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ナトリウムとカリウムの適切な1日摂取量は/BMJ

 世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。今回、カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE試験)では、これら2つの目標を同時に満たす者はきわめてまれで、死亡/心血管イベントのリスクが最も低いのは、ナトリウム摂取量が3~5g/日でカリウム高摂取量(≧2.1g/日)の集団であることが明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年3月13日号に掲載された。ナトリウムについては相反する知見が報告されているが、多くでは摂取量と死亡にJ字型の関連が示されている。これに対し、カリウムは一般に摂取量が増えるに従って死亡が直線的に低下することが報告されている。一方、ナトリウム/カリウム比と臨床アウトカムとの関連を示唆する観察研究の報告もある。18ヵ国、10万人の早朝空腹時尿から摂取量を推算 研究グループは、ナトリウムとカリウムの摂取量の代替測定値として尿中排泄量を測定し、心血管イベントおよび死亡との関連を、現在のWHO推奨1日摂取量との比較において検討する目的で、国際的な前向きコホート研究を実施した(欧州研究会議[ERC]の助成による)。 18の高/中/低所得国の都市部および農村部の住民10万3,570例(35~70歳)から、早朝空腹時尿を採取した。主要アウトカムは、摂取量の代替測定値としてのナトリウムとカリウムの推定24時間尿中排泄量と、全死因死亡および主要な心血管イベント(心血管死、脳卒中、心筋梗塞、心不全)との関連とした。解析には、多変量Cox回帰を用いた。 ナトリウム排泄量を低(<3g/日)、中(3~5g/日)、高(>5g/日)の3つに、カリウム排泄量は中央値2.1g/日を基準に高(≧2.1g/日)と低(<2.1g/日)の2つに分け、これらを組み合わせた6つのカテゴリーについて解析を行った。WHO推奨の同時達成は0.002%、ナトリウムはJ字型の関連 参加者の41.8%が中国からで、ナトリウムとカリウムの尿中排泄量の平均推定値は、それぞれ4.93g/日、2.12g/日であった。フォローアップ期間中央値8.2年の時点で、7,884例(6.1%)が死亡または心血管イベントを経験した。 尿中ナトリウム排泄量の増加はカリウム排泄量増加と正の相関を示した(補正前、r=0.34)。また、ナトリウムの超低排泄量(<2g/日)とカリウムの高排泄量(>3.5g/日)を同時に満たした参加者は、0.002%ときわめて少なかった。 ナトリウム排泄量が高値および低値の双方の集団で、死亡/重大な心血管イベントのリスクが高く、J字型の関連を示した。カリウム排泄量と死亡/重大な心血管イベントには反比例の関連が認められた。 6つのカテゴリーのうち、ナトリウム中排泄量(3~5g/日)/カリウム高排泄量(≧2.1g/日)の群(全コホートに占める割合:21.9%)が、死亡/心血管イベントのリスクが最も低く、イベント発生率は6.4%であった。 これを参照群として比較すると、死亡/心血管イベントのリスクが最も高かったのは、低ナトリウム/低カリウムの群(イベント発生率:9.4%、ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.11~1.37、全コホートに占める割合:7.4%)であり、次いで高ナトリウム/低カリウムの群(8.8%、1.21、1.11~1.32、13.8%)、低ナトリウム/高カリウム群(6.8%、1.19、1.02~1.38、3.3%)、高ナトリウム/高カリウム群(7.5%、1.10、1.02~1.18、29.6%)の順であった。また、中ナトリウム/低カリウム群は、参照群に比べリスクが高かった(7.8%、1.10、1.01~1.19、24.0%)。 カリウム排泄量が増加するに従って、ナトリウム高排泄量との関連で増加した心血管リスクが減衰し、ナトリウム高排泄量と心血管リスクとの関連はカリウム低排泄量の集団で最も顕著だった。 著者は、「本研究の知見は、WHOの推奨の実行可能性に疑問を呈するものである。ナトリウム摂取と死亡/心血管イベントのJ字型の関連は、現行のWHOの低ナトリウム食(<2.0g/日)の推奨を支持せず、ナトリウム/カリウム比の使用には同意しないものである」としている。

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喫煙する高血圧患者に厳格血圧管理は有用か~SPRINTの2次分析

 Systolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT)では、収縮期血圧を120mmHg未満に厳格管理することにより、心血管系疾患の罹患率と死亡率が低下することが示された。しかし、厳格血圧管理による全体的なベネフィットがリスクの不均一性をマスクしていないだろうか。今回、マウントサイナイ医科大学のJoseph Scarpa氏らが実施したSPRINTデータの2次分析により、ベースライン時点に現喫煙者で収縮期血圧144mmHg超であった参加者では、標準治療群より厳格治療群で心血管イベント発生率が高かったことが報告された。JAMA Network Open誌2019年3月8日号に掲載。 本研究は、SPRINTの9,361例のデータにおける、探索的で仮説生成型のアドホック2次分析である。試験データの半分を使用し、潜在するHeterogeneous Treatment Effects(HTE)をランダムフォレストベースの分析を用いて調べ、残りのデータにおいて、Cox比例ハザードモデルにより潜在するHTEを検討した。オリジナルの試験は、2010年11月~2013年3月に米国の102施設で実施され、この分析は2016年11月~2017年8月に実施された。参加者は、目標収縮期血圧について120mmHg未満(厳格治療)もしくは140mmHg未満(標準治療)に割り付けられた。主要な複合心血管アウトカムは、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管系死因による死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・SPRINTの9,361例のうち、ベースライン時に現喫煙者で収縮期血圧144mmHg超であった参加者は466例(5.0%)で、うち230例(49.4%)がトレーニングデータセット、236例(50.6%)がテストデータセットに無作為化された。男性は286例(61.4%)、平均年齢(SD)は60.7(7.2)歳であった。・ベースライン時に現喫煙者で収縮期血圧144mmHg超であった参加者において、3.3年間で1イベント引き起こされるための有害必要数(number needed to harm:NNH)は43.7であったことが、テストデータにおける主要アウトカムに関するCox比例ハザードモデルから明らかになった(標準治療群における主要アウトカムイベントの頻度が4.8%[6/126]に対し、厳格治療群では10.9%[12/110]、ハザード比:10.6、95%CI:1.3~86.1、p=0.03)。・このサブグループは、厳格血圧管理下で急性腎障害を経験する可能性も高かった(標準治療群における急性腎障害イベントの頻度が3.2%[4/126]に対し、厳格治療群で10.0%[11/110]、ハザード比:9.4、95%CI:1.2~77.3、p=0.04)。

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腎疾患・CKDも遺伝子診断の時代へ!(解説:石上友章氏)-1006

 本邦でも、ミレニアム・プロジェクトと題した国家プロジェクトがあり、ヒト疾患ゲノム解析が、その中の1つのプロジェクトとして採用されていた(首相官邸「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」)。当時は、キャピラリー・シークエンサーの時代で、逐次処理的に塩基配列を解読するため、膨大な設備と長時間の解析が必要であった。当時筆者が勤務していた米国・ユタ大学エクルズ人類遺伝学研究所には、国際的なヒトゲノムコンソーシアムの拠点があり、広いフロア一面を占めるキャピラリー・シークエンサーに感動を覚えた記憶がある。技術は進歩し、1,000ドルゲノムの時代を迎えて、個別化した全ゲノム解析が視野に入ってきた。現在では、いわゆる次世代シークエンサー(NGS)が汎用化し、これまで研究レベルであった分子遺伝学の成果が、臨床医にも手が届く時代を迎えている。今では、がんクリニカルシークエンス検査が、原発不明がんや、既存の治療に応答しない難治性がんの診療に応用されている。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏は、エクソーム解析を既知のCKDコホート計3,315例に対して行い、腎疾患・CKDにおける遺伝子診断の可能性について検討した1)。その結果は、307例(9.3%)に遺伝子診断をつけることができた。既知の原因遺伝子と疾患表現型が、必ずしも一致しない症例も少なからず認められた。たとえば、原著Figure 1の臨床診断スペクトラムによると、先天性多発性嚢胞腎の原因遺伝子として知られるPKD1、PKD2の異常は、そのほとんどが嚢胞性腎疾患であるが、Alport症候群の原因遺伝子として知られるIV型コラーゲンのα鎖遺伝子の異常は、高血圧性・糖尿病性を含む、幅広い臨床スペクトラムを呈している。同様に、家族性若年性痛風腎症の原因遺伝子として知られるUMOD遺伝子の変異も、幅広い臨床スペクトラムを呈している。 これまでのCKD・腎疾患の診断は、マクロ・ミクロの形態による診断ないしは、血清クレアチニン値に基づいた診断に限定されていた。今後、遺伝子診断は、迅速化、低コスト化、正確化を実現し、臨床医に、より確度の高い疾患情報の提供を可能にすることは間違いない。とくにCKDは、これまでの腎疾患のように、病理学的所見、病態に基づいた疾患ではない。estimated GFRによって、重症度を定量的に評価することができるようになったが、血圧、脂質、血糖とは異なり、eGFRを特異的に制御する治療法については、未解決である。CKDの重要性についても、主要4医学誌での論文をみても、いまだに疫学的な研究成果にとどまっていることが実情である。遺伝子診断のような技術革新が、すぐに臨床応用されるというのは楽観的に過ぎるが、引き続きの進捗に注目したい。

