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日本人アルツハイマー病高齢者の手段的日常生活動作に対する影響

 鹿児島大学の田平 隆行氏らは、地域在住のアルツハイマー病(AD)高齢者における認知機能障害の重症度による手段的日常生活動作(IADL)の特徴を明らかにするため、生活行為工程分析表(PADA-D)を用いた検討を行った。IADLの工程を詳細に分析した結果、著者らは、地域在住のAD高齢者において重症度による影響の有無といった工程の特徴を明らかにできるとし、IADLのリハビリテーションやケアが在宅での生活を継続するうえで役立つ可能性を報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月15日号の報告。 日本の医療センターおよびケアセンター13施設より募集した地域在住のAD高齢者115例を対象に、横断的研究を実施した。認知機能障害の重症度はMMSEを用いて3群(軽度:20以上、中等度:20未満10以上、重度:10未満)に分類し、共変量で調整した後、IADLスコアとPADA-DのIADL 8項目について群間比較を行った。PADA-Dの各IADL項目に含まれる5つの実行可能なプロセスの割合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・IADLスコアは、交通手段の使用および金銭管理能力を除き、AD重症度と共に独立した低下が認められた。とくに買い物(F=25.58)、電話を使用する能力(F=16.75)、服薬の管理(F=13.1)において認められた。・PADA-Dの工程ごとの調査では、いくつかの工程は認知機能障害の重症度による影響を受ける場合、受けない場合があることが明らかとなった。・たとえば、調理において、献立は重症度の影響を受けるが(ES=0.29)、食材の準備は影響を受けなかった。

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たくさんある睡眠薬、どれを使うべきか (解説:岡村毅氏)

 睡眠薬はとてもたくさんの種類がある。そして、それぞれがエビデンスの裏付けがある。具体的には、プラセボ(偽薬)あるいは従来の薬と比較して、膨大な数のスタディが行われているのである。効果があるとか、有害事象が少ないとか、それなりのよい結果が積み重ねられて、市場に出てくる。 この膨大な数のスタディをまとめて、そもそもどの薬が、効果がきちんとあって、有害事象が少ないか、一望しようというのがネットワークメタ分析である。 精神科というのは、患者さんがとても多く、社会的ニーズが大きい。同時に、病態や治療の数値化が難しい(たとえば高血圧の治療なら血圧という数値がすべてを物語るのと真逆だ)。よって、とくにさまざまな薬が乱立する傾向にある。 抗うつ薬や抗精神病薬は、本当にたくさん種類があり、専門医でも覚えきれないくらいであるが、これに一定の解を出したのがこのネットワークメタ分析である。抗うつ薬に関しては2009年の論文1)が有名であるが、研究チームにMeta-Analysis of New Generation Antidepressants (MANGA) Study groupというしゃれた名前が付けられており、マンガスタディとして広く知られていて、このコラムでも以前書いた2)。また抗精神病薬に関しては2013年の論文3)が有名だ。この手法はオックスフォード大学のCipriani教授や京都大学の古川教授が世界の第一人者である。 さて本論文は睡眠薬のネットワークメタ分析である。とくに、これまでは短期的な効果のみが治験でみられていたが、実際には長期的効果も重要であり、この分析では長期と短期の両方をみている点も魅力的だ。日本で使用可能な薬剤を中心に見てみよう。 ざっくりと結果を眺めると臨床的な理解にとても近くて面白かった。 まずベンゾジアゼピンは短期的には効果があるが、長期的には効果は少なく、有害事象が結構多い。この手の薬は短期的に効果があるので年季の入った患者さんに強く求められがちなのであるが、専門家としては長期的には効果が少ないことや有害事象の多さを知っているので、簡単には処方したくない。そこで患者・医師間の紛争が起きがちである。 ベンゾジアゼピンを改良したいわゆるZ薬(ゾルピデムやエスゾピクロン)は短期的にも長期的にも効果があるが、やはり有害事象が多いのは気になる。とくにゾルピデムは多いのかもしれない。 新しいタイプの薬(メラトニンに作用するラメルテオンや、オレキシンに作用するレンボレキサント)は、短期的には効果が感じられないが長期的には効果がある。そして有害事象も少ない。レンボレキサントはラメルテオンよりも効果は強いかもしれない。 なお「プラセボ」という薬は、長期的には効果が少しありそうだが有害事象も少しある(もちろん冗談です)。 一言で言うとこうなるか…すぐに効果を得たい場合はエスゾピクロンを考慮するが、やはり有害事象には気を付けよう。ベンゾジアゼピンは何かと問題が多いことは以前から言われているし、長期的な効果も薄いので使わないほうがよさそうだ。レンボレキサントは、短期はともかく長期的には効果があるので、きちんと患者さんが納得するなら使いたいところだ。 できる臨床医に、最近の睡眠薬の使い方を一言で述べてもらうと、まさにこうなりそうだ。また、言うまでもなく大前提として基盤にある精神疾患や身体疾患の治療もきわめて重要だ(この論文のイントロダクションにも書いてある)。非薬物療法が理想的なのは当たり前だが、現実は専門家も施設も足りない(これもまたこの論文のイントロダクションにも書いてある)ので、結局安価で広く使える薬物療法が世界中で行われている。この論文は、社会の現実を見据えたとても妥当な論文だと思われる。

