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禁煙は「徐々に」でなく「一気に」の裏付け/JAMA

 喫煙者において、タバコのニコチン含有量を即時に減らすほうが、緩徐に減らすよりも、喫煙毒性曝露バイオマーカー値の低下は一貫して有意に大きいことが明らかにされた。また、緩徐に減量した場合とニコチン含有量を減量しなかった場合の同マーカー値には、有意差がなかった。米国・ミネソタ大学のDorothy K. Hatsukami氏らによる二重盲検無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌2018年9月4日号で発表された。米国内で販売されているすべてのタバコについて、ニコチン含有量を最小限または中毒性のないレベルにまで減量するための最適な時間的アプローチは、これまで検証されていなかったという。3つの毒性曝露バイオマーカー値で、減量効果を評価 研究グループは、毒性曝露バイオマーカーを用いて、ニコチン含有量を極度低値に低下することの即時vs.緩徐の有効性を検討し、また通常量維持の場合と比較した。試験は全米10地点で、2週間のベースライン喫煙期間に続いて、20週間の介入を行った。 2014年7月~2016年9月に、30日以内に禁煙する意思がなく毎日喫煙しているボランティア被験者を集めて、次の3群に割り付けて追跡した。(1)タバコのニコチン含有量を0.4mg/gへと即時に減量(即時低下群)、(2)5ヵ月かけて15.5mg/gから0.4mg/gへと徐々に減量(緩徐低下群)、(3)15.5mg/g量を維持(対照群)。最終フォローアップは2017年3月であった。 主要評価項目は3つで、呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の喫煙毒性曝露バイオマーカー値。介入20週の間の、濃度-時間曲線下面積(AUC)を算出して評価した。緩徐群と維持群には有意差みられず 1,250例(平均年齢45歳、女性549例[44%])が無作為化を受け、958例(77%)が試験を完了した。 即時低下群は緩徐低下群と比べて、CO値は有意に低値であった(平均値:16.17 vs.20.06ppm、補正後平均群間差[MD]:-4.06[95%信頼区間[CI]:-4.89~-3.23]、p<0.0055)。3-HPMA(クレアチニン幾何平均[GM]値:6.05 vs.7.26nmol/mg、補正後GM比[RGM]:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055)、PheT(同:2.06 vs.2.16pmol/mg、0.88[0.83~0.93]、p<0.0055)についても同様であった。 また、即時低下群は対照群との比較においても、3つのマーカー値が有意に低値であった。平均CO値は16.17 vs.19.68ppm(補正後MD:-3.38[95%CI:-4.40~-2.36]、p<0.0055)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は6.05 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.81[95%CI:0.75~0.88]、p<0.0055)、PheT(同)は2.06 vs.2.41pmol/mg(0.86[0.81~0.92]、p<0.0055)であった。 緩徐低下群vs.対照群では、3つのマーカー値とも有意な差はみられなかった。平均CO値は20.06 vs.19.68ppm(補正後MD:0.68[95%CI:-0.31~1.67)、p=0.18)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は7.26 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.98[95%CI:0.91~1.06]、p=0.64)、PheT(同)は2.16 vs.2.41pmol/mg(0.98[0.92~1.04]、p=0.52)であった。

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スタチンによる高齢者のCVイベント1次予防 DM vs.非DM/BMJ

 スタチンは、非2型糖尿病の75歳以上の高齢者の1次予防では、アテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡を抑制しないのに対し、2型糖尿病の75~84歳の高齢者の1次予防では、これらの発生を有意に低減することが、スペイン・ジローナ大学のRafel Ramos氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年9月5日号に掲載された。スタチンは、75歳以上の高齢者の2次予防において、心血管イベントや心血管死の抑制効果が確立されており、最近の数十年で高齢者への処方が増加しているが、とくに85歳以上の高齢者の1次予防における有効性のエビデンスは不十分だという。スタチンの効果について年齢との関連を糖尿病の有無別に後ろ向きに評価 研究グループは、高齢者および超高齢者の1次予防におけるスタチン治療の、アテローム動脈硬化性心血管疾患および死亡の抑制効果を、糖尿病の有無別に評価する後ろ向きコホート研究を行った(スペイン科学イノベーション省の助成による)。 データの収集には、600万例以上(カタルーニャ地方の80%、スペイン全体の10%に相当)の、匿名化された長期的な患者記録の臨床データベース(Spanish Information System for the Development of Research in Primary Care[SIDIAP])を用いた。 対象は、臨床的にアテローム動脈硬化性心血管疾患が確認されていない75歳以上の高齢者であり、2型糖尿病の有無およびスタチンの非使用/新規使用で層別化した。 傾向スコアで補正したCox比例ハザード回帰モデルを用いて、スタチン使用の有無別にアテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡のハザード比(HR)を算出した。また、2型糖尿病の有無別に、薄板回帰スプライン(thin plate regression splines)を用いた連続的尺度で、年齢別(75~84歳、85歳以上)のスタチンの効果を解析した。スタチンは2型糖尿病の75~84歳で死亡リスク16%低減、90代では効果消失 2006年7月~2007年12月の期間に組み入れ基準を満たした4万6,864例(75~84歳:3万8,557例、85歳以上:8,307例)が登録され、このうち7,502例(16.0%)がスタチン治療を開始していた(75~84歳:6,558例、85歳以上:944例)。7,880例(16.8%)が2型糖尿病(75~84歳:6,641例、85歳以上:1,239例)であった。ベースラインの全体の平均年齢は77歳、女性が63%だった。 非糖尿病群では、75~84歳のスタチン使用者におけるアテローム動脈硬化性心血管疾患のHRは0.94(95%信頼区間[CI]:0.86~1.04)、全死因死亡のHRは0.98(0.91~1.05)であり、いずれも有意な関連は認めなかった。また、85歳以上のスタチン使用者のHRは、アテローム動脈硬化性心血管疾患が0.93(0.82~1.06)、全死因死亡は0.97(0.90~1.05)と、いずれも有意な関連はみられなかった。 これに対し、糖尿病群では、75~84歳のスタチン使用者におけるアテローム動脈硬化性心血管疾患のHRは0.76(95%CI:0.65~0.89)、全死因死亡のHRは0.84(0.75~0.94)と、いずれも有意な関連が認められた。また、85歳以上のスタチン使用者のHRは、それぞれ0.82(0.53~1.26)、1.05(0.86~1.28)であり、有意な差はなかった。 同様に、スプラインを用いた連続的尺度における年齢別のスタチンの効果の解析では、非糖尿病群の75歳以上の高齢者では、アテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡に対するスタチンの有益な作用は認めなかった。 このように、スタチンは、糖尿病群では動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡に対し保護的な作用を示したが、この効果は85歳以上では実質的に低下し、90代では消失した。 著者は、「これらの結果は、高齢者および超高齢者へのスタチンの広範な使用を支持しないが、75~84歳の2型糖尿病患者へのスタチン治療を支持するもの」としている。

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小血管で良好な前拡張が得られればDCBはDESと同等に優れる(解説:上田恭敬氏)-919

 直径3mm未満の小血管に対するPCIにおいて、良好な前拡張が得られた症例を対象として、12ヵ月のMACE(cardiac death, non-fatal myocardial infarction, and target-vessel revascularization)を主要評価項目とした、DCBのDESに対する非劣性を示すためのRCTの結果が報告された。DCB群に382症例、DES群に376症例が無作為に割り付けられた。 MACEの頻度は、DCB群で7.5%、DES群で7.3%となり、統計的に非劣性が証明された。すなわち、このような症例においては、DESを留置しなくてもDCBで十分であることが示された。 このエビデンスに従えば、不要なステントの留置を回避することができるので、臨床的に非常に有用な臨床試験であったといえる。ただし、「小血管はDESを留置しなくてもDCBでよい」という間違った結果が独り歩きしないように注意が必要である。 この試験の最大のポイントは、エントリー基準にあるように「前拡張によって解離やslow flow、残存狭窄がなく良好に開大された症例」に対象を限定した結果であることである。いわゆるstent-likeな結果が得られれば、DESを留置しなくても、DCBを行えば結果は同じと解釈できる。 他にもいくつかのLimitationが指摘されている。DESの中にpaclitaxel-eluting Taxus Element stentとeverolimus-eluting Xience stentの2種類が含まれており、MACEの頻度は統計的有意ではないものの12.8% vs.5.7%とTaxus群で高くなっている。また、DCB後に解離などのためにDESが追加された症例があり、MACEの頻度は統計的有意ではないものの15.8% vs.7.0%とDCB+DES群においてDCB単独群に比して高くなっている。そのため、DESとして「Xienceを使えば」という限定も付くように思われる。実際、論文中でも、DCB群とTaxus群の比較ではHRが0.52(0.26ー1.04、p=0.0649)、DCB群とXience群の比較ではHRが1.21(0.63ー2.32、p=0.5751)と報告している。さらに、本試験では、DCBとしてpaclitaxel-coated balloon SeQuent Pleaseが用いられており、他のDCBにおいて同じ結果となるか否かはわからない。 以上より、多少言い過ぎかもしれないが、本試験の結果は、「3mm未満の小血管に対するPCIで、前拡張によってstent-likeに仕上がれば、Xienceを留置する場合とSeQuent PleaseでDCBを行う場合のMACEはほぼ同等である」と解釈できるだろう。ただし、論文中の図5を見ると、DCB後に追加ステントが必要となる頻度が高くなれば、初めからXienceを留置するほうが優れているかもしれないし、DCB後に追加ステントが必要となる頻度を低くできれば、DCBのほうが優れているかもしれないと思われる。