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志水太郎の診断戦略ケーススタディ

第1回 隠された病変(The Hidden Lesion)第2回 一周回って確診に(Circling Back for the Diagnosis)第3回 Aから始まりZで終る(Going from A to Z)第4回 眠れる巨人(A Sleeping Giant) 診断のメカニズムを解き明かした名著「診断戦略」。そこで示された戦術や技法を、臨床でどのように使えば効率的かつ正確な診断が行えるのか、ケーススタディ形式で解説します。扱う症例はNEJM(The New England Journal of Medicine)の名物コーナー「Clinical Problem-Solving」に掲載されたもの。難症例を前に、直観的思考はどうひらめくのか、どのタイミングでどんな鑑別のクラスターを開くのか、そして正解の疾患はそこにあるのか。普段は決して覗くことのできない“名医の診断過程”は必見です。「診断戦略」を使いこなすことができれば、あなたの診断も劇的に変わります!第1回 隠された病変(The Hidden Lesion)NEJMに掲載された「The Hidden Lesion」を題材に、診断戦略の扱い方をケーススタディ形式で解説。番組では症例の第1段落にあたる病歴と身体診察のみの情報から診断へ迫ります。第2回 一周回って確診に(Circling Back for the Diagnosis)NEJMのClinical Problem-Solvingから、28歳男性の右上・下腹部痛の症例を扱います。病歴と身体所見の限られた情報から、直観的思考と分析的思考を使って診断に迫っていく過程は必見!「前医の情報を鵜呑みにしてはいけない」、新たな診断戦略「EHTL」も登場します。第3回 Aから始まりZで終る(Going from A to Z)今回はNEJMのClinical Problem-Solvingから、3ヵ月間続く下痢を訴える70歳男性の症例を扱います。突如判明する南アジアへの渡航歴に戸惑いながらも、わずかな病歴から直観的思考と分析的思考を使って診断に迫っていく過程は必見です!A(abdominal pain)で始まるこの症例が行き着くZとは?第4回 眠れる巨人(A Sleeping Giant)最終回はNEJMのClinical Problem-Solvingから、腹痛と寝汗が主訴の71歳女性の症例を扱います。副鼻腔炎の既往、寝汗、体重減少などそれぞれの情報から「分析的思考」を展開して鑑別診断を列挙。最終診断にたどり着くと、すべての謎が解けるはずです。

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結節性硬化症〔TS : tuberous sclerosis, Bourneville-Pringle病〕

1 疾患概要■ 概念・定義主に間葉系起源の異常細胞が皮膚、中枢神経など全身諸臓器に各種の過誤腫性病変を起こす遺伝性疾患である。従来、顔面の血管線維腫、痙攣発作、知能障害が3主徴とされているが、しばしば他に多くの病変を伴い、また患者間で症状に軽重の差が大きい。疾患責任遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。■ 疫学わが国の患者は約15,000人と推測されている。最近軽症例の報告が比較的多い。■ 病因・発症機序常染色体性優性の遺伝性疾患で、浸透率は不完全、突然変異率が高く、孤発例が60%を占める。軽微な症例は見逃されている可能性もある。本症の80%にTSC1(9q34)遺伝子とTSC2(16p13.3)遺伝子のいずれかの変異が検出される。TSC1遺伝子変異は生成蛋白のtruncationを起こすような割合が高く、また家族発症例に多い。TSC2遺伝子変異は孤発例に、また小さな変異が多い。一般に臨床症状と遺伝子異常との関連性は明らかではない。両遺伝子産物はおのおのhamartin、tuberinと呼ばれ、前者は腫瘍抑制遺伝子産物の一種で、低分子量G蛋白Rhoを活性化し、アクチン結合蛋白であるERMファミリー蛋白と細胞膜裏打ち接着部で結合する。後者はRap1あるいはRab5のGAP(GTPase-activating protein)の触媒部位と相同性を有し、細胞増殖抑制、神経の分化など多様で重要な機能を有する。Hamartinとtuberinは複合体を形成してRheb(Ras homolog enriched in brain)のGAPとして作用Rheb-GTPを不活性化し、PI3 kinase/S6KI signaling pathwayを介してmTOR(mammalian target of rapamycin)を抑制、細胞増殖や細胞形態を制御している。Hamartinとtuberinはいずれかの変異により、m-TOR抑制機能が失われることで、本症の過誤腫性病変を惹起すると推定されている。近年、このm-TOR阻害薬(エベロリムスなど)が本症病変の治療に使われている。■ 臨床症状皮膚、中枢神経、その他の諸臓器にわたって各種病変がさまざまの頻度で経年齢的に出現する(表1)。画像を拡大する1)皮膚症状学童期前後に出現する顔面の血管線維腫が主徴で80%以上の患者にみられ頻度も高い。葉状白斑の頻度も比較的高く、乳幼児期から出現する木の葉状の不完全脱色素斑で乳幼児期に診断価値の高い症候の1つである。他に結合織母斑の粒起革様皮(Shagreen patch)、爪囲の血管線維腫であるKoenen腫瘍、白毛、懸垂状線維腫などがある。2)中枢神経症状幼小児早期より痙攣発作を起こし、精神発達遅滞、知能障害を来すことが多く、かつての3主徴の2徴候である。2012年の“Consensus Conference”で(1)脳の構造に関与する腫瘍や皮質結節病変、(2)てんかん(痙攣発作)、(3)TAND(TSC-associated neuropsychiatric disorders)の3症状に分類、整理された。(1)高頻度に大脳皮質や側脳室に硬化巣やグリア結節を生じ、石灰化像をみる。数%の患者に上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が発生する。SEGAは小児期から思春期にかけて急速に増大することが多く、脳圧亢進症状などを来す。眼底の過誤腫や色素異常をみることもあり、通常は無症状であるが、時に視力障害を生ずる。(2)TSC患者に高頻度にみられ、生後5、6ヵ月頃に気付かれ、しばしば初発症状である。多彩な発作で、治療抵抗性のことも多い。点頭てんかんが過半数を占め、その多くが精神発達遅滞、知能障害を来す。(3)TSCに合併する攻撃的行動、自閉症・自閉的傾向、学習障害、他の神経精神症状などを総括した症状を示す。3)その他の症状学童期から中年期に後腹膜の血管筋脂肪腫で気付かれることもある。無症候性のことも多いが、時に増大して出血、壊死を来す。時に腎嚢腫、腎がんが出現する。周産期、新生児期に約半数の患者に心臓横紋筋腫を生ずるが、多くは無症候性で自然消退すると言われる。まれに、腫瘍により収縮障害、不整脈を来して突然死の原因となる。成人に肺リンパ管平滑筋腫症(lymphangiomyomatosis:LAM)や多巣性小結節性肺胞過形成(MMPH)を生ずることもある。前者は気胸を繰り返し、呼吸困難が徐々に進行、肺全体が蜂の巣状画像所見を呈し、予後不良といわれる。経過に個人差が大きい。後者(MMPH)は結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。■ 予後と経過各種病変がさまざまな頻度で経年的に出現する(表1)。それら病変がさまざまに予後に影響するが、中でも痙攣発作の有無・程度が患者の日常生活、社会生活に大きく影響する。従来、生命的予後が比較的短いといわれたが、軽症例の増加や各種治療法・ケアの進展によって生命的、また生活上の予後が改善方向に向かいつつあるという。死因は年代により異なり、10歳までは心臓横紋筋腫・同肉腫などの心血管系異常、10歳以上では腎病変が多い。SEGAなどの脳腫瘍は10代に特徴的な死因であり、40歳以上の女性では肺のLAMが増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)遺伝子診断が確実であり、可能であるが、未知の遺伝子が存在する可能性、検査感度の問題、遺伝子変異と症状との関連性が低く、変異のホットスポットもない点などから一般的には通常使われない。遺伝子検査を受けるときは、そのメリット、デメリットをよく理解したうえで慎重に判断する必要がある。実際の診断では、ほとんどが臨床所見と画像検査などの臨床検査による。多彩な病変が年齢の経過とともに出現するので、症状・病変を確認して診断している。2018年に日本皮膚科学会が、「結節性硬化症の新規診断基準」を発表した(表2)。画像を拡大する■ 診断のポイント従来からいわれる顔面の血管線維腫、知能障害、痙攣発作の3主徴をはじめとする諸症状をみれば、比較的容易に診断できる。乳児期に数個以上の葉状白斑や痙攣発作を認めた場合は本症を疑って精査する。■ 検査成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので、定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。顔面の結節病変、血管線維腫は、通常病理組織検査などはしないが、多発性丘疹状毛包上皮腫やBirt-Hogg-Dube syndromeなどの鑑別に、また、隆起革様皮でも病理組織学的検査で他疾患、病変と鑑別することがある。痙攣発作を起こしている患者あるいは結節性硬化症の疑われる乳幼児では、脳波検査が必要である。大脳皮質や側脳室の硬化巣やグリア結節はMRI検査をする。CTでもよいが精度が落ちるという。眼底の過誤腫や色素異常は眼底検査で確認できる。乳幼児では心エコーなどで心臓腫瘍(横紋筋腫)検査を、思春期以降はCTなどで腎血管筋脂肪腫を検出する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 基本治療方針多臓器に亘って各種病変が生ずるので複数の専門診療科の連携が重要である。成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。本症の治療は対症療法が基本であるが、各種治療の改良、あるいは新規治療法の開発が進んでいる。近年本症の皮膚病変や脳腫瘍、LAMに対し、m‐TOR阻害薬(エベロリムス、シロリムス)の有効性が報告され、治療薬として使われている。■ 治療(表3)画像を拡大する1)皮膚病変顔面の血管線維腫にはレーザー焼灼、削皮術、冷凍凝固術、電気凝固術、大きい腫瘤は切除して形成・再建する。最近、m-TOR阻害薬(シロリムス)の外用ゲル製剤を顔面の血管線維腫に外用できるようになっている。シャグリンパッチ、爪囲線維腫などは大きい、機能面で問題があるなどの場合は切除する。白斑は通常治療の対象にはならない。2)中枢神経病変脳の構造に関与する腫瘍、結節の中では上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が主要な治療対象病変である。一定の大きさがあって症状のない場合、あるいは増大傾向をみる場合は、外科的に切除、あるいはm-TOR阻害薬(エベロリムス)により治療する。急速進行例は外科的切除、頭蓋内圧軽減のためにシャント術も行う。本症の重要な症状である痙攣発作の治療が重要である。点頭てんかんにはビガバトリン(同:サブリル)、副腎皮質(ACTH)などが用いられる。ケトン食治療も試みられる。痙攣発作のフォーカス部位が同定できる難治例に、外科的治療が試みられることもある。点頭てんかん以外のてんかん発作には、発作型に応じた抗てんかん薬を選択し、治療する。なお、m-TOR阻害薬(エベロリムス)は、痙攣発作に対して一定の効果があるとされる。わが国での臨床使用は今後の課題である。精神発達遅滞や時に起こる自閉症に対しては、発達訓練や療育などの支援プログラムに基づいて適切にケア、指導する。定期的な受診、症状の評価などをきちんとすることも重要である。また、行動の突然の変化などに際しては、結節性硬化症の他病変の出現、増悪などがないかをチェックする。3)その他の症状(1)後腹膜の血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)腫瘍径が4cm以上、かつ増大傾向がある場合は出血や破裂の可能性もあり、腫瘍の塞栓療法、腫瘍切除、腎部分切除などを考慮する。希少疾病用医薬品としてm-TOR阻害薬(エベロリムス)が本病変に認可されている。無症候性の病変や増大傾向がなければ検査しつつ経過を観察する。(2)周産期、新生児期の心臓横紋筋腫収縮障害、伝導障害など心障害が重篤であれば腫瘍を摘出手術する。それ以外では心エコーや心電図で検査をしつつ経過を観察する。(3)呼吸器症状LAMで肺機能異常、あるいは機能低下が継続する場合は、m-TOR阻害薬(エベロリムス)が推奨されている。肺機能の安定化、悪化抑制が目標で、治癒が期待できるわけではない。一部の患者には、抗エストロゲン(LH-RHアゴニスト)による偽閉経療法、プロゲステロン療法、卵巣摘出術など有効ともいわれる。慢性閉塞性障害への治療、気管支拡張を促す治療、気胸の治療など状態に応じて対応する。時に肺移植が検討されることもある。MMPHは、結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。4 今後の展望当面の期待は治療法の進歩と改良である。本症病変にm-TOR阻害薬(エベロリムス)が有効であることが示され、皮膚病変、SEGAとAMLなどに使用できる。本症治療の選択肢の1つとしてある程度確立されている。しかしながら効果は限定的で、治癒せしめるにはいまだ遠い感がある。病態研究の進歩とともに、新たな分子標的薬剤が模索され、より効果の高い創薬、薬剤の出現を期待したい。もとより従来の診断治療法の改善・改良の努力もされており、今後も発展するはずである。患者のケアや社会生活上の支援体制の強化が、今後さらに望まれるところである。5 主たる診療科小児科(神経)、皮膚科、形成外科、腎泌尿器科、呼吸器科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本結節性硬化症学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)結節性硬化症のひろば(主に患者と患者家族向けの診療情報)患者会情報TSつばさ会(患者とその家族および支援者の会)1)金田眞理ほか. 結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン-改訂版.日皮会誌. 2018;128:1-16.2)大塚藤男ほか. 治療指針、結節性硬化症. 厚生科学研究特定疾患対策研究事業(神経皮膚症候群の新しい治療法の開発と治療指針作成に関する研究).平成13年度研究報告書.2002:79.3)Krueger DA, et al. Pediatric Neurol. 2013;48:255-265.4)Northrup H, et al. Pediatric Neurol. 2013;49:243-254.公開履歴初回2013年2月28日更新2019年2月5日(謝辞)本稿の制作につき、日本皮膚科学会からのご支援、ご協力に深甚なる謝意を表します(編集部)。

