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統合失調症、 D2受容体への非結合薬剤は有効か?/NEJM

 急性増悪期統合失調症患者において、D2受容体に結合しない抗精神病薬SEP-363856はプラセボと比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化量を有意に改善させることが、東欧および米国の5ヵ国計34施設で実施された4週間の第II相無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果、明らかとなった。米国・Sunovion PharmaceuticalsのKenneth S. Koblan氏らが報告した。SEP-363856は、ドパミンD2受容体に結合せず、微量アミン関連受容体1(TAAR1)とセロトニン5-HT1A受容体に対するアゴニスト活性を有する経口化合物で、統合失調症の精神病状態を治療する新しいクラスの向精神薬となる可能性があるという。NEJM誌2020年4月16日号掲載の報告。TAAR1/5-HT1AアゴニストであるSEP-363856の有効性と安全性をプラセボと比較検討 研究グループは、急性増悪期統合失調症の成人患者を、SEP-363856(50mgまたは75mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日1回4週間投与した。試験期間は2016年12月~2018年7月である。 主要評価項目は、投与4週後のPANSS(30~210点、点数が高いほど精神病症状が重度であることを示す)合計スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は臨床全般印象評価尺度(CGI-S)や簡易陰性症状尺度(BNSS)などの8項目のスコアのベースラインからの変化量で、修正intention-to-treat集団を対象に反復測定混合効果モデルを用いて解析した。PANSS合計スコアの平均変化量、SEP-363856で有意に改善 計245例がSEP-363856群(120例)およびプラセボ群(125例)に割り付けられた。 ベースラインのPANSS合計スコア平均値は、SEP-363856群101.4、プラセボ群99.7であり、投与4週後の平均変化量はそれぞれ-17.2および-9.7であった(最小二乗平均差:-7.5、95%信頼区間[CI]:−11.9~−3.0、P=0.001)。また、投与4週後のCGI-SスコアおよびBNSSスコアは、概して主要評価項目と同様に低下したが、多重比較は行わなかった。 SEP-363856の主な有害事象は傾眠、消化器症状などで、心臓突然死がSEP-363856群で1例報告された。錐体外路症状の発現頻度や、脂質、HbA1cおよびプロラクチン値の変化量は両群で類似していた。 著者は、試験期間が短いことや、18~40歳の患者を対象としたことなど、今回の研究の限界を挙げたうえで、「統合失調症患者に対するSEP-363856の有効性と副作用、ならびに既存薬との有効性の比較を明らかにするためには、さらなる長期で大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。

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SARS-CoV-2との戦いーACE2は、味方か敵か?(解説:石上友章氏)-1218

原著論文Renin-Angiotensin-Aldosterone System Inhibitors in Patients with Covid-19 COVID-19は、新興感染症であり、科学的な解明が不十分である。これまでの報告から、致死的な重症例から、軽症例・無症候例まで、幅広い臨床像を呈することがわかっており、重症化に関わる条件に注目が集まっている1,2)。中国からの報告により、疾病を有する高齢者、なかでも高血圧を有する高齢者が多く重篤化する可能性が指摘された3,4)。 SARS-CoV-2の類縁であるSARS-CoVは、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスである。標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)を受容体として、ウイルス表面のスパイク蛋白と結合する。ACE2と結合したスパイク蛋白は、細胞表面の膜貫通型セリン・プロテアーゼであるTMPRSS2などにより切断され、標的細胞の細胞膜と融合することで細胞内に侵入することが知られている(『感染の成立』)5,6)。SARS-CoV-2の感染症であるCOVID-19でも、同様の機序が想定されている。 降圧薬(ACE阻害薬、ARB)の使用とCOVID-19との関係が注目されており、Vaduganathanらの手による、Special ReportがNEJM誌に掲載された7)。ACE2がSARS-CoV-2の感染の成立に重要な働きを有していることから、高齢者・高血圧患者におけるACE阻害薬、ARBの使用と、感染の重篤化との間に因果関係があるのではないかという疑問があがった。有効な治療法が確立していない現在、既存の蛋白分解酵素阻害薬である、ナファモスタット、カモスタットの、TMPRSS2の阻害作用により、SARS-CoV-2の感染を抑制する可能性があると報告されたことも、既存薬であるRA系阻害薬とCOVID-19との関連が注目された一因であろう8,9)。 図のように、ACE2はAng(1-7)-Mas受容体系に関与していると考えられており、ACE2の活性化はアンジオテンシンIIの働きに拮抗・相殺する作用であり、生体にとって好ましいとされている10)。ACE2が、SARS-CoV-2の感染の成立に重大な働きをすることから、直接的にCOVID-19の発症に関わっている可能性がある。ACE2活性の亢進や抑制が、COVID-19の発症・重篤化に関係しているのであれば、RA系阻害薬の内服によるACE2活性の変化によって、予後が決定される可能性がある。(原図:石上 友章氏) 個々の研究に目をやると、SARS-CoVによる重症肺炎が、ロサルタンの投与で軽快すると報告されている5)。またオルメサルタンには、ACE2活性化作用を介して、Ang II→Ang(1-7)への変換を促進し臓器保護作用があると報告されているが11)、いずれもげっ歯類を対象にした動物実験であり、ヒトではっきりと証明された報告はない。したがって、米国・欧州の主要な学会のポジション・ステートメントは、RA系阻害薬使用とCOVID-19との間の相関には否定的で、RA系阻害薬の内服の継続を推奨している。(https://www.eshonline.org/spotlights/esh-statement-covid-19/ほか) ARB(ロサルタン)ならびに、ACE2賦活薬(APN01:recombinant human soluble ACE2)を使った、臨床研究(NCT00886353、NCT04311177、NCT04312009)が計画されている。ヒトでのPOCがとれるか否かで、今回の降ってわいたような疑問への回答を得られることが期待される。References1)Bouadma L, et al. Intensive Care Med. 2020;46:579-582.2)Wu Z, et al. JAMA. 2020 Feb 24. [Epub ahead of print]3)Zhou F, et al. Lancet. 2020;395:1054-1062.4)Pan X, et al. Lancet Infect Dis. 2020;20:410-411.5)Kuba K, et al. Nat Med. 2005;11:875-879.6)Imai Y, et al. Circ J. 2010;74:405-410.7)Vaduganathan M, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 30. [Epub ahead of print]8)Yamamoto M, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60:6532-6539.9)Hoffmann M, et al. Cell. 2020;181:271-280.e8.10)Ishigami T, et al. Hypertens Res. 2006;29:837-838.11)Agata J, et al. Hypertens Res. 2006;29:865-874.

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化学療法+ICI、初の長期フォローアップデータ【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第13回

