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テレケア介入で、がん患者の疼痛症状、うつ病を改善

症状監視自動モニタリングと連結した遠隔医療(テレケア)管理システムは、都市部の点在するがんケア施設の患者や、地方のがんケア施設で暮らす患者の、疼痛症状やうつ病を改善する効果があるという。米国インディアナポリス・Richard Roudebush退役軍人メディカルセンターのKurt Kroenke氏らが、無作為比較対照試験を行い明らかにした。疼痛症状とうつ病は、がん関連の最も一般的かつ治療可能な症状だが、認知されていなかったり、治療がされていなかったりする頻度も高い。Kroenke氏らは、テレケア管理システムに、そうした状況を改善する効果があるのか検討を行った。JAMA誌2010年7月14日号掲載より。がんケア施設入所者をテレケア介入群と通常ケア群に無作為化し追跡試験は、INCPAD(Indiana Cancer Pain and Depression)試験に協力する地域密着型がんケア施設(都市部と地方合わせて16施設)で行われた。2006年3月~2008年8月に被験者を動員し、2009年8月まで追跡された。うつ病(Patient Health Questionnaire-9)スコアが10以上か、がん疼痛[Brief Pain Inventory(BPI)worst pain]スコアが6以上、あるいは両スコアを満たしていた被験者を、無作為に、テレケアの介入を受ける群(202例)と、通常ケア群(203例)に割り付け、症状タイプごとに分析した。介入群の患者は、ナースフィジシャン専門家チームによるテレケア統合管理システムを受けた。双方向の音声録音またはインターネットで症状を自動で監視する在宅モニタリングシステムが活用された。主要評価項目は、基線・1・3・6・12ヵ月時点で盲見評価された、HSCL-20評価によるうつ病スコア、およびBPI評価による疼痛重症度とした。介入群の改善効果が一貫して大きい被験者405例のうち、うつ病の単一症状が認められたのは131例、疼痛の単一症状が認められたのは96例、両症状が認められたのは178例だった。疼痛症状があった274例のうち、介入群の137例は通常ケア群の137例より、試験12ヵ月一貫してBPIスコアの改善が、より大きかった。平均スコア(範囲0~10)の改善(P<0.001)、基線からのBPI改善が30%以上(P<0.001)、いずれの指標でも介入群の改善が大きかった。同様にうつ症状があった309例も、介入群の154例が通常ケア群の155例より、12ヵ月の間のHSCL-20スコアの改善が、より大きかった。平均スコア(範囲0~4)の改善(P<0.001)、基線からのHSCL-20改善が50%以上(P<0.001)、いずれの指標でも介入群の改善が大きかった。両群間の標準エフェクトサイズ差は、疼痛については3ヵ月時点0.67(95%信頼区間:0.33~1.02)、12ヵ月時点0.39(同0.01~0.77)、うつ病については3ヵ月時点0.42(同0.16~0.69)、12ヵ月時点0.41(同0.08~0.72)だった。

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若い肥満女性は予定外の妊娠をしやすい:男女1万人の無作為抽出調査

BMIと性行動、有害な性的健康アウトカムとの間には関連があり、肥満女性は避妊医療サービスの利用度が低く、予定外妊娠の傾向が高いことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のNathalie Bajos氏らCSF(Contexte de la Sexualité en France)研究グループの調査で明らかとなった。男性の肥満が勃起不全と関連することは複数の試験で示されているが、性的満足度、望まない妊娠、中絶などの性的な健康アウトカムと肥満との関連ははっきりしていない。これまでに実施された調査のほとんどが高齢男性や病的肥満男性を臨床的サンプルとしたものであり、女性を対象とした試験はほとんどないという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。約1万人の男女を対象としたBMI別の性行動に関する無作為抽出調査CSFの研究グループは、肥満者におけるBMIと性的活動性、性的満足度、望まない妊娠、中絶の関連について解析し、調査対象者とそのパートナーのBMIを考慮した公衆衛生学的な診療の意義について考察するために、性行動に関する無作為抽出調査を実施した。2006年にフランス在住の18~69歳の男女1万2,364人の中から、女性5,535人、男性4,635人が無作為に抽出された。そのうち、正常体重(BMI:≧18.5、<25kg/m2)が女性3,651人、男性2,725人、過体重(BMI:≧25、<30 kg/m2)がそれぞれ1,010人、1,488人、肥満(BMI>30kg/m2)は411人、350人であった。肥満者は男女とも性的活動性が低く、若年の肥満女性は避妊に積極的でない肥満女性は、過去12ヵ月間に性的パートナーがいたと回答した者の割合が、正常体重女性に比べ有意に低かった(オッズ比:0.71、95%信頼区間:0.51~0.97)。肥満男性は、同時期に1人以上の性的パートナーがいたと回答した者の割合が正常体重男性に比べ有意に低く(オッズ比:0.31、95%信頼区間:0.17~0.57、p<0.001)、勃起不全と回答した者の割合が有意に高かった(同:2.58、同:1.09~6.11、p<0.05)。女性では、性的機能不全とBMIには関連を認めなかった。30歳未満の肥満女性は、避妊医療サービスに当たる割合が有意に低く(オッズ比:0.37、95%信頼区間:0.18~0.76)、経口避妊薬の使用率も有意に低値であり(同:0.34、同:0.15~0.78)、予定外の妊娠が有意に多くみられた(同:4.26、同:2.21~8.23)。著者は、「BMIと性行動、有害な性的健康アウトカムとの間には関連があり、肥満女性は避妊医療サービスの利用度が低く、予定外妊娠の傾向が高い。これらの女性における望まない妊娠の予防は、性・生殖医療の重要課題である」と結論し、「医療従事者は、性的健康サービスを提供する際には、体重と性別との関連性に留意する必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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PEG施行時の創傷感染に対する新たな予防戦略

