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ロルラチニブのALK陽性肺がん1次治療、7年後もPFS中央値に到達せず(CROWN)/ASCO2026

 ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)における1次治療で、ロルラチニブは7年後も無増悪生存期間(PFS)中央値に到達せず、7年PFS割合は50%を超えた。 進行ALK陽性NSCLCの1次治療としてロルラチニブとクリゾチニブを比較した第III相CROWN試験の7年フォローアップの結果をTony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究結果はAnnals of Oncology誌に同時掲載されている。 2024年の5年追跡ではロルラチニブ群のPFS中央値は未到達、5年PFS割合は60%であった(ハザード比[HR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.13~0.27)。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療のStageIIIB/IVのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者(無症状の中枢神経系[CNS]転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mg×2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、治験担当医師評価によるPFS、奏効割合、頭蓋内奏効割合、奏効期間、頭蓋内奏効期間、頭蓋内病変進行までの期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ロルラチニブ群の追跡期間中央値は83.0ヵ月、クリゾチニブ群は77.2ヵ月であった。・ロルラチニブ群のPFS中央値は未到達、クリゾチニブ群は9.1ヵ月で、7年PFS割合はロルラチニブ群55%、クリゾチニブ群は3%であった(HR:0.19、95%CI:0.13~0.26)。・疾患進行の多くは最初の2年間に発生しており、ベースラインと2年PFS割合の差は30%、2年と7年PFS割合の差は15%であった(2年時70%、7年時55%)。・投与開始から2年間PFSイベントがなかった患者に絞った7年PFS割合は79%で、全体評価よりも良好であった。・CNS転移の7年PFS(IC-PFS)割合はロルラチニブ群92%、クリゾチニブ群16%であった(HR:0.06、95%CI:0.03~0.12)。・ベースラインでCNS転移がなかった患者におけるロルラチニブ群の7年IC-PFS割合は96%と全体集団よりもさらに良好であった(HR:0.04、95%CI:0.02~0.12)。・有害事象は高脂血症、浮腫、体重増加、認知機能障害など既知のもので、最も多いのは高脂血症であった。・ロルラチニブ群では34%の患者が減量を行った。減量時期の中央値は25週であった。・26週間以内に減量した群と減量しなかった群を比較してもPFS、IC-PFSとも差は認められなかった(PFS中央値、IC-PFS中央値とも両群未到達)。・早期進行患者と長期奏効患者のベースラインctDNAを比べたところ、早期進行患者では異常遺伝子が多く(10 vs.6)、腫瘍変異負荷も高かった(7.7 vs.5.1)。TP53変異は早期進行患者では50%、長期奏効患者では17%に確認された。 この発表について会場から多くの質問が寄せられている。その中から、OSが示されていないことについては、イベント数が中間解析の評価に必要な数に達していないためであるとMok氏は回答した(評価に必要なイベント数139例に対し、評価時のイベントは123例)。ctDNAによる遺伝子検査の可能性については、現状は一部の患者だが今後さらに遺伝学的情報を調べていく旨を示している。 今回の7年追跡結果から、ロルラチニブによる単剤治療は、進行ALK陽性NSCLCを慢性疾患に変化させる可能性がある、とMok氏は結んだ。

2.

あっけらかんとしている患者さんへの対応【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第50回

■外来NGワード「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ」(患者のリスク認知や損失回避性に配慮していない)「このまま放っておくと大変なことになりますよ」(具体性に欠ける“脅し”であり、行動変容につながりにくい)「前より悪くなっていますね」(感応度逓減性を考慮せず、小さな変化の意味付けが不十分)■解説血糖コントロール指標であるHbA1cが6%台と良好であっても、わずかな変動に強く反応する人がいる一方で、8~10%と不良な状態であっても、1%程度の変化に無関心な患者さんも存在します。このような反応の違いは、行動経済学のプロスペクト理論によって説明することができます。プロスペクト理論では、人は結果を絶対値ではなく「参照点からの変化」として評価し、その価値は利得と損失で非対称なS字型の関数で表されます。すなわち、「人は同程度の利得よりも損失を強く評価する(損失回避性)一方で、損失が大きくなるにつれて感情の変化は次第に鈍くなる(感応度逓減性)」という特徴があります。そのため、慢性的にHbA1cが高い状態にある患者さんでは、血糖の悪化が日常化し、小さな変化に対する心理的反応が弱くなっている可能性があります。しかし、2型糖尿病においてHbA1cを1%低下させることにより、足病変は43%、腎症や網膜症などの合併症は37%、糖尿病関連死は21%、心血管イベントは14%減少することが報告されています。このような患者さんに対しては、単に数値の変化を指摘するのではなく、目標値を適切に再設定し、具体的かつ達成可能な短期目標を提示することが重要です。さらに、あいまいな医学的おどしではなく、将来のリスクを日常生活のイメージと結びつけて共有することで、行動変容を促せます。■患者さんとの会話でロールプレイ医師血糖コントロールの指標であるHbA1cの値が8.6%から9.1%まで上がっていますね。(具体的に数値の変化を伝え、患者の反応をうかがう)患者うーん、HbA1cが9%と言われても、とくに困ってないし、あまり気にしていません。(正直な気持ちを吐露)医師確かに、0.5%増えたと言われても、「たった、それだけ」と思うかもしれませんね。患者そうなんです。たった、0.5%だし…。それに、症状も何もなくて元気だし…。(感応度逓減性が疑われる言動)医師なるほど。今は、疲れやすいとか、のどがよく渇くとか、トイレの回数が多いなどで症状は感じておられないんですね。(尋ねながら、高血糖症状のポイントを説明)患者…あっ、そういえば仕事が忙しくて疲れていると思っていました。それに、お茶をよく飲むから、トイレの回数が多いと思っていました。(高血糖の症状を誤解していたことに気付く発言)医師確かに、そういった症状が高血糖によるものだと知らない人も多いですね。ただ…。患者ただ?医師ただ、今の状態が続くと、10年、いや数年後に眼や腎臓に高血糖の影響が出る可能性があります。患者えっ、そうなんですか。それなら、どうしたら?医師そんなに、大きく変える必要はありません。たとえば、今の状態からHbA1cを1%だけ下げるだけでも、足の切断リスクは43%、腎臓や眼の合併症は37%、糖尿病関連死は21%、心臓の合併症リスクは14%と、しっかり減りますよ。患者えっ、そうなんですか…1%くらいなら、できそうな気もします。医師いいですね。では、まずは無理のない範囲で、取り組めそうなことを一緒に決めてみましょうか。患者よろしくお願いします。■医師へのお勧めの言葉「今のHbA1cは目標よりも2%も高いです。1%というとちょっとの違いに感じますが、HbA1cを1%減らすだけで、足病変は43%、腎臓や眼の合併症は37%、心臓の合併症は14%もリスクが下がるんですよ!」 1)Stratton IM, et al. BMJ. 2000;321:405-412.2)Holman RR, et al. N Engl J Med. 2008;359:1577-1589.

