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ヨガの呼吸法や瞑想、産前うつ軽減によい

 産前うつは、母体と胎児のどちらに対しても身体的、精神的な悪影響を及ぼす可能性がある。産前うつに対するヨガの有効性を明らかにするため、中国・第二軍医大学のHong Gong氏らは、6件の無作為化対照試験(RCT)の妊婦375例を対象に、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、呼吸法や瞑想を通して深いリラックスを促すタイプのヨガにより、うつが軽減されることを報告した。BMC Psychiatry誌オンライン版2015年2月5日号の掲載報告。 本検討では、産前うつマネジメント介入としてヨガの効果を評価した。2014年7月までに本件に関して報告のあったすべての試験を、PubMed、Embase、Cochrane Library、PsycINFOを用いて検索し、RCTのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューの対象として6件のRCTを特定した。・対象は妊婦375例で、大半が20~40歳であった。・うつ病の診断は、DSM-IV構造化臨床面接およびCES-D(うつ病自己評価尺度)のスコアに基づいて行った。・ヨガ群は、対照群(標準的産前ケア群、標準的産前エクササイズ群、ソーシャルサポート群など)と比較し、うつレベルの有意な低下が認められた(標準化平均差[SMD]:-0.59、95%信頼区間[CI]:-0.94~-0.25、p=0.0007)。・1群のサブグループ解析において、産前うつ女性および非うつ女性のいずれも、ヨガ群では対照群と比べうつ症状レベルが有意に低いことが示された(産前うつ女性SMD:-0.46、95%CI:-0.90~-0.03、p=0.04 / 産前非うつ女性SMD:-0.87、-1.22~-0.52、p<0.00001)。・また、2種類のヨガ、すなわち「身体的運動を中心とするヨガ」と、それに加えて「ヨガの呼吸法(pranayama)や瞑想、深いリラックスを促す統合ヨガ」の産前うつに対する効果を予測するサブグループ解析も行った。・その結果、統合ヨガ群でうつレベルの有意な低下が示された(SMD:-0.79、95%CI:-1.07~-0.51、p<0.00001)。身体的運動を中心としたヨガ群では有意な低下は認められなかった(同:-0.41、-1.01~0.18、p=0.17)。・妊婦における産前のヨガ運動は、うつ症状の部分的軽減に有効な可能性が示唆された。関連医療ニュース 産後うつ病への抗うつ薬治療、その課題は ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

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降圧強化治療はタイムリーな管理が重要/BMJ

 高血圧治療において、収縮期血圧強化閾値が150mmHg超であること、血圧上昇後の降圧強化治療開始が1.4ヵ月超遅れること、強化治療後の次回受診までの期間が2.7ヵ月超空くことは、急性心血管イベントや死亡の増大と関連することが明らかにされた。米国ベスイスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのWenxin Xu氏らが住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、報告した。著者は、「高血圧患者の治療ではタイムリーな管理とフォローアップが重要であることを支持する所見が示された」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年2月5日号掲載の報告より。8万8,756例のプライマリケアデータベースを基に分析 検討は、1986~2010年の英国プライマリケア研究データベースHealth Improvement Networkを基に行われた。同データベースの高血圧患者8万8,756例について、降圧治療戦略別に急性心血管イベント、全死因死亡の発生率を調べた。治療戦略の評価は各患者10年間にわたって行われ、期間中の収縮期血圧強化閾値、強化治療開始までの期間、そしてフォローアップ(強化治療開始後の次回外来受診血圧測定)までの期間を特定して検討した。年齢、性別、喫煙、社会経済的状態、糖尿病歴、心血管疾患または慢性腎臓病歴、チャールソン併存疾患指数、BMI、総投薬量に対する実服薬量の割合(medication possession ratio:MPR)でみた服薬コンプライアンス、ベースライン時の血圧で補正を行った。「150mmHg超」「1.4ヵ月超」「2.7ヵ月超」、転帰リスク増大 対象者はベースライン時、平均年齢58.5歳、男性41.5%、平均BMIは27.6、過去/現在喫煙者56.5%、心血管疾患歴のある人は11.2%などであった。 10年間の治療戦略評価期間後の追跡期間中央値37.4ヵ月の間に、9,985例(11.3%)が急性心血管イベントまたは死亡に至っていた。 転帰リスクの差は、収縮期血圧強化閾値130~150mmHgではみられなかったが、150mmHg超では、リスクは次第に増大する関連が認められた(強化閾値160mmHgのハザード比[HR]:1.21、同170mmHgのHR:1.42、同180mmHg以上のHR:1.69、いずれもp<0.001)。 血圧上昇後の強化治療開始までの期間については五分位範囲で評価した。その結果、転帰リスクは最低位(0~1.4ヵ月に開始)から最高位(15.3ヵ月以上で開始)まで次第に増大する関連が認められた(第2分位[1.4~4.7ヵ月に開始]のHR:1.12、95%信頼区間[CI]:1.05~1.20、p=0.009)。 フォローアップまでの期間についても五分位範囲で評価した結果、最高位(2.7ヵ月超)で、転帰リスク増大との有意な関連が認められた(HR:1.18、95%CI:1.11~1.25、p<0.001)。

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溺水児の蘇生術、30分が目処か/BMJ

 心停止・低体温の溺水児の蘇生について、30分以内に自己心拍再開がみられなかった場合、予後はきわめて不良であることを、オランダ・フローニンゲン大学のJ K Kieboom氏らが後ろ向きコホート研究の結果、報告した。30分以内に自己心拍再開した場合は神経学的転帰は良好となる可能性は高まり、とくに溺水事故が冬に起きた場合にその傾向が認められたという。著者は、「所見は、心停止・低体温となった溺水児について30分超の蘇生治療の価値に疑問符を付けるものであった」とまとめている。BMJ誌2015年2月10日号掲載の報告より。30分超施術児のうち89%死亡、生存児も全例が重度の神経学的障害 検討は、オランダの8つの大学病院の救急部門と小児ICUで行われ、同院に搬送または入室した、心停止および低体温が認められた16歳以下の溺水児を対象とした。 主要評価項目は、溺水後1年の生存および神経学的アウトカムとした。死亡、植物状態での生存、重度の神経学的障害(paediatric cerebral performance category[PCPC]4以上)を不良アウトカムと定義し評価した。 1993~2012年の間に、心停止・低体温の溺水児160例が出現した。そのうち98例(61%)について蘇生術が30分超行われた(施術時間中央値60分)が、うち87例(89%、95%信頼区間[CI]:83~95%)が死亡に至った。 30分超の蘇生術が施された98例のうち、生存児は11例(11%、95%CI:5~17%)であったが全例PCPCスコアは4以上であった。30分を要さなかった小児では、神経学的アウトカム良好が27% 一方、30分超の蘇生術を必要としなかった小児62例(39%)については、17例(27%、95%CI:16~38%)が1年時点でPCPCスコアが3以下であった。内訳は10例(6%)が神経学的アウトカム良好(スコア1)、5例(3%)が神経学的障害が軽度(スコア2)、2例(1%)が同中程度(スコア3)であった。 160例の溺水児のうち、アウトカムを問わず1年時点で生存していたのは44例のみであった。 また、事故発生について季節別に評価した分析では、季節とアウトカムの強い相関が認められ、冬場の事故例が他の季節と比べて有意にアウトカムが良好であった(オッズ比:4.6、95%CI:1.4~15.1、p=0.013)。また、この季節性の影響も、30分以内で自己心拍再開となった子供において顕著にみられた(同:4.8、2.9~7.9、p=0.01)。

