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SGLT2阻害薬、腎臓の加齢変化抑制の可能性――老化が速い魚で検証

 糖尿病などの治療に用いられているSGLT2阻害薬(SGLT2-i)という薬に、老化した腎臓を保護するように働く可能性があることが報告された。米MDI生物学研究所のHermann Haller氏らの研究によるもので、詳細は「Kidney International」3月号に掲載された。 この研究では、寿命がわずか4~6カ月のアフリカンターコイズキリフィッシュという小魚が用いられた。この魚は非常に老化が速いため、わずか数週間の研究でヒトの数十年分に相当する加齢現象を観察することができる。研究の結果、SGLT2-iの投与によって、加齢に伴う腎臓の変化が抑えられ、腎臓の健康が維持されることが示された。論文の上席著者であるHaller氏は、「SGLT2-iは糖尿病の有無にかかわらず、心臓や腎臓に対して保護的に作用することが既に知られているが、その作用のメカニズムはこれまで十分明らかにされていなかった」と語っている。 SGLT2-iを投与しない場合、この魚の腎臓には人間の腎臓と非常によく似た加齢変化が観察された。具体的には、腎臓内の毛細血管が少なくなり、ろ過システムがダメージを受け、炎症が強まり、細胞のエネルギー産生に支障が生じた。しかしSGLT2-iを投与した魚では、これらの変化が少なく、血流やろ過機能、エネルギー産生機能も正常に維持されていた。また、炎症抑制や細胞間のコミュニケーション改善といった作用も観察された。Haller氏は、「これまでの研究でSGLT2-iは血糖降下作用を上回るメリットをもたらすことが示されてきているが、それは今回明らかになったさまざまな同薬の機序が、疾患の病態の上流に働きかけるためではないか」と述べている。 SGLT2-i投与の有無による最大の違いの一つは毛細血管に認められた。同薬を投与されていない魚は加齢とともに毛細血管が徐々に失われていき、その結果、腎臓の細胞は酸素を得ることが困難になり、エネルギー産生に支障が生じ始めた。一方で同薬を投与された魚はより多くの毛細血管が維持され、エネルギー産生の改善と炎症抑制に関連する遺伝子の発現が若い個体に近い状態を示した。 論文の筆頭著者であるハノーバー医科大学(ドイツ)のAnastasia Paulmann氏は、「急速に老化する動物モデルを用いた研究の結果、これほど明確なSGLT2-iの影響が現れたことは衝撃的だった。最も驚いたのは、機序が一見単純そうな同薬が、血管やエネルギー代謝、炎症をはじめ、腎臓内で互いに関連して働くさまざまなシステムに影響を及ぼすことだ」と、本研究のインパクトを強調している。 研究者らは、老化の速いこの魚を研究に用いることで、マウスなどを用いるよりも迅速に新しい治療法を検討できるのではないかと考えている。Haller氏らの研究チームでは今後、既にダメージが進行している腎臓の修復にもSGLT2-iが役立つか否かの検討、および治療開始のタイミングの重要性に関する研究を予定している。

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ロジスティック回帰分析 その3【「実践的」臨床研究入門】第62回

ロジスティック回帰モデルによる交絡因子調整の実際前回までロジスティック回帰モデルの基本的な考え方を説明しました。今回は実際に仮想データ・セットを用いて、EZR(Easy R)を使用したロジスティック回帰モデルによる交絡因子の調整方法について解説します。はじめに、以下の手順で仮想データ・セットをEZRにインポートします。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」次にメニューバーから「統計解析」→「名義変数の解析」→「二値変数に対する多変量解析(ロジスティック回帰)」を選択すると、下図のポップアップウィンドウが開きます。画像を拡大するモデル名には「Logistic_treat」などと入力モデル式は以下のように選択します(連載第60回参照)。目的変数(左辺)treat(厳格低たんぱく食の遵守の有無)説明変数(右辺)下記のtreat以外のすべての説明変数(交絡因子)を「+」でつないで選択oage(年齢)、sex(性別)、dm(糖尿病の有無)、sbp(血圧)、eGFR(ベースラインeGFR)、Loge_UP(蛋白尿定量_対数変換)、albumin(血清アルブミン値)、hemoglobin(ヘモグロビン値)oage+sex+dm+sbp+eGFR+Loge_UP+albumin+hemoglobin「OK」をクリックすると、EZRのRコマンダー出力ウィンドウに下記のコードが表示されます。Logistic_treat

