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オフポンプCABG対オンポンプCABGの30日アウトカム

冠動脈バイパス術(CABG)の施行について、心拍動下(オフポンプ)CABGの人工心肺(オンポンプ)CABGに対する相対的な有益性とリスクを検討する国際多施設共同無作為化対照試験が行われた。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏ら研究グループによるもので、血液製剤や術中出血、合併症の減少など周術期の有益性は認められる一方、血行再建術の早期再施行リスクの上昇が認められたと報告している。NEJM誌2012年4月19日号掲載報告より。30日時点の優位性を79施設で比較研究グループは2006年11月~2011年10月の間に19ヵ国79施設から、CABGが予定されていた4,752例を登録して試験を行った。被験者は81%が男性、平均年齢は68歳だった。被験者は、オフポンプCABG群(2,375例)またはオンポンプCABG群(2,377例)に無作為に割り付けられた。第1の共通主要アウトカムは、無作為化30日後の死亡、非致死性の脳卒中、非致死性の心筋梗塞、または透析を必要とする腎不全の新規発症の複合とした。血行再建術の早期再施行リスクは増加結果、オフポンプCABGとオンポンプCABGの間に、主要複合アウトカムの発生率についての有意差はみられなかった(9.8%対10.3%、オフポンプ群のハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、P=0.59)。個々のアウトカムについても同様だった。オフポンプCABGはオンポンプCABGと比較して、血液製剤の輸注量(50.7%対63.3%、相対リスク:0.80、95%信頼区間:0.75~0.85、P

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腎性貧血治療剤OMONTYS 米国で販売開始

 米国Affymax社と武田薬品工業は25日、腎性貧血治療剤OMONTYS(一般名:peginesatide)について、武田薬品の100%子会社である武田ファーマシューティカルズUSAが米国で販売開始したことを発表した。同剤は、米国食品医薬品局(FDA)より2012年3月27日(米国時間)に販売許可を取得している。 OMONTYSは、成人の透析期患者を対象としたESA(Erythropoiesis Stimulating Agent:赤血球造血刺激因子製剤)製剤として、米国において初めて使用可能となる1ヵ月製剤で、静脈注射または皮下注射によって投与される。 また、同剤は初めてのPEG化された合成ペプチド製剤のため、ヒトエリスロポエチンに対して配列相同性がない、すなわちアミノ酸の配列が異なるという。本年2月には、武田薬品の100%子会社である武田グローバル研究開発センター(欧州)が欧州医薬品庁(EMA)にも販売許可申請を提出し、当該申請が受理された旨を公表している。

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Dr.林の笑劇的救急問答

第1回「高カリウム血症ぶったぎり ! 」第2回「ヒートアップ ! ザ・熱中症」 ※下巻は、ACLSのガイドライン変更に伴い、販売終了しました。収録されていた「アナフィラキシーショック」と最新の「ACLS」についてはシーズン7の上・下巻に収録しています。第1回「高カリウム血症ぶったぎり ! 」高カリウム血症は救急ではよくみられる非常に危険な電解質異常。高K血症を正確に診断し必要に応じて迅速に治療することが重要ですが、それは何故なのか? また、その見極めのポイントは一体どこに? 用いるべき薬剤の順番は…? 70歳男性 透析患者。全身倦怠感、徐脈、低血圧にて救急車で来院。モニタにてP波消失あり、T波増高。血圧70/40 脈42 30歳男性 発熱を主訴として来院。血圧110/70 脈90 体温38.6度第2回「ヒートアップ ! ザ・熱中症」夏、各地で熱中症が多発し、毎年死亡者が出ます。ところで、熱中症にはいくつか種類がありますが、主な3つの分類をちゃんと答えられますか? 各々の治療方針と禁忌、そして気をつけなければいけない合併症をきちんと把握しているでしょうか?また、coolingの上手な方法は…?熱中症は、どのタイプかを迅速に判断し的確な処置を施して、合併症を起こさないかどうか経過観察をする必要があります。実は死亡率が意外と高い熱中症。今回は、そんな熱中症に負けずに暑い夏を乗り切るためのヒントが盛り沢山です ! 38歳男性 市民マラソン中に失神を起こし救急車で来院。患者はめまい、吐き気を訴え全身汗だらけ。血圧110/86 脈130 2歳男児 父親に連れられて来院。父親の買い物中、車中に放置されていた。

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血液透析、電子線滅菌透析膜使用は重篤な血小板減少症リスクを増大する

血液透析患者において、電子線滅菌処理をした透析膜を用いた装置を使った場合、使わなかった場合と比べて、血小板減少症リスクがおよそ2.5~3.6倍に増大するとの報告が、JAMA誌2011年10月19日号で発表された。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学腎臓病学部門のMercedeh Kiaii氏らが、約2,100人の人工透析患者を対象に行った後ろ向き調査で明らかにした。血小板減少症は透析膜関連の合併症とみなされることはなかったが、透析膜を電子線(eビーム)で滅菌した血液透析装置を導入した1つの透析部門において、患者20人に有意な血小板減少症がみられたことを受けて、大規模な調査が行われることとなった。ブリティッシュ・コロンビア州1,706人とアルバータ州425人について調査Kiaii氏らは、2009年4月1日~2010年11月30日の間に人工透析を受けていた、ブリティッシュ・コロンビア州の1,706人と、アルバータ州の425人について、後ろ向きに調査を行った。重篤な血小板減少症の定義は、透析後血小板数が100×10(3)/μL未満で透析後血小板減少率が15%以上のケースとし、同症罹患率と原因について調べられた。ブリティッシュ・コロンビア州の患者のうち、電子線滅菌透析膜が使用されたのは、1,411人(83%)だった。そのうち透析後に血小板数減少が認められたのは194人(11.4%、95%信頼区間:9.9~12.9)、15%以上減少率が認められたのは400人(23.4%、同:21.5~25.5)で、両方が認められたのは123人(7.2%、同:6.0~8.6)だった。アルバータ州の透析患者425人は、ブリティッシュ・コロンビア州とは異なる製造元の電子線滅菌透析膜を使用していた。それら患者のうち、透析後に血小板数減少が認められたのは46人(10.8%、同:8.1~14.3)、15%以上減少率が認められたのは156人(32.0%、同:27.6~36.7)で、両方が認められたのは31人(7.3%、同:5.1~10.3)だった。電子線滅菌透析膜の使用は非使用との比較で重篤な血小板減少症を3.57倍増大ブリティッシュ・コロンビア州の患者について患者特性や人工透析歴などについて補正した多変量解析の結果、電子線滅菌透析膜の使用は、重篤な血小板減少症を2.52倍有意に増大することが認められた(オッズ比:2.52、95%信頼区間:1.20~5.29、p=0.02)。2009年9月に、電子線滅菌透析膜から非電子線滅菌透析膜への切り替えが行われたが、切り替え後は、透析患者1,784人における重篤な血小板減少症の発症は有意に減少した。血小板数減少が認められたのは120人(6.7%、95%信頼区間:5.6~8.0、p<0.001)、15%以上減少率が認められたのは167人(9.4%、同:8.1~10.8、p<0.001)、両方が認められたのは38人(2.1%、同:1.5~2.9、p<0.001)だった。電子線滅菌透析膜の使用切り替え前後のアウトカムについて比較した一般化推定方程式モデルの結果、患者特性や人工透析歴などについて補正後、電子線滅菌透析膜使用は、重篤な血小板減少症を3.57倍有意に増大することが認められた(オッズ比:3.57、同:2.54~5.04、p<0.001)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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週3回血液透析における2日間隔は、死亡・入院リスクを高める

 週3回行われる血液維持透析は、1日間隔と2日間隔のインターバルが存在するが、2日という間隔が血液透析を受けている患者の死亡率を高める時間的要因であることが明らかにされた。本研究は、米国NIHの資金提供を受けたUnited States Renal Data SystemのRobert N. Foley氏らがnational studyとして行った結果で、20年来の懸念となっていた血液透析患者の生存率の低さ、および末期腎不全患者の大半は循環器疾患を有した状態で血液透析を始めるが、長期インターバルがそれら患者の死亡リスクを高めているのではないかとの仮説に対して言及することを目的に行われた。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。週3回透析を受けていた末期腎不全患者3万2,065例を対象に2日間隔後と1日間隔後を比較 試験は、米国で週3回の血液透析を受けている代表的患者集団であるEnd-Stage Renal Disease Clinical Performance Measures Projectの参加者3万2,065例を対象とした。 被験者は、2004年末から2007年末に週3回透析を受けていた末期腎不全患者で、平均年齢は62.2歳、24.2%が1年以上血液透析を受けていた。 研究グループは、死亡率および心血管関連の入院率について、2日間隔後と1日間隔後について比較を行った。一般に米国週3回の血液透析患者に行われているスケジュールから、金曜日から月曜日の間、または土曜日から火曜日の間に2日間隔があった。週3回透析において2日間隔後の日のほうが死亡率および入院率が高い 平均追跡期間2.2年の間で、週3回透析は2日間隔後の日のほうが1日間隔後の日よりも、死亡率および入院率が高かった。 死亡率については、100人・年当たりの全死因死亡22.1 vs. 18.0(P<0.001)、以下同じく心臓が原因の死亡10.2 vs. 7.5(P<0.001)、感染症関連での死亡2.5 vs. 2.1(P =0.007)、突然死1.3 vs. 1.0(P =0.004)、心筋梗塞による死亡6.3 vs. 74.4(P<0.001)であった。 入院率については、100人・年当たりの心筋梗塞による入院6.3 vs. 3.9(P<0.001)、以下同じくうっ血性心不全による入院29.9 vs. 16.9(P<0.001)、脳卒中による入院4.7 vs. 3.1(P<0.001)、不整脈による入院20.9 vs. 11.0(P<0.001)、あらゆる心血管イベントによる入院44.2 vs. 19.7(P<0.001)であった。 結果を受けてFoley氏は、「試験結果に限りはあるが、いくつかの興味深い所見が得られた。被験者は全米を代表する患者集団であり、間隔が長いことに関してサブグループと全体とで同様の転帰が認められ、未解明だがイベント発生率の格差は、臨床的に意味があるようだった。したがって本試験は、血液透析の提供方法について行われるコントロール試験の臨床的均衡(clinical equipoise)を提供する」とまとめている。

