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透析歴が短いほど食生活にストレスを感じる!? バイエル社が「透析と食」に関する調査結果を発表

バイエル薬品株式会社は11月7日、社団法人全国腎臓病協議会(全腎協)の協力の下、透析患者を対象に「透析と食」について意識調査を実施し、その結果を発表した。この調査の結果から、一定の食事制限を必要とされている透析患者にとって、食事は大きな楽しみでありながら、難しさやストレスを感じつつ食事の管理に取り組んでいることがわかったという。特にリンやカリウム、また水分などの栄養管理には多くの人が難しさを感じており、それらの栄養素を気にせずに食事がしたいという回答も多くみられたという。しかし、透析歴が長くなるほど、難しさやストレスが軽減されることも明らかとなり、透析生活の中で食事の知識や経験を増やしながら、習慣にしていくことが重要であることが示唆されている。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2008%2Fnews2008-11-07.html

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造影剤腎症予防に対する炭酸水素ナトリウムvs塩化ナトリウム

造影剤腎症(CIN)の有望な予防戦略として、炭酸水素ナトリウムの造影前投与による水分補給が示唆されている。CINは一般に長期入院、保険医療費の増加、高い有病率と死亡率の原因となる。コロンビア大学医療センターのSomjot S. Brar氏らの研究グループは、炭酸水素ナトリウムのほうが塩化ナトリウムより、CINを抑える効果が優れているかどうかを判定するため、中等度から重度の慢性腎臓病(CKD)で、冠動脈造影を受ける患者を対象に臨床試験を行った。JAMA誌2008年9月3日号より。冠動脈造影を受けたCKD患者353例を2群に割り付け試験は2006年1月2日から2007年1月31日にかけて、無作為対照1重盲検法で行われた。対象患者は、米国の1ヵ所のセンターで冠動脈造影を受けた、安定期にあるCKD登録患者353例。18歳以上、推算糸球体濾過率(eGFR)60mL/分/1.73m2体表面積以下のCKD患者で、同時に真性糖尿病、鬱血性心不全、高血圧のうち1つ以上がある患者、あるいは75歳以上の患者が含まれた。患者は塩化ナトリウム投与群(n=178)と炭酸水素ナトリウム投与群(n=175)にランダムに割り付けられ、冠動脈造影の1時間前に13mL/kg、手技の間は毎時1.5mL/kgに減少し、造影手技は4時間で完了するよう管理された。主要評価項目は、コントラスト曝露後1~4日のeGFR 25%以上の低下とした。患者年齢の中央値は71歳(四分位間範囲65~76歳)で、45%に真性糖尿病がみられた。炭酸水素ナトリウムと塩化ナトリウムで有意差なし主要評価項目は、炭酸水素ナトリウム群が13.3%、塩化ナトリウム群が14.6%だった(相対リスク:0.94、95%信頼区間:0.55~1.60、P=0.82)。「炭酸水素ナトリウム投与群」対「塩化ナトリウム投与群」患者の死亡率は1.7%対1.7%、透析導入率は0.6%対1.1%、心筋梗塞イベント発生率は0.6%対0%、脳血管イベント発生率は0%対2.2%)だった(すべて投与30日後)。30日~6ヵ月後ではそれぞれ0.6%対2.3%、0.6%対1.1%、0.6%対2.3%、そして0.6%対1.7%で有意差は認められなかった(すべてP>0.10)。以上の結果から研究グループは、炭酸水素ナトリウムの術前投与のほうが塩化ナトリウムよりCINの予防効果が優れていることを示すデータは得られなかったと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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テルミサルタン+ラミプリル併用で腎機能はむしろ低下:ONTARGET試験

