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長期認知症リスクを予測するためのLIBRAスコア

 現在のところ認知症の根治的治療は解明されておらず、認知症研究の焦点は予防戦略にシフトしつつある。オランダ・マーストリヒト大学のKay Deckers氏らは、修正可能なリスク(冠動脈疾患、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、うつ病、肥満、喫煙、運動不足、腎疾患)および保護因子(低~中程度のアルコール摂取、認知活動、健康的な食事)の12種をスコア化したLIfestyle for BRAin Health(LIBRA)スコアを用いて、アポリポ蛋白E(APOE)の対立遺伝子ε4を基にした遺伝リスクが高いまたは低い人における、中年期および後期の認知症および軽度認知障害(MCI)の予測精度について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。 フィンランドのCardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia(CAIDE)集団ベース研究の参加者を対象に、中年期(1,024例)および後期(604例)2回のLIBRAスコア測定を30年後まで実施した。確立された基準に従い、認知症およびMCIの診断を行った。性別および教育を調整したモデルにおけるLIBRAスコアと認知症およびMCIリスクの関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・中年期の高LIBRAスコアは、30年後までの認知症(ハザード比[HR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.13~1.43)およびMCI(未調整HR:1.12、95%CI:1.03~1.22)の高リスクと関連が認められた。・後期の高LIBRAスコアは、MCI(HR:1.11、95%CI:1.00~1.25)の高リスクと関連が認められたが、認知症(HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)では認められなかった。・後期の高LIBRAスコアは、APOEε4ノンキャリアにおいて、認知症の高リスクと関連が認められた。 著者らは「認知症予防において、修正可能なリスクおよび保護因子の重要性が確認された」としている。

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VMP療法+ダラツムマブ、多発性骨髄腫のOS延長/Lancet

 幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫の患者では、標準治療であるボルテゾミブ+メルファラン+prednisone(VMP)療法にダラツムマブを追加(D-VMP療法)すると、標準治療単独に比べ全生存(OS)期間が有意に延長することが、スペイン・サラマンカ大学病院のMaria-Victoria Mateos氏らが行った「ALCYONE試験」の中間解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月9日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体製剤であり、直接的な腫瘍縮小作用とともに免疫調節作用を有するという。本試験の主解析では、D-VMP療法により無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが、すでに報告されている。上乗せ効果を評価する実薬対照無作為化試験 本研究は、25ヵ国162施設が参加した多施設共同非盲検実薬対照無作為化第III相試験であり、2015年2月9日~2016年7月14日の期間に患者登録が行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。 対象は、新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または重大な合併症のため、大量化学療法+自家幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、D-VMPまたはVMPを行う群に無作為に割り付けられた。全例に、ボルテゾミブ(1.3mg/m2[体表面積]を、1サイクル目は第1、4、8、11、22、25、29、32日に、2サイクル目以降は第1、8、22、29日に皮下投与)+メルファラン(9mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)+prednisone(60mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)による1サイクル6週の治療が、最大9サイクル施行された。 これに加え、D-VMP群は、ダラツムマブ(16mg/kg[体重])を1サイクル目は週1回、2~9サイクル目は3週に1回投与し、その後は維持療法として4週に1回、増悪または許容できない毒性が発現するまで継続投与した。3年以上の追跡で死亡リスク40%低下、良好なPFSが持続 706例が登録され、D-VMP群に350例、VMP群には356例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲40~93)で、211例(30%)は75歳以上であった。271例(38%)は国際病期分類(ISS)のStageIIIであり、98例(14%)は細胞遺伝学的プロファイルが高リスクであった。 追跡期間中央値40.1ヵ月(IQR:37.4~43.1)の時点で、D-VMP群83例(24%)、VMP群126例(35%)が死亡した。死亡のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.46~0.80、p=0.0003)であり、D-VMP群で死亡リスクが40%低下した。Kaplan-Meier法による36ヵ月時のOS率は、D-VMP群が78.0%(95%CI:73.2~82.0)、VMP群は67.9%(62.6~72.6)であり、両群ともOS期間中央値には未到達だった。 主要評価項目であるPFSのHRは0.42(95%CI:0.34~0.51、p<0.0001)であり、D-VMP群で病勢進行または死亡のリスクが58%低かった。36ヵ月PFS率は、D-VMP群が50.7%(45.1~55.9)、VMP群は18.5%(14.4~23.1)であり、PFS期間中央値はそれぞれ36.4ヵ月(32.1~45.9)および19.3ヵ月(18.0~20.4)だった。 全奏効率(D-VMP群90.9%、VMP群73.9%、p<0.0001)および最良部分奏効以上(73%、50%、p<0.0001)、完全奏効以上(46%、25%、p<0.0001)、微小残存病変陰性(28%、7%、p<0.0001)の割合は、いずれもD-VMP群で有意に良好であった。また、微小残存病変陰性が12ヵ月以上持続した患者は、PFSおよびOSが優れた。さらに、これら最良総合効果のD-VMP群における改善は、年齢(<75歳、≧75歳)および細胞遺伝学的状態(標準リスク、高リスク)にかかわらず認められた。 前回の解析以降の追跡期間中に、D-VMP群で安全性に関する新たな懸念は特定されなかった。1~9サイクルの治療期間中に最も頻度の高かったGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少(D-VMP群40%、VMP群39%)、血小板減少(34%、38%)、貧血(15%、20%)であった。また、D-VMP群のダラツムマブ維持療法期に最も頻度の高かった全Gradeの有害事象は上気道感染症(19%)であり、次いで気管支炎(15%)、ウイルス性上気道感染症(12%)、咳嗽(12%)、下痢(10%)の順であった。 著者は、「現在、他の第III相試験でもダラツムマブのOSに関して長期の追跡調査が進められているが、今回の有効性と安全性の知見は、標準治療への本薬の追加を強く支持するものである」としている。

