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左冠動脈主幹部病変へのPCI vs.CABG、メタ解析で転帰の違いは/Lancet

 低~中等度の解剖学的複雑性を有する左冠動脈主幹部病変に対して、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の5年死亡リスクは同等であることが示された。一方でベイジアン解析では、死亡リスクには違いがありPCI よりCABGのほうが支持される(年率0.2%未満である可能性が高い)ことを示唆する結果が示された。また、自然発生心筋梗塞や血行再建術のリスクは、PCI群がCABG群より高かったが、脳卒中はPCI群が低かった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S. Sabatine氏らによるメタ解析の結果で、結果を踏まえて著者は、「これらの予想される結果の違いを伝えることは、患者の治療を決定するのに役立つだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年11月12日号掲載の報告。左冠動脈主幹部病変へのPCIとCABGを5年以上追跡した試験抽出 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochraneのデータベースを基に、左冠動脈主幹部病変に対し、薬剤溶出ステントを用いたPCIまたはCABGを行い5年以上追跡し、全死因死亡リスクを比較した無作為化比較試験で、2021年8月31日までに英語で発表されたものを検索した。選択基準に合った試験の抽出については、Sabatine氏ら2人が行った。 主要エンドポイントは、5年全死因死亡。副次エンドポイントは、心血管死、自然発生心筋梗塞、脳卒中、血行再建術再施行だった。 分析は一段階法で行い、イベント発生率はKaplan-Meier法で算出、PCI群とCABG群の比較にはCox異質性モデルを用い、それぞれの無作為化試験は変量効果として扱った。 ベイジアン解析では、PCI群とCABG群の主要エンドポイント絶対リスクの群間差が、0.0%、1.0%、2.5%、5.0%である確率をそれぞれ推算した。PCIとCABGを比較した4試験、計約4,400例についてメタ解析 文献検索で抽出した1,599件の試験結果のうち、基準に見合った「SYNTAX」「PRECOMBAT」「NOBLE」「EXCEL」の4試験についてメタ解析を行った。被験者は合計4,394例で、SYNTAXスコア中央値は25.0(IQR:18.0~31.0)で、PCI群、CABG群ともに2,197例だった。 Kaplan-Meier法による5年全死因死亡率は、PCI群が11.2%(95%信頼区間[CI]:9.9~12.6)、CABG群が10.2%(9.0~11.6)で(ハザード比[HR]:1.10、95%CI:0.91~1.32、p=0.33)、絶対リスクのPCIとCABGの群間差の統計的有意差は認められなかった(絶対リスク群間差:0.9%、95%CI:-0.9~2.8)。 ベイジアン解析では、5年死亡率がCABG群よりPCI群が高い確率が85.7%で、群間差は1.0%以上(年率0.2%未満)である可能性が高かった。死因の内訳は、心血管死よりも非心血管死が多かった。 自然発生心筋梗塞発生率は、CABG群が2.6%(95%CI:2.0~3.4)に対しPCI群が6.2%(5.2~7.3)(HR:2.35[95%CI:1.71~3.23]、p<0.0001)、血行再建術再施行率もそれぞれ10.7%(9.4~12.1)と18.3%(16.7~20.0)(HR:1.78[95%CI:1.51~2.10]、p<0.0001)と、いずれもPCI群がCABG群より高かった。戦略間の周術期心筋梗塞発生の違いは、各試験で使用された定義に依存していた。 全体的に脳卒中発生率は、CABG群が3.1%(95%CI:2.4~3.9)でPCI群が2.7%(2.0~3.5)と両群で同等だったが(HR:0.84[95%CI:0.59~1.21]、p=0.36)、無作為化後1年間ではPCI群がCABG群より低率だった(0.37[0.19~0.69]、p=0.0019)。

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MASTER DAPT試験とその解釈、出血イベント定義の難しさ(解説:中川義久氏)

 MASTER DAPT試験は、テルモ製のUltimasterステントを留置後に、高出血リスク患者における最適な抗血小板療法を検証した試験である。2021年欧州心臓病学会での発表と同時にNew England Journal of Medicine誌に論文が公表されるという快挙を達成した。日本発のステントを用いた研究であり、日本人医師としては悪い気はしないというか、爽快感もあるのが率直な感想である。このMASTER DAPT試験は、ステント留置から1ヵ月が経過した時点でDAPTから単剤治療に変更する群(短縮群)と、さらに最低2ヵ月以上DAPTを継続する群(継続群)にランダマイズし、割り付けから335日経過時点で両群の安全性と有効性を以下の3つの項目で評価している。(1)純臨床有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)(2)主要心臓・脳有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)(3)大出血・臨床的に重要な非大出血 統計学的な比較検定の方法として、(1)と(2)は非劣性検定、(3)については優越性検定を用いて評価が行われている。結果として(1)と(2)は非劣性が達成され、(3)は優越性が示された。そして、出血性合併症リスクの高い患者において、DAPT期間の短縮は予後の改善につながることを示したと結論している。この3つの評価項目と比較方法は研究開始前に定められたもので、それに従い解析された結果に異議を挟むものではない。しかし、あえて評価項目の設定について考察させていただきたい。MASTER DAPT試験の出血イベントの定義は、BARCの出血基準に従ってなされている。BARCはARC(Academic Research Consortium)が提案する出血の基準で以下に紹介する。BARCの出血基準●タイプ0:出血なし●タイプ1:医学的に問題とならない(not actionable)、患者が予定外の検査、入院、治療のため医療機関を受診する要因とならない出血。患者が医療専門家に相談せず、患者自身の判断により治療を中止した場合も含む。●タイプ2:明白で、医学的に対応すべき(actionable)出血徴候で(例:臨床状況から想定される以上の出血。画像検査のみで検出される出血を含む)、タイプ3、4、5の基準には該当しないが、下記の基準の1つ以上を満たすもの:(1)医療専門家による非外科的介入を要するもの、(2)入院またはケアレベルの引き上げを要するもの、(3)評価を要するもの。●タイプ3:明白な出血+3g/dL以上のヘモグロビンの低下または、明白な出血に伴う輸血●タイプ4:CABG関連出血●タイプ5:致死的出血 評価項目(1)の純臨床有害事象においては、出血イベントは、「BARCタイプ3、タイプ5」の大出血としている。一方、評価項目(3)での出血イベントは、BARCタイプ2の「臨床的に重要な非大出血」と、タイプ3またはタイプ5の「大出血」を併せたものとしている。実際のMASTER DAPT試験の出血イベントを見ると、短縮群ではBARCタイプ2の出血の累積発生率が継続群に比較して低かった(4.5%対6.8%、差:-2.25%ポイント、95%CI:-3.59~-0.90)。一方で、大出血の累積発生率は両群とも同程度であった。つまり、MASTER DAPT試験の出血イベント評価におけるポジティブ(優越性)な結果は、BARCタイプ2の「臨床的に重要な非大出血」の差によりもたらされている。BARCタイプ2は、定義が少し緩い基準で、やや客観性に欠ける点が指摘されている。さらに、BARCタイプ2の出血イベント減少の臨床的な価値を、実臨床の現場でどのように解釈するかがポイントとなる。 ここでは詳しくは述べないが、同じく短期間DAPTについて検討した、STOPDAPT-2 ACS試験の結果も欧州心臓病学会で発表された。その結果として、短期間DAPTは標準的DAPTに対する非劣性証明を達成することができなかった。STOPDAPT-2 ACS試験での出血イベントの定義は、「TIMI Major or Minor」である。この「TIMI Major or Minor」は「BARCタイプ3、タイプ4、タイプ5」に相当する。BARCタイプ4のCABG関連出血はかなり少ないので、「BARCタイプ3、タイプ5」が「TIMI Major or Minor」とほぼ等価値の評価基準となる。つまり、STOPDAPT-2 ACS試験では、BARCタイプ2のレベルの出血を、イベントとはカウントしていない。仮定の話をするのはルール違反であるが、もしBARCタイプ2をSTOPDAPT-2 ACS試験の評価項目に加えていれば解析結果が異なる可能性もある。 このように、臨床研究の評価は微妙なバランスの上に構成されている。研究結果の解釈においては個々のイベント定義が重要であることを理解いただきたい。仮定の話を展開することは適切ではないことは重々理解しているが、あえて私的な考察を述べたことお許しいただきたい。

