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心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。心筋梗塞既往例約1万2,000例で、スタチン高用量群と通常用量群を比較SEARCH共同研究グループは、心血管リスクが高い患者における強化スタチン療法の有効性と安全性の確立を目的に、二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、心筋梗塞の既往歴のある18~80歳の患者1万2,064例で、スタチン療法を受けているか、その適応が明らかである症例であった。すでにスタチン療法を受けている場合は総コレステロール値が少なくとも3.5mmol/Lとなるように、受けていない場合は4.5mmol/Lとなるよう治療が行われた。患者は、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)80mg/日あるいは20mg/日を投与する群に無作為に割り付けられ、フォローアップ期間が終了するまで2、4、8、12ヵ月後、その後は6ヵ月ごとに検査が行われた。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術)とし、intention-to-treat解析を行った。ミオパチーが増加したものの、安全に施行可能高用量(80mg/日)群に6,031例が、通常用量(20mg/日)群には6,033例が割り付けられた。平均フォローアップ期間6.7(SD 1.5)年の間に、通常用量群に比べ高用量群でLDL-C値が平均0.35(SE 0.01)mmol/L低下した。重篤な血管イベントの発現率は、高用量群が24.5%(1,477/6,031例)、通常用量群は25.7%(1,553/6,033例)と、高用量群で6%低下したが有意な差は認めなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.88~1.01、p=0.10)。出血性脳卒中(高用量群 vs, 通常用量群:0.4% vs. 0.4%)、血管死(9.4% vs. 9.5%)、非血管死(6.6% vs. 6.6%)の発現率には明らかな差を認めなかった。ミオパチーは、通常用量群では2例(0.03%)にみられたのに対し、高用量群では53例(0.9%)で発現した。著者は、「通常用量群に比べ高用量群でLDL-Cが0.35mmol/L低下し、重篤な血管イベントが6%抑制されたが、これは既報の知見と一致する。ミオパチーが増加したものの、強化LDL-C低下療法は他の薬物療法と安全に併用可能と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。26試験を対象に強化スタチン療法の平均リスク低下率を評価CTT共同研究グループは、スタチンを用いた強化LDL-C低下療法の安全性および有効性を評価する目的で、26の無作為化試験に参加した約17万例の個々のデータに基づくメタ解析を行った。解析の対象は、参加者1,000例以上、治療期間2年以上の無作為化試験で、高用量と低用量の強化スタチン群を比較した試験(5試験、3万9,612例、フォローアップ期間中央値5.1年)および標準的スタチン群と対照群とを比較した試験(21試験、12万9,526例、フォローアップ期間中央値4.8年)であった。それぞれのタイプの試験群ごとに、1年後における平均リスク低下率とともにLDL-Cの1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下による平均リスク低下率を算出した。LDL-Cの閾値はなく、低下させるほど予後が良好な可能性2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験では、1年後のLDL-C値は、高用量群が低用量群に比べ0.51mmol/L低下していた。低用量強化スタチン群に比べ、高用量強化スタチン群では重篤な血管イベントのリスクが15%低下し、有意な差が認められた(95%信頼区間:11~18%、p<0.0001)。なかでも、冠動脈死/非致死的心筋梗塞のリスクが13%(同:7~19%、p<0.0001)、冠動脈血行再建術のリスクは19%(同:15~24%、p<0.0001)、虚血性脳卒中リスクは16%(同:5~26%、p=0.005)低下した。2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験におけるLDL-C 1.0mmol/L低下によるリスク低下は、標準的スタチンと対照の比較試験の場合と同等であった。二つのタイプの試験を合わせると、LDL-C 1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの低下率はあらゆるタイプの症例で類似しており、低用量強化スタチン群や対照群よりも高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で有意に低下していた[発生率比(RR):0.78、95%信頼区間:0.76~0.80、p<0.0001]。全26試験を合わせると、低用量強化スタチン群や対照群に比べ高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で、LDL-C 1.0mmol/L低下による全死因死亡率が10%低下し(RR:0.90、95%信頼区間:0.87~0.93、p<0.0001)、特に冠動脈心疾患死(同:0.80、99%信頼区間:0.74~0.87、p<0.0001)や他の心臓に起因する死亡(同:0.89、同:0.81~0.98、p=0.002)の有意な低下の影響が大きく、脳卒中死(同:0.96、95%信頼区間:0.84~1.09、p=0.5)や他の血管に起因する死亡(同:0.98、99%信頼区間0.81~1.18、p=0.8)の影響は認めなかった。LDL-C低値の場合でも、高用量強化スタチン群や標準的スタチン群と低用量強化スタチン群や対照群の間で、がんや他の非血管系の原因による死亡(RR:0.97、95%信頼区間:0.92~1.03、p=0.3)、発がん率(同:1.00、同:0.96~1.04、p=0.9)には有意な差は認められなかった。著者は、「スタチンによる強化LDL-C低下療法は安全に施行可能で、心臓発作、血行再建術、虚血性脳卒中の発生率のさらなる低減効果をもたらし、1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制する」と結論し、「LDL-Cの閾値のエビデンスはないが、2~3mmol/Lを低下させることで約40~50%のリスク低下が得られる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者にPPIもしくはプラセボを投与し追跡COGENT(Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial)研究は、国際無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験として、2008年1月に15ヵ国393施設で登録が開始された。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者を、クロピドグレル+アスピリンに加えて、オメプラゾールを投与する群と、プラセボを投与する群に無作為に割り付け追跡した。消化器症状に関する主要エンドポイントは、出血(顕性・不顕性含む)、症候性十二指腸潰瘍、びらん、閉塞、穿孔の複合とした。心血管系に関するエンドポイントは、心血管系の原因により死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建、脳卒中の複合とした。試験は、被験者登録5,000人を目指して開始されたが、スポンサーによる資金調達が不可能となり早期に終了された。結果、3,873例が無作為化され、3,761例が解析された。クロピドグレルの効果は減弱しない?被験者のうち、消化管イベントを発症したのは51例だった。180日時点での発症率は、オメプラゾール投与群は1.1%、プラセボ投与群は2.9%で、オメプラゾールのハザード比は0.34(95%信頼区間:0.18~0.63、P<0.001)だった。上部消化管出血の発症も、オメプラゾール群の方が低下し、ハザード比は0.13(同:0.03~0.56、P=0.001)だった。心血管イベントは109例で発生した。オメプラゾール群は4.9%、プラセボ群は5.7%で、ハザード比0.99(同:0.68~1.44、P=0.96)、サブグループのハイリスク群でも有意な不均一性は認められなかった。重大な有害事象発生率について両群間に有意な差異は認められなかった。ただし、オメプラゾール群で、下痢のリスク増加が認められた。試験の結果を受け研究グループは、アスピリンとクロピドグレル投与を受けている患者への予防的なPPI投与は、上部消化管出血の割合を減じると結論。またクロピドグレルとオメプラゾールに心血管系の相互作用は認められなかったが、「しかし、PPI使用で心血管イベントに臨床的に意義ある差異が生じることをルールアウトする結論には至らなかった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。青年期の肥満はBMIが30以上、成人期の重度肥満は同40以上として追跡研究グループは、「US National Longitudinal Study of Adolescent Health」のデータから、1996年に12~21歳だった8,834人について、2007~2009年まで追跡した。青年期肥満の定義は、年齢が20歳未満、BMIが30以上もしくは性別のBMI年齢成長曲線で95パーセンタイル以上とした。成人期重度肥満の定義は、年齢が20歳以上、BMIが40以上とした。両定義はさらに、人種や年齢などによって補正が行われた。青年期に肥満だった女性は半数以上が、男性は3分の1以上が、成人期で重度肥満に1996年に、青年期で重度肥満だった人は79例(1.0%:95%信頼区間:0.7~1.4)で、そのうち60例(70.5%:同:57.2~83.9)は成人期になっても重度肥満だった。一方、2009年までに成人期重度肥満になっていたのは、703人(7.9%、95%信頼区間:7.4~8.5)だった。青年期に肥満だった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、男性が37.1%(同:30.6~43.6)、女性が51.3%(同:44.8~57.8)で、最も高率だったのは黒人女性の52.4%だった。多変量離散ハザードモデル分析の結果、青年期に肥満だった人は、そうでない人に比べ、成人期に重度肥満になるリスクは、16.0倍(同:12.4~20.5)に増大した。一方で、青年期に肥満ではなかった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、性別や人種にかかわらず5%未満だった。研究グループは、「本集団において、青年期の肥満は、成人期の重度肥満のリスク増大と有意に関連していた。またリスク増大は、性、人種による関連も認められた」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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アルツハイマー病へのDHA投与、認知能力低下の減速効果なし

