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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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貧血と認知症と鉄分サプリメントの関連~コホート研究

 従来の認知症のリスク因子に加えて、貧血がその初期のバイオマーカーであるか確認する必要がある。台湾・台北医学大学のChien-Tai Hong氏らは、台湾全民健康保険研究データベースを用いて、新規に貧血と診断された患者における認知症リスクの調査を目的とした人口ベースコホート研究を実施した。Current Alzheimer Research誌オンライン版2020年3月16日号の報告。鉄分サプリメントを使用している貧血患者は認知症リスクが低い傾向 対象は、脳卒中による入院歴および認知症以外の中枢神経疾患・精神疾患・外傷性脳損傷・大手術・失血疾患の既往歴がない貧血患者2万6,343例。人口統計および合併症に基づいて貧血患者と1:4でマッチさせた非貧血患者を対照群とした。貧血患者の認知症リスクの評価には、対照群と比較するため、競合リスク分析を用いた。 新規に貧血と診断された患者における認知症リスクを調査した主な結果は以下のとおり。・貧血患者における認知症リスクの調整部分分布ハザード比(SHR)は、1.14(95%信頼区間[CI]:1.08~1.21、p<0.001)であった。・鉄分サプリメントを使用している貧血患者では、未使用の患者と比較し、認知症リスクが低い傾向にあった(調整SHR:0.84、95%CI:0.75~0.94、p=0.002)。・サブグループ解析では、女性、70歳以上および、高血圧・糖尿病・脂質異常症でない患者において、認知症と貧血との相関が認められた。 著者らは「新規の貧血診断は、認知症のリスク因子であることが示唆された。鉄欠乏性貧血患者に対する鉄分サプリメント使用は、認知症リスクを低下させる可能性がある」としている。