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冠動脈ステント留置後のDAPT期間、1ヵ月に短縮の可能性/NEJM

 薬剤溶出型冠動脈ステント留置による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた出血リスクが高い患者において、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の34日間投与は193日間投与と比較して、純臨床有害事象および主要心臓・脳有害事象のリスクが非劣性で、大出血・臨床的に重要な非大出血のリスクは有意に低いことが、スイス・Universita della Svizzera ItalianaのMarco Valgimigli氏らが実施した「MASTER DAPT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号に掲載された。30ヵ国140施設の無作為化試験 本研究は、薬剤溶出型冠動脈ステント留置後の出血リスクが高い患者におけるDAPTの適切な投与期間の評価を目的とする医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2017年2月~2019年12月の期間に日本を含む30ヵ国140施設で参加者のスクリーニングが行われた(Terumoの助成を受けた)。 対象は、急性または慢性の冠症候群で、生分解性ポリマーシロリムス溶出型冠動脈ステント(Ultimaster、Terumo製)留置によるPCIが成功し、出血リスクが高いと判定された患者であった。 被験者は、DAPTを1ヵ月施行した時点で、抗血小板薬を1剤に切り換えることでDAPTの期間を短縮する群、またはDAPTをさらに2ヵ月以上継続投与する群(標準治療群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、次の3つの順位化された項目の、335日の時点での累積発生率であった。(1)純臨床有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)、(2)主要心臓・脳有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)、(3)大出血・臨床的に重要な非大出血。(1)と(2)は、per-protocol集団における非劣性(累積発生率の差の両側95%信頼区間[CI]の上限値が、(1)は3.6ポイントを超えない、(2)は2.4ポイントを超えない)の評価が、(3)はintention-to-treat集団における優越性(同様に上限値が0.0ポイントを超えない)の評価が行われた。主に臨床的に重要な非大出血の差が大きい 4,579例(intention-to-treat集団、平均年齢76.0歳、男性69.3%)が登録され、短縮群に2,295例、標準治療群に2,284例が割り付けられた。全体の33.6%が糖尿病、19.1%が慢性腎臓病、18.9%が心不全、12.4%が脳血管イベントの既往、10.6%が末梢血管疾患を有しており、36.4%は経口抗凝固薬の投与を受けていた。per-protocol集団は4,434例で、短縮群が2,204例、標準治療群は2,230例だった。 PCI施行後のDAPT投与期間中央値は、短縮群が34日(IQR:31~39)、標準治療群は193日(102~366)であった。短縮群では、抗血小板薬単剤療法として53.9%でクロピドグレルが使用され、標準治療群ではDAPTの1剤として78.7%で同薬が用いられた。 335日時点のper-protocol集団における純臨床有害事象の発生率は、短縮群が7.5%(165例)、標準治療群は7.7%(172例)であり、短縮群は標準治療群に対し非劣性であった(ハザード比[HR]:0.97[95%CI:0.78~1.20]、リスク差:-0.23ポイント[95%CI:-1.80~1.33]、非劣性のp<0.001)。 また、同集団における主要心臓・脳有害事象の発生率は、短縮群が6.1%(133例)、標準治療群は5.9%(132例)と、短縮群の標準治療群に対する非劣性が認められた(HR:1.02[95%CI:0.80~1.30]、リスク差:0.11ポイント[95%CI:-1.29~1.51]、非劣性のp=0.001)。 一方、intention-to-treat集団における大出血・臨床的に重要な非大出血の発生率は、短縮群が6.5%(148例)と、標準治療群の9.4%(211例)に比べ有意に低かった(リスク差:-2.82ポイント[95%CI:-4.40~-1.24]、優越性のp<0.001)。この差は、主に臨床的に重要な非大出血(BARC タイプ2)の発生率の差によるものであった(4.5% vs.6.8%)。 著者は、「出血リスクが高くない患者や、他の種類のステントを留置された患者には、本試験の結果は当てはまらない可能性がある」と指摘し、「本試験では、ステント内再狭窄やステント血栓症の患者は除外されている。また、純臨床有害事象と主要心臓・脳有害事象の発生率は予想よりも低く、非劣性マージンの範囲は広かった。したがって、短縮群のこの投与期間におけるこれらのイベントの発生率は、もう少し高い可能性が否定できない」と考察している。

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PCI後のDAPT終了後、クロピドグレル単剤が有効/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)として薬剤溶出ステント(DES)留置術を施行され、6~18ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を受けた後、抗血小板薬単剤による長期の維持療法を要する患者において、クロピドグレルはアスピリンと比較して、死亡や血栓性疾患、出血を含む複合エンドポイントのリスクが低いことが、韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが実施した「HOST-EXAM試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。韓国37施設の非盲検無作為化試験 本研究は、韓国の37施設が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2014年3月~2018年5月の期間に患者登録が行われた(韓国・ChongKunDangなどの助成による)。 対象は、年齢20歳以上、DESによるPCI施行後に、臨床的イベントを発症することなく6~18ヵ月のDAPTを終了した患者であった。虚血性および大出血性の合併症を有する患者は除外された。 被験者は、長期維持療法期の抗血小板薬単剤療法として、クロピドグレル(75mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)の経口投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は24ヵ月間であった。 主要エンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群(ACS)による再入院、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準タイプ3以上の複合とされ、intention-to-treat解析が行われた。血栓関連エンドポイントや全出血も良好 5,530例が登録され、このうち5,438例(98.3%)が無作為化の対象となった。クロピドグレル群に2,710例(49.8%)、アスピリン群に2,728例(50.2%)が割り付けられた。主要エンドポイントの確認は5,338例(98.2%)で完了した。 全体の平均年齢は63.5(SD 10.7)歳で、74.5%が男性であった。PCI施行時の診断名の割合は、安定狭心症が25.5%、不安定狭心症が35.5%、非ST上昇型心筋梗塞が19.4%、ST上昇型心筋梗塞が17.2%だった。 24ヵ月の追跡期間における主要エンドポイントの発生は、クロピドグレル群が152例(5.7%)と、アスピリン群の207例(7.7%)に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.90、p=0.0035)。 血栓関連複合エンドポイント(心臓死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、ACSによる再入院、ステント血栓症[definite/probable])の発生は、クロピドグレル群が99例(3.7%)、アスピリン群は146例(5.5%)で(HR:0.68、95%CI:0.52~0.87、p=0.0028)、全出血(BARCタイプ2以上)の発生は、それぞれ61例(2.3%)および87例(3.3%)であり(0.70、0.51~0.98、p=0.036)、いずれも有意な差が認められた。 著者は、「これまでの研究で、PCI施行後の長期維持療法期にどの抗血小板薬単剤療法が最良の臨床結果をもたらすかに関して重要な仮説が提起されてきたが、DESによるPCI施行後の安定した同質の患者集団を対象とした今回の研究により、大規模な無作為化試験で初めてこれらの知見を確認することができた」としている。