軽度~中等度のアルツハイマー病患者に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)サプリメントを投与しても、認知能力の低下を減速する効果はないという。脳の萎縮率の低減についても効果はなかった。米国オレゴン健康科学大学神経内科部門のJoseph F. Quinn氏らが、アルツハイマー病の患者400人超について行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。これまでの疫学試験では、DHA摂取がアルツハイマー病罹患率の減少と関連することが示唆されており、動物実験では実証されていた。18ヵ月追跡し、ADAS-cog、CDR-SBスコアの変化を比較研究グループは、2007年11月~2009年5月にかけて、米国51ヵ所の医療機関で、Mini Mental State Examination(MMSE)スコアが14~26の、軽度~中等度のアルツハイマー病患者について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはDHAサプリメント2g/日を、もう一方にはプラセボを投与した。追跡期間は18ヵ月だった。主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能指標(Alzheimer’s Disease Assessment Scale:ADAS-cog)の変化と、臨床的認知症尺度の下位尺度(Clinical Dementia Rating sum of boxes:CDR-SB)の合計スコアの変化だった。またサブグループ分析として、被験者102人に対しMRIを行い、脳萎縮を測定した。ADAS-cog、CDR-SBスコア、MRIによる脳萎縮率も両群で同等被験者のうち試験を終了したのは295人、うちDHA群は171人、プラセボ群は124人だった。ADAS-cogスコアの変化は、DHA群で平均増加幅7.98(95%信頼区間:6.51~9.45)ポイントに対し、プラセボ群で同8.27(同:6.72~9.82)ポイントと、両群に有意差はなかった(p=0.41)。CDR-SBスコアも、平均増加幅がDHA群で2.87(同:2.44~3.30)ポイントに対し、プラセボ群では同2.93(同:2.44~3.42)ポイントと、有意差はなかった(p=0.68)。また、脳萎縮についても、DHA群(53人)が24.7cm3(年率1.32%)減少したのに対し、プラセボ群(49人)では同24.0cm3(年率1.29%)で、有意差は認められなかった(p=0.79)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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患者医療情報システムを活用した入院中転倒予防教育キット、転倒リスクを有意に減少

 患者医療情報システムを活用し、患者のリスクに見合った転倒予防教育キットを提供することで、入院中の転倒リスクが有意に減少することが報告された。米国ボストンを拠点とする病院経営共同体Partners HealthCare SystemのPatricia C. Dykes氏らが、1万人超の入院患者を対象に行った、多施設共同無作為化対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。入院中には、環境の変化や疾患・治療の影響などで、転倒リスクが増大することは知られている。一方で、医療情報技術を用いた転倒予防キットは、これが初めてのものだという。患者個別のポスターやパンフレット、ケアに関わる人への注意事項などを提供 研究グループは、2009年1月1日~6月30日にかけて、都市部4ヵ所の病院に入院した、1万264人を無作為に2群に分け、一方には医療情報システムを活用した転倒予防キット(fall prevention tool kit;FPTK)の提供を、もう一方には通常行われる転倒予防教育を行った。 FPTKでは、まず看護師による患者の転倒リスク評価を行い、それに基づきFPTKソフトウェアで、患者の転倒リスクに合わせた予防プログラムを作成する。その内容としては、ベッドサイドに貼るポスター、患者向けパンフレット、ケアプランや、その患者のケアに関わる主な担当者に対する患者個別の注意事項などが提供される仕組みとなっている。転倒率は1,000患者・日当たり約1人減、65歳以上では2人減 試験期間は6ヵ月、延べ入院日数は4万8,250患者・日だった。その間、転倒患者数は対照群が87人に対し、FPTK群では67人と、有意に少なかった(p=0.02)。 院内の入院部門特性で補正を行った後の転倒率は、対照群が4.18/1,000患者・日(95%信頼区間:3.45~5.06)だったのに対し、FPTK群では3.15/1,000患者・日(同:2.54~3.90)と、有意に低率だった(p=0.04)。 FPTKは特に65歳以上の患者に対して効果が高く、対照群とFPTK群との補正後、転倒率の差異は2.08/1000患者・日(同:0.61~3.56)だった(p=0.003)。 なお、転倒による怪我のリスクに関しては、両群で有意差はみられなかった。