第13回 化学療法+ICI、初の長期フォローアップデータ1)Gadgeel S, Rodriguez-Abreu D, Speranza G, et al. Updated Analysis From KEYNOTE-189: Pembrolizumab or Placebo Plus Pemetrexed and Platinum for Previously Untreated Metastatic Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol. 2020 Mar 9. [Epub ahead of print]NSCLCの標準治療を大きく変えることになったKEYNOTE-189試験(化学療法+免疫チェックポイント阻害剤[ICI]vs.化学療法の第III相試験)。ICIを用いた多くの試験同様、アップデート解析が今回報告された。長期生存・長期無再発はどのような集団で得られているのか、PD-L1検査の意義は…簡潔に紹介する。アップデートの内容フォローアップ期間の中央値は当初報告(Gandhi L, et al. NEJM. 2018;378:2078-2092.)における10.5ヵ月から、今回23.1ヵ月となった。PFS、OSのアップデートに加え、PFS2の解析が追加されている。なおPFS2の定義は「ランダム化から、(1)主治医判断による2次治療の病勢進行(PD)まで、もしくは(2)2次治療をPD以外で終了した場合は3次治療開始まで、あるいは(3)これら以外の死亡まで」とされている。IMpower試験(アテゾリズマブ)で話題となった、肝・脳転移の有無に関するサブセット解析が追加された。なおKN189試験では全体の16~18%の症例が肝・脳転移を有している。結果以下、Pembro群vs.Placebo群:初回報告→アップデートの順に紹介する(単独の結果記載はアップデートデータのみ)。MST:未到達vs.11.3ヵ月(HR 0.49)→22.0ヵ月vs.10.7ヵ月(HR 0.56)2年生存率:45.5% vs.29.9%PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.42/0.55/0.59→0.59/0.62/0.52mPFS:8.8ヵ月vs.4.9ヵ月(HR 0.52)→9.0ヵ月vs.4.9ヵ月(HR 0.48)2年PFS率:20.5% vs.1.5%PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.36/0.55/0.75→0.36/0.51/0.64PFS2:17.0ヵ月vs.9.0ヵ月(HR 0.49)PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.47/0.59/0.46肝転移・脳転移の有無は予後不良因子ではあるが、ペムブロリズマブ追加の効果予測因子ではなかった。追加期間において、新規の免疫関連有害事象の発生は少なかった。解説本研究の強み・興味深い点化学療法+ICIにおける初めての長期フォローアップデータ。PD-L1の有無によらず、同程度のHRが示された。一方で、長期無再発の観点でPFSを見てみると、PD-L1 50%をカットオフとして差が顕著になっている。PD-L1≧50%で曲線がプラトーになりつつある一方で、1~49%、<1%ではほぼ全例が増悪を呈している。まとめると、3剤併用はPD-L1の有無によらず選択可能、ただしその後の戦略は大きく異なる。PD-L1≧50%では3人に1人が2年間以上無増悪を期待できる。PD-L1 50%未満では、10ヵ月前後で増悪する可能性が高く、次治療を考慮する。肝転移・脳転移の有無は治療選択には大きく影響しない。総じて、日常臨床に影響するようなデータはなし。その他のポイントコントロールアームの治療成績(MST 10.7ヵ月)が本邦の一般的な印象に比してかなり悪いので、HRの解釈には少し注意が必要かもしれない。PD-L1 50%未満に対して今後はどのような治療戦略が期待されるのか? 化学療法+ICIにさらなる薬剤追加はなかなか難しいと思われる(ベバシズマブは症例を選べば可能だが…)。2019年にはKRAS変異とPD-L1発現・化学療法+ペムブロリズマブの有効性を検討したサブ解析が話題を呼んだ(Gadgeel S, et al. ESMO-IO 2019.)。バイオマーカーについて、今後追加の報告があるのか、にも注目したい。

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血圧変動と認知症リスク~コホート研究

 血圧の来院時変動と一般集団における認知症発症率および認知症サブタイプとの関連を調査するため、韓国・Seoul National University HospitalのJung Eun Yoo氏らは、人口ベースのレトロスペクティブコホート研究を実施した。Hypertension誌2020年4月号の報告。 韓国国民健康保険データベースを用いて、2005~12年に3回以上の健康診断を受けた認知症既往歴のない784万4,814例を対象とした。血圧変動性(BPV)は、平均、変動係数、SDとは独立した変動性を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値6.2年間で、認知症の発症は以下のとおりであった。 ●すべての認知症:20万574例(2.8%) ●アルツハイマー病:16万5,112例(2.1%) ●血管性認知症:2万7,443例(0.3%)・高BPVとアウトカム測定値との間に、線形の関連が認められた。・多変量調整モデルでは、すべての認知症発症における、平均とは独立したBPVの最高四分位のハザード比は、最高四分位以外と比較し、以下のとおりであった。 ●拡張期血圧のみ:1.06(95%CI:1.04~1.07) ●収縮期血圧のみ:1.09(95%CI:1.08~1.11) ●収縮期血圧、拡張期血圧の両方:1.18(95%CI:1.16~1.19)・他の変動性の指標、さまざまな感度分析、サブグループ解析において、アルツハイマー病と血管性認知症で、一貫したアウトカムが認められた。 著者らは「BPVは、認知症およびそのサブタイプの発症を予測する独立した因子であった。より高いBPVと認知症発症率との間に、用量反応関係が認められた。BPVの低減は、一般集団が認知症を予防するための目標となりうる可能性がある」としている。

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RCTの事前登録順守率、インパクトファクターと相関/BMJ

 世界保健機関(WHO)は2008年にヘルシンキ宣言を改訂し、その後2015年に臨床試験登録国際プラットフォームを設置して、臨床試験の事前登録を勧告している。カナダ・トロント総合病院のMustafa Al-Durra氏らによる検討の結果、勧告にのっとり事前登録した試験の割合は、全登録試験の約42%と低いことが明らかになった。無作為化試験(RCT)の事前登録は、試験結果の選択的な報告を減らすものと見なされている。これまで行われた研究では、RCTの事前登録の順守率は低いものでは4%、高いものでは77%と報告されていた。BMJ誌2020年4月14日号掲載の報告。PubMed、17の臨床試験レジストリなどへの登録を調査 研究グループは、公表されたRCTの事前登録とレジストリの登録番号(TRN:trial registration number)の対応状況を評価し、また論理的根拠を解析し、選択的登録バイアス、遡及的な試験登録を検出する検討を行った。 PubMed、WHOの臨床試験登録国際プラットフォームに含まれる17の臨床試験レジストリ、トロント大学図書館、国際医学編集者会議(ICMJE)の会員雑誌、文献間の引用・被引用関係を分析したInCites Journal Citation Reportsを対象に調査を行った。 WHO臨床試験レジストリに登録されたRCTと、2018年までにPubMedに登録された雑誌に公表された試験について断面解析を行った。レジストリへの事前・事後登録率と、ICMJE会員雑誌での発表との関連などを検証した。ICMJE会員雑誌で発表の試験、TRN記載は約5.8倍に 医学雑誌2,105誌で研究結果が発表された、1万500試験について分析を行った。 全体では、TRNが報告されていたのは71.2%(7,473/1万500試験)だった。また、レジストリへの登録日や被験者の参加日などが確認できた7,218試験のうち、事前登録を行っていたのは41.7%(3,013/7,218試験)だった。 単変量・多変量解析の結果、TRNの報告とインパクトファクターおよびICMJE会員雑誌の間には有意な関連が認められた(p<0.05)。試験結果へのTRNの記載は、ICMJE会員雑誌の場合、非会員雑誌に比べ5.8倍多かった(オッズ比[OR]:5.8、95%信頼区間[CI]:4.0~8.2)。また、公表試験のレジストリへの事前登録率は、ICMJE会員雑誌で発表されていた試験が非会員雑誌に比べ1.8倍多かった(1.8、1.5~2.2)。 また、レジストリ登録日と試験結果の雑誌への投稿までの期間が1年未満だった試験のうち85.2%(616/723試験)が雑誌投稿後に事後登録しており、選択的登録バイアスという新たなバイアスが存在する実態も判明したという。事後登録は、被験者登録開始後3~8週間で行われている割合が高かった。 事後登録され、ICMJE会員雑誌に公表された286試験(RCT)のうち、著者が登録の遅れを正当化するステートメントを表明していたのは2.8%(8/286試験)だった。理由としては、認識不足、作為のない誤り、予想より登録プロセスに時間を要した、などであった。

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糖尿病予防、最も効果的な介入ターゲットが明らかに

 わが国の糖尿病患者は約1,000万人、さらに予備群も約1,000万人とされ、超高齢社会において、糖尿病予防は喫緊の課題のひとつである。しかし、人的・経済的な資源には限りがある。糖尿病を効果的に予防する介入ターゲットは、どのように絞り込めばよいのだろうか。 今回、坂根 直樹氏(京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)は、「糖尿病予防のための戦略研究J-DOIT1」(研究リーダー:葛谷 英嗣氏)のデータを用いて、肥満、メタボリックシンドローム、肝臓の状態別に、生活習慣支援の糖尿病予防効果について解析を行った。Journal of Occupational Health誌2020年1月21日号に掲載。 本研究で対象となったのは、20~65歳の空腹時血糖異常(100~125mg/dL)を伴う2,607例で、支援群(n=1,240)と対照群(n=1,367)にランダムに割り付けられた。支援群には、電話によるサポートが1年間提供された。追跡期間中央値は4.9年。肥満の判定はBMI=25以上とし、メタボックシンドローム(MetS)の判定はNCEP/ATP IIIの基準を用いた。肝臓の状態の判定はDallas Heart Studyの基準で非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、アルコール性脂肪肝(AFLD)、正常の3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢の中央値は49歳で、83.4%が男性。BMIの範囲は18.5未満から30超までおり、中央値は24.3kg/m2だった。・それぞれの有病率は、肥満が37.5%、MetSが38.1%、NAFLDが7.1%、AFLDが13.8%だった。・肥満の者はそうでない者に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2.2倍であり、生活習慣の支援により糖尿病発症リスクは低下したが、有意ではなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.54~1.29、p=0.422)。・メタボリックシンドロームの者はそうでない者に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2.0倍であり、生活習慣の支援による糖尿病発症リスクに差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.72~1.51、p=0.840)。・肝臓の状態による2型糖尿病の発症リスクは、肝臓が正常な者に比べて、NAFLDでは約2.9倍、AFLDでは約2.4倍だった。生活習慣の支援による糖尿病発症リスクは、正常な肝臓状態(HR:1.25、95%CI:0.90~1.72、p=0.180)とAFLD(HR:0.71、95%CI:0.40~1.25、p=0.240)では差を認めなかったのに対し、NAFLDでは著明な糖尿病リスクの低減効果が認められた(HR:0.42、95%CI:0.18~0.98、p=0.045)。 坂根氏は、「人的資源や予算が限られている場合、NAFLDをターゲットにすることで、費用対効果の高い糖尿病の予防的介入の実現が期待できる。一方、AFLDで同等の効果がみられなかった理由のひとつとして、節酒指導が難しいことが考えられる。今後は、効果的な節酒指導プログラムの開発が必要であろう」とこれからの展望を述べた。

