・成人AD患者1万602例(年齢中央値29.8歳、IQR:22.6~44.8)と、参照対照群10万6,020例を対象に評価を行った。・全身性感染症の全罹患率は、1万人年当たり、成人AD群180.6(95%CI:172.6~189.0)、参照対照群120.4(118.3~122.5)であった。・ADと全身性感染症の関連は、筋骨格系(補正後HR:1.81、95%CI:1.42~2.31)、心臓(1.75、1.21~2.53)、上気道感染症(1.42、1.15~1.73)および下気道感染症(1.21、1.10~1.33)で観察された。・敗血症(補正後HR:1.19、95%CI:1.01~1.44)、皮膚感染症(2.30、2.01~2.62)のリスク上昇も認められた。 なお著者は、「本所見は、病院外で認められる成人の軽症AD患者に一般化することはできない限定的なものである」としている。

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第23回 免許証サイズ、5ドル15分のCOVID-19検査を米国が許可して早速大量購入~入館許可証の役割を担う?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査の進歩は目覚ましく、免許証ほどの大きさで他に装置不要の持ち運び自由なカード型抗原検査BinaxNOW COVID-19 Ag Card(以下BinaxNOW COVID-19)を米国FDAが先週水曜日26日に認可しました1)。メーカーのAbbott(アボット)社は、15分足らずで結果が判明して費用わずか1コイン(5ドル)程の同検査を9月には数千万個、10月からは毎月5,000万個を出荷する予定です。安かろう悪かろうというわけではなく、COVID-19が疑われる症状が生じてから7日以内の患者を医療従事者がBinaxNOW COVID-19で検査した試験での検出感度は97.1%、特異度は98.5%でした。鼻ぬぐい液のウイルス抗原を検出するBinaxNOW COVID-19は医師や看護師をはじめとして保健室の先生・薬剤師・企業の医療担当の専門家などの医療の心得のある人が必要に応じてそれぞれの持ち場で使うことができます。それら医療従事者による検査を受けた人はAbbott社が提供するNAVICAというアプリを使ってその結果をスマートフォン等のiPhone/Android携帯機器にQRコードと共に以下の写真のように表示し、検査結果の提示を求める施設へ入る時に非感染証明証として提示することができます。感染を示す陽性結果の場合には隔離して受診することを求めるメッセージが表示されます。検査証明は一定期間が過ぎると失効します。米国政府もぞっこん?米国政府はBinaxNOW COVID-19を相当有望視して高く買っているらしく、FDA認可の翌日27日に1億5,000回分を7億6,000万ドルで買う契約をAbbott社と交わしました。調達分は学校に配備したり必要に応じて供給される予定です2)。検査結果を入室許可証とする取り組みを大学が開始NAVICAが表示するような陰性検査結果を入館許可証として使って感染者との接触を未然に防いで流行を食い止めつつ日常を取り戻そうとする取り組みは米国ですでに実行に移されています。6万人が通う米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校では、今学期週に2回の頻度で生徒や職員全員がCOVID-19の唾液検査を受け、構内の建物に入ることができるのは感染していないことを示す陰性結果を提示した人のみとしています3-5)。数時間以内に判明する検査結果は携帯電話にすぐに通知され、感染を示す陽性であれば10日間の隔離が必要となります。感染者と密に接した人の追跡もなされます。陽性の人は無料の食事や十分な支援と手当てを得て隔離期間を罪悪感なく安心して過ごすことができるようになっています。毎日2万人を検査するために同大学は獣医科施設を専用に模様替えしました。検査体制準備の予算は600万ドル、1回10ドルの検査の今学期の総費用は最大で1,000万ドルになる見込みです5)。今のところ検査は非常によく受け入れられていると同大学の化学者Martin Burke氏は科学ニュースThe Scientistに話しています5)。Burke氏は同校で使われている唾液検査の開発に携わりました。検査は果たして有効なのか?イリノイ大学のようにとにかくくまなく検査して感染者を早期発見して感染者にはしばらく待機してもらう取り組みが流行阻止の一翼を担いうることを裏付ける結果が米国メイン州でのキャンプ場で得られています。徹底的な検査に加えて感染食い止め対策も怠らなかった甲斐あり、そのキャンプ場が6月中旬から8月中旬の4回で迎えた宿泊小児やスタッフ合わせて1,022人の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数はわずか3人のみでした6-8)。キャンプする小児と世話係は全員が到着前に検査を受け、陽性だった4人は自宅隔離10日間の後にキャンプに参加しました。キャンプ場へ到着してからすぐに検査は再度実施され、参加者は5~44人のグループに分かれて44~62日間のキャンプ生活を送りました。グループは家族のようなもので、別のグループの人と接する場合にはマスクを着用し、距離を保つことが求められました7)。キャンプ場へ到着後の再検査で世話係2人と小児1人の合計3人が陽性となり、陰性となるまで隔離されました。3人の所属グループの30人はしばらく隔離状態でキャンプ活動を続け、隔離中の検査で陽性は1人もおらず、陽性となった3人から他の参加者への感染は結局生じませんでした。参考1)Abbott's Fast, $5, 15-Minute, Easy-to-Use COVID-19 Antigen Test Receives FDA Emergency Use Authorization; Mobile App Displays Test Results to Help Our Return to Daily Life; Ramping Production to 50 Million Tests a Month 2)Trump Administration Will Deploy 150 Million Rapid Tests in 20203)Media advisory: On-campus COVID-19 testing available for faculty members, staff, students.4)COVID-19 briefing: Homegrown models inform university's safety measuresAUG5)U of Illinois Returns to School with 20,000 Saliva Tests Per Day/TheScientist6)Preventing and Mitigating SARS-CoV-2 Transmission - Four Overnight Camps, Maine, June-August 2020. MMWR. August 26, 20207)How four summer camps in Maine prevented COVID-19 outbreaks8)COVID-19 testing helps sleep-away summer camps to avoid outbreaks/Nature

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双極性障害とうつ病患者における不安症の有病率とその関連因子