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電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。術後合併症の特定力について、退院コーディング情報ベースの指標と比較Murff氏らは、1999~2006年の3州6ヵ所の退役軍人医療センターで外科的手術を受けた患者2,974例に関する断面調査を行った。電子カルテデータから特定された、透析を要した急性腎不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、敗血症、肺炎または心筋梗塞の術後発生を、VASQIP(VA Surgical Quality Improvement Program)で再評価し、それら合併症を特定する自然言語処理アプローチの感度と特異度を求め、退院コーディング情報をベースとした患者安全指標とのパフォーマンスを比較した。感度、特異度ともに優れる各合併症発生率は、透析を要した急性腎不全2%(39/1,924例)、肺塞栓症0.7%(18/2,327例)、深部静脈血栓症1%(29/2,327例)、敗血症7%(61/866例)、肺炎16%(222/1,405例)、心筋梗塞2%(35/1,822例)だった。急性腎不全例を正確に特定する感度は、従来患者安全指標が38%(95%信頼区間:25~54%)であったのに対し、自然言語処理アプローチは82%(同:67~91%)だった(p<0.001)。深部静脈血栓症(59%vs 46%、p=0.30)、敗血症(89%vs 34%、p<0.001)、肺炎(64%vs 5%、p<0.001)、心筋梗塞(91%vs 89%、p=0.67)についても同様の結果が得られた。特異度は、自然言語処理アプローチが従来患者安全指標よりも低値を示したが、いずれも90%以上と非常に高かった。急性腎不全(94%vs 100%)、深部静脈血栓症(91%vs 98%)、敗血症(94%vs 99%)、肺炎(95%vs 99%)、心筋梗塞(95%vs 99%)だった(すべてp<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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若年時の無症候性顕微鏡的血尿、長期的な末期腎不全リスクを増大

若い時に持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿が認められた人は、末期腎不全(ESRD)に至るリスクが有意に増大することが、イスラエルで行われたコホート研究から報告された。ただしその発生率および絶対リスクは非常に低いままではあった。報告は、同国シバメディカルセンターのAsaf Vivante氏らが約22年間の長期にわたるリスクを追跡したもので、JAMA誌2011年8月17日号で発表された。これまで、同リスクに関する長期アウトカムを検証したデータは有効なものがほとんどなかった。イスラエル16~25歳120万人超を約22年追跡調査は、イスラエル全国民ベース後ろ向きコホート研究として行われた。対象となったのは、1975~1997年に兵役検査を受けた16~25歳(男性60%)の120万3,626人で、その医療データとイスラエルESRDレジストリデータとをリンクして検証された。検証データに含まれたのは、1980年1月1日から2010年5月31日までに治療を受けたESRDインシデント症例で、Cox比例ハザード・モデルを用いて、持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿と診断された被験者におけるESRD治療発生のハザード比(HR)が推定された。主要評価項目は、ESRD治療開始日(初めての透析治療開始日または腎移植を受けた日)。追跡期間は21.88(SD 6.74)年だった。ESRD発生リスク、血尿診断あり群がなし群の19.5倍被験者120万3,626人のうち、持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿と診断されたのは3,690人(0.3%)だった。そのうち、ESRD治療となったのは26人で0.70%だった。これに対し、同診断なし群(119万9,936人)でESRD治療となったのは0.045%(539人)だった。発生率は10万人・年につき、診断あり群34.0、診断なし群2.05で、粗ハザード比は19.5(95%信頼区間:13.1~28.9)だった。年齢、性、父親の出身国、登録年、BMI、基線血圧で補正した多変量モデルにおいても、同ハザード比は18.5(同:12.4~27.6)で、リスクの大きさは変わらなかった。なおESRD治療リスクが特に大きかったのは、一次性糸球体疾患を原因とした場合で、発生率は10万人・年につき、診断あり群19.6、診断なし群0.55で、ハザード比は32.4(同:18.9~55.7)だった。無症候性顕微鏡的血尿が原因と考えられたESRD治療者の割合は、4.3%(95%信頼区間:2.9~6.4%)であった。(武藤まき:医療ライター)

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急性心不全へのnesiritideの有効性と安全性

急性心不全へのnesiritideについて、死亡や再入院の増減との関連は認められなかったが、標準治療への上乗せ効果についても呼吸困難への効果は小さく有意差は認められないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ASCEND-HF」の結果、報告された。米国・デューク大学メディカルセンターのC.M. O’Connor氏らがNEJM誌2011年7月7日号で発表した。組み換え型B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは、急性心不全患者の呼吸困難を早期に緩和する治療薬として2001年に米国で承認されたが、その後の小規模無作為化試験データのプール解析で、プラセボとの比較で腎機能悪化が1.5倍、早期死亡が1.8倍に上ることが示され、独立委員会からnesiritideの有効性と安全性に関する大規模臨床試験の実施が勧告されていた。6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化の2つを主要エンドポイントにASCEND-HF(Acute Study of Clinical Effectiveness of Nesiritide in decompensated Heart Failure)試験は2007年5月~2010年8月にかけて、欧米、環太平洋アジアの398施設から急性心不全で入院した7,141例が登録され、標準治療(利尿薬、モルヒネ、他の血管拡張薬など)に加えてnesiritideあるいはプラセボを投与される群に無作為化され追跡された。nesiritideは、治験参加医師の裁量で任意の2μg/kgの静脈内ボーラス投与後、0.010μg/kg/分の持続点滴を24時間以上、最長7日間(168時間)投与された。主要エンドポイントは2つで、6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化であり、患者自身による7段階のリッカート尺度評価を用いて測定評価した。また、30日以内の心不全による再入院と全死因死亡を複合エンドポイントとし、安全性のエンドポイントについては、30日以内の全死因死亡、腎透析を要した腎機能悪化(推定糸球体濾過量低下が>25%)などが含まれた。無作為化後に治療を受けたintention-to-treat解析対象は7,007例(98%、nesiritide群:3,496例、プラセボ群:3,511例)だった。幅広く急性心不全患者へルーチン使用することは推奨できないと結論結果、呼吸困難の改善について「著しく」と「中程度に」を合わせた報告が、6時間時点でnesiritide群44.5% vs. プラセボ群42.1%(P=0.03)、24時間時点では同68.2% vs. 66.1%(P=0.007)と、いずれの時点でも、nesiritide群での報告が多かったが事前規定の有意差(両評価がP≦0.005かどちらかのP≦0.0025)には達していなかった。30日以内の心不全による再入院と全死因死亡は、nesiritide群9.4%、プラセボ群10.1%で、nesiritide群の絶対差は-0.7ポイント(95%信頼区間:-2.1~0.7、P=0.31)だった。また、30日時点の死亡率(nesiritide群:3.6% vs. プラセボ群:4.0%、絶対差:-0.4、95%信頼区間:-1.3~0.5)、腎機能悪化率(同31.4% vs. 29.5%、オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.98~1.21、P=0.11)は有意差が認められなかった。しかし、低血圧症(中央値80mmHg)について、nesiritide群での有意な増大が認められた(26.6%対15.3%、P<0.001)。Connor氏は、「nesiritideの他療法と組み合わせての使用は、死亡率、再入院の増減とは関連しないが、呼吸困難に対する効果は小さく、有意な効果は認められなかった。また、腎機能悪化との関連も認められなかったが、低血圧症の増加との関連が認められた」と結論。結果を踏まえて「nesiritideを、急性心不全の患者に幅広くルーチン使用することは推奨できない」と提言している。(武藤まき:医療ライター)

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持続型赤血球造血刺激因子製剤エポエチン ベータ ペゴル(商品名:ミルセラ)

 エポエチン ベータ(遺伝子組換え)(商品名:エポジン)に1分子の直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)を結合させた、長時間持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)である「エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)」(商品名:ミルセラ)が、2011年4月「腎性貧血」を適応として承認された。赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療の課題 腎性貧血は、腎機能障害によるエリスロポエチン産生能低下による貧血である。わが国ではその治療にESAが使用されるようになってから既に20年を越え、透析患者のみならず透析治療導入前の保存期慢性腎不全患者においても、ESAは腎性貧血治療薬として広く普及している。現在、透析患者約30万人のうち、約8割がESAによる貧血治療を受けていると考えられている。 従来のESAは血中半減期が短く、頻繁に投与する必要がある。透析患者では、通常、週3回透析がありESAもその際に投与できるため、通院回数が増えることはないが、保存期や腹膜透析の場合、通常、月に1回もしくは2ヵ月に1回の通院となるため、その間隔では従来のESAでは十分な効果が得られない。十分な効果を得るには、ESA投与だけのための通院が必要となることから、通院頻度が月1回という患者でも治療可能な、血中半減期の長いESAが求められていた。4週間に1回の投与で目標ヘモグロビン濃度を達成 今回承認されたエポエチンベータペゴルは長時間持続型のESAであり、既存のESAより長い血中半減期を有する。そのため、維持用量として、皮下または静脈内投与のいずれにおいても4週間に1回という少ない投与頻度で、確実かつ安定した効果が得られる。また本剤の投与により、腎性貧血治療のガイドライン1)の目標ヘモグロビン値を達成することが確認されている。これらの特徴から、通院が月1回という保存期や腹膜透析の患者に、とくにニーズが高いと予想される。 なお、皮下投与だけではなく静脈内投与においても、4週間に1回の投与が可能であることも特徴の1つである。 安全性については、既存のESAと異なる副作用は確認されていない。なお、本剤は2007年欧州での承認以降、すでに100ヵ国以上で発売されている。透析患者におけるリスク低減 一方、透析患者にとっては、通院の負担という面では従来のESAでも問題はないものの、注射という医療行為によるリスクの低減につながる。きわめて稀とはいえ、薬剤や用量の取り違えや感染のリスクはゼロではなく、できる限りリスクを軽減することが求められるが、従来のESAから本剤に変更することで、月に13回の注射が1回に減り、リスクは13分の1となる。 さらに、医療従事者における業務負担の軽減、薬剤の保管スペースの削減など、本剤のメリットは大きいと言えよう。個々の患者に適したESA治療が可能に ミルセラの登場により、患者の状態に合わせた腎性貧血治療の選択肢が増えると考えられる。今後は、保存期や透析期の病期の違い、貧血の程度や患者の状態により、それぞれの特徴を考慮し、個々の患者に合った適切なESA治療が可能になると考えられる。