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血糖や肥満、虚血管理を阻むリスク記憶とは、AGEから紐解く

第26回日本抗加齢医学会総会が2026年6月26日(金)~28日(日)の3日間、パシフィコ横浜ノースにて開催される。今回のテーマは『「人新世」のアンチエイジング 食事、運動、睡眠、美容による統合医療』。大会長である山岸 昌一氏(昭和医科大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)が長年の研究で培ってきた糖尿病学と老年医学の関係、本総会のテーマの意味、大会長が力を入れる演題について話を聞いた。「人新世(じんしんせい)」とはまず、今大会のテーマである「人新世」についてお話ししましょう。人新世とは、新しく設定された地質学的な時代区分のことで、人間の活動が地球環境や生態系に多大な影響を及ぼす「現代」を示す言葉です。この時代におけるアンチエイジングを私なりに解釈いたしますと、単に若返りを求めるのではなく、持続可能な地球環境との共生や社会との調和を目指し、究極的な統合医療や健康の探求を目指すことだと思います。とりわけ、食事・運動・睡眠・美容は個人の健康を支える最も基本的な要素であると同時に、医療資源として科学的に評価・活用されるべき対象であるとも考えています。そこで、本大会ではこれらを統合医療の視点から捉え、予防・診断・治療、生活支援にまでつなぐ多角的な議論を展開していきたいと考えています。なお、このテーマに多くの先生が賛同してくださり、過去8年間で最多数の一般演題を応募いただいたようです。糖化×老化、たどり着いた30年の軌跡私の専門とする糖尿病は、患者さんの健康寿命が健康な方と比べて10~15年短く、死亡リスクは1.8倍、さらに老化が加速しやすい疾患であることが過去の研究1)から明らかになっています。また、2024年に米国心臓協会(AHA)が提唱したLife’s Essential 8の中でも糖尿病の有無が寿命を大きく左右することが明らかになってきました。では、なぜ糖尿病が実寿命や健康寿命に悪影響を及ぼすのでしょうか? そのメカニズムにはどうやら“記憶”が関与しているようです。私が医師になった37年前、糖尿病の合併症として教科書に挙げられていたのは、大小血管合併症、感染症、皮膚病くらいでした。しかし、多くの患者さんの診療に当たっていると、認知症やがん、骨粗鬆症などの老年病も糖尿病で合併しやすいことに気が付きました。そこで、糖尿病に一番特徴的な血管合併症である網膜症の病態生理を解明していくことで、最終的には「なぜ、糖尿病で老化が進むのか?」といった課題を明らかにすることができるのではないかと思ったのです。糖尿病網膜症では、内皮細胞の外側を取り囲む周皮細胞が選択的に死滅し、病期が進行していきます。そして、この周皮細胞の消失は、糖尿病でしか観察されません。しかしながら、周皮細胞は、短期間の高血糖の曝露ではなかなか死滅しません。長期間、高血糖に曝露されて初めて周皮細胞は死んでいきます。その後の研究で、年余にわたる高血糖により生体内タンパク質が糖化、変性を受け、AGE(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物)と呼ばれる老化物質が体に蓄積していくことで初めて周皮細胞が死んでいくことがわかりました(図1)。ほかの研究者らは、長い年月にわたって糖尿病患者の経過を見ていく中で、過去の高血糖の曝露歴がその後の糖尿病合併症の進展を左右することを見いだしました。そして、現在の血糖コントロールが良好でも、過去長期間にわたり高血糖に曝露していたような患者は、臓器合併症の進展リスクが高く治療が難渋しやすいことから、この現象は「高血糖の記憶(Metabolic Memory)」と呼ばれるようになり、“過去のツケ”のごとく体内に残存する物質、AGEが「高血糖の記憶」に関わることが明らかになっていったのです2)。その後、約20年前に世界で初めて血液中からいろいろなタイプのAGEを簡便に測定する手段を開発することに成功しました。