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冠動脈小血管に対するDCBとDESの長期成績(解説:上田恭敬氏)-1354

 径が3mm以下の冠動脈小血管に対するDCBとDESの成績を比較した、all-comerの無作為化非劣性試験であるBASKET-SMALL 2において、3年の長期成績が報告された。本試験では、1年でのDCBのDESに対する非劣性がすでに報告されている。 対象患者はDCB群382症例とDES群376症例であり、今回の解析では、3年間のMACE(心臓死、心筋梗塞、TVR)を主要評価項目としている。DAPT期間は、ACS症例では両群とも12ヵ月、非ACS症例ではDCB群で1ヵ月、DES群で6ヵ月が推奨された。DCB群の5%で、ベイルアウトのステント留置が必要であった。 MACE(15%、HR=0.99、p=0.95)、心臓死(5% vs.4%、HR=1.29、p=0.49)、心筋梗塞(6%、HR=0.82、p=0.52)、TVR(9%、HR=0.95、p=0.83)のいずれにおいても、DCB群とDES群の群間に差を認めなかった。ステント血栓症、major bleedingにも有意差を認めなかった。DESとしてTaxus ElementとXienceが用いられているが、DCBとXienceの成績にも差はなさそうである。すなわち、3年の長期にわたって、DESと同等のDCBの成績が示されたことになる。 本試験の結果から判断すると、3mm以下の冠動脈小血管に対しては、DCBとDESは同等、あるいはステントレスである(体内留置異物がない)こととDAPT期間を短くできることを加味すれば、DESよりもDCBが優れているようにも思われる。ただし、ステントを必要としない良好な拡張が得られることが必要である。もう一つ、血管の開存・虚血の解除という点で、必ずしもDCBとDESが同等とは限らないことに注意が必要である。3mm以下の小血管では再狭窄が必ずしもTVRにつながらない可能性が、3mm以上の血管よりも大きいであろう。このことは理解したうえで、「径が3mm以下の冠動脈小血管」に対しては、DESと同等のDCBの有用性・安全性が確認された結果といえる。

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PTX被覆デバイスによる末梢動脈疾患の血管内治療、死亡率増大させず/NEJM

 末梢動脈疾患患者において、パクリタキセル被覆血管内デバイスと非被覆血管内デバイスに、追跡期間1~4年での全死因死亡率に差は認められなかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のJoakim Nordanstig氏らが、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「SWEDEPAD試験」の計画外の中間解析結果を報告した。症候性末梢動脈疾患に対する下肢血管内治療で、パクリタキセル被覆血管形成バルーンおよび溶出ステントによる死亡リスクの増加が最近のメタ解析で示され、懸念が生じていた。NEJM誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。パクリタキセル被覆vs.非被覆血管内デバイスの全死因死亡を評価 研究グループは、症候性末梢動脈疾患患者2,289例を薬剤被覆デバイス群(1,149例)または非被覆デバイス群(1,140例)に無作為に割り付けた(症例数は解析時点のもの)。無作為化は、高度慢性下肢虚血(1,480例)または間欠性跛行(809例)の有無に基づいた疾患重症度により層別化された。 中間解析のエンドポイントは全死因死亡であった。 追跡調査で脱落した患者はいなかった。薬剤被覆デバイスは、すべてパクリタキセルが被覆薬剤として用いられていた。平均追跡期間2年半の全死因死亡率、薬剤被覆群25.5%、非被覆群24.6% 平均追跡期間2.49年において574例が死亡した。全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群が25.5%(293/1,149例)、非被覆デバイス群が24.6%(281/1,140例)であった(ハザード比:1.06、95%信頼区間:0.92~1.22)。 1年時点の全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群10.2%(117/1,149例)、非被覆デバイス群9.9%(113/1,140例)であった。 また、平均追跡期間2.49年において、高度慢性下肢虚血を有する患者の全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群33.4%(249/745例)、非被覆デバイス群33.1%(243例/735例)であり、間欠性跛行を有する患者ではそれぞれ10.9%(44/404例)、9.4%(38/405例)で、いずれも両群間に有意差は認められなかった。

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3mm未満の冠動脈病変へのDCB vs.DES、3年追跡結果/Lancet

 小径の新規冠動脈疾患の治療において、薬剤溶出性ステント(DES)に対する薬剤コーティングバルーン(DCB)の有効性/安全性は3年間維持されていた。スイス・バーゼル大学のRaban V. Jeger氏らが、多施設共同非盲検無作為化非劣性試験「BASKET-SMALL 2試験」の3年追跡結果を報告した。BASKET-SMALL 2試験の主要評価項目である12ヵ月後の主要心血管イベント(MACE)について、DESに対するDCBの非劣性が検証されており、DCBは新規小冠動脈疾患に対する治療として1年までは確立されていたが、1年を超えるデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年10月19日号掲載の報告。DCB vs.DES、MACE・全死亡・ステント血栓症・大出血の発生率を3年間追跡 研究グループは2012年4月10日~2017年2月1日に、ドイツ、スイス、オーストリアの14施設において、直径3mm未満の新規冠動脈病変を有し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応となる患者758例を、DCB群(382例)または第2世代DESを留置するDES群(376例)に、1対1の割合で無作為に割り付け、3年間追跡した。抗血小板薬2剤併用療法の投与期間は、状態が安定した患者ではDCB群は術後1ヵ月間、DES群は留置後6ヵ月間とした。ただし急性冠症候群(ACS)患者では12ヵ月間が推奨された。 評価項目は、MACE(心臓死、非致死性心筋梗塞[MI]、標的血管血行再建術[TVR])、全死因死亡、probable/definiteステント血栓症、および大出血(BARC出血基準3~5)であった。最大の解析対象集団について修正intention-to-treat解析が実施された。MACE発生率はDCB群15%、DES群15%、大出血発生率はそれぞれ2%、4% MACE発生率(Kaplan-Meier推定値)は、DCB群およびDES群ともに15%であった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.68~1.45、p=0.95)。MACEの各イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)についても、心臓死はDCB群5%、DES群4%(HR:1.29、95%CI:0.63~2.66、p=0.49)、非致死的MIはともに6%(HR:0.82、95%CI:0.45~1.51、p=0.52)、TVRもともに9%(HR:0.95、95%CI:0.58~1.56、p=0.83)であり、全死因死亡率(Kaplan-Meier推定値)もともに8%(HR:1.05、95%CI:0.62~1.77、p=0.87)で、いずれも同程度であった。 probable/definiteステント血栓症の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、DCB群1%、DES群2%(HR:0.33、95%CI:0.07~1.64、p=0.18)、大出血の発生率はそれぞれ2%および4%(HR:0.43、95%CI:0.17~1.13、p=0.088)で、DES群に比べDCB群で低値であったが統計学的な有意差は認められなかった。

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チカグレロルのDAPTからSAPTへの移行時期:3ヵ月vs.12ヵ月の比較試験(解説:上田恭敬氏)-1276