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慢性腎臓病に対するLDL-C低下療法、動脈硬化イベントを低減

シンバスタチン(商品名:リポバスなど)と小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブ(同:ゼチーア)の併用療法は、慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテローム性動脈硬化イベントを有意に抑制することが、Colin Baigent氏らが行ったSHARP試験で示され、Lancet誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月9日号)で報告された。慢性腎臓病は心血管疾患のリスクを増大させるが、その予防についてはほとんど検討されていない。スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、非腎臓病患者では心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術施行のリスクを低減させるが、中等度~重度の腎臓病がみられる患者に対する効果は明らかではないという。腎臓病患者におけるアテローム性動脈硬化イベント抑制効果を評価する無作為化プラセボ対照試験SHARP(Study of Heart and Renal Protection)試験は、中等度~重度腎臓病を有する患者に対するシンバスタチン+エゼチミブの有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験。対象は、40歳以上の心筋梗塞や冠動脈血行再建術の既往歴のない慢性腎臓病患者で、シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為化に割り付けられた。事前に規定された主要評価項目は、主なアテローム性動脈硬化イベント(非致死的心筋梗塞/冠動脈心疾患死、非出血性脳卒中、動脈の血行再建術施行)の初発とし、intention to treat解析を行った。平均LDL-Cが0.85mmol/L低下、動脈硬化イベントは17%低下2003年8月~2006年8月までに9,270例(透析患者3,023例を含む)が登録され、シンバスタチン+エゼチミブ群に4,650例が、プラセボ群には4,620例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値4.9年の時点で、平均LDL-C値はシンバスタチン+エゼチミブ群がプラセボ群よりも0.85mmol/L低下[SE:0.02、服薬コンプライアンス(遵守率≧80%)達成者:約3分の2]し、主なアテローム性動脈硬化イベントの発生率は17%低下した[11.3%(526/4,650例) vs. 13.4%(619/4,620例)、発生率比(RR):0.83、95%信頼区間(CI):0.74~0.94、log-rank検定:p=0.0021]。非致死的心筋梗塞/冠動脈心疾患死の発生率には差はみられなかった[4.6%(213/4,650例) vs. 5.0%(230/4,620例)、RR:0.92、95%CI:0.76~1.11、p=0.37]が、非出血性脳卒中[2.8%(131/4,650例) vs. 3.8%(174/4,620例)、RR:0.75、95%CI:0.60~0.94、p=0.01]および動脈の血行再建術施行率[6.1%(284/4,650例) vs. 7.6%(352/4,620例)、RR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.0036]は、シンバスタチン+エゼチニブ群で有意に低下した。LDL-C値低下のサブグループ解析では、主なアテローム性動脈硬化イベントの発生について有意なエビデンスは得られず、透析施行例および非施行例でも同等であった。ミオパチーの発生率は、シンバスタチン+エゼチニブ群0.2%(9/4,650例)、プラセボ群0.1%(5/4,620例)と、きわめて低頻度であった。肝炎[0.5%(21/4,650例) vs. 0.4%(18/4,620例)]、胆石[2.3%(106/4,650例) vs. 2.3%(106/4,620例)]、がん[9.4%(438/4,650例) vs. 9.5%(439/4,620例)、p=0.89]、非血管性の原因による死亡[14.4%(668/4,650例) vs. 13.2%(612/4,620例)、p=0.13]の発生率についても両群間に差はなかった。著者は、「シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日は、進行性の慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテローム性動脈硬化イベントの発生率を有意に抑制した」と結論し、「腎臓病のない集団と同様に、LDL-C値低下の絶対値に基づくイベント低下率は年齢、性別、糖尿病、血管疾患の既往、脂質プロフィールにかかわらず同等であったことから、SHARP試験の結果は慢性腎臓病のほとんどの患者に適応可能と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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インクレチン関連薬は、次のステップへ~ケアネット女性記者による第54回糖尿病学会レポート~

2011年5月19日(木)から3日間、札幌市にて、第54回日本糖尿病学会年次学術集会「糖尿病と合併症:克服へのProspects」が開催された。会長の羽田勝計氏(旭川医科大学)は、会長講演にて、「糖尿病治療における細小血管および大血管障害の発症・進展が阻止されれば、健常人と変わらないQOLの維持、寿命の確保が可能になる」と述べ、合併症の克服により本学会のテーマである「克服へのProspects」が10年後には「克服可能」となることを期待したい、とのメッセージを伝えた。また、今年3月に発生した東日本大震災を受けて、緊急シンポジウム「災害時の糖尿病医療」も開かれた。被災地での糖尿病医療や被災地外からの支援活動、阪神・淡路大震災などの過去の災害における経験が報告され、今後の災害時における糖尿病医療のあり方について討議された。その他、「IDFの新しい2型糖尿病の治療アルゴリズム アジアへの適応は」、「J-DOIT1,2,3,JDCPからのメッセージ」、「インクレチン関連薬の臨床」といった数多くのシンポジウムが開催された。多くのセッションが目白押しではあったが、今回、ケアネットでは特に「インクレチン関連薬」に注目した。昨年度のインクレチン関連薬発売ラッシュ以降、初の学会を迎えたことから、「インクレチン関連薬」にフォーカスしてレポートする。【注目を集めたインクレチン関連薬】昨年度は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の発売が相次ぎ、糖尿病治療の歴史にとっても大きな変革の年となった。DPP-4阻害薬では、2009年12月のシタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)を皮切りに、2010年にビルダグリプチン(商品名:エクア)、アログリプチン(商品名:ネシーナ)が発売、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)とエキセナチド(商品名:バイエッタ)が医療現場に登場した。2011年には各薬剤の14日間の投薬期間制限が順次解除されるため、長期投与が可能となり、普及の勢いはさらに増すだろう。本学会でも、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を総称する「インクレチン関連薬」が注目を集め、シンポジウム、一般講演、ポスターなどで多くの臨床成績が発表された。【効果と安全性、薬剤間の明確な差は?】発表されたデータは、ほとんどが各薬剤の「有効性」と「安全性」に関するものであった。「既存薬からインクレチン関連薬への切り替えで、どの程度血糖値が低下するのか?本当に低血糖は起こさないのか?」という臨床現場の疑問が浮き彫りになった形だ。その結果、多くのデータで各薬剤の有効性と安全性が明らかになった。しかし、これはすべての薬剤で同様の結果が報告されており、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬との間での差はあるものの、同効薬群間での差は大きくはない。どの薬剤を使用しても一定の効果は得られそうだ。【DPP-4阻害薬市場の激化は必至】DPP-4阻害薬に関する各薬剤別の発表データについてみてみると、やはり先行して発売されたシタグリプチンを用いた報告症例が多い印象であった。ビルダグリプチン、アログリプチンについては適応上、透析を行うような重症腎機能障害例にも投与が可能(※ただし慎重投与)ということで、透析患者や腎機能低下症例への投与例の報告があった。ただし、これらはあくまで一部のデータであり、実際の臨床現場において薬剤の使い分けに関する明確な指針や投与患者像を確立することは難しいだろう。DPP-4阻害薬は期待が高いだけに、数多くの種類が市場に出回ることになる。どれを選択するかは現場の医師の手に委ねられることになるだろう。【今後必要となるのは、効果不応例を早期に見分ける指標】とはいえ、すべての患者にインクレチン関連薬が効果を示すというわけではなく、著効例と不応例に分かれる傾向が多くの報告で挙げられた。当然、どのような患者に効果があるのか(最適患者像の探索)、そして不応例を早期に見分けるにはどうすべきか(検査指標とそのカットオフ値)にも注目が集まった。その点に着目した解析結果も発表されたものの、サンプル数が少なく、発表により結果のばらつきがあり、多くの演題で「今後の長期的検討が必要」、「多くの症例蓄積が必要」というまとめに終わった。来年以降、各薬剤の著効例、不応例のそれぞれの臨床的特徴を検討したデータが増え、投与患者像の明確化も進むのではないかと期待される。【インスリンからの切り替え例の報告も】演題の中には、既存経口薬以外にも、BOTやインスリン療法など、すでにインスリン注射を導入している患者からインクレチン関連薬へ切り替える例も報告された。当然、インスリン単位数の少ない症例がメインではあるが、インスリン療法で糖毒性をいったん解除することで内因性の基礎インスリン分泌能の回復が期待でき、その後のインクレチン関連薬の切り替えも奏功する可能性が示唆された。切り替えが奏功した例の特徴としては、糖尿病の罹病期間が短く、合併症が少なく、食後のインスリン追加分泌が保たれたインスリン単位の少ない症例、などが挙げられた。インスリン療法からの切り替えがうまくいけば、患者にとっても朗報である。また、インクレチン関連薬による治療の可能性も広がるだろう。切り替え時の高血糖などに留意は必要だが、安全性に配慮しながら、今後、治療が確立されることを期待したい。【まとめ】今回、多くのインクレチン関連薬の臨床データが発表された。今後さらにDPP-4阻害薬の種類が増える(※アナグリプチン、テネリグリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチンが現在フェーズⅢの段階にある)ことを考えると、医師側は各患者にあった薬剤を医師自身の基準で選択していくことが求められそうだ。インクレチン関連薬の発売を契機に、糖尿病治療は大きく変わり始めた。糖尿病治療の目標が、細小血管および大血管障害の発症・進展の阻止とその後の患者のQOLや寿命の確保にある以上、インクレチン関連薬をベースとした早期のエビデンス構築にも期待がかかる。10年後の「克服可能」な糖尿病治療に向け、インクレチン関連薬の今後の動きに注目したい。(ケアネット 佐藤寿美)