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非代償性肝硬変を伴うC型肝炎に初の承認

 平成元年(1989年)に発見されたC型肝炎ウイルス(HCV)。近年、経口の直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)が次々と発売され、C型慢性肝炎や初期の肝硬変(代償性肝硬変)の患者では高い治療効果を得られるようになったが、非代償性肝硬変を伴うHCV感染症に対する薬剤はなかった。そのような中、平成最後の今年、1月8日にエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠、以下エプクルーサ)が、「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」に承認された。また、DAA治療失敗例に対する適応症(前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善)も取得した。ここでは、1月25日に都内で開催されたギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーで、竹原 徹郎氏(大阪大学大学院医学系研究科内科学講座消化器内科学 教授)が講演した内容をお届けする。予後の悪い非代償性肝硬変で初めて高い治癒率を実現 HCV感染者は長い期間を経て、慢性肝炎から代償性肝硬変、非代償性肝硬変へと進行する。非代償性肝硬変患者の予後は悪く、海外データ(J Hepatol. 2006)では、2年生存率が代償性肝硬変患者では約90%であるのに対し、非代償性肝硬変患者では50%以下という。国内データ(厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書)でも、Child-Pugh分類A(代償性肝硬変)では3年生存率が93.5%に対して、非代償性肝硬変であるB、Cではそれぞれ71.0%、30.7%と低い。しかし、わが国では非代償性肝硬変に対して推奨される抗ウイルス治療はなかった(C型肝炎治療ガイドラインより)。 このような状況のもと、非代償性肝硬変に対する治療薬として、わが国で初めてエプクルーサが承認された。 非代償性肝硬変患者に対する承認は、エプクルーサ単独とリバビリン併用(ともに12週間投与)を比較した国内第 3 相臨床試験(GS-US-342-4019)の結果に基づく。竹原氏は、「海外試験ではリバビリン併用が最も良好なSVR12(治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率)を達成したが、この国内試験では両者のSVR12に差がみられなかったことから、有害事象の少なさを考慮して併用なしのレジメンが承認された」と解説した。 本試験でエプクルーサ単独投与群には、年齢中央値67歳の51例が組み入れられ、うち24例はインターフェロンやリバビリン単独投与などの前治療歴を有する患者であった。主要評価項目であるSVR12は92.2%で、患者背景ごとのサブグループ解析でも高いSVR12が認められ、治療歴ありの患者で87.5%、65歳以上の患者でも96.6%であった。同氏は、「より進行した状態であるChild-Pugh分類Cの患者で若干達成率が低かったが、それでも約80%で治癒が確認されている」とその有効性を評価。有害事象は9例で認められ、主なものは発疹、皮膚および皮下組織障害、呼吸器・胸郭および縦郭障害(それぞれ2例で発現)であった。他の薬剤で治癒が確認されていない特殊な薬剤耐性例でも効果 一方、DAA治療失敗例に関しては、DAA既治療のジェノタイプ1型および2型患者を対象とした試験(GS-US-342-3921)において、リバビリン併用の24週間投与により96.7%のSVR12率を達成している。「DAA既治療失敗例は、複雑な耐性変異を有する場合が多いが、これらの患者さんでも95%以上の治癒が得られたのは非常に大きい。とくに他の薬剤で治癒が確認されていない特殊な薬剤耐性P32欠損についても、5例中4例で治癒が確認された」と同氏は話した。また有害事象に関しては、リバビリンに伴う貧血の発現が約20%でみられたが、「貧血が起こっても、薬剤の量を調整することで症状を抑えることが可能。貧血が原因で投与中止となった例はない」と話している。 最後に同氏は、「非代償性肝硬変とDAA治療失敗例という、これまでのアンメットメディカルニーズを満たす治療薬が登場したことを、広くすべての医療従事者に知ってもらい、専門医と非専門医が連携して、治療に結び付けていってほしい」とまとめた。