経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]の投与は、従来のPEG施行前のセフロキシム(商品名:オラセフ)の予防投与と同等の予防効果を有することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所分子外科学のJohn Blomberg氏らによる無作為化試験で示された。PEGの合併症である創傷感染の予防法として、通常、PEG開始直前に第2世代セファロスポリンの静脈内投与が行われるが、高価で時間がかかり、PEGが完遂できない患者に無駄に投与している場合もあるという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年7月2日号)掲載の報告。新たな予防戦略と従来の予防投与を比較する二重盲検無作為化対照比較試験研究グループは、PEG施行時の抗生物質予防投与の簡便な治療戦略について検討するために、単一施設における二重盲検無作為化対照比較試験を行った。2005年6月~2009年10月までに、カロリンスカ大学病院内視鏡部でPEGを施行された234例が対象となった。これらの患者が、PEGカテーテル挿入直後にコ・トリモキサゾール経口液20mLを投与する群あるいは従来法であるPEGカテーテル挿入前にセフロキシム1.5gを静脈内に予防投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、PEGカテーテル挿入後14日以内における臨床的に顕性化した創傷感染の発症とした。副次的評価項目は、細菌培養および血液検査(高感度C反応性蛋白、白血球数)における陽性率とした。intention-to-treat解析、per-protocol解析ともに非劣性の条件を満たす234例のうち、コ・トリモキサゾール群に116例が、対照群には118例が割り付けられた。intention-to-treat(ITT)解析では、PEGカテーテル挿入後のフォローアップ期間7~14日における創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群が8.6%(10/116例)、対照群は11.9%(14/118例)であり、むしろ新規予防戦略群が3.3%(95%信頼区間:-10.9~4.5%)低かった。per-protocol解析(対象は両群とも100例ずつ)による創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群10%、対照群13%であり(両群間の差:-3.0%、95%信頼区間:-11.8~5.8%)、ITT解析と同様の結果であった。事前に規定された非劣性限界値は95%信頼区間上限値15%であった。intention-to-treat解析、per-protocol解析ともにこれを満たしたことから、セフロキシムに対するコ・トリモキサゾールの非劣性が確認された。副次的評価項目も、これらの知見を裏付ける結果であった。著者は、「PEG施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液20mLの投与は、少なくともPEG施行前のセフロキシム予防投与と同等の効果を有する」と結論し、「この新たな予防戦略は迅速に施行できるうえに安価で安全であり、不必要な投与も減少し、PEGが行われる地域ならば世界中どこでも使用可能である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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早期乳がんの放射線治療、温存術中のターゲット単回照射が有用:TARGIT-A試験

早期乳がんの中には、術後数週にわたる外部照射よりも、術中に腫瘍床を標的とする単回照射法が有効な患者が存在することが、イギリスUniversity College London外科研究部門のJayant S Vaidya氏らが実施した無作為化試験(TARGIT-A試験)で明らかとなった。乳がんは乳房のどこにでも発現しうる多中心的ながんであるが、乳房温存術施行後の局所再発の90%は指標とされる四分区内に起こる。それゆえ、術中の腫瘍床に限定した放射線照射が妥当な患者が存在する可能性があるという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月5日号)掲載の報告。従来の術後外部照射と術中ターゲット照射を比較する前向きの非劣性試験TARGIT-A試験の研究グループは、Intrabeam法を用いた新技術である術中ターゲット放射線の単回照射治療と、従来の全乳房に対する外部照射法の有用性を比較するプロスペクティブな無作為化非劣性試験を実施した。登録は2000年3月に開始され、9ヵ国28施設が参加した。対象は、乳房温存術を施行された45歳以上の浸潤性乳管がんの女性であった。これらの患者が、術中ターゲット照射群あるいは全乳房外照射群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者にも担当医にも知らされなかった。術後に所定の因子(小葉がんなど)が発見された場合は、術中ターゲット照射に加え外部照射を併用することとした(15%がこれに相当すると予測した)。主要評価項目は、温存乳房における局所再発率とした。主要評価項目の絶対差2.5%を所定の非劣性限界値とした。局所再発率の絶対差は0.25%、grade 3の放射線毒性は術中照射群が少ない術中ターゲット照射群には1,113例が割り付けられ、評価が可能であった996例のうち術中ターゲット照射のみを施行された患者は854例(86%)、外部照射を追加されたのは142例(14%)であった。外部照射群には1,119例が割り付けられ1,025例が評価可能であった。術後4年の時点で、術中ターゲット照射群の6例、外部照射群の5例が局所再発をきたした。4年時点におけるKaplan-Meier法による温存乳房の局所再発率は、術中ターゲット照射群が1.20%(95%信頼区間:0.53~2.71%)、外部照射群は0.95%(同:0.39~2.31%)であった。両群間の差は0.25%(同:-1.04~1.54)であり、有意差は認めず同等であった(p=0.41)。重篤な毒性の頻度は術中ターゲット照射群が3.3%(37/1,113例)、外部照射群は3.9%(44/1,119例)と両群で同等であり(p=0.44)、合併症の頻度にも差は認めなかった。grade 3(Radiation Therapy Oncology Group)の放射線毒性の頻度は術中ターゲット照射群が0.5%(6/1,113例)と、外部照射群の2.1%(23/1,119例)に比べて有意に低かった(p=0.002)。著者は、「早期乳がんの中には、術後の数週にわたる外部照射に代わり術中ターゲット照射法を用いた手術時の単回放射線照射が有効な患者がいることを考慮すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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HIV患者の併用抗レトロウイルス治療を看護師に任せてよいか?