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非典型溶血性尿毒症症候群〔aHUS :atypical hemolytic uremic syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義非典型尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は、補体制御異常に伴い血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)を呈する疾患である。TMAは、1)微小血管症性溶血性貧血、2)消費性血小板減少、3)微小血管内血小板血栓による臓器機能障害、を特徴とする病態である。■ 疫学欧州の疫学データでは、成人における発症頻度は毎年100万人に2~3人、小児では100万人に7人程度とされる。わが国での新規発症は年間100~200例程度と考えられている。わが国の遺伝子解析結果では、C3変異例の割合が高く(約30%)、欧米で多いとされるCFH遺伝子変異の割合は低い(約10%)。■ 病因病因は大きく、先天性、後天性、その他に分かれる。1)先天性aHUS遺伝子変異による補体制御因子の機能喪失あるいは補体活性化因子の機能獲得により補体第2経路が過剰に活性化されることで血管内皮細胞や血小板表面の活性化をもたらし微小血栓が産生されaHUSが発症する(表1)。機能喪失の例として、H因子(CFH)、I因子(CFI)、CD46(membrane cofactor protein:MCP)、トロンボモジュリン(THBD)の変異、機能獲得の例として補体C3、B因子(CFB)の変異が挙げられる。補体制御系ではないが、diacylglycerol kinase ε(DGKE)やプラスミノーゲン(PLG)遺伝子の変異も先天性のaHUSに含めることが多い。表1 aHUSの原因別の治療反応性と予後画像を拡大する2)後天性aHUS抗H因子抗体の出現が挙げられる。CFHの機能障害により補体第2経路が過剰に活性化する。抗H因子抗体陽性者の多くにCFHおよびCFH関連蛋白質(CFHR)1~5の遺伝子欠損が関与するとされている。3)その他現時点では原因が特定できないaHUSが40%程度存在する。■ 症状溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害による症状を認める。具体的には血小板減少による出血斑(紫斑)などの出血症状や溶血性貧血による全身倦怠感、息切れ、高度の腎不全による浮腫、乏尿などである。発熱、精神神経症状、高血圧、心不全、消化器症状などを認めることもある。下痢があってもaHUSが否定されるわけではないことに注意を要する。aHUSの発症には多くの場合、感染症、妊娠、がん、加齢など補体の活性化につながるイベントが観察される。わが国の疫学調査でも、75%の症例で感染症を始めとする何らかの契機が確認されている。■ 予後一般に、MCP変異例は軽症で予後良好、CFHの変異例は重症で予後不良、C3変異例はその中間程度と言われている(表1)。海外データではaHUS全体における慢性腎不全に至る確率、つまり腎死亡率は約50%と報告されている。わが国の疫学データではaHUSの総死亡率は5.4%、腎死亡率は15%と比較的良好であった。特に、わが国に多いC3 p.I1157T変異例および抗CFH抗体陽性例の予後は良いとされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ TMA分類の概念TMAの3徴候を認める患者のうち、STEC-HUS、TTP、二次性TMA(代謝異常症、感染症、薬剤性、自己免疫性疾患、悪性腫瘍、HELLP症候群、移植後などによるTMA)を除いたものを臨床的aHUSと診断する(図1)。図1 aHUS定義の概念図画像を拡大する■ 診断手順と鑑別診断フローチャート(図2)に従い鑑別診断を進めていく。図2 TMA鑑別と治療のフローチャート画像を拡大する1)TMAの診断aHUS診断におけるTMAの3徴候は、下記のとおり。(1)微小血管症性溶血性貧血:ヘモグロビン(Hb) 10g/dL未満血中 Hb値のみで判断するのではなく、血清LDHの上昇、血清ハプトグロビンの著減(多くは検出感度以下)、末梢血塗沫標本での破砕赤血球の存在をもとに微小血管症性溶血の有無を確認する。なお、破砕赤血球を検出しない場合もある。(2)血小板減少:血小板(platelets:PLT)15万/μL未満(3)急性腎障害(acute kidney injury:AKI):小児例では年齢・性別による血清クレアチニン基準値の1.5倍以上(血清クレアチニンは、日本小児腎臓病学会の基準値を用いる)。成人例では、sCrの基礎値から1.5 倍以上の上昇または尿量0.5mL/kg/時以下が6時間以上持続のいずれかを満たすものをAKIと診断する。2)TMA類似疾患との鑑別溶血性貧血を来す疾患として自己免疫性溶血性貧血(AIHA)が鑑別に挙がる。AIHAでは直接クームス試験が陽性となる。消費性血小板減少を来す疾患としては、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を鑑別する。PT、APTT、FDP、Dダイマー、フィブリノーゲンなどを測定する。TMAでは原則として凝固異常はみられないが、DICでは著明な凝固系異常を呈する。また、DICは通常感染症やがんなどの基礎疾患に伴い発症する。3)STEC-HUSとの鑑別食事歴と下痢・血便の有無を問診する。STEC-HUSは、通常血液成分が多い重度の血便を伴う。超音波検査では結腸壁の著明な肥厚とエコー輝度の上昇が特徴的である。便培養検査、便中の志賀毒素直接検出検査、血清の大腸菌O157LPS抗体検査が有用である。小児では、STEC-HUSがTMA全体の約90%を占めることから、生後6ヵ月以降で、重度の血便を主体とした典型的な消化器症状を伴う症例では、最初に考える。逆に生後6ヵ月までの乳児にTMAをみた場合はaHUSを強く疑う。小児のSTEC-HUSの1%に補体関連遺伝子変異が認められると報告されている点に注意が必要である。詳細は、HUSガイドラインを参照。4)TTPとの鑑別血漿を採取し、ADAMTS13活性を測定する。10%未満であればTTPと診断できる。aHUS、STEC-HUS、二次性TMAなどでもADAMTS13活性の軽度低下を認めることがあるが、一般に20%以下にはならない。aHUSにおける臓器障害は急性腎障害(AKI)が最も多いのに対して、TTPでは精神神経症状を認めることが多い。TTPでも血尿、蛋白尿を認めることがあるが、腎不全に至る例はまれである。5)二次性TMAとの鑑別TMAを来す基礎疾患を有する二次性TMAの除外を行った患者が、臨床的にaHUSと診断される。aHUS確定診断のための遺伝子診断は時間を要するため、多くの症例で急性期には臨床的に判断する。表2に示す二次性TMAの主たる原因を記す。可能であれば、原因除去あるいは原疾患の治療を優先する。コバラミン代謝異常症は特に生後6ヵ月未満で考慮すべき病態である。生後1年以内に、哺乳不良、嘔吐、成長発育不良、活気低下、筋緊張低下、痙攣などを契機に発見される例が多いが、成人例もある。ビタミンB12、血漿ホモシスチン、血漿メチルマロン酸、尿中メチルマロン酸などを測定する。乳幼児の侵襲性肺炎球菌感染症がTMAを呈することがある。直接Coombs試験が約90%の症例で陽性を示す。肺炎球菌が産生するニューラミニダーゼによって露出するThomsen-Friedenreich (T)抗原に対する抗T-IgM抗体が血漿中に存在するため、血漿投与により病状が悪化する危険性がある。新鮮凍結血漿を用いた血漿交換療法や血漿輸注などの血漿治療は行わない。妊娠関連のTMAのうち、HELLP症候群(妊娠高血圧症に合併する溶血性貧血、肝障害、血小板減少)や子癇(妊娠中の高血圧症と痙攣)は分娩により速やかに軽快する。妊娠関連TMAは常位胎盤早期剥離に伴うDICとの鑑別も重要である。TTPは妊娠中の発症が多く,aHUSは分娩後の発症が多い。腎移植後に発症するTMAは、原疾患がaHUSで腎不全に陥った症例におけるaHUSの再発、腎移植後に新規で発症したaHUS、臓器移植に伴う急性抗体関連型拒絶反応が疑われる。aHUSが疑われる腎不全患者に腎移植を検討する場合は、あらかじめ遺伝子検査を行っておく。表2 二次性TMAの主たる原因a)妊娠関連TMAHELLP症候群子癪先天性または後天性TTPb)薬剤関連TMA抗血小板剤(チクロビジン、クロピドグレルなど)カルシニューリンインヒビターmTOR阻害剤抗悪性腫瘍剤(マイトマイシン、ゲムシタビンなど)経口避妊薬キニンc)移植後TMA固形臓器移植同種骨髄幹細胞移植d)その他コパラミン代謝異常症手術・外傷感染症(肺炎球菌、百日咳、インフルエンザ、HIV、水痘など)肺高血圧症悪性高血圧進行がん播種性血管内凝固症候群自己免疫疾患(SLE、抗リン脂質抗体症候群、強皮症、血管炎など)(芦田明ほか.日本アフェレシス学会雑誌.2015;34:40-47.より引用・改変)6)家族歴の聴取家族にTMA(aHUSやTTP)と診断された者や原因不明の腎不全を呈した者がいる場合、aHUSを疑う。ただし、aHUS原因遺伝子変異があっても発症するのは全体で50%程度とされている。よって家族性に遺伝子変異があっても家族歴がはっきりしない例も多い。さらに孤発例も存在する。7)治療反応性による診断の再検討aHUSは 75%の症例で感染症など何らかの疾患を契機に発症する。二次性TMAの原因となる疾患がaHUSを惹起することもある。実臨床においては二次性TMAとaHUSの鑑別はしばしば困難である。2次性TMAと考えられていた症例の中で、遺伝子検査によりaHUSと診断が変更されることは少なくない。いったんaHUSあるいは二次性TMAと診断しても、治療反応性や臨床経過により診断を再検討することが肝要である(図2)。■ 検査1)一般検査血算、破砕赤血球の有無、LDH、ハプログロビン、血清クレアチニン、各種凝固系検査でTMAを診断する。ADAMTS13-活性検査は保険適用となっている。STEC-HUSの鑑別を要する場合は便培養、便中志賀毒素検査、血清大腸菌O157LPS抗体検査を行う。一般の補体検査としてC3、C4を測定する。C3低値、C4正常は補体第2経路の活性化を示唆するが、aHUS全体の50%程度でしか認められない。2)補体関連特殊検査現在、全国aHUSレジストリー研究において、次に記す検査を実施している。ヒツジ赤血球を用いた溶血試験CFH遺伝子異常、抗CFH抗体陽性例において高頻度に陽性となる。比較的短期間で結果が得られる。診断のフローとしては、臨床的にaHUSが疑ったら溶血試験を実施する(図2)。抗CFH抗体検査:ELISA法にてCFH抗体を測定する。抗CFH抗体出現には、CFHおよびCFH関連蛋白質(CFHR)1~5の遺伝子欠損が関与するとされているため、遺伝子検査も並行して実施する。CFHR 領域は、多彩な遺伝子異常が報告されているが、相同性が高いことから遺伝子検査が困難な領域である。その他aHUSレジストリー研究では、血中のB因子活性化産物、可溶性C5b-9をはじめとする補体関連分子を測定しているが、その診断的意義は現時点で明確ではない。*問い合わせ先を下に記す。aHUSレジストリー事務局(名古屋大学 腎臓内科:ahus-office@med.nagoya-u.ac.jp)まで■ 遺伝子診断2020年4月からaHUSの診断のための補体関連因子の遺伝子検査が保険適用となった。既知の遺伝子として知られているC3、CFB、CFH、CFI、MCP(CD46)、THBD、diacylglycerol kinase ε(DGKE)を検査する。臨床的にaHUSと診断された患者の約60%にこれらの遺伝子変異を認める。さらに詳細な遺伝子解析についての相談は、上記のaHUSレジストリー事務局で受け付けている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)aHUSが疑われる患者は、血漿交換治療や血液透析が可能な専門施設に転送して治療を行う。TMA を呈し、STEC-HUS や血漿治療を行わない侵襲性肺炎球菌感染症などが否定的である場合には、速やかに血漿交換治療を開始する。輸液療法・輸血・血圧管理・急性腎障害に対する支持療法や血液透析など総合的な全身管理も重要である。1)血漿交換・血漿輸注血漿療法は1970年代後半から導入され、aHUS患者の死亡率は50%から25%にまで低下した。血漿交換を行う場合は3日間連日で施行し、その後は反応を見ながら徐々に間隔を開けていく。血漿交換を行うことが難しい身体の小さい患児では血漿輸注が施行されることもある。血漿輸注や血漿交換により、aHUS の約70%が血液学的寛解に至る。しかし、長期的には TMA の再発、腎不全の進行、死亡のリスクは依然として高い。血漿交換が無効である場合には、aHUSではなく二次性TMAの可能性も考える。2)エクリズマブ(抗補体C5ヒト化モノクローナル抗体、商品名:ソリリス)成人では、STEC-HUS、TTP、二次性 TMA 鑑別の検査を行いつつ、わが国では同時に溶血試験を行う。溶血試験陽性あるいは臨床的にaHUSと診断されたら、エクリズマブの投与を検討する。小児においては、成人と比較して二次性 TMA の割合が低く、血漿交換や血漿輸注のためのカテーテル挿入による合併症が多いことなどから、臨床的にaHUS と診断された時点で早期にエクリズマブ投与の開始を検討する。aHUSであれば1週間以内、遅くとも4週間までには治療効果が見られることが多い。効果がみられない場合は、二次性TMAである可能性を考え、診断を再検討する(図2)。遺伝子検査の結果、比較的軽症とされるMCP変異あるいはC3 p.I1157T変異では、エクリズマブの中止が検討される。予後不良とされるCFH変異では、エクリズマブは継続投与される。※エクリズマブ使用時の注意エクリズマブ使用時には髄膜炎菌感染症対策が必須である。莢膜多糖体を形成する細菌の殺菌には補体活性化が重要であり、エクリズマブ使用下での髄膜炎菌感染症による死亡例も報告されている。そのため、緊急投与時を除きエクリズマブ投与開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨される。髄膜炎菌ワクチン接種、抗菌薬予防投与ともに髄膜炎菌感染症の全症例を予防することはできないことに留意すべきである。具体的なワクチン接種や抗菌薬による予防および治療法については、日本腎臓学会の「ソリリス使用時の注意・対応事項」を参照されたい。3)免疫抑制治療抗CFH抗体陽性例に対しては、血漿治療と免疫抑制薬・ステロイドを併用する。臓器障害を伴ったaHUSの場合にはエクリズマブの使用も考慮される。抗CFH抗体価が低下したら、エクリズマブの中止を検討する。4 今後の展望■ aHUSの診断2020年4月からaHUSの遺伝子解析が保険収載された。aHUSの診断にとっては大きな進展である。しかし、aHUSの診断・治療・臨床経過には依然不明な点が多い。aHUSレジストリー研究の成果がaHUS診療の向上につながることが期待される。■ 新規治療薬アレクシオンファーマ合同会社は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH) の治療薬として、長時間作用型抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤ラブリズマブ(商品名:ユルトミリス)を上市した。エクリズマブは2週間間隔の投与が必要であるが、ラブリズマブは8週間隔投与で維持可能である。今後、aHUSへも適応が広がる見込みである。中外製薬株式会社は抗C5リサイクリング抗体SKY59の開発を進めている。現在のところ対象疾患はPNHとなっている。5 主たる診療科腎臓内科、小児科、血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド 2015(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 非典型溶血性尿毒症症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)aHUSレジストリー事務局ホームページ(名古屋大学腎臓内科ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Fujisawa M, et al. Clin and Experimental Nephrology. 2018;22:1088–1099.2)Goodship TH, et al. Kidney Int. 2017;91:539.3)Aigner C, et al. Clin Kidney J. 2019;12:333.4)Lee H,et al. Korean J Intern Med. 2020;35:25-40.5)Kato H, et al. Clin Exp Nephrol. 2016;20:536-543.公開履歴初回2020年04月14日

