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肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群、治療法の好みに医師と患者で違い

 肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対する治療法の好みは、医師と患者の間で異なることが新たな研究で示された。医師は、睡眠中に専用のマスクを介して一定の空気圧を鼻から気道に送って気道を開いた状態に保つ持続陽圧呼吸(CPAP)療法を支持する一方、患者は、肥満症治療薬の一種であるGLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(商品名ゼップバウンド)による治療を望む傾向にあることが明らかになったという。この研究は米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)呼吸器・集中治療・睡眠医学部門のAhmed Khalaf氏らによるもので、米国睡眠医学会(AASM)と米睡眠学会(SRC)の合弁事業であるAssociated Professional Sleep Societies, LLC(APSS)の年次総会(SLEEP 2025、6月8〜11日、米シアトル)で発表された。 Khalaf氏は、「この結果により、リアルワールドにおけるCPAP療法とチルゼパチドの相対的な有効性に関するデータの必要性、そして肥満とOSAが併存した場合の管理をめぐって患者と医師の間に選好の不一致が存在する可能性が浮き彫りになった」とニュースリリースの中で述べている。  米国では、約3000万人の成人にOSAがあると推定されている。これまで、OSAの標準治療はCPAP療法とされてきたが、使う装置の大きさや騒音を気にする患者もいる。米ハーバード大学医学大学院によると、CPAP療法を処方された患者の約50%が十分な頻度で専用の装置を使用できないか、わずらわしさから使い続けられないと感じているという。使用者がよく挙げる問題点は、マスク装着時の不快感や口の乾燥、呼吸のタイミングが合わない感覚、装置から出る音などである。 米食品医薬品局(FDA)は2024年末、肥満とOSAを有する患者に対する初の治療薬としてゼップバウンドを承認した。AASMは当時、この承認に際して「OSAに対して新たな治療選択肢が加わったことは、患者と臨床医にとって大きな前進である」とする声明を発表した。ただし、AASMは、ゼップバウンドが肥満とOSAを有する人にのみ適応されることを強調。また、ゼップバウンドは体重減少を通じてOSAの重症度を軽減する可能性はあるが、根治には至らない可能性もあるとしている。 Khalaf氏らは今回の研究で、全米規模で実施されたオンライン調査に回答した365人の患者データを分析するとともに、UCSDの睡眠医学の専門家17人を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、医師側は53%がCPAP療法を支持し、ゼップバウンドを支持していたのは26%であったのに対し、患者側は48%がゼップバウンドを支持し、CPAP療法を支持していたのは35%だった。また、医師と患者の双方がCPAP療法とゼップバウンドによる併用療法を支持していたが、医師の方が併用療法に対してより積極的であり、その割合は患者の61%に対して88%と高かった。 さらに、患者の治療に対する好みは、自身の経験が影響している可能性が高いことも分かった。調査結果によると、患者の78%が現在CPAP療法を受けているか、過去にCPAP療法を受けたことがあると回答していた。これに対し、ゼップバウンドや他のGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(商品名オゼンピック)を使用したことがあると答えた患者の割合はわずか23%だった。 主任研究者でUCSD医学部助教のChristopher Schmickl氏は、患者と医師の間でこれほどまでに意見の相違があることに驚きを示している。同氏は、「治療に対する考え方の違いを認識しておくことは、現実的かつ達成可能な行動計画を立てる上で極めて重要だ。今後、こうした治療に対する選好の背景にある要因を明らかにするためのさらなる研究によって、医師が治療方針の決定を助ける価値のある情報が得られるだろう」と述べている。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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高血圧に関する米国人の誤解の多さが明らかに

 米ペンシルベニア大学アネンバーグ公共政策センターが6月6日に発表した新たな調査結果において、米国人の3分の1以上が、高血圧はめまいや息切れなどの明らかな症状を伴うものと誤解していることが示された。 血圧は、心臓の拍動によって動脈にかかる圧力を示す指標であり、心臓が収縮して血液を送り出すときの収縮期血圧(上の血圧)と、心拍と心拍の間の安静状態にあるときの拡張期血圧(下の血圧)の2つで表される。米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)は、2017年に高血圧の定義を従来の140/90mmHgから130/80mmHgに引き下げた。米疾病対策センター(CDC)によると、2022年に米国では高血圧が68万5,000人以上の死亡の主因、または一因であったという。 この調査は、米国を代表する1,653人の成人を対象に、2025年4月15〜28日に実施された。標本誤差(サンプル調査での推定値と母集団の真の値との差)は95%信頼水準で±3.4パーセントポイントであった。 調査参加者の35%が高血圧の診断を受けており、また69%は自分以外の家族に高血圧があると報告していた。このように有病率は高かったにもかかわらず、4人に1人(24%)は、高血圧の基準値に関する5つの選択肢のうち、130/80mmHgと正しく答えた人は13%にとどまっていた。残りの25%は以前の基準値である140/90mmHgを、16%は140/80mmHgを、18%は130/90mmHgを選んでおり、24%は「どれが正解か分からない」と答えた。 米ペンシルバニア大学アネンバーグ公共政策センター所長のPatrick Jamieson氏は、「血圧をコントロールすることで心筋梗塞や脳卒中など深刻な健康問題のリスクが軽減されるため、高血圧を特定する方法に関する誤解を正すことは、公衆衛生上の優先事項であるべきだ」と述べている。 また、CDCは、「高血圧には通常、明確な兆候や症状は現れない」としているが、この点を正しく理解していたのは39%(高血圧の人50%、高血圧ではない人33%)に過ぎず、37%は、高血圧には必ずと言っていいほど、めまいや息切れなどの自覚できる症状を伴うと勘違いしていた。さらに39%は、落ち着いてリラックスしていることは、血圧が正常であることを示す兆候だと誤解していることも判明した。AHAは、高血圧は症状を伴わないゆえに「サイレントキラー」と呼ばれていると述べている。 一方で、80%の人は、高血圧の家族歴がある場合、血圧を効果的に下げる手立てはないと考えるのは間違っていることを正しく理解していた。また、どの対策が血圧の低下に役立つかについても、多くの人が正しく認識していた。具体的には、「健康的な体重の維持」は91%、「定期的な運動」と「健康的な食生活」はそれぞれ89%、「降圧薬の使用」は84%、「塩分摂取量の削減」は82%が効果的な方法として正しく認識していた。 APPCの調査アナリストであるLaura Gibson氏は、「血圧を下げる習慣についての国民の知識レベルの高さは心強い。これは、これらの健康指標を国民の意識の中心に据えてきた医療提供者と公衆衛生機関の努力の賜物である」と述べている。ただし、全ての人がこうした習慣を取り入れているわけではない。週に1回以上これらの習慣を実践していると答えた人の割合は、「健康的な食事」が72%、「定期的な運動」が61%、「塩分摂取量の削減」が57%にとどまっていた。

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統合失調症における中枢コリン作動系の変化

 統合失調症では、コリン作動系のさまざまな変化がみられることが報告されているが、これらのエビデンスのシステマティックレビューおよびサマライズは行われていなかった。カナダ・オタワ大学のZacharie Saint-Georges氏らは、統合失調症およびまたは統合失調感情障害における中枢コリン作動系に関するイメージング研究および剖検研究についてのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌2025年7月号の報告。 統合失調症およびまたは統合失調感情障害患者と対照集団を比較した横断的ケースコントロール研究をEmbase、Medlineより検索した。バイアスリスクの評価には、ケースコントロール研究の品質評価のためのNIH/NHLBIツールを用いた。本研究は、PRISMA2020ガイドラインに準拠し実施した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング対象研究3,259件のうち、適格基準を満たした61件の研究をシステマティックレビューに含めた(イメージング研究:8件、剖検研究:53件)。・これらの研究の約74%において、統合失調症およびまたは統合失調感情障害における中枢コリン作動系の変化が報告されていた。・統合失調症におけるムスカリン性受容体またはニコチン性受容体レベルのいずれかの減少が最も多く報告されていた。・3件のメタ解析を実施し、線条体(g=−0.809、3件、108例)、海馬(g=−0.872、4件、84例)、前頭帯状皮質(g=−0.438、4件、295例)におけるM1/M4ムスカリン性受容体の減少が示唆された。・イメージング研究の6件で臨床症状の重症度と関連が報告されており、認知機能障害との関連が4件で報告されていた。 著者らは「イメージング研究および剖検研究の両方で、統合失調症患者におけるムスカリン受容体およびニコチン受容体の広範な低下が明らかとなった。メタ解析では、線条体、海馬、前頭帯状皮質におけるM1/M4ムスカリン受容体の低下による大〜中程度の影響が認められた」と結論付けている。

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「終末期」を「人生の最終段階」へ変更、その定義とは/日本老年医学会