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統合失調症患者のQTc延長、アジア人では低い

 これまで、アジア人統合失調症患者におけるQT間隔(QTc)延長のパターンについては、ほとんど知られていなかった。中国・マカオ大学のYu-Tao Xiang氏らは、統合失調症のアジア人患者におけるQTc延長の発生状況と患者背景との関連について検討した。その結果、アジアではQTc延長の発生頻度は低く2.4%であったこと、また2004年と2008/2009年を比べると減少が認められ、なかでも中国と香港で顕著な減少がみられたことを明らかにした。さらに、原因薬剤の中でもチオリダジンが最も高頻度にQTc延長を引き起こしていたことなども報告した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2015年1月22日号の掲載報告。 研究グループは、アジアの6つの国と地域において、2004年から2008/2009年にかけての統合失調症入院患者のQTc延長発生状況の傾向、およびその人口動態学的ならびに臨床的な関連を検討した。入院中の統合失調症患者3,482例(2004 年:1,826例、2008/2009 年:1,656例)のデータを1ヵ月間かけてカルテ審査あるいはインタビューにより収集した。標準的なプロトコルおよび収集手順を用いて、患者の社会人口学的特性、臨床的特徴、抗精神薬の処方、QTc間隔を記録した。 主な結果は以下のとおり。・全サンプルにおけるQTc延長(>456 ms)の発生頻度は2.4%であった。・経時的推移をみると、2004年に3.1%であったのが、2008/2009年には1.6%と有意な減少が認められた(p = 0.004)。ただし、国により大きなばらつきがみられた。・上記の減少傾向は、中国と香港でのQTc延長の発生頻度減少によるところが大きかった(いずれもp<0.05)。・全サンプルの多重ロジスティック回帰分析により、この傾向は罹病期間が5年以上、アリゾナCERT(Arizona Centre for Education and Research on Therapeutics)のリスト‐1に分類される抗精神病薬の投与を受けている患者でみられた。・2004年と比較し、2008/2009年はQTc延長を示す患者が少ない傾向がみられた。・QTc延長を最も高頻度に引き起こした薬剤はチオリダジンで(オッズ比[OR]:4.4、95%信頼区間[CI]:1.2~15.2)、次いでスルピリド(同:2.4、1.3~4.5)、クロザピン(同:2.4、1.4~4.2)、クロルプロマジン(同:1.9、1.07~3.5)の順であった。・以上のように、アジア人統合失調症患者におけるQTc延長の発生頻度は低かった。・2004年から2008/2009年にかけて同発生頻度は、中国と香港では減少していたが、台湾では増加していた。その他の国は低いままであった。関連医療ニュース 統合失調症患者は血栓症リスク大 統合失調症患者の突然死、その主な原因は 統合失調症の心血管リスク、その出現時期は  担当者へのご意見箱はこちら

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オセルタミビルは有効か?メタ解析で検討/Lancet

 成人インフルエンザ患者に対しオセルタミビル(商品名:タミフル)は、臨床的な症状緩和までの時間を短縮し、下気道合併症や入院リスクを低下することが明らかにされた。英国のロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のJoanna Dobson氏らが、9試験4,328例を組み込んだメタ解析の結果、報告した。なお安全性に関しては、悪心と嘔吐の発生増大が判明したという。本分析では神経学的または精神医学的な障害や重篤な有害事象の記録はなかったと報告している。Lancet誌オンライン版2015年1月30日号掲載の報告より。メタ解析で、有効性、安全性を評価 インフルエンザの治療でオセルタミビルは広く使用されるようになっているが、有効性については疑問符がついたままである。研究グループは、対プラセボ比較のすべての臨床試験の個人データを組み込んだメタ解析を行い、成人インフルエンザ患者におけるオセルタミビル治療の症状緩和、合併症、安全性について調べた。 インフルエンザ様疾患の成人患者についてオセルタミビル治療を行い1つ以上のアウトカムを報告していた試験を適格とした。また、Medline、PubMed、Embase、the Cochraneなどの電子データベースで、2014年1月1日以前に発表された試験を検索し、intention-to-treat感染集団、intention-to-treat集団、および同安全性集団について分析した。 主要アウトカムは、加速ハザードモデルで分析した、全症状緩和までの時間とした。また、リスク比とMantel-Haenszel法を用いて、合併症、入院、および安全性アウトカムについて評価した。対プラセボ、全症状緩和までの時間21%短縮、合併症、入院も有意に低下 解析には、9試験4,328例のデータが組み込まれた。 intention-to-treat感染集団の分析において、オセルタミビルはプラセボと比較して、全症状緩和までの時間を21%短縮したことが判明した(時間比:0.79、95%信頼区間[CI]:0.74~0.85、p<0.0001)。緩和までの時間中央値は、オセルタミビル群97.5時間、プラセボ群122.7時間であった(差:-25.2時間、95%CI:-36.2~-16.0)。 intention-to-treat集団の分析では、推定治療効果は減弱した(時間比:0.85)が、両群差は高値で有意なままであった(中央値差:-17.8時間)。 intention-to-treat感染集団の分析では、無作為化後48時間超で抗菌薬を必要とした下気道合併症が低下したことを認めた(リスク比[RR]:0.56、95%CI:0.42~0.75、p=0.0001、オセルタミビル4.9% vs. プラセボ8.7%、リスク差:-3.8%、95%CI:-5.0~-2.2)。さらに、あらゆる入院についても低下を認めた(同:0.37、0.17~0.81、p=0.013、0.6% vs. 1.7%、-1.1%、95%CI:-1.4~-0.3)。 安全性に関しては、オセルタミビルは悪心(同:1.60、1.29~1.99、p<0.0001、9.9% vs. 6.2%、3.7%、1.8~6.1)、嘔吐(同:2.43、1.83~3.23、p<0.0001、8.0% vs. 3.3%、4.7%、2.7~7.3)のリスク増大が認められた。

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Vol. 3 No. 1 食後高血糖は悪か? 悪者だとすればそれはなぜか?

