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重炭酸Naとアセチルシステインに造影剤腎症の予防効果なし/NEJM

 血管造影を受ける腎合併症発症リスクが高い患者において、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)や塩化ナトリウムの静脈投与単独、または経口アセチルシステインの投与は、いずれも死亡や透析、血管造影に関連した急性腎障害の予防に寄与しないことが示された。米国・ピッツバーグ大学のSteven D.Weisbord氏らが、5,177例を対象に行った2×2要因デザインの無作為化試験「PRESERVE」の結果で、NEJM誌オンライン版2017年11月12日号で発表された。現状では、これらを投与する効果に関してエビデンスが乏しいまま、血管造影後の急性腎障害や有害アウトカム予防を目的とした、炭酸水素ナトリウム静注や経口アセチルシステイン投与が広く行われているという。90日後の全死因死亡、透析、クレアチニン値上昇の複合エンドポイントを比較 研究グループは2013年2月~2017年3月にかけて、米国(35ヵ所)、オーストラリア(13ヵ所)、マレーシア(3ヵ所)、ニュージーランド(2ヵ所)の計53ヵ所の医療機関を通じて、血管造影が予定されている腎合併症発症リスクが高い患者5,177例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に4群に分け、二重盲検2×2要因プラセボ実薬対照法にて、1.26%炭酸水素ナトリウムまたは0.9%塩化ナトリウムの静脈投与、5日間のアセチルシステインまたはプラセボの経口投与を受けるよう無作為に割り付けた。被験者のうち4,993例についてintention-to-treat解析を行った。 主要エンドポイントは、90日時点の全死因死亡・透析の実施・ベースラインから50%以上の血清クレアチニン値上昇の複合とした。副次評価項目は、血管造影関連の急性腎障害の発生などだった。主要エンドポイント、急性腎障害ともに群間差なし 事前に規定した中間解析後に、本試験はスポンサーの判断で中止された。 炭酸水素ナトリウムとアセチルシステインの間に、主要エンドポイントの発生について、関連は認められなかった(p=0.33)。具体的に、主要エンドポイントの発生率は、炭酸水素ナトリウム群4.4%(2,511例中110例)に対し、塩化ナトリウム群4.7%(2,482例中116例)だった(オッズ比[OR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.72~1.22、p=0.62)。また、同発生率はアセチルシステイン群4.6%(2,495例中114例)、プラセボ群4.5%(2,498例中112例)だった(OR:1.02、95%CI:0.78~1.33、p=0.88)。 血管造影関連の急性腎障害の発生率についても、群間差は認められなかった。

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fremanezumabとerenumabは片頭痛の予防治療に有効(中川原譲二氏)-789

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabとerenumabは、ともに片頭痛の予防治療薬として研究されているが、両薬剤の第III相試験でその有効性が相次いで報告された。1)慢性片頭痛の予防治療としてのfremanezumab第III相試験fremanezumabを3ヵ月に1回、または毎月投与で有効性を検討 米国・トーマス・ジェファーソン大学のStephen D.Silberstein氏らの研究グループは、2016年3月~2017年1月の間、132施設において、慢性片頭痛患者(持続時間や重症度にかかわらず頭痛が月に15日以上あり、そのうち片頭痛が8日以上ある患者)1,130例を対象として、無作為に以下の3群に割り付けた。(1)fremanezumabを3ヵ月に1回投与(ベースライン時675mg、4、8週時はプラセボを投与、376例:3ヵ月ごと投与群)、(2)毎月投与(ベースライン675mg、4、8週時は225mg投与、379例:月1回投与群)、(3)プラセボ投与(375例)。薬剤、プラセボをそれぞれ皮下注した。 主要エンドポイントは、初回投与後12週時点における月平均頭痛日数のベースラインからの平均変化値とした。評価対象とした頭痛の定義は、連続4時間以上持続しピーク時重症度が中等度以上であった頭痛、または持続時間や重症度にかかわらず急性片頭痛薬(トリプタン系薬やエルゴタミン製剤)を使用した頭痛で、それらを呈した日数をカウントした。月平均頭痛日数が、fremanezumab群の2用量群とも約4割で半減 ベースライン時の被験者の月平均頭痛日数は、3ヵ月ごと投与群が13.2日、月1回投与群が12.8日、プラセボ群が13.3日だった。月平均頭痛日数の最小二乗平均値の減少幅は、3ヵ月ごと投与群4.3±0.3日、月1回投与群4.6±0.3日に対し、プラセボ群は2.5±0.3日であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。月平均頭痛日数が50%以上減少した患者の割合は、3ヵ月ごと投与群38%、月1回投与群41%に対し、プラセボ群は18%であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。試験薬に関連したものと考えられる肝機能異常は、実薬群でそれぞれ5例(1%)、プラセボ群で3例(<1%)と報告された。 本研究では、慢性片頭痛の予防薬としてのfremanezumabは、この12週試験において、プラセボよりも頭痛の頻度が低かった。副作用としては、薬物に対する注射部位の反応がよくみられ、長期の効果持続性と安全性については、さらなる研究が求められるとした。2)反復性片頭痛に対するerenumab第III相STRIVE試験約1,000例で、erenumab 70mgまたは140mgの有効性と安全性を検討 STRIVE(Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Erenumab in Migraine Prevention)試験では、2015年7月~2016年9月5日の期間に、121施設において、18~65歳の反復性片頭痛患者955例を対象として、erenumab 70mg、140mgまたはプラセボの3群に無作為に割り付け(それぞれ317例、319例、319例)、いずれも月1回皮下投与を6ヵ月間行った。 主要エンドポイントは、片頭痛を認めた日数(月平均)のベースラインから投与4~6ヵ月の変化。副次エンドポイントは、片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合、急性期片頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの変化、身体機能スコア(Migraine Physical Function Impact Diary[MPFID:0~100点、スコアが高いほど片頭痛が身体機能に与える影響が大きい])における機能障害・日常生活領域のスコアの変化などであった。70mgおよび140mgともに片頭痛の頻度が有意に減少 片頭痛月平均日数は、ベースライン時は全集団において8.3日であったが、投与4~6ヵ月時は、erenumab 70mg群で3.2日減少、同140mg群で3.7日減少したのに対し、プラセボ群では1.8日の減少であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合は、70mg群43.3%、140mg群50.0%に対し、プラセボ群は26.6%(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)、また、急性期片頭痛治療薬の使用日数の変化量はそれぞれ1.1日減少、1.6日減少に対し、0.2日減少であった(同p<0.001)。機能障害スコアは、70mg群4.2点、140mg群4.8点の改善であったのに対して、プラセボ群は2.4点の改善であった。同様に日常生活スコアもそれぞれ5.5点、5.9点、および3.3点の改善であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。有害事象の発現率は、erenumab群とプラセボ群で同程度であった。 本研究では、erenumab 70mgまたは140mgの月1回皮下投与は、反復性片頭痛患者において、6ヵ月以上、片頭痛の頻度、片頭痛の日常生活への影響および急性片頭痛治療薬の使用を有意に減少させた。erenumabの長期的な安全性と効果の持続性に関しては、さらなる研究が必要であるとした。片頭痛のCGRP誘発機序と新たな先制予防治療薬の登場 片頭痛患者では、三叉神経末端が刺激され、そこからカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が分泌されて血管拡張を誘発し、急性片頭痛が起こるとされる(CGRP誘発機序)。このため片頭痛の発症予防治療薬として、CGRP受容体の拮抗薬が有効ではないかとする研究が行われてきた。今回報告された慢性の反復性片頭痛患者を対象としたCGRP受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabまたはerenumabの第III相臨床試験の結果は、片頭痛のCGRP誘発機序の妥当性とCGRP受容体の拮抗薬の発症予防における有効性を証明するものであり、両薬剤は片頭痛に対する先制予防医療の突破口を開く治療薬として注目される。

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アルツハイマー病に対する新規ベンゾジアゼピン使用に関連する死亡リスクのコホート研究