 日本老年医学会は6月27日のプレスリリースにおいて、「終末期」から「人生の最終段階」への変更における定義などを示した『高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025』を発表した。この立場表明は同学会が21世紀初頭に初版を発表、2012年の第1改訂から10年以上が経過したため、現在を見据えつつ近未来を展望して今回の改訂がなされた。今回開催された記者会見では、立場表明のなかで定義付けされた用語とその理由について、本改訂委員会委員長を務めた会田 薫子氏(東京大学大学院人文社会系研究科 附属死生学・応用倫理センター 特任教授/同学会倫理委員会 エンドオブライフ小委員会委員長)を中心に解説が行われた。『立場表明2025』の目的 立場表明は、臨床現場においてさまざまな難問に直面しつつ、本人のために最期まで最善の医療・ケアを提供しようと尽力している専門職の行動指針となり、同時に、日本で生きる人々の心の安寧を支えることを願っている専門職の職業倫理として作成されている。また、すべての人が有する権利(すべての人は最期まで、医学的に適切な判断を土台に、それぞれの思想・信条・信仰を背景とした価値観・人生観・死生観を十分に尊重され、「最善の医療およびケア」を受ける権利を有する)を擁護・推進するために、日本老年医学会として「高齢者の人生の最終段階における医療・ケア」に関する立場を表明した。 2015年に厚生労働省が『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を改訂した際に、「終末期」という表現を「人生の最終段階」としていたが、その言葉の定義付けなどは各領域や学会に一任されていたことから、今回、国内で初めて日本老年医学会がこの用語の定義を示した。「人生の最終段階」の定義 厚生労働省が「終末期医療」を「人生の最終段階における医療」に替えると発表した際、これが「最期まで尊厳を尊重した、人間の生き方に着目した医療を目指す」という考え方に寄っていると説明していたことを踏まえ、日本老年医学会は、「人生の最終段階」を以下のように定義付けした。(1)【医学的見込み】 病状や老衰が不可逆的で、更なる治療によっても状態の好転や進行の阻止は見込めず、遅かれ早かれ死に至ることが避けられない。(2)【人生についての見方】 (1)を踏まえ、医療・ケアチームが本人の人生全体を眺める視点で、本人は人生の物語りの最終章を生きていると考えられ、本人が表明してきた人生に関する意向を尊重したうえでも、そう考えることができる。以上の(1)と(2)が満たされている時、本人は「人生の最終段階」にある。「最善の医療およびケア」とは 次に、最善の医療およびケアについて、「緩和ケア(palliative care)の考え方と技術を中核とし、単に診断・治療のための医学的な知識・技術のみならず、他の自然科学や人文科学、社会科学を含めた、すべての知的・文化的成果を統合した、適切な医療およびケア」としている。会田氏は、「日本では非がん領域における緩和ケアが不十分な状態にある。WHOは1990年に緩和ケアの考え方を、2002年にはその定義を示している。国内でもそれらを踏まえて苦痛の予防・緩和に注力していくため、最善の医療およびケアを緩和ケアの考え方で進めていく」とし、「高齢者にとって侵襲性の高い高度医療はリスクとなる。また、薬物療法についても同様で、とくにポリファーマシーの有害性の認識は重要。よって、高齢者への医療やケアは一般成人とは異なる考え方をすることを社会にも広く知っていただきたい」と強調した。10の立場表明 この立場表明には、本学会における10個の立場表明が示されており、「日本老年医学会はこれらの立場が実現できるようにたゆまぬ努力を傾注する」と同氏はコメントした。・立場1:年齢による差別(エイジズム)に反対する・立場2:緩和ケアを一層推進する・立場3:本人の意思と意向を尊重する・立場4:人権と尊厳および文化を尊重する意思決定支援を推進する・立場5:多職種のチームによる医療・ケアの提供を推進する・立場6:臨床倫理に関する取り組みを推進する・立場7:在宅医療および地域包括ケアシステムを推進する・立場8:死への準備教育を推進する・立場9:不断の研究の進歩を医療・ケアに反映させる・立場10:高齢者の人権と尊厳を擁護する医療・介護・福祉制度の構築を求める医療界で汎用される「尊厳」とは 本表明にも頻出する「尊厳」。この言葉は多くの法令や医学会の提言、ガイドラインでも頻繁に利用されているが、「その割に意味が不明確。辞書で意味を調べてみると、“尊く厳かで犯し難いこと”と書いてあり、どのように医療現場で本人の尊厳を尊重すればいいのかわかりにくい」と同氏は指摘。そこで同学会は医療における尊厳についても定義付けを行った。(1)「現在のありのままの自分を価値ある存在だとする思い」:この場合は自尊感情や自己肯定感と同義的であるとし、本人が自己肯定できるよう医療とケアを提供すること(2)「尊厳に値するという価値」:本人に何かを押し付けたり支配したりすることを否定すること これに対して同氏は「他学会や政府にも、この尊厳の考え方について参照してもらいたい」と思いを示した。 第67回日本老年医学会学術集会の会期中に開かれた本記者会見において、大会長の神﨑 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学教室 教授)は、「本表明にはセンシティブな内容も含まれる。しっかり目を通してもらいたい」と締めくくった。

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心房細動を伴う脳梗塞のDOAC開始、早期vs.遅延~メタ解析/Lancet

 急性虚血性脳卒中と心房細動を有する患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の遅延開始(5日以降)と比較して早期開始(4日以内)は、30日以内の再発性虚血性脳卒中、症候性脳内出血、分類不能の脳卒中の複合アウトカムのリスクを有意に低下させ、症候性脳内出血を増加させないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHakim-Moulay Dehbi氏らが実施した「CATALYST研究」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月23日号に掲載された。DOAC開始の早期と遅延をメタ解析で比較 研究グループは、急性虚血性脳卒中発症後におけるDOACの早期開始と遅延開始の有効性の評価を目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューと、個別の患者データのメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成を受けた)。 医学関連データベースを検索し、2025年3月16日までに発表された無作為化対照比較試験を選出した。対象は、事前登録を行い、無作為化され、臨床アウトカムを評価し、急性虚血性脳卒中と心房細動を有する患者を、承認を受けた用量のDOACの早期開始(4日以内)または遅延開始(5日以降)に割り付けた臨床試験であった。 主要アウトカムは、無作為化から30日以内の再発性虚血性脳卒中、症候性脳内出血、分類不能の脳卒中の複合とした。早期開始で再発が有意に少なく、症候性脳内出血は増加しない 4つの臨床試験(TIMING、ELAN、OPTIMAS、START)を同定した。データ共有に応じなかった参加者や、DOACの開始が4日以内または5日以降に割り付けられなかった参加者を除外したうえで、5,441例(平均年齢77.7[SD 10.0]歳、女性2,472例[45.4%]、NIHSSスコア中央値5点)をメタ解析に含めた。主要アウトカムのデータは5,429例から得た。 30日の時点における主要アウトカムの発生率は、遅延開始群が3.02%(83/2,746例)であったのに対し、早期開始群は2.12%(57/2,683例)と有意に低かった(オッズ比[OR]:0.70[95%信頼区間[CI]:0.50~0.98]、p=0.039)。絶対リスクの群間差は-0.0093(p=0.039)であった。また、1件の主要アウトカムを防止するための治療必要数は108(95%CI:55~2,500)だった。 30日時の再発性虚血性脳卒中は早期開始群で有意に少なく(1.68%[45/2,683例]vs.2.55%[70/2,746例]、OR:0.66[95%CI:0.45~0.96]、p=0.029)、症候性脳内出血は早期開始群で増加しなかった(0.37%[10/2,683例]vs.0.36%[10/2,746例]、1.02[0.43~2.46]、p=0.96)。また、早期開始群では頭蓋外の大出血の増加も認めなかった。90日後の主要アウトカムには差がない 一方、90日後の主要アウトカムの発生率は、早期開始群で低かったが、両群間に有意な差はなかった(3.10%[83/2,678例]vs.3.51%[96/2,738例]、OR:0.88[95%CI:0.65~1.19]、p=0.40)。 著者は、「これらの知見は、実臨床におけるDOACの早期の投与開始を支持するものである」「本研究のデータは、脳内出血への懸念から、脳卒中の重症度を問わず、抗凝固療法を最大で2週間遅らせるという一般的に行われている治療法を支持しない」「今後のCATALYSTサブグループ解析では、DOACの早期開始のリスクとベネフィットについて、さらに検討を進める予定である」としている。

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食事インスリン併用2型DM、efsitora vs.グラルギン/Lancet