 急性冠症候群症例を対象として、PCI後にチカグレロルとアスピリンによるDAPTを3ヵ月で終了してチカグレロルの単剤療法へ移行する群と12ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、12ヵ月間のnet adverse clinical event(出血と脳心血管イベント)を主要評価項目として比較したRCTの結果である。出血はTIMI major bleeding、脳心血管イベントは死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管再血行再建としている。登録症例数は、DAPT 3ヵ月群が1,527症例、12ヵ月群が1,529症例であった。 結果は、主要評価項目の発生頻度が3.9%対5.9%(p=0.01)と、3ヵ月DAPT群で有意に低値であった。出血イベントが3ヵ月DAPT群で有意に低値であったためであり、脳心血管イベントのそれぞれ、および組み合わせに群間差はなかった。 DAPT期間が短いほうが、出血イベントが少なくなるのは予想通りである。問題は、DAPT短縮によって本当に脳心血管イベントが増えないのかということである。 DAPT試験では、DAPTを継続することによって、心筋梗塞の発症を半減することができている。DAPT試験と本試験を比べると、DAPT試験では、はるかに多い約5,000症例が各群に割り付けられていること、全体の脳心血管イベント発生頻度が高いこと、単剤療法はアスピリンであること、12ヵ月間DAPTでイベントを発生しなかった人だけが対象であること、などが違いとして挙げられる。本試験では、ステントや薬物療法の進歩によって、全体的に脳心血管イベントが減少したために、DAPT期間を短縮しても問題がなかった、あるいは単剤療法がアスピリンではなくチカグレロルであったから問題がなかったと解釈することもできるだろうが、出血リスクが低くて脳心血管イベント発生リスクが高い人を選べばDAPT継続にもメリットがある可能性を否定するものではないだろう。しかし、チカグレロルなどP2Y12阻害薬の単剤療法であれば、脳心血管イベント抑制効果においてDAPTと同等である可能性も否定できず、アスピリンが必要な期間がさらに短縮されたり、元々不要との考えに至る可能性もあるのかもしれない。さらにエビデンスの蓄積が待たれる。

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DES留置のACS、短期DAPT後にチカグレロル単剤で予後改善/JAMA

 薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた急性冠症候群(ACS)患者では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月間施行後にチカグレロル単剤療法に切り替えるアプローチは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、1年後の大出血と心血管イベントの複合アウトカムの発生をわずかに低減し、統計学的に有意な改善が得られることが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏ら「TICO試験」の研究グループによって示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)としてDES留置術を受けたACS患者では、アスピリン+P2Y12阻害薬による短期DAPT施行後にアスピリンを中止することで、出血リスクが軽減するとされる。一方、新世代DES留置術を受けたACS患者において、アスピリン中止後のチカグレロル単剤療法に関する検討は、これまで行われていなかったという。韓国の38施設が参加した無作為化試験 研究グループは、DES留置後のACS患者における、3ヵ月間のDAPT施行後のチカグレロル単剤への切り替えは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、純臨床有害事象(net adverse clinical event:NACE)を低減するかを検証する目的で、多施設共同非盲検無作為化試験を実施した(韓国・心血管研究センターなどの助成による)。 対象は、2015年8月~2018年10月の期間に、韓国の38施設でDES(超薄型生体吸収性ポリマーシロリムス溶出性ステント)留置術を受けたACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症)であった。 被験者は、3ヵ月間のDAPT(アスピリン+チカグレロル)施行後に、アスピリンを中止してチカグレロル(90mg、1日2回)単剤に移行する群、またはアスピリンを中止せずにチカグレロルベースのDAPTを12ヵ月間継続する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは1年後のNACEの発生とした。NACEは、大出血と主要心脳血管有害事象(MACCE:死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管再血行再建術)の複合と定義された。大出血の発生は有意に低下、MACCEには差がない 3,056例(平均年齢61歳、女性628例[20%]、ST上昇型心筋梗塞36%、糖尿病27%)が登録され、2,978例(97.4%)が試験を完遂した。チカグレロル単剤群に1,527例、12ヵ月チカグレロルベースDAPT群には1,529例が割り付けられた。 主要アウトカムは、チカグレロル単剤群で59例(3.9%)に発生し、12ヵ月DAPT群の89例(5.9%)と比較して、その差は小さいものの統計学的に有意であった(絶対群間差:-1.98%、95%信頼区間[CI]:-3.50~-0.45、ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.48~0.92、p=0.01)。 事前に規定された10項目の副次アウトカムのうち、8項目には有意な差はみられなかった。TIMI出血基準による大出血(1.7% vs.3.0%、HR:0.56、95%CI:0.34~0.91、p=0.02)および大出血または小出血(3.6% vs.5.5%、0.64、0.45~0.90、p=0.01)の発生は、チカグレロル単剤群で良好であったが、MACCE(2.3% vs.3.4%、0.69、0.45~1.06、p=0.09)およびその5つの構成要素の個々の発生には差がなかった。 著者は、「これらの知見を解釈する際には、イベント発生率が予想よりも低かった点などを考慮する必要がある」としている。

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冠動脈ステントのポリマー論争に決着か?(解説:中川義久氏)-1196

 PCIに用いる金属製の薬物溶出性ステントの比較試験の結果がNEJM誌に掲載された。Onyx ONE試験の結果で、すでにケアネットのジャーナル四天王でも紹介されている(高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM)。その概要は、耐久性ポリマーを使用したステントと、ポリマーフリーのステントを比較して、安全性および有効性の複合アウトカムにおいて非劣性であったという内容である。 第1世代の薬物溶出性ステントのCypherで遅発性・超遅発性ステント血栓症が問題となった。その原因として、薬剤の放出をコントロールするためのポリマーが、過敏性反応から炎症惹起性があることが原因とされた。ポリマー性悪説が掲げられ、生体吸収性ポリマーや生分解性ポリマーなどの、消えてなくなるポリマーのステントが開発された。さらにポリマーを用いることなく薬剤放出をコントロールする、ポリマーフリーのステントが開発されるに至った。一方で、ポリマーの生体適合性が向上し、抗血栓性を内在するポリマーなど、ポリマー性善説も登場してきた。このように、薬物溶出性ステントを巡るポリマー論争は長い歴史がある。耐久性ポリマーvs.生分解性ポリマーの比較試験もいくつも施行された。そして、耐久性ポリマーvs.ポリマーフリーの比較試験が今回の論文である。いずれの試験も非劣性試験のデザインが大半で、わずかの差異を声高に誇る研究もあるが、結果を総括すれば「ほぼ同等」である。つまり新世代の金属製の薬物溶出性ステントはポリマーの有無にかかわらず成熟が進み完成形に近づいていることを示している。 小生はNEJM誌に掲載された本論文のタイトルに注目してみた。「Polymer-based or Polymer-free Stents in Patients at High Bleeding Risk」である。直訳すれば、「高出血リスク患者への、ポリマーベースまたはポリマーフリーのステント」となる。本研究で比較された2種類のステントの名称を正確に表記すれば、耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出性ステント(Resolute Onyx)と、ポリマーフリー・バイオリムスA9(umirolimus)コーティッドステント(BioFreedom DCS)である。しかし、このような具体的な名称はタイトルには一切ない。これは、NEJM誌のプライドを感じさせる。NEJM誌に掲載されるべき内容は個々のステント商品の比較という世俗的なレベルではなく、ステントのポリマー論争そのものに決着をつける普遍的真理である、という編集部の考えが示されている。 医療ではなく司法の領域では、最高裁判所は日本における最終の法解釈機関である。最高裁判所の判断は、通常「判例」として扱われ法律に近い意義を持つという。この雰囲気に近い矜持を感じるのである。もちろん、NEJM誌の掲載内容を常に真理として、無批判に容認することを勧めるものではない。あらゆる論文には批判的に疑って読むことも重要である。一方で、この個々の2つのステントの比較試験という内容がNEJM誌に掲載されたのは、「ほぼ同等」という結論が真実に近いレベルに達していることを示唆している、だからこそNEJM誌に採択されたという一面も感じたので、あえて私見を紹介した。

