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進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。 本試験は、わが国における多施設共同非盲検無作為化比較第II相試験のJBCRG-M04(BOOSTER)試験。主要評価項目である無作為化から治療戦略遂行不能までの期間(time to failure of strategy:TFS)については、wPTX+BV群8.87ヵ月、ET+BV群16.82ヵ月で有意に延長した(ハザード比:0.51、95%信頼区間:0.34~0.75、p<0.001)ことを、2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で同氏が報告している。・対象:ER陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法としてwPTX+BV療法を4~6サイクル施行後、SD以上の効果が認められた患者・介入群:wPTXを休薬しET+BVに置き換え、規定イベント後にwPTX+BVを再導入する群(ET+BV群)・対照群:wPTX+BV継続治療群(wPTX+BV群)・評価項目[主要評価項目]TFS[副次評価項目]全生存期間、無増悪生存期間、安全性、PROなど※PROの評価は、無作為化時および無作為化後2ヵ月、4ヵ月、1年、2年に、FACT-B、EQ-5D、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)、HADS、cancer fatigue scale(CFS)を使用 主な結果は以下のとおり。・1次化学療法が奏効した125例について、wPTX+BV群63例、ET+BV群62例に割り付けた。 ・mixed-effect models for repeated measures(MMRM)を用いた解析では、FACT-Bのtrial outcome indexに有意差が認められ(p=0.004)、PWBの平均変化は2ヵ月後(p=0.015)および4ヵ月後(p=0.028)に、ET+BV群がPTX+BV群より有意に優れていた。・CIPNについては、1年後における重度の運動神経障害の割合がET+BV群でwPTX+BV群よりも低かった(5.1% vs. 26.1%、p=0.017)。・CFSでも有意差が認められ(p=0.048)、そのうち精神的倦怠感のスコアの平均変化は、2ヵ月後(p=0.006)および4ヵ月後(p=0.010)でET+BV群がwPTX+BV群より有意に優れていた。 佐治氏は、「化学療法継続で蓄積毒性が懸念される症例において、ET+BVの維持療法は健康関連QOLの点で1つの選択肢となるだろう」と結論した。

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COVID-19パンデミックによる米国うつ病有病率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと感染症防止のための政策は、抑うつ症状に対する未知の影響を伴い、全米に拡大した。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、米国成人におけるCOVID-19パンデミックによるの抑うつ症状の有症率とリスク因子を推定するため、検討を行った。JAMA Network Open誌2020年9月1日号の報告。 本研究は、18歳以上の米国成人を対象とした2つの人口ベースの調査を用いた、米国国民生活調査として実施した。COVID-19と生活ストレスによるメンタルヘルスやウェルビーイングへの影響に関する研究より、COVID-19パンデミック期間の推定値を算出した。調査期間は、2020年3月31日~4月13日とした。COVID-19パンデミック前の推定値は、2017~18年に実施した国民健康栄養調査のデータより抽出した。データの分析は、2020年4月15日~20日に実施した。COVID-19パンデミックおよびそれを軽減するための政策に関連するアウトカムへの影響を調査した。主要アウトカムは、抑うつ症状(こころとからだの質問票[PHQ-9]カットオフ値10以上)とした。抑うつ症状の重症度分類は、なし(スコア:0~4)、軽度(スコア:5~9)、中等度(スコア:10~14)、中等度から重度(スコア:15~19)、重度(スコア:20以上)とした。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に調査を完了した参加者は1,470人(完了率:64.3%)であった。データが不十分な参加者のデータは削除し、最終的に1,441人のデータを分析した(18~39歳:619人[43.0%]、男性:723人[50.2%]、非ヒスパニック系白人:933人[64.7%])。・パンデミック前のデータとして、5,065人分のデータが使用された(18~39歳:1,704人[37.8%]、女性:2,588人[51.4%]、非ヒスパニック系白人:1,790人[62.9%])。・抑うつ症状の有病率は、いずれの重症度においてもCOVID-19パンデミック中のほうがパンデミック前よりも高かった。 ●軽度:24.6%(95%CI:21.8~27.7) vs.16.2%(95%CI:15.1~17.4) ●中等度:14.8%(95%CI:12.6~17.4) vs.5.7%(95%CI:4.8~6.9) ●中等度から重度:7.9%(95%CI:6.3~9.8) vs.2.1%(95%CI:1.6~2.8) ●重度:5.1%(95%CI:3.8~6.9) vs.0.7%(95%CI:0.5~0.9)・COVID-19パンデミック中に、抑うつ症状リスクの高さと関連していた因子は以下のとおりであった。 ●収入の少なさ(オッズ比:2.37、95%CI:1.26~4.43) ●収入と支出の差額が5,000ドル未満(オッズ比:1.52、95%CI:1.02~2.26) ●ストレス要因の多さ(オッズ比:3.05、95%CI:1.95~4.77) 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミック中の抑うつ症状有病率は、パンデミック前と比較し、3倍以上高いことが示唆された。社会的資源や経済的資源が少なく、失業などのストレス要因が、抑うつ症状の発症に影響を及ぼしている。COVID-19パンデミック後においては、今後精神疾患の発症が増加する可能性があり、とくに高リスク集団では、注意が必要である」としている。

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COVID-19、ECMO導入患者の院内死亡率は?/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)を導入された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、装着から90日後の推定死亡率、および入院中の患者を除く最終的に死亡または退院となった患者の死亡率はいずれも40%未満であり、これは世界の多施設のデータであることから、COVID-19患者で一般化が可能な推定値と考えられることが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)の検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年9月25日号に掲載された。いくつかの大規模な医療組織では、COVID-19関連の急性低酸素性呼吸不全患者に対してECMOによる補助が推奨されている。一方、COVID-19患者でのECMO使用に関する初期の報告では、きわめて高い死亡率が示されているが、COVID-19患者におけるECMO使用に関する大規模な国際的コホート研究は行われていなかった。36ヵ国213施設のECMO導入患者を解析 研究グループは、ELSOレジストリのデータを用いて、2020年1月16日~5月1日の期間に36ヵ国213施設でECMOが導入された年齢16歳以上のCOVID-19確定例の疫学、入院経過、アウトカムの特徴を解析した(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19の診断は、臨床検査で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の存在が確認された場合と定義された。フォローアップのデータは、2020年8月3日まで更新された。 主要アウトカムは、ECMO開始から90日の時点でのtime-to-event解析による院内死亡とした。多変量Coxモデルを用いて、患者因子と病院因子が院内死亡率と関連するかを評価した。ECMO導入から90日の院内死亡率は37.4% ECMOを導入されたCOVID-19患者1,035例のデータが解析に含まれた。年齢中央値は49歳(IQR:41~57)、BMI中央値は31(IQR:27~37)で、74%が男性であった。 724例(70%)がECMO導入前に1つ以上の併存疾患を有し、819例(79%)が急性呼吸促迫症候群(ARDS)、301例(29%)が急性腎障害、50例(5%)が急性心不全、22例(2%)が心筋炎を有していた。 1,035例のうち、67例(6%)が入院を継続しており、311例(30%)が退院して自宅または急性期リハビリテーション施設へ、101例(10%)が長期急性期治療(long-term acute care)施設または詳細不明の場所へ、176例(17%)が他院へ移り、380例(37%)が院内で死亡した。 ECMO導入から90日の院内死亡の推定累積発生率は37.4%(95%信頼区間[CI]:34.4~40.4)であった。また、入院中の67例を除く、最終的に院内死亡または退院した968例の死亡率は39%(380例)だった。 一時的な循環補助(静脈-動脈ECMO)の使用は、院内死亡率の上昇と独立の関連が認められた(ハザード比[HR]:1.89、95%CI:1.20~2.97)。また、呼吸補助(静脈-静脈ECMO)を受け、ARDSと診断された患者の90日院内死亡率は38.0%であった。 著者は、「世界の200ヵ所以上の施設でECMOを導入されたCOVID-19患者の検討により、ECMO導入患者における一般化可能な推定死亡率がもたらされた。これらの知見は、難治性のCOVID-19関連呼吸不全患者では、経験豊かな施設においてはECMOの使用を考慮すべきとの、これまでの推奨を支持するものである」としている。