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出揃ったC型肝炎治療薬、最新使い分け法

 相次いで有効な新経口薬が登場し、適切に使い分けることでほぼ全例でウイルス排除が可能となったC型肝炎。しかし、陽性患者の治療への移行割合が伸び悩むなど課題は残っており、医師・患者双方が、治療によるメリットと治療法をより正しく認識することが求められている。1月9日、都内で「C型肝炎の撲滅に向けた残された課題と今後の期待~C型肝炎治療の市販後の実臨床成績~」と題したメディアセミナーが開催され(主催:アッヴィ合同会社)、熊田 博光氏(虎の門病院 顧問)、米澤 敦子氏(東京肝臓友の会 事務局長)が講演した。マヴィレットは実臨床でも高いSVRを達成、残された非治癒例とは? 発売から約1年が経過したC型肝炎治療薬マヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル)の虎の門病院における市販後成績は、治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率(SVR12)はすべてのジェノタイプ、治療歴の患者で臨床試験と同様の良好な結果が得られ、有害事象に関しても新たな事象の発現はみられなかった。 ただし、他の直接作用型抗ウイルス療法(DAA)既治療の患者、ならびにジェノタイプ3型感染者については、98.7%、87.5%とSVR12が若干低い傾向がみられている(臨床試験ではそれぞれ93.9%、83.3%)。熊田氏は、この両者への対応について解説した。 まずDAA既治療患者について、ジェノタイプ1型のマヴィレット非治癒例の詳細解析を行ったところ、C型肝炎ウイルスのNS5A領域P32遺伝子欠損という共通点がみつかった。このP32遺伝子欠損の患者には、1月8日に薬事承認されたエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)とリバビリンの併用療法が80%の患者に効果があったと報告されている。「P32遺伝子欠損の患者には、エプクルーサ+リバビリン24週投与が第一選択になるだろう」と同氏。DAA既治療患者のうち、P32遺伝子欠損症例の発現頻度は5%ほどと考えられるという1)。 3型感染者については、日本人では元々非常に少ない(虎の門病院のデータで、1万879例中55例[0.5%])。「マヴィレットで大部分の患者に対応できるが、非治癒だった症例に対しては、ソバルディとリバビリンの併用を24週投与することで治癒する症例が確認されている」と話した。DAA未治療/既治療それぞれのC型肝炎治療薬の使い分け 上記を踏まえ、同氏は虎の門病院で医師間の申し送り時に使用しているという「DAAの使い分け法」を解説。DAA未治療/既治療それぞれの、C型肝炎治療薬の使い分けを以下に紹介する。 [初回・DAA未治療] 慢性肝炎(1型、2型とも)→マヴィレット8週間 肝硬変  代償性→(1型、2型とも)ハーボニーあるいはマヴィレット12週      (1型のみ)エレルサ・グラジナ12週間  非代償性→エプクルーサ12週間 [DAA既治療] 1型  Y93H、L31ダブル耐性あり→マヴィレット12週間*あるいはエプクルーサ  +リバビリン24週間  Y93H、L31ダブル耐性なし→マヴィレット*、ハーボニー、エレルサ・グラジナの  いずれか12週間、あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 *P32欠失例を除く 2型→マヴィレット(ハーボニー)12週間あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 3型→マヴィレット12週間(ただし、マヴィレット非治癒例にはソバルディ  +リバビリン24週間) 最後に同氏は、C型肝炎ウイルスへの感染が肝臓以外のさまざまな他臓器疾患にも影響を及ぼすことに言及。SVR非達成例では、達成例と比較してCKD発症率が約2.7倍2)、骨粗鬆症症例における骨折の発症率が約3倍3)というデータを紹介し、「糖尿病のコントロール向上に関連するというデータもあり、早いうちにC型肝炎を確実に治療することで、肝外病変に対しても好影響がある。短期間の経口薬投与でこれだけの治療率が達成されているので、他科の先生方もぜひ積極的にC型肝炎チェックを実施して、治療につなげていってほしい」と呼び掛けた。C型肝炎治療は高齢者には難しいという認識が根強いが・・・ 続いて登壇した米澤氏は、東京肝臓友の会にこの1年半ほどの間で寄せられた相談内容をいくつか紹介。「医師から一人暮らしの後期高齢者にそんな治療はしないぞ! と怒られた」「過去にインターフェロン治療を行ったが効かず、治療薬のことを知りかかりつけ医に相談したが、知らないと言われた」などの相談が実際に寄せられているという。 患者側も、自覚症状がなければ治療に踏み切れない事例も多い。「主治医から治療を勧められたが、肝機能はずっと正常値。症状もないので治療はしなくてもいいか?」などで、同氏は「インターフェロン治療の時代が長かったため、C型肝炎治療は高齢者には難しい、あるいは大変な治療という認識が根強くある。またかかりつけ医から専門医への受け渡しがスムーズにいっていない事例もあると感じる」と話した。 なお、肝炎ウイルス検査陽性の場合の精密検査費用の国による助成が、2019年度から民間分も対象になる予定であることも紹介された。

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【GET!ザ・トレンド】大動脈から全身を探る(前編)

100年前、William Osler博士は「人は血管と共に老いる」という言葉を残した。血管は生命予後に大きな影響を与える。従来の知見と共に、目の前の患者の血管が今どういう状態なのか。それが把握できれば、より具体的かつ個別な治療戦略の立案が可能である。血管内視鏡の臨床活用の現状と今後の可能性について、NPO法人 日本血管映像化研究機構 名誉理事長 児玉 和久氏に聞いた。全血管に適用可能になった血流維持型血管内視鏡1952年にわが国で開発された消化器内視鏡は、いまや世界の臨床医学の中で不可欠な技術である。この技術を同じ管腔臓器である血管にも活かせないか。1980年代、血管内視鏡の開発はそこから始まった。消化管とは異なり、血管では血液をよけなければ内腔を観察できない。血液をよけるには、阻血と疎血という2つの方法がある。最初の血管内視鏡は、米国で開発された。冠動脈をターゲットとし、バルーンで血液を“阻”む血流遮断型内視鏡で、1990年にFDAから承認された。しかし、人工的に作られる虚血リスクのため、承認後に数多くの事故を起こし、使用禁止措置になっている。児玉氏らは、虚血リスクを回避して“疎”血するため、内視鏡と外筒(誘導カテーテル)の隙間から疎血液(主体はデキストラン溶液)を注入して先端を疎血化する方法を開発した。1988年にAHA(米国心臓協会)国際会議でプロトタイプを発表し、1990年に、冠動脈をはじめとするすべての軟性血管を対象にした臨床使用に保険収載された。使用開始後、その利点からきわめて安全性が高いことが実証されている。とはいえ、血流の多い血管では十分に疎血できない。そのため、2014年に2ヵ所から疎血液を注入するDual Infusion法を開発し成功した。このDual Infusion法は、血流が多く、圧力も高い大動脈の内腔の観察も可能にした。このような改良を加え、児玉氏らの血流維持型血管内視鏡は、現在まで4万2,000例、そのうち冠動脈3万9,000例、大動脈2,000例超の実績を残している。さらに、内視鏡長を1.5mに延長し、1本で冠動脈から大動脈、末梢血管まですべて観察できるよう開発している。原因不明の突然死と急性大動脈症候群(AAS)の関係わが国の原因不明の突然死、その多くの疾病名は心臓疾患である。しかし、久山町研究で原因不明の突然死を解剖したところ、20%が大動脈の突然破裂である急性大動脈症候群(Acute aortic syndrome:AAS)であった。大動脈破裂の発生率は、欧州の疫学調査では0.015%で、大きな問題とはされていない。しかし、「日本人の人口1.2億人に換算すると、1.5万人と決して無視できない数字。たとえば50歳以上の高血圧など特定のコホートを選べばもっと高くなると考えられる」と児玉氏は言う。AASの致死率は高く、英国の病院における2万例の研究での院内死亡率は66%であった。イベントを起こす前の先制診断が必要だ。しかし、AASについての知見は少なく、無症状が多いため、発作前診断はきわめて難しい。血流維持型血管内視鏡によるAASの先制診断の可能性「大動脈解離も大動脈瘤も、その発端は血管内膜の微細な損傷」である。早期に大動脈の内膜を詳細に観察することが早期発見につながる。しかし、現在の血管造影、CT、超音波などの画像診断方法では、空間分解能が不足し、この微細な損傷は検出不可能である。児玉氏らのDual Infusion血流維持型血管内視鏡は、空間分解能、時間分解能にすぐれ、大動脈内腔の詳細な観察が可能である。実際に無症状の患者を含む多くの症例で、内膜の亀裂、血流の潜り込み、粥腫破綻といった大動脈内腔の異常が確認できており、AASの先制診断の可能性が示唆される。>>後編に続く

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【GET!ザ・トレンド】大動脈から全身を探る(後編)

日本血管映像化研究機構の研究が、Journal of the American College of Cardiology誌2018年6月26日号(筆頭執筆者、小松 誠:大阪暁明館病院)」に掲載された1)。300例以上の心血管疾患の診断または疑い患者の80%で、大動脈に動脈硬化性粥腫がびまん性に高密度に散在し、常に無症状の自発的破綻を起こしていることが血流維持型血管内視鏡で観察された。さらに、そのサイズは、従来考えられていたものよりもはるかに小さいものであった。大動脈の粥状硬化とコレステロール・クリスタル実臨床における多数例の大動脈内腔観察の実績から「大動脈にはおびただしい数の粥状硬化病変が認められる。粥状硬化は若年から進行し、自発的破綻を繰り返している」と児玉氏は述べる。また、多くの大動脈粥腫の破綻時に、粥腫のdebrisと共にコレステロールの結晶である「コレステロール・クリスタル」が大量に遊離されていることが、児玉氏らのDual Infusion血流維持型血管内視鏡で確認されている。これらは大動脈を通して、すべての臓器に流れていく。とくに、コレステロール・クリスタルは、末梢動脈にトラッピングを起こし、その結果、虚血性細胞死を引き起こすと考えられる。毛細血管は平均8μm、一方コレステロール・クリスタルは平均50~60μmである。毛細血管でトラッピングされる可能性はきわめて高い。実際に、コレステロール・クリスタルは「動脈血中のみに存在し、静脈血ではほとんど観察されないことから、末梢組織で濾過され、全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性がある。大動脈がこういったごみを流し続ければ、すべての臓器に大きなダメージを引き起こす可能性がある」と児玉氏は言う。この現象は、脳、眼、耳、消化器、腎臓、筋肉、四肢などあらゆる臓器に、時間を経るに従い顕著となり、種々の悪影響を引き起こす。実際に、無症候性脳虚血、脳梗塞を併発した認知症、網膜動脈閉塞による失明、腸間膜閉塞、CKD(慢性腎臓病)、PAD(末梢動脈疾患)といった症例で、大動脈内の粥腫破綻とコレステロール・クリスタルの内視鏡所見が一致することが、児玉氏らの血流維持型血管内視鏡で確認されている。臨床研究によるエビデンス形成多くの所見が確認されているとはいえ、エビデンスを作っていく必要がある。現在、同法人の理事長 平山 篤志氏を中心に、内視鏡所見と臨床経過を突き合わせていくレジストリ研究が始まっている。また、国立循環器病研究センターに保存されている脳梗塞の標本についても再検討が始められ、コレステロール・クリスタルの存在を確認する作業が進められているという。前述のWilliam Osler博士による「人は血管と共に老いる」という言葉に対し、児玉氏は、「いまや“人は大動脈と共に老いる”ではないか」と提言する。今年で13回目となる日本血管映像化研究機構主催のTCIF(Trans Catheter Imaging Forum)が4月26日・27日に大阪で開催される。テーマは上記の「人は大動脈と共に老いる」である。近年、循環器科にとどまらず、脳神経外科、放射線科、眼科などに参加者は拡大しているという。さまざまな未知の病態が、この日本発の技術の進歩と共に解明されていくことを期待する。1)Komatsu S, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:2893-2902.参考第13回 TCIF 2019関連記事世界初、大動脈プラーク破綻の撮影に成功<<前編に戻る