 フィンランド・東フィンランド大学のLaura Saarelainen氏らは、アルツハイマー病の全国コホートにおいて、新たなベンゾジアゼピンおよび関連薬剤(BZDR)の使用に伴う死亡リスクを調査した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2017年11月15日号の報告。 2005~11年にアルツハイマー病と診断されたすべてのフィンランド住民7万718例を含むレジスタベースのMEDALZコホートを用いた。アルツハイマーの臨床的診断は、特別償還記録(Special Reimbursement Register)より得た。薬剤使用期間は、処方記録(Prescription Register)より由来したBZDR購入からモデル化された。新規BZDR使用者を調査するため、アルツハイマー病診断の前年にBZDRを使用した患者は除外した。BZDR使用を開始した使用患者群(1万380例)について、年齢、性別、アルツハイマー病診断までの期間をマッチさせた各人2人の未使用患者群(2万760例)を選出した。多変量解析では、チャールソン併存疾患指数、社会的地位、股関節骨折、精神障害、薬物乱用、脳卒中、他の向精神薬使用で調整した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に、未使用患者群と比較し、使用患者群は100人年当たり5人の超過死亡がみられた。死亡率は、使用患者群13.4%(95%CI:12.2~14.5)、未使用患者群8.5%(95%CI:7.9~9.1)であった。・BZDRの使用は、死亡リスク増加と関連しており(調整ハザード比:1.4、95%CI:1.2~1.6)、その関連は使用開始から有意であった。・ベンゾジアゼピン使用は死亡リスクの増加と関連が認められたが、ベンゾジアゼピン関連薬剤の使用はそうではなかった。 著者らは「ベンゾジアゼピンおよび関連薬剤の使用は、アルツハイマー病患者の死亡リスク増加と関連が認められた。本結果より、アルツハイマー病の対症療法の第1選択治療は、治療ガイドラインで推奨される非薬理学的アプローチであることを支持する」としている。■関連記事なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか認知症予防にベンゾジアゼピン使用制限は必要かベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は

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糖尿病性網膜症に新たなスクリーニング法/JAMA

 シンガポール・国立眼科センターのDaniel Shu Wei Ting氏らは、ディープラーニングシステム(DLS)を活用した、糖尿病性網膜症および関連する眼疾患を検出するスクリーニング法を開発し検証試験を行った。検証試験は、多民族から成る糖尿病患者集団の網膜像評価で行われ、DLSは糖尿病性網膜症および関連する眼疾患の検出について、高い感度および特異度を示したという。著者は、「さらなる研究を行い、健常者でのスクリーニングにDLSが応用可能かについて、また視機能の改善に果たすDLSの有用性を検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2017年12月12日号掲載の報告。シンガポールの多民族患者コホートで学習訓練と検証試験 研究グループは、糖尿病を有する、地域およびクリニックベースの多民族集団で、糖尿病性網膜症、失明の恐れのある糖尿病性網膜症、疑い例を含む緑内障、加齢黄斑変性(AMD)の検出におけるDLSのパフォーマンスを評価した。診断能の評価は、網膜像49万4,661例を用いて行った。 まずDLSは、糖尿病性網膜症(7万6,370画像を使用)、疑い例を含む緑内障(12万5,189画像)、AMD(7万2,610画像)の検出について訓練を受け、その後、糖尿病性網膜症(11万2,648画像)、疑い例を含む緑内障(7万1,896画像)、AMD(3万5,948画像)について診断能の評価を受けた。 DLSの訓練は2016年5月に完了。検証試験は、糖尿病性網膜症(中等症の非増殖糖尿病性網膜症または増悪例)、失明の恐れのある糖尿病性網膜症(重症の非増殖糖尿病性網膜症または増悪例)の検出について、2017年5月に完了した。検証試験の主要データセットは、Singapore National Diabetic Retinopathy Screening Programと10の多民族糖尿病患者コホートであった。 主要評価項目は、DLSの標準参照としての専門評価者(網膜専門医、一般眼科医、訓練を受けた評価者、オプトメトリスト)に対するROC曲線下面積(AUC)、感度、特異度とした。糖尿病性網膜症、緑内障、AMDの検出、感度、特異度ともに高値を示す 主要検証データセットは、患者1万4,880例、7万1,896画像、平均年齢60.2(SD 2.2)歳、男性54.6%であった。同データセットにおける各有病率は、糖尿病性網膜症3.0%、失明の恐れのある糖尿病性網膜症0.6%、疑い例を含む緑内障0.1%、AMD 2.5%であった。 DLSの糖尿病性網膜症についてのAUCは0.936(95%信頼区間[CI]:0.925~0.943)、感度90.5%(95%CI:87.3~93.0)、特異度91.6%(同:91.0~92.2)であった。失明の恐れのある糖尿病性網膜症については、AUC 0.985(0.956~0.961)、感度100%(94.1~100.0)、特異度91.1%(90.7~91.4)であった。疑い例を含む緑内障については、AUC 0.942(0.929~0.954)、感度96.4%(81.7~99.9)、特異度87.2%(86.8~87.5)であった。AMDについては、AUC 0.931(0.928~0.935)、感度93.2%(91.1~99.8)、特異度88.7%(88.3~89.0)であった。 10の追加データセット(4万752画像)における糖尿病性網膜症のAUCは、0.889~0.983であった。

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新しいDESはXienceを超えられるか?(解説:上田恭敬氏)-787

 完全吸収型のポリマーで被覆されたシロリムス溶出性DES(MiStent; Micell Technologies, Durham, NC, USA)と非吸収性ポリマーで被覆されたエベロリムス溶出性DES(Xience; Abbott Vascular, Santa Clara, CA, USA)を直接比較した、non-inferiorityを示すためのall-comer無作為化比較試験であるDESSOLVE III試験の結果が報告された。 MiStentの特徴は、ポリマーが3ヵ月で完全消失するのに対して、結晶化された薬剤は9ヵ月間血管壁に残留して作用し続けることである。1,398症例が登録され、その59%が急性冠症候群症例であった。 エンドポイントは、12ヵ月時点でのDOCE(device-oriented composite endpoint)であり、心臓死、対象病変の心筋梗塞、標的病変血行再建術の複合エンドポイントで、MiStentで5.8%、Xienceで6.5%とnon-inferiorityが示された。複合エンドポイントに含まれる各イベント及びステント塞栓症についても、群間差を認めなかった。 6ヵ月後にOCTを施行した53症例のサブグループにおいて、新生内膜容積がXienceよりもMiStentで小さいことが示された。 以上より、12ヵ月時点での臨床成績において、Xienceに対するMiStentの非劣性が示された。また、OCTのサブグループ解析の結果から、より長期においてはMiStentの優位性が示されるかもと記載している。 Xience以後も多くの新しいDESが開発されてきたが、いずれもXienceに対して優位性を示すことはできず、今回のMiStentも同様の結果であった。しかし、ポリマーを早く消失させながらも、長期間に渡って薬剤を作用させる今回の新しい技術の実用性を示したことは、今後の発展のために進歩と言えるかもしれない。しかし、OCTによって示された結果である、Xience以上に新生内膜の増成を抑制することにどのような意味があるかは明らかでなく、留置1年以後の再狭窄の機序としてNeoatherosclerosisの重要性が指摘される中、MiStentの長期成績に優位性を期待するとすればポリマーが残存しないことの効果であり、ポリマーが残存しない他のDESとの違いは無いように思われる。何らかのブレークスルーが必要なのかもしれないが、科学技術の進歩に限界は無いと思うので、Xienceに対して明らかな優位性を示す新しいDESの登場を期待したい。