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COVID-19重症患者へ、ルキソリチニブによる臨床試験開始/ノバルティス

 2020年4月2日、ノバルティスファーマ株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者のサイトカインストーム治療におけるルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)投与の評価を目的とし、インサイト社と共同で行う第III相臨床試験計画について発表した。 この試験では、 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によって重篤なCOVID-19肺炎を発症した患者において、 標準治療(SoC:Standard of Care)とルキソリチニブ+SoC併用療法を比較、評価する予定。 サイトカインストームは重篤な免疫過剰反応の一種であり、COVID-19患者の呼吸障害の一因になりうる可能性がある。現在、非臨床エビデンスや予備的臨床エビデンスにおいて、 ルキソリチニブ投与によって集中治療や人工呼吸器を必要とする患者数を低減させる可能性が示唆されている。 ルキソリチニブはJAK1およびJAK2を阻害する経口薬であり、日本では血液内科領域の疾患(骨髄線維症、真性多血症[既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る])治療薬として承認されている。

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BKT阻害薬チラブルチニブ、中枢神経系原発リンパ腫に国内承認/小野薬品

 小野薬品工業は、2020年3月25日、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬チラブルチニブ(商品名:ベレキシブル)について、「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果で国内製造販売承認を取得したと発表。チラブルチニブ投与患者の全奏効率は52.9% 今回の承認は、再発または難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)患者44例を対象にチラブルチニブを 1 日 1 回、経口投与による有効性および安全性を評価する多施設共同非盲検非対照第I/II相試験(ONO-4059-02)の結果に基づいている。チラブルチニブ投与患者 17 例において、主要評価項目である全奏効率(中央判定による)は 52.9%(9/17例)であった。チラブルチニブ投与患者における主なGrade3/4の副作用は、好中球減少、白血球減少および高トリグリセリド血症で、各々11.8%(2/17 例)に認められた。 B細胞受容体(BCR)シグナル伝達は、B細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っており、とくにB細胞性非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病では、BCR シグナル伝達経路が恒常的に活性化していることが知られている。チラブルチニブはBCRの下流に位置するメディエーターであるBTKを阻害することから治療効果が期待される。 チラブルチニブが承認を受けた中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)は、初発時に病変が脳脊髄(眼を含む)に局在する悪性リンパ腫であり、日本におけるPCNSLの年間発症数は約980例と推定されている。