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ダパグリフロジン、CKDの転帰を改善/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)患者では、糖尿病の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはプラセボと比較して、推算糸球体濾過量(GFR)の持続的な50%以上の低下や末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合の発生リスクを有意に低下させることが、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J L Heerspink氏らが行った「DAPA-CKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月24日号に掲載された。CKD患者は、腎臓や心血管系の有害な転帰のリスクが高いとされる。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の大規模臨床試験において、糖化ヘモグロビンを低下させるとともに、腎臓や心血管系の転帰に良好な効果をもたらすと報告されている。一方、CKD患者における糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性は知られていないという。DAPA-CKD試験には21ヵ国386施設が参加 DAPA-CKD試験は、CKD患者における2型糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性と安全性を評価する目的の二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験(AstraZenecaの助成による)。21ヵ国386施設が参加し、2017年2月~2018年10月の期間(中国の一部の参加者は2020年3月まで)に無作為割り付けが行われた。 対象は、推算GFRが25~75mL/分/1.73m2体表面積で、尿中アルブミン/クレアチニン比(アルブミンはミリグラム[mg]、クレアチニンはグラム[g]で測定)が200~5,000のCKD患者であった。被験者は、ダパグリフロジン(10mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合とした。 本DAPA-CKD試験は、2020年4月3日、独立データ監視委員会の提言に基づき、有効中止となった。DAPA-CKD試験の主要評価項目はダパグリフロジン群で良好 DAPA-CKD試験には4,304例が登録され、ダパグリフロジンとプラセボの両群に2,152例ずつが割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は61.8±12.1歳、1,425例(33.1%)が女性であった。ベースラインの平均推算GFRは43.1±12.4mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値は949であり、2,906例(67.5%)が2型糖尿病の診断を受けていた。 フォローアップ期間中央値2.4年(IQR:2.0~2.7)の時点で、主要評価項目のイベントは、ダパグリフロジン群が2,152例中197例(9.2%)で、プラセボ群は2,152例中312例(14.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.51~0.72、p<0.001、主要評価項目の1件のイベントの予防に要する治療数:19件、95%CI:15~27)。また、主要評価項目の個々の構成要素はいずれも、ダパグリフロジン群で良好だった。 DAPA-CKD試験の副次評価項目である推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓が原因の死亡の複合のHRは0.56(95%CI:0.45~0.68、p<0.001)、心血管系の原因による死亡または心不全による入院のHRは0.71(0.55~0.92、p=0.009)であった。また、ダパグリフロジン群で101例(4.7%)、プラセボ群で146例(6.8%)が死亡した(HR:0.69、95%CI:0.53~0.88、p=0.004)。 ダパグリフロジン群では、主要評価項目のイベント発現のHRは、2型糖尿病患者が0.64(95%CI:0.52~0.79)、非2型糖尿病患者は0.50(0.35~0.72)であり、いずれもプラセボ群と比較して良好で、2型糖尿病の有無で効果に差はなかった。 有害事象および重篤な有害事象の発生率は、全般に両群でほぼ同等であった。糖尿病性ケトアシドーシスは、ダパグリフロジン群では報告がなく、プラセボ群は2例に認められた。2型糖尿病のない患者では、糖尿病性ケトアシドーシスや重度低血糖はみられなかった。 著者は、「SGLT2阻害薬の腎保護作用は、2型糖尿病を伴わないCKD(ACE阻害薬が、腎不全の予防効果が示されている唯一の薬物療法である患者)という幅広い患者集団にまで拡大されることが確認され、ダパグリフロジンの有益な安全性プロファイルが確かめられた」としている。

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Dr.飯村の英語の発音が劇的に変わるトレーニング

第1回 日本人のカタカナ英語はこんなにヤバイ!?第2回 LとRともう1つの「ラ行」第3回 BとVの違いは口の形にあらず第4回 母音はshortとlongの2つずつ覚えればOK第5回 「あ」の発音は3つにしちゃってOK第6回 多くの日本人が読めない「it」第7回 carsとcardsを区別できているか?第8回 「ん」の発音でぐっとネイティブっぽくなる第9回 poolとpull 2つの「う」をマスターする第10回 ネイティブスピードで喋るためのテクニック 学会や症例カンファレンスで必要と感じながら、なかなか習得することができない英会話。なかでも日本人に足りないとされるのは「英語で喋る力」です。もしかして英語が喋れないのは発音に自信がないからではないですか?英語の発音をきちんと理解すると自信を持って話せるだけでなく、驚くほどリスニング力も上達します。Dr.飯村が考案したこの特別なメソッドで、ネイティブのように聞こえる発音をマスターしましょう!第1回 日本人のカタカナ英語はこんなにヤバイ!?「発音記号がわからないから」「外国人っぽく喋るのは恥ずかしいから」と言って、あえて平坦なカタカナ英語を喋っていませんか?第1回では日本人にありがちなカタカナ英語が外国人に一体どのくらい伝わっているのかというヤバイ実情を解説します。この番組をきっかけにネイティブ発音をマスターしましょう!第2回 LとRともう1つの「ラ行」LとRの発音が一発で分かる、目からウロコのトレーニング法をお教えします。あなたが今使っている「L」はネイティブには「T」や「D」に聞こえているかもしれない!?そんなLの発音が今すぐできるようになる秘密の裏技も収録!練習セクションは声に出して繰り返しご覧ください。第3回 BとVの違いは口の形にあらず今回はBとVの発音の違いについて解説します。Bは日本語のバ行、Vは下唇を噛んで発音すればいいと思っていませんか?実は2つの発音の最も重要なポイントは破裂音と摩擦音という違いなんです。この違いを意識すれば、患者さんの「vein(血管)」が「bane(苦しみ)」に間違われるなんてこともなくなります。ぜひ繰り返し再生して練習してください。第4回 母音はshortとlongの2つずつ覚えればOK英語の母音にはshort vowelsとlong vowelsというまったく違う2つの読み方があります。いわゆる短母音と長母音。漢字1つの音読みと訓読みを間違えるだけで文章の意味がわからなくなってしまうのと同様に、この母音1つの読み方が違うだけで、アメリカ人はあなたの英語を聞き取ることができません。番組では「aorta」「edema」など、読み方を間違えやすい臨床英単語をご紹介します。第5回 「あ」の発音は3つにしちゃってOK英語には、「あ」に聞こえる発音記号は6つもあります。「お」っぽい「あ」、口をまるめた「あ」、曖昧な「あ」...そんなに言い分けるのは無理という人は、実はこの3つを覚えてしまえばOKという方法があります。アメリカでも若い世代を中心に発音の省略が行われており「Cot-Caught Merger」と「Short A Tensing」と呼ばれている現象です。後半ではAR、ORの音の違いを学び、発音のトレーニングをします。第6回 多くの日本人が読めない「it」itとeatの発音の違いは「イット」と「イート」という音の長さではなかった!?「い」でも「え」でもないShort Iの音は難しく感じられますが、実は私たちの生活の中にも存在する、誰でも発音できる音なのです。Short Iの発音を覚えて正確なitの発音をマスターしましょう!第7回 carsとcardsを区別できているか?今回は英語における四つ仮名「じ・ぢ・ず・づ」について解説。日本語で喋るときに四つ仮名を意識することはあまりありませんが、英語ではこれら4つの発音を間違えると意味が通じません。たとえばcarsとcardsはどう言い分ければいいでしょうか。実はその違いは明確で、練習すれば誰でも習得できる音なんです。聞けば納得、たった13分でわかる簡単な発音のコツをお教えします!第8回 「ん」の発音でぐっとネイティブっぽくなる今回は「ん」の発音について解説します。英語の”ん”はN、M、NGの3種類。実は日本語の”ん”の方がバリエーションが多いので、この3つをしっかり区別して発音しないと伝わらないことがあります。またNの周りでは様々な発音の変化が起こります。suscreenはなぜサンツクリーンと読むのか、mentalのtは読んではいけないなど、ぐっとネイティブに近づく発音のコツを教えます!第9回 poolとpull 2つの「う」をマスターするpoolとpullは「プール」と「プル」ではない!第6回で解説した“itとeat”と同様に英語は音の長さで単語を区別することはありません。いわゆる「う」のlong OOと、「うとおの間」のshort OOの発音の違いをわかりやすく解説します。また、英語にはろうそくを吹き消すような「ふ」という音も存在しません。ネイティブに伝わる「う」と「ふ」をマスターしましょう!第10回 ネイティブスピードで喋るためのテクニック最終回の目標はネイティブのような速いスピードで英語を話すこと。滑らかに喋るための発音の変化、単語の削り方のルールをお伝えします。書いてあるのにどうしても聞こえない文字ってありますよね。それ、聞こえないんじゃなくて言ってないんです!ラストには英文の症例サマリーもあるので、これまでに勉強した発音のコツを復習しながら、ぜひシャドーイングに挑戦してください!

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ESMO2020レポート 消化器がん(上部下部消化管)