血管リスクの高い集団の腎機能に及ぼすテルミサルタンの効果はラミプリルと同等であり、両薬剤を併用した場合は単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下することが、ONTARGET試験の参加者を対象とした解析で明らかとなった。アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬は蛋白尿を抑制することが確認されており、併用による腎機能の改善効果が期待されていた。ドイツLudwig Maximilians大学Schwabing総合病院のJohannes F E Mann氏が、Lancet誌2008年8月16日号で報告した。2万5,000例以上を対象とした国際的な無作為化試験の腎機能解析ONTARGET(ongoing telmisartan alone and in combination with ramipril global endpoint trial)試験の研究グループは、55歳以上のアテローム動脈硬化性血管疾患患者あるいは臓器障害を伴う糖尿病患者を対象に、ARBであるテルミサルタン、ACE阻害薬であるラミプリルおよびその併用投与が腎機能に及ぼす効果を比較検討した。試験期間は2001~2007年で、3週間のrun-in期間ののち2万5,620例がテルミサルタン群(80mg/日、8,542例)、ラミプリル群(10mg/日、8,576例)、併用群(それぞれ80mg/日+10mg/日、8,502例)に無作為に割り付けられ、腎機能の評価および蛋白尿の測定が行われた。フォローアップ期間(中央値)は56ヵ月であった。主要アウトカムは透析、血清クレアチニン値の倍化、死亡の複合発生率、副次アウトカムは透析、血清クレアチニン値の倍化の複合発生率とした。主要、副次アウトカムがともに併用群で有意に悪化試験期間中に低血圧症状で784例(テルミサルタン群229例、ラミプリル群149例、併用群406例)が治療を中止した。主要アウトカム(透析、血清クレアチニン値の倍化、死亡)の発生率は、テルミサルタン群(1,147件、13.4%)とラミプリル群(1,150件、13.5%)は同等であったが(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.92~1.09)、併用群(1,233件、14.5%)では有意に上昇した(1.09、1.01~1.18、p=0.037)。副次アウトカム(透析、血清クレアチニン値の倍化)の発生率も同様で、テルミサルタン群(189例、2.21%)とラミプリル群(174 例、2.03%)は同等であったが(1.09、0.89~1.34)、併用群(212例、2.49%)では有意に上昇した(1.24、1.01~1.51、p=0.038)。推定糸球体濾過率(eGFR)のベースラインからの低下は、テルミサルタン群(-4.12 mL/分/1.73m2)、併用群(-6.11 mL/分/1.73m2)に比べラミプリル群(-2.82 mL/分/1.73m2)で少なく、いずれも有意差を認めた(いずれもp<0.0001)。尿中アルブミン排泄の上昇は、ラミプリル群に比べテルミサルタン群(p=0.004)および併用群(p=0.001)で有意に少なかった。著者は、「血管リスクの高い集団では、テルミサルタンの腎機能に及ぼす効果はラミプリルと同等であり、両薬剤の併用投与はそれぞれの単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下した」と結論し、「明確な蛋白尿が見られる腎疾患患者では、併用投与が腎不全の進行や透析の予防に有効な可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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急性腎障害に対して治療集中度では効果に差はない

重症の急性腎障害に対して、腎代替療法をどの程度行うべきかについては論議が続いている。米国退役軍人ヘルスケアシステムと国立衛生研究所(VA/NIH)の急性腎不全調査チームは比較検討を行い、「集中的な腎機能補助療法を行っても、効果に有意差は見られない」と報告した。NEJM誌2008年7月3日号(オンライン版2008年5月20日号)より。血液透析の頻度と血液濾過量の差で比較検討試験は、急性腎障害と、腎以外の臓器不全が1つ以上ある、もしくは敗血症を呈する重症患者1,124例を、集中的な腎代替療法(集中治療群)、あるいは集中度の低い腎代替療法(非集中治療群)のいずれかに無作為に割り付け行われた。両群患者のベースラインの特性は同じ。主要エンドポイントは、60日時点の全死因死亡とした。両群とも、血行動態が安定した患者には間欠的血液透析を行い、血行動態が不安定な患者には持続的静静脈血液濾過透析または持続的低効率透析を行った。集中的治療群は、間欠的血液透析と持続的低効率透析を週6回、および35mL/kg体重/時の持続的静静脈血液濾過透析が行われた。非集中治療群には、治療法は同様だが、頻度が週3回、20mL/kg体重/時で行われた。死亡率、治療期間、腎機能回復率などに有意差なしこの結果、60日時点の全死因死亡率は、集中治療群で53.6%、非集中治療群は51.5%だった(オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.86~1.40、P=0.47)。両群間には、腎代替療法の施療期間、腎機能の回復率または腎以外の臓器不全の発生率に有意差はなかった。間欠的血液透析中に低血圧症が起きた頻度は、集中的治療群の患者のほうが多かったが、低血圧症が起きた血液透析の頻度自体は両群で同等だった。死亡率や腎機能、腎以外の臓器不全改善は、治療の集中度では有意差は認められなかったと結論している。(武藤まき:医療ライター)