熊代 尚記 氏東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センターはじめに前項にて血糖コントロールが心血管イベント抑制につながる可能性について解説されたが、どのような高血糖が危険なのか、そしてどのように血糖コントロールを行えば心血管イベントを抑制できるのか、未だ多くの謎が残されている。本稿では、食後の高血糖が心血管疾患のリスクファクターである可能性、および食後高血糖の是正が心血管イベントを抑制する可能性について、これまでの報告をもとに解説する。病的な食後高血糖とはそもそも食後血糖値が食前血糖値より高いことは生理学的にごく自然なことである。いったいどの程度の血糖値が食後高血糖として問題になるのであろうか。最新の国際糖尿病連合(International Diabetes Federation : IDF)の食後血糖値の管理に関するガイドライン1)によると、正常耐糖能者の食後の血糖値は、一般的に食後2〜3時間で基礎値に戻るとされ、食後高血糖は摂食1〜2時間後の血糖値が140mg/dLを上回る場合と定義されている。そして、食後血糖値を160mg/dL以下に維持することを管理目標に掲げている。2013年5月に発表された日本糖尿病学会の熊本宣言2013では、糖尿病合併症予防のためのHbA1c目標値は7.0%とされ、対応する血糖値の目安は空腹時血糖値130mg/dL、食後2時間血糖値180mg/dL程度となっている。食前より食後の高血糖が心血管イベントにとって悪である食前と食後の血糖値は連動して上下するはずであるが、これまでの報告をまとめると、興味深いことに、食前の血糖値よりも食後ないし糖負荷後の血糖値のほうがより感度高く心血管イベントの発症を予測することがわかってきた。また、やみくもに血糖値を下げることは食前の低血糖を引き起こす恐れがあり、低血糖が心血管イベントのリスクファクターであることが近年明らかとなってきたことも合わせて2-6)、食後の高血糖をターゲットとした治療ないし血糖変動を抑えるような治療が心血管イベント抑制に大切ではないかと注目されてきている。以下、食後の高血糖が悪であることを支持する報告、食後の高血糖是正が心血管イベント抑制につながる可能性を示唆する報告を具体的に挙げながら解説する。食後高血糖が心血管イベント発症を強く予測する新規発症2型糖尿病患者1,139名を11年間観察したDiabetes Intervention Study(DIS)7)では、空腹時血糖値が110mg/dL以下にコントロールされていても、朝食後1時間値が180mg/dLを超える場合は、140mg/dL以下の者と比べて心筋梗塞の発症率が3倍に増加した。心血管疾患死亡の相対リスクは、最も高い高血圧に次いで食後高血糖が高かったが、空腹時血糖値は死亡の予測因子やリスク因子にはならなかった。イタリアの2型糖尿病患者505名を14年間観察したSan Luigi Gonzaga Diabetes Study8)では、朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後、夕食前の各血糖値を評価したところ、心血管イベントと最も関与していたのは昼食後の血糖値であった。ヨーロッパ系住民を対象とした前向きコホート試験20件のメタ解析であるThe Diabetes Epidemiology Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Europe(DECODE)試験は、一般住民29,108名のグルコース負荷試験データをもとに、空腹時血糖値のみによる糖尿病診断では感度が不十分であることを示し9)、負荷後2時間血糖値が心血管イベントや全死亡と強く関連することを示した10)。また、アジア系住民(n=6,817)のデータをもとにメタ解析されたThe Diabetes Epidemiology Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Asia(DECODA)試験11)でも、負荷後2時間血糖値が空腹時血糖値よりも心血管イベントと強く関連することが示された。山形県舟形町の住民2,651名のブドウ糖負荷試験を含む健診データを解析した前向きコホート試験(Funagata study)では、耐糖能正常者に比べて、境界型、糖尿病型となるほど心血管イベントが発症しやすく、同じ境界型であっても、IFG(空腹時血糖異常)ではなくIGT(負荷後血糖異常)で有意な心血管イベントの増加が見られることが示された12)。食後高血糖が血管内皮機能を悪化させる血管内皮は、血管最内層に位置する一層の細胞層(血管内皮細胞)より成る。血管内皮は血管内腔と血管壁を隔てるバリアーとなるばかりでなく、血管の拡張と収縮の調節、血管平滑筋の増殖調節、凝固調節、炎症の調節、酸化の調節に関与しており、これらは血管内皮機能と総称される。これらの血管内皮機能がバランスよく発揮されることで血管トーヌスが調節され、血管構造が維持される。血管内皮機能が保たれないと血管トーヌスの異常をきたし、血管構造が変化する(血管リモデリング)。この変化に内皮へのマクロファージの接着とアテローム病変の増大が合わさり、血栓・塞栓が誘発されて、心血管イベントが発症すると考えられる。Cerielloらはグルコースクランプを用いて、5mMと15mMの6時間ごとに血糖を変動させると、持続高血糖よりも血中のニトロチロシン(ニトロ化の修飾を受けたチロシン残基)が上昇し、それがflow-mediated dilatation(FMD)で測定される血管拡張能の低下と相関することを報告している13)。また、アセチルコリンに対する前腕血流増加反応で見た血管内皮機能が、2型糖尿病患者では食後に低下しており、αGIやグリニド系薬剤、超速効型インスリンの投与により改善することが報告されている14-16)。われわれは現在、もう1つの食後高血糖治療薬であるDPP-4阻害薬(リナグリプチン)が血管内皮機能を改善するかどうか、FMDを用いて検討中である。マウスの食後高血糖モデルでは、内皮へのマクロファージの接着とアテローム病変の増大が惹起され、この現象がαGIやグリニド系薬剤、インスリンによって予防できることが報告されている17-19)。今後、このような食後高血糖是正による血管内皮の保護が心血管イベントの抑制につながるかどうか、十分な検討が必要である。食後高血糖是正が心血管イベント発症を抑制するかもしれない以上の報告を踏まえて、食後高血糖が心血管イベントのリスクファクターであり、食後高血糖の是正が心血管イベントの発症を抑制するのではないかと期待されるようになった。しかし、結論的には、現状ではその効果は十分に証明されていない。以下、検証している報告について解説する。急性心筋梗塞後21日以内の2型糖尿病患者1,115名を、(1)超速効型インスリンアナログ(インスリンリスプロ)3回を注射して食後2時間血糖値135mg/dL未満を目指す食後介入群と(2)持効型インスリンアナログ(インスリングラルギン)1回またはNPHインスリン2回を注射して空腹時血糖値121mg/dL未満を目指す食前介入群とに無作為に割り付けて比較検討したHyperglycaemia and Its Effect After Acute Myocardial Infarction on Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus(HEART2D)試験では、平均963日の観察後、HbA1cに群間差がなく、食後血糖値はリスプロ群が、食前血糖値はグラルギン群が有意に低かったが、主要血管イベントのリスクは両群で同程度であった(食後介入群31.2%、食前介入群32.4%、ハザード比0.98)20)。心血管ハイリスクのIGT患者9,306名を対象に、ナテグリニドとバルサルタンを用いた2×2 factorialデザインで実施された無作為化比較試験であるThe Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research(NAVIGATOR)試験では、中央値5年間のナテグリニド毎食前60mgの介入は、プラセボと比較して、糖尿病の発症(36% vs. 34%、ハザード比1.07)でも心血管疾患の発症(7.9% vs. 8.3%、ハザード比0.94)でも、予防効果を示すことはできなかった。なお、ナテグリニドは低血糖を増加させていた21)。したがって、前述のとおり低血糖が心血管イベントのリスクファクターであることから、低血糖を起こさずに血糖コントロールを行っていれば、心血管イベントの予防効果を示すことができたかもしれない。この点に関して、Mitaらは、早期2型糖尿病患者を対象にナテグリニドを投与し、低血糖の出現や有意な体重増加を認めなかったうえで、心血管イベントのサロゲートマーカーである頸動脈の内膜中膜複合体厚(intima media thickness : IMT)を抑制することができたことを報告している(本誌p.16図1を参照)22)。IGT患者1,429名を対象にアカルボースを用いて糖尿病発症予防を試みたStudy to Prevent Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus(STOP-NIDDM)試験では、アカルボース毎食前100mgによる介入が糖尿病の発症を予防した(32% vs. 42%、ハザード比0.75、p=0.0015)23)。さらに、post-hoc解析によって高血圧(ハザード比0.66、p=0.006)や心血管イベントの発症(ハザード比0.51、p=0.03)も予防できたことが報告されている24)。このことは、1年以上継続したアカルボースの介入試験7件のメタ解析(Meta-analysis of Risk Improvement with Acarbose 7: MeRIA7、n=2,180)において、心筋梗塞(ハザード比0.36、p=0.0120)や全心血管イベント(ハザード比0.65、p=0.0061)が抑制されたこととも一致している25)。しかしながら、これらの報告には解釈において注意すべき点がいくつか存在する。まずSTOP-NIDDMにおいては、大血管障害の評価が2次エンドポイントであった。統計解析において、2次エンドポイントや後付解析は仮説を実証するものではなく、示唆するデータに過ぎないことを理解しておかなければならない26, 27)。さらに、心血管イベントの抑制効果(絶対的なリスクの低下)は数%程度であり、ごくわずかであった。服薬中断率も24%であり、これらを大きく差し引いて解釈する必要がある。MeRIA7については、対象となった7件の無作為化比較試験のうち、3件は未発表(2件は製薬企業がデータを提供)であることから、その妥当性は低い28, 29)。実際、日本糖尿病学会の『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』では、エビデンスレベル「なし」と位置づけられており、玉石混交のメタ解析の評価には注意が必要である。以上から、αGIを用いた食後高血糖治療が心血管イベントを抑制するかどうかの判断には、更なる検討が必要である。最後に、食後高血糖改善効果があり、体重増加と低血糖をきたしにくいDPP-4阻害薬の大血管障害予防効果に関して、最近2件のエビデンスが発表された。Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus(SAVOR-TIMI)53研究30)では、約16,000人の大血管障害の既往または高リスクの2型糖尿病患者(アジア人を含む)が無作為にサキサグリプチン投与群とプラセボ投与群に割り付けられたが、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクに有意差を認めなかった(本誌p.17図2、表を参照)。同時に発表されたExamination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin(EXAMINE)研究31)では、急性冠動脈症候群を発症した2型糖尿病患者(日本人を含む)約5,000人が無作為にアログリプチン投与群とプラセボ投与群に割り付けられ、アログリプチンのプラセボに対する非劣性を証明することを1次エンドポイントとして実施されたが、この研究でも心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクに有意差を認めなかった。両者ともRCTではあるが、服薬中断率が高いこと、追跡期間が2~3年と比較的短いこと、筆者・解析者に試験薬の製薬会社員が含まれていることなどの限界・バイアスがあるため、これらを差し引いて解釈する必要がある。現時点ではDPP-4阻害薬の大血管障害予防効果については明確な答えを出せず、進行中の残りのDPP-4阻害薬の試験結果を待っている状態である。以上、食後高血糖是正が心血管イベントを抑制する期待は高いのであるが、実際のところは十分に証明されておらず、低血糖を回避した血糖コントロールなど、工夫をしながらデータを蓄積して検討を続けることが必要である。私見としては、UKPDS80やEDIC studyで早期からの血糖コントロールが心血管イベントの抑制につながると報告されているにもかかわらず、食後高血糖をターゲットにした上述の試験では心血管イベントを抑制できなかった理由として、食後のみの高血糖のような軽症の状態での血糖値が心血管イベントに与える悪影響が、脂質や血圧などの他のリスクファクターに比べて影響が小さく、食後血糖値のみを穏やかに数年間改善させても十分な心血管イベントの抑制ができなかっただけなのではないかと推測している。そういった点では、早期から低血糖を予防しながら食後血糖値を抑制しつつ、全体的に血糖値がよくなるように厳格な血糖コントロールを行うことが大切なのではないかと考える。おわりに以上、本稿では食後高血糖が心血管イベント発症のリスクファクターであること、食後高血糖をターゲットとした血糖コントロールが心血管イベントの発症抑制につながるかもしれないことについて解説した。本稿が、本誌の主な読者である循環器専門医、脳血管、末梢血管疾患を担当される専門医の方々の糖尿病診療に役立ち、メタボリックシンドロームや糖尿病患者の心血管イベントの抑制に少しでも貢献すれば幸甚である。文献1)International Diabetes Federation Guideline Development G: Guideline for management of postmeal glucose in diabetes. 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報告システムでは術後転帰は改善せず/JAMA

