サイト内検索|page:146

検索結果 合計:11816件 表示位置:2901 - 2920

2901.

患者向け広告費が高い医薬品とは?/JAMA

 米国では、医療用医薬品(処方薬)の消費者に向けた直接広告(direct-to-consumer[DTC]広告)が許可されている。米国・ジョンズホプキンス公衆衛生大学院のMichael J. DiStefano氏らは、DTC広告費が高い医薬品の特性を明らかにするための調査を実施した。その結果、2020年に売上高が上位を占めた医薬品の中で、総販促費に占めるDTC広告費の割合が高かったのは、付加的な臨床的有用性の評価は低いが総売上高が高い医薬品であったことが明らかになったという。JAMA誌2023年2月7日号掲載の報告。販促費に占めるDTC広告費は13.5% 研究グループは、2020年に米国での売上高が上位150品目の医薬品特性と販促費の関連を評価する目的で、探索的な横断研究を行った(Arnold Venturesなどの助成を受けた)。フランスとカナダの医療技術評価機関(France's Haute Autorite de Sante、Canada's Patented Medicine Prices Review Board)と医薬品データソース(Drugs@FDA、FDA Purple Book、Lexicomp、Merative Marketscan Research Databases、Medicare Spending by Drug data)により、医薬特性(2020年総売上高、2020年総販促費、臨床的有用性評価、適応症数、適応外使用、分子タイプ、治療を受けた患者の症状概要、投与タイプ、後発品有無、FDA承認年、WHO解剖治療化学分類、メディケア加入者の年間平均支出、売上に占める当該医薬品の割合、市場規模、市場競争力)を評価した。 2020年に、販促費に占めるDTC広告費の割合の中央値は13.5%(四分位範囲[IQR]:1.96~36.6)であり、販促費中央値は2,090万ドル(IQR:272万~1億3,100万)であった。また、総売上高中央値は15億1,000万ドル(IQR:9億7,000万~22億6,000万)で、製薬企業の売上高に占める当該医薬品の割合の中央値は7.9%(IQR:4.2~17.7)だった。 臨床的有用性の評価を受けた135品目のうち92品目(68%)は、付加的な有用性が低いと判定された。また、売上高上位150品目のうち76品目(51%)は、2012年以降に承認されたものであった。販促費の80%以上がDTC広告費に充てられた医薬品は12品目だった。総売上高10%増ごとに、DTC広告費が1.5%上昇 付加的な臨床的有用性が低い医薬品は高い医薬品に比べ、販促費全体に占めるDTC広告費の割合が14.3%(95%信頼区間[CI]:1.43~27.2、p=0.03)高かった。また、当該医薬品の総売上高が10%増加するごとに、DTC広告費の占める割合が1.5%(95%CI:0.44~2.56、p=0.005)上昇した。 WHO分類による消化管・代謝関連の医薬品(インスリン製剤、血糖降下薬を含む)は、他のすべての医薬品分類に比べ、販促費全体に占めるDTC広告費の割合が19.4~38.6%低く、統計学的に有意な差が認められた(いずれもp<0.05)。 著者は、「これらの知見の意味を理解するには、さらなる研究が必要である」としている。

2902.

過渡期に差し掛かったコロナ感染症:今後の至適ワクチンは?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 本論評ではWinokur氏らの論文をもとに先祖株(武漢原株)とOmicron株BA.1に対応する2価ワクチンの基礎的知見を整理すると共に先祖株/BA.5対応2価ワクチンの基礎的、臨床的意義に言及する(BA.4とBA.5のS蛋白塩基配列は同じで、厳密には“BA.4/5対応”という表現が正しいが本論評では“BA.5対応”と簡略表記する)。さらに、今後のコロナ感染制御に必要な近未来のワクチンについても考察する。2023年におけるコロナ感染症の動向 2021年11月頃からOmicron原株(B.1.1.529)の世界的播種が始まった。2022年の初頭にはBA.1、次いでBA.2、夏場にはBA.5、年末にはBA.2とBA.5から派生した変異株の播種が始まったが、2023年2月現在、感染者数は減少しつつある。遺伝子系統図からは、BA.4、BA.5はBA.2の姉妹株であり、それらから種々の変異株が派生した。2022年10月、WHOはOmicron Subvariants under Monitoring(OSUMと略記)なる新たな分類を提唱し、Omicron派生株の世界的播種に対して注意を喚起した(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants. 10/12, 2022)。OSUMを構成するのはBA.2とBA.5からの派生株であり、BA.2系統としてBA.2.75(BA.2.75.2、BN.1を含む)とXBB(XBB.1、XBB.1.5を含む)、BA.5系統としてBQ.1(BQ.1.1を含む)とBF.7が注目された。世界の状況はWHOのOSUM分類によってすべてが説明されるわけではなく、各地域の特異的分布を考慮する必要がある。たとえば、米国の2023年1月中旬における現状は、BA.5原株がほぼ消失、BA.5系統のBQ.1とBQ.1.1が計27%、BA.2系統のXBB.1とXBB.1.5が計69%を占め、これらの派生株がコロナ感染全体の96%を占めている。とくにXBB.1.5の経時的増加が顕著であり、今後数ヵ月の間にXBB.1.5が米国におけるコロナ感染のほぼ全てを占めるものと予測されている(CDC. COVID Data Tracker. 2/8, 2023)。XBBはBA.2.10.2とBA.2.75.3の遺伝子組み換え体であり、BA.2原株に比べ感染性は高いが病原性はほぼ同等に維持されている。 本邦(東京都)においては、2023年2月2日現在、BA.5原株は45%と明確に低下、BA.5系統の派生株が計38%(BQ.1:4.1%、BQ.1.1:17.0%、BF.7:16.6%)、BA.2系統の派生株が計16%(BA.2.75:3.3%、BN.1:12.5%)と共に増加傾向を示している。一方、BA.2系統のXBBは0.3%と増加していない(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料. 2/2, 2023)。すなわち、本邦では、米国と異なり、XBBによる感染拡大の可能性は低く、BA.5系統のBQ.1.1とBF.7、BA.2系統のBN.1による感染拡大に注意する必要がある。これらの派生株の感染性は各原株(BA.2、BA.5)よりも高いが病原性はほぼ同等とされている。BA.1対応2価ワクチンから得られた知見 コロナ感染症に対する予防ワクチンとしてはファイザー製、モデルナ製の先祖株(武漢原株)対応1価ワクチン(BNT162b2、mRNA-1273)が中心的役割を果たしてきた。しかし、現在のOmicron派生株に対しては先祖株対応1価ワクチンの追加接種(3回目以降の接種:Booster接種)では十分なる感染予防、重症化予防が得られないことが判明し、先祖株mRNAに加えOmicron株mRNAを同時に封入したOmicron株対応2価ワクチン(BA.1、BA.5対応)が開発された。BA.1対応2価ワクチンがまず承認され、欧州、本邦などで追加接種用として使用されているが(米国では未承認)、BA.1は2022年春頃にはほぼ消滅、かつ、BA.1からの有意な派生株はBA.1.1のみであり、世界でBA.1対応2価ワクチンの追加接種を受けた人の数は限られている。しかし、BA.1対応2価ワクチン接種による中和抗体形成能は詳細に検討され、BA.1対応2価ワクチンはBA.5対応2価ワクチンの臨床的重要性を担保する“象徴的ワクチン”として意義がある。 Winokur氏らによると、BA.1対応2価ワクチンを4回目Booster接種として使用した場合のBA.1に対する中和抗体価は先祖株対応1価ワクチン接種後に比べ1.6倍高かった。一方、両ワクチン接種後のBA.5とBA.2系統の派生株BA.2.75に対する中和抗体価はほぼ同等であり、BA.1対応2価ワクチンのほうが優れているわけではなかった。これらの結果は、標的ウイルスを効果的に中和するためにはウイルスS蛋白特異的mRNAを封入したワクチンが必要であることを意味する。本論文で示されたもう一つの重要な知見はBA.1対応2価ワクチンと先祖株対応1価ワクチンの副反応に明確な差を認めなかったことである。この結果は、今後、種々なるOmicron派生株に対応するmRNAワクチンが開発されたとしても安全性に問題がないことを示唆する。BA.5対応2価ワクチンの液性免疫、細胞性免疫、予防効果 先祖株/BA.5対応2価のワクチンを用いたBooster接種は、2022年秋以降、本邦を含め世界の先進国で開始された。2023年に入り、当ワクチンをBooster接種として用いることの正しさを支持する知見が集積されつつある。Collier氏らはファイザー製、モデルナ製の先祖株対応1価ワクチンを3回接種終了した対象に追加Booster接種として先祖株対応1価ワクチンあるいはBA.5対応2価ワクチンを接種した場合のBA.5を中心とする複数のOmicron派生株に対する中和抗体価(液性免疫)、BA.5特異的記憶B細胞、CD4-T細胞、CD8-T細胞の活性化(細胞性免疫)について検討した(Collier ARY, et al. N Engl J Med. 2023;388:565-567.)。その結果、BA.1、BA.2、BA.5に対する中和抗体価はBA.5対応2価ワクチンのBooster接種後により高い値を示すことが判明した。一方、BA.5特異的記憶B細胞、CD4-T細胞、CD8-T細胞の賦活化には先祖株対応1価ワクチンとBA.5対応2価ワクチンのBoosterで著明な差を認めなかった。以上の結果は、BA.5対応2価ワクチンのBooster効果は主として液性免疫の賦活化に起因するもので細胞性免疫の賦活化の関与は少ないことを示唆する。 Zou氏らはXBB.1、BA.2.75、BQ.1.1など今後世界を席巻する可能性があるOmicron派生株を中心にPfizer社のBA.5対応2価ワクチンのBooster接種による中和抗体形成能を報告した(Zou J, et al. N Engl J Med. 2023 Jan 25. [Epub ahead of print])。彼らの解析によると、BA.5対応2価ワクチンのBooster接種はBA.5系統の派生株BQ.1.1、BA.2系統の派生株BA.2.75に対しては比較的高い中和抗体価を示すがBA.2系統の派生株XBB.1に対する中和抗体は低値であった。 Miller氏らは本邦にとって重要なBA.5系統の派生株BF.7に対するBA.5対応2価ワクチンのBooster効果を検討し、BF.7に対する中和抗体価はBA.5に対する値よりも少し低いものの(BA.5の1/1.5倍)BA.2系統のBA.2.75に対する値の2.7倍、XBB.1に対する値の14倍と高い中和抗体価を示すことを報告した(Miller J, et al. N Engl J Med. 2023;388:662-664.)。Zou氏、Miller氏らの報告は、BA.2ならびにBA.5系統の派生株感染が主流になるであろう2023年度にあってはBA.2とBA.5に対応したワクチンの開発が必要になる可能性を示唆する。 Link-Gelles氏らはBA.2、BA.5系統の派生株感染に対するBA.5対応2価ワクチンの感染予防効果について報告した(Link-Gelles R, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;72:119-124.)。BA.5対応2価ワクチンのBooster接種によりBA.2系統派生株に対する感染予防効果は37~52%、BA.5系統派生株に対する感染予防効果は40~49%であり、BA.5対応2価ワクチンの感染予防効果はBooster接種後少なくとも3ヵ月は維持された。 Lin氏らは、入院ならびに死亡を指標としてBA.5対応2価ワクチンの重症化予防効果を評価した(Lin DY, et al. N Engl J Med. 2023 Jan 25.[Epub ahead of print])。観察時期に蔓延していたウイルスはBA.4.6、BA.5、BQ.1、BQ.1.1であった。以上の状況下でBA.5対応2価ワクチンのBooster接種後の重症化予防効果は54~64%であったが、その効果はBooster接種1ヵ月後から低下した。コロナ感染症に対する今後の至適ワクチン 2023年2月8日、厚労省は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、2023年度以降のコロナワクチン接種に関して以下の議論を開始した;(1)2023年度は全世代に対してワクチンの公費負担を継続、(2)2023年度のワクチン接種は秋から冬にかけて施行、(3)ワクチンの種類として幅広い抗原に対する免疫を獲得するためのもの、あるいは、流行株に特化したものが考えられるとした。幅広い抗原に対するワクチンとしては現行のBA.5対応2価ワクチンが該当するが、武漢原株の重要性が消失しつつある現在、武漢原株mRNAをワクチンに組み込む必然性はないはずである。本邦において流行株に特化したワクチンとしては、BA.5系統のBQ.1.1、BF.7、BA.2系統のBN.1に特化した1価あるいは2価ワクチン、米国においては、BA.2系統のXBBに特化した1価ワクチンが考えられるが、流行株に特化し過ぎるとウイルス播種の状況が現在と乖離した場合にワクチンが無効となり忌々しき社会問題を引き起こす。それゆえ、現在の流行ウイルスがBA.2、BA.5由来の派生株が主体であることを鑑み、2023年度においては、汎用性が担保された至適ワクチンとしてBA.2とBA.5に対応する2価ワクチンを開発すべきではないだろうか? 2024年度以降は流行株の厳密なモニターから新たなワクチンを模索する必要性を念頭に置くべきであろう。