 気分障害の患者では、不安症が併発すると、うつ症状の持続、QOL低下、自殺リスク上昇、抗うつ薬治療による気分の不安定化などの悪影響が認められる。しかし多くの場合、このことは臨床診断で認識されていない。東京医科大学の井上 猛氏らは、以前報告したJET-LMBP研究のデータを用いて、日本人気分障害患者における不安症の有病率とその関連因子を調査し、不安症の併発を確認するのに役立つ方法を検討した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年7月12日号の報告。 双極性障害患者114例、うつ病患者334例を分析した。不安症の併発は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて確認した。人口統計学的および臨床的特徴は、日本語版自己記入式簡易抑うつ尺度日本語版(QIDS-SR-J)、SF-36、Child Abuse and Trauma Scale(CATS)を用いて評価した。不安症の併発に関連する因子は、年齢、性別、抑うつ症状の重症度で調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した(事後分析)。 主な結果は以下のとおり。・不安症の有病率は、うつ病患者(37.2%)よりも双極性障害患者(53.2%)のほうが有意に高かった。・双極性障害患者の不安症併発に関連する因子は、以下のとおりであった。 ●配偶者の不在 ●対人関係の拒絶感受性 ●CATSの性的虐待スコアの高さ ●SF-36の精神的サマリースコアの低さ・うつ病患者の不安症併発に関連する因子は、以下のとおりであった。 ●過眠症 ●病的な罪悪感 ●CATSのネグレクトスコアの高さ ●SF-36の身体的サマリースコアの低さ 著者らは「日本人の気分障害患者では、不安症の併発頻度が高かった。双極性障害患者やうつ病患者の不安症の併発は、小児期の虐待、非定型うつ病の症状、QOLの低下などと関連しており、これらの因子は、不安症の併発を確認するうえで役立つであろう」としている。

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第21回 検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策

<先週の動き>1.検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策2.経営悪化で3,500診療所、1,000病院が無利子・無担保融資を利用3.医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案が取りまとめられた4.自民党内に国民皆保険を守る国会議員連盟が発足5.“GLP-1ダイエット”製薬メーカーからも警告1.検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策28日、新型コロナウイルス感染症対策本部による取りまとめ結果が、安倍 晋三首相の記者会見で発表された。季節性インフルエンザとの同時流行なども踏まえ、抗原簡易キットによる検査能力を1日20万件程度まで拡充させることや病床確保を弾力的に行うことなど、トータルパッケージとして今後の対策方針を打ち出した。さらに、2類相当の指定感染症として感染症法に基づく権限の運用について、政令改正も含め、柔軟に見直しを行っていく方針を固めた。今後、国際的な人的交流を部分的・段階的に再開するため、成田・羽田・関西空港における入国時の検査能力・体制の拡充を行うことを目指し、9月までに1万人超の検査能力を確保する見込み。10月を目処にビジネス目的の出国者が市中の医療機関において検査証明を迅速に取得するのを支援目的に、インターネットで予約・マッチングすることができる仕組みを構築することが打ち出されている。(参考)新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組(新型コロナウイルス感染症対策本部)新型コロナウイルス感染症対策本部(第42回)議事次第(内閣官房)政府、検査1日20万件に拡充へ 「コロナ対策パッケージ」公表(毎日新聞)2.経営悪化で3,500診療所、1,000病院が無利子・無担保融資を利用経営が悪化した病院向けに独立行政法人 福祉医療機構が実施している、無利子・無担保融資の決定件数が明らかとなった。7月21日時点で、3,538件の診療所で1,248億円、1,077件の病院で2,779億円に上り、これは全国8,200病院の1割強に当たる。政府は新型コロナウイルスの影響で経営が悪化した医療機関を支援するため、官民ファンド「地域経済活性化支援機構(REVIC)」を活用した新たな医療機関支援を開始するとし、福祉医療機構との連携協定の締結を行った。このスキームにより、REVICの経営ノウハウ提供など、地域の医療・福祉サービスの提供体制の維持・強化を図ることが可能となる。(参考)1000病院、無利子融資活用 診療所は3500件 受診減り経営悪化(日本経済新聞)地域経済活性化支援機構との連携協定の締結について~病院等事業者に対する経営支援~(福祉医療機構)病院経営動向調査(2020年6月調査) 新型コロナウイルス感染症の影響等に関する特別調査結果(同)3.医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案が取りまとめられた28日、厚生労働省は「医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。これまで、2024年4月の新時間外労働規制の適用に向けて、医師の時間外労働の上限規制に関して、医事法制・医療政策における措置について、8回にわたって討議を重ねてきた。これまでの議論をもとに、今回「医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)」がまとまった。今後、ガイドラインに沿って実際に医師の労働時間を短縮していくために、各医療機関内で取り組める事項について作成し、PDCAサイクルを進めていくこととなる。ガイドラインによれば、年間の時間外・休日労働時間数が960時間を超える医師の勤務する医療機関については、2024年までになるべく早期の計画策定が求められることとなる。(参考)医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)(厚労省)第8回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(同)4.自民党内に国民皆保険を守る国会議員連盟が発足27日、自民党有志による「国民皆保険を守る国会議員連盟」(会長・鴨下 一郎元環境相)の設立総会が自民党本部で開催された。呼びかけ人代表の鴨下一郎議員が会長として承認された。設立趣意書によると、「本議員連盟は、国民の健康を守り、安心により生活・経済を支える国民皆保険制度を、将来にわたり持続可能なものとするよう、幅広い観点から検討することを目的とする」とあり、高齢化や新型コロナウイルス対応で政府の財政悪化の状況下で、皆保険制度の持続性を高める方策を議論する方向性が打ち出されている。(参考)国民皆保険維持へ自民議連(時事ドットコム)松本純の国会奮戦記2020年8月5.“GLP-1ダイエット”製薬メーカーからも警告ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の使用・処方が国内で問題になってきている。20日、製造販売元4社が共同して文書による適正使用を呼び掛け、医療機関などに周知を開始している。海外では肥満症の適応で処方可能とされているが、日本国内では適応が承認されていない。このため、日本糖尿病学会より2020年7月9日付で「GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」が発出されている。2型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は現時点では確認されておらず、低血糖による健康被害の可能性もあり、医薬品副作用被害救済制度による救済の支給対象外となるため、適正な処方が望まれる。(参考)GLP-1 受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(PMDA)GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日本糖尿病学会)

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FHホモ接合体のevinacumab併用、LDL-Cを40%低下/NEJM