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第4回 AIが予想する、開発中のCOVID-19ワクチン成功率

1965年に英国の研究者が初めて報告したコロナウイルスは1)、およそ半世紀後のいま、世界で猛威を振るっています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン候補の先頭を切るModerna社の開発品mRNA-1273の成功確率はどれほどのものなのか? 人工知能(AI)が出した答えはわずか5%でした2)。なぜそのように低いかというと、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を標的とするmRNA-1273の成分がこれまでのワクチンにはないメッセンジャーRNA(mRNA)であり、まだ立証されていない技術だからだと解析を実施した情報会社Clarivateの製品リーダーは言っています。AIはほかのCOVID-19ワクチンにも手厳しく、今月初めに第I相試験が始まったInovio社のDNAワクチンINO-4800の成功確率は15%、上手く行ったとしても承認には5.5年を要すると判断しています。ワクチンの主な安全性上の懸念の一つに、意図とは裏腹により感染しやすくしてしまうという、厄介な現象があります。SanofiのデングワクチンDengvaxiaで広く知られるようになったその現象・ADE(antibody dependent enhancement)が、Moderna社やInovio社のSARS-CoV-2スパイクタンパク質標的ワクチンと無縁とは言い切れないことも、それらの成功確率をAIが低く予想していることに影響しているかもしれません。ADEは非中和抗体で促されることが知られており、中和抗体をより生み出すワクチンならADEを回避できる可能性があります。2002~03年に流行したコロナウイルス・SARS-CoV-1のスパイクタンパク質では、受容体結合領域(RBD:receptor-binding domain)に対する抗体の中和活性が強力なことが知られています。そこで、米国フロリダ州のScripps Research Instituteの研究チームはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質RBD領域ではどうかを、ラットへの接種で検証しています。結果は期待通りで、ウイルスを認識して細胞感染を防ぐ強力な中和抗体が作られ、ADEを介した感染増強は生じ得ないと示唆されました3)。AIの予想がどうあれ、Moderna社は米国政府機関からの最大4億8,300万ドル(500億円超)の助成を受けてmRNA-1273の開発を急ぎ、現四半期4~6月中に第II相試験を開始し、順調に進めば承認申請前の大詰め試験・第III相試験が今秋にも始まります4)。Moderna社の取り組みが失敗しても、Scripps Researchなどの基礎研究から新たなワクチン候補は次々に誕生するでしょう。Moderna社に続くCOVID-19ワクチンの層も厚く、ノルウェーのオスロを拠点とするCOVID-19ワクチン開発支援組織Coalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI)によると、4月8日時点で世界で115のCOVID-19ワクチン候補が存在します5)。それらのうち78候補は確かに開発が進んでおり、Moderna社やInovio社に加えて中国企業のワクチン3つが臨床試験段階に至っています。いま世界が直面しているCOVID-19惨禍を終わらせ、将来の新たな流行に備えるために技術や資金を総動員してワクチン開発に取り組む必要がある、とCEPIは言っています。参考1)Tyrrell DA, et al. BMJ.1965 Jun 5;1:1467-70.2)Don't count on a COVID-19 vaccine for at least 5 years, says AI-based forecast / FiercePharma3)Quinlan BD, et al. bioRxiv. April 12, 2020.4)Moderna Announces Award from U.S. Government Agency BARDA for up to $483 Million to Accelerate Development of mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus / BUSINESS WIRE5)Thanh Le T, et al. Nat Rev Drug Discov. 2020 Apr 9.

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慢性期統合失調症外来患者の維持治療におけるLAIと経口剤の比較

 台湾・マッカイ医科大学のSu-Chen Fang氏らは、慢性期統合失調症患者の維持療法において、抗精神病薬治療を長時間作用型注射剤(LAI)のみで行った患者と経口薬(PO)のみで行った患者における精神科サービスの利用率の比較を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年3月17日号の報告。 2011年の台湾全民健康保険研究データベースより、維持療法を受けた慢性期統合失調症患者のコホートを作成し、12ヵ月間のフォローアップを行った。対象患者は、統合失調症と診断されて3年以上、2011年の入院歴がない、維持療法を1年以上受けていた患者とした。精神科サービスの利用を推定するために、inverse probability of treatment weighting (IPTW法)、ロジスティック回帰モデル、線形回帰モデル、負の二項回帰モデルを使用し、LAI群とPO群の共変量の不均衡を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者4万194例中、LAI群は948例(2.36%)、PO群は3万9,246例(97.64%)であった。・LAI群で、PO群と比較し、有意な差が認められたのは以下の点であった。 ●精神科入院率の低さ(5.8% vs.8.4%、オッズ比:0.63、p<0.01) ●入院日数の短縮(65.9日vs.82.8日、係数b:-16.87、p=0.03) ●救急受診の少なさ(1.8回vs.2.3回、係数b:-0.24、p<0.01) 著者らは「LAIで治療された慢性期統合失調症患者は、POで治療された患者と比較し、再発リスクが低く、精神科サービスの利用率が低かった」としている。

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腫瘍遺伝子変異量(TMB)高値固形がんに対するペムブロリズマブ、FDAに承認申請

 Merck社は、2020年4月7日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブの新たな生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)によって受理され、優先審査項目に指定されたことを発表した。この申請では、治療後に進行し、他に十分な治療選択肢のない、腫瘍遺伝子変異量高値(TMB-High、FDAに承認された検査において10変異/megabase以上)の切除不能または転移を有する固形がんの成人および小児患者に対する単独療法としてペムブロリズマブの迅速承認を目指している。  KEYNOTE-158試験は、固形がんに対するペムブロリズマブ(200mg 3週間ごと)を評価する、多施設共同マルチコホート非ランダム化非盲検試験。組織中のTMBはFoundation Medicine, Inc.のFoundationOne CDxにより測定した。主な有効性評価項目は盲検下の独立中央画像判定機関(BICR)が判定した客観的奏効率(ORR)および奏効期間(DoR)であった。  ペムブロリズマブは2017年に、がん治療薬として初めて、がん種横断的に共通するバイオマーカーに基づいて、マイクロサテライト不安定性(MSI-High)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の固形がんを適応症としたFDA承認を取得しており、今回の申請も、2017年のFDA承認の評価資料となった第II相試験KEYNOTE-158の結果などに基づいている。KEYNOTE-158試験におけるTMB-High患者のデータは2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。