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ACC/AHA脂質異常症GLで格上げの石灰化スコア、30分の心臓ドックで評価/CVIC

 心臓画像診断を専門とする医療法人社団CVIC心臓画像クリニック飯田橋(以下、CVIC)は、30分で心血管リスクを可視化する新サービス「スピーディー心臓ドック」の提供を開始した。これは冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査を組み合わせたもので、非造影CTおよび血液検査によって行われる。この中に含まれる冠動脈石灰化スコアは、近年その重要性が明らかになっており、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の合同委員会が関連学会とともに2026年3月に公開した『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』1)において、推奨度が引き上げられた。そこで、CVICは2026年5月27日にメディアラウンドテーブルを開催し、CVIC理事長の寺島 正浩氏が、突然死を防げない日本の健診制度の課題、心血管病予防における画像診断の役割について解説した。最初の発作が最後の発作、突然死の半数以上は症状なし 寺島氏がまず指摘したのは、一般的な健康診断だけでは冠動脈疾患のリスクを十分に把握しにくく、心臓突然死を防ぐことが難しいという問題である。日本の健診で広く行われている心電図や胸部X線は、低コストで簡便なスクリーニング検査として有用である一方、冠動脈の狭窄や動脈硬化の進展を直接評価する検査ではない。 米国のフラミンガム研究では、突然死の50%以上はまったく症状がなかったことが報告されている。また、急性心筋梗塞の68%は50%未満の軽度冠動脈狭窄から生じていたという報告もある。寺島氏は、この突然性が心臓病の問題であると述べる。 一方で、心筋梗塞の多くは予防可能でもある。INTERHEART研究に基づき、喫煙、脂質異常、高血圧、糖尿病、内臓脂肪、ストレス、食事、運動、飲酒といった9つの修正可能な危険因子により、心筋梗塞リスクの9割が説明されることを紹介した。寺島氏は、9割予防可能な病気で死亡する人が後を絶たないことを指摘。その背景には「自分は大丈夫と考え、行動変容に至らない人が多いことがある」と述べた。数字は忘れても自分の画像は忘れない そこで重要になるのが、リスクの「可視化」である。寺島氏は、血圧、LDL-C、血糖値といった数値は忘れてしまうが、冠動脈や大動脈に石灰化がある画像を見れば、その画像は忘れないと指摘する。実際に、画像を提示することで、真剣に治療に取り組むようになった症例を多く経験してきたとのことだ。また、2018年のVIPVIZA試験では頸動脈エコーの結果を視覚的なレポートとして提示することで、治療効果が増大することも報告されている。クラス1推奨に引き上げられた冠動脈石灰化スコア ACC/AHAの『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』では、動脈硬化性疾患のリスク評価方法が変更され、PREVENT-ASCVD方程式が採用された。また、PREVENT-ASCVD方程式で中等度リスク、ボーダーラインリスクと判定され、脂質低下療法の開始・強度について判断が難しい場合に、冠動脈石灰化スコアを用いてリスクを再分類することがクラス1推奨として位置付けられた。 冠動脈石灰化スコアは、非造影CTで冠動脈壁の石灰化を定量化する指標である。冠動脈石灰化スコアによる石灰化の分類は、0をなし、1~99を軽度、100~299を中等度、300~999を高度、1000~を超高度とする。このスコアが、冠動脈疾患死亡率や心血管病死亡率と強く関連する。 さらにCVICでは、冠動脈だけでなく大動脈の石灰化にも注目する。大動脈石灰化は冠動脈石灰化よりも先に出現する早期の動脈硬化マーカーとされ、冠動脈石灰化スコアが0であっても60%で大動脈石灰化が認められるとのことだ。30分で完了する「スピーディー心臓ドック」 今回発表された「スピーディー心臓ドック」は、こうした心血管リスク評価を短時間で実施するサービスである。所要時間は来院から検査終了まで約30分。検査方法は非造影CTによる冠動脈・大動脈評価と採血で、検査内容は冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査で構成される。心血管バイオマーカーは、NT-proBNP、高感度心筋トロポニン、apoB、高感度CRPの4項目である。 寺島氏は、通常の健診では測定されないこれらの項目を組み合わせることで、より詳細な心血管リスクを把握できると説明した。CVICでは、以下をすべて満たす場合を「パーフェクトスコア」とし、心血管リスクがきわめて低い状態として示している。冠動脈石灰化スコア0大動脈石灰化スコア0NT-proBNP<55pg/mLapoB<65mg/dL(または70mg/dL)心筋トロポニンT<0.003ng/mL高感度CRP<0.02mg/dL 講演では、実際の症例も紹介された。そのなかで紹介された60歳女性は、LDL-C、HDL-C、TG、総コレステロールは、健康診断の正常値の範囲に収まっていたという。冠動脈石灰化スコアも0であったが、大動脈石灰化スコアをみると約700であり、中等度の石灰化が認められた。また、apoBも106mg/dLと軽度高値であった。寺島氏は「大動脈石灰化スコアをとることで、このような方が見つかることがある。可視化することで、行動変容につながっていくのではないかと期待している」と語った。Q&A――石灰化スコアは不可逆とのことであるがどれくらいの頻度で実施すべきか? 1回測定したらその後は不要とする意見があるなど、議論が分かれているが、一般的には5年ほどの間隔を空けて測定するのがよいのではないかとされている。しかし、CVICとしては、冠動脈石灰化スコアが100以上、ないしは300以上の方は、2~3年に1回は検査を実施したほうがよいと考えている。このような方のなかで、生活習慣を気にしない方は次回の測定でスコアが2倍になっている場合もある。一方で、生活習慣が改善されてスコアの変動がみられないという方もいる。このような経過を追うために、石灰化スコアを活用するのもよいのではないか。 石灰化は不可逆であるからこそ、早めの対策が重要である。9つの修正可能な危険因子を修正することで、動脈硬化の進行を遅らせることができる。 なお、「スピーディー心臓ドック」は自費検査で、CVICは通常価格を8万8,000円としているが、2026年10月末日まで3万3,000円で提供する予定とのことだ。

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「肥満症治療薬中止後のリバウンド」が気になる患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第49回

