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細胞療法の成功例、CAR-T細胞療法の仕組みに迫る!【そこからですか!?のがん免疫講座】第6回

はじめに前回までは、がん免疫療法における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の話が多かったのですが、最近登場してきた細胞療法のことにも触れておきたいと思い、全5回の連載予定をオーバーしていますが、もう少しお付き合いください。ICIは間接攻撃、細胞療法は直接攻撃ICIは、元々われわれの身体にある免疫細胞(とくにT細胞)を活性化させる治療であり、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体がその代表です。つまり、ICIは「元々備わっている免疫を介して間接的にがんを攻撃している治療」だといえます。一方で、細胞療法は、「外からがん細胞を攻撃する細胞を入れる治療」です。利用している細胞が免疫細胞なので、「免疫療法」のくくりに入れる場合が多いです。細胞療法は、間接的なICIに比べて直接的な治療であり、その攻撃の仕方にはいろいろな免疫の要素が含まれます。「外から細胞を入れるなんて」と抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、実はこの方法、かなり昔から取り組まれていたんです1)。抗体でT細胞を活性化させる「CAR-T細胞」細胞療法の中で、代表的な成功例がCAR-T細胞療法です2)。CARとは「キメラ抗原受容体:Chimeric Antigen Receptor」の略です。「キメラ」なので何かを「融合」させているのですが、「何を」「何のために」わざわざ融合させているのか、少し詳しく述べてみたいと思います。これまで、「T細胞ががん免疫の主役である!!」と繰り返し、しつこいくらいに述べてきました。少し思い出してほしいのですが、T細胞はその受容体であるTCRを介して、MHCというお皿の上に乗った抗原を認識して活性化し、がん細胞を攻撃していました(図1)。このTCRの替わりに「抗体」を使おう、というのがCARの発想です。画像を拡大する抗体とは、B細胞というリンパ球が産生し血中などに放出しているものです(正確には形質細胞ですが、これは元をたどるとB細胞なので、ややこしいのでここではB細胞とします)。繰り返しになりますが、がん細胞を含む異常細胞を攻撃・排除するための免疫を「細胞性免疫」と呼んでおり、T細胞が主役でした。一方、B細胞から産生され血中などに放出された抗体は、細胞の外にある異物を抗原として認識・結合して免疫反応を起こし、防御機構が働きます。血液で起きるということで、抗体が主につかさどる免疫を「液性免疫」と呼んでいます。抗体の由来はB細胞抗原受容体(BCR)です。BCRはTCRと同じように非常に多くのレパートリーを持つことで、さまざまな抗原を認識できます。治療にも用いられる抗EGFR抗体はEGFRを認識する抗体ですし、これまでにも散々登場した抗PD-1抗体はPD-1を認識する抗体です。抗体がTCRと大きく違うのは「MHCのお皿が必要ない」という点です。MHCは実はかなりの個人差があって、そのタイプに合わないとTCRが認識できないのですが、抗体はMHCとは無関係に抗原を認識することができます。T細胞ががん細胞を攻撃するためには、がん細胞を認識することが重要です。この認識の過程にTCRではなく抗体を使ってあげよう、というのがCARの発想です。人工的に合成した「抗体の抗原を認識する部分」をT細胞に導入することで、がん細胞の表面に出ている抗原であれば、MHCとは関係なくT細胞が認識できるようになります。しかし、単に認識するだけでは、がん細胞を攻撃できません。認識してさらにT細胞を活性化する必要があります。そこでT細胞に活性化シグナルを伝えるためのCD3という分子の一部分を抗体の抗原認識部分とキメラ化し、導入したものがCAR-T細胞です(図2)。画像を拡大するCD3はT細胞マーカーでもあり、同じ部分はT細胞の活性化にも重要です(図1)。単純な表現にすると「TCRの替わりに抗体を使ってT細胞を活性化させているものがCAR-T細胞」なのです。最近では、さらに活性化シグナルが入るように活性化共刺激分子であるCD28や4-1BBもキメラ化して導入したものが、すでに臨床で使われています(図2)。CAR-T細胞療法における成功例は、CD19という分子に対するものです。ある種の血液腫瘍にはCD19が非常に特異的に細胞表面に発現しており、これに対するCAR-T細胞療法は劇的な効果が報告され、臨床にも応用されています3)。ほかにも骨髄腫などで有望なものが報告されています。CAR-T細胞療法、ほかのがんへの応用は?ここまでの話で、「じゃあ、がん細胞表面の抗原とそれに対する抗体さえあれば、どんながんにも応用できるのでは?」と思われた方もおられるかもしれません。その発想は間違っていないのですが、いくつか問題点があります。一番の問題は、その細胞傷害効果が強力過ぎる、という点です。正常細胞にも発現している抗原を認識して傷害すると、大変な副作用が出る可能性が指摘されています。免疫を活性化させる物質であるサイトカインが体中で大量に放出され、ショック状態になってしまう「サイトカイン放出症候群」(これは正しく対処すればそこまで問題はないようです)や、中枢神経系に障害を起こす有害事象も報告されています。したがって、CD19のようにがん細胞表面に非常に特異的でないと開発が難しく、血液腫瘍以外への開発はなかなか進んでいません。そのほかの細胞療法CAR-T細胞療法の成功例を紹介しましたが、「わざわざ面倒なキメラなんて作らなくてもいいのでは?」と思った方もいるかと思います。そうですね、「TCRを直接使ってあげればいいんじゃない?」というのはより単純な発想で、実はこちらも以前から取り組まれており、TCR-T細胞療法と呼ばれています。紆余曲折はあるのですが、特定のがん抗原に対して有望なものも報告され、本邦でも開発が進んでいます。ただし、CARと異なり、TCRはMHCのタイプによっては認識できないため、特定のMHCを持つ患者さんにしか使用できない、という別の問題点もあります。患者さん由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を体外で培養・増殖させて、がんを攻撃するT細胞を増やし、体内に戻すTIL療法も効果が報告されています1,4)。本邦ではなかなか手間の問題でできていませんが、海外ではベンチャーもできており、大々的に治験が行われています。TIL療法は悪性黒色腫に対して古くから効果が報告されていましたが、最近ではそれ以外の腫瘍でも効果が報告され、注目を集めています。人工的に細胞を作ることに関して、「えっ」と思う方もおられるかもしれませんが、実は以前から実験室レベルで細胞の遺伝子操作をすることは、比較的簡単にできるようになっています。私も大学院時代の初期に教えてもらいました。CAR-T細胞療法は本邦ではこれから広がる治療ですが、そういった技術面の進歩もあり、今後もこれまでなかったような治療が次々に登場してくるかもしれません。次回はそんな将来像に少し触れ、締めにしたいと思います。1)Rosenberg SA, et al. Science. 2015;348:62-68.2)Singh AK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:e168-e178.3)June CH, et al. N Engl J Med. 2018;379:64-73.4)Zacharakis N,et al. Nat Med. 2018;24:724-730.

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多発性骨髄腫導入療法、カルフィルゾミブ3剤併用療法 vs.ボルテゾミブ3剤併用療法(ENDURANCE)/ASCO2020

 米国・メイヨー・クリニックのShaji K. Kumar氏は未治療の多発性骨髄腫への導入療法として、従来から標準療法として用いられているプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブとレナリドミド、デキサメタゾンの3剤併用療法(VRd)と、ボルテゾミブに代えて新規次プロテアソーム阻害薬のカルフィルゾミブを使用する3剤併用療法(KRd)を比較した無作為化第III相比較試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。・対象:前治療歴がない多発性骨髄腫患者1,087例(PS 0~2)。FISH法によるt(14;16)、t(14;20)、17p13 欠失、LDHが正常上限の2倍以上の高リスク群、形質細胞性白血病患者、Grade2以上の末梢神経障害を有する患者、NYHA心機能分類III~IV度の心不全患者などは対象から除外・試験群:カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、4週ごと最大9サイクル(KRd群、545例)・対照群:ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、3週ごと最大12サイクル(VRd群、542例) 両群36週間の治療終了後、レナリドミド維持治療継続群とレナリドミド2年間維持治療群に1:1に2度目の割り付け・評価項目:[主要評価項目]導入療法での無増悪生存期間(PFS)、維持治療での全生存期間(OS)[副次評価項目]寛解率、微小残存病変(MRD)陰性率、増悪までの期間、OS、毒性[その他]導入療法期間中と終了後にQOL評価 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はVRd群34.4ヵ月、KRd群34.6ヵ月で有意差はなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.83~1.31、p=0.742)。・70歳以上のPFS中央値はVRd群37ヵ月、KRd群28ヵ月であった。・サブグループ解析では、70歳以上、男性でVRd群が良好だった。・厳格な完全寛解(sCR)はVRd群が4.0%、KRd群が5.9%、完全寛解(CR)はそれぞれ10.8%、12.4%、非常に良い部分寛解(VGPR)はぞれぞれ49.9%、55.5%、部分寛解(PR)はそれぞれ19.5%、12.9%であった。・OS中央値は両群とも未達(HR:0.98、95%CI:0.71~1.36、p=0.923)、3年OS率はVRd群が84%、KRd群が86%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発現率はVRd群59.4%、KRd群65.6%(p=0.038)、非血液毒性発現率はVRd群41.4%、KRd群48.3%だった(p=0.024)。 今回の結果から、Kumar氏は「新規診断の多発性骨髄腫に対する導入療法としてはVRdが依然として標準治療である」と述べた。