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第39回 “ポイント”で考える左室肥大【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第39回:“ポイント”で考える左室肥大第37回、38回ではQRS波が増高する「左室高電位」を扱い、“ライオン”やちょっと太めの“男女”、そしてポイント制の“浪費エステ”など謎のワードが登場しました。これは心筋重量がアップした「左室肥大」(LVH)という病態の心電図診断に関係します。ほかの画像検査とは違い、波形で心臓を間接的に描写する心電図を使ってLVHをどのように予測すればいいのでしょうか? 曖昧にされがちなこの問題をDr.ヒロが明快にレクチャーしてみせましょう!【問題1】次のうち、「左室肥大」(LVH)の心電図診断に関係するものを選べ。1)左室低電位2)右房拡大3)ST-T変化(ST低下、陰性T波など)4)右軸偏位5)幅広いQRS波[120ms以上]解答はこちら3)解説はこちらご存じの通り、心電図は本来「不整脈」の診断検査です。エコーやCT、MRIなどの画像検査とは異なり、心臓の形態そのものを描出するわけではありませんね。それなのに「左室肥大」(LVH:left ventricular hypertrophy)は好発する心電図所見であり(個人的にはそこがスゴイと思う)、心電図を学ぶすべての人がおさえるべき異常所見の“代表選手”だと思います。心電図におけるLVHは、主に5つの心電図所見を総合して診断すると良いでしょう。その5つはおおむね選択肢に取り上げた項目です。最も重要なのは、前2回で扱った1)の「左室高電位」と側壁誘導*1を中心として見られる3)の「ST-T変化」の2項目。この2つはほぼ“Must”に近い条件だと思います。後者に関しては、「下行型ST低下」と「陰性T波」の組み合わせから成り、“ストレイン型”(通称:strain-pattern)と呼ばれる所見が代表的でしょうか。そのほかに“状況証拠”的な参考所見も3つほど知られています。一つは「左房拡大」(第26回)で、もう一つは「左軸偏位」(第8回)です。ともにこの“ドキ心”レクチャーでは丁寧に解説しました。選択肢はボクお得意の“左右アベコベ”で、2)も4)も×ということになります。最後の5)はどうでしょう。LVHでは、QRS幅はワイドにはなりません。QRS幅が120ms(3mm)を超える異常は「心室内伝導障害」といい、左右の「脚ブロック」が代表的です。ただし、今回この選択肢5)を入れ込んだ理由は、興味深いことに、真のLVHではQRS幅は“ワイド気味”になることが多いのです。“intrisicoid deflection”という概念が適用されるためで、この辺は次問で詳しく解説します。*1Dr.ヒロ流だと“イチエル・ゴロク”、すなわちI、aVL、V5、V6誘導のこと。時に“ゴロク”が“シゴロ”(V4、V5、V6)になることもある。【問題2】LVH診断に用いるRomhilt-Estesポイントスコア(図1)を踏まえ、次に示す82歳男性の心電図(図2)は何ポイントに該当するか答えよ。(図1)Romhilt-Estes Point Score System画像を拡大する(図2)定期検査の心電図画像を拡大する解答はこちら 9ポイント解説はこちら前回“浪費エステ”としてご紹介したRomhiltとEstesによるLVHスコアリングシステムですが、図1を見てください(英語表記そのままで若干見づらくてすいません)。ど、どうでしょう?…気づきましたか? そうっ! 1問目で解説した事項にほぼ一致しているんです。それでは、心電図(図2)について、それぞれをチェックしてみましょう。1は「左室高電位」、2は「ST-T変化」で、この二つはLVH診断としては王道な2つです。後者は、典型的にはストレイン型と言われるお決まりの形で、“右肩下がり”(下行型)のST部分とR波とはまったく逆向きの陰性T波が組み合わせで認められるものを言います。3はモリス・インデックス(Morris index)と呼ばれる指標に関連し、LVHの主要な診断要件を構成します。4は「左軸偏位」。ただし、ここでは-30°より北西寄り(-90°~-30°)を示しているので、いわゆる“軽度”な左軸偏位では該当しないことにご注意あれ。5と6は横軸、つまりQRS幅に関連する点が共通しています。5はシンプルにQRS幅が“ワイド”(幅広:≧0.12秒)ではないものの、2マスちょっとの“やや幅広”という条件です。6はLVH時の心筋の挙動を反映した条件になっています。LVHでは心筋ボリュームが増えるためか、QRS波の初期成分がダラダラ“もたつく”んです。これを“(delayed) intrinsicoid deflection”と言います。この症例ではさほど顕著ではありません。以上、まとめると、82歳男性の心電図は、1(c)、3、4、5を満たしますから、3+3+2+1=9がRomhilt-Estesポイントスコアになります。“「高い」だけじゃダメなんです”皆さんは、普段どのようにLVHを診断してますか? いわゆる肥大型心筋症のように、絵に描いたような“The・LVHパターン”であれば苦労しないと思います。基本は左室興奮が反映されやすい“イチエル・ゴロク(またはシゴロ)”の誘導で見られる左室パターン波形に着目し、これらの誘導で「左室高電位」が見られることが診断の核となることは言を待ちません。ただ、「左室高電位」だけでイコールLVHとするのは間違えです。前回に扱った“そこのライオン”(Solpkolow-Lyon)や性別でカットオフ値の異なってくる“こなれた男女(は3L)”(Cornell)などの基準をはじめ、到底覚えきれないほど列挙した一覧表を提示しましたが、これをいくつ満たそうがダメです。もちろん、“「左室高電位」なくして「LVH」なし”ですが、それだけではいけません。これらの基準だけでは感度50%くらいで、10~15%くらい偽陽性になってしまうことが知られています1)。『そんなのブツブツ言っていないでエコーを見ればいいじゃない』…みたいなコメントありませんか?そのスタンスは基本的に間違ってはいませんが、今回紹介するRomhilt-Estesポイントスコアの原著2)は1968年の論文、すなわち50年以上前の古典なんです。当時は今と違って心エコーも容易にとれなかった時代、いかに心電図からLVHを予想できるかということが花形だったのではないかと予想します。もちろん、今回取り上げた本スコアを覚えてもらおうなんていう気持ちは毛頭ありませんが、心電図の世界ではLVHを「左室高電位+α」で捉えるんだよという卓越したセンスには脱帽ですし、多少アレンジすることで現代でも十分に適用させることができるのです*2。*2:現在の国内の主要メーカーの心電計でも類似の診断アルゴリズムが採用されている。“実は「~ポイント制」の先があるんです!”では“浪費エステ”スコアの実際の診断項目をドキ心ならではの語呂合わせで説明しましょう。■Romhilt-Estesポイントスコア“覚え書き”■(1):Romhilt-Estes(2):左室高電位(3):ST-T変化(4):QRS波の前半成分“もたつき”[+幅](5):軸偏位[左軸](6):心房負荷[左房拡大]これで4点あったら“たぶん”「LVH」の疑いレベル、5点以上なら“ほぼ間違いなし”の「確定診断」となります。まず、条件の(2)は言わずと知れた「(左室)高電位差」です。採用されている「肢誘導≧20mm」と「V1、V2(S波)≧30mm」ないし「V5、V6(R波)≧30mm」でもいいですし、個人的に言えばS-L indexや余裕があったらCornell基準を参考にしても良いかもしれません(第38回)。これに該当する時は3ポイントとなります。ちなみに、(2)を満たさず、ほかの合計で4~5点となっても「LVH(疑い)」と診断して良いかは悩むところです。(3)の「ST-T変化」は元々次のような「ストレイン型(パターン)」と称される特徴的なST-T変化がYESなら3ポイントです。ちなみに使用量が減少傾向のジギタリス製剤を服用していたら1ポイントに留めます。これは有名な「ジギタリス効果」で既存のST-T部分に影響を及ぼすためです。(図3)“ストレイン型”[ventricular strain]とは?画像を拡大する“strain”というのは、単語としてはわれわれにあまり馴染みがありませんが、“(血行動態的に)負荷が強まった”というのが原義3)のようです。