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■外来NGワード「涼しい時間帯に運動しなさい!」(患者の生活リズムを配慮しない)「プールで運動しなさい」(周辺の運動施設を確認しない)「家の中で何か運動しなさい!」(あいまいな運動指導)■解説 「暑くて運動できない」と嘆く患者さんがいます。こういった患者さんは、比較的長時間の有酸素運動だけが運動療法だと思い込んでいるかもしれません。ウォーキングなどの有酸素運動以外では、スクワットなどの筋力トレーニングも糖尿病に有効な運動療法の1つです。筋トレをすることで、インスリンのシグナル伝達・ミトコンドリア機能の改善、体脂肪の減少などにより、インスリン感受性がよくなります1,2)。その結果、血糖コントロールと筋力の改善効果がみられます3,4)。ただし、息を止めた筋トレで血圧が上昇しないように、注意を促しておきましょう。ジムなどで専門家の管理下に行う筋トレが最も効果が高いのですが、自宅で自分の体重を用いて筋トレを行うこともできます。まずは、過去の運動歴を聞いてみましょう。運動部などで筋トレの経験がある人ならいいですが、そうでない場合は自己流の筋トレになっている可能性があるので注意が必要です。正しいやり方をロールプレイングすることで、モチベーションを上げてもらいましょう。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、運動はできていますか?患者頑張って歩いていたんですが、最近は暑くてなかなかできなくて…。医師確かに、夏は暑いですからね。無理に運動して熱中症になっても困りますし。患者そうなんです。どうしたものかと…(悩んでいる顔)。医師涼しい時間帯に外を歩いたり、プールを利用している人もいるんですが…(第三者の話として紹介し、患者の反応をみる)。患者そうしたいんですが、近くにプールがないんです(抵抗)。医師なるほど。若い頃はどんなスポーツや運動をされていましたか(過去の運動歴の確認)?患者学生時代は柔道をしていました。黒帯まで取ったんです。医師それはすごいですね。それなら、涼しい家の中でできる、いい運動がありますよ!患者それは何ですか(興味津々)?医師そこで立ち上がって、膝を軽く曲げてみて下さい。膝が爪先より先に出ると、太腿の後ろの筋肉は緩んでしまいますね(正しいスクワットの姿勢を説明)。患者スクワットですね! …本当だ。だけど、このままだと後ろに倒れそうです。医師そこで、バランスを取るために腕を前に出します。そして、ゆっくりと腰を落としてみましょう。血圧を上げないために、声を出しながらやるといいですね。1、2、3、…(10までゆっくりと数え、血圧が上がらない工夫を説明)。患者1、2、3…。医師膝を痛めますから、90度より曲げる必要はありません。110度くらいで2秒キープして、立ち上がります。患者1、2でキープ、3で立ち上がるですね。何回くらいやったらいいんですか?医師1セット10回程度ですね。少し休んで、合計3セットが目標です。これを週に2、3回やってみましょう。患者これなら家でもできそうです(うれしそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「涼しい家の中でできる、いい運動がありますよ!」(筋トレを説明)1)American Diabetes Association. Diabetes Care 2018;41:S38-S50.2)Strasser B, et al. Biomed Res Int. 2013;2013:805217.3)Irvine C, et al. Aust J Physiother. 2009;55:237-246.4)McGinley SK, et al. Acta Diabetol. 2015;52:221-230.