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ASCO2022 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2022 ASCO Annual MeetingCOVID-19の影響で2年続けてバーチャル開催だったASCO Annual Meetingですが、本年は3年ぶりに現地開催(オンラインもあり)となりました。本年のPresidential Themeは“Advancing Equitable Cancer Care Through Innovation”でした。会長のDr. Everett E. Vokesによれば、腫瘍学におけるイノベーションは、新規治療法だけでなく、既存の治療法の改良、遠隔医療によるアクセスの改善、さらには臨床試験の適格基準の見直しなどにも及ぶとのことです。今年の泌尿器がん領域のScientific Programは、大規模臨床試験の長期フォローアップデータやpost-hoc解析の報告が多かったように思います。そのうちいくつかを紹介いたします。ENZAMET 5年フォローアップデータ(Abstract # LBA5004)ENZAMET[試験(NCT02446405)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+第1世代抗アンドロゲン薬)と比べてOSを改善すること(HR:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)がすでに報告されています(Davis ID, N Engl J Med. 2019)。今回1,125例の組み入れ患者のうち、470のOSイベントが発生した約5年のフォローアップデータが公表されました。標準治療群の5年OSは57%だったのに対し、エンザルタミド群の5年OSは67%と有意な改善効果が示されました(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84、p<0.001)。サブグループ解析でもほぼ一貫してエンザルタミド群のOSに対するベネフィットが示されました。中でも低腫瘍量かつドセタキセル非併用の患者においてエンザルタミド上乗せのベネフィットが顕著であったと報告されています。TheraP 3年フォローアップデータ(Abstract # 5000)TheraP試験(NCT03392428)からは3年フォローアップのデータが報告されました。本試験はドセタキセル治療後の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する、177Lu-PSMA-617 (LuPSMA)とカバジタキセルの有効性を比較したもので、すでにPSA response rate(66% vs.37%)、RECIST response rate(49% vs.24%)、PFS(HR:0.63)、Grade3~4 の有害事象の発生頻度(33% vs.53%)、そしてPRO(patient-reported outcomes)においてLuPSMAが有意に優れていたことが報告されています(Lancet. 2021)。今回は3年フォローアップに基づくOSのデータが公表されました。36ヵ月時点までのRestricted mean survival time(RMST)で評価されたOSは19.1ヵ月vs.19.6ヵ月で有意差を認めませんでした。ARAMIS post-hoc解析による転移進行パターン(Abstract # 5044)ARAMIS試験(NCT02200614)は高リスク(PSA-DT≦10ヵ月)の非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対するダロルタミドの有効性を検証したもので、プラセボ群と比較してMFS(metastasis-free survival)を約2年延長することがすでに報告されています(Fizazi F, et al. N Engl J Med. 2019;380:1235-1246.)。今回はPSA上昇を伴う転移進行と臨床的進行(疼痛の出現が先行)についての検討結果が公表されました。データカットオフ時点でダロルタミド群の13.6%、プラセボ群の28.5%が転移進行を来していました。そのうち骨転移のみを示した患者はダロルタミド群で46.2%、プラセボ群で39.2%、リンパ節転移のみを示した患者はダロルタミド群で31.5%、プラセボ群で39.9%でした。転移進行前のPSA値はダロルタミド群で16.7ng/mL、プラセボ群で48.0ng/mLで、ダロルタミド群では、ベースラインよりも低かった(-0.71ng/mL、-3.2%)のに対し、プラセボ群では高い値(+29.5ng/mL、+181%)でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者の割合は、ダロルタミド群では45.4%と、プラセボ群の63.9%より低い値でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者においてPSA上昇から転移出現までの期間はダロルタミド群では7.0ヵ月、プラセボ群では5.6ヵ月でした。疼痛の出現による進行を示した患者の割合はダロルタミド群で16.9%、プラセボ群で17.7%といずれの群においても少数でした。結論として、nmCRPCに対するダロルタミド治療においては、とくにPSA上昇を伴わずに転移進行を来す患者の割合が高いため、PSA測定だけでなく、定期的な画像検査も含めてフォローアップを行うことの重要性が強調される結果となりました。REASSURE研究によるRa-223治療を受けたmCRPC患者におけるALP低下とOSとの関連(Abstract # 5041)REASSURE研究は、骨転移性CRPC患者におけるラジウム223(Ra-223)の長期安全性を評価するためのグローバル前向き観察研究で、今回は治療前(ベースライン)の血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値、治療開始後12週時点でのALP値の変化とOSとの関連に関する解析結果が報告されました。ベースラインALPが147U/L以下の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は23.0ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は16.4ヵ月でした。またベースラインALPが147U/L超の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は12.9ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は8.1ヵ月でした。年齢、ヘモグロビン値、前治療の内容はOSに対して直接的な影響は示しませんでした。ベースラインALP値にかかわらず、治療開始後12週時点におけるALP低下は良好なOSを予測する所見となることが示されました。ARCHES post-hoc解析によるDNA損傷修復遺伝子異常(Abstract # 5074)ARCHES試験(NCT02677896)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+プラセボ)と比べてOSを改善すること(HR:0.66、95%CI:0.53~0.81、p<0.001)がすでに報告されています(Armstrong AJ, J Clin Oncol. 2022)。今回は、post-hoc解析として、生殖細胞系列のDNA損傷修復(DDR)遺伝子異常の有無と患者背景因子との関連が報告されました。全患者1,150例のうち652例が今回の解析の対象となりました(全体集団と背景因子に大きな差はなし)。652例中34例(5.2%)にCHEK2(n=8)、BRCA1/BRCA2/PALB2(n=5)、ATM(n=4)といったDDR遺伝子異常が検出されました。DDR遺伝子変異の有無と腫瘍量や診断時転移の有無といった背景因子の間には関連は見られませんでした。今回のARCHES集団における生殖細胞系列のDDR遺伝子異常の頻度はmCRPCで報告されている頻度(7~12%)(Lozano et al. Br J Cancer 2021、Pritchard et al. N Engl J Med 2016)と比べて低いものでした。KEYNOTE-426 のPFS2(Abstract # 4513)KEYNOTE-426試験(NCT02853331)は転移性のccRCCに対する1次治療としてペムブロリズマブ+アキシチニブがスニチニブと比較してOS、PFS、ORR等のアウトカムを改善することがすでに報告されています(Rini BI, et al. N Engl J Med. 2019, Powles T, et al. Lancet Oncol. 2020)。今回はいわゆるPFS2(Randomizationから後治療に対する抵抗性獲得までの期間)の解析結果が公表されました。今回の解析におけるフォローアップ期間は42.8ヵ月で、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群の47.2%(204/432)およびスニチニブ群の 65.5%(281/429)が少なくとも1ライン以上の後治療を受けていました。後治療の内訳はペムブロリズマブ+アキシチニブ群では82.8%がVEGF/VEGFR阻害薬だったのに対し、スニチニブ群では54.8%がPD-1/PD-L1阻害薬でした。PFS2 はペムブロリズマブ+アキシチニブ群で40.1ヵ月だったのに対し、スニチニブ群では27.7ヵ月と前者で有意に良好でした(HR:0.63、95%CI:0.53~0.75)。本結果はIMDC favorable risk、intermediate/poor risk患者別のサブグループ解析においても一貫していました。CheckMate-274の膀胱がんサブグループ解析(Abstract # 4585)CheckMate-274試験(NCT02632409)では、術後再発高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん(膀胱・腎盂・尿管)の術後無再発生存期間(DFS)がアジュバント・ニボルマブ治療によって改善することがすでに報告されています(Bajorin DF, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に絞った解析結果が報告されました。全709例中560例がMIBCを有し、279例がニボルマブ、281例がプラセボによる治療を受けていました。12ヵ月時点でのDFSはニボルマブ群で66%、プラセボ群で45%と前者で有意に良好でした。本結果は、年齢・性別・ECOG PS・リンパ節転移の有無・PD-L1発現別のサブグループ解析でも一貫していました。Grade3~4の有害事象の発生率はニボルマブ群で17%、プラセボ群で6%でした。MIBCでも全体集団と同様あるいはより顕著なDFS延長効果が示されたことになりますが、逆に上部尿路腫瘍における結果が気になるところです。EV-301の24ヵ月フォローアップデータ(Abstract # 4516)EV-301試験(NCT03474107) では、化学療法・チェックポイント阻害薬治療後の切除不能尿路上皮がんのOSをエンフォルツマブ・ベドチン(EV)が改善することがすでに報告されています(Powles T, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は24ヵ月の追跡フォローアップデータが公表されました。OSの中央値はEV群で12.91ヵ月、化学療法群で8.94ヵ月と前者が有意に良好でした(HR:0.704、 95%CI:0.581~0.852、1-sided p=0.00015)。EV群のCR率は6.9%、ORRは41.3%でした。治療関連有害事象発生率は全Gradeで93.9% vs.91.8%、重篤な治療関連有害事象発生率は 22.6% vs.23.4%、Grade3以上の治療関連有害事象発生率は両群とも約50%と有意な差を認めませんでした。初回報告とほぼ同様の結果が今回の追跡調査でも確認されたといえます。ATRANTISの最終解析結果(Abstract # LBA4505)ATRANTIS試験(ISRCTN25859465)はプラチナベースの1次化学療法4~8サイクル後に進行を来さなかった転移性尿路上皮がん(mUC)に対するスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性を検証する無作為割り付け第II相試験で主要評価項目はPFSでした。30例がカボザンチニブ群(40mg/日)、31名がプラセボ群に割り付けられました。PFSはカボザンチニブ群で13.7週、プラセボ群で15.8週とOSともに有意差を認めませんでした。また、有害事象は疲労(56.7% vs.32.2%)、高血圧(43.3% vs.12.9%)、嘔気(30.0% vs.19.4%)、下痢(40.0% vs.6.5%)等が認められました。結論としてこのセッティングにおけるスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性は証明されませんでした。おわりに総じて、本年のASCO Annual Meetingでは、泌尿器腫瘍領域に関してはすでに初回報告がなされている大規模臨床試験のフォローアップデータやpost-hoc解析の結果がほとんどであり、大きなブレークスルーは乏しかった印象があります。来年はどのような開催形式で、どのような発表がなされるのか楽しみに待ちたいと思います。