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EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症〔EBV-HLH:EB virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義EBV-HLHは、EBVの初感染または再活性化(感染細胞の再増殖)に伴い、しばしば急激な経過で病勢が進展する重篤な疾患である。血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は血球貪食症候群と同義で、高サイトカイン血症を背景に、持続する発熱、血球減少、肝脾腫、播種性血管内凝固(DIC)、高フェリチン血症および骨髄などに血球貪食組織球増多を来す症候群である。HLHは、「HLH-2004ガイドライン」に基づき診断され、遺伝性HLHと、感染症や膠原病、悪性腫瘍などに続発する二次性HLHに大別される。EBV-HLHは二次性HLHのうち最も頻度が高く、また感染症関連HLHの中でも最も重症である。広義のEBV-HLHは、EBVの活動性感染がありHLHの診断基準を満たすものと定義される。一方、わが国におけるEBV-HLHは、通常基礎疾患のない患者において、EBVが主にCD8陽性T細胞に感染し、クローン性に増殖した初感染の急性重症型を指し(狭義のEBV-HLH)、重症伝染性単核症(IM)やEBV感染を契機に発症する遺伝性HLH、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)やEBV関連T/NK細胞腫瘍に合併するHLHとは区別される。以下、狭義のEBV-HLHを中心に概説する。■ 疫学日本・韓国・中国・台湾などの小児と若年成人に報告が多い。日本国内での偏在はない。特定の遺伝的素因は解明されていない。全国調査からわが国における発症数は、年間約50例と推定される。小児の平均発症年齢は3.9歳で初感染EBV-HLHがほとんどである。近年、初感染年齢の上昇に伴い、患児の年齢層も上がりつつある。成人では特にHLHを初発とするEBV関連リンパ腫の除外が必須である。■ 病因初感染EBV-HLHでは、EBV感染CD8陽性T細胞がクローン性に増殖し、IFN-γ、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが多量に産生され、マクロファージが活性化して血球貪食が誘導される。患者はEBV特異免疫に異常反応性を有することが想定されているが、治癒後には健常既感染者となる。B細胞が主たる感染標的である場合は、伝染性単核症(IM)として通常は予後良好だが、宿主にX連鎖リンパ増殖症候群などの原発性免疫不全症があると致死性IMとなる。再活性化に伴って発症するEBV-HLHの基礎疾患であるCAEBVでは、EBVがT細胞やNK細胞に感染し、この感染細胞が免疫による排除から逃れてクローン増殖し臓器に浸潤し、多彩な臨床症状を惹起する。■ 症状持続する発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫と汎血球減少、凝固異常、肝機能障害、高LDH血症などを認める。急速に進行する汎血球減少とDICから多臓器障害に至る例もまれではない。■ 予後EBV-HLHはウイルス関連HLHの中でも特に予後不良であり、支持療法だけでは多くの場合、致死的経過をとる。初回治療にはHLH-2004プロトコールなどの化学療法が行われ、90%以上が寛解する。10%弱は再燃するが多くは再寛解する。死亡率は約1%で晩期再発はない。治療抵抗性を示す場合に同種造血細胞移植が行われる。診断時の高ビリルビン、および高フェリチン血症が予後不良因子として報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)Histiocyte SocietyのHLH国際診断基準をもとに、日本小児感染症学会からEBV-HLHの診断基準が作成されている(表)。表 EBV-HLH診断基準以下の1と2のいずれも満たす1.EBウイルスDNAは末梢血中に増加している2.以下の8項目のうち、初発時5つ以上、再燃・再発時3つ以上を満たす1)発熱≧38.5℃2)脾腫3)血球減少(末梢血の少なくとも2系統に以下の異常あり):ヘモグロビン<9.0g/dL、血小板<100,000/μL、好中球<1,000/μL4)高卜リグリセリド血症(空腹時≧265mg/dL)または低フィブリノーゲン血症(≦150mg/dL)5)NK細胞活性低値または欠損6)血清フェリチン≧500ng/mL7)可溶性IL-2受容体≧2,400U/mL8)骨髄、脾臓、またはリンパ節に血球貪食像あり、悪性所見なし付記1)診断に有用な所見:(a)髄液の細胞増多 (単核球) および/または髄液蛋白増加(b)肝で慢性持続性肝炎に類似した組織像2)診断を示唆する他の所見:髄膜刺激症状、リンパ節腫大、黄疸、浮腫、皮疹、肝酵素上昇、低蛋白・低Na血症、VLDL値上昇、HDL値低下3)発症時に上記の基準をすべて満たすわけではなく、経過と共にいくつかを満たすことが少なくない。基準を満たさない場合は注意深く観察し、基準を満たした(同時期に症状・所見が揃った)時点で診断する。(日本小児感染症学会 監修.慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患診療ガイドライン. 診断と治療社;2016.p.11.より引用)診断には、EBV関連抗体価(FA法)による感染既往の評価や、リアルタイムPCR法などによる末梢血中のEBVDNAの定量が重要である。EBV-HLHでは、血球成分中や血清および血漿中のEBVDNA量が著しく上昇し、IM患者よりも高値を示すことが多い。なお、骨髄生検での血球貪食像は初期には目立たないことがある。組織診断にはin situ hybridization(ISH)によるEBV-encoded small RNA(EBER)の検出が有用である。蛍光抗体や免疫組織染色によるEBV感染細胞の同定、およびEBV terminal repeat probeを用いたSouthern blot法、あるいはT細胞受容体の遺伝子再構成検査によるクローナリティの検索も、重症IMやCAEBVなどとの鑑別に有用な指標となる。また、家族歴や基礎疾患の有無、発症前の症状などの病歴を詳細に聴取し、必要に応じて遺伝性HLHを除外するための検索(遺伝子解析など)を進める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)小児のEBV初感染による伝染性単核症(B細胞感染)とは異なり、治療介入の必要ない自然軽快は極めてまれである。EBV-HLHの治療は、クローン増殖した感染細胞の制御と、これに対して過剰に反応した免疫担当細胞および、これに伴う高サイトカイン血症の制御が中心となる。治療中にもかかわらず急変し致死的経過をとることがあるため、がん化学療法と同種造血細胞移植の可能な施設との連携も重要である。HLH-2004プロトコールにはステロイド、エトポシド、シクロスポリンAに加えて髄腔内へのメトトレキサートとステロイドの投与を用いた多剤併用化学療法が提示されている。わが国の全国調査では、初回治療として60%がHLH-2004に準じた治療を受け、30%がステロイド療法、10%がIVIG療法や対症療法のみでの治療を選択されていた。90%の症例がこの初回治療で寛解が得られていることから、二次がんの危険性があるエトポシドを全例に使用する必要はないかもしれない。しかし、治療の遅れが致死的な経過をもたらす可能性もあり、追加治療のタイミングを逃すことがないように発熱の推移や血球変化、凝固異常の進行などに十分注意する必要がある。血中EBVの経時的定量がEBV-HLHの病勢の評価、治療効果の判定に有用とされる。発症から1~2ヵ月以内のステロイドやシクロスポリンAの減量中などに再燃の可能性があるが、その場合でもステロイド、エトポシド、シクロスポリンAの3剤併用療法で再寛解する可能性がある。また、症状が沈静化してからも約10%が再燃し、初回と同様な治療が必要になる。半年以内はIL-18、IL-12などのIFN-γ関連サイトカイン産生が持続するため、経過観察を行いながらシクロスポリンAが継続される。一方で、3剤併用療法が無効な場合、多剤併用化学療法、さらに同種造血細胞移植が考慮される。多剤併用化学療法に推奨可能な実績のあるレジメンは現時点では存在せず、CHOPおよびエトポシド、THP-COP、シタラビンなどが用いられている。また、EBV-HLHに対するリツキシマブの有効性が報告されているが、その適応については感染細胞を考慮した作用機序や効果の詳細な解明、議論が必要である。4 今後の展望EBV-HLHに対するHLH-2004プロトコールの有用性は明らかであるが、生物学的製剤の適応と評価は十分でない。また、同種造血細胞移植の時期と方法などについても、今後の検討が必要である。2018年11月に難治性の遺伝性HLHに対する初の特異的な治療薬として完全ヒト型抗IFN-γ抗体であるemapalumab(商品名:GAMIFANT)が米国で承認された。二次性HLHに対する有効性は現時点では不明であるが、IFN-γを過剰産生する活性化CD8陽性T細胞が病態形成の中心的役割を果たすEBV-HLHにおいても効果が期待されている。また、HLHモデルマウスにおいては、JAK1/2阻害剤など、複数のサイトカインシグナル伝達を同時に阻害する薬剤の有効性が示唆されている。今後、これらの抗サイトカイン療法を含めた、EBV-HLHに対する最適な治療戦略を確立する必要がある。5 主たる診療科小児科、血液内科、感染症内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 血球貪食性リンパ組織球症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本小児感染症学会. 慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016. 診断と治療社;2016.2)Henter JI, et al. Pediatr Blood Cancer. 2007;48:124-131.3)Filipovich AH, et al. Hematol Oncol Clin North Am. 2015;29:895-902.4)Ishii E, et al. Int J Hematol. 2007;86:58-65.5)Kogawa K, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:1257-1262.公開履歴初回2020年03月09日