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血液透析後のヘパリンロック、3回のうち1回はrt-PAを

血液透析患者の透析終了後に行われるいわゆるヘパリンロックについて、週3回のうち1回は、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)に代えて行う方が、ブラッドアクセスとして使用する中心静脈カテーテルの故障(機能不全)や菌血症のリスクを有意に減少することが明らかになった。カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏ら「PreCLOT」研究グループが、多施設共同無作為化盲検比較試験を行い明らかにしたもので、NEJM誌2011年1月27日号で発表された。これまで、ヘパリンロックなど各種カテーテルロック療法の効果については明らかにされていなかった。ヘパリンロックのみ群と、3回のうち1回はrt-PAロックを行う群に割り付け追跡PreCLOT(Prevention of Dialysis Catheter Lumen Occlusion with rt-PA versus Heparin)研究グループは、カナダの11ヵ所から、長期にわたって週3回の血液透析を受けている被験者225例を、被験者がブラッドアクセスを新規のものとした際に、週3回ともヘパリンロック(5000 U/mL)を行う群(ヘパリン群115例)と、週3回のうち2回目はrt-PAロック(各カテーテル内腔に 1 mg)を行う(1、3回目はヘパリン)群(rt-PA群110例)とに、無作為に割り付け追跡した。主要アウトカムはカテーテルの機能不全発生、副次アウトカムはカテーテル関連の菌血症発生とした。治療追跡期間は6ヵ月間。治療割り付けの情報については、患者、試験、試験スタッフともに知らされなかった。ヘパリンのみだと、カテーテル機能不全発生はほぼ2倍、菌血症発生はほぼ3倍高い結果、カテーテルの故障発生は、ヘパリン群は34.8%(40/115例)であったのに対し、rt-PA群は20.0%(22/110例)であり、rt-PAを週1回用いた場合に比べてヘパリンのみだった場合のリスクはほぼ2倍高かった(ハザード比:1.91、95%信頼区間:1.13~3.22、P=0.02)。カテーテル関連の菌血症発生は、ヘパリン群は13.0%(15/115例)であったのに対し、rt-PA群は4.5%(5/110例)であった。これは、それぞれ1.37例/1,000患者・日、0.40例/1,000患者・日の発生に相当する(P=0.02)。全原因菌血症発生リスクは、ヘパリン群の方がrt-PA群に比べほぼ3倍高かった(ハザード比:3.30、95%信頼区間:1.18~9.22、P=0.02)。出血を含む有害事象リスクは、両群で同等だった。(武藤まき:医療ライター)

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急性腎障害の予後に、蛋白尿、eGFRは影響するか?

急性腎障害(acute kidney injury)による入院のリスクは、蛋白尿が重篤なほど、また推定糸球体濾過量(eGFR)が低下するほど上昇することが、カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。eGFRの低値は急性腎障害を示唆し、蛋白尿は腎疾患のマーカーであるが、急性腎障害のリスクの予測におけるeGFRと蛋白尿双方の意義は明確ではなく、急性腎障害や有害な臨床アウトカムには先行する腎疾患は影響しないとの見解もある。さらに、急性腎障害のリスクやアウトカムの評価には蛋白尿やeGFRは寄与しないとする最近の報告もあるという。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年11月22日号)掲載の報告。eGFR低下と蛋白尿の連携的な影響を評価研究グループは、eGFRと蛋白尿が急性腎障害やその後の有害な臨床アウトカムに連携的に及ぼす影響を評価するコホート試験を実施した。対象は、2002~2007年にカナダ・アルバータ州に居住した92万985人であり、ベースライン時に透析を受けておらず、血清クレアチニン値または蛋白尿(試験紙あるいはアルブミン-クレアチニン比で判定)のいずれかを外来で1回以上測定された者とした。主要評価項目は、急性腎障害による入院率とし、全死亡、腎臓関連の複合アウトカム(末期腎疾患、血清クレアチニン値倍加)の評価も行った。急性腎障害は、より長期的な予後情報をもたらす追跡期間中央値35ヵ月(範囲:0~59ヵ月)の時点で、6,520例(0.7%)が急性腎障害で入院した。eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合の急性腎障害による入院のリスクは、試験紙検査で高度と判定された蛋白尿の4倍以上に達した(蛋白尿がみられない場合とのリスク比:4.4、95%信頼区間:3.7~5.2)。試験紙検査で高度蛋白尿の場合、eGFR値にかかわらず、急性腎障害および透析を要する腎障害による入院のリスクが上昇した。急性腎障害で入院した患者では、死亡および腎関連の複合アウトカムのリスクも高かったが、ベースライン時にeGFR低値および高度蛋白尿がみられた場合はこのリスクの上昇が抑制されていた。著者は、「急性腎障害による入院のリスクは蛋白尿の重篤化やeGFRの低下に伴って上昇した。eGFR低下や蛋白尿がみられる場合は、その程度にかかわらず、長期的な死亡率は急性腎障害発症後に上昇した。臨床的に問題となる腎機能の低下は急性腎障害によって増加するが、ベースラインのeGFRが最低値の場合や蛋白尿が最高度な例では影響はなかった」とまとめ、「これらの知見は、急性腎障害のリスクが確認された場合にはeGFRおよび蛋白尿を考慮すべきであり、急性腎障害の存在はeGFRや蛋白尿に加え、さらに長期にわたる予後情報をもたらすことを示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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週6回の血液透析、週3回と比べて良好な転帰と関連

週6回の血液透析は、週3回の同実施と比べて、転帰が良好であることが、北米のFrequent Hemodialysis Network(FHN)の試験グループが行った多施設共同前向き無作為化試験の結果、示された。透析が必要な患者は米国では約40万人おり、90%が血液透析を一般に週3回受けているという。試験グループは、透析技術開発から40年以上が経つが、技術改善や新薬開発にもかかわらず死亡率は高く(約18~20%/年)、生命を維持することはできるが健康が回復することはまれで、合併症が多く、身体的機能や健康関連QOLが低いままなこと、また至適な実施回数について明らかにはなっていないことを受けて、血液透析の頻度と転帰について検討した。NEJM誌2010年12月9日号(オンライン版2010年11月20日号)掲載より。多施設共同で245例を12ヵ月間、週6回群と週3回群に無作為化試験は、北米にある65の透析施設(うち11は大学付属)で、被験者245例を12ヵ月間にわたり、週6回血液透析を受ける群(頻回透析群、125例)か週3回血液透析を受ける群(従来透析群、120例)に無作為に割り付け行われた。主要転帰は、死亡または左室体積の変化(MRI評価によるベースラインから12ヵ月までの変化)と、死亡または身体的健康ヘルススコア(RAND-36項目健康調査による)の変化の、二つの複合転帰が設定された。副次転帰には、認知機能、自己申告によるうつ症状、栄養・ミネラル代謝・貧血に関する検査マーカー、血圧、バスキュラーアクセスに関する入院および介入の割合などが含まれた。二つの主要複合転帰に有意なベネフィット認められる頻回透析群の透析治療は平均週5.2回で、1週間の標準Kt/Vurea量(尿素クリアランス×透析時間を尿素分布容積で標準化)は、頻回透析群が3.54±0.56、従来透析群が2.49±0.27で、頻回透析群が有意に高かった(P<0.001)。二つの主要複合転帰に関して、いずれも頻回透析群の有意なベネフィットが認められた。死亡または左室体積増加のハザード比は0.61(95%信頼区間:0.46~0.82、P<0.001)、死亡または身体的健康ヘルススコア低下の同値は0.70(同:0.53~0.92、P=0.007)だった。また頻回透析群の方が、バスキュラーアクセスに関する介入頻度が高い傾向が認められた(ハザード比:1.71、95%信頼区間:1.08~2.73)。頻回透析群は、高血圧、高リン血症のコントロール改善との関連も認められた。しかし認知機能、自己申告によるうつ症状、血清アルブミン濃度、赤血球造血刺激因子製剤使用との関連については、頻回透析の有意な影響は認められなかった。試験グループは、「頻回透析は、死亡または左室体積の変化、死亡または身体的健康ヘルススコアの変化という二つの主要複合転帰については良好な結果と関連していた。ただし、バスキュラーアクセス関連の介入頻度も高めていた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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准教授 高橋 寛先生の答え

クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点など先生の記事大変勉強になりました。特に「主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛 だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。」というくだりはハットしました。私の病院も腰痛患者を大きな病院へ紹介することが多々あります。精密な検査はできないまでも、クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点などがあれば是非教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。とにかく触診することです。60歳以上の方で、糖尿病、高血圧の方は多数おられます。下肢痛がひどい方の場合、血流障害があれば、下肢の皮膚温が低下しています。また必ず足背動脈の拍動はチェックすべきです。下肢の疼痛、しびれに関して、血流障害と腰椎病変が両方関与していることもままあります。手術をしたのち、残存した症状が血流障害の可能性もあります。私は何度も痛い目に遭っています。例えば76歳男性,糖尿病、高血圧の治療中の方でした。ABI正常値、足背動脈も蝕知可能、MRIではL5/Sの狭窄あり、S1神経根ブロックは有効でしたので内視鏡下手術を行いました。術後短期間は症状改善したようですが、下肢のしびれが再燃し、下肢の造影CTを行った所、立派なASOでした。術前に糖尿病科の医師に血流障害について質問したところ大丈夫と言われて鵜呑みにした結果です。最近では糖尿病、透析患者にはABIに加えTBIも検査しています。超音波骨折治療法について貴院は超音波骨折治療法の実施施設とのことですが、症例数と成績を教えていただけないでしょうか?また、この治療法は使える範囲が決まっていますが、仮にその範囲制限を考えなかった場合、範囲外の症例にも活用できそうなのでしょうか?症例数は把握しておりませんが多数行っております。成績は明らかに有効だと思います。制限が無ければ、新鮮骨折、骨切り手術、骨移植術などに対しての適応があれば良いと思います。(ヤンキース時代、松井選手が橈骨遠位端骨折に対してやってましたよね?)東邦での研修の改善ポイントについて東邦大学での研修についてお聞きします。当然良いところばかりではなく、改善する必要があることも多いと思います。高橋先生が感じる、ここは改善しなければ、と思っていらっしゃることがありましたら教えてもらいたいです。あくまで整形外科の事ですが、もっとじっくりと研修医相手に系統立てた講義をする時間を作るべきだと思います。これは研修医の先生へのお願いです。我々も人間です。興味を持ってぶつかってきてくれる人には、何でも見せるし、頑張ってお付き合いします。後期研修について現在、市中病院で研修している卒後1年目の者です。後期研修は大学でと思っております。東邦大学さんの雰囲気のよさが大変分かり参考になりました。ただ、よその大学出身でも、東邦大出身の先生と同じように扱っていただけるのでしょうか?また、現在東邦さんにいる後期研修医の中に他大学出身の先生は何割くらいいらっしゃるのでしょうか?差し支えなければ教えていただけると幸いです。正確な数は把握していないのでお答えできません。しかしながら東邦大学は、他大学の出身だからといって差別はしておりません。同等に扱っているはずです。私の部下にも他大学出身の医師がおりますが、脊椎外科の研修中であり、近日中に指導医を取得する予定です。他科にも他大学から入局し、講師以上になられている先生も多々おります。ストレスが腰痛につながるケースについて研修医なので質問が拙いかも知れませんが許して下さい。先生の記事の中にストレスが腰痛につながるケースがあるとありましたが、その症例を見分けるポイントはあるのでしょうか?ご教示宜しくお願いします。例えば、腰椎椎間板ヘルニア疑いの患者の場合です。通常はSLRテストをベッド上で行うはずです。これを疑わしい場合には、患者が座った状態で、膝関節を徐々に何気なく持ち上げます。すると本当にヘルニアの患者であれば体をのけぞらせます。これをflip testと言います。心理テストを行う事もあります。診察所見をとり、患者と話をし、画像所見と一致すれば問題ありませんが、違和感を感じた場合には医者同士で相談するのも1つの手でしょう。奇形性脱臼について出生時にすでに完全に脱臼している、奇形性脱臼についてうかがいます。治療が困難な症例だと思いますが、先端の臨床研究では何かしら研究は進んでいるのでしょうか?またこのような患者の場合、人工関節を入れることが可能なのでしょうか?身近に聞ける医師がいないため、お聞きしたいと考えました。宜しくお願いします。ごめんなさい、先天性脱臼の研究については門外漢です。しかしながら、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼、膝関節脱臼例の経験は当科でありますが、人工関節を入れていますよ。カイロプラクティックについて腰痛は専門外なので、素人質問になって恐縮です。小さな医院で内科をやっている町医者です。腰痛持ちの患者さんから、病院で診てもらうのが良いのか?カイロプラクティックに通うのが良いのか?と質問を受けることが多々あります。もちろん病院で診察してもらうことを進めるのですが、近所に、米政府の公認の「Doctor of Chiropractic」という資格を持っているカイロプラクティック師がいるらしく、整形外科医よりもそちらの方が専門的なのでは?と聞かれ、答えに困っています。何か明確に説得する方法はないものでしょうか?ご教示お願いします。私が留学した12年前にも、アメリカでも民間療法については問題視されておりました。単なる腰痛であれば、マッサージによって局所の血流が改善したり、筋緊張が緩和されて良いこともあります。しかしながら高齢者で骨粗鬆症がある場合、外傷が無くても脊椎圧迫骨折を来すことはままあります。脊柱の変形を力任せに引っ張っても矯正できるものではありません。よく骨盤牽引をすると、椎間板腔が拡がったり、脊柱の側弯が矯正されると勘違いされている患者さんもおられます。あくまで牽引は、筋緊張を和らげるために行っているものです。整形外科をやっておりますと、民間療法に行った後、症状がかえって悪くなり、受診される方を見受けます。私たち、整形外科で完全に痛みが取れないため民間療法に行く方もおられるでしょうが、少なくとも一度は整形外科を受診し、病態、骨質等を診察、評価されることをすすめます。やさしい手術について記事拝見しました。常に新しいものを取り入れようとしているお姿感服いたします。先生が駆け出しのころと、今とで一番変わった手術、術式を挙げるとしたら何があるでしょうか?できれば患者にとって最もやさしくなった手術を知りたいです。小生、とある田舎で老人相手にクリニックやっております。腰痛患者は総合病院におくりますが、高齢の方は大きい病院に行きなさいと言うと、怖がってなかなか行きません。「●●手術は、昔はこんなに大変だったけど、今は●●することで簡単になったんだよ。だからあなたの場合もよくなるよ、安心して大きい病院で診てもらいなさい。」と言って元気付けて不安を取り除きたいと考えております。宜しくお願いします。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対する手術だと思います。内視鏡を用いた方法ですと通常、翌日には離床できます。また最近、全国的に普及している棘突起縦割式の除圧術も術後疼痛が少なく、術後2,3日で離床が可能です。とにかく私が医師になった20年以上前には術後2週間の安静は普通でした。高齢の方は臥床期間が長いと、誤嚥性肺炎、褥瘡、認知症、筋力低下など様々な合併症を生じます。なるべく痛みの少ない手術を高齢者にはする事が肝心です。また最近固定術もMIS(Minimally invasive surgery)といってなるべく侵襲の少ない方法を様々検討しております。早ければこれも翌日離床可能です。私どもも、どの方法が優れているか、現在検証中です。先天的?な脊柱管の形態画像診断をしている放射線科医です。「腰痛精査」といった依頼で、腰椎 MRI を読影することが多いです。画像所見そのものにはあまり意味はないと考え、依頼内容に関連する所見を中心にレポートに列挙し、「症状に合うものを選んでください」とという気持ちでいます。ところで質問なのですが、脊柱管の狭さ、という観点から見ると、椎間板や黄色靭帯などと並んで、 先天的?な脊柱管の形態も重要に思えます。椎弓根が短いというだけでなく、左右椎弓板のなす角度が狭いこともよく経験されます。自分なりに調べたのですが、あまり系統立てて検討した報告やコンセンサスのようなものを見つけることができませんでした。何か良い資料などがありましたら教えていただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。(あまり重要なことでない、普通の教科書に載っている常識である、かもしれません。そうでしたらすいません。)先生のおっしゃる通りです。脊柱管が狭くても症状がない場合は治療の対象外であり、あくまで画像所見に見合った症状、症状に見合った画像所見があるかどうか整形外科医は判断すべきです。脊柱管狭窄症の分類には先天性(発育性脊柱管狭窄症)があります。古くはVerbiestの文献が有名です。J Bone Joint Surg36B 230-2371954,Orthop 、Clin North Am 6 : 177-196 1975などでしょうか?欧米人と、東洋人の我々ではかなり脊柱のアライメント、形態は異なります。そもそも脊柱管狭窄症自体が少ないと思います。日本人の正常例を報告した文献はあると思います。アメリカでは日本と異なりなかなか画像検査にも制限があります。今後先生が多数の症例から日本人の年代毎の形態評価など行い、発表されれば高く評価されるはずです。腰椎の形成術についてお世話になります。腰椎が潰れて歩行障害を生じている人に、椎体部分にプラスチックのようなものを入れ椎体を形成し、腰痛を緩和する手術があると聞きました。聖路加病院でやっているようですが、私は熊本ですが、地方でも一般的に普及してきている手術でしょうか?治療を希望している患者がいますのでお教えいただければ幸いです。経皮的椎体形成術は1984年にフランスで血管腫に対して初めて行われた術式ですが、近年、脊椎圧迫骨折に対しても行われています。椎体形成術には、骨セメント(PMMA),リン酸カルシウム骨セメント(CPC),自家骨、ハイドロキシアパタイトを用いた方法があります。骨セメントを用いた方法は、短時間で固まり、即効性があるため普及していますが、その一方、骨セメントの脊柱管内への漏出、固まる際に発生する熱、静脈塞栓等様々な問題点も抱えております。したがってもし放射線科医が行うのであれば、脊椎外科医と緊密な連携をとっている施設で行うべきでしょう。私どもの施設に、骨セメントを用いた椎体形成術後に馬尾障害を生じた患者が緊急搬送されてきた事もあります。どんな方法も、利点、欠点はあります。患者が納得できるように説明できる医師がぃる施設をお探しになるのが良いと思います。総括若い人には未来があります。是非、高い所を目指して頑張って下さい。頑張れば必ず周りが評価します。評価されれば余計に頑張りたくなります。また整形外科に興味のある方、是非、当科も選択肢の1つとして下さい。准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