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ミズイボに、一酸化窒素放出ゲル剤の有効性・安全性を確認

 伝染性軟属腫(MC)の治療として、新規塗布薬の一酸化窒素(NO)放出薬である10.3%berdazimerゲル剤が、良好な有効性と安全性を示し有害事象の発現頻度は低率だったことを、米国・Texas Dermatology and Laser SpecialistsのJohn C. Browning氏らが第III相無作為化試験の結果、報告した。MCは伝染性軟属腫ウイルス(molluscipoxvirus)によって引き起こされる、日常診療でよくみかける持続性で伝染性の高い皮膚感染症で、自然治癒することが多いとされる一方、数ヵ月から数年続く可能性も否定できない。米国では年間約600万人が症状に悩まされ、1~14歳の子供の発生が最も多いと報告されているが、米国FDA承認薬はいまのところないという。わが国でも同様に子供に多く、治療方針は自然治癒を待つものから冷凍凝固療法など外科的処置まで柔軟に選択されている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年7月13日号掲載の報告。 研究グループは、MC治療としての10.3%berdazimerゲル剤の有効性と安全性を評価する第III相多施設共同溶剤対照二重盲検無作為化試験「B-SIMPLE4試験」を、2020年9月1日~2021年7月21日に米国内55クリニック(大半が皮膚科と小児科)で行った。適格被験者は、月齢6ヵ月以上で、3~70個の病変を有するMC患者。性感染によるMCやMCが眼周囲のみに認められる患者は除外した。 患者は、10.3%berdazimerゲル剤または溶剤の塗布治療を受ける群に無作為に割り付けられ、すべての病変表面薄層に1日1回、12週間塗布を受けた。 主要有効性エンドポイントは、12週時点の全MC病変の完全消失であった。安全性と忍容性の評価には、有害事象の頻度と重症度、および局所皮膚反応と瘢痕の評価が含まれた。データ解析は2021年8月31日~9月14日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は計891例で、berdazimer群に444例(平均年齢6.6歳[範囲:0.9~47.5]、男性228例[51.4%]、白人種387例[87.2%])、溶剤群に447例(平均年齢6.5歳[範囲:1.3~49.0]、女性234例[52.3%]、白人種382例[85.5%])が無作為に割り付けられた。・12週時に、intention-to-treat(ITT)集団において病変カウントを行ったのは、berdazimer群88.5%(393例)、溶剤群88.8%(397例)であった。・12週時にMCの完全消失が認められたのは、berdazimer群は32.4%(144例)、溶剤群19.7%(88例)であった(絶対群間差:12.7%、オッズ比[OR]:2.0、95%信頼区間[CI]:1.5~2.8、p<0.001)。・12週時点で、MC消失により治療を中断していた被験者割合は、berdazimer群14.4%(64例)、溶剤群8.9%(40例)であった。・有害事象の発現頻度は低率であった。最も頻度の高い有害事象は、塗布部の痛みと紅斑であったが、大半が軽症であった。・治療中断につながった有害事象の発現頻度は、berdazimer群4.1%(18例)、溶剤群0.7%(3例)であった。・最も多かった局所皮膚反応は、軽症~中等症の紅斑であった。

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高齢統合失調症患者における第2世代抗精神病薬と下剤使用との関係

 台湾・Kaohsiung Municipal Kai-Syuan Psychiatric HospitalのChing-Hua Lin氏らは、2つの大規模公立精神科病院を退院した時点で第2世代抗精神病薬(SGA)治療を受けていた高齢統合失調症患者を対象に、下剤の併用に関する要因を調査した。その結果、SGAで治療中の高齢統合失調症患者では、下剤使用率が高いことが報告された。著者らは、臨床的に重度の便秘の場合、可能であれば便秘リスクの低いSGAへの切り替えや気分安定薬の使用中止などを検討する必要があるとしている。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月10日号の報告。 対象は、2006~19年に退院の時点でSGA単剤療法を受けていた高齢統合失調症患者。退院時の定期的な下剤使用に関連する因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。退院時の下剤使用率に有意な時間的傾向があるかを評価するため、コクラン・アーミテージ傾向検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした対象患者2,591例のうち、1,727例を分析に含めた。・1,727例中732例(42.4%)で下剤が併用されていた。・下剤使用の増加と関連が認められた因子は、女性、気分安定薬の使用、糖尿病の合併であった。・SGA別では、クロザピンが最も下剤使用率が高く、次いでゾテピン、クエチアピン、オランザピン、リスペリドンであった。・amisulpride、アリピプラゾール、パリペリドン、スルピリドの下剤使用率は、リスペリドンと同程度であった。・時期別の下剤使用率は、2006年30.8%、2019年46.6%であり、経時的な増加が認められた(z=4.83、p<0.001)。

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国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」【下平博士のDIノート】第103回

国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」今回は、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤「バルベナジントシル酸塩カプセル(商品名:ジスバルカプセル40mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、わが国で初めて遅発性ジスキネジア治療薬として承認されました。これまで治療法がなかった遅発性ジスキネジアによる不随意運動の改善効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、遅発性ジスキネジアの適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月1日に発売されました。なお、「遅発性ジスキネジア」の診断は、米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』および『統合失調症治療ガイドライン第3版』が参考とされます。<用法・用量>通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。なお、症状により1日1回80mgを超えない範囲で適宜増減できます。増量については、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ検討します。<安全性>遅発性ジスキネジア患者を対象とした国内第II/III相試験で認められた主な副作用は、傾眠、流涎過多、アカシジア、倦怠感などでした。重大な副作用として、傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静、運動緩慢(いずれも1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、重篤な発疹、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)、悪性症候群、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰になった脳内の神経刺激伝達を抑えることで、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう、または無意識に口や舌を動かしてしまうなどの症状が出る遅発性ジスキネジアを改善します。2.眠くなったり、ふらついたりすることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないでください。3.抑うつや不安などの精神症状が現れることがあるので、体調の変化に気が付いた場合には連絡してください。4.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を使用している場合や新しい薬を使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。5.不整脈が起きていないか確認するために、心電図検査が行われることがあります。<Shimo's eyes>画像:重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚労省)より本剤は、わが国初の遅発性ジスキネジア治療薬であり、1日1回服用の経口剤です。遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを長期間服用することで起こる不随意運動を特徴とした神経障害であり、ドパミン受容体の感受性増加などが原因と考えられています。症状は、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど、顔面に主に現れますが、手や足が動いてしまうなど四肢や体幹部でも認められます。また、重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性もあります。本剤は、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を阻害することにより、ドパミンなど神経伝達物質のシナプス前小胞への取り込みを減らし、不随意運動の発生に関わるドパミン神経系の機能を正常化させます。遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相プラセボ対照二重盲検比較試験(MT-5199-J02)において、本剤40mg/日または80mg/日を投与した結果、両群で用量依存的な異常不随意運動の改善効果が認められました。本剤は重症度を問わず処方が可能です。ただし、遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量または中止を検討する必要があります。したがって、本剤の投与対象となるのは抗精神病薬など原因薬剤の減量や中止ができない、あるいは減量や中止を行っても遅発性ジスキネジアが改善しない患者さんとなります。投与に関しては相互作用が多いため併用薬の厳格なチェックが欠かせません。本剤はプロドラッグであり、未変化体はP糖タンパク質(P-gp)を阻害します。また、体内では主にCYP3Aによって代謝された後、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝されます。本剤とパロキセチンを併用したとき、未変化体の変化は認められませんでしたが、活性代謝産物のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.4倍、1.9倍に上昇したことが報告されています。本剤は、強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ等)や、強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)を使用中、または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さんなどでは、投与量を1日40mgから増量しないこととされています。なお、これらの条件が2つ以上重なる場合は、活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度なQT延長などの副作用を発現する恐れがあるため、本剤との併用は避けることとされています。一方、中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)を使用中の場合には、作用が弱まることを考慮して投与量を検討します。また、P-gpの基質薬剤(ジゴキシン、アリスキレン、ダビガトラン等)と併用するとこれらの血中濃度が上昇する恐れがあるので注意しましょう。中等度、あるいは高度の肝機能障害患者についても投与量に制限がかけられています。活性代謝産物の血中濃度が上昇した場合にはQT延長を引き起こす恐れがあるので、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さん、QT延長を起こしやすい患者さん、相互作用に注意すべき薬剤を併用している患者さんでは定期的に心電図検査を行う必要があります。これまで、遅発性ジスキネジアについては原因薬の中止や他薬剤への変更に代わる対処法がありませんでした。よって、本剤の臨床的意義は高いと考えられます。なお、本剤は食事の影響を受けやすく、空腹時に服用すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため、副作用モニタリングと共に服用タイミングについても順守できているか確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 ジスバルカプセル40mg

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「味覚が変です」今、こんな患者に遭遇したらどうする?【Dr.山中の攻める!問診3step】第16回