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス国内臨床試験開始/協和キリン

 協和キリンは、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスに関する国内臨床試験を本年2月19日に開始した。 ペグフィルグラスチムは持続型G-CSF製剤。がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とし2014年より日本にて販売している製品で、がん化学療法を行った翌日以降に医療機関にて投与が行われる。 ペグフィルグラスチムが翌日に自動投与される仕組みを搭載した同デバイスをがん化学療法と同日に使用することにより、ペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となり、患者の通院負担、さらには医療従事者の負担の軽減にもつながることを期待している。 同試験は、第I相多施設共同非対照非盲検試験で、対象はがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制。主要評価項目は安全性で、予定被験者数は30例である。第I相臨床試験の位置づけだが、本臨床試験のデータを使用し厚生労働省へ製造販売承認申請を行う予定だという。

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polatuzumab vedotin、DLBCL国内第II相試験の主要評価項目を達成/中外

 中外製薬は、2020年2月13日、polatuzumab vedotinの国内第II相臨床試験(JO40762/P-DRIVE試験)において、主要評価項目を達成したと発表。 JO40762(P-DRIVE)試験は、再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者35例を対象として、polatuzumab vedotinとBR療法を併用投与する第II相多施設共同単群非盲検試験。本試験の主要評価項目は治験責任/分担医師評価によるPRA時点(治験薬最終投与後6~8週)におけるPET-CTによる完全奏効率(complete response rate:CRR)である。 polatuzumab vedotinは、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた、抗CD79b抗体薬物複合体。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットになり得る。現在国内外において、複数のタイプの非ホジキンリンパ腫を対象として臨床開発が行われている。わが国では、2019年11月に厚生労働省よりDLBCLに対する希少疾病用医薬品に指定されており、米国では2019年6月に迅速承認を、欧州では2020年1月に条件付き承認をそれぞれ取得している。

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MRSA、バンコマイシン/ダプトマイシンへのβラクタム系追加投与は?/JAMA

 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)菌血症患者に対し、バンコマイシンまたはダプトマイシン静脈投与による標準治療にβラクタム系抗菌薬を追加投与しても、90日時点の複合アウトカムおよび全死因死亡について、有意な改善は認められないことが示された。オーストラリア・Peter Doherty Institute for Infection and ImmunityのSteven Y C Tong氏らが、約350例の患者を対象に行った無作為化試験で明らかにした。MRSA菌血症による死亡率は20%超となっている。これまで標準治療+βラクタム系抗菌薬による介入が死亡率を低下することが示されていたが、検出力が十分な無作為化試験による検討はされていなかった。JAMA誌2020年2月11日号掲載の報告。標準治療に加えβラクタム系抗菌薬を7日間投与 研究グループは2015年8月~2018年7月にかけて、4ヵ国27病院でMRSA菌血症が確認された成人患者352例を対象に、非盲検無作為化試験を開始し、2018年10月23日まで追跡した。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準治療(バンコマイシンまたはダプトマイシン)に加えβラクタム系抗菌薬(flucloxacillin、クロキサシリン、セファゾリンのいずれか)を静脈投与した(174例)。もう一方の群には、標準治療のみを行った(178例)。 合計治療日数については担当臨床医の判断とし、またβラクタム系抗菌薬投与は7日間とした。 主要エンドポイントは、90日時点における死亡、5日時点の持続性菌血症、微生物学的再発、微生物学的治療失敗の複合エンドポイントとした。 副次アウトカムは、14日、42日、90日時点の死亡率と、2日、5日時点の持続性菌血症、急性腎障害(AKI)、微生物学的再発、微生物学的治療失敗、抗菌薬静脈投与期間などだった。主要エンドポイント発生はともに約4割 試験は当初440例を登録する予定だったが、同試験のデータ・安全性モニタリング委員会は安全性への懸念から、試験の早期中止を勧告。無作為化を受けた被験者は352例であった。被験者の平均年齢は62.2歳、女性は34.4%、試験を完了したのは345例(98%)だった。 主要エンドポイントの発生は、βラクタム群59例(35%)、標準治療群68例(39%)だった(絶対群間差:-4.2ポイント、95%信頼区間[CI]:-14.3~6.0)。事前に規定した副次評価項目9項目のうち、7項目で有意差がなかった。 90日全死因死亡は、βラクタム群35例(21%)vs.標準治療群28例(16%)(群間差:4.5ポイント、95%CI:-3.7~12.7)、5日時点の持続性菌血症発生率はそれぞれ11% vs.20%(-8.9ポイント、-16.6~-1.2)であり、また、ベースライン時に透析を受けていなかった被験者におけるAKIの発生率は23% vs.6%(17.2ポイント、9.3~25.2)だった。 結果について著者は、「安全性への懸念から試験が早期に中止となったこと、介入を支持する臨床的に意義のある差異が検出されなかったことを考慮して、所見を解釈すべきであろう」と述べている。