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COPD急性増悪時の酸素療法はタイトレーションによる方が有意に転帰を改善

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時に行う酸素療法について、標準療法とされている高流酸素療法(8~10 L/分)よりも、動脈血酸素飽和度(SaO2)88~92%達成を目標に鼻プロングで酸素を供給するタイトレーション酸素療法の方が、死亡、高二酸化炭素血症、呼吸性アシドーシスの発生を有意に減少することが実証された。オーストラリア・タスマニア大学メンジース研究所のMichael A Austin氏らによる無作為化試験からの報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月18日号)に掲載された。COPDの急性増悪とみなされ搬送された405例の搬送時の処置を比較検討 COPD患者への高流酸素療法は生命予後を悪化するエビデンスが蓄積され、ルーチンに行うことの有害性についての認識は高まっているが、タイトレーション酸素療法の有効性を示すエビデンスが不足しているとして、オーストラリアをはじめ各国で、高流酸素療法が標準ケアであり続けている。開業医や救急サービス、オピニオン・リーダーへの認識変容にも至っていないとして、Austin氏らは、両酸素療法を比較する無作為化試験を実行した。 試験は、タスマニア島ホバート救急サービスの利用者を対象に、集団無作為化群間比較試験にて行われ、被験者は、COPDの急性増悪とみなされ王立ホバート病院に入院搬送される間、救急隊員により治療を受けた405例。そのうち過去5年以内に肺機能検査によりCOPDと診断がついていた人は214例だった。 被験者は、高流酸素療法群(226例)かタイトレーション酸素療法群(179例)に無作為に割り付けられ、主要転帰は、入院前あるいは入院中の死亡率としintention-to-treat解析された。COPD患者の死亡率は78%低下、全患者対象解析でも死亡率58%低下 結果、全患者405例を対象とした場合、またCOPD患者214例のみを対象とした場合の解析でも、死亡リスクはタイトレーション群の方が有意に低かった。 全患者対象解析での死亡率は、タイトレーション群4%(7例)、高流群9%(21例)で、タイトレーション群の方が、死亡率が58%低かった(相対リスク:0.42、95%信頼区間:0.20~0.89、P=0.02)。COPD患者対象解析では、同2%(2例)、9%(11例)で、死亡率は78%低かった(同:0.22、0.05~0.91、P=0.04)。 また、COPD患者でタイトレーションを受けた人は、高流酸素療法を受けた人よりも、呼吸性アシドーシスの発生が有意に少なそうだった[治療間のpH平均差:0.12(SE 0.05)、P=0.01]。また高二酸化炭素血症の発生も有意に少なそうだった[動脈二酸化炭素分圧の平均差:-33.6(SE 16.3)mmHg、P=0.02)。 Austin氏は、「本試験の結果は、息切れ患者やCOPD歴を有する患者もしくは見込まれる患者に対し、搬送時処置として、タイトレーション酸素療法の実施をルーチンとすべきという強いエビデンスを提供するものである」と結論している。

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中国の公的健康保険NCMSは、農村部医療危機を解消したか?

毛沢東主義下の中国農村部の保健医療システムは、集団農業共同体(コミューン)に対し助成金を出すシステムであったが、改革開放へと一転したことで1980年代初頭にコミューンが解散、加えて中央政府の医療財源が都市部に集中されたため、農村部住民6億4,000万人が事実上無保険者となった。数十万あった農村部病院も機能を失い、公的病院は医療価格を上昇させていったことで、農村部医療は私立の郷村医(医療補助員として知られるvillage clinicians)診療所が基盤となった。一方で医療政策は、専門医療や薬剤を処方するほど増益となる仕組みとしたため、結果として医療コストの増大と各家庭に金融リスク(財産譲渡や借金)をもたらすこととなった。そこで中国政府は2003年に農村部医療危機を解消すべく公的健康保険プログラム「NCMS」を導入した。本論は、米国カリフォルニア大学農業資源経済学のKimberly Singer Babiarz氏らによる、NCMSの影響についての調査報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月21日号)に掲載された。導入による郷村医診療所と村民への効果を調査NCMS(New Rural Cooperative Medical Scheme)は、導入後5年で農村部住民8億人をカバーするに至った世界最大規模の健康保険。世帯加入で保険料は10~20元/人、地方・中央政府からそれぞれ加入者1人当たり20~40元の助成金が拠出される。管理運営は県(county)レベルで行われ、入院費の一部償還以外は全国各地でカバーされる内容は異なる。県管理人にはカバー内容の施策(ベネフィットパッケージ)提言をすることが推奨されており、大きな地域差を生むこととなったが、2007年までに大半の群が、県立(または地区立)の病院、郷立の医療センター(医師と看護師が常駐し入院医療と複雑な外来診療を担う)、郷村医診療所(プライマリ・ケアと公衆衛生を担う)のそれぞれ外来診療までカバー領域を拡大した。また「医療費貯金」の口座開設(世帯口座)を義務付ける県もあり、預金の大方はプライマリ・ケアを担う郷村医診療所の外来診療に使われ、口座残高は翌年に繰り越す仕組みとなっている。こうした背景を踏まえBabiarz氏らは、2004年と2007年の、NCMSが個人および郷村医診療所にもたらした影響の変化について調査した。調査したのは5省(江蘇、四川、陝西、吉林、河北)、25の地方県の100村、160の郷村医診療所と村民8,339人だった。診療所のサービス利用と総収入は増大したが、純収入は増えていない郷村医診療所は、NCMSによって、週単位の患者受診者が26%増大、月総収入は29%増大していることが認められた。しかし、年間ネット総収入は変わっていなかった。また月総収入に占める薬剤収入の割合も変わっていなかった。一方NCMSに加入している村民は、郷村医診療所の利用が5%増大していたが、概して医療ケアの利用の変化は認められなかった。また、医療費の自己負担持ち出しが19%減少していた。医療ケアを利用するために財産を売ったり借金をすることのリスクも減っていた(24~63%)。こうした変化は、ベネフィットパッケージが最小の県でさえもみられた。Babiarz氏は、「NCMSは地方住民に多少なりとも金融リスクの回避をもたらし、地方の医療システムのゆがみの一部を是正した。しかし、補償のない新たな責務を郷村診療所に移行する計画もあり、診療所の財政状況をむしばんでいくようなら、それら利得は持続可能ではなくなるであろうことを強調しておく。政策立案者が再び関心を持ってプライマリ・ケアを強化すれば、NCMSの効果について、より大きな注目に値する」と結論している。