 米国外科学会の手術の質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program:NSQIP)への参加有無により、術後合併症や死亡率などのアウトカムに有意な差はみられないことが判明した。米国・メイヨークリニックのDavid A. Etzioni氏らが、35万件弱の入院データを分析し、明らかにした。JAMA誌2015年2月3日号掲載の報告より。待機的一般・血管手術後のアウトカムを比較 Etzioni氏らは、米国の大学病院などが所属するUniversity HealthSystem Consortiumの2009年1月~2013年7月のデータを基に、待機的一般・血管手術について調査を行った。NSQIPに参加する病院としない病院で、術後アウトカムの変化の有無について分析を行った。 主要評価項目は、待機的一般・血管手術後の入院中の補正後合併症や死亡率だった。術後院内合併症や死亡率に有意差なし 分析の対象としたのは、113ヵ所の大学病院における入院34万5,357件だった。そのうち50.1%にあたる17万2,882件がNSQIP参加病院分だった。 対象入院患者の61.5%が女性で、平均年齢は55.7歳だった。最もよく行われていた手術は、ヘルニア修復術(15.7%)、肥満外科手術(10.5%)、乳房切除術(9.7%)、胆嚢摘出術(9.0%)だった。 患者リスクや手術の種類、病院の治療成績や時間的傾向で補正後、NSQIP参加病院と非参加病院で、入院中の術後合併症や重度合併症の発生率(それぞれ補正後オッズ比:1.00、0.98)、死亡率(同:1.04)のいずれについても、有意差はみられなかった。 研究グループはこの結果について、「術後アウトカム報告システムは、質改善をもたらす明白な仕組みとはならないことを示すものだ」とまとめている。

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SGLT2阻害薬のさらなる安全使用に必要なこと

 2月9日、「糖尿病薬物治療の現状と課題」と題し、生命科学フォーラム主催のセミナーが加来 浩平氏(川崎医科大学 内科学 特任教授)を講師に迎え、東京都内で開催された。患者は増加しているものの予備軍は減少 はじめにわが国の糖尿病における患者数の推移や発症機序の説明が行われた。 最近の調査では、メタボ健診などによる予防策が功を奏し、糖尿病予備軍は減少した。しかし、患者数は増加し、若年化、肥満化傾向を示し、それは運動不足や日常生活での活動量不足が原因と考えられる。また、30~40代の働き盛りの患者の増加と受診回避が問題となっており、早期の治療介入をいかに行うべきかが今後の課題であると述べた。 早期治療介入に関連し、最近の研究では、糖尿病の合併症として「認知症」と「がん」がクローズアップされており、これら合併症阻止に向け、早急なエビデンスの構築が必要であると強調するとともに、DCCT/EDICスタディ、UKPDSなどのエビデンスを示し、大血管障害予防のためにも早期介入が求められ、とくに治療の最初の10年をいかに過ごすかが重要だと解説を行った。SGLT2阻害薬のベネフィットを考える 糖尿病の治療薬は、1950年代のSU薬から2014年のSGLT2阻害薬まで非常に多くの薬剤が開発され、使用されている。今回は1番新しい治療薬であるSGLT2阻害薬にとくに焦点をあて解説を行った。 SGLT2阻害薬は、余分な糖を尿により体外に排出させ、血糖値を下げる糖尿病治療薬であり、現在わが国では6成分7製剤(うち4製剤は日本製)と幅広く使用できる。その作用機序は従来の糖尿病治療薬と異なるため、糖尿病のどの段階でも使用でき、他剤と併用ができるのも大きな特徴である。 そして、SGLT2阻害薬の効果としては、急激な血糖降下を抑えるために低血糖が起きにくく、安全に使用できること、糖が体外へ排出されるので体重減少を来すこと、HbA1cの改善は先行のDPP-4阻害薬ほど効果は高くないが、全体的に0.7%程度下げること、また、心血管イベントの発生を予防する可能性につき、現在研究が進められていることなどが報告された。SGLT2阻害薬の処方率は10%に届かず SGLT2阻害薬のリスクとしては、尿量の増加とそれに伴う頻尿、脱水のほか、糖排出による尿路感染症が報告されている。また、他剤併用(たとえばSU薬など)による低血糖の発生、皮膚障害などもある。ただ、いずれも臨床試験で予想された範囲内の副作用、有害事象であり、特段大きなリスクを伴う治療薬ではないことを強調した。 しかしながら、昨年の発売以降SGLT2阻害薬の処方シェア率は10%に届くことがなく(参考までにDPP-4阻害薬は60%強)、臨床現場でかなり慎重に処方されていると報告した。 その原因として、わが国ではSGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会より『SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation』が発出されたことや、65歳以上の患者処方の際の全例調査実施などが影響していると指摘した。 その一方で海外の動きをみてみると、わが国で報告されているリスクは大きな問題となっておらず、広く処方されており、着々とエビデンスの蓄積、研究が行われている。現在の状態が続けば、さらに安全に処方するためのエビデンスなどの蓄積(たとえば、長期有効性・安全性、休薬後のリバウンドリスク、多面的作用など)ができなくなると懸念を示した。 最後に、これからの糖尿病治療と研究の方向性について、「肥満」と「加齢」がキーワードになると示唆。具体的なターゲットとして血管病防止、認知症防止、がん防止、骨関節疾患防止のため、壮年・中年からの早期治療介入、ベネフィットとリスクを考えた治療薬剤の選択が重要となり、治療薬ではDPP-4阻害薬が今後も大きな役割を担うことになる。同時に、SGLT2阻害薬も正しい患者像を見据え、適正使用の推進による安全確保の確立のためにも、患者のベネフィットを考えた処方が望まれるとレクチャーを終了した。■関連記事ケアネット特集 糖尿病 SGLT2阻害薬SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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安易な処方は禁物、リスク・ベネフィットを十分に評価すべき~分化型甲状腺がんに対するLenvatinib~(解説:勝俣 範之 氏)-312

 乳頭腺がん、濾胞腺がんは、甲状腺がんの80~90%を占め、分化型甲状腺がんと呼ばれる。一般に分化型甲状腺がんは、転移があっても緩徐な進行を示し、予後が良好とされる。一方、遠隔転移のある分化型甲状腺がんで、高齢者、ヨード治療に抵抗性になった場合には、予後不良となる。その場合、これまではこれといった有効な治療法はなかった。発育がきわめて緩徐であるため、化学療法剤にはほとんど反応せず、化学療法の適応になることはなかった疾患である。 しかし、ここ数年間で、分化型甲状腺がんに期待できる薬剤が開発されている。1つはSorafenibであり、もう1つが、今回New England Journal of Medicine誌に掲載されたLenvatinibである1)。両者とも、VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)に対するチロシンキナーゼ阻害剤で、VEGFRを阻害することにより、腫瘍増殖を抑制する。Sorafenibは、ヨード耐性分化型甲状腺がん患者に対し、無増悪生存期間(Progression-free Survival: PFS)をプラセボ群5.8ヵ月に対して、10.8ヵ月と有意に延長した結果をもたらした(hazard ratio [HR] 0.587、95% CI 0.454~0.758)2)。   この結果をもって、分化型甲状腺がんに対して、Sorafenibはわが国でも承認となった(2014年6月)。Lenvatinibは、VEGFRだけでなく、分化型甲状腺がんの増殖に関わるfibroblast growth factor receptors (FGFR)、BRAFにも作用し、作用の増強が期待される薬剤である。Sorafenibの試験と同様のヨード耐性分化型患者を対象として、臨床試験が行われ、プラセボ群3.6ヵ月と比較して、18.3ヵ月と大幅に無増悪生存期間を延長させた。ハザード比も、0.21(99%信頼区間0.14~0.31)というのは、 かなり驚異的な数字である。 注意しなければならないのは、副作用である。半数以上の患者に、高血圧、下痢、食欲不振、疲労、体重減少などが出現する。重篤な副作用として、肺塞栓なども出現した。加えて、Lenvatinib投与群では、副作用によると思われる治療関連死が6例(2.3%)あった。 前述のSorafenibと同様、この臨床試験のプライマリーエンドポイントが、真のエンドポイントであるOverall survivalではなく、PFSであったことは、この研究のウィークポイントである。プラセボ群の患者は、倫理的な面も配慮し、病状が悪化した際に、Lenvatinib投与、すなわち、クロスオーバーが認められている。クロスオーバーを認めたせいもあり、Overall survivalには、有意差を認めていない。著者らは、クロスオーバーを調整した解析も行っている(RPSFT解析)が、完全にクロスオーバーした影響を排除できるものではない。クロスオーバーしたことによりOverall survivalに影響を与える(プラセボ群の治療効果がよくなる)ということは、この対象患者に対して、すぐに治療を開始する必要がないとも考察できる。患者のQOLを評価していないことは、この研究のもう1つのウィークポイントである。 分化型甲状腺がんに対するLenvatinibは、2014年6月に承認申請されており、早ければ今年中にも承認される可能性がある。有効性に関しては、期待がされるものの、Overall survivalには影響を与えていないということ、重篤な副作用が報告されていて、治療関連死も存在することを認識すべきであり、決して安易に投与すべき薬剤ではない。投与を考慮する際にも、個々の患者に対して、十分にリスク・ベネフィットを考慮すべきである。 投与に際しては、分子標的薬に知識・経験が豊富な腫瘍内科医(がん薬物療法専門医)によって、投与されることが望ましい。すでに、Sorafenib投与に際して、日本甲状腺外科学会、日本内分泌外科学会、日本臨床腫瘍学会が連携して、甲状腺癌診療連携プログラムを施行することにより、患者に不利益がないように考慮されている。こうしたプログラムは有益なものと考えるが、より幅広く認知してもらうための工夫も必要と考えられる。