 最大用量の脂質低下療法を受けているホモ接合型家族性高コレステロール血症(FH)の患者において、evinacumabを併用することでLDLコレステロール(LDL-C)値がベースラインよりも大幅に低下したのに対し、プラセボではLDL-C値がわずかに上昇し、24週の時点で群間差が49.0ポイントに達したとの研究結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrederick J. Raal氏らによって報告された。「ELIPSE HoFH試験」と呼ばれるこの研究の成果は、NEJM誌2020年8月20日号に掲載された。ホモ接合型FHは、LDL-C値の異常な上昇によって引き起こされる早発性の心血管疾患を特徴とする。この疾患は、LDL受容体活性が実質的に消失する遺伝子変異(null-null型)または障害される遺伝子変異(non-null型)と関連している。また、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、低脂血症や、アテローム性動脈硬化性心血管疾患への防御と関連している。ANGPTL3に対するモノクローナル抗体であるevinacumabは、ホモ接合型FH患者にとって有益である可能性が示されていた。11ヵ国30施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験 本研究は、11ヵ国30施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年2月15日~12月18日の期間に患者登録が行われ、2019年7月29日にデータベースがロックされた(Regeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢12歳以上のホモ接合型FHで、許容できない副作用が発現しない最大用量の脂質低下療法を安定的に受けており、LDL-C値が70mg/dL以上の患者であった。 被験者は、evinacumab(15mg/kg体重)を4週ごとに静脈内注入する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ベースラインから24週までのLDL-C値の変化率(%)とした。LDL-C値:47.1%低下vs.1.9%上昇 65例が登録され、evinacumab群に43例、プラセボ群には22例が割り付けられた。12~<18歳の患者が各群に1例ずつ含まれた。全体の平均年齢は41.7±15.5歳で、女性が35例(54%)であった。 ベースラインの平均LDL-C値は、最大用量の基礎脂質低下療法を受けていたにもかかわらず、evinacumab群が260mg/dL、プラセボ群は247mg/dLであった。全体の94%がスタチン(77%は高強度スタチン)、77%がPCSK9阻害薬の投与を、34%がアフェレーシスを受けており、63%が3剤以上の脂質修飾薬の投与を受けていた。 24週の時点で、evinacumab群ではLDL-C値がベースラインから47.1%低下したのに対し、プラセボ群では1.9%上昇しており、群間の最小二乗平均差は-49.0ポイント(95%信頼区間[CI]:-65.0~-33.1、p<0.001)であった。 また、LDL-C値の群間の最小二乗平均絶対差は-132.1mg/dL(95%CI:-175.3~-88.9、p<0.001)であった。 LDL-C値の低下は、null-null型変異を有する患者では、evinacumab群がプラセボ群よりも大きく(-43.4% vs.+16.2%)、非null型変異の患者でもevinacumab群で大きかった(-49.1% vs.-3.8%)。 主な副次アウトカムであるアポリポ蛋白B、非HDL-C値、総コレステロール値のベースラインから24週時までの変化率は、いずれもevinacumab群がプラセボ群よりも有意に低下した(すべてのp<0.001)。 有害事象は、evinacumab群が66%、プラセボ群は81%で発現した。evinacumab群で頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(16%)、インフルエンザ様疾患(11%)、頭痛(9%)、鼻漏(7%)であった。 有害事象により治療中止となった患者は両群とも認められず、死亡例もなかった。重篤な有害事象は、evinacumab群の2例(5%、尿路性敗血症、自殺企図)でみられたが、いずれも回復した。 著者は、「LDL-C値の低下に伴い、アポリポ蛋白Bはevinacumab群がプラセボ群よりも36.9ポイント低下した。この低下は、大量基礎脂質低下療法へのアフェレーシス追加の有無にかかわらず達成された」としている。

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留学はトラブルとハプニングの連続!? リアルな年収と暮らしについて【臨床留学通信 from NY】第11回

第11回:留学はトラブルとハプニングの連続!? リアルな年収と暮らしについて2018年6月21日、私は家族共々、念願のニューヨークに乗り込んだわけですが、何事もうまくいかないのが留学というものです。到着3~4日で早くもオリエンが始まり、7月1日 (日曜日でした)が仕事始めだったのですが、契約するアパートには7月5日まで入ることができず、やむなく病院まで地下鉄で1時間余り離れたFlushing (全米オープンテニスの会場、Flushing Meadowの近く)のホテルに2週間ほど滞在しなければなりませんでした。マンハッタンのホテルは料金が高く、2週間も滞在するのは無理なので遠いところに借りたわけですが、そのため当初は朝4時20分に起床、30分後には電車に乗り、6時前に病院に着くなり患者さんの診察を開始するという、かなりハード勤務状況でした。しかも、最初の1週間は英語のシャワーで頭はパンク寸前。それでも毎日18時、日によっては21時まで勤務が続き、ヘトヘトになったのは今でも忘れられません。そんな私の当初の給料は、年俸6万3,000ドルでした。「研修医でその額は悪くないのでは?」と思われるかもしれませんが、何せここはニューヨークです。病院が借り上げたふるーいアパート(1LDK相当)ですら、家賃が月1,900ドル程度かかります。そんな物件ですら、普通に借りれば月3,000ドル近くにもなります。私の場合、最初の半年は月2,200ドルだったのが、幸か不幸か、ボロすぎるという理由で値下げとなりました。それでも、税金や家賃が給料から天引きされると、実質的な手取りは月1,500ドル程度にしかならず、家族4人で生活するのがやっとです。Trader Joe's という大手チェーンのスーパーがあり、そこならば比較的良心的な価格で食材が揃いますが、それ以外は日系スーパー含め、日本の物価の倍近くになることも多いです。私が取得したJ-1ビザのメリットの1つに最初2年間のTax returnがあり、それがいくらかの足しにはなりましたが、それもなくなってしまった現状は、渡米直後の暮らしぶりとほとんど変わりません。もちろん、悪いことばかりでもありません。ニューヨーク市に住んでる以上、日々の生活に車は不要で、日本の幼稚園に相当するPre-K、Kindergartenは、パブリックであればタダなのが救いです。またMDとしての勤務のため、自身の病院関連であれば、家族含めて保険料や医療費が掛からないのも助かります。ただし、歯科についてはあまり保険でカバーされず苦労することが多いので、留学前に日本で歯の検診を済ませておくことをお勧めします。研究留学でも、グラントなどとの兼ね合もありますが、おおむね似たような暮らしかと思います。ただ、保険などで苦労している人が多いようです。留学当初、最も苦労したのはSocial Security Number(日本でいうマイナンバーのようなもの)です。これがないと給料の振込み、保険の設定ができません。私の場合、ホテル暮らしの後に入居予定だったアパートを宛先にしたところ、いっこうに届きませんでした。恐らく、いったん入居前に届けられたものの、誰も住んでいないとみなされてそのまま持ち帰りになってしまったのだと思います。しかも、役所に問い合わせてもなかなか担当まで行き着かないのが、ここアメリカです。結局、再発行に2週間以上掛かり、最終的に手元に届くまで生きた心地がしなかったです。万が一、その期間に病気になっても無保険だったかもしれず、今思えばゾッとします。仕事が英語やシステムに対して不慣れなだけでなく、家族共々安全に過ごすために不可欠なセットアップ、いざ生活が始まってみて1,500ドルで実際どれくらいの生活ができるのか見通しが立つまで心労が絶えなかったのも、今でもよく覚えています。留学にはこうした思わぬブラックホールがつきものですが、それを差し引いても留学によって国内では得難い経験が積めるのもまた事実です。異国に住む不便さを身をもって知ることも、そのひとつでしょう。留学を考え始めた当初の私は、渡米そのものをゴールにしていましたが、そうではなくそこからが新たなスタートだ、という意識に切り替えた上で留学したため、渡米直後の苦しい日々を何とか乗り切れたのではないかと思います。ColumnCOVID-19の影響で、現状、USMLE Step2 CSが開催されなくなっており、OETという英語のテストを受ける必要があるようです1)。実際、どの程度のレベルの英語力が求められるかは不明ですが、USMLEを考えていらっしゃる方は、遅かれ早かれこのテストを受けてみる必要があると思います。なお私の渡米前のTOEFL スコアは92点で、2年経過しても英語で苦労しており、どこかのタイミングで集中的に英語の勉強はやはり必要ですね。1)https://www.ecfmg.org/certification-requirements-2021-match/oet.html?fbclid=IwAR2yYyABh5iw4l7kQ0GHOr_0Ag5g_ahJMQmv9F7HtZGKv7KjWxdqtcGH_pU