併用抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV患者の管理を、訓練を受けた看護師が行っても、医師よる治療と同等の効果が得られることが、南アフリカWitwatersrand大学のIan Sanne氏らが行った無作為化試験(CIPRA-SA試験)で示された。併用ARTはAIDS関連疾患や関連死を著明に低減することが示されている。先進国では、耐性検査を含む頻回の検査のサポートのもとで、専門医があらゆる薬剤を駆使してHIV治療を行っている。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国など医療資源が乏しい環境において併用ARTの使用を拡大するには、医師から他のケア提供者へ職務を移行する必要があるという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版6月16日号)掲載の報告。看護師と医師によるART治療を比較する非劣性試験CIPRA-SA試験の研究グループは、HIV患者のART治療の管理を医師が行う場合と、これを看護師が行う場合のアウトカムを比較する無作為化非劣性試験を実施した。南アフリカの二つのプライマリ・ケア施設から、CD4細胞<350個/μL、WHO stage 3/4のHIV陽性患者が登録され、看護師によるART治療群と医師によるART治療群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者にも、データ解析者にも知らされなかった。主要評価項目は、治療失敗に関する複合エンドポイント(治療を制限するイベント、全死亡、ウイルス学的失敗、治療を制限する毒性、受診予約に対するアドヒアランス)とした。治療失敗のハザード比の95%信頼区間上限値が<1.40の場合に、医師の治療に対して看護師による治療は非劣性であるとした。エンドポイントは看護師48%、医師44%、ハザード比1.09、95%信頼区間0.89~1.33医師によるART治療群に408例が、看護師によるART治療群には404例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。治療失敗のエンドポイントは46%(371/812例)に認められ、そのうち看護師群は48%(192/404例)、医師群は44%(179/408例)であった。治療失敗の複合エンドポイントのハザード比は1.09、95%信頼区間は0.89~1.33であり、非劣性の上限以内であった。フォローアップ期間中央値120週における死亡は看護師群が10例、医師群が11例、ウイルス学的失敗はそれぞれ44例、39例、毒性が68例、66例、非受診が70例、63例であり、両群間で同等であった。著者は、「看護師によるART治療は、これを医師が施行した場合に比べ劣ることはなかった。この知見は、ART治療を適切な訓練を受けた看護師へ移行することを支持するものである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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術後合併症予防キャンペーンSCIP順守の効果は?

術後合併症の予防を目的として、米国の主な医療機関が参加・展開するキャンペーン「Surgical Care Improvement Project」(SCIP)で定められた予防措置を守ることで、術後合併症リスクは15%減らせることが明らかにされた。ただし順守と術後合併症予防に有意な関連は認められなかったとも報告している。米国オハイオ州のケース・ウエスタン・リザーブ大学のJonah J. Stulberg氏らが、40万人超の患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2010年6月23/30日号で発表した。感染予防措置の3項目順守率、2~6項目順守率をそれぞれ評価同氏らは、SCIPに参加し、予防措置の順守率について「Hospital Compare Web」で、「Premier Inc's Perspective Database」に基づき報告・公開している医療機関398ヵ所で手術を受け、2006年7月1日から2008年3月31日までに退院した40万5,720人について、後ろ向きコホート試験を行った。被験者のうち、白人は69%、黒人は11%で、高齢者向け公的医療保険メディケアの患者が46%、68%が選択的外科手術例だった。SCIPは7つの評価項目(INF-1~INF-7)と、2つの複合評価方法(S-INFコア、S-INF)から成る。複合評価方法「S-INFコア」は、評価項目の中心であるINF-1~INF-3の3項目から構成され、「S-INF」はINF-5を除く6項目から成る。研究グループは、複合評価方法でSCIP項目を順守することの術後感染に対する効果を評価するため、S-INFコア指標について3項目すべてを順守した群と順守しなかった群とで術後感染との関連を調べ、またS-INF指標については2項目以上を順守していた群と順守項目がなかった群とで順守状況と術後感染について調べた。評価に際しては、病院特性(規模、位置、教育病院かなど)を加味している。2項目以上順守の術後感染率0.85倍、中核の3項目順守で0.86倍結果、追跡期間中に発生した術後感染は、3,996件だった。S-INF評価で2項目以上を順守した群の術後感染率は、1,000退院当たり6.8、非順守群は同14.2で、順守群の方が低かった(補正後オッズ比:0.85、95%信頼区間:0.76~0.95)。S-INFコアについても、順守群の術後感染率は1,000退院当たり5.3、非順守群は11.5と順守群が低かったが、統計学的有意差は認められなかった(補正後オッズ比:0.86、同:0.74~1.01)。またSCIPの6項目のうち、順守したか否かで術後感染率の低下につながり他の項目と有意な差がついたという項目はなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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電子化された診療記録の共有化のベネフィットとは?

イギリスで国家プロジェクトとして進められている電子化された診療記録の共有化は、そのベネフィットが当初の予想よりも小さく、実際に利用する臨床医は少ないことが、Barts and The London School of Medicine and DentistryのTrisha Greenhalgh氏らの調査で明らかとなった。電子化された診療記録が共有されれば、多彩なケアの利用を可能にする核心的な情報の発信が可能となり、医療の質、安全性、有効性の改善につながるとの期待があるが、500万人以上の人口を抱える国で、国レベルの電子患者記録の共有化に成功した例はないという。2007年、イギリス保健省は診療概要記録(SCR)の国レベルでの共有化を推進するプログラムを開始し、さしあたり救急と予約外診療での運用が始まっている。BMJ誌2010年6月26日号(オンライン版2010年6月16日号)掲載の報告。SCRの集積を進める国家プラグラムを評価研究グループは、電子化された診療概要の記録の集積を進める国家プログラム(English National Health Service 2007-10.)の評価を行った。SCRは、“National Programme for Information Technology”の一環として導入された。SCRの評価は国の政策との関連で第一線で遂行されるものとみなされ、3地域で実施された。国レベルで集めたデータおよび時間外や予約なしの受診が可能なプライマリ・ケア施設から収集された、41万6,325例のデータが集積され解析された。政策立案者、管理者、臨床医、ソフトウェア供給者などへの140のインタビュー、214の診療の観察記録を含む2,000ページの民族誌的現場記録、3,000ページにおよぶ文書が、テーマ別および解釈的に解析された。SCRの効果は当初の予測より小さく、利用頻度も低い2007~2010年に、SCRプログラムは社会的、技術的に膨大な課題に直面し、これを遂行するには高度な作業負荷を要し、複雑な相互依存が存在することが判明した。予約なしのプライマリ・ケア施設でSCRが利用できる環境を構築しても、これにアクセスして実際に使用する臨床医は多くないことが示された。SCR関連のベネフィットは、当初の予測に比べると小さく、確実性が低かった。プログラムの技術的側面や運営上の問題は、SCR導入の政治的、職業的、臨床的、個人的な意図などの主観的で状況的な論点と切り離せないことが示された。著者は、「電子化された患者の診療概要の記録の導入には一定の進展がみられるが、重大な社会的、技術的障壁がその広範な採用を阻んでいる。現時点でのベネフィットは当初の予想よりも小さく、不確実であった」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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Rosiglitazone Associated with Increased Stroke, Heart Failure, and Death Compared to Pioglitazone in Elderly Patients