レポーター紹介本年度の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)は、昨今の新型コロナウイルス感染症の社会情勢を鑑み、完全バーチャル化して2020年9月19日~21日まで開催された。消化管がん領域における注目演題についてレポートする。CheckMate-649試験本邦の実臨床が大きく変わるであろう臨床試験結果の演題として、未治療のHER2陰性進行胃・食道胃接合部がん・食道腺がんにおける化学療法+ニボルマブ併用療法の化学療法に対する優越性が検証されたCheckMate-649試験を報告する。HER2陰性進行胃・食道胃接合部がん・食道腺がんでは、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤の併用療法を行うことが標準治療として位置付けられている。また、本邦では後方ラインの治療としてすでにニボルマブが実地臨床でも使用されている。そこで、HER2陰性進行胃・食道胃接合部がん・食道腺がんを対象に化学療法群(カペシタビン+オキサリプラチン併用療法または、FOLFOX療法)に対して、化学療法+ニボルマブ併用療法群、またはイピリムマブ+ニボルマブ併用療法群のそれぞれの優越性を検証したCheckMate-649試験が行われた。今回のESMOでの報告では、化学療法+ニボルマブ併用療法群および、化学療法群を比較した結果が公表された。主要評価項目は化学療法+ニボルマブ併用療法群の化学療法群に対する、CPS5以上のPD-L1陽性例でのOSとPFSだった。副次評価項目は、CPS1以上のPD-L1陽性例でのOS、ランダム化された症例でのOSなどであった。ランダム化1,581例のうちCPS5以上のPD-L1陽性例は955例(60%)であった。両群の患者背景に差はなかった。アジア人は化学療法+ニボルマブ併用療法群が25%、化学療法群が24%、MSSは化学療法+ニボルマブ併用療法群が89%、化学療法群が88%であった。後治療移行割合は、全体で39%、化学療法+ニボルマブ併用療法群で38%、化学療法群で41%であった。後治療として免疫療法を受けたのは、化学療法+ニボルマブ併用療法群が2%、化学療法群が8%であった。主要評価項目であるCPS5以上のPD-L1陽性例におけるOS中央値は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)、化学療法群で11.1ヵ月(95%CI:10.0~12.1)、HR 0.71(98.4%CI:0.59~0.86)、p<0.0001と化学療法+ニボルマブ併用療法群が有意に良好であった。CPS1以上のPD-L1陽性例においても同様に、化学療法+ニボルマブ併用療法群で化学療法群よりもOSが良好であった。さらに、全ランダム化症例におけるOS中央値も、化学療法+ニボルマブ併用療法群が化学療法群よりも有意に良好であった(OS中央値:13.8ヵ月vs.11.6ヵ月、HR:0.80、p=0.0002)。CPS5以上のPD-L1陽性例の奏効割合は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で60%、化学療法群で45%と、化学療法群+ニボルマブ併用療法群で有意に高かった(p<0.0001)。完全奏効は化学療法+ニボルマブ併用療法群で12%、化学療法群で7%に認められた。化学療法+ニボルマブ併用療法群で安全性に関する新たな情報はなかった。以上の結果から、演者らは、HER2陰性進行胃・食道胃接合部がん・食道腺がんにおける化学療法+ニボルマブ併用療法は標準治療の1つと考えられると結論付けた。ATTRACTION-4試験現在、本邦では胃がん領域において免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが実地臨床で用いられている。本試験は、HER2陰性の切除不能進行再発胃がん/食道胃接合部がんにおける1次化学療法として、化学療法+ニボルマブ併用療法と化学療法をHead-to-Headで比較した第III相試験として日本・韓国・台湾で実施された。主要評価項目は、PFSとOSに設定され、副次評価項目は奏効割合、安全性などであった。統計学的に、最終解析においてPFS、OSでそれぞれ両側α=0.01、0.04として設定された。化学療法(SOXまたはCapOX)+ニボルマブ併用療法、化学療法にそれぞれ1:1に割り付けられた。2017年3月から2018年5月までに724例が登録され、化学療法+ニボルマブ併用療法群に362例、化学療法群に362例が割り付けられた。患者背景に両群で差は認めなかった。後治療移行割合は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で64%、化学療法群で68%であった。後治療としてニボルマブあるいはペムブロリズマブを受けたのは、化学療法+ニボルマブ併用療法群が10%、1%、化学療法群が25%、2%であった。主要評価項目であるPFS中央値は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で10.45ヵ月(95%CI:8.44~14.75)、化学療法群で8.34ヵ月(95%CI:6.97~9.40)、HR 0.68(98.51%CI:0.51~0.90)、p=0.0007と有意に化学療法+ニボルマブ併用療法群で良好な成績であった。OSについては、OS中央値が化学療法+ニボルマブ併用療法群で17.45ヵ月(95%CI:15.67~20.83)、化学療法群で17.15ヵ月(95%CI:15.18~19.65)、HR 0.90(95%CI:0.75~1.08)、p=0.257と統計学的有意差は示せない結果となった。カプランマイヤー曲線をみると、全体としてわずかに化学療法+ニボルマブ併用療法群が上回っていた。奏効割合は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で57.5%、化学療法群で47.8%と化学療法+ニボルマブ併用療法群で有意に高かった(p=0.0088)。完全奏効は、化学療法+ニボルマブ併用療法群で19.3%、化学療法群で13.3%であった。安全性に関しては、化学療法+ニボルマブ併用療法群で新たな情報はなかった。CheckMate-649試験の結果を受けて、日本の実地臨床でも近い将来、初回化学療法から免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療が標準治療となっていくものと考えられる。しかしながら、これまで進行胃がんの1次治療における化学療法+免疫チェックポイント阻害薬併用療法の有用性を検証した臨床試験として、KEYNOTE-062試験、CheckMate-649試験、ATTRACTION-04試験の3つの大規模試験が示されているが、全体集団のOSにおいて、化学療法+免疫チェックポイント阻害薬の有効性を示したのはCheckMate-649試験のみとなっている。なぜこのような結果となったのか。異なる臨床試験間の比較をすることは御法度だが、ATTRACTION-04試験はアジアで行われた試験であること(標準治療群のOSが17ヵ月というのは驚異的な成績である)、後治療の移行割合(免疫チェックポイント阻害薬を含む)の違い、併用backboneレジメンの違い、CPSの評価方法の違い、あるいは胃がん特有のheterogeneityなのか、検討すべき点は多々あると思われる。昨今は胃がんにおいても次々と新規薬剤が承認される時代に突入したが、予後不良の胃がん患者において実際に「薬の使い切り」を行える症例は少ないのが現状である。より効果の高い治療をより効果の高い患者へ最適に届けることが今後の課題といえよう。KEYNOTE-590試験進行食道がんの初回化学療法は、フルオロピリミジン+プラチナ系薬剤併用(FP)療法が標準治療として用いられている。ペムブロリズマブ単独療法は、KEYNOTE-181試験において、CPS10以上のPD-L1陽性の既治療食道扁平上皮がん症例で化学療法との比較が行われ、奏効割合22% vs.7%、OS中央値10.3ヵ月 vs.6.7ヵ月と報告されている。本試験は、腺がんを含む進行食道がんの初回化学療法における化学療法+ペムブロリズマブ併用療法の化学療法に対する優越性を検証した、無作為化二重盲検第III相試験である。治療は、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群は5-FU+CDDP+ペムブロリズマブを3週ごと、化学療法+プラセボ群は5-FU+CDDP+プラセボを3週ごとに投与された。主要評価項目は、OS(扁平上皮がん患者、扁平上皮がんかつCPS10以上のPD-L1陽性、CPS10以上のPD-L1陽性、全登録患者)とPFS(扁平上皮がん患者、CPS10以上のPD-L1陽性、全登録患者)であった。副次評価項目は、奏効割合、安全性などであった。2017年7月から2019年6月までに749例が登録され、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群に373例、化学療法+プラセボ群に376例が無作為に割り付けられた。患者背景に両群で差はなかった。アジア人は化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が53%、化学療法+プラセボ群が52%、扁平上皮がんは化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が74%、化学療法+プラセボ群が73%、CPS10以上のPD-L1陽性例は化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が50%、化学療法+プラセボ群が52%であった。 扁平上皮がん患者におけるOS中央値は、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が12.8ヵ月(95%CI:10.2~14.3)、化学療法+プラセボ群が9.8ヵ月(95%CI:8.6~11.1)、HR 0.72(95%CI:0.60~0.88)、p<0.0001と化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群で有意に良好だった。CPS10以上のPD-L1陽性患者におけるOS中央値は、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が13.5ヵ月(95%CI:11.1~15.6)、化学療法+プラセボ群が9.4ヵ月(95%CI:8.0~10.7)、HR 0.62(95%CI:0.49~0.78)、p<0.0001と化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群で有意に良好だった。全登録患者におけるOS中央値は、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が12.4ヵ月(95%CI:10.5~14.0)、プラセボ群が9.8ヵ月(95%CI:8.8~10.8)で、HR 0.73(95%CI:0.62~0.86)、p<0.0001と化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群で有意に良好だった。PFS中央値も、扁平上皮がん患者、CPS10以上のPD-L1陽性患者、全登録患者において、それぞれで化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が化学療法+プラセボ群と比較して有意に良好であった。奏効割合は、全登録患者において、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群が45.0%、化学療法+プラセボ群が29.3%と化学療法+ペムブロリズマブ併用療法群で有意に高かった(p<0.0001)。安全性に関しては新たな問題は認められなかった。以上の結果から、演者らは食道胃接合部腺がんを含む進行食道がんに対する初回化学療法として、化学療法とペムブロリズマブ併用療法を第1選択に考慮すべきと結論付けている。今回の試験の結果をもって、本邦でも進行食道がんの初回化学療法として免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療が標準治療となるだろう。本邦で最も頻度の高い組織型である食道扁平上皮がんに対する初回化学療法として、FP療法、FP+ニボルマブ併用療法、イピリムマブ+ニボルマブ併用療法を比較するCheckMate648試験の結果も今後報告されてくる。また、最近では、FOLFOX療法が食道がんに対して実施が認められており、オキサリプラチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用療法なども開発が進んでいくものと思われる。現在はまさに食道がん化学療法の転換期に当たるといわれ、今後の展開に期待したい。

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第27回 トランプ大統領に抗体カクテル投与 その意味と懸念

