サイト内検索|page:254

検索結果 合計:11849件 表示位置:5061 - 5080

5061.

コルヒチンで慢性冠疾患の心血管リスクが低下/NEJM

 慢性冠疾患患者においてコルヒチン0.5mg 1日1回投与は、プラセボと比較し、心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、オーストラリア・GenesisCare Western AustraliaのStefan M. Nidorf氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「LoDoCo2試験」で明らかとなった。コルヒチンの抗炎症作用が心筋梗塞患者の心血管イベントリスクを低下させることが、最近の研究で示唆されていたが、慢性冠疾患患者におけるエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年8月31日号掲載の報告。コルヒチン群とプラセボ群に慢性冠疾患患者約5,500例を無作為化 研究グループは2014年8月4日~2018年12月3日の間に、血管造影で冠疾患が確認され6ヵ月以上安定している35~82歳の慢性冠疾患患者5,522例を、コルヒチン(0.5mg 1日1回投与)群(2,762例)またはプラセボ群(2,760例)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要エンドポイントは、心血管死・突発性心筋梗塞・虚血性脳卒中・虚血による冠動脈血行再建の複合とした。主な副次エンドポイントは心血管死・突発性心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合であった。Cox比例ハザードモデルを使用しintention-to-treat解析を実施した。コルヒチン群で、心血管イベントの発生リスクが31%低下 合計5,522例の患者が無作為化を受け(コルヒチン群2,762例、プラセボ群2,760例)、追跡期間中央値は28.6ヵ月であった。 主要エンドポイントのイベント発生は、コルヒチン群187例(6.8%)、プラセボ群264例(9.6%)であった(発生率:2.5 vs.3.6件/100人年、ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.83、p<0.001)。主な副次エンドポイントのイベント発生は、コルヒチン群115例(4.2%)、プラセボ群157例(5.7%)であった(1.5 vs.2.1件/100人年、0.72、0.57~0.92、p=0.007)。 また、突発性心筋梗塞または虚血による冠動脈血行再建(複合)、心血管死または突発性心筋梗塞(複合)、虚血による冠動脈血行再建、および突発性心筋梗塞のいずれの発生率も、プラセボ群と比較してコルヒチン群で有意に低かった。一方、非心血管死の発生率は、コルヒチン群がプラセボ群より高かった(発生率:0.7 vs.0.5件/100人年、HR:1.51、95%CI:0.99~2.31)。 なお著者は、被験者の女性の割合が低いこと、血圧や脂質などのデータを収集しておらずリスク因子別の転帰が不明であること、炎症関連のデータを定期的に評価していないことなどを研究の限界として挙げている。

5062.

日本における若年性認知症の有病率とサブタイプ

 若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。 本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・ステップ1では、1万6,848施設(63.8%)より有効な回答が得られ、若年性認知症患者4,077例が特定された。・ステップ2では、施設から1,614例(39.6%)、患者から530例(13.0%)の詳細な情報が得られた。・日本における若年性認知症の有病率は、人口10万人当たり50.9人(95%信頼区間:43.9~57.9、年齢範囲:18~64歳)と推定された。・2018年時点での日本における若年性認知症の患者数は、3万5,700人と推定された。・認知症サブタイプの内訳は、以下のとおりであった。 ●アルツハイマー型認知症:52.6% ●血管性認知症:17.1% ●前頭側頭型認知症:9.4% ●頭部外傷による認知症:4.2% ●レビー小体型認知症・パーキンソン病による認知症:4.1% ●アルコール関連障害による認知症:2.8%・若年性認知症は、認知症疾患医療センターで最も頻繁に診断されていた。 著者らは「本研究で推定された若年性認知症の有病率は、以前の研究結果と同等であった。しかし、認知症サブタイプの内訳は異なっており、アルツハイマー型認知症が最も多い結果となった。認知症疾患医療センターは、若年性認知症患者に質の高い診断と診断後のサポートを提供することにより、主要な特別医療サービスとして機能し続けることが期待される」としている。

5063.

FGFR阻害薬pemigatinib、胆管がんに国内申請/インサイト

 インサイト・ジャパンは、2020年9月14日、FGFR阻害薬pemigatinibについて、FGFR2融合遺伝子陽性の局所進行または転移のある胆管がん患者の治療薬として、国内製造販売承認申請を提出したと発表した。pemigatinibは同適応症で、希少疾病用医薬品の指定も受けている。 pemigatinibは米国では、FGFR2融合遺伝子または遺伝子再構成が検出され、治療歴を有する、切除不能な局所進行または転移のある胆管がんの成人患者の治療薬として、FDAの製造販売承認を受け商品名Pemazyreとして販売されている。

5064.

ALS、フェニル酪酸ナトリウム+taurursodiolが機能低下を遅延/NEJM

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者へのフェニル酪酸ナトリウム+taurursodiol投与は、24週間の機能低下をプラセボよりも遅らせる可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のSabrina Paganoni氏らによる、ALS患者137例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。フェニル酪酸ナトリウムおよびtaurursodiol投与は、実験モデルでは神経細胞死を抑制することが示されていたが、ALS患者に対する2剤併用の有効性と安全性は明らかになっていなかった。今回の試験では、副次アウトカムについて2群間で有意差は認められず、結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性を評価するには、より長期かつ大規模な試験を行う必要がある」と述べている。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。 24週間のALSFRS-Rスコア低下率を比較 研究グループは2017年6月~2019年9月にかけて、米国25ヵ所の医療機関を通じ、ALSの確定診断を受けた発症後18ヵ月以内の患者を登録して試験を行った。 被験者を無作為に2対1の割合で無作為に割り付け、一方にはフェニル酪酸ナトリウム-taurursodiolを投与(フェニル酪酸ナトリウム3g+taurursodiol 1gを1日1回3週間、その後は1日2回)、もう一方の群にはプラセボを投与した。 主要アウトカムは、24週間の「筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版」(ALSFRS-R、0~48点でスコアが高いほど機能良好)の合計スコアの低下率だった。 副次アウトカムは、等尺性筋力・血漿中リン酸化軸索ニューロフィラメントHサブユニット濃度・静的肺活量それぞれの低下率と、死亡・気管切開・永続的人工呼吸器の使用までの期間、死亡・気管切開・永続的人工呼吸器の使用・入院までの期間だった。スコア低下幅、プラセボ群-1.66点/月に対し実薬群-1.24点/月 ALS患者177例について試験適格スクリーニングを行い、137例をフェニル酪酸ナトリウム-taurursodiol群(89例)またはプラセボ群(48例)に無作為に割り付けた。 修正intention-to-treat解析の結果、ALSFRS-Rスコアの平均変化率は、プラセボ群-1.66点/月に対し、実薬群-1.24点/月だった(群間差:0.42点/月、95%信頼区間:0.03~0.81、p=0.03)。 副次アウトカムについては、2群間で有意差は認められなかった。実薬による有害事象は、主に消化器系に関連したものだった。

5065.