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うつ病急性期治療、どの抗うつ薬でも差はない

 抗うつ薬治療による急性期からのアウトカムを評価した結果、薬物間で差はみられなかったことが明らかにされた。米国・オハイオ州立大学医学部のRadu Saveanu氏らによる、最適なうつ病治療予測のための国際研究(International Study to Predict Optimized Treatment in Depression:iSPOT-D)からの報告で、今回の結果について著者は、「治療アウトカムの神経生物学的および遺伝子的な予測因子を明らかにする根拠となり得るものだ」と述べている。Journal of Psychiatric Research誌2015年2月号の掲載報告。 本検討で研究グループは、プラクティカルなデザインの大規模国際コホート試験に参加した、大うつ病性障害(MDD)を有する外来患者の特徴づけを行った。目的は、MDD急性期治療に用いられる一般的な3つの抗うつ薬治療に伴うアウトカムの、臨床的に有用な予測因子を特定するためであった。 iSPOT-Dには、5ヵ国・17地点で治療を必要としていた外来患者(18~65歳)1,008例が登録された。治療前に、症状、病歴、機能的状態、併存疾患による特徴づけが行われた。被験者は、エスシタロプラム、セルトラリン、徐放性ベンラファキシンを受ける群に無作為に割り付けられ、医師による各治療と通常診療が行われた。8週後に、症状、機能、QOL、副作用のアウトカムを評価した。また、不安症と治療反応および寛解との関連を、Axis I診断、不安症状の存在/消失、不安症状重症度により複合的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・評価対象者は、中等度~重度の症状を有しており、重大な併存疾患および機能障害もみられた。・8週時点の評価が完了した参加者のうち、うつ病に関する17項目ハミルトン評価尺で、62.2%が治療反応を示し、45.4%が寛解を達成していた。16項目簡易抑うつ症状評価尺度では、それぞれ53.3%、37.6%であった。機能的改善は、全領域の評価について認められた。・大部分の被験者で副作用がみられ、発生頻度は25%弱であった。一方で大部分の被験者は、わずかな/軽度の強度や負荷については「なし」と報告した。・アウトカムは、治療薬間で差はみられなかった。・治療前に不安症状がより重度であることと寛解率が低いこととの関連が、すべての治療において認められた。抑うつ症の重症度、併存疾患や副作用との関連はみられなかった。・すべての治療薬において、症状、機能、および併存した不安症の予後で一貫した同程度の改善がみられた。関連医療ニュース 各種抗うつ薬の長期効果に違いはあるか 新規抗うつ薬の実力、他剤比較で検証 なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか  担当者へのご意見箱はこちら

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健康的な食事はCOPDリスクも減らす/BMJ

 先行研究で、食事の質を測る新たな代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index 2010:AHEI-2010)が、心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患やがんのリスクに関連していることが報告されている。フランス・国立保健医学研究所(Inserm)のRaphaelle Varraso氏らは、米国人男女対象の前向きコホート研究を行い、同指数高値と慢性閉塞性肺疾患(COPD)リスク低下が関連することを明らかにした。AHEI-2010とは、全粒穀物、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ナッツ、長鎖オメガ3脂肪酸の摂取量が高く、赤身/加工肉、精製粉、甘味料入飲料の摂取量が低い食事を反映した健康食指数である。これまでCOPDリスクへの食事スコアの寄与については不明であったが、今回の結果を踏まえて著者は、「COPD予防には、多面的な介入プログラムが重要であることが支持された」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年2月3日号掲載の報告。女性7万3,228例、男性4万7,026例を対象に検討 先行研究では、COPDリスク低下と抗酸化物質摂取の増大、およびCOPDリスク上昇と加工肉摂取増大との関連が明らかになっている。 研究グループは、米国で行われた健康調査「Nurses' Health Study」と「Health Professionals Follow-up Study」の参加者について前向きコホート研究を行った。 被験者は、隔年実施の調査を完了していた、前者参加女性7万3,228例(1984~2000年)、後者参加男性4万7,026例(1986~1998年)で、主要アウトカムは、自己申告によるCOPD発症の新規診断とした。 評価は多変量Cox比例ハザードモデルを用いて行った。モデルは、年齢、身体活動度、BMI、総エネルギー摂取量、喫煙、人種/民族、受診歴、米国内居住地と、女性被験者についてのみ受動喫煙、配偶者の最終学歴、閉経有無について補正を行った。スコアが高い食事ほどCOPD新規診断リスク低下 対象期間中に女性723例、男性167例が、COPDの新規診断を受けたことを報告した。 男女合わせたプール解析の結果、COPD新規診断リスクとAHEI-2010スコア5分位範囲群との、有意な負の相関が明らかになった。5分位の最低位群を参照値とした場合のハザード比(HR)は、第2分位群が0.81、第3分位群が0.98、第4分位群が0.74、そしてスコア最高位の第5分位群は0.67であった(傾向のp<0.001)。 なお男女別にみた場合、逆相関の関連は女性では有意であり(傾向のp<0.001)、男性では有意ではなかったが(傾向のp=0.27)、最も健康的な第5分位の食事は最低位の食事と比べて、男女ともCOPD新規診断リスクを低下することが示されている(同群のHRは女性0.69、男性0.60)。 同様の傾向は、元喫煙者(男女合わせたプール解析の傾向のp<0.002)、現在喫煙者(同p<0.03)の別に分析した結果においても観察された。男女別にみた場合も、同様であった。なお、非喫煙者については、COPD新規診断例が少数であったため分析は行われていない。

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Sedation for All ―安全で確実な鎮静・鎮痛プログラム―