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本態性血小板血症〔ET : essential thrombocythemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)は、多能性造血幹細胞の腫瘍性増殖により、骨髄巨核球の過形成を来し、血小板増加をもたらす疾患である。WHO分類では、慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されている。■ 疫学正確な発症頻度は不明であるが、ETの発症率は10万人あたり1~2.5人/年程度と推定されている。平均年齢は50~60歳。年齢の第1のピークは60歳にあり、性差はないが、第2のピークは30歳で、女性に多い1)。■ 病因ET症例の骨髄細胞において、トロンボポエチンのシグナル伝達を担うJAK2キナーゼの遺伝子変異(JAK2V617F)が約50%の症例で認められ、JAK2キナーゼが恒常的に活性化していることが、病因の1つと考えられている2)。また、約1%の症例でトロンボポエチン受容体をコードする遺伝子c-MPL遺伝子に変異がみられ(MPLW515L/K)、受容体の下流シグナルの恒常的な活性化が認められることも、病因の1つと考えられている3)。そのほか20%程度の症例でCALR遺伝子exon 9に挿入または欠失を認めるとの報告もある4)。■ 症状約半数の症例では無症状である。主な症状1)は以下のとおりである。(1)脾腫:約10%の症例で中等度の脾腫を認める(2)血管運動性症状:約20%の症例に微小循環不全によるものと考えられる、頭痛、失神、めまい、耳鳴、一過性視覚異常が認められる(3)血栓症:約17%の症例で認められる。血栓症は、静脈血栓より動脈血栓が多く、冠動脈血栓や四肢末端虚血の肢端紅痛症(erythromelalgia)がある(4)出血症状:約4%の症例で認められ、消化管や気道粘膜の出血が多い■ 分類ETは骨髄増殖性腫瘍に分類される。2次性骨髄線維症へ病型移行することがある。■ 予後ET の予後を規定するのは、血栓症や出血の合併である。また、一部の症例で骨髄線維症への移行や急性骨髄性白血病(AML)への移行が認められる。通常、ETの5年生存率は74~93%、10年生存率は61~84%と報告されている。骨髄線維症への移行は5年で2.7%、10年で8.3%、15年で15.3%と報告されている。AMLや骨髄異形成症候群(MDS)への移行は、発症後1.7~16年で認められると報告されており、頻度は0.6~5%と報告されている。ヒドロキシカルバミド(HU)〔商品名:ハイドレア〕単独投与例では、AMLやMDSへの移行率は低い。AML/MDSへの移行症例は化学療法抵抗性であることが多く、生存期間中央値は2~7ヵ月で、きわめて予後不良である。ETの主な死因は血栓症であり、とくに心血管系合併症である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)持続する45万/μL以上の血小板増加を認めた際に本疾患を疑う。本疾患は除外診断が重要であり、反応性血小板増加症、および他の骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、骨髄線維症、慢性骨髄性白血病など)を除外することにより診断する。ETの診断基準はさまざまなものがあるが、現在WHO(2016)の診断基準が多く使用されている(表1)。鑑別診断を含めた診断のアプローチを図1に示す4)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ETの予後に大きく影響するのは、血栓症や出血の合併である。そのため、血栓症や出血をいかに予防するかが重要となってくる。そのため、治療は血栓症の既往、年齢などにより血栓症のリスク分類がなされ、血栓症のリスクとJAK2遺伝子変異の有無に応じた治療法が選択される(図2)5)。画像を拡大する■ 血栓症のリスク分類低リスク群: 年齢5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本血栓止血学会(医療従事者向けのまとまった情報)日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン(2018年度版)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Dan K, et al. Int J Hematol. 2006;83:443-449.2)Campbell PJ, et al. N Engl J Med. 2006;355:2452-2466.3)Beer PA, et al. Blood. 2008;112:141-149.4)Rumi E, et al. Blood. 2016;128:2403-2414.5)日本血液学会. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年度版. 金原出版株式会社;2018.6)Harrison CN, et al. N Engl J Med.2005;353:33-45.7)Gisslinger H, et al. Blood.2013;121:1720-1728.公開履歴初回2013年05月09日更新2019年12月24日

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早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。 本研究では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・142例のうち90例(63%)で変異したctDNAが検出され、最も多い変異はTP53であった。・追跡期間中央値17.2ヵ月において、ctDNA検出がDDFSと有意に関連し、ctDNA陽性例ではDDFS中央値が32.5ヵ月であったのに対し、陰性例では未到達であった。・24ヵ月後のDDFS率は、ctDNA陰性例81%に対し、陽性例では56%であった。多変量解析においても、残存腫瘍量、リンパ節転移の数、腫瘍の大きさ、ステージ、悪性度、年齢、人種を含む共変量を調整後、ctDNA検出とDDFSの間に独立した関連が認められ、ctDNA陽性例は陰性例に比べて遠隔再発リスクが3倍高かった。・ctDNA検出はOSの低下にも関連しており、ctDNA陽性例は陰性例に比べ死亡リスクが4.1倍高かった。 SABCS2019のプレスリリースで、本研究のシニアオーサーであるBryan P. Schneider氏(Indiana University)は「この結果は、術前化学療法後にctDNAが検出された早期TNBC患者は再発リスクが高いことを証明している」と述べている。

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保険償還NGSパネル検査をどう臨床応用するか/日本肺癌学会

 2019年6月にNGS(次世代シーケンサー)パネル検査が保険収載された。12月に行われた第60回日本肺癌学会学術集会では、収載から半年が経過した現状において、臨床現場で感じる問題点を近畿大学の武田 真幸氏が発表した。問題点1 NGSパネル検査の定義が定まっていない 保険収載されたNGSパネル検査は「NCCオンコパネル」「Foundation One CDx」の2種類で、多数の遺伝子変異を同時に調べて未承認薬につなげる「プロファイル検査」として承認された。一方で、「オンコマインDX」は非小細胞肺がん(NSCLC)の4つの遺伝子変異を調べ、承認薬につなげる「コンパニオン検査」として承認されており、プロファイル検査と比較した場合に、治療開始直後から使える、費用が安価、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)への登録が不要、がん診療連携拠点病院以外でも使えるなど、実施条件が大きく異なる。武田氏は「海外では『オンコマインDX』を遺伝子パネル検査として使っている現状がある。肺がんではコンパニオン検査としてオンコマインを使えるため治療戦略が立てやすいが、肺がん以外での固形がん患者では、遺伝子パネル検査での運用となるため、同じようにはいかない」と話した。問題点2 検査を行うタイミングが標準治療後に限定される 武田氏はNGSパネル検査利用の問題点として、「利用が標準治療後に限定されているが、患者さんの状態によってどこまでを標準治療とするかは大きく異なる。1次治療のみに留まる患者さんも相当数いる中で、パネル検査を使うタイミングの判断が難しい」とした。問題点3 再検査ができない NGSパネル検査が保険適用されるのは1回のみ、分析が失敗に終わった場合でも保険適用で再検査が受けられない点は問題だ、と述べた。問題点4 費用が回収できない場合がある NGSパネル検査は保険収載が2分割で設定されており、最初の患者説明・検体提出時には一部費用しか請求できず、エキスパートパネル・C-CAT 登録を経て、検査結果が戻ってきた時点で初めて残りを請求できる。この間に病状が変わることも多く、死亡したために残りの請求ができなかったケースがすでに出ているという。問題点5 検査結果が出るまで時間がかかる 検体提出から結果が出るまでに時間がかかる点も問題点として挙げた。「Foundation One CDx」、「NCCオンコパネル」とも1ヵ月前後かかる。しかしながら、これは費用回収の問題等が解消されれば受け入れられる範囲の問題だとした。問題点6 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の登録が煩雑 「現場における最大の問題は、国が義務付けているC-CATへの登録だ」と述べ、登録における必要な情報の多さと煩雑さが現場の医師を疲弊させていると強調し、入力自動化などの仕組みの導入を求めた。問題点7 腫瘍の不均一性から検査の失敗が多い 腫瘍には、原発巣と転移巣で腫瘍の遺伝子変異の特徴が異なってくる可能性(空間的不均一性)があり、また抗がん剤等の介入による経時的な経過でも腫瘍の特徴に変化(時間的不均一性)が生じる可能性があるが、「現状のNGSパネル検査は分析の失敗も多い中、1回しか受けられないのは問題」とした。しかし、「来年以降リキッドバイオプシーが承認されれば、空間的不均一性についてはある程度は解決する問題ではないか」との見解を述べた。問題点8 実際に効果的な治療につなげていく出口戦略の欠如 最後に、「遺伝子変異が判明しても、その変異に対応する治療薬が限られ、コストをかけて検査しても、結果がその後の治療につながる確率が低い」ことを挙げた。そして、「検査ばかりが注目されているが、治療につながることが重要。ここが一番の問題点だと認識している」とまとめた。