本邦におけるレムデシビルの投与基準は妥当か?(解説:山口佳寿博氏)-1285

 レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)はエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)の原因病原体(マイナス1本鎖RNAウイルス)に対する治療薬として開発が進められてきた。レムデシビルは核酸類似体でRNA依存RNA合成酵素を阻害する。この薬物が、プラス1本鎖RNAウイルスである新型コロナにも効果が期待できる可能性があり、世界レベルで治験が施行されてきた。とくに、米国における期待度は高く、米国の新型コロナ感染症の第1例目にレムデシビルが投与され劇的な改善が得られたと報告された。それ以降、米国では科学的根拠が曖昧なまま“人道的(compassionate)”投与が繰り返された(Grein J, et al. N Engl J Med. 2020;382:2327-2336.)。しかしながら、中国・武漢で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(症状発現より12日以内の中等症以上の患者、237例)では、薬物投与群(レムデシビル10日投与)と対照群の間で有意差を認めた臨床指標は存在しなかった(Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)。本稿で述べる重症度分類は本邦厚労省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に準ずる。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスポンサーシップの下で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(本邦を含む世界9ヵ国が参加、中等症以上の患者、1,059例)の中途解析(731例)では、臨床症状/所見の回復が薬物投与群(レムデシビル10日投与)で対照群より4日短縮されることが示された(Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 May 22. [Epub ahead of print])。この結果を受け、米国FDAは5月1日にレムデシビルの重症例に対する緊急使用を承認した。本邦の厚労省も5月7日に呼吸不全を合併する中等症患者、機械呼吸/ECMOを必要とする重症患者(小児を含む)に対してレムデシビルの特例使用を許可した。投与期間に関しては、機械呼吸/ECMO導入例では最大10日間、それ以外の場合には5日間と規定された。 5月以降、レムデシビルの至適投与期間を決定するための治験が続行された。世界8ヵ国で施行されたレムデシビルの5日投与と10日投与のrandomized, open-label, phase 3 trial(中等症以上の患者、397例)で、臨床効果は両群で有意差がなく重篤な呼吸不全への進展を含む有害事象の発症は10日投与群で有意に高かった(Goldman JD, et al. N Engl J Med. 2020 May 27. [Epub ahead of print])。Spinnerら(Spinner CD , et al. JAMA. 2020 Aug 21. [Epub ahead of print])は、中等症入院患者(肺炎あり、しかし、室内気吸入時のSpO2>94%)を対象としたrandomized, open-label, phase 3 trial(596例)を施行し、試験開始11日目における臨床症状/所見の改善度は対照の標準治療群に較べ5日投与群で有意に勝ることを示した。一方、10日投与群と標準治療群の間では有意差を認めなかった。Goldman、Spinnerらの治験結果は、レムデシビルの10日投与の臨床的意義に疑問を投げかけるものであった。Spinnerらの治験結果ならびにNIAID治験の最終結果(1,062例、臨床症状/所見の回復はレムデシビル投与群で5日間短縮)を受け、米国FDAは、8月29日、レムデシビルの投与対象を修正した。新しいFDAの指針では、重症度と無関係に入院中の小児を含むすべての患者(感染確定例、疑い例)にレムデシビルを投与してよいと改定された。 本邦においては、9月4日、『新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第3版)』が厚労省より刊行されたが、レムデシビルの投与対象、投与期間は5月7日の特例承認の時とほぼ同じであった。第3版では、機械呼吸/ECMO導入なしの呼吸不全を伴う中等症において5日投与で臨床症状が改善しない場合は10日まで投与を延長できると記載されている。しかしながら、この投与期間の延長は、Goldman、Spinnerらの治験結果と矛盾するものであり再考が必要である。さらに、第3版では、肺の浸潤陰影が急速に増悪する場合(重症化)にはステロイドの投与と共にレムデシビルの使用を考慮すべきだと記載されている。このような状況は、ウイルスそのものに起因する一次性肺炎の増悪に加え生体の免疫過剰反応に惹起された二次的病変がより強く関与する病態と考えなければならず、ステロイドは正しい選択であるがレムデシビルに関してはどうであろうか? レムデシビルはRNA合成酵素阻害薬で抗ウイルス薬の1つと位置付けられる。それ故、レムデシビルは原則としてウイルス量が多い感染初期に投与されるべき薬物である。重症化した症例ではウイルス量は低下せず維持される場合があることが示唆されている(Lucas C, et al. Nature. 2020;584:463-469.)。しかしながら、このような時期に抗ウイルス薬の投与が病態を改善するか否かについては解明されておらず、今後の検討が必要な課題である。 Beigelらのデータにおいて注意すべき点は、レムデシビルの効果(回復までの時間)が白人(試験参加人数:全体の53%)においては確実に認められるが、黒人(21%)、日本人を含むアジア人(13%)では標準治療群との間に有意差を認めていないという事実である(Beigelらの図3、subgroup解析参照)。すなわち、Beigelらのデータは、試験への参加人数が多かった白人に引っ張られた結果であり、レムデシビルが日本人に有効であることを示しているわけではない。それ故、厚労省のレムデシビルに関する指針には確固たる根拠がなく、日本人を対象とした独自の治験でレムデシビルの効果を直接検証する必要がある。

5066.

脳画像データの機械学習を用いた統合失調症と自閉スペクトラム症の鑑別

 神経精神疾患の診断は、問診による臨床症状に基づいて行われるため、難しい部分がある。ニューロイメージングなどの客観的なバイオマーカーが求められており、機械学習と組み合わせることで確定診断の助けとなり、その信頼性を高めることが可能である。東京大学のWalid Yassin氏らは、統合失調症患者、自閉スペクトラム症(ASD)患者、健常対照者から得た磁気共鳴画像(MRI)の脳構造データを用いて機械学習を行い、鑑別診断のための機械学習器の開発を試みた。Translational Psychiatry誌2020年8月17日号の報告。 統合失調症患者64例、ASD患者36例、健常対照者106例から得た脳構造データを、FreeSurferを用いて解析した。6つの機械学習器を用いて対象の分類を行った。また、精神疾患ハイリスク患者26例、初回エピソード精神疾患患者17例の脳構造データを、開発した機械学習器に当てはめた。最後に、各疾患群の臨床症状の重症度によって評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・6つの機械学習器のすべてが、比較的よく機能していた。・とくに、サポートベクターマシーン(SVM)とロジスティック回帰(LR)の2つの機械学習器が、鑑別診断により有効であることが示唆された。・皮質厚と皮質下体積は、判別に最も有効であった。・LRおよびSVMは、ASDの臨床指標と非常に一致していた。・精神疾患ハイリスク患者群、初回エピソード精神疾患患者群の脳構造データは、大部分が統合失調症と分類され、ASDとしては分類されなかった。 著者らは「今回開発した機械学習器は、統合失調症の異なる臨床病期の脳構造データを当てはめると、統合失調症または健常対照と分類され、ASDと分類されることはなかった。そのため、本研究による機械学習器は、臨床現場で必要とされる、鑑別診断や治療予測などのマーカーとしての応用が期待される」としている。

5067.