トランプ入院、世界の医療現場にも影響こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、高尾山にハイキングに行って来ました。599mの低山ですが、NHKの人気番組「ブラタモリ」でも紹介された東京有数の観光地です。たまたま先週の「ブラタモリ」は「日本の山スペシャル」で、2016年放送の高尾山の回のダイジェストを放送していたのですが、こうした番組を観ても実際に登っても、その魅力がよくわからない不思議な山です。いつもとても混んでいますが、先週も激混みで、登山道は夏の富士山並みに長い行列ができていました。印象的だったのは高齢者(60~70代)の登山者が目立っていたことです。コロナ禍で、北アルプスや南アルプス、あるいは八ヶ岳や奥秩父といった山は高齢者登山者が激減しています。勢い、日帰りで登れる高尾山などの低山の人気が高まっているようです。しかし、標高599mと言っても山は山。谷沿いの6号路などは足を踏み外すと危ない場所もあります。高齢者は山での事故率が高く、今後、高尾山での遭難や事故が増えそうで心配です。さて、今回は日本の医療現場から少し離れ、世界の医療現場にも影響を及ぼしかねない、米国のドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルス感染で受けたとされる治療法について、少し考えてみたいと思います。「コンパッショネート・ユース」で未承認の抗体医薬投与トランプ米大統領は2日未明(現地時間)にツイッターで、自分自身とメラニア夫人が新型ウイルス陽性となったことを発表。同日に、首都ワシントン郊外のウォルター・リード陸軍医療センターに入院しました。CNNなどの米メディアをはじめ、日本でも各紙がトランプ大統領の容態やホワイトハウスで発生したクラスターの状況を逐一伝え、5日の退院後も報道合戦は続いています。それらの報道を読んで気になったのは、トランプ大統領が投与されている治療薬です。10月3日付のCNNは、トランプ大統領が2日、米国のバイオテクノロジー企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Regeneron Pharmaceuticals)社が開発した未承認の抗体医薬8gの投与を受けたとホワイトハウスが公表した、と報じました。リジェネロン社も同治療薬を提供したことを確認。大統領の主治医から未承認薬の人道的使用を認める、いわゆる「コンパッショネート・ユース」の要請があったと明らかにした、とのことです。トランプ大統領の治療薬としては、その後、レムデシビル、デキサメタゾンの投与も明らかになっていますが、未承認の抗体医薬をまず使った、というところがなかなかに興味深い点です。また、大統領といえども「勝手に使わせろ」と薬の提供を求めたのではなく、米国のコンパッショネート・ユースの制度に則った点も面白いです。もっとも、米国において未承認薬のコンパッショネート・ユースが例外的に認められるのは、ほかの代替療法では効果が得られなかった場合とされており、トランプ大統領への投与を「ゴリ押しだ」との批判も上がっているようです。「血漿療法」よりも有望と判断かさて、トランプ大統領に使われたリジェネロンの抗体医薬は「REGN-COV2」という名称で開発中の薬です。2種のモノクローナル抗体を組み合わせた薬のため「Antibody Cocktail(抗体カクテル)」とも呼ばれています。ワクチンはヒトの体に抗体をつくらせて感染予防や重症化予防の効果をもたらすものですが、抗体医薬とは、抗体そのものを投与して疾患を治療するものです。同様の考え方に基づいて、新型コロナウイルス感染症から回復した患者から提供された血液から、血漿を調製して患者に投与する「回復期患者血漿療法」も、重篤な患者に対する緊急措置として米国などで行われてはいますが、現時点で明確な有効性は実証されていません。ちなみに米国では、2020年8月、新型コロナウイルス感染症の重症患者を対象に、血漿療法の緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)が降りています。メイヨー・クリニックが主導した臨床試験(非盲検)が「有効性がある可能性がある」と米食品医薬品局(FDA)が判断した結果です。しかし、これをトランプ大統領が「FDAのお墨付きを得た」「死亡率を35%低下させる」などと絶賛、その後データ解釈の誤りなども発覚し、物議を醸したこともありました。そのトランプ大統領が自ら絶賛した血漿療法ではなく、未承認の抗体医薬を選んだのはご愛嬌とも言えます。主治医チームの「血漿療法より有望」との判断が働いたためでしょう。 2つのモノクローナル抗体をカクテルに「REGN-COV2」は、回復者由来の抗体や、遺伝子操作でヒトと同様の免疫系を持つようにしたマウスにウイルスを免役して得られた抗体から、実験で新型コロナウイルスの中和に最も効果があった2つの抗体を選出し、組み合わせた薬剤だと報道されています。なお、2つの抗体をカクテルにした理由としては、ウイルス変異への対応に効果的だからのようです。同薬についてリジェネロン社は6月に臨床試験を開始。9月29日には、非入院患者275人を対象に行った臨床試験の結果を発表し、「同治療薬の安全性が確認され、ウイルスレベルの低減や症状の改善に効果があったとみられる」としています。感染前に投与する予防薬としても期待「REGN-COV2」以外にも、新型コロナウイルスの中和抗体の抗体医薬の開発は全世界で進められています。感染初期に投与して発症や重症化を防ぐ治療薬としてのみならず、ワクチンのように感染前に投与する予防薬としても期待されているようです。実際、「REGN-COV2」に先駆けて研究が進む米国イーライリリー社の抗体医薬「LY-CoV555」は、NIHの主導でナーシングホームの入所者と医療従事者を対象にした二重盲検の第III相臨床試験が進んでいます 。同試験では、主要評価項目として、新型コロナウイルスに感染した割合が設定されており、高リスクの高齢者を対象に感染を減らせるかどうかを評価するとしています。なお、「LY-CoV555」は、米国で最初にCOVID-19から回復した回復期患者の血中から抗体遺伝子をクローニングし、わずか3カ月で作成にこぎ着けた中和抗体で、こちらはカクテルではありません。高価な抗体医薬は予防的に使えるか?トランプ大統領の容態については、「快方に向かっている」との報道があった一方で、「高齢で肥満なので依然楽観できない」との見立てもありましたが、10月5日に強行退院してしまいました。医療チームにはウォルター・リード陸軍医療センターだけではなく、ジョンズ・ホプキンス大学のなど複数の医療機関の医師も入っており(医師団の記者会見ではジョンズ・ホプキンス大学の医師も話していました)、世界最高レベルの治療が行われたことは確かです。ここで気になるのは、入院初期に投与された「REGN-COV2」の役割です。仮に、抗体医薬投与が 非常に効果的だった、ということになれば、感染初期や予防的に投与する薬として大きな脚光を浴びるでしょう。しかし、抗体医薬は非常に高価なため、予防的に多くの人に投与する場合には、財政的な問題が浮上してきます。また、保険適用にならず、富裕層だけが自費で使用するという形になれば、医療格差が指摘されるかもしれません。もっとも、抗体医薬の効果の持続期間によって何度も打ち続けることになりそうで、それはそれで大変そうです。70歳以上入院時重症例の死亡率は20.8%大統領選を気にしてか、トランプ大統領の入院はわずか3泊4日でした。今後、果たして、残り少ない大統領選の最前線に立ち、合併症なくあの独特の弁舌を復活させることができるでしょうか。ちなみに、日本の国立国際医療研究センター・国際感染症センターの研究グループは9月30日、新型コロナウイルス感染症で入院した患者の死亡率を、2020年6月5日までの第1波の入院症例と、治療法が固まってきた2020年6月6日以降の第2波の入院症例に分けて公表しました。それによると、トランプ大統領が当てはまる、6月6日以降の「70歳以上入院時重症例(入院時酸素投与、SpO2 94%以下に該当と仮定)」の死亡率は20.8%です。これはそこそこ高い数字です。高齢者登山と同様、タフなトランプ大統領といえども、楽観は禁物でしょう。

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CAR-T細胞製剤liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫でCR53%/Lancet