2903.

統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応の性差~メタ解析

 オランダ・アムステルダム大学のBram W. C. Storosum氏らは、統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応が、性別や閉経状態により影響を受けるかについて、調査を行った。その結果、統合失調症治療において女性のほうが男性よりも抗精神病薬に対する治療反応が得られやすく、この影響は閉経状態やベースライン時の症状重症度(陰性症状)による影響を受けていなかった。Psychiatry Research誌2023年2月号の報告。 統合失調症患者5,231例を対象とした抗精神病薬の短期プラセボ対照登録研究22件のデータを分析した。個々の患者データについて2段階のメタ回帰分析を行い、症状重症度の平均差と治療反応の差(30%超の症状改善)に対する性別および閉経状態の影響を調査した。ベースライン時の症状重症度(陰性症状)で補正した場合としない場合の両方で、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬による統合失調症治療は、女性において男性よりも、平均的な症状改善効果が高かった。・性別ごとのNNTは、女性で6.9、男性で9.4であった。・治療効果による性差は、閉経前の状態およびベースライン時の症状重症度(陰性症状)の影響を受けなかった。・急性期抗精神病薬治療のエフェクトサイズに対する性別および年齢の影響があるものの、すべてのサブグループにおいて臨床的有効性が認められた。

2904.

ペグIFN-λ、高リスクCOVID-19の重症化を半減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者を含むCOVID-19外来患者において、ペグインターフェロンラムダ(IFN-λ)単回皮下投与は、COVID-19進行による入院または救急外来受診の発生率をプラセボ投与よりも有意に減少させた。ブラジル・ミナスジェライスカトリック大学のGilmar Reis氏らTOGETHER試験グループが報告した。NEJM誌2023年2月9日号掲載の報告。ブラジルとカナダで、入院/救急外来受診の発生を比較 TOGETHER試験は、ブラジルとカナダで実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験である。研究グループは、ブラジルの12施設およびカナダの5施設において、SARS-CoV-2迅速抗原検査が陽性でCOVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、50歳以上、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、喫煙、BMI>30などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、ペグIFN-λ(180μg/kgを単回皮下投与)群、プラセボ群(単回皮下投与または経口投与)または他の介入群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院(または三次病院への転院)または救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合とした。主要評価のイベント発生率、ペグIFN-λ群2.7% vs.プラセボ群5.6%、有意に半減 2021年6月24日~2022年2月7日の期間に、計2,617例がペグIFN-λ群、プラセボ群および他の介入群に割り付けられ、ペグIFN-λ群のプロトコール逸脱2例を除外したペグIFN-λ群931例およびプラセボ群1,018例が今回のintention-to-treat集団に含まれた。患者の83%はワクチンを接種していた。 主要アウトカムのイベントは、ペグIFN-λ群で931例中25例(2.7%)に、プラセボ群で1,018例中57例(5.6%)に発生した。相対リスクは0.49(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.30~0.76、プラセボに対する優越性の事後確率>99.9%)であり、プラセボ群と比較してペグIFN-λ群で、主要アウトカムのイベントが51%減少した。 副次アウトカムの解析結果も概して一貫していた。COVID-19による入院までの期間はプラセボ群と比較しペグIFN-λ群で短く(ハザード比[HR]:0.57、95%ベイズCrI:0.33~0.95)、COVID-19による入院または死亡までの期間もペグIFN-λ群で短い(0.59、0.35~0.97)など、ほとんどの項目でペグIFN-λの有効性が示された。また、主な変異株の間で、およびワクチン接種の有無で有効性に差はなかった。 ベースラインのウイルス量が多かった患者では、ペグIFN-λ群のほうがプラセボ群より、7日目までのウイルス量減少が大きかった。 有害事象の発現率は、全GradeでペグIFN-λ群15.1%、プラセボ群16.9%であり、両群で同程度であった。

2905.