米国Novavax社の新型コロナワクチン、第I相試験で安全性確認/NEJM

 開発中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のワクチン「NVX-CoV2373」は、接種後35日の時点で安全と考えられ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復期血清中のレベルを上回る免疫応答を誘導することが、米国・NovavaxのCheryl Keech氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。NVX-CoV2373は、三量体完全長(すなわち膜貫通ドメインを含む)のスパイク糖蛋白から成る遺伝子組み換えSARS-CoV-2(rSARS-CoV-2)ナノ粒子ワクチンと、Matrix-M1アジュバントを含有する。動物モデルでは、SARS-CoV-2に対する防御効果が確認されている。なお、Novavaxは本ワクチンの日本国内での開発、製造、流通について、武田薬品と提携している。プラセボ対照無作為化第I/II相試験の第I相の結果 研究グループは、rSARS-CoV-2ワクチン(NVX-CoV2373、開発元:Novavax)の安全性と免疫原性を評価する目的で、プラセボ対照無作為化第I/II相試験を進めている(感染症流行対策イノベーション連合[CEPI]の助成による)。この試験は2020年5月26日に開始され、今回は、オーストラリアの2施設が参加した第I相試験の結果(接種後35日の解析)が報告された。 対象は、18~60歳未満の健康な成人131例であった。第I相では、21日の間隔を空けて2回、ワクチンが筋肉内注射された。ワクチン用量は5μgまたは25μg、Matrix-M1アジュバント(50μg)は添加と非添加に分けられ、7つの群が設定された。 主要アウトカムは、反応原性(接種部位:疼痛、圧痛、紅斑、腫脹、全身性:発熱、悪心・嘔吐、頭痛、疲労感、不快感、筋肉痛、関節痛)、米国食品医薬品局(FDA)の毒性スコアに基づく安全性評価の検査値(血液生化学、血液学)、抗スパイクタンパク質IgG抗体反応(酵素免疫測定法[ELISA]単位)とした。副次アウトカムには、自発的に報告された有害事象、野生型ウイルスの中和(マイクロ中和抗体測定)、T細胞反応(サイトカイン染色)などが含まれた。 免疫原性(IgG抗体およびマイクロ中和抗体)の結果は、多くが有症状のCOVID-19患者から採取した回復期血清サンプルと比較された。初回接種から35日の時点で、初回解析が行われた。反応原性はなし~軽度で、2回の接種とも2日以内に消退 131例の参加者のうち、83例がワクチン+アジュバント、25例がワクチンのみ、23例はプラセボを接種する群に割り付けられた。7つの群の平均年齢の範囲は23.7~35.6歳、女性の割合は32.0~65.4%であった。 全体で、重篤な有害事象は認められず、ワクチン接種中止規則は実行されなかった。反応原性は、ほとんどの参加者がなしあるいは軽度であり、アジュバント投与例で頻度が高い傾向がみられたが、反応原性が原因で2回目の接種が中止あるいは延期されることはなかった。 1例に、2回目の接種後1日のみの発熱(38.1度)が認められた。2回目の接種後に7日を超える有害事象はみられなかった。また、反応原性イベントの平均持続期間は、初回および2回目の接種後とも2日以内だった。 Grade2以上の検査値異常は13例(10%)で認められ、初回接種後が9例、2回目接種後は4例であった。検査値異常が臨床症状と関連することはなく、再接種による増悪もみられなかった。 自発的に報告された有害事象は、ほとんどが軽度で、アジュバント投与の有無で差はなく、重度の有害事象はみられなかった。 アジュバントを投与した場合、ワクチン用量5μgと25μgとで免疫応答はほぼ同等であり、アジュバント添加による用量節減効果が示された。また、アジュバント添加により1型ヘルパーT細胞(Th1)反応が誘導された。 2回のワクチン用量5μg+アジュバント添加レジメンの抗スパイクタンパク質IgG抗体の幾何平均値(63,160 ELISA単位)および中和抗体反応の幾何平均値(3,906)は、ほとんどが有症状のCOVID-19患者における回復期血清(抗スパイクタンパク質IgG抗体幾何平均値:8,344 ELISA単位、中和抗体反応幾何平均値:983)を上回っていた。 著者は、「これらの結果により、アジュバント添加遺伝子組み換え完全長スパイクタンパク質ナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373は、有効性試験での評価を要する有望な候補であることが示された。35日目の安全性の初回解析の結果に基づき、第II相試験が開始されており、第III相試験も準備段階にある」としている。

5068.

バリシチニブ、中等~重症アトピー性皮膚炎への単剤有効性・安全性を確認

 経口JAK1/2阻害薬は、COVID-19重症患者のサイトカインストーム治療に有用と報告されている。その1つ、経口JAK1/2阻害薬バリシチニブは、わが国を含め70ヵ国で関節リウマチの治療薬として承認されているが、外用コルチコステロイド薬で効果不十分な中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)への同薬剤の有効性と安全性を検討した、米国・オレゴン健康科学大学のE. L. Simpson氏らによる、2件の第III相試験の結果が報告された。投与16週以内で臨床徴候と症状の改善が認められ、かゆみが速やかに軽減、安全性プロファイルは既知の所見と一致しており、新たな懸念は認められなかったという。これまで第II相試験において、バリシチニブと外用コルチコステロイド薬の併用が、ADの重症度を軽減することが示されていた。British Journal of Dermatology誌2020年8月号掲載の報告。 外用コルチコステロイド薬で効果不十分な中等症~重症AD患者に対する、バリシチニブの有効性と安全性の評価は、2件の多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較プラセボ対照試験「BREEZE-AD1試験(2017年11月~2019年1月)」「BREEZE-AD2試験(2017年11月~2018年12月)」で検討された。 試験は欧州、アジア、中南米、オーストラリアの173施設で実施。中等症~重症AD成人患者を4群(1日1回のプラセボ、バリシチニブ1mg/2mg/4mg)に、2対1対1対1の割合で無作為に割り付けた(地域、ベースラインの疾患重症度による層別化も施行)。 有効性の主要エンドポイントは、バリシチニブ4mgまたは2mgのプラセボに対する優越性で、ベースラインから16週目にValidated Investigator's Global Assessment(vIGA)-ADスコアが2ポイント以上改善し、0(改善)または1(ほとんど改善)を達成した患者の割合で評価した。vIGA-ADは5段階評価(0[改善]~4[重症])で、医師の全体的な疾患重症度の印象で評価する。 主な結果は以下のとおり。・BREEZE-AD1試験(AD1)には624例、BREEZE-AD2試験(AD2)には615例が登録された。ベースラインの被験者特性は、割付治療群間で類似していた(平均年齢:AD1:35~37歳、AD2:33~36歳、女性の割合:33.3~40.6%、33.3~47.2%など)。ベースラインのvIGA-ADスコア4の被験者割合は、AD1が40%、AD2が50%だったが、EASIおよびSCORADスコアは同等であった。4mg群とプラセボ群は試験中断率が低く、試験完遂率はAD1が86.9%、AD2が88.0%だった(これらの被験者は、長期追跡の延長試験BREEZE-AD3試験に組み込まれている)。・16週時点で2試験ともに、4mg群と2mg群がプラセボ群と比べて、主要エンドポイントを達成した患者割合が有意に高率であった。・AD1では、プラセボ群4.8%に対し、バリシチニブ4mg群16.8%(プラセボ比較とのp<0.001)、2mg群11.4%(p<0.05)、1mg群11.8%(p<0.05)。AD2では、プラセボ群4.5%に対し、バリシチニブ4mg群13.8%(p=0.001)、2mg群10.6%(p<0.05)、1mg群8.8%(p=0.085)であった。・かゆみの改善は、4mg群は1週目から、2mg群は2週目からと、早期に達成された。・夜間覚醒、皮膚の疼痛、QOLの改善は、4mgと2mgの両方で1週目に観察された(すべての比較のp≦0.05)。・バリシチニブ投与群で最も頻度の高かった有害事象は、鼻咽頭炎、頭痛であった。・すべての用量のバリシチニブ投与群で、心血管イベント、静脈血栓塞栓症、消化管穿孔、重大な血液学的変化、死亡は観察されなかった。

5069.