The thiazolidinediones rosiglitazone (Avandia) and pioglitazone (Actos) have become popular drugs for type 2 diabetes in recent years for their potential to improve glycemic control by increasing insulin sensitivity. Concern over the safety of rosiglitazone was raised by a 2007 meta-analysis of 42 trials associating the drug with increased risk of myocardial infarction (MI) and cardiovascular death (N Engl J Med 2007 Jun 14;356(24):2457).A new, large cohort study compared the safety of rosiglitazone vs. pioglitazone in 227,571 elderly patients (mean age 74 years) with diabetes who began taking 1 of the 2 drugs between July 2006 and June 2009. During a follow-up period of up to 3 years, there were 8,667 events of MI, stroke, heart failure, or death. The incidence rate per 100 person-years for the composite of these outcomes was significantly higher for rosiglitazone than for pioglitazone (9.1 vs. 7.42, p < 0.05) (level 2 [mid-level] evidence). The number needed to harm (NNH), calculated as the number of patients treated for 1 year to generate 1 excess event, was 60 for the composite outcome. Rosiglitazone was also associated with increased incidence rates of stroke (1.27 vs. 0.95, p < 0.05, NNH 313), heart failure (3.94 vs. 3, p < 0.05, NNH 106), and death (2.85 vs. 2.4, p < 0.05, NNH 222). Incidence rates of acute MI were not significantly different (1.83 vs. 1.63) (JAMA 2010 Jun 28 early online).Also recently published was an update of the 2007 meta-analysis with 14 additional trials comparing treatment with vs. without rosiglitazone. Rosiglitazone was associated with increased risk of MI (odds ratio 1.28, 95% CI 1.02-1.63), but there was no significant difference in cardiovascular death (Arch Intern Med 2010 Jun 28 early online).For more information, see the Rosiglitazone topic in DynaMed. Published by DynaMedCopyright(c) 2010 EBSCO Publishing. All rights reserved.DynaMedは、信用できる最新エビデンスを簡潔にまとめた診療サポート・EBM実践ツールです。DynaMed Weekly Updateは、毎週DynaMedに採用される記事の中から、医師にとって重要で臨床上の判断に影響を与え得ると思われる1~5つの記事を集めたニュースレターです。●問合せ先EBSCO Publishing (エブスコ・パブリッシング)〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-6-2 高円寺センタービル8FTEL: 03-5327-5321, FAX: 03-5327-5323, E-MAIL: medical@ebsco.co.jpHP: http://www.ebsco.co.jp/medical/dynamed

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エパデールが末梢動脈疾患患者の冠動脈イベントを抑制する ―JELIS試験のサブ解析結果より

持田製薬株式会社は5日、高脂血症、閉塞性動脈硬化症治療剤「エパデール」(一般名:イコサペント酸エチル、EPA)の高脂血症患者を対象とした大規模臨床試験「JELIS」において、エパデールが末梢動脈疾患を有する患者の冠動脈イベントを有意に抑制するとの結果が得られたと発表した。解析結果は日本循環器学会の機関誌『Circulation Journal』7月号に掲載されるとのこと。JELISのコントロール群(エパデール非投与群)について末梢動脈疾患の有無による冠動脈イベントの発症率を調べた結果、末梢動脈疾患を有していないグループでは7.2人/千人・年、試験登録時に末梢動脈疾患を合併しているグループでは38.6人/千人・年、また試験期間に末梢動脈疾患を新たに発症したグループでは55.2人/千人・年であった。末梢動脈疾患を合併しているグループの冠動脈イベント発症リスクは、末梢動脈疾患を有していないグループに比べて1.97倍高く、また新たに末梢動脈疾患を発症したグループでは2.88倍高いことが示されたという。また、末梢動脈疾患を有していたグループ(合併+新規発症)をエパデール投与群と非投与群とに分けて解析した結果、冠動脈イベント発症はエパデール投与群では17.3人/千人・年、エパデール非投与群では42.9人/千人・年となり、エパデール投与により冠動脈イベントの発症が56%有意に抑制されることもわかったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.mochida.co.jp/news/2010/0705.html

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糖尿病の血管疾患リスクはどの程度? 70万人のメタ解析

糖尿病の存在は、肥満、脂質異常、高血圧など従来のリスク因子とは別個に、血管疾患リスクを約2倍に高めることが、Emerging Risk Factors Collaborationが実施した102もの試験のメタ解析で明らかとなった。糖尿病は冠動脈心疾患や脳卒中のリスク因子として確立されているが、年齢、性別、従来のリスク因子の有無などでリスクの程度はどれくらい変化するのか、致死的心筋梗塞と非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とでは糖尿病の影響はどの程度は異なるのかという問題は未解決のままだ。さらに、非糖尿病患者における血糖異常の意義についても同様の問題が残されているという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。糖尿病の血管疾患リスクを定量的に評価するメタ解析研究グループは、血管疾患リスクに及ぼす糖尿病の影響を定量的に評価することを目的に102のプロスペクティブ試験のメタ解析を行った。Emerging Risk Factors Collaborationが実施した試験から血管疾患の既往のない患者を抽出し、個々の患者の糖尿病、空腹時血糖値およびその他のリスク因子の記録について解析した。個々の試験を年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧、BMIで補正して回帰分析を行い、これらのデータを統合して血管疾患に対するハザード比(HR)を算出した。糖尿病の血管疾患に対するHRは1.73~2.27、空腹時血糖値の関連はわずか102のプロスペクティブ試験から抽出された69万8,782人(5万2,765人が非致死的あるいは致死的血管疾患を発症、849万人・年)が解析の対象となった。糖尿病の冠動脈心疾患に対する補正HRは2.00(95%信頼区間:1.83~2.19)、虚血性脳卒中に対する補正HRは2.27(同:1.95~2.65)、出血性脳卒中は1.56(1.19~2.05)、分類不能の脳卒中は1.84(同:1.59~2.13)、その他の血管死の合計が1.73(同:1.51~1.98)であった。脂質、炎症、腎機能のマーカーでさらに補正しても、HRに明確な変化は認めなかった。冠動脈心疾患に対するHRは男性よりも女性で高く、70歳以上よりも40~59歳で、非致死的疾患よりも致死的疾患で高かった。成人の糖尿病有病率を10%とすると、血管疾患の11%が糖尿病関連と推算された。空腹時血糖値は血管リスクと直線的な関連はなく、3.90mmol/Lと5.59mmol/Lで有意な差はみられなかった。空腹時血糖値3.90~5.59mmol/Lの場合と比較して、空腹時血糖値≦3.90mmol/Lの場合の冠動脈心疾患に対するHRは1.07(95%信頼区間:0.97~1.18)、5.60~6.09mmol/Lの冠動脈心疾患に対するHRは1.11(同:1.04~1.18)、6.10~6.99mmol/Lでは1.17(同:1.08~1.26)であった。糖尿病歴のない集団では、従来のリスク因子のほかに、空腹時血糖値や空腹時血糖異常に関する情報を付加しても、血管疾患の検出基準が改善されることはなかった。著者は、「糖尿病は、他の従来のリスク因子とは別個に、広範な血管疾患のリスクを約2倍に上昇させる。非糖尿病集団では、空腹時血糖値の血管疾患リスクとの関連はわずかであった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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自閉症児に対する親によるコミュニケーション介入は症状を改善するか?