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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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VMP療法+ダラツムマブ、多発性骨髄腫のOS延長/Lancet

 幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫の患者では、標準治療であるボルテゾミブ+メルファラン+prednisone(VMP)療法にダラツムマブを追加(D-VMP療法)すると、標準治療単独に比べ全生存(OS)期間が有意に延長することが、スペイン・サラマンカ大学病院のMaria-Victoria Mateos氏らが行った「ALCYONE試験」の中間解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月9日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体製剤であり、直接的な腫瘍縮小作用とともに免疫調節作用を有するという。本試験の主解析では、D-VMP療法により無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが、すでに報告されている。上乗せ効果を評価する実薬対照無作為化試験 本研究は、25ヵ国162施設が参加した多施設共同非盲検実薬対照無作為化第III相試験であり、2015年2月9日~2016年7月14日の期間に患者登録が行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。 対象は、新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または重大な合併症のため、大量化学療法+自家幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、D-VMPまたはVMPを行う群に無作為に割り付けられた。全例に、ボルテゾミブ(1.3mg/m2[体表面積]を、1サイクル目は第1、4、8、11、22、25、29、32日に、2サイクル目以降は第1、8、22、29日に皮下投与)+メルファラン(9mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)+prednisone(60mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)による1サイクル6週の治療が、最大9サイクル施行された。 これに加え、D-VMP群は、ダラツムマブ(16mg/kg[体重])を1サイクル目は週1回、2~9サイクル目は3週に1回投与し、その後は維持療法として4週に1回、増悪または許容できない毒性が発現するまで継続投与した。3年以上の追跡で死亡リスク40%低下、良好なPFSが持続 706例が登録され、D-VMP群に350例、VMP群には356例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲40~93)で、211例(30%)は75歳以上であった。271例(38%)は国際病期分類(ISS)のStageIIIであり、98例(14%)は細胞遺伝学的プロファイルが高リスクであった。 追跡期間中央値40.1ヵ月(IQR:37.4~43.1)の時点で、D-VMP群83例(24%)、VMP群126例(35%)が死亡した。死亡のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.46~0.80、p=0.0003)であり、D-VMP群で死亡リスクが40%低下した。Kaplan-Meier法による36ヵ月時のOS率は、D-VMP群が78.0%(95%CI:73.2~82.0)、VMP群は67.9%(62.6~72.6)であり、両群ともOS期間中央値には未到達だった。 主要評価項目であるPFSのHRは0.42(95%CI:0.34~0.51、p<0.0001)であり、D-VMP群で病勢進行または死亡のリスクが58%低かった。36ヵ月PFS率は、D-VMP群が50.7%(45.1~55.9)、VMP群は18.5%(14.4~23.1)であり、PFS期間中央値はそれぞれ36.4ヵ月(32.1~45.9)および19.3ヵ月(18.0~20.4)だった。 全奏効率(D-VMP群90.9%、VMP群73.9%、p<0.0001)および最良部分奏効以上(73%、50%、p<0.0001)、完全奏効以上(46%、25%、p<0.0001)、微小残存病変陰性(28%、7%、p<0.0001)の割合は、いずれもD-VMP群で有意に良好であった。また、微小残存病変陰性が12ヵ月以上持続した患者は、PFSおよびOSが優れた。さらに、これら最良総合効果のD-VMP群における改善は、年齢(<75歳、≧75歳)および細胞遺伝学的状態(標準リスク、高リスク)にかかわらず認められた。 前回の解析以降の追跡期間中に、D-VMP群で安全性に関する新たな懸念は特定されなかった。1~9サイクルの治療期間中に最も頻度の高かったGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少(D-VMP群40%、VMP群39%)、血小板減少(34%、38%)、貧血(15%、20%)であった。また、D-VMP群のダラツムマブ維持療法期に最も頻度の高かった全Gradeの有害事象は上気道感染症(19%)であり、次いで気管支炎(15%)、ウイルス性上気道感染症(12%)、咳嗽(12%)、下痢(10%)の順であった。 著者は、「現在、他の第III相試験でもダラツムマブのOSに関して長期の追跡調査が進められているが、今回の有効性と安全性の知見は、標準治療への本薬の追加を強く支持するものである」としている。

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多剤抵抗性骨髄腫に対する新規治療薬selinexor(解説:藤原弘氏)-1119

 骨髄腫に対する新規治療薬の開発が進み、今では、プロテアソーム阻害剤(PIs)、免疫調節薬(iMIDs)、そして抗体薬をそれぞれ複数手にしている。そのうえで、より深い寛解を目指して自家移植を中心に、これら薬剤を組み合わせて、あるいは使い分けて、患者QOLを保ちながらOSを延ばすことに苦心している。その“How to”自体が1つの重要なclinical questionとなっている。さらには、シクロホスファミドをはじめ、CHOP療法のようなリンパ腫に準じた抗がん剤治療なども日常診療では選択する場合もあり、骨髄腫治療は本当に多岐にわたり、10年単位で骨髄腫患者さんとお付き合いできるようになった。一方でこの現実は、これら複数の薬剤に抵抗性(triple-class refractory)となった骨髄腫に対する治療法の開発を必要とする状況を生んだ。そうした患者群に対する新薬としてnuclear transporter exportin1(別名:chromosome region maintenance 1[CRM1])阻害剤selinexorが検討され(STORM試験)、デキサメタゾンとの併用で期待できる結果が得られたとして、New England Journal of Medicine誌に、この8月報告された(試験の詳細は他稿で紹介されているので、そちらをお読みいただきたい)。 この試験の対象患者には、CAR-T細胞治療後再発2例も含まれ、正に“今”を反映している。本文中にもあるが、病勢進行が速いtriple-class refractory症例を対象とすることから用量を高く設定したことに加えて、その作用機序からも、出血傾向は伴わないとしても高度の血小板減少を含む血球減少が強く出ている。日常診療において、たとえばiMIDsを長く使用してt-MDSを背景に汎血球減少を伴う症例も少なからず経験する。実臨床の場では、selinexorの用量・用法をもっと現実に合わせて高度の血球減少を避けることになるのだろうが、そのときの抗腫瘍効果は? と、気になるところではある。一方で、基礎検討において、selinexorはPIsとは相乗的に、iMIDsとは相加的に、さらには骨髄腫細胞の抗体薬への感受性を上げるとのメリットが報告されており、将来的には、併用薬としてフロントラインに出てくることもあるのだろう。“あらゆる手を打ち尽くして”治療抵抗性となったB-ALLに対するCD19 CAR-Tが、進行期固形がんに対するチェックポイント阻害剤が患者のみならず社会全体の希望となったように、多剤抵抗性となった骨髄腫患者にとって、“まだ治療選択肢がある”と示された事実は、重要な意義がある。

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D-Indexに基づくFNの抗真菌治療/日本がんサポーティブケア学会