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2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。ニーズが最も高い被援助国に対して供与すべきODAを調査研究グループは、2007年と2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対する援助の流れ、および以前に実施された2003~2006年の予測の達成度を解析した。研究グループが開発したODAの追跡法を用いて、2007年と2008年の経済協力開発機構(OECD)の援助活動の完全データベースを手作業でコード化して解析を行った。援助供与額および推定人口の新たなデータを用いて、2003~2006年のデータを改訂。妊婦および子どもの健康に関するニーズが最も高い被援助国に対して、援助国はどの程度のODA供与の対象とすべきかを解析し、2003~2008年の6年間の傾向を調査した。2007、2008年の妊婦、子どもの健康関連OADの70%以上が優先国へ全開発途上国における妊婦、新生児、子どもの健康関連の活動への支援として、2007年に47億米ドル、2008年には54億米ドルが供与されていた(2008年の不変ドル換算)。これらの総額は2003年から2008年までに105%増加したが、健康関連ODAの総額も同じく105%増加したため相対的には不変であった。2015年へのカウントダウンの優先国は、2007年に34億米ドル、2008年には41億米ドルを受け取っており、これは妊婦、新生児、子どもの健康に対する全供与額のそれぞれ71.6%、75.6%に相当するものだった。妊婦および子どもの死亡率が高い国へのODAは6年間で改善されていたが、この期間を通じて、死亡率がより低く所得が高い国に比べ一人当たりのODAがはるかに低い国もあった。2003~2008年のワクチン予防接種世界同盟(GAVI Alliance)の基金および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)は、各国機関による中核的基金を上回っており、二国間共同基金も特にイギリスとアメリカによるものが著明に増加していた。著者は、「2003~2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対するODAの増加は歓迎すべきであり、より多くのニーズのある国へのODAの配分も多少改善している。にもかかわらず、これらの供与額の増加は他の健康分野に比べて優先順位が高くなったことを示すわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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自民族密度の高い地域への居住が、イギリスの少数民族の精神障害を軽減

イギリスに住む少数民族においては、自民族密度の高い地域に居住することで、一般的な精神障害が低減し、社会的支援の改善や差別体験の減少がもたらされることが、イギリスKing’s College London精神医学研究所のJayati Das-Munshi氏らの研究で示された。差別の経験は精神的健康に有害な影響を及ぼすのに対し、社会的支援やネットワークは保護的に作用することが示されている。自分と同じ民族の密度が高い地域で生活する人々は人種差別を経験する機会が減少し、このような生活環境は、イギリスに居住する少数民族にとって精神的、身体的な健康リスクの低減につながる可能性があるという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年10月21日号)掲載の報告。国の調査データを多層的に解析本研究は以下の問題の評価を目的に行われた。(1)同じ民族の人々の居住率が高い地域で生活することが、一般的な精神障害に対し保護的に作用し、差別の経験を低減して社会的支援を改善する、(2)民族密度の保護効果は、人種差別の経験の低減や社会的支援の改善によってもたらされる。イギリスの892地域から無作為に抽出された16~74歳の4,281人(アイルランド系、黒人カリブ系、インド系、パキスタン系、バングラディシュ系、白人イギリス系)を対象に、国の調査データに関して多層ロジスティック回帰モデルを用いた解析を行った。一般的精神障害は構造的面接で評価し、差別や社会的支援、ネットワークは構造的質問票で評価した。民族密度の保護効果は完全には説明できない民族密度が高い地域のほとんどが最貧地区であったが、交絡因子を補正すると、自民族密度が10%増加するごとに、一般的な精神障害のリスクが全少数民族(オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.89~0.99、p=0.02)、アイルランド系(同:0.21、0.06~0.74、p=0.01)、バングラディシュ系(同:0.75、0.62~0.91、p=0.005)において有意に低減するとのエビデンスが得られた。いくつかの人種では、自民族密度が高い地域に住むことで差別体験の報告が減少し、社会的支援やネットワークが改善されたが、これらの因子が民族密度の保護効果をもたらすことはなかった。著者は、「イギリスに住む少数民族では、自民族密度の高い地域への居住による一般的精神障害に対する保護効果が確認された。自民族密度が高い地域で生活する人々は、社会的支援が改善され、人種差別体験が減少する可能性が示唆されるが、これらの関連性によって密度効果が完全に説明できるわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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世界初、ビタミンE浸漬浸透人工股関節ライナー第二世代が日本発売