コアな自閉症の患児に対して、通常の治療に加え親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入を行っても、症状の改善はわずかしか得られないことが、イギリス・マンチェスター大学精神科のJonathan Green氏らが行った無作為化試験で示された。自閉症は、その中核をなす患者のおよそ0.4%、広範な自閉症スペクトラムに属する患者の約1%が重篤で高度に遺伝性の神経発達障害をきたすと推察され、社会的な相互関係や意思疎通、行動の障害が、小児から成人への発達に多大な影響を及ぼすため、家族や社会に大きな経済的な負担が生じることになる。小規模な試験では、社会的コミュニケーションへの早期介入が自閉症児の治療に有効なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載の報告。PACTによる介入群と非介入群を比較する無作為化試験研究グループは、中核的な自閉症の患児を対象に社会的コミュニケーションへの早期介入の有効性について検討する大規模な無作為化試験を実施した。イギリスの三つの専門施設(ロンドン、マンチェスター、ニューカッスル)に2歳~4歳11ヵ月の自閉症児が登録され、親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入(Preschool Autism Communication Trial;PACT)を行う群あるいは通常の治療を行う群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。PACT群の患児には通常の治療も施行された。主要評価項目は、治療13ヵ月後の自閉症症状の重症度[Autism Diagnostic Observation Schedule-Generic(ADOS-G)の社会的コミュニケーションに関するアルゴリズム項目の総スコア(スコアが高いほど重症度が高度)]とし、補足的な副次評価項目として親子間の相互応答、患児の言語能、学校での適応能を測定した。親子間のコミュニケーションには明確なベネフィットが152例が登録され、PACT群に77例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:25例)、通常治療群には75例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:23例)が割り付けられた。13ヵ月の時点における症状の重症度の改善効果は、施設、性別、社会経済的状況、年齢、言語能、非言語能で補正後のADOS-Gスコアが、PACT群で3.9点低下し、通常治療群では2.9点低下しており、両群とも症状の改善効果が認められた。各群間の効果量(effect size)は-0.24(95%信頼区間:-0.59~0.11)であり、PACTによる介入の症状改善効果は小さいと推察された。親の子どもへの同期的応答(効果量:1.22、95%信頼区間:0.85~1.59)、子どもからの親への応答(同:0.41、同:0.08~0.74)、親子の配慮の共有(同:0.33、同:-0.02~0.68)にはPACTによる改善効果が認められた。言語能や学校での適応能に対するPACTによる改善効果は小さかった。これらの知見に基づき、著者は「自閉症児の症状の低減を目的に、通常治療にPACTを併用するアプローチは推奨されない。その一方で、親子間の社会的コミュニケーションには明確なベネフィットが認められた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、肺がんリスクは大幅減少

血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、低濃度の人に比べ、肺がん発症リスクはおよそ半減するようだ。フランスInternational Agency for Research on CancerのMattias Johansson氏らが行ったケースコントロール試験で明らかになったもので、JAMA誌2010年6月16日号で発表した。これまで、ビタミンBのがん発症予防に関する研究は、主に葉酸塩値の大腸がん発症予防効果について行われ、ハイリスク集団についてその抑制効果を前向きに示すことはできなかったという。肺がん発症の約900人とコントロール群約1,800人を分析同研究グループは、1992~2000年にかけて、10ヵ国51万9,978人を対象に行った前向きコホート試験、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)のうち、血液採取データがある38万5,747人について追跡した。結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人いた。そのコントロール群として、国や性別、誕生日、血液採取日をマッチングした1,770人を選び、両群の血中の4種のビタミンB(B2、B6、葉酸塩のB9、B12)とメチオニン、ホモシステイン濃度を調べ、肺がん発症率との関連を分析した。ビタミンB6濃度の最高四分位範囲の肺がん発症リスク、最低四分位範囲の0.44倍、メチオニンは同0.52倍喫煙の有無を補正した上で、血中ビタミンB6濃度が最も高い四分位範囲の最も低い同範囲に対する、肺がん発症に関するオッズ比は、0.44(95%信頼区間:0.33~0.60、傾向に関するp

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ただの貧血や血尿ではないかも?―命を脅かす超希少疾患、PNH

