COPD急性増悪時の酸素療法はタイトレーションによる方が有意に転帰を改善

提供元:ケアネット

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公開日:2010/11/12

 

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時に行う酸素療法について、標準療法とされている高流酸素療法(8~10 L/分)よりも、動脈血酸素飽和度(SaO2)88~92%達成を目標に鼻プロングで酸素を供給するタイトレーション酸素療法の方が、死亡、高二酸化炭素血症、呼吸性アシドーシスの発生を有意に減少することが実証された。オーストラリア・タスマニア大学メンジース研究所のMichael A Austin氏らによる無作為化試験からの報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月18日号)に掲載された。

COPDの急性増悪とみなされ搬送された405例の搬送時の処置を比較検討

 COPD患者への高流酸素療法は生命予後を悪化するエビデンスが蓄積され、ルーチンに行うことの有害性についての認識は高まっているが、タイトレーション酸素療法の有効性を示すエビデンスが不足しているとして、オーストラリアをはじめ各国で、高流酸素療法が標準ケアであり続けている。開業医や救急サービス、オピニオン・リーダーへの認識変容にも至っていないとして、Austin氏らは、両酸素療法を比較する無作為化試験を実行した。

 試験は、タスマニア島ホバート救急サービスの利用者を対象に、集団無作為化群間比較試験にて行われ、被験者は、COPDの急性増悪とみなされ王立ホバート病院に入院搬送される間、救急隊員により治療を受けた405例。そのうち過去5年以内に肺機能検査によりCOPDと診断がついていた人は214例だった。

 被験者は、高流酸素療法群(226例)かタイトレーション酸素療法群(179例)に無作為に割り付けられ、主要転帰は、入院前あるいは入院中の死亡率としintention-to-treat解析された。

COPD患者の死亡率は78%低下、全患者対象解析でも死亡率58%低下

 結果、全患者405例を対象とした場合、またCOPD患者214例のみを対象とした場合の解析でも、死亡リスクはタイトレーション群の方が有意に低かった。

 全患者対象解析での死亡率は、タイトレーション群4%(7例)、高流群9%(21例)で、タイトレーション群の方が、死亡率が58%低かった(相対リスク:0.42、95%信頼区間:0.20~0.89、P=0.02)。COPD患者対象解析では、同2%(2例)、9%(11例)で、死亡率は78%低かった(同:0.22、0.05~0.91、P=0.04)。

 また、COPD患者でタイトレーションを受けた人は、高流酸素療法を受けた人よりも、呼吸性アシドーシスの発生が有意に少なそうだった[治療間のpH平均差:0.12(SE 0.05)、P=0.01]。また高二酸化炭素血症の発生も有意に少なそうだった[動脈二酸化炭素分圧の平均差:-33.6(SE 16.3)mmHg、P=0.02)。

 Austin氏は、「本試験の結果は、息切れ患者やCOPD歴を有する患者もしくは見込まれる患者に対し、搬送時処置として、タイトレーション酸素療法の実施をルーチンとすべきという強いエビデンスを提供するものである」と結論している。