バイオメット・ジャパン株式会社は1日、ビタミンE浸漬(しんせき)/浸透(しんとう)によって、高強度を保ったまま、抗酸化性、低摩耗を獲得した第二世代ハイリークロスリンクポリエチレン(以下HXLPE)採用の人工股関節ライナー「E1 HIP リングロックライナー」を、同日より日本に導入すると発表した。この製品は、世界初のビタミンEを含んだ人工股関節ライナーであり、摩耗を抑制する材料として期待されているという。E1 Antioxidant Infused Technology(ビタミンE浸漬/浸透技術)とは、1990年代後半から開発されたHXLPEを新しい世代=第二世代として進化させ、確立したもので、以下のような特徴がある。 ・HXLPE 人工股関節ライナーを、ビタミンE液に浸漬。・インプラント内の酸化反応分子(フリーラジカル)が酸素と結合する前にビタミンEと結合させ、酸化を防止、ポリエチレンの劣化を予防。・人工股関節に求められる「機械的強度」「耐摩耗性」「抗酸化性」に加え、「持続的抗酸化性」を獲得。・従来15年~20年と言われてきた人工股関節の耐用年数を、向上させる技術として注目される。同社では、第二世代HXLPE採用において、ビタミンEの安全性はもとより、強度テスト、耐摩耗性テスト、抗酸化性テストなど様々なテストにおいて、第一世代HXLPEよりも良好な結果を獲得していることを確認したため、今回、日本市場に導入したとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.biomet.co.jp/information/2010/11/post_1.html

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「法研 六訂版 家庭医学大全科」CD-ROM版を新発売

ロゴヴィスタ株式会社は1日、パソコン用電子辞典「LogoVista電子辞典シリーズ」の新作として、Windows版および、Macintosh版『法研 六訂版 家庭医学大全科』を、2010年11月26日より発売することを発表した。パソコンショップ、カメラ系量販店、大手書店、ダウンロードサイトなどで販売するとのこと。たとえば家で急病人が出たとき、どう対処すればよいのか。同製品は、2,600を超える病気やケガについて600名以上の医療専門家が執筆した最新の家庭医学事典となっている。総項目数は5,000を超え、その圧倒的な情報量で病気やケガのことがわかりやすく解説されている。また、EBMを反映した正しい治療法について、家庭向けではあるものの質的にも高い水準を保ちながら、理解しやすいよう図表を多用するなどの工夫がされており、病名や病状、部位や年齢など、あらゆる角度から検索できるつくりになっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.logovista.co.jp/LVERP/information/news/2010-1101-daizenka6.html

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冠動脈心疾患のリスク評価におけるSNPに基づく遺伝的リスクスコアの有用性

冠動脈心疾患に関連する13の一塩基多型(SNP)に基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能なことが、フィンランド・ヘルシンキ大学のSamuli Ripatti氏らが行った症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果から明らかとなった。冠動脈心疾患の原因は複雑であり、ライフスタイルや遺伝的因子の影響が大きく、早発性の冠動脈心疾患の家族歴は独立のリスク因子である。症例対照研究のデザインを用いた全ゲノム関連試験では、冠動脈心疾患、心筋梗塞あるいはこの双方と関連する13の遺伝子領域のSNPが同定されている。Lancet誌2010年10月23日号掲載の報告。13のSNPと冠動脈心疾患の関連を評価研究グループは、プロスペクティブなコホート研究によって、SNPと冠動脈心疾患の関連の外的妥当性を確立し、より正確にリスクを予測するための症例対照研究を実施した。最近発見された13のSNPと冠動脈心疾患の関連について検討するために、フィンランドとスウェーデンにおいて症例対照研究(冠動脈心疾患患者3,829例および非冠動脈心疾患の対照4万8,897人)およびプロスペクティブなコホート研究(心血管疾患のない3万725人)を行った。13のSNPを多座遺伝的リスクスコア(multilocus genetic risk score)でモデル化し、Cox比例ハザードモデルを用いて遺伝的リスクスコアと冠動脈心疾患発症の関連を推定した。症例対照研究では、ロジスティック回帰モデルを用いて個々のSNPと遺伝的リスクスコアの五分位数の関連について解析した。遺伝的リスクスコアと初回冠動脈心疾患の発症が相関コホート研究では、フォローアップ期間中央値10.7年の間に1,264人が初回冠動脈心疾患を発症した。遺伝的リスクスコアは初回冠動脈心疾患の発症と相関を示した。遺伝的リスクスコアの五分位数が最低の群と比較すると、最高の群は従来のリスクスコアで補正したモデルにおける冠動脈心疾患のリスクが1.66倍に上昇していた(95%信頼区間:1.35~2.04、線形傾向に対するp=0.00000000073)。家族歴で補正しても、これらの推定値に変化はなかった。遺伝的リスクスコアは従来のリスク因子や家族歴で補正してもC indexを改善せず(p=0.19)、net reclassification improvementにも影響を及ぼさなかった(2.2%、p=0.18)。しかし、integrated discrimination indexに対してはわずかな影響が確認された(0.004、p=0.0006)。症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果は類似していた。著者は、「冠動脈心疾患に関連する13のSNPに基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能である。これら13のSNPの臨床使用の可能性については明らかではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ADHDの遺伝学的なエビデンスが全ゲノム解析で示された