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がん治療で心疾患リスクを伴う患者の実態と対策法/日本循環器学会

 第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院臨床薬理学 教授/早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所)が「腫瘍循環器診療の拡がりとCardio-Oncology Rehabilitation(CORE)」について発表。がんを克服した患者の心血管疾患発症リスクやその予防策について講演した。循環器医がおさえておくべき、がん治療の新たなる概念-サバイバーシップ がん医療の進歩により、がんは不治の病ではなくなりつつある。言い換えるとがん治療の進歩により生命予後が伸びる患者、がんサバイバーが増えているのである。とくに米国ではがんサバイバーの急激な増加が大きな社会問題となっており、2015年時点で1,500万人だった患者は、今後10年でさらに1,000万人の増加が見込まれる。 たとえば小児がんサバイバーの長期予後調査1)では、がん化学療法により悪性リンパ腫を克服したものの、その副作用が原因とされる虚血性心疾患(CAD)や慢性心不全(CHF)を発症して死亡に繋がるなどの心血管疾患が問題として浮き彫りとなった。成人がんサバイバーでも同様の件が問題視されており、長期予後と循環器疾患に関する論文2)によると、乳がん患者の長期予後は大幅に改善したものの「心血管疾患による死亡はその他リスク因子の2倍以上である。乳がん診断時の年齢が66歳未満では乳がんによる累計死亡割合が高かった一方で、66歳以上では心血管疾患(CVD)による死亡割合が増加3)し、循環器疾患の既往があると累計死亡割合はがんとCVDが逆転した」と佐瀬氏はコメントした。心疾患に影響するがん治療を理解する この逆転現象はがん治療関連心血管疾患(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)が原因とされ、このような患者は治療薬などが原因で心血管疾患リスクが高くなるため、がんサバイバーのなかでも発症予防のリハビリなどを必要とする。同氏は「がん治療により生命予後が良くなるだけではなく、その後のサバイバーシップに対する循環器ケアの重要性が明らかになってきた」と話し、がんサバイバーに影響を及ぼす心毒性を有する薬を以下のように挙げた。●アントラサイクリン系:蓄積毒性があるため、生涯投与量が体表面積あたり400mg/m2を超えるあたりから指数関数的にCHFリスクが上昇する●分子標的薬:HER2阻害薬はアントラサイクリン系と同時投与することで相乗的に心機能へ影響するため、逐次投与が必要。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は世代が新しくなるにつれ血栓症リスクが問題となる●免疫チェックポイント阻害薬:PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬併用による劇症心筋炎の死亡報告4)が報告されている これまでのガイドラインでは、薬剤の影響について各診療科での統一感のなさが問題だったが、2017年のASCOで発表された論文5)を機に変革を迎えつつある。心不全の場合、日本循環器学会が発刊する『腫瘍循環器系の指針および診療ガイドライン』において、がん治療の開始前に危険因子(Stage A)を同定する、ハイリスク患者とハイリスク治療ではバイオマーカーや画像診断で無症候性心機能障害(Stage B)を早期発見・治療する、症候性心不全(Stage C/D)はGLに従って対応するなど整備がされつつある。しかしながら、プロテアソーム阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬のような新規薬剤は未対応であり、今後の課題として残されている。循環器医からがんサバイバーへのアプローチが鍵 がん治療が心機能へ影響する限り、これからの循環器医は従来型の虚血性心疾患と並行して新しい危険因子CTRCDを確認するため「がん治療の既往について問診しなければならない」とし、「患者に何かが起こってから対処するのではなく腫瘍科医と連携する体制が必要。そこでCardio-Oncologyが重要性を増している」と述べた。 最後に、Cardio-Oncologyを発展させていくため「病院内でのチームとしてなのか、腫瘍-循環器外来としてなのか、資源が足りない地域では医療連携として行っていくのか、状況に応じた連携の進め方が重要。循環器疾患がボトルネックとなり、がん治療を経た患者については、腫瘍科医からプライマリケア医への引き継ぎ、もしくは心血管疾患リスクが高まると予想される症例は循環器医が引き継いでケアを行っていくことが求められる。これからの循環器医にはがんサバイバーやCTRCDに対するCORE6)を含めた対応が期待されている」と締めくくった。■参考1)Armstrong G, et al. N Engl J Med. 2016;374:833-842.2)Ptnaik JL, et al. Breast Cancer Res. 2011 Jun 20;13:R64.3)Abdel-Qadir H, et al. JAMA Cardiol. 2017;2:88-93.4)Johnson DB, et al. N Engl J Med. 2016;375:1749-1755.5)Almenian SH, et al. J Clin Oncol. 2017;35:893-911.6)Sase K, et al. J Cardiol.2020 Jul 28;S0914-5087(20)30255-0.日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)

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毎月の住宅費や物件の購入価格は?医師1,000人に聞きました