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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。4ヵ国で行われた無作為化同等性試験 本研究は、4ヵ国(米国、カナダ、アイルランド、イスラエル)の154施設が参加した無作為化第III相同等性試験(NSABP B-39/RTOG 0413)であり、2005年3月21日~2013年4月16日の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の女性で、早期(Stage 0/I/II、遠隔転移はないが最大3個の腋窩リンパ節が転移陽性)の乳がん(腫瘍径≦3cm、すべての組織型、多病巣性乳がん)が認められ、腫瘍摘出術後の切除断端が陰性(がん細胞が検出されない)の患者であった。 被験者は、APBIまたは全乳房照射を受ける群に無作為に割り付けられた。APBIは、8日以内に5治療日で、小線源治療(34Gy)または外照射療法(38.5Gy)を行った。全乳房照射は、外照射療法により総線量50Gyを25日に分けて5週間で照射した(腫瘍床への追加照射の有無にかかわらず)。患者、担当医、統計解析者には治療割り付け情報がマスクされた。 主要アウトカムは、初回の浸潤性または非浸潤性IBTRとし、脱落例を除くintention-to-treat集団で解析が行われた。同等性の検定は、相対リスクのマージンの50%増加とし、ハザード比(HR)の90%信頼区間(CI)が0.667~1.5の範囲内の場合に同等と判定した。10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満 4,216例(APBI群2,107例、全乳房照射群2,109例)が登録され、4,125例(2,089例、2,036例)が主要アウトカムの解析に含まれた。追跡期間中央値は10.2年(IQR:7.5~11.5)。 ベースラインの全体の年齢中央値は54歳(IQR:47~64)、2,587例(61%)が閉経後、3,788例(90%)が白人で、3,185例(76%)が浸潤性乳がん、1,031例(24%)が非浸潤性乳管がん(DCIS)であり、浸潤性のうち2,518例(79%)とDCISの908例(88%)がホルモン受容体(ER、PgR)陽性であった。 IBTRの発生率は、APBI群が4%(90/2,089例)、全乳房照射群は3%(71/2,036例)であった。HRは1.22(90%CI:0.94~1.58)であり、APBI群の同等性の判定基準は満たされなかった。10年累積IBTR発生率は、APBI群が4.6%(95%CI:3.7~5.7)、全乳房照射群は3.9%(3.1~5.0)であり、両群間の絶対差はわずか0.7%であった。 10年無再発生存率(APBI群91.8%、全乳房照射群93.4%、HR:1.33、95%CI:1.04~1.69、p=0.02)は全乳房照射群で良好であったが、10年無遠隔病変生存率(96.7%、97.1%、1.31、0.91~1.91、p=0.15)、10年生存率(90.6%、91.3%、1.10、0.90~1.35、p=0.35)、10年無病生存率(78.1%、79.7%、1.12、0.98~1.29、p=0.10)は両群間に差はなかった。乳がんの再発による死亡率は、APBI群が2%(49例)、全乳房照射群も2%(44例)だった。 サブグループ解析(探索的事後解析)では、腫瘍径≦10mmの浸潤性乳がんで、APBI群の10年IBTR発生率が良好な傾向が認められた(APBI群2.0%、全乳房照射群3.9%、HR:0.58、95%CI:0.27~1.22、交互作用のp=0.01)。 APBI群で、最も高い毒性のグレードが1の患者は40%、2は44%、3は10%、全乳房照射群ではそれぞれ31%、59%、7%であり、Grade4/5は10例(<1%)および6例(<1%)で発現した。1つ以上の2次原発がん(APBI群9%[192例]、全乳房照射群10%[200例]、HR:0.93、95%CI:0.76~1.13、p=0.46)の頻度は両群間で類似しており、このうち対側乳がんと同側の乳房肉腫は、APBI群が33%(63例)、全乳房照射群は36%(72例)で認められた(0.83、0.59~1.17、p=0.29)。治療関連死はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、乳房温存手術における腫瘍摘出術後の全乳房照射を支持するものだが、10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満であり、一部の女性ではAPBIが許容可能な代替法となる可能性がある」としている。

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カテーテル治療の波はついに三尖弁にも来た(解説:上妻謙氏)-1159

 経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、手術ハイリスクの重症僧帽弁閉鎖不全に対する治療としてわが国でも普及してきている。弁膜症を伴う心不全のカテーテル治療は超高齢社会におけるニーズが高い。その中で三尖弁に対するカテーテル治療についてはデバイスの開発が遅れていた。このTRILUMINATE試験は、MitraClipの技術を三尖弁用に改良したTriClipという製品を使用し、十分な薬物治療を受けてもNYHA II度以上の心不全症状のある中等度以上の三尖弁閉鎖不全症(TR)患者をエンロールしたシングルアームスタディである。 エコーにて推定肺動脈圧60mmHgを超える患者は除外された。パフォーマンスゴールは過去の従来療法患者のアウトカムから設定された。安全性のプライマリーエンドポイントは6ヵ月の心血管イベントで心血管死、心筋梗塞、脳卒中、新規発症腎不全、心内膜炎、術後合併症に対する心臓手術の複合エンドポイントである。また有効性のエンドポイントは30日後三尖弁逆流の1グレード以上の減少である。117例がスクリーニングされ、97例がinclusion criteriaに合致し、そのうち85例の患者がこの治療を受けた。初期の手技成功は100%で、退院時にTRが1グレード以上減少したのはコアラボの評価で91%であった。2クリップ要する患者が約半数で、1クリップで済んだのは20%しかなく、複数のクリップを必要とすることが多かった。有効性のプライマリーエンドポイントである30日でのTR 1グレード以上の減少は86%で得られた。パフォーマンスゴールと設定された35%をはるかに超える95%信頼区間のlower limit 77.3%を達成した。安全性の複合エンドポイントの頻度は6ヵ月で4%と低かった。これもパフォーマンスゴールである39%を有意に下回った。 三尖弁は単独で外科手術されることが少なく、カテーテル治療での逆流の改善が得られることは切望されていた。少数例のパイロットスタディではあるが、この技術が期待できるものであることを示したので、有効性検証のランダマイズトライアルが施行されることが期待される。

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イキセキズマブ、X線陰性体軸性脊椎関節炎に有効/Lancet

