高頻度振動換気法は、早産児の予後を改善するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/06/24

 



早産児に対する人工換気法として高頻度振動換気法(HFOV)を選択的に施行しても、気管支肺異形成症のリスクの抑制効果は従来の人工換気法と同等であることが、ベルギーVrije Universiteit Brussel NICU科のFilip Cools氏らPreVILIG collaborationによるメタ解析で示された。新生児ケアの進歩にもかかわらず、早産児では気管支肺異形成症のリスクが依然として高く、長期的には神経発達の遅滞や肺障害が起きる。動物実験では、HFOVは換気法関連の肺疾患が少ない有望な人工換気法であることが示されており、呼吸窮迫症候群を呈する早産児の死亡/気管支肺異形成症のリスクを低減する可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年6月12日号(オンライン版2010年6月1日号)掲載の報告。

10試験に登録された3,229例の個々の患者データを解析




PreVILIG collaborationの研究グループは、早産児における選択的HFOVと従来の人工換気法の効果を比較する系統的なレビューとメタ解析を行った。

解析の対象は、主要評価項目を妊娠週数36週における早産児の死亡/気管支肺異形成症、あるいは死亡/重症神経障害などとする試験とした。10の無作為化対照比較試験が抽出され、これらの試験に登録された3,229例の個々の患者データについて解析を行った。

従来法に比べ、相対リスクに有意差なし




HFOVを受けた早産児の妊娠週数36週における死亡/気管支肺異形成症の相対リスクは0.95(95%信頼区間:0.88~1.03)、死亡/重篤な神経障害の相対リスクは1.00(同:0.88~1.13)、これらのいずれかが発症する相対リスクは0.98(同:0.91~1.05)であり、いずれも有意な差は認めなかった。

HFOVにより多少なりともベネフィットが得られた早産児のサブグループ(在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度、出生前の副腎皮質ステロイド曝露など)はなかった。換気法のタイプや戦略によって全体の治療効果が変化することはなかった。

著者は、「HFOVは早産児に対し従来の換気法と同等の効果しかもたらさない」と結論し、「在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度などに基づいて選択的にHFOVを施行する治療戦略は支持されない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)