流行性耳下腺炎(ムンプス)【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第3回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)ムンプスもしくは流行性耳下腺炎は、ワクチンで予防できる疾患Vaccine Preventable Diseaseの代表疾患である。1)ムンプスの概要感染経路:飛沫感染潜伏期:12~24日周囲に感染させうる期間:耳下腺腫脹の7日前から発症後9日頃まで感染力(R0:基本再生産数):11~14注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。感染症法:5類感染症(小児科指定医療機関による定点観測、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種感染症(耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで)2)ムンプスの臨床症状(表)ムンプスは、多彩な経過や合併症に特徴がある1)。ムンプスは主に唾液による飛沫によりヒト-ヒト感染を起こす。感染から発症までの潜伏期間は典型例で17~18日と非常に長いうえ、発症する6日前から唾液や尿中にウイルスが排泄され感染性がある。さらに、感染しても平均30%は不顕性感染で終わる。不顕性感染は低年齢者に多く,年齢があがるほど症状が現れやすく腫脹も長期化する傾向にある。ただし,無症状でも唾液中のウイルスには感染性がある。耳下腺の腫脹は最も有名かつ高頻度の症状で,発症者のうち90~95%に出現するとされる。しかし、前述の通り感染者全体では70%前後にすぎず、腫脹も両側とは限らない。ここで重要な点として,耳下腺や顎下腺の腫脹は他のウイルス感染症でも起こるため、発熱と耳下腺腫脹だけでムンプスとは確定診断できない。したがって「熱と耳下腺腫脹があった」だけではムンプス罹患といえず、ワクチン不要と判断すべきでない。耳下腺腫脹に続いて多い症状は、思春期以降の男性に起こる睾丸炎で、感染者の1/3に起こるほど多い。片側性の腫脹が多く、睾丸が萎縮し精子数も減少するが、完全な不妊に至ることはまれとされる。女性では感染者の5%に卵巣炎が起こるが,不妊との関連はいまだ証明されていない。このほか無菌性髄膜炎から脳炎、乳腺炎、膵炎といった症状も知られている。無症候の髄液細胞数増多は感染者の50%に認められるとの報告もある。このようにムンプスは潜伏期間が長く、無症候性感染が多いうえ、発症前からウイルスを排泄する。つまり、発症者や接触者を隔離しても伝搬は防げない。表 自然感染の症状とワクチンの合併症1)画像を拡大する3)ムンプスの疫学4~5年おきに大きな流行があり、年間報告数は4~17万例で推移している。ここ数年では、2016年に比較的大きな流行が確認されており、2020年の再流行が懸念されていた(図1)。合併症として問題になる難聴について日本耳鼻咽喉科学会が実施した調査によると2)、上記2年間の流行中に少なくとも335例がムンプス難聴と診断されていた。調査デザインの限界から考えると、症例はもっと多いことが推定される。図1 ムンプスウイルス診断名別分離・検出報告数の推移(2000年1月~2019年9月)画像を拡大するワクチン概要単味の生ワクチンであり、年齢を問わず0.5mLを皮下注する。正確には、ワクチンキットに付属している溶解液0.7mLをバイアル瓶に注入したうち0.5mLを吸い出して接種する。ワクチンで一般にみられるアレルギー反応、接種部位の腫脹、短時間の発熱、といった副反応のほかに特異的なものはない。弱毒化した病原性ウイルスそのものを接種する生ワクチンであり、妊娠中の女性には接種は禁忌である。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避けるべきである。同様にステロイドを含む免疫抑制薬を投与中、もしくは免疫抑制状態にある患者も接種禁忌である。現時点では任意接種に位置付けられており、自治体などの補助がなければ接種費用は自己負担となる。なお、先進国の中で日本だけが定期接種化されていない(図2)。図2 世界のムンプスワクチンの接種状況画像を拡大する(From data reported to WHO by 193 WHO Member States as of February 2015より引用)国内では、鳥居株を用いたタケダと星野株を用いた第一三共の2製品が流通している。両者とも無菌性髄膜炎の発生頻度は同様(鳥居株が1/1,600、星野株が1/2,300)。国際的に広く流通しているJeryl-Lynn株は、国産品に比べて免疫獲得能がやや低い一方で無菌性髄膜炎の発症は少ない。接種スケジュール「1ヵ月以上の間隔で2回以上の接種」が原則となる。添付文書では生後24ヵ月~60ヵ月の間に接種することが望ましいとされているが、妊娠中などの禁忌がなければ成人でも接種可能である(図3)。画像を拡大するその他の注意事項は以下の通りである。他の生ワクチン接種:27日以上空ける(4週目の同じ曜日から接種可能)不活化ワクチン接種:6日以上空ける(翌週の同じ曜日から接種可能)輸血およびガンマグロブリン製剤の投与:投与3ヵ月以降に接種ガンマグロブリンを200mg/kg以上の大量投与:投与6ヵ月以降に接種ワクチン接種後14日以内にガンマグロブリン製剤投与:投与後3ヵ月以降に再接種ステロイドや免疫抑制剤:投与中止後6ヵ月以降に接種罹患歴については前述の通り、医療機関でムンプスウイルス感染を証明された場合のみ意義ありとして、臨床症状のみで罹患歴としないことが望ましい。ムンプス成分を3回以上接種しても医学的には問題はない。Jeryl-Lynn株ワクチンを採用している先進国によってはむしろ、10年程度で抗体価が低下することによる“Secondary vaccine failure”への対策として追加接種を検討している。また、ウイルス曝露の早期にワクチン接種することで発症を予防する曝露後緊急接種について、麻疹や水痘では有効性が確認されているが、ムンプスワクチンでは無効と考えられてきた。しかし、2017年に“The New England Journal of Medicine”で一定の効果が報告されるなど3)、近年ムンプスワクチンの接種戦略は世界的に見直しが検討されつつある。ただし、この研究で用いられたのはJeryl-Lynn株を含むMMRワクチンであり、日本製品とは素性が異なる。また、日本のムンプスワクチンには曝露後接種の適応はない。日常診療で役立つ接種ポイント(例.ワクチンの説明方法や、接種時の工夫)外来などでは、おおむね以下の点について説明することが望ましい。「いわゆる『おたふく風邪』を予防するワクチンです。1回接種の予防効果は75~80%で、確実な予防のために2回接種しましょう」「『おたふく風邪』で死亡することはまれですが、多様な合併症が起きます。特に難聴は、年間300人前後も発症している可能性があるうえ、もし発症すると回復不能です」「感染から発症まで2週間以上と長いことや、感染しても1/3は無症状のままウイルスを広げている、といった特性から発症者の隔離は意味がなく、確実な予防法はワクチンだけです」「接種間隔を伸ばすメリットはないので、幼稚園などの集団生活を始める前に2回接種を済ませましょう」「海外へ移住する方は、お子さんだけでなく大人も接種を検討しましょう。幼少時に耳下腺が腫れた、というだけではムンプスとは限りませんし、追加接種しても問題ありません」今後の課題・展望ワクチンギャップ解消の機運を受け、厚生労働省の厚生科学審議会は2012年に「広く接種を促進することが望ましい」と7つのワクチンを提示した4)。これら7つのうち、2020年現在いまだに定期接種化を果たしていないのはムンプスだけになった。これには、1989年のMMR統一株ワクチンによる無菌性髄膜炎が大きく影響している。それまで積極的だったワクチン行政を決定的に転回させ、日本にワクチンギャップが生まれる遠因ともなった渦中のムンプスワクチンが、その影響を最後まで受けているともいえる。しかし、そもそも自然感染に比べれば現行ワクチンでも無菌性髄膜炎の発症率は1/20以下であるし、さらに1歳前後で早期接種すると無菌性髄膜炎の発生率が減ることが明らかになってきた。そして、現在、無菌性髄膜炎の発生率は、MMR統一株ワクチン当時の1/10にまで減っている。ムンプスワクチン定期接種化のメリットは感覚的にも明らかだが、医療経済学的な試算でも有効性は示されており5)、学術団体からも繰り返し要望が出ている。しかしながら、無菌性髄膜炎が減ったことでワクチン接種の効果を自然感染と比較する調査のハードルは高くなっており、承認申請のために治験を通過する必要がある輸入ワクチンの導入やワクチン株の新規開発を一層難しくなっている。一方、諸外国では、Jeryl-Lynn株ワクチン2回接種後の感染が問題となっており、不活化ワクチンの新規開発や曝露後接種の検討なども始まっており、日本と世界の現状は乖離しつつある。2020年1月の厚生科学審議会の評価小委員会では、ムンプスワクチンについて審議が行われたが、明確な方針決定には至らなかった6)。 参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト1)おたふくかぜワクチンに関するファクトシート2)2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査3)Cardemil CV, et al. N Engl J Med. 2017;377:947-956.4)予防接種制度の見直しについて(第二次提言)5)大日康史、他. ムンプスの疾病負担と定期接種化の費用対効果分析.厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)「水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究(研究代表者:岡部信彦)」、平成15年度から平成17年度総合研究報告書.p144-154:2006.6)厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会)第37回講師紹介

5070.