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サン・アントニオ2017レポート-2

レポーター紹介HER2陽性早期乳がんにおけるtrastuzumab短期投与の意義 –SOLD試験SOLD試験はHER2陽性乳がんに対して、trastuzumab9週間と1年を比較する試験である。DTX+trastuzumab3回→FEC3回をベースとして、その後のtrastuzumab14回の有無で治療効果を比較した。当初は優越性試験としてデザインされ、516のイベントに到達するために3,000例が必要とされた(5年DFS84%対80%、4%の差)。しかし5年DFSの仮定が低すぎると判断され、途中で研究計画が変更となり、非劣性試験として非劣性マージン1.3、2,168例の症例数が設定された。結果としてDFSではHR1.39であり、非劣性は証明されなかった(90.5%対88.0%)。OSはHR1.36(95.9%対94.7%)、DDFSはHR1.24(94.2%対93.2%)であった。サブ解析ではDTX投与量が100mg/m2で9週間の方が良好な傾向があった(80mg/m2では1年がよい)が、それ以外はいずれも1年の方が一定して良好な傾向であった。ただこの解析からDTX100では9週間でよいといってはいけない。単にサブ解析の結果にすぎない。全体としては一定の傾向(1年のほうで良好)であると考えるべきである。心毒性はやはり9週間の群で少なかった(うっ血性心不全1.9%対3.3%)。これらのことより依然としてtrastuzumabの治療期間は1年が標準であるということになる。この結果は、ASCO2017で紹介したShort-HER試験とまったく同様の状況になっているので、今回議論は省略するが、単に統計学的に同等であるという仮説をメットしなかったということである。ASCO2017の報告で述べたように、そもそも予後良好群では、trastuzumab1年は9週間と比較して予後を改善しないだろう。術後trastuzumabの使用期間に関するメタ分析の結果も別に報告されていた。解析されたRCTはShort-Her、PERSEPHONE(心毒性のみ)、HORG、PHAREの4研究である。長期間使用の方がOS、DFSともにベターとなっているが、心イベントも多くなっている。また、ER陽性あるいはリンパ節転移陽性では有意差はない。やはり予後良好群では、HERの長期使用が予後を明らかに改善することはなく、心イベントを増加させることが示されている。センチネルリンパ節の微小転移は腋窩郭清を省略できる−IBCSG 23-01IBCSG 23-01はセンチネルリンパ節生検で微小転移(2mm以下)があったものに対して郭清と非郭清を比較した試験であり、今回10年のデータが報告された。90%がBp(97%でRTあり)、10%がBt(5%でRTであり)であった。DFSも乳がん関連のイベントもまったく差がなく、腋窩再発もごくわずかであった。もちろんOSにも差はない。微小転移に対してはBt、Bpともに郭清は予後改善をもたらさず、腋窩微小転移に対する非郭清は現行どおりである。HER2陽性乳がんにおけるDCH、TCH、FECDHの効果は同等カナダの病院からのリアルワールド(レトロスペクティブ)データである。N0に対してはDCH(DTX/CPA/HER)4サイクルまたはTCH(DTX/CBDCA/HER)6サイクル、N+に対してはTCHまたはFECDH6サイクルが行われている。DCH(104例)とTCH(60例):中央観察期間58.1ヵ月、TCH(314例)とFECDH(145例):63.1ヵ月で、ともにDFS/OSに差はなく、いずれも非常に予後良好であった。HER2陽性乳がんにDCH4サイクルはN0に、TCH6サイクルはN+にリーズナブルなオプションである。palbociclibを受けた乳がん患者に対する投与遅延と減量のPFSに及ぼす影響MD Andersonからの報告である。PALOMA-3の安全性分析で、好中球減少による減量や遅延はPFSに影響しないという結果が出ている(Verma S, et al. The Oncologist. 2016;21:1165-1175.)。MDAにおいて、毒性によるpalbociclibの遅延/減量とPFSへの影響をレトロスペクティブに解析した。334例のうち109例で減量、153例で治療の遅延があった。発熱性好中球減少症は2.3%と極めて低かった。減量や遅延を行った患者は、そうでない患者群よりいずれも有意にPFSが長かった。このことから、palbociclibの毒性による減量/遅延は予後を悪化させないということがわかり、臨床的に重要なデータである。転移性ER陽性閉経後乳がんでさまざまな治療を受けた後のpalbociclibの有効性CDK4/6阻害剤の有効性は再発のファーストラインで示されているが、さまざまな治療を受けた後の意義については知られていない。ベルギーから報告された本研究は、少なくとも4ライン以上の治療を受け、その後少なくとも1回以上のpalbociclibを使用した患者82名をレトロスペクティブに解析したものである。palbociclibの中央使用期間は5.6ヵ月で、中央PFSは3.17ヵ月であった。Clinical benefit rateは41.5%、9ヵ月以上のSDは20.7%で、43.9%では治療の遅延や減量が行われていた。このように多くの治療を受けた後でもpalbociclibは十分な治療効果と安全性をもって使う価値がありそうであり、私たちのこれからの診療に大いに役立つ情報である。病期1、低リスク、ホルモン感受性乳がんにおける照射の有効性本研究は7つのRCT(NSABP B-21、B-20、B-1、CAL.GB9343、TAILORx、GBSG V)からのプール解析である。適格基準は40~74歳、ERまたはPR陽性、HER2陰性、病期1、乳房温存術施行、化学療法なし、オンコタイプDXリスク≦18であり、RTありと無しで、生存率を比較した。全体としてRT省略は局所再発のイベントを増加させた。ODX<11または低悪性度ではRTを省略しても再発率は変わらず、RTを省略も十分考慮してよさそうである。BRCA1/2変異保有者におけるTAM使用と対側乳がんのリスク複数国にわたる大規模なレジストリーからのデータである。3,743例(BRCA1:2,343例、BRCA2:1,400例)の変異保有者のうち、908例の対側乳がんが発見された。多変量解析には両側卵巣切除の有無が含まれた。対側乳がん、対側リスク低減手術、死亡、最終経過観察日で打ち切りとなった。結果として、初回乳がんがER陽性の場合、とくにBRCA2においてTAMの使用が対側乳がんの発症を減少させた。一方ER陰性では、TAMは乳がんの発症を予防していなかった。このことから、初回乳がんのHRの状態によってTAM使用を考えるのがリーズナブルで、HR陰性に対して対側乳がんの予防のためにTAMを用いることはあまり有効性をもたらさないであろう。BRCA1、BRCA2、ATM、CHEK2、PALB2変異保有者における乳がんの分子学的解析BRCA1/2における乳がんの体細胞変異については理解が進んでいる。しかし同じく遺伝性乳がんの原因遺伝子であるATM、CHEK2、PALB2についてはよく知られていない。そこで、BRCA1:9名、BRCA2:8名、ATM:5名、CHEK2:7名、PALB2:6名、TP53:2名、散発性乳がん:8名について、体細胞のコピー数、遺伝子変異解析を行った。DNA相同組換え修復能不全に関連する遺伝子のコピー数は、BRCA1、ATM、CHEK2、PALB2間できわめて類似していた。変異解析とコピー数のプロファイリングは、全てのBRCA1がTNBCで、すべてのCHEK2がER+であったにも関わらず最も類似していた。BRCA1変異では他の変異と比べ、遺伝子発現の違いが著明であった。TNBCにおける最も共通の変異はTP53であった。10%以上の遺伝子変異は、TP53、SDS、SNX31、IGFH、SLC3A2、METTL5、C180rf56、BRCA1、MAP3K1、ESCP2、FRAS1、ERBB2、PALB2、LCE10、BCL2L14であった。遺伝性乳がんにおける体細胞変異解析は散発性乳がんとは異なる治療を考えるうえでの重要な知見となり、今後さらに理解が進むことを期待する。

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治療抵抗性焦点性てんかんに対する第3世代抗てんかん薬補助療法の間接比較

 第3世代の新規抗てんかん薬として、eslicarbazepine、ラコサミド、ペランパネル、brivaracetamが、最近販売されている。中国・四川大学のZhu Li-Na氏らは、コントロール困難な焦点性てんかんにおける第3世代抗てんかん薬の有用性、忍容性を間接的に比較するためメタ解析を行った。Epilepsy research誌オンライン版2017年11月26日号の報告。 抗てんかん薬用量範囲にわたる治療効果を調査したすべての利用可能なプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を、Pubmed、Embase、Cochrane Online Library、Clinicaltrial.govのデータベースより検索を行った。続いて、Indirect Treatment Comparison ソフトウェアを用いて、新規抗てんかん薬間の有効性、忍容性の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・19件のRCTより7,245例の患者が抽出された。・用量にかかわらず第3世代抗てんかん薬間で、50%治療反応率および発作の無い割合のリスク差に有意な差は認められなかった。・治療中に発現した有害事象リスクは、すべての用量において、brivaracetamと比較し、eslicarbazepineおよびペランパネルで有意に高かった。・有害事象による治療中止率は、brivaracetamと比較し、ラコサミドおよびペランパネルの高用量治療を行った患者において有意に高かった。eslicarbazepineまたはラコサミドによる治療は、すべての用量を組み合わせたbrivaracetamよりも高い中止率と関連が認められた。 著者らは「本分析では、コントロール困難な焦点性てんかんにおける第3世代抗てんかん薬の有用性に有意な差は認められなかった。brivaracetamは、最も優れた忍容性を有する可能性がある。他の第3世代抗てんかん薬は、とくに高用量で投与した際、許容しがたい有害事象を高リスクで伴う。これらの間接的な比較結果は、さらなる検証が必要であり、今後よく設計された試験において検証するべきである」としている。■関連記事てんかん重積状態に対する抗てんかん薬処方の変化難治性てんかん重積状態への有用な対処法てんかん重積状態に対するアプローチは