 食事インスリンを併用している2型糖尿病患者の基礎インスリンとして、insulin efsitora alfa(efsitora)の週1回投与はインスリン グラルギンU100の1日1回連日投与と比較して、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の低下効果に関して非劣性で、臨床的に重要または重症の低血糖の発生率も同程度であり、連日投与に代わる基礎インスリンとして忍容性が良好で有効な治療法であることが、米国・Texas Diabetes & EndocrinologyのThomas Blevins氏らが実施した「QWINT-4試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年6月22日号で報告された。7ヵ国の第III相無作為化非劣性試験 QWINT-4試験は、7ヵ国78施設が参加した26週間の第III相並行デザイン非盲検無作為化treat-to-target非劣性試験であり、2022年8月~2024年2月に患者のスクリーニングを行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%)と診断され、基礎インスリンと食事インスリンを併用し、0~3種のインスリン製剤以外の血糖降下薬を使用している患者を対象とした。これらの患者を、基礎インスリンとしてefsitora(500単位/mL、週1回、efsitora群)またはグラルギンU100(100単位/mL、1日1回連日、グラルギン群)を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全例に、食事インスリンとしてインスリン リスプロを投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週目までのHbA1c値の変化量とし、非劣性マージンを0.4%に設定した。低血糖は、全体、夜間とも差がない 730例(平均年齢58.9[SD 10.5]歳、女性369例[51%]、平均BMI値31.85[SD 5.47])を登録し、efsitora群に365例、グラルギン群にも365例を割り付けた。試験治療レジメン推定値を用いたベースラインの最小二乗平均HbA1c値は、それぞれ8.18(SE 0.04)%および8.18(0.04)%だった。 26週時点での最小二乗平均HbA1c値は、efsitora群7.17(SD 0.05)%、グラルギン群7.18(0.05)%であった。試験治療レジメン推定値を用いたベースラインから26週目までの変化量はそれぞれ-1.01%ポイントおよび-1.00%ポイントであり、変化量の推定群間差は-0.01%ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.14~0.12)と、efsitora群のグラルギン群に対する非劣性が示された。 投与期間中に発生した臨床的に重要(レベル2:血糖値<54mg/dL)または重症(レベル3:治療に他者の介助を要する精神的、身体的状態)の低血糖は、全体(efsitora群6.6件/人年vs.グラルギン群5.9件/人年、推定率比:1.11[95%CI:0.85~1.44]、p=0.44)および夜間(0.67 vs.1.00、0.67[0.44~1.01]、p=0.058)のいずれにおいても両群間に有意な差を認めなかった。 レベル1(血糖値<70mg/dL、≧54mg/dL)の低血糖は、全体(efsitora群25.3件/人年vs.グラルギン群19.0件/人年、推定率比:1.33[95%CI:1.13~1.55]、p=0.0004)ではefsitora群で高率に発生したが、夜間(1.8 vs.2.4、0.75[0.57~0.98]、p=0.037)ではefsitora群で低率だった。また、ベースラインから26週目までの体重の変化量(efsitora群2.67kg vs.グラルギン群2.53kg、p=0.54)は両群で同程度であった。鼻咽頭炎と尿路感染症が多い 試験薬投与期間中の有害事象の発現は、efsitora群で196例(54%)、グラルギン群で189例(52%)と両群で同程度だった。重篤な有害事象は、それぞれ25例(7%)および23例(6%)にみられた。最も頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(efsitora群23例[6%]vs.グラルギン群21例[6%])と尿路感染症(17例[5%]vs.19例[5%])であった。 注目すべき有害事象のうち、糖尿病性ケトアシドーシスは両群とも発現せず、過敏反応はefsitora群の11例(3%)およびグラルギン群の4例(1%)に、注射部位反応はefsitora群の1例(<1%)にのみ認めた。また、efsitoraの週1回投与を受けた337例中312例(93%)は、試験前の連日の治療よりも本試験の治療を「好む」「強く好む」と回答し、334例中274例(82%)は、efsitora週1回投与の日常的な治療への導入について「可能性が高い」「可能性がたいへん高い」と答えた。 著者は、「持続血糖測定器(CGM)による評価では、ベースラインから26週目までに、24時間における血糖値が目標範囲(70~180mg/dL)内にある時間が両群とも約4時間増加したのに対し、目標範囲外の低血糖域(<70mg/mL)にある時間は約10分増加しただけだった」「他の第II・III相試験の結果と合わせて、今回の結果は2型糖尿病の治療におけるefsitoraの有効性と安全性を強調するとともに、週1回投与の基礎インスリンが糖尿病患者の負担を軽減する可能性を強く示唆するものである」としている。

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乾癬性関節炎では関節リウマチよりも診断が遅れる

 乾癬性関節炎(PsA)患者は関節リウマチ(RA)患者と比較して診断が遅れるという研究結果が、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月29日掲載された。 英バース大学のRachel A. Charlton氏らは、PsA患者とRA患者の診断に至るまでの期間を比較した。解析対象となったのは、PsA患者2,120人と、年齢と性別でマッチさせたRA患者2,120人であった。 解析の結果、症状が発現してから専門医に紹介されるまでの期間は、PsA患者の方がRA患者よりも長かった。PsA患者の方が、かかりつけ医を受診してから診断を受けるまでの期間が長く(平均112日対89日、ハザード比〔HR〕0.87)、二次医療機関に紹介された後の診断の遅れも認められた(HR 0.86)。多発性関節炎を有する患者において、ベースライン時における疾患修飾性抗リウマチ薬の処方率は、PsA患者の方がRA患者よりも低かった(それぞれ54.0%、69.0%)。28関節を対象とする疾患活動性スコアは、ベースライン時ではRA患者の方が高かったが、3カ月後にはPsA患者の平均スコアの方が高くなった。 著者らは、「本研究の結果から、早期診断・早期治療を促進し、患者の長期転帰を改善するためには、患者と医療チームの両方に対する教育が重要であることが示唆される」と述べている。 なお複数の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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スタチンは敗血症の治療にも効果あり?

 スタチン系薬剤(以下、スタチン)は、高LDLコレステロール(LDL-C)血症の治療における第一選択薬であるが、この安価な薬剤は、別の病態において救命手段となる可能性があるようだ。新たな研究で、敗血症患者の治療において、抗菌薬、点滴、昇圧薬による通常の治療にスタチンを加えることで死亡リスクが低下する可能性のあることが明らかになった。天津医科大学総合病院(中国)のCaifeng Li氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Immunology」に6月6日掲載された。 敗血症は、感染症に対する過剰な免疫反応によって全身に炎症が広がり、複数の重要な臓器に機能不全が生じる病態である。研究グループによると、米国では毎年約75万人が敗血症で入院し、そのうち約27%が死亡している。敗血症患者の約15%には、血圧が危険なレベルまで低下する敗血症性ショックが生じる。敗血症性ショックの死亡リスクは30〜40%に上ると報告されている。 スタチンには、「悪玉コレステロール」とも呼ばれるLDL-Cとトリグリセライド(中性脂肪)の値を下げる一方で、「善玉コレステロール」とも呼ばれるHDLコレステロール(HDL-C)の値を上げる作用がある。しかしLi氏によると、スタチンには炎症を抑制し、免疫反応を調整し、血栓形成を抑制する効果があることも示されているという。 この研究でLi氏らは、2008年から2019年の間にボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの集中治療室(ICU)で収集されたデータ(Medical Information Mart for Intensive Care-IV;MIMIC-IV)を用いて、スタチンにより敗血症患者の転帰が改善するのかを検討した。対象はこのデータから抽出した敗血症患者2万230人で、うち8,972人(44.35%)はスタチンを投与されていた。傾向スコアマッチングを行い、最終的に1万2,140人(スタチン群と非スタチン群が6,070人ずつ)を対象に解析を行った。 その結果、28日間での全死因死亡率はスタチン群で14.3%(870/6,070人)、非スタチン群で23.4%(1,421/6,070人)であり、スタチン投与は28日間の全死因死亡リスクの44%の低下と関連していた(ハザード比0.56、95%信頼区間0.52〜0.61、P<0.001)。また、スタチン群ではICU死亡リスク(オッズ比0.43、95%信頼区間0.37〜0.49、P<0.001)および院内死亡リスク(同0.50、0.45〜0.57、P<0.001)も有意に低かった。ただし、スタチン群では、人工呼吸器の装着期間と持続的腎機能代替療法を受ける期間が、非スタチン群よりも有意に長かった。 Li氏は、「これらの結果は、スタチンが敗血症患者に保護効果をもたらし、臨床転帰を改善する可能性があることを強く示唆している」と述べている。同氏は、本研究結果が過去の臨床試験の結果と矛盾していることを指摘し、その理由について、「これまでのランダム化比較試験では、敗血症の診断の報告不足、サンプル数の少なさ、スタチン投与と患者特性との複雑な相互作用を考慮していないことなどが原因で、敗血症患者に対するスタチンの有効性が認められなかった可能性がある」と考察している。 ただし研究グループは、本研究は観察研究であり、本格的な臨床試験で得られるような、スタチンと敗血症による死亡リスクの低下との間の直接的な因果関係を示すことはできないとしている。Li氏は、「これらの結果は、理想的には、大規模なサンプル数の敗血症患者を対象とし、スタチンの種類、投与量、治療期間に関する詳細な情報を含めたランダム化比較試験で検証されるべきだ。また、スタチン投与の開始時期と潜在的な交絡因子について慎重に検討することも必要だ」と述べている。

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エイリアンハンド症候群【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第285回