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中国製原料使用のヘパリンが毒ヘパリンであるEBM

年明けの日本では毒ギョーザが話題となっていたが、米国では透析患者から相次いでいた静脈注射用ヘパリン投与後のアナフィラキシー様反応の報告が大きな関心事となっていた。死亡例も相次いだ本件に関して米国疾病管理センターは共通の症例報告からBaxter Healthcare社のヘパリン製剤を特定。1月17日にリコール開始、2月28日に回収を終了する。しかし3月6日、ドイツから他社製品での事例が報告。これを受け米食品医薬品局(FDA)はヘパリンの全製造業者に汚染物質混入の検査を命じた。そして混入が明らかになったのが、過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)。本論は、これまで立証されていなかったOSCSと臨床有害事象との生物学的関連を目的に、Momenta Pharmaceuticals社のTakashi Kei Kishimoto氏らが、FDAの協力を得て行った試験結果。NEJMオンライン版2008年4月23日に速報され、本誌では2008年6月5日号にて掲載された。ブタ体内で有害事象の再現実験試験はFDAから、有害事象との関連が疑われたヘパリン製剤ロットと比較対照用のロットの提供を受けて実施された。OSCSの有無、および汚染物質と観察された臨床有害事象(低血圧、顔面浮腫、頻脈、蕁麻疹、吐き気など)とを結び付ける可能性がある生物活性について盲検下でスクリーニング。in vitroで接触系活性化と補体カスケードを分析。さらにブタの生体内でOSCSが問題の臨床症状を再現するかどうかin vivoの試験も行われた。ブタもヒトもOSCSに同様の反応示す未分画へパリンの汚染ロットで見つかったOSCSは、標準試料の合成OSCSと同様に直接、ヒト血漿中のキニンカリクレイン経路を活性化したが、これは強力な血管作用を持つブラジキニン産生につながる可能性を示唆するものでもあった。加えてOSCSは、補体系タンパク由来の強力なアナフィラトキシンであるC3a、C5aの産生も誘導した。意外なことに、この2つの経路の活性化は連鎖しており、第XII因子の液相活性化に依存していた。また、さまざまな種の血漿サンプルのスクリーニングによって、ブタとヒトのOSCSの作用に対する感受性は同様なことがわかった。ブタの静脈に投与したOSCS汚染ヘパリンと合成OSCSは、いずれもカリクレイン活性化に関連する低血圧を引き起こした。これらからKishimoto氏は「本試験結果は、疑惑のヘパリン・ロットに混入しているOSCSが、観察された有害事象と生物学的な関連のあることを示す科学的根拠を提供するものだ」と結論。また、カリクレインのアミド溶解性の活性を評価する分析試験を行い、ヘパリンのOSCSや、その他の接触系を活性化する高度の過硫酸化多糖類の混入物質をスクリーニングすることで、ヘパリン供給経路を保護するための分析試験を補足できるとも報告した。(武藤まき:医療ライター)

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ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(1)-