 好中球減少期間の長い高リスク治療では、広域抗菌薬不応患者の発熱性好中球減少症(FN)に経験的抗真菌治療(EAT:empiric antifungal therapy)が推奨されるものの、過剰治療の問題が残る。そのため、バイオマーカーや画像所見に基づく抗真菌薬の先制治療が試みられるようになった。しかし、先制治療では深在性真菌症の増加が懸念されている。そこで好中球減少の深さと持続期間を面積で評価するD-Indexによる早期抗真菌治療(DET:D-index guided early antifungal therapy)を考案し、EATとの無作為比較試験(CEDMIC試験)を実施した。その結果を第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会において自治医科大学附属さいたま医療センターの木村 俊一氏が発表した。D-Indexに基づく早期抗真菌治療は経験的治療と比べて抗真菌薬の使用を減少 対象:好中球減少期間(500/μL未満)が7日以上と予想される化学療法や造血幹細胞移植を受ける造血器腫瘍患者・試験群(DET):累積のD-Index(C-Index)5500未満の場合、真菌バイオマーカーで異常がみられたらミカファンギン150mg/日開始。C-Index5500以上の場合、FNが持続または再燃した時点で検査結果に関わらずミカファンギン150mg/日を開始・対照群(EAT):広域抗菌薬開始から4日目以降にFNが持続・再発した時点でミカファンギン150mg/日を開始・評価項目:[主要評価項目]Proven/Probable真菌感染症の発症、[副次評価項目]42、84日時点での全生存率、ミカファンギンの投与頻度、ミカファンギンの有効性評価 D-Indexによる早期抗真菌治療と経験的抗真菌治療を比較した主な結果は以下のとおり。・423例が登録され413例がITT解析対象となった(DET群212例、EAT群201例)。・Proven/Probable真菌感染症の発症はDET群0.5%(1/212例)、EAT群2.5%(5/201例)とDET群のEAT群に対する非劣性が証明された。・DET群とEAT群の全生存率は、42日目で98.6%対98.0%、84日目で96.2%対96.4%と両群間で差と認めなかった。・ミカファンギン投与症例はDET群で32.5%、EAT群では60.2%とDET群で有意に少なかった(p<0.001)。・ミカファンギンの有効性はDET群で68.7%、EAT群では79.6%とEAT群で良好な傾向がみられた。高リスク群に限定すると69.1%対78%で統計的な有意差は認めなかった(p=0.30)。 D-Indexに基づく早期抗真菌治療(DET)は経験的治療(EAT)と比べ、死亡や真菌症発症を増やすことなく、抗真菌薬の使用を減少させた。

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selinexorが3クラス抵抗性多発性骨髄腫に有望/NEJM

 現在使用可能な治療に抵抗性の骨髄腫患者において、first-in-classのエクスポーチン1(XPO1)阻害薬selinexorと低用量デキサメタゾンの併用療法は、約4分の1の患者に客観的奏効をもたらすことが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のAjai Chari氏らが行ったSTORM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。selinexorは、核外輸送複合体の選択的阻害薬であり、骨髄腫で過剰発現しているXPO1を阻害して腫瘍抑制蛋白の核内蓄積と活性化を促進し、核内因子κBを阻害するとともに、腫瘍蛋白メッセンジャーRNA翻訳を抑制する。selinexorは、現在の治療選択肢に抵抗性の骨髄腫患者において、新規治療薬となる可能性が示唆されている。selinexor+デキサメタゾンを週2回経口投与  本研究は、欧米の60施設が参加した多施設共同非盲検第IIb相試験であり、2015年5月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Karyopharm Therapeuticsの助成による)。 対象は、骨髄腫に罹患し、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、ダラツムマブ、アルキル化薬による治療歴があり、1種以上のプロテアソーム阻害薬、1種以上の免疫調節薬、ダラツムマブに抵抗性(3クラス抵抗性)を示す患者であった。 被験者は、selinexor(80mg)+デキサメタゾン(20mg)を週2回経口投与された。治療は、病勢進行、死亡、毒性による治療中止となるまで継続された。 主要評価項目は全奏効(部分奏効以上と定義)とし、独立評価委員会による判定が行われた。副次評価項目は、奏効期間、臨床的利益(最小奏効以上と定義)、無増悪生存期間、全生存期間とした。selinexor+デキサメタゾンの全奏効率26%、CAR-T後再発例で部分奏効達成 122例を修正intention-to-treat集団、123例を安全性解析集団とした。年齢中央値は65.2歳(範囲40~86)、男性が58%で、前治療レジメン数中央値は7(3~18)であった。患者の53%が、高リスクの細胞遺伝学的異常を有していた。 selinexor+デキサメタゾン併用療法による部分奏効以上は、32例(26%、95%信頼区間[CI]:19~35)で観察された。内訳は、厳格な完全奏効が2例(2%)で達成され、最良部分奏効が6例(5%)、部分奏効が24例(20%)であった。CAR-T療法施行後に再発した2例はいずれも部分奏効を達成した。最小奏効は16例(13%)で、48例(39%)は安定であったのに対し、病勢進行または評価不能は26例(21%)であった。最小奏効以上は48例(39%)だった。 selinexor+デキサメタゾン併用療法で部分奏効以上に達するまでの期間中央値は4.1週、奏効期間中央値は4.4ヵ月であった。また、無増悪生存期間中央値は3.7ヵ月、全生存期間中央値は8.6ヵ月であった。部分奏効以上または最小奏効以上の患者の全生存期間中央値は15.6ヵ月だった。 selinexor+デキサメタゾン併用療法の頻度の高い非血液学的有害事象として、疲労(73%)、悪心(72%)、食欲不振(56%)が認められたが、Grade1または2が多かった。血液学的有害事象では、血小板減少(73%)の頻度が高かった(Grade3は25%、Grade4は33%)。血小板減少に起因するGrade3以上の出血イベントが、6例にみられた。67%に貧血が認められた。 著者は、「この試験結果は、いくつかの理由で注目に値する」とし、(1)腎機能低下、血小板減少、好中球減少がみられる患者も登録可、(2)対象は、中央値で10種の抗骨髄腫薬を含む中央値7レジメンという強力な前治療歴があり、(3)骨髄腫の進行が急激で、スクリーニングから初回治療までの12日間に疾病負荷が22%も増加した患者である点などを挙げている。

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がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。英国の大規模臨床データベースを用い、がんサバイバー約10万人について解析 研究グループは、英国の入院やがん登録のデータベースと連携しているUK Clinical Practice Research Datalink(CPRD GOLD)を用い、一般的な20種類のがんについて診断後12ヵ月時点で生存している18歳以上のサバイバー、ならびに年齢、性別などをマッチさせたがんの既往がない対照群のコホートを特定し、Coxモデルによりさまざまな心血管疾患のリスクを比較した。 交互作用を適合させ効果修正を行い、フレキシブル・パラメトリック生存モデルで経時的な過剰絶対リスクを推定した。 1990年1月1日から2015年12月31日の期間で、1年以上の追跡調査を受け対象がんの診断を受けた患者12万6,120例と、対照群の患者63万144例が特定され、除外基準に合致した症例を除き、がんサバイバー群10万8,215例と対照群52万3,541例が主要解析に組み込まれた。血液、食道、肺、腎、卵巣等のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加 静脈血栓塞栓症のリスクは、対照群と比較して、20種類のがんのうち18種のサバイバー群で増加した。補正ハザード比(aHR)の範囲は、前立腺がん患者の1.72(95%信頼区間[CI]:1.57~1.89)から、膵臓がん患者の9.72(95%CI:5.50~17.18)にわたっていた。aHRは経時的に減少したものの、診断後5年超は増加が続いていた。 20種類のがんのうち、10種のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加することが確認された。それぞれのaHR(95%CI)は、非ホジキンリンパ腫1.94(1.66~2.25)、白血病1.77(1.50~2.09)、多発性骨髄腫3.29(2.59~4.18)、食道がん1.96(1.46~2.64)、肺がん1.82(1.52~2.17)、腎がん1.73(1.38~2.17)、卵巣がん1.59(1.19~2.12)などであった。 不整脈、心膜炎、冠動脈疾患、脳卒中、心臓弁膜症のリスク増加は、血液悪性腫瘍などで同様に確認された。心不全または心筋症、および静脈血栓塞栓症のHRは、心血管疾患の既往歴がない患者および若年患者において高かった。しかし、過剰絶対リスクは、年齢の上昇に伴い徐々に増加し、これらのリスク増加は化学療法を受けた患者において最も顕著であった。 なお、著者は今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量に関する情報がないこと、がんの再発、家族の心血管疾患歴、人種、食事やアルコール消費量などの重要な情報に関する信頼できるデータがなかったことなどを指摘している。