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重症筋無力症〔MG : Myasthenia gravis〕

重症筋無力症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義神経筋接合部の運動終板に存在する蛋白であるニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor:AChR)やMuSK(muscle specific tyrosine kinase)に対する自己抗体が産生されることにより神経筋伝達の安全域が低下することで、罹患骨格筋の筋力低下、易疲労性を生じる自己免疫疾患である。■ 疫学本症は、特定疾患治療研究事業で国が指定する「特定疾患」の1つである。1987年のわが国での全国調査では本症の有病率は、5.1人/10万人と推計されたが、2006年には11.8人/10万人(推定患者数は15,100人)に上昇した1)。男女比は1:1.7、発症年齢は5歳以下と50~55歳にピークがあり、高齢発症の患者が増えていた1)。胸腺腫の合併はMG患者の32.0%、胸腺過形成は38.4%で認められていた。眼筋型MGは35.7%、全身型MGは64.3%であり、MGFA分類ではI・IIが約80%と多数を占めていた1)。また、抗AChR抗体の陽性率は73.9%であった1)。2018年の最新の全国疫学調査では、患者数は23.1人/10万人(推定29,210人)とさらに増加している。■ 病態本症の多くは、アセチルコリン(acetylcholine:ACh)を伝達物質とする神経筋シナプスの後膜側に存在するAChRに対する自己抗体がヘルパーT細胞依存性にB細胞・形質細胞から産生されて発症する自己免疫疾患である。抗AChR抗体は IgG1・3サブクラスが主で補体活性化作用を有していることから、補体介在性の運動終板の破壊がMGの病態に重要と考えられている。しかし、抗AChR抗体価そのものは症状の重症度と必ずしも相関しないと考えられている。MGにおいて胸腺は抗体産生B細胞・ヘルパーT細胞・抗原提示細胞のソース、MHCクラスII蛋白の発現、抗原蛋白(AChR)の発現など、抗AChR抗体の産生に密接に関与しているとされ、治療の標的臓器として重要である。抗AChR抗体陰性の患者はseronegative MGと呼ばれ、そのうち、約10~20%に抗MuSK抗体(IgG4サブクラス)が存在する。MuSKは筋膜上のAChRと隣接して存在し(図1)、抗MuSK抗体はAChRの集簇を阻害することによって筋無力症を惹起すると考えられている。抗MuSK抗体陽性MGは、抗AChR抗体陽性MGと比べ、発症年齢が比較的若い、女性に多い、球症状が急速に進行し呼吸筋クリーゼを来たしやすい、眼症状より四肢の症状が先行することが多い、筋萎縮を認める例が多いなどの特徴を持つ。また、検査では反復刺激試験や単一筋線維筋電図での異常の頻度が低く、顔面筋と比較して四肢筋の電気生理学的異常が低く、胸腺腫は通常合併しない。さらに神経筋接合部生検において筋の運動終板のAChR量は減少しておらず、補体・免疫複合体の沈着を認めないことから、その病態機序は抗AChR抗体陽性MGと異なる可能性が示唆されている2)。また、神経筋接合部の維持に必要なLRP4に対する自己抗体が抗AChR抗体陰性およびMuSK抗体陰性MGの一部で検出されることが報告されているが3)、筋萎縮性側索硬化症など他疾患でも上昇することが判明し、MGの病態に関わっているかどうかについてはまだ不明確である。画像を拡大する■ 症状本症の臨床症状の特徴は、運動の反復に伴う骨格筋の筋力の低下(易疲労性)、症状の日内・日差変動である。初発症状としては眼瞼下垂や眼球運動障害による複視などの眼症状が多い。四肢の筋力低下は近位筋に目立ち、顔面筋・咀嚼筋の障害や嚥下障害、構音障害を来たすこともある。重症例では呼吸筋力低下による呼吸障害を来すことがある。MGでは神経筋接合部の障害に加え、非骨格筋症状もしばしば認められる。精神症状、甲状腺疾患や慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の合併、その他、円形脱毛、尋常性白斑、味覚障害、心筋炎、赤芽球癆などの自己免疫機序によると考えられる疾患を合併することもある。とくに胸腺腫合併例に多い。MGの重症度評価にはQMGスコア(表1)やMG composite scale(表2)やMG-ADLスコア(表3)が用いられる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■ 分類MGの分類にはかつてはOsserman分類が使われていたが、現在はMyasthenia Gravis Foundation of America(MGFA)分類(表4)が用いられることが多い。また近年は、眼筋型MG、早期発症MG(発症年齢3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療目標は日常生活動作に支障のない状態、再発を予防して生命予後・機能予後を改善することであり、MGFA post-intervention statusでCSR (完全寛解)、PR(薬物学的寛解)、MM(最小限の症状)を目指す。MG治療は胸腺摘除術、抗コリンエステラーゼ薬、ステロイド薬、免疫抑制剤、血液浄化療法、免疫グロブリン療法(IVIg)などが、単独または組み合わせて用いられている。近年、補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブが承認され、難治性のMGに対して適応となっている。全身型MGに対しては胸腺摘除、ステロイド・免疫抑制剤を中心とした免疫療法が一般的に施行されている。また少量ステロイド・免疫抑制剤をベースとして血漿交換またはIVIgにステロイドパルスを併用する早期速効性治療の有効性が報告されており、MGの発症早期に行われることがある。眼筋型MGでは抗コリンエステラーゼ薬や低用量のステロイド・免疫抑制剤、ステロイドパルス6)が治療の中心となる。胸腺腫を有する例では重症度に関わらず胸腺摘除術が検討される。胸腺腫のない全身型MG症例でも胸腺摘除術が有効であることが報告されているが7)、侵襲性や効果などを考慮すると必ずしも第1選択となるとは言えず、治療オプションの1つと考えられている。胸腺摘除術後、症状の改善までには数ヵ月から数年を要するため、術後にステロイドや免疫抑制剤などの免疫治療を併用することが多い。症状の改善が不十分なことによるステロイドの長期内服や、ステロイドの副作用にてQOL8)やmental healthが阻害される患者が少なくないため、ステロイド治療は必要最小限にとどめる必要がある。抗MuSK抗体陽性MGに対して、高いエビデンスを有する治療はないが、一般にステロイド、免疫抑制剤や血液浄化療法などが行われる。免疫吸着療法は除去率が低いため行わず、単純血漿交換または二重膜濾過法を行う。胸腺摘除や抗コリンエステラーゼ薬の効果は乏しく、IVIg療法は有効と考えられている。わが国では保険適応となっていないが、海外を中心にリツキシマブの有効性が報告されている。1)ステロイド治療ステロイド治療による改善率は60~100%と高い報告が多い。ステロイド薬の導入は、初期から高用量を用いると回復は早いものの初期増悪を来たしたり、クリーゼを来たす症例があるため、低用量からの導入のほうが安全である。また、QOLの観点からはステロイドはなるべく少量とするべきである。胸腺摘除術前のステロイド導入に関しては明確なエビデンスはなく、施設により方針が異なっている。ステロイド導入後、数ヵ月以内に症状は改善することが多いが、減量を急ぐと再増悪を来すことがあり注意が必要である。