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インフルエンザ関連呼吸器系死亡の実情は?/Lancet

 これまでインフルエンザに関連した呼吸器系死亡推計は、世界で年間25~50万人とされてきた。米国疾病予防管理センターのA Danielle Iuliano氏らは、「この推計値はWHOが2004年頃に公表したものだが、算出方法が不明で、1990年代のデータを用いていると推察され、各国の実状を反映していないと思われる」として、1995~2015年の各国インフルエンザ関連の呼吸器系超過死亡の推計値を用いて、最新の状況を推算した。結果、従来値よりも多い約29万~65万人と算出されたという。インフルエンザ関連死の推計値は、国際的なおよび各国のパブリックヘルスの優先事項を決定する際に重視されている。著者は、「従来数値によって、疾病負荷が過小評価されていたかもしれない」と指摘し、「世界のインフルエンザ関連死亡に占める、呼吸系疾患以外の死因について調査する必要がある」と提言している。Lancet誌オンライン版2017年12月13日号掲載の報告。モデリング法を用いて世界各国のインフルエンザ死亡リスクの実態に迫る 検討は、モデリング法を用いて行った。まず、死亡レコードとインフルエンザサーベイランスデータがある33ヵ国について、時系列対数線形モデルを用いて各国のインフルエンザ関連呼吸器系超過死亡率(EMR)を推算。次に、データのない国のために外挿法を用いて推計を行うため、WHO Global Health Estimate(GHE)の呼吸器感染症死亡率を用いて、各国の3つの年齢群(65歳未満、65~74歳、75歳以上)について、3つの分析部門(1~3)に分類した。 EMR推定値のある国とない国のGHE呼吸器感染症死亡率の比較で全世界におけるインフルエンザ死亡リスクの差を明らかにするため、死亡率比(MRR)を算出。また、各年齢別分析部門内で個々の国の死亡推計を算出するために、無作為に選択した平均年間EMRsと各国MRRおよび母集団を乗算して評価した。 全体の95%確信区間(CrI)の推定値は、1シーズンまたは1年間のインフルエンザ関連死の可能な値域を示す国別全推計の事後分布から取得した。 そのほかに、呼吸器感染症による死亡率が高い92ヵ国について、同様の手法を用いて5歳未満児のインフルエンザ関連死を推計した。季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例と推計 EMR推定値の得られた33ヵ国のデータは、全集団の57%を占めた。 平均年間インフルエンザ関連呼吸器系EMRは、65歳未満群では、10万人当たり0.1~6.4にわたった。65~74歳未満群では、同2.9~44.0であり、75歳以上群では17.9~223.5にわたった。 季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例(10万人当たり4.0~8.8)発生していると推計された。死亡率比が最も高いのは、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり2.8~16.5)、東南アジア(同3.5~9.2)であり、年齢群では75歳以上(同51.3~99.4)で最も高いと推定された。 92ヵ国の5歳未満児のインフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年9,243~10万5,690例発生していると推計された。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第42回

第42回:水痘/帯状疱疹、50歳以上にワクチン接種勧めますか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 今回のテーマは水痘/帯状疱疹です。日本では2014(平成26)年10月から水痘ワクチンが定期接種化(生後12~36ヵ月)されています。先日も6歳の子が水痘で受診されましたが、接種していなくて未発症の姉は予防接種すべきか、担がん患者の祖母は接種したほうがよいか、非常に迷いました(50歳以上の接種で帯状疱疹を予防するエビデンスあり)。身近な問題ながら、わからないことが多いのが、水痘/帯状疱疹です。 以下、Am Fam Physician.11月15日号1)より帯状疱疹は、水痘ウイルスの再活性化(reactivation)で発症する。米国では年間100万人発症し、その人が生涯発症するリスクは30%程度とされている。家庭医の診療ベースでは、人口1,500人当たりで年間2~3例が発症し、体液性免疫が低下している人に関しては、そのリスクが20~100倍まで跳ね上がる。発疹の2~3日前に、全身倦怠感、頭痛、発熱、腹部の皮膚の違和感があるが、前駆症状だけで診断するのはかなり困難である。発疹は片側性に、1つのデルマトームに限局することが多く、水疱は7~10日で痂皮化する。72時間以内の抗ウイルス薬投与が勧められるが、新しい病変が発生する場合や、眼病変、神経症状が出る場合はその限りではない。アシクロビルにするか、バラシクロビル(商品名:バルトレックス)にするか迷うところである。アシクロビルは安価だが生体利用率が低く、投与回数も多い(3回と5回)。また、6ヵ月後の皮膚病変については差がないが、神経痛の改善はバラシクロビルのほうが早いと言われている2)。帯状疱疹後神経痛は5人に1人の割合で発症し、治療法はリドカイン、カプサイシン、ガバペンチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬がある。50歳以上の人に水痘ワクチンを接種することは、帯状疱疹の減少につながる可能性がある(ちなみに抗体価を測って接種の可否を決める必要はない。年齢要件があれば、既往や抗体価の有無に関わらず適応がある)。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2017;96:656-663. 2) Beutner KR, et al .Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1546-1553.

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心不全のマネジメントにおける抗うつ薬の死亡率や心血管機能への影響

 うつ病は、心不全の患者の罹患率、死亡率、再入院率の増加と関連している。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのThurkka Rajeswaran氏らは、抗うつ薬の使用がうつ病を伴う心不全患者のアウトカムを改善できるかを検討するため、システマティックレビューを行った。International journal of psychiatry in clinical practice誌オンライン版2017年11月26日号の報告。 Embase、Ovid MEDLINE、PsycInfoのデータベースより、心不全や抗うつ薬などのキーワードを用いて検索を行った。このデータベース検索結果より、包括基準を満たす文献を抽出し、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・データベース検索で該当した180件の論文のうち、包括基準を満たしたのは3件のみであった。・手作業で参考文献を検索し、2件の論文が追加された。・これらの論文のうち3件は、ランダム化比較試験であった。残りの2件は、コホート研究であった。・すべての研究において、抗うつ薬使用は、心不全患者に十分忍容性があることが示唆された。・対照群との間に、抑うつ症状の有意な差は認められなかった。・心不全患者の心血管アウトカムは、対照群と比較し、抗うつ薬の使用によって改善されなかった。 著者らは「心不全患者に対する抗うつ薬使用は、これまでの研究で報告されているような死亡率増加との関連が認められなかった。しかし、抗うつ薬使用が、うつ病または心血管アウトカムの改善に有意な影響を及ぼす点についてのエビデンスは不十分である」としている。■関連記事抗うつ薬ランキング、脳卒中後うつ病へ最良の選択肢はうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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「アメトーーク!」で“火がついた”IQOS人気、310万人が使用?/本邦疫学研究