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慈善団体の患者支援プログラム、経済的困窮者の多くが対象外/JAMA

 米国の大規模な独立慈善団体が運営する疾患別患者支援プログラム(274件)の97%が、無保険患者を対象外としており、また、プログラムがカバーしている医薬品の年間薬剤費はカバー対象外の医薬品と比べ3倍以上であることが、同国ジョンズホプキンス大学のSo-Yeon Kang氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。米国の独立慈善団体による患者支援プログラムは、高額な処方薬への患者アクセスを改善するが、最近の連邦政府の調査では、薬剤費の増大や反キックバック法違反の疑いが生じている。また、これらプログラムの構成や患者の適格基準、カバーされる医薬品の詳細はほとんど知られていないという。6つの慈善団体のプログラムの記述的横断研究 研究グループは、米国の独立慈善団体による患者支援プログラムの適格基準と、プログラムによってカバーされている医薬品の詳細を調査する目的で、記述的横断研究を行った(Arnold Venturesの助成による)。 調査対象は、2018年において、メディケア加入者に限定せずに患者支援プログラムを提供する、6つの大規模な独立慈善団体(CancerCare Co-Payment Assistance Foundation、Good Days、The HealthWell Foundation、The PAN Foundation、The Patient Advocate Foundation Co-Pay Relief、Patient Services Incorporated)であり、274件の疾患別の患者支援プログラムを提供していた。 医薬品を同定するために、Medicare Part D Drug Spending Dashboardで報告されるあらゆる使用医薬品と、2016年のメディケア受給者1人当たりの支出額が1万ドル超であったあらゆる特許切れ先発医薬品についてサブグループ解析を行った。 主要アウトカムは、患者支援プログラムの特性(支援のタイプ[支払金の補助、健康保険料補助]、健康保険要件の有無、所得の適格条件など)とした。副次アウトカムは、患者支援プログラムがカバーしている医薬品のコスト(薬剤費)、およびカバーしている高額な特許切れ先発医薬品vs.代用可能な後発医薬品の比較などであった。プログラム対象医薬品の年間薬剤費中央値は1,157ドル、対象外医薬品は367ドル 解析に含まれた6つの独立慈善団体の2017年の収入総額は、2,400万~5億3,200万ドルであった。また、患者支援プログラムの支出総額は2,400万~3億5,300万ドルであり、収入に占める支出の割合は平均86%であった。 これらの団体によって提供された274件の患者支援プログラムのうち、168件(61%)が支払金補助の提供のみを、9件(3%)が健康保険料補助の提供のみを行っており、90件(33%)はいずれか一方を選択可能であった。また、最も多かった保障対象の治療領域はがんまたはがん治療関連症状(113件[41%])と、遺伝性疾患/希少疾患(93件[34%])であった。 267件(97%)のプログラムが、適格基準として保険加入を求めていた(無保険の患者は対象外)。また、259件(94%)のプログラムが、所得(年収)要件として連邦貧困水準の400%(119件[43%]、個人の場合は4万8,560ドル、4人家族では10万400ドル)または500%(140件[51%]、6万700ドル、12万5,500ドル)を設けていた。 プログラム(123件)がカバーしている医薬品の年間受益者当たり薬事費の中央値は1,157ドル(IQR:247~5,609)と、カバー対象外の同薬剤費367ドル(100~1,500)の315%に相当し、高額であった。 特許切れの先発医薬品(薬剤費>1万ドル)は、平均3.1(SD 2.0)件の患者支援プログラムでカバーされていたのに対し、後発医薬品をカバーするプログラムは平均1.2(1.0)件であった。たとえば、ボルテゾミブの先発品をカバーするプログラムは8件であったのに対し、その後発品をカバーするプログラムは1件のみだった。 著者は「これらの知見により、プログラムのいくつかの特徴が、経済的に困窮した患者への有益性を制限し、高額な薬剤の使用を強化している可能性が示唆される」としている。

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循環器医もがんを診る時代~がん血栓症診療~/日本動脈硬化学会

 がん患者に起こる“がん関連VTE(Venous Thromboembolism、静脈血栓塞栓症)”というと、腫瘍科のトピックであり、循環器診療とはかけ離れた印象を抱く方は多いのではないだろうか? 2019年7月11~12日に開催された、第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会の日本腫瘍循環器病学会合同シンポジウム『がん関連血栓症の現状と未来』において、山下 侑吾氏(京都大学大学院医学研究科循環器内科)が「がん関連静脈血栓塞栓症の現状と課題~COMMAND VTE Registryより~」について講演し、循環器医らに対して、がん関連VTE診療の重要性を訴えた。なぜ循環器医にとって、がん関連VTEが重要なのか 循環器医は、虚血性心疾患、不整脈、および心不全などの循環器疾患を主に診療しているが、血栓症/塞栓症のような“血の固まる病気”への専門家として、わが国ではVTE診療における中心的な役割を担っている。VTEは循環器医にとって日常臨床で遭遇する機会の多い身近な疾患であり、山下氏は「VTE診療は循環器医にとって重要であるが、その中でもがん関連VTEの割合は高く、とくに重要である」と述べた。発症原因のはっきりしないVTEでは、がんに要注意! 「循環器医の立場としては、VTEの発症原因が不明で、なおかつVTEを再発するような患者では、後にがんが発見される可能性があり、日常臨床で経験する事もある」と述べた同氏は、VTE患者でのがん発見・発症割合1)を示し、VTEの原因としての“がん”の重要性を注意喚起した。さらに同氏は、所属する京都大学医学部附属病院で2010~2015年の5年間に、肺塞栓症やDVT(Deep Vein Thrombosis、深部静脈血栓症)の保険病名が付けられた診療科をまとめた資料を提示し、循環器内科を除外した場合には、産婦人科、呼吸器科、消化器科および血液内科などの腫瘍を多く扱う診療科でVTEの遭遇率が高かったことを説明した。 近年では、がん治療の進歩によりがんサバイバーが増加し、経過観察期間にVTEを発症する例が増えているという。がん患者と非がん患者でVTE発症率を調査した研究2)でも、がん患者のVTE発症率が経年的に増加している事が報告されており、VTE患者全体に占めるがん患者の割合は高く、循環器医にとって、「VTEの背景疾患として、がんは重要であり、日常臨床においては、循環器医と腫瘍医との連携・協調が何よりも重要」と同氏は強調した。がん関連VTEの日本の現状と課題 本病態が重要にも関わらず、現時点での日本における、がん関連VTEに関する報告は極めて少なく、その実態は不明点が多い状況であった。そこで同氏らは、国内29施設において急性症候性VTEと診断された3,027例を対象とした日本最大規模のVTEの多施設共同研究『COMMAND VTE Registry』を実施し、以下のような結果が明らかとなった。・活動性を有するがん患者は、VTE患者の中で23%(695例)存在した(がんの活動性:がん治療中[化学療法・放射線療法など]、がん手術が予定されている、他臓器への遠隔転移、終末期の状態を示す)。・がんの原発巣の内訳は、肺16.4%(114例)、大腸12.7%(88例)、造血器8.9%(62例)が多く、欧米では多い前立腺5.2%(36例)や乳房3.7%(26例)は比較的少数であった。・がん患者のVTE再発率は非常に高く、活動性を有するがん患者ではVTE診断後1年時点で11.8%再発し、なかでも遠隔転移を起こしている患者では22.1%と極めて高い再発率であった。・がん患者の総死亡率は極めて高く、とくに活動性を有するがん患者では49.6%がVTE診断後1年時点で亡くなっていた。・死亡した活動性を有するがん患者(464例)の死因は、がん死が81.7%(379例)で最多であったが、それに次いで、肺塞栓症4.3%(20例)、出血3.9%(18例)であった。 この結果を踏まえ、「再発率だけでなく、死亡率も高いがん関連VTE患者を、どこまでどのように介入するか、今後も解決しなければならない大きな問題である」とし、がん治療中のVTEマネジメントが腫瘍医および循環器医の双方にとって今後の課題であることを示した。 欧米でVTE治療に推奨されている低分子ヘパリンは、残念ながら日本では使用できず、ワルファリンやDOACが使用されている。しかし、ワルファリンは化学療法の薬物相互作用などによりINRの変動が激しく、用量コントロールにも難渋する。また、前述の研究の結果によると、活動性を有するがん患者ではワルファリンによる治療域達成度は低かった。このような患者に対し、VTE治療のガイドライン3)では抗凝固療法の長期継続を推奨しているが、「実際は中止率が高く、抗凝固療法の継続が難しい群であった」と現状との乖離について危惧し、「DOAC時代となった日本でも、がん関連VTEに対する最適な治療方針を探索する研究が必要であり、わが国から世界に向けた情報発信も期待される」と締めくくった。