糖尿病網膜症、アフリベルセプトの早期投与で長期の視力改善は?/JAMA

 中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を伴わない非増殖糖尿病網膜症(NPDR)患者において、アフリベルセプトを予防投与し視力を脅かす合併症が生じた場合にアフリベルセプトによる治療を開始しても、予防投与なし(シャム投与)で同合併症発生時に治療を開始した場合と比較し、4年後に増殖糖尿病網膜症(PDR)またはCI-DMEの発生率は有意に低下したが視力の改善は認められなかった。米国・インディアナ大学のRaj K. Maturi氏らが、米国およびカナダの64施設で実施した無作為化比較試験「DRCR Retina Network Protocol W試験」の結果を報告した。本試験では、少なくとも2年間は糖尿病による視力を脅かす合併症の発生を抑制できることが示されていたが、早期投与が長期的な視力改善につながるかどうかは不明であった。著者は、「本試験で用いられた予防戦略としてのアフリベルセプトは、CI-DMEを伴わないNPDR患者には通常不要だろう」とまとめている。JAMA誌2023年2月7日号掲載の報告。中等度~重度の増殖糖尿病網膜症399眼、アフリベルセプト予防投与vs.シャム 研究グループは、1型または2型糖尿病を有する成人で、CI-DMEを伴わない中等度~重度のNPDR(糖尿病網膜症重症度尺度[DRSS]レベル43~53)を少なくとも1眼有し、最高矯正視力が79文字以上(スネレン換算20/25以上)の患者を対象に試験を実施した。 患者をアフリベルセプト(2.0mg硝子体内投与)群またはシャム群に1対1の割合に無作為に割り付け、ベースライン、1、2および4ヵ月目、その後2年目までは4ヵ月ごとに投与。3~4年目は、軽度以下のNPDR(DRSSレベル≦35)と判定された場合に4ヵ月ごとの予防投与を延期できることとし、視力低下(1回の診察で10文字以上、または連続した2回の診察で5文字以上)を伴う高リスクPDR(DRSSレベル≧71)またはCI-DMEが生じた場合には、両群ともDRCR Retina Networkのアルゴリズムに従ってアフリベルセプトによる治療を開始することとした(PDRはプロトコルS、CI-DMEはプロトコルT)。 主要アウトカムは、視力低下を伴うPDRまたはCI-DMEの発生、およびベースラインから4年後までの最高矯正視力(ETDRS文字数)の平均変化量とした。 2016年1月~2018年3月に計399眼(328例)が登録され、最終追跡調査日は2022年5月11日であった。患者背景は、平均年齢56歳、女性が42.4%、アジア人5%、黒人15%、ヒスパニック系32%、白人45%であった。PDR/CI-DMEの4年累積発生率は有意に低下も、4年後の視力は両群で差はなし 視力低下を伴うPDRまたはCI-DMEの4年累積発生率(Kaplan-Meier法による推定)は、アフリベルセプト群33.9%、シャム群56.9%であった(補正後ハザード比[HR]:0.40、97.5%信頼区間[CI]:0.28~0.57、p<0.001)。 ベースラインから4年後までの最高矯正視力の平均変化量(±SD)は、アフリベルセプト群-2.7±6.5文字、シャム群-2.4±5.8文字であった(補正後群間平均差:-0.5文字、97.5%CI:-2.3~1.3、p=0.52)。 Antiplatelet Trialists' Collaborationによる心血管/脳血管イベントの発生率は、アフリベルセプト群の両眼被験者で9.9%(71例中7例)、片眼被験者で10.9%(129例中14例)、シャム群の片眼被験者で7.8%(128例中10例)であった。

2906.

小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第228回

小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法Pixabayより使用奇抜なタイトルの論文だったので、まさかトップジャーナルとは思っていませんでした。読んだ後に気付きました、すいません。この連載では、私もあえて「誰も知らないマイナー医学雑誌」の論文を読みあさっているワケではないので、誤解なきよう。Lee HN, et al.Effect of a Virtual Reality Environment Using a Domed Ceiling Screen on Procedural Pain During Intravenous Placement in Young Children A Randomized Clinical Trial.JAMA Pediatr. 2023;177(1):25-31.VRゴーグルのゲームってやったことあります? 私は一度、家電量販店でVRゴーグルをかけて崖の上に立ったことがあるのですが、後ろから妻に押されて「殺す気か!」と思ってしまいました。没入感がすごいですよね。そんなVRの世界に入っているタイミングで小児の点滴ルートを確保したら、疼痛が少なくなるんじゃないか、あわよくばバレないんじゃないか、という研究立案をしたのがこの研究です。実際に、小児の気をそらすということが効果的であることは示されていて、VRはその最有力候補だったのです1)。かといって、小児にVRゴーグルを着用してもらうことは困難なので、ドーム型の天井スクリーンを使ったVR環境を実現するというなかなか大掛かりなランダム化比較試験です。対象となったのは、静脈ルート確保が必要な生後6ヵ月~4歳の小児です。主要評価項目は、ベッドに寝かせた後から針が皮膚を貫通するまでの4時点における疼痛スコアとしました。スケールはFLACCという小児用の疼痛スコアを用いました。88人の小児のうち、44人がVR環境、44人が非VR環境にランダム化されました。針を貫通した時点のFLACCスコアの中央値は介入群6.0(四分位範囲:1.8~7.5)、対照群7.0(5.5~7.8)という結果でした。中央値にはさほど差がないように見えますが、順序ロジスティック回帰モデルではVR介入群のほうが疼痛が少ないことが示されました(オッズ比:0.53、95%信頼区間:0.28~0.99、p=0.046)。SNSなどで、子供の気をそらしながらワクチンを一瞬で接種する小児科医の動画を見かけますが、これも同じロジックです。というわけで、小児救急でどんどんVR環境を広めていきましょう!1)Litwin SP, et al. Virtual Reality to Reduce Procedural Pain During IV Insertion in the Pediatric Emergency Department: A Pilot Randomized Controlled Trial. Clin J Pain. 2021 Feb 1;37(2):94-101.

2907.

血管外漏出ガイドライン発刊、抗がん剤治療時の最新知見

 がん薬物療法を行ううえで、点滴の血管外漏出の予防、早期発見、対処・管理は重要な課題である。2022年12月、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会(3学会合同)が『がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(改訂3版)』を発刊した。血管外漏出の対策を日常的に実施するも、実は推奨されていなかった…ということも無きにしもあらず。ぜひこの機会に抗がん剤をオーダーする医師にも薬剤の血管漏出時対応の最新知見を確認いただきたい。血管外漏出ガイドライン2023年版は新たな医療機器や薬剤が色濃く反映 血管外漏出ガイドライン改訂では、血管外漏出(EV:extravasation)が問題となる抗がん剤のリストに大きな変更はないが、それらをマネジメントするための新たな医療機器(PICCカテーテル)や薬剤(デクスラゾキサン)の登場が色濃く反映されている。また、がん薬物療法時の制吐薬に用いられるホスアプレピタントは注射部位反応の増加が報告されているが、それとEVとの関連についても触れられている。 『がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版』で押さえておきたい変更点は以下のとおり。CQ3「がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVとPICCどちらが推奨されるか」-CQ2で「中心静脈デバイスを留置するかしないか」を検討し、ここではデバイスの選択について検討されている。各論文ではデバイス3種の比較がなされていたことから、CQ3a(CV vs. PICC、推奨の強さ:弱い・方向:行うこと)、CQ3b(CV vs.ポート、同:弱い・同:行うこと)、CQ3c(PICC vs.ポート、同:強い・同:行うこと)とそれぞれのCQが設けられている。なお、検討に対して最も重要なアウトカムとしてデバイスfailure(閉塞、感染、血栓、抜去など)を設定して可能な場合にメタアナリシスを行っている。CQ7「EVリスクを考慮した場合、ホスアプレピタント投与を行うことは推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) ホスアプレピタントの投与はアプレピタントの内服困難症例などに限定し、注射部位反応に注意しながら使用することを弱く推奨する。ホスアプレピタントによりEVリスクが高まるエビデンスはないが、併用したがん薬物療法の種類によってはそのリスクが増加するという報告があるため、併用時には注意が必要となる可能性がある。CQ9「皮膚障害の悪化予防としてEVが起こったときに残留薬液または血液の吸引は推奨されるか」(推奨なし) 実際に吸引を行っても残留薬液または血液を吸引できることはまれであり、この有用性を検討する必要があると判断された。CQ10「EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として冷罨法(冷却)は推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) 冷罨法を用いることで痛みの軽減、安心感や満足感が得られる面から優先される対応であるが、施行時期や期間、温度については定まっておらず、悪化の抑制などに有効であるかは不確かである。CQ11「アントラサイクリン系がん薬物療法薬のEVにデクスラゾキサンの使用は推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) デクスラゾキサン(商品名:サビーン)は2014年に“アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤のEV”を効能効果として承認された薬剤であり、医療ニーズの高い医薬品である。しかし、費用対効果(薬価:4万6,437円/瓶)※や投与日数(3日間連続投与)などから患者の不利益になる可能性もあるため、本CQで明らかにすることとした。※2023年2月時点

2908.