 転勤や開業の可能性など、キャリアプランによって大きく左右される医師の住まい選び。20代から70代以上まで、各世代の医師たちはどんな選択をして、どれくらいの費用を住宅にかけているのか。CareNet.comの会員医師1,000人に、その実情を聞いた。約半数が賃貸住まい、購入者は約6割が30代で購入 住宅の購入歴あり、と答えたのは1,000人中519人(51.9%)。総務省「住宅・土地統計調査」によると、2018年の日本全国での持ち家率は61.2%1)。転勤が多いなどの医師という職業の特性が影響しているのかもしれない。購入した年代別にみると、最も多かったのが30代で312人(60.1%)、40代が165人(31.8%)と続き、30~40代での購入者が9割以上を占めた。 購入した物件の形態については、戸建が63.3%を占め、マンション(36.7%)を上回った。東京都(戸建58.0% vs.マンション42.0%)、大阪府(51.9% vs.48.1%)などの都市圏でも戸建購入者が多い傾向がみられた。 一方で、購入歴なしと答えたのは481人(48.1%)。うち、約半数の252人(52.4%)が購入希望ありと回答し、229人(47.6%)が購入希望なしと回答した。全体でみると、約1/4の医師が購入希望なしと回答した形となる。毎月の住宅費、最も多かった回答は10万円未満 毎月の住宅費(賃貸の場合は家賃、購入の場合は主にローン返済費[マンションの場合は管理費や修繕積立金などとの合計])について聞いた結果、最も多かったのは「10万円未満」という回答。次いで「なし」が22.0%、「10~14万円」が20.6%、「15~19万円」が16.3%と続いた。 年代別にみると各年代で傾向は大きく異なり、20代では「10万円未満」が55.0%を占めたが、30代では29.2%となり、「10~14万円」が26.9%、「15~19万円」が20.0%となっている。40代では「10万円未満」は16.9%とさらに減り、「10~14万円」が26.4%、「15~19万円」が24.2%、「20~29万円」が13.4%。50代からは「なし」と答えた割合が年代が高くなるにつれ上昇し、50代で31.3%、60代で50.0%、70代以上では73.7%を占めた。 地域別にみると、東京都、大阪府でとくに金額帯が高い傾向がみられ、6割以上が10万円以上と回答した。東京都では「15~19万円」および「20~29万円」が21.8%ずつと最も多く、大阪府では「10~14万円」および「15~19万円」が23.2%ずつと最も多くを占めた。一方、北海道・東北6県および四国4県では、10万円以上と回答した人は3~4割に留まった。購入時の物件価格の価格帯、頭金の金額帯は? 住宅の購入歴あり、と答えた人に物件の価格帯について聞いた結果、「3,000~4,000万円台」が30.8%、「5,000~6,000万円台」が30.2%と多くを占めた。次いで、「7,000~9,000万円台」が20.7%、「3,000万円未満」が10.4%と続く。地域別にみると、東京都の価格帯が突出して高く、「5,000万円未満」との回答は18%に留まり、「7,000~9,000万円台」との回答が最も多く、36.0%を占めた。 購入時の頭金については、「一括払い」と回答した人が10.6%だったのに対し、「頭金なし」と回答した人も14.3%であった。最も多かったのは「100~999万円」で27.8%、次いで「1,000~1,999万円」が23.4%で、約半数が100~2,000万円の頭金を用意していた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。賃貸か購入か、医師の最新住宅事情

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うつ病を伴う糖尿病患者、医療従事者のケアで代謝指標が改善/JAMA

 うつ病を合併した糖尿病患者に対する共同ケア(collaborative care)は、通常ケアと比較して24ヵ月時点のうつ症状および循環代謝指標の複合評価を、統計学的に有意に改善することが認められた。米国・エモリー大学のMohammed K. Ali氏らが、インドにおけるうつ病を合併した糖尿病患者を対象とする実用的な無作為化非盲検臨床試験「INDEPENDENT試験」の結果を報告した。メンタルヘルス疾患を合併している患者は増加しており、糖尿病ではとくにケアが断片化しているとアウトカムが悪化する。低中所得国では、財政や医療従事者の不足などが障壁となって効果的なケアが阻まれ、ますます複数の慢性疾患を有する患者が増加し、回避可能にもかかわらず不良なアウトカムにつながっている。そのため、メンタルヘルスケアの導入を増加させアウトカムを改善するために有効で実現可能な統合ケアが求められていた。JAMA誌2020年8月18日号掲載の報告。うつ病を伴う2型糖尿病患者約400例で、共同ケアと通常ケアを比較 研究グループは、インドの社会経済的に多様な病院4施設において、2型糖尿病患者(患者健康質問票のうつ病評価尺度[PHQ-9]スコア10点以上、HbA1c 8%以上、収縮期血圧[SBP]140mmHg以上、LDLコレステロール130mg/dL以上)を登録し、介入群と対照群に無作為に割り付けた。登録期間は2015年3月9日~2016年5月31日。最終追跡調査日は2018年7月14日であった。 介入群(196例)では、医師ではないケアコーディネーター(栄養士、ソーシャルワーカーなど)による12ヵ月間のセルフマネジメントサポート、医師の診療を調整する意思決定支援電子健康記録の利用、および専門家による症例検討を受け、その後介入なしで12ヵ月間追跡を受けた。対照群(208例)は通常ケアを24ヵ月間受けた。 主要評価項目は、24ヵ月時点においてSymptom Checklist Depression Scale(SCL-20)スコアが50%以上低下、HbA1cが0.5%以上低下、SBPが5mmHg以上低下およびLDLコレステロール値が10mg/dL以上低下の複合エンドポイントを達成した患者の割合の群間差とした。介入群でうつ症状と循環代謝指標が改善 無作為化された404例(平均[±SD]年齢53±8.6歳、男性165例[40.8%])のうち、378例(93.5%)が試験を完遂した。 主要評価項目を達成した患者の割合は、介入群が71.6%、対照群が57.4%であり、対照群と比較して介入群で有意に増加した(リスク群間差:16.9%、95%CI:8.5~25.2、p<0.001)。事前に定義した16の副次評価項目のうち、12ヵ月時点で10項目、24ヵ月時点で13項目は、両群間で有意差は確認されなかった。 介入群と対照群における重篤な有害事象は、心血管イベントまたは入院(4例[2.0%]vs.7例[3.4%])、脳卒中(0例vs.3例[1.4%])、死亡(2例[1.0%]vs.7例[3.4%])、重篤な低血糖(8例[4.1%]vs.0例)であった。