注意欠陥・多動性障害(ADHD)では巨大なコピー数多型(copy number variant:CNV)が増加していることを示す遺伝学的なエビデンスが、イギリス・カーディフ大学のNigel M Williams氏らによる全ゲノム解析によってもたらされた。ADHDは高い遺伝性を示すが、特異的な感受性遺伝子は同定されていないため、疾患ではなく主に社会的構成概念であるとする主張も消えていない。ADHDに類似の神経発達障害では、CNVとして知られる巨大で希少な染色体の欠失や複製の関連がすでに確認されているという。Lancet誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月30日号)掲載の報告。ADHD患児410例と対照1,156人の全ゲノム解析を実施研究グループは、ADHDの発症におけるCNVの影響を評価し、同定されたCNVがすでに自閉症や統合失調症で同定されている遺伝子座に及ぼす影響について検討した。ADHD患児410例および1958 British Birth Cohortから人種をマッチさせて抽出した対照1,156人について全ゲノム解析を行った。地域の小児精神病および小児科外来クリニックから、5~17歳の白人イギリス人家系の子どもで、ADHDあるいは多動性障害の診断基準を満たすが、統合失調症や自閉症ではない患児が登録された。ADHD群および対照群の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を二つのアレイを用いて決定した。CNV解析は二つのアレイに共通のSNPに限定し、高品質のデータを持つサンプルだけを対象とした。ADHD群のCNVはcomparative genomic hybridization(CGH)法で確定した。全ゲノムにおける巨大で(>500kb)、希少な(集団当たりの頻度<1%)CNVの負荷は、サンプルごとのCNV数の平均値に従って評価し、有意性の評価はpermutation法で行った。同定された全CNVおよび自閉症や統合失調症との関連が確認されている20の遺伝子座の確定された領域において、特異的な関連性の検査を行った。得られた結果につき、アイスランド人のAHDH患児825例および対照3万5,243人で検証した。ADHDは単なる社会的構成概念ではないすべての解析用のデータが得られたのは、ADHD群366例および対照群1,047人であった。巨大で希少なCNVは、ADHD群で57が、対照群では78が同定され、その頻度はADHD群が対照群よりも有意に多かった(0.156 vs. 0.075、p=0.000089)。このCNVの増加は、特に知能障害がみられる患児で大きかった(0.424、p=0.000002)が、このような障害がない場合でも有意差が認められた(0.125、p=0.0077)。ADHD群では、すでに統合失調症で同定されている染色体16p13.11の過剰な複製がみられ(複数の検査で補正後のp=0.0008)、アイスランド人のサンプルでも同様の知見が得られた(p=0.031)。ADHD群で同定されたCNVは、自閉症および統合失調症の双方で報告されている遺伝子座で有意に増強されていた(それぞれp=0.0095、p=0.010)。著者は、「本研究により、ADHDでは巨大なCNVが増加していることを示す遺伝学的なエビデンスがもたらされた。これは、ADHDが単なる社会的構成概念ではないことを示唆する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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抗凝固療法のマネジメント、自己測定管理 vs 外来管理

ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)抗凝固療法の効果を臨床で十分に享受するためのマネジメント方法について、有望な戦略と示唆されていた自宅で測定できる携帯型指穿刺装置を使った自己測定管理が、外来で行う質の高い静脈血漿検査による測定管理にまさらなかったことが報告された。全米28の退役軍人病院から約2,900人が参加した、Durham退役軍人病院のDavid B. Matchar氏らによる前向き無作為化非盲検試験「THINRS」からの報告で、NEJM誌2010年10月21日号で掲載された。これまで報告されていたほど、初発の脳卒中・大出血・死亡までの期間について、毎週行う自己測定管理が毎月の外来管理と比べ長くはなかったという。2,922例を無作為化し、初発重大イベントまでの期間を評価自己測定管理は、外来管理よりも測定頻度や患者の治療参加を高めることができ、臨床転帰が改善される可能性があるとされる。そこでTHINRS(The Home International Normalized Ratio Study)では、2003年8月~2008年5月に、人工心臓弁置換または心房細動発症のためワルファリン投与を受けており、POCT(Point of Care Testing)のINR測定機器を使う能力があった2,922例を、自宅での自己測定管理群と外来での質の高い測定管理群に無作為化し追跡した。主要エンドポイントは、初発重大イベント(脳卒中、大出血エピソード、死亡)までの期間。被験者は2.0~4.75年、合計8,730人・年が追跡された。自己測定管理群、重大イベントリスク低下の優越性なし、ただし……結果、自己測定管理群の初発重大イベントまでの期間は、外来測定管理群と比べて有意に長くはなかった(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.75~1.04、P=0.14)。両群の臨床転帰の発生率は、自己測定管理群で軽度の出血エピソードが多かったことを除けば、同程度だった。ただ自己測定管理群は、追跡期間中のINRの目標値範囲内達成について、わずかだが有意な改善点として示された(両群間の絶対差:3.8ポイント、P

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閉経後女性へのホルモン補充療法、乳がん死亡リスクも増加の傾向

閉経後女性への、エストロゲン+プロゲスチンのホルモン補充療法は、侵襲性乳がんやリンパ節転移陽性のリスクが増加すること、乳がんによる死亡のリスクも同併用療法とともに増加する傾向にあることが報告された。米国UCLAメディカルセンターのRowan T. Chlebowski氏らが、約1万7,000人の女性をおよそ11年追跡した「Women’s Health Initiative」(WHI)から明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表した。すでに発表された追跡期間約8年のWHIの結果で、エストロゲン+プロゲスチン投与により乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。閉経後女性1万6,608人を平均11年追跡WHIは、米国内40ヵ所の医療機関を通じ、50~79歳の閉経後の女性で子宮摘出術を受けていない1万6,608人を対象に試験が行われた。被験者は無作為に2群に分けられ、一方には結合型ウマエストロゲン0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/日の合剤(Prempro)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。追跡は、当初2005年3月31日まで予定されていたが、それ以降、当初被験者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡した。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差:2.7年)だった。プラセボ群に対し乳がん死亡1.96倍、乳がん発症後総死亡率1.57倍その結果、侵襲性の乳がんを発症したのは、プラセボ群では293人(年率0.34%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では385人(年率0.42%)と、1.25倍だった(95%信頼区間:1.07~1.46、p=0.004)。両群の乳がんは、組織学的所見、グレードについての差はみられなかったものの、リンパ節転移陽性となったのは、プラセボ群では43人(16.2%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では81人(23.7%)と、1.78倍に上った(95%信頼区間:1.23~2.58、p=0.03)。また乳がんによる死亡も、プラセボ群が12人(年率0.01%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が25人(年率0.03%)と、1.96倍だった(同:1.00~4.04、p=0.049)。さらに乳がん発症後の総死亡率も、プラセボ群が31人(年率0.03%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が51人(年率0.05%)と、1.57倍だった(同:1.01~2.48、p=0.045)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ACSに対するticagrelor、遺伝子型を問わずクロピドグレルよりも有効:PLATO試験サブ解析