 4日、先頃、発表されたONTARGET試験の発表を受けて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、アステラス製薬株式会社は、ARBテルミサルタン(販売名:ミカルディス)が心血管疾患のハイリスク患者に対して、既に心血管疾患の発症抑制効果が確立しているACE阻害薬ラミプリルと同等の効果を有することを発表し、同日、檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。ここではその内容を基にONTARGET試験に関していくつかの観点からレビューする。ONTARGET試験では心血管イベントハイリスク患者を対象にARB(ミカルディス、一般名:テルミサルタン)単独投与のACE阻害薬(一般名:ラミプリル)単独投与に対する非劣性と、テルミサルタンとACE阻害薬併用療法のACE阻害薬単独投与に対する優越性を検証された。その結果は3月31日、第57回米国心臓病学会(ACC)にて発表された。また、この内容はNew England Journal of Medicine誌4月10日号に発表される予定である(インターネット上には31日、掲載されている)。(1)ACE阻害薬とARBの併用療法はもはや有用でない ONTARGET試験の中で、最も注目した結果は、ACE阻害薬とARBの併用療法が、ACE阻害薬単独投与に比べて優越性を示せなかったことである。ONTARGET試験では、1次評価項目として「心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のいずれかの発現」と複合心血管イベントが設定されたが、その発現率は、ACE阻害薬単独投与群で16.5%、ACE阻害薬とARBの併用群で16.3%であった。1次評価項目における併用療法のACE阻害薬に対するハザード比は0.99(95%信頼区間:0.92-1.07)であり、ACE阻害薬にARBを併用しても有意な心血管系イベントの改善には至らなかったのだ。 そもそも、なぜ、この試験が行われたか。ACE阻害薬はアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を促進させる酵素ACEを阻害することによってアンジオテンシンIIの産生を抑制する。しかし、アンジオテンシンIIはキマーゼなどACE以外の酵素によっても産生され、完全にはレニン・アンジオテシン系(RAS)をブロックできない。ARBはアンジオテンシンII受容体を直接遮断する。したがってACE阻害薬とARBの併用によるRASのデュアルブロックによって、ACE阻害薬で証明されている数々の心血管疾患発症抑制効果がさらに増強されると期待されていた。 これまでにACE阻害薬とARBの併用療法の有用性を検証した臨床試験はONTARGET試験が初めてではない。大規模な試験としては、心筋梗塞後の左室収縮不全または心不全例に対してバルサルタン(販売名:ディオバン)とカプトプリル(カプトリル)の併用療法の有用性を検証したVALIANT試験と、慢性心不全例に対してカンデサルタン(販売名:ブロプレス)とACE阻害薬(どのACE阻害薬を選択するかは医師の判断:エナラプリル27%、リシノプリル19%、カプトプリル17%)の併用療法の有用性を検証したCHARM-Added試験がある。 これらの結果は対照的なものとなった。すなわち、VALIANT試験では併用療法がACE阻害薬単独投与に対して優越性を示せず、CHARM-Added試験では併用療法が単独療法に対して優越性を示したのである。 Yusuf氏らはONTARGET試験やVALIANT試験の対象は、他の薬剤によって治療が成功している集団であったため、ACE阻害薬とARBの最大投与量を用いたRASのデュアルブロックによる臨床ベネフィットはほとんど得られなかったのではないかと考察している。 また、安全性面に目を向けてみると、ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBの併用療法によって低血圧、失神、腎機能障害、高カリウム血症が有意に増加し、透析を必要とする腎不全も増加傾向にあった。これらを受け、檜垣氏は「ハイリスク例では副作用が増加するだけで、併用療法の有用性は心不全例を除いては期待できない」と述べた。 血圧値は141.8/82.1mmHgからACE阻害薬投与によって6.4/4.3mmHg降下し、ACE阻害薬とARBの併用療法によって9.8/6.3mmHg降下した。すなわち、その差は2.4/1.4mmHg。この血圧差からは4-5%のイベント抑制が期待できるとしているが、今回はそこまでの結果に至らなかった。テルミサルタンを併用しても血圧差が2.4/1.4mmHgであったこと、血圧差があったにも関わらず、一次評価項目で全く差がなかったのはなぜか、まだ疑問は残る。 一方、わが国で保存期腎不全例を対象にACE阻害薬(トランドラプリル)とARB(ロサルタン)の併用療法は、それぞれの単独療法に比べ腎不全への進行を抑制することができたことがCOOPERATE試験より証明されており、我々もLancet誌発表直後に著者の中尾尚之氏に独占インタビューした。心血管疾患発症抑制ではなく、腎疾患の進展抑制における併用療法の効果について期待できるかもしれない。 2007年6月に弊社が独自に調査した結果によると、高血圧症例を10例/月に診察している医師(n=503)がCa拮抗薬およびARBが投与されている例で降圧効果が不十分な場合、増量、切り換え、追加などの中から、ACE阻害薬を追加投与し、3剤併用を選択する割合は平均5.2%であった。まだ、臨床においてはARBとACE阻害薬の併用投与が行われている。今回のONTARGETの結果は、ハイリスク患者における心血管疾患発症抑制を目的としたACE阻害薬とARBの併用療法の臨床意義は期待できないことを証明したといえる。 次回は「ARB投与による冠動脈疾患発症抑制」についてレビューする。