子育て世代の日本人女性のうつ症状スクリーニング尺度MDPS-M

 産後うつ病は、出産後の女性にとって重要な問題の1つである。産後うつ病の早期発見と適切な治療には、うつ病リスクの高い女性を迅速かつ簡便に特定することが必要である。大阪大学の竹内 麻里子氏らは、子育て世代の女性の身体症状からうつ症状をスクリーニングする尺度を開発し、検証の結果を報告した。今回、著者らが開発した子育て世代の女性のうつ症状スクリーニング尺度「MDPS-M」は、プライマリケアにおいてうつ病リスクが高い母親の早期の特定に有用かつ簡便な臨床尺度である可能性が示唆されたという。Frontiers in Psychiatry誌2022年12月1日号の報告。 漢方医学の概念に基づいた身体症状に関する17項目の質問(0、1、2点の3段階スコア)からなる、軽症以上のうつ症状をスクリーニングする簡便な自己記入式の尺度Multidimensional Physical Scale(MDPS)を開発した。子育て世代(産後0~6年)の女性1,135人のうち、学習用データとして偏りなくランダムに抽出した785人、検証用データとして350人を対象に解析を行った。うつ病の判定には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。学習用データの多変量ロジスティック回帰分析を行い、最終モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・MDPS合計スコア(0~34点)に月経再開の有無(-3、0点)を加えたMDPS for mothers(MDPS-M)を作成した。・うつ病リスク特定のためのROC分析では、MDPS-M(-3~34点)の良好な鑑別が示唆された(AUC:0.74、95%信頼区間[CI]:0.70~0.78)。・MDPS-Mのカットオフ値(9/10)における軽症以上のうつ病検出精度は、感度84.9%、特異度45.7%、陽性的中率36.7%、陰性的中率89.2%であった。・MDPS-Mの外部検証では、開発コホートと同様の分析において良好な鑑別が確認された(AUC:0.74、95%CI:0.68~0.79)。

2909.

妊娠中のコロナワクチン接種、出生児の感染/入院を予防/BMJ

 妊娠中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン2回接種は、出生児の生後6ヵ月間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)デルタ株への感染と入院に対し高い有効率を示し、オミクロン株の感染と入院に対しても中等度の予防効果が認められた。また、3回目のワクチン接種によりオミクロン株に対する有効率が上昇したこと、ワクチン2回接種の有効率は、母親の妊娠第3期での接種で最も高く、生後8週を過ぎると低下していた。カナダ・トロント大学のSarah C. J. Jorgensen氏らが、オンタリオ州の地域住民を対象とした検査陰性デザイン研究の結果を報告した。SARS-CoV-2中和抗体は、妊娠中の感染やワクチン接種により臍帯血、母乳、乳児血清に存在することが明らかになっており、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種が、乳児のSARS-CoV-2感染および入院リスクを低下する可能性を示唆する新たなエビデンスが示されていた。BMJ誌2023年2月8日号掲載の報告。生後6ヵ月未満児約8,800例について、母親の妊娠中のワクチン接種との関連を解析 研究グループは、ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)のデータベースを用い、カナダで最も人口の多いオンタリオ州において2021年5月7日~2022年3月31日の期間に生まれ、2021年5月7日~2022年9月5日の期間にSARS-CoV-2の検査を受けた生後6ヵ月未満児を特定し解析を行った。COVID-19ワクチン接種データベース(COVaxON)を用いて母親の妊娠中のワクチン接種状況を調べ、デルタ株またはオミクロン株の感染が検査で確認された乳児を症例群、検査が陰性であった乳児を対照群として、乳児のデルタ株またはオミクロン株の感染または入院に対するワクチン有効率を多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した。 乳児8,809例が適格基準を満たし、症例群はデルタ株99例、オミクロン株1,501例、対照群はそれぞれ4,365例、4,847例が含まれた。妊娠中の2回接種、乳児のオミクロン株感染/入院に対する有効率は45~53% 母親が妊娠中にワクチンを2回接種した場合の有効率は、乳児のデルタ株感染に対して95%(95%信頼区間[CI]:88~98)、デルタ株感染による入院に対して97%(73~100)であり、オミクロン株感染に対しては45%(37~53)、オミクロン株感染による入院に対しては53%(39~64)であった。 また、妊娠中のワクチン3回接種の有効率は、オミクロン株感染に対して73%(95%CI:61~80)、オミクロン株感染による入院に対して80%(64~89)であった。 乳児のオミクロン株感染に対するワクチン2回接種の有効率は、妊娠第1期(47%、95%CI:31~59)または第2期(37%、24~47)と比較して、妊娠第3期で最も高かった(53%、42~62)。また、出生~生後8週までは57%(44~66)であったが、生後16週以降には40%(21~54)へ低下していた。

2910.

サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むか【臨床留学通信 from NY】第44回

第44回:サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むかさて、今回はマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接当日の様子を紹介します。フェローシップ申請サイトのERASが12月7日にオープンする前にさっさと決めてしまいたいという思いもあって、先行して行われるMGHの面接に全力で臨みました。オンライン面接となれば、普通は部屋を明るくして自分の印象を良くするものですが、私は家の中が騒々しいため、やむなく病院の当直室で、やや暗めの光の中で行いました。Program Director、Associate Program Directorと呼ばれる2人との同時面接で、開始時間は先方が空いてる時間帯をいくつか提示され、その中から選ぶ形でした。多くのかしこまった面接はコーディネーターにあたる方から連絡が来て、何人かの候補者と同時に面接をするのが普通なのですが、今回はそれと異なり私1人だけであり時間もフレキシブルでした。おそらく内部候補者でスポットが埋まらず、ERASがオープンする前では私以外に候補者がいなかったのでしょう。逆にこれを大きなチャンスと捉え、少し気楽に、誰かとの比較ではなく自分自身の今までの日本での経験や、なぜ米国に来たのかということ、これから先何をしたいかということを純粋に伝えればいいという風に考えました。レジデントや通常のフェローの場合は、「なぜ内科なの? なぜ循環器なの? 循環器の何がしたいの?」とかいう質問も多いですし、“What are your strength and weakness?” “Why our program?”といった質問もあります。しかし、フェローシップのサブスペシャルティともなると、そのような細かいことは聞かれません。また、もし初めて米国に来るために内科の面接を受けるならば、経験がないため英語力も見られているでしょう。私の英語も問題はないとは言えませんが、そこはいわゆる“Tell me about yourself.”に対して、事前に用意して繰り返し練習した内容をスラスラと伝えました。Zoomのため、カンペのようにいくつかのポイントをPCのキーボードの上に置いておき、たとえば“What questions do you have?”といったよくある質問にも、焦らずいくつか答えられるようにしておきました。もちろん「バケーションはどれくらいですか?」とか、「夜終わるの遅いんですか?」といった質問は禁忌です。日本国内の医師はほぼ面接は皆無、どこの病院に行っても基本はウェルカムであることから、こういった就職面接というのは日本語でもやっていないのにどうしたもんだ、という心境でしたが何とか乗り切りました。今回は循環器の中のサブスペシャルティのカテーテル治療であり、一般のフェローとは違ったスキル、かつ日本的な丁寧なカテーテル治療ができる、というのも魅力的に思わせるようにしました。いかに自分を売り込むか、魅力的な候補者か、プログラム側がその候補者を取った場合にどんなメリットがあるかを伝える必要があり、日本人にはなかなか難しいところとも言えます。おおむねプログラム側も通常は和やかな雰囲気にしてくれますので、雰囲気が良かったかどうかで出来は決まりませんが、日本でのカテーテル治療、臨床研究の経験を活かし、米国に来たのはさらなるアカデミックキャリアを築くため、という一本道を伝えきりました。面接を終えると、その直後はサンクスギビングで連絡は途絶え、その間は次の面接の準備をしていました。そしてついに、休み明けの月曜に、“I would like to offer you the position of the interventional cardiology fellowship at MGH beginning 7/2024”というメールが来た時は、4年半の米国での苦労が少し報われたような、張り詰めていた緊張も少し和らいだ気がしました。Column5~11歳を対象としたCOVID-19のワクチンの有効性を述べた論文が、JAMA Pediatrics誌に掲載されたため紹介させていただきます。本誌には昨年にも2本掲載され、今回3本目になります。Reviewerもしっかりしていて、いろいろ学ぶことができました。この論文について、米国のトップニュースメディアの1つであるABCからも取材を受けました。Watanabe A, Kuno T, et al. Assessment of Efficacy and Safety of mRNA COVID-19 Vaccines in Children Aged 5 to 11 Years: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;e226243.ABC News:COVID-19 vaccines are safe and effective for kids, according to new data

2911.