第16回 「味覚が変です」今、こんな患者に遭遇したらどうする?―Key Point―食事は人生最大の楽しみの一つである。味覚障害があると食欲が低下する複雑な風味を味わうには味覚と嗅覚が正常でなければならない味覚は年齢、食事、喫煙、薬剤によって影響を受ける症例:83歳 男性主訴)味覚障害現病歴)3ヵ月前から倦怠感と手足のしびれを自覚している。2ヵ月前から徐々に食べ物の味がわかりにくくなり、食欲が低下してきた。最近2週間は体動時の息切れを感じている。既往歴)10年前に胃がんのため胃全摘術、高血圧症内服薬)アムロジピン身体所見)意識清明、体温 36.8℃、血圧 132/68mmHg、脈拍 96回/分、呼吸回数 18回/分、SpO2 95%(室内気)眼瞼結膜:軽度の蒼白あり、舌:発赤あり、舌乳頭萎縮あり胸部:収縮期雑音(Levine 3/6)を心尖部で聴取する、腹部:正中に手術痕あり下肢:両側に軽度の浮腫と末梢優位の感覚障害あり経過)血液検査でWBC 3300/μL、Hb 8.3g/dL、MCV 110fL、血小板 15万/μL、Cr 0.7mg/dL、血糖 102mg/dL、CRP 0.25mg/dLであった10年前の胃全摘術の既往、下肢末梢優位の感覚障害、ハンター舌炎を示唆する舌所見、汎血球減少からビタミンB12欠乏を疑った1)血清ビタミンB12は75pg/mL(基準値:180~914)であったビタミンB12欠乏症による味覚障害と診断し、ビタミンB12の補充を行うと味覚障害は徐々に改善した◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!COVID-19感染症の流行初期には、味覚障害と嗅覚障害がよくみられた味覚障害の多くは嗅覚障害が原因である薬剤は味覚障害を起こすことが多い【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】味覚のメカニズムを理解する2)舌表面には約8,000個の味蕾(みらい)と呼ばれる味覚受容器官があり、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味を感じる甘味は舌の先端、塩味は舌前方の側面、酸味は舌後方の側面、苦味は舌後方で感じる嚥下時に後鼻腔にある嗅覚レセプターが刺激され、味覚と一緒に複雑な風味を感じる症状を訴える多くの患者は味覚ではなく嗅覚が障害されている<参考文献・資料>1)Stabler SP, et al. N Engl J Med. 2013;368:149-160.2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 21th edition. 2022. p232-238.3)UpToDate:Taste and olfactory disorders in adults: anatomy and etiology

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英語で「自然によくなります」は?【1分★医療英語】第39回

第39回 英語で「自然によくなります」は?My daughter has got chickenpox.(娘が水疱瘡にかかりました)Please be assured that it will resolve itself without any treatment.(治療せずに自然によくなりますので安心してください)《例文1》Most of the common colds are self-limiting.(ほとんどの風邪は自然によくなります)《例文2》The pain in your arm after the injection will get better by itself.(注射後の腕の痛みは自然によくなります)《解説》治療を行わなくても自然に回復する疾患を“a self-limiting disease”といいます。これらの疾患が「自然に回復する」と説明したい場合には、「そのままで回復する」という意味で“resolve itself” “go away on its own” “get better by itself”などの言い方をします。“Tonsilitis tends to go away on its own.”(扁桃腺炎は自然によくなることが多いです)といった具合です。自然に回復する疾患や状態が落ち着いている場合、「治療せずに経過を見ましょう」「様子を見ましょう」と伝える場合には、“wait and see”を使って、“Let’s wait and see as it often resolves on its own.”(自然軽快することが多いので様子を見ましょう)ということができます。また、もっとしっかり経過を見守る必要がある場合には、“We’ll keep an eye on the patient.”(その患者さんを注意深く観察します)という言い方をします。講師紹介

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第123回 ケタミンの依存性はどうやら低い

ケタミンは遡ること60年前の1962年に初めて合成されて長く麻酔薬として使われてきました。ケタミンはいまやすぐに効く抗うつ薬として研究や配慮を払った治療環境で使われることが増えていますが、いつもの治療で常用するとなると依存性が心配です。あいにくケタミンの依存性がどれほどかはその複雑な薬理作用などのせいで定まっていませんでしたが、先週水曜日にNature誌に掲載されたマウスでの新たな実験によると、依存性の恐れがある薬物に分類されているのとは裏腹にケタミンの依存性はどうやら低いようです1,2)。実験の結果、ケタミンは脳の側坐核(NAc)のドーパミンをコカインなどの依存性薬物と同様に一過性に増やすもののそれら依存性薬物でたいてい生じるシナプス可塑性を誘発しませんでした。ケタミンは側坐核と繋がる腹側被蓋野(VTA)のドーパミン放出神経をNMDA受容体遮断作用により脱抑制するものの、2型ドーパミン受容体の作用によってその脱抑制はすぐに打ち消されます。ドーパミンはそうしてすぐに消沈し、VTAやNAcでのシナプス可塑性は生じずに済み、依存を意味する振る舞いをマウスは示しませんでした。2019年に米国で承認されたJohnson & Johnson(J&J)社の治療抵抗性うつ病治療点鼻薬Spravatoの成分はその名前が示す通りケタミンの光学異性体S体・エスケタミン(esketamine)であり、ケタミンと同様にNMDA受容体遮断作用を有します3)。依存性(dependence)は服薬を突然中止したときや服薬量がかなり減ったときに生じる離脱症状/兆候で把握されます。Spravatoはケタミンのマウス実験結果と同様にどうやら依存性の心配は少ないらしく、その治療を止めてから4週間後までの観察で離脱症状は認められていません3)。ケタミンのもう1つの光学異性体R体の抗うつ効果も期待されており、米国のatai Life Sciences社の開発品PCN-101(R-ketamine、アールケタミン)はそのケタミンR体を成分とします。PCN-101は欧州で第II相試験が進行中です4)。大塚製薬はPCN-101の日本での権利をatai Life Sciencesの子会社Perception Neuroscienceから昨春2021年3月に手に入れており、日本での販売を目指して日本での臨床試験を担当します5)。J&Jもエスケタミンの日本での開発をどうやら進めており、臨床研究情報ポータルサイトによると治療抵抗性うつ病患者への同剤の国内での第II相試験が完了しています6)。S体やR体ではないただのケタミンも奮闘しており、たとえば今年初めにBMJ誌に掲載された比較的大規模なプラセボ対照無作為化試験結果では自殺願望の解消効果が認められています7)。その報告の論評者もまた依存性を懸念していますが8)、今回のマウスでの結果がヒトで検証されて依存性の懸念が晴れればエスケタミンがすでに期待の星9)となっているようにケタミンも治療抵抗性うつ病治療でのいつもの薬の地位をやがて手に入れることになるかもしれません。参考1)A short burst of reward curbs the addictiveness of ketamine / Nature2)Simmler LD,et al.Nature. 2022 Jul 27. [Epub ahead of print]3)SPRAVATO PRESCRIBING INFORMATION.4)atai Life Sciences announces FDA Investigational New Drug (IND) Clearance for PCN-101 R-ketamine Program / PRNewswire5)治療抵抗性うつ治療薬「アールケタミン」の日本国内におけるライセンス契約締結について/大塚製薬6)日本人の治療抵抗性うつ病患者を対象に,固定用量のesketamine を鼻腔内投与したときの有効性,安全性及び忍容性を検討するランダム化,二重盲検,多施設共同,プラセボ対照試験(臨床研究情報ポータルサイト)7)Abbar M,et al. BMJ. 2022 Feb 2;376:e067194.8)De Giorgi R, BMJ. 2022 Feb 2;376.9)Swainson J,et al. Expert Rev Neurother. 2019 Oct;19:899-911.