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スタチンは慢性腎疾患患者の心血管死を低減する

スタチンは、慢性腎疾患(CKD)患者の心血管死を一般人口と同程度にまで低減することが、無作為化試験のメタ解析の結果から明らかとなった。オーストラリアSydney大学公衆衛生学腎臓臨床研究センターのGiovanni F M Strippoli氏らが、BMJ誌2008年3月22号(オンライン版2008年2月25日版)で報告した。CKD患者は心血管病のリスクが増大している。スタチンは一般人口において心血管死や全原因死亡を低減することがわかっているが、CKD患者におけるスタチンの役割については不明な点が多い。CKDを対象としたスタチンの無作為化/準無作為化対照比較試験を抽出研究グループは、CKD患者(血清クレアチニン上昇、透析、腎移植)に対するスタチンのベネフィットおよび有害作用の評価を目的としたメタ解析を実施した。データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Renal Health Library)を検索して、CKDを対象にスタチンをプラセボあるいは他のスタチンと比較した無作為化/準無作為化対照比較試験を抽出した。2名の研究者が別個に、個々の試験の症例選択基準や得られたデータを検討し、試験の質を評価した。見解が異なる場合は協議により解決した。治療効果は、変量効果モデル(random effects model)を用いて相対リスクあるいは加重平均差(WMD)で表し、95%信頼区画を算出した。心血管イベントが低下、全原因死亡の改善効果は不明50試験に登録された3万144例が解析の対象となった。プラセボに比べ、スタチンは総コレステロール、LDL-コレステロール、蛋白尿を低下させたが、糸球体濾過値は改善しなかった。致死的および非致死的心血管イベントもスタチンにより低下したが、全原因死亡に対する有意な効果は認めなかった。メタ回帰分析では、CKDのステージによる有意な治療効果の差は確認されなかった。また、スタチンの副作用プロフィールはプラセボと同等であった。解析した試験の多くが小規模で質が高いものではなく、死亡に関するデータの拠出は少数の大規模試験に限られた。Strippoli氏は、「スタチンは、CKD患者の心血管死をステージにかかわりなく一般人口と同程度にまで低減する」と結論し、「腎保護効果が明確にならなかった原因は、相対的なデータ不足およびアウトカム報告バイアスによると考えられる。全原因死亡の改善効果や1次予防効果は現在進行中の無作為化試験(SHARP、AURORA)の結果によりある程度明らかになるだろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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冠動脈バイパス術でのアプロチニン投与は死亡率を高める

アプロチニン(商品名:トラジロール、バイエル社)は、冠動脈バイパス術(CABG)において出血を抑えるために投与されるが、この治療によって死亡率が高まることを示唆するエビデンスが次々と寄せられた。バイエル社はすでに2007年11月5日、同製剤の一時販売停止を発表。日本国内でも同11月7日付けで商品名「トラジロール5万単位」が一時販売停止となっている。本論は、ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のSebastian Schneeweiss氏らによる報告で、NEJM誌2008年2月21日号に掲載された。3タイプの解析法で死亡率を検討Schneeweiss氏らの研究は、CABG施行日にアプロチニン投与またはアミノカプロン酸投与が確認された患者を対象に行われた。対象の死亡退院者数を表数化し、3タイプの解析法を実施。1つは一次解析として「多変量ロジスティック回帰分析」を、2つ目がサブ患者コホートでの「傾向スコア分析」。サブ患者コホートには、試験薬を全量投与受けた者で、試験期間中50例以上のCABGを行った外科医により施術を受けた者、手術が入院3日目以降だったため共変量に関する10の追加情報が入手可能だった者の条件に見合った者が選択された。3つ目が「操作変数因子分析」で、担当外科医の嗜好が2つの試験薬の選択時に強くあらわれていた患者からのデータを対象としたもの。患者・外科医の特性、交絡因子補正後もアプロチニンの死亡率の高さは変わらずアプロチニン投与患者は総計33,517例、アミノカプロン酸投与患者は総計44,682例で、死亡はそれぞれ1,512例(4.5%)、1,101例(2.5%)だった。患者および病院特性41項目補正後の推定死亡リスクは、アプロチニン投与群でアミノカプロン酸投与群より64%高かった(相対リスク1.64)。また手術後7日間のアプロチニン投与群の院内死亡リスクは1.78。傾向スコア法による相対リスクは1.32だった。そして操作変数因子分析から、アプロチニンの使用は、患者100人あたり1.59件の超過死亡リスクと関連していることが判明した(95%信頼区間:0.14~3.04)。術後の血管再生と透析の施行も、アプロチニン投与群のほうがアミノカプロン酸投与群より頻度が高かった。以上からSchneeweiss氏らは、「アミノカプロン酸よりもアプロチニン投与を受けた患者のほうが死亡率は高率だった。患者あるいは外科医の特性による差異は見られず、対照群との交絡因子を調整するいかなる解析を試みた結果でも変わりはなかった」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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アプロチニン自体は術後腎機能低下要因ではない

