重度外傷性脳損傷・非循環血液量減少性ショックに、高張食塩水投与は有意ではない

提供元:ケアネット

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公開日:2010/10/19

 



院外での緊急医療場面で、重度外傷性脳損傷で循環血液量減少性ショックの認められない人に対し、高張食塩水を投与しても、生理食塩水を投与した場合と比べ、6ヵ月後の神経学的アウトカムは同等であることが報告された。米国ハーバービュー医療センター救急医療部門のEileen M. Bulger氏らが、外傷性脳損傷を受けた15歳以上1,000人超について、プラセボ対照二重盲検試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月6日号で発表した。

被験者を3群に分け、高張食塩水/デキストラン、高張食塩水のみ、生理食塩水を投与




研究グループは2006年5月~2009年5月にかけて、114ヵ所の北米緊急医療サービス機関を通じ、外傷性脳損傷を被った15歳以上で、循環血液量減少性ショックが認められない、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)8以下の患者を対象とした。

試験適格患者は2,122人で、3群に無作為化された。一群には7.5%食塩水と6%デキストラン(高張食塩水/デキストラン群)を、別の群には7.5%食塩水(高張食塩水群)を、もう一つの群には0.9%生理食塩水を、それぞれ250mLボーラス投与し追跡した。

主要評価項目は、6ヵ月後の神経学的アウトカムが、エクステンデッド・グラスゴー・アウトカム・スケール(GOSE)で4以下か否かとされた。被験者のうち、6ヵ月追跡された1,331人の中のアウトカムデータが得られた1,087人について、分析を行った。

6ヵ月後のGOSEスコア、生存率、障害評価スコア、いずれも3群間に有意差なし




その結果、6ヵ月後のGOSEスコアが4以下だった人の割合は、高張食塩水/デキストラン群では53.7%、生理食塩水群では51.5%と、両群間に有意差はなかった(両群差:2.2%、95%信頼区間:-4.5~9.0)。また高張食塩液群の同割合は54.3%で、こちらも生理食塩水群との間に有意差はなかった(両群格差:2.9%、同:-4.0~9.7)(3群格差に関するp=0.67)。

GOSEスコアや、障害評価スコア(Disability Rating Score)の分布についても、各群で有意差はみられなかった。

28日生存率も、高張食塩水/デキストラン群が74.3%、高張食塩水群が75.7%、生理食塩水群が75.1%と、有意差はなかった(p=0.88)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)