 マスメディアは人々の行動に大きな影響を与える。非燃焼加熱式(Heat–Not-Burn、以下HNB)タバコ「IQOS」が人気娯楽番組「アメトーーク!」で取り上げられ、その人気に火がついたようである。大阪国際がんセンターの田淵 貴大氏らは、2つのデータソースを使用して、日本におけるIQOSを含むHNBタバコへの関心度、使用率、HNBタバコの2次的曝露による症状などについて研究した。Tobacco Control誌オンライン版2017年12月6日号に掲載。研究概要・Google Trendによる検索量(Ralative Serarch Volume)を使用して、HNBタバコ(IQOS、PloomTech、glo)に対する母集団の関心度を調査した。調査期間は2013年4月1日~2017年4月1日。・楽天リサーチパネル(15~69歳)8,240人のインターネット調査で、HNBタバコ使用率、HNBタバコ開始の予測因子、HNBタバコのエアロゾル暴露による症状を追跡調査した。ベースライン調査は2015年1~2月、追跡調査は1年後の2016年1~2月に、2年後の2017年1~2月に実施。「アメトーーク!」放映がきっかけとなりIQOSが急速に普及 2016年4月28日、人気の娯楽テレビ番組「アメトーーク!」でIQOSを取り上げた回が放映された。・IQOSのインターネット検索は、同番組放映週(2016年4月1~30日)において、急峻な上昇(スパイク状)を示し、最大値が記録された。その後は若干低下するものの、依然として高値を続けている。・「アメトーーク!」視聴者は、非視聴者に比べIQOSの使用率が高かった。2017年における使用率は、番組視聴者の10.3%に対し非視聴者は2.7%であった。・母集団におけるIQOSの使用率は、2015年1月~2月の0.3%、2016年1月~2月0.6%、番組放映後の2017年1月~2月には3.6%と、約10倍となった。IQOS国内使用者は310万人、禁煙意志のある喫煙者が使用する傾向・母集団の上記使用率から推計すると、17~71歳の本邦の人口8,600万人のうち、IQOS使用者は310万人となる。・ベースライン時に禁煙意志がある喫煙者は、禁煙意志のない喫煙者に比べ、IQOS使用率が高かった。2017年におけるIQOS使用率は、禁煙意志あり喫煙者18.8%に対し、禁煙意志なし喫煙者6.7%であった。 なお、HNBタバコと電子タバコを合わせた使用率は4.7%、HNBと電子タバコの併用者は3.4%であった。また、ほかのHNBタバコ(PloomTechとglo)の検索量は、IQOSに比べ低値であり、番組放映による変化もみられなかった。使用率については、いずれも増加しているものの、2017年のPloom Tech使用率は1.2%、gloは0.8%と、IQOSに比べかなり低い。HNBタバコのエアロゾル曝露による症状訴え37% 他者のHNBタバコのエアロゾルに2次的に曝露された経験については、以下のような結果であった。・曝露経験者は母集団の12%を占めた。・そのうち何らかの症状(のどの痛み、目の痛み、気分不快など)の体験者は37%であった。ただし、症状は重篤ではなかった。 HNBタバコ使用者への影響や、公衆衛生へのインパクトは十分にわかっていない。筆者らは、HNBタバコの急速な全国普及の可能性を示唆し、HNBタバコの監視を継続するとともに、規制方法を検討する必要がある、と述べている。

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雨が降ると関節痛の受診は増えるのか/BMJ

 降雨と関節痛や背部痛による外来受診に関連はないことが、米国・ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏らによる、155万人以上の米国人高齢者のデータを解析した研究で明らかとなった。多くの人々が、とくに関節炎の患者において、気象条件の変化で関節痛や背部痛の症状が増悪すると考えている。気象パターンと関節痛の関連を検討した研究において至った結論はさまざまであり、種々の気象条件下で関節痛を詳細に評価した研究は、どれも症例数が少ないという。BMJ誌2017年12月13日号掲載のクリスマス特集での報告。医療保険申請データと降雨データを関連付け 研究グループは、降雨と関節痛や背部痛による外来受診の関連を評価する観察研究を行った(研究助成は受けていない)。 米国のメディケア医療保険申請データと、米国気象台(US weather stations)の降雨データを関連付けた。2008~12年に一般内科医の外来診療を受けた65歳以上の155万2,842例(総受診件数:1,167万3,392件)を解析の対象とした。 疾患(関節リウマチ、変形性関節症、脊椎症、椎間板障害、その他の非外傷性関節障害)に関連した関節痛または背部痛による外来受診の割合を、雨が降った日と降らなかった日で比較した。患者の背景因子、慢性疾患、地理的な固定効果(同一地域内の降雨日と非降雨日で、外来受診関連の関節痛または背部痛の割合を比較)で調整した。予想とは逆の結果だが、関連の可能性はまだ残る メディケア加入者による1,167万3,392件の外来受診のうち、209万5,761件(18.0%)が降雨日のものであった。 患者の平均年齢は、降雨日が77.0歳、非降雨日は77.1歳、女性がそれぞれ62.1%、62.2%、白人が87.3%、85.8%であった。主な慢性疾患として、高血圧が降雨日で89.0%、非降雨日で88.8%にみられ、脂質異常症がそれぞれ85.2%、85.1%、関節リウマチが62.3%、62.9%、冠動脈疾患が58.3%、58.7%に認められた。 補正前および補正後解析では、関節痛または背部痛患者の割合は、降雨日のほうが非降雨日よりも低く(補正前解析:6.23% vs.6.42%、p<0.001、補正後解析:6.35% vs.6.39%、p=0.05)、予想とは逆の結果が示された。しかし、その差は小さいため臨床的な意義はないと考えられた。 外来受診した週に関節痛または背部痛で保険申請をした割合とその週の降雨日数にも、統計学的に有意な関連は認められなかった。たとえば、雨の日が7日間すべてだった週と雨の日が1日もなかった週で、関節痛や背部痛の割合は類似していた(p=0.18)。 地域、年齢層、人種別のサブグループ解析でも、関節痛や背部痛と降雨に関連はみられず、関節リウマチ患者においても有意な関連は認められなかった。 著者は、「降雨と関節痛や背部痛に関連がある可能性はまだ残っており、この一般的な通念の妥当性を立証するには、疾患の重症度や疼痛に関する、より大規模で詳細なデータが有用と考えられる」としている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第50回

第50回:免疫チェックポイント阻害薬はアジュバントに使えるか?キーワード非小細胞肺がんdurvalumabメラノーマニボルマブイピリムマブ動画書き起こしはこちら こんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐です。僕が担当している肺がんとメラノーマの領域で最近話題になったのはスペインのマドリードで行われた欧州臨床腫瘍学会ESMOですね。肺がんでは2つ、メラノーマでも同じように大きな話題がありました。PACIFIC trial。StageIIIの肺がん…縦郭リンパ節が陽性になると自動的にStageIIIになるのですが…は、現在5年生存率が15~25%。良くても25%程度で、根治は望めるけれど頻度が非常に低いという病期なのですが、そこでchemo-radiationが終わったあとに、効果があった患者さん、あるいはSDの患者さんに対し、アストラゼネカの抗PD-L1抗体durvalumabを2週間おきに12ヵ月使った群とプラセボ群を使った結果が発表されました。そこではPFSが16ヵ月以上と6ヵ月程度とほぼ3倍に延びたという結果でした。StageIIIの肺がんというのは、いろいろな抗がん剤を使ったり、chemo-radiationが終わった後にドセタキセルなどをconsolidationとして使ったり、エルロチニブを使ったり、あるいは放射線の照射の量や仕方を変えるなど工夫されたものの、ぱっとした結果が出ていなかったなか、ここ20年で初めてStageIIIの肺がん治療が大きく変わる可能性があるという結果が発表されました。なかには「コントロールアームのPFSが5.6ヵ月と非常に悪い」と、言う人もいますが、これはランダマイズドの、しかもプラセボコントロールの試験なので、やはり陽性なのでしょうね。早いことに、NCCNのガイドラインには既にdurvalumabのことが載っています。FDAにはまだ認可されていないのですが、僕も2人ほどchemo-radiationが終わった患者さんがいて、その患者さんに、こういう治療があるので、保険会社がオーケーしてくれるかどうか申請してみましょうかと、申請を始めたばかりです。ちょっと下世話な話になるのですが、MYSTIC試験…StageIVの肺がんで同じアストラゼネカの抗CTLA-4抗体tremelimumabとdurvalumabを組み合わせてどうなるかというPhaseIII試験…が残念ながらネガテイブな結果だったんですね。アメリカの医者の中に、ブログでその時に株価が一気に下がったと言うことを書いている人がいました。株価が下がってから、ESMOでポジティブな結果の2つの臨床試験が発表されて、株価がどうなったか書いているんです。本当にいろいろなことを、いろいろな観点から発信する人がいるんだな、と思いながら面白く読んでいました。彼によると、「アストラゼネカの株価自体はMYSTICで下がる前のレベルには戻っていないが、回復しています」ということです。臨床試験が株価に反映される。Conflict of Interest、COIとはもう離れられない世界であることは確実ですね。それ以外には、僕が担当しているメラノーマの領域でイピリムマブとニボルマブをStageIIIB、StageIIIC、resected StageIVのアジュバントの患者さんに使った試験の結果が発表されました。それもNew England of Journalに載りましたが、ニボルマブを使ったほうがイピリムマブを使うよりもRelapse Free Survivalが有意に改善しました。StageIIIのchemo-radiation後の肺がん患者さんと同じように、アジュバントで使うというのは、この患者さんのがんが残っているか残ってないかわからない状況で、がん抗原の発現がはっきりしない時にimmune checkpointを使うということで、意味があるのが非常に議論の対象になっていました。面白いことに今回、2つのstudyのどちらもアジュバントで再発生存期間を伸ばしたということが報告されたのは、臨床的にあるいはscienceとしても面白いことだと思います。実際そういう治療後の患者さんで、circulating tumor cellあるいはがん抗原がどのように、どういう場所で発現しているか、というのは非常に興味のあるところです。Antonia SJ, et al.Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer.N Engl J Med.2017;377:1919-1929.durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017J Weber, et al. Adjuvant Nivolumab versus Ipilimumab in Resected Stage III or IV MelanomaN Engl J Med.2017; 377:1824-1835.