 X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎患者の治療において、イキセキズマブはプラセボに比べ、疾患の徴候と症状(ASAS40)を有意に改善することが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが行った「COAST-X試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月5日号に掲載された。イキセキズマブはインターロイキン17A(IL-17A)に高い親和性を有するモノクローナル抗体であり、すでにX線所見を伴う体軸性脊椎関節炎(別名:強直性脊椎炎)における有効性が報告されている。イキセキズマブ2種の投与法とプラセボをASAS40の達成で比較 本研究は、欧州、日本を含むアジア、北米、南米の15ヵ国107施設が参加した52週の二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2016年8月2日~2018年1月29日の期間に患者登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、X線画像で明確な仙腸関節炎所見がみられない活動性の体軸性脊椎関節炎(X線所見を伴わない体軸性脊椎関節炎)で、客観的な炎症の徴候(MRI所見またはC反応性蛋白>5mg/L)があり、2剤以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の効果が不十分またはNSAID不耐の患者であった。 被験者は、イキセキズマブ(80mg)を4週ごと(Q4W)に投与する群、同2週ごと(Q2W)に投与する群、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。16週以降は担当医の裁量で、基礎治療薬の変更や非盲検下でのQ2Wへの切り換え、あるいはこれら双方が許容された。 主要エンドポイントは、16週および52週時の国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)の基準によるASAS40の達成とした。ASAS40は、主要ドメインの4項目(患者による疾患活動性の総合評価、脊椎痛、機能、炎症)のうち3項目以上で、ベースラインから40%以上かつ2単位(0~10点)以上の改善が認められ、さらに残りの1項目でまったく悪化が認められない場合と定義された。治療を切り換えた患者は、ロジスティック回帰分析ではnon-responderとされた。ASAS40達成率は52週時でイキセキズマブQ4W群30%、Q2W群31%、プラセボ群13% 303例が登録され、プラセボ群に105例(平均年齢39.9[SD 12.4]歳、女性58%)、イキセキズマブQ4W群に96例(40.9[14.5]歳、48%)、イキセキズマブQ2W群には102例(40.0[12.0]歳、52%)が割り付けられた。96%が16週の治療を、87%が52週の治療を完遂した。 2つの主要エンドポイントはいずれも満たされた。すなわち、16週時のASAS40達成率は、イキセキズマブQ4W群が35%(34/96例)、イキセキズマブQ2W群が40%(41/102例)、プラセボ群は19%(20/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0094、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0016)。また、52週時のASAS40達成率は、それぞれ30%(29/96例)、31%(32/102例)、13%(14/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0045、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0037)。 強直性脊椎炎疾患活動性スコア(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score:ASDAS)<2.1(低疾患活動性)の達成率も、イキセキズマブによる2つの治療群がプラセボ群に比べ有意に優れた(16週時:Q4W群28%[対プラセボ群p=0.0080]、Q2W群32%[同p=0.0009]、プラセボ群12%、52週時:30%[同p=0.0003]、27%[同p=0.0009]、9%)。 同様に、BASDAI(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)、SF-36 PCS(Medical Outcomes Study 36-item Short-Form Health Survey Physical Component Score)、SPARCC(Spondyloarthritis Research Consortium of Canada)の仙腸関節スコア(16週のみ)も、イキセキズマブ群で有意に良好であった。 イキセキズマブ群で最も頻度の高い治療関連有害事象は鼻咽頭炎(Q4W群19%、Q2W群16%)と注射部位反応(11%、17%)であった。とくに注目すべき治療関連有害事象については、Q4W群で重篤な感染症が1例に認められた。重篤な有害事象は4例(Q4W群2例、Q2W群1例、プラセボ群1例)に、有害事象による治療中止も4例(1例、1例、2例)にみられた。悪性腫瘍および死亡の報告はなかった。また、新たな安全性シグナルは特定されなかった。 著者は、「イキセキズマブは、X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎で、NSAIDの効果が不十分または不耐の患者において、新たな治療選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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LOXO-292のRET肺がんに対する有効性(LIBRETTO-001)/日本肺癌学会

 RET融合遺伝子陽性がんは全身のさまざまな臓器で見られる。非小細胞肺がん(NSCLC)においても2%を占めるといわれる。RET融合遺伝子陽性がんでは、半数に脳転移があるとの報告もある。従来のマルチキナーゼ阻害薬によるRET融合遺伝子陽性がん治療では、有効性に限度がみられた。selpercatinib(LOXO-292)は、選択性の高いRET阻害薬であり、幅広いがん種への有効性を示すとともに、CNSへの移行性も良好な薬剤である。 LOXO-292の国際第I/II相試験LIBRETTO-001の結果は本年の世界肺癌学会(WCLC2019)で発表された。第60回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏がそのアンコール発表を行った。 今回の発表は、2017年5月の登録開始から2016年6月までの肺がん初回データをまとめたもの。主要評価項目は客観的奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性。登録されたRET融合遺伝子陽性がんの総数は531例、そのうちNSCLCは253例であった。今回の発表では、前治療としてプラチナベース化学療法を実施した患者184例中の105例が解析対象であった。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は61歳、女性59%、前治療レジメン中央値は3(55%がPD-1/L1阻害薬実施、48%がマルチキナーゼ阻害薬実施)、脳転移は35%に認められた。・ORRは68%(95%信頼区間[CI]:58~76)であった。・CNS奏効率は91%(95%CI:59~100)であった。・DoR中央値は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0)、PFS中央値は18.4ヵ月(95CI:12.9~24.9)であった。・今回の解析対象ではないが、未治療患者のORRは85%(95%CI:69~95)であった。・頻度の高い治療関連有害事象(TRAE)は口喝(27%)、AST上昇(22%)、ALT上昇(21%)。TRAEによる治療中止は1.7%であった。

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マルファン症候群における大動脈拡張の進行をイルベサルタンが抑制/Lancet

 長時間作用型選択的ARBのイルベサルタンは、マルファン症候群の小児および若年成人患者において大動脈拡張率を減少し、大動脈合併症の発症を減少させる可能性があることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のMichael Mullen氏らにより英国22施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Aortic Irbesartan Marfan Study:AIMS試験」の結果、示された。ARBであるロサルタンとβ遮断薬との併用療法について検証した無作為化試験では、マルファン症候群の大動脈拡張に対する明らかな有効性は確認されなかったが、イルベサルタンはロサルタンと比較して降圧作用が強く生物学的利用率が良好で半減期も長いことから、マルファン症候群患者の大動脈解離や破裂に関連する大動脈拡張を抑制することが期待されていた。Lancet誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。マルファン症候群と確認された6~40歳の患者をイルベサルタンとプラセボに割り付け 研究グループは、臨床的にマルファン症候群と確認された6~40歳の患者に、非盲検下でイルベサルタン75mgを1日1回投与した後、イルベサルタン群(150mg 1日1回、忍容性があり体重>50kgの場合は1日1回最大300mgまで増量可)、または適合プラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースライン時および1年ごとに心エコーで大動脈径を測定(盲検下中央判定)した。 主要評価項目は、大動脈起始部の拡張率で、線形混合効果モデルを用いてintention-to-treat解析を行った。マルファン症候群患者の大動脈拡張率はイルベサルタン群で有意に減少 2012年3月14日~2015年5月1日にマルファン症候群と確認された患者192例が無作為化され(イルベサルタン群104例、プラセボ群88例)、5年間追跡を受けた。募集時点の年齢中央値は18歳(IQR:12~28)、女性99例(52%)、平均血圧110/65mmHg(SD 16/12)、108例(56%)がβ遮断薬を使用していた。ベースラインの大動脈起始部の直径(平均±SD)は、イルベサルタン群34.4±5.8mm、プラセボ群34.4±5.5mmであった。 マルファン症候群と確認された患者の大動脈起始部の拡張率(年変化率、平均値)は、イルベサルタン群0.53mm/年(95%信頼区間[CI]:0.39~0.67)、プラセボ群0.74mm/年(0.60~0.89)であり、群間差は-0.22mm/年(95%CI:-0.41~-0.02、p=0.030)であった。大動脈Zスコアの変化率も同様にイルベサルタン群で減少した(平均群間差:-0.10/年、95%CI:-0.19~-0.01、p=0.035)。イルベサルタンの忍容性は良好で、重篤な有害事象の発現率の差は確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、全体的なマルファン症候群の症例数が少なかったこと、イルベサルタン群の症例数が多かったこと、無作為化が不完全であったことなどを挙げている。