寛解を維持したままステロイドから離脱できる症例は少なく、免疫抑制剤などを併用している例が多い。ステロイドパルス療法は、早期速効性治療の一部として行われたり、経口免疫治療のみでは症状のコントロールが困難な全身型MGや眼筋型MGに行われることがあるが、いずれも初期増悪や副作用に注意が必要である。ステロイドの副作用は易感染性、消化管潰瘍、糖尿病、高血圧症、高脂血症、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死、精神症状、血栓形成、白内障、緑内障など多彩で、約40%の症例に出現するとされているため、定期的な副作用のチェックが必須である。2)胸腺摘除術成人の非胸腺腫全身型抗AChR抗体陽性MG例において胸腺摘除の有効性を検討したランダム化比較試験MGTX研究が行われ結果が公表された7)。胸腺摘除施行群では胸腺摘除非施行群と比較して、3年後のQMGが有意に低く(6.2点 vs. 9.0点)、ステロイド投与量も有意に低く(32mg/隔日 vs. 55mg/隔日)、治療関連の合併症は両群で同等という結果が得られ、非胸腺腫MGで胸腺摘除は有効と結論された。全身型MGの治療オプションとして今後も行われると考えられる。約5~10%の症例で胸腺摘除後にクリーゼを来たすが、術前の状態でクリーゼのリスクを予測するスコアが報告されており臨床上有用である9)(図2)。胸腺摘除術前に球麻痺や呼吸機能障害を認める症例では、術後クリーゼのリスクが高いため9)、血液浄化療法、ステロイド投与などを術前に行い、状態を安定させてから胸腺摘除術を行うのが望ましい。画像を拡大する3)免疫抑制剤免疫抑制剤はステロイドと併用あるいは単独で用いられる。免疫抑制剤の中で、現在国内での保険適用が承認されているのはタクロリムスとシクロスポリンである。タクロリムスは、活性化ヘルパーT細胞に抑制的に作用することで抗体産生B細胞を抑制する。T細胞内のFK結合蛋白に結合してcalcineurinを抑制することで、interleukin-2などのサイトカインの産生が抑制される。国内におけるステロイド抵抗性の全身型MGの臨床治験で、改善した症例は37%で、有意な抗AChR抗体価の減少が見られた。副作用としては、腎障害と、膵障害による耐糖能異常、頭痛、消化器症状、貧血、リンパ球減少、心筋障害、感染症、リンパ腫などがある。タクロリムスの代謝に関連するCYP3A5の多型によってタクロリムスの血中濃度が上昇しにくい症例もあり、そのような症例では治療効果が乏しいことが報告されており10)、使用の際には注意が必要である。シクロスポリンもタクロリムス同様カルシニューリン阻害薬であり、活性化ヘルパーT細胞に作用することで抗体産生B細胞を抑制する。ランダム化比較試験にてプラセボ群と比較してMG症状の有意な改善と抗AChR抗体価の減少が見られた。副作用として腎障害、高血圧、感染症、肝障害、頭痛、多毛、歯肉肥厚、てんかん、振戦、脳症、リンパ腫などがある。4)抗コリンエステラーゼ薬抗コリンエステラーゼ薬は、神経終末から放出されるAChの分解を抑制し、シナプス間のアセチルコリン濃度を高めることによって筋収縮力を増強する。ほとんどのMG症例に有効であるが、過剰投与によりコリン作動性クリーゼを起こすことがある。根本的治療ではなく、対症療法であるため、長期投与による副作用を考慮し、必要最小量を使用する。副作用として、腹痛、下痢、嘔吐、流嚥、流涙、発汗、徐脈、AVブロック、失神発作などがある。5)血液浄化療法通常、急性増悪期や早期速効性治療の際に、MG症状のコントロールをするために施行する。本法による抗体除去は一時的であり、根治的な免疫療法と組み合わせる必要がある。血液浄化療法には単純血漿交換、二重膜濾過法、TR350カラムによる免疫吸着療法などがあるが、いずれも有効性が報告されている。ただしMuSK抗体陽性MGでは免疫吸着療法は除去効率が低いため、単純血漿交換や二重膜濾過血漿交換療法が選択される。6)免疫グロブリン大量療法血液浄化療法同様、通常は急性増悪時に対症療法的に使用する。有効性は血液浄化療法とほぼ同等と考えられている。本療法の作用機序としては抗イディオタイプ抗体効果、自己抗体産生抑制、自己抗体との競合作用、局所補体吸収作用、リンパ球増殖や病的サイトカイン産生抑制、T細胞機能の変化と接着因子の抑制、Fc受容体の変調とブロックなど、さまざまな機序が想定されている。7)エクリズマブ補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体であるエクリズマブの有効性が報告され11)、わが国でも2017年より全身型抗AChR抗体陽性難治性MGに保険適用となっている。免疫グロブリン大量静注療法または血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限り使用を検討する。C5に特異的に結合し、C5の開裂を阻害することで、補体の最終産物であるC5b-9の生成が抑制される。それにより補体介在性の運動終板の破壊が抑制される一方、髄膜炎菌などの莢膜形成菌に対する免疫力が低下してしまうため、すべての投与患者はエクリズマブの初回投与の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種し、8週後以降に再投与、5年毎に繰り返し接種する必要がある。4 今後の展望近年、治療法の多様化、発症年齢の高齢化などに伴い、MGを取り巻く状況は大きく変化している。今後、系統的臨床研究データの蓄積により、エビデンスレベルの高い治療方法の確立が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、内科、呼吸器外科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)日本神経免疫学会(医療従事者向けの診療、研究情報)日本神経学会(医療従事者向けの診療、研究情報)難病情報センター 重症筋無力症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Myasthenia Gravis Foundation of America, Inc.(アメリカの本疾患の財団のサイト)1)Murai H, et al. J Neurol Sci. 2011;305:97-102.2)Meriggioli MN, et al. Lancet Neurol. 2009;8:475-490.3)Zhang B, et al. Arch Neurol. 2012;69:445-451.4)Gilhus NE, et al. Lancet Neurol. 2015;14:1023-1036.5)Grob D, et al. Muscle Nerve. 2008;37:141-149. 6)Ozawa Y,Uzawa A,Kanai T, et al. J Neurol Sci. 2019;402:12-15.7)Wolfe GI, et al. N Engl J Med. 2016;375:511-522.8)Masuda M, et al. Muscle Nerve. 2012;46:166-173.9)Kanai T,Uzawa A,Sato Y, et al. Ann Neurol. 2017;82:841-849.10)Kanai T,Uzawa A,Kawaguchi N, et al. Eur J Neurol. 2017;24:270-275.11)Howard JF Jr, et al. Lancet Neurol. 2017;16:976-986.公開履歴初回2013年02月28日更新2021年03月05日