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サン・アントニオ2017レポート-1

レポーター紹介2017年SABCSは、12月5〜9日の5日間で開催された。新しい会場になってから2年目であり、以前の会場の一部は既に取り壊されていた。テキサスは初日から雨で寒い日が続いた。中日の夜には雪も降ったが、逆に翌日には晴天となった。天候の変化が著しく、それだけでも体調をくずす方がいそうである。今回は臨床的な話題としてはいろいろあったが、直ちに臨床を変えるような話題はほとんどなかったように思う。しかし愛知県がんセンターの岩田広治先生がPIとなって進行中の臨床試験NEOSの第1報があり、重要な知見を提供してくれた。術前内分泌療法に反応したHR+閉経後乳がんにおける術後化学療法の意義 −NEOS日本からの大規模な臨床試験(NEOS)の結果が岩田広治先生より報告された(第一報)。HR+閉経後乳がんに対して術前にANAを6ヵ月行い、PD(43例)には術後化学療法を、CR(16例)/PR(421例)/SD(400例)には術後化学療法施行群と非施行群を無作為化割付した。今回は両群を合わせた術前治療効果別の5年DFSが示され、CRで100%、PRで95%、SDで92%と予後良好であったのに対して、PDでは化学療法施行にも関わらず89%と低かった。PR/SDでは化学療法施行の有無別のDFSを知りたいところだが、その結果が出るのはまだ先になりそうである。しかし化学療法を施行しなくても、CR/PR/SDではかなり予後のよいことが予想される。さらに別報もあり、NEOSにおいて、針生検標本におけるオンコタイプDX(ODX)のリスクスコア(RS)と術前ANAの効果との関係が明らかとなった(n=294)。RS<18(低リスク)ではCR/PR54%、SD45%、PD1%であったのに対して、RS18~30(中間リスク)では42%、55%、4%であり、RS>31(高リスク)になると22%、61%、17%となりCR/PR率が著明に低下した。逆に高リスクとなるのはCR/PRの2%、SDの22%、PDの46%であり、AIの術前効果がODX検査適応選択や化学療法そのものの適応選択に大きな指標になることが示された。閉経後乳がんにおける術前内分泌療法は術後の化学療法を考えるうえで今後より重要なオプションとなろう。EBCTCGメタアナリシス−dose-dense化学療法の意義最初の話題は、EBCTCGのメタアナリシスで、術後補助化学療法において投与間隔の短縮が再発と乳がん死亡率を減少させる、というものである。Dose intensityの試験としては、2週対3週が12試験、逐次(3週)対同時(3週)が6試験、逐次(2週)対同時(3週)が6試験、が選択されていた。2週対3週では、2週の方がより再発と乳がん死亡率を減らしていた。逐次(3週)対同時(3週)、逐次(2週)対同時(3週)ともに逐次の方が再発と乳がん死亡率を減らしていた。これらはERの有無に関わらなかった。これらのことから、dose denseがよいと結論している。まだ論文化されていないため、どの臨床試験が選択されたのか不明である。この結果をもとに2週のdose denseを標準と考えるのは早計である。SABCS2014のレポートでまとめたが、FEC(600/60/600) 6サイクルを2週毎と3週毎で比較しても生存率にまったく差がない(Venturini M,et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.)ことが示されており、Paclitaxelも今では標準でない3週投与が、2週投与に対して比較されている。そもそも毎週投与が現在の標準であり、よりdose denseでG-CSFも使う必要がないことから、標準はあくまでAC(3週)-PTX(毎週)であろう。2週投与のdose-denseのメリットは投与期間の短縮のみであり、高額なG-CSFの使用が必須であったり、遅発性のニューモシスチス肺炎も含めた有害事象も増えることから、2週投与のdose-denseはあくまでオプションの1つに過ぎない。HER2-lowにおいてtrastuzumabは予後を改善しない−NSABP B-47NSABP B-47は、AC→wPTX 対 TCx6 +/-trastuzumabの比較試験であるが、HER2-lowにおけるtrastuzumabの意義について検討された。結果はtrastuzumabの有無で生存率にまったく差がなかったのであるが、面白かったのは本題でない背景で紹介された部分であった。NSABP B-31試験では、各施設でHER2陽性だが中央判定で陰性とされたサブセットにおいて、trastuzumab使用群の方がDFSが良好であったことである。N9831試験でも同様の傾向であった。HER2判定に関しては各施設の評価も大切にした方がよいということであり、HER2の状況がIHCで3+またはFISH陽性のいずれかなら、積極的にHER2標的剤は使用すべきということを示している。IHCとFISHの両者を測定していると時々いずれか陽性ということがあり、どちらか一方だけの検索では、HER標的剤の恩恵にあずかる方が一定数見逃されてしまうリスクがあろう。CDK4/6阻害剤ribociclibはPFSを改善する−MONALEESA-7MONALEESA-7はHR+HER2-閉経前乳がんにおけるribociclibの有用性を検証した第III相試験である。治療効果は本邦でようやく承認されたpalbociclibとほぼ同等であろうと思われる。TAMまたはAI+LHRHaにribociclibをon/offしたものであり、PFSでは有意にribociclib群で良好であった。TAM、AIとも効果は同等であった。血液毒性は好中球減少、貧血、血小板減少ともにribociclib群で多かった。非血液毒性はQT延長が6.9%(vs.1.2%)と多く、G3の倦怠感と下痢もribociclib群でわずかに多かった以外はほぼ同等であった。QOLは(EORTC QLQ-30)ribociclib群の方が有意に良好であった。3つのAI剤がそうであったように、今後複数のCDK4/6阻害剤の使い分けが問題になりそうである。化学療法中のLHRHaは卵巣機能保護に有効である−メタ解析化学療法における卵巣機能障害の問題は、近年妊孕性の面からとくに注目されている話題の1つである。化学療法中のLHRHaの卵巣保護効果について、今回は5つの臨床試験のプール解析(メタ解析)が報告された。主要評価項目は卵巣機能不全、副評価項目は無月経である。卵巣機能不全はLHRHa使用群と未使用群で14.1%対30.9%であり、明らかにLHRHa使用群で良好であった。2年での無月経率もそれぞれ18.2%対30.0%と同様であった。さらに妊娠率も10.3%対5.5%であったことより、LHRHaによる妊孕性温存の効果は明らかであると考えられる。LHRHa使用の有無での予後もみているが、ER+/-に関わらず、DFS、OSともにまったく差がなかった。したがって、化学療法を受ける予定で妊孕性温存を希望する方に対しては、LHRHaによる卵巣保護を十分に考慮するという立場は変わらない。TAM+OFSとEXE+OFSで予後は同等である−TEXT+SOFT結合試験TEXT+SOFT結合試験のデータがアップデートされた。閉経前HR+乳がんにおいて、TAM+OFSとEXE+OFSを比較したものである。初回はASCO2014で報告されたが、結果はその時と大きく変わっていない。8年のDFSはEXE+OFSで有意に良好であった(86.8% vs.82.8%、p=0.0006)。しかしOSではまったく差がなく、EXEの方が有害事象のために治療を中止する患者が多かった。このことからEXE+OFSはかなりのハイリスクに限られるべきであろう。絶対死亡数が少ないため、さらに経過観察される予定である。TAM+OFSはTAMと比較しわずかに予後を改善する−SOFT試験SOFT試験におけるTAM+OFSとTAMを比較したデータもアップデートされた。初回中間解析の結果はSABCS2014で報告した。やはり8年のDFSはTAM+OFSで有意に良好であった。8年のOSもHR0.67(0.48~0.92)とわずかにTAM+OFSが上回っていた。化学療法の有無でみてみると無し群ではまったく差がないが、有り群ではHR0.59(0.42~0.84)でTAM+OFSが良好であった。絶対差は4.3%と小さく、TAM+OFSの適応はやはり以前と変わらない。すなわち40歳未満あるいは40代前半で化学療法を行うようなハイリスクに対して、OFSの上乗せを提案するというスタンスでよいであろう。40代後半では、化学療法によりほぼ閉経状態となり、TAM単独でも問題ないだろう。鍼はAI関連関節症状に有効であるAI剤による関節痛は厄介な副作用であり、多くの閉経後乳がん患者が生活上の影響を受けている。鍼はAIによる関節痛を軽減する方法としての1つとして期待されており、本試験は真の鍼、偽の鍼(効果をおよぼさない部位)、何もしないグループの3群を比較したRCTである。6週間後の最も強い痛みの改善度は明らかに真の鍼群で高かった。6週間から24週での効果は一定していて、やはり真の鍼>偽の鍼>無しであった。他のQOL評価でも真の鍼で良好であった。有害事象としては真の鍼であざの割合が多かった(47%、いずれもGrade1)。非薬剤性のオプションとしてAI関連関節症状に鍼を積極的に活用する価値がありそうであるが、十分なトレーニングを受けた医療者が鍼を行う必要はあろう。