 CD19を標的とする自家キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)製剤lisocabtagene maraleucel(liso-cel)は、さまざまな組織学的サブタイプや高リスクの病型を含む再発・難治性の大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療において、高い客観的奏効率をもたらし、重度のサイトカイン放出症候群や神経学的イベントの発生率は低いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJeremy S. Abramson氏らが行った「TRANSCEND NHL 001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年9月19日号に掲載された。liso-celは、さまざまなサブタイプの再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で高い奏効率と持続的な寛解が報告されているが、高齢者や併存疾患を持つ患者、中枢神経リンパ腫などの高リスク集団のデータは十分でないという。シームレス・デザインの多コホート試験で安全性と有効性を評価 本研究は、米国の14のがんセンターが参加したシームレス・デザイン(seamless design)の多コホート試験であり、2016年1月11日~2019年7月5日の期間に、個々の患者のCAR+T細胞を作製するための白血球アフェレーシスが実施された(Juno TherapeuticsとBristol-Myers Squibbの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で、組織学的サブタイプとして、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、MYCおよびBCL2とBCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞性リンパ腫(double-hitまたはtriple-hitリンパ腫)、インドレントリンパ腫から形質転換したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、Grade3Bの濾胞性リンパ腫が含まれた。 liso-celは、2つの組成(CD8+CAR+T細胞、CD4+CAR+T細胞)として連続的に投与され、被験者は4つの用量(50×106 CAR+T細胞[レベル1]、50×106 CAR+T細胞を2回[レベル1D]、100×106 CAR+T細胞[レベル2]、150×106 CAR+T細胞[レベル3])のうち1つを投与する群に割り付けられた。 主要エンドポイントは、有害事象、用量制限毒性、客観的奏効率(Lugano基準で評価)とした。有効性の評価は、PETで確定され1回以上のliso-celの投与を受けたすべての患者を対象に、独立判定委員会によって行われた。客観的奏効率73%、完全奏効率53% 344例がCAR+T細胞(liso-cel)を作製するための白血球アフェレーシスを受け、このうち269例が少なくとも1回のliso-celの投与を受けた。レベル1に45例、レベル1Dに6例、レベル2に177例、レベル3に41例が割り付けられた。 全体の年齢中央値は63歳(IQR:54~70、範囲:18~86)、112例(42%)が65歳以上で、男性が65%であった。全身療法の前治療レジメン数中央値は3(IQR:2~4、範囲:1~8)で、260例(97%)が2ライン以上を受けていた。また、181例(67%)が化学療法抵抗性で、2次性中枢神経リンパ腫が7例(3%)含まれた。119例(44%)は、前治療で一度も完全奏効を達成していなかった。 白血球アフェレーシスを受けた344例のフォローアップ期間中央値は18.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.0~19.3)であった。全体として、liso-celの安全性と抗腫瘍活性には用量による差はなく、推奨至適用量は100×106 CAR+T細胞(50×106 CD8+CAR+T細胞、50×106 CD4+CAR+T細胞)であった。 有効性の評価は256例で行われた。このうち、客観的奏効は186例(73%、95%CI:66.8~78.0)で得られ、136例(53%、46.8~59.4)で完全奏効が達成された。 頻度の高いGrade3以上の有害事象として、好中球減少が161例(60%)、貧血が101例(37%)、血小板減少が72例(27%)に認められた。また、サイトカイン放出症候群は113例(42%)、神経学的イベントは80例(30%)で発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ6例(2%)および27例(10%)であった。用量制限毒性は9例(6%)でみられ、このうち1例(50×106 CAR+T細胞)がびまん性肺胞傷害によって死亡した。最大耐用量は特定されなかった。 著者は、「これらのデータは、65歳以上の高齢者や中等度の併存疾患を有するさまざまなサブタイプの高リスク大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療におけるCAR-T細胞療法の使用を支持するものである。現在、初回再発時の大細胞型B細胞性リンパ腫や他の再発・難治性のB細胞性腫瘍における評価が進められている」としている。

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胃がんのニボルマブ+化学療法1次治療、PFS改善(ATTRACTION-4)/ESMO2020

 国立がん研究センター中央病院消化管内科の朴 成和氏は、HER2陰性(HER2-)で未治療の切除不能な進行・再発の胃・胃食道接合部がん患者を対象としたニボルマブ+化学療法併用群(ニボルマブ併用療法群)とプラセボ+化学療法群(化学療法群)を比較した第II/III相臨床試験であるATTRACTION-4試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。ニボルマブ併用により無増悪生存期間(PFS)は統計学的に有意な延長を認めたものの、全生存期間(OS)では統計学的に有意な延長は認めなかったと報告した。ATTRACTION-4試験から、ニボルマブ併用が胃がん1次治療の新たな選択肢に・対象:未治療のHER2-進行・再発胃・食道胃接合部がん(PS 0~1)724例・試験群:ニボルマブ360mg/日3週ごと+化学療法はSOX(S-1+オキサリプラチン3週ごと)あるいはCapeOX(カペシタビン+オキサリプラチン3週ごと)(ニボルマブ併用群、362例)・対照群:プラセボ+SOXあるいはCapeOX(化学療法群、362例)・評価項目:[主要評価項目]独立画像判定委員会の判定に基づく無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]研究者の判定に基づくPFS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、最良奏効率(BOR)、安全性 ATTRACTION-4試験の主な結果は以下のとおり。・中間解析での独立画像判定委員会の判定に基づくPFS中央値は、ニボルマブ併用群が10.45ヵ月、化学療法群が8.34ヵ月で、ニボルマブ併用群において統計学的に有意な延長を示した(HR:0.68、98.51%CI:0.51~0.90、p=0.0007)。・1年PFS率はニボルマブ併用療法群が45.4%、化学療法群が30.6%であった。・OS中央値は、ニボルマブ併用療法群が17.45ヵ月、化学療法群が17.15ヵ月で両群間で統計学的に有意な差は認められなかった(HR:0.90、95%CI:0.7~1.08、p=0.257)。・ORRはニボルマブ併用療法群が57.5%、化学療法群が47.8%であった(p=0.0088)。・DoR中央値はニボルマブ併用療法群が12.91ヵ月、化学療法群が8.67ヵ月であった。・DCRはニボルマブ併用療法群が71.8%、化学療法群が68.5%であった。・TTRは両群とも1.4ヵ月であった。・Grade3~4の治療関連有害事象の発現率はニボルマブ併用療法群が57.1%、化学療法群が48.6%であった。 朴氏はATTRACTION-4試験ではOSの有意差は示せなかったものの、ORRはニボルマブ併用療法群で高率であり、持続性のある奏効状態が認められ、かつ安全性は管理可能なレベルだったと指摘。化学療法でのニボルマブ併用は「未治療の切除不能な進行・再発胃がん・食道胃接合部がんの一次治療での新たな選択肢となりうる」との見解を示した。

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慣れない環境で仕事と臨床研究を並行することにした理由【臨床留学通信 from NY】第13回

第13回:慣れない環境で仕事と臨床研究を並行することにした理由1年目のインターン期間は、そもそも異国で医療をするということや、日本とは大きく異なる医療や教育の仕組みを学び、かつ英語力もある程度のレベルまでは自然と身に付くという点ではエキサイティングですが、日本ではアテンディング(指導医)だった立場からレジデントに逆戻りすることで、雑務も多く、仕事だけに充実感を求めるのは難しいことは当初からわかっていました。そのため、レジデントとしての仕事はきちんとしつつも、空き時間には積極的に臨床研究をしようと、渡米する段階から決めていました。それができることも、渡米の理由の1つでした。幸いにも、日本にいた間に多くの先生方に師事し、大学病院でなくとも臨床研究を学ぶ機会をいただいたので、まずはそれを継続しました。一方で、勤務先は大学病院ではなく大学関連病院のため、大きなデータベースがないことは事前に知っていたので、メタ解析の方法を勉強して臨床研究を続ける作戦としました。なかなか思い描くようにいかないこともありましたが、前回のコラムでご紹介した高木 寿人先生の指導で、何とか1つずつ論文化を進めていくうちに、だんだん軌道に乗ってきました。もちろんオリジナル研究には及ばない点が多くありますが、メタ解析による臨床研究は、コストが掛からず環境にも左右されない上、地道な論文作業からは確実に学びがあります。米国では、どんな環境でも、early careerであっても、論文を書いて発表する機会を得られるのが大きなメリットだと思います1)。もちろん、論文作成そのものが世の中のためになる、という漠然としたものだけではなく、ひいては自身のキャリア形成や、フェローシップのアプライなど含め、外国人として米国でいかにポジションを獲得し続けるかという点でも重要になります。また、リサーチをしつつ学会発表を数多くできるのも留学の利点です。現在はコロナの影響でなかなか難しくなりましたが、プログラム側も1つの学会につき800ドルを支給してくれるため、循環器の主要な学会であるAHA・ACC・TCTなどにも気軽に参加できるため、それを目標に研究を進めるのも楽しみでありました。地道な頑張りは、プログラムにおける日本人の評価の向上につながります。その積み重ねが、日本から留学してきた後進の採用にもつながると思います2)。そうした願いも込めて、気を引き締めて仕事と研究に一層取り組んでいきたいと思っています。 参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=toshiki+kuno+hiroki+ueyama&sort=date&size=1002)https://twitter.com/MSBI_IMColumnこちらニューヨークは日本と同様に秋や春がありますが、あっという間に寒くなります。今年もインフルエンザワクチンを接種する季節になってきました。我々のグループからは、インフルエンザのシーズンではなかった3~5月のCOVID-19パンデミック中のインフルエンザの共感染率は0.3%と極めて低かったのですが1)、逆にシーズン中だと共感染する割合が高いというデータもあり2)、冬に備える必要があります。もちろん最初にCOVID-19と対峙した頃は、類似症状もあったため、盲目的にインフルエンザのテストをせざるを得なかったのですが、陽性率が低いことが病院として、また経験として蓄積されていくにつれ、次第に検査をしなくなっていった経緯があります。1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32910466/2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7250072/pdf/main.pdf

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第28回 新型コロナウイルスのまたぞろ悪知恵、はたまたご利益?~鎮痛作用を発見