6月22日、東京のコンファレンススクエアにおいて、記者説明会「命を脅かす進行性の希少疾患 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」が開催された(主催:アレクシオン ファーマ)。大阪大学医学部血液・腫瘍内科の西村純一氏は、「PNH原因遺伝子の発見から治療薬『ソリリス(一般名:エクリズマブ)』の登場まで」と題して講演した。貧血やヘモグロビン尿で原因がはっきりせず、確定診断に至っていない場合は、PNHを鑑別診断に入れる必要がありそうだ。西村氏によれば、PNHは希少疾患であり、見過ごされがちであることから、ただの貧血や血尿として扱われている患者が多いとのことである。PNHは、造血幹細胞のPIG-A(Phosphatidyl Inositol Glycan class A)遺伝子に後天的変異が起こり、その幹細胞がクローン性に拡大する造血幹細胞疾患である(※)。正常赤血球においては自己補体による障害をブロックしているCD59やDAF(CD55)などの補体制御因子が、PNH細胞ではPIG-A遺伝子変異により欠損する。その結果、コントロール不能な終末補体複合体の形成が進み、補体による溶血が起こることで多様な症状を呈する。また、再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群(MDS)などの骨髄障害患者に多く認められている。生命を脅かし、QOLにも影響を及ぼすPNHには、溶血、血栓症、骨髄不全の3大徴候がある。西村氏は、中でも溶血が生命に関わる腎不全、肺高血圧症、血栓症を引き起こし、また重度の溶血で嚥下障害、疲労、勃起不全などのQOLに関わる症状を訴えることが多いため、PNHの治療方針においては溶血の抑制が重要であると語った。これまでのPNH治療としては、重篤な症例に対する造血幹細胞移植以外、輸血などの対症療法しか選択肢がなかった。PNH治療に光明しかし、PNHがPIG-A遺伝子変異から始まる一連の経路によって発症することが明らかとなったことで、治療薬のターゲットは終末補体複合体の形成阻害となった。補体カスケードの近位にはC3、終末にはC5が関与しており、より他の補体活性に影響の少ない抗C5ヒト化モノクローナル抗体のエクリズマブが開発された。エクリズマブの治療効果が見られるのは溶血症状を有する症例で、PNH患者の3分の1から半分を占める。骨髄不全で溶血がほとんどない場合はベネフィットが少ないが、中には有効な例もある。使い続けることによりQOLの維持や寿命延長も期待される。投薬中止がとりわけ危険ということではないので、スポット的な使用法も今後考えられるとのことである。わが国におけるPNHの患者数は現在400~500人と推定されているが、少なくともその2倍はいるだろうと西村氏は述べている。患者が中心施設に集中する海外とは対照的に、市中病院で1人や2人の患者を診るという状況であるため、医師たちに啓発活動を行い、本来エクリズマブで治療すべき患者を拾い上げていくことが必要であるとした。エクリズマブの有効性・安全性エクリズマブは国内第II相臨床試験(AEGIS試験)において、投与開始1週間でLDH値を有意に減少させ、平均低下率は87%と、主要評価項目である溶血抑制効果が示された。また、エクリズマブ投与前12週の平均輸血単位数が5.2単位であったのが、投与後12週では1.5単位へと有意な減少を示し、輸血を必要とした患者の67%が投与中に輸血不要となった。ヘモグロビン値は投与期間に比例して緩徐に上昇したが、それに関わらず疲労感は投与後2週目で有意なスコア改善が見られ、QOL向上につながると考えられた。他に、慢性腎臓病(CKD)の改善、血栓イベント数の低下が認められた。安全性について、有害事象による試験中止はなく、日本人患者においても忍容性が確認された。副作用の程度は、軽度/中等度が29例中26例、重度1例であり、主な副作用は頭痛、鼻咽頭炎、悪心などであった。なお、エクリズマブによって髄膜炎の発症リスクが上がるため、投与2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種しなくてはならない。PNHの診断PNHの診断には、フローサイトメトリを用いて血球におけるCD59やCD55の発現低下を確認することが有用である。利用可能であれば、赤血球および顆粒球の定量的フローサイトメトリの実施が推奨される。そこでPNHクローンサイズが1%以上であれば、PNHを疑う必要がある。わが国において保険適応となっているのは、PNH診断時の赤血球CD59/CD55ダブル染色のみで、フォローアップには基本的に使えない。現在、診断網の確立を図っている段階とのことである。※PNH発症のメカニズム:PIG-A遺伝子変異の原因は現在明らかにされていない。また、PIG-A遺伝子変異だけではPNH発症に至らないため、2段階目としてのクローン性の増殖に関するメカニズムが解析の途上にある。仮説の一つとして、AA患者の半数以上はPNH細胞を持つ。AAでみられるような免疫機序による骨髄障害があるとき、PNH細胞は前述のCD59やCD55といったGPI(Glycosyl-Phosphatidyl Inositol)アンカー型蛋白が発現していないために自己免疫的な攻撃のターゲットにならない。すなわち増殖・生存に有利な状況となり、この環境下でさらに遺伝子変異が起こる確率が高まり、PNH細胞がより増殖可能となるという機序が考えられている。(ケアネット 板坂 倫子)

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「アフィニトール」がVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤無効の進行性腎細胞がんの無増悪生存期間を延長する 米Cancer誌に掲載

ノバルティス ファーマ株式会社は21日、米国のがん専門誌「Cancer」の誌上掲載に先立ち、6月14日にEarly Viewとして「Cancer」誌のオンライン上で発表されたRECORD-1第III相試験データの最終解析結果において、血管内皮成長因子(VEGF)受容体チロシンキナーゼ阻害剤による治療中あるいは治療後に病勢が進行した進行性腎細胞がん(renal cell carcinoma: RCC)の患者に対する「アフィニトール」(一般名:エベロリムス)のベネフィットが確認されたと発表した。本試験の最終的な無増悪生存期間(PFS)に関する解析、および全生存期間(OS)結果を推測する探索的解析が、専門家が検証する学術誌で掲載されたのは、今回が初めてとのこと。今回新たに発表された第III相RECORD-1(REnal Cell cancer treatment with Oral RAD001 given Daily)試験データは、アフィニトールが、プラセボと比較してVEGFr-TKIによる前治療後に疾患が進行した進行性腎細胞がんの患者のPFS中央値を2倍以上延長(4.9ヵ月に対し1.9ヵ月)したことを示す以前の分析を裏付けるものだった。さらに、主要評価項目であるPFSにおいて、アフィニトールが、疾患の進行あるいは死亡のリスクを67%減少させた(ハザード比 = 0.33、95%信頼区間[CI]、0.25~0.43、p<0.001)ことも示されたという。アフィニトールは、日本では根治切除不能または転移性腎細胞がん治療薬として2010年1月に承認、4月に発売されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2010/pr20100621.html

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高頻度振動換気法は、早産児の予後を改善するか?