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治療の見直しに有効か、スタチン不耐治療指針公表

 2018年12月27日、日本動脈硬化学会は『スタチン不耐に関する診療指針2018』を同学会ホームページ上に公表した。これまで、スタチン不耐の定義が不統一であったことが症例集積の大きなハードルであったが、診療指針が作成されたことで、その頻度と臨床像を明らかにし、各個人に適切なLDL-C低下療法の実践が期待できるとのこと。なお、本指針を作成したスタチン不耐調査ワーキンググループには、日本動脈硬化学会をはじめ、日本肝臓学会、日本神経学会、日本薬物動態学会の専門家も含まれている。スタチン不耐の定義とその特徴 本指針によると、『スタチン不耐』を、「初回のスタチン投与で有害事象(筋酵素の上昇、腎機能悪化、肝機能検査値の異常、筋症状を含むスタチンが原因と推定される自覚症状など)が生じ、さらに1種類以上の異なるスタチンを投与しても有害事象が生じるため、スタチン投与の継続が困難な場合」と定義。欧米の指針とは異なり、筋障害に次いで頻度が高い有害事象である肝障害、筋症状などの自覚症状を有害事象として含めて「スタチン不耐」として取り扱っている点が特徴である。さまざまな有害事象に対する対策 本指針では、スタチン服用に伴う有害事象として、筋障害や肝障害などの影響について取り上げているほか、腎機能障害における投与量の考え方が整理されている。筋障害:スタチンによる筋有害事象、スタチン関連筋症状(SAMS)、血清クレアチニンキナーゼ(CK)について、それぞれの病態や症状が解説されている。また、筋有害事象についての評価は、SAMSの有無と血清CK値に基づき4つの区分(カテゴリーA、B、C、D)に分類され、それぞれの推奨アプローチが判別しやすいフローチャート方式で記載されている。肝障害:スタチンによる治療中に軽度の肝障害を伴うことがあるが、多くの場合は一過性で用量を変更せずに治療を継続しても回復する。まれではあるが、肝不全や自己抗体陽性の自己免疫性肝炎を発症することがあるため、ALTや総ビリルビンなどを考慮して休薬や専門医へのコンサルト、他剤変更を考慮することが推奨される。認知機能への影響:スタチンに関連した認知機能障害が疑われる場合には、神経心理検査の実施、脂溶性スタチンから水溶性スタチンへの切り替えなどを考慮する必要がある。耐糖能への影響:スタチンによる耐糖能の悪化は、用量依存性、高強度スタチンほど増加しやすいと示唆されているが、その絶対リスクは低いと言われている。また、スタチンによる心血管イベント抑制効果が耐糖能リスクを大きく上回るため、糖尿病の新規発症や耐糖能の悪化に注意を払いながら服用を継続すること、耐糖能が疑われた場合には中止せずに、減量、ほかのスタチンへの変更、他剤併用を考慮するよう記載されている。腎機能への影響:慢性腎臓病(CKD)が動脈硬化性心血管病のリスクとして重要視されているが、スタチンの服用は腎機能低下のリスクがある。CKD患者におけるスタチン使用は低用量にとどめ、減量に随時対応できるように定期的な腎機能検査の実施が推奨される。今後の課題 現段階では日本人に関するデータが不足しているため、今後も知見の蓄積と検証、それに伴う改訂の必要が見込まれる。また、超高齢化社会を見据え、CQに「高齢者におけるスタチン投与では、非高齢者と異なる対応が必要か」などが反映されるよう、今後の検討が望まれている。■参考スタチン不耐に関する診療指針2018■関連記事「スタチン不耐に関する診療指針2018」で治療中断を食い止める

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太れば太るほど、GFR低下・死亡リスク増/BMJ

 肥満は、慢性腎臓病(CKD)の有無にかかわらず、糸球体濾過量(GFR)の低下および死亡のリスク増大と関連することが明らかにされた。米国・Geisinger Health SystemのAlex R. Chang氏らが、40ヵ国のコホートを基に分析した結果で、BMJ誌2019年1月10日号で発表した。これまで肥満と末期腎疾患(ESKD)との関連は示されているが、関連の程度は試験間でばらつきがみられていた。また、CKDのコホート試験で、肥満はリスク増大とは関連せず、死亡リスクは低いことが示されていた。BMI値とCKDの関連を検討したメタ解析では、被験者データが不足しており、ウエスト囲など体幹部肥満の計測値が含まれておらず結果が限定的だった。研究グループは、肥満計測値(BMI値、ウエスト囲、ウエスト身長比)とGFR低下および全死因死亡との関連を調べた。住民39件、高心血管リスク6件、CKD 18件のコホートを分析 研究グループは、1970~2017年の40ヵ国における、39の住民コホート(被験者総数:545万9,014例)と、高心血管リスクコホート6件(同:8万4,417例)、CKDコホート18件(同:9万1,607例)を基に、肥満とGFRとの関連を検証した。 住民コホートのうち、ウエスト囲の計測値が含まれていたのは21件(同:59万4,496例)だった。 主要評価項目は、GFR低下(推算GFR値40%以上の低下、腎機能代替療法の開始、または推定GFRが10mL/分/1.73m2未満)と全死因死亡だった。GFR低下リスク、BMI値35は同値25の1.7倍 平均追跡期間8年において、住民コホートでGFR低下が認められたのは24万6,607例(5.6%)、ESKDを呈したのは1万8,118例(0.4%)、死亡は78万2,329例(14.7%)だった。 年齢、性別、人種、現喫煙で補正後、BMI値25と比較したGFR低下のハザード比は、BMI値が高くなるにつれて増大し、BMI値30が1.18(95%信頼区間[CI]:1.09~1.27)、35が1.69(同:1.51~1.89)、40が2.02(同:1.80~2.27)だった。同様の結果は、推定GFR値のすべてのサブグループで認められた。 また、同関連は併存症で補正後は減弱し、ハザード比はそれぞれ1.03(0.95~1.11)、1.28(1.14~1.44)、1.46(1.28~1.67)となった。BMI値と死亡との関連はJカーブを示し、BMI値25のリスクが最も低かった。 高心血管リスクコホート(平均追跡期間6年)とCKDコホート(同4年)では、BMI値上昇とGFR低下との関連は住民コホートより弱く、BMI値と死亡との関連はJカーブを示し、BMI値25~30のリスクが最も低かった。 全コホートにおいて、ウエスト囲やウエスト身長比の増加とGFR低下との関連は、BMI値上昇とGFR低下との関連と同様に認められた。一方、BMI値でみられたような死亡との関連はウエスト囲やウエスト身長比ではみられず、死亡リスク増大とウエスト囲やウエスト身長比の低下は関連がみられなかった。

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高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン、8年ぶりに改訂

 2018年12月28日、日本痛風・核酸代謝学会は『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(GL) 第3版』を発刊した。改訂は2010年以来8年ぶりとなる。近年、尿酸値の上昇は、痛風だけではなく、脳・心血管疾患や腎障害にも影響を及ぼすとの報告が増えているため、これらのイベント予防も目的として作成されている。高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版の特徴とは 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版は全3章で章立てられており、第1章は作成組織・作成方針、第2章は、診療上重要度の高い7つのクリニカルクエスチョン(CQ)と、それに対するエビデンスならびに推奨度が示されている。第3章は治療マニュアルとして、リスク因子、診断、治療などが項目ごとに記載され、「医療経済」の項が新規で追加されている点などが主な特徴である。治療アルゴリズムにはこれらのCQが盛り込まれており、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインの集大成と言っても過言ではないそうだ。 また、これまでの病型分類は、尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型の2つのタイプであった。今回の高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインには、腸からの排泄低下により血清尿酸値が上昇するという“腎外排泄低下型”の概念が追加されている。 以下に第2章の各CQのみを高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより抜粋して示す。第2章 クリニカルクエスチョンと推奨CQ1)急性痛風関節炎(痛風発作)を起こしている患者において、NSAID・グルココルチコイド・コルヒチンは非投薬に比して推奨できるか?CQ2)腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ3)高尿酸血症合併高血圧患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ4)痛風結節を有する患者に対して、薬物治療により血清尿酸値を6.0mg/dL以下にすることは推奨できるか?CQ5)高尿酸血症合併心不全患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ6)尿酸降下薬投与開始後の痛風患者に対して、痛風発作予防のためのコルヒチン長期投与は短期投与に比して推奨できるか?CQ7)無症候性高尿酸血症の患者に対して、食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか? 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインはCQにおいて、とくに重要なポイントはCQ2、3で、腎機能低下を抑制する目的での尿酸降下薬の使用を条件付きで推奨している(欧米のGLでは推奨されていない)。一方、心血管発症リスクの軽減を目的とした尿酸降下薬の使用は、条件付きで推奨されない。ただし、降圧薬使用中の高血圧患者では痛風や腎障害を合併しやすいため、痛風や腎障害の抑制を目的に尿酸降下薬の投与が推奨されている。

