静注鉄剤による鉄欠乏性貧血治療、IIM vs.FCM/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/17

 

 経口鉄剤に不耐・不応の鉄欠乏性貧血患者における静注鉄剤による治療では、iron isomaltoside(IIM、現在はferric derisomaltoseと呼ばれる)はカルボキシマルトース第二鉄(FCM)と比較して、低リン血症の発生が少ないことが、米国・デューク大学のMyles Wolf氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月4日号に掲載された。静注鉄剤は、鉄欠乏性貧血の迅速な改善を可能にするが、これらの製剤は線維芽細胞増殖因子23(FGF23)に関連する低リン血症を誘発する場合があるという。

静注鉄剤であるIIMとFCMとで無作為化試験

 研究グループは、静注鉄剤であるIIMとFCMとで、低リン血症のリスクおよびミネラル骨恒常性のバイオマーカーへの影響を比較する目的で、2つの同一デザインの非盲検無作為化臨床試験を行った(Pharmacosmosなどの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン値≦11g/dL、血清フェリチン値≦100ng/mL)で、経口鉄剤が1ヵ月以上不耐または不応の患者であった。腎機能低下例は除外された。

 被験者は、IIM(1,000mg、1回[Day0])またはFCM(750mg、2回[Day0、7])を静注投与する群に無作為に割り付けられた。Day0、1、7、8、14、21、35に、血清リン濃度とミネラル骨恒常性のバイオマーカーの評価が行われた。

 主要エンドポイントは、ベースラインから35日までの期間における低リン血症(血清リン濃度<2.0mg/dL)の発生とした。

静注鉄剤の低リン血症の発生率はIIMがFCMに比べ低かった

 2017年10月~2018年6月の期間に、米国の30施設で245例(試験A:123例[平均年齢45.1歳、女性95.9%]、試験B:122例[42.6歳、94.1%])が登録された。試験A(治療完遂率 95.1%)では、IIM群に62例、FCM群には61例が、試験B(同93.4%)では両群に61例ずつが割り付けられた。

 2つの静注鉄剤の試験を合わせた35日の時点での低リン血症の発生率は、IIM群がFCM群に比べ低かった。試験AではIIM群が7.9%、FCM群は75.0%(補正後発生率の群間差:-67.0%、95%信頼区間[CI]:-77.4~-51.5、p<0.001)であり、試験Bではそれぞれ8.1%および73.7%(-65.8%、-76.6~-49.8、p<0.001)であった。

 静注鉄剤による血清リン濃度は、ベースライン以降のすべての測定日において、IIM群に比べFCM群で低値であった(p<0.001)。尿中リン排泄分画は、試験期間を通じて、IIM群に比べFCM群で高く、Day14が最も高値であった(p<0.001)。

 生物学的活性を有するintact FGF23の平均値は、FCM群では46.2pg/mLから151.2pg/mLに上昇し、Day8(2回目の投与[Day7]の24時間後)に頂値(343.6pg/mL)に達した後に漸減したが、すべての測定日でIIM群よりも有意に高かった(p<0.001)。また、C末端FGF23の濃度は、両群とも投与から24時間以内に低下したが、Day8~21には、FCM群がIIM群に比べ再上昇した(p<0.001)。

 活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDは、両群とも低下したが、FCM群のほうが低下の程度が大きく、試験期間を通じて一貫していた(p<0.001)。また、非活性型の24,25-ジヒドロキシビタミンDは、Day7以降、IIM群よりもFCM群で有意に増加した(p<0.001)。

 静注鉄剤による有害事象の頻度は、IIM群よりもFCM群で高かった(試験A:7/63例[11.1%]vs.27/60例[45.0%]、試験B:14/62例[22.6%]vs.28/57例[49.1%])。また、副甲状腺ホルモン上昇(IIM群3.2% vs.FCM群5.1%)、頭痛(3.2% vs.4.3%)、悪心(0.8% vs.6.8%)の頻度が高かった。

 著者は、「これらの知見の臨床的重要性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)