■外来NGワード「元に戻らないように、気を付けなさい」(あいまいな医学的アドバイス)「リバウンドするかしないかは、あなたの生活習慣の問題です」(患者責任に帰結させ、自己スティグマを強める)「ちゃんと続けないと意味がありませんよ」(努力不足のニュアンスとなり、動機付けを低下させる)■解説肥満症治療薬の1つであるインクレチン関連注射薬は、投与期間が最大68週間とされており、治療開始時から中止を見据えた計画が必要です。そのため、投与中止後のリバウンドを懸念する患者さんは少なくありません。実際、システマティックレビューおよびメタ解析によると、薬物療法中止後には体重が再増加(リバウンド)することが示されています。その程度は、認知行動療法を用いた体重管理プログラムと比較して、薬物療法中止後の体重の再増加(リバウンド)はより速いとされています。その報告によると、平均すると体重は月0.4kg程度増加し、改善していた代謝指標も約1.4年でベースラインに近付きます。こうした体重の再増加(リバウンド)は、生活習慣介入、手術、薬物療法といった減量手段に関わらず生じる現象です。その背景には、体脂肪から分泌されるレプチンによる「脂肪定常説」や除脂肪量の減少によるエネルギー消費量の減少などが関与すると考えられています。したがって、肥満症治療薬中止後のリバウンドを予防には、減量中からリバウンド対策をしておくことが大切です。具体的には、体重測定の習慣化、無理のない運動の継続、満足感を得られる食事とつい食べてしまう習慣対策、そして、リバウンドが始まる休薬後の対策が鍵となります。■患者さんとの会話でロールプレイ医師減量の方は順調なようですね。患者はい。ありがとうございます。けど、この薬、止めたらリバウンドしませんかね。それが今から心配で…。医師なるほど。そうでしたか。その点を気にされる方はとても多いですし、この薬を止めた後、体重が少しずつ戻ることはよく知られています。患者やっぱり…。(残念そうな顔)医師大丈夫です。今から、そのリバウンド対策をしておくといいですよ。患者それはどんな対策ですか。(興味津々)医師どんなダイエット法でも、リバウンドする人には特徴が3つあります。患者その3つって、何ですか?医師まずは、体重計に乗らなくなります。順調に体重が減っているときは体重計に喜んで乗るんですが、少し体重が増えてくると、だんだん乗りたくなりますね。患者確かに…。体重が減っているときは面白くて、1日に何回も体重計に乗りますが、停滞していると乗らなくなりますね。まずは、体重計に乗る習慣を続けるということですね。2つ目は?(メモメモ)医師2つ目は、運動をしなくなることです。逆に、運動習慣がある人はリバウンドしにくいことがよく知られています。患者なるほど。運動を継続するということですね。3つ目は?医師極端な食事療法を行わないことです。極端な食事療法では、食事に満足できず、何かをつまんでしまいます。患者なるほど。減量中に、少しの量で満足できる食事をみつけないといけませんね。医師そうですね。他にも注意点があるのですが、次回、お話しましょう!患者ぜひ、お願いします。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「薬の服用を止めた後にリバウンドしないためのコツは、毎日体重計に乗る、運動を習慣化する、少しの量で満足できる食事を探すことです」 1) West S, et al. BMJ. 2026 Jan 7;392:e085304. 2) Berg S, et al. Obes Rev. 2025 Aug;26(8):e13929. 3) Budini B, et al. EClinicalMedicine. 2026 Mar 4;93:103796. 4) van Baak MA, et al. Curr Obes Rep. 2025 Mar 31;14:28.

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「肥満のスティグマ」が気になる患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第48回

■外来NGワード「肥満は自己責任の病気です」(スティグマを助長する発言)「減量できないのは、意志が弱いからです」(意志が弱いと強調)「もっと、努力しないと」(努力不足を責める発言)■解説「スティグマ(stigma)」とは、特定の人や集団に対して否定的な評価や差別的なレッテルを貼ることを指します。語源はギリシャ語の「烙印」に由来します。スティグマは、実際に経験する「経験的スティグマ」と、スティグマに対する恐れである「予期的スティグマ」に大別され、さらに「社会的スティグマ」「罪悪的スティグマ」「自己スティグマ」といった側面があります。社会的スティグマとしては、「採用や昇進で不利に扱われた」「太っているからだらしない」「検査値が悪いのは肥満のせいだ」などと言われることがあります。また、体型について指摘されることを避けるために人前に出ることを控えたり、スポーツジムや医療機関の受診をためらったりする場合があります。罪悪的スティグマとしては、「自己管理ができていないと非難された」「食べ過ぎや運動不足と決めつけられた」「努力不足とみなされた」といった経験が挙げられます。また、生活習慣のせいにされることを懸念して、食事内容を過少に申告することもあります。自己スティグマとしては、「自分は意志が弱くてだめな人間だ」と自己評価を低くしたり、受診や相談をためらったり、「自分は痩せられない」と思い込んだりすることが見られます。これらのスティグマは相互に関連しており、受療行動の抑制や生活習慣改善への動機低下を介して、長期的な健康アウトカムに影響を及ぼす可能性があります。そのため、臨床現場ではスティグマを軽減するための配慮あるコミュニケーションが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者先生、この間、ある人から「あなた太っているわね」って言われて…「私、意志が弱くて、だめなんですよね」…(「太っている=自己管理ができていない」と認識)。医師そう感じられる方は多いですね。でも、肥満症は「自己責任」だけではなく、体質・遺伝・ホルモン・心理的ストレスなど、いろんな要因が重なって起こる“病気”の1つなんですよ。患者えっ、そうなんですか? でも周りから「食べすぎ」「運動不足」って言われると、「意志が弱い」って、自分を責めてしまって…。医師なるほど。それが「スティグマ(偏見)」の典型ですね。実際、大半の太っている人が「自分のせい」だと感じているという調査もありますが、肥満症という病気は慢性疾患の1つで、糖尿病や高血圧と同じように適切な診断と治療が必要なんですよ。患者えっ、そうなんですか。肥満症の治療って、薬を飲むことですか?医師場合によってはお薬も使いますが、生活の中でできる範囲から一緒に取り組むのが基本になります。患者なるほど。どんなことに気を付けたらいいですか?医師体重増加は30kcal、もったいないからと、ちょこっとだけ余分なものを食べることから始まります。患者その一口が…ですね。30 kcalというとどのくらいですか?医師クッキー1枚とか、チョコ1かけになりますね。これがその一覧です(表をみせながら説明)。患者そのくらいなら我慢できそうです。医師まずは、余分なものを食べない習慣を取り入れてもらうと、チリも積もれば山となるので、少しずつ体重が減ると思いますよ!患者はい。わかりました。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)何より大切です。■医師へのお勧めの言葉「意志が弱いと思っている方にダイエット法がありますよ!」「体重増加は、もったいないと思って食べる、その1口、30 kcalから始まっています。まずは余分なものを食べないことから始めてみませんか?」

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ロキソプロフェン、トラマドール、PPI…、高齢者疼痛管理の見直しポイント【高齢者処方のデザイン】第1回

以下の症例に対する前医での処方箋には「替えるべきポイント」が3つ隠れています。あなたは見抜けますか?【症例】患者78歳・女性変形性膝関節症と慢性腰痛で整形外科に通院中。既往に胃潰瘍(8年前、ピロリ菌除菌後)、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症があり、直近の血液検査でeGFR 48と腎機能低下を認める。前医では疼痛に対してロキソプロフェンが定期処方され、痛みが強い時にはトラマドールを頓用、加えてランソプラゾールが継続されている。また、併存症に対してロサルタン、ロスバスタチン、アレンドロン酸が処方されている。最近、食欲低下と軽度の倦怠感を訴えて来院した。痛みのコントロールは「まあまあ」とのことだが、便秘とふらつきも自覚しているという。トラマドールは1日平均1~2錠程度内服している。診察上、両膝に軽度の腫脹を認めるが、消化器症状や明らかな浮腫は乏しい。【Before:前医の処方箋】A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時 1) Lapi F, et al. BMJ. 2013;346:e8525. 2) Derry S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;5:CD008609. 3) Roth SH, et al. J Pain Res. 2011;4:159-167. 4) Chappell AS, et al. Pain. 2009;146:253-260. 5) Chappell AS, et al. Pain Pract. 2011;11:33-41. 6) Kolasinski SL, et al. Arthritis Rheumatol. 2020;72:220-233. 7) 日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会編. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023. 8) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 講師紹介

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1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