言葉の意味もそうですが、この「ストレイン型(パターン)」を正確に理解している人はあまりいない気がします。基本的には「下行型ST低下」と「陰性T波」からなるのですが、実は(図3)で示したように、QRS波の切れ目(J点)から“ちょっと上がって”上に凸のST部分(A)を形成して、“ゆっくり・右肩下がり”に下降して最後は“急激に”基線まで戻る(B)のです。ゆっくり下って急いで戻るため、陰性T波は「左右非対称」となります。そんな細かいこと言われても覚えられないという人!…「2が寝そべっている感じ」と覚えてください。ボクはこれに気づいて以来、「typical ventricular strain」と呼ばれるこの形状を二度と忘れなくなりました*3。*3:日本語・英語や教科書・論文を含めて、“傾いた2”でイメージするやり方は“世界初”と自分では思っています。しかしながら、実際の心電図では“ちょい上がり”せずに「水平型」ないしは「下行型」ST低下となるパターンを多く見かけます(亜型:atypical)。ですから、実際は「typical」か「atypical」か、そもそも「strain」という言葉まで誤解されがちなので使うのやめましょうという欧米諸学会のリコメンデーション4)に従っておくことをオススメします。ただ、「二次性ST-T変化」という味気ない表現にも多少の不満がないわけでもなく、この辺うまく立ち回ればいいでしょう。なお、実臨床ではこのように綺麗なストレイン型ばかりではなく、さまざまな「ST-T変化」が認められます。ですが、最低でも「ST低下」と「陰性T波」でなければ「LVH」を反映する変化としてとらえるのは控えるべきだと思います。“残りの付随条件も押さえておこう”「(左室)高電位」と「ST-T変化」は“MUST”に近い条件ですが、ほかの所見も拾えると診断精度が高まるでしょう。(5)の「左軸偏位」は肥大化した左室が右室を自分側に“引っ張っている”イメージです。ただし、「右室肥大」で高率に「右軸偏位」が認められるほど特異的ではありません(そのため1ポイントなのでしょう)。(6)は「心房拡大」のことで、「LVH」の影響を受けるのは当然“左房”です。浪費エステ基準ではV1誘導の後半成分に着目した「Morris index」だけが採用されていますが、ボクは「mitral P」と呼ばれるII誘導などで見られるワイドな“2コブ”(しかも前半<後半)の有無などにも注意するよう心がけています(図2はこれに該当)。注目すべきは「左房拡大」がほかの付随条件よりも“ワンランク上”の3ポイントな点で、血行動態を直接反映しているからだと認識し、これがYESだと「LVH」の可能性がグンとアップします。最後の(4)だけ少し複雑です。前述のように、エッセンスは電気シグナルが行き渡って興奮(脱分極)するのに時間がかかり、“前半もたつく”ため、結局QRS幅が“ややワイド”になるというものです。Romhilt&Estesの時代は今のようなコンピュータ心電計ではなかったため、当初「0.09秒」とされたカットオフ値は「0.10~0.11秒」がベターとされています4)。これも細かな値がどうかではなく、明らかにワイド(≧0.12秒)に近い“ワイド気味”だという認識で良く、その観点で心電図(図3)は本条件に合致します。そして最後の最後になりましたが、「前半」の“もたつき”を表す「intrinsicoid deflection」の部分です。意味としては、「心内膜側から心外膜側に興奮伝搬することで生じる初期成分(振れ)」のようなことらしいのですが、(ボクも含めて)常人の理解域を超えていますね(泣)。■Intrinsicoid deflectionとは?■QRS波の前半成分:はじまり(q/R波)から頂点(ピーク)までの時間※「R(-wave) peak time」や「ventricular activation time(VAT)」と同義。個人的には、学生時代に心電図を教えてくれた教官(第24回)が「ventricular activation time(VAT)」と強調しており、これないし「R(-wave) peak time」という別の表現のほうが望ましいとボクは思います。要はこれが「delayする」、つまり“もたつく”ってことですよね。なのに、あえて「intrinsicoid deflection」なんていうワードを使ったのぉ~と、ポイントシステムに感嘆しつつも恨めしく思います(笑)。QRS幅の条件を「0.10秒以上」と焼き直せば、前半成分はその“半分”として「0.05秒以上」ととらえて良いと思います。なぜに1ポイントずつ2つに分けたのか、先人に尋ねてみたいとも思います。今回の症例はたしかに“前半基準”には該当しませんね。“Dr.ヒロの考える現実的な対応”今回はLVHの心電図について扱いましたが、いかがだったでしょうか。現在の心電計にはRomhilt-Estes基準がそのまま使われているわけではありません。年齢や性別の考慮だけでなく、非常にたくさんの「左室高電位」基準も網羅されていると思って良いでしょう。これはコンピュータによる自動診断技術の向上に伴う“勝利”です。同じことをわれわれ人間がしようと思っても土台無理ですから、現実的な対応(私見)を述べてレクチャーを終えたいと思います。(図4)心電図によるLVHの診断との向き合い方画像を拡大する心電図による心形態診断には限界があるのは事実ですが、何でも心エコーで確認しようとする人には“哲学”を感じません(時に心電図をとる前にエコー検査している例を目にします)。何事も“順番”がありますし、心電図が“オマケ”として発してくれる情報を適切にキャッチし、コンピュータ技術の進歩に感謝しつつ“天の声”も聞くクセをつける―細かな数値や語呂合わせを丸暗記しなくとも、偉大なる先人の知恵を活かしてゆくのが現代のすぐれた医師(“できドク”)の診断スタイルだなぁと思っています。さぁ次の1枚から今回解説した内容に気をつけてみましょう。きっと“何か”が変わるはずですよ!Take-home Message「左室肥大」(LVH)の診断の肝は「左室高電位」と「ST-T変化」(代表的には「ストレイン型」)付随所見にも気を配って“総合的”な診断を心がけよ。自動診断結果にも(最後に)必ず目を通すべし。1)Romhilt DW, et al. Circulation. 1969;40:185-195.2)Romhilt DW, et al. Am Heart J. 1968;75:752-758.3)Kaplan LG, et al. Am J Med Sci. 1941;201:676–693.4)Hancock EW, et al. Circulation. 2009;119.[Epub ahead of print]【古都のこと~伏見桃山城】皆さんは、豊臣 秀吉のお城と言ったらどこを思い浮かべますか? おそらく多くの方は「大阪城」とお答えになるでしょう。もちろん、それで正解です。ただ、京都にもあり、ボクが今回ご紹介したいのは「伏見城」です。二条城と並んで京都で「~城」とくれば思い出されます。伏見城は秀吉・家康により計3度築城されています。もとは朝鮮出兵(文禄の役)あたりに建造された指月(しづき・しげつ)伏見城ですが、これは慶長伏見地震(1596年:文禄5年)により倒壊したとされています*1。その後、近くの木幡山にわずか数ヵ月の“突貫工事”で再築されたのが木幡山伏見城(豊臣期)です。秀吉亡き後は徳川家康も居したとされますが、ここも“天下分け目”の関ヶ原の戦いで落城します。天下を取った家康により伏見城は再建*2され、二条城への城郭集約に伴って1619年(元和5年)に廃城されるまでが木幡山伏見城(徳川期)と呼ばれています。この地には桃の木が植えられ、いつしか(伏見)桃山城とも呼ばれるようになりました。このようなリアル“scrap and build”の歴史を辿った城址付近は現在、伏見桃山城運動公園として整備され、「洛中洛外図」を参考に作られた模擬天守が建てられています。「コロナ騒動」が終わりを迎え、京都・伏見を訪れる際には、ぜひ一度“歴史”を感じながら見て欲しい―。伏見城はそんなシンボル*3だと思います。*1:長らく“幻の城”とされていたが、2009年に確実な遺構が発見され、その後も発掘調査が行われている。*2:築城技術に長けた藤堂高虎に普請奉行を命じ、天下普請として再建され、家康は同城にて征夷大将軍の宣下を受けた。*3:残念ながら、耐震構造上の問題から天守閣に上ることはできない。