手術の際、出血抑制(組織の接着・閉鎖)に使用される線溶系抑制剤アプロチニンは近年、心臓手術に用いた際の腎毒性の有無が議論となっているが、「ACE阻害薬服用者にoff-pumpで手術を施行した場合にのみ、アプロチニンは術後腎障害リスクを増加させる」可能性を指摘する論文が、Lancet誌2008年2月9日号に掲載された。英国Bristol Royal InfirmaryのRonelle Mouton氏らによるレトロスペクティブ(振り返り)観察研究である。単一施設における成績のレトロスペクティブ解析解析対象となったのは、Bristol Royal Infirmaryにて2000年1月から2007年9月の間に心臓手術を受けた9,875例中、アプロチニン、またはトラネキサム酸を使用、あるいは線溶系抑制剤非使用で、かつACE阻害薬併用の有無と術前の腎機能が明らかだった9,106例。術後腎機能低下オッズ比(vs. 線溶系抑制剤非使用 [対照] 群)を、on-pump術群(5,434例)とoff-pump群(3,672例)別にアプロチニン群とトラネキサム酸群に分け、さらに術前ACE阻害薬服用歴の有無で2分して比較した。対照群とのマッチングにあたっては、propensityスコアを用いて予後因子の均一化を図った。術後「腎機能低下」は「血清クレアチニン2.26mg/dL(200μmol/L)以上」かつ「術前からの1.5倍以上増加」とした。もっともな主張と思われるが…結果は以下の通り──・術後腎機能低下は7%に認められ、そのうち20%で透析が必要となった。・腎機能低下オッズ比が対照群に比べて有意に増加していたのは「ACE阻害薬服用例に対するoff-pump手術+アプロチニン」(オッズ比:2.87、95%信頼区間:1.25~6.58)のみだった。・残りの群も全て、対照群に比べ術後腎機能低下オッズ比は増加傾向を示したが(1.14~1.93)、いずれも有意ではなかった。以上よりMouton氏らは、「アプロチニン自体は心臓外科手術後の腎機能低下要因ではない可能性がある」と結論し、「ACE阻害薬服用例にoff-pump手術をする場合、アプロチニンの使用は避けるべきだ」と主張している。もっともな主張と思われるが、「off-pump手術をするならばACE阻害薬服用を、特に腎機能低下例では中止すべきだ」というのはいかがなものだろうか──。(宇津貴史:医学レポーター)