ペマフィブラートの非アルコール性脂肪性肝疾患への有効性、よく効く患者の特徴

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対するペマフィブラート※の投与は、BMI に関係なく肝炎症および線維化のマーカーを改善し、なかでもBMI 25未満の患者のほうがBMI 30以上の患者と比較して効果が高いことが、篠崎内科クリニックの篠崎 聡氏らの研究で明らかになった。Clinical and experimental hepatology誌2022年12月8日号の報告。※ペマフィブラート(商品名:パルモディア)の効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」(2023年2月3日現在)。ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値非アルコール性脂肪性肝疾患は、世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、近年発症率が増加している。日本では2018年に登場した選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは、非アルコール性脂肪性肝疾患の改善が期待されている薬剤の1つである。本研究は、非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する目的で行われた。 対象は、ペマフィブラートで6ヵ月以上治療された非糖尿病の非アルコール性脂肪性肝疾患患者71例。肝臓の炎症と線維化に関しては、それぞれアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値とMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)値によって評価を行った。 非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する研究の主な結果は以下のとおり。・ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値およびM2BPGi値は、ベースラインと比較して、BMIに関係なく、有意な改善が認められた。・BMI 25未満であることは、肝炎症患者のALTを50%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるALT値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた (p=0.034)。・BMI 25未満であること、および50歳以上であることは、肝線維化の減少を示すM2BPGiを20%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるM2BPGi値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた(p=0.022)。

2912.

5~11歳児へのコロナワクチン、MIS-C低減/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期では、小児が感染しても、成人より軽い症状を呈する傾向があることが研究で示されていた。しかし、パンデミックの進行に伴い、呼吸不全、心筋炎、COVID-19 に続発する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)など、重症化や合併症を発症するリスクがあることが新たに示唆されている。5~11歳の小児への新型コロナウイルスmRNAワクチンの有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏らの研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種により新型コロナ感染、入院およびMIS-Cなどのリスク低減が認められ、ワクチン接種による局所的な有害事象の発現率は高かったが、心筋炎を含む重篤な有害事象の発現頻度は低く、ほとんどの有害事象が数日以内に消失したことが明らかとなった。本研究は、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年1月23日号に掲載された。 本研究では、2022年9月29日までの小児におけるコロナワクチンの有効性または安全性を評価するすべての無作為化比較試験(RCT)および観察研究を、PubMedとEmbaseのデータベースから検索し、さらに、特定した論文の参考文献を含む2次資料を追加検索し、関連する論文を包括的に収集した。コロナワクチンについては、ファイザー製またはモデルナ製のmRNAワクチンに限定し、投与量を抽出した。主要評価項目は、症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染、副次評価項目は、有症状のSARS-CoV-2感染、COVID-19関連疾患による入院、MIS-C、ワクチン接種による有害事象とした。有効性と安全性の評価項目の未調整/調整オッズ比を抽出し、ランダム効果モデルで統合した。有害事象については発現率の詳細を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2件のRCT、15件の観察研究(コホート研究12件、ケースコントロール研究3件)の合計17件を解析した。ワクチン接種児1,093万5,541例(平均年齢または中央値:8.0~9.5歳、女性:46.0~55.9%)、ワクチン未接種児263万5,251例(同:7.0~9.5歳、女性:44.3~51.7%)であった。追跡期間の中央値は7~90日。・ワクチン2回接種児は未接種児と比較して、次の評価項目のリスク低下と関連していた。 -症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染(オッズ比[OR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.35~0.64) -有症状のSARS-CoV-2感染(OR:0.53、95%CI:0.41~0.70) -COVID-19関連疾患による入院(OR:0.32、95%CI:0.15~0.68) -MIS-C(OR:0.05、95%CI:0.02~0.10)・ワクチン接種はプラセボと比較して、あらゆる有害事象のリスク上昇と有意に関連した(OR:1.92、95%CI:1.26~2.91)。日常生活を妨げる有害事象のリスク上昇との関連は非有意だった(OR:1.86、95%CI:0.39~8.94)。・ワクチン接種による有害事象について、ほとんどのワクチン接種児は、1回目の接種(5万5,949例中3万2,494例[86.3%、95%CI:74.1~93.3%])と2回目の接種(4万6,447例中2万8,135例[86.3%、95%CI:73.8~93.4%])で少なくとも1つの局所有害事象を経験した。接種児の約半数が全身性有害事象を発現した。・日常生活に支障を来す有害事象は、1回目の接種で4.9%(95%CI:3.1~7.7%)、2回目の接種で8.8%(95%CI:5.4~14.2%)確認された。・心筋炎は、1回目の接種で100万分の1.3(929万1,923例中12例)、2回目の接種で100万分の1.8(731万6,924例中13例)の確率で認められた。

2913.

アルツハイマー病疾患修飾薬lecanemab、臨床医が知っておきたい現状と課題【外来で役立つ!認知症Topics】第2回

lecanemabの3つの課題日本におけるlecanemabの申請が発表された。これを受け、認知症の人やその家族、そして医療関係者はアルツハイマー病の疾患修飾薬に熱い視線を向けている。エーザイでは、7.5ヵ月の延長効果、27%の症状軽減を公式発表している。しかしマスコミなどでは、シミュレーションの数字を基に軽度認知障害(MCI)なら2年間も認知症へのコンバートが遅くなるなどと報道している。このように期待が先行し、現実を見えにくくしている面もある。そこで今回はこの薬剤に関し、実際的な3つの問題点について述べる。まず今後、薬価を下げるために考えられる方法論。次に、最大の副作用であるARIA。そして現時点での個人輸入の可能性とこれから医師が直面するであろう課題である。薬価、保険収載はどうなるか?価格に関しては、アメリカでは1人あたりの1年間分の薬価が350万円とされた。そこでマスコミが試算して、日本の場合には150万円くらいとの報道もあるが、これも根拠の薄い値段のようだ。それはさておき、わが国の認知症の人の3分の2を占めるアルツハイマー病患者、それを前駆期や初期に限ったとしても100万人台と思われる。これを考えた時、保険収載はそう容易ではないと思われる。そこでまずは、製造技術の革新や大量生産等により廉価になっていくことが期待される。また、抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬の投与量が少なくても効果が今以上になれば安くなるはずだ。従来の抗体薬の効果が乏しかった原因として注目される説の1つに、血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の通過率が低いからとするものがある。そこでBBB通過の効率を上げることが注目される。従来、抗アミロイド抗体のような巨大分子の輸送では受容体媒介移動(receptor-mediated transcytosis:RMT)過程の活用が有効と考えられ、RMT受容体に結合できるリコンビナント抗体が注目されてきた。これ以外にも、末梢で可溶性Aβを取り除いて、崩れた末梢・中枢間のAβ比を復元しようとする力を促し、脳に沈着をさせない、脳の沈着を除くという戦略1)もある。いずれも値下げにつながる可能性を持つものと期待される。重要な副作用のARIAとは?次に本剤が持つさまざまな副作用の中で最も怖いのが、小さな血管の浮腫や出血の「ARIA(amyloid-related imaging abnormalities)」である。アルツハイマー病患者の約半数はアミロイドアンギオパチーを有するとされる。こればアミロイドのプラークが血管壁の平滑筋に置き換わった病理変化である。さて本剤の治験のダブルブラインド期に、参加した1,800例のうち13例での死亡が報告されている。脳出血による死亡例は、このダブルブラインド相また実薬相を併せて3例ある。いずれも本剤との関係は疑われるが未確定であるとされる。抗Aβ抗体薬は、脳内のAβ沈着を標的に、選択性なく作用する。だからアミロイドアンギオパチーもターゲットになるのでARIAは不可避である。最近では、専門家によってはARIAという術語が正しくないと言われる。つまりこれは画像上の異常ではなく、これらの死亡例が物語るように、明らかな臨床症候だと述べている2)。なお治験においてARIAは、多くの場合、投与開始から3、4ヵ月までに発生した。だから投与からしばらくは、とくに厳重な注意が求められる。個人輸入への対応はどうする?さて、わが国における本剤の発売は、2023年末になるのではないかと噂される。しかし今すぐ欲しい人も多く、すでに承認されているアメリカから個人輸入したいという方もいる。これに関し、筆者が調べてみた限りでは、個人輸入は本剤に関しても可能なようだ。これまでと同様に個人の申請に基づき、一般的には輸入代行会社に申し込むことになる。こうした手続きは厚生労働省厚生局の管理下にあるが、これを仕入れて他者に売却するような行為はもちろん許されない。次に、仮に薬剤を仕入れたとしても、本剤は点滴投与するので、医療者の関わりが欠かせないだろう。つまり個人が当薬品を医療機関に持参して投与処置を依頼すると思われる。このような見込みを踏まえたとき、医師が直面する大きな課題が少なくない。まず当該者が、本剤の適応であるMCIか初期のアルツハイマー病の患者なのか否かである。そもそもアミロイドPETや脳脊髄液穿刺により、アルツハイマー病だとほぼ確定できるという診断が得られているかどうかが問われるはずだ。ところが、進行していても本剤を望む人は少なくない。こういう人にどう対応するかも大きな問題だ。こうした医療処置は自由診療になるので、保険診療との区別をどうするかという問題もある。さらにARIA をMRIにより追跡調査する方法に加えて、これらの副作用が生じた場合に、医師の責任がどこまで問われるかも懸念される。以上のように、lecanemabが仮に承認になり発売に至ったとしても、われわれ医療者に直接降りかかりそうな問題は多い。おそらく関連学会が中心になり、厚労省と共に具体的な決定を進めていくのだろう。しかしここには従来経験したことのない難問が山積している。参考1)松原悦朗. アルツハイマー病の分子メカニズムと治療戦略. 老年期認知症研究会誌. 2011;18:53-55.2)Piller C. Scientists tie third clinical trial death to experimental Alzheimer’s drug. Science. 2022 Dec 21.