第25回 脳の“女性”が雄の性欲の原動力~バイアグラ発売時の熱狂を雄弁に語る映画

男性ホルモン・テストステロンを女性ホルモン・エストロゲン(エストラジオール)に変える酵素・アロマターゼを発現している脳領域が雄マウスの性欲を支える原動力の一翼を担うと分かりました1,2)。脳に限ってアロマターゼを発現しない雄マウス(脳アロマターゼ欠損雄マウス)を調べたノースウエスタン大学の今回の成果はテストステロンが性欲を増進させる仕組みを初めて明らかにしました。雄マウスは雌マウスと一緒にいると正常であれば雌マウスを追いかけて交尾を試みます。しかし脳アロマターゼ欠損雄マウスは性活動に熱心ではなく、血中のテストステロン濃度が充分にもかかわらず正常マウスの半分しか性活動に取り組みませんでした。交尾の頻度は低下し、著者曰く性に“無関心”になっていました。脳アロマターゼ欠損雄マウスを去勢してテストステロンを投与しても性行動の完全な回復は認められませんでした。一方テストステロンとエストラジオールの両方を投与すると性活動が完全に回復し、脳のアロマターゼがテストステロンを発端とする雄の完全な性活動に必要なことが裏付けられました。今回の結果によると病的な性欲衝動を抑えるのに既存のアロマターゼ阻害剤が有効かもしれません。しかし骨粗鬆症などの副作用の心配があります。脳のアロマターゼ遺伝子プロモーター領域のみ抑制する薬が将来的に開発できれば既存のアロマターゼ阻害剤につきものの副作用を引き起こすことなく目当ての効果を引き出すことができそうです。また、逆にアロマターゼ活性を上げる治療は性欲減退に有効かもしれません。性欲減退はよくあることであり、うつ病を治療する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの広く使われている薬剤で生じることもあります。そのような性欲減退に対してアロマターゼ活性を底上げする性欲増進治療が可能かもしれないと今回の研究を率いたSerdar Bulun氏は言っています。男性の性機能改善薬の先駆けバイアグラ発売時の熱狂ぶりがわかる映画ところで男性の性活動を助ける薬といえばおよそ20年前の1998年に米国FDAに承認されたPfizer(ファイザー)のバイアグラ(Viagra)3)が先駆けです。実話に基づく2011年の映画「ラブ&ドラッグ」ではバイアグラの米国での発売時の熱狂ぶりを垣間見ることができます4)。物語はバイアグラのセールスマンと若くしてパーキンソン病を患う女性を中心に進み、アン・ハサウェイが演じる女性・マギーはパーキンソン病患者やその家族の困難や希望を映し出します。性的な描写があるR15+指定(15歳以上鑑賞可)の映画で一緒に見る相手を選びますし好みが分かれると思いますが、美男美女2人の恋愛成就までの道のりを通じてバイアグラ発売の頃のアメリカの医療の実際を伺い知ることができる作品となっています。参考1)Site of male sexual desire uncovered in brain / Eurekalert2)Brooks DC,et al. Endocrinology. 2020 Oct 01;161.3)VIAGRA PRESCRIBING INFORMATION4)「ラブ&ドラック」公式ホームページ

5071.

初回SSRI治療に奏効しない場合の抗うつ薬切り替えへの期待~STAR*D研究

 初回のSSRI治療で奏効しない場合、その多くの臨床試験で抗うつ薬の切り替えが行われる。第2選択治療による治療反応や寛解が、いつ、どのような患者に、どれくらい発生するのか、またどれくらいの試験期間を要するかはよくわかっていない。この問題を解決するため、デューク・シンガポール国立大学のA John Rush氏らが検討を行った。多くの治療法が承認されていることから、エビデンスに基づく適切な治療の定義が求められていた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2020年8月11日号の報告。 STAR*D研究(2001年7月~2006年9月実施)でのcitalopram治療後、16項目の簡易うつ症状自己評価尺度(QIDS-SR16)のスコアが11以上の患者を、徐放性bupropion、セルトラリン、徐放性ベンラファキシンによる治療のいずれかにランダムに割り付け、最大14週間治療を行った。治療反応、寛解、効果不十分の判定には、QIDS-SR16スコアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者438例のうち約80%が、切り替え後6週間以上の治療を完了した。・すべての治療で、同等のアウトカムが認められた。・寛解した患者の割合は21%(91例)、寛解はしなかったが治療反応が認められた患者の割合は9%(40例)、効果不十分であった患者の割合は58%(255例)であった。・治療反応が認められた患者の半数と寛解した患者の3分の2は、治療後6週間以降に効果が発現した。・治療反応が認められた患者の33%(43例)は、治療後9週間以降に効果が発現した。・治療反応または寛解の早さとベースライン時の評価との関連は認められなかった。・治療反応や寛解を早期に予測するトリアージポイントは明らかにならなかったが、第2週あたりのQIDS-SR16スコアがベースラインから20%以上減少した患者は、減少しなかった患者と比較し、治療反応率または寛解率が6倍高かった。 著者らは「初回SSRI治療に奏効しなかった患者に対する他のモノアミン作動性抗うつ薬への切り替えは、寛解率が約20%であり、半分以上の患者で効果不十分であった。第2選択治療による治療反応を評価するためには、試験期間が12週間は必要であると考えられる」としている。

5072.

ICUでの重症COVID-19、ヒドロコルチゾンは有効か/JAMA

 集中治療室(ICU)での重症COVID-19患者の治療において、ヒドロコルチゾンの使用は、これを使用しない場合に比べ、呼吸器系および循環器系の臓器補助を要さない日数を増加させる可能性が高いものの、統計学的な優越性の基準は満たさなかったとの研究結果が、米国・ピッツバーグ大学のDerek C. Angus氏らの検討「REMAP-CAP試験」によって示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。コルチコステロイドは、実臨床でCOVID-19患者にさまざまな方法で投与されており、観察研究では有益性と有害性の双方が報告されている。この不確実性を軽減するために、いくつかの研究グループが無作為化臨床試験を開始しているという。8ヵ国121施設が参加した進行中の無作為化試験 本研究は、アダプティブプラットフォーム臨床試験と実臨床のポイントオブケア臨床試験の特徴を併せ持つ進行中の非盲検無作為化試験であり、重症肺炎患者における最良の治療戦略の検証を目的に開始された(Platform for European Preparedness Against[Re-]emerging Epidemics[PREPARE]consortiumなどの助成による)。アダプティブプラットフォームでは、複数の治療ドメイン(たとえば抗菌薬、コルチコステロイド、免疫グロブリンなど)で複数の介入の効果の評価が可能である。 2020年3月9日~6月17日の期間に、8ヵ国121施設で、呼吸器系または循環器系の臓器補助のためにICUに入室した成人重症COVID-19の疑い例と確定例が登録された(614例)。このうち403例がコルチコステロイドによる治療ドメインに含まれ、非盲検下に介入が行われた。フォローアップは、2020年8月12日に終了した。 コルチコステロイド治療ドメインの患者は、次の3つの群のいずれかに無作為に割付けられた。参加施設の担当医は、事前に、3つのうち2つ以上の治療群を選択した。(1)固定用量ヒドロコルチゾンの7日間静脈内投与(50mgまたは100mg、6時間ごと)、(2)ショック時ヒドロコルチゾン静脈内投与(臨床的にショックが明白な場合にのみ、50mgを6時間ごと)、(3)ヒドロコルチゾン非投与。 主要エンドポイントは、21日以内の非臓器補助日数(患者が生存し、ICUで呼吸器系または循環器系の臓器補助を行わない日数)であり、患者が死亡した場合は-1日とした。呼吸補助は、侵襲的・非侵襲的機械換気または高流量式鼻カニュラで、循環補助は、昇圧薬または強心薬の静脈内注入とした。解析には、ベイジアン累積ロジスティックモデルを用いた。優越性は、オッズ比(OR)>1(非臓器補助日数が非投与に比べて多い)の事後確率(優越性確率の閾値は>99%)と定義した。 本研究は、他の試験(RECOVERY試験)の結果を受けて、2020年6月17日、運営委員会により患者登録の早期中止が決定された。非投与群より非補助日数が優れる確率は93%と80% 403例のうち同意を撤回した19例を除く384例(平均年齢60歳、女性29%)が登録され、固定用量群に137例、ショック時投与群に146例、非投与群に101例が割り付けられた。379例(99%)が試験を完遂し、解析に含まれた。 3群の平均年齢の幅は59.5~60.4歳、男性が70.6~71.5%と多くを占め、平均BMIは29.7~30.9、機械的換気施行例は50.0~63.5%であった。ベースラインで全例が呼吸補助または循環補助を受けていた。 非臓器補助日数中央値は、固定用量群が0日(IQR:-1~15)、ショック時投与群が0日(-1~13)、非投与群が0日(-1~11)であった。院内死亡率はそれぞれ30%、26%、33%で、生存例の非臓器補助日数中央値は、11.5日(0~17)、9.5日(0~16)、6日(0~12)だった。 非投与群と比較した固定用量群の補正後OR中央値は1.43(95%信用区間[CrI]:0.91~2.27)、ベイズ解析による優越性確率(bayesian probability of superiority)は93%であり、ショック時投与群はそれぞれ1.22(0.76~1.94)および80%であった。 重篤な有害事象は、固定用量群4例(3%)、ショック時投与群5例(3%)、非投与群1例(1%)に認められた。 著者は、「これらの知見は、重症COVID-19患者の治療におけるヒドロコルチゾン投与の有益性を示唆するが、本試験は早期中止となり、どの治療戦略も事前に規定された統計学的な優越性の基準を満たしておらず、確定的な結論には至っていない」としている。