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予期せぬ体重減少、がん精査をすべき?/BMJ

 プライマリケアで予期せぬ体重減少を呈した成人のがんリスクは2%以下で、英国の現行ガイドラインに基づく検査対象とはならないことが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のBrian D. Nicholson氏らによる、予期せぬ体重減少のがん予測を定量化することを目的とした診断精度研究の結果で、著者は、「しかしながら、50歳以上の男性喫煙者および臨床所見を有する患者では、がんリスクを考慮すると、侵襲的な検査受診を紹介する必要がある」と述べている。報告では、特定のがん部位と関連する典型的な臨床所見は、予期せぬ体重減少が生じた際は複数のがん種のマーカーとなることも明らかにされた。BMJ誌2020年8月13日号掲載の報告。予期せぬ体重減少を呈した患者6万3,973例で、がんの診断精度を検証 研究グループは、英国のプライマリケアにおけるNational Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)およびClinical Practice Research Datalink(CPRD)電子健康記録を用いて、2000年1月1日~2012年12月31日に予期せぬ体重減少が記録された成人(18歳以上)6万3,973例を特定し解析した。 主要評価項目は、最初に体重減少が記録された日(インデックス日)から6ヵ月以内のがんの診断である。インデックス日の3ヵ月前から1ヵ月後までの期間の、付加的な臨床所見についても特定された。診断精度は、陽性および陰性の尤度比、陽性予測値、診断のオッズ比(OR)で評価した。 予期せぬ体重減少を認めた成人6万3,973例のうち、3万7,215例(58.2%)が女性、3万3,167例(51.8%)が60歳以上、1万6,793例(26.3%)が喫煙者であった。予期せぬ体重減少のみでプライマリケアを受診した成人患者のがんリスクは2%以下 インデックス日から6ヵ月以内にがんと診断された人は908例(1.4%)で、このうち882例(97.1%)が50歳以上であった。がんの陽性予測値は、50歳以上の男性喫煙者では英国国立医療技術評価機構による緊急検査の推奨閾値である3%を超えていたが、女性ではどの年齢でも確認されなかった。 予期せぬ体重減少を伴う男性では10項目の臨床所見が、女性では11項目が、がんと関連していた。陽性尤度比は、男性で非心臓性胸痛の1.86(95%信頼区間[CI]:1.32~2.62)から腹部腫瘤の6.10(3.44~10.79)までの範囲、女性では背部痛の1.62(1.15~2.29)から黄疸の20.9(10.7~40.9)までの範囲であった。 がんと関連があった血液検査異常値は、アルブミン低値(4.67、95%CI:4.14~5.27)、血小板数増加(4.57、3.88~5.38)、カルシウム高値(4.28、3.05~6.02)、白血球数増加(3.76、3.30~4.28)、C反応性蛋白高値(3.59、3.31~3.89)などであった。一方で、単独でがんの否定につながる血液検査正常値はなかった。また、予期せぬ体重減少を伴う臨床所見は、複数のがん部位と関連していた。

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第21回 COVID-19の知見惜しみなくシェア・拡散、医学論文も“新たな様式”へ

公益財団法人ときわ会常盤病院乳腺外科医の尾崎 章彦氏らがCOVID-19に関する学術論文をリスト化し、NPO法人医療ガバナンス研究所のホームページで公表している1)。公開されている18本の学術論文(2020年8月26日現在)は、尾崎氏をはじめとする同研究所に関わる医療者および研究者らによる執筆だ。同氏はこの取り組みの意義について、「データがオープンにシェアされれば、大学や研究機関に所属しない在野の医療者でもCOVID-19についての研究ができる。この流れは、医療以外の社会の流れと相まって、ますます大きな潮流になっていくのでは」と話す。彼らの活動の最大の特徴は、海外の医師・研究者との共同研究が多くあることだ。実際、掲載論文の多くがネパールの医師・研究者との共同研究により執筆されている。例えば、COVID-19の流行がネパールの観光業に与えた影響についての論説論文は、Journal of Travel Medicineという渡航医学の専門雑誌に掲載された2)。驚くべきことに、論文作成の過程におけるコミュニケーションは、もっぱらSNSやメールだという。海外の医師・研究者と知り合うきっかけは、知人の紹介や論文を読んでコンタクトを取ったこと、また科学者・研究者向けのSNS「ResearchGate」などで、実際に臨床で一緒に仕事をしたり、会ったりしたことがないメンバーがほとんどだという。日本の場合、研究はアカデミアで行うものというイメージが強い。実際、大規模調査などは大学や公的な研究機関だからこそできるものもある。一方で、ネットワークや公開データを用いれば、小規模でもコツコツと調査を実施したり論文を書いたりすることはできる。尾崎氏は福島県内の一般病院の常勤医として、それを実践した。「さまざまなテクノロジーを使えば、あらゆる課題についてフットワーク軽く海外の人とも協同して仕事ができることが改めてわかった」。彼らの取り組みに関してもう一つの特徴を挙げるとすれば、2011年の東日本大震災の被災地の状況に研究の着想を得ていることだ。尾崎氏は「放射能災害とCOVID-19は、原因となる物質が目に見えず、目に見えないことが恐怖をもたらすという点で共通点がある」と述べる。同氏らは震災後、被害地の乳がん患者を診療・調査を行った結果、症状自覚後に受診が長期的に遅れるような未診断乳がん患者が震災後に増加したことを明らかにした3)。さらに、増加傾向は震災から5年が経過した時点まで続いていたこともわかった。この研究により、医療機関の受診を躊躇するような行動様式の変化が、患者自身に生じたことが浮き彫りになった。尾崎氏らは、医療体制が復旧した後もなお、がんを自覚しながら患者が受診をためらったように、COVID-19に関しても同様の現象が増える可能性を考え、論文にまとめた。その内容は、Journal of Global Healthという国際保健の専門雑誌に掲載されている4)。COVID-19に関する論文バブル、世界の一流医学専門誌での論文取り下げが相次ぐ中、尾崎氏は「フットワーク軽く調査に取り組みつつも、データの正確さや倫理面は当然担保しながら進めていくことが極めて重要だ」と語る。大学や研究所、一般病院といった所属や立場に縛られず、それぞれのフィールドで柔軟に調査・研究を行うことの重要性を改めて感じる。今や世界共通課題であるCOVID-19に関してはなおさらで、日本発の研究のアウトプットを増やしていくのは国際社会に対する責務でもある。参考1)https://www.megri.or.jp/covid-19論文2)https://academic.oup.com/jtm/advance-article/doi/10.1093/jtm/taaa105/58683043)https://bmccancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12885-017-3412-44)http://www.jogh.org/documents/issue202002/jogh-10-020343_AU.pdf