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小児の双極性障害I型または統合失調症に対するアセナピン治療のレビュー

 1日2回の舌下錠として用いられるアセナピンは、小児・青年期10~17歳における双極性障害I型の躁病および混合エピソードの急性期治療に単独療法として、二重盲検プラセボ対照試験(推奨用量:2.5~10mg、1日2回)の結果に基づき承認されている。小児統合失調症についてもアセナピンの研究が行われているが、まだ承認はされていない。また、米国以外の主要な国々において、アセナピンは、小児の双極性障害I型または統合失調症に対し承認されていない。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のEkaterina Stepanova氏らは、小児精神疾患患者に対するアセナピン治療に関して、神経薬理学、薬物動態、臨床試験、臨床使用の観点より要約した。Paediatric drugs誌オンライン版2017年11月23日号の報告。 主な要約は以下のとおり。・小児患者において、アセナピン舌下錠は口腔粘膜を介して急速に吸収された後、成人患者と同様の薬物動態プロファイルを示し、成人での推奨投与量を小児の投与量に調整する必要性が低いことが示された。・投与後10分間は、食物や水の摂取は避けるべきである。・臨床試験において、小児の双極性障害I型および統合失調症に対するアセナピンは、一般的に安全であり、忍容性が良好であった。・重篤な有害事象は、根底にある精神症状の悪化に関連していた。・最も一般的な臨床試験治療下で発現した有害事象(TEAE:treatment-emergent adverse event)は、両疾患ともに鎮静と傾眠であった。・他の第2世代抗精神病薬と同様に、体重増加やいくつかの代謝パラメータの変化が認められた。・舌下投与に関連する知覚鈍麻、味覚障害、感覚異常などの口腔関連の異常は、一般的に治療中止をもたらさず、一時的であった。・TEAEにおける錐体外路症状は、双極性障害I型と統合失調症の急性期および長期研究において、アセナピン治療患者の5%以上で認められた。■関連記事統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析小児に対する抗精神病薬処方、診断と使用薬剤の現状は

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WHOの安全出産コーチング、その効果は?/NEJM

 世界保健機関(WHO)の安全出産チェックリスト(Safe Childbirth Checklist)について、実施促進のためのコーチングプログラムの導入効果を検討するクラスター無作為化試験が、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のKatherine E. A. Semrau氏らにより、インドの保健施設で行われた。非導入施設と比べて、導入施設は出産介助者の必須実施項目のアドヒアランスは向上したが、出産後7日以内の複合アウトカム(周産期死亡・母体死亡・母体の重度合併症)について有意差は認められなかった。資源が乏しい環境での施設出産率は過去20年間で劇的に増加したが、ケアの質は依然として差があり、死亡率は高いままだという。安全出産チェックリストは、質を改善するためのツールで、出産アウトカムの改善に関連する行為への系統的アドヒアランスを改善するとされていた。NEJM誌2017年12月14日号掲載の報告。60組の施設ペアについて比較試験を実施 研究グループは、インドのウッタル・プラデーシュ州の24地域にある施設を対象に、2施設を1組とした計60組について、マッチドペア比較でクラスター無作為化試験を行った。WHOの安全出産チェックリスト実施を促進するための、8ヵ月間のコーチングプログラム「BetterBirth」の効果を検証した。 出産後7日以内の周産期死亡・母体死亡・母体の重度合併症の複合アウトカムを評価した。出産後8~42日後に評価を行い、クラスタリングとマッチングで補正後、プログラムを導入した施設(介入)群と導入しなかった施設(対照)群で比較した。 また、マッチングさせた15組の施設ペアを対象に、出産の介助者が必ず実行すべき18項目のアドヒアランスを、コーチングの介入開始2ヵ月後と12ヵ月後(コーチングのセッション終了後4ヵ月時点)で比較した。出産介助者の必須実施項目アドヒアランス、介入群では6~7割 被験者として適格だった女性16万1,107例を登録し、15万7,689例(97.9%)を対象に試験を開始。15万7,145組(99.7%)の母親と新生児について、出産から7日間のアウトカムを評価した。 観察された4,888件の出産では、出産介助者の実施項目の平均アドヒアランスは、介入開始2ヵ月の評価時点では対照群41.7%に対し介入群72.8%、介入開始12ヵ月の時点ではそれぞれ43.9%、61.7%と、いずれも介入群で有意に高かった(いずれの比較もp<0.001)。 しかし、複合アウトカム発生率は、対照群15.3%、介入群15.1%と、両群で同等だった(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.83~1.18、p=0.90)。また、母体・周産期の副次有害アウトカムについても、両群で有意差は認められなかった。

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がん患者のVTE治療、エドキサバンはダルテパリンに非劣性/NEJM