5073.

第17回 治療編(1)薬物療法・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第17回 治療編(1)薬物療法・その4前回侵害受容性疼痛に対し、わが国で非麻薬系オピオイドとして使用されているトラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説しました。今回は、さらに痛みの程度が強い患者さんに使用する麻薬系オピオイドのコデイン、モルヒネ、フェンタニルについて説明したいと思います。(1)コデイン<作用機序>コデインは、投与量の5~15%が肝臓で代謝されることで、CYP2D6により産出されるモルヒネとなり、鎮痛効果が得られます。産出されたモルヒネがオピオイド受容体と結合することで、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>モルヒネと同様に考えて使用します。コデインリン酸塩散には1%、10%、原末があります。また、コデインリン酸塩錠には5mg、20mgがあります。通常は、1回20mg錠を1日3回投与します。ただし、モルヒネ換算には幅があり、鎮痛作用を目的にする場合には、鎮咳目的の場合と異ってかなりの量が必要になります。1%散として使用する場合には、1回2g、1日3回6gの投与になりますので、漢方薬並みの用量となります。通常は麻薬扱いですが、 内容量が少ない1%散、5mg錠は、投与量と関係なく非麻薬扱いになります。副作用として、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。(2)モルヒネ<作用機序>オピオイドの基本薬です。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>次の項に示した合成麻薬フェンタニルの基本薬物になります。錠剤は10mgですが、いきなり10mg錠剤ではなく、末として3mg、5mg、8mgと段階的に体が慣れてくるたびに増量していきます。もちろん、途中で疼痛が緩和されれば、その投与量で維持していきます。また、1日の投与量が15mgに達すれば、フェンタニル貼付剤の適応(文末の表を参照)になります。(3)フェンタニル貼付剤<作用機序>モルヒネと同様、強オピオイドに分類されます。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>フェンタニル貼付剤には、3日用の「デュロテップMTパッチ」、1日用の「フェントスパッチ」「ワンデュロパッチ」が適応されます。モルヒネ経口剤で30mgが「フェントスパッチ1mg」「デュロテップMTパッチ2.1mg」「ワンデュロパッチ0.84mg」に相当します。貼付剤なので、貼付する部位を毎回ずらしていきます。また、温度が高くなると、吸収が増えるので、入浴などの際には気を付けなければなりません。そのために、入浴が好きな患者さんでは、1日用のパッチを入浴前にいったん外し、入浴後に再度貼付される方もいます。なお、本剤の投与に際してはeラーニングの受講が必要です。モルヒネおよびフェンタニルは、医療用麻薬に分類される強オピオイドであり、乱用、依存、退薬症候、長期処方に伴う鎮痛耐性、鎮痛過敏、腸機能、性腺機能障害などに注意が必要です。貼付剤では掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがありますので、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第3段階における薬物について、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。難治性疼痛患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S157

5074.

口腔扁平上皮がん、ニボルマブ術前補助療法の有用性/JAMA Oncology

 口腔扁平上皮がん患者の予後を改善する有用なアプローチが提示された。術前補助免疫療法や、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用は、抗腫瘍免疫応答を増強し、有用な治療戦略と考えられているが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJonathan D. Schoenfeld氏らによる検討において、ニボルマブ単独投与およびニボルマブ+イピリムマブ併用投与は、どちらも外科的切除前に施行可能であり、奏効率は両群とも良好であることが示された。著者は、「これらの薬剤を用いた術前補助療法の、さらなる研究の進展が望まれる」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月27日号掲載の報告。 研究グループは、2016~19年に未治療の口腔扁平上皮がん(≧T2、または臨床的にリンパ節転移陽性)患者29例を登録し、ニボルマブ群(3mg/kg、1週目と3週目に投与)、またはニボルマブ+イピリムマブ群(イピリムマブ1mg/kg、1週目のみ投与)に無作為に割り付け、2サイクル治療後の3~7日に手術を行った。 主要評価項目は、安全性および双方向評価法による腫瘍体積に基づく有効性であった。副次評価項目は、病理学的および客観的奏効率、無増悪生存(PFS)、全生存(OS)。原発腫瘍免疫マーカーは、多重免疫蛍光法を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・29例(ニボルマブ群14例、ニボルマブ+イピリムマブ群15例)の患者背景は、平均年齢62歳、男性18例(62%)/女性11例(38%)で、舌がんが16例と最も多く、ベースラインの臨床病期分類はT2が20例、T3以上が9例、リンパ節転移陽性17例(59%)であった。・第1サイクルから手術までの期間の中央値は19日であり、手術の遅れはなかった。・治療関連有害事象は21例に認められ、Grade3/4の事象はニボルマブ群2例、ニボルマブ+イピリムマブ群5例であった。・ニボルマブ群およびニボルマブ+イピリムマブ群ともに、抗腫瘍効果が認められた(腫瘍体積に基づく奏効:50% vs.53%、病理学的進展度の低下:53% vs.69%、RECISTに基づく奏効:13% vs.38%、病理学的奏効:54% vs.73%)。・4例(ニボルマブ群1例、ニボルマブ+イピリムマブ群3例)で、90%以上の病理学的完全奏効が得られた。・追跡期間中央値14.2ヵ月において、1年PFS率は85%、OS率は89%であった。

5075.