2914.

乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。 研究グループは、脂質低下薬と乾癬発症リスクとの因果関係を調べるため、2022年8月~10月に、2標本のメンデルランダム化解析を行った。検討には、2つのバイオバンク(UKバイオバンク[英国]およびFinnGen[フィンランド])を用いた乾癬に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)、およびGlobal Lipids Genetics ConsortiumからのLDL値が含まれた。 LDL値をバイオマーカーとして用い、HMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)、Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1、エゼチミブの標的)、PCSK9(アリロクマブなどの標的)の遺伝的阻害(HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の阻害を代替する遺伝子変異を抽出)を行い、乾癬発症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万2,116例の乾癬患者のデータと、LDL測定値が得られた約130万人のデータを基に解析した。・PCSK9の遺伝的阻害は、乾癬発症リスク低下と関連した(LDL値の1標準偏差減少ごとのオッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88、p=0.003)。・上記の関連は、FinnGenでも同様であった(OR:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)。・感度分析において、遺伝子変異の多面作用(pleiotropy)または遺伝的交絡によるバイアスは認められなかった。・HMG-CoA還元酵素、NPC1L1の遺伝的阻害は、乾癬発症リスクとの関連が認められなかった。

2915.

胆道がんのアンメットニーズ充足へ、デュルバルマブ適応追加/AZ

 アストラゼネカは、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が2022年12月23日に「治癒切除不能な胆道癌」「切除不能な肝細胞癌」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を適応症とした承認を取得したことを受け、「進行胆道がん治療におけるイミフィンジの役割とは~免疫チェックポイント阻害剤による胆道がん治療の変革~」をテーマとして、2023年2月7日にメディアセミナーを開催した。 胆道がんの1年間の罹患数は2万2,201例(2018年)、死亡数は1万7,773例(2020年)と報告されている1)。一般的に、胆道がんは予後不良であり、手術による切除例や切除不能例を含めた胆道がん全体での5年生存率は、20~30%とされている1)。多くの場合、胆道がんは進行期になってから診断され、遠隔転移が認められてから診断される割合は全体の4割に上るという報告もある2)。また、遠隔転移のある場合、1年生存率は14~16%と非常に予後が悪いことも報告されている3)。このように、胆道がんはアンメットメディカルニーズの高いがんといえる。 セミナーの前半では、アストラゼネカが実施した「胆道がん患者調査」の結果4)について、調査を監修した古瀬 純司氏(神奈川県立がんセンター総長)が解説した。セミナーの後半では、古瀬氏が「胆道がんに対する治療選択と薬物療法」をテーマとして、胆道がんの薬物治療の変遷や、治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」を中心に解説した。胆道がんの認知度向上が早期発見・支援には重要 アストラゼネカは、胆道がん患者の診断~治療の過程での経験や治療に伴う生活の変化を明らかにすることを目的として、全国の胆道がん患者203例を対象にアンケート調査を実施した4)。 胆道がんの年間罹患数は2万2,201例(2018年)と報告されているが1)、胆道がん患者調査では、胆道がん患者の80%は診断される前に胆道がんを知らなかったという。このように胆道がんの認知度が低いこと、胆道がんには特徴的な症状が乏しいことから、「体調の変化があって自ら受診した」ことで診断がついた患者の割合は34%にとどまった。実際に、診断される前の症状として多く挙げられたものは、「みぞおちや右わき腹の痛み(36%)」「食欲不振(34%)」「体重減少(33%)」であり、いずれも胆道がんに特徴的な症状ではなかった。胆道がんに多いとされる「黄疸」を挙げた割合は25%であった。また、体調の変化があってから1週間以内に受診した患者の割合は25%にとどまり、1週間以上経過してから受診した理由として「重大な病気だとは思わなかった(52%)」「普段の生活に影響がない程度だった(45%)」が多く挙げられ、早期診断の難しさを反映する結果であった。 早期診断に向けて、古瀬氏は「胆道がんに多い黄疸の症状に気付いたらすぐに受診してほしい。消化器症状が出たときには胃の異常を疑うだけでなく、患者が『膵臓がん、胆道がんはないでしょうか』と医師に聞くくらい、胆道がんの認知を向上させたい」と語った。 胆道がんの認知度の低さは、早期発見の障壁となるだけでなく、患者が病気について周囲に知らせることや治療についての困りごとの相談の障壁にもなる。胆道がん患者調査において、胆道がんと診断されたことを身近な人に知らせることの障壁となった理由として多く挙げられたものは、「相手が胆道がんという病気をあまり知らなかった(35%)」「胆道がんがどのような疾患か説明するのが難しかった(28%)」「相手に説明できるほど自分自身が胆道がんについて理解できていなかった(26%)」であり、認知度の低さに関する理由が上位を占めた。 古瀬氏は、本調査結果についての結論を以下のとおりまとめた。・胆道がんは初期症状や特有の症状に乏しく、受診につながりにくいため早期発見の取り組みが必要である。・セカンドオピニオン、治療内容について、患者はとくに情報を求めている。・治療のみならず、日常生活の変化を支える情報提供・サポート体制が必要である。・胆道がんの認知度の低さが、患者の周囲への打ち明けにくさにつながるため、疾患の認知度向上が重要である。デュルバルマブが胆道がん1次治療の新たな選択肢に 本邦の胆道癌診療ガイドラインおよび肝内胆管癌ガイドラインでは、切除不能胆道がん、切除不能肝内胆管がんに対する1次治療の薬物療法として、「ゲムシタビン+シスプラチン併用療法」「ゲムシタビン+S-1併用療法」「ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法」が推奨されている5,6)。2019年以降、免疫チェックポイント阻害薬・がんゲノム医療の時代となってきたが、これまで胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害薬は、2次治療以降の位置付けであった。そこで、新たな1次治療の開発が行われており、その1つが治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した、国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」である。デュルバルマブは、本試験の結果をもとに「治癒切除不能な胆道癌」を適応症とした承認を取得している。 TOPAZ-1試験7-9)は、治癒切除不能な胆道がん患者685例を対象に、1次治療として「デュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチン(デュルバルマブ+GC群)」または「プラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン(プラセボ+GC群)」に1:1に無作為に割り付け、3週間間隔で最大8サイクル投与し、その後デュルバルマブまたはプラセボを4週間間隔で、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで投与した試験である。主要評価項目は全生存期間(OS)、主要な副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。その他の副次評価項目として、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)などが評価された。 有効性について、中間解析時においてデュルバルマブ+GC群はプラセボ+GC群に比べて、OSが有意に延長し、優越性が検証された(OS中央値:12.8ヵ月vs.11.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.021[両側有意水準0.0300])。24ヵ月時点の全生存率は、デュルバルマブ+GC群24.9%、プラセボ+GC群10.4%であった。ORRはそれぞれ26.7%、18.7%であり、デュルバルマブ+GC群が有意に高率であった(オッズ比:1.60、95%CI:1.11~2.31、p=0.011)。奏効が認められた患者のDoR中央値はそれぞれ6.4ヵ月、6.2ヵ月であった。12ヵ月以上奏効が持続した患者の割合はそれぞれ26.1%、15.0%であった。 安全性に関して、Grade3または4の有害事象の発現率はそれぞれ73.7%、79.2%であった。この結果について、古瀬氏は「デュルバルマブ上乗せにより懸念される有害事象はなかった」と述べた。ただし、「免疫チェックポイント阻害薬に共通することとして、免疫介在性有害事象が認められる。一つひとつの事象の頻度は高くないが、注意が必要である」とも述べた。 米国のNCCNガイドライン第5版には、すでに「デュルバルマブ+GC療法」が切除不能な胆道がんに対するpreferred regimensの1つとして記載されており10)、古瀬氏は「本邦のガイドラインも改訂作業に入っており、遠からず掲載されるだろう」と語った。■参考文献1)公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計20222)九州大学病院がんセンター. 九州大学病院のがん診療 胆道がん3)大阪国際がんセンター. 胆のう・肝外胆管がん4)アストラゼネカの「胆道がん患者調査」で判明、胆道がんの認知度の低さが周囲に病気を知らせることや困りごとを相談するハードルになっている5)日本肝胆膵外科学会、胆道癌診療ガイドライン作成委員会編. エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン 改訂第3版. 医学図書出版;2019.6)日本肝癌研究会編. 肝内胆管癌診療ガイドライン 2021年版. 金原出版;2020.7)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道癌患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]、2021)8)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道癌患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]:日本人集団、2021)9)Oh DY, et al. NEJM Evid. 2022;1:1-11.10)National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Hepatobiliary Cancers Version 5, 2022