急性冠症候群(ACS)患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレル(商品名:プラビックス)よりも有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らが行ったPLATO試験の遺伝子解析で明らかとなった。本試験では、ticagrelorの高い効果とともに冠動脈バイパス術(CABG)非施行例では大出血が増加することが確認されている。一方、CYP2C19遺伝子、ABCB1遺伝子の遺伝子型がクロピドグレルの効果に影響を及ぼすことが知られているが、ticagrelorのアウトカムへの影響は解明されていなかった。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。遺伝子型と治療アウトカムの関連を評価PLATO試験の研究グループは、ACS患者のCYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型が、ticagrelorとクロピドグレルのアウトカムの差や各治療群内のアウトカムの違いに及ぼす影響を検討するサブ解析を行った。PLATO試験に参加したACS患者から得られたDNAサンプルを用いて、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子(*2、*3、*4、*5、*6、*7、*8)、機能亢進型対立遺伝子*17およびABCB1遺伝子の一塩基多型(SNP)3435C→Tの解析を行った。CYP2C19遺伝子型は機能喪失型対立遺伝子の有無で、ABCB1遺伝子型は予測される遺伝子発現の程度(高発現、中発現、低発現)で層別化した。効果に関する主要評価項目は、最長12ヵ月のticagrelorおよびクロピドグレル治療後の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。ticagrelorを使用すれば事前の遺伝子検査は不要に遺伝子解析には1万285例がサンプルを提供した。主要評価項目の発現率は、CYP2C19遺伝子型の有無にかかわらずticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった。すなわち、いずれかの機能喪失型対立遺伝子を有する患者の主要評価項目発現率はticagrelor群8.6%、クロピドグレル群11.2%(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.60~0.99、p=0.0380)、機能喪失型対立遺伝子を持たない場合はそれぞれ8.8%、10.0%(同:0.86、0.74~1.01、p=0.0608)であった(相互作用のp値=0.46)。ABCB1遺伝子についても、主要評価項目の発現率はすべての遺伝子型でticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった(高発現群との相互作用のp値=0.39、8.8% vs. 11.9%、ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.55~0.92)。クロピドグレル群では、治療30日の主要評価項目の発現率はいずれかのCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する患者が、どの機能喪失型対立遺伝子も持たない患者に比べて高く(5.7% vs. 3.8%、p=0.028)、機能喪失型対立遺伝子を持つ患者のイベント発現率は、治療早期からticagrelor群がクロピドグレル群よりも大差をもって低かった。CYP2C19機能亢進型対立遺伝子を有するクロピドグレル群の患者は、これを持たない患者や機能喪失型対立遺伝子を持つ患者に比べ、大出血の頻度が有意に高かった(11.9% vs. 9.5%、p=0.022)が、薬剤の種類と個々の遺伝子型の相互作用による大出血の程度には差を認めなかった。著者は、「ACS患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレルよりも有効なことが示された」と結論し、「クロピドグレルの代わりにticagrelorを使用すれば、現在の2剤併用抗血小板療法の前に行うことを推奨されている遺伝子検査は不要となる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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ショ糖は、痛みを伴う処置を受ける新生児の疼痛緩和に有効か

ショ糖の経口投与は、痛みを伴う処置を受けた新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応に影響を及ぼさず、鎮痛薬としては有効ではないことが、イギリス・オックスフォード大学のRebeccah Slater氏らが行った無作為化試験で示唆された。多くの新生児が、繰り返し施行される侵襲的処置を受けるために入院するが、これらの処置による疼痛が神経発達に及ぼす短期的、長期的な有害作用のエビデンスが蓄積されている。ショ糖の行動的および生理的な疼痛スコアの改善効果を根拠に、新生児の処置痛の軽減にその経口投与が推奨されているが、これらの疼痛スコアの改善は必ずしも新生児の疼痛除去に関連しない可能性があるという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。ショ糖と滅菌水で、脳、脊髄の疼痛反応を比較研究グループは、新生児に対する痛みを伴う処置がもたらす脳および脊髄の疼痛反応を、ショ糖の経口投与が軽減するか否かを検討する二重盲検無作為化対照比較試験を行った。2009年2月~2010年3月までに、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ病院で誕生した新生児59人が登録された。これらの新生児が、痛みを伴う処置として、臨床的に必要とされる血液サンプルの採取を目的に踵を穿刺された。この処置に先立ち、新生児は、24%ショ糖液0.5mLあるいは滅菌水0.5mLを1mL注射器で舌前面に直接に滴下する群のいずれかに無作為に割り付けられた。研究者、担当医、両親には投与された溶液の情報は知らされなかった。主要評価項目は、1回の穿刺で引き起こされた脳の疼痛反応(脳波検査のデータを記録し、主成分分析で判定)とし、副次評価項目は行動的(顔の表情の変化など)、生理的(脳波、パルス酸素濃度測定など)指標や観察的疼痛スコア[新生児の疼痛評価の指標である未熟児疼痛プロファイル(PIPP)]による評価、および脊髄侵害反射離脱反応とした。観察的疼痛スコアは改善したが、脳、脊髄の疼痛反応に差はないショ糖群に29人が、滅菌水群は30人の新生児が割り付けられ、主要評価項目の解析はそれぞれ20人、24人で可能であった。穿刺後の脳の疼痛反応の平均値は、ショ糖群が0.10(95%信頼区間:0.04~0.16)、滅菌水群は0.08(同:0.04~0.12)であり、両群間に差を認めなかった(p=0.46)。刺激を受けた足の大腿二頭筋から得られた脊髄侵害反射離脱の程度および反応潜時には、両群間で有意な差はみられなかった。平均PIPPスコアは、ショ糖群が5.8(95%信頼区間:3.7~7.8)と、滅菌水群の8.5(同:7.3~9.8)に比べ有意に低く(p=0.02)、投与後に表情の変化がみられない新生児の割合もショ糖群で多かった[35%(7/20人)vs. 0%(0/24人)、p<0.0001]。著者は、「これらのデータは、ショ糖の経口投与は新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応には影響を及ぼさないことを示唆するため、鎮痛薬としては有効でない可能性がある」と結論し、「ショ糖の投与により、痛みを伴う処置後の新生児の臨床的な観察的疼痛スコアが改善されても、それを疼痛の除去と解釈すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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2倍用量クロピドグレル、PCI施行ACS患者に対する有用性を確認