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CAR-NK細胞、再発/難治性CD19陽性がんに有効/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)を導入されたナチュラルキラー(NK)細胞は、再発または難治性のCD19陽性がん患者の治療において高い有効性を示し、一過性の骨髄毒性がみられるものの重大な有害事象は発現せず、相対的に安全に使用できる可能性があることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEnli Liu氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。CAR導入細胞療法では、すでに抗CD19 CAR-T細胞療法のB細胞がんの治療における著明な臨床的有効性が確認されている。一方、CAR-T細胞は重大な毒性作用を誘発する可能性があり、細胞の作製法が複雑である。抗CD19 CARを発現するように改変されたNK細胞は、これらの限界を克服する可能性があるという。進行中の第I/II相試験の初期結果 研究グループは、再発/難治性のCD19陽性がんの治療におけるCAR-NK細胞の有効性と安全性を評価する目的で、第I/II相試験を進めており、今回は最初の11例の結果を報告した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 解析には、再発/難治性CD19陽性がん(非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ性白血病[CLL])の患者11例が含まれた。患者は、臍帯血由来のHLAミスマッチ抗CD19 CAR-NK細胞の投与を受けた。 NK細胞への遺伝子導入には、抗CD19 CAR、インターロイキン-15、安全スイッチとしての誘導型カスパーゼ9をコードする遺伝子を発現させたレトロウイルスベクターを用いた。この細胞を体外で増殖させ、リンパ球除去化学療法を行った後、3つの用量のCAR-NK細胞(用量1:1×105、用量2:1×106、用量3:1×107/kg体重)の1つが単回投与された。最大耐用量には未到達、奏効率は73% 2017年6月~2019年2月の期間に15例が登録され、4例(増悪、移植片対宿主病、検出可能病変の不在、製剤への細菌混入が各1例)が治療を受けなかった。11例の年齢中央値は60歳(範囲:47~70)、女性が4例で、前治療レジメン数中央値は4(3~11)であった。用量は、用量1が3例、2と3が各4例だった。 5例がCLL(リヒター症候群へ形質転換、移行期へ進行の2例を含む)、6例がリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫2例、濾胞性リンパ腫4例)であった。CLLの5例全例に増悪の既往歴があり、イブルチニブの投与歴があった。また、リンパ腫の6例のうち、4例は自家造血幹細胞移植後の増悪で、2例は難治性病変を有していた。 CAR-NK細胞の投与後に、サイトカイン放出症候群や神経毒性、血球貪食性リンパ組織球症は発現しなかった。また、患者と製剤はHLAミスマッチにもかかわらず、移植片対宿主病は発生しなかった。 予測どおり、全例で一過性の可逆的な血液学的毒性イベントがみられ、主にリンパ球除去化学療法関連のものであったが、CAR-NK細胞の寄与の評価はできなかった。好中球減少は、Grade3が2例、Grade4が8例に、リンパ球減少はGrade4が10例にみられた。腫瘍崩壊症候群は認められず、Grade3/4の非血液学的毒性も発現しなかった。最大耐用量には達しなかった。 追跡期間中央値13.8ヵ月(範囲:2.8~20.0)の時点で、8例(73%)で客観的奏効が得られた。このうち7例(CLL 3例、リンパ腫4例)で完全寛解が達成され、1例ではリヒター症候群に転換した腫瘍の寛解が得られたものの、CLLは持続した。すべての用量で、効果の発現は迅速で、投与から30日以内にみられた。 CAR-NK細胞の増殖は、投与から3日という早い時期にみられ、12ヵ月以上低値で持続した。CAR-T細胞で報告されているのと同様に、奏効例は非奏効例に比べ、早期のCAR-NK細胞の増殖の程度が高かった(投与後28日時のゲノムDNAコピー数中央値:3万1,744 vs.903コピー/μg、p=0.02)。 また、インターロイキン-6や腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインの値は、ベースラインに比べて増加しなかった。 著者は、「本研究で使用したリンパ球除去化学療法レジメンは、多くのCAR-T細胞研究が用いているものとほぼ同様で、客観的奏効にある程度寄与している可能性はあるが、本研究の患者は登録時に化学療法抵抗性の病変を有していたと考えられることに注意するのが重要である」と指摘している。

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ドウベイト配合錠の未治療HIV感染症患者に対する2剤治療は患者負担を軽減させるか

 2020年1月31日、ヴィーブヘルスケア株式会社は、同日発売となった抗ウイルス化学療法剤「ドウベイト配合錠」(一般名:ドルテグラビルナトリウム・ラミブジン)に関するメディアセミナーを開催した。その中で、ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの松下 修三氏が、「HIV/AIDS いまどうなっている?」と題して講演を行った。ドウベイト配合錠のメリットは他剤との相互作用の減少 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に対する、多剤併用療法(ART)は、異なる機序の薬剤を併用してHIVの量を減少させる。これまで未治療のHIV感染症患者には、一般的に、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の中から「キードラッグ」として1剤と、「バックボーン」として核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤とを組み合わせた3剤を併用し、治療を実施していた。 今回発売された「ドウベイト配合錠」は、INSTIのドルテグラビルとNRTIのラミブジンの2剤の配合剤で、1錠のみで治療が可能となる。この治療法は、「ドウベイト配合錠」のみが承認を受けているものであり、ドルテグラビルの抗ウイルス効果や薬剤耐性のつきにくさにより実現された。患者が服用する薬剤を3剤から2剤に減らすことで、副作用や、他剤との相互作用を減少させるというメリットがあると考えられる。ドウベイト配合錠は治療ニーズに合った剤形 松下氏は講演の中で、早期診断、早期治療により、HIVに感染した患者の寿命の低下を防ぐことができると強調した。また同氏は、患者が歳を重ねると他の疾患により、さまざまな薬剤の併用が必要になるケースがあることにも触れ、その際には相互作用が少ない薬剤が適していると述べた。 配合錠という剤形で服薬アドヒアランス向上への寄与が考えられ、薬剤数を減らすことで相互作用の減少が見込まれる、「ドウベイト配合錠」。早期治療や相互作用の減少に寄与する薬剤となるのか、また、HIV治療の新たな一手として患者の負担を軽減させる薬剤となるのか、ますます注目が集まるだろう。