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チルゼパチドが中等症以上のOSASに適応拡大

 厚生労働省薬事審議会・医薬品第一部会は4月24日、日本イーライリリーの肥満症治療薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注)について、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する適応拡大および肥満症に関する効能又は効果の一部変更の承認を了承。5月18日の承認に伴い、チルゼパチドの添付文書が改訂された。本剤の使用に当たっては、最適使用推進ガイドラインを参照されたい。チルゼパチド、肥満症についての一部変更点とOSASへの適応拡大 主な改訂点は以下のとおり。[効能又は効果](下線部分を改訂)◯肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る。※各効能又は効果に関連する注意は添付文書を参照[用法及び用量]◯肥満症通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回15mgを皮下注射する。なお、忍容性が認められない場合には、週1回10~15mgの範囲で投与量を調整することができる。

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チルゼパチドで減量後の体重維持、継続vs.減量vs.中止/Lancet

 米国・University of Texas McGovern Medical SchoolのDeborah B. Horn氏らは、「SURMOUNT-MAINTAIN試験」の結果から、肥満の成人において減量後にチルゼパチド最大耐量(MTD)を継続投与することにより、体重減少および健康関連指標の改善が維持されることを示した。著者は、「チルゼパチド5mgへの減量は投与中止に代わる有用な選択肢となりうるが、治療反応にはばらつきがある可能性が示唆された。これらの知見は、長期的な肥満管理において継続的な治療が重要であることを裏付けるとともに、患者中心の個別化された肥満治療を行う根拠となるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月12日号掲載の報告。60週間で5%以上体重が減少した参加者を対象に試験 SURMOUNT-MAINTAIN試験は、米国の20施設で実施された第IIIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、60週間の非盲検減量期間と52週間の二重盲検体重維持期間で構成された。 対象は、BMI値30以上、またはBMI値27以上かつ肥満に関連する併存疾患(例:高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患)を少なくとも1つ有し、減量のための食事療法に1回以上失敗している(自己申告)、18歳以上の成人であった。 チルゼパチド週1回皮下投与(2.5mgから投与を開始し、4週間間隔で10mgまたは15mgに達するまで2.5mgずつ増量)を60週間行った後、5%以上体重減少を達成し、少なくともチルゼパチド10mgに対して忍容性が認められた参加者を、チルゼパチド最大耐量(10mgまたは15mg、MTD)群、チルゼパチド5mg群、またはプラセボ群に3対3対2の割合で無作為に割り付け、52週間投与した。 主要エンドポイントは、112週時の体重のベースラインからの変化率で、試験治療の順守または他の肥満治療薬の投与開始の有無にかかわらず、無作為化試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者(mITT集団)を対象とし、レスキュー治療としてのチルゼパチド投与または減量手術等を受けた場合はその前までに観察された最悪値で補完した。チルゼパチドMTD継続投与で減量効果を維持 2023年9月20日~2026年1月20日に441例が登録され、非盲検減量期間に少なくとも1回の試験薬投与を受けた。そのうち60週時に適格基準を満たした378例が無作為化され、372例が二重盲検体重維持期間に少なくとも1回の試験薬投与を受けた(チルゼパチドMTD群139例、チルゼパチド5mg群142例、プラセボ群91例)。345例(91%)が試験を完了した。 参加者の多くは白人(67%)で、女性288例(65%)、男性153例(35%)、平均年齢46.6歳(SD 13.0)、ベースラインの平均値は、体重113.8kg(SD 27.0)、BMI 40.1(SD 8.1)、HbA1c 5.64%(SD 0.4)であった。 112週時の体重のベースラインからの変化率(モデルに基づく推定値)は、チルゼパチドMTD群-21.9%(95%信頼区間[CI]:-23.5~-20.3)、チルゼパチド5mg群-16.6%(95%CI:-18.0~-15.1)に対し、プラセボ群は-9.9%(95%CI:-11.1~-8.8)であった(すべての対プラセボのp<0.0001)。 無作為化時に得られていた体重減少の50%以上の再増加を来し、チルゼパチドのレスキュー投与を受けた参加者は、チルゼパチドMTD群で8%(11/138例)、チルゼパチド5mg群で25%(35/142例)、プラセボ群で67%(60/90例)であった。 チルゼパチド投与群で最も多くみられた有害事象は胃腸障害で、その多くは軽症~中等症であり、主に用量漸増中の発現であった。

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日本人成人の1日の食事の料理数と心血管疾患リスクの関連

 日本食の「一汁三菜」に代表される、料理の品数が多い食習慣は、心血管疾患による死亡率の低下など、日本人の健康長寿に寄与する因子として注目されている。今回、北海道大学の高林 早枝香氏らが2018〜19年の国民健康・栄養調査のデータを用いた横断研究を行った結果、1日の全食事の料理の数(NDAM)が多い食習慣は、脂質異常症や肥満、高血圧などの心血管リスク因子の低下と関連している可能性が示された。Nutrition Journal誌2026年5月号に掲載。 本研究は、2018〜19年の国民健康・栄養調査に参加した20歳以上の男女2,900人を対象とした横断研究である。NDAMは、飲料を除くすべての料理および食品を含む1日の食事記録(秤量記録法)に基づいて算出された。性別ごとにNDAMに基づいて参加者を4つのグループに分類した。年齢、一人暮らし、居住地域、職業、運動習慣、喫煙習慣、飲酒習慣、総エネルギー摂取量を調整したポアソン回帰モデルを用いて、多変量相対リスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・NDAMが高い参加者は、高齢、非喫煙者、身体活動量が多い傾向があった。・男性では、NDAMが最も少ないグループ1よりNDAMが多いグループ2~4は脂質異常症のリスクが有意に低かった。・女性では、NDAMが最も少ないグループ1と比較して、最も多いグループ4は過体重・肥満リスクが有意に低かった。さらに、NDAMが中程度のグループ2~3では、最も少ないグループ1と比較して高血圧のリスクが低かった。・しかしこれらの関連は、ボンフェローニ補正後には統計学的有意性を維持しなかった。 本結果から、著者らは「料理の品数が多い食事は、日本人成人においていくつかの心血管リスク因子と逆相関している可能性がある」と結論している。