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の手の内はまだまだ出尽くしていないようで、またもや思ってもみない奥の手・鎮痛作用を米国アリゾナ大学のRajesh Khanna氏率いるチームが発見し、その仕組みを明らかにしました1,2)。すでに広く知られているようにSARS-CoV-2は手持ちのスパイクタンパク質とヒト細胞膜のACE2受容体の連結を介して感染を確立します。biorxivに最近掲載された2つの査読前報告3,4)でスパイクタンパク質は別の受容体・ニューロピリン1(NRP1)の細胞外領域b1b2にも結合し、その結合も細胞感染を助けていると示唆されました。NRP1のb1b2領域は生来のリガンド・VEGF-Aの結合領域でもあります。VEGF-AがNRP1に結合して生じる信号伝達は神経を過度に興奮させて、痛みを誘発します。アリゾナ大学チームの今回の研究の結果、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質はそのVEGF-A信号伝達を遮断し、VEGF-Aによる痛みをすっかり解消することがラット実験で確認されました。がん治療を目的に開発されたb1b2領域遮断化合物EG002295)もスパイクタンパク質と同様の鎮痛作用があることも示され、さらに研究を進めれば、乱用が問題となっているオピオイドに代わるNRP1標的鎮痛薬を生み出せそうです。アリゾナ大学のチームは天然成分を起源とするNRP1標的鎮痛薬の設計にすでに取り組んでいます1)。米国疾病管理センター(CDC)の先月9月10日時点の情報では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の40%は無症状で、発症前の元気な人が感染の半分(50%)を広めていると推定されています6)。SARS-CoV-2に感染しても具合いが悪くならず平気なことに今回判明したスパイクタンパク質の鎮痛作用がもしかすると寄与しているかもしれません1)。参考1)Pain relief caused by SARS-CoV-2 infection may help explain COVID-19 spread / Eurekalert2)Moutal A, et al. Pain. 2020 Oct 1. [Epub ahead of print]3)Neuropilin-1 facilitates SARS-CoV-2 cell entry and provides a possible pathway into the central nervous system. bioRxiv.(最新版;July 15, 2020)4)Neuropilin-1 is a host factor for SARS-CoV-2 infection. bioRxiv. June 05, 20205)Jarvis A, et al. J Med Chem. 2010 Mar 11;53:2215-26.6)COVID-19 Pandemic Planning Scenarios / CDC

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職場における不眠症介入~メタ解析

 スペイン・セビリア大学のJuan Vega-Escano氏らは、従業員の不眠症の改善または軽減に対する介入の影響を特定および評価するため、ランダム化臨床試験を通じたシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年9月2日号の報告。 PRISMAおよびMARSステートメントの推奨事項に従って、PubMed、Web of Science、CINHAL、PsycINFOのデータベースよりシステマティックに文献を検索した。アウトカムの尺度として、変量効果モデルと不眠症重症度指数を用い、メタ解析を実施した。バイアスリスクとエビデンスの質の評価には、コクラン共同計画ツールとGRADEシステムをそれぞれ用いた。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューで22件の研究が抽出され、メタ解析には12件を用いた。・従業員のサンプル数は827例で、14の介入グループを作成した。・最も用いられていた介入は、認知行動療法であった。・平均間の推定差では、介入は不眠症状軽減に対する中程度の効果が認められ(MD:-2.08、95%CI:-2.68~-1.47)、不均一性の程度に有意な差は認められなかった(p=0.64、I2=0%)。・エビデンスの質とバイアスリスクは、中程度であった。 著者らは「職場における不眠症への介入は、従業員の健康を改善するのに効果的である。週間の睡眠時間の増加や入眠潜時の短縮は、睡眠の質を改善し、不眠症状を軽減させる可能性が示唆された。仕事面では、生産性向上、プレゼンティズムの改善、燃え尽き症候群の対策につながるであろう」としている。

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週1回の基礎インスリン、1日1回と同等の血糖降下作用/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、insulin icodecの週1回投与は、インスリン グラルギンU100の1日1回投与と同程度の血糖降下作用を発揮し、安全性プロファイルは同等で低血糖の頻度も低いことが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行った「NN1436-4383試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月22日号に掲載された。基礎インスリン注射の回数を減らすことで、2型糖尿病患者の治療の受容やアドヒアランスが改善される可能性があると考えられている。insulin icodecは、糖尿病治療のために開発が進められている週1回投与の基礎インスリンアナログ製剤で、最高濃度到達時間は16時間、半減期は約1週間とされる。週1回と1日1回を比較する実薬対照無作為化第II相試験 本研究は、insulin icodecの週1回投与と、インスリン グラルギンU100の1日1回投与の有効性と安全性を比較する26週間の二重盲検ダブルダミー実薬対照無作為化第II相試験である(Novo Nordiskの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、長期のインスリン治療歴がなく、スクリーニングの180日以上前に2型糖尿病の診断を受け、DPP-4阻害薬投与の有無を問わず安定用量のメトホルミン毎日投与を受けており、糖化ヘモグロビン値が7.0~9.5%の患者であった。 被験者は、insulin icodecを70U/週で投与開始する群(icodec群)またはインスリン グラルギンU100を10U/日で投与開始する群(グラルギン群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。無作為割り付け後は、朝食前の患者の自己測定による血糖値70~108mg/dL(3.9~6.0mmol/L)を目標に、毎週、用量の調整が行われた。 主要エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値のベースラインから26週までの変化とした。安全性エンドポイントは、低血糖エピソードやインスリン関連有害事象などであった。糖化ヘモグロビン値<7%達成割合:72% vs.68% 247例が登録され、icodec群に125例、グラルギン群には122例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均年齢は59.6±8.9歳、男性が56.3%であった。平均糖尿病罹患期間は9.7±7.4年、平均BMIは31.3±4.6で、46.6%がDPP-4阻害薬の投与を受けていた。 糖化ヘモグロビン値のベースラインから26週までの推定平均変化率は、icodec群が-1.33ポイント、グラルギン群は-1.15ポイントで、icodec群は8.09±0.70%から6.69%へ、グラルギン群は7.96±0.65%から6.87%へと低下した。ベースラインからの変化の群間差は-0.18ポイントであった(95%信頼区間[CI]:-0.38~0.02、p=0.08)。 26週の時点で糖化ヘモグロビン値<7%を達成した患者の割合は、icodec群が72%、グラルギン群は68%であり(推定オッズ比:1.20、95%CI:0.98~2.13)、≦6.5%達成割合はそれぞれ49%および39%だった(1.47、0.85~2.52)。 患者の自己測定による血糖値は、9つの測定時点(朝食後、昼食後、夕食後、就寝時など)のすべてでicodec群がグラルギン群よりも低かった。また、icodec群では、9つの測定時点の平均自己測定血糖値のベースラインから26週までの低下が大きく、治療期間の最後の2週間における厳格な血糖値範囲(70~140mg/dL)内を維持する時間が長かった。空腹時血漿血糖値や体重の変化は両群間で差はなかった。 有害事象は、icodec群52.0%、グラルギン群50.8%で発現した。インスリン関連の主な有害事象の頻度に群間差はなく、過敏症(icodec群1例[0.8%] vs.グラルギン群2例[1.6%])や注射部位反応(5例[4.0%] vs.3例[2.5%])の頻度は低かった。ほとんどの有害事象は軽度で、試験薬関連と判定された重篤な有害事象は認められなかった。また、レベル2(血糖値<54mg/dL)およびレベル3(重度の認知機能障害を伴う)の低血糖の発現率は両群ともに低く、icodec群は0.53件/人年、グラルギン群は0.46件/人年であった(推定率比:1.09、95%CI:0.45~2.65)。 著者は、「これらの知見は、週1回インスリン投与はインスリン管理を容易にし、臨床的有益性をもたらすとともに、年間インスリン注射回数の365回から52回への削減を示唆する」としている。