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早期乳がんへの術前抗HER2療法+アテゾリズマブ、pCR61%(Neo-PATH)/JAMA Oncol

 ERBB2(HER2)陽性早期乳がんに対して、抗HER2療法にアテゾリズマブを加えた術前療法は病理学的完全奏効率(pCR)61%を示し、毒性は穏やかであることが示された。韓国・Gachon University Gil Medical CenterのHee Kyung Ahn氏らによる第II相Neo-PATH試験の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2021年10月7日号に報告された。 Neo-PATH試験は、前臨床試験で相乗効果が示されたERBB2陽性早期乳がんに対するアテゾリズマブ、ドセタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブの術前療法の有効性を検討する非無作為化オープンラベル多施設共同第II相試験。韓国の6施設から2019年5月~2020年5月にかけて患者が登録された。対象は、Stage IIまたはIIIのERBB2陽性乳がん(原発巣サイズ2cm以上または病理学的リンパ節転移陽性、遠隔転移なし)。 3週間ごとに術前療法としてペルツズマブ(初回840mg、2回目以降420mg)、アテゾリズマブ(1,200mg)、ドセタキセル(75mg/m2)、トラスツズマブ(600mg)を6サイクル投与し、その後手術が行われた。pCRが得られた症例には、術後3週間ごとにアテゾリズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブの投与を12サイクル実施し、pCRが得られない症例には、アテゾリズマブ(1,200mg)、トラスツズマブ・エムタンシン(3.6mg/kg)を3週間ごとに14サイクル投与した。 主要評価項目はpCR率(ypT0/isN0)。副次評価項目は、臨床的客観的奏効率、pCR達成状況に応じた3年無イベント生存率、無病生存率、全生存率、毒性、QOLであった。 主な結果は以下のとおり。・計67例の女性(年齢中央値52[33~74]歳)が登録された。ホルモン受容体陽性は32例(48%)であった。・治療中に病勢が進行し、切除不能となった症例が2例あり、65例に根治手術が行われた。・全体のpCR率は61%(67例中41例)であった。・pCR率は、ホルモン受容体陽性例と比べ陰性例で高く(32例中14例[44%]vs.35例中27例[77%])、PD-L1陰性例と比べ陽性例で高かった(13例中13例[100%]vs.53例中28例[53%])。・Grade 3以上の有害事象は21例(31%)で発生し、多くみられたのは好中球減少症8例(12%)と発熱性好中球減少症5例(8%)であった。術前療法期における治療関連死は発生していない。 著者らは、ERBB2(HER2)陽性早期乳がんに対する、抗HER2療法にアテゾリズマブを加えた術前療法は許容可能なpCR率と穏やかな毒性作用を有していることが示されたとし、大規模な無作為化試験で引き続き検証する必要があるとまとめている。

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COVID-19パンデミックのロックダウンと不安、うつ、自殺リスク

 COVID-19パンデミックにより、世界各国でさまざまなロックダウンが行われた。このような対策はメンタルヘルスに悪影響を及ぼすと考えられるが、対策の強度とメンタルヘルスへの影響との関係については、十分に研究されていない。ギリシャ・アリストテレス大学のKonstantinos N. Fountoulakis氏らは、大規模COMET-G研究のデータを用いて、これらの関連性を調査した。その結果、ロックダウンとメンタルヘルスとの間にほぼ線形の関係が認められ、脆弱なグループの特定とより具体的なメンタルヘルス介入の必要性があらためて明らかとなった。Psychiatry Research誌オンライン版2022年7月1日号の報告。 COVID-19パンデミック期間中に40ヵ国5万5,589人の参加者よりオンラインアンケートでデータを収集した。メンタルヘルスの評価尺度として、不安にはSTAI、うつ病にはCES-D、自殺リスクにはRASSを用いた。不快なストレス(Distress)とうつ病疑いは、すでに開発済みのカットオフ値とアルゴリズムを用いて特定した。相対リスク(RR)の算出には、ANOVA分析およびマルチプル後方ステップワイズ線形回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者の内訳は以下のとおりであった。 【女性】割合:64.85%、平均年齢:35.80±13.61歳 【男性】割合:34.05%、平均年齢:34.90±13.29歳 【その他】割合:1.10%、平均年齢:31.64±13.15歳・現時点でロックダウンによる重大な制限下で生活している人の割合は、参加者の約3分の2であった。・男女ともに、臨床的うつ病の発症リスクは、ロックダウンレベルの上昇と有意な相関が認められた(男性:RR=1.72、女性:RR=1.90)。・ロックダウンと精神疾患歴を組み合わせた場合のRRは、6.88まで増加した。・ロックダウンとうつ病重症度との全体的な関係に有意な差は認められなかった。

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中強度スタチン+エゼチミブ、ASCVD患者で高強度スタチンに非劣性/Lancet

 新たな心血管疾患のリスクがきわめて高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法に対し、3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死的脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性で、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持している患者の割合が高く、不耐による投与中止や減量を要する患者の割合は低いことが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏らが実施した「RACING試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年7月18日号で報告された。韓国26施設の医師主導無作為化試験 RACING試験は、ASCVDの治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法の代替となりうるかの検証を目的とする医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年2月~2018年12月の期間に、韓国の26施設で参加者の登録が行われた(韓国Hanmi Pharmaceuticalの助成による)。 対象は、高強度スタチン単剤療法を要するASCVD確定例(心筋梗塞の既往、急性冠症候群、冠動脈または他の動脈の血行再建術の施行歴、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患のうち少なくとも1つを有する)で、LDLコレステロール値<70mg/dLの患者であった。 被験者は、中強度スタチン+エゼチミブ(ロスバスタチン10mg+エゼチミブ10mg、1日1回、経口)の併用投与を受ける群、または高強度スタチン単剤療法(ロスバスタチン20mg、1日1回、経口)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における3年間の心血管死、主要心血管イベント(冠動脈または末梢動脈の血行再建術、心血管イベントによる入院)、非致死的脳卒中の複合で、非劣性マージンは2.0%とされた。3年時LDL-C値<70mg/dL:72% vs.58%、不耐による投与中止/減量:4.8% vs.8.2% 3,780例が登録され、併用療法群に1,894例、高強度スタチン単剤群に1,886例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳で、男性が75%を占め、40%に心筋梗塞の既往歴が、66%に経皮的冠動脈インターベンションの施行歴があり、37%は糖尿病であった。無作為割り付け前に、38%が高強度スタチン、36%が中強度スタチン、13%は中強度スタチン+エゼチミブの投与を受けていた。追跡期間中央値は3年で、3,622例(95.8%)が3年の追跡を完了した。 主要エンドポイントは、併用療法群が172例(9.1%)で、高強度スタチン単剤群は186例(9.9%)で発生し(絶対群間差:-0.78%、90%信頼区間[CI]:-2.39~0.83)、非劣性マージンが満たされた。 主要エンドポイントの個々の要素については、心血管死は併用療法群が0.4%、高強度スタチン単剤群は0.3%(ハザード比[HR]:1.34、95%CI:0.46~3.85、p=0.59)、主要心血管イベントはそれぞれ8.1%および8.9%(HR:0.91、95%CI:0.73~1.14、p=0.41)、非致死的脳卒中は0.8%および0.7%(HR:1.07、95%CI:0.52~2.22、p=0.85)で発生した。 1、2、3年時に、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持していた患者の割合は、併用療法群がそれぞれ73%、75%、72%であったのに対し、高強度スタチン単剤群は55%、60%、58%で、群間の絶対差は1年時が17.5%(95%CI:14.2~20.7)、2年時が14.9%(11.6~18.2)、3年時は14.8%(11.1~18.4)であり、いずれも併用療法群で有意に優れた(すべてp<0.0001)。 また、試験薬への不耐が原因の投与中止または減量は、併用療法群が4.8%と、高強度スタチン単剤群の8.2%に比べ有意に少なかった(p<0.0001)。 著者は、「これらの知見は、高強度スタチン療法を要すると考えられるが、副作用のリスクが高い、またはスタチン不耐の患者では、スタチンの用量を倍増するのではなく、できるだけ早期に中強度スタチンへのエゼチミブの併用を考慮するアプローチを支持するものである」としている。

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PD-L1陽性TN乳がん、ペムブロリズマブ追加でOS延長(KEYNOTE-355最終解析)/NEJM

 プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)が陽性で、複合発現スコア(combined positive score:CPS)が10点以上の進行トリプルネガティブ乳がん患者の1次治療において、化学療法に抗PD-1モノクローナル抗体製剤ペムブロリズマブを追加すると、化学療法単独と比較して全生存(OS)期間が約7ヵ月有意に延長することが、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが実施した「KEYNOTE-355試験」の最終解析で示された。有効性の複合主要エンドポイントの1つである無増悪生存(PFS)期間は、ペムブロリズマブ+化学療法群で有意に優れることが、2回目の中間解析の結果としてすでに報告されている。研究の成果は、NEJM誌2022年7月21日号に掲載された。国際的な第III試験のOS最終解析 KEYNOTE-355は、PD-L1陽性・CPS 10点以上の進行トリプルネガティブ乳がんの1次治療におけるペムブロリズマブの有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2018年6月の期間に、日本を含む29ヵ国209施設で参加者の登録が行われた(MSDの助成を受けた)。 対象は、未治療の切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がすべて陰性)乳がんで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS)が0または1の成人患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+担当医の選択による化学療法(ナノ粒子アルブミン結合[nab]-パクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのうちいずれか1つ)、またはプラセボ+化学療法を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬の投与は、病勢進行、許容できない毒性作用の発現、あるいは患者が同意を撤回するか、医師が投与中止と判断するまで継続された。 主要エンドポイントは、PD-L1陽性でCPSが10点以上の患者(CPS-10サブグループ)、PD-L1陽性でCPSが1点以上の患者(CPS-1サブグループ)およびintention-to-treat(ITT)集団という3つの集団におけるPFSとOSとされた。CPSは、腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージにおけるPD-L1免疫染色陽性細胞の数を、生存腫瘍細胞の総数で除して100を乗じた値と定義された。CPS-1サブグループでは有意差なし 847例(ITT集団)が無作為化の対象となり、ペムブロリズマブ群に566例、プラセボ群に281例が割り付けられた。CPS-10サブグループは323例(38.1%)(ペムブロリズマブ群220例、プラセボ群103例)、CPS-1サブグループは636例(75.1%)(425例、211例)であった。これら6つの群の年齢中央値は52~55歳の範囲に、閉経後女性の割合は64~68%の範囲にわたっていた。追跡期間中央値は44.1ヵ月(範囲:36.1~53.2)。 CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群の155例(70.5%)、プラセボ群の84例(81.6%)が死亡した。OS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が23.0ヵ月、プラセボ群は16.1ヵ月(死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった(両側検定のp=0.0185[有意性の基準を満たす])。18ヵ月時のOS率はそれぞれ58.3%および44.7%だった。 CPS-1サブグループのOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が17.6ヵ月、プラセボ群は16.0ヵ月であった(死亡のHR:0.86、95%CI:0.72~1.04、両側検定のp=0.1125[有意性なし])。また、ITT集団のOS期間中央値は、それぞれ17.2ヵ月および15.5ヵ月だった(0.89、0.76~1.05[有意性は検定されなかった])。 PFS期間中央値は、2回目の中間解析とほぼ同様の結果であった。すなわち、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月(病勢進行または死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88)、CPS-1サブグループでは、それぞれ7.6ヵ月および5.6ヵ月(0.75、0.62~0.91)、ITT集団では、7.5ヵ月および5.6ヵ月(0.82、0.70~0.98)だった。 また、奏効率は、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群52.7%、プラセボ群40.8%、CPS-1サブグループでは、それぞれ44.9%および38.9%、ITT集団では、40.8%および37.0%であった。奏効例では、ペムブロリズマブ群で奏効期間中央値が長く、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群12.8ヵ月およびプラセボ群7.3ヵ月だった。 一方、最も頻度の高い有害事象は、貧血(ペムブロリズマブ群49.1%、プラセボ群45.9%)、好中球減少(41.1%、38.1%)、悪心(39.3%、41.3%)であった。試験レジメン関連のGrade3、4、5の有害事象は、それぞれ68.1%および66.9%で認められ、ペムブロリズマブ群の2例(0.4%)(急性腎障害と肺炎が1例ずつ)が死亡した。ペムブロリズマブ群では、免疫介在性の有害事象が26.5%(甲状腺機能低下症15.8%、甲状腺機能亢進症4.3%、肺臓炎2.5%など)で発現し、このうち5.3%がGrade3または4であった。 著者は、「OS期間の探索的解析では、PD-L1陽性でCPSが10~19点、およびPD-L1陽性でCPSが20点以上の患者においても、ペムブロリズマブ追加による一貫した有益性が認められたことから、『CPS 10点以上』は、ペムブロリズマブ+化学療法による利益が期待される進行トリプルネガティブ乳がん患者集団を定義する適切な基準と考えられる」と指摘している。

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1型糖尿病にSGLT2阻害薬を使用する際の注意点/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2022年7月26日に公開した。改訂は7度目となる。 今回の改訂は、2022年4月よりSGLT2阻害薬服用中の1型糖尿病患者の在宅での血中ケトン体自己測定が可能となったことに鑑み、これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されることを目的としている。 具体的には、【ケトアシドーシス】の項で「SGLT2阻害薬使用中の1型糖尿病患者には、可能な限り血中ケトン体測定紙を処方し、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状からケトアシドーシスが疑われる場合は、在宅で血中ケトン体を測定し、専門医の受診など適正な対応を行うよう指導する」という文言が追加された。1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用はケトアシドーシスが増加していることに留意1)1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。2)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。3)75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。4)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。5)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。6)全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。8)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

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A型肝炎ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第13回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)A型肝炎は、ウイルス感染によって起こる急性肝炎である。感染しても多くは軽症で自然軽快し、劇症化は1%以下とまれである。急性肝炎のみで慢性化はしない。感染症法においては全数報告対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。主な感染経路は糞口感染で、汚染された食品を喫食することで感染が成立する。環境やヒトからの接触感染も報告があり、近年は糞口感染の変形として肛門性交による感染例が増えている。これらから、途上国など流行地域への渡航、輸入食材の喫食に加え、違法薬物使用や男性同性間性的接触者(MSM)もリスク因子の1つとされる。感染成立から2〜7週後(平均は4週)に、発熱、倦怠感、食思不振、嘔吐といった初期症状に続いて血清トランスアミナーゼ(ALTまたはGPT、ASTまたはGOT)が上昇する。典型例では黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便などを認める。臨床症状や肝障害の改善は割に早く、既述の通り慢性化もしないので、劇症化しなければ一過性の急性肝炎として収束する。劇症化を含む重症化は、感染初期の高度なウイルス増殖に対する過剰な宿主免疫反応に関連する。主なリスク因子は高齢(50代以上)や高度肝障害(慢性肝炎や肝硬変)とされる。血中IgM-HA抗体、もしくは血液または糞便検体からPCR法によりRNAが陽性となれば診断が確定する。IgM抗体は発症から約1ヵ月後にピークに達し、3〜6ヵ月後に陰性となる。抗体価は重症例ほど高く、長く検出される。糞便中のウイルスは発症から1〜2ヵ月後まで検出される。ワクチンの概要(効果・副反応・生または不活化・定期または任意・接種方法)A型肝炎ワクチンには、わが国で承認を得て流通しているワクチンが乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン(商品名:エイムゲン)として1種類ある。海外で流通しているワクチンでは数種類(HAVRIX、AVAXIMなど)がある。海外では、A型肝炎とB型肝炎に対する混合ワクチンTwinrix および Twinrix Juniorも普及している。いずれも不活化ワクチンで、日本では任意接種の扱いとなっている。ワクチンの免疫付与効果はほぼ100%とされている。接種のスケジュール(小児/成人)画像を拡大する画像を拡大する日常診療で役立つ接種ポイント説明方法として「衛生的でない食品による急性肝炎であるA型肝炎を予防するワクチンです。効果も安全性も非常に高いため、感染リスクがある方には接種をお勧めします」など申し添える。また、迅速接種の場合は、接種スケジュールの通り、「2週間後に2回目を接種すると1年程度は免疫が得られます。その場合でも3回目接種を推奨します」など申し添える。海外製品の方が接種回数や長期効果の面で優れているため、特に移住などの長期渡航に際しては、現地もしくは国内トラベルクリニックで海外製品を接種することも選択肢として検討する。今後の課題・展望国産ワクチン(エイムゲン)と海外製ワクチンの互換性に関するエビデンスがないため、今後の研究が期待されている。エイムゲンを1〜2回接種した状態で渡航した場合、互換性が保証されないため現地で接種をやり直すことになり、カウントエイムゲンの接種が丸ごとムダになってしまう。また、今後の承認が期待されるワクチンとして、A型肝炎とB型肝炎が混合されたワクチンや、A型肝炎と腸チフスが混合されたワクチンなどがある。これらが承認されれば、海外渡航や移住する成人にとって利便性が高い。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)国立感染症研究所 A型肝炎とは厚生労働省検疫所FORTH 海外渡航のためのワクチン厚生労働省 肝炎総合対策の推進疾病対策予防センター(CDC) Viral Hepatitis講師紹介