エイリアンハンド症候群皆さんは、エイリアンハンド症候群という病名をご存じでしょうか。Panikkath R, et al. The alien hand syndrome. Proc (Bayl Univ Med Cent) . 2014 Jul;27(3):219-20.静かな夕方、テレビを見ていた77歳の女性に突然異変が起こりました。左手が意思に反して勝手に動き出し、顔や髪を撫で回すように動き続けたのです。まるで誰かに操られているかのような手の動きに、患者さんは恐怖を感じました。右手で左手を抑えようとしても、まったく制御することができません。この奇妙な現象は30分間も続きました。その後、左手の制御は戻りましたが、今度は左上肢の麻痺と脱力が現れ、歩行時には左足を引きずるような状態になっていました。この患者さんは慢性心房細動を患っており、脊椎手術のために抗凝固薬を一時的に中止していました。頭部MRIの結果、両側頭頂葉に急性梗塞が確認され、心原性脳塞栓症による「エイリアンハンド症候群」と診断されました。「エイリアンハンド症候群」は、手が意思に反して複雑で目的のある動きをする、まれな神経症状です。脳梁、頭頂皮質、運動前野、前帯状皮質の異常が原因とされ、通常は脳腫瘍や動脈瘤、神経外科手術後に見られますが、脳梗塞による発症はまれとされています。機能的MRIの研究では、正常な人では運動開始時に広範な神経ネットワークが活性化されるのに対し、エイリアンハンド症候群では対側の一次運動皮質のみが孤立して活性化されることがわかっています。頭頂皮質の損傷により、意図的な運動計画システムから解放された一次運動野が単独で活性化し、さらに固有受容感覚のフィードバックの喪失や左半側空間無視が組み合わさることで、患者の意識や意志なしに自発的な運動が開始されると考えられています。エイリアンハンド症候群に対する確立された治療法は現在のところありません。症状は数日から数年間続くことが報告されており、この症例のように30分間という短い持続時間は、まれだそうです。

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ASCO2025 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州のシカゴで行われ、2025年は5月30日から6月3日まで行われた。昨今の円安(5月30日時点で1ドル=143円台)および物価高は現地参加に対するモチベーションを半減させるほどの勢いであり、今年もOn-lineでの参加を選択した。泌尿器腫瘍の演題は、Oral abstract session 18(前立腺9、腎4、膀胱5)、Rapid oral abstract session18(前立腺8、腎4、膀胱5、陰茎1)、Poster session 221で構成されており、昨年と比べて多くポスターに選抜されていた。毎年の目玉であるPlenary sessionは、Practice changingな演題が5演題選出されるが、昨年に引き続き今年も泌尿器カテゴリーからは選出がなかった。Practice changingな演題ではなかったが、他領域に先駆けてエビデンスを創出した免疫チェックポイント阻害薬関連の研究の最終成績が公表されたり、新規治療の可能性を感じさせる報告が多数ありディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral abstract session 前立腺#LBA5006 相同組み換え修復遺伝子(HRR)変異を有する去勢感受性前立腺がんに対するニラパリブ+アビラテロン、rPFSを延長(AMPLITUDE試験)Phase 3 AMPLITUDE trial: Niraparib and abiraterone acetate plus prednisone for metastatic castration-sensitive prostate cancer patients with alterations in homologous recombination repair genes.Gerhardt Attard, Cancer Institute, University College London, London, United Kingdomニラパリブは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)-1/2の選択性が高く強力な阻害薬であり、日本では卵巣がんで使用されている。HRR遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)ではMAGNITUDE試験で、ニラパリブ+アビラテロン+prednisone併用(Nira+AP)による画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長が示されている。ASCO2025において、HRR遺伝子変異を有する転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)に対するNira+AP療法の有効性を検証したAMPLITUDE試験(NCT04497844)の結果が報告された。この試験のHRR遺伝子変異の定義は、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDK12、CHEK2、FANCA、PALB2、RAD51B、RAD54Lの生殖細胞系列または体細胞変異が含まれていた。患者はアビラテロン1,000mg+prednisone 5mgに加えて、ニラパリブ200mgあるいはプラセボを内服する2群にランダム化され、主要評価項目はrPFS、副次評価項目に症候性進行までの期間、全生存期間(OS)、安全性などが設定されていた。ランダム化された696例のうち、BRCA1/2変異は55.6%、High volume症例は78%であった。追跡期間中央値30.8ヵ月時点のrPFS中央値はNira+AP群で未到達、プラセボ+AP群で29.5ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.63、95%信頼区間(CI):0.49~0.80、p=0.0001であった。BRCA1/2変異群でもHR=0.52(95%CI:0.37~0.72)、p<0.0001であった。OSは中間解析であるがHR=0.79(95%CI:0.59~1.04)、p=0.10と報告された。重篤な有害事象は、Nira+AP群で75.2%、プラセボ+AP群で58.9%であり、非血液毒性では貧血(29.1%vs.4.6%)、高血圧(26.5%vs.18.4%)が多く、治療中止割合はそれぞれ11.0%と6.9%であった。AMPLITUDE試験は、HRR遺伝子を有する症例に絞って実施した第III相ランダム化比較試験で、mHSPCにおいてもNira+AP併用療法はrPFSを有意に改善し、OSにおいても良好な傾向を示した。日本は本試験に参加しておらず、Nira+AP療法が保険適用を取得する可能性はないが、同じくmHSPCを対象に実施中のTALAPRO-3試験(タラゾパリブ+エンザルタミドvs.プラセボ+エンザルタミド)の結果に期待が広がる内容であった。#5003 転移性前立腺がんにおけるPTEN遺伝子不活化はADT+DTX治療の効果予測因子(STAMPEDE試験付随研究)Transcriptome classification of PTEN inactivation to predict survival benefit from docetaxel at start of androgen deprivation therapy (ADT) for metastatic prostate cancer: An ancillary study of the STAMPEDE trials.Emily Grist, University College London Cancer Institute, London, United Kingdomドセタキセル(DTX)は転移性の前立腺がんに対して有効な治療法であるが、その効果が得られる症例にはばらつきがある。STAMPEDE試験のプロトコルに参加し(2005年10月〜2014年1月)ADT単独vs.ADT+DTX±ゾレドロン酸またはADT単独vs.ADT+アビラテロン(Abi)に1:1でランダム化された転移性前立腺がん患者の腫瘍サンプルを用いて、全トランスクリプトームデータによりPTENの不活化が治療アウトカムに与える影響を検討した報告である。PTENの不活化は、既報のスコアリング手法(Liuら, JCI, 2021)に基づいて定義された(活性あり:スコア≦0.3、活性なし:スコア>0.3)。また、Decipherスコアは高リスク>0.8、低リスク≦0.8と定義した。Cox比例ハザードモデルを用い、治療割り付けとPTEN活性との交互作用を評価し、年齢、WHO PS、ADT前PSA、Gleasonスコア、Tステージ、Nステージ(N0/N1)、転移量(CHAARTED定義によるHigh volume/ Low volume)で調整した。主要評価項目はOSであり仮説の検定には部分尤度比検定を用いた。全トランスクリプトームプロファイルを832例の転移性前立腺がん患者から取得し、これは試験全体の転移性前立腺がんコホート(n=2,224)と代表性に差はなかった。PTEN不活性腫瘍は419例(50%)に認められ、PTEN mRNAスコアの分布はHigh volumeとLow volumeで差はなかった(p=0.310)。ADT+Abi群(n=182)では、PTEN不活性はOS短縮と有意に関連(HR=1.56、95%CI:1.06~2.31)し、ADT+DTX群(n=279)では、有意な差は認められなかった(HR=0.93、95%CI:0.70~1.24)。PTEN不活化とDTX感受性は有意な交互作用(p=0.002)があり、PTEN不活性腫瘍ではDTX追加により死亡リスクが43%低下(HR=0.57、95%CI:0.42~0.76)し、PTEN活性腫瘍では有意差なし(HR=1.05、95%CI:0.77~1.43)であった。この傾向は転移量にかかわらず一貫しており、Low volume患者(n=244)ではPTEN不活性:HR=0.53、PTEN活性:HR=0.82、High volume患者(n=295)ではPTEN不活性:HR=0.59、PTEN活性:HR=1.23であった。一方、アビラテロン群ではPTENの状態によらず治療効果は一定であり、PTEN不活性:HR=0.52、PTEN活性:HR=0.55(p=0.784)であった。また、PTEN不活性かつDecipher高リスク腫瘍にDTXを追加した場合、死亡リスクが45%低下(HR=0.55、99%CI:0.34~0.89)と推定された。このバイオマーカーの併用による層別化は、ADT+アビラテロン+ドセタキセルの3剤併用療法の適応を検討する際の指標として今後の臨床応用が期待されると演者は締めくくった。日本ではmHSPCへのupfront DTXはダロルタミドとの併用に限られるが、PTEN遺伝子に注目した戦略が重要と考えられ、ますます診断時からの遺伝子パネル検査の保険償還が待たれる状況となってきた。Oral abstract session 腎/膀胱#4507 VHL病関連悪性腫瘍におけるベルズチファンの長期効果 (LITESPARK-004試験)Hypoxia-inducible factor-2α(HIF-2α)inhibitor belzutifan in von Hippel-Lindau(VHL)disease-associated neoplasms: 5-year follow-up of the phase 2 LITESPARK-004 study.Vivek Narayan, Hospital of the University of Pennsylvania, Philadelphia, PAHIF-2α阻害薬のベルズチファンは、VHL病に関連する腎細胞がん(RCC)、中枢神経血管芽腫、膵神経内分泌腫瘍(pNET)を対象に、即時の手術が不要な症例に対して治療薬として日本でも2025年6月に承認された。これは、非盲検第II相試験のLITESPARK-004試験(NCT03401788)の結果に基づくものであるが、ASCO2025では5年以上の追跡期間を経た最新の結果が報告された。対象は以下を満たす症例であった:生殖細胞系列のVHL遺伝子異常を有する測定可能なRCCを1つ以上有する即時の手術が必要な3 cm超の腫瘍なし全身治療歴なし転移なしPS 0~1治療はベルズチファン120mgを1日1回経口投与で、病勢進行、不耐容、または患者自身の希望による中止まで継続された。主要評価項目は、VHL病関連RCCにおける奏効率(ORR)であった。追跡期間中央値は61.8ヵ月、ベルズチファンの投与を受けた61例中35例(57%)が治療継続中であった。ORRは、RCCで70%、中枢性神経血管芽腫で50%、pNETで90%、網膜血管芽腫(18眼/14例)では100%の眼において眼科的評価で改善を確認。奏効期間中央値は未到達(範囲:8.5~61.0ヵ月)であった。重篤な治療関連有害事象は11例(18%)に認められた。最も多かった貧血はAny gradeで93%、Grade 3以上で13%と報告された。そのマネジメントとしてエリスロポエチン製剤(ESA)のみを使用したのは11例(18%)、輸血のみは2例(3%)、ESAと輸血を用いたのは5例(8%)であり、その他の治療が39例(64%)で選択されていた。5年間の追跡後も、ベルズチファンは持続的な抗腫瘍効果と管理可能な安全性プロファイルが報告され、多数の患者が治療を継続していた。即時手術を要しないVHL病関連のRCC、中枢神経血管芽腫、pNET患者において有用な治療選択肢であり、今後われわれも使いこなさなければいけない薬剤である。Rapid Oral abstract session 腎/膀胱#4518 MIBCに対する術前サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ併用療法と効果に応じた膀胱温存療法(SURE-02試験)First results of SURE-02: A phase 2 study of neoadjuvant sacituzumab govitecan (SG) plus pembrolizumab (Pembro), followed by response-adapted bladder sparing and adjuvant pembro, in patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC).Andrea Necchi,Department of Medical Oncology, IRCCS San Raffaele Hospital,Vita-Salute San Raffaele University, Milan, Italy筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療は、術前化学療法を伴う膀胱全摘除術(RC)である。術前ペムブロリズマブ(Pem)やサシツズマブ ゴビテカン(SG)の単剤療法は、それぞれPURE-01試験およびSURE-01試験においてMIBCに対する有効性を示している。SURE-02試験(NCT05535218)は、術前SG+Pem併用療法および術後Pemを用いた第II相試験であり、臨床的奏効に応じた膀胱温存の可能性も含んでいる。ASCO2025ではその中間解析の結果が報告された。cT2~T4N0M0のMIBCと病理診断され、化学療法の適応がない、もしくは化学療法を拒否し、RC予定の患者を対象に、Pem 200mgをDay1に、SG 7.5mg/kgをDay1およびDay8に3週間間隔で4サイクル投与した。手術後はPemを3週間間隔で13サイクル投与した。臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者(MRI陰性かつ再TUR-BTでviableな腫瘍が検出されない[ypT0]症例)については、RCの代わりに再TUR-BTが許容され、その後Pem 13サイクルを投与した。主要評価項目はcCR割合で、閾値30%、期待値45%としてα=0.10、β=0.20で検出するための症例数は48例と設定された。2段階デザインであり、1段階目を23例で評価し、cCR7例以上であれば2段階目に進む計画であった。ASCO2025では、SURE-02試験の中間報告がなされた。2023年10月~2025年1月までに40例が治療を受け、31例が有効性評価対象となった。cCR割合は12例(38.7%)、95%CI:21.8~57.8であり、全員が再TUR-BTを施行された。ypT≦1N0-x割合は16例(51.6%)であった。重篤な有害事象は4例(12.9%)で、SGの投与中止2例、1週間の投与延期1例があったが、SGの減量は不要であった。23例でトランスクリプトーム解析が行われ、病理学的完全奏効(ypT0)について、Luminal腫瘍では非Luminal腫瘍に比べてypT0率が高かった(73%vs.25%、p=0.04)。Lund分類においては、ゲノム不安定型では67%、尿路上皮型では57%、基底/扁平上皮型では20%、神経内分泌型では0%であった。間質シグネチャーが高い症例では非ypT0である割合が高く(p=0.004)、一方でTrop2(p=0.15)およびTOP1(p=0.79)の発現はypT0との関連を示さなかった。周術期におけるSG+Pembro療法は、良好なcCR率と許容可能な安全性プロファイルを示し、約40%の症例で膀胱温存が可能であった。本試験において、このまま主要評価項目を達成するかどうかは現時点で期待値以下であるため少し不安はあり、また得られる結果も決して確定的なものではない。しかしながら、中間報告の時点で膀胱温存の可能性を40%の症例で達成していることは非常に興味深い内容であった。今後、検証的な第III相試験においても膀胱温存が重要なアウトカムとして設定され、再発や死亡といった腫瘍学的に重要なアウトカムを損なわない結果が達成できる日が訪れることを期待したい。

