2倍用量クロピドグレル、PCI施行ACS患者に対する有用性を確認

提供元:ケアネット

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公開日:2010/10/21

 



経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行された急性冠症候群(ACS)患者に対する抗血栓療法では、標準の2倍用量のクロピドグレル(商品名:プラビックス)を7日間投与するレジメンが、標準用量に比べ、心血管イベントおよびステント血栓症の発生を有意に低減することが、カナダMcMaster大学(ハミルトン)のShamir R Mehta氏らが行った無作為化試験(CURRENT-OASIS 7試験)で示された。PCI施行例では、クロピドグレルとアスピリンの併用療法が最も頻用されているが、近年、ACSに対する早期PCI施行例の増加に伴い、より迅速な作用の発現とより高度な抗血栓作用を有するレジメンの開発が求められている。クロピドグレルの負荷用量を2倍に増量し、引き続き標準用量で維持療法を行うアプローチの有用性がいくつかの試験で示唆されているという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。

2剤の2用量を評価する2×2ファクトリアル無作為化試験




CURRENT-OASIS 7の研究グループは、PCI施行例における重篤な冠動脈イベントおよびステント血栓症の予防のためのクロピドグレルおよびアスピリンの至適用量を検討する2×2ファクトリアルデザインの無作為化試験を行った。

2006年6月~2009年7月までに、39ヵ国597施設から早期PCIの適応とされたACS患者2万5,086例が登録された。これらの患者が、クロピドグレルを2倍用量(負荷用量/日:初日600mg、2~7日150mg、8~30日75mg、1万2,520例)あるいは標準用量(負荷用量/日:初日300mg、2~30日75mg、1万2,566例)投与する群に無作為に割り付けされ、引き続き各群がアスピリンを高用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日300~325mg)あるいは低用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日75~100mg)投与する群に無作為に割り付けられた。

クロピドグレルの比較は二重盲検下に行われ、アスピリンの比較はアウトカム評価のマスク下にオープンラベルで実施された。事前に規定された解析は実際にPCIを施行された1万7,263例(2倍/高用量群:4,298例、2倍/低用量群:4,262例、標準/高用量群:4,326例、標準/低用量群:4,377例)について行われた。

主要評価項目は、30日以内の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生とし、PCI施行の傾向性で補正の上、intention-to-treat解析が行われた。

クロピドグレル2倍用量群で主要評価項目の発生が14%低下




30日間のフォローアップを完遂したのは、クロピドグレルの2倍用量群8,560例中8,558例、標準用量群8,703例中8,702例で、アスピリンの高用量群8,624例中8,622例、低用量群8,639例中8,638例であった。

主要評価項目の発生率は、クロピドグレルの2倍用量群が3.9%(330/8,560例)と、標準用量群の4.5%(392/8,703例)に比べ有意に低下した(補正ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.74~0.99、p=0.039)。definiteに分類されるステント血栓症の発生率は、それぞれ0.7%(58/8,560例)、1.3%(111/8,703例)であり、2倍用量群で有意に減少した(同:0.54、0.39~0.74、p=0.0001)。

アスピリン高用量群における主要評価項目の発生率は4.1%(356/8,624例)、低用量群は4.2%(366/8,639例)であり、両群間に差を認めなかった(同:0.98、0.84~1.13、p=0.76)。

大出血の頻度は、クロピドグレル2倍用量群[1.6%(139/8,560例)]が標準用量群[1.1%(99/8,703例)]よりも有意に高かった(同:1.41、1.09~1.83、p=0.009)が、アスピリンの高用量群[1.5%(128/8,624例)]と低用量群[1.3%(110/8,639例)]では差はみられなかった(同:1.18、0.92~1.53、p=0.20)。

著者は、「PCI施行ACS患者では、クロピドグレルの7日間2倍用量投与により、心血管イベントおよびステント血栓症が標準用量投与に比べ低減したが、アスピリンの高用量と低用量量では差はなかった」と結論し、「早期の侵襲的治療戦略としてPCIの適応とされたACS患者の場合、すべての症例でクロピドグレル2倍用量レジメンを考慮してよい」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)