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018)皮膚科医が感じる夏の終わり【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第18回 皮膚科医が感じる夏の終わりしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆ここのところ涼しい日が続いております。皆さまいかがお過ごしでしょうか?今年の夏を思い出して、夏場の皮膚科外来にありがちな光景を漫画にしてみました☆夏の暑い時期、診察室ではクーラーや扇風機が大活躍!もう、これなしにはやっていけないほど、今年はとくに猛暑でしたね…。皮膚科外来では、これらの空調が発する空気の流れが、時に要注意となる場面があります。…それはズバリ、真菌検査!採取した検体は、スライドガラスに固定して検鏡するのですが、ガラスに乗せた鱗屑は、風に吹かれるとフワ~ッと飛び散ってしまいます。デルぽんの診察室には、デスクの真上にミニ扇風機が設置してあるため、いつもコイツの風に注意しながら運んでいます☆そんな忙しい夏も、そろそろおしまい…。今年は暑さのせいか汗疹が多かった…。忙しいのも大変ですが、秋の始まりは、ちょっぴりおセンチになるデルぽんです。それでは、また~!atsuko.takahashi8081

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第3回 心拍数を求めよう【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第3回:心拍数を求めよう皆さんは心拍数を自分で求められますか?『計算するなんてトンデモない』とか、『自動計測の値を転記するのが当たり前』と思っているそこのあなた。今回は、“とっておきの心拍数(rate)の計算法”をDr.ヒロが伝授しましょう。症例提示75歳。女性。高血圧、脂質異常症で通院中。下肢静脈瘤の精査のため他院より紹介され、来院時に心電図検査を行った(図1)。(図1)来院時心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しくないものを2つ選べ。1)洞調律2)心房期外収縮3)心室期外収縮4)Q波5)時計回転解答はこちら 2)、5)解説はこちら “第1回のおさらいですよ!”まずは、第1回目(心電図の読み“型”:“レーサーが ピッタリクルッとスタート バランスよし”)を参照しながら系統的に判読しましょう。1)◯:まずはR-R間隔。全体では不整ですが、肢誘導4拍目の前後を除いて整の様子。次にRate(心拍数)ですが、上に表示された自動計測では“71/分”となっているため一応セーフ(正常:50~100/分)。3つ目のRhythm(調律)では“イチニエフ(またはニアル)の法則”の出番です(第2回『洞調律を知る』参照)。P波の向きを丹念に見れば、洞調律だとわかります。2)×:R-R間隔を不整にしている“犯人”は肢誘導4拍目です。この“食い気味”に出るパターンは期外収縮ですね。QRS波形に着目すると、幅がワイドで他の洞調律の心拍と全然違う形をしており、「心房」ではなく、「心室」が起源とわかります。3)◯:解説2)の通り。いわゆるPVC(心室期外収縮)です。4)◯:その後のチェックで選択肢にしたのは、“クルッと”の部分です(他には異常なし)。“ク”は(異常)Q波のチェック。III誘導に幅1mmの深掘れ波があるので、これに該当します。これが心筋梗塞巣を反映する“異常”なQ波であるかは別問題。とにかく指摘する、これをボクは重視します。実際にはIII誘導のみのQ波は正常亜型であることが大半です。5)×:これは“スパイク・チェック”。回転もR波の「向き」の異常と考えましょう。胸部誘導で、R波の高さとS波の深さが逆転する移行帯を見ますが、今回はV3~V4ですので、時計回転(移行帯がV5よりも先の場合)ではありません。【問題2】心電図(図1)の心拍数について述べよ。解答はこちら 洞調律(約70/分)に心室期外収縮を認める解説はこちら “レーサーチェック、2つ目のR”今回のテーマは「心拍数」。第1回の図2でお伝えした“レーサー(R×3)…”の2番目のRです。機械が計算してくれた上段の値からすると、70/分くらいなので正常範囲ですよね。単発の期外収縮なら、この値をそのまま用いても悪くありません。心拍数を自分で求める場合、期外収縮でない洞調律の部分で考えて(ここを求めるのがミソ)、プラス期外収縮があるよ、という表現をしたらいいと思います。今回は、ボクがふだん教えている3つの「心拍数の求め方」をご紹介しましょう。1)カンニング法これが最も簡単!最近の心電計はだいぶ賢いので、R-R間隔が完全に整、かつ診断時間がない場合は、機械にお伺いをたてるべし。自動計測値を写しても“犯罪”にはなりません。でも、今回のように全体としてR-R不整の時には、このやり方はあまり推奨されません。2)300の法則・はさみうち等分足し引き法皆さんは“300の法則”って知っていますか?オレンジ色の心電図用紙の“5mm四方の太枠マス”を利用します。これを用いた心拍数の計算では、R-R間隔に注目し、整の場合、となり合う2つのQRS波の距離で心拍数が決まります。例として、III誘導のみを抜粋した別症例の心電図(図2)を挙げましょう。(図2)48歳、男性、心房粗動画像を拡大するR-R間隔が整でおおよそ3マスに相当するので、心拍数は300÷3=100/分。この「300÷マス数」で求めるのが300の法則です。でも、いつもR-R間隔が“マスにぴったり”なラッキーな状況ばかり遭遇するはずもなく(実際に今回の症例も違います)、そんな時にオススメするのが、ボクが独自に編み出した“はさみうち等分足し引き法”です。長くてヘンテコリンな名前ですが、要点をまとめます。はさみうち等分足し引き法のポイント(1)“オン・ザ・ライン”のQRS波を探す(2)となりのQRS波までが“何マス・何目盛り”なのか認識して、太線ではさみこむ(3)はさみこんだ太線間を等分(1目盛りいくつか計算)して最寄りの太線から“足し引き”して心拍数とする上記のポイントを踏まえて、問題1の心電図(図1)からV2誘導だけ抜き出してみました(図3)。(図3)はさみうち等分足し引き法画像を拡大する基本的にはどのR-R間隔を見てもいいのですが、ボクはQRS波のなかでマスの太線に乗っている心拍がないかを最初に探します。すると、陰性のS波のピークが太線上に乗っている“オン・ザ・ライン”のQRS波が見つかります(図3↑)。この4拍目(QRS-4)を起点とします。次に、となりのQRS波までの距離を考えます。前後どちらで考えてもOKですが、たとえばQRS-4から左に4つ目のマス太線から1mm手前の線上にS波が来ているので、QRS-3からQRS-4までのR-R間隔で考えましょう。QRS-3のS波の谷が、もし太線Aにあったなら、心拍数は300÷4で75/分となります。同様に、QRS-3が太線Bにオン・ザ・ラインだったら、300÷5で60/分です。これは300の法則そのものです。ただ、現実はS波の谷は太線Aと太線Bの間(かなりA寄り)にあるわけです。ここで…ボクは大胆なので、この太線AとBの間に1mm四方の細枠(“目盛り”と呼ぶ)が5つありますが、ここを“等分”しちゃいます。つまり、心拍数75-60=15/分が5目盛りだから、15÷5で1目盛り3/分だと思い込むんです。あとはカンタン。太線A(75/分)から太線B(60/分)の方へ1目盛り(3/分)戻った地点に実際のQRS波(QRS-3)はありますから、心拍数は75-3で72/分と求められます。どうです? “はさみうち等分足し引き法”ってネーミング、そのままでしょ?正確に言えば近似法なんですが、不思議なことに50~100/分くらいの範囲ではズレが少ないんです。言葉で説明すると何だかぎこちなくなりますが、慣れてきたらスイスイのスイッーなので、練習あるのみ。この方法をマスターしたら、基本的にR-R間隔が整の心電図なら、どんな心電図でも心拍数をビシッと言い当てることができますよ。3)検脈法こんなに躍起になって解説した後で恐縮ですが、実はボクの最近のオススメは3つ目の“検脈法”です。皆さん、患者さんの手首に触れて検脈ってしますよね。目をつぶって15秒間で何回ドキンを感じたかで、4倍して「脈拍数」にしますでしょ。心電図では「心拍数」ですが、標準的なA4サイズの自動フォーマットですと、肢誘導が5秒、次の5秒は胸部誘導、つまり、私たちが普段、目にしているのは全部で10秒間の記録なんです。図1の心電図でカタチは無視してQRS波の個数だけ数えると、肢誘導(左半分)も胸部誘導(右半分)も6個ずつ、合計12個ですよね。だから、あとは10秒を1分間(60秒)に換算すべく6倍して、12個×6倍で72/分。はい、瞬殺。“はさみうち等分足し引き法”を編み出した日、あまりの興奮に夜眠れなかった記憶があります。でも、それから何年かして“検脈法”に気づいてからは、ふだんは“検脈法”で済ませています(笑)今回は“はさみうち等分足し引き法”と“検脈法”の結果が偶然にも完全一致しましたが、“検脈法”の方がおおざっぱなやり方ですので、自動計測値からのズレは大きい印象です。(図2)のリズム・ストリップも全長5秒ですが、QRS波は9個なので検脈法だと心拍数は108/分となりますよね(9×12/分)。でも、10や20のズレにはならないので、普通はそれで十分です。だって、2つ目のR(Rate)でチェックするのは「50~100/分か?」だけですからね。ドンブリ勘定での正常判定なわけですから、正直72でも78でも気にしない、気にしない。Dr.ヒロはこの大胆さだけがウリです(笑)『早速、他の心電図で試したいなぁ』。そう感じた方はボクのやり方にハマってますね。Take-home MessageR-R間隔が整の場合、心拍数は“はさみうち等分足し引き法”で計算するか、“検脈法”でサボる!【古都のこと~実相院門跡その1~】左京区岩倉にある実相院門跡。光沢のある床面に新緑や紅葉が映し出される「床みどり」や「床もみじ」で有名です。撮影が不可のため「床みどり」を目に焼きつけて、側方にある縁側に出ました。どことなく情緒ある池。木々の方へ回り込むとモリアオガエルにも出会えました。青空の下、まぶしいばかりの新緑、そして朱色の敷物が鮮やかなコントラストを演出していました。

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院外心停止の気道確保、声門上気道デバイスは有効か/JAMA

 院外心停止の最適な気道管理法は確立されていないという。英国・University of the West of EnglandのJonathan R. Benger氏らAIRWAYS-2試験の研究グループは、院外心停止患者への声門上気道デバイス(SGA)による管理は、気管挿管(TI)と比較して、30日時の機能的アウトカムを改善しないことを示し、JAMA誌2018年8月28日号で報告した。SGAの挿入手技は、TIよりも簡便で迅速に施行可能であり、習熟に要する訓練も少ないため、継続的に臨床で用いられている。観察研究では、TIのほうが延命効果に優れる可能性が示唆されているが、院外心停止の気道管理の最適なアプローチを同定するために、大規模な無作為化試験の実施が求められていた。mRSスコアをクラスター無作為化試験で評価 本研究は、非外傷性の院外心停止成人患者の初期高度気道管理戦略における、SGAのTIに対する優位性を検証する多施設共同クラスター無作為化試験であり、イングランドの4つの大規模な救急医療サービス(EMS)が参加した(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、非外傷性の院外心停止を発症し、最初あるいは2番目に現場に到着した救急隊員による治療を受け、EMSの医療者により蘇生術が開始または継続された患者であった。救急隊員は、初期の高度気道管理戦略として、SGAまたはTIを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、退院時または院外心停止後30日時のいずれか早い時期の修正Rankinスケール(mRS)のスコアとした。mRSは、0~3点を良好なアウトカム、4~6点(6点は死亡)を不良なアウトカムとした。副次アウトカムには、換気成功、胃内容物の逆流、誤嚥などが含まれた。初期換気成功率は優れる、逆流、誤嚥に差はない 2015年6月~2017年8月の期間に、1,523人の救急隊員(SGA群:759人、TI群:764人)と、9,296例の院外心停止患者(SGA群:4,886例、TI群:4,410例)が登録された。患者は95の施設に搬送された。フォローアップは2018年2月に終了した。 全体の年齢中央値は73歳、女性が36.3%含まれた。mRSスコアのデータは9,289例で得られた。 退院時または30日時の良好なアウトカム(mRSスコア:0~3点)の割合は、SGA群が6.4%(311/4,882例)であり、TI群の6.8%(300/4,407例)と比較して有意な差は認めなかった(補正後リスク差[RD]:-0.6%、95%信頼区間[CI]:-1.6~0.4、p=0.24)。死亡率はそれぞれ91.9%、91.5%だった。 初期換気の成功率は、SGA群が87.4%(4,255/4,868例)と、TI群の79.0%(3,473/4,397例)に比べ有意に良好であった(補正後RD:8.3%、95%CI:6.3~10.2)。ただし、割り付けられた高度気道管理を受けた患者の割合は、SGA群が85.2%(4,161/4,883例)であったのに対し、TI群は77.6%(3,419/4,404例)と少なかった。 逆流の割合は、SGA群が26.1%(1,268/4,865例)、TI群は24.5%(1,072/4,372例)(補正後RD:1.4%、95%CI:-0.6~3.4)、誤嚥の割合はそれぞれ15.1%(729/4,824例)、14.9%(647/4,337例)(0.1%、-1.5~1.8)であり、いずれも両群間に有意差はみられなかった。 著者は、「院外心停止成人患者における個々の高度気道管理技術の正確な役割は、依然として明らかではない」としている。

