SYNTAX試験の10年死亡率、3枝病変にはCABGが有益?/Lancet

冠動脈3枝病変および左冠動脈主幹部病変の治療において、第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)では、10年間の全死因死亡に差はなく、3枝病変患者ではCABGの生存利益が有意に大きいが、左冠動脈主幹部病変患者ではこのような利益はないことが、オランダ・エラスムス大学のDaniel J F M Thuijs氏らが行ったSYNTAX試験の延長試験であるSYNTAXES(SYNTAX Extended Survival)試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。SYNTAX試験は、de-novo 3枝および左冠動脈主幹部病変患者における第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGを比較する非劣性試験であり、最長5年のフォローアップでは、全死因死亡率はPCIが13.9%、CABGは11.4%(p=0.10)と報告されている。
SYNTAX試験の10年全死因死亡を検討
本研究は、北米と欧州の18ヵ国85施設が参加した多施設共同無作為化対照比較試験であり、2005年3月~2007年4月の期間に患者登録が行われた(フォローアップ期間の5~10年目はGerman Foundation of Heart Research、0~5年目はBoston Scientific Corporationの助成を受けた)。対象は、年齢21歳以上のde-novo 3枝病変および左冠動脈主幹部病変を有する患者であった。PCIまたはCABGの既往歴、急性心筋梗塞、同時に心臓手術が適応の患者は除外された。被験者は、PCIまたはCABGを受ける群に無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは10年全死因死亡であり、intention-to-treat解析で評価した。糖尿病の有無別、および3段階の冠動脈病変の複雑性(SYNTAXスコアが≦22点:複雑性が低い、23~32点:中等度、≧33点:高い)に基づき、事前に規定されたサブグループ解析が行われた。
10年全死因死亡率:27% vs.24%
1,800例が登録され、PCI群に903例(平均年齢65.2[SD 9.7]歳、女性24%)、CABG群には897例(65.0[9.8]歳、21%)が割り付けられた。10年時の生存転帰の情報は、PCI群841例(93%)、CABG群848例(95%)で得られた。10年時までに、PCI群では244例(27%)、CABG群では211例(24%)が死亡し、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.97~1.41、p=0.092)。5年時をランドマークポイントとするランドマーク解析を行ったところ、0~5年(1.19、0.92~1.54)および5~10年(1.15、0.89~1.50)のいずれにおいても、両群間に死亡率の差はみられなかった。
また、3枝病変患者では、PCI群がCABG群に比べ死亡率が有意に高かったのに対し(151/546例[28%]vs.113/549例[21%]、HR:1.41、95%CI:1.10~1.80)、左冠動脈主幹部病変患者では両群間に差はなかった(93/357例[26%]vs.98/348例[28%]、0.90、0.68~1.20、交互作用のp=0.019)。
糖尿病患者(HR:1.10、95%CI:0.80~1.52)および非糖尿病患者(1.20、0.96~1.51)においても、PCI群とCABG群の間に死亡率の差はなかった(交互作用のp=0.66)。冠動脈病変の複雑性別の解析では、複雑性が低い群(1.13、0.79~1.62)と中等度の群(1.06、0.77~1.47)の死亡率には治療群間に差はなく、高い群(1.41、1.05~1.89)ではCABG群が良好であったが、これらの3つの群に線形傾向はみられなかった(傾向のp=0.30)。
著者は、「血行再建術を要する複雑な冠動脈3枝病変を有する患者はCABGを受けるべきと考えられるが、選定された左冠動脈主幹部病変患者では、PCIはCABGに代わる適切な選択肢であり、同様の10年生存率をもたらす」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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コメンテーター : 今中 和人( いまなか かずひと ) 氏
埼玉医科大学総合医療センター 心臓血管外科
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