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高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM

 出血リスクが高い、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に1ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法を行った患者において、ポリマーベース・ゾタロリムス溶出ステントの使用は、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステントの使用に対し、安全性および有効性の複合アウトカムについて非劣性であったことが示された。スイス・ベルン大学のStephan Windecker氏らが、約2,000例を対象に行った無作為化単盲検試験で明らかにした。これまで同患者において、ポリマーフリー・薬剤被覆ステントの使用は優れた臨床的アウトカムを示すことが報告されていたが、ポリマーベース・薬剤溶出ステントとの比較データは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年2月12日号掲載の報告。1年後の心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の統合アウトカムを比較 研究グループは、PCIを受ける患者で出血リスクの高い1,996例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはポリマーベースのゾタロリムス溶出ステントを(1,003例)、もう一方の群にはポリマーフリーのumirolimus被覆ステントを用いてPCIを施行した(993例)。被験者は術後、抗血小板薬2剤併用療法を1ヵ月、その後は抗血小板薬単剤療法を受けた。 主要アウトカムは、1年時点の心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の統合アウトカムだった。主な副次アウトカムは、標的病変不全と、心臓死、標的病変心筋梗塞または標的病変血行再建の臨床的必要性のいずれかで評価した有効性だった。両アウトカムともに、非劣性検証を行った。主な副次アウトカムも非劣性 1年時点の主要アウトカム発生は、ゾタロリムス溶出ステント群17.1%(988例中169例)、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステント群16.9%(969例中164例)だった(リスク差:0.2ポイント、97.5%片側信頼区間[CI]上限:3.5、非劣性マージン:4.1、非劣性のp=0.01)。 主な副次アウトカムの発生も、ゾタロリムス溶出ステント群17.6%(174例)、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステント群17.4%(169例)だった(リスク差:0.2ポイント、97.5%片側CI上限:3.5、非劣性マージン:4.4、非劣性のp=0.007)。

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TAVRのデバイス性能は製品によって差がある(解説:上妻謙氏)-1160

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療として数々の外科手術との無作為化比較臨床試験が行われてきて、すでに手術リスクの程度にかかわらず外科手術よりも安全であることが証明され、世界中で適応が拡大されてきている。しかし今までTAVRのデバイス同士の比較が行われた大規模研究は少なく、デバイスごとの成績の差違は明らかではなかった。 本SCOPE I試験は、現在のスタンダードデバイスであるSAPIEN 3と自己拡張型デバイスであるACURATE neoを1対1にランダマイズして比較したもので、75歳以上のSTSスコアの平均が3.5と中等度から低リスク患者を中心に739例がエントリーされた。プライマリーエンドポイントはVARC-2という弁膜症治療における有効性と安全性の30日成績で、具体的には全死亡、脳卒中、生命を脅かす出血、重大な血管合併症、PCIを要する冠動脈閉塞、急性腎障害、弁膜症症状または心不全による再入院、再治療を要する人工弁不全、中等度以上の弁逆流、あるいは狭窄の複合エンドポイントである。 結果はACURATE neo群24%、SAPIEN 3群16%で、非劣性は証明されず、SAPIEN 3のほうが有意に良好な成績であった。ただし死亡、脳卒中は差がなく、主に差があったのは急性腎障害と人工弁逆流の割合であった。人工弁逆流の差はSAPIEN 3に逆流防止のスカートが付いている効果と考えられ、腎障害の頻度の差はACURATE neo群で手技時間が長く造影剤使用量が多かったことによると考察されている。代わりにSAPIEN 3はACURATE neoに比べ残存圧較差が大きく、有効弁口面積が小さくなった。ACURATE neoは弁輪を拡張する力が弱く、ペースメーカーが必要になる症例が少ないといわれているが、ペースメーカー植え込み率も10%対9%と違いがなかった。 複合エンドポイントでの差で、ハードエンドポイントには差がなかったが、このようなデバイスによる成績の差がはっきりと示された臨床試験は近年では珍しい。実際に本研究も非劣性を検証するデザインであり、同等になるとの仮説であった。冠動脈の薬剤溶出ステント同士の比較試験で同等の成績ばかりが続いており、薬剤溶出ステントは成熟したデバイス市場であることが示されてきたが、TAVRのデバイスに関してはその製品差が大きいことをうかがわせる。しかしACURATE neoのシステムも今後逆流防止のスカートが付く予定で、手技時間が短縮するようなデバイスの改良が進めば、性能が追いつき、むしろ有効弁口面積を大きくとれるメリットも活かせる可能性があり、今後のデバイス進歩に有用な情報が得られたといえる。

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STEMI症例ではXienceよりOrsiroが優れている?(解説:上田恭敬氏)-1143

 PCIを施行するSTEMI患者1,300症例1,623病変を対象として、Orsiro stent(ultrathin strut biodegradable polymer sirolimus-eluting stent)とXience Xpedition/Alpine stent(thin strut durable polymer everolimus-eluting stent)を比較した多施設無作為化比較試験(BIOSTEMI試験)の結果が報告された。主要エンドポイントは1年のTarget lesion failure(TLF)(心臓死、標的血管での心筋梗塞、 標的病変再血行再建術の複合エンドポイント)である。スイスの10病院が参加した医師主導型の臨床試験である。 1年のTLFは、Orsiro群で4%(25/649)、Xience群で6%(36/651)となり、Orsiro群の優位性が示された(difference -1.6 percentage points、rate ratio 0.59、95% Bayesian credibility interval 0.37~0.94、posterior probability of superiority 0.986)。エンドポイントの構成成分を見ると、心臓死と標的血管での心筋梗塞については群間差がなく、標的病変再血行再建術がOrsiro群で少ない傾向がみられた。 STEMI症例に使用すれば、XienceステントよりもOrsiroステントのほうが、若干再狭窄率が低くなることを示した試験といえるだろう。 ただし、基本的にはアンギオガイドのPCIによる結果であり、IVUSなどのイメージングの使用については規定されておらず、使用頻度についての記載もない。ULTIMATE試験の結果によれば、IVUSを適切に使用することで、再狭窄などのイベントが3分の1程度にまで低下する可能性がある。本試験の群間差が、拡張不十分などのIVUSを使用することで改善できる原因によるものであれば、日本で同様の試験を実施すれば、群間差なしという結果になる可能性がある。しかし、十分な拡張を得ても、ストラットの厚みなどステント特性の違いによって群間差が生じているのであれば、日本での同様の試験においても、同様の結果が得られるだろう。また、ストラットの厚みなどステント特性の違いによって再狭窄率に差異が生じているのであれば、STEMIに限らずPCI症例全般において、同様の結果が得られる可能性もあるだろう。いずれにしても、本試験の結果は有意差ではあるものの、エンドポイントの発生頻度は4% vs.6%といずれの群でも小さいため、今後さらに複数の試験によって同様の結果が得られるか検証する必要がある。

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左冠動脈主幹部病変の5年転帰、PCI vs.CABG/NEJM