第1回 モニタリングと医療機器第2回 鎮静の薬理学(総論) 第3回 鎮静の薬理学(各論) 第4回 合併症予防 第5回 特殊な領域(高齢者編) 第6回 特殊な領域(小児編) 第7回 成人症例ディスカッション 第8回 小児症例ディスカッション 第9回 Procedural Sedation 実践編 外来や救急で処置を行う際、必要最低限の鎮静や鎮痛を行うのに有用なのが「Procedural Sedation」。一般的には、現場の医師の経験則や勘を頼りに行われることが多く、体系化されたマニュアルがなかったのがこの分野。そこで、米国ニューメキシコ大学で開発されたProcedural Sedationを体系的に学べる研修プログラムを取り入れ、国内での普及に務めている健和会大手町病院のセデーションチームが、患者のモニタリングや症例に応じた薬剤の選択、適切な薬剤の投与法などをコンパクトにまとめた。この番組では、本来ならば大手町病院で丸1日かけて実施されるセデーションの研修プログラムから、最も重要なエッセンスを抽出して短時間で学べるよう再編。安全で確実なセデーション・マスターになろう!第1回 モニタリングと医療機器」 まず「Procedural Sedation」とは何か、具体的にどういう場合に有用なのかを解説します。ここでは75歳女性の右前腕変形と腫脹という症例を提示。徒手整復を行うにあたって、どんな鎮静・鎮痛が必要でしょうか。セデーションのマニュアルに沿って、患者をモニタリングする上でのポイント、鎮静・鎮痛の程度の見極め、処置後に注意すべきことなどを、順を追って詳しく解説。軽度の鎮静・鎮痛であっても、薬剤の投与量が不十分だったり、逆に過剰だったりすると、それだけ患者の身体的負担は大きなものに。救急外来や病棟で、最適かつ安全なセデーションができるようになれば、処置の精度と効率は格段にアップします。第2回 鎮静の薬理学(総論) セデーションを実施するには、まず薬剤の特性をきちんと把握することが大事。今回は、薬理学の総論として、一般的な原則を解説します。薬剤の投与量や投与法を決定する上で最も重要なこと―それは、各薬剤で異なるピーク時間(最大効果発現時間)を知ることです。薬剤は投与後、血流に乗って中枢神経系に到達することで、徐々に効果を現し始めますが、ピーク時間を待たずに慌てて追加投与すると、過鎮静になり、患者の体に無用な負担を与えることになります。安全で確実なセデーションとは、患者にとって無理がなく、かつ無駄のない薬剤投与を実施できること。今回のレクチャーでは、この原則を徹底的にマスターしましょう。第3回 鎮静の薬理学(各論) 安全で確実なセデーションを実施するために、薬剤によって異なるピーク時間(最大効果発現時間)を知っておく、という大原則を押さえた上で、今回は個別の薬剤の特性について具体的に解説します。セデーションで主に使用する薬剤は、鎮静効果のみ得られるもののほか、鎮痛効果のみ、そして鎮静と鎮痛の効果を同時に得る場合に使用するものに大別できます。また、薬剤の投与量が結果的に過多になってしまった場合に使用する拮抗薬についても解説。これも、鎮静薬と鎮痛薬によってそれぞれ使用すべき拮抗薬が異なります。ただし、やみくもに拮抗薬を使用することは危険。このレクチャーでは、その役割と効果だけでなく、副作用やリスクにも言及し、どんな場合に投与を検討すべきかを明解に示しています。第4回 合併症予防 急セデーションを実施する際に、注意しなければいけない気道や呼吸、循環などに関連した合併症があります。患者の特性やリスク因子をしっかり把握して起き得る合併症を防ぐことが大切ですが、医療者側の知識が不十分だったり、技術に問題があったりする場合もあります。このレクチャーでは、セデーションによる合併症を予防するために最低限やっておくべき10カ条について解説。いずれの項目もセデーションを実施する上での基本の「キ」ですが、合併症のリスクを回避するためにはとても重要です。第5回 特殊な領域(高齢者編)救急に搬送されてくる高齢者は、増加の一途です。もし、セデーションが必要な高齢患者に遭遇した時には、何を注意をすべきなのでしょうか。既往症が多く、多数の薬を服用している患者も少なくありません。また、加齢によって腎・肝機能の低下や、循環・呼吸器系の予備能についても、若い世代に比べて低下している人が多いはずです。そうした高齢者の特徴を踏まえて、安全かつ確実なセデーションを実施するための薬剤投与量や投与方法についてわかりやすく解説します。第6回 特殊な領域(小児編)このセッションでは、PSAを小児に実施する時に注意すべきポイントについて解説します。PSAの手順や鎮静・鎮痛に必要な薬理学は、大人も小児も体格差があるだけでベースは変わらないのでは?と思いがちですが、そこが大きな落とし穴!小児は“小さな大人”ではありません。解剖や生理の違いをきちんと理解し、適切な薬剤・器具の選択、大人と異なるモニタリングのポイントと注意点について詳しく説明します。第7回 成人症例ディスカッション ここまで学んできたセデーションの手順と薬理学を、実際の場面でどう生かすのか。この回では、成人の急患が運ばれてきた想定で、何をポイントに、どのレベルの鎮静や鎮痛が必要かを考え、どんな手順で実施するのかを学びましょう。ここで示されるケースの男性はかなりの肥満体。この体格的特徴によって、セデーションを行うに際にどのような注意が必要となるのでしょうか。適切な器具や薬剤の選び方も詳しく解説します。第8回 小児症例ディスカッション この回では、小児の急患が運ばれてきた想定で、セデーションのケースシミュレーションを行います。処置前の鎮静・鎮痛を実施する際、小児は“小さな大人”ではないため、成人とは異なる解剖や生理の違いをきちんと理解した上で対応する必要があることは、これまでの回ですでに学んだ通りです。ここで示されるケースは、唇にけがをした2歳児に対する、縫合前の鎮静と鎮痛。小児に対して、また家族への説明についてどんな注意と配慮が必要でしょうか。セデーションの手順の共に、忘れがちな処置前後の注意点を改めておさらいしましょう。第9回 Procedural Sadation 実践編 これまで8回にわたって、セデーションの基本的な考え方から、実際の手順、モニタリングのポイント、使用する薬剤などを網羅的に解説してきました。それらを実践でどのように生かせばよいのでしょうか。この回では、健和会大手町病院のセデーション研修で参加者たちが体験したシミュレーションの模様を観ながら、セデーションの流れを改めて確認しましょう。シミュレーションでは、交通事故で搬送されてきた患者の足関節脱臼を徒手整復するにあたって、セデーションを実行しますが、救急外来は時間勝負。速やかな方針決定だけでなく、スタッフへの伝達、関係科の医師への説明なども必要になってきます。そして、案外見落としがちなのが、一連の処置が終わった後の患者モニタリング。4人の講師たちが重要なポイントとして挙げたことや注意点を思い出しながらご覧ください。

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早産児介入試験、慢性肺疾患の報告は3割のみ/BMJ

 選択的なアウトカムの報告は、臨床試験およびシステマティックレビューの結果の妥当性に対する重大な脅威とされる。これまでに試験プロトコルと発表論文を比較した実証研究から、多くのアウトカムが選択的に報告されていることが示唆されている。そこで米国・スタンフォード大学のJohn P A Ioannidis氏らは、早産児介入のシステマティックレビュー論文および組み込まれた無作為化試験において、同集団で最も重大な臨床アウトカムの慢性肺疾患に関する情報が、どのように散見されるかを検討した。その結果、レビュー論文で慢性肺疾患について報告していたのは半数弱(45%)であり、同データを報告していた試験は31%のみであったことを明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年1月26日号掲載の報告より。早産児介入評価を全Cochraneシステマティックレビュー 検討は2013年11月時点で、Cochrane Database of Systematic Reviewsをデータソースとし、早産児への介入を評価した論文を検索する全Cochraneシステマティックレビューにて行われた。検索されたレビュー論文のうち、慢性肺疾患に関する「情報がみられた」および「報告をしていた」論文数、および慢性肺疾患について報告していたシステマティックレビュー包含中の無作為化試験数を特定し評価した。 また、慢性肺疾患の報告がなかったシステマティックレビュー10本と、あらゆるアウトカムを報告していた同10本を無作為に選択し、慢性肺疾患に関する情報が、それらに組み込まれた無作為化試験の主要報告にはみられるが、システマティックレビューにはみられないかどうかについて特定した。 主要評価項目は、入手できた慢性肺疾患アウトカムが、集団や介入のタイプで異なるかどうか、また、未報告のデータが試験報告から入手可能であるかどうかとした。同集団で重大視される慢性肺疾患アウトカムを報告した包含試験は31% 全Cochraneシステマティックレビューにより、早産児に関連したシステマティックレビュー論文(以下、レビュー論文)174本、試験数1,041件が検索された。 このうち、慢性肺疾患に関する「情報がみられた」レビュー論文は105本(60%)、「報告をしていた」レビュー論文は79本(45%)であった。 また試験1,041件のうち、生後28日時点の慢性肺疾患データを報告していたのは202件、生後36日時点の同データを報告していたのは200件で、あらゆる定義の慢性肺疾患を報告していた試験は320件(31%)であった。 集団別分析からは、「情報がみられた」「報告をしていた」レビュー論文は、単に早産児を対象としたものよりも、呼吸障害児(distressまたはsupport)を対象としたもののほうが、有意に多いことが判明した(p<0.001)。 対象児への介入(薬物療法、栄養療法、呼吸器装着など)は有意に異なっていた(p<0.001)。呼吸器装着介入児を対象とした試験は86件あったが、そのうち慢性肺疾患について報告していたのはわずか48件(56%)であった。 レビュー論文を無作為に選択した検討からは、包含されていた試験84件のうち、慢性肺疾患アウトカムの報告がないものは45件(54%)あり、またそうした情報を主要報告で述べていたのは、わずか9件(20%)であった。 著者は、「慢性肺疾患のアウトカムデータがシステマティックレビューで報告されていない場合は、主要試験報告でもそれらは報告されていなかった」と、重大アウトカムに関する情報が包含試験の大半で欠落していることを指摘した。そのうえで、「全試験の初期設定で収集・報告された標準化臨床アウトカムの使用が検討されるべきであろう」と提言している。

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C型肝炎の3剤併用療法、皮膚障害リスク因子とは

 ペグインターフェロン+リバビリン+第1世代NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬(テラプレビルまたはボセプレビル)の3剤併用療法は、遺伝子型1型のC型慢性肝炎に対する新しい治療戦略で、高い治療効果が期待できる。しかし一方では、皮膚障害などの有害事象が増加することがある。ポーランド・Provincial HospitalのElzbieta Klujszo氏らは、3剤併用療法による皮膚障害について調査し、テラプレビルでは女性や進行性肝線維症合併例などで肛門直腸の違和感が、45歳以上の男性で皮疹やそう痒症が発現しやすいこと、ボセプレビルでは自己免疫性甲状腺炎合併例で皮疹、女性でそう痒症が発現しやすいことを報告した。Journal of Dermatological Case Reports誌2014年12月31日号の掲載報告。 研究グループは、プロテアーゼ阻害薬の併用療法における皮膚障害の発現頻度、重症度ならびに危険因子などについてレトロスペクティブに調査した。 対象は、ボセプレビルまたはテラプレビルを用いた3剤併用療法を行った遺伝子型1型のC型慢性肝炎患者109例であった(ボセプレビル併用群33例、テラプレビル併用群76例)。 主な結果は以下のとおり。・皮膚障害(皮疹、そう痒症、肛門直腸の違和感)の発現頻度は、両群で同程度であった(ボセプレビル併用群21%、テラプレビル併用群28%)。・テラプレビル併用群では、男性は女性より皮疹を発症しやすく(OR:4.1、p=0.014)、男性の場合、年齢(45歳以上)がそう痒症と関連した(OR:8.16、p=0.014)。また、女性(OR:4.13、p=0.041)、自己免疫性甲状腺炎(OR:4.25、p=0.029)および進行性肝線維症(OR:4.54、p=0.018)は肛門直腸の違和感に関する独立した因子であった。・ボセプレビル併用群では、自己免疫性甲状腺炎が皮疹の(OR:10.22、p=0.017)、女性がそう痒症(OR:11.2、p=0.033)の、それぞれ素因であった。・有害事象の発現時期は、治療を開始してから平均8.6週後(範囲:1~24週)であった。