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腎疾患に遺伝子診断は有用か/NEJM

 3,000例超のさまざまな慢性腎臓病患者の集団を対象とした検討で、エクソーム解析に基づく遺伝子診断率は、10%未満であることが明らかにされた。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏らによる検討の結果で、NEJM誌オンライン版2018年12月26日号で発表された。慢性腎臓病を有する2コホート計3,315例を解析 研究グループは、慢性腎臓病の患者3,315例を含む2つのコホートを対象に、エクソーム解析と診断解析を行った。詳細な臨床データが入手できた患者について、診断率や、診断の臨床的意義、その他の医学的所見との関連を検証した。 被験者のうち、91.6%(3,037例)が21歳超で、自己申告に基づく非欧州系人種は35.6%(1,179例)を占めた。9.3%(307例)で診断変種を検出 被験者全体の9.3%(307/3,315例)で診断変種が検出され、66種の単一遺伝子病が認められた。これら単一遺伝子病のうち、39種(59%)の患者数はいずれも1例ずつだった。 エクソーム解析により検出された診断変種には、先天性/嚢胞性腎疾患(127/531例、23.9%)や、原因不明の腎障害(48/281例、17.1%)など、臨床的に定義された全カテゴリーの疾患が含まれていた。 評価対象2,187例の1.6%(34例)で、医療的に対応すべき問題が見つかり、腎障害とは関連がなく別の専門医に紹介し腎疾患マネジメントに関する情報提供を行うケースもあった。 同研究グループは、腎疾患の遺伝子診断率が9.3%であった点について「同診断率はがんの遺伝子診断率と似通った数字で、がんでは日常的に遺伝子診断が行われている」とし、その有用性を評価している。

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リナグリプチンのCARMELINA試験を通して血糖降下薬の非劣性試験を再考する(解説:住谷哲氏)-991

 eGFRの低下を伴う腎機能異常を合併した2型糖尿病患者における血糖降下薬の選択は、日常臨床で頭を悩ます問題の1つである。血糖降下薬の多くは腎排泄型であるため腎機能に応じて投与量の調節が必要となる。DPP-4阻害薬の1つであるリナグリプチンは数少ない胆汁排泄型の薬剤であり、腎機能に応じた投与量の調節が不要であるため腎機能異常を合併した患者に投与されることが多い。 これまでにDPP-4阻害薬の安全性を評価した心血管アウトカム試験CVOTでは、サキサグリプチンのSAVOR-TIMI 53、アログリプチンのEXAMINE、シタグリプチンのTECOSが発表されている。リナグリプチンの安全性を評価した本試験の報告により、DPP-4阻害薬の安全性を評価したすべてのCVOTが出そろったことになる。本試験の最大の特徴は、リナグリプチンが胆汁排泄型であることに基づいて、これまで報告されたCVOTの中で最多の腎機能異常合併2型糖尿病患者を組み入れた点にある。 6,979例がエントリーされたが、その半数以上がeGFR<60mL/min/1.73m2であり、eGFR<30mL/min/1.73m2の患者も約15%含まれていた。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中からなる3-point MACEであったが、副次評価項目にはESRDへの移行、腎関連死、ベースラインから40%以上のeGFRの低下の持続からなる腎複合エンドポイントが含まれている。中央値2.2年の観察期間において、プラセボ群の3-point MACE発症率は5.63/100人年であり、これまで実施されたCVOTの中で最も高リスクであった。このことは腎機能異常合併2型糖尿病患者の心血管リスクがきわめて高いことを示している。既報のDPP-4阻害薬のCVOTと同様に、主要評価項目ではプラセボ群に対する非劣性が証明されたが優越性は証明されなかった。期待された腎複合エンドポイントでも優越性は証明されなかった。多くの探索的アウトカムexploratory outcomeの中でプラセボ群と有意差を認めたのはアルブミン尿の進展HR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)、複合細小血管エンドポイントHR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)のみであった。重症低血糖の頻度もプラセボ群との間に有意差を認めなかった。また観察期間中のHbA1cはリナグリプチン群で0.36%有意に低下した。 本試験も含めて既報のCVOTはすべて非劣性試験non-inferiority trialであり、その結果をどのように解釈して日常臨床に適用すればよいのだろうか? 確かにすべての非劣性試験は製薬企業が新たな薬剤を販売するための臨床試験であり、われわれ臨床家にとっても患者にとってもメリットはないとの指摘にも一理ある1)。非劣性試験で証明されるのは、対象である新たな血糖降下薬(試験薬)が既存の血糖降下薬と比較して3-point MACEなどの心血管イベントを非劣性マージン(多くはハザード比の95%信頼区間の上限が1.3に設定される)を超えて増加させないことのみである。これをクリアすればその試験薬は「安全な血糖降下薬」としてのお墨付きを当局から得られる。つまり心血管イベントを29%増加させる可能性があっても血糖降下薬としては許容されることになる(この点については議論があるが本稿では割愛する)。そうであれば何も高価な新薬(試験薬)を使う必要はなく、プラセボ群で使用された従来の安価な血糖降下薬を使えばよいではないか、との反論も当然あるだろう。 血糖降下薬を投与する目的は心血管イベントなどの真のアウトカムを改善することにあり、HbA1cなどはあくまで代用のアウトカムsurrogate outcomeである。HbA1cを低下させれば腎症を含めた細小血管障害リスクが低下することはこれまでに証明されている。つまり将来の細小血管障害リスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは正当化される。本試験においてリナグリプチンは代用のアウトカムであるHbA1cと、同じく代用のアウトカムである尿アルブミンを有意に減少させたが、これはHbA1cの低下による可能性が高い。一方、心血管イベントについては、RCTのメタ解析によると厳格な血糖管理により非致死性心筋梗塞を含めた冠動脈疾患は減少するが、脳卒中、全死亡は減少しないと報告されている2)。つまり将来の心血管イベントリスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは、細小血管障害の場合と同じ程度に正当化されるとは言い難い。 CVOTでは、血糖降下作用とは独立した心血管イベントリスクの上昇の有無を検証するために、試験デザインとしてプラセボ群と試験薬群とのglycemic equipoise(血糖コントロールつまりHbA1cが両群で試験期間中に同等であること)が要求されている。しかし本試験も含めた既報のすべてのCVOTにおいては試験薬群のHbA1cが有意に低下している。この点について、プラセボ群で血糖管理が強化されなかったのは倫理的に問題であるとの意見もあるが、筆者の見解は少しく異なる。実際にはCVOTに組み入れられたようなきわめて心血管イベント高リスクの患者で、かつ、すでに複数の血糖降下薬を併用してHbA1cが8.0%程度の患者において、インスリンを増量、SU薬を増量、他の血糖降下薬を追加することはACCORDの結果が報告されて以降、容易ではないのが現実ではないだろうか。血糖降下薬を増量、追加して血糖管理を強化するbenefitとharmを天秤に掛けると、clinical inertiaとの批判もあるが、現状維持を選択する判断になることが多い。さらに本試験に組み入れられたような腎機能異常を合併した患者においては、より一層その傾向が顕著である。つまりプラセボ群では血糖管理を強化しなかったのではなく、従来の血糖降下薬では強化できなかったのが事実に近いだろう。言い方を変えれば、試験薬により血糖管理を少しではあるが強化できたと言ってよい。そのような条件下においても、リナグリプチンが心血管イベントリスクを増加させずに血糖降下作用を発揮できることは本試験において証明されたと考えてよい。 非劣性試験は前述したように、患者にとって真のアウトカムの改善をもたらす薬剤を生み出す試験ではない。CVOTにおいて優越性を示した血糖降下薬はこれまでに複数存在するが、特殊な対象患者群、短い観察期間を考えるとすべての2型糖尿病患者にbenefitをもたらすかは不明である。今後はCVOTで優越性を示した薬剤を用いて、幅広い患者群に対する長期間の優越性試験superiority trialが実施されることを期待したい3)。

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SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患を合併した2型糖尿病には有用かもしれないが日本人では?(解説:桑島巖氏)-988