(図1)AGEの蓄積過程画像を拡大する悪い過去を記憶するAGE、どうやって除去する?AGEは「タンパク質と糖が加熱されてできた物質」の総称で、老化を進める原因物質とされています。これらは高血糖状態の体内で作られたり、食べ物から体内に入ったりすることで蓄積が進み、シワやたるみの原因、動脈硬化や心血管疾患の発症リスクの上昇、骨粗鬆症や寝たきりへの発展、大腸がん、乳がんなどのがん発症リスクとの関連も報告されています3)。とくにAGEが問題とされるのは、血糖値が基準値に戻ったとしても、AGE化して一度変性したタンパク質はなかなか元に戻らないこと、加齢に伴いこの蓄積が加速するということです(図2)。(図2)画像を拡大するAGEのうち3分の1は外因性で食事由来によるものです。AGEはどんな食品にも含まれているので、日頃の予防法として重要なのは、調理法のアドバイスです。たとえば、焼き鳥とかステーキなどは茶色の焼き目が付きますが、その部分がAGEなのです。同じ食材でも低温調理などのように調理法を変えるだけでAGE摂取を抑えることができます。私の診察では、「(肉を食べる場合は)焼くよりも茹でるのはどうですか?」といった提案をしています。このように同じ食事でも、調理法や付け合わせを変えることによってAGEの生成量を低減できることが知られています。この食事に由来するAGEに関しては、米国・マウントサイナイ医科大学教授のJaime Uribarri氏をお招きし、最先端のデータをご解説いただく予定です。また、食事由来AGEに予防法があるように、加齢に伴い蓄積するAGEの制御も可能とされ、老化のプロセスとして介入できれば多くの老年病を包括的に制御できると考えられます。私は、AGEを体から除去するAGEアプタマーと呼ばれる医薬品の開発に動物モデルで成功しています。そこで、本大会ではAGEに焦点を当てつつ、老科学仮説の概念に基づきながら、食事・運動・睡眠などの観点からもアンチエイジングを考えていきたいと思っています(図3)。(図3)画像を拡大する会長企画、5つのシンポジウム今回の総会では、認知症、フレイル、睡眠、腸内細菌などの講演が組まれておりますが、AGEに関連のある記憶という概念からもシンポジウムを設定いたしました。新たな抗加齢医学の観点を理解いただくためにも、5つの会長企画シンポジウムにぜひご注目ください。(1)「リスク記憶の分子メカニズム」リスク記憶について(低酸素の記憶、肥満の記憶、コレステロールの記憶)(2)老化治療の最前線老化細胞除去法「セノリシス」や老化細胞阻害薬などの最前線を紹介(3)女性の生涯の健康課題に寄り添う―基礎的研究から支援体制の構築まで―女性の生涯の健康課題に寄り添う治療や研究の最前線について解説(4)AI技術人工知能が抗加齢医学に果たす役割について、診断、サポート、遠隔診療・治療、創薬などの切り口で講演を予定(5)インナービューティーを目指した統合医療身体の内側から健康を担保するため、統合医療の観点からヨガやピラティスをテーマに講演を予定このほか、中野 京子氏(作家・ドイツ文学者)による特別講演「“美”の裏に潜む真実―芸術と老いをめぐる想像力」と題し、同氏の代表著書『怖い絵』から人の心と身体を捉えることで新たなアンチエイジングの発想についてお話しいただく予定です。また、鍋島 陽一氏(京都大学医学研究科健康加齢医学講座)による招待講演では、「Klotho(老化ホルモン)の研究の総括と新たな展望(仮)」と題し、抗加齢医学の最新データをご紹介いただく予定です。一人ひとりがその人らしく年を重ねられる健やかな社会の実現に向けて、本大会が皆さまと共に考える場となることを願っています。一人でも多くの皆さまのご参加をお待ちしております。参考1)Seshasai, S. R. K, et al. N Engl J Med. 2011;364:829-841.2)Yamagishi S, et al. J Diabetes. 2017;9:141-148.3)Si C, et al. Food Funct. 2024;15:1553-1561.