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肺血栓塞栓症の診断―人工知能本格利用の前に―(解説:後藤信哉氏)-1158

 NEJMの論文にて、本文を読むだけでは理解できない論文は少なかった。本論文は内容を読むだけでは理解しきれない。肺血栓塞栓症の診断は容易でないことが多い。筆者は30年臨床医をしているので勘が利く。しかし、医療を標準化するためには経験を積んだ臨床医の「勘」を定量化する必要がある。本論文では肺塞栓症を疑う臨床症状を有する3,133例から出発した。明確な除外基準に該当しない2,017例を研究対象とした。これらの症例がWells scoreにより層別化された。静脈血栓症の少ない日本ではWells scoreの知名度も低い。Wells scoreを覚えるのは面倒くさい。臨床的に静脈血栓症らしければ3点、肺塞栓症以外の病気らしくなければ3点などかなりソフトな因子により分類する。本研究では、このソフトなWells scoreとd-dimerを組み合わせたことによる肺塞栓症診断精度を評価している。 かつてNEJMに掲載された論文は質の高いエビデンスと評価された。最近、とくに循環器領域では「?」と思う論文が増えた。本論文は「NEJM大丈夫かな?」と思わせる論文の1つである。 本論文はカナダの大学病院の臨床データベースである。外来症例と入院症例を合わせているが大学病院というだけで一般診療に広げるにはバイアスが強い。d-dimerの計測値はハードパラメーターであるが、臨床的なclinical pre-test probability(c-PTP)はかなり主観的指標である。またc-PTPとしてのWells scoreも世界に普及しているとは言い難い。圧倒的多数の症例はc-PTPにてlow riskとされた。d-dimerは日本ではμg/mLを使用している。本研究ではc-PTPが低く、d-dimer 1μg/mL以下の症例1,285例では3ヵ月以内の肺塞栓症なしと報告されている。c-PTPが低くともd-dimer 1μg/mL以上の症例ではそれなりに肺塞栓症が含まれている。c-PTPにてmoderate riskとされた218例ではd-dimer 0.5μg/mLをカットオフにしている。同一研究において、baseline riskに応じて検査の閾値を変えた研究がNEJMに発表されたのは驚きである。 肺塞栓症の診断は難しい。臨床医として一定の見落としがあるのは仕方ないと理解している。本研究はc-PTPを数値化し、d-dimerを計測すれば著しいlow riskの症例を除外できる根拠としては意味がある。しかし、システム的な臨床研究を採択していたNEJMの一般水準には達していない。電子カルテの情報をスーパーコンピューターにて扱えば、本研究よりもはるかにシステム的に肺塞栓症の除外診断が可能である。本研究はdigital health技術普及前の一過性の意味しかない。NEJMもdigital healthを取り込めるか否かにてlow grade journalに転落するリスクがあることが本論文から示唆された。

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「ワクチン忌避」への対応と医療者教育の重要性/日本ワクチン学会

 「ワクチンの有効性・安全性に疑いを持つ人が接種を控える動き(ワクチン忌避)」が世界的に広がりを見せている。世界保健機関(WHO)は2019年に発表した「世界の健康に対する10の脅威」の1つとして「ワクチン忌避」を挙げている。日本においてもHPVワクチンの接種推奨が停止され、再開を求める医療者の声にもかかわらずいまだ果たされていない、等の現状がある。 11月30日~12月1日に開催された「第23回日本ワクチン学会学術集会」では、このワクチン忌避への危機感と対応策が大きなテーマの一つとなった。ワクチン忌避対抗の第一歩はデータ収集から シンポジウム「予防接種の教育啓発」では、国立感染症研究所・感染症疫学センターの砂川 富正氏が「国内外のVaccine hesitancyに関する状況」と題した講演を行った。砂川氏は「Vaccine hesitancy(ワクチン忌避)」に関連すると思われる報告が増加しており、「ある自治体における予防接種歴と百日咳に罹患した児の年齢分布を示すデータを見たところ、2~5歳と年齢が上がっても接種歴の無い児が含まれていた。ワクチンを受けさせない方針の保護者のコミュニティーができ、流行の一部となった疑いがある」と懸念を呈した。 2019年に報告数が急増し、学会でも大きなトピックスとなった麻しんについて「予防接種を受けていない10~20代の患者が30人以上出た、という事例を大きな衝撃を持って受け止めた。ワクチン接種率が90%を超える地域でも、ワクチンに否定的な医師に賛同する保護者のコミュニティなどができ、未接種者が固まって居住しているなどの条件が揃えば、一定規模の流行を生みかねない」と危機感を示した。こうした状況を踏まえ、自治体の予防接種担当者から保護者とのコミュニケーションについてアドバイスを求められることも増えている、という。 ワクチン忌避の動きは世界中で見られ、ブラジル、バルカン半島などで問題が顕在していることが報告されており、バルカン半島に位置するモンテネグロではワクチン反対派の運動で麻しん含有ワクチンの接種率が5割まで低下したという事例も報告された。科学誌Natureが、日本ではワクチン安全性への懸念が世界で最も高いレベルにあるとの風潮をニュース記事として取り上げるなど、日本は先進国の中でもワクチンを用いた取り組みが容易でない国として注視されている。 砂川氏は、「米国のようにワクチン忌避に関する定量調査でデータを蓄積し、分析と対応を行っていくことが急務」とまとめた。米国を参考に医療者向け教育プログラムを作成 続けて、同じく国立感染症研究所・感染症疫学センターの神谷 元氏が「予防接種従事者への教育の重要性」と題した講演を行った。 神谷氏は「定期接種・任意接種の問題はあるが、現在では国内で28種類のワクチンを受けられるようになり、海外との差を示すいわゆる『ワクチンギャップ』は数字の上では解消しつつある」と述べたうえで、「ワクチン忌避には歴史的・文化的背景があり、世界的に有効な手段は限られるが、その中で確実に有効性が証明されているのが『医療者への教育』であり、真のギャップをなくす手段である」と述べた。 そして、自身の留学時に経験した、米国疾病予防管理センター(CDC)とサンディエゴ郡保健局予防接種課の取り組みを紹介。CDCではACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)という外部の専門家集団と連携し、ワクチンに関連したエビデンスを検証し、ルール化する作業を常時行っている。ACIPの助言を基に決定したワクチンに関するルールは、全米の関係者・関係機関に通達され、患者からの問い合わせに対して全員が同じ回答ができることが信頼性につながっていると説明。また、米国には小学校入学前にワクチン接種を促す「School Law」と呼ばれるルールがあり、接種させない保護者にはペナルティが課されるという。 サンディエゴ郡保健局では、ワクチンに関するオンライン教育システムを用意し、担当地域の小児科・プライマリケアのレジデント全員に受講義務を課している。学習内容は臨床に即した実践的なロールプレイングを行うチーム学習プログラムであり、患児の予防接種歴確認の重要性などを体感できる。さらに、保健局はクリニックに対して担当地域の予防接種率のデータをフィードバックしており、「2回目の接種率は90%だが、3回目は70%に落ちている」等の実際のデータを見せることで、医師に対してワクチン接種を促す意識付けを図っている。こうしたさまざまな取り組みによって、サンディエゴ郡の予防接種率は全米トップクラスを達成、維持している。 同保健局の取り組みをヒントに、神谷氏は有志とともに医療従事者向けにワクチン知識を深めるためのオンライン講座を作成。医師向けに続き、看護師や事務員版についてもトライアルを進めているという。