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治療抵抗性精神疾患治療のための3次医療サービスの有効性

 治療抵抗性統合失調症は、2次医療機関における疾患マネジメントが困難な場合が多い疾患の1つである。再入院や長期介護費用などのリスクを軽減するため、複雑な治療抵抗性精神疾患に対しエビデンスに基づき個別で、集学的な医療を提供する専門の3次医療機関として英国精神疾患ユニット(National Psychosis Unit:NPU)がある。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCecilia Casetta氏らは、NPUでの治療の長期的な有効性を自然主義的なアウトカムを検討することにより評価した。BJPsych Open誌2020年8月3日号の報告。 精神科病床と一般病床の入院回数、入院日数、緊急度、NPU入院前後に処方された向精神薬の数と抗精神病薬の用量について、ミラーイメージデザインを用いて比較した。CRISシステム、South London and Maudsley NHS Trustデータベース、HESシステムを用いてデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・NPU入院2年前と比較し、入院後には以下の改善が認められた。 ●精神疾患に伴う入院の減少(1.65±1.44 vs. 0.87±0.99、z=5.594、p<0.0001) ●精神科病床使用の減少(335.31±272.67 vs. 199.42±261.96、z=5.195、p<0.0001) ●一般病床の総入院日数の減少(16.51±85.77 vs. 2.83±17.38、z=2.046、p=0.0408) ●総入院日数の減少(351.82±269.09 vs. 202.25±261.05、z=5.621、p<0.0001)・NPUでの治療後に、必要とされるサポートレベルは低下した(z=-8.099、p<0.0001)。 著者らは「治療抵抗性精神疾患に特化した3次医療サービスの長期的な有効性が示唆された」としている。

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんに国内適応拡大/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年8月21日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、化学療法(エトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を適応症に厚生労働省より承認を取得したと発表。 デュルバルマブに対する今回の承認は、デュルバルマブと化学療法との併用療法が、化学療法単独との比較において、統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した第III相CASPIAN試験の結果に基づいている。 2019年6月、CASPIAN試験において、デュルバルマブと化学療法との併用療法は、化学療法単独との比較で主要評価項目であるOSの延長を示し、死亡リスクを27%低下させた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.59~0.91、p=0.0047)。OS中央値は化学療法単独群の10.3ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では13.0ヵ月であった。また、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では、客観的奏効率(Confirmed)の増加(化学療法単独群58%に対して、デュルバルマブと化学療法との併用療法群68%)が示され、化学療法にデュルバルマブを追加することで、肺がん関連の症状が悪化するまでの期間が延長することが示された。 最新の解析データでは、追跡期間中央値が2年を超えた時点でも、デュルバルマブと化学療法との併用療法による持続的な有効性が示され(OSハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62 ~0.91、p=0.0032)、OS中央値は化学療法単独群の10.5ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では12.9ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法との併用療法の安全性および忍容性は、これらの医薬品の既知の安全性プロファイルと一致していた。 デュルバルマブとエトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチンとの併用療法は、のES-SCLCの1次治療薬として、米国および世界中の数ヵ国で承認されている。

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第22回 老化で溜まる屑ががん細胞を転移しやすくする~血を薄めて若返り?

高齢になるほどがんを生じてがんで死亡することが多くなり、がんによる死亡は主に転移を原因とします。米国・ニューヨーク市のコーネル大学のチームによる新たな研究の結果、食物中のタンパク質等をエネルギーに変える代謝で生じるいわば屑・メチルマロン酸(MMA)が高齢になるほど血液中に蓄積し、上皮間葉転換(EMT)に似た仕組みを経てどうやらがん細胞を転移しやすくすると分かりました1-4)。先立つ研究で、転移し始める細胞のMMAが増えると分かっていました3)。また、高齢者にMMAが多いことも知られていました。それら2つの発見を背景にしてチームはMMAが高齢者と発がんの関連に寄与しているかもしれないと考え、血液中のMMA が多い60歳以上の高齢者30人の血清と25~30歳の若者30人の血清を肺がん細胞や乳がん細胞に投与してどうなるかを検討しました。その結果、若者の血清を投与したがん細胞の特性は多くの場合変化しませんでした。一方、高齢者の血清が投与されたがん細胞は多くの場合EMTに似た仕組みによって転移特性を備え、別の試験でその変化の多くがMMAに起因していると判明しました。それらのがん細胞はたしかに転移誘発作用があり、マウスに注射したところ肺に転移性の腫瘍を生み出しました。MMAは高齢者の血液中に存在する大きな脂肪の粒と恐らく複合体を形成して血管壁を出てがん細胞に運ばれ、SOX4という遺伝子発現を促すことでがん細胞を転移可能な状態にするようです。MMAを運ぶその脂肪粒の特性やMMAがどういう仕組みでSOX4の発現を促すのかは分かっておらず、今後の研究で調べる必要があります。また高齢になるほどMMAが蓄積する理由なども今後の研究で明らかになるでしょう。まだまだ課題はありますが、MMAを減らしてがんによる死亡を防ぐ治療が生み出されることを何よりも望むと研究を率いたコーネル大学教授John Blenis氏は言っています3)。血を薄めて若返りを図る?老化するほど血液に溜まる有害成分はMMAだけではないようで、老化に伴って蓄積する有害タンパク質もどうやら存在し、それらを薄める血漿瀉血(血漿交換)に似た処置で老いたマウスを若返らせうることがカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の最近の研究で示されています5,6)。研究者は老齢マウスの血漿の半分をそれらに含まれるアルブミン相当量添加(アルブミン5%)生理食塩水で置き換えて血漿中のタンパク質を薄めました。すると老化で増える炎症促進タンパク質の数が減り、血管新生などに携わる有益なタンパク質は逆に増え、脳・肝臓・筋肉が若返りました。血漿成分を変える瀉血は種々の自己免疫疾患の治療として米国FDAにすでに承認されています。少し手を加えた瀉血で高齢者の体調を改善できるかどうかや、筋肉減少・神経変性・2型糖尿病・免疫不全などの老化疾患を治療できるかどうかを調べる試験の準備をしていると6月中旬の同大学のニュースで述べられています5)。MMAも薄まるのであればもしかすると瀉血でがん転移も減らせるかもしれません。参考1)Age-induced accumulation of methylmalonic acid promotes tumour progression. Nature. 19 August 20202)Study finds cancer-boosting culprit that multiplies with age / AFP 3)Aging People Accumulate a Molecule that Promotes Cancer and Metastasis / Weill Cornell Medicine4)Molecules in the blood of older people promote cancer spread / Nature 5)Diluting blood plasma rejuvenates tissue, reverses aging in mice / Eurekalert6)Mehdipour M,et al. Aging. 2020 May 31; 12: 8790–8819.