 解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。左冠動脈主幹部病変患者1,905例で、5年間評価 研究グループは2010年9月29日~2014年3月6日に、解剖学的複雑度が低度~中等度(各参加施設の評価)の左冠動脈主幹部病変患者1,905例を、フルオロポリマーベースのエベロリムス溶出コバルトクロムステント留置群(PCI群948例)、またはCABG群(957例)に無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイント。intention-to-treat集団を対象に、ロジスティック回帰分析を用いて解析した。複合エンドポイント、心血管死および心筋梗塞の発生に両群で有意差なし、ただしPCIは全死因死亡が多く、脳血管イベントは少ない 5年時点で、主要評価項目である複合エンドポイントのイベント発生率はPCI群22.0%、CABG群19.2%であった(群間差:2.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.9~6.5、p=0.13)。 全死因死亡の発生は、PCI群がCABG群よりも高率であった(13.0% vs.9.9%、群間差:3.1ポイント[95%CI:0.2~6.1])。一方、心血管死(definite)(5.0% vs.4.5%、0.5ポイント[-1.4~2.5])、および心筋梗塞(10.6% vs.9.1%、1.4ポイント[-1.3~4.2])の発生は両群で有意差はなかった。脳卒中の発生は、両群で有意差はなかったが(2.9% vs.3.7%、-0.8ポイント[-2.4~0.9])、全脳血管イベントはPCI群がCABG群よりも低率であった(3.3% vs.5.2%、-1.9ポイント[-3.8~0])。 虚血による血行再建術は、PCI群がCABG群よりも高頻度であった(16.9% vs.10.0%、6.9ポイント[3.7~10.0])。 著者は研究の限界として、非盲検試験であること、追跡期間が5年と限られていたことなどを挙げたうえで、「PCIおよびCABGの長期的な安全性プロファイルを明らかにするためには、10年あるいはそれ以上の追跡調査が必要である」と述べている。

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高リスクPCI施行患者の出血、チカグレロル単独vs.DAPT/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた出血・虚血イベントリスクの高い患者において、術後3ヵ月間チカグレロル+アスピリンの併用投与後、チカグレロル単剤投与への変更は併用投与継続の場合と比べて、死亡・心筋梗塞・脳卒中のリスクを上昇することなく臨床的に重大な出血リスクを有意に低下することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のRoxana Mehran氏らが行ったプラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月26日号で発表された。これまでP2Y12阻害薬を早期に中断して抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を最短とするアプローチについて、いくつかの試験が行われていたが、概して低リスクの患者が対象で虚血イベントに関する検出力が不足していた。研究グループは、アスピリン投与期間を短縮することで、とくに消化器毒性についてのアスピリンに関連した出血リスクを回避でき、P2Y12阻害薬の効力を長期に受けられる可能性があるとの仮説を立て検討を行った。BARC出血基準タイプ2、3、5の発生リスクを比較 研究グループは、11ヵ国187ヵ所の医療機関を通じ、PCIで薬剤溶出ステントを1ヵ所以上に埋設し、担当医がチカグレロル+アスピリン療法下で退院させることを予定していた、出血または虚血イベントリスクが高い患者を対象に試験を行った。 PCIを施行しチカグレロル+アスピリンを3ヵ月投与した後、大出血イベントまたは虚血イベントのなかった患者を無作為に2群に分け、両群にチカグレロルを継続したまま、一方にはアスピリンを、もう一方にはプラセボを、いずれも1年間併用投与した。 主要エンドポイントは、BARC出血基準タイプ2、3、5の出血とした。また、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントについても評価。非劣性マージンは絶対差1.6ポイントとした。チカグレロル単剤投与群でBARC出血基準2、3、5発症リスクは0.56倍に  2015年7月~2017年12月に9,006例が試験に登録され、そのうち3ヵ月後に無作為化を受けたのは7,119例(intention-to-treat集団)だった。平均年齢は65歳、女性が23.8%、糖尿病を有していたのは36.8%で、64.8%が急性冠症候群によるPCI施行であった(29.8%が非ST上昇型心筋梗塞)。無作為化後1年間の服薬アドヒアランスはチカグレロル+アスピリン(併用)群、チカグレロル+プラセボ(単剤)群で同等だった(85.9% vs.87.1%)。 無作為化から1年間の主要エンドポイントの発生率は、単剤群4.0%、併用群7.1%で(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.45~0.68、p<0.001)、群間差は-3.08ポイント(95%CI:-4.15~-2.01)だった。BARC出血基準タイプ3または5の発生リスクの群間差も同様だった(発生率は単剤群1.0%、併用群2.0%、HR:0.49[95%CI:0.33~0.74])。 全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイント発生率は、両群ともに3.9%だった(群間差:-0.06ポイント[95%CI:-0.97~0.84]、HR:0.99[95%CI:0.78~1.25]、非劣性のp<0.001)。■「DAPT」関連記事ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

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蛇足の教え(解説:今中和人氏)-1116

 SYNTAX試験は冠動脈3枝病変ないし主幹部病変症例に対する、バイパス手術と薬剤溶出ステントを比較した、まさにランドマークとなる多施設ランダム化試験で、予定観察期間の5年成績が公表されたのは2014年。死亡のほかに心筋梗塞、脳卒中、再血行再建などが解析され、ある程度の複雑病変(3区分でintermediateとなるSYNTAXスコア23以上)の症例にはバイパス手術が適切であると明瞭に示す、キレイな結果であった。 循環器領域だけでも「この議論、いつまでやるんですか?」という案件はさまざまあれど、冠動脈疾患に対する治療法選択はその横綱格。SYNTAX試験の最終結果を見て、私などは「やっとこれで結論が出た」と半ば安堵する思いだったのだが、寡聞に過ぎた。あれから5年経ち、生命予後をさらに5年追跡したSYNTAX extended survival、すなわちSYNTAXES試験がこの論文である。 生死だけとはいえ、80以上の施設にまたがる合計1,800人の患者さんの94%を10年も追跡・集計するのがいかに大変だったか、頭が下がる思いだが、何せ追跡項目は総死亡「だけ」なので心臓死以外が大量に含まれ、MACCE等はまったく不明で、学術的価値はSYNTAXとは比較するべくもない。そもそも治療時点で平均年齢65歳、80%は男性の患者である。欧米諸国の多くで男性の平均年齢は70代後半なので、治療後10年間でバイパス群もPCI群も約1/4が死亡し、有意差はなかった(HR:1.17)が、この間のイベントや、ましてQOLはまったく不明である。サブグループ解析では、3枝病変患者ではバイパス群の生存率が有意に良好(HR:1.41)だが、主幹部病変患者では有意差なし(HR:0.90)。SYNTAXスコアで言うと、低スコア(HR:1.13)と中スコア(HR:1.06)患者の10年生存率に有意差はなく、高スコアのみバイパス群が有意に良好(HR:1.41)だった。 極端な話、65歳の患者群を35年追跡すれば生存率は極限まで低下するわけで、総死亡だけをいたずらに長期に観察すると、かえって本質が見えなくなる。そんな雑な議論に終始したこのSYNTAXESは、ズバリ「蛇足プロジェクト」の感が強いが、SYNTAXで1年・3年・5年と開いていった両群の生存率の差が、5年目以降もますます開いてゆくわけではなかったのは興味深い。ただ今回、それ以上の教えをいただいた。 確かに総死亡のみの議論はまったく不十分で、治療後の患者が入退院を繰り返してよいわけがなく、われわれはバイパスが良いだのPCIが良いだのと、治療法の差を論じている。だが私も時々、他病死した方の御遺族から「最期、心臓がなかなか止まらなくて…素晴らしい手術をしていただいたんだとよくわかりました」なんて言われることがある。これまでそういうコメントに対して深く考えてこなかったが、心臓死だろうが他病死だろうが、要するにその方は亡くなっているのである。すると最適の心臓治療だったかどうかは、もちろん、どうでもよいわけではないが、鍵を握るというほどでもなかったのだ。本論文の結果は、われわれが熱く議論している「差」というのは、一部の患者以外では、わずか10年の歳月にあっさり飲み込まれる程度の「差」だ、ということを示している。 今後もわれわれは最適な治療方針を追求してゆくべきだし、治療方針提示に当たっては、日本人は欧米人より平均寿命が長いので、SYNTAX試験の患者年齢より数年、上乗せして考えるべきだと考えるが、それにしても人はいずれ死を迎えることは厳然たる事実である。たとえば、び漫性と言うほどではない病変の後期高齢者がバイパス手術をひどく嫌がった場合、PCIや薬物治療だって十分妥当性のある選択肢で、「イヤイヤ、あなたはバイパス手術『じゃなきゃダメです』」みたいな説得は、実にイケてない。ガイドラインの弾力的な適用を心がけたい。