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毎日のアスピリン服用で妊娠高血圧腎症の発症リスクが低下

 妊娠中の危険な高血圧症の発症率を、ある簡単な対応を取ることで減らせる可能性があるようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのElaine Duryea氏らの研究で、初回妊婦健診時に全ての妊婦にアスピリンを処方することが、重症所見を伴う妊娠高血圧腎症(以下、重症妊娠高血圧腎症)のリスク低下と関連することが明らかになった。この研究は、母体胎児医学会議(SMFM 2026、2月8〜13日、米ラスベガス)で発表された。Duryea氏は、「高リスク妊婦に対して直接アスピリンを提供する手法は、重症妊娠高血圧腎症の発症を遅らせ、場合によっては発症を完全に防ぐこともできるようだ」と述べている。 妊娠高血圧腎症は、妊娠中に持続的な高血圧と蛋白尿を伴い、母体の臓器に損傷を引き起こすことがあり、早産や死産のリスクも高める。一部の患者では、重症の高血圧と肝機能・腎機能障害により、母体と胎児に重大なリスクを生じる重症妊娠高血圧腎症に陥る。妊娠12〜28週の間に低用量アスピリンの服用を開始することは、妊娠高血圧腎症の予防に有効であることが知られているが、研究グループによると、これは広く用いられている治療法ではないという。 研究グループは2022年8月3日より、妊娠16週以下の全妊婦に対し、アスピリン162mgを毎日服用するよう処方し始めた。特筆すべきは、クリニックでアスピリンを患者に直接配布し、薬剤へのアクセスを確実にした点である。Duryea氏らは、アスピリンが提供された後に出産した1万8,457人の妊婦(アスピリン群)の結果を、アスピリンを処方されなかった同数の女性(非アスピリン群)と比較した。 その結果、アスピリン群では非アスピリン群と比べて、重症妊娠高血圧腎症の発症リスクが29%低下していた(オッズ比0.71、95%信頼区間0.66〜0.78、P<0.001)。また、重症妊娠高血圧腎症を発症するまでの時間も、アスピリン群で有意に長かった。さらに、すでに慢性高血圧を有する妊婦においても、アスピリン群では重症妊娠高血圧腎症の発症リスクが28%低下していた(オッズ比0.72、95%信頼区間0.60〜0.87)。安全性に関しては、アスピリン群と非アスピリン群の間で、新生児の脳室内出血(IVH)や腹壁破裂、常位胎盤早期剥離の頻度に差は見られず、出血量1,000mL超の産後出血は、非アスピリン群でやや低下した(9.5%対8.9%、P=0.03)。 Duryea氏は、「他の患者集団でも同様の効果が見られるのかについては断言できないが、アスピリン投与の有害性のエビデンスは見当たらなかった」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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「フォシーガ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第85回

第85回 「フォシーガ」の名称の由来は?販売名フォシーガ®錠 5mg フォシーガ®錠 10mg 一般名(和名[命名法])ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(JAN)効能又は効果◯2型糖尿病◯1型糖尿病◯慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。◯慢性腎臓病ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。用法及び用量<2型糖尿病>通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。<1型糖尿病>インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。<慢性心不全、慢性腎臓病>通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[糖尿病を有する患者ではインスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2026年3月16日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年4月改訂(第15版)医薬品インタビューフォーム「フォシーガ®錠5mg、10mg」

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1型糖尿病とCKD併存、フィネレノンがUACRを改善/NEJM