ロシアの新型コロナワクチン、第I/II相試験で抗体陽転率100%/Lancet

 ロシアのGamaleya National Research Centre for Epidemiology and Microbiologyで開発されている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの第I/II相試験の結果が、Lancet誌オンライン版2020年9月4日号に掲載された。本ワクチンは、組換えアデノウイルス血清型26(rAd26)ベクターおよび組換えアデノウイルス血清型5(rAd5)ベクターに、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質の遺伝子をそれぞれ組み込んだ2つの成分(rAd26-SおよびrAd5-S)から成り、凍結および凍結乾燥の2つの製剤が開発されている。著者のDenis Y. Logunov氏らは、本試験の結果から、2製剤とも安全性が高く、強い液性および細胞性免疫反応が誘導されたと結論している。 今回報告された試験は、2製剤の安全性と免疫原性を評価するためにロシアの2病院で実施された非盲検非無作為化第I/II相試験。対象は18〜60歳の健康成人ボランティアの男女。それぞれの第I相試験では、0日目にrAd26-SまたはrAd5-Sを筋肉内接種し、安全性を28日間評価した。第II相試験では、0日目にrAd26-S、21日目にrAd5-Sを筋肉内接種するというプライムブーストワクチン接種を行った。主要評価項目は、抗原特異的な液性免疫(0、14、21、28、42日目にSARS-CoV-2特異的抗体をELISAで測定)および安全性(試験中に有害事象が発現した人数)、副次評価項目は、抗原特異的な細胞性免疫(T細胞応答およびインターフェロン-γ濃度)と中和抗体の変化(SARS-CoV-2中和アッセイで検出)であった。 主な結果は以下のとおり。・2020年6月18日~8月3日に、2つの試験に76人の参加者を登録した(各試験38人)。各試験において、第I相試験で9人にrAd26-S、9人にrAd5-Sを接種し、第II相試験で20人にrAd26-SとrAd5-Sを接種した。・どちらのワクチン製剤も安全で忍容性も良好であった。・主な有害事象は、接種部位の痛み(44例、58%)、体温上昇(38例、50%)、頭痛(32例、42%)、無力症(21例、28%)、筋肉と関節の痛み(18人、24%)で、ほとんどの有害事象は軽度であり、重大な有害事象は認められなかった。・参加者全員にSARS-CoV-2糖タンパク質に対する抗体が産生された。・42日目において、受容体結合ドメイン特異的IgGの幾何平均抗体価(GMT)が凍結製剤14,703、凍結乾燥製剤11,143、また中和抗体のGMTが凍結製剤49.25、凍結乾燥製剤45.95で、どちらも抗体陽転率は100%であった。・細胞性免疫反応は28日目に参加者全員に認められた。

5076.

BRCA変異乳がん患者、妊娠による予後への影響/JCO

 BRCA変異を有する若年乳がん患者にとって、妊娠は安全であることを示す結果が明らかとなった。乳がん後の妊娠および妊娠による乳がん予後への影響を調べた国際多施設共同後ろ向きコホート試験の結果を、イタリア・ジェノバ大学のMatteo Lambertini氏らが、Journal of Clinical Oncology誌2020年9月10日号に報告した。 2000年1月~2012年12月に、浸潤性早期乳がんと診断された、40歳以下の生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者が本研究に組み入れられた。主要評価項目は、妊娠率、および乳がん後の妊娠の有無による患者間の無病生存期間(DFS)。副次的評価項目は、妊娠のアウトカムと全生存期間(OS)であった。生存時間分析は、既知の予後因子を制御するGuarantee-Time Bias(GTB)を考慮して調整された。 主な結果は以下のとおり。・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する1,252例(BRCA1:811例、BRCA2:430例、 BRCA1 / 2:11例)のうち195例が、乳がん後に少なくとも1回の妊娠を経験した(10年の妊娠率:19%、95%信頼区間[CI]:17~22%)。・人工流産および流産は、それぞれ16例(8.2%)および20例(10.3%)で発生した。出産した150例(76.9%、乳児170人)のうち、妊娠合併症が13例(11.6%)、先天性異常は2例(1.8%)発生した。・乳がん診断後の追跡期間中央値8.3年における、妊娠コホートと非妊娠コホートの間で、DFS(調整ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.61~1.23、p=0.41)およびOS(調整HR:0.88、95%CI:0.50~1.56、p=0.66)の差はみられなかった。 研究者らは、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者の乳がん後の妊娠は、母親の予後を明らかに悪化させることなく安全であり、良好な胎児転帰と関連したと結論付けている。そのうえで「これらの結果は、将来の妊娠・出産について、BRCA変異を有する乳がん患者に安心感をもたらす」とまとめている。

5077.

初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響

 初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響を明らかにするため、中国・四川大学華西病院のHailing Cao氏らが検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年8月10日号の報告。 薬物治療未実施の初回エピソード統合失調症入院患者を含む自然主義的な環境で、レトロスペクティブなリアルワールド研究を実施した。代謝プロファイルは、ベースライン時および抗精神病薬治療の2週間後と4週間後に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療2週間後、トリグリセライド(TG)とHDLコレステロール(HDL-C)の比に基づくインスリン治療抵抗性は有意な増加が認められたが、空腹時血糖(FD)は有意な減少が認められた。・脂質代謝に関して、TG、コレステロール、LDLコレステロールは、抗精神病薬治療2週間後に有意な増加が認められたが、HDL-Cは、抗精神病薬治療4週間後に有意な減少が認められた。・いずれの代謝パラメータにおいても、抗精神病薬間の有意な差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療2週間後に、インスリン抵抗性および脂質代謝異常が発生することが明らかとなった。抗精神病薬治療の初期段階では、代謝プロファイルをモニタリングする必要性が示唆された。代謝パラメータに対する抗精神病薬の短期的な影響を明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

5078.

ARDSを伴うCOVID-19、デキサメタゾンが有効な可能性/JAMA

 中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者の治療において、標準治療にデキサメタゾンを併用すると、標準治療単独と比較して、治療開始から28日までの人工呼吸器非装着日数(患者が生存し、かつ機械的換気が不要であった日数)が増加することが、ブラジル・Hospital Sirio-LibanesのBruno M. Tomazini氏らCOALITION COVID-19 Brazil III Investigatorsが実施した「CoDEX試験」で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。COVID-19に起因するARDSは、実質的に死亡率や医療資源の使用を増大させることが知られている。デキサメタゾンは、ARDSを伴うCOVID-19患者の肺障害を軽減する可能性が示唆されている。41のICUが参加、試験は早期中止に 本研究は、ブラジルの41の集中治療室(ICU)が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2020年4月17日~6月23日の期間に患者登録が行われた(Coalition COVID-19 Brazilの助成による)。最終フォローアップ日は2020年7月21日だった。予定された登録患者数350例に達する前に、関連試験の論文が発表され、本試験は早期中止となった。 対象は、年齢18歳以上のCOVID-19確定例または疑い例で、PaO2/FIO2比≦200の中等症~重症ARDSの基準を満たし、48時間以内に機械的換気を受けていた患者であった。ARDSの診断はベルリン定義の基準に準拠した。 被験者は、標準治療に加え、デキサメタゾン10mgまたは20mgを1日1回、5日間あるいはICUを退室するまで静脈内投与する群、または標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、治療開始から28日間における人工呼吸器非装着日数とし、患者が生存かつ機械的換気が不要であった日数と定義された。副次アウトカムは、15日の時点での6段階順序尺度(1[非入院]~6[死亡]点)による臨床状態、48時間・72時間・7日の時点でのSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(0~24点、点数が高いほど臓器機能不全が高度)などであった。非装着日数:6.6日vs.4.0日、7日時SOFAスコア:6.1点vs.7.5点 299例(平均年齢61[SD 14]歳、女性37%)が登録され、全例がフォローアップを完了した。 治療開始から28日の時点における平均人工呼吸器非装着日数は、デキサメタゾン併用群が6.6日(95%信頼区間[CI]:5.0~8.2)と、標準治療単独群の4.0日(2.9~5.4)に比べ有意に増加した(群間差:2.26、0.2~4.38、p=0.04)。 また、7日時点のSOFA平均スコアは、デキサメタゾン併用群は6.1点(95%CI:5.5~6.7)であり、標準治療単独群の7.5点(6.9~8.1)と比較して有意に低かった(群間差:-1.16点、95%CI:-1.94~-0.38、p=0.004)。48時間時点と72時間時点のSOFA平均スコアについては、両群間に有意な差はなかった。 15日の時点での6段階順序尺度による臨床状態、28日の時点での全死因死亡・ICU非滞在日数・機械的換気日数には、両群間に有意差はみられなかった。 デキサメタゾンの併用による有害事象の有意な増加は認められなかった。重篤な有害事象は、デキサメタゾン併用群5例(3.3%)、標準治療単独群9例(6.1%)でみられた。28日までに新規に診断された感染症は、デキサメタゾン併用群33例(21.9%)、標準治療単独群43例(29.1%)、人工呼吸器関連肺炎はそれぞれ19例(12.6%)および29例(19.6%)、カテーテル関連血流感染症は10例(6.6%)および8例(5.4%)で発現した。 著者は、「治療開始から28日間における人工呼吸器非装着日数は、既報の非COVID-19のARDS患者に比べ低かったが、疾患重症度が確定されたARDSを伴うCOVID-19患者を対象とした以前の研究の結果と一致していた」としている。

5079.