 今、2型糖尿病の新規治療薬SGLT2阻害薬の評価が医師の間で大きく分かれている。一方は積極的に処方すべしという循環器科医師たち、もう一方は慎重であるべきという糖尿病治療の専門医師たちである。 自らの専門の立場によって分かれる理由は、このレビューを読み込むとよくわかる。そして一般臨床医は個々の症例にどのように処方すべきか、あるいは処方すべきでないかが理解できる内容である。 このレビューはSGLT2阻害薬に関して、これまでに発表された3つの大規模臨床試験、EMPA-REG、CANVAS Program、DECLARE-TIMI58を結果について独立した立場から俯瞰し、レビューした論文である。 総じて、SGLT2阻害薬は動脈硬化疾患既往例における心血管イベント抑制には効果が期待でき、とくに心不全や腎疾患例では動脈硬化疾患の有無にかかわらず、再入院予防や末期腎不全への進展予防に有用である可能性が示されている。 しかし半面、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化性疾患の既往のない例では、心血管イベントや心血管死の予防には有用性が認められないことも明らかにしている。 3つのトライアルには、以下のような違いがある。1.EMPA-REG試験は動脈硬化性疾患(脳卒中や虚血性心疾患)既往例が100%を占めているのに対して、DECLAREは40.6%にすぎない。このバックグラウンドの違いは結果に大きく影響している。2.そして、EMPA-REG試験では動脈硬化性疾患既往での心不全入院、心血管死予防における効果がDECLARE試験よりも2倍も大きい。3.EMPA-REG試験とCANVAS試験では動脈硬化疾患既往例のMACE(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)予防効果は認められたのに対して、DECLARE試験では認められなかった。 上記3項目は各々の試験の対象バックグラウンドの違いと、後で述べる用量の違い*がこの結果に影響していると思われる。4.心不全入院、心血管死予防効果は、EMPA-REG試験では、心不全既往のない例で顕著だったが、心不全既往例では認められなかった。一方、DECLARE試験では心不全既往のあるなしにかかわらず予防効果はあってもわずかである。5.腎機能障害例での心不全入院予防効果はEMPA-REG試験とCANVAS試験では認められたが、DECLARE試験ではみられなかった。6.AMPUTATIONと骨折のリスク増加はCANVAS(カナグリフロジン)のみにみられ、他の2剤ではみられなかった。共通点1.動脈硬化疾患既往を有さない2型糖尿病では、いずれの薬剤もMACEの予防効果や心不全入院、心血管死の抑制効果はなかった。つまり再発予防にのみ有用であって、脳卒中や心筋梗塞既往のない例でのMACE予防にはあまり効果は期待できない。2.動脈硬化疾患既往例での腎機能悪化予防と腎臓死抑制効果は3剤とも非常に大きい。心不全入院予防と腎不全悪化予防効果は、心不全や腎不全の既往にかかわらず3剤とも認められる傾向がある。3.心不全入院、腎不全の悪化予防効果の機序としては、HbA1c低下作用は、いずれのSGLT2阻害薬もプラセボ群との間の差が0.4~0.6%にすぎないことから、血糖抑制作用よりも、SGLT2阻害薬が有するナトリウム利尿作用が大きく関与していると思われる。まとめ SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患既往例では、心不全入院と心血管死の予防効果とMACEの発症予防に対して有用性は期待できるが、すべての試験が日本での適用用量でのエビデンスではない。 動脈硬化性疾患既往のない高リスクだけの2型糖尿病例では、有用性は期待できない。このことは、動脈硬化性疾患既往歴が半数以下しか含まれていないDECLARE試験では、MACE予防効果は認められず、心不全入院や心血管死の予防効果も軽度にとどまることから明らかである。*用量についての補足説明 CANVAS試験で用いられた薬剤用量が、わが国の最大適用用量をかなり上回っていることは注意すべきである。すなわち、CANVAS試験ではカナグリフロジン300mg/日まで用いられており、日本で保険収載の最大用量(100mg)を大幅に超えている。

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ビタミンD受容体作動薬、透析患者の心血管リスク改善示せず/JAMA

 二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を伴わない維持血液透析患者において、経口ビタミンD受容体作動薬(VDRA)アルファカルシドールは、心血管イベントのリスクを低減しないことが、大阪市立大学大学院医学研究科の庄司 哲雄氏らが行った「J-DAVID試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月11日号に掲載された。慢性腎臓病患者は、ビタミンD活性化が障害されるため心血管リスクが増大する。血液透析患者の観察研究では、活性型ビタミンDステロールは、副甲状腺ホルモン(PTH)値にかかわらず、全死因死亡のリスクを抑制することが報告されている。VDRAの有効性を評価する日本の無作為化試験 J-DAVIDは、維持血液透析を受けているSHPTを伴わない患者における、VDRAの心血管イベントおよび総死亡の改善効果の評価を目的とする日本の多施設共同非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験である(日本腎臓財団の助成による)。 対象は、年齢20~80歳の維持血液透析を受けている患者であった。血清インタクトPTH値は180pg/mL以下とした。 被験者は、アルファカルシドール0.5μgを毎日経口投与する介入群または非投与(対照)群に無作為に割り付けられた。全例が、診療ガイドラインで推奨される標準的な薬物療法を受けた。 主要アウトカムは、48ヵ月のフォローアップ期間中に発生した、(1)致死的または非致死的心血管イベント(心筋梗塞、うっ血性心不全による入院、脳卒中、大動脈解離/破裂、虚血による下肢切断、心臓突然死)、(2)冠動脈血行再建(バルーン血管形成術、ステント留置)またはバイパス移植術、(3)下肢動脈血行再建(バルーン血管形成術、ステント留置)またはバイパス移植術の複合とした。副次アウトカムは全死因死亡であった。心血管イベント、全死因死亡とも有意差なし 2008年8月18日~2011年1月26日の期間に、全国の108の透析施設で976例が登録された。964例(年齢中央値65歳、女性386例[40.0%])がintention-to-treat解析に含まれ、944例(97.9%)が試験を完遂した。フォローアップ期間中央値は4.0年だった。 心血管イベントの主要複合アウトカムは、介入群では488例中103例(21.1%)に発生し、対照群の476例中85例(17.9%)に比べむしろ高率であったが、両群間に有意な差は認めなかった(絶対差:3.25%、95%信頼区間[CI]:-1.75~8.24%、ハザード比[HR]:1.25、95%CI:0.94~1.67、p=0.13)。 全死因死亡の発生率は、介入群が18.2%と、対照群の16.8%よりも高かったが、有意差はみられなかった(HR:1.12、95%CI:0.83~1.52、p=0.46)。 主要複合アウトカムのうち、心血管イベント(HR:1.26、95%CI:0.88~1.79)、冠動脈血行再建/バイパス移植術(1.20、0.64~2.25)、下肢動脈血行再建/バイパス移植術(1.40、0.64~3.05)のいずれにも有意な差はなかった。また、主要複合アウトカムのHRは、per-protocol解析では1.32(0.96~1.82、p=0.09)、修正per-protocol解析では1.34(0.97~1.83、0.07)に上昇したが、いずれも有意差はなかった。 重篤な有害事象は、介入群では心血管関連が199例(40.8%)、感染症関連が64例(13.1%)、悪性腫瘍関連が22例(4.5%)に、対照群ではそれぞれ191例(40.1%)、63例(13.2%)、21例(4.4%)に認められた。 著者は、「これらの知見は、SHPTを伴わない維持血液透析患者におけるVDRAの使用を支持しない」と結論したうえで、既報の観察研究と異なる結果となった理由の1つとして、副甲状腺機能や骨代謝回転がVDRAの心血管作用を修飾する可能性に言及し、「VDRAは副甲状腺機能亢進症や骨代謝回転が亢進した患者に処方されるのに対し、本研究ではインタクトPTH≦180pg/mLの患者を対象としていることから、VDRAは骨からのリン/カルシウムの動員を抑制することでSHPTの患者にのみ便益をもたらしている可能性がある」と指摘している。

