急性心不全へのnesiritideの有効性と安全性

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/20

 



急性心不全へのnesiritideについて、死亡や再入院の増減との関連は認められなかったが、標準治療への上乗せ効果についても呼吸困難への効果は小さく有意差は認められないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ASCEND-HF」の結果、報告された。米国・デューク大学メディカルセンターのC.M. O’Connor氏らがNEJM誌2011年7月7日号で発表した。組み換え型B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは、急性心不全患者の呼吸困難を早期に緩和する治療薬として2001年に米国で承認されたが、その後の小規模無作為化試験データのプール解析で、プラセボとの比較で腎機能悪化が1.5倍、早期死亡が1.8倍に上ることが示され、独立委員会からnesiritideの有効性と安全性に関する大規模臨床試験の実施が勧告されていた。

6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化の2つを主要エンドポイントに




ASCEND-HF(Acute Study of Clinical Effectiveness of Nesiritide in decompensated Heart Failure)試験は2007年5月~2010年8月にかけて、欧米、環太平洋アジアの398施設から急性心不全で入院した7,141例が登録され、標準治療(利尿薬、モルヒネ、他の血管拡張薬など)に加えてnesiritideあるいはプラセボを投与される群に無作為化され追跡された。nesiritideは、治験参加医師の裁量で任意の2μg/kgの静脈内ボーラス投与後、0.010μg/kg/分の持続点滴を24時間以上、最長7日間(168時間)投与された。

主要エンドポイントは2つで、6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化であり、患者自身による7段階のリッカート尺度評価を用いて測定評価した。また、30日以内の心不全による再入院と全死因死亡を複合エンドポイントとし、安全性のエンドポイントについては、30日以内の全死因死亡、腎透析を要した腎機能悪化(推定糸球体濾過量低下が>25%)などが含まれた。

無作為化後に治療を受けたintention-to-treat解析対象は7,007例(98%、nesiritide群:3,496例、プラセボ群:3,511例)だった。

幅広く急性心不全患者へルーチン使用することは推奨できないと結論




結果、呼吸困難の改善について「著しく」と「中程度に」を合わせた報告が、6時間時点でnesiritide群44.5% vs. プラセボ群42.1%(P=0.03)、24時間時点では同68.2% vs. 66.1%(P=0.007)と、いずれの時点でも、nesiritide群での報告が多かったが事前規定の有意差(両評価がP≦0.005かどちらかのP≦0.0025)には達していなかった。

30日以内の心不全による再入院と全死因死亡は、nesiritide群9.4%、プラセボ群10.1%で、nesiritide群の絶対差は-0.7ポイント(95%信頼区間:-2.1~0.7、P=0.31)だった。

また、30日時点の死亡率(nesiritide群:3.6% vs. プラセボ群:4.0%、絶対差:-0.4、95%信頼区間:-1.3~0.5)、腎機能悪化率(同31.4% vs. 29.5%、オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.98~1.21、P=0.11)は有意差が認められなかった。しかし、低血圧症(中央値80mmHg)について、nesiritide群での有意な増大が認められた(26.6%対15.3%、P<0.001)。

Connor氏は、「nesiritideの他療法と組み合わせての使用は、死亡率、再入院の増減とは関連しないが、呼吸困難に対する効果は小さく、有意な効果は認められなかった。また、腎機能悪化との関連も認められなかったが、低血圧症の増加との関連が認められた」と結論。結果を踏まえて「nesiritideを、急性心不全の患者に幅広くルーチン使用することは推奨できない」と提言している。

(武藤まき:医療ライター)