アイスクリーム頭痛は2種類ある?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第170回

アイスクリーム頭痛は2種類ある?pixabayより使用さて、まだまだ冷たいものが欲しくなる暑さが続いています。かき氷を食べたときにキーンと頭が痛くなる、あの現象。あれは国際的には「アイスクリーム頭痛(ice-cream headache)」と呼びます。私は、幸いにもどれだけかき氷を食べても頭痛が起きない体質なのですが、1杯食べただけでキーン!という人もいるようで、個人差がかなりありそう。そんなアイスクリーム頭痛、実は2つのフェノタイプがあるのではないかと考えられています。Mages S, et al.Experimental provocation of ‘ice-cream headache’ by ice cubes and ice waterCephalalgia . 2017 Apr;37(5):464-469.この研究は、角氷(ice cube)と氷水(ice water)を飲み食いしてもらって、アイスクリーム頭痛がどのくらい出るか、77人の被験者でクロスオーバーし比較検討したものです。角氷はバリボリ食べるのではなく、硬口蓋に押し付けるよう規定されました(接触時間90秒)。また、氷水は、できるだけ速やかに200mL飲み干すよう規定されました。かき氷で出やすいというくらいなのだから、角氷のほうが頭痛の頻度が高そうに思います。しかし、結果はその逆でした。なんと、氷水のほうが角氷よりも頭痛の出現が多かったのです(77人中9人 vs. 77人中39人)。角氷が11.7%、氷水が50.6%ですから、圧倒的。そして、氷水によるアイスクリーム頭痛は、潜時が短いということがわかりました(中央値:15秒[範囲:4~97秒] vs. 68秒[範囲:27~96秒])。疼痛の部位について差はありませんでした。こめかみや、前頭部のような緊張型頭痛で痛くなる部位に多かったようです。どちらも同じ痛みだろうと予想していたら、角氷による頭痛は圧迫されるような痛み、氷水による頭痛は刺すような痛みだったとのことです。どうでしょう、みなさんも自宅で試してみてください。もしかすると、アイスクリーム頭痛には2つのフェノタイプがあるのかもしれませんね。流涙を伴うような頭痛の場合、三叉神経由来と本文中に考察されていますが、さすがにかき氷を食べただけでそこまでの頭痛になることは多くないと思います。圧迫されるようなアイスクリーム頭痛を1型、刺すようなアイスクリーム頭痛を2型、などの名前で呼んでもいいかもしれませんね。キャッキャッ。

5080.

インターネット依存症の重症度とメンタルヘルスへの影響

 インターネット依存症は、メンタルヘルスに影響を及ぼす世界的な問題となっている。しかし、どの程度の影響が懸念されるかは、コンセンサスが得られていない。中国・四川大学華西病院のWanjun Guo氏らは、インターネット依存症の重症度がメンタルヘルスにどのような悪影響を及ぼすかについて、調査を行った。Journal of Medical Internet Research誌2020年8月11日号の報告。インターネット依存症とうつ病は最も強い関連が認められた 2015~18年の四川大学1年生を対象に調査を実施した。完全回答率は、85.13%(3万7,187人中3万1,659人)であった。インターネット依存症を評価するため、ヤングのインターネット依存度テスト20項目(IAT)、こころとからだの質問票(PHQ-15、PHQ-9)、症状チェックリスト-90(SCL-90)、Kessler Psychological Distress Scale(K6)、自殺行動アンケート改訂版を用いた。また、4つの精神病理学的症状(身体症状の重症度、臨床的なうつ病、精神疾患の傾向、パラノイア)、重度の精神疾患、生涯自殺念慮について評価した。 インターネット依存症の重症度がメンタルヘルスにどのような悪影響を及ぼすかについて調査した主な結果は以下のとおり。・インターネット依存症の重症度別の有病率は、以下のとおりであった。 ●軽度:37.93%(1万2,009人) ●中等度:6.33%(2,003人) ●重度:0.20%(63人)・各症状や自殺関連の有症率は、以下のとおりであった。 ●重度の身体症状:6.54%(2,072人) ●臨床的なうつ病:4.09%(1,294人) ●精神疾患の傾向:0.51%(160人) ●パラノイア:0.52%(165人) ●重度の精神疾患:1.88%(594人) ●生涯自殺念慮:36.31%(1万1,495人) ●自殺計画:5.13%(1,624人) ●自殺企図:1.00%(315人)・インターネット依存症でない学生における4つの精神病理学的症状、それらの合併、自殺に関する有症率やオッズ比(OR)は、調査対象者の平均レベルよりも非常に低かった。・軽度のインターネット依存症の学生における各症状や自殺関連の有症率は、調査対象者の平均レベルと同等もしくはわずかに高い程度であったが、インターネット依存症の重症度が増すにつれ、これらの割合の急激な増加が認められた。・人口統計学および精神病理学的な交絡因子で調整した後、4つの精神病理学的症状の中で臨床的なうつ病は、インターネット依存症と最も強い関連が認められた。インターネット依存症の重症度別のうつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●インターネット依存症なし:1.01%(1万7,584人中178人) ●軽度:4.85%(1万2,009人中582人) ●中等度:24.81%(2,003人中497人) ●重度:58.73%(63人中37人)・4つの精神病理学的症状のいずれかを有する学生および生涯自殺念慮、自殺計画、自殺企図の有症率は、インターネット依存症の重症度が増すにつれ、増加が認められた。【4つの精神病理学的症状のいずれかを有する学生の割合】 ●インターネット依存症なし:4.05%(713人) ●軽度:11.72%(1,408人) ●中等度:36.89%(739人) ●重症度:68.25%(43人)【生涯自殺念慮の有症率】 ●インターネット依存症なし:24.92%(4,382人) ●軽度:47.56%(5,711人) ●中等度:67.70%(1,356人) ●重症度:73.02%(46人)【自殺計画の有症率】 ●インターネット依存症なし:2.59%(456人) ●軽度:6.77%(813人) ●中等度:16.72%(335人) ●重症度:31.75%(20人)【自殺企図の有症率】 ●インターネット依存症なし:0.50%(88人) ●軽度:1.23%(148人) ●中等度:3.54%(71人) ●重症度:12.70%(8人) 著者らは「中等度から重度のインターネット依存症は、身体症状を含むメンタルヘルスへの悪影響と強く関連しており、うつ病との最も強い関連性が示唆された。このことから、中等度から重度のインターネット依存症に対するサポートは、妥当であると考えられる。インターネットプラスや人工知能の時代において、人間の健康問題を解決する観点から、健康政策担当者やサービスサプライヤーが、このことを理解することが重要である」としている。

検索結果 合計:11849件 表示位置:5061 - 5080