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未治療骨髄腫に対するダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン併用療法に期待するモノ(解説:藤原弘氏)-1075

 新規治療薬開発が進み、QOLの改善と全生存率(OS)の延長が進む多発性骨髄腫(MM)だが、いまだに治癒(Cure)しない。そこで、次の治療戦略が微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)の達成から無増悪生存(PFS)の延長、その先に治癒を見据えるのは理にかなっている。Proteosome阻害剤(PIs)、iMIDsに加えて抗体製剤の登場が、その流れを加速させている。 最近、自己造血幹細胞移植適応のない未治療MMに対するダラツムマブ併用レナリドミド/デキサメタゾン(DLd)療法のLd療法に対する優位性を示す大規模な第III相臨床試験(MAIA試験)の結果が、Facon T.博士らのグループからNew England Journal of Medicine誌に掲載された(内容はすでに2018年、米国血液学会で報告されていたが)。その結果は、白血球減少と感染症リスクはあるが、ダラツムマブ併用で無増悪生存率(PFS)が有意差をもって延長し、CR+sCR達成率に加えて、Flow-cytometer法による微小残存病変陰性(105個細胞中1個以下)達成率も有意差をもって勝っていた。再発難治性(r/r)MMに対して、ダラツムマブ併用がPFS/OSの達成に優れていることはすでに他試験でも報告されている。この結果を受けて、本邦でもヤンセンファーマが未治療MMに対するDLd療法の適応追加をこの4月に申請しており、早晩、未治療MM治療にダラツムマブが使えるようになるだろう。 そして、このMAIA試験では両群間でOSに差がなかった。より強い治療強度で、total-cell-killを目指す治療戦略が必ずしも患者OSの改善に寄与しないことは、日々血液悪性腫瘍患者と向き合う中でわれわれが体感・共有している事実である。 いわゆるreal-world(日常診療)においては、未治療MM患者のおよそ2/3はさまざまな要因で移植適応がない。また、移植はしても再発抑制のために少なくとも数年は何らかの維持療法を続けている。移植ができてもできなくても、現実は、病勢を制御しOSの延長を目指して、MM増悪まで延々と何らかの治療を継続している状況にある。私自身も、移植適応のない未治療MM患者に対しては、ダラツムマブの保険適用の関係もあるが、外来でPIs+iMIDs+デキサメタゾンの3剤併用療法を開始し、治療効果を得て抗体治療を含む維持療法へ移行する方針で治療し、またおよそ対応できてはいる。 しかしながら、MAIA試験のこの後を含めた長期観察によって、より深い寛解の達成とPFSの延長が治癒へつながることが示されるのなら、より積極的にtherapy-offそして治癒を目指して自分の治療方針も再考すべきだろう。そのためには、MRDの評価基準の確立や臨床試験でのその意義の検証など課題もあるのだが、単純にDLd治療後すぐに再燃する例は次にどうしようか?とも思ってしまう。「リスクとベネフィットを考慮して」とは使い古された表現だが、主にフロントラインの病院で高齢患者様が大部分を占めるMM診療を行い、その主たる治療目標を患者QOLの維持とOSの延長に置いている私としては、もう少し、経過を見極めたいとも感じるのは、いささか“覇気”に欠けるだろうか。

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第9回 腰部の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第9回 腰部の痛み腰痛を訴える患者さんの外来受診は、よく見られます。誰もが一度や二度は経験する、なじみの痛みでもあります。「腰痛診療ガイドライン2019」によりますと、腰痛の定義は、痛みが体部後面の第12肋骨と臀部下端の間にあり、少なくとも1日以上継続する痛み、となっております。片側または両側の下肢に放散する痛みを伴う、あるいは伴わない場合も含まれます。中には生命を脅かす症例もあるため、迅速な診断と処置が必要となることもあります。今回は、この腰部の痛みを取り上げたいと思います。腰部の痛みは、大きく分けて急性腰痛・亜急性腰痛と慢性腰痛に分類されます。1)急性腰痛・亜急性腰痛発症から4週間未満の痛みを急性腰痛、4週間以上3ヵ月未満の場合は亜急性腰痛と言います。急性腰痛においては、感染性脊椎炎などの感染症も含まれますので気をつけなければなりません。また、高齢者に多い圧迫骨折には多発性骨髄腫や、悪性腫瘍の骨転移なども原因になることもありますので注意が必要です。通常の腰痛の原因としては、椎間板、椎間関節、腰椎を含むその周囲組織のさまざまな部位や腰背部の筋・筋膜に由来すると考えられ、そのものの局在性は不明確です。そのために、特異的な理学所見や画像所見も乏しいのが現状です。多くの腰痛は、3ヵ月経過する前に自然消失していきます。a)腰椎椎間関節性腰痛腰椎椎間関節性腰痛が全腰痛に占める頻度は、若年者で15%、高齢者で40%を占めております。高齢者に多いということは、椎間板が狭小になって前方部分が破綻し、椎間関節に過剰負担がかかり、変性することによって痛みが生じると考えられます。診断には、罹患関節に一致した傍脊柱部に限局した圧痛が認められます。腰椎を進展、捻転、後屈すると、痛みが増強することが多いと言われております。b)腰椎椎間板性腰痛腰椎椎間板性腰痛は、若年者から50歳までの若い年齢層で多くみられます。椎間板内に神経は存在しませんが、線維輪の断裂や椎間板の変性が生じると、椎間板内部のみならず、線維輪外層にまで神経線維が侵入してきます。線維輪に荷重がかかると、神経線維が刺激され、また、炎症症状などにより生じたサイトカインなどの関与によって痛みを感じると考えられております。この確定診断は、椎間板造影診断時に少量の造影剤を注入すると、疼痛が再現されることで得られます。座位や軽度の前屈によって椎間板内圧が増加すると、痛みが増強します。したがって、長時間の座位が取れないことが特徴です。2)慢性腰痛発症からの期間が3ヵ月以上に渡る場合、慢性腰痛と定義します。慢性腰痛の85%は、原因を明確にできない「非特異的腰痛」と言われるほど所見が乏しいと考えられます。椎間板性腰痛は、スポーツ選手や若年者では慢性腰痛の40%程度に関与しているとも言われております。慢性疼痛においては、筋肉への負荷のバランスが悪くなってきますし、筋肉の攣縮などによって、筋・筋膜性疼痛も生じてきます。長期間の疼痛によって精神的にも参ってきますと、身体を動かせないにことよって余計に痛みが増してきます。急性腰痛時に十分な治療を施し、疼痛が遷延しないようにすることが大切です。疼痛が長く持続すると慢性疼痛に移行し、その治療はますます難しくなって難治性慢性疼痛となります。そうなりますと、患者さんのみならず、医療者側も苦しむことになります。次回は下肢痛について述べます。1)腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版 日本整形外科学会/日本腰痛学会監修 p7 20192)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S144-145

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ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