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講師 斎藤充先生の答え

ビスフォスフォネートの耐性獲得についてこの度は突然の御質問、恐縮です。骨塩定量でYAMの80%ぎりぎりで、現状はまだ椎体骨折の所見もなく、ただ、家族歴で円背のひどい母を持つ、60歳前後の女性に対してのビスフォスフォネート投与の是非についてご教授頂ければと存じます。現在は家族歴をそれ程重視する事無く、YAMと圧迫骨折像が全ての様にされていますが、種々の患者さんを診ていると、やはり背中の曲がった母を持つ女性は徐々に円背が出現するように感じています。その様な患者さんの場合、ビスフォスフォネートを処方して円背の予防に努めるべきか(円背によるADL低下、逆流性食道炎、将来の誤嚥の増加など、円背も頚部骨折と同じ位大事な病態と思っております)、円背が出現してからの治療介入とすべきか、またはカルシウム製剤+Vit.K製剤でお茶を濁すか、悩ましく思っておりました。最近、ビスフォスフォネート製剤の耐性が数年で出る、とのデータもあり、余計に予防的介入は悩ましいところです。とりとめのない御質問で申し訳御座いません、よろしくお願い致します。家族歴は重要です.ビスフォスフォネート剤の耐性が数年で出るというのは,骨密度の上昇は数年で頭打ちになるということかと思いますが,骨折防止効果は,例えBMD上昇が頭打ちとなっても継続されます.投与中止により,時間依存性に骨リモデリングは亢進し,骨折リスクが上昇します.骨吸収マーカーの高値は,将来の骨密度低下,骨折リスク上昇の危険因子ですので,この患者さんの吸収マーカーの高値があれば,BP剤でも良いと思います.しかし,椎体骨折防止効果は,ラロキシフェンにもエビデンスがありますので,椎体骨折の防止をエンドポイントに考えるのであればラロキシフェンでも良いと思います. 透析患者にも当てはまるでしょうか腎性骨異栄養症を有する透析患者にも骨質マーカーの概念は当てはまるでしょうか。 当てはまります.CKD stageが上がるほど,酸化ストレスが上昇し,AGEs(Advanced glycation end products)の産生が亢進します.ホモシステインも上昇します.骨折リスクとリンクします.ストレス骨折と骨質マーカー骨質マーカー、はじめて知りました。素晴しい記事ありがとうございます。骨粗鬆症の治療といえば、ビスフォスフォネート系が有効と思っていたら、最近、逆に骨折がおきることもある(ストレス骨折?)とききました。骨質マーカーから、ビスフォスフォネートを投与したほうがメリット大の場合と、投与しない方がよい場合、といった判断はできるのでしょうか?この点は,十分なエビデンスはありませんが,我々の経験した症例では,治療開始時の骨質マーカーが高値でした.もともと骨質劣化が強い方は,BP剤による代謝抑制により,古いコラーゲンが蓄積が上乗せされて骨が脆弱になる可能性はロジカルにはあり得ると思います.健診で骨密度がひっかかった場合次にスクリーニングする場合、骨吸収マーカー、形成マーカー、ホモシステイン、ペントシジンは必須項目でしょうか?ホモシステイン、ペントシジンの基準値の目安はありますでしょうか?骨質改善で効果のある種々の薬のランク付けはどうなっていますか?よろしくお願いします。骨折リスクとしての値の目安ですが,ホモシステイン>15(高ホモシステイン血症などの病名でしか保険適応ありません).血中ペントシジン>0.05(腎機能低下の病名でしか保険適応がありません)です.骨質劣化(骨コラーゲンのAGEs悪玉架橋ペントシジン増加型)には,抗酸化作用,ホモシステイン低下作用のあるラロキシフェンなどが良い適応です.また,PTH製剤テリパラチドは,骨量,骨質を同時に改善する薬剤です.これらは,2010年のOsteoporosis Internationalに2つの論文で報告してます.慢性腎不全での骨質マーカーについて血液透析患者での骨粗鬆症はよく知られた事実で骨密度については多くの報告があります。しかし、骨質マーカーについて余りなく先生の言われるトータルでの骨評価をしたく考えています。ホモシステインやペントシジンの濃度測定のみで評価できるのでしょうか。また、全く別の話題として副甲状腺ホルモンのない環境下(副甲状腺摘出後)での骨生成に関して(骨生検では明らかにされている)その機序を考える上で何かsuggestionがあればご教授下さい。当てはまります.CKD stageが上がるほど,酸化ストレスが上昇し,AGEs(Advanced glycation end products)の産生が亢進します.ホモシステインも上昇します.骨折リスクとリンクすることは良くご存知かと思います.腎不全症例(2PTH),CKD stage2~4までのヒト骨生検の結果では,腎機能低下の程度に依存して,骨質劣化(酵素依存性の善玉架橋の低下,AGEs架橋の過形成)が生じていました.(論文revise中)PTHの高低に関わらず骨コラーゲン中のAGEs架橋の過形成は共通した所見です.これは,代謝回転に関係なく,生まれたばかりのコラーゲンでも,高酸化ストレス,高カルボニルストレス環境にさらされて,あっという間にAGEs化が起こると考えられます.骨の評価したが、治療で薬が多すぎ骨代謝に興味もっていますが、マーカーや薬が臨床で使えるようになって、逆にこまっています。3つの型に分けるのはいいとしても、骨粗鬆の薬物が多すぎで3-5種類ものませなければいけない場合があり、骨折予防として大量の薬が必要なのか、疑問です。ターゲットをしぼった治療はできないでしょうか。骨折が予知される患者群、効果が確信できる群は明確にわかるのでしょうか。 ビスフォスフォネートであれ,ラロキシフェンであれ,ひとまず1年投与すれば,骨折防止効果は,単剤でも50%発現します.めんどうであれば,これらのみの投与を先ず行って頂ければ良いと思います.その後,患者さん毎に,骨密度が増えても新規骨折をおこすなど,多様な患者集団に対応することを考えていくのが良いと個人的には思っています.英語論文の作成ノウハウについて世界に通じる成果を挙げていらっしゃるのに、海外留学のご経験がないことに驚きました。私も海外留学の経験はなく、英語も苦手です。しかし上を目指す以上は英語論文を書く必要があり困っています。先生も最初はご苦労されたと思いますが、その中で得たノウハウというかTipsのようなものがあれば是非参考にさせて欲しいです。会話の英語と,論文英語は異なります.英語論文を読んでいると同じような言い回しがたくさん出ているのに気が付かれると思います.自分で2-3本英文を書くと,そのパターンが見えてきます.そうなると,しめたもので,相手の質問の内容さえ聞き取れれば,英語論文で出てくるような言い回しで,答えていけます.海外の研究者は例えたどたどしい英語でも,そんなことは気にしません.ヒアリングを鍛えることが大事です.慈恵大での研修について慈恵に在学中の学生です。スポーツ・ウェルネスクリニックに興味があり、そこで整形外科医としてやっていきたいと考えているところです。差し支えなければ、斎藤先生が感じる、慈恵の整形外科の良いところ悪いところ、これから改善していかないといけないと思ってらっしゃることを教えていただけないでしょうか?話すと長くなるので,いつでも,私のラボに訪ねてきて下さい,いつでもお話します.超きさくですので,遠慮無くどうぞ.私なりに考える慈恵整形のあるべき姿を,先生のようなパッションのある若手と造り上げたいと思っていますので,おいで下さい,勧誘ではありません.整形外科に限らず全科に共通して言えることですので,語り合いましょう.学外からの選択実習について記事と関係ない質問で申し訳ないのですが、慈恵さんのホームページに「夏休みなどを利用して、選択実習期間外で数日間の実習や一日だけの見学を行うのも大歓迎」とあります。具体的にどのような実習を行えるのでしょうか?またはこれまでどのような実習を行ってきたのでしょうか?数日という短い期間でどのようなことを経験できのか大変興味があります。宜しくお願いします。外来,病棟,手術の助手など,実地の病院臨床に短期間でも濃密に経験してもらいます.またスポーツ整形外科を希望されるかたは,スポーツウェルネスクリニックを中心に回ることもできます.ご本人の希望を重視して,決めることにしています.超アットホームですので,是非,ホームページにある医局長,鈴木先生,もしくは私に連絡下さい.詳しく説明します.1日の見学の学生さんもいますし,数日の方も多くいらっしゃいます.AGEs蓄積による骨質低下に関してはじめまして。AGEsの生成抑制(抗糖化)に関心がある外科医師です。先生は以前、ためしてガッテンやたけしの家庭の医学で、ペントシジンによるコラーゲンの悪玉架橋をご紹介になられました。ペントシジンの測定は血液を用いて行われていると存じますが、蛍光性を有する物質ですので、皮膚のAGEsを紫外線励起によって測定するAGE Readerという機器で皮膚AGEsを測定した場合にも、その値が高値を呈する場合は「骨質劣化」のリスクが高いと考えてよろしいでしょうか?よろしくご教授下さい。すでに整形外科手術症例,150名から,皮膚,骨,靭帯,血液,尿を手術時に同時に採取し,ペントシジン測定とSkin AGEsリーダーによる測定を行い,生体内の相関性を学会報告し,論文作成しています.詳しいデータはお話できませんが,先生のおっしゃる通りと思います. 総括多くのご質問を頂きありがとうございます.これまで,長い研究生活で質問を無数に受けてきました.質問は私を育ててくれました.「私のプレゼンでは,これも伝えられていなかったのか...」と反省し,次回のプレゼンには改善するようにしています.このため私の講演などは,同じスライドをいつもだらだら話すことはしません.講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌、真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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CKD患者への透析開始を早めても生存改善に有意差認められず

慢性腎臓病(CKD)ステージ5の患者に対し、早期に維持透析開始をしても、生存率あるいは臨床転帰の改善とは関連しないことが明らかにされた。維持透析開始のタイミングには、かなりの差異がみられるものの、世界的に早期開始に向かう傾向にある。そうした中で本報告は、オーストラリアのシドニー医科大学校・王立North Shore病院腎臓病部門のBruce A. Cooper氏らの研究グループが、維持透析開始のタイミングが、CKD患者の生存に影響するかどうかを検討するため、早期開始群と晩期開始群との無作為化対照試験「IDEAL」を行った結果によるもので、NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年6月27日号)で発表された。eGFR10~14 mL/分を早期、5~7 mL/分を晩期に割り付けIDEAL(Initiating Dialysis Early and Late)試験は、オーストラリアとニュージーランドの計32施設で実施された。18歳以上の進行性のCKD患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が体表面積(コッククロフト・ゴールト式を用いて算出)1.73m2当たり10.0~15.0mL/分の患者の中から、eGFRが10.0~14.0mL/分の患者を早期に透析開始する群(早期開始群)に、eGFRが5.0~7.0mL/分の患者を遅く開始する群(晩期開始群)に無作為に割り付けた。試験参加者は、2000年7月~2008年11月の間に合計828例(平均年齢60.4歳、男性542例、女性286例、糖尿病患者355例を含む)が、早期開始群404例、晩期開始群424例に割り付けられ、2009年11月まで追跡された。主要評価項目は、全死因死亡とした。死亡率、有害事象とも有意差は認められず透析開始までの期間の中央値は、早期開始群1.8ヵ月(95%信頼区間:1.60~2.23)、晩期開始群は7.4ヵ月(同:6.23~8.27)だった。なお晩期開始群のうち75.9%は、開始指標としたeGFRは7.0mL/分より高値だったが、臨床症状が発現したため透析開始となった。追跡調査期間の中央値3.59年の間に、早期開始群404例中152例(37.6%)、晩期開始群424例中155例(36.6%)が死亡した(早期開始群のハザード比:1.04、95%信頼区間:0.83~1.30)、P=0.75)。有害事象(心血管イベント、感染症、透析合併症)の頻度においても、有意な群間差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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ACCORD試験の細小血管合併症リスク、強化療法早期中止後の追跡結果