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DENERHTN研究は腎交感神経焼灼術の降圧効果の有効性をどこまで明らかにしたか(解説:冨山 博史 氏)-309

はじめに 今回、Lancetに難治性高血圧に対する腎交感神経焼灼術の効果を評価した、多施設前向き研究(DENERHTN試験)の結果が報告された。腎交感神経焼灼術は高血圧、心不全、腎機能障害、不整脈などに対する有用な治療法である可能性が注目されている。とくに高血圧に関しては、メタ解析にてその有効性が報告されている1)。 一方、その有効性に否定的な報告もある2)3)。治療手技、疾患の病態などの見地から、腎交感神経焼灼術の効果を検証するにはいくつかの問題点が存在し、腎交感神経焼灼術の効果に対する意見が分かれる一因となっている4)5)。 今回の報告に関して、下記に示す腎交感神経焼灼術の効果を検証する試験における、問題事項と対比してコメントを記載する。試験の概要 DENERHTN試験は、難治性高血圧降圧治療における腎交感神経焼灼術の有用性を検証する前向きランダム化比較試験で、フランスの高血圧管理に特化した15の医療センターで実施された。 腎交感神経焼灼術の有無についてはオープンラベルであるが、エンドポイント評価は中央解析にて盲検化され実施された。1,416例の難治性高血圧要精査症例から101例の試験適合症例が選別された。難治性高血圧診断、腎交感神経焼灼術の降圧効果評価には24時間血圧測定が使用された。対象は、腎交感神経焼灼術+SSAHT (Standard stepped-care antihypertensive treatment)実施群(後述)と、SSAHTのみ実施群(対照群)に振り分けられた。 治療開始6ヵ月後に、腎交感神経焼灼術+SSAHT実施群(n=48)では-15.4mmHgの24時間収縮期血圧の低下を認め、SSAHTのみ実施の対照群(n=51)では-9.5mmHgであり、前者で有意に大きい降圧を認めた。両群間の降圧薬服用数、服薬アドヒアランスに有意な差を認めなかった。腎交感神経焼灼術の有用性を検証するこれまでの試験の研究限界とDENERHTN試験1.腎交感神経焼灼術実施の無作為化 有名な腎交感神経焼灼術の有効性を検証した多施設研究であるSYMPLICITY HTN-3では、対照としてシャム手術を実施した2)。しかし、こうしたシャム手術の実施は倫理的にも限界があり、盲検法を実施するには限界がある。 DENERHTN試験では、腎交感神経焼灼術実施についてはオープンラベル無作為化とし、代わりに治療効果評価(24時間血圧測定)は、盲検化(腎交感神経焼灼術実施群か対照群か情報を知らない条件で中央解析センターにて血圧記録を解析)を実施した。2.難治性高血圧の診断 血圧はさまざまな要因で変動するため、難治性高血圧の診断が十分でない研究も存在する。24時間血圧測定による血圧重症度評価、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用、服薬アドヒアランスの確認、生活習慣の改善実施の有無、腎機能を含め2次性高血圧除外の評価方法などが問題となる。 DENERHTN試験では、試験登録後4週間は indapamide 1.5mg、ramipril 10mg、 amlodipine 10mgが処方され、血圧レベル評価は24時間血圧測定で評価された。腎機能を含む2次性高血圧のスクリーニングが実施され、さらにCT・MRにて腎動脈狭窄の有無が事前評価された。このように適切な難治性高血圧の評価が実施された研究である。3.対照群の治療 経過観察において血圧の変動が生じるため、対照群・腎交感神経焼灼術実施群とも経過観察中の降圧薬治療の取り扱い方が問題となる。 DENERHTN試験ではSSAHT が実施されている。本方法は、追加降圧薬としてspironolactone 25mg、bisoprolol 10mg、prazosin 5mg、rilmenidine 1mgの使用がプログラムされ、降圧薬追加の適応は月ごと測定の家庭血圧にて決定されるプロトコルであった。しかし、本研究では腎交感神経焼灼術実施の有無の無作為化は24時間測定血圧を基に実施された。また、両群間で血圧低下に有意な差を確認できたのは24時間測定収縮期血圧であり、家庭血圧には有意な差(収縮期血圧降下度:-15.4 mmHg vs. -11.5 mmHg、p=0.300)を認めなかった。4.除神経の評価 除神経術成功の有無を評価する方法は腎臓におけるnoradrenalineのspilloverの測定であるが、腎動静脈noradrenaline濃度を測定する必要があり実用的でない。その他有効な評価方法は確立されていない。 DENERHTN試験でも除神経成功の有無は確認されていない。上述のSYMPLICITY HTN-3(本試験では腎交感神経焼灼術の降圧効果は否定的であった)では、熟練者でない術者が腎交感神経焼灼術を実施したため、除神経が確実でなかったことが懸念されている。 DENERHTN試験では、熟練者の管理の下で腎交感神経焼灼術が実施されている。また、最近の検討で、腎遠心神経は腎動脈遠位側でその分布が腎動脈内腔側を走行することが示された。ゆえに、今後、腎動脈遠位側で焼灼術が施行可能なデバイスを使用したか、腎動脈遠位側の焼灼を実施したかを確認することも必要であろう。DENERHTN試験ではSimplicityカテーテルが使用されており、手技的に腎動脈遠位側の焼灼が可能であるが、手技的詳細は記載されていない。5.治療効果評価方法 項目2でも記載したが治療効果評価には24時間血圧測定が必要である。その他、臓器障害として、左室肥大、脈波速度、腎機能などが効果判定の指標として使用されているが、確立された効果判定の指標はない。また、イベント抑制を検討した長期前向き研究はない。 DENERHTN試験では降圧効果の評価は24時間血圧測定にて実施され、同時に服薬アドヒアランスも確認されている。腎機能の変化は両群同等であった。まとめ DENERHTN試験は、腎交感神経焼灼術実施の盲検化は施行されていないが、治療効果評価は盲検化された試験であり、バイアスは小さい試験と考えられる。また、難治性高血圧の診断、血圧変化評価も24時間測定血圧が用いられ妥当と考えられる。ゆえに、本試験の難治性高血圧降圧治療としての腎交感神経焼灼術の有効性を支持する結果の意義は大きい。 しかし、従来の降圧効果の評価指標である診療室血圧、家庭血圧には対照群と有意な差を認めていない。ゆえに、現時点での腎交感神経焼灼術の降圧効果は有意であっても降圧薬の効果と対比すると小さい可能性が否定できない。 本試験でも従来の試験と同様に除神経成功の可否が評価されていない。今後、確実な除神経が実施された場合の降圧効果の評価が必要である。 その他の問題点は、治療後の降圧薬数は両群で同等であったが、降圧薬追加の適応は24時間血圧でなく家庭血圧で決定されたこと、対照群がシャム手術群でないことである。

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閉経後体重の増減で骨折リスク部位異なる/BMJ

 閉経後の体重増加や減少は、骨折リスクを増大するようだ。また、体重増加と減少では骨折リスクの増加する部位が異なるという。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のCarolyn J. Crandall氏らが、女性の健康イニシアチブ観察・臨床試験(Women’s Health Initiative Observational Study and Clinical Trials)に参加した12万例超のデータを事後解析した結果、報告した。BMJ誌オンライン版2015年1月27日号掲載の報告より。3年後の体重変化と骨折リスクを分析 試験は、1993~1998年の間に米国40ヵ所の医療機関を通じて、50~79歳の閉経後女性12万566例が参加登録され、2013年まで追跡が行われた。 主要評価項目は、自己報告とカルテに記録された上肢、下肢、体幹の骨折で、ベースライン時から3年後の体重変化との関連を分析した。体重変化については、増減5%未満を「安定」、5%以上の減少を「減少」、5%以上の増加を「増加」とした。体重減が意図的なものかどうかについては、自己申告とした。 年齢、人種/民族、ベースライン時BMI、喫煙、飲酒、身体活動度などで補正を行ったCox比例ハザードモデルを用いて事後解析を行った。骨折に関する追跡期間平均値は11年だった。股関節骨折リスク、体重減の人65%増、体重増の人10%増 被験者の平均年齢は63.3歳だった。分析対象としたベースラインからの平均体重変化は、年率0.30%(95%信頼区間[CI]:0.28~0.32)だった。 被験者のうち体重が安定していたのは、7万9,279例(65.6%)、減少したのは1万8,266例(15.2%)、増加したのは2万3,021例(19.0%)だった。 分析の結果、体重が安定していた人との比較で、減少した人は股関節骨折リスクが65%(ハザード比:1.65、95%CI:1.49~1.82)、上肢骨折リスクは9%(同:1.09、1.03~1.16)、体幹骨折リスクは30%(同1.30、1.20~1.39)、それぞれ増大が認められた。 また、体重が増加した人は、股関節骨折リスクは10%(同:1.10、1.05~1.18)、下肢骨折リスクは18%(同:1.18、1.12~1.25)、それぞれ増大が認められた。 さらに、意図的ではない体重減は、股関節骨折リスクを33%(同:1.33、1.19~1.47)、脊椎骨折リスクを16%(同:1.16、1.06~1.26)増大した。しかし、意図的な体重減は、下肢骨折リスクを11%(同:1.11、1.05~1.17)増大した一方、股関節骨折リスクについては15%減少(同:0.85、0.76~0.95)がみられた。