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加熱式タバコも頻回な頭痛に関連/JASTIS研究

 加熱式タバコは、従来の紙巻タバコより「有害物質が少ない」と一般的に認識されているが、頭痛との関連についてはエビデンスが限られていた。長岡技術科学大学の勝木 将人氏らの研究グループは、日本の大規模インターネット調査のデータを解析した結果、紙巻タバコだけでなく加熱式タバコの使用も、頻回な頭痛の有病率上昇と独立して関連していることを明らかにした。Headache誌オンライン版2026年3月2日号に掲載。 本研究では、2025年2月〜3月に実施された「日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査研究プロジェクト」(JASTIS研究)の回答者のうち2万3,228例(年齢中央値49歳、女性49.3%)を対象とした。過去1年間に「時々」または「頻繁に」頭痛を経験した人を「自覚的な頻回な頭痛」と定義した。タバコの使用状況(現在使用、過去使用、非使用)ごとに、年齢、性別、BMI、既往歴(うつ病、睡眠障害、脂質異常症など)、ライフスタイル(コーヒー、アルコール摂取)などを調整した多変量ロジスティック回帰分析を行い、頭痛の有病率との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者の25.5%(5,923例)が頻回な頭痛を報告した。・多変量解析の結果、タバコ非使用者と比較した「頻回な頭痛」の調整オッズ比(aOR)は以下のとおりであった。 - 現在の紙巻タバコ使用者:1.71(95%信頼区間[CI]:1.44~2.03、p<0.001) - 過去の紙巻タバコ使用者:1.54(95%CI:1.37~1.73、p<0.001)  - 現在の加熱式タバコ使用者:1.15(95%CI:1.01~1.32、p=0.038) - 過去の加熱式タバコ使用者については、有意な関連は認められなかった(1.09、95%CI:0.96~1.24、p=0.203)・事後比較により、加熱式タバコよりも紙巻タバコのほうが、頭痛との関連が有意に強いことが示された(aORの比:1.48、95%CI:1.19~1.84)。・女性(aOR:2.30)、睡眠障害(2.78)、うつ病(1.92)、カフェイン飲料の摂取(1.07)なども頭痛と有意に関連していた。一方、週2回以上の飲酒は負の関連を示した(0.76)。 著者らは、加熱式タバコは紙巻タバコに比べて有害な揮発性化合物の排出は少ないものの、同程度のニコチンを含有していることが頭痛に寄与している可能性を指摘している。頭痛患者の生活指導において、加熱式タバコへの切り替えだけでは不十分であり、禁煙を促す重要性が示唆された。公衆衛生政策においても、タバコによる害の軽減(ハームリダクション)戦略に頭痛を考慮する必要性を強調している。

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間欠性跛行を伴う末梢動脈疾患の初期治療【日常診療アップグレード】第56回

間欠性跛行を伴う末梢動脈疾患の初期治療問題67歳男性。1年前から歩行時に右ふくらはぎ痛がある。5~10分間安静にすると痛みは改善するが、現在は犬の散歩や早足で歩くことが次第に困難になってきた。喫煙歴はない。既往歴は冠動脈疾患、駆出率低下を伴う心不全(HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction)、高血圧、脂質異常症である。服用中の薬剤は、アスピリン、メトプロロール、バルサルタン、スピロノラクトン、ダパグリフロジン、アトルバスタチンである。血圧128/74mmHg、脈拍68回/分、整である。末梢動脈の拍動は両側の大腿動脈で2+、右膝窩動脈および右足背動脈の拍動は1+である。足は温かく、潰瘍は認められない。足関節上腕血圧比(ABI:Ankle Brachial Index)は、左が0.94、右が0.76である。LDLコレステロールは58mg/dL。シロスタゾールを投与した。

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乾癬は皮膚だけの病気ではない? 重症度と心血管リスクが関連

 乾癬は皮膚に症状が現れる慢性炎症性疾患だが、近年では全身性炎症を背景に心血管疾患リスクの上昇との関連も指摘されている。今回、日本人乾癬患者を対象に、心血管リスク評価に用いられる久山町スコアで解析した結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示された。研究は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の小林愛里氏、照井仁氏(現:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによるもので、詳細は「Immunological Medicine」に3月17日付で掲載された。 乾癬は慢性炎症性皮膚疾患であり、近年では心血管疾患との関連が注目されている。乾癬患者では高血圧や脂質異常症などのリスク因子が多く、重症例ほど心血管リスクが高いとされ、日本人においても関連が報告されている。一方で、従来の欧米人での臨床データから作成された評価法では日本人における乾癬患者の心血管リスクを過小評価する可能性がある。そこで本研究では、日本人に適した久山町スコアを用いて乾癬重症度と心血管リスクとの関連を検討した。 久山町スコアは福岡県久山町の住民データ(久山町研究)に基づき、日本人の10年間の心血管疾患発症リスクを予測する指標である。本研究では、乾癬患者における心血管リスクと重症度との関連を検討するため、久山町スコアを用いた単施設の後ろ向き研究を実施した。2010年から2022年にかけて東北大学病院を受診した40~79歳の乾癬患者119人を対象とし、糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患など既存疾患のある48人を除外した71人を解析対象とした。乾癬の重症度はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアで評価し、血圧、脂質プロファイル、喫煙歴などに基づき、対象者を低・中・高リスク群に分類した。群間比較にはWilcoxon検定を用い、年齢や性別、血圧、脂質プロファイルなどで調整したロジスティック回帰分析により高リスクの予測因子を検討した。 解析の結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示され(p=0.003)、特にPASIスコアが10を超える男性では中~高リスク群に分類される割合が高かった(p=0.049)。女性では重症度と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 血圧や脂質プロファイルなどのリスク因子と心血管リスクとの関連を検討したところ、中~高リスク群では収縮期血圧の上昇(p=0.011)やHDLコレステロールの低下(p=0.017)がみられた。さらにロジスティック回帰分析の結果、収縮期血圧は心血管リスクの独立した予測因子として同定された(p=0.026)。乾癬の罹病期間と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 さらに、性別や年齢で見ると傾向に違いがみられ、特に40代男性では脂質異常がリスク上昇に関与する可能性が示唆された。 著者らは、本研究により久山町スコアを用いることで乾癬患者の心血管リスクを把握できることが示されたと述べている。特に若年層では、血圧やコレステロールの管理がリスク低下に重要であると指摘している。また、乾癬は皮膚疾患にとどまらない全身性の病気であることから、皮膚科医はかかりつけ医や循環器医と連携し、積極的にリスク管理を進めることが望ましいと強調している。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究で対象が少なく、治療内容や疾患期間の影響も排除できない点が挙げられる。著者らは、より大規模な研究での検証が望まれると指摘している。

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「MASLD診療ガイドライン」改訂、脂肪肝を全身疾患として再定義/日本消化器病学会

