血液透析、電子線滅菌透析膜使用は重篤な血小板減少症リスクを増大する

提供元:ケアネット

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公開日:2011/11/01

 



血液透析患者において、電子線滅菌処理をした透析膜を用いた装置を使った場合、使わなかった場合と比べて、血小板減少症リスクがおよそ2.5~3.6倍に増大するとの報告が、JAMA誌2011年10月19日号で発表された。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学腎臓病学部門のMercedeh Kiaii氏らが、約2,100人の人工透析患者を対象に行った後ろ向き調査で明らかにした。血小板減少症は透析膜関連の合併症とみなされることはなかったが、透析膜を電子線(eビーム)で滅菌した血液透析装置を導入した1つの透析部門において、患者20人に有意な血小板減少症がみられたことを受けて、大規模な調査が行われることとなった。

ブリティッシュ・コロンビア州1,706人とアルバータ州425人について調査




Kiaii氏らは、2009年4月1日~2010年11月30日の間に人工透析を受けていた、ブリティッシュ・コロンビア州の1,706人と、アルバータ州の425人について、後ろ向きに調査を行った。

重篤な血小板減少症の定義は、透析後血小板数が100×10(3)/μL未満で透析後血小板減少率が15%以上のケースとし、同症罹患率と原因について調べられた。

ブリティッシュ・コロンビア州の患者のうち、電子線滅菌透析膜が使用されたのは、1,411人(83%)だった。そのうち透析後に血小板数減少が認められたのは194人(11.4%、95%信頼区間:9.9~12.9)、15%以上減少率が認められたのは400人(23.4%、同:21.5~25.5)で、両方が認められたのは123人(7.2%、同:6.0~8.6)だった。

アルバータ州の透析患者425人は、ブリティッシュ・コロンビア州とは異なる製造元の電子線滅菌透析膜を使用していた。それら患者のうち、透析後に血小板数減少が認められたのは46人(10.8%、同:8.1~14.3)、15%以上減少率が認められたのは156人(32.0%、同:27.6~36.7)で、両方が認められたのは31人(7.3%、同:5.1~10.3)だった。

電子線滅菌透析膜の使用は非使用との比較で重篤な血小板減少症を3.57倍増大




ブリティッシュ・コロンビア州の患者について患者特性や人工透析歴などについて補正した多変量解析の結果、電子線滅菌透析膜の使用は、重篤な血小板減少症を2.52倍有意に増大することが認められた(オッズ比:2.52、95%信頼区間:1.20~5.29、p=0.02)。

2009年9月に、電子線滅菌透析膜から非電子線滅菌透析膜への切り替えが行われたが、切り替え後は、透析患者1,784人における重篤な血小板減少症の発症は有意に減少した。血小板数減少が認められたのは120人(6.7%、95%信頼区間:5.6~8.0、p<0.001)、15%以上減少率が認められたのは167人(9.4%、同:8.1~10.8、p<0.001)、両方が認められたのは38人(2.1%、同:1.5~2.9、p<0.001)だった。

電子線滅菌透析膜の使用切り替え前後のアウトカムについて比較した一般化推定方程式モデルの結果、患者特性や人工透析歴などについて補正後、電子線滅菌透析膜使用は、重篤な血小板減少症を3.57倍有意に増大することが認められた(オッズ比:3.57、同:2.54~5.04、p<0.001)だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)