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維持期統合失調症に対するアリピプラゾール月1回製剤と経口剤との比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人の維持期統合失調症治療においてアリピプラゾールの長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)が経口剤(OARI)より有益であるかを検討するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期統合失調症患者に対するAOMとOARIによる治療は、どちらも有効であったが、AOMのほうがより受容性が高いことが示唆された。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年7月5日号の報告。 AOM、OARI、プラセボのうち2つを含む二重盲検ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・4研究(1,830例)を解析に含めた。・26週間での再発率は、プラセボ群と比較し、AOM群(オッズ比[OR]:0.240、95%信頼区間[CI]:0.169~0.341)およびOARI群(OR:0.306、95%CI:0.217~0.431)ともに低かったが、AOMとOARIの間に有意な差は認められなかった(OR:0.786、95%CI:0.529~1.168)。・すべての原因による治療中止率も、プラセボ群と比較し、AOM群(OR:0.300、95%CI:0.227~0.396)およびOARI群(OR:0.441、95%CI:0.333~0.582)ともに低かった。・AOM群におけるすべての原因による治療中止率は、OARI群よりも低かった(OR:0.681、95%CI:0.529~0.877)。・その他のアウトカムでは、AOMとOARIの間に有意な差は認められなかった。

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有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。年齢・男女・年別にTMRELとNDEを推定 解析には、204の国・地域における1990~2020年の死亡率と疾病負担を年齢別、性別に推計した世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)のデータを用いた。22の健康アウトカム(虚血性心疾患、脳梗塞、がん、2型糖尿病、結核、下気道感染症など)に関する疾患重み付け用量反応相対リスク曲線を構築し、21地域の15~95歳の個人について1990~2020年の期間で、5歳ごとの年齢階級別、男女別および年別に、アルコールの理論的最小リスク曝露量(theoretical minimum risk exposure level:TMREL、アルコールによる健康損失を最小化する摂取量)と非飲酒者等価量(non-drinker equivalence:NDE、飲酒者の健康リスクが非飲酒者の健康リスクと同等時点でのアルコール摂取量)を推定するとともに、NDEに基づき有害な量のアルコールを摂取している人口を定量化した。有害量のアルコール摂取は若年男性で多い アルコールに関する疾患重み付け相対リスク曲線は、地域および年齢で異なっていた。2020年の15~39歳では、TMREL(ドリンク/日:1ドリンクは純粋エタノール10g相当)は0(95%不確実性区間[UI]:0~0)から0.603(0.400~1.00)、NDEは0.002(0~0)から1.75(0.698~4.30)とさまざまであった。 40歳以上の疾患重み付け相対リスク曲線はすべての地域でJ字型であり、2020年のTMRELは0.114(95%UI:0~0.403)から1.87(0.500~3.30)、NDEは0.193(0~0.900)から6.94(3.40~8.30)の範囲であった。 2020年における有害量のアルコール摂取は、59.1%(95%UI:54.3~65.4)が15~39歳、76.9%(73.0~81.3)が男性であり、主にオーストララシア、西ヨーロッパ、中央ヨーロッパに集中していた。

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不眠症治療薬、長期に有効・安全なのは?/Lancet

 不眠症治療薬のエスゾピクロンとレンボレキサントはいずれも有効性のプロファイルは良好であるが、エスゾピクロンは副作用発現例数が多く、レンボレキサントの安全性は結論に至っていないこと、またdoxepin、seltorexantおよびzaleplonは忍容性が良好であるが、有効性に関するデータは乏しく確固たる結論は得られていないことなどが、英国・オックスフォード大学のFranco De Crescenzo氏らが行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析により示された。承認されている多くの薬剤は不眠症の急性期治療に有効であるが、忍容性が低いか長期の有効性に関する情報が得られておらず、メラトニン、ラメルテオンおよび未承認薬は全体的なベネフィットは示されなかった。著者は、「これらの結果は、エビデンスに基づく臨床診療に役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。無作為化二重盲検比較試験154試験をネットワーク・メタ解析 研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、PubMed、Embase、PsycINFO、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ClinicalTrials.govおよび規制当局のウェブサイトにて、2021年11月25日までに報告された不眠症治療薬の無作為化比較試験を検索し、特定の診断基準に基づいて不眠障害と診断された成人(18歳以上)患者を対象とした不眠症治療薬に関するプラセボまたは他の経口実薬単剤との比較試験について解析した。クラスター無作為化試験またはクロスオーバー試験、および二次性不眠症(精神疾患または身体的な併存疾患による不眠症、薬物またはアルコールなどの物質による不眠症)患者が含まれる試験は除外した。 個々の試験についてコクランバイアスリスクツールで評価するとともに、信頼性ネットワークメタ解析フレームワーク(CINeMA)を用いて、エビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は、有効性(患者評価による睡眠の質または睡眠指標による満足度)、治療中止(あらゆる理由で治療を中止した患者の割合)、忍容性(何らかの有害事象により中止した患者の割合)、安全性(少なくとも1件の有害事象を発現した患者数)で、いずれも急性期(投与4週間後、4週間後のデータがない場合は1~12週間のデータで4週間に近い時点)および長期(投与3ヵ月後の最長時点)の両方で評価した。ランダム効果モデルによるペアワイズおよびネットワーク・メタ解析を用い、要約オッズ比(OR)と標準化平均差(SMD)を算出した。 システマティック・レビューには170試験(36介入、4万7,950例)、ネットワーク・メタ解析には無作為化二重盲検比較試験154試験(30介入、4万4,089例)が組み込まれた。エスゾピクロンとレンボレキサントは有効性のプロファイルが良好 急性期治療に関しては、ベンゾジアゼピン系、doxylamine、エスゾピクロン、レンボレキサント、seltorexant、ゾルピデム、ゾピクロンがプラセボより有効であった(SMD範囲:0.36~0.83、CINeMAによるエビデンスの確実性は高~中)。ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデムおよびゾピクロンは、メラトニン、ラメルテオン、およびzaleplonよりも有効であった(SMD:0.27~0.71、中~非常に低)。 中間作用型ベンゾジアゼピン、長時間作用型ベンゾジアゼピン、およびエスゾピクロンは、ラメルテオンよりもあらゆる原因による中止率が低かった(OR:0.72[95%CI:0.52~0.99、中]、OR:0.70[95%CI:0.51~0.95、中]、OR:0.71[95%CI:0.52~0.98、中])。 ゾピクロンとゾルピデムは、プラセボに比べて有害事象による脱落が多かった(ゾピクロンのOR:2.00[95%CI:1.28~3.13、非常に低]、ゾルピデムのOR:1.79[95%CI:1.25~2.50、中])。また、ゾピクロンはエスゾピクロン(OR:1.82[95%CI:1.01~3.33、低])、daridorexant(OR:3.45[95%CI:1.41~8.33、低])、およびスボレキサント(OR:3.13[95%CI:1.47~6.67、低])より脱落が多かった。 試験終了時の副作用発現例数は、ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデム、ゾピクロンが、プラセボ、doxepin、seltorexant、zaleplonより多かった(OR範囲:1.27~2.78、高~非常に低)。 長期治療に関しては、エスゾピクロンとレンボレキサントはプラセボより有効で(エスゾピクロンのSMD:0.63[95%CI:0.36~0.90、非常に低]、レンボレキサントのSMD:0.41[95%CI:0.04~0.78、非常に低])、エスゾピクロンはラメルテオン(SMD:0.63[95%CI:0.16~1.10、非常に低])およびゾルピデム(SMD:0.60[95%CI:0.00~1.20、非常に低])より有効であった。 エスゾピクロンとゾルピデムは、ラメルテオンと比較してあらゆる原因による中止率が低かった(エスゾピクロンのOR:0.43[95%CI:0.20~0.93、非常に低]、ゾルピデムのOR:0.43[95%CI:0.19~0.95、非常に低])。しかし、ゾルピデムはプラセボに比べて副作用による脱落数が多かった(OR:2.00[95%CI:1.11~3.70、非常に低])。

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ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!【知って得する!?医療略語】第16回