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静注鉄剤による鉄欠乏性貧血治療、IIM vs.FCM/JAMA

 経口鉄剤に不耐・不応の鉄欠乏性貧血患者における静注鉄剤による治療では、iron isomaltoside(IIM、現在はferric derisomaltoseと呼ばれる)はカルボキシマルトース第二鉄(FCM)と比較して、低リン血症の発生が少ないことが、米国・デューク大学のMyles Wolf氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月4日号に掲載された。静注鉄剤は、鉄欠乏性貧血の迅速な改善を可能にするが、これらの製剤は線維芽細胞増殖因子23(FGF23)に関連する低リン血症を誘発する場合があるという。静注鉄剤であるIIMとFCMとで無作為化試験 研究グループは、静注鉄剤であるIIMとFCMとで、低リン血症のリスクおよびミネラル骨恒常性のバイオマーカーへの影響を比較する目的で、2つの同一デザインの非盲検無作為化臨床試験を行った(Pharmacosmosなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン値≦11g/dL、血清フェリチン値≦100ng/mL)で、経口鉄剤が1ヵ月以上不耐または不応の患者であった。腎機能低下例は除外された。 被験者は、IIM(1,000mg、1回[Day0])またはFCM(750mg、2回[Day0、7])を静注投与する群に無作為に割り付けられた。Day0、1、7、8、14、21、35に、血清リン濃度とミネラル骨恒常性のバイオマーカーの評価が行われた。 主要エンドポイントは、ベースラインから35日までの期間における低リン血症(血清リン濃度<2.0mg/dL)の発生とした。静注鉄剤の低リン血症の発生率はIIMがFCMに比べ低かった 2017年10月~2018年6月の期間に、米国の30施設で245例(試験A:123例[平均年齢45.1歳、女性95.9%]、試験B:122例[42.6歳、94.1%])が登録された。試験A(治療完遂率 95.1%)では、IIM群に62例、FCM群には61例が、試験B(同93.4%)では両群に61例ずつが割り付けられた。 2つの静注鉄剤の試験を合わせた35日の時点での低リン血症の発生率は、IIM群がFCM群に比べ低かった。試験AではIIM群が7.9%、FCM群は75.0%(補正後発生率の群間差:-67.0%、95%信頼区間[CI]:-77.4~-51.5、p<0.001)であり、試験Bではそれぞれ8.1%および73.7%(-65.8%、-76.6~-49.8、p<0.001)であった。 静注鉄剤による血清リン濃度は、ベースライン以降のすべての測定日において、IIM群に比べFCM群で低値であった(p<0.001)。尿中リン排泄分画は、試験期間を通じて、IIM群に比べFCM群で高く、Day14が最も高値であった(p<0.001)。 生物学的活性を有するintact FGF23の平均値は、FCM群では46.2pg/mLから151.2pg/mLに上昇し、Day8(2回目の投与[Day7]の24時間後)に頂値(343.6pg/mL)に達した後に漸減したが、すべての測定日でIIM群よりも有意に高かった(p<0.001)。また、C末端FGF23の濃度は、両群とも投与から24時間以内に低下したが、Day8~21には、FCM群がIIM群に比べ再上昇した(p<0.001)。 活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDは、両群とも低下したが、FCM群のほうが低下の程度が大きく、試験期間を通じて一貫していた(p<0.001)。また、非活性型の24,25-ジヒドロキシビタミンDは、Day7以降、IIM群よりもFCM群で有意に増加した(p<0.001)。 静注鉄剤による有害事象の頻度は、IIM群よりもFCM群で高かった(試験A:7/63例[11.1%]vs.27/60例[45.0%]、試験B:14/62例[22.6%]vs.28/57例[49.1%])。また、副甲状腺ホルモン上昇(IIM群3.2% vs.FCM群5.1%)、頭痛(3.2% vs.4.3%)、悪心(0.8% vs.6.8%)の頻度が高かった。 著者は、「これらの知見の臨床的重要性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

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ファンコニ貧血〔FA:Fanconi Anemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義ファンコニ貧血(Fanconi Anemia:FA)は、染色体の不安定性を背景に、(1)進行性汎血球減少、(2)骨髄異形性症候群や白血病への移行、(3)身体奇形、(4)固型がんの合併を特徴とする遺伝病である。わが国の年間発生数は5〜10例で、出生100万人あたり5人前後である。臨床像としては、1)汎血球減少、2)皮膚の色素沈着、3)身体奇形、4)低身長、5)性腺機能不全を伴うが、その表現型は多様で、汎血球減少のみで、その他の臨床症状がみられないことや、汎血球減少が先行することなく、骨髄異形性症候群や白血病あるいは固型がんを初発症状とすることもある。それゆえ、臨床像のみで本疾患を確定診断するのは困難である。小児や青年期に発症した再生不良性貧血患者に対しては、全例に染色体脆弱試験を行い、FAを除外する必要がある。また、若年者において、頭頸部や食道、婦人科領域での扁平上皮がんや肝がんの発生がみられた場合や、骨髄異形性症候群や白血病の治療経過中に過度の薬剤や放射線に対する毒性がみられた場合にも、本疾患を疑い染色体脆弱試験を行う必要がある。 ■ 病因、病態FAは遺伝的に多様な疾患であり、現在までに、22の責任遺伝子が同定されている。わが国ではFANCA変異が全体の60%を占め、FANCG変異の25%がそれに続き、その他の変異は数%以下にすぎない。FANCD1、FANCJ、FANCNはそれぞれ家族性乳がん遺伝子のBRCA2、BRIP1、PALB2と同一であり、ヘテロ接合体はFAを発症しないが、家族性乳がん発症のリスクを持つ。遺伝形式は、FANCB、FANCRを除いて、常染色体劣勢遺伝形式を示す。FA蛋白質は、他のDNA損傷応答蛋白質と相互作用し、DNA二重鎖架橋を修復し、ゲノムの安定化を図っている。しかし、DNA修復障害と骨髄不全発症との関係は解明されていない。■ 臨床症状、合併症、予後FAの臨床像は、多様で種々の合併奇形を伴うが、まったく身体奇形がみられない場合も25%ほど存在する。色黒の肌、カフェオーレ斑のような皮膚の色素沈着、低身長、上肢の母指低形成、多指症などが最もよくみられる合併奇形である。国際ファンコニ貧血登録の調査によると10歳までに80%、40歳までに90%の患者は、再生不良性貧血を発症する。悪性腫瘍の合併も年齢とともに増加し、30歳までに20%、40歳までに30%の患者が骨髄異形性症候群や白血病に罹患する。同様に、40歳までに30%の患者は、頭頸部や食道、婦人科領域の扁平上皮がんなどの固型がんを発症する。発症10年、15年後の生存率は、それぞれ、85%、63%であった。わが国の小児血液・がん学会の統計では、移植を受けなかった30例の診断後10年生存率は63%であった。造血幹細胞移植を受けた患者は、非移植群と比較して、発がんのリスクが有意に高く、移植前治療としての放射線の照射歴や慢性GVHDの発症がリスク因子であった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)FAを疑った場合には、図のように末梢血リンパ球を用いてマイトマイシンC(MMC)やジエポキシブタン(DEB)などのDNA架橋剤を添加した染色体断裂試験を行う。わが国においては検査会社でも実施可能である。また、FANCD2産物に対する抗体を用い、ウェスタンブロット法でモノユビキチン化を確認する方法もスクリーニング法として優れており、国内では名古屋大学小児科で実施している。上記のスクリーニング法では、リンパ球でリバージョンを起こした細胞が増殖している(体細胞モザイク)ために偽陰性例や判定困難例が生ずる。このときには100個あたりの染色体断裂総数だけでなく、染色体断裂数ごとの細胞数のヒストグラムが有用である。この場合の診断には、皮膚線維芽細胞を用いた染色体脆弱試験が必要となる。図 ファンコニ貧血を疑った場合の診断スキーム画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAには、免疫抑制療法の効果は期待できないが、蛋白同化ホルモンは、約半数の患者において有効である。しかし、男性化や肝障害などの副作用があり、造血幹細胞移植の成績の悪化を招くという報告もある。わが国で使用可能な蛋白同化ホルモン製剤としては、酢酸メテノロン(商品名:プリモボラン)のみである。現時点では、FAの患者にとって、造血幹細胞移植のみが唯一治癒の期待できる治療法である。通常の移植前処置で使用される放射線照射や大量シクロホスファミドの投与では移植関連毒性が強いので、従来は少量のシクロホスファミドと局所放射線照射の併用が標準的な前治療法として用いられてきた。しかし、非血縁者間骨髄移植や臍帯血移植は、拒絶や急性移植片対宿主病(GVHD)の頻度が高く、十分な治療成績は得られていなかった。しかし、最近になって、フルダラビンを含む前治療法が開発され、その予後は著明に改善がみられている。 最近、わが国から報告されたFAに対するHLA一致同胞あるいは代替ドナーからの移植成績は、2年全生存率がそれぞれ100%、96%に達している。4 今後の展望フルダラビンを含む前治療による造血幹細胞移植の開発により、造血能の回復は得られるようになったが、扁平上皮がんを中心とした2次がんのリスクが増大している。すでに、海外では遺伝子治療が実施されており、今後の発展が期待されている。5 主たる診療科小児科、血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ファンコニ貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金 特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2020年02月10日