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転移を有するHER2+乳がん、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib追加でPFS改善/NEJM

 トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の治療を受けた、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者に対して、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinibを追加投与することはプラセボの追加投与と比較して、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。ただしtucatinib追加投与群では下痢とALT値上昇のリスクが高かった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRashmi K. Murthy氏らによる国際共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号で発表された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。転移のあるHER2陽性乳がん患者で、複数のHER2標的薬で治療後に病勢進行が認められた場合の治療選択肢は限られる。tucatinibは開発中の高度に選択的な経口HER2阻害薬。第Ib相の用量漸増試験で、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ+カペシタビンへの併用が抗腫瘍効果を示し有望視されていた。tucatinibまたはプラセボを併用投与する群に612例を無作為に割り付け 試験は2016年2月23日~2019年5月3日に、15ヵ国155施設で被験者612例を登録して行われた。適格要件は、18歳以上、脳転移を問わず転移のあるHER2陽性乳がんで、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた、ECOG PSスコア(5点評価で高点数ほど機能障害大)が0または1の患者で、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib(410例)またはプラセボ(202例)を併用投与する群に無作為に割り付け追跡した。 主要評価項目は、無作為化開始後480例の患者におけるPFSとした。副次評価項目は、全登録被験者(612例)におけるPFSおよびOS、またベースラインで脳転移のあった患者におけるPFS、確定的な客観的奏効(完全奏効または部分奏効を有したベースラインで測定可能疾患があった患者の割合。評価は盲検下で独立中央のレビューによる)、そして安全性の評価であった。tucatinib併用群の1年時点の推定PFS率は33.1%、プラセボ併用群12.3% 1年時点の推定PFS率は、tucatinib併用群33.1%(95%信頼区間[CI]:26.6~39.7)、プラセボ併用群12.3%(6.0~20.9)であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.54、95%CI:0.42~0.71、p<0.001)。PFS期間の中央値はそれぞれ7.8ヵ月、5.6ヵ月であった。 2年時点のOSは、tucatinib併用群44.9%、プラセボ群26.6%であり(死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88、p=0.005)、OS期間中央値はそれぞれ21.9ヵ月、17.4ヵ月であった。 脳転移のある患者の1年時のPFS率はtucatinib併用群24.9%、プラセボ併用群0%であり(HR:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.001)、PFS期間の中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.4ヵ月であった。 tucatinib併用群では、下痢、手足症候群、悪心、疲労感、嘔吐などの有害事象が高頻度にみられた。■「トラスツズマブ」関連記事HER2陽性早期乳がん、トラスツズマブ投与期間短縮で効果は?/Lancet

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オベチコール酸、NASHによる肝線維化を有意に改善/Lancet

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者に対するオベチコール酸25mgの1日1回投与は、肝線維症およびNASH疾患活動性の主要要素を有意に改善することが示された。米国・Inova Health SystemのZobair M. Younossi氏らが、1,968例を対象に行っている多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「REGENERATE試験」の中間解析の結果を報告し、「今回の計画されていた中間解析の結果は、相当な臨床的ベネフィットを予測させる臨床的に有意な改善を示すものであった」とまとめている。NASHは一般的にみられる慢性肝疾患の1つで、肝硬変に結び付く可能性がある。farnesoid X receptor(FXR)作動薬であるオベチコール酸は、NASHの組織学的特色を改善することが示唆されていた。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。オベチコール酸投与によるNASH寛解または線維症1ステージ以上改善を評価 研究グループは2015年12月9日~2018年10月26日にかけて、NASHの確定診断を受け、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活動性スコア4以上、肝線維症ステージF2~F3、またはF1で併存疾患が1つ以上の成人患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、プラセボ、オベチコール酸10mg、オベチコール酸25mgをそれぞれ1日1回投与した。なお、肝硬変、ほかの慢性肝疾患、アルコール摂取量の増加、その他の交絡因子となる状態がある場合には、被験者から除外した。 18ヵ月後の中間解析における主要エンドポイントは、NASH非増悪で線維症が1ステージ以上改善(線維症改善エンドポイント)、または線維症非増悪でNASH寛解(NASH寛解エンドポイント)のいずれかの達成とした。1回以上の試験薬投与を行ったF2~F3の患者で、事前に決めた中間解析日までに18ヵ月経過した被験者を対象にITT解析を行った。また、NASHや線維症の組織学的・生物学的マーカーや安全性についても検証した。オベチコール酸25mg群のNASH寛解の達成率12%、プラセボ群8% 被験者登録は線維症ステージF1~F3の1,968例で、そのうち中間解析にはF2~F3の931例(プラセボ群311例、オベチコール酸10mg群312例、オベチコール酸25mg群308例)が包含された。 線維症改善エンドポイントの達成率は、プラセボ群37例(12%)に対し、オベチコール酸10mg群55例(18%、対プラセボのp=0.045)、オベチコール酸25mg群は71例(23%、同p=0.0002)だった。 NASH寛解エンドポイントの達成率は、それぞれ25例(8%)、35例(11%、対プラセボのp=0.18)、36例(12%、p=0.13)だった。 全登録被験者(F1~F3の1,968例)を対象に行った安全性に関する解析では、最も多かった有害事象はかゆみで、発現はプラセボ群123例(19%)、オベチコール酸10mg群183例(28%)、オベチコール酸25mg群336例(51%)であり、重症度は概して軽度~中等度だった。重篤な有害事象の発現頻度は、それぞれ75例(11%)、72例(11%)、93例(14%)で同程度だった。 本試験は臨床的アウトカムを評価するために現在も継続進行中である。

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要支援高齢者に対するリハビリテーション専門職主導の短期集中型自立支援プログラムの効果

 医療経済研究機構の服部 真治氏らは、介護保険サービスを利用する必要がなくなり、その利用を終了(介護保険サービスから卒業)するための短期集中型自立支援プログラムの有効性を評価した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2019年10月17日号の報告。 短期集中型自立支援プログラムの構成は、一般的な通所型サービスCと同様であるが、今回のプログラムは、リハビリテーション専門職が中心となり、随時、管理栄養士、歯科衛生士も加わり、毎回20分間(状況に応じて10~30分間)の動機付け面談を実施することにより、利用者が自身の可能性に気付き、元の生活を取り戻すための日々の暮らし方を知り、意欲的に自分自身を管理できるようにすることを目的に開発されている。 大阪府寝屋川市にて、2群間並行ランダム化比較優越性試験を実施した。対象は、介護保険における要支援の認定を受けた65歳以上の高齢者のうち、参加同意が得られた介護保険サービス利用者。対象者は、短期集中型自立支援プログラムを追加で受ける介入群と通常の介護保険サービスのみを受ける対照群にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、介護保険サービスからの卒業とした。 主な結果は以下のとおり。・対象者375例は、介入群190例、対照群185例にランダムに割り付けられた。・介護保険サービスからの卒業の割合は、介入群11.1%、対照群3.8%であった(絶対差:7.3、95%CI:2.0~12.5)。・重篤な有害事象リスクは、両群間で差は認められなかった。 著者らは「本研究で開発した短期集中型自立支援プログラムの追加的な利用により、介護保険サービスからの卒業を促進できることが示唆された」としている。