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米国でC. difficile感染症の負担低減/NEJM

 米国の全国的なClostridioides difficile感染症と関連入院の負担は、2011年から2017年にかけて減少しており、これは主に医療関連感染(health care-associated infections)の低下によることが、米国疾病管理予防センター(CDC)のAlice Y. Guh氏ら新興感染症プログラム(EIP)Clostridioides difficile感染症作業部会の調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年4月2日号に掲載された。米国では、C. difficile感染症の予防への取り組みが、医療領域全般で拡大し続けているが、これらの取り組みがC. difficile感染症の全国的な負担を低減しているかは不明とされる。10州で、発生、再発、入院、院内死亡の負担を評価 研究グループは、米国におけるC. difficile感染症の抑制の全国的な進捗状況を評価するために、EIPのデータを用いて、2011年から2017年までのC. difficile感染症の負担と発生率の推定値および関連アウトカムの全国的な動向について検討した(米国CDCの助成による)。 C. difficile感染症のEIPでは、2017年、米国の10州35郡で1,200万人以上の調査を行い、このうち34郡が2011年以降の調査に参加した。 C. difficile感染症は、「1歳以上で、過去8週間に検査でC. difficile陽性がなく、便検体でC. difficileが陽性」と定義された。症例と国勢調査のサンプリングの重みを用いて、2011~17年の米国におけるC. difficile感染症の発生、初回再発、入院、院内死亡の負担を推定した。 医療関連感染は、医療施設で発症した症例、または最近の医療施設への入院に関連する症例と定義し、それ以外はすべて市中感染に分類した。動向分析では、負の二項分布による重み付け変量切片モデルとロジスティック回帰モデルを用いて、他検査より高い核酸増幅検査(NAAT)の感度を補正した。医療関連C. difficile感染症が年間6%低下、市中感染は変化なし NAATで診断されたC. difficile感染症の割合は、2011年の55%から2016年には84%まで増加し、2017年には83%に低下した。また、米国の10ヵ所のEIP施設におけるC. difficile感染症の症例数は、2011年が1万5,461件(10万人当たり140.92件、医療関連感染1万177件、市中感染5,284件)、2017年は1万5,512件(130.28件、7,973件、7,539件)であった。 NAAT使用の補正をしない全国的なC. difficile感染症の負担の推定値は、2011年が47万6,400件(95%信頼区間[CI]:41万9,900~53万2,900)で、これは10万人当たり154.9件(95%CI:136.5~173.3)であり、2017年は46万2,100件(42万8,600~49万5,600)で、10万人当たり143.6件(133.2~154.0)だった。 NAATの使用を考慮したC. difficile感染症の総負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-1~-6)変化し、2011年から2017年までに24%(6~36)減少した。このうち、医療関連C. difficile感染症は年間-6%(-4~-9)変化し、2011年から2017年までに36%(24~54)低下したのに対し、市中C. difficile感染症には変化が認められなかった(0%、-2~3)。 NAAT使用率を55%とすると、C. difficile感染症の初回再発と院内死亡の負担の補正後推定値には有意な変化はみられなかった。これに対し、C. difficile感染症による入院の負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-8~0)変化し、2011年から2017年までに24%(0~48)減少しており、医療関連感染の入院負担は年間-5%(-1~-9)変化したが、市中感染には有意な変化はなかった。 著者は、「CDCは、感染予防の実践や、医療領域全般における抗菌薬使用の改善に資する施策を進めている。また、1次予防におけるワクチン開発や腸内微生物叢などの革新的戦略の探索は、今後、C. difficile感染症の負担削減をもたらす可能性がある」としている。

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新型コロナウイルスで差別され自殺した男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第161回

新型コロナウイルスで差別され自殺した男性photoACより使用とても悲しい症例報告です。Mamun MA, et al.First COVID-19 suicide case in Bangladesh due to fear of COVID-19 and xenophobia: Possible suicide prevention strategies.Asian J Psychiatr. 2020 Apr; 51: 102073. 2020年3月25日に、バングラデシュの首都ダッカから、地元パラシュバリ郡ラムチャンドラプール村に戻った36歳の男性。彼は、地元に戻った後、発熱と感冒症状を訴えるようになりました。彼は、もしかすると自分が新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかと懸念し、周囲の村人たちも「あいつは新型コロナウイルスに感染した」と指摘するようになりました。そして、彼はどういう行動をとったのか。なんと、家の近くの木にロープで首を吊って自殺してしまったのです。感染した状態で、村人たちに迷惑をかけることがいたたまれなくなったためです。念のため、その後の剖検で、彼が新型コロナウイルスに感染しているか調べられました。しかし、驚くべきことに、彼は新型コロナウイルスに感染していなかったのです。そう、COVID-19ではなかったのに、あらぬ疑いをかけられて自殺に追い込まれてしまったのです。実は似たような症例がインドからも報告されています1)。50歳のインド人男性が、何らかのウイルス性疾患にかかったと診断されたものの、新型コロナウイルスによるものとは診断されていませんでした。彼は中国で強制収容される動画などを見ていたため、自分も間違いなくCOVID-19なのだろうと思い、自分に近づく人には石を投げるようになって病んでしまい、木で首を吊って自殺してしまいました。何ともやるせない2例の報告ですが、うーん、何でしょう。やはり情報リテラシー不足が問題だと思います。日本でもそうですが、パチンコに行っている大人がいる反面、公園で遊んでいる子供たちに自粛するよう叱咤する人がいたり、3密を避けることを至上目的に考えている人が、親子連れでスーパーを歩いている家族を非難したり、そういう極端に偏った考え方が増えている気がします。8割減っているのは、他者への思いやりではないのか。そんなことを思わずにはいられません。1)Goyal K, et al. Fear of COVID 2019: First suicidal case in India ! Asian J Psychiatr. 2020 Mar;49:101989. 

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TAVI後の出血リスク、抗凝固薬単独vs. 抗血小板薬併用/NEJM

 経口抗凝固薬内服中に経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を受ける患者において、術後1ヵ月または12ヵ月にわたる重篤な出血の発生率は、経口抗凝固薬+抗血小板薬(クロピドグレル)併用療法と比較し経口抗凝固薬単独療法のほうが低いことが示された。オランダ・St. Antonius HospitalのVincent J. Nijenhuis氏らが、欧州の17施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検並行群間比較試験「POPular TAVI試験」の2つのコホートのうち、コホートBの結果を報告した。TAVI後の抗凝固療法については、抗凝固薬の単独療法または抗血小板薬との併用療法の役割に関する検証がこれまで十分ではなかった。NEJM誌オンライン版2020年3月29日号掲載の報告。TAVI予定患者約300例で、術後の経口抗凝固薬単独と抗血小板薬併用を比較 研究グループは、2013年12月~2018年8月の期間に、TAVIを実施する予定で適切な適応症に対する経口抗凝固薬の投与を受けている患者326例を登録し、TAVI施行前にクロピドグレル非投与(経口抗凝固薬単独)群と、3ヵ月間のクロピドグレル投与(抗血小板薬併用)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、12ヵ月間の全出血および非手技関連出血の2つであった。BARC出血基準タイプ4の重篤な出血を手技関連出血と定義し、穿刺部位出血のほとんどは非手技関連出血として計算した。 副次評価項目は、12ヵ月時点での心血管死・非手技関連出血・脳卒中・心筋梗塞の複合(副次複合エンドポイント1)と、心血管死・虚血性脳卒中・心筋梗塞の複合(副次複合エンドポイント2)で、いずれも非劣性(マージン:7.5ポイント)と優越性を検定した。統計解析にはCox比例ハザードモデルおよびlog-rank検定を用い、修正intention-to-treat解析を行った。TAVI後は経口抗凝固薬単独のほうが重篤な出血の発生率が低い 12ヵ月間の全出血発生率は抗凝固薬単独群21.7%(34/157例)、抗血小板薬併用群34.6%(54/156例)(リスク比:0.63、95%信頼区間[CI]:0.43~0.90、p=0.01)で、多くの出血イベントはTAVIのアクセス部位で確認された。非手技関連出血はそれぞれ34例(21.7%)および53例(34.0%)に確認された(0.64、0.44~0.92、p=0.02)。ほとんどの出血は、最初の1ヵ月に発生し、軽度であった。 副次複合エンドポイント1のイベントは、抗凝固薬単独群49例(31.2%)、抗血小板薬併用群71例(45.5%)に確認された(群間差:-14.3ポイント、非劣性の95%CI:-25.0~-3.6、リスク比:0.69、優越性の95%CI:0.51~0.92)。副次複合エンドポイント2のイベントは、それぞれ21例(13.4%)、27例(17.3%)に確認された(群間差:-3.9ポイント、非劣性の95%CI:-11.9~4.0、リスク比:0.77、優越性の95%CI:0.46~1.31)。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、従来と異なり手技関連出血をBARC出血基準タイプ4と定義しており、穿刺部位出血の多くが重篤な出血から除外された可能性があることなどを挙げている。

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統合失調症や双極性障害患者における寛解後の睡眠と概日リズム障害~メタ解析