 2026年4月、「MASLD診療ガイドライン」が改訂された1)。2020年に発刊した前版の「NAFLD/NASH診療ガイドライン」から6年ぶりの改訂で、第3版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、改訂ポイントを解説するパネルディスカッションが開催された。 今改訂の最大のトピックスは、疾患名の変更とその定義だ。従来、脂肪性肝疾患に用いられてきた「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の疾患名は国際的コンセンサスに基づき、2023年に「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」に変更された。日本でも日本消化器病学会・日本肝臓学会がこれに賛同し、2024年8月に「MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」「MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎」との日本語名を発表している。改訂版ガイドラインでは、これらの新たな疾患名・定義を踏まえた診断・診療体系が提唱された。疾患定義:世界的な名称変更 NAFLDという名称は1980年代に提唱され、その後40年以上にわたり使用されてきた。しかし「non-alcoholic(非アルコール性)」という否定形表現や、「fatty」という言葉が患者へのスティグマにつながるとの指摘が国際的に強まっていた。これを受け、脂肪性肝疾患を「SLD(steatotic liver disease)」という1つの大きな疾患群として捉え直し、そのなかで心代謝系危険因子(CMRF)の有無、飲酒量、その他(薬物、ウイルス、遺伝子など)の要因に応じて疾患を再分類したうえで、その中心的な病態としてMASLDが位置付けられた。従来のNAFLD/NASHとMASLD/MASHの臨床像や診断アルゴリズムはおおむね一致しており、従来のエビデンスは引き続き活用される。診断フローチャート:新たに「MetALD」を設定 新たな疾患分類では、SLDを認めた患者に対し、まず、CMRFの有無を評価する。ガイドラインではCMRFとして 1)肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲男性>94cm・女性>80cm 2)血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療 3)血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服 4)中性脂肪:≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服 5)HDL:男性≦40mg/dL、女性≦50mg/dL or 脂質異常症治療薬内服の5項目を採用している。これらのリスク因子が1つ以上あり、かつ飲酒量が基準未満(純エタノール量:男性30g/日未満・女性20g/日未満)であればMASLDと診断される。 今回のガイドラインでは、新たな疾患カテゴリとして、CMRFが1つ以上の中等量飲酒例(男性30~60g/日・女性20~50g/日)を「MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)」として独立して規定した。これを超える飲酒量であれば「ALD(アルコール関連肝疾患)」となる。MetALDは従来ではNAFLDから除外されていた群だが、近年、代謝異常とアルコール双方が病態進展に関与すると示されたことを背景に設定され、MASLDよりも肝関連イベントリスクが高いことが報告されている。さらに心血管イベントも増加するとの報告もあることがFRQで示され(FRQ1-1)、今後はこれらの病態に応じた治療法やサーベイランス法の開発が重要となる。診断:肝生検が「必須」から外れる BQ4-1 MASLDの診断に肝生検は必須か? MASLDの診断に肝生検は必須ではない。 今回の改訂で大きな変更点が、確定診断にあたって「肝生検は必須ではない」とされた点だ。これは近年のNIT(非侵襲的検査)の発達によるもので、NITには血液検査による肝線維化マーカー、年齢と検査値を組み合わせたスコアリングシステム(FIB-4 indexなど)、画像検査、そしてこれらの組み合わせがあり、非侵襲的かつ繰り返し評価できることが大きなメリットとなる。とくに複数の線維化マーカーが保険収載されているのは世界中で日本だけであり、この点に関するエビデンスを蓄積することも求められている。一方、肝生検を必要とするケースも依然として存在しており、高リスクMASHの確定診断、炎症の程度の把握が必要なケース、複数のNITの不一致例などが挙げられている。 今回、診断フローチャートのほかに「肝疾患高リスク症例の絞り込み・フォローアップのフローチャート」が作成された。これはNITと肝生検を組み合わせて高リスク症例を絞り込む手順と、その検査や重症度別の患者のフォローアップをかかりつけ医と専門医でどう分担すべきか、という2軸のマトリクスからなる。NITを使った2段階のハイリスク症例の絞り込み、2次リスク評価で使用できるNITのリストアップ、肝生検・超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィによる最終評価と治療方針の決定、その後のリスクに応じたフォローアップ体制など、診断の全体像と医師の役割分担の提唱が可視化されている。非専門医が押さえるべきポイント・従来、「飲酒歴を確認し、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害を除外した残り」としてNAFLDを診断していたが、MASLDにおいてはBMI、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症などのCMRFの確認が診断プロセスの中心となる。・飲酒評価の重要性も増した。とくにMetALD概念の導入により、「少量飲酒であれば問題ない」と一律に扱うことは難しくなった。ガイドラインではMASLDを男性30g/日未満、女性20g/日未満、MetALDを男性30~60g/日、女性20~50g/日の飲酒群として整理しているが、実際にはMASLD基準内の少量飲酒でも線維化リスク上昇が報告されており、診療現場では飲酒量を細かく聴取することが重要になる。・「MASLD患者の消化器科へのコンサルテーション基準は?」という設問(BQ4-2)に対しては、「FIB-4 index>2.67(65歳以下の場合)」の高リスク群を紹介基準とし、同1.3~2.67の中間リスク群でも「血小板数<20万/μL」「AST値・ALT値が持続高値」「画像検査で肝硬変の所見を認める」場合には紹介が望ましいとされている。全身疾患としてのMASLD MASLDは多くの疾患と関連するが、診断基準となるCMRF関連4疾患である「2型糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧」についてはBQが設定され、相互補完関係にあることが示されている(BQ3-1~3-4)。さらに、慢性腎障害、内分泌異常、睡眠時無呼吸症候群など、多様な合併症との関連も整理された(BQ3-5、3-6)。また、肝臓以外の悪性腫瘍リスク上昇についても大腸がんを中心に、胃がん、食道がん、婦人科がんとの関連が解説された(BQ3-7)。中でも心血管疾患はMASLD患者の主要死因の1つであり、大規模メタ解析では、MASLD患者の心不全新規発症リスクは一般人口の約1.5倍と報告されている。一方で、肝線維化が心血管リスクを上昇させる独立した因子であるかについては現時点ではまだ明確ではなく、今後探索していくべき課題とされた(FRQ3-1、3-2)。 治療面では、生活習慣介入が中心である点は従来と変わらないが、「単純性脂肪肝だから経過観察のみ」という従来型対応は見直されつつある。肥満、糖尿病の合併例、線維化進展を伴う例では、早期から積極的介入を行う方向性がより明確になっている。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など代謝改善薬への期待も高まっており、今後の承認に向けての動きやエビデンス蓄積が注目される。

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塩分の多い食事で心不全リスクが上昇

 塩分の過剰摂取が高血圧につながり得ることは周知の事実だが、実はそれ以上に危険かもしれない。新たな研究で、心不全(HF)高リスク群におけるナトリウムの過剰摂取は、HFの新規発症と関連することが示された。米ヴァンダービルト大学トランスレーショナル・臨床心血管研究センター(VTRACC)のDeepak Gupta氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology: Advances(JACC:Advances)」に3月18日掲載された。 この研究では、米国南東部で進行中のSouthern Community Cohort Studyに参加している2万5,306人(年齢中央値54歳、女性63%)を対象に、食事からのナトリウム摂取とHF発症との関連が検討された。対象者には、従来、HFリスクが高いグループとされる黒人(69%)と年収2万5,000ドル(1ドル159円換算で約398万円)未満の低所得者(87%)が多く含まれていたが、研究開始時にHFのある参加者はいなかった。食事からのナトリウム摂取量は検証済みの質問票で評価し、HFの新規診断はメディケアやメディケイドの請求データから把握した。対象者の1日当たりの食事からのナトリウム摂取量は平均4,269±2,502mgであり、米国心臓協会(AHA)や米国政府の指針で推奨されている摂取量(2,300mg/日)を大きく上回っていた。 追跡期間中央値9.8年の間に7,039人(27.8%)がHFを発症した。解析の結果、社会人口統計学的特徴、食事の質、摂取カロリー、運動、脂質異常症などを調整しても、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクが有意に8%上昇することが示された。さらに、高血圧、BMI、睡眠、冠動脈疾患を調整しても結果は同様であった。糖尿病患者でも同様の関連が認められ、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクは8%上昇した。さらに、人口寄与危険割合(PAF)の解析から、ナトリウム摂取量を4,000mg/日以下に低減することで、10年間でHFの6.6%(95%信頼区間3.6~9.6%)を予防できる可能性が示された。 こうした結果を受けてGupta氏らは、「ナトリウム摂取量をわずかに減らすだけでも、この高リスク群におけるHFの負担を大幅に減らせる可能性がある」と述べている。ただし、ナトリウム摂取量を控えるという解決策は一見簡単に思えるものの、多くの人にとっては簡単ではないと研究グループは指摘する。なぜなら、低所得コミュニティでは、新鮮で低ナトリウムの食品を手に入れることが難しく、そうした食品を扱うより良い食料品店への交通手段も限られていることが多いためだ。研究グループは、「高リスクで資源の限られたコミュニティにおいて、食事からのナトリウム摂取量を下げるための多層的な公衆衛生戦略を実施するべきだ」と結論付けている。 米国では、HFが年間42万5,000人以上の死亡に関わっており、事態は深刻だ。さらにHFは、人命への影響だけにとどまらず、経済的な影響も甚大だ。Gupta氏らは、ナトリウム摂取量を減らすことで、年間約20億ドル(約3180億円)の医療費削減が見込まれると推計している。