 初発多発性骨髄腫の治療において、自家造血幹細胞移植の前後に、ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd)にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)を併用した薬物療法(D-VTd)を行うと、VTd単独と比較して、厳格な完全奏効(sCR)の割合が有意に改善し、毒性は許容範囲内であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施したCASSIOPEIA試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月3日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするIgG1κモノクローナル抗体。多発性骨髄腫の第III相試験において、ボルテゾミブ+デキサメタゾン、レナリドミド+デキサメタゾン、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾンに、それぞれダラツムマブを併用すると、病勢進行または死亡のリスクが、少なくとも50%低減し、微小残存病変陰性の割合が3倍になることが確認されている。ダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に割り付け 本研究は、欧州の111施設が参加した2部構成(寛解導入療法、維持療法)の非盲検無作為化第III相試験であり、2015年9月22日~2017年8月1日の期間に患者登録が行われた(Intergroupe Francophone du Myelomeと、Dutch-Belgian Cooperative Trial Group for Hematology Oncologyの助成による)。今回は、寛解導入療法の結果が報告された。 対象は、年齢18~65歳、全身状態(ECOG PS)0~2であり、移植適応の初発多発性骨髄腫の患者であった。被験者は、自家造血幹細胞移植前の寛解導入療法として4サイクル、および移植後の地固め療法として2サイクルのダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に無作為に割り付けられた。 第1部の主要評価項目は、移植後100日のsCRとした。 第2部として、移植後100日時に部分奏効(PR)以上を達成した患者が、ダラツムマブを8週ごとに投与する群または経過観察群に無作為に割り付けられ、病勢進行または最長2年までの治療が行われた。ダラツムマブ併用のD-VTd群がsCR+CR、微小残存病変陰性率、PFS期間も良好 1,085例が登録され、ダラツムマブを併用したD-VTd群に543例(年齢中央値59.0歳[範囲22~65]、男性58.2%)、VTd群には542例(58.0歳[26~65]、58.9%)が割り付けられた。全体の診断から無作為化までの期間中央値は0.9ヵ月(0.2~22.9)、フォローアップ期間中央値は18.8ヵ月(0.0~32.2)だった。 移植後100日時のsCRの発生率は、ダラツムマブ併用のD-VTd群が29%(157/543例)と、VTd群の20%(110/542例)に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.60、95%信頼区間[CI]:1.21~2.12、p=0.0010)。 完全奏効(CR)以上(sCR+CR)の達成率(39% vs.26%、p<0.0001)および微小残存病変陰性率(64% vs.44%、p<0.0001)も、ダラツムマブ併用のD-VTd群がVTd群に比べ有意に優れた。また、初回の無作為化からの無増悪生存(PFS)期間中央値は、両群とも未到達であったが、D-VTd群がVTd群に比べ有意に改善された(HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、p<0.0001)。 D-VTd群の14例、VTd群の32例が死亡した。2回目の無作為化の有無にかかわらず、初回の無作為化からのOS期間中央値には両群とも到達していなかったが、有意な差が認められた(HR:0.43、95%CI:0.23~0.80)。このデータは未成熟であり、長期のフォローアップを継続中である。 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(D-VTd群28% vs.VTd群15%)、リンパ球減少(17% vs.10%)、口内炎(13% vs.16%)であった。ダラツムマブ関連のinfusion reactionが190例(35%)に認められ、このうちGrade3は17例(3%)、Grade4は2例(<1%)だった。 著者は、「CASSIOPEIAは、移植適応の初発多発性骨髄腫患者において、ダラツムマブ+標準治療の臨床的有益性を示した初めての試験である。これらのデータにより、ダラツムマブベースの併用療法は、多発性骨髄腫の疾患スペクトラム全体において治療の有益性を示したことになる」としている。

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ダラツムマブ追加で、多発性骨髄腫の無増悪生存が改善/NEJM

 自家造血幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療であるレナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブを併用すると、標準治療単独に比べ病勢進行または死亡のリスクが有意に低減することが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らが行ったMAIA試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年5月30日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体であり、直接的な抗腫瘍活性と免疫調節活性を有する。多くの治療歴のある患者への単剤による有効性や、新規診断および再発・難治例への標準治療との併用による有効性が報告されている。多発性骨髄腫で年齢や副作用リスクで移植が適応外の患者が対象 本研究は、北米、欧州、中東、アジア太平洋地域の14ヵ国176施設が参加する非盲検無作為化第III相試験であり、2015年3月~2017年1月に患者登録が行われた(Janssen Research and Developmentの助成による)。 対象は、全身状態(ECOG PS)が0~2の新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または許容できない副作用が発現する可能性が高い病態の併存により、大量化学療法+自家造血幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(ダラツムマブ群)またはレナリドミド+デキサメタゾン(対照群)を投与する群に無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行または許容できない副作用が発現するまで継続することとした。 主要評価項目は、無増悪生存(無作為化から病勢進行または死亡までの期間)であった。ダラツムマブ群は無増悪生存が44%改善、CR以上が約2倍、MRD陰性が約3倍に 737例が登録され、ダラツムマブ群に368例、対照群には369例が割り付けられた。全体の年齢中央値は73歳(範囲:45~90)で、65歳未満は8例(両群4例[1.1%]ずつ)のみで、75歳以上が321例(160例[43.5%]、161例[43.6%])含まれた。診断からの経過期間中央値は0.9ヵ月(範囲:0~14.5)だった。 追跡期間中央値28.0ヵ月の時点で、240例が病勢進行または死亡した(ダラツムマブ群97/368例[26.4%]、対照群143/369例[38.8%])。30ヵ月時の無増悪生存率は、ダラツムマブ群が70.6%(95%信頼区間[CI]:65.0~75.4)、対照群は55.6%(49.5~61.3)であり、無増悪生存期間中央値はそれぞれ未到達、31.9ヵ月(28.9~未到達)であった。病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.56(0.43~0.73)であり、ダラツムマブ群で有意に優れた(p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(CR+厳格な完全奏効[sCR])の割合は、ダラツムマブ群が47.6%と、対照群の24.9%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。また、微小残存病変(MRD)が閾値(白血球105個当たり腫瘍細胞1個)を下回った患者の割合は、ダラツムマブ群が24.2%であり、対照群の7.3%に比し有意に高かった(p<0.001)。 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(ダラツムマブ群50.0% vs.対照群35.3%)、貧血(11.8% vs.19.7%)、リンパ球減少(15.1% vs.10.7%)、肺炎(13.7% vs.7.9%)であった。 著者は、「これらの知見は、多発性骨髄腫の患者集団全体におけるダラツムマブベースのレジメンの使用を支持する臨床試験のリストに加えられる可能性がある」としている。「ダラツムマブ」関連記事ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

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骨髄腫治療におけるCAR-T細胞療法が示す可能性とその問題点(解説:藤原弘氏)-1055

 この令和元年5月初めに、NCIのKochenderfer博士等のグループからB-cell maturation antigen(BCMA)を標的分子として難治性多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞の1つであるbb2121を用いた第I相臨床試験の有望な観察結果がNew England Journal of Medicine誌に報告された。 bb2121はBCMAを認識するマウス抗体の短鎖・長鎖可変領域を一本鎖とした細胞外ドメイン(scFv)と4-1BBとCD3ζを直列につないだ細胞内ドメインを持つ第2世代CAR-T細胞である。CD19 CAR-T細胞での経験と同様に、CD28型第2世代CAR-T細胞(Brudno JN, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2267-2280. )に比較して、輸注細胞の体内生存期間の延長傾向が得られている。このCAR-T細胞はBlueBird Bio/Celgeneが開発を進め、2017年にはFDAのBreakthrough Therapy designationを受けるなど、難治性骨髄腫に対する画期的な治療薬として期待されてきた経緯がある。日本国内でも、Celgeneが第II相試験(JapicCTI-184195)を計画している。 この論文も含めて、bb2121が抱える問題点は、その“瞬発力の高い抗腫瘍効果”に比べて、“再発率が高いこと”である。現在、世界で行われている骨髄腫に対するCAR-T細胞療法臨床試験の8割以上がBCMAを治療標的分子としているが、再発を抑制する、すなわち長期的な抗腫瘍効果を得るという視点に立った時、CAR遺伝子構造の改良や分子標的薬との併用といった方法でそれが達成できるのか、あるいはBCMA以外により適した標的抗原を探す必要はないのか、など課題は今も未解決である。米国・中国を中心に、さまざまな抗BCMA CAR-T細胞の開発が進められている現状、それ自体が、難治性骨髄腫に対する抗BCMA CAR-T細胞療法が、現時点では“決め手に欠ける”状況にあると感じさせる。

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再発/難治性多発性骨髄腫でCAR-T療法が有望/NEJM