 統合失調症では、睡眠障害や概日リズム障害が一般的に認められるが、その特徴はよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのNicholas Meyer氏らは、寛解期統合失調症患者における睡眠概日変化の重症度や不均一性について比較検討を行った。また、これらのエピソードについて双極性障害患者との比較を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年3月10日号の報告。 統合失調症または双極性障害患者を対象としてアクチグラフィーパラメータを調査したケースコントロール研究をEMBASE、Medline、PsycINFOより検索した。患者群と対照群との標準化平均差および平均絶対差は、Hedges' gを用いて定量化し、変動性の差は、平均スケール変動係数比(CVR)を用いて定量化した。統合失調症と双極性障害の患者間のエフェクトサイズは、Wald検定を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・30研究(患者群:967例、対照群:803例)が抽出された。・統合失調症および双極性障害の両患者群において、対照群と比較し、統計学的に有意な差が認められたのは以下のとおりであった。 ●総睡眠時間の長さ:統合失調症(平均差:99.9分、95%信頼区間[CI]:66.8~133.1)、双極性障害(平均差:31.1分、95%CI:19.3~42.9) ●床に入っている時間:統合失調症(平均差:77.8分、95%CI:13.7~142.0)、双極性障害(平均差:50.3分、95%CI:20.3~80.3) ●睡眠潜時の長さ:統合失調症(平均差:16.5分、95%CI:6.1~27.0)、双極性障害(平均差:2.6分、95%CI:0.5~4.6) ●運動活動の減少:統合失調症(平均差:-0.86分、95%CI:-1.22~-0.51)、双極性障害(平均差:-0.75、95%CI:-1.20~-0.29)・統合失調症では、双極性障害と比較し、総睡眠時間、睡眠潜時、中途覚醒についてのエフェクトサイズが有意に大きかった。・CVRでは、両患者群ともに、総睡眠時間、床に入っている時間、相対振幅(relative amplitude)の有意な上昇が認められた。 著者らは「統合失調症および双極性障害患者では、総睡眠時間の延長だけでなく、睡眠の開始および継続の問題、運動活動の低下が認められた。これらの要因は、睡眠概日フェノタイプに関連している可能性があり、それらを対象とした横断的介入の開発が求められる」としている。

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肺がん1次治療、二ボルマブ・イピリムマブ併用への化学療法の限定追加療法、米国および EU で申請/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年4月8日、米国食品医薬品局(FDA)が、ファーストライン治療薬として、化学療法のサイクルを限定して追加した二ボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法の生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したと発表。 また、欧州医薬品庁(EMA)は、同適応に関して、化学療法を限定して追加した二ボルマブとイピリムマブの併用療法の承認申請を受理した。本申請の受理により、提出が完了し、EMAの中央審査が開始される。これは、日本において、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブが共同で行った、化学療法を限定して追加した二ボルマブとイピリムマブの併用療法の国内製造販売承認事項一部変更承認申請の提出に関する3月26日の発表に続くものである。 本申請は、第III相CheckMate-9LA試験の結果に基づいている。 CheckMate-9LA試験は、PD-L1発現レベルおよび腫瘍組織型にかかわらず、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のファーストライン治療薬として、二ボルマブ360mg(3週間間隔)とイピリムマブ1mg/kg(6週間間隔)に化学療法(2サイクル)を追加した併用療法を、化学療法(最大4サイクル後に、適格であればペメトレキセドによる維持療法を任意で施行)と比較した多施設共同無作為化非盲検第III相臨床試験。2019年10月、中間解析で、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成したことを発表していた。

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HFrEFへの経口sGC刺激薬、複合リスクを有意に低下/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が低下したハイリスクの心不全患者に対し、新しい経口可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬vericiguatの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全による入院の複合イベントリスクを有意に低下することが示された。カナダ・アルバータ大学のPaul W. Armstrong氏らが、5,050例を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年3月28日号で発表した。LVEFが低下し直近に入院または利尿薬静注を受ける心不全患者におけるvericiguatの有効性は明らかになっていなかった。NYHA心機能分類II~IV、LVEF 45%未満を対象に試験 研究グループは、NYHA心機能分類II~IVの慢性心不全でLVEF 45%未満の患者5,050例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、ガイドラインに基づく薬物治療に加え、一方にはvericiguat(目標用量1日1回10mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。 主要アウトカムは、心血管死または心不全による初回入院の複合とした。心血管死・心不全入院リスク、vericiguat群で0.90倍に 追跡期間中央値10.8ヵ月において、主要アウトカムの発生は、vericiguat群897/2,526例(35.5%)、プラセボ群972/2,524例(38.5%)だった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98、p=0.02)。 心不全による入院は、vericiguat群27.4%(691例)、プラセボ群29.6%(747例)であり(HR:0.90、95%CI:0.81~1.00)、心血管死はそれぞれ16.4%(414例)、17.5%(441例)で(同:0.93、0.81~1.06)、いずれも有意差はなかった。 一方、全死因死亡または心不全による入院の複合は、それぞれ37.9%(957例)、40.9%(1,032例)で、vericiguat群で低率だった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。 症候性の低血圧症が、vericiguat群9.1%、プラセボ群7.9%で(p=0.12)、また、失神がそれぞれ4.0%、3.5%で発生が報告された(p=0.30)。

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中国でのCOVID-19、第2波の潜在的可能性は/Lancet

 中国では2020年1月23日に全国的な新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)拡散防止措置を実施後、国内の主な感染地域における感染者の再生産数(1人の感染者が生産する2次感染者数、Rt)は1未満へと大幅に減少し維持されていたことを、中国・香港大学のKathy Leung氏らが報告した。しかしながら、ウイルス再生産数のリスクは高く、とくに海外から持ち込まれるリスクが高いとして、著者は「潜在的な第2波に備えてRtと致死率の厳格なモニタリングを行いつつ、健康と経済活動の最適なバランスを取ることが必要である」としている。Lancet誌オンライン版2020年4月8日号掲載の報告。感染症モデルで第2波の可能性を検証 COVID-19のアウトブレイクを招いた中心地の湖北省武漢市を除くと、中国本土における感染者数は2020年3月18日時点で1万3,415例であり、死者は120例と報告されている。1月23日からは、全国的に大規模な公衆衛生上の介入を実施してアウトブレイクの食い止めを図っており、研究グループは、武漢市以外の主要地域におけるCOVID-19の第1波の感染状況と疾患重症度の評価を行った。 具体的に北京、上海、深セン、温州およびCOVID-19感染確認者数が多い10の中国地方都市について、瞬間的Rtを推算した。また、北京、上海、深セン、温州と全31地域について致死率(cCFR)を推算した。 感染症モデル「SIR(susceptible-infectious-recovered)モデル」を用いて、流行第1波後の拡散防止措置緩和による、第2波の可能性を検証した。第2波後には再度の拡散防止措置が必要に 調査対象の全市・省において、1月23日に拡散防止措置が実施された後、Rtは大幅に減少し、その後は1未満に維持されていた。 cCFRは、湖北省で5.91%(95%信頼区間[CI]:5.73~6.09)だったのに対し、湖北省以外では0.98%(0.82~1.16)と、およそ5分の1にとどまっていた。 また、感染の流行が小規模な段階で介入を緩和すれば、指数関数的に感染者数は増えていく(Rt>1)と推算されたこと、再び積極的拡散防止措置を実施しなければ、緩和以前の状態に戻すことは困難になることが示されたという。

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重症COVID-19へのremdesivir、68%で臨床的改善か/NEJM