第16回 ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!ゴルフがきっかけで脳梗塞になるなんてことがあるのですか?そうなんです。水泳のクロールやテニス、カイロプラクティスなども若年性脳梗塞を引き起こすことがありますよ。いずれも椎骨動脈解離(VAD:vertebral artery dissection)が原因です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】VAD【日本語】椎骨動脈解離【英字】vertebral artery dissection【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・救急【関連】椎骨動脈解離性動脈瘤 VADA:vertebral artery dissecting aneurysm実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいの鑑別診断で見逃せない疾患の1つに椎骨動脈解離(VAD)があります。見逃すと脳幹梗塞や小脳梗塞、くも膜下出血に至ることもあります。そんなVADは、筆者の経験上、研修医の先生に質問しても、あまり認知されていない疾患ですが、救急外来でめまいの診療をしていると、VADは決して稀な疾患ではありません。しかし、VADという疾患の存在を知らなければ疑うこともできません。また、必ずしも一般的な頭部画像検査ではVADが診断出来るとは限らず、きちんと疑うことができなければ、それに応じたMRオーダーが出来ず、末梢性めまいと誤診してしまう可能性もあります。そこで、今回はVADについて、診断の観点からフォーカスしたいと思います。VADとはVADは脳動脈解離の1つです。脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈です。発症様式は、解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す場合と、椎骨動脈の解離部分が瘤状化し椎骨動脈瘤を発症(椎骨動脈解離性動脈瘤)、それが破裂する出血性のものがあります。初期症状は後頸部痛や肩こりで、多くは片側ですが、解離が脳底動脈に及び、脳底動脈の解離であれば頸部痛が両側性になる可能性も十分あります。また、筆者の経験上は頸部痛や肩こりの程度はさまざまで頭重感程度の方もいます。ただ、普段は肩こりや頸部痛が無い人が、めまいで来院し、普段は経験していない肩こりや頸部痛、頭重感を呈している際には、VADの可能性を十分に想定します。VADの主な原因VADの病因は、特発性から外傷性(交通事故・頸椎骨折等)、スポーツ、血管炎、マルファン症候群の結合組織病などさまざまですが、頸部の捻転を伴う動作が発症契機として指摘されています。とくに頸部を急に捻る動きや過伸展を伴うスポーツ、たとえばゴルフや水泳のクロールやサーフィン、テニスやカイロプラクティスなどで症例報告があります。2020年にはくしゃみ直後の発症も報告されています。これは筆者の推測ですが、頸椎の横突孔を通過する椎骨動脈は、頸部の過伸展や捻転動作により、横突孔周囲の骨と強く接触し、ずり応力により血管壁が損傷し解離を来しやすいのではないかと推測しています。頸動脈系よりもVADが圧倒的に多いのは、椎骨動脈の解剖的な構造に由来するのではないかと考えています。VAD診断にはMRのVRFAやBPASが役立つVADの画像診断の上で留意したいのは、虚血発症のVADが必ずしも脳梗塞まで至っていないことがある点です。このため、発症して間もないVADを頭部単純CTでは診断できないのはもちろんですが、頭部MRIでも拡散強調画像で急性期脳梗塞病変を指摘できないことがあります。これは梗塞まで至っていない虚血状態の病態があることによります。そこで頭頸部MRAも併用しますが、椎骨動脈は先天的な左右差も多く、MRAで椎骨動脈が狭窄や途絶しかけているように見えても、椎骨動脈の低形成という場合も少なくありません。このときに参考になるのが、BPAS(basi-parallel anatomical scanning)です。BPASはMRAの撮影法の1つです。MRAが血管内の血流信号(≒血管内腔)を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示します。BPASとMRAで示される血管径に明らかな乖離があるとすれば、椎骨動脈に解離腔の存在を疑う、あるいは解離部分の瘤状化を疑う手がかりとして有用です。ただし、BPASで有用な情報を得られない症例も存在し、近年は新たな撮像方法として、可変フリップ角 (VRFA:variable refocusing flip angle)を利用したVRFA-3D-TSE法も登場し、より診断精度の向上が期待されます。しかし、どれほど診断機器が発達しても、まずは疾患を疑わなければ始まりません。VADの診断には病歴聴取がとても重要だと思います。急性のめまいの患者さんの診療においては、症状出現前に頸部の過伸展や捻転イベントがなかったか詳しく問診します。また、これまで経験のない片側の肩こりや頸部痛の有無も確認します。ただし、VADの全例に誘因や頸部痛・後頭部痛があるとは限りませんのでその点は注意が必要です。ですが、少なくとも問診や症状からVADを否定できず、検査前確率が高いと考える場合は、放射線技師と相談し、MRI撮影の依頼時にBPASやVRFAを検討いただくことをお薦めします。最後に筆者がヒヤッとした症例をご報告します。その患者さんはバレリーナで、バレエ中に首を過度に反らしたときに突然のめまいが出現しました。初期対応した医師の診断は、アナムネとCTで異常がないことを理由に良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断したようでしたが、帰宅後も症状持続に改善がなく、患者さんは翌日の内科外来を受診しました。発症状況からVADを否定できないと判断し、BPASも含めた頭部MRを実施したところ、椎骨動脈解離が見つかり緊急入院しました。VADは、受診後にくも膜下出血を来し心機能停止で再搬送されたケースも報告されています。めまいを訴える患者を末梢性めまいと結論付ける前に、中枢性めまいの可能性を慎重に否定する必要があります。なお、近年は脳動脈解離として頸動脈解離とVADが一括りに語られる傾向があり、筆者は少々違和感を持っています。同じ脳動脈解離でも、VADと頸動脈系では臨床像が異なるのがその理由で、現場の実務ではそれぞれの臨床像を知っておく必要があると考えています。1)戌亥 章平ほか. 臨床神経. 2020;60:573-580.2)沖山 幸一ほか. 脳卒中の外科. 2014;42:196-202.3)徳元 一樹ほか. 臨床神経. 2014;54:151-157.4)寺崎 修司ほか. 脳卒中. 1996;18巻:70-73.

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原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。3つのカテゴリーの臨床アウトカムを評価 研究グループは、2022年1月1日~4月11日の期間に、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎の小児について後ろ向きに検討を行った。 対象は、年齢10歳以下で、英国健康安全保障庁(UKHSA)による確定例の定義(2022年1月1日以降に10歳以下の小児で発症し、A~E型肝炎ウイルスや代謝性・遺伝性・先天性・機械的な原因に起因しない肝炎で、血清アミノトランスフェラーゼ値>500 IU/L)を満たした急性肝炎の患児であった。 これらの患児の医療記録が精査され、人口統計学的特性や臨床的特徴のほか、肝生化学検査、血清検査、肝臓指向性およびその他のウイルスの分子検査の結果と共に、画像上のアウトカムと臨床アウトカムが記録された。 治療は、同施設の急性肝不全プロトコールに準拠して実施され、広域スペクトル抗菌薬、抗真菌薬、プロトンポンプ阻害薬、ビタミンKの投与などが行われた。 臨床アウトカムは、(1)病態の改善(ビリルビン値およびアミノトランスフェラーゼ値の持続的な低下と、血液凝固能の正常化)、(2)肝移植、(3)死亡の3つのカテゴリーについて評価が行われた。90%でヒトアデノウイルスを検出、14%で肝移植、死亡例はない 急性肝炎で紹介された50例のうち、44例(年齢中央値4歳[範囲:1~7]、女児24例[55%])が確定例の定義を満たす肝炎を有していた。このうち13例が同施設に転院し、残りの患児は地元の施設で治療を受けた。2022年1月~4月の同施設への原因不明の急性肝炎による入院数および原因不明の急性肝不全による肝移植数は、いずれも2012~21年における年間症例数よりも多かった。 医療記録が入手できた患児(80%)は全例が白人であった。受診の主な理由は黄疸(93%[41/44例])が最も多く、次いで嘔吐(54%[24例])、下痢(32%[14例])、白色便(30%[13例])、腹痛(27%[12例])、嗜眠(23%[10例])の順だった。 ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30例では、27例(90%)が陽性であった。サイトメガロウイルス(CMV)は全例が陰性で、エプスタイン-バーウイルス(EBV)のカプシド抗原は2例が陽性で、核抗原は1例が陽性だった。 腹部超音波検査では、胆嚢壁肥厚が45%(20例)、軽度肝腫大が27%(12例)、軽度脾腫が18%(8例)で認められた。 38例(86%)は自然回復した。残りの6例(14%)は肝機能が持続的に悪化して急性肝不全に進展し、全例が肝移植を受けた。この6例中5例は急速に進行性の脳症を来し、黄疸発生から脳症発現までの間隔は6~7日だった。死亡例はなかった。肝移植を受けた6例を含む全例が自宅退院した。 UKHSAは、血液と肝組織のメタゲノム解析を行い、アデノ随伴ウイルス2やヘルペスウイルスを検出した。これらの所見の重要性については、現在、さらなる評価が進められている。 著者は、「多くの患児でヒトアデノウイルスが分離されたが、この疾患の病因におけるその役割は確立されていない」としている。

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