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9日から開催の日本乳癌学会学術総会、注目トピック

 COVID-19感染拡大の影響により延期されていた第28回日本乳癌学会学術総会が、10月9日(金)~31日(土)にWEB開催される。9月17日にプレスセミナーが開催され、総会会長を務める岩田 広治氏(愛知県がんセンター 副院長・乳腺科部長)、事務局長を務める澤木 正孝氏(同乳腺科医長)らが見どころについて紹介した。第28回日本乳癌学会学術総会開催スケジュール10月9日(金)~31日(土) 完全WEB開催(共催セミナーのほか、パネルディスカッションや教育講演のオンデマンド配信などが期間を通じて閲覧可能)10月9日(金)~18日(日) LIVE配信10月13日(火)~15日(木) 厳選口演(LIVE)日本乳癌学会学術総会厳選口演の注目トピック 第28回日本乳癌学会学術総会の厳選口演では、応募総数1,938演題の中から採用された51題(2.6%)が発表される。それぞれLIVE配信後に、後日オンデマンド配信が行われる予定。澤木氏は、全13セッションの注目トピックについて解説した。ここでは、外科/薬物/放射線療法の各トピックを抜粋して紹介する。・厳選口演1:外科療法[10月13日(火)9:30~10:30] 全乳房切除から部分切除、腋窩郭清からセンチネルリンパ節生検へとさらなる手術縮小を目指した研究成果が発表予定。・厳選口演2:オンコプラスティックサージェリー・乳房再建[10月13日(火)11:00~11:45] 両側同時再建、部分再建、内視鏡手術での再建の工夫やNSMの新たな適応基準など。・厳選口演6:薬物療法1[10月14日(水)9:30~10:45] 進行乳がんに対するwPTX+BV導入療法後のホルモン維持療法の有用性(JBCRG BOOSTER試験) 転移再発乳癌におけるパクリタキセル+ベバシズマブ導入化学療法後のホルモン療法+カペシタビン併用維持療法 乳癌周術期化学療法時の脱毛軽減目的での頭皮冷却後の毛髪回復状況を調べた前向き研究結果・厳選口演7:薬物療法2[10月14日(水)11:00~12:00] HER2陽性転移性乳癌におけるT-DM1治療直後の薬物療法の有効性:KBCSG-TR1917観察研究 転移性HER2陽性乳癌に対するT-DM1後の治療の臨床効果に関する多施設共同コホート研究(WJOG12519B) HER2陽性進行乳癌患者を対象としたDS-8201のfirst-in-human第1相試験及び第2相試験(DESTINY-Breast01)における併合解析及び日本人サブセット解析・厳選口演8:薬物療法3[10月14日(水)13:00~13:45] ホルモン受容体陽性乳癌の術後内分泌療法におけるS-1の併用効果(POTENT試験) Pembrolizumab+Chemotherapy vs Chemotherapy in Metastatic TNBC:KEYNOTE-355 Japanese Subgroup Data NTRK fusion陽性乳がんにおけるエヌトレクチニブ:3つの国際共同第1/2相試験の統合解析・厳選口演13:放射線療法[10月15日(木)14:15~15:30] 本邦乳癌患者に対する小線源を用いた乳房部分照射における観察期間中央値5年の治療成績と再発形式の特徴 早期乳癌に対する乳房温存手術+術中放射線部分照射:10年の結果 早期乳癌に対する炭素イオン線治療の臨床試験の経過乳癌学会で今年のESMOでの発表を徹底議論 第28回日本乳癌学会学術総会では10月12日(月)16:00~18:00に、9月に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)での乳がん領域の注目トピックについて議論する緊急特別企画がLIVE配信される(後日オンデマンド配信予定)。・セッション1 1)Impassion 131:TN 1st line, PD-L1+でAtezo+Nab paclitaxelのfinal OS 2)Impassion 130:TN 1st lineでAtezo+weekly Pがnegative data 3)ASCENT study:TN late lineで、Satizumab govitecan(SG)のP3 dataの発表・セッション2 4)Impassion 031:TN neoadjuvantで、Atezoを加えて、pCRが有意にアップ 5)PALLAS study:Palboのadjuvant study negative data 6)MONARCH E study:Abemaのadjuvant positive data乳癌学会学術総会はWEB上で“直接議論できる場”複数 本来、乳癌学会学術総会はAichi Sky Expoにおいて7月に開催予定であった。医師だけでなく、患者さんも含め全員で最新情報を共有・議論したいという意図から、通常のようにいくつもの会場を設けず、「2つのメイン会場を中心に、できるだけ仕切りを設けず、広い場所のいたるところで人が集まり議論をするというイメージで計画していた」と岩田氏。完全WEB開催となったが、その利点を生かして、演者や海外の先生方と直接議論・交流ができるような場がいくつか設けられている。・Meet the Expert[10月14日(水)、15日(木)8:00~9:00、16:00~17:00] 7名の先生と学会参加者が少人数で直接交流できる。※9月23日より若干名の追加登録開始。締切の可能性あり。・ポスターツアー[10月14日(水)、15日(木)9:00~11:00] 68名の先生が“ツアーコンダクター”となり、各6演題を厳選し、参加者とともにポスターの閲覧・演者との議論を行う初の企画。※9月23日より若干名の追加登録開始。締切の可能性あり。・オフ会(ZOOMで飲み会)[10月12日(月)~15日(木)20:30~22:00] 岩田会長は毎日参加予定。MC数名は毎日交代で行われる。第28回日本乳癌学会学術総会

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胃バイパス術による2型糖尿病改善効果はほとんどすべてが体重減少で説明できる(解説:住谷哲氏)-1291

 肥満外科手術bariatric surgeryが肥満合併2型糖尿病患者の糖代謝異常を大幅に改善することが明らかとなっている。肥満外科手術の術式には、本試験で用いられた胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass surgery)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)が代表的であるが、わが国で保険適用となっているのは後者のみであり、主としてこちらの術式が用いられている。これまでの報告で、腸管の連続性intestinal continuityを解除する胃バイパス術が他の術式に比べて糖代謝異常改善効果が高いことが示唆されていたが、統計解析上交絡因子が十分に調整されていないとの批判があり疑問が持たれていた。本試験はその点を明らかにするため、胃バイパス術群と食事療法群との2群において、体重減少の程度(約18%)をマッチさせたうえで、前後における種々の糖代謝パラメータを詳細に比較検討した非ランダム化前向きコホート試験である。 試験に組み込まれたのは体重120kg、BMI 42kg/m2の著明な肥満合併2型糖尿病患者である。そもそもこのような患者において食事療法のみで20%近い体重減少が可能であるのか筆者には疑問であった。論文の方法には、「食事療法についての週1回の教育セッションを実施し、すべての食事はliquid shakes and prepackaged entreesで試験期間中提供された」と記載されていた。これでは摂取カロリーが不明であるが、Supplementを見ると、提供されたのは毎食OPTIFAST HP Shake Mix(160kcal)およびprepackaged entrees (200kcal)であり、1日1,080kcalであった。食事療法群が目標体重を達成したのは平均23週後であった。 主要評価項目は肝インスリン感受性の変化とされた。体重減少の前後で、オクトレオチド併用高インスリン正常血糖クランプ法を用いた詳細な肝、骨格筋でのインスリン感受性評価ならびに膵β細胞機能が評価された。結果は、体重減少量をマッチさせた両群において、評価したすべての項目に有意差を認めなかった。胃バイパス術における、体重減少とは独立した糖代謝改善メカニズムとして、これまで血漿分枝鎖アミノ酸濃度の減少、血中胆汁酸の上昇、腸内細菌叢の変化が提唱されている。本試験においてもこれらの3項目はすべて既報と同様の変化を示したが、両群での糖代謝改善の程度に差は認めなかった。以上から著者らは、胃バイパス術による糖代謝改善効果はほとんどすべて体重減少によるものであると結論している。 筆者の外来でもbariatric surgeryを受けた患者さんが増えてきている。ほとんどは著明な体重減少と2型糖尿病の改善を認めており、その威力を実感している。しかしこれまでにも指摘されていることであるが、手術を受けるまでには厳格な食事療法および心理的サポートが必須であり、手術にたどり着けない患者さんも少なくない。本試験で示された、BMI 42kg/m2の患者さんでも、摂取カロリーを制限することで体重が20%近く減量可能であった結果を肝に銘じておきたい。

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新規抗体薬物複合体SG、尿路上皮がんに有望(TROPHY-U-01)/ESMO2020

 プラチナ系抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療歴を有する転移のある尿路上皮がんに対する新規抗体薬物複合体Sacituzumab Govitecan(SG)の有用性は、昨年のESMO2019で中間解析結果が発表されている(35例での奏効率は29%)。今回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、その最終解析結果が、フランス・Institut de Cancerologie Gustave RoussyのYohann Loriot氏より報告された。 このSGは、多くの固形腫瘍の細胞表面に発現するタンパクTrop-2を標的としており、ヒト化抗Trop-2モノクローナル抗体とイリノテカン系抗がん剤の抗体薬物複合体(ADC)である。TROPHY-U-01試験は、複数のコホートからなるオープンラベルの第II相試験であり、今回はそのコホート1集団の発表である。・対象:プラチナ系抗がん剤とICI既治療(治療ライン数は問わず)の転移のある尿路上皮がん(mUC)患者、PSは0~1・試験群:SG 10mg/kgをday1、8、3週ごと[主要評価項目]中央判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・今回の最終解析の対象は、113例(ITT)。年齢中央値は66歳で75歳以上は23%、内臓転移有りは62%(肝転移は28%)だった。・前治療ライン数の中央値は3.0だった。・データカットオフ2020年5月、追跡期間中央値6.3ヵ月の時点で、治療継続症例は16例(14%)だった。・ORRは27%で、CR 5%、PR 22%であった。これは、試験設計時の統計学的なORR閾値12%を上回っていた。・DOR中央値は5.9ヵ月であった。・PFS中央値は5.4ヵ月、OS中央値は10.5ヵ月であった。・主な治療関連有害事象(TRAE)は、下痢:65%(Grade3は9%、4は1%)悪心:58%(同4%、0%)、好中球減少症:46%(同22%、12%)、倦怠感:50%(同4%、0%)、脱毛:47%(同0%、0%)、発熱性好中球減少症:10%(同7%、3%)などであった。・TRAEによる治療中止は6%で、原因は好中球減少症などであった。治療関連死は発熱性好中球減少による敗血症の1例だった。 SGは、米国FDAによりmUCにおけるファストトラック指定を受けており、トリプルネガティブ乳がんでは迅速承認を取得している。現在、mUCを対象とした第III相試験TROPiCS-04(NCT04527991)が進行中である。

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新型コロナ、唾液PCR検査の感度9割を実証/北海道大

 北海道大学大学院医学研究院の豊嶋 崇徳教授ら研究グループは、9月29日の記者会見で、新型コロナウイルスのPCR検査について、約2,000例の症例で唾液と鼻咽頭スワブの診断精度を比較した結果、いずれも感度は約90%、特異度は両者とも99.9%だったと発表した。PCR検査を巡っては、唾液による検査が簡便かつ医療従事者の感染リスク防止の観点で有用と考えらえるが、感度は未知数であり、鼻咽頭スワブでも70%程度と見られていた。今回の結果は、従来の見立てを大きく上回り、PCR検査の信頼性を裏付ける形となった。研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年9月25日号に掲載された。 本研究では、国際便での空港検疫および保健所での濃厚接触者で、無症状の1,924例について、唾液および鼻咽頭スワブを採取し、PCR検査を実施した。その結果、陽性例が唾液で48例、鼻咽頭スワブで46例確認され、感度は唾液で92%(95%信頼区間[CI]:83~97%)、鼻咽頭スワブで86%(95%CI:77~93%)、特異度は両者共に99.9%超であった。また、陽性例のウイルス量は両者で同等に検出されたという。 研究グループは、従来不明瞭であったPCR検査の精度が、唾液と鼻咽頭スワブいずれも高い信頼性に基づくものであることが本結果により実証されたと同時に、鼻咽頭スワブの採取よりも安全かつ簡便で、採取者の感染リスクや被採取者の不快感も少ない自己唾液採取が、スクリーニング検査の標準法として推奨できると結論付けている。