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浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM

 下肢の慢性浮腫による蜂窩織炎がみられる患者の予防治療において、圧迫療法は保存的治療に比べ、蜂窩織炎の再発率が低く、蜂窩織炎による入院も抑制される傾向がみられることが、オーストラリア・Calvary Public Hospital BruceのElizabeth Webb氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月13日号に掲載された。下肢慢性浮腫は、蜂窩織炎のリスク因子とされる。蜂窩織炎の再発予防には、下肢の着圧衣類(弾性ストッキングなど)の日常的な使用が推奨されているが、その効果に関する臨床試験のエビデンスは乏しいという。予防効果を評価する単一施設非盲検無作為化試験 研究グループは、下肢の蜂窩織炎の予防における圧迫療法の有用性を評価する目的で、単一施設での非盲検無作為化試験を実施した(Calvary Public Hospital Bruceの助成による)。 対象は、試験前の2年間に、同一下肢の蜂窩織炎エピソードが2回以上あり、一方または両下肢の浮腫が3ヵ月以上持続し、蜂窩織炎の再発が認められる患者であった。 被験者は、下肢圧迫療法に加え蜂窩織炎の予防に関する研修を受ける群(圧迫群)、または研修のみを受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。フォローアップは、6ヵ月ごとに、最長3年間または試験期間中に蜂窩織炎エピソードが45件発生するまで行われた。 主要アウトカムは、蜂窩織炎の再発とした。蜂窩織炎を発症した対照群の参加者は、圧迫群にクロスオーバーされた。副次的アウトカムには、蜂窩織炎に関連する入院や下肢容積、QOL評価が含まれた。蜂窩織炎エピソード:15% vs.40%、試験は有効中止に 2017年6月~2019年2月の期間に、84例が登録され、41例が圧迫群、43例は対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は64.0±13.9歳、女性が49%で、平均BMIは41.0±9.9、浮腫罹患期間が5年以上の患者は63%であった。 ベースラインの慢性浮腫の寄与因子は、肥満が両群とも63%で最も多く、次いで手術/外傷が圧迫群34%、対照群30%、静脈圧上昇がそれぞれ37%および26%であった。併存疾患は、足白癬が圧迫群32%、対照群40%、糖尿病がそれぞれ24%および33%、慢性静脈不全が29%および26%、うっ血性心不全が24%および16%に認められた。 予定されていた中間解析の時点で、フォローアップ期間の範囲は0~511日で、中央値186日(圧迫群209日、対照群77日)だった。 この中間解析時に、蜂窩織炎エピソードは23件発生していた。このうち圧迫群が6例(15%)、対照群は17例(40%)であり(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.09~0.59、p=0.002、相対リスク[事後解析]0.37、95%CI:0.16~0.84、p=0.02)、主要アウトカムは圧迫群で有意に良好であった。 この知見に基づき、データ監視委員会の勧告により、本試験は有効中止となり、患者登録を終了して対照群の患者は圧迫群にクロスオーバーされた。 蜂窩織炎による入院は、圧迫群が3例(7%)、対照群は6例(14%)で認められた(HR:0.38、95%CI:0.09~1.59)。また、12ヵ月時の平均下肢容積は、圧迫群ではベースラインから181mL減少したが、対照群は60mL増加した(変化の群間差:-241mL、95%CI:-365~-117)。 12ヵ月時の四肢リンパ浮腫QOL(LYMQOL)の総合スコアの平均変化は圧迫群で良好であった(変化の群間差:-0.3点、95%CI:-0.6~-0.1)が、LYMQOLのQOLスコア(0.8点、-0.1~1.7)には差はなかった。また、EQ-5D-3Lの視覚アナログ尺度(8点、-5~16)およびEQ-5D-3Lの記述システムのスコア(0.8点、-0.4~2.1)の平均変化には、両群間に差はなかった。試験期間中に有害事象の発現はみられなかった。 著者は、「とくに、専門的なリンパ浮腫サービスへのアクセスがない環境で、蜂窩織炎の再発に対する圧迫療法の効果を明らかにするためには、より大規模で長期的な試験が必要である」としている。

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ゲームが上手な人は腹腔鏡も上手い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第169回

ゲームが上手な人は腹腔鏡も上手いpixabayより使用ゲームが得意な人って、腹腔鏡が上手いんじゃないだろうか。そういう説を見かけたことがありますが、わたしゃ外科医ではないので、そこらへんはよくわかりません。しかし、腹腔鏡のシミュレーターで訓練することは技術向上には当然よいわけで。IJgosse W, et al.Construct Validity of a Serious Game for Laparoscopic Skills Training: Validation Study.JMIR Serious Games . 2020 May 7;8(2):e17222.腹腔鏡シリアスゲーム「Underground」について検証した、ラドバウド大学医療センターからの論文です。それにしても、なぜゲーム名をアンダーグラウンドにしたのか……。シリアスゲームというのは深刻なゲームのことではなくて、教育や医療用途などの目的で開発されたゲームジャンルのことで、要はエンターテイメントではないということです。タスクをこなす時間とミスのパフォーマンスについて、共分散分析を用いて、初心者(65人、腹腔鏡下手術経験10回未満、平均年齢24±3歳)、中級者(26人、腹腔鏡下手術経験10~100回、平均年齢31±2歳)、エキスパート(20人、腹腔鏡下手術経験100回以上、平均年齢44±6歳)の間で比較しました。性別とビデオゲーム経験を補正しました。ゲームといっても、RPGをメインでやる人と、格ゲーをメインでやる人では、また違う気もするのですが、それはまぁおいといて。性別とビデオゲーム経験で補正すると、腹腔鏡の経験がタスク完了やミスのパフォーマンスに有意な影響を与えることがわかりました。やはりエキスパートは上手い。興味深いことに、この研究では、男性やビデオゲーム経験歴があるほうがシリアスゲームのパフォーマンスが良好だということもわかりました。とくに若手医師の場合、ゲーム経験が有利に働いたとされています。となると、小さいころからゲームをやってきた人のほうが、もしかすると腹腔鏡が上手になるかも!?ちなみに、任天堂のWii-Uを使った腹腔鏡トレーニングが有効であるという報告もあります1)。1)Overtoom EM, et al. Training in Basic Laparoscopic Surgical Skills: Residents Opinion of the New Nintendo Wii-U Laparoscopic Simulator. J Surg Educ . Mar-Apr 2017;74(2):352-359.

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