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双極性うつ病に対する抗うつ薬使用と躁転リスク

 双極性うつ病治療における抗うつ薬の使用は、気分極性の転換を引き起こす可能性が懸念され、依然として議論の的となっている。中国・首都医科大学のLei Feng氏らは、双極性うつ病患者に対する抗うつ薬使用と軽躁/躁転リスクとの関連を検証するため、リアルワールドにおける多国籍観察研究を実施した。Health Data Science誌2025年6月3日号の報告。 2013年1月〜2017年12月の4つの電子医療記録データベース(IQVIA Disease Analyzer Germany、IQVIA Disease Analyzer France、IQVIA US Hospital Charge Data Master、北京安定医院)と1つの行政請求データベース(IQVIA US Open Claims)より得られた双極性うつ病患者の治療パターンに関するデータを収集し、分析した。抗うつ薬を投与された患者(AD群)と投与されなかった患者(非AD群)における双極性うつ病の初回診断日から730日後の軽躁/躁転リスクの発生率を比較し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、5つのデータベースより抽出された12万2,843例。・双極性うつ病に対し抗うつ薬を投与された患者の割合は60.6%。・双極性うつ病の初回診断日における平均年齢の範囲は37.50±15.72〜52.10±16.22歳。・傾向スコアマッチングにより潜在的交絡因子で調整した後、AD群の躁転リスクは、非AD群と比較し、有意な差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.96〜1.13、p=0.989)。・また、躁病治療薬の投与の有無に関わらず、差は認められなかった(HR:0.69、95%CI:0.38〜1.25、p=0.535)。 著者らは「双極性うつ病のマネジメントにおいて、抗うつ薬が実臨床で広く使用されていたが、抗うつ薬使用は、躁転リスクと関連していなかった。そのため、抗うつ薬は双極性うつ病の治療選択肢の1つとして考えられる」と結論付けている。

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1日1回の経口orforglipron、早期2型DMのHbA1c改善/NEJM