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オラパリブ、去勢抵抗性前立腺がんでOS延長(PROfound)/NEJM

 3つの遺伝子(BRCA1、BRCA2、ATM)のうち1つ以上に変異のある転移のある去勢抵抗性前立腺がん男性において、PARP阻害薬オラパリブは、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneに比べ全生存(OS)期間を有意に延長し、2回目の病勢進行(PD)までの期間も長いことが、米国・ノースウェスタン大学のMaha Hussain氏らが実施した「PROfound試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月20日号に掲載された。本試験の主解析では、オラパリブは主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、進行および死亡のリスクを66%低減したと報告されている(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.001)。この時点では、主な副次評価項目の1つであるOSのデータは不十分であり、フォローアップが継続されていた。2つのコホートのOSの結果を報告 本研究は、非盲検無作為化第III相試験(AstraZenecaとMerck Sharp & Dohmeの助成による)で、対象は、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneによる治療中に病勢が進行した転移のある去勢抵抗性前立腺がんの男性で、事前に規定された15の遺伝子のうち1つ以上に変異がみられる患者387例であった。これらの患者は、BRCA1、BRCA2、ATMの3つの遺伝子のうち1つ以上に変異のある患者245例(コホートA)と、その他の12遺伝子の1つ以上に変異を有する患者142例(コホートB)に分けられた。 被験者は、オラパリブ(300mg、1日2回)の投与を受ける群(256例)または担当医選択薬(エンザルタミド[160mg、1日1回]またはアビラテロン[1,000mg、1日1回]+prednisone[5mg、1日2回])の投与を受ける群(131例、対照群)に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。一定の基準を満たし、画像検査で病勢の進行が認められた対照群の患者は、オラパリブへのクロスオーバーが許容された。 主要評価項目と他の主な副次評価項目はすでに報告済みで、今回はOSの結果が示された。66%がクロスオーバーしたが、コホートAでOSが有意に延長 対照群の66%(86/131例)がオラパリブにクロスオーバーした。 コホートAのOS期間中央値は、オラパリブ群が19.1ヵ月と、対照群の14.7ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.69、95%CI:0.50~0.97、p=0.02)。クロスオーバーで補正後のOS期間のHRは、0.42(95%CI:0.19~0.91)であった。 また、コホートBのOS期間中央値は、オラパリブ群が14.1ヵ月、対照群は11.5ヵ月であり、両群間に有意な差はなかった(HR:0.96、95%CI:0.63~1.49)。クロスオーバー補正後OS期間のHRは0.83(95%CI:0.11~5.98)だった。 コホートAとBを合わせた全体で、64%(248/387例)が死亡し、OS期間中央値はオラパリブ群が17.3ヵ月、対照群は14.0ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.61~1.03)。クロスオーバー補正後OS期間のHRは0.55(95%CI:0.29~1.06)。 コホートAのサブグループ解析では、タキサン系薬剤による治療歴のある患者は、オラパリブ群でOSが良好であり(HR:0.56、95%CI:0.38~0.84)、治療歴のない患者では差がなかった(1.03、0.57~1.92)。探索的解析では、BRCA1のみの変異を有する患者のOSのHRは0.42(95%CI:0.12~1.53)で、BRCA2変異のみの患者は0.59(037~0.95)であり、BRCA以外の遺伝子変異の患者は0.95(0.68~1.34)だった。 コホートAにおける担当医判定による2回目のPDまたは死亡までの期間は、オラパリブ群が15.5ヵ月と、対照群の10.6ヵ月よりも長く(HR:0.64、95%CI:0.45~0.93)、コホートBではそれぞれ9.9ヵ月および7.9ヵ月と差がなかったが(0.77、0.50~1.21)、全体では13.4ヵ月および9.7ヵ月であり、オラパリブ群で延長した(0.68、0.51~0.90)。 主解析のフォローアップ期間と比較して、その後の長期のフォローアップ期間に、新たな安全性シグナル(safety signal)は観察されなかった。オラパリブ群とオラパリブへクロスオーバーした患者で頻度の高い治療関連有害事象は、貧血(39%)、悪心(36%)、疲労/無力症(32%)であり、オラパリブによる貧血で治療を中止した患者は7%、好中球減少、血小板減少、悪心、嘔吐、疲労/無力症で治療中止となった患者はそれぞれ1%だった。オラパリブ群で10例(4%)、対照群で6例(5%)、オラパリブへのクロスオーバー群で3例(4%)が有害事象によって死亡し、このうち2例(オラパリブ群と対照群で1例ずつ)が治療関連死と判定された。 著者は、「これらの知見は、同じ患者集団で、オラパリブ群は対照群に比べ画像検査に基づくPFS期間が有意に延長したとの主解析の結果を支持するものである」としている。

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ALK陽性肺がん、ロルラチニブの1次治療が有効性示す、とくに脳転移(CROWN試験)/ESMO2020

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてロルラチニブとクリゾチニブを比較する多施設非盲検無作為化第III相CROWN試験の中間解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)にて、オーストラリア・Peter MacCallumがんセンターのB. Solomon氏により発表された。・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mgx2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性CROWN試験の結果はALK陽性非小細胞肺がんでのロルラチニブ使用を支持するもの CROWN試験の中間解析の主な結果は以下のとおり。・対象患者296例は、無作為にロルラチニブ群(n=149)とクリゾチニブ群 (n=147)に割り付けられた。・BICR評価のPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.1ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に延長された(HR:0.28、95%CI:0.19〜0.41、p<0.001)。12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・治験担当医によるPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.3ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に改善された(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.31、p<0.001)12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・OSは両群とも中央値未達であった。・BICR評価のORは、ロルラチニブ群76%、クリゾチニブ群58%であった。・BICR評価のIC-ORは、ロルラチニブ群66%、クリゾチニブ群20%、測定可能病変だけ見るとロルラチニブ群71%、クリゾチニブ群8%と、その差はさらに大きかった。・Grade3/4の有害事象(AE)は、ロルラチニブ群では72%、クリゾチニブ群56%であった。そのうちロルラチニブ群で最も頻度の高かった項目は脂質異常であった。AEのため中止に至った割合はロルラチニブ群7%、クリゾチニブ群9%であった。 Solomon氏は、CROWN試験の結果は、ALK陽性非小細胞肺がん1次治療でのロルラチニブ使用を支持するものであると述べた。

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乳がんアジュバント、アベマシクリブ+内分泌療法が予後改善(monarchE)/ESMO2020

 再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がんに対する術後療法としての、アベマシクリブと内分泌療法薬の併用は、内分泌療法薬単独よりも、有意に無浸潤疾患生存期間(iDFS)を延長することが示された。日本も参加した、この国際共同のオープンラベル第III相monarchE試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、英国・The Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. D. Johnson氏より発表され、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月20日号に同時掲載された。追跡期間中央値15.5ヵ月でのアベマシクリブの2年間投与が終了している症例が12.5%で、70%以上が投与中という状況での中間解析。monarchE試験でアベマシクリブ群の優位性を確認・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容・試験群:標準的内分泌療法+アベマシクリブ150mg×2/日投与。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ群:2,808例)・対照群:標準的な術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)を5年間以上施行(ET群:2,829例)・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態 アベマシクリブと内分泌療法薬の併用を内分泌療法薬単独と比較したmonarchE試験の主な結果は以下のとおり。・選択された内分泌療法薬は、タモキシフェンが30%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が7~8%)、アロマターゼ阻害薬が68%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が14~15%)であった。・iDFSのハザード比(HR)は0.747(95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)、p=0.0096でアベマシクリブ群が有意に予後を延長していた。2年iDFSは、アベマシクリブ群92.2%、ET群88.7%であった。事前に規定されたすべてのサブグループ解析でも、アベマシクリブ群で優位性が確認された。・DRFSのHRは0.717(95%CI:0.559~0.920)、p=0.0085でアベマシクリブ群が有意に予後を改善していた。2年DRFSは、アベマシクリブ群93.6%、ET群90.3%であった。・アベマシクリブ群では有害事象のため16.6%がアベマシクリブの投与を中止し、ET群での薬剤投与中止は0.8%だった(アベマシクリブ群での下痢による投与中止は4.8%)。・アベマシクリブ群で倦怠感、下痢、好中球減少、悪心などが多く発現し、関節痛やほてりはアベマシクリブ群で少なかったが、その安全性プロファイルは既報のものと齟齬はなかった。・間質性肺炎はアベマシクリブ群で2.7%、ET群で1.2%、発熱性好中球減少症はそれぞれ0.3%と0.1%未満に発現した。

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