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風疹にいま一度気を付けろっ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。リマインド! 成人風疹の臨床像前回は風疹の流行状況、そしてワクチン接種の重要性についてお話しいたしました。2回目となる今回は「成人風疹の臨床像」についてご紹介したいと思います。「おいおい、おまえ風疹の臨床像って、そんなに語れるほど診たことあるんかい、このダボォ!」と思われるかもしれませんが、こう見えて私、前回2013年の流行の際に風疹の症例けっこう診たんですよ。その証拠にほら、NEJMにclinical picture1)が載ってるでしょ? あ、すいません、そうです、自慢したかっただけです、はい。しかし、実際に当時かなりの患者さんを診たうえで読者の皆さまにご提言したいことは「成人風疹は教科書的な臨床像とは異なる」ということですッ! これ重要ですのでメモしておいてください!!教科書的な記載とは何かと言いますと、表のようなヤツです。風疹よりも麻疹のほうが高熱が出るとか、カタル症状が弱いとか、皮疹の癒合がないとか、色素沈着を残さないとか、そういったヤツです。画像を拡大するしかしッ! 確かに小児の臨床像はこうした違いがあるのかもしれませんが、成人ではこれらは必ずしも風疹の特徴とはいえませんッ! 高熱も出ますし、カタル症状も強く出ることがありますし、皮疹は癒合して色素沈着を残すこともありますッ!臨床経過についてはおおむね教科書的な記載と同様かと思います(ただし関節痛は成人で強く、関節炎を呈することもある)。図1は典型的な風疹の経過です。発熱、皮疹、上気道症状がみられます。画像を拡大する図2は典型的な風疹患者の皮疹で、いわゆる紅斑を呈します。しかし、図3のように癒合したり、紅丘疹となることもあります。図2 風疹の典型的な皮疹画像を拡大する画像を拡大する図3 成人風疹患者の皮疹。盛り上がりのある紅丘疹であり癒合している画像を拡大する画像を拡大するさらには、図4のように圧迫しても消退しない紫斑を呈することまであります。図4 紫斑を呈した成人風疹患者(風疹脳炎)画像を拡大するというわけで、成人風疹については皮疹の性状だけで麻疹と鑑別することは困難です。風疹では、眼球結膜充血と後頸部リンパ節腫脹がみられることが多いため、これが診断のカギとなります(図5)。図5 風疹患者の眼球結膜充血画像を拡大する画像を拡大する風疹が疑われた後の対応こうした臨床像から風疹が疑われたら、(麻疹の可能性も考慮して)できれば陰圧の個室に隔離したうえで空気感染対策を実施し、管轄の保健所に連絡をしましょう。風疹なのか麻疹なのか鑑別が困難な場合もあるかと思いますが、臨床像のみで厳密にこれらを区別する必要はないと考えます。保健所を介して都道府県の衛生研究所で検査してくれるということになれば、咽頭スワブなどの検体を採取してPCR検査を実施してもらいましょう。抗体検査のために血清も採取するのがよいと思います。保健所の検査の基準を満たさなかったものの、それでも風疹が疑われるという場合には、外注検査で風疹IgM抗体を測定することもできます。風疹と診断されれば、治療は対症療法となります。感染性がなくなるまで自宅療養していただきましょう。小児では学校保健法に「皮疹が消失するまで学校を休むこと」と定められていますが、成人についてもこれに準じて皮疹が消失するまでは会社は休んでもらいましょう。というわけで、2回にわたって現在流行中の風疹についてご紹介いたしました。次回ですが、毎回「次こそバベシアについて書きます」って書いていますが、そうなった試しがありませんので、あまり期待しないでください。※風疹の皮膚所見の掲載に当たっては、患者ご本人から許可を得ております1)Kutsuna S, et al. N Engl J Med. 2013;369:558.2)Banatvala JE, et al. Lancet. 2004;363:1127-1137.

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新たな薬剤、デバイスが続々登場する心不全治療(前編)【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、新たな薬剤やデバイスが数多く開発されている。これら新しい手段が治療の局面をどう変えていくのか、東京大学循環器内科 金子 英弘氏に聞いた。後編はこちらから現在の心不全での標準的な治療を教えてください。心不全と一言で言っても治療はきわめて多様です。心不全に関しては今年(2018年)3月、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」が第82回日本循環器学会学術集会で公表されました。これに沿ってお話ししますと、現在、心不全の進展ステージは、リスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者さんを「ステージA」、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者さんを「ステージB」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者さんを既往も含め「ステージC」、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらず、重度の心不全状態が遷延する治療抵抗性心不全患者さんを「ステージD」と定義しています。各ステージに応じてエビデンスのある治療がありますが、ステージA、Bはあくまで心不全ではなく、リスクがあるという状態ですので、一番重要なことは高血圧や糖尿病(耐糖能異常)、脂質異常症(高コレステロール血症)の適切な管理、適正体重の維持、運動習慣、禁煙などによるリスクコントロールです。これに加えアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、左室収縮機能低下が認められるならばβ遮断薬の服用となります。最も進行したステージDの心不全患者さんに対する究極的な治療は心臓移植となりますが、わが国においては、深刻なドナー不足もあり、移植までの長期(平均約3年)の待機期間が大きな問題になっています。また、重症心不全の患者さんにとって補助人工心臓(Ventricular Assist Device; VAD)は大変有用な治療です。しかしながら、退院も可能となる植込型のVADは、わが国においては心臓移植登録が行われた患者さんのみが適応となります。海外で行われているような植込み型のVADのみで心臓移植は行わないというDestination Therapyは本邦では承認がまだ得られていません。そのような状況ですので、ステージDで心臓移植の適応とならないような患者さんには緩和医療も重要になります。また、再生医療もこれからの段階ですが、実現すれば大きなブレーク・スルーになると思います。その意味では、心不全症状が出現したステージCの段階での積極的治療が重要になってきます。この場合、左室駆出率が低下してきた患者さんではACE阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)をベースにβ遮断薬の併用、肺うっ血、浮腫などの体液貯留などがあるケースでは利尿薬、左室駆出率が35%未満の患者さんではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を加えることになります。一方、非薬物療法としてはQRS幅が広い場合は心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)、左室駆出率の著しい低下、心室頻拍・細動(VT/VF)の既往がある患者さんでは植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)を使用します。そうした心不全の国内における現状を教えてください。現在の日本では高齢化の進展とともに心不全の患者さんが増え続け、年間26万人が入院を余儀なくされています。この背景には、心不全の患者さんは、冠動脈疾患(心筋梗塞)に伴う虚血性心筋症、拡張型心筋症だけでなく、弁膜症、不整脈など非常に多種多様な病因を有しているからだと言えます。また、先天性心疾患を有し成人した、いわゆる「成人先天性心疾患」の方は心不全のハイリスクですが、こうした患者さんもわが国に約40万人いらっしゃると言われています。高齢者や女性、高血圧の既往のある患者さんに多いと報告されているのが、左室収縮機能が保持されながら、拡張機能が低下している心不全、heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF)と呼ばれる病態です。これに対しては有効性が証明された治療法はありません。また、病因や併存疾患が複数ある患者さんも多く、治療困難な場合が少なくありません。近年、注目される新たな治療について教えてください。1つはアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(Angiotensin Receptor/Neprilysin Inhibitor:ARNI)であるLCZ696です。これは心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NP系、ナトリウム利尿ペプチド系)を促進させる一方で、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害作用を抑制する薬剤です。2014年に欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)では、β遮断薬で治療中の心不全患者(NYHA[New York Heart Association]心機能分類II~IV、左室駆出率≦40%)8,442例を対象にLCZ696とACE阻害薬エナラプリルのいずれかを併用し、心血管死亡率と心不全入院発生率を比較する「PARADIGM HF」の結果が公表されました。これによると、LCZ696群では、ACE阻害薬群に比べ、心血管死や心不全による入院のリスクを2割低下させることが明らかになりました。この結果、欧米のガイドラインでは、LCZ696の推奨レベルが「有効・有用であるというエビデンスがあるか、あるいは見解が広く一致している」という最も高いクラスIとなっています。現在日本では臨床試験中で、上市まではあと数年はかかるとみられています。もう1つ注目されているのが心拍数のみを低下させる選択的洞結節抑制薬のivabradineです。心拍数高値は従来から心不全での心血管イベントのリスク因子であると考えられてきました。ivabradineに関しては左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された慢性心不全患者6,505例で、心拍数ごとに5群に分け、プラセボを対照とした無作為化試験「SHIFT」が実施されました。試験では心血管死および心不全入院の複合エンドポイントを用いましたが、ivabradineによる治療28日で心拍数が60bpm未満に低下した患者さんでは、70bpm以上の患者さんに比べ、有意に心血管イベントを抑制できました。ivabradineも欧米のガイドラインでは推奨レベルがクラスIとなっています。これらはいずれも左室機能が低下した慢性心不全患者さんが対象となっています。その意味では現在確立された治療法がないHFpEFではいかがでしょう?近年登場した糖尿病に対する経口血糖降下薬であるSGLT2阻害薬が注目を集めています。SGLT2阻害薬は尿細管での糖の再吸収を抑制して糖を尿中に排泄させることで血糖値を低下させる薬剤です。SGLT2阻害薬に関しては市販後に心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者さんを対象に、心血管イベント発症とそれによる死亡を主要評価項目にしたプラセボ対照の大規模臨床試験の「EMPA-REG OUTCOME」「CANVAS」で相次いで心血管イベント発生、とくに心不全やそれによる死亡を有意に減少させたことが報告されました。これまで糖尿病治療薬では心不全リスク低下が報告された薬剤はほとんどありません。これからはSGLT2阻害薬が糖尿病治療薬としてだけではなく、心不全治療薬にもなりえる可能性があります。同時にHFpEFの患者さんでも有効かもしれないという期待もあり、そうした臨床試験も始まっています。後編はこちらから講師紹介