早産児に対する人工換気法として高頻度振動換気法(HFOV)を選択的に施行しても、気管支肺異形成症のリスクの抑制効果は従来の人工換気法と同等であることが、ベルギーVrije Universiteit Brussel NICU科のFilip Cools氏らPreVILIG collaborationによるメタ解析で示された。新生児ケアの進歩にもかかわらず、早産児では気管支肺異形成症のリスクが依然として高く、長期的には神経発達の遅滞や肺障害が起きる。動物実験では、HFOVは換気法関連の肺疾患が少ない有望な人工換気法であることが示されており、呼吸窮迫症候群を呈する早産児の死亡/気管支肺異形成症のリスクを低減する可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年6月12日号(オンライン版2010年6月1日号)掲載の報告。10試験に登録された3,229例の個々の患者データを解析PreVILIG collaborationの研究グループは、早産児における選択的HFOVと従来の人工換気法の効果を比較する系統的なレビューとメタ解析を行った。解析の対象は、主要評価項目を妊娠週数36週における早産児の死亡/気管支肺異形成症、あるいは死亡/重症神経障害などとする試験とした。10の無作為化対照比較試験が抽出され、これらの試験に登録された3,229例の個々の患者データについて解析を行った。従来法に比べ、相対リスクに有意差なしHFOVを受けた早産児の妊娠週数36週における死亡/気管支肺異形成症の相対リスクは0.95(95%信頼区間:0.88~1.03)、死亡/重篤な神経障害の相対リスクは1.00(同:0.88~1.13)、これらのいずれかが発症する相対リスクは0.98(同:0.91~1.05)であり、いずれも有意な差は認めなかった。HFOVにより多少なりともベネフィットが得られた早産児のサブグループ(在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度、出生前の副腎皮質ステロイド曝露など)はなかった。換気法のタイプや戦略によって全体の治療効果が変化することはなかった。著者は、「HFOVは早産児に対し従来の換気法と同等の効果しかもたらさない」と結論し、「在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度などに基づいて選択的にHFOVを施行する治療戦略は支持されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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スタチンの思わぬ効果・有害事象

スタチンの想定されていない効果および有害事象について検討する、英国人男女200万人超を対象とする前向きコホート研究が、英国ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らにより行われた。思わぬ効果として、食道がんリスク低下の有益性が認められた一方、様々な有害事象リスク上昇との関連が確認されたという。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月20日号)掲載より。スタチン各種、用量、投与期間ごとに効果・有害事象を定量化Hippisley-Cox氏らは、スタチンの思わぬ効果・有害事象について、種類・用量・投与期間別に定量化することを目的とし、イングランドおよびウェールズの開業医(GP)368人の診療データをQResearch databaseから収集し検討した。200万4,692例分の患者データ(30~84歳)のうち、スタチン服用新規患者は、22万5,922例(10.7%)だった。処方の内訳は、15万9,790(70.7%)がシンバスタチン(商品名:リポバスなど)、5万328例(22.3%)がアトルバスタチン(商品名:リピトール)、8,103例(3.6%)がプラバスタチン(商品名:メバロチンなど)、4,497例(1.9%)がロスバスタチン(商品名:クレストール)、3,204例(1.4%)がフルバスタチン(商品名:ローコールなど)だった。検討された主要評価項目は、心血管疾患の初回発生、中等度~重度ミオパシー、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、静脈血栓塞栓症、パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、白内障、骨粗鬆症性骨折、胃がん、食道がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がん。食道がんリスク低下、肝機能障害・急性腎不全・ミオパシー・白内障リスク増大スタチンとの関連が有意ではなかったのは、パーキンソン病、関節リウマチ、静脈血栓塞栓症、認知症、骨粗鬆症性骨折、胃がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がんの各リスク。食道がんリスクについては低下が認められた。一方で、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、中等度~重度ミオパシー、白内障のリスクは増大することが認められた。有害事象は、スタチンの種類を問わず同等にみられた。ただし肝機能障害についてはフルバスタチンでリスクが高かった。用量反応効果は、急性腎不全、肝機能障害で明瞭だった。服用期間中の全リスク増加は、最初の1年目が最も高かった。白内障リスクは男女とも、服用中止後1年以内で標準に戻った。食道がんのリスクは、女性は1年以内に男性は1~3年以内で標準に戻った。急性腎不全リスクは、男女とも1~3年以内に、肝機能障害リスクは、女性は1~3年以内に男性は3年以降に標準に戻った。心疾患リスク20%閾値に基づく5年予防NNT(治療必要数、対患者1万例)は、女性の場合、心血管疾患が37例(95%信頼区間:27~64)、食道がんは1,266例(850~3,460)だった。男性はそれぞれ、33例(24~57)、1,082例(711~2,807)だった。一方、5年NNH(有害必要数、対患者1万例)は、女性の場合、急性腎不全が434例(284~783)、中等度~重度ミオパシーは259例(186~375)、中等度~重度肝機能障害136例(109~175)、白内障33例(28~38)だった。男性のNNHは、ミオパシーのNNHが91例(74~112)だった以外は、全体として女性と同等だった。Hippisley-Cox氏は、「食道がん以外の有益性は証拠立てることができなかったが、有害事象については母集団に潜在する事象が確認でき定量化できた。さらに、有害事象の最もリスクの高い患者をモニターできるよう個別リスクのさらなる検討を進める必要がある」と結論している。

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2008年の5歳未満の子どもの死亡数、死因:MDG4達成に向けて