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顕微鏡的多発血管炎〔MPA:microscopic polyangiitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)は、抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が陽性となる中小型血管炎である。欧米と比べ、わが国ではプロテイナーゼ3(proteinase3:PR3)ANCA陽性患者が少なく、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)陽性患者が多く、欧米よりも高齢患者が多いのが特徴である1,2)。多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA、旧ウェゲナー肉芽腫症)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA、旧チャーグ・ストラウス症候群)とともに、ANCA関連血管炎(ANCA associated vasculitis:AAV)に分類される。■ 疫学平成28年度の指定難病受給者は9,610人であった。Fujimotoらは、AAV発症の地理的な相違を明らかにするために、日本と英国でのAAV罹患率の比較を行った。AAVとしては、100万人当たりの年間罹患率は、日本22.6、英国21.8で同等であったが、日本ではAAVの約80%をMPAが占める一方で、英国では6.5%のみであり、GPAが最も多く約65%であった3)。男女比は1:1~1:1.2とされている。■ 病因1)遺伝的背景日本人のMPAでは、HLA-DRB1*09:01陽性例が50%にみられ、健康対照群に比べて有意に多いことが報告されている1,4)。このHLA-DRB1*09:01は日本人の29%に認められるなどアジア系集団で高頻度に認められるが、欧州系集団やアフリカ系集団にはほとんど存在しない1,4,5)。このことが、日本でMPAやMPO-ANCA陽性例が多い遺伝的背景の1つと考えられる。さらにその後、DRB1*09:01とDQB1*03:03の間に強い連鎖不平衡が認められ、この両者がMPAと関連すること、逆に、DRB1*13:02はMPAとMPO-ANCA陽性血管炎の発症に対し抵抗性に関与している(MPO-ANCA陽性血管炎群に有意に減少している)ことが明らかとなった5,6)。2)血管炎発症のメカニズムBrinkmannらは、phorbol myristate acetate(PMA)で刺激された好中球が細胞死に至る際に、DNAを網状の構造にし、MPOやPR3などの抗菌タンパクやヒストンとともに放出する現象を見出し、その構造物を好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)と呼んだ7,8)。NETsは細菌などを殺し、自然免疫に関与しているが、その後ANCA関連血管炎患者の糸球体の半月体の部分に存在することが確認された8,9)。Nakazawaらは、プロピルチオウラシル(抗甲状腺剤)添加により生成されたNETsが、NETsの分解酵素であるDNase Iで分解されにくいこと、さらにこれを投与したラットがMPO-ANCA陽性の細胞増殖性糸球体腎炎を発症することを報告した8,10)。さらに、MPO-ANCAを有するMPA患者のIgGは、全身性エリテマトーデス患者や健常者よりも強くNETsを誘導すること、NETs誘導の強さは疾患活動性やMPO-ANCAのMPOへの結合性と相関していること、MPA患者血清のDNase I活性が低下していることが報告された8,11)。これらをまとめ、岩崎らは、MPA患者はDNase I活性低下などNETsを分解しにくい素因があり、感染や薬剤(プロピルチオウラシル、ミノサイクリン、ヒドラジンなど)1)が加わり、NETsの分解障害が起こり、NETsの構成成分であるMPOに対する抗体(MPO-ANCA)が産生されること、さらにANCAがサイトカインや補体第2経路によりプライミングされた好中球表面のMPOに強固に結合し、Fcγ受容体を介してさらに好中球を活性化させてNETsを放出し、血管壁を壊死させるメカニズムを提唱している8)。■ 分類腎型、肺腎型、全身型に分類されるが、わが国では、肺病変のみの症例も多数認められる。■ 症状発熱、食思不振などの全身症状、紫斑などの皮膚症状、関節痛、間質性肺炎、急速進行性糸球体腎炎などを来す。わが国では、欧米に比べ間質性肺炎の合併頻度が高い12)。EGPAほど頻度は高くないが、神経障害も認められる。■ 予後初回治療時の寛解率は90%以上で、24ヵ月時点での生存率も80%以上である。わが国では高齢患者が多いため、感染症死が多く、治療では免疫抑制をどこまで強くかけるかというのが常に問題になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見としては、炎症所見、血尿、蛋白尿、円柱尿、血清クレアチニン上昇、MPO-ANCA陽性などを認める。診断には、厚生労働省の診断基準(1998年)が使用される(表)。表 MPAの診断基準〈診断基準〉確実、疑い例を対象とする【主要項目】1) 主要症候(1)急速進行性糸球体腎炎(2)肺出血、もしくは間質性肺炎(3)腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など2) 主要組織所見細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤3) 主要検査所見(1)MPO-ANCA陽性(2)CRP陽性(3)蛋白尿・血尿、BUN、血清クレアチニン値の上昇(4)胸部X線所見:浸潤陰影(肺胞出血)、間質性肺炎4) 判定(1)確実(definite)(a)主要症候の2項目以上を満たし、組織所見が陽性の例(b)主要症候の(1)および(2)を含め2 項目以上を満たし、MPO-ANCAが陽性の例(2)疑い(probable)(a)主要症候の3項目以上を満たす例(b)主要症候の1項目とMPO-ANCA陽性の例5) 鑑別診断(1)結節性多発動脈炎(2)多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)(3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎/チャーグ・ストラウス症候群)(4)川崎動脈炎(5)膠原病(SLE、RAなど)(6)IgA血管炎(旧称:紫斑病血管炎)【参考事項】1)主要症候の出現する1~2週間前に先行感染(多くは上気道感染)を認める例が多い。2)主要症候(1)、(2)は約半数例で同時に、その他の例ではいずれか一方が先行する。3)多くの例でMPO-ANCAの力価は疾患活動性と平行して変動する。4)治療を早期に中止すると、再発する例がある。5)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。(吉田雅治ほか. 中・小型血管炎の臨床に関する小委員会報告.厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班難治性血管炎分科会.平成10年度研究報告書.1999:239-246.)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)わが国では厚生労働省の血管炎に関わる3研究班合同のAAV診療ガイドラインと13,14)、腎障害を伴うAAVについての厚生労働省難治性腎疾患研究班によるエビデンスに基づく急速進行性腎炎症候群(RPGN)診療ガイドがあり15)、欧米では、英国リウマチ学会(BSR)によるAAV診療ガイドラインがある16,17)。その後、3研究班合同のAAV診療ガイドライン18)が改訂された。■ 寛解導入療法厚生労働省3班のAAV診療ガイドラインでのMPAの治療アルゴリズムを図に示す。基本的には、ステロイド(GC)とシクロホスファミド(CY、[商品名:エンドキサン])の併用療法であるが、経口CYよりも静注CY(IVCY)が推奨されている。CYは年齢、腎機能などで減量を考慮する。欧米では、リツキシマブ(RTX、[同:リツキサン])がIVCYと同じポジションであるが、わが国では高齢患者が多いためにIVCYが推奨された。また、患者の状態によりメトトレキサート(MTX、[同:リウマトレックス])、ミコフェノール酸モフェチル(MMF、[同:セルセプト])、血漿交換なども推奨されている。GCの減量速度はAAVの再発に大きく関わっており、あまりに急速な減量は避けるべきである19)。図 MPA治療アルゴリズム(厚生労働省3班AAV診療ガイドライン)画像を拡大する*1GC+IVCYがGC+POCYよりも優先される。*2ANCA関連血管炎の治療に対して十分な知識・経験をもつ医師のもとで、RTXの使用が適切と判断される症例においては、GC+CYの代替として、GC+RTXを用いてもよい。*3GC+IVCY/POCYがGC+RTXよりも優先される。*4POCYではなくIVCYが用いられる場合がある。*5AZA以外の薬剤として、RTX、MTX*、MMF*が選択肢となりうる。*保険適用外■ 寛解維持療法厚生労働省3班のAAV診療ガイドラインでは、GC+アザチオプリン(AZA、[同:イムラン、アザニン])を推奨しており、そのほかの免疫抑制薬としてRTX、MTX、MMFが推奨されている。一方、難治性腎疾患研究班のRPGNガイドラインではRTXのかわりにミゾリビン(MZR、[同:ブレディニン])が推奨されている。やはりわが国のAAVは高齢者が多いこと、腎機能が低下するとMZRの血中濃度が上昇し、よい効果が得られることなどがその理由として考えられる。4 今後の展望2023年5月に改訂されたAAV診療ガイドラインによる治療の変化(とくにアバコパンについて)補体活性化の最終段階で産生される C5aRを選択的に阻害する経口薬アバコパン(商品名:タブネオス)は、ADVOCATE試験20)によりAAVに対する有効性および安全性を確認し、「顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症」を適応症として2022年6月に発売された。その後、2023年5月に改訂されたAAV診療ガイドラインにおいて、MPA/GPAの寛解導入治療でCYまたはRTXを用いる場合、高用量GCよりもアバコパンの併用を提案することが明記された。その他の薬剤ではMPA/GPAの寛解導入治療として、GC単独よりもGC+IVCYまたは経口CYを、GC+経口CYよりもGC+IVCYを、GC+CYと同列にGC+RTXを、GC+CYまたはRTXを用いる場合はGCの通常レジメンよりも減量レジメンを提案することが明記された18)。なお、アバコパンの添付文書には重大な副作用として肝機能障害が記載されている。その多くは投与開始から3ヵ月以内の発現であるが、それ以降に発現しているケースも報告されていることから、定期的なモニタリングが必要である。5 主たる診療科膠原病内科、リウマチ科、腎臓内科、呼吸器内科、皮膚科、神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 顕微鏡的多発血管炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本循環器学会. 血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版). 2018;54-60.2)佐田憲映.ANCA関連血管炎 顕微鏡的多発血管炎.日本リウマチ財団 教育研修委員会編. リウマチ病学テキスト 改訂第2版. 診断と治療社;2016.p.265-267.3)Fujimoto S, et al. Rheumatology. 2011;50:1916-1920.4)Tsuchiya N, et al. J Rheumatol. 2003;30:1534-1540.5)川崎 綾.顕微鏡的多発血管炎(1)疫学・遺伝疫学.有村義宏 監. 日本臨牀 増刊号 血管炎(第2版)―基礎と臨床のクロストーク―. 日本臨牀社;2018.p.215-219.6)Kawasaki A, et al. PLoS ONE. 2016;11:e0154393.7)Brinkmann V, et al. Science. 2004;303:1532-1535.8)岩崎沙理ほか.小型血管炎(2)顕微鏡的多発血管炎の病理・病態.有村義宏 監. 日本臨牀 増刊号 血管炎(第2版)―基礎と臨床のクロストーク―. 日本臨牀社;2018.p.220-225.9)Kessenbrock k, et al. Nat Med. 2009;15:623-625.10)Nakazawa D, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:3779-3787.11)Nakazawa D, et al. J Am Soc Nephrol. 2014;25:990-997.12)Sada KE, et al. Arthritis Res Ther. 2014;16:R101.13)有村義宏ほか 編. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017. 診断と治療社;2017.14)Nagasaka K, et al. Mod Rheumatol. 2018 Sep 25.[Epub ahead of print]15)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 難治性腎疾患に関する調査研究班 編. エビデンスに基づく急速進行性腎炎症候群(RPGN)診療ガイドライン2017. 東京医学社;2017.16)Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.17)駒形嘉紀.顕微鏡的多発血管炎(4)治療.有村義宏 監. 日本臨牀 増刊号 血管炎(第2版)―基礎と臨床のクロストーク―.日本臨牀社;2018.p.232-237.18)針谷正祥、ほか. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023.診断と治療社:2023.19)Hara A, et al. J Rheumatol. 2018;45:521-528.20)Jayne DRW, et al. N Eng J Med. 2021;384:599-609.公開履歴初回2018年12月25日更新2024年7月11日

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