 抗ウイルス薬remdesivirを、重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者53例(日本からの症例9例を含む)に投与したところ、36例(68%)で臨床的改善がみられた。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのJonathan Grein氏らが、remdesivirの人道的使用によるコホート分析データを、NEJM誌オンライン版2020年4月10日号で発表した。<試験概要>・対象:COVID-19感染による重度急性呼吸器症状を呈する入院患者で、酸素飽和度≦ 94%もしくは酸素補充を受けている患者・治療概要: remdesivirの10日間投与(1日目に負荷投与量として200mg、その後 9 日間は100mgを1日1回静脈内投与)・観察期間:投与開始から28日間 本研究では、評価項目は事前に設定されていない。しかし分析の一環として、酸素補充の必要レベルの変更、退院、remdesivirの投与中止につながった有害事象(報告ベース)、死亡など、主要な臨床的事象の発生率を定量分析。本研究での臨床的改善を、WHOの「R&Dブループリント(戦略対策計画)」の推奨に従い、(1)退院、(2)入院や酸素補充の必要レベルなどで評価する6段階の評価基準でベースラインから2段階以上の改善の、少なくともどちらかを満たす場合と定義している。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月25日~3月7日に少なくとも1回remdesivirを投与された61例のうち、8例のデータが除外された(7例で治療後のデータがなく、1例は投与エラーのため)。・データが分析された53例のうち、22例が米国、22例がヨーロッパまたはカナダ、9例が日本の症例。年齢中央値は64歳(四分位範囲:48~71)、40例(75%)が男性であった。・remdesivir投与開始前の症状持続期間の中央値は12日間。ベースライン時に30例(57%)が人工呼吸器、4例(8%)が体外式膜型人工肺(ECMO)を使用していた。・40例(75%)で10日間のフルコースの投与が実施され、10例(19%)は 5~9日間、3例(6%)は5日未満であった。・追跡期間中央値は18日間。この間、36例(68%)で酸素補充の必要レベルが改善し、人工呼吸器使用者30例のうち17例(57%)が抜管した。・Kaplan-Meier分析の結果、観察期間中に認められた臨床的改善の累積出現率は84%(95%信頼区間[CI]:70~99)。臨床的改善がみられた症例の割合は、侵襲的換気療法実施例(非侵襲的換気療法実施例に対するハザード比[HR]:0.33、95%CI:0.16~0.68)、70歳以上で低かった(50歳未満に対するHR:0.29、95%CI:0.11~0.74)。・25例(47%)が退院し、7例(13%)が死亡。死亡リスクは、70歳以上(70歳未満に対するHR:11.34、95%CI:1.36~94.17)、ベースライン時の血清クレアチニン値が相対的に高い症例(mg/dL ごとのHR:1.91、95%CI:1.22~2.99)、侵襲的換気療法実施例(非侵襲的換気療法実施例に対するHR:2.78、95%CI:0.33~23.19)で高い傾向がみられた。・32例(60%)がフォローアップ中に有害事象を報告した。最も一般的な有害事象は、肝酵素値の上昇、下痢、発疹、腎障害、低血圧。12例(23%)で多臓器不全症候群、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧等の深刻な有害事象が発生し、これらはベースライン時に侵襲的換気を受けていた症例で報告された。・4例が治療途中で投与が中止され、その理由は既存の腎機能障害の悪化が1例、多臓器不全が1例、肝酵素値の上昇が2例(うち1例は斑状丘疹状皮疹発現)であった。 著者らは、コホートサイズの小ささ、フォローアップ期間の短さ、無作為化対照群がないこと等の本研究の限界に触れ、支持療法の種類や施設での治療プロトコル、入院のしきい値の違いなどが、結果に寄与している可能性を指摘。そのうえで、今回の分析からはremdesivirが重症Covid-19患者に臨床的利益をもたらす可能性が示唆されたとし、進行中の無作為化プラセボ対照試験の結果が待たれるとしている。(ケアネット 遊佐 なつみ)専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王

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うつ病の原因リスク遺伝子

 うつ病に関連するいくつかの遺伝的変異は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により特定されている。しかし、リスク遺伝子座において関連シグナルの要因となる原因変異を特定することは、依然として大きな課題となっている。中国・Jining Medical UniversityのXin Wang氏らは、うつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月15日号の報告。 Summary data-based Mendelian Randomization(SMR)とPsychiatric Genomics Consortium(PGC)のGWASサマリーおよび脳の発現定量的形質遺伝子座(expression quantitative trait loci:eQTL)データを用いて、その発現レベルとうつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。次に、うつ病の病因におけるリスク遺伝子の潜在的な役割を調査するため、差次的発現解析、メチル化QTL解析、認知ゲノム解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・SMR統合分析では、ニューロン成長レギュレータ1(NEGR1)遺伝子にあるSNP rs10789336が脳組織のRPL31P12の発現レベルに有意な影響を及ぼし、うつ病リスクに寄与することが確認された(p=0.00000196)。・SNP rs10789336は、以下の3つの近いDNAメチル化部位のメチル化レベルとの関連が認められた。 ●cg09256413(NEGR1):p=0.000000000172 ●cg11418303(プロスタグランジンE受容体3[PTGER3]):p=0.00000478 ●cg23032215(ZRANB2アンチセンスRNA2[ZRANB2-AS2]):p=0.000123・差次的発現解析では、NEGR1遺伝子が前頭前野でアップレギュレートされていることが示唆された(p=0.00514)。・認知ゲノム解析では、SNP rs10789336と関連が認められたのは、以下のとおりであった。 ●認知能力:p=0.000000000000000241 ●学歴:p=0.0000000000000175 ●一般的な認知機能:p=0.00000000000265 ●言語数値推論:p=0.00000000000136 著者らは「NEGR1のSNP rs10789336が、うつ病リスクに影響を及ぼす可能性があることが示唆された。うつ病の病因に対するNEGR1の役割については、さらなる調査が求められる」としている。

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第14回 治療編(1)薬物療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第14回 治療編(1)薬物療法今回は、治療編として薬物療法に焦点を当てて解説していきたいと思います。「痛み」の原因の分類で、炎症性疼痛があります。何らかの原因で炎症症状が発現し、それによって発痛物質が作り出されると、それが神経の痛み受容器を刺激する結果として、患者さんは痛みを訴えて受診されます。末梢性炎症性疼痛に対する治療薬として使用されるのが、NSAIDs、ステロイド性抗炎症薬です。アセトアミノフェンはNSAIDsとは異なる作用機序ではありますが、比較的よく用いられております。痛み治療第1段階の薬物療法3種まず、痛み治療の第1段階で頻繁に用いられているNSAIDsから説明しましょう。NSAIDs(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)1)作用機序アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)系の働きを抑制することで、プロスタグランジン(prostaglandin:PG)E2の生産を減少させ、抗炎症作用、血管収縮作用などにより鎮痛作用を示します。末梢性に効果を発揮するため、炎症や腫脹が見られる時に、とくに効果があります。2)投与上の注意COXには、全身の細胞に常在する構成型酵素のCOX-1と、炎症によって生じるサイトカインの刺激によって炎症性細胞に発現する誘導型酵素のCOX-2が存在します。COX-1由来のPGが胃粘膜の血流維持や粘液産生増加、腎血流維持に働いており、通常のNSAIDsを使用する場合には、COX-1阻害作用によって胃潰瘍や消化管出血、腎血流障害などを生じる可能性があります。一方、選択的COX-2阻害薬は、COX-2由来の血小板凝集阻止作用を有するプロスタサイクリン産生を減少させ、トロンボキサン(thromboxane:TX)A2の産生を維持するため、血圧上昇や動脈硬化、血栓形成を促進させる可能性があります。そのため、活動性の動脈硬化病変がある不安定狭心症、心筋梗塞、脳血管虚血症状を有する患者さんに投与する場合は、できるだけCOX-2阻害薬を避けることが望ましいです。以下、主なNSAIDsと投与量を示します(図)。画像を拡大するステロイド性抗炎症薬1)作用機序ステロイドはリポコルチンの生合成を促進して、ホスホリパーゼA2の作用を阻害するによって、最終的にCOX-2やサイトカインの生成を抑制し、鎮痛効果を発揮します。2)投与上の注意局所炎症、神経圧迫や神経損傷による急性疼痛に対しては有用ではありますが、慢性疼痛に対する効果の持続は限定されます。経口投与では、プレドニゾロン20~30mg/日で開始し、1週間程度で治療効果が得られなければ、漸次減量していきます。硬膜外腔投与にはデキサメタゾン2~8mg、関節内投与には同0.8~2mgを投与します。アセトアミノフェン1)作用機序NSAIDsとは異なり、中枢系プロスタノイドの抑制、内因性下行性疼痛抑制系の活性化、内因性オピオイドの増加などによる鎮痛機序が推測されています。本薬には末梢性消炎作用は存在しないために、炎症性疼痛に対してはNSAIDsの短期間投与が推奨されています。2)投与上の注意最近、安全性の高さから1日最大投与量が4,000mgと規定されました。しかしながら、最大量のアセトアミノフェンを長期投与する場合には、肝機能への影響が懸念されるため、経時的な肝機能のモニタリングに留意する必要があります。通常開始量は325~500mg を4時間ごと、500~1000mgを6時間ごとに最大量4,000mgとして投与します。高血圧や心筋梗塞、虚血性心疾患、脳卒中、などの心血管疾患系のリスクを有する患者さんで筋骨格系の痛み治療が必要になった場合には、アセトアミノフェンやアスピリンが薦められています。これらが無効な場合にはNSAIDsを考慮します。その際は、プロトンポンプインヒビターなど胃粘膜保護薬を消化管出血の予防に使用します。以上、痛み治療の第1段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べました。読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S152-1532)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S1543)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S167

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