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行された急性冠症候群(ACS)患者に対する抗血栓療法では、標準の2倍用量のクロピドグレル(商品名:プラビックス)を7日間投与するレジメンが、標準用量に比べ、心血管イベントおよびステント血栓症の発生を有意に低減することが、カナダMcMaster大学(ハミルトン)のShamir R Mehta氏らが行った無作為化試験(CURRENT-OASIS 7試験)で示された。PCI施行例では、クロピドグレルとアスピリンの併用療法が最も頻用されているが、近年、ACSに対する早期PCI施行例の増加に伴い、より迅速な作用の発現とより高度な抗血栓作用を有するレジメンの開発が求められている。クロピドグレルの負荷用量を2倍に増量し、引き続き標準用量で維持療法を行うアプローチの有用性がいくつかの試験で示唆されているという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。2剤の2用量を評価する2×2ファクトリアル無作為化試験CURRENT-OASIS 7の研究グループは、PCI施行例における重篤な冠動脈イベントおよびステント血栓症の予防のためのクロピドグレルおよびアスピリンの至適用量を検討する2×2ファクトリアルデザインの無作為化試験を行った。2006年6月~2009年7月までに、39ヵ国597施設から早期PCIの適応とされたACS患者2万5,086例が登録された。これらの患者が、クロピドグレルを2倍用量(負荷用量/日:初日600mg、2~7日150mg、8~30日75mg、1万2,520例)あるいは標準用量(負荷用量/日:初日300mg、2~30日75mg、1万2,566例)投与する群に無作為に割り付けされ、引き続き各群がアスピリンを高用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日300~325mg)あるいは低用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日75~100mg)投与する群に無作為に割り付けられた。クロピドグレルの比較は二重盲検下に行われ、アスピリンの比較はアウトカム評価のマスク下にオープンラベルで実施された。事前に規定された解析は実際にPCIを施行された1万7,263例(2倍/高用量群:4,298例、2倍/低用量群:4,262例、標準/高用量群:4,326例、標準/低用量群:4,377例)について行われた。主要評価項目は、30日以内の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生とし、PCI施行の傾向性で補正の上、intention-to-treat解析が行われた。クロピドグレル2倍用量群で主要評価項目の発生が14%低下30日間のフォローアップを完遂したのは、クロピドグレルの2倍用量群8,560例中8,558例、標準用量群8,703例中8,702例で、アスピリンの高用量群8,624例中8,622例、低用量群8,639例中8,638例であった。主要評価項目の発生率は、クロピドグレルの2倍用量群が3.9%(330/8,560例)と、標準用量群の4.5%(392/8,703例)に比べ有意に低下した(補正ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.74~0.99、p=0.039)。definiteに分類されるステント血栓症の発生率は、それぞれ0.7%(58/8,560例)、1.3%(111/8,703例)であり、2倍用量群で有意に減少した(同:0.54、0.39~0.74、p=0.0001)。アスピリン高用量群における主要評価項目の発生率は4.1%(356/8,624例)、低用量群は4.2%(366/8,639例)であり、両群間に差を認めなかった(同:0.98、0.84~1.13、p=0.76)。大出血の頻度は、クロピドグレル2倍用量群[1.6%(139/8,560例)]が標準用量群[1.1%(99/8,703例)]よりも有意に高かった(同:1.41、1.09~1.83、p=0.009)が、アスピリンの高用量群[1.5%(128/8,624例)]と低用量群[1.3%(110/8,639例)]では差はみられなかった(同:1.18、0.92~1.53、p=0.20)。著者は、「PCI施行ACS患者では、クロピドグレルの7日間2倍用量投与により、心血管イベントおよびステント血栓症が標準用量投与に比べ低減したが、アスピリンの高用量と低用量量では差はなかった」と結論し、「早期の侵襲的治療戦略としてPCIの適応とされたACS患者の場合、すべての症例でクロピドグレル2倍用量レジメンを考慮してよい」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重度外傷性脳損傷・非循環血液量減少性ショックに、高張食塩水投与は有意ではない

院外での緊急医療場面で、重度外傷性脳損傷で循環血液量減少性ショックの認められない人に対し、高張食塩水を投与しても、生理食塩水を投与した場合と比べ、6ヵ月後の神経学的アウトカムは同等であることが報告された。米国ハーバービュー医療センター救急医療部門のEileen M. Bulger氏らが、外傷性脳損傷を受けた15歳以上1,000人超について、プラセボ対照二重盲検試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月6日号で発表した。被験者を3群に分け、高張食塩水/デキストラン、高張食塩水のみ、生理食塩水を投与研究グループは2006年5月~2009年5月にかけて、114ヵ所の北米緊急医療サービス機関を通じ、外傷性脳損傷を被った15歳以上で、循環血液量減少性ショックが認められない、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)8以下の患者を対象とした。試験適格患者は2,122人で、3群に無作為化された。一群には7.5%食塩水と6%デキストラン(高張食塩水/デキストラン群)を、別の群には7.5%食塩水(高張食塩水群)を、もう一つの群には0.9%生理食塩水を、それぞれ250mLボーラス投与し追跡した。主要評価項目は、6ヵ月後の神経学的アウトカムが、エクステンデッド・グラスゴー・アウトカム・スケール(GOSE)で4以下か否かとされた。被験者のうち、6ヵ月追跡された1,331人の中のアウトカムデータが得られた1,087人について、分析を行った。6ヵ月後のGOSEスコア、生存率、障害評価スコア、いずれも3群間に有意差なしその結果、6ヵ月後のGOSEスコアが4以下だった人の割合は、高張食塩水/デキストラン群では53.7%、生理食塩水群では51.5%と、両群間に有意差はなかった(両群差:2.2%、95%信頼区間:-4.5~9.0)。また高張食塩液群の同割合は54.3%で、こちらも生理食塩水群との間に有意差はなかった(両群格差:2.9%、同:-4.0~9.7)(3群格差に関するp=0.67)。GOSEスコアや、障害評価スコア(Disability Rating Score)の分布についても、各群で有意差はみられなかった。28日生存率も、高張食塩水/デキストラン群が74.3%、高張食塩水群が75.7%、生理食塩水群が75.1%と、有意差はなかった(p=0.88)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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