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STEMIのプライマリPCI、新世代ステントが有望/Lancet

 直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受ける急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、1年後の標的病変不全の発生に関して、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントよりも有効であることが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが行ったBIOSTEMI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせた新世代の薬剤溶出ステントは、薄型ストラットを用いた第2世代の薬剤溶出ステントに比べて、プライマリPCIを受ける急性心筋梗塞患者の血管治癒を促進し、臨床アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。標的病変不全を評価する医師主導無作為化試験 本研究は、スイスの10施設が参加した医師主導型の多施設共同単盲検無作為化試験であり、2016年4月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Biotronikの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、発症から24時間以内で、1つ以上の冠動脈責任病変を有し、プライマリPCIが検討されている急性期STEMI患者であった。 被験者は、生分解性ポリマーからシロリムスを溶出する超薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Orsiro)を留置する群(生分解性ポリマー群)、または耐久性ポリマーからエベロリムスを溶出する薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Xience Xpedition/Alpine)を留置する群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12ヵ月後の標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋再梗塞、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術)とした。標的病変不全:4% vs.6%、不全の個々の項目に差はない 1,300例(1,623病変)が登録され、生分解性ポリマー群に649例(816病変、62.2[SD 11.8]歳、女性21%)、対照群には651例(806病変、63.2[11.8]歳、女性27%)が割り付けられた。1年後のフォローアップデータは、生分解性ポリマー群が614例(95%)、対照群は626例(96%)で得られた。 1年後の標的病変不全は、生分解性ポリマー群が649例中25例(4%)で発生し、対照群の651例中36例(6%)と比較して、有意に良好であった(群間差:-1.6、率比[RR]:0.59、95%ベイズ確信区間[Crl]:0.37~0.94、ベイズ事後確率:0.986)。 1年後の心臓死(生分解性ポリマー群3% vs.対照群3%、RR:0.77、95%Crl:0.43~1.40、ベイズ事後確率:0.806)、標的血管の再心筋梗塞(1% vs.1%、0.55、0.19~1.60、0.875)、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術(1% vs.3%、0.55、0.26~1.13、0.949)、全死因死亡(4% vs.3%、0.97、0.58~1.62、0.553)、definiteステント血栓症(1% vs.1%、0.68、0.22~1.89、0.762)、出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3~5)(3% vs.2%、1.26、0.73~2.45、0.205)は、両群間に差が認められなかった。 著者は、「標的病変不全の差は、主に虚血による標的病変再血行再建術が生分解性ポリマー群で少なかったことによると考えられる」とし、「急性心筋梗塞患者のプライマリPCIでは、新世代の薬剤溶出ステントはベアメタルステントに比べ高い有効性をもたらすが、超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせたステント技術の改良により、臨床アウトカムがさらに改善する可能性が示唆される」と指摘している。

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CABGが3枝病変には有益?SYNTAX試験の10年死亡率/Lancet

 冠動脈3枝病変および左冠動脈主幹部病変の治療において、第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)では、10年間の全死因死亡に差はなく、3枝病変患者ではCABGの生存利益が有意に大きいが、左冠動脈主幹部病変患者ではこのような利益はないことが、オランダ・エラスムス大学のDaniel J F M Thuijs氏らが行ったSYNTAX試験の延長試験であるSYNTAXES(SYNTAX Extended Survival)試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。SYNTAX試験は、de-novo 3枝および左冠動脈主幹部病変患者における第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGを比較する非劣性試験であり、最長5年のフォローアップでは、全死因死亡率はPCIが13.9%、CABGは11.4%(p=0.10)と報告されている。3枝および左冠動脈主幹部病変患者をCABGとPCIに割り付け 本研究は、北米と欧州の18ヵ国85施設が参加した多施設共同無作為化対照比較試験であり、2005年3月~2007年4月の期間に患者登録が行われた(フォローアップ期間の5~10年目はGerman Foundation of Heart Research、0~5年目はBoston Scientific Corporationの助成を受けた)。 対象は、年齢21歳以上のde-novo 3枝病変および左冠動脈主幹部病変を有する患者であった。PCIまたはCABGの既往歴、急性心筋梗塞、同時に心臓手術が適応の患者は除外された。被験者は、PCIまたはCABGを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは10年全死因死亡であり、intention-to-treat解析で評価した。糖尿病の有無別、および3段階の冠動脈病変の複雑性(SYNTAXスコアが≦22点:複雑性が低い、23~32点:中等度、≧33点:高い)に基づき、事前に規定されたサブグループ解析が行われた。CABG群に比べ3枝病変患者はPCI群の死亡率が有意に高かった 1,800例が登録され、PCI群に903例(平均年齢65.2[SD 9.7]歳、女性24%)、CABG群には897例(65.0[9.8]歳、21%)が割り付けられた。10年時の生存転帰の情報は、PCI群841例(93%)、CABG群848例(95%)で得られた。 10年時までに、PCI群では244例(27%)、CABG群では211例(24%)が死亡し、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.97~1.41、p=0.092)。5年時をランドマークポイントとするランドマーク解析を行ったところ、0~5年(1.19、0.92~1.54)および5~10年(1.15、0.89~1.50)のいずれにおいても、両群間に死亡率の差はみられなかった。 また、3枝病変患者では、PCI群がCABG群に比べ死亡率が有意に高かったのに対し(151/546例[28%]vs.113/549例[21%]、HR:1.41、95%CI:1.10~1.80)、左冠動脈主幹部病変患者では両群間に差はなかった(93/357例[26%]vs.98/348例[28%]、0.90、0.68~1.20、交互作用のp=0.019)。 糖尿病患者(HR:1.10、95%CI:0.80~1.52)および非糖尿病患者(1.20、0.96~1.51)においても、PCI群とCABG群の間に死亡率の差はなかった(交互作用のp=0.66)。冠動脈病変の複雑性別の解析では、複雑性が低い群(1.13、0.79~1.62)と中等度の群(1.06、0.77~1.47)の死亡率には治療群間に差はなく、高い群(1.41、1.05~1.89)ではCABG群が良好であったが、これらの3つの群に線形傾向はみられなかった(傾向のp=0.30)。 著者は、「血行再建術を要する複雑な冠動脈3枝病変を有する患者はCABGを受けるべきと考えられるが、選定された左冠動脈主幹部病変患者では、PCIはCABGに代わる適切な選択肢であり、同様の10年生存率をもたらす」としている。