 早期の2型糖尿病成人患者において、GLP-1受容体作動薬orforglipronの1日1回40週間経口投与はプラセボと比較して、HbA1c値を有意に低下させた。米国・Velocity Clinical Research Center at Medical City DallasのJulio Rosenstock氏らACHIEVE-1 Trial Investigatorsが、中国、インド、日本、メキシコおよび米国で実施した第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ACHIEVE-1試験」の結果を報告した。orforglipronは、2型糖尿病および体重管理を適応症として臨床開発中の、経口投与可能な低分子非ペプチドGLP-1受容体作動薬であり、有効性と安全性に関する追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2025年6月21日号掲載の報告。orforglipronの3用量をプラセボと比較、1日1回40週間投与 研究グループは、食事療法および運動療法のみでは血糖コントロールが不十分な2型糖尿病を有し、登録前3ヵ月以内に他の血糖降下薬(経口または注射)の投与を受けていない18歳以上の患者(インスリン未治療、HbA1c値7.0~9.5%、BMI値23.0以上)を、orforglipron 3mg群、12mg群、36mg群またはプラセボ群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回40週間投与した。 orforglipron群は、いずれも1mgより投与を開始し、4週ごとに各群の規定用量まで漸増(3mg、6mg、12mg、24mg、36mg)した。 主要エンドポイントは、40週時におけるHbA1c値のベースラインからの変化量、重要な副次エンドポイントは、40週時における体重のベースラインからの変化率とした。HbA1c値の推定平均変化量、orforglipron群は-1.48~-1.24%ポイント 2023年8月9日~2025年4月3日に559例が無作為化された(orforglipron 3mg群143例、12mg群137例、36mg群141例、プラセボ群138例)。患者背景は、平均罹病期間4.4年、平均HbA1c値8.0%、平均体重90.2kg、女性が48.1%であった。 40週時におけるHbA1c値のベースラインからの推定平均変化量は、3mg群-1.24%ポイント、12mg群-1.47%ポイント、36mg群-1.48%ポイント、プラセボ群-0.41%ポイントであり、orforglipronの3群すべてでプラセボ群よりもHbA1c値が有意に低下した。 推定平均変化量のプラセボ群との差は、3mg群-0.83%ポイント(95%信頼区間[CI]:-1.10~-0.56)、12mg群-1.06%ポイント(-1.33~-0.79)、36mg群-1.07%ポイント(-1.33~-0.81)であり(すべてp<0.001)、40週時の平均HbA1c値はorforglipron群で6.5~6.7%であった。 40週時における体重のベースラインからの変化率は、3mg群-4.5%、12mg群-5.8%、36mg群-7.6%、プラセボ群-1.7%であった。 主な有害事象は軽度~中等度の胃腸障害で、そのほとんどは用量漸増中に発現した。重症低血糖は報告されなかった。投与中止に至った有害事象は、orforglipron群4.4~7.8%、プラセボ群1.4%であった。

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先行的腎移植にベネフィットはあるのか

 将来、腎移植が必要になる可能性がある人は、どの時点で移植を受けるべきなのだろうか。その答えの手がかりとなり得る研究結果が発表された。この研究では、腎機能がある程度保たれている段階で腎移植(先行的腎移植)を受けても、透析が必要となるほど悪化してから移植を受けた場合と比べて死亡リスクに有意な差は認められないことが示された。米イェール大学医学部生体腎臓ドナープログラムの医療ディレクターを務めるAbhishek Kumar氏らによるこの研究結果は、「Transplantation Proceedings」5月号に掲載された。 Kumar氏は、「この研究結果は、腎移植は本当に必要になるまで待ってから受けるべきであることを示している。そうでなければ、自分の腎臓が機能する期間を無駄にしてしまうことになる」と述べている。 透析は、機能不全に陥った腎臓に代わって血流から余分な水分や老廃物を排出する治療法だが、透析を受けている患者に身体的・精神的負担を伴い、免疫機能の低下も起こりやすい。このため、一般的に末期腎不全患者は透析が必要になる前に腎移植を受けた方が良いと考えられている。 Kumar氏は、「献腎移植リストに登録されている場合、いつ移植を受けるかを自分で決めることはできない。一方、生体ドナー臓器を移植する場合には、移植のタイミングについてある程度は自分で決められるが、問題は、いつ移植を受けるのが最善かということだ」と話す。 この点を明らかにするためにKumar氏らは、2000年から2020年の間に成人に実施された28万8,309件の腎移植データの分析を行った。これらの腎移植のうち、5万2,018件(18%)は先行的腎移植であった(献腎移植33%、生体腎移植67%)。これらのレシピエントは、移植時のeGFR(推算糸球体濾過量)の値に応じて、4群(10mL/分/1.73m2未満、10以上15mL/分/1.73m2未満、15以上20mL/分/1.73m2未満、20mL/分/1.73m2以上)に分類された。 先行的腎移植を受けた患者は、白人、高学歴、民間保険加入者が多い傾向が認められた。eGFRに応じた4群間で死亡率を比較したところ、統計学的に有意な差は認められなかった。また、生体ドナーからの先行的腎移植を受けた患者のみを対象にしたサブグループ解析でも、死亡率に統計学的に有意な差はなかった。 Kumar氏は、「私は患者に、移植を受けるのに最適なタイミングは透析が必要になったときだと伝えることがある」と話す。ただし同氏は、透析や移植に最適なタイミングは人によって異なり、予測するのは難しいことを指摘し、「可能であれば透析は避けるべきだが、早期に移植を受けることがその解決策になるわけではない」と述べている。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Pulsed Field or Cryoballoon Ablation for Paroxysmal Atrial FibrillationReichlin T, et al. N Engl J Med. 2025;392;1497-1507.<SINGLE SHOT CHAMPION試験>:心房細動へのアブレーション、パルスフィールドか冷凍バルーンか心房細動へのアブレーションは本邦でも普及しています。従来の高周波や冷凍バルーンによる熱的アブレーションは、組織特異性が低く心筋周辺組織への影響が問題でした。非熱的アブレーション法であるパルスフィールドアブレーションを評価した研究です。冷凍バルーンに比べ、パルスフィールドアブレーションが再発予防効果において非劣性を示しました。この新技術の普及に弾みがつくのか注目されます。Lorundrostat Efficacy and Safety in Patients with Uncontrolled HypertensionLaffin LJ, et al. N Engl J Med. 2025;392;1813-1823.<Advance-HTN試験>:治療抵抗性高血圧へのアルドステロン合成酵素阻害薬に注目コントロール不良の治療抵抗性高血圧への新規降圧薬であるアルドステロン合成酵素阻害薬のlorundrostat(ロルンドロスタット)を評価した研究です。24時間平均収縮期血圧を有意に低下させ、安全性も許容範囲内にあると報告されました。難治性高血圧の患者は一定数存在します。循環器領域で血圧管理は本質的な命題であり、降圧薬開発は永続的なテーマです。Efficacy and safety of clopidogrel versus aspirin monotherapy in patients at high risk of subsequent cardiovascular event after percutaneous coronary intervention (SMART-CHOICE 3): a randomised, open-label, multicentre trialChoi KH, et al. Lancet. 2025;405;1252-1263.<SMART-CHOICE 3試験>:PCI患者のSAPTはクロピドグレルかアスピリンかPCI患者のDAPT完了後の抗血小板薬の単剤療法(SAPT)は、従来から慣れ親しんだアスピリンなのか、P2Y12阻害薬のクロピドグレルなのかは古くて新しい課題です。韓国で虚血イベント再発高リスク患者を対象にして施行されたこの無作為ランダム化試験では、クロピドグレル群で出血を増加させずに全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合リスクの低下をもたらしたことを報告しました。Cardiac Arrest During Long-Distance Running RacesKim JH, et al. JAMA. 2025;333;1699-1707.<RACER 2研究>:マラソンでの心停止は減少も一定数発生、冠動脈疾患が最多マラソン中の心停止の発生率と転帰を調べた臨床研究。2012年にNEJM誌に発表されたRACER1研究の続報的な内容です。2010~23年の間に米国で公認されたフルマラソンとハーフマラソン443大会での走行中の心停止事故は、2000~10年を対象としたRACER 1と比して発生率は同じでしたが心臓死は半減していました。原因は冠動脈疾患が最多でした。日本では市民参加型マラソン大会が全国各地で開催されており、参考になるデータと思われます。Phase 3 Open-Label Study Evaluating the Efficacy and Safety of Mavacamten in Japanese Adults With Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy - The HORIZON-HCM StudyKitaoka H, et al. Circ J. 2024;89:130-138.<HORIZON-HCM試験>:閉塞性肥大型心筋症の治療を変革する新規薬剤の日本人データ閉塞性肥大型心筋症(HCM)の選択的心筋ミオシン阻害薬であるマバカムテンの治療効果を日本人で検証した臨床研究です。30週の時点での有効性・安全性・忍容性について報告しています。2024年12月25日論文掲載であり、2024年下半期ではなく今回の2025年上半期での紹介となりました。2025年3月の日本循環器学会年次集会で54週のデータも報告されています。本邦の実臨床でも使用可能となったばかりの新規薬剤であり、今後も注目していきたいところです。

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がん診療に明日から役立つtips満載、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナー【ご案内】