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日本の地方救急診療における認知症者の臨床的特徴

 岡山大学の田所 功氏らは、救急診療における認知症者の臨床的特徴を明らかにするため、検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2018年8月21日号の報告。 岡山県・倉敷平成病院の救急診療を受診した認知症者をレトロスペクティブに検討を行った。2014~17年の3年間に救急診療を受診した患者1万6,764例のうち、認知症者2,574例(15.4%)に焦点を当てた。 主な結果は以下のとおり。・認知症者の平均年齢は、84.9±0.1歳であり、これは全救急診療受診患者の平均年齢58.1±0.2歳よりも非常に高かった。・認知症者の入院率は54.9%であり、非認知症者の2倍以上(23.3%、p<0.01)高く、75歳以上の非認知症者(44.3%)よりも高かった。・救急診療受診および入院の最も主要な原因は、感染症(42.4%)、転倒(20.9%)であった。・認知症者の入院期間は、脳卒中、転倒、感染症、てんかん、湿疹、意識喪失、その他の原因または脱水によって延長された。・延長日数は脳卒中(64.0±5.3日)および転倒(51.9±2.1日)が、感染症、てんかん、湿疹、意識喪失、その他の原因(各々のp<0.001)または脱水(p≦0.005)よりも長かった。 著者らは「認知症者は、救急診療を受診することが多く、非認知症者よりも、高年齢、高入院率であり、とくに脳卒中および転倒により入院期間が長くなる」としている。■関連記事年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大精神疾患患者、救急受診の現状は急性期病院での認知症看護、その課題は:愛媛大

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その痛み、がんだから? がん患者の痛みの正体をつきとめる

 がん治療の進歩により“助かる”だけではなく、生活や就労に結びつく“動ける”ことの大切さが認識されるようになってきた。そして、がん患者の多くは中・高齢者であるが、同年代では、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症、そして骨粗鬆症のような運動器疾患に悩まされることもある。2018年9月6日、 日本整形外科学会主催によるプレスセミナー(がんとロコモティブシンドローム~がん時代に求められる運動器ケアとは~)が開催され、金沢大学整形外科教授 土屋 弘行氏が、がん治療における整形外科医の果たすべき役割について語った。骨転移の現状と治療方法 骨転移は多くのがんで発生する。なかでも臨床的に問題となる骨転移の年間発生数は、肺>乳腺>前立腺>腎>大腸>肝臓>甲状腺>胃の順で多く、患者数は10~15万人とも言われている1)。また、骨転移は身体の中心部の骨(背骨、骨盤、大腿骨近位・遠位)で起こりやすい。このような患者はがん治療の主治医から、「骨転移部分が全身に広がっているため、ベッド上で動かないように」「麻痺します」「動くと折れます」などといった内容の指導を受ける場合が多く、土屋氏は「整形外科医へのコンサルがないままの症例が多い」と整形外科医の介入状況を指摘。さらに、同氏は「現在、Performance Status(PS)が3、4に該当する患者には積極的ながん治療を行わない。つまり、がんの治療は動けるレベルの患者だけに留まっている。“がん”という言葉は通常の医療行為に大きな先入観を与え、正しい診断や適切な治療の妨げになる場合がある」と、危惧した。 骨転移による骨の変化には溶骨型、硬化型、混合型の3種類があり、多くの患者はこれらが原因で骨折や脊髄圧迫をきたし、疼痛や麻痺によって動けなくなってしまう。骨転移の主な治療法には、鎮痛薬(オピオイド製剤)、放射線治療などがあり、近年、その価値が再認識されているのが手術治療である。 手術治療はQOLの改善を目的とし、疼痛の減少・消失などのほか、生命予後の改善にも繋がるため、積極的緩和医療に位置づけられるようになった。手術が有効ながんに代表される腎がんは、骨の転移をきちんと治すことで生命予後が改善することが証明されており、同氏は「骨転移の病巣部を人工関節に置換することが積極的に行われている」と述べた。骨転移にキャンサーボードの活用を がん診療連携拠点病院の要件を達成する上で、キャンサーボードの実施は必須となる。全国の整形外科研修施設(1,423施設)を対象とした「整形外科研修施設におけるがん診療実態調査」によると、がん診療連携拠点病院の約60%の施設において整形外科医の参加がみられ、全体では約50%の施設で参加していた。骨転移に対する手術については、がん診療連携拠点病院の90%が自施設で対応可能という回答結果が得られた。このほかに、整形外科医に骨転移診療に関わってほしいという他診療科や施設からの要望は、がん診療連携拠点病院では全体で60%もみられた。この結果を踏まえ、同氏は「骨転移に特化したキャンサーボードを行う病院も増えてきている」と述べた。しかし、「残念なことに、現時点で整形外科医がキャンサーボードに呼ばれるのは、疼痛コントロールが悪化した時がほとんど」と付け加えた。整形外科が骨転移患者へ果たすべき役割 土屋氏は、このようながん患者の現状を踏まえ、以下の役割を整形外科医に提言した。 ・運動器の専門家として装具治療や手術を行い、痛みの軽減や機能回復を行う ・骨質の維持や改善、抗がん剤による末梢神経障害の改善や緩和に寄与 ・がん患者の日常生活の維持・改善、がん治療の治療継続に役割を果たす ・がん患者の痛みを見分け、骨折や麻痺を予防・治療し、移動能力を改善する役割  を担う ・運動器の専門家として“がん”に関わる運動器の問題解決に役割を果たすがんとロコモティブシンドローム 整形外科医の診療は、時代と共に外傷治療から変形性関節症などの高齢化に対する診療、そしてがん治療に関わるQOLの向上へと変遷している。がんとロコモティブシンドロームを『がんロコモ』と名付け、がんによる運動器の問題、がんの治療による運動器の問題、がんと併存する運動器疾患の進行に対して学会が立ち上がった今、同氏は「がん患者全員に理解してもらうためには、がん治療を行う時点での啓発を求める。医師同士の連携だけではなく、薬剤師らによる呼びかけも必要である」と、整形外科医の今後のあり方とがんロコモに取り組む重要性を呼びかけた。 なお、整形外科学会は平成30年より10月8日を『運動器の健康・骨と関節の日』と名称を改めている。■参考1)厚生労働省がん研究助成金「がんの骨転移に対する予後予測方法の確立と集学的治療法の開発班」編.骨転移治療ハンドブック.金原出版;2004.p.3‐4ロコモチャレンジ!推進協議会骨転移診療ガイドライン■関連記事ロコモってなんですか?(患者向けスライド)第29回「ロコモティブシンドローム」回答者:NTT東日本関東病院 整形外科 大江 隆史氏

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院外心停止、ラリンジアルチューブvs.気管内挿管/JAMA

 院外心停止(OHCA)の成人患者において、気管内挿管(ETI)と比較しラリンジアルチューブ(LT)挿入のほうが、72時間生存率が有意に高いことが示された。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のHenry E. Wang氏らが、多施設共同プラグマティック・クラスター無作為化クロスオーバー試験「PART」の結果を報告した。救急医療の現場では、OHCA患者に対し一般的にETIあるいはLTなどの声門上気道器具の挿入が行われるが、OHCA患者の高度気道確保について最適な方法は明らかになっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「LTはOHCA患者の最初の気道確保戦略として考慮されうるだろう。ただし、試験デザイン、実行状況、ETI遂行の特性などの点で限定的な結果であり、さらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2018年8月28日号掲載の報告。LTとETIの有効性を救急医療でのOHCA患者約3,000例で比較 研究グループは、OHCA患者への最初の気道確保戦略として、LTとETIの有効性を比較する目的で、Resuscitation Outcomes Consortiumに参加している救急医療サービス(EMS)27機関を13の集団に無作為化し、各集団内でLT→ETIまたはETI→LTに割り付けた(3~5ヵ月間隔でクロスオーバー)。2015年12月1日~2017年11月4日の期間に、OHCAで高度気道確保を要すると予測された成人患者3,004例が登録され、1,505例がLTを、1,499例がETIを受けた。最終追跡調査は2017年11月10日であった。 主要評価項目は72時間生存率、副次評価項目は自己心肺再開率、生存退院率、神経学的良好退院率(修正Rankin Scaleスコアが≦3)、有害事象などで、intention-to-treat解析を行った。 登録患者3,004例(年齢中央値64歳[四分位範囲:53~76]、男性1,829例[60.9%])のうち、3,000例が主要解析に組み込まれた。LT群の初回挿管成功率90.3%、72時間生存率18.3%で、いずれもETI群より良好 救急医療サービスにおける初回挿管成功率はLT群90.3%、ETI群51.6%であった。また、72時間生存率はLT群18.3%、ETI群15.4%であった(補正後群間差:2.9%、95%信頼区間[CI]:0.2~5.6、p=0.04)。 副次評価項目は、自己心拍再開率がLT群27.9%、ETI群24.3%(補正群間差:3.6%、95%CI:0.3~6.8、p=0.03)、生存退院率がそれぞれ10.8%、8.1%(2.7%、0.6~4.8、p=0.01)、神経学的良好退院率が7.1%、5.0%(2.1%、0.3~3.8、p=0.02)であった。 有害事象については、中咽頭部/下咽頭部外傷(0.2% vs.0.3%)、気道浮腫(1.1% vs.1.0%)、肺炎/肺臓炎(26.1% vs.22.3%)にLT群とETI群で有意差は認められなかった。