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1次予防の脂質低下療法強化の指標、apoBが費用対効果優れる/JAMA

 スタチンの適応があり、かつアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のない成人の1次予防において、脂質低下療法の強化のマーカーとして、アポリポ蛋白B(apoB)値はLDLコレステロール(LDL-C)値や非HDLコレステロール(non-HDL-C)値と比較して、質調整生存年(QALY)が増加し、増分費用効果比(ICER)が基準値を満たし、費用効果に優れることが、米国・ Northwestern University Feinberg School of MedicineのSamuel Luebbe氏らによる検討で示された。リスクの予測や脂質低下療法の強度決定の指針として、apoB値の優位性は十分に確立されているが、検査費用などの問題のため、主要な脂質マーカーとして採用することには懸念もあるという。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月8日号に掲載された。NHANESデータに基づくコホートの経済的評価 研究グループは、1次予防における高強度スタチンおよびエゼチミブによる脂質低下療法の強化に関する3つのマーカー(LDL-C、non-HDL-C、apoB)の相対的な費用対効果を検討する目的で、コンピュータシミュレーションモデル(心血管疾患[CVD]Policy Model)を用いて経済的評価を行った。 2005~16年の米国の国民健康栄養調査(NHANES)の参加者4,149例(平均[SD]年齢66.5[11.0]歳、女性1,691例[40.8%]、平均[SD]LDL-C値119.2[42.2]mg/dL、同apoB値110.8[39.0]mg/dL、同ASCVDの10年リスクスコア20.9[14.2]%)から、確率標本抽出法により、スタチンが適応で、かつASCVDのない成人のシミュレーションコホート(25万例)を構築した。 参加者に対し、脂質スクリーニング後にシミュレーションを開始し、2018年版AHA/ACCガイドラインに基づきスタチン治療を行った。モデルへの入力データは、全国的な調査、統合された縦断的コホート研究、公表された文献から取得した。 治療を行っても、目標値(LDL-C値<100mg/dL、non-HDL-C値<118mg/dL、apoB値<78.7mg/dL)が達成されない場合に、脂質低下療法を強化することとした。 生涯QALYと費用(2025年の米ドル換算)を算出。主要アウトカムはICER(1QALY獲得に要する費用)とした。AHA/ACCの推奨に基づき、ICERが1QALY獲得当たり12万ドル未満の場合に、その方針は費用効果があると判定した。apoB群のICERは3万300ドル 脂質低下療法の強化のマーカーとしてLDL-Cを目標値とした場合(通常治療)に比べnon-HDL-Cを目標値とすると、25万例当たり617件(95%不確実性区間[UI]:-245~1,422)のASCVDイベントを予防すると推定され、965QALY(95%UI:-3,551~5,341)の増加とともに、210万ドル(95%UI:-9,420万~9,200万)の費用削減が推定された。 また、非HDL-C値と比較してapoBを目標値とすると、25万例当たり1,018件(95%UI:-1,974~-6)のASCVDイベントを予防し、1,324QALY(95%UI:-2,602~5,669)の増加とともに、4,020万ドル(95%UI:-4,360万~1億3,400万)の費用増が推定された。ICERは1QALY獲得当たり3万300ドルであり、apoB値の費用効果を認めた。apoBが最適目標値の確率は65% 1QALY獲得の支払意思額閾値を12万ドルとすると、確率論的解析(モデル解析を1,000回反復)でapoB値が目標値として最適となる確率は65%であり、non-HDL値が最適となる確率は25%であった。LDL-C値の確率は10%と低かった。 目標値をLDL-Cとした場合に比べ、non-HDLとapoBの目標値は生涯の慢性期および急性期ASCVDに要する費用をわずかに抑制したが、スタチン治療とASCVD以外の費用が増加した。apoB検査の費用はごく安価であり、apoBを目標値とした患者における費用の増加は、主に余命の延長および予防治療の長期化によるものであった。 著者は、「これらの知見は、1次予防における脂質低下療法の指針となり、集団ヘルス(population health)の改善に寄与する費用効果の高いマーカーとして、apoB値の使用を支持するものである」としている。

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在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

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認知症の病理を叩く「表街道」、脳を育む「援護射撃」――Lancetの14の危険因子を読み解く(その3)【外来で役立つ!認知症Topics】第40回