 2025年7月20日(日)に、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナーが御茶ノ水での現地開催とWeb上のLIVE配信のハイブリッド形式で開催される。白井 敬祐氏(ダートマス大学腫瘍内科)、中村 能章氏(Department of Oncology, University of Oxford)、佐田 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学)を講師として迎え、がん診療における臨床推論、救急対応、感染症、コミュニケーション方法など幅広い領域を扱う。亀田総合病院腫瘍内科スタッフによる、ベッドサイドで役立つ「実臨床における思考過程」を解説する講座も用意されており、がん診療において明日から役立つtipsを学ぶことができる内容となっている。 開催概要は以下のとおり。開催日時:2025年7月20日(日)9:30~17:00※セミナー終了後には、御茶ノ水周辺で懇親会を予定(現地参加者のみ対象)場所:御茶ノ水ソラシティ対象:医学生、初期研修医、後期研修医、総合内科医 のほか、がん診療に興味を持っているすべての医療従事者定員:現地40人(数席追加予定)、オンライン200人受講料:現地参加・オンライン参加いずれも2,000円※現地参加の方には,昼食(お弁当)を用意※懇親会は無料で参加可能※いずれも事前振り込み申込締切:7月11日(金)※キャンセルポリシー7月11日(金)まで:全額返金(手数料申込者負担)7月12日(土)から:返金不可■参加登録はこちら◆セミナー参加者への特典◆・開催後に期間限定でオンデマンド配信を視聴可能・大山氏、白井氏、佐田氏も現地で講演予定。今後のキャリアなどに関する相談も可能(現地参加者のみ)。【プログラム】※スケジュールや講演内容は、一部変更になる可能性があります。9:00 開場9:30~10:20がん薬物療法のエッセンス(亀田総合病院腫瘍内科 部長 大山優)10:30~11:20チーム医療の31のTipsとがん診療で(以外でも)使える(かもしれない)裏技~すぐ怒る医者VSつっけんどんな看護師~(米国ダートマス大学腫瘍内科 教授 白井敬祐)11:30~12:00腫瘍×循環器~EFだけじゃだめですか~(亀田総合病院腫瘍内科 木村恵理)12:05~12:20 研修プログラム説明12:20~13:00 昼食13:00~13:30Oncologic Emergency~腫瘍救急24時~(亀田総合病院腫瘍内科 藤森賢)13:40~14:10がん患者のAdvance Care Planning(亀田総合病院腫瘍内科 横溝加奈子)14:20~15:10抗腫瘍療法における感染症診療update(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学 佐田竜一)15:20~15:50症例から学ぶ腫瘍免疫~irAEの多彩な世界~(亀田総合病院腫瘍内科 小口億人)16:00~16:50My Journey in Oncology:がんの克服を目指して(Department of Oncology, University of Oxford 中村能章)17:00 閉会18:00~20:00 @御茶ノ水付近懇親会(途中参加・退室可能)【お問い合わせ先】亀田総合病院腫瘍内科事務局e-mail:oncology.medical@kameda.jp

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僧帽弁逆流症、MTEER後の予後予測にNT-proBNPが有用

 一次性(器質性)僧帽弁逆流症(Primary Mitral Regurgitation:PMR)に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClipによるMTEER)を受ける患者のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を用いた予後予測の真価は不明である。今回、PRIME‐MR Investigatorsのドイツ・ケルン大学のPhilipp von Stein氏らは、MTEERを受けたPMR患者のNT-proBNPが、3年以内の死亡または心不全入院と独立して関連していたことを明らかにした。European Journal of Heart Failure誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。 PRIME-MRは、MTEER治療を受けたPMR患者3,083例を対象とした、後ろ向き国際多施設レジストリ。本研究では、NT-proBNPとPMR患者の臨床転帰との関連性を評価し、死亡リスク層別化ツールであるMitral Regurgitation International Database(MIDA)スコアの付加価値として検討した。対象患者はNT-proBNPの追跡調査が可能な1,382例(年齢中央値:81歳、女性:47%、NYHA心機能分類III/IV:82%、EuroSCORE IIのスコア中央値:4.1%)で、患者はベースラインのNT-proBNP三分位に基づき、T1(第1三分位)、T2(第2三分位)、T3(第3三分位)の3群に層別化された。主要評価項目は3年以内の死亡または心不全入院であった。 主な結果は以下のとおり。・1,102例の追跡調査(中央値:2.41年)において、NT-proBNPの中央値は1,991pg/mL(T1:578pg/mL、T3:6,285pg/mL)で、384例(48.5%)が主要評価項目に到達、NT-proBNPの高三分位群で達成率が高かった(T1:40.0%、T2:46.8%、T3:58.1%)。・T1患者は、T2およびT3患者と比較してイベント発生率が有意に低く、同様にT2患者はT3患者と比較してイベント発生率が有意に低かった。・対数変換されたNT-proBNPは、NYHAクラス、ヘモグロビン、クレアチニン、心房細動で調整後、主要評価項目を独立して予測した(調整ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.07~1.28、p<0.001)。・修正MIDAスコア(中央値:9)を有する1,041例において、当初、修正MIDAスコアは主要評価項目と関連していた(調整HR:1.10、95%CI:1.04~1.17、p=0.002)が、NT-proBNP値で調整すると有意性は失われた。一方、NT-proBNPは依然として独立した予測因子であった(調整HR:1.20、95%CI:1.07~1.34、p=0.002)。 研究者らは「NT-proBNPを臨床評価に組み込むことで、PMR患者のリスク層別化が改善され、NT-proBNPが低い場合の早期介入による臨床転帰の最適化が期待される」としている。

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バレット食道の経過観察、カプセルスポンジ検査が有用/Lancet

 英国・ケンブリッジ大学のW Keith Tan氏らDELTA consortiumは、食道全体から細胞を採取するデバイス(カプセルスポンジ)とバイオマーカーを組み合わせて、患者を3つのリスク群に層別化する検査法を開発し、英国の13施設にて2つの多施設前向きプラグマティック実装試験の一部として評価した結果、このリスク分類に基づく低リスクのバレット食道患者の経過観察では、内視鏡検査の代わりにカプセルスポンジを使用可能であることを明らかにした。内視鏡検査による経過観察はバレット食道の臨床標準であるが、その有効性は一貫していなかった。Lancet誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。臨床・カプセルスポンジいずれも陰性を低リスク群と定義 研究グループは、integrateD diagnostic solution for EarLy deTection of oesophageal cAncer (DELTA)研究およびNHSイングランド(National Health Service England[NHSE])の実装パイロット研究に参加した、非異形成バレット食道と診断され英国のガイドラインに従って経過観察を受けている18歳以上の連続症例を対象に、カプセルスポンジ検査を実施した。 採取したすべての検体はISO-15189認定検査施設にて中央評価し、年齢・性別・バレット食道長に基づく臨床バイオマーカーと、カプセルスポンジバイオマーカー(HE染色[正常、異形成、意義不明の異型]、ならびにp53染色[正常、不明瞭、過剰発現])に基づき、低リスク(両バイオマーカー陰性)、中リスク(臨床バイオマーカー陽性、カプセルスポンジバイオマーカー陰性)、高リスク(臨床バイオマーカーに関係なくカプセルスポンジバイオマーカー陽性[異形成またはp53過剰発現、あるいはその両方])に分類した。 主要アウトカムは、各リスク分類群における、治療を要する高度異形成またはがんの診断とした。低リスク群の高度異形成またはがんの有病率は0.4% 2020年8月~2024年12月に910例が登録された(DELTA研究505例、NHSE研究405例)。910例のうち138例(15%)が高リスク、283例(31%)が中リスク、489例(54%)が低リスクであった。 高リスク群において、あらゆる異形成またはがんの陽性的中率は37.7%(95%信頼区間[CI]:29.7~46.4)であった。高リスク群の中でも腺異型とp53異常の両方を有する集団は、高度異形成またはがんのリスクが最も高かった(低リスク群に対する相対リスク:135.8、95%CI:32.7~564.0)。 低リスク群における高度異形成またはがんの有病率は0.4%(95%CI:0.1~1.6)であり、あらゆる異形成またはがんの陰性的中率は97.8%(95%CI:95.9~98.8)、高度異形成またはがんの陰性的中率は99.6%(98.4~99.9)であった。 DELTA研究コホートにて機械学習アルゴリズムをテストしたところ、デジタル病理ワークフローの一環として機械学習アルゴリズムを用いることでp53病理診断を要する症例の割合を32%にまで減少させることができ、かつ陽性症例の見逃しはなかったことが示された。

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インスリン未治療の2型糖尿病、efsitora vs.グラルギン/NEJM