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ストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性

 スペインの青少年527例を対象に、ストレスやうつ病の認知に基づき、朝食の摂取および質と、健康関連QOL(HRQOL)との関連について、スペイン・アリカンテ大学のRosario Ferrer-Cascales氏らが調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2018年8月19日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・HRQOLでは、気分、感情、両親との関係、家庭生活について、朝食摂取の有無により差が認められた。・朝食摂取者において、HRQOLが低かった。・ストレスも同様に差が認められ、朝食摂取者において、ストレスのレベルが高かった。・朝食摂取者の朝食の質を分析したところ、良質な朝食摂取は、低質または超低質の朝食摂取と比較し、より良いHRQOLが示唆され、ストレスとうつ病のレベルも低かった。・非朝食摂取者では、朝食が低質または超低質の朝食摂取者と比較し、より良いHRQOLおよび、ストレスとうつ病が低いレベルを示した。 著者らは「本知見は、朝食摂取の有無よりも、良質な朝食を摂取することの重要性を示唆している。このことは、臨床医や栄養士にとってとくに重要であり、青少年におけるHRQOL、ストレス、うつ病に対して、朝食の質が有意に影響を及ぼすことを考慮する必要がある」としている。■関連記事魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当かうつ病患者に対する地中海スタイルの食事介入に関するランダム化比較試験食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか

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北海道地震で先遣JMAT初運用

 2018年9月12日、日本医師会は、先日の平成30年北海道胆振東部地震災害対策について記者会見を行った。中川 俊男氏(同会副会長)と石川 広巳氏(同会常任理事)を中心に、災害当日からの活動内容と今後の対策について語られた。初の「先遣JMAT(日本医師会災害医療チーム)」運用から活動開始・9月6日  3時07分 北海道胆振東部地震発生  3時19分 都道府県医師会に対し、災害時情報共有システムを通して情報提供を要請  6時15分 北海道医師会 災害対策本部を設置 11時54分 日本医師会 災害対策本部(本部長:横倉 義武氏/本会会長)を設置・9月7日 15時00分 長瀬 清氏(北海道医師会長)をリーダーとする先遣JMATが苫小牧医師会を訪問・9月8日 20時30分 北海道医師会、DMAT医療救護調整本部よりJMAT2隊の派遣要請を受け、手稲渓仁会病院・勤医協中央病院のチーム派遣を決定・9月9日 10時28分 JMATが随時被災地に到着し、DMATから引き継ぎを受けて活動開始 9月11日現在、JMATはむかわ町に5グループ派遣されており、待機が1グループ。先遣JMATの活動は終了している。派遣されたメンバーの内訳は、医師8名、看護職員6名、薬剤師3名、他医療関係者4名、事務職員5名の計26名。いつ発生するかわからない地震に備え、停電への対策を 石川氏は、「今回の地震で物流が大打撃を受け、ライフラインの重要さを改めて感じた」と語り、一時北海道の全域が停電したことに触れ、「現状の医療は電力に頼らざるをえないが、停電時の選択肢を多く備えておくことが重要だ。自家発電がないような診療所などでは、自前で訓練を行っているところもあるので、見習って取り組んでほしい」と強調した。※JMATの目的と運用について JMATは、被災者の生命及び健康を守り、被災地の公衆衛生を回復し、地域医療の再生を支援することを目的とする災害医療チームである。災害発生時、被災地の都道府県医師会の要請に基づく日本医師会からの依頼により、全国の都道府県医師会が、郡市区医師会や医療機関などを単位として編成する。日本医師会の直接的な災害対応能力とする。 活動内容は、主に災害急性期以降における避難所・救護所等での医療や健康管理、被災地の病院・診療所への支援(災害前からの医療の継続)である。さらに、医療の提供という直接的な活動にとどまらず、避難所の公衆衛生、被災者の栄養状態や派遣先地域の医療ニーズの把握と対処から、被災地の医療機関への円滑な引き継ぎまで、多様かつ広範囲におよぶ。■参考公益社団法人日本医師会 防災業務計画公益社団法人日本医師会 防災業務計画 JMAT要綱■関連番組(CareNeTV)大地震発生!そのとき僕らがすべきこと‐フツウの医師のための災害医療入門‐第2回 災害時の医療体制を知る‐専門チームの役割とは ※期間限定で無料公開

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重症の二次性MRに経皮的僧帽弁修復術の効果は?/NEJM

 重症の二次性僧帽弁閉鎖不全症(MR)患者で、薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を受けた患者と薬物療法のみを受けた患者を比較した結果、1年時点の死亡率または予定外の入院率について有意な差はなかった。フランス・Hopital Cardiovasculaire Louis PradelのJean-Francois Obadia氏らが、MitraClip(Abbott Vascular)デバイスを用いた無作為化試験「MITRA-FR(Percutaneous Repair with the MitraClip Device for Severe Functional/Secondary Mitral Regurgitation)」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2018年8月27日号掲載の報告。左室駆出率が低下した慢性心不全患者では、重症の二次性MRが予後不良に関わるが、これらの患者集団において、経皮的僧帽弁修復術が臨床転帰を改善するかは明らかになっていなかった。MitraClipは2008年にEuropean Certificate of Conformity(CEマーク)を取得、本邦では2018年4月に保険適用となっている。12ヵ月時点の全死因死亡・心不全予定外入院の発生を評価 MITRA-FR試験は、フランスで行われた第III相の多施設共同無作為化非盲検試験。重症の二次性MR(有効逆流弁口面積>20mm2、または逆流量/拍>30mLと定義)で、左室駆出率15~40%、症候性心不全を有する患者を、薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を受ける群(介入群)または薬物療法のみを受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けて追跡した。 主要有効性評価項目は、12ヵ月時点の全死因死亡・心不全による予定外入院の複合であった。有意差はなく介入群54.6%、対照群51.3% 被験者は2013年12月~2017年3月に、フランス国内37施設で集められ、307例が無作為化を受け、intention-to-treat解析には各群152例が包含された。年齢は介入群70.1±10.1歳、対照群70.6±9.9歳、75歳超患者がそれぞれ33.6%、38.8%、男性患者が78.9%、70.4%。NYHA心機能分類IIが36.8%、28.9%、IIIが53.9%、63.2%、また有効逆流弁口面積は両群とも31mm2、逆流量は両群とも45mL、左室駆出率は33.3%、32.9%であった。 12ヵ月時点で、主要複合評価項目の発生が認められたのは、介入群54.6%(83/152例)、対照群51.3%(78/152例)であった(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI]:0.73~1.84、p=0.53)。項目別に見ると、全死因死亡の発生率は、24.3%(37/152例)vs.22.4%(34/152例)であり(HR:1.11、95%CI:0.69~1.77)、心不全による予定外入院の発生率は、48.7%(74/152例)vs.47.4%(72/152例)であった(1.13、0.81~1.56)。

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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うつ病、治療抵抗性うつ病、自殺行動に対するブプレノルフィンの有効性に関するシステマティックレビュー