2008年の世界193ヵ国における5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人、その死因の68%が感染症であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公衆衛生大学院のRobert E Black氏らによる系統的な解析で示された。子どもの死亡率は、社会経済的な発展や子どもへの生存介入が実行された結果として世界的に低下しているが、いまだに毎年880万人が5歳の誕生日を迎えられずに死亡している。ミレニアム開発目標4(MDG4)の目的は、「2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する」ことであるが、特に南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ諸国では達成が難しい状況にあり、その改善には子どもの死因に関する最新情報の収集が重要だという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月12日号)掲載の報告。2008年の193ヵ国における原因別の死亡数を算出研究グループは、5歳未満の子どもの主な死亡原因について、2008年の最新の推定データを報告した。多原因比例死亡モデル(multicause proportionate mortality model)を用いて生後0~27日の新生児、1~59ヵ月の小児の死亡を推定し、死因が予測可能な場合は単一原因死亡モデルを用い、健康状態登録データの解析を行った。中国とインドの新データは、以前に実施されていた統計モデルに基づく予測に代わって、これらの国で使用されている全国データを採用した。193ヵ国における死亡原因を推定し、5歳未満の子どもの国別の死亡率および出生率にこれらの推定値を当てはめることで、国、地域、世界の原因別の死亡数を算出した。死因の68%が感染症、41%が新生児、5ヵ国で49%を占めた2008 年における世界の5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人と推定され、そのうち68%(597万人)は感染症が原因で死亡しており、肺炎が18%(157万5,000人)、下痢が15%(133万6,000人)、マラリアが8%(73万2,000人)であった。死亡した子どもの41%(357万5,000人)が新生児であり、その最も重大な原因として早産合併症が12%(103万3,000人)、出生児仮死が9%(81万4,000人)、敗血症が6%(52万1,000人)、肺炎が4%(38万6,000人)を占めた。5ヵ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、パキスタン、中国)で、5歳未満の子どもの死亡の49%を占めた。著者は、「これら国別の子どもの主な死因の推定値は、国の計画や援助国の支援の焦点をどこに置くべきかを検討するうえで役立つであろう」とまとめ、「MDG4の達成は、妊婦、新生児、小児の健康状態への介入によって多大な死亡数の抑制に取り組むことでのみ可能となる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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20年間で世界の子どもの死亡数は減少したか?:MDG4達成に向けて

世界の5歳未満の子どもの死亡数は1990~2010年の20年間で420万人減少し、低所得国を含む13地域では低下速度が加速化していることが、アメリカWashington大学のJulie Knoll Rajaratnam氏らによるミレニアム目標4(MDG4、2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)の進捗状況の調査から明らかとなった。MDG4の目標達成期限まであと5年しか残されていない。以前の調査では、MDG4達成の軌道上にある国は4分の1以下であることが示され、2000年以降になされた施策構想や投資の観点からは、MDG4達成に向けた進展に増強傾向が認められるか否かの見極めが重要なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月24日号)掲載の報告。1970~2010年における187ヵ国の5歳未満の子どもの死亡について検討研究グループは、1970~2010年における187ヵ国の5歳未満の子どもの死亡数について検討した。健康状態登録システム、国勢調査の略式出産記録、完全出産記録などの情報源のデータをすべて用いて死亡に関する1万6,174の測定値のデータベースを構築した。ガウス過程回帰モデルを用いて出生から5歳までの死亡の推定値を算出した。本試験は、子どもの死亡の推定にガウス過程回帰モデルを使用した初めての研究であり、この手法は従来の方法に比べサンプル外の予測の妥当性が良好で、データのタイプの違いに起因するサンプリングおよび非サンプリングエラーによって生じる不確かさを把握できる。健康状態登録システムと、新生児(生後1ヵ月未満)および0歳児(生後1ヵ月~1歳の誕生日の前日まで)の死亡に関する情報を含む完全出産記録に基づく1,760の測定値を使用して得た5歳未満の子どもの死亡数から、新生児、0歳児、1~4歳児の死亡数を推定した。子どもの死亡率の迅速な低減は、世界の医療の継続的な優先課題世界の5歳未満の子どもの死亡数は、1990年の1,190万人から2010年には770万人にまで低下した。2010年の内訳は、新生児の死亡数が310万人、0歳児は230万人、1~4歳児が230万人であった。5歳未満の子どもの死亡の33.0%が南アジアで発生し、49.6%がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で発生していたが、高所得国は合わせても1%に満たなかった。世界21地域で新生児、0歳児、1~4歳児の死亡率が低下していた。1990~2010年までの新生児死亡率の年次低下率は2.1%であり、0歳児死亡率の年次低下率は2.3%、1~4歳児の場合は2.2%であった。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国を含む世界13地域では、1990~2000年の10年間に比べて2000~2010年の方が死亡率の低下速度が加速化しているとのエビデンスが得られた。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国のうち死亡率の低下率が1%以上であったのは13ヵ国(アンゴラ、ボツワナ、カメルーン、コンゴ、コンゴ民主共和国、ケニア、レソト、リベリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、スワジランド、ガンビア)であった。著者は、「5歳未満の子どもの死亡のロバスト測定により、いくつかの低所得国では死亡率の低下速度が加速化していることが示された。これらの良好な進展は注目に値するものであり、施策への関心の高まりや医療資源の増強を求める声が大きくなる可能性がある」と結論し、「死亡率の改善が加速化している国のほとんどがMDG4を達成できないであろうが、国際的な共同体は医療資源や技術供与によってこれらの動向の助成に重要な役割を担いうると考えられる。子どもの死亡率を迅速に低減させることは、世界の医療の優先課題であり続けなければならない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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富士フイルム子会社が肺がんの新規RI標識抗体を開発 米国核医学会にて発表

富士フイルム株式会社の子会社である、株式会社ペルセウスプロテオミクスと富士フイルムRIファーマ株式会社は8日、肺がんの新規RI標識抗体を開発し、その成果を6月7日(日本時間6月8日)に米国ソルトレークシティーで開催された米国核医学会において発表した。ペルセウスプロテオミクスは、東京大学先端科学技術研究センターと共同でヒト遺伝子の発現解析により、がん細胞に特異的に発現するたんぱく質を特定し、そのたんぱく質が肺がん、膵(すい)がん、大腸がんをはじめとする広範ながんで高く発現することを見いだしたという。ペルセウスプロテオミクスはこのたんぱく質に対する抗体を作製し、富士フイルムRIファーマとの共同研究により、その中からがん組織に集積性が高く、かつ正常組織への影響が少ない抗体をイットリウム(Y-90)で標識することに成功した。この「Armed抗体」が、マウスの肺がんモデルにおいて顕著な腫瘍の増殖抑制効果を示すことを確認し、今回の発表に至ったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0400.html

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