心血管リスクの高い2型糖尿病患者に対する強化療法(HbA1c<6.0%)は、標準療法(同7.0~7.9%)に比べ細小血管合併症のリスクを低減させないものの、その発症を遅延させ、腎、眼、末梢神経の機能の一部を有意に良好に保持することが、アメリカCase Western Reserve大学のFaramarz Ismail-Beigi氏らが行ったACCORD試験の追跡結果で明らかとなった。本試験は、2008年2月、中間解析で総死亡が強化療法群で有意に多かったため一部が早期中止となり、世界中の糖尿病専門医に衝撃を与えた。研究グループは、強化療法群の患者を標準療法群へ移行したうえでフォローアップを続け、今回、事前に規定された細小血管合併症の解析結果を、Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月29日号)で報告した。事前に規定された複合アウトカムと臓器機能について評価ACCORD試験の研究グループは、2型糖尿病患者では血糖値を低下させることで細小血管合併症の発症を低減できるかについて検討した。本試験には北米の77施設が参加し、対象は年齢40~79歳、HbA1c>7.5%、心血管疾患あるいはそのリスク因子を二つ以上有する2型糖尿病患者であった。これらの患者が、HbA1c<6.0%を目標とする強化療法あるいはHbA1c 7.0~7.9%を目標とする標準療法を施行する群に無作為に割り付けられた。今回の解析では、以下の事前に規定された複合アウトカムについて評価を行った。(1)主要複合アウトカム:透析あるいは腎移植、血清クレアチニン>291.7μmol/L、光凝固療法あるいは硝子体切除術。(2)副次的複合アウトカム:末梢神経障害+主要複合アウトカム。(3)腎、眼、末梢神経の機能に関する事前に規定された13の副次的エンドポイント。患者も担当医も治療割り付け情報を知らされていた。細小血管合併症の解析は全症例について行われ、受療の状況やコンプライアンスは考慮されなかった。強化療法群で、腎、眼、末梢神経障害の発症が遅延、7つの副次的エンドポイントが有意に良好1万251例が登録され、強化療法群に5,128例が、標準療法群には5,123例が割り付けられた。中間解析において、強化療法群で総死亡が有意に多かったため試験は早期中止とされ、この群の患者は標準療法群へと移行された。移行時点における主要複合アウトカムの発現率は、強化療法群が8.7%(443/5,107例)、標準療法群も8.7%(444/5,108例)(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.88~1.14、p=1.00)、副次的複合アウトカムはそれぞれ31.2%(1,591/5,107例)、32.5%(1,659/5,108例)(同:0.96、同:0.89~1.02、p=0.19)であり、いずれも両群間で同等であった。試験終了時の主要複合アウトカムの発現率は、強化療法群が10.9%(556/5,119例)、標準療法群は11.5%(586/5,115例)(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.07、p=0.42)、副次的アウトカムはそれぞれ38.2%(1,956/5,119例)、40.0%(2,046/5,115例)(同:0.95、同:0.89~1.01、p=0.12)であり、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。試験終了時において、強化療法群では細小血管合併症のリスクは低減されなかったが、アルブミン尿や眼合併症、神経障害の発症が遅延していた。また、腎、眼、末梢神経の機能に関する13の副次的エンドポイントのうち7項目が、強化療法群で有意に良好であった(p<0.05)。著者は、「強化療法では、総死亡や心血管疾患関連死、体重増加、重篤な低血糖のリスクが増大する点を考慮したうえで、その細小血管合併症の抑制効果のベネフィットを慎重に検討すべきである」と結論し、「我々はHbA1c<6.0%という現在の治療戦略の目標値を安易に考えすぎかもしれない。ACCORD試験の患者のフォローアップを継続することで、長期的なリスク対ベネフィットの評価を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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教授 白井厚治先生の答え