2916.

疼痛に有効な抗うつ薬は?/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らは、成人の疼痛において抗うつ薬とプラセボを比較した試験に関する26件の系統的レビューのデータの統合解析を行った。抗うつ薬の有効性を示す確実性が「高」のエビデンスは得られなかったが、4種の疼痛において、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性を示す確実性が「中」のエビデンスが確認された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号に掲載された。系統的レビューのデータを統合して要約 研究グループは、病態別の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性に関して、包括的な概要を提示する目的で、系統的レビューのデータを統合して要約した(特定の研究助成は受けていない)。 医学関連データベース(PubMed、Embase、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials)に、その創設から2022年6月20日までに登録された文献を検索した。対象は、成人の疼痛について、抗うつ薬とプラセボを比較した系統的レビューとされた。 主要アウトカムは疼痛であった。疼痛の連続アウトカムは、0(痛みなし)~100(最悪の痛み)の尺度に変換され、平均差(95%信頼区間[CI])が示された。また、2値アウトカムはリスク比(95%CI)が提示された。副次アウトカムは、安全性と忍容性(有害事象による投与中止)であった。 得られた結果は、「有効」「有効でない」「結論に至らない」に分類された。エビデンスの確実性は、GRADE(grading of recommendations assessment, development, and evaluation)で評価した。痛みへの抗うつ薬処方では、より微妙なアプローチが必要 2012~22年に発表された26件の系統的レビュー(156試験、参加者2万5,000例以上)が解析の対象となった。これらのレビューには、22種の疼痛について、8クラスの抗うつ薬とプラセボの42の比較が含まれた。疼痛に対する抗うつ薬の有効性に関して、確実性が「高」のエビデンスを示すレビューは認められなかった。 9件のレビューで、11の比較において、9種の疼痛に対していくつかの抗うつ薬がプラセボと比較して「有効」とのエビデンスが示された。その多くはSNRIの有効性を示すもので、6件のレビューで7種の疼痛に有効であった。 このうち確実性が「中」のエビデンスが得られたのは、いずれもSNRIの有効性が示された次の4つの疼痛であった。背部痛(平均差:-5.3、95%CI:-7.3~-3.3)、術後疼痛(多くが整形外科手術)(-7.3、-12.9~-1.7)、神経障害性疼痛(-6.8、-8.7~-4.8)、線維筋痛症(リスク比:1.4、95%CI:1.3~1.6)。 これ以外の31の比較のうち、5の比較で抗うつ薬は「有効でない」、26の比較では「結論に至らない」であった。 安全性および忍容性のデータのほとんどは不明確だった。SNRIは、化学療法による疼痛、背部痛、坐骨神経痛、変形性関節症の患者において、あらゆる有害事象のリスクを増加させたが、術後疼痛や緊張型頭痛では、そのようなことはなかった。 また、背部痛、坐骨神経痛、変形性関節症、機能性ディスペプシア、神経障害性疼痛、線維筋痛症のレビューでは、SNRIはプラセボより忍容性が低かった。 著者は、「これらの知見は、痛みに対して抗うつ薬を処方する際には、より微妙なアプローチが必要であることを示唆する」としている。

2917.

コクランレビューが導き出したマスク着用効果

 2020年の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行以前にも新型インフルエンザ(H1N1)や重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大が問題視され、その度にコクランレビューがなされてきた。今回、新型コロナ流行に関する研究を盛り込み更新されたシステマティックレビューがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年1月30日号に掲載された。コクランレビューではマスクの効果について不確実性 オックスフォード大学のTom Jefferson氏らは急性呼吸器感染症に影響するウイルスの拡散阻止または軽減のための身体的介入の有効性を評価することを目的に論文データベース(CENTRAL、PubMed、Embaseほか)および2022年10月に登録された2試験から、後方引用と前方引用によるシステマティックレビューを行った。論文の選択基準として、呼吸器系のウイルス感染を防ぐための物理的介入(入国時スクリーニング、隔離/検疫、物理的距離、個人保護具、手指衛生、マスク、眼鏡、うがい)を調査したランダム化比較試験(RCT)およびクラスターに関するRCTを検討した。 急性呼吸器感染症に影響するウイルスの拡散阻止または軽減のための身体的介入の有効性を評価したコクランレビューの主な結果は以下のとおり。・今回のコクランレビューには、既存の67件に最新のRCTとクラスターに関するRCT(登録者61万872例)11件を加え、78件を検討した。新たな試験のうち、6件は新型コロナ流行時に実施されたものだった。・多くの研究は、インフルエンザが流行していない時期に実施され、いくつかの研究は2009年の新型インフルエンザ流行時に実施されていた。また、そのほかの研究は2016年までのインフルエンザの流行期に実施されていたため、多くの研究は新型コロナ流行時と比較して、下気道のウイルス感染が拡大している時期に実施されていた。・分析した研究の置かれた環境はさまざま(郊外の学校、高所得国の病棟、低所得国の都心部など)で、多くの研究では介入群のアドヒアランスが低く、RCTとクラスターに関するRCTのバイアスのリスクは非常に高いか不明確であった。・医療用/サージカルマスクとマスクなしを比較した12件(うち10件はクラスターRCT、医療従事者による2件と地域での10件)によると、マスクを着用していない場合と比較し、地域社会でのマスク着用はインフルエンザ様疾患(ILI)/新型コロナ様疾患の転帰にほとんどあるいはまったく差がなく、試験9件(27万6,917例)のリスク比[RR]は0.95(95%信頼区間[CI]:0.84~1.09、証拠の確実性:中程度)だった。また、試験6件(1万3,919例)のRRは1.01(95%CI:0.72〜1.42、証拠の確実性:中程度)だった。・手指衛生に関する試験19件(うち9件の5万2,105例)によると、手指衛生の介入はコントロール(介入なし)と比較し、急性呼吸器感染症の患者数が相対的に14%減少した(RR:0.86、95%CI:0.81~0.90、証拠の確実性:中程度)。・ガウンと手袋、フェイスシールド、入国時スクリーニングに関するRCTは見つからなかった。 ただし、研究者らは「試験における偏りのリスクが高く、結果の測定値にばらつきがあり、研究時の介入群でのアドヒアランスが比較的低いため、確固たる結論を導き出すことはできなかった。そのため、マスクの効果については不確実性が残っている。エビデンスの確実性が低~中程度であることは、効果の推定値に対する信頼性が限られていること、および実際の効果が観察された効果の推定値と異なる可能性があるため、複数の設定や集団におけるこれらの介入の多くの有効性、それに対するアドヒアランスの影響に対処する、適切に設計された大規模なRCTが必要」と記している。

2918.