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新型コロナウイルス、国内3症例の経過と得られた示唆

 2月7日、日本感染症学会・日本環境感染学会は「新型コロナウイルス2019-nCoVへの対応について」と題し、学会員に向けた緊急セミナーを開催した(司会は日本感染症学会理事長 館田 一博氏、日本環境感染学会理事長 吉田 正樹氏)。 この中で、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター センター長)は、「新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症 臨床・感染防止対策」とのテーマで、これまで同センターが診療した3症例の紹介と、そこから得た知見を紹介した。1例目33歳女性・主訴:咽頭痛、倦怠感 1月19日に武漢のホテルに1泊し、20日に来日。23日に咽頭痛出現。24日に1回目の受診。インフルエンザ迅速検査は陰性。初診時の診断は上気道炎。発熱が改善せず、27日に2回目の受診。胸部レントゲンで肺野に浸潤影を確認できず、2019-nCoV感染は否定的と判断。30日に3回目の受診。胸部レントゲンでは両側下葉にスリガラス影と浸潤影の出現があり即日入院。その後2019-nCoV感染が確定。2例目54歳男性・主訴:咽頭痛、鼻汁 2018 年 5 月から武漢に滞在中の日本人。2020 年1月27日から咽頭痛と鼻汁が出現。帰国した29日の飛行機内で軽度の悪寒が出現し、37.1℃の発熱と上気道症状が見られた。30日に2019-nCoV感染が判明、胸部レントゲン検査および胸部CT検査を行うがいずれも肺炎を示唆するような陰影なし。急性上気道炎と診断し、入院継続と経過観察。第6病日まで37℃台の発熱と倦怠感は継続、呼吸状態の悪化はなし。3例目41歳男性・主訴:発熱、咳嗽 2019年12月20日から武漢に仕事で滞在中の日本人、以前も何度も滞在歴がある。帰国した2020年1月31日から38℃の発熱と軽微な咳嗽が出現。発熱と上気道症状あり。2月1日2019-nCoV感染が判明。胸部CT検査で左肺突部と左肺舌区に一部浸潤影を伴うスリガラス影があり肺炎と診断。3日時点で37℃台の発熱はあるが呼吸状態の悪化はなし。※3症例の詳細や胸部レントゲン・CT画像を日本感染症学会サイトに掲載。最初の1週間は風邪との区別は困難、その後の経過を観察 3症例の病状と現在までの経緯を紹介したのち、大曲氏は「現時点において、論文などで紹介される2019-nCoV感染症患者の症状は、中国国内の重症患者から得たものが大半。日本国内でヒト-ヒト感染が広まって受診者が増加した場合、その多くを占めるであろう軽症患者の症状として、今回の3例を参考にしてほしい」と述べた。 軽症患者の臨床的特性としては、「症例数がまだ限られ、現時点で断定的なことは述べるには早すぎる」と断ったうえで、「私たちが診療した例に限れば、最初の1週間は軽い感冒とほぼ同じ症状で、微熱と倦怠感が主訴となり、この時点で2019-nCoV感染の診断は困難。そのまま良くなるケースもあれば、1週間経過時に呼吸苦を訴え、肺炎と診断されたケースもあった」と説明。「感冒様症状が1週間ほど続き、かつ患者の倦怠感が強い点は、通常の感冒やインフルエンザと経過とは明らかに異なるため、臨床的に疑うカギとなるかもしれない」とした。 さらに、中国から報告される症例は重症例が多く、軽症例が報告から漏れている可能性がある点に注目。中国以外の報告例には軽症例が多く、中国国内でも実際には軽症から重症まで幅広く発症していると考えられるため、軽症患者の臨床的特徴を検証する必要性があること、軽症者を母数に加えることで現在報じられている2019-nCoVの致死率が下がる可能性があることを指摘した。 加えて、今回の3例の患者は30~50代であり、「国内で高齢者が罹患した場合のデータはまだない。中国の例を見る限り高齢者は重篤化する危険が高いため、その点も注視したい」とした。 本セミナーの動画は後日、日本感染症学会のYou Tubeチャンネルで公開予定。

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