 再発または難治性多発性骨髄腫患者において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのNoopur Raje氏らが、bb2121の第I相臨床試験(CRB-401試験)の結果を報告した。bb2121は、前臨床試験において、多発性骨髄腫の治療薬として有望であることが示されていた。NEJM誌2019年5月2日号掲載の報告。bb2121の安全性を33例で評価 研究グループは、2016年1月31日~2018年4月30日の期間に、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者を登録した。 患者の末梢血単核細胞を採取してCAR-T細胞bb2121を作製し、用量漸増期にはbb2121をCAR-T細胞数として50×106個、150×106個、450×106個または800×106個を、用量拡大期には150×106個、450×106個を単回注入した。主要評価項目は、安全性である。 36例が登録された。全例でbb2121の作製に成功したが、3例はbb2121注入前に疾患進行のため試験中止となり、33例がbb2121の注入を受けた。データカットオフ日は、最後の注入日から6.2ヵ月後であった。bb2121のGrade3以上の有害事象の発現率は97%、ORRは85%、CRは45% bb2121の注入を受けた33例中32例(97%)にGrade3以上の有害事象が発現した。Grade3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは血液毒性で、発現率は好中球減少症85%、白血球減少症58%、貧血45%、血小板減少症45%などであった。25例(76%)にサイトカイン放出症候群が認められ、Grade1/2が23例(70%)、Grade3が2例(6%)であった。神経毒性は14例(42%)に発現し、うち13例(39%)はGrade1/2で、1例(3%)は可逆的なGrade4であった。 bb2121の奏効率(ORR)は85%で、完全奏効(CR/sCR)は15例(45%)で認められた。完全奏効が得られた15例のうち6例は再発した。無増悪生存期間中央値は、11.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.2~17.8)であった。 奏効(部分奏効以上)が得られ微小残存腫瘍(MRD)を評価しえた16例全例が、MRD陰性(有核細胞≦10-4個)であった。CAR-T細胞の増加は、奏効と関連しており、注入1年後まで持続していることが確認された。■「CAR-T療法」関連記事CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

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第5回 全身痛と関連痛【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第5回 全身痛と関連痛痛みは病気の兆候として最も多く、誰もが苦しむ原因となっています。そのために、患者さんは病院や診療所などを受診されます。血圧、脈拍、呼吸数、体温と共に、痛みは「第5のバイタルサイン」とも呼ばれております。近年、全身に痛みを訴えられる患者さんが増えておられます。全身痛と呼んでおりますが比較的若い患者さんが多くなってきたように感じられます。今回は、この全身痛を取り上げ、付随して関連痛を説明したいと思います。全身痛とは全身的に痛みを訴えられる患者さんの痛みを「全身痛」と呼んでいます。いろいろな部位に痛みを訴えられる患者さんや、全身にわたって痛みを訴えられる患者さんなど、その形態はさまざまです。また、重篤な身体疾患を持っていることもあるので注意が必要です。その中で全身痛から発見される疾患としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性強皮症、リウマチ性多発筋痛症などの膠原病があります。甲状腺機能低下症や有痛性糖尿病性ニューロパチーなどの内分泌疾患もあります。そのほか、ポストポリオ症候群や横紋筋融解症などの神経筋疾患も認められます。横紋筋融解症は、脂質異常症治療薬や抗神経病薬などによる薬剤性疾患によっても生じます。そして、悪性腫瘍では多発性骨髄腫、多発性転移、何より増して全身の骨関節痛、腰背部痛などが生じます。インフルエンザ、ウイルス性肝炎では全身の関節痛や筋肉痛、神経痛がみられます。うつ病、身体表現性疼痛(疼痛性障害、身体化障害など)、自律神経失調症などの精神・神経疾患でも全身痛を訴えます。とくにうつ病では、痛みの部位が変動するのが特徴です。その他、難治性疼痛疾患としての線維筋痛症(FM)(図1)や慢性疲労症候群(CFS)も現在、話題になっています。FMの診断では、(1)広範囲(右半身/左半身、上半身/下半身、体軸という身体の真ん中)の痛みが3ヵ月以上続いていること、(2)図1に示した18ヵ所(圧痛点といいます)を指で押して、11ヵ所以上で痛むことが条件となります。図1 FMの診断における18ヵ所の圧痛点画像を拡大する関連痛とは表層筋膜、アキレス腱、前脛骨筋腱、表在関節、靭帯、脛骨のような表在性の骨などの痛みは、局在性の痛みとして感じます。これに対してより深い部位にある腱、関節、骨などや筋肉内にあるような組織からの痛みは、遠く隔たった皮膚に投射されます。たとえば、上部胸椎の骨膜に刺激を受けた場合には、肩の上部にびまん性の痛みを感じます。また、内臓痛には関連痛が伴います。内臓痛そのものの局在性は不明確ですが、「関連痛」といって、同じ脊髄節支配の皮膚に投射されて痛む部位が明確に示されます。そして、この皮膚におきましては、疼痛過敏や異常知覚を伴ったり、筋肉の緊張、自律神経の異常興奮がみられることもあります(図2)。図2 内臓痛に伴い現れる関連痛の部位画像を拡大するいずれも痛みの部位と性質、随伴症状や検査所見などによって鑑別診断します。そして原疾患が疑われるようであれば、その治療を最重要として、それぞれの専門医に紹介します。原疾患が治癒しても痛みが持続する場合やとくに原疾患がない場合には、痛み治療が必要となります。次回は頭・頸部痛を取り上げます。1)花岡一雄ほか監修.日本医師会雑誌. 2014;143:120-121.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.20-38.

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皮膚そう痒症、関連がん種の違いに人種が影響

 皮膚そう痒症とがんの関連は知られているが、皮膚そう痒症と関連があるがん種についてのデータは限られている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のValerie A. Larson氏らの研究の結果によると、皮膚そう痒症は肝臓、皮膚、造血器系の悪性腫瘍と最も強く関連していることが示された。ただし今回の研究は横断研究のため、皮膚そう痒症と悪性腫瘍における時間的制約があり、また単一施設で行われた研究であることに留意が必要だとしている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年9月11日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚そう痒症とさまざまな種類のがんとの関連、ならびに人種による関連の違いについて調べ検討を行った。 2013~17年にジョンズ・ホプキンス・ヘルス・システムで診察を受けた18歳以上の患者を対象に横断研究を実施し、皮膚そう痒症患者と非皮膚そう痒症患者を比較するとともに人種別の層別解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は第3次医療センターの皮膚そう痒症患者1万6,925例だった。・皮膚そう痒症の患者は非皮膚そう痒症患者と比較し、悪性腫瘍を合併していることが多かった(オッズ比[OR]:5.76、95%信頼区間[CI]:5.53~6.00)。・皮膚そう痒症との関連が最も強かったのは、肝がん、胆嚢および胆管がん、造血器腫瘍および皮膚がんであった。・人種別では、白人と比較して黒人の皮膚そう痒症患者は、軟部組織、皮膚および血液の悪性腫瘍を有している頻度が高かった。・一方、白人の皮膚そう痒症患者は、肝臓、呼吸器、消化管および婦人科の悪性腫瘍が多かった。