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男性の顔の皮膚炎、原因は身だしなみ製品にあり

 男性も「顔」に投資する時代が到来しているが、美の追求には代償が伴うようだ。米国・ミネソタ大学のErin M. Warshaw氏らは、男性の顔の皮膚炎(male facial dermatitis:MFD)の特徴、アレルゲン、原因を調べるため、1994~2016年にパッチテストを受けた北米の男性患者5万507例を対象とした後ろ向き横断分析を行った。その結果、MFD患者は1994年の5.6%から2015~16年には10.6%に増大していたこと、MFDでは若い患者が有意に多く、アレルゲンは概して防腐剤、香料、染毛剤、界面活性剤などが含まれているパーソナルケア製品にあったことを報告した。著者は「今回の研究は、男性の皮膚科患者が使用する身だしなみ製品の増大によるリスクと曝露への洞察を提供するものとなった。これにより臨床医はパッチテストの恩恵を受ける患者をより適切に識別し、治療できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月27日号掲載の報告。 研究グループは、1994~2016年のNorth American Contact Dermatitis Group(NACDG:北米接触皮膚炎研究グループ)のデータを用いて、22年間にわたる後ろ向き横断分析を行った。ここには、複数のセンターで皮膚科学会認定の専門医グループによるパッチテストを受けた5万507例のデータが含まれた。 顔の皮膚炎は、目、眼瞼、口唇、鼻または顔(未特定)に関係している場合、と定義した。 主なアウトカムは、MFDを有する患者と有さない患者(MNoFD)の特徴(人口統計学的特徴やアレルゲンなど)を、統計的分析(相対リスク[RR]と信頼区間[CI])を用いて比較することだった。副次アウトカムは、MFDにおけるアレルギーおよび刺激性接触皮膚炎の原因、職業に関連した症例については職業と産業とした。 主な結果は以下のとおり。・全体で、MFD群は1,332例(8.0%)、MNoFD群は1万3,732例(82.0%)が含まれた。・最も多かった疾患部位は、顔(未特定817例[48.9%])、次いで眼瞼(392例[23.5%])、口唇(210例[12.6%])であった。・平均(SD)年齢は、MFD群47(17.2)歳、MNoFD群50(17.6)歳で、MFD群のほうが有意に若かった(p<0.001)。・MFD群はMNoFD群より白人種が少なく(RR:0.92、95%CI:-0.90~0.95)、職業関連の皮膚疾患が少なかった(0.49、-0.42~0.58)(p<0.001)。・MFD群で臨床的に重大な反応と関連した最も一般的なアレルゲンは、メチルイソチアゾリノン(113例、9.9%)、次いで香料ミックス I(27例、8.5%)、ペルーバルサム(90例、6.8%)であった。・MNoFD群と比較して、MFD群はジメチルアミノプロピルアミン(RR:2.49、95%CI:-1.42~4.37)や、パラフェニレンジアミン(1.43、-1.00~2.04)の使用が多かった(p<0.001)。・全体として、NACDGアレルゲンの60.5%は、パーソナルケア製品にあった。■「メチルイソチアゾリノン」関連記事化粧品に含まれる防腐剤メチルイソチアゾリノンへのアレルギー患者が急増

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非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189日本人延長試験の結果/日本肺癌学会

 未治療の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対してペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)療法とペメトレキセド+プラチナ療法と比較したKEYNOTE-189試験の日本人延長試験の結果が、第60回日本肺癌学会学術集会で発表された。当試験の全集団ではペムブロリズマブ上乗せ群が全生存期間(OS)を有意に改善した(HR:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)が、今回の日本人試験の評価項目は安全性、忍容性である。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は、全試験からの10例、日本人試験からの30例の計40例。ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(Pembro/Pem/Plat)群25例、ペメトレキセド+プラチナ(Pem/Plat)群15例に無作為に割り付けられた。・ベースラインの患者背景では脳転移がPem/Plat群に多くみられた(Pem/Plat群33%に対しPembro/Pem/Plat群16%)。・Grade3~4の治療下発現有害事象(TEAE)はPembro/Pem/Plat群の72.0%、Pem/Plat群の60.0%で発現した。これは全集団と同等の結果であった(Pembro/Pem/Plat群71.9%、Pem/Plat群66.8%)。・日本人試験におけるOS中央値は、Pembro/Pem/Plat群では未到達、Pem/Plat群では25.9ヵ月であった(HR:0.29)。・日本人試験における無増悪生存期間中央値は、Pembro/Pem/Plat群では16.5ヵ月、Pem/Plat群では7.1ヵ月であった(HR:0.62)。 発表者である四国がんセンターの野上 尚之氏は、当試験の評価はあくまで安全性であり、効果については参考として考えるべきとの見解を示した。