 うつ病治療において、いくつかの薬理学的な選択肢が実施可能であるが、抗うつ薬治療を実施した患者の3分の1では、十分な治療反応が得られず、完全寛解には達していない。そのため、抗うつ薬による薬物治療で治療反応が得られなかった、または治療反応が不十分だった患者に対処するための、新たな戦略が必要とされている。イタリア・ジェノバ大学のGianluca Serafini氏らの研究結果によると、オピオイド系が気分やインセンティブの調整に有意に関与しており、新規治療薬としての適切なターゲットとなりうることが明らかとなった。International Journal of Molecular Sciences誌2018年8月15日号の報告。 本研究では、うつ病、治療抵抗性うつ病、非自殺的な自傷行為、自殺行動に対するブプレノルフィンの使用に関する文献についてシステマティックレビューを行った。ブプレノルフィンとうつ病または治療抵抗性うつ病、自殺、難治性うつ病のキーワードを使用し、PubMedおよびScopusのデータベースより検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・低用量のブプレノルフィンは、抑うつ症状、重度な自殺念慮、非自殺自傷を軽減するために有効かつ忍容性が高く、安全な選択肢であることが、いくつかのエビデンスにより示された。これは、治療抵抗性うつ病患者においても認められた。・しかし、ブプレノルフィンの長期的な効果や、ブプレノルフィンと特定の薬剤(たとえば、samidorphan、ナロキソン、naltrexone)との併用、ブプレノルフィンの単独療法または標準的な抗うつ薬治療への補助療法による相対的な有効性の評価、ならびに最適な投与間隔についての均一なガイダンスを得るためには、より多くの研究が必要である。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較SSRI治療抵抗性うつ病への効果的な増強療法治療抵抗性うつ病に対する心理的サポートとしてのシロシビンの6ヵ月追跡調査

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心アミロイドーシス治療、タファミジスが有望/NEJM

 トランスサイレチン型心アミロイドーシスは、生命を脅かす希少疾患だが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らATTR-ACT試験の研究グループは、トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療において、タファミジスが全死因死亡と心血管関連の入院を低減し、6分間歩行テストによる機能やQOLの低下を抑制することを示した。本症は、ミスフォールディングを起こしたトランスサイレチン蛋白から成るアミロイド線維が、心筋に沈着することで引き起こされる。タファミジスは、トランスサイレチンを特異的に安定化させることで、アミロイド形成を抑制する薬剤で、日本ではトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の治療薬として承認されている。NEJM誌2018年9月13日号掲載の報告。対象は年齢18~90歳のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者 本研究は、タファミジスの有用性の評価を目的とし、13ヵ国48施設が参加した国際的な多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。2013年12月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(Pfizerの助成による)。 対象は、年齢18~90歳、生検検体の分析でアミロイド沈着が確定されたトランスサイレチン型心アミロイドーシス(トランスサイレチン遺伝子TTR変異陽性[ATTRm]および野生型トランスサイレチン蛋白[ATTRwt])の患者であった。 被験者は、タファミジス80mg、同20mg、プラセボを1日1回投与する群に、2対1対2の割合で無作為に割り付けられ、30ヵ月の治療を受けた。 主要エンドポイントとして、Finkelstein-Schoenfeld法を用いて、全死因死亡の評価を行い、引き続き心血管関連入院の頻度を評価した。副次エンドポイントは、ベースラインから30ヵ月時までの6分間歩行テストの変化およびKansas City Cardiomyopathy Questionnaire-Overall Summary(KCCQ-OS、点数が高いほど健康状態が良好)のスコアの変化とした。トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者の30ヵ月死亡が30%低下、心血管関連入院は32%低下 トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者441例が登録され、タファミジス群(80mg、20mg)に264例、プラセボ群には177例が割り付けられた。全体の年齢中央値は75歳で、約9割が男性であり、106例(24%)がATTRmであった。 タファミジス群の173例、プラセボ群の85例のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者が試験を完遂した。所定の治療アドヒアランス率(計画用量の80%以上を達成した患者の割合)は高く、タファミジス群が97.2%、プラセボ群は97.0%だった。 Finkelstein-Schoenfeld法による30ヵ月時の全死因死亡および心血管関連入院は、タファミジス群がプラセボ群に比べ良好であった(p<0.001)。Cox回帰分析による全死因死亡率は、タファミジス群が29.5%(78/264例)と、プラセボ群の42.9%(76/177例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96)。また、心血管関連入院率はそれぞれ0.48件/年、0.70件/年であり、タファミジス群で有意に低かった(相対リスク比:0.68、95%CI:0.56~0.81)。 6分間歩行テストの歩行距離は、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者ともベースラインから30ヵ月時まで経時的に短縮したが、短縮距離はタファミジス群がプラセボ群よりも75.68m(標準誤差:±9.24、p<0.001)少なく、6ヵ月時には両群間に明確な差が認められた。 KCCQ-OSスコアも、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者とも経時的に低下したが、30ヵ月時の低下分のスコアはタファミジス群がプラセボ群よりも13.65点(標準誤差:±2.13、p<0.001)少なく、6ヵ月時には両群間に明確な差がみられた。 安全性プロファイルは、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者でほぼ同様であり、タファミジス群の2つの用量の安全性にも意味のある差は認めなかった。治療中に発現した有害事象は軽度~中等度であり、有害事象の結果としての恒久的治療中止の頻度はタファミジス群のほうが低かった。 著者は、「タファミジスは、NYHA心機能分類クラスIIIを除くすべてのサブグループで心血管関連入院率を低下させたが、クラスIIIの患者の入院率の高さには、病態の重症度がより高い時期における生存期間の延長が寄与したと推測され、この致死的で進行性の疾患では、早期の診断と治療が重要であると強く示唆される」としている。

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デュピルマブ治療後に結膜炎を発症、その特徴は?

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するデュピルマブの臨床試験において、プラセボ群と比較しデュピルマブ群で結膜炎の発現率が高いことが報告されている。米国・ノースウェスタン大学のAlison D. Treister氏らは、デュピルマブによるAD治療後に結膜炎を発症した患者について調査した。その結果、デュピルマブ投与後の結膜炎は、治療の中止を余儀なくされるほど重症の可能性があった。また、重症結膜炎はベースライン時のADが重症の患者に多く、それらの患者ではデュピルマブの良好な効果が得られており、アトピー性の表現型は増えていた。著者は、「結膜炎の発症に関与するリスク因子を明らかにし、効果的な治療を行うためにも、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年8月29日号掲載の報告。 研究グループは、2017年3月14日~2018年3月29日の間に、2次医療センターでADに対しデュピルマブの治療を受けた142例中、結膜炎の発症が報告された12例を対象に症例集積研究を行った。患者はデュピルマブを初回にローディングドーズとして600mg、その後は2週間に1回300mgを皮下投与された。 主要評価項目は、デュピルマブ投与開始時および結膜炎発症時のADの重症度で、医師による全般評価(IGA)スコア(0:消失、1:ほぼ消失、2:軽症、3:中等症、4:重症)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・12例中7例(58%)が男性で、結膜炎発症時の平均年齢(±SD)は30±8.1歳だった。・結膜炎と診断された時に、全例でADは改善しており、IGAスコアは平均スコア(±SD)1.9±0.8ポイント減少、体表面積に占めるAD病変の割合は47.8±11.2%減少していた。・12例中9例(75%)は、ベースライン時のIGAスコア4の重症ADであった。・治療を中止した患者は、初回デュピルマブ投与時に重症ADで、さらにADに加えて1つ以上のアトピー性疾患を有していた。

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「エンバーゴ・ポリシーで言えません」と言ってみたい!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】 第3回

第3回 「エンバーゴ・ポリシーで言えません」と言ってみたい!エンバーゴ(embargo)を知っていますか? 本来は海運業界の用語で、自国の港にある外国の船舶の出港を禁止すること、船舶抑留を意味します。この言葉は、現在では海運業界よりも報道業界で頻用されています。報道業界では、ある特定の日時までニュースを報道しないように報道機関に出される要請に使われています。たとえば、自国民がテロリストに拉致され、身代金を要求されているという情報が政府に入ったとします。記者クラブなどの場で報道官は報道各社に事実を伝えますが、「この件については、被害者の生命を守るために、何時までは、エンバーゴをかけさせていただきたいと思っておりますので、協力をお願いします」となるわけです。国際学会で最も華やかな場は、なんといってもLate-breaking Sessionです。学会発表しようと思えば、抄録登録の締め切りが半年くらい前に設定され、めでたく採択されれば発表となります。しかし、この時間軸は現代においてスピード感が不足しています。締め切り後に研究の進展があり、最新の成果をもとに議論を深めたいという場合があるのです。締め切り後にデータが揃う研究の応募登録を受け付け、その演題を集中的に議論する特別枠がLate-breaking Sessionです。無作為化大規模臨床試験などの、意義の高い研究の発表のための場です。賢明な皆さんはご存じと思いますが、「締め切りに間に合わなかったのでLate-breakingで行くぜ!」と応募すると恥ずかしい思いをします。ご注意ください。Late-breaking Sessionでの発表に加え、さらにカッコ良いのが、発表同日の論文掲載です。この掲載医学誌がNEJM(New England Journal of Medicine)誌などであれば最高です。想像するだけで「ウットリ」します。Late-breaking Sessionでは、当日の発表が公表の最初の場面でなければなりません。発表者や共同研究者が結果を知っていることは当然ですが、事前に外部の者に喋ってはならないのです。国際学会では、Late-breaking Sessionの前日にプレス向け説明会が開催されます。報道各社は、その情報をもとに学術記事を準備しますが、報道が許されるのは発表後です。この情報統制がエンバーゴ・ポリシーです。学会発表・論文掲載のタイミングと報道掲載とのタイミングのずれを解消するためとされますが、学会の場を盛り上げる演出ともいえます。「エンバーゴ・ポリシーで言えません」と答える必要に迫られる立派な研究者・医師に皆さまが成長されることを願っております。では、おやすみなさい。

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