前回、私はLancet誌の提唱する認知症の修正可能な14の危険因子1)を、「疾患・障害リスク」と「生活・環境リスク」とに分ける考え方を述べた。前者は従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化などの病理から説明しやすいもので、糖尿病や高LDLコレステロール(LDL-C)が代表的だ。これはいわば、アルツハイマー病の病理進行をくい止めようという「表街道」の予防法である。一方、後者はアミロイド仮説とは異なり、脳内ネットワークや認知予備能といった考え方で説明される。健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという、側面からの「援護射撃」ともいえる。この考え方をイラストに示した。以下に示す個々の危険因子について、それが「表街道」と「援護射撃」のどちらに属するかを述べていく。画像を拡大する筆者作成若年期の教育:脳の「控え選手」を育てる援護射撃若年期の危険因子だが、これは「教育」が中心となる。ここで作る大脳の基礎力が十分でなかったとしても、後年これを育み続けることが予防につながると考えればいい。この考え方の基本は、以前から知られる「認知予備能」に関連する。ざっくり言えば、人は生まれ持った脳細胞の一部しか使わないうちに一生を終える。これまで使ってこなかった「控え選手の神経細胞(予備能)」に働きかけるのである。具体的な方法としては、新たな社会交流が勧められる。とくにインターネットリテラシーが低い人こそ、ここで情報を得る習慣を持てば大きな成果が期待できる。教育は、まさに一生続く「援護射撃」なのである。中年期の危険因子:再発とうっかり事故を防ぐ表街道中年期の危険因子のトップは、第38回で述べたとおり難聴と高LDL-Cだが、続いて「うつ病」に触れたい。うつ病経験者は、そうでない者と比べ認知症の危険性が2倍とされる。背景には、神経炎症や、脳由来栄養因子を介した神経の可塑性障害、コルチゾール過剰分泌による海馬体積の減少説などがある。臨床的に大切なのは、うつ病は何度も繰り返しやすく、その再発自体が認知症発症の危険性を高める点だ。だからこそ再発予防が重要であり、主治医と共にフォローを欠かさないことが、病理を抑える「表街道」の対策となる。次に「頭部外傷」については、中等度のもので認知症リスクを2.3倍、重度で4~4.5倍にも増大させる2)。ボクシングなどによる頭部外傷が、50年以上も後にリスクとして現れる。なお高齢者では「転落が脳挫傷原因の3分の2以上」とされるだけに、住環境への配慮が重要になる。照明の改善、手すりやレールの設置、段差の除去や滑りにくい床への改善などが望ましい。身体機能面からは、運動機能の維持、視力や聴力の調整も重要となる。そして、単純ながら基本となるのが「適切な履物」の着用だ。屋内でスリッパなど履かないほうがよい人は多い。これもまた、脳への物理的ダメージを回避する「表街道」の予防といえる。運動不足:座りっぱなしを解消する援護射撃運動不足という危険因子は、従来からいわれてきた運動の予防効果の裏返しである。最近は、単に「たくさん運動すればよい」というより、「身体活動をしない者が運動すれば効果が生まれる」という考え方に変化してきた。最近、老年医学の分野では「座りがちな」という意味の英語で「sedentary」という言葉をよく見かける。そこですべき運動は、有酸素運動の一辺倒ではなく、レジスタンス運動やバランス運動を組み合わせることが重要だ。腰や膝の障害で運動が難しい人の場合でも、皿洗いや掃除、洗濯物干しなどの家事労働を長時間行えば、運動不足をかなり補える。こうした活動の積み重ねが、脳を支える「援護射撃」となる。糖尿病と高血圧:血管から病理を断つ表街道の王道糖尿病は認知症リスクを60%高めるとされるが、アルツハイマー病以上に、血管性認知症の危険性を高める。生物学的メカニズムとしては、直接的な血管障害や神経障害のほかにインスリン分解酵素(IDE)の影響が指摘されている。インスリンとアミロイドβ(Aβ)は同じIDEで分解されるため、高インスリン血症になるとAβの分解が滞り、蓄積していくと考えられる。なお低血糖発作は深刻な危険因子だと強調されている。食事による対応では、地中海食、そこに減塩を超えたダッシュ食、低炭水化物が推奨される。運動では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動を組み合わせた「表街道」の包括的な管理が求められる。そして、高血圧こそ認知症発症における最重要な修正可能リスクだろう。40~65歳の中年期の高血圧は、認知症リスクを61~69%増加させるが、降圧薬による治療により、認知症全体で12%、アルツハイマー病で16%のリスクを低減できるとされる3)。高血圧が認知症の危険因子となる理由として複数の説がある。まず脳血管損傷経路、また酸化ストレスと神経炎症経路、血液脳関門破壊経路、さらに脳構造変化と脳萎縮などである。これらをみると、アルツハイマー病の病理が形成されていくプロセスに関わる仮説の多くが高血圧と関連すると改めてわかる。治療面では、とくに血流の改善と脳構造の保護が重要である。わが国のガイドラインでは、年齢別、個人差を考慮した段階的な血圧管理を推奨している。また、いわゆる白衣高血圧の多さを考慮してか、最近では家庭用血圧計における継続的な測定結果が重視される。診察室での血圧よりも、自宅でリラックスして測定した値こそ「真の値」と考えるからだ。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、全年齢の降圧目標が、「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に定められている4)。なお言うまでもないが、血圧コントロールのみならず糖尿病や脂質異常症などの関連疾患の包括的な管理を通して、大きな予防効果が期待できる。これも「表街道」の予防法だ。認知症の修正可能な危険因子に関する今回の解説は以上である。14の危険因子のうちあと6つ、主にライフスタイルに関連するものが残っているが、これについては次回に述べることにしよう。参考文献・参考サイト1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Gottlieb S. Head injury doubles the risk of Alzheimer's disease. BMJ. 2000;321:1100.3)Ding J, et al. Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2020;19:61-70.4)日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

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添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

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MASLD患者の心血管疾患入院、糖尿病合併で院内死亡リスク約2倍

 代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者が心血管疾患(CVD)で入院した場合、糖尿病併存例では院内死亡や合併症のリスクが有意に高いことが、日本の大規模レジストリ研究で明らかになった。研究は、宮崎大学医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の小牧聡一氏、松浦祐之介氏らによるもので、2月15日付の「Diabetic Medicine」に掲載された。 MASLDは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に代わる新たな疾患概念として提唱されており、世界で最も頻度の高い慢性肝疾患の一つとされる。CVDとの関連が強いことから心血管リスク評価の重要性が指摘されているが、診断基準を構成する各代謝因子が予後に及ぼす影響については、十分に明らかになっていなかった。糖尿病はMASLDにおける肝関連合併症との関連が知られる一方、CVDで入院したMASLD患者の院内転帰に及ぼす影響については不明な点が多かった。そこで研究グループは、日本全国の心血管入院データを用いて、MASLD患者における糖尿病と院内転帰(死亡・合併症)との関連を検討した。 本研究は、2012年4月から2023年3月までの全国規模の日本循環器疾患レジストリ(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular DiseasesーDiagnosis Procedure Combination:JROADーDPC)のデータを用いた後ろ向き横断研究である。解析対象は、CVDで入院したMASLD患者10,614人。MASLDは、肝脂肪化に加え、少なくとも1つの心代謝リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、関連薬剤の使用、またはBMI23kg/m2以上〔アジア人のBMI基準〕)を有する場合と定義した。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目は主要な心血管系および非心血管系の院内合併症発生とした。統計解析では、糖尿病の有無による患者背景および転帰を比較したうえで、院内死亡との関連を検討するため多変量ロジスティック回帰解析を実施した。 対象患者の年齢中央値は66歳で、66.9%が男性だった。MASLD患者10,614人のうち、4,550人(42.9%)が糖尿病を合併していた。糖尿病非合併患者と比較して、糖尿病合併患者では虚血性心疾患(35.5% vs. 30.8%)、急性冠症候群(18.8% vs. 16.9%)、心不全(27.3% vs. 25.4%)の割合がいずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。 院内死亡率(5.6% vs. 3.3%、P<0.001)および全合併症発生率(23.6% vs. 19.7%、P<0.001)も糖尿病合併群で有意に高く、合併症発生率の差は主として心血管系イベント(16.8% vs. 10.5%、P<0.001)の増加によるものと考えられた。さらに心血管系イベントの内訳では、糖尿病合併例で入院後の心不全や急性冠症候群の発症が多く、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)、人工呼吸管理などの高度治療を要する割合も高かった。 多変量ロジスティック回帰解析の結果、糖尿病は院内死亡の独立した予測因子であることが確認された(オッズ比 1.99、95%信頼区間 1.60~2.47、P<0.001)。さらに、敗血症、大出血、がんも院内死亡の独立した規定因子であった。一方、脂質異常症や虚血性心疾患は死亡リスク低下と関連し、抗血小板薬、スタチン、ACE阻害薬/ARBの使用も死亡率低下と関連していた。 著者らは、CVDで入院したMASLD患者において、糖尿病合併が院内死亡率および合併症発生率の上昇と関連していたと結論づけた。そのうえで、「MASLDの心代謝リスク因子が予後に及ぼす影響を一律に捉えるのではなく、特に糖尿病の有無といった代謝表現型に基づいて層別化して評価することが、より精度の高いリスク評価や個別化医療の推進につながる可能性がある」としている。 なお、本研究の限界として、診断が病名コードに基づくため誤分類の可能性がある点、検査値や治療詳細が含まれていない点、残余交絡の可能性や因果関係を示せない点、非MASLD対照群がない点が挙げられている。

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