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short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

【はじめに】 PCI(ステント留置)後の適正DAPT期間の議論が、まだ、続いている。 ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety marginをとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey messageは、・安定型狭心症は1~6ヵ月、ACSでは12ヵ月間のDAPTを基本とするが、その延長は虚血/出血リスクにより個別的に検討されるべきである(DAPT score・PRECISE DAPT score)。・ステントの種類(BMS/DES)は考慮しない。・DAPTのアスピリンの相方として、安定型狭心症ではクロピドグレル、ACSではチカグレロル>プラスグレルが推奨される。 一方本邦のガイドラインは、安定型狭心症で6ヵ月、ACSでは6~12ヵ月間を標準治療とし、long DAPTには否定的である。 言うまでもないが、DAPTの直接の目的はステント血栓症予防である。ステント血栓症の原因は複合的で、病態(ACS vs.安定型狭心症)のほかにも、患者因子(抗血小板薬への反応性・糖尿病・慢性腎臓病・左室収縮能など)、病変因子(血管径・病変長・分岐部病変など)、ステントの種類(BMS、第1世代DES、第2世代以降のDES)、さらには手技的因子(stent underexpansion、malappositionなど)が関連すると報告されている。そしてステント血栓症は留置からの期間によって主たるメカニズムが異なり、頻度も変わる2)。1年以降(VLST:Very Late Stent Thrombosis)の発生頻度は1%をはるかに下回り、in-stent neoatherosclerosisが主役となる。またVLSTの数倍も他病変からのspontaneous MIが発症するといわれている。こうした点がDAPTの個別的対応の背景であろう。【本メタ解析について】 ステント留置後のadverse eventは時代とともに減少し、したがって数千例規模のRCT でもsmall sample sizeがlimitationになってしまう。これを補完すべく2014年頃からRCTのメタ解析が年2~3本のペースで誌上に登場してきた。本文はその最新版で、これまでで最多の17-RCT(n=46,864)を解析した。DAPTはアスピリン+クロピドグレルに限定し、単剤抗血小板療法(SAPT)はアスピリンである。従来の「short DAPT=12ヵ月以内」を細分化して「short(3~6ヵ月)」と「standard(12ヵ月)」に分離、これを「long(>12ヵ月)」と比較する3アーム方式で議論を進めている。 その結論・主張は、(1)総死亡・心臓死・脳卒中・net adverse clinical eventsはDAPT期間で差がない(2)long DAPTはshort DAPTに比して非心臓死や大出血を増やす(だからlong DAPTは極力避けたほうがいい)(3)short DAPTとstandard DAPTではACSであってもステント血栓症や心筋梗塞に差がない(だからshort DAPTでいい) などである。しかし一方、long DAPTの超遅発性ステント血栓症・心筋梗塞抑制効果についてはほとんど触れられておらず、short DAPTに肩入れしている印象を受ける。筆者が、おそらく虚血患者に接する機会が少ないであろう臨床薬理学センター所属のためだろうか? 本メタ解析の構図は「DAPTに関するACC/AHA systematic review report(2017)」3)に似ていて、これに2016年以降発表されたRCTを中心に6報加えて議論を展開している。long DAPTほど血栓性イベント抑制に勝り出血性合併症が増える結論は同じだが、ACC/AHA reportはテーラーメードを意識してかリスクによる選択の余地を強調している。 さらにいくつか気になる点がある。評者もご多分に漏れず統計音痴なので、その指摘は的を射ていないかもしれないけれど、できれば本文をダウンロードしてご意見をいただきたい。 たとえば、MIやステント血栓症はlong DAPTで有意に抑制しているのに心臓死はshort DAPTで少ない傾向にあったこと。あるいは非心臓死(有意差あり)・心臓死のOdd Ratioが共に総死亡より大きかったこと。これらは各エンドポイントが試験により含まれたり含まれなかったりしていたためらしい。 また、たとえば各試験でのevent ratioが大きく異なること。同じshort vs.standard DAPTの試験でも12ヵ月MI発症率が0%(IVUS-XPL)~3.9%(I-LOVE-IT2)と幅がある。調べてみるとperiprocedural MIを含めるかどうかなど、そもそも定義が異なるようである。 そして、例えばランダム化の時期である。short vs.standardのほとんどがPCI前後に振り分けているのに対し、standard vs.longはすべてで急性期イベントが終了した12ヵ月後に振り分けランドマーク解析している。これでもshort vs.longの図式が成り立つのだろうか?【まとめ】 DAPT有用性の議論はあのゴツイPalmaz-Schatz stentから始まった。第1世代DESも確かに分厚かった。しかし技術の粋を集め1年以内のステント血栓症が大幅に減少した現時点において、short DAPTにシフトするのは異論がないところであろう。とりわけcoronary imagingを駆使してoptimal stentingを目指すことができる本邦においては、なおさらである。しかし一方、心筋梗塞二次予防に特化したメタ解析4)では、long DAPTが致死性出血や非心臓死を増やすことなく心臓死やMI・脳卒中を有意に抑制した、との結果だった。 ステント血栓症が減ったからこそ、二次予防に抗血小板薬(DAPT)をどう活かすかという視点も必要であろう。解析の精度はさておき「short term DAPT could be considered for most patients after PCI with DES」と結論付けたSAPT(アスピリン)vs.DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の議論はそろそろ終わりにしても良いのではないだろうか。 現在はアスピリンの代わりにクロピドグレルやP2Y12 receptor inhibitor(チカグレロル)によるSAPT、少量DOACの有効性も検討されて、PCI後の抗血栓療法は新しい時代に入ろうとしている。 木ばかりでなく森を見るようにしたいと思う。

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PCI技術の爛熟の時代―「不射の射」を目指す(解説:後藤信哉氏)-1086

 PCI日本導入直後のころ、1枝病変を対象に心臓外科のback upの下、POBAをしていた。5%が急性閉塞して緊急バイパスとなった。ステントの導入により解離による急性閉塞から、2週間以内のステント血栓症に合併症がシフトした。頑固なステント血栓症もアスピリンとチクロピジンの抗血小板薬併用療法により制圧された。安全性の改善されたクロピドグレルが標準治療となると、長期に継続する抗血小板療法による出血合併症が血栓イベントよりも大きな時代を迎えた。 PCIをしている先生方には外科的な直感があるのであろう。本邦のSTOPDAPT、 STOPDAPT-2、今回のSMART-CHOICEなどアスピリン早期中止の有用性を示唆する論文が多く発表されている。DAPTの長期継続の有無にかかわらず、総死亡を含む一次エンドポイントの発現率は3%程度にすぎない。また総死亡に占める心血管死亡の比率も半分を割っている。 歴史的に考えると、1)急性期に5%が急性冠閉塞したPOBA時代、2)亜急性期の10%近いステント血栓症を2~3%に低減させたステントと抗血小板薬併用療法の時代が終わり、3)補助的な抗血小板療法が不要となったPCI技術の爛熟の時代に入っている可能性が高い。 筆者は中島 敦の『名人伝』を愛読している。弓の名人を目指して鍛錬する若者が、「君は射の射をして不射の射を知らない」と諭され、修行の後「弓の名人になって」ついに弓を忘れるという物語である。PCIの黎明期に多くのinterventionistが技を極める鍛錬をした。これからは「不射の射」として心血管病の一次予防に注力する必要がある。

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