最近のゼロカロリージュースについて0キロカロリーのコーラなどが最近は多く売られてますが、代謝内分泌学的には糖尿病の方に自信を持って勧められているのでしょうか?あくまで噂に過ぎないのですが、ああいうゼロカロリー飲料そのものには確かにカロリーがなくても、一緒に他の食事を摂った時に他の糖質の吸収を促進する作用があると聞きました。。。。PS:そもそも、人工甘味料のアスパルテームが身体に良いかどうかわかりませんし、炭酸飲料は身体に悪いのかもしれませんが。。。実際に、カロリーゼロ表示の飲料物を飲んでもらい、30分から120分まで、採血したところ、血糖の増加はほとんど見られないものもありましたが、なかにはあがるものもあり、原因は、カロリーゼロ表示は、糖質0.5%以下で使っているとのことでした。ですから、成分表示で、糖分ゼロと明記しているものは大丈夫でしょうが、それ以外のものは、大量飲めば、血糖は上がる可能性があります。アスパルテームについては、アミノ酸摂取として評価してよいと思われます。極端に、多用しなければ問題ないと思います。高感度CRPについて高感度CRPは動脈硬化の一つのいい指標でしょうが、上気道炎、歯肉炎などの炎症にても上昇すると理解しています。そうすると、風邪の流行している季節などでは動脈硬化の判定ができずらくなるということはないでしょうか?その通りで、CRPは体内でほかに目立った炎症がない場合にのみ、動脈硬化(炎症性反応としての)の指標として意味がありますが、特異性は、高感度CRPを用いてもありません。大規模スタデイで、ある治療の効果などをみるにはよいでしょう。しかし、日常診療で、個々の例に当てはめ、それのみで、あなたは動脈硬化があります、ありませんとの判定に用いるのは、困難と思います。逆に、動脈硬化のためと決め込んで、ほかの炎症、癌などの初期を見逃す可能性もあります。個人には参考にする程度でよいのではないでしょうか。破壊性甲状腺炎の診断動悸、全身倦怠、微熱、軽い咽頭痛の症状で他院受診。FT3 10.4,FT4 4.6 TSH感度以下、 抗体陰性(TPO、TG、TRAb,TSAb)でCRP 1前後、血沈正常からやや亢進、甲状腺エコーでまだら様low echo部位のある患者さんが当院紹介となりました。ヨードuptake 1%以下で破壊性甲状腺炎と診断しましたが、一貫して頸部痛はありません。頸部痛のない亜急性甲状腺炎と判断するのか、咽頭炎併発の無痛性甲状腺炎と迷いました。これでTPO抗体やTG抗体が陽性であればさらに橋本病の急性増悪とも迷うところです。頸部痛のない亜急性甲状腺炎という病態はあると考えて宜しいのでしょうか。また今回のケースではありませんが橋本病の抗体が陽性の場合、無痛性甲状腺炎と橋本病の急性増悪との鑑別についてもご教授いただければ幸いです。甲状腺機能亢進でTSAb、TRAb陰性、さらにヨードuptakeの低下という所見は破壊性甲状腺炎に矛盾しません。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は炎症反応があり、low echo部位を認めるととも頸部痛はほぼ必発です。本例では頸部痛なしなので、亜急性甲状腺炎とは言えないでしょう。従って、無痛性甲状腺炎の可能性が強くなります。無痛性甲状腺炎は、多くは橋本病を基盤とした疾患とされており、本例がTPO、TGの抗体が陰性であることから、合致しません。まだ特定されていませんが何らかのウィルスによる甲状腺炎かもしれません。実際、本症例をどうするかですが、私なら経過観察が重要と考えます。ホルモン値を追跡し、下がればそれでよく、もし、炎症反応が強くなったり、頸部痛が出現してきたりすれば、亜急性甲状腺炎と考えて、ステロイド投与も考慮していくべきでしょう (当面はNSAIDでも十分)。甲状腺機能亢進症が長引くようであれば、甲状腺中毒症状に応じて、メルカゾールを適量処方、経過観察します。術前術後の糖尿病コントロール経口糖尿病薬は手術前後は禁忌となっています。手術前後とはどれくらいの期間をいうのでしょうか。その間はインシュリンでコントロールすることになりますが基本的なやりかたをご教示ください。手術の種類、術後の食事摂取の状況からも、ことなり、一律にはいえないと思います。一般に消化管手術は、吸収が不安定なこともあり、最低前1日、後7日間くらいは、血糖測定下でのインスリン治療が望まれます。SU剤を中止してのインスリン量の決定は、個々異なり、試行錯誤ですが、グリペングラマイド(2.5mg)3T/日では、およそ、インスリン必要量は、8-12単位くらいではないでしょうか。当院では、毎食前血糖測定後、血糖(mg/dl)100-120、  120-150、150-200、200-250、250-300 それぞれ、インスリン(レギュラー)2-4、4-6、6-8、8-10、10-12単位打つことを目安にしています。大学病院に足りないもの先生が大学病院の経営のみならず、臨床の現場でもご活躍されている様子、記事で拝見しました。大学病院の上から下までご存知の先生にお聞きしたいことがあります。「今、大学病院に足りないもの」を一つ挙げるとしたら、なんでしょうか?今や大学病院も収入につながる診療に振り回され、臨床研究の機会がどんどん減っているような感があります。周りの若手を見ても、診療に疲れて、「大学病院でバリバリ研究するぞ!」という気概を感じることができません。魅力ある大学病院を作るために何が必要なのか?何が足りないのか、日々悩んでいる状況です。ご教授頂けると幸いです。こんな時代の今こそなぜ、大学病院にいるのか、どのような姿勢をとるのか、原点が問われていると思います。それというのも、いろいろ言われていますが、医療の原点である患者さんの満足度(医療レベルもふくめ)を中心に、医師をきちんと配備し、グループ、科の壁を乗り越え、互いに手を出し合ってゆけば、大学病院は採算的にやってゆけるというのが実感でした。ただそこには、多くの若い医師たちがいるということ、即ち、採算的にみると、薄給でがんばってくれている若手医師がいるからこと成り立つことを忘れてはなりません。それに対して、彼らが大学病院にいる存在意義を見出すには、スタッフが魅力的な医療技能を提示でき、全身全霊をかけて患者さんを診ているすばらしい姿をみせること。若手医師は今の医療を学ぶのみでなく、医療を開拓していくメンバーの1人として、テーマを持ち未解決なものを解決する術を身につけることの充実感とそれによる自信が必要と思います。従って、大学スタッフの責任は重大で(それだけやりがいがあるという意味です)、面白い研究テーマを見つけ、その解決を目指してあらゆる手段を用い(基礎、臨床研究)、しかもそれを楽しみながらやっている姿勢を見せ続けることです。そして、病院の業務に追われ疲れているように見えた時こそ、それらを吹き飛ばす面白い研究テーマを突きつけるべきです。マンネリと疲労から脱出させる最良の方法となります。先生のようなやる気のある上級医師は、遠慮せず、怖がらず若手医師に語りかける続けることでしょう。今の医学教育は研究の面白さ楽しさを感じ取るレセプターを育成していませんから、苦労しますが、でも、わかってくれる日が必ず来ると思います。CAVIの開発についてCAVIにはいつもお世話になっています。お恥ずかしい話、先生が開発に携わっていたこと、知りませんでした。このような新しい技術や検査機械の開発はどのように始まり、進行していくものなのでしょうか?また、このように周りを上手く巻き込んでいく時のポイント、秘訣などありましたらご教授頂きたいです。宜しくお願いします。CAVIは、今次々と新しい事実が見出されています。大切なことは、若い先生方に興味を持ってもらえ、いったん途絶えていた血管機能学が代謝学と連携して再度面白くなり始めたことです。CAVIと巡り合ったいきさつですが、たまたま、開発初期に相談をうけたわけで、私が発想し持ち込んだわけではありません。ただ、血管機能については興味をもち30年前から大動脈脈波速度(長谷川法=血圧補正法)を毎年透析患者さんで10数年にわたり測定していました。そこでPWVの限界と可能性を私なりに理解していたつもりです。今回CAVIの初期のデータとりをする中で、計算式決定まで多少紆余曲折がありましたが、バイオメカニクスの科学と臨床成績から現在の式が最終決定され、以後広い臨床評価が始まりました。そこには、長年血管機能解析に興味を持ち続け誠実にデータを蓄積分析してくれていた施設と人がいたこと、会社も、科学性と臨床データ両面を尊重し互いに納得のいくまで検討できたこと、また脈波感知と分析に高度の技術を発揮した優秀なスタッフがいたことが幸運だったと思います。加えて、全国の大御所というよりは若手研究者の方がCAVIに素直に興味をもってくれ、いわゆる大学の研究室よりは、一般病院で、素養のある先生方が先行して出された研究が多く、現場で開拓心旺盛な医師の存在が大きく浮かび上がりました。新しい世界を開くのは情熱ある若手医師とつくづく思いました。無理に誰かを巻き込もうとしたこともなく、CAVIそのものの原理と測定の安定性が最大の牽引力であったと思います。でもまだまだ、これから多くを検証する必要があります。佐倉病院でないとできないこととある病院で研修医やっている者です。先生の記事を興味深く読ませて頂きました。文末にある「佐倉病院でないとできないことに向けて頑張っていく」という言葉が印象的です。記事を読んでいると、佐倉病院さんはとてもチームワークが良く、ドクターもコメディカルも同じ目標に向かって猛進しているような印象を受けました。(先生のところだけかもしれませんが...。)「佐倉病院にしかできないこと」というのは、そのように「チームワークが良い病院でしかできないこと」なのでしょうか?それともまた何か他とは違う特徴が佐倉病院さんにはあるのでしょうか?基礎も臨床もしっかり行い、しかも全て患者さんのためになっている様子に感銘を受けました。ご回答宜しくお願いします。どこの場にいても、そこを、地球上で一番すばらしいところにしてやろうという気持ちが大切です。恵まれてすべてが整っているところほど、これからの人にとってつまらない場所はないと思います。とにかく、その場での問題点を探し、皆が一番困っているところを見つけ出し、その解決に向けて、できるとところを一歩一歩解決してゆく姿勢を評価、支援しあえる環境が佐倉病院にはあるということです。内科も、外科医に負けないような患者さんに感謝される治療学を確立しようと、研究テーマの根幹は、酸化、再生、免疫制御、栄養の4本柱で、おのおの磨いているところです。たとえば、呼吸器は抗酸化療法で間質性肺炎に挑戦、代謝は、肥満治療を分子から栄養、こころの問題と多面的に捉える治療、特に肥満外科治療が開始されましたがその術前術後のフォロー、フォーミュラー食(低エネルギー低糖質、高たんぱく食)の応用と基礎、糖尿病腎症に対するプロブコールを用いた抗酸化療法で透析療法移行抑制試験、循環器は、インターベンションに加えて、これから、難治性心不全に対する鹿児島大鄭教授の開発した和温療法実施と評価、睡眠時無呼吸と不安定狭心症の関係をみつけその治療システムの確立、消化器は、炎症性腸疾患のメッカとして、顆粒球除去療法、レミケード療法、神経内科は、排尿障害を中心に、パーキンソン病の深部脳刺激治療のバックアップ、再生医療も狙っています。研究は、各グループ専門を超えて互いに連携しています。原則として、できれば自然の法則性を体感するため、医師は基礎研究もする機会を経験してもらいたいものです。研究開発部の協力のもとに細胞培養、酵素学、遺伝子実験をできる体制を敷いています。要するに、病気を多面的にいくつかの独自の視点をもって診、医療を開拓してゆける人の育成がもっとも大切と考え、それには、チーム医療、他コメヂィカルとも力を合わせ、初めてできることと考えています。理想の地域連携とは先生がお考えになる「理想の地域連携」の姿とはどんなものでしょうか?また、その理想の姿になれない、理想の姿になるのを阻んでいる障害はなんでしょうか?(実現されていたら申し訳ないです。)現在、私も地域連携について勉強はしているものの、なかなか思うような形にできません。障害が多すぎて、「理想的」どころが「現実的」な連携フローにもなっていません。宜しくお願いします。地域となるとさまざまな価値観の人がおり、同じ言葉でも受け取り方が違ったり、利益配分に問題が出たりで、そう簡単に理想的な地域連携ができるわけではありません。しかし、今の医療は、個々の医療人が隔離状態で医療行為を行えるほど甘くなく、互いに、助け合って連携せざるをえないと思います。でも問題は、ただ患者さんを送りあえば医療連携になるかといえばそうでもなく、問題は患者さんも含めて、互いにわかりあい納得できることが大切で、それには情報の整理集約が必須です。私どもは、生活習慣病を中心としたヘルスケアファイルと呼ばれるノートを患者さん全員にお渡ししています。そこには、動脈硬化リスク因子、標準体重、BMI、臓器障害の有無、程度、さらに主要な検査値はグラフで提示するシステムを用いています。これで、関わる医師は無論、クラークさん、看護師さんも経過が一目瞭然。するとアドバイスも適切。また家族もわかり、応援しやすくなります。これを地域に広げたいというのが私どもの夢です。ただこのファイルは、血圧、糖尿、脂質、尿酸、体重、一般検査を含んでおり、全部網羅していると思います。わがままかもしれませんが、これ一冊にしていただきたいのです。一般には、00手帳が3つも5つももっておられる方もいますね。でもなんだかわからないというのが実情です。大人版、母子手帳を作るべきだと思います。チームワーク先生、チームをまとめ上げるために必要なものはなんでしょうか?チームワークというと「みんな仲良く」というイメージがありますが、決してそうではないと思います。きっと先生は、今までのご苦労の中から「これが大事!」というもの発見されていると思います。それを教えてください。宜しくお願いします。リーダーは、今自分らの分野で何が問題で、それを解決するために、どう力を互いに出し解決するかを提言し続けること。 即ち、小さなグループミーチングでも、プロジェクトを提示し、その成果がささやかでも出たら皆で確認し、面白がること。プロジェクトは、参加者全員が順に一つずつ持つように絶えず心がけていると、みんなに参加意識と存在感さらい自信が生まれます。すると、とたんに楽しく動き始めます。低糖質食私も低糖質食でメタボを脱却したものですが、抵糖質食の心血管病変に対してrisk reductionあるのでしょうか?食事の内容によっても大きく変化するのでしょうか?低糖質、高蛋白食が減量に効果があるとともに、血圧、血糖、脂質異常などの冠動脈リスク因子を減らすことは、海外のスタデイでも、ほぼ一致して報告されています。インスリン抵抗性解除作用と思います。ただし長期(1年)になると元に戻るとの報告もあり、それを鵜呑みに意味がないという人もいます。しかしその食事調査結果をみると、実際の摂取成分がもとに戻っており、実はそう長くは自己調整を続けられなかたというのが実態で、低糖質、高蛋白食は長期になると効果がなくなるというものではないわけです。御質問の「では実際、心血管イベントを減らせたか」はもっとも重要な点ですが、上述のごとく、通常食で成分調整を長年にわたり継続すること自体がほとんど不可能なため、年余にわたる低糖質、高蛋白食の冠動脈疾患の発生を抑えるかどうかの研究自体ができないのです。本当は、このような基本となる栄養組成の研究こそ、国が、コンプライアンスを保障できる食事の宅配便制度などを利用し、長期にわたる調査を企画運営すべきです。そこにこそ研究費をつぎ込むべきです。薬物のようにメーカー主導のエビデンスベーストメデイシンは、この分野では行われることはないでしょう。現在、ある程度コンプライアンスをよくして低糖質、高蛋白食の効果を見る方法とすれば、フォーミュラ食を一日一回用いるなどの方法が考えられます。また、長期のイベントの発生調査を、より短期に予測しうる方法があれば、即ち、動脈硬化のよいサロゲートマーカーがあれば早期に結論が出せるかもしれません。それには、新しい動脈硬化指標CAVIが使えるかもしれないとの淡い期待を、持っています。教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

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