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糖尿病妊婦の子供は早発性CVDリスクが高い/BMJ

 糖尿病の母親の子供は、小児期から成人期初期に、非糖尿病の母親の子供に比べ早発性の心血管疾患(CVD)の発生率が高く、とくに母親がCVDや糖尿病性合併症を併発している場合はCVDリスクがさらに増加することが、デンマーク・オーフス大学のYongfu Yu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。最近の数10年間で、世界的に子供や若年成人のCVD有病率が高くなっている。妊娠前および妊娠中の母親の糖尿病は、子供のメタボリック症候群や先天性心疾患のリスク上昇と関連するとされるが、母親の糖尿病への出生前の曝露が、生命の初期段階にある子供の早発性CVDに影響を及ぼすか否かは知られていないという。糖尿病妊婦の子供を40年追跡したコホート研究 研究グループは、妊娠前または妊娠中に診断された母親の糖尿病と、その後40年間における子供の早発性CVDの関連を評価する目的で、住民ベースのコホート研究を行った(デンマーク・Lundbeck Foundationなどの助成による)。 データの収集には、デンマークの全国的な健康関連の登録システムを用いた。1977~2016年の期間に、デンマークで出生し、先天性心疾患のない243万2,000例の子供が解析の対象となった。追跡は出生時に開始され、CVDの初回診断、死亡、海外移住、2016年12月31日のうち、いずれかが最も早く到来するまで継続された。 曝露因子は、母親の糖尿病合併妊娠(1型糖尿病[2万2,055例]、2型糖尿病[6,537例])と妊娠糖尿病(2万6,272例)であった。 主要アウトカムは、病院の診断によって定義された早発性CVD(先天性心疾患を除く)とし、母親の糖尿病と子供の早発性CVDリスクとの関連を評価した。また、Cox回帰を用いて、この関連への、母親のCVDおよび糖尿病性合併症の既往歴の影響を検討した。糖尿病単独で29%、合併症併発で60%、CVD併発で73%増加 5万4,864例(2.3%)の子供が、母親の糖尿病合併妊娠(1型糖尿病0.9%、2型糖尿病0.3%)または妊娠糖尿病(1.1%)に曝露していた。40年の追跡期間中に、糖尿病の母親の子供1,153例と、非糖尿病の母親の子供9万1,311例が、CVDと診断された。 糖尿病の母親の子供は、非糖尿病の母親の子供に比べ、早発性CVDの発生率が29%高かった(ハザード比[HR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.21~1.37)。母親の糖尿病に曝露しなかった子供の40歳時の累積CVD発生率は13.07%(12.92~13.21)であった。曝露と非曝露の子供の累積CVD発生率の差は4.72%(2.37~7.06)だった。 また、同胞コホートで近親デザイン(sibship design)の解析(共通の遺伝的、家族的な背景因子に起因する未調整の交絡を評価)を行ったところ、マッチングを行っていないコホート全体の主解析とほぼ同様の結果(1.26、1.18~1.35)であった。 糖尿病合併妊娠(HR:1.34、95%CI:1.25~1.43)および妊娠糖尿病(1.19、1.07~1.32)のいずれにおいても、子供のCVDは増加していた。また、個々の早発性CVDの発生率の増加の割合は多様であり、増加率の高かったCVDとして、心不全(1.45、0.89~2.35)、高血圧性疾患(1.78、1.50~2.11)、深部静脈血栓症(1.82、1.38~2.41)、肺塞栓症(1.91、1.31~2.80)が挙げられた。 CVD発生率の増加は、母親の糖尿病の種類にかかわらず、小児期から、40歳までの成人期初期の個々の年齢層で認められた。 CVD発生率の増加は、糖尿病合併妊娠のみの母親の子供(HR:1.31、95%CI:1.16~1.48)に比べ、糖尿病性合併症を併発した母親の子供(1.60、1.25~2.05)で、より顕著であった(合併症併発の非併発に対するHR:1.22、95%CI:0.92~1.62)。また、母親が糖尿病とともにCVDを併発していた場合、子供の早発性CVDの発生率はさらに高く(1.73、1.36~2.20)、これは併発CVDの付加的影響であったが、糖尿病とCVDの交互作用に起因するものではなかった(交互作用の相乗スケールのp=0.94)。 著者は、「出産可能年齢の女性における糖尿病の予防、スクリーニング、治療は、女性の健康の改善だけでなく、子供の長期的なCVDリスクの抑制においても重要と考えられる」としている。

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ベンゾジアゼピン治療と自殺リスク

 不安症および睡眠障害のマネジメントのためのガイドラインでは、抗うつ薬治療と心理療法を第1および/または第2選択治療とし、ベンゾジアゼピン(BZD)は、第3選択治療としている。米国・コロラド大学のJennifer M. Boggs氏らは、自殺による死亡とBZDガイドラインコンコーダンスとの関連について評価を行った。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。 Mental Health Research Networkより、米国8州のヘルスシステムから不安症および/または睡眠障害を有する患者を対象とした、レトロスペクティブ症例対照研究として実施した。自殺による死亡症例は、年およびヘルスシステムにおいて対照とマッチさせた。適切なBZDの使用は、単独療法でない、長期使用でない、65歳未満であると定義した。ガイドラインコンコーダンスと自殺による死亡との関連は、診断および治療の共変量で調整し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、不安症患者6,960例(BZDR使用患者:2,363例)、睡眠障害患者6,215例(BZDR使用患者:1,237例)。・BZDガイドラインコンコーダンスは、不安障害患者の自殺率低下と関連が認められた(OR:0.611、95%CI:0.392~0.953、p=0.03)。このことには、BZDの使用を短期間にすること、心理療法または抗うつ薬を併用することも影響していた。・BZDガイドラインコンコーダンスと自殺による死亡との関連において、睡眠障害患者では、有意な関連が認められなかった(OR:0.413、95%CI:0.154~1.11、p=0.08)。 著者らは「BZDを短期間使用し、心理療法または抗うつ薬治療を併用した不安症患者では、自殺率が低いことが明らかとなった」としている。

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院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。心停止前・中の予後因子をメタ解析で評価 研究グループは、院内心停止後の生存に関わる心停止前および心停止中の予後因子を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2019年2月4日現在、医学関連データベース(Medline、PubMed、Embase、Scopus、Web of Science、Cochrane Database of Systematic Reviews)に登録された文献を検索した。また、英国のNational Cardiac Arrest Audit(NCAA)データベースの未発表データを調査した。対象は、心停止前および心停止中の予後因子と、心停止後の生存の関連を評価した英語の文献とした。 データの抽出は、PROGRESS(prognosis research strategy group)の推奨と、CHARMS(critical appraisal and data extraction for systematic reviews of prediction modelling studies)のチェックリストに準拠して行った。バイアスのリスクは、QUIPS(quality in prognosis studies)のツールを用いて評価した。 主解析では、関連する交絡因子を補正したうえでデータを統合した。エビデンスの確実性の評価には、GRADE(grading of recommendations assessment, development, and evaluation)approachが用いられた。患者との予後や事前指定の話し合いに利用できるデータ 主解析には23件のコホート研究が含まれた。12件(52.2%)が北米、6件(26.1%)が欧州、4件(17.4%)がアジア、1件(4.3%)がオーストラリアの研究であった。13件(56.5%)が後ろ向き研究で、13件(56.5%)は多施設共同研究だった。 心停止前の因子のうち、院内心停止後の生存オッズを低下させたのは、男性(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.73~0.95、エビデンスの確実性:中)、年齢60歳以上(0.50、0.40~0.62、低)、年齢70歳以上(0.42、0.18~0.99、低)、活動性の悪性腫瘍(0.57、0.45~0.71、高)、慢性腎臓病(0.56、0.40~0.78、高)であった。 1件の研究のみのデータではあるが、うっ血性心不全(OR:0.62、95%CI:0.56~0.68、エビデンスの確実性:中)、慢性閉塞性肺疾患(0.65、0.58~0.72、中)、糖尿病(0.53、0.34~0.83、中)も、生存オッズを低下させた。 心停止中の因子では、院内心停止後の生存オッズを上昇させたのは、目撃者のいる心停止(OR:2.71、95%CI:2.17~3.38、エビデンスの確実性:高)、遠隔測定(テレメトリ)によるモニタリングが行われた心停止(2.23、1.41~3.52、高)、日中(病院に十分なスタッフがいる時間と定義、施設によりばらつきあり)の心停止(1.41、1.20~1.66、高)、初回ショック適応のリズムを伴う心停止(5.28、3.78~7.39、高)であった。 一方、挿管を要する心停止(OR:0.54、95%CI:0.42~0.70、エビデンスの確実性:中)および15分以上の蘇生時間(心停止から自己心拍再開までの時間)(0.12、0.07~0.19、高)は、生存オッズを低下させた。 著者は、「院内心停止後のアウトカムと関連する重要な予後因子が同定された。これらのデータは、院内心停止後に予測される予後や、心肺蘇生に関する事前指定について、患者と話し合う際に使用可能と考えられる」としている。

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