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ASCO2018レポート 乳がん-2

レポーター紹介高齢者におけるトラスツズマブ単独治療の意義:RESPECT試験高齢のHER2陽性乳がん患者に対して術後補助療法として、トラスツズマブ単独または化学療法と併用した群とで比較した本邦からの無作為化第III相試験である。これは名古屋大学の澤木 正孝先生がPIとなって進めていた試験である。一般的に無作為化比較試験の対象から除外されている70歳以上(80歳以下)の方を対象としている点が特筆すべきポイントである。PSにもよるが高齢者ではやや化学療法を行いにくい、しかしHER2陽性乳がんは予後不良なためできるだけ治療は行いたいという臨床上のジレンマがある。もしトラスツズマブ単独でも化学療法併用と同等の効果があれば、わざわざ毒性の高い治療を選択しなくてもいいのではないかという思いは皆持っているかも知れない。また高齢化社会がますます進んでいく中で、70歳以上の割合は明らかに増加していくため、このような試験の立案はとても重要にみえる。本試験は優越性試験でも非劣性試験でもなく、主要評価項目の優劣の判定域を臨床医のアンケート結果に基づいて設定したという点もユニークである。統計学的有意性=臨床的有用性ではないことはどのような試験であっても理解しておかなければならないが、本試験ではまさに臨床上の実を取ったという訳である。計275例の患者が割り付けされ、StageIが43.6%、StageIIAが41.7%、リンパ節転移陰性が78.5%と比較的早期がんが多くを占めていた。HR陽性は45.9%とやや少なかった。3年のDFSはH+CT94.8%に対してH単独89.2%で有意差はなかった(HR:1.42、0.68~2.95、p=0.35)。いずれの群もイベント数が少なく予後良好であった。H単独でも十分な治療効果があったのか、もともと予後が良かったのかは明らかではないが、HER2陽性乳がんの性質を考えると、H単独でも高齢者において比較的良い予後改善効果があったというべきだろうか。QOLに関しては術後1年ではHのほうが良いが3年では差がなくなっていた。最近注目されているDe-escalationという考え方からすると非常に良い結果だったとは言える。PSの良い70代は、本来さらに生存が期待できるので、3年より長期の経過も知りたいところである。QOLは化学療法レジメンによっても多少異なる可能性があり、近年では3cm以下のn0では、個人的にはPTX+HER12サイクルのみのレジメンも積極的に用いていて、しびれがなければ高齢者でも比較的使いやすい印象がある。論文化されるのを待ちたいが、少なくとも早期HER2陽性乳がんの一部ではHRの状況にかかわらず、H単独のオプションを提示してもよいだろう。アントラサイクリンとタキサンの順序は重要か?局所進行HER2陰性乳がんに対してAとTの順序の違いを比較する第II相試験で、NeoSAMBA試験と呼ばれる。ブラジルからの報告である。FAC(500/50/500)3サイクルおよびドセタキセル(100)3サイクルを、A先行とT先行で比較するため118例の患者が無作為に割り付けられた。HR陽性が70%以上であった。結果は、中断、輸血、G使用は同等であったが、減量はT先行で少なかった。Grade3以上の有害事象は、T先行で急性過敏反応が多く、A先行で高血圧、感染、筋関節痛が多かった。pCRはT先行で高く、DFS(HR:0.34、1.8~0.64、p<0.001)、OS(HR:0.33、0.16~0.69、p=0.002)ともにT先行で良好であった。本試験は単施設の第II相試験であり、局所進行がんに限定されている。しかし、薬剤の送達やpCR率は、過去の試験でも一貫してT先行で良好であり、やはりT先行を術前術後の化学療法の標準と考えたほうが良さそうである。ただし、経験上注意点が1つある。増殖率のきわめて高いTNBCでは、ときにタキサンでまったく効果がなく、治療中に明らかな増大を示すものがある。そのため、T開始から1~2サイクルでそのような傾向がみられたら、ちゅうちょせずにAに変更することが勧められる。DC(ドセタキセル75/シクロホスファミド600)の有用性ドイツから、HER2陰性乳がんにおける2つの第III試験であるWSG Plan B試験(ECx4-Dx4 vs.DCx6)とSUCCESS C試験(FECx3-Dx3 vs.DCx6)の統合解析の結果が報告された。Aを含む群2,944例、DC群2,979例と大規模である。中央観察期間62ヵ月でDFSにまったく差はなかった。サブタイプ別にみても、Luminal A-like、Luminal B-like、Triple negativeともにまったく差は認められなかった。ただし、pN2/pN3ではAを含む群でDFSは良好であった(HR:0.69、0.48~0.98、p=0.04)。SABCS2016の報告で、DBCG07-READ試験(ECx3-Dx3 vs. DCx6)の結果を紹介したが、一貫したデータである。したがって、pN2/pN3以外では、もはやAは不要かもしれない。また、以前から述べていることだが、乳がん術後補助療法において、4サイクル以上行って優越性を示しているレジメンは今のところみられず、DCは4サイクルで十分なのではないかと考えている。6サイクルのTCは毒性の面からやはり相当大変だと思われる。パクリタキセル類似の微小管重合促進作用を持つutideloneの有用性アントラサイクリンとタキサン不応性の転移性乳がんに対してカペシタビン(CAP)のみとutidelone(UTD1)を追加した群を比較した中国における第III相試験で、OSの結果が報告された。utideloneはepothiloneのアナログで、微小管を安定させ、血管新生を阻害する薬剤である。UTD1+CAPがCAP単独に比べてPFS、ORRがを改善していることはすでに報告されている。対象としては化学療法レジメンが4つまでと規定している。UTD1+CAPではCAPは1,000mg/m2(CAPのみの群では1,250)であり、UTD1は30mg2を最初の5日間ivを行い3週を1サイクルとしていて、患者は2:1に割り付けられている(CAP+UTD1 270例、CAP 135例)。PFSはUTD1+CAPで著明に改善しており(HR:0.47、0.37~0.59、p<0.0001)、OSもUTD1+CAPで良好であった(HR:0.72、0.57~0.93、p<0.0093)。安全性に関してはグレード3以上の末梢神経障害の割合がUTD1+CAPで25。1%と高い(CAP0.8%)。すでにFDAで認可されているixabepiloneでは、治療終了後6週間で末梢神経障害は改善しているようだが、UTD1においてはどうだろうか。また、安全性プロファイルも限られた情報しか提示されていなかったため、もう少し詳細をみてみたい。しかし、これだけ少数例の検討にもかかわらず明確にOSに差が出ていたため紹介することとした。今後同薬剤がどのように使われていくのか見守りたい。未発症BRCA保有者における乳房MRIの重要性未発症のBRCA変異保有者に対して、乳房MRIによるサーベイランスがリスク低減手術に代わるオプションとなりうるかを検討した試験(トロントMRIスクリーニング試験)である。1997年7月~2009年6月までに乳がんや卵巣がん未発症のBRCA変異保有者380例が登録され、年1回のマンモグラフィとMRIが行われた。研究中40例(41腫瘍)に乳がんが発見された(BRCA1/2各20例、年齢中央値48[32~68]歳)。18例は以前に卵管・卵巣摘出術が行われていた。がん診断までの期間中央値は14(8~19)年であり、脱落例はなかった。発見契機はMRI 38例、マンモグラフィ6例、中間期1例でありTステージは大半が1cm以内の発見であった(2cm以上は1例のみ)。n+は4例に認められた。化学療法は13例に行われた。遠隔再発による死亡は2例、他がんによる死亡が4例(自殺1例、卵巣がん1例、腹膜がん2例)で、遠隔転移を来した2例の腫瘍の特徴はBRCA1/3cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n1、およびBRCA2/0.7cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n0であった。カプラン・マイヤー法による10年間の乳がん特異的生存率は94.6%と良好であり、乳房MRIスクリーニングはリスク低減手術に代わる重要なオプションであることが証明されたと結んでいる。この研究は、未発症のBRCA1/2保有者に今後の対策について話し合う際に非常に貴重な資料となる。Li-Fraumeni症候群における全身MRIによるがん早期発見の評価:LIFSCREEN試験フランスからの報告である。乳がんの約1%に認められることが知られているLi-Fraumeni症候群(TP53胚細胞変異)では、小児期からさまざまな悪性腫瘍を発症しやすく、有効なスクリーニングの手段が必要である。がん発症リスク上昇の懸念から被曝は極力避けたいため、以前から全身MRIの有用性が報告されているが、本研究は国を挙げての無作為化比較試験であり、実に素晴らしいと言わざるを得ない。アームAは身体所見、脳MRI、腹部-骨盤超音波検査、乳房MRI+乳房超音波、血算であり、アームBはアームAの検査に全身MRI(拡散強調画像)を加えたものである。計105例が無作為に割り付けられ、18歳以上が80%以上、女性が70%以上を占め、家族歴のない患者が約半数であった。少なくとも3年以上の経過観察が行われた。全身MRIでは肺がん3例、脈絡叢がん1例(肺転移)、副腎皮質がん1例(超音波でも同定)、乳がん3例(乳房MRIでも同定)、脊髄グリオーマ1例が発見され、一方、骨髄腫1例、顎の骨肉腫1例、乳がん1例が発見されなかった。3年という短期間では両群でOSに差はなかった。全身MRIではとくに肺がんの発見率が良いようである。フランスでは、本試験の結果を基に、全身MRIをスクリーニング手段としてガイドラインに追加している。しかし多くの放射線科医が全身MRIの読影に慣れていないという大きな問題が存在する。また、全身MRIのプロトコールはさまざまであり、放射線科医は見逃しを少しでも減らし疾患の鑑別をしたいがために、どうしても長い撮像時間のプロトコールを組みたがるが、腫瘍があることが前提の精密検査ではなくスクリーニングであることを十分認識し、受診者負担、撮影装置の占有時間を少しでも減らすため撮像時間を可能な限り短縮したいものである。本報告では具体的な撮像法がわからなかったため、論文化された時点で撮像法の詳細を確認したい。

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