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新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。標準的透析治療を受けている末期腎不全患者が着用透析機を装着 対象は、週に3回の標準的な血液透析を受けている末期腎不全患者8例(男性5例、女性3例、平均年齢51.7歳、平均透析期間17.9年)。これらの患者が新たに開発された着用透析機(重量約5kg)を1日に4~8時間装着し、標準の透析法と同様に抗凝固薬として未分画ヘパリンを投与された。 心血管系への重大な影響や血清電解質、酸塩基のバランスの変化は認めなかった。いずれの症例でも臨床的に有意な溶血のエビデンスは得られなかった。より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねるべき 平均血流量は58.6mL/分、透析液流量は47.1mL/分であった。また、平均血漿尿素クリアランスは22.7mL/分、クレアチニンクリアランスは20.7mL/分であった。これらのデータは従来の透析法に比べ低値であるが、透析の時間および期間を延長できれば従来法よりも改善されることが示唆された。 ヘパリン用量が低下した際に2例に血管穿刺部位の血液凝固がみられたが、2例とも部分トロンボプラスチン時間は正常域へと回復した。1例で穿刺針の脱落がみられたが安全装置により失血は防止され、穿刺針を取り換えて治療が継続された。 これらの結果により、Davenport氏は「新開発の着用して使用する透析機器は安全性および有効性ともに有望な結果が得られた」と結論している。また、「これらの知見をより多くの症例で検証する試験が必要である。今後は、有効性を高めるために、より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねれば、末期腎不全患者の透析回数をふやす実用的な手段となる可能性がある」と指摘している。

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FDAがMirceraを承認:米国初の月1回の維持投薬を可能とした腎性貧血治療薬

 透析患者および非透析患者の慢性腎臓疾患(CKD)に伴う貧血の治療薬として、Mircera(methoxy polyethylene glycol-epoetin beta)が米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けた。Mirceraは貧血治療薬としてFDAが2週間に1回の投与方法で承認した初めてのESA。CKD患者で月1回または2週間に1回の投与でヘモグロビン濃度を安定させるESAとしても、唯一FDAが承認した。

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血漿ホモシステイン濃度低下は慢性腎臓病と末期腎不全の死亡率低下に有効か

血漿ホモシステイン濃度の上昇が死亡率と血管疾患の危険因子であることは慢性腎臓病患者の観察研究で明らかになっている。ホモシステイン濃度を下げる葉酸とビタミンB群の投与が、慢性腎臓病と末期腎不全患者の予後を改善するか否かをテーマに無作為化対照試験が実施され、その結果がJAMA誌9月12日号に掲載された。葉酸40mg、ビタミンB6100mgなどを毎日投与高用量葉酸とビタミンB群の毎日投与が慢性腎臓病患者の死亡率を減少させるかどうかを判定するため、Rex L. Jamison氏らのグループは米国退役軍人省医療センターの36病院で二重盲検無作為化対照試験(2001~2006年)を行った。追跡期間の中央値は 3.2年、21歳以上の進行性慢性腎臓病(推算クレアチニンクリアランス30mL/分以下、n=1,305)あるいは末期腎不全(n=751)で、かつ高ホモシステインレベル(15μmol/L)の患者計2,056例。参加者は葉酸40mg、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)100mg、シアノコバラミン(ビタミンB12)2mgを含むカプセルまたはプラセボを毎日投与された。主要評価項目は全原因死亡率。第2評価項目は心筋梗塞、脳卒中、下肢の全部または一部の切断、そしてこれら3つと複合死亡率、透析開始までの期間と血液透析患者の動静脈アクセスの血栓症に至る期間とした。生存率、血管系疾患発病率減少のいずれも効果なし平均のホモシステイン濃度は、ビタミン投与群が24.0μmol/L、プラセボ投与群は24.2μmol/L。3ヵ月で、ビタミン投与群は 6.3μmol/L(25.8%、P<0.001)、プラセボ投与群は0.4μmol/L(1.7%、P=0.14)低下したが、死亡率に明らかな影響はなかった(ビタミン投与群448対プラセボ投与群436、ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.91-1.18)。第2 評価項目または有害事象においても明らかな影響は示されなかった。心筋梗塞はビタミン投与群129例対プラセボ群150例(同0.86、0.67- 1.08)、脳卒中はビタミン群37対プラセボ群41(同0.90、0.58-1.40)、そして下肢切断はビタミン群60対プラセボ群53だった(同 1.14、0.79-1.64)。さらに、死亡率を加えた心筋梗塞、脳卒中、切断の複合、透析に至る期間(P=0.38)と、血液透析患者の血栓症に至る期間(P=0.97)は、ビタミン群とプラセボ群で違いがなかった。これらから、高用量葉酸とビタミンB群の投与は生存率の向上、あるいは進行性慢性腎臓病と末期腎不全患者の血管疾患の発病率低下のいずれにも効果がなかったと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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