英語で「お招きいただきありがとう」は?【1分★医療英語】第67回

第67回 英語で「お招きいただきありがとう」は?It was a pleasure meeting you.(お会いできてよかったです)Thanks for having me.(お招きいただきありがとうございます)《例文1》Thank you for the invitation.(ご招待いただきありがとうございます)《例文2》Thanks for your time.(お時間いただき、ありがとうございます)《解説》面接や会議、またはパーティーの席などにおいて、招待してもらったことや会って話ができたことのお礼を伝えるときに使う表現です。そのほかにも招待してもらったケースでは、“Thanks for inviting me/the invitation.”などと表現することもできます。会えたことにお礼を言う場合には、“I’m pleased/glad to meet you.”または“It was nice/lovely to meet you.”(お会いできてよかったです)などの表現が一般的です。これに対する簡単な返答は、“Likewise.”(私も[お会いできて嬉しい]です)。日本語では「“私も”嬉しいと思っている」となりますが、“I’m pleased to meet you.”に対しては“Me too.”、“It was nice to meet you.”に対しては“You too.”という短縮形を使うことに注意してください。こちらは“It was nice to meet you, too.”の略です。ややこしいと感じたら、“I’m glad to meet to you, too.”“It was nice to see you, too!”と短縮形を避けて返答しましょう。講師紹介

2919.

第150回 ChatGPTの医師資格試験の成績は?/コロナ感染を食い止める受容体

人工知能ChatGPTの米国医師資格試験の正解率がほぼ合格水準単語の関連性予想に基づいて人が書くような文章の返事をする人工知能(AI)ソフトウェア「ChatGPT」が米国医師資格試験(USMLE)を受けたところ合格水準ぐらいの成績をおさめました1,2)。USMLEのウェブサイトで公開されているStep1、Step2 Clinical Knowledge(CK)、Step3の3段階の例題376問のうち画像、写真、グラフなどの視覚情報込みの問題を省いた350問がChatGPTに入力されました。判定不可能な回答(indeterminate response)を除いた正解率は52.4~75.0%で、合格に必要な例年の正解率である約60%あたりの成績でした。ChatGPTのかなり優秀なUSMLE試験成績に触発され、本研究の著者が所属する肺疾患のバーチャルクリニック「AnsibleHealth」ではChatGPTが試験的に業務に取り入れられています。同クリニックの医師は漏洩の心配がない匿名化情報をChatGPTに入力することで、専門用語満載の画像報告などを患者にわかりやすく説明する資料や保険関連の書面などの難儀な文章作成を助ける回答を得られるようになっています。また、掴みどころがなくて診断が困難な症例の理解の手がかりを掴むことや議論をすることにもChatGPTが使われています。コロナ感染を食い止める受容体を同定新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、以下「コロナウイルス」)を捕らえて感染が広まらないようにする、いわば盾のような役割を担うヒト細胞タンパク質が見つかりました3,4)。コロナウイルスがヒト細胞侵入の足がかりとする受容体といえばACE2(アンジオテンシン変換酵素2)が有名ですが、シドニー大学のチームの研究で新たに同定されたコロナウイルス受容体「LRRC15」はACE2と同様にコロナウイルスのスパイクタンパク質に結合するもののその細胞侵入を助けるのではなく阻止します。LRRC15はウイルスに張り付いて身動きがとれないようにして細胞へのコロナウイルス感染を阻止します。LRRC15の発現は肺、舌、皮膚、胎盤、リンパ節などの多くの組織で認められています。肺ではコロナウイルスが感染しない種類の細胞・線維芽細胞や神経細胞群で主に発現しています。肺のLRRC15は普段は身を潜めており、いざウイルスが侵入すると駆り出されるらしく、コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の肺胞表面にはあってCOVID-19ではない人の肺には認められませんでした。すなわちLRRC15はどうやらCOVID-19で広く発現して気道表面を覆い、感染を阻止する防御壁を築きます。そうしてコロナウイルスのスパイクタンパク質に結合してコロナウイルスを差し押さえる働きを担うようです。また、LRRC15は線維芽細胞の遺伝子発現を線維化から抗ウイルス反応へと切り替えることも示され、コロナウイルス感染に伴う線維化を抑制して抗ウイルス反応を向上させる働きも担うようです。COVID-19にLRRC15がどう関わるかはこれから調べる必要がありますが、重症化の指標を少なくとも担うことがImperial College Londonのチームによる最近の研究報告で示されています5)。COVID-19患者のLRRC15レベルを追ったところ、軽~中等症の経過を辿った患者の血漿では一定でしたが、重症化例では日を追うごとに低下しました。どうやらLRRC15は少ないと重症化する恐れがあり、多ければ軽症で済むようです。シドニー大学のチームはさらに先を見据え、LRRC15を利用してCOVID-19を阻止する2つの手段の開発に取り掛かっています4)。その1つは鼻からのコロナウイルス感染を予防するもので、もう1つは肺に至ってしまったコロナウイルス感染の重症化を阻止するものです。以上、シドニー大学のチームの研究成果を主に取り上げましたが、他の2つのチームもLRRC15がコロナウイルスの受容体であることを突き止めています。1つは米国のブラウン大学とエール大学のチーム6)、もう1つは英国のサンガー研究所(Wellcome Sanger Institute)の研究者などによるもの7)です。LRRC15が阻止するウイルスは実は他にもあり、15年ほども前の先立つ研究でアデノウイルス感染抑制効果がすでに示されています8)。線維芽細胞で発現するLRRC15はパターン認識受容体として種々のウイルスを差し押さえる働きがあるかもしれず、今後のさらなる研究でコロナウイルスの枠だけにとどまらない裾野の広い発見があるでしょう。参考1)Kung TH, et al. PLoS One. 2023;2:e0000198.2)ChatGPT can (almost) pass the US Medical Licensing Exam / Eurekalert3)Loo L, et al. PLoS Biol. 2023;21:e3001967.4)Scientists discover receptor that blocks COVID-19 infection / Eurekalert5)Gisby JS, et al. Nat Commun. 2022;13:7775.6)Song J, et al. bioRxiv. 2021 Nov 24.7)Shilts J, et al. PLoS Biol. 2023;21:e3001959.8)O'Prey J, et al. J Virol. 2008;82:5933-5939.

2920.

新型コロナ、米0~19歳の感染症による死因1位

 新型コロナウイルス感染症による死亡は、昨年7月までの1年間において米国の0~19歳の全死因の8位、感染症または呼吸器疾患による死亡では1位だったことがわかった。英国オックスフォード大学のSeth Flaxman氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年1月30日号に掲載された。 研究者らは、米国疾病対策予防センター(CDC)のWide-Ranging Online Data for Epidemiologic Research(WONDER)データベースを使い、2020年4月1日~2022年8月31日まで、12ヵ月の期間ごとにCOVID-19の死亡率を算出。0~19歳および年齢区分(1歳未満、1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳)別に、死亡総数、人口10万当たりの粗死亡率、全死因に対する死因順位を算出し、2019年、2020年、2021年の主要なCOVID-19以外の死因による死亡数と比較した。オミクロン株が流行の中心で、ワクチンを利用することができ、非薬物による介入が限られている時期を代表させるため、データのある直近の2021年8月1日~2022年7月31日を抽出した。 この期間に、米国全体におけるCOVID-19による死亡者数は36万例を超えた(人口10万人当たり109例)。このうち0歳~19歳の小児および若年者は821例だった(人口10万人当たり1.0例)。この年少および若年層におけるCOVID-19による死亡リスクはほかの年齢層よりも大幅に低いが、この年代はそもそも死亡自体がまれであり(0~19歳では10万人当たり49.4例、1~19歳では10万人当たり25.0例:2019年)、COVID-19の死亡負担をCOVID-19以前における他の重要な原因と比較することで検討した。 主な結果は以下のとおり。・0~19歳のCOVID-19による死亡は821例であり、粗死亡率は全体で人口10万人当たり1.0、年齢層ごとにU字型カーブを描いており、1歳未満は4.3、1~4歳は0.6、5~9歳は0.4、10~14歳は0.5、15~19歳は1.8だった。・2021年8月1日~2022年7月31日におけるCOVID-19の死亡率は、米国における0~19歳の10大死因のうち、全死因の8位、疾患関連死因(不慮の事故、暴行、自殺を除く)の5位、感染症または呼吸器疾患による死亡の1位だった。COVID-19による死亡はこの年齢層の全死因の2%を占めた。 研究者らは「本研究の結果は、COVID-19が小児および若年層の主要な死因であったことを示唆している。さらに、過少報告や他疾患による死亡原因の一因としてのCOVID-19の役割を考慮しないなど、さまざまな要因があるため、これらの推定値はCOVID-19の真の死亡負担を控えめにしている可能性がある。将来、SARS-CoV-2が持続的に流行すると考えられる状況においては、適切な医薬品および非医薬品の介入(ワクチン、換気、空気清浄)が、ウイルスの伝播を制限し、小児・若年患者の重症化を軽減する上で引き続き重要な役割を果たすと思われる」としている。

検索結果 合計:11816件 表示位置:2901 - 2920