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統合失調症の正確な早期診断のためには

 統合失調症では早期の正確な診断と治療が、患者に長期的な利益をもたらすとされている。英国・Enhance Reviews社のKarla Soares-Weiser氏らは、診断ツールとしてFirst Rank Symptoms(FRS)が有用であるかどうか、その診断精度についてレビューした。その結果、FRSの統合失調症の識別能は75~95%であること、トリアージでの使用においては100例につきおよそ5~19例に誤った診断が下る可能性があることや診断感度は60%であることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「FRSに依存すると治療の遅れや中断などが生じる可能性があるが、現状では、臨床症状のばらつきが大きな疾患に対する簡便、迅速かつ有用なツールである」と述べている。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年1月25日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症におけるFRSの診断精度を調べるため、非器質性精神症状を有すると思われる成人および青少年についての専門家(精神科医、看護師、ソーシャルワーカーなど)による診断歴や検査結果を照合した。ICDやDSMといった診断基準やチェックリスト使用の有無は問わなかった。MEDLINE、EMBASE、PsycInfo using OvidSPを介して、2011年4、6、7月と2012年12月に該当文献を検索、2013年12月にMEDIONの検索も行った。QUADAS-2を用いて、バイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・21試験、被験者6,253例(うち解析に包含したのは5,515例)を解析に組み込んだ。試験は1974~2011年に行われたもので、うち80%は1970年代、80年代または90年代に行われた試験であった。・大半の試験で、試験方法の報告が不十分であった。また多くに、適用可能性に関する強い懸念があった。・FRSが統合失調症とその他疾患を識別した感度は57%(50.4~63.3%)、特異度は81.4%(74%~87.1%)であった(20試験)。・また、FRSが統合失調症と非精神病性精神障害とを識別した感度は61.8%(51.7~71%)、特異度は94.1%(88~97.2%)であった(7試験)。・FRSが統合失調症とその他タイプの精神疾患を識別した感度は58%(50.3~65.3%)、特異度は74.7%(65.2~82.3%)であった(16試験)。・以上、分析に組み込んだ試験は過去のものが多く質的に限定的であるが、当時の時点で、FRSが統合失調症の人を正しく特定した割合は75~95%であった。・トリアージにおけるFRSの使用は、100例につき5~19例については統合失調症を有すると誤った診断をする(専門家はその診断に同意しない)可能性が示された。それでもなお、これらの人々は、専門家の評価を受けることが適当であったり、行動や精神状態の重度の障害により援助の対象となる可能性があった。・また、FRSの診断感度は60%であった。すなわちトリアージでFRSを参照することで、約40%の人(専門家は統合失調症であるとみなしているが)については誤った診断が下る可能性があった。トリアージでFRSに依存して統合失調症の診断を行った場合、適切な治療を受けることが遅れたり、早期に治療が中断される人が出る可能性があった。・そうしたエラーを回避するためには、FRSの限界を知ったうえで使用する必要がある。・今後のコクランレビューで、新たな試験のより良い結果が示されることが望まれる。しかし、新たな試験がない場合でも、FRSは統合失調症が疑われる人の初回スクリーニングでは、なお有用と考えられる。・現状ではFRSは、ばらつきの大きな疾患における簡便、迅速かつ有用な臨床指標である。関連医療ニュース 統合失調症患者を発症前に特定できるか:国立精神・神経医療研究センター 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか 抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか

 抗精神病薬のアドヒアランスは統合失調症の治療成績向上に寄与するが、アドヒアランス行動に最も影響している要因についてのコンセンサスはない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのKyra-Verena Sendt氏らは、その要因を特定すべくシステマティックレビューを行った。対象論文の選定は方法論的に難しく、多くの研究が小規模であり、アドヒアランス率も大きく異なっていたが、いくつかの要因について知見が得られた。著者らは、「この分野の研究では横断的デザインが広く用いられているが、臨床的に意義のある枠組みを提示するためには自然主義的で長期にわたる大規模な前向き研究を優先的に行うべきである」とまとめている。Psychiatry Research誌2015年1月号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症スペクトラム障害の薬物療法に対するアドヒアランスに関与する要因を特定する目的でアドヒアランス、抗精神病薬、統合失調症に関する論文を検索し、方法論的に厳密な研究を適格とした。計13件(6,235例)の観察研究データがレビューに組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・報告されたアドヒアランス率は、47.2~95%と大きく異なっていた。・薬物療法に積極的に取り組む姿勢および病識が、より良好なアドヒアランスと一貫して関連する唯一の要因であった。・社会人口統計学的特性、症状の重症度、副作用とアドヒアランスとの関連については、矛盾した結果が得られた。・個別の治療関係、若年者における社会的支援は、良好なアドヒアランスと関連していた。・抗精神病薬の種類や剤形、神経認知機能はアドヒアランスに影響しないことが示唆された。関連医療ニュース 調査:統合失調症患者における抗精神病薬の服薬状況 持効性注射剤のメリットは?アドヒアランスだけではなかった アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は  担当者へのご意見箱はこちら

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小児アトピー性皮膚炎へのアザチオプリンの安全性

 アザチオプリンは重度の小児アトピー性皮膚炎の治療に有効であることが知られているが、安全性に関するデータは不足していた。英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS Foundation Trust/St George's HospitalのNicholas R. Fuggle氏らは、臨床所見を後ろ向きに調査し、アザチオプリン経口投与を小児アトピー性皮膚炎の治療として用いた場合、重大な有害事象は少ないことを明らかにした。著者らは適切な血液モニタリングと用量調整を推奨している。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年1月号(オンライン版11月4日号)の掲載報告。 研究グループは、小児アトピー性皮膚炎患者におけるアザチオプリン投与中の血液モニタリングに関する提言をまとめるため、2010~2012年にアトピー性皮膚炎の治療でアザチオプリンが処方され前向きに血液が採取された小児82例について、有害事象などを後ろ向きに評価した。 主な結果は以下のとおり。・アザチオプリン治療の開始年齢は、平均8.3歳(標準誤差[SEM]0.4歳)であった。・アザチオプリンの最大投与量は、チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性正常例で平均2.4mg/kg(SEM 0.1mg)、低活性例で1.5mg/kg(SEM 0.1mg)であった。・治療開始から中央値0.4年後において、血液検査値異常を含む有害事象が82例中34例(41%)にみられた。18例(22%)は重大な血液検査値異常(肝トランスアミナーゼ上昇、リンパ球減少および好中球減少)で、うち2例が投与中止となった。・臨床的な有害事象は82例中16例(20%)にみられ、2例が投与中止となった。・多変量解析の結果、有害事象の発現は年齢、性別、TPMT活性および投与量と関連していなかった。

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血液透析患者は「肉・魚・野菜」をバランスよく

 血液透析患者の実際の食事パターンと臨床転帰との関連性については、ほとんど知られていない。九州大学の鶴屋 和彦氏らは、わが国の血液透析患者における食事パターンを特定し、臨床転帰との関連を調べた。その結果、肉・魚・野菜のバランスが悪い食事(肉・魚に比べて野菜の摂取量がかなり多い)は重大な臨床転帰と関連していた。この結果から著者らは「血液透析患者は食物摂取の制限だけではなく、この3群についてバランスのよい食事をするように努力すべきであることを示している」と指摘した。PLoS One誌2015年1月21日号に掲載。 著者らは、久山町研究(2007年)における一般集団の参加者3,080人のデータ、およびJapan Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(JDOPPS、2005~2007年)における血液透析患者1,355人のデータを使用し検討した。食物摂取量は、簡易式自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて測定した。食事パターンと有害な臨床転帰(心血管疾患による入院または全死亡)の関連性について、Cox回帰を用いて検討した。  主な結果は以下のとおり。・肉、魚、野菜の3つの食品群を同定し、これらを基に「バランスのよい食事」「バランスの悪い食事」「その他」の3つの食事パターンに分類した。・潜在的交絡因子の調整後、「バランスの悪い食事」と重大な臨床イベントとの間に関連性が認められた(ハザード比1.90、95%CI:1.19~3.04)。

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