 インスリン治療歴のない2型糖尿病成人患者において、insulin efsitora alfa(efsitora)週1回固定用量投与はインスリン グラルギン(グラルギン)1日1回投与と比較し、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の改善に関して非劣性であることが示された。米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らQWINT-1 trial investigatorsが、米国、アルゼンチン、メキシコの71施設で実施した52週間の第III相無作為化非盲検treat-to-target試験「QWINT-1試験」の結果を報告した。これまでのtreat-to-target試験では、基礎インスリンの用量調整は少なくとも週1回、空腹時血糖値に基づいて行われてきたが、efsitoraは週1回投与の基礎インスリンであり、インスリン治療歴のない2型糖尿病成人患者において有用である可能性があった。NEJM誌オンライン版2025年6月22日号掲載の報告。52週時のHbA1c変化量に関し、efsitoraのグラルギンに対する非劣性を評価 研究グループは、インスリン治療歴のない2型糖尿病の成人患者(18歳以上、HbA1c値7.0~10.0%、BMI値45.0以下)を、efsitora週1回皮下投与群(efsitora群)またはインスリン グラルギンU100の1日1回皮下投与群(グラルギン群)に1対1の割合で無作為に割り付け、52週間投与した。 efsitora群では、週1回100Uから投与を開始し、目標空腹時血糖値を80~130mg/dLとして、必要に応じて4週間ごとに150U、250U、400Uのいずれかの固定用量に調整した。グラルギン群では、同様の目標血糖値で、従来の投与アルゴリズムに従って週1回以上の頻度で用量調整を行った。 主要エンドポイントは、52週時のHbA1c値のベースラインからの変化量で、非劣性マージンは群間差の両側95%信頼区間(CI)の上限が0.4%とした。最小二乗平均変化量は-1.19%vs.-1.16%、群間差-0.03%(95%CI:-0.18~0.12) 2023年1月14日~2024年7月17日に1,148例がスクリーニングされ、適格基準を満たした795例が無作為化された(efsitora群397例、グラルギン群398例)。 HbA1c値は、efsitora群ではベースラインの8.20%から52週時には7.05%に低下し(最小二乗平均変化量:-1.19%)、グラルギン群では8.28%から7.08%に低下した(最小二乗平均変化量:-1.16%)。推定群間差は-0.03%(95%CI:-0.18~0.12)であり、efsitoraのグラルギンに対する非劣性が示されたが、優越性は示されなかった(p=0.68)。 臨床的に重要な低血糖(54mg/dL未満)または重症低血糖(レベル3:治療のために介助を必要とする)の発現頻度は、efsitora群のほうがグラルギン群に比べて低かった(efsitora群0.50件/人年vs.グラルギン群0.88件/人年、推定発生率比:0.57[95%CI:0.39~0.84])。 52週時における平均インスリン総投与量は、efsitora群で289.1U/週、グラルギン群で332.8U/週(推定群間差:-43.7U/週、95%CI:-62.4~-25.0)、用量調整回数の中央値はそれぞれ2回および8回であった。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(消化器内科編~肝胆膵領域)

Immune-mediated adverse events and overall survival with tremelimumab plus durvalumab and durvalumab monotherapy in unresectable hepatocellular carcinoma: HIMALAYA phase 3 randomized clinical trialLau G, et al. Hepatology. 2025 May 16. [Epub ahead of print]<HIMALAYA試験>:肝細胞がんSTRIDE療法、imAEが治療効果の指標となる可能性近年注目される肝細胞がんの複合免疫療法について、HIMALAYA試験ではSTRIDE療法が生存期間を有意に延長することを示しました。本研究では、STRIDE群で免疫介在性有害事象(imAE)を経験した患者に良好な生存が認められ、imAEが治療効果の指標となる可能性が示唆されました。Phase 3 Trial of Semaglutide in Metabolic Dysfunction-Associated SteatohepatitisSanyal AJ, et al. N Engl J Med. 2025;392:2089-2099.<ESSENCE試験>:MASHへのセマグルチド、肝組織の改善と顕著な体重減少示す世界が注目する第III相試験において、800例のMASH患者を対象にセマグルチドが肝組織の改善と顕著な体重減少を両立させる効果を初めて明確に示しました。セマグルチドは糖尿病や肥満症の患者に広く使用されており、本結果は将来的なMASHへの保険適用取得に向けて大きく前進する意義深い成果です。Multi-zonal liver organoids from human pluripotent stem cellsReza HA, et al. Nature. 2025;641:1258-1267.<iPS細胞から「ミニ肝臓」作製>:3層構造の再現に成功ヒトのiPS細胞から、本物と同様の3層構造を持つ約0.5mmの「ミニ肝臓」を作り出すことに成功しました。肝臓の異なる機能を担う層(Zone)の再現に成功し、重度肝不全ラットへの移植で生存率が改善されました。iPS細胞からミニ臓器を作る技術は、肝臓病の解析や治療法開発への応用が期待されています。The impact of neoadjuvant therapy in patients with left-sided resectable pancreatic cancer: an international multicenter studyE. Rangelova, et al. Ann Oncol. 2025;36:529-542.<切除可能な左側膵がんに対する術前化学療法>:術前化学療法は有意に生存期間を改善左側切除可能膵がんにおいて、術前化学療法は初回手術単独より生存期間を有意に延長し、とくに腫瘍径が大きい例やCA19-9高値例で効果が顕著であり、今後の前向き試験が期待されます。Phase 3 Trial of Cabozantinib to Treat Advanced Neuroendocrine TumorsChan JA, et al. N Engl J Med. 2025;392:653-665.<CABINET試験>:進行性神経内分泌腫瘍に対するカボザンチニブ、PFSを有意に延長カボザンチニブは進行性膵外・膵神経内分泌腫瘍(NET)に対し、プラセボと比べて有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、客観的奏効も一部で認められました。安全性についても、既知の範囲で管理可能と考えられました。

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多職種連携在宅移行支援は費用対効果に優れる?【論文から学ぶ看護の新常識】第21回

多職種連携在宅移行支援は費用対効果に優れる?多職種が連携して行う在宅移行支援の費用対効果を検証した研究で、同支援は高い確率で費用対効果に優れることが示された。Romain Collet氏らの研究で、International Journal of Nursing Studies誌オンライン版2025年5月3日号に掲載された。多職種連携在宅移行支援の費用対効果:システマティックレビューとメタアナリシス研究チームは、多職種が連携して行う在宅移行支援の費用対効果に関するエビデンスを収集、評価、統合することを目的にシステマティックレビューとメタアナリシスを実施した。Medlineを含む4つのデータベースを、創設時から2024年7月まで検索した。研究対象は、病院に入院し自宅へ退院した成人患者を対象に、多職種による在宅移行支援の費用対効果を通常ケアと比較したランダム化比較試験であり、効果指標として、生活の質(QOL)または質調整生存年(QALY)を報告している研究を対象とした。結果は、経済的な視点と追跡期間によって層別化し、エビデンスの確実性はGRADEアプローチを用いて評価した。主要評価項目は、増分純貨幣便益(INMB)とした。主な結果は以下の通り。13件の試験、4,114例の患者が対象に含まれた。12ヵ月間の追跡評価(医療提供者の視点):多職種連携在宅移行支援は、通常ケアと比較して医療費を削減したものの、そのエビデンスの確実性は「低い」ものであった(平均差:−3,452ユーロ、95%信頼区間[CI]:−8,816~1,912)。QALYには両群に差は認められなかった(平均差:0.00、95%CI:−0.03~0.04)。費用対効果の確率は、支払意思額が0ユーロ/QALYの場合で90%であり、支払意思額が高くなっても84%とわずかに減少するのみであった(確実性は「中等度」)。6ヵ月間の追跡評価(医療提供者の視点):費用対効果の確率は、支払意思額0ユーロ/QALYの場合で43%、10万ユーロ/QALYで87%の範囲にあり、支払意思額が5万ユーロ/QALYで80%を超えた(確実性は「低い」~「中等度」)。社会的視点:社会的視点では、費用対効果の確率はより低くなった。これは主に、相反する結果を示した研究の数が限られていたためである。多職種連携在宅移行支援は、費用対効果が高い可能性が示された。高齢化が進み、複数の疾患を抱える患者さんが増える中で、病院から自宅へのスムーズな移行を支えるケアの重要性はますます高まっています。とくに退院直後は、患者さんの状態が不安定になりやすく、適切な支援がなければ再入院のリスクも高まります。本研究は、医師、看護師、リハビリ専門職、栄養士、ソーシャルワーカーといった多様な専門職が連携して行う在宅移行支援(多職種連携在宅移行支援)が、費用対効果の観点からみてどうなのかを、質の高い統計手法で包括的に評価したものです。結果の解釈には、質調整生存年(QALY)という指標が鍵になります。「完全に健康な状態で1年間過ごすこと」を「1QALY」として、医療によってどれだけの「健康な時間」が増えたかを測る世界共通の指標です。研究結果として、12ヵ月間の追跡で医療費を削減する可能性が示唆されました。さらに、支払意思額(WTP)が0ユーロ/QALY、つまりQALYの改善という価値をまったく考慮しなかったとしても、費用削減だけで元が取れる確率が90%というのは注目すべき点です。この結果は、質の高い在宅移行支援が、結果的に医療資源の効率的な利用につながる可能性を示しています。一方で、研究チームも指摘している通り、エビデンスの確実性にはまだ課題があり、とくに社会全体の視点からの評価は研究数が少なく、結論を出すには至っていません。また、介入内容の多様性や対象患者、医療システムの差による影響も大きく、どのような状況で、どのような介入が最も費用対効果が高いのかを明らかにするには、さらなる質の高い研究が求められます。しかしながら、この研究は、多職種連携による在宅移行支援の経済的な価値を明らかにする重要な一歩です。今後の政策決定や医療現場での実践において、費用対効果を考慮した質の高いケアモデルの構築を促進する上で、非常に参考になる研究と言えるでしょう。論文はこちらCollet R, et al. Int J Nurs Stud. 2025 May 3. [Epub ahead of print]

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