 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の治療で、経口エドキサバン(商品名:リクシアナ)はダルテパリン皮下注に対し、VTEの再発または大出血の複合アウトカムについて非劣性であることが、米国・オクラホマ大学健康科学センターのGary E.Raskob氏らが1,050例の患者を対象に行った非盲検無作為化非劣性試験の結果、示された。なおアウトカムを個別にみると、エドキサバン群でVTEの再発は低率だったが、大出血は高率だった。がん関連VTEの標準治療は低分子ヘパリンである。経口抗凝固薬が治療に果たす役割はこれまで明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2017年12月12日号掲載の報告。投与後12ヵ月間のVTE再発または大出血リスクを比較 研究グループは、急性症候性または無症候性VTEを呈するがん患者1,050例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方には低分子ヘパリンを5日以上投与し、その後経口エドキサバン(1日60mg)を投与した(エドキサバン群)。もう一方の群には、ダルテパリン1日200 IU/kgを1ヵ月皮下投与し、その後1日150 IU/kgを投与した(ダルテパリン群)。治療期間は、最短6ヵ月、最長12ヵ月とした。 主要アウトカムは、12ヵ月間のVTE再発または大出血の複合とした。主要アウトカム発生率、エドキサバン群12.8%、ダルテパリン群は13.5% 無作為化を行った1,050例のうち1,046例を包含した修正intention-to-treatで解析を行った。 主要アウトカムのイベント発生率は、エドキサバン群12.8%(522例中67例)、ダルテパリン群は13.5%(524例中71例)と、エドキサバンの非劣性が示された(ハザード比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.70~1.36、非劣性のp=0.006、優越性のp=0.87)。 VTEの再発は、エドキサバン群41例(7.9%)、ダルテパリン群59例(11.3%)で発生した(リスク差:-3.4%、95%CI:-7.0~0.2)。また、大出血は、それぞれ36例(6.9%)、21例(4.0%)で認められた(リスク差:2.9%、同:0.1~5.6)。■「リクシアナ」関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢

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データベース解析の方法論上の不備率は85%にも及んでいた(解説:折笠秀樹氏)-785

 米国のAHRQが作成した公的な大規模データベースであるNational Inpatient Sample (NIS)を用いた観察研究で、論文出版された120研究に関する方法論の調査結果である。AHRQとは米国厚生省(DHHS)の下部機関であり、ヘルスケアリサーチを推進している組織である。 2015年から2016年の間にNISを使って出版された研究論文は1,082研究にも及び、その中からランダムサンプリングで120研究が選定された。 調査内容はAHRQが推奨している3領域(データの解釈、研究デザイン、データ解析)であり、データ解釈は1項目、研究デザインは4項目、データ解析は2項目のチェック項目から成っていた。 全部で7個のチェック項目のうち、何らかの不備が見られた論文は85%にも及んでいた。全く不備のなかった論文の割合は15%ということになるが、インパクトファクター(IF)10以上の雑誌では33%、IF10未満の雑誌では10%と大きな開きがあった。特に、差異が有意であった項目は3つある。第一は、「入院中のイベントデータであることが正しく解釈されたか」である。その不備率は、42.7%(IF10未満)対16.7%(IF10以上)であった。第二は、「合併症を二次診断コードから適切に定義したか」である。不備率は、57.3%(IF10未満)対29.7%(IF10以上)であった。第三は、「クラスター・層構造・抽出重みをデータ解析で考慮したか」である。不備率は、71.9%(IF10未満)対41.7%(IF10以上)であった。 なお、データ解釈上の不備率は37.5%、研究デザイン上の不備率は2.5%~51.7%、データ解析上の不備率は65.8%~77.8%であった。 公的データベースを使った論文が、2年間で1,000件を超えることにまず驚いた。論文生産能率・効率の極めて高いことがわかる。データ利用の留意点が7項目とシンプルなことにも感心した。日本だと細かい条件が示されることが多いからだ。また、IFの高い雑誌では方法論上の査読も厳しいことがうかがわれた。とくにデータ解析の不備率が高いようなので、データベース解析では統計家と共同するほうが良いかもしれない。

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シェイクスピア答えてくれ!「IIb or not IIb, that is a question!」(中川義久 氏)-784

 シェイクスピアの名文句と言えば「To be or not to be, that is a question !」です。この解釈をめぐっては議論があるようですが、一般的には「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ!」と訳されています。循環器領域でシェイクスピアの言葉通りの危機に直面しているのが、心原性ショックを伴う多枝病変AMI患者です。この最重症カテゴリーの患者706名に対して、責任病変のみにPCIを施行する責任病変単独PCI群(段階的に非責任病変の血行再建術も許容)と、責任病変と同時に非責任病変に対してもPCIを施行する多枝PCI群にランダマイズしたCULPLIT-SHOCK試験の結果が、米国のデンバーで開催されたTCT2017で報告され、同時にNEJM誌に掲載されました。 30日以内の死亡・腎不全(腎代替療法)と定義された主要エンドポイントは、責任病変単独PCI群344例中158例(45.9%)に対して多枝PCI群341例中189例(55.4%)に認められました(相対リスク:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.01)。要約すれば、責任病変単独PCI群で死亡・腎不全リスクが有意に17%減少していました。つまりは、「AMI急性期のPCIは責任病変だけにしろ!」という教えが正しいとされたわけです。 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞の責任血管のみへのPCI施行に比べて、引き続いて責任血管以外の狭窄への予防的PCIを施行することによって、心血管イベントを有意に低下させるとPRAMI研究は報告しています。本論文に対して小生は、『「AMI急性期のPCIは責任病変だけにしろ!」と私は教えられました』とのタイトルでコメントさせていただきました。コメントの趣旨はPRAMI研究の結論が循環器内科医に受け継がれてきた常識とは異なる方向性を持っていることを表現したものです。 PRAMI試験に加えてDANAMI3-PRIMULTI試験、そしてCvLPRIT試験と多枝同時介入の有効性を示唆した試験結果が報告されました。米国では、これらの一連の報告を受けて2015年の ACC/AHA/SCAI のSTEMI治療のガイドラインでは、多枝同時介入について推奨の度合いをClass IIIからClass IIbにアップデートしています。Class IIIは「Harm: 有害」であり、Class IIbは「may be considered: 考慮可」です。今回のCULPLIT-SHOCK試験の結論は、この変更を揺り戻す内容といえます。このCULPLIT-SHOCK試験は常識的な治療方針を強調しているものでガイドラインの方向性としては、よりふさわしいのではないかと筆者は考えます。次回のACC/AHA/SCAI のSTEMI治療のガイドラインでは、どのような扱いになるのか興味深いところです。おそらくガイドライン執筆担当者はこのようにつぶやくことでしょう。 「IIb or not IIb, that is a question!」

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眼科医は若手のほうが患者の苦情を受けやすい

 患者の苦情(unsolicited patient complaint)が、医師の年齢によってどのように分布しているかを理解することは、患者が抱く不安の特性を知る手がかりとなる。患者の不満に関するこれまでの研究の多くは、苦情や危険な治療および訴訟と関与する可能性がある、医師の年齢や診療環境、専門性などの特性との関連について言及していなかった。米国・ヴァンダービルト大学のCherie A. Fathy氏らは、それらを評価する後ろ向きコホート研究を行い、若い眼科医のほうが高年齢の眼科医よりも患者の苦情を受けやすい傾向があることを明らかにした。著者は、研究デザインに、結論の解釈に影響を及ぼす限界があるとしたうえで、「検討の結果は患者の安全性、臨床教育および臨床実践において、実際に役立つと思われる」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年11月30日号掲載の報告。 研究グループは、2010年以前に医学部を卒業し、ヴァンダービルト大学医療センターのPatient Advocacy Reporting Systemに加入する組織所属の眼科または神経眼科の担当医1,342例を対象に、2002~15年の間で、初めて受けた患者からの苦情について調べた。苦情の内容は、訓練を受けたスタッフが6つの主要カテゴリーの34種類に分類し分析した。 主要評価項目は、雇用開始から初めて苦情を受けるまでの期間。対象医を5つの年齢層に分け、年齢と初回苦情までの期間との関連を、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象眼科医1,342例の年齢中央値は47歳、71歳以上は9%を占めた。74%が男性、90%が医学博士の学位を有し、73%は大学病院で診療活動を行っていた。・追跡期間平均9.8年において、苦情を受ける率は71歳以上の眼科医が0.71/1,000日と最も低かった(年齢層が下がるごとに、1.41、1.84、2.02、1.88)。・追跡期間2,000日(または5.5年以内)までに、最も若い年齢層群が苦情を受ける推定リスクは0.523であった。・一方、追跡期間4,000日(>10年)でも、71歳以上群が苦情を受ける推定リスクはわずか0.364であった。・最も若い年齢層と、次に若い年齢層の2群は、初回苦情までの期間が統計学的に有意に短かった。・71歳以上群との比較において、苦情のリスクは41~50歳で1.73倍(95%信頼区間[CI]:1.21~2.46、p=0.002)、31~40歳で2.36倍(95%CI:1.64~3.40、p<0.001)であった。

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