 1型糖尿病患者における慢性腎臓病(CKD)の治療では、30年以上前の研究に基づき、生活習慣、血糖値、血圧の最適化に重点が置かれ、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が推奨されてきたが、これらの介入はCKDの進行を抑制する効果はあるものの、完全に阻止することはできないとされる。オーストラリア・University of New South WalesのHiddo J.L. Heerspink氏らは「FINE-ONE試験」において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、有効性と安全性の代替指標としての尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させ、高カリウム血症が多くみられるものの重篤な有害事象の頻度に大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号で報告された。9ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FINE-ONE試験は、9ヵ国で実施した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Bayerの助成を受けた)。2024年2月~2025年2月に参加者を登録した。 対象は、18歳以上、1型糖尿病と診断され、CKD(推算糸球体濾過量[eGFR]:25~<90mL/分/1.73m2)およびアルブミン尿(UACR[アルブミンはmg、クレアチニンはgで測定]200~<5,000)を有し、ACE阻害薬またはARBの投与を受けている患者であった。 被験者を、フィネレノンまたはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けた。フィネレノンの用量は、スクリーニング時eGFR≧60mL/分/1.73m2の患者は20mg/日、同25~<60mL/分/1.73m2の患者は10mg/日で開始した。 主要アウトカムは、6ヵ月の時点におけるベースラインからのUACRの相対的な変化量とした。UACRの減少率が25%高い 242例を登録し、フィネレノン群に120例(平均[±SD]年齢51.3[±14.2]歳、女性34.2%)、プラセボ群に122例(51.9[±13.2]歳、35.2%)を割り付けた。 UACR中央値は、フィネレノン群でベースラインの574.6から6ヵ月時に373.5へ低下し、プラセボ群では506.4から475.6へ低下した。 この6ヵ月間で、UACRは、フィネレノン群で34%の減少(ベースラインとの最小二乗幾何平均比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.60~0.73)、プラセボ群で12%の減少(0.88、0.79~0.98)であった。これは、プラセボ群に比べフィネレノン群で25%高い減少率を示したことになり、有意に優れた(6ヵ月時のプラセボ群との最小二乗幾何平均比:0.75、95%CI:0.65~0.87、p<0.001)。血圧、HbA1c値、体重の変化に差はない 最も頻度の高い有害事象は高カリウム血症であった(フィネレノン群12例[10.1%]、プラセボ群4例[3.3%])。高カリウム血症のためフィネレノンの投与を中止した患者は2例(1.7%)だった。また、重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であった(14例[11.8%]、14例[11.5%])。 6ヵ月時のeGFRの変化量は、フィネレノン群で-5.6mL/分/1.73m2、プラセボ群で-2.7mL/分/1.73m2であった(群間差:-2.9mL/分/1.73m2、95%CI:-5.1~-0.7)。6ヵ月以降のウォッシュアウト期間中に、フィネレノン群のeGFR値はベースラインの値に近づいた。 6ヵ月の時点で、収縮期血圧のベースラインからの変化量の両群間の差は-0.9mmHg(95%CI:-4.3~2.6)、拡張期血圧の変化量の差は-1.3mmHg(-3.4~0.9)であり、いずれもフィネレノン群のほうが変化量は大きかったが、有意な差はなかった。また、両群とも、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値や体重に有意な変化を認めず、群間差は小さかった。高リスクのサブグループでも有効な可能性 著者は、「ガイドラインに基づく薬物療法(ACE阻害薬、ARBなど)に加えフィネレノンを投与すると、プラセボに比べより大きなUACRの低下が得られ、この効果は、ベースラインのeGFRが最も低い(<45mL/分/1.73m2)集団(最小二乗幾何平均比:0.74、95%CI:0.57~0.97)およびUACRが最も高い(>1,000)集団(0.91、0.70~1.18)といった腎および心血管の有害なアウトカムのリスクがきわめて高いサブグループにおいても同様であった」としている。 なお、著者は考察で「本試験は地理的に多様なCKD合併1型糖尿病患者を対象としたものの、被験者の約3分の2が男性であったことから、これらの知見は試験コホートと同様の特徴を共有する患者にのみ適用可能であり、一般化はできない」と指摘している。

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3月12日 世界腎臓デー【今日は何の日?】

【3月12日 世界腎臓デー】〔由来〕腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発する取り組みとして、国際腎臓学会などにより2006年から、3月第2木曜日を「世界腎臓デー」と定め、毎年、世界各地で腎臓病に関する啓発に向けてイベントが開催されている。関連コンテンツ腎不全・透析診療アップデート【診療よろず相談TV】腎不全リスク別にみたSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性亜鉛欠乏がCKD患者のAKIリスクを37%上昇、死亡リスクは約2倍にIgA腎症における蛋白尿0.3g/日未満達成は腎予後とどう関連するか?SGLT2阻害薬、eGFRやアルブミン尿を問わずCKD進行を抑制/JAMA

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HFpEF診療で期待のフィネレノン、適格患者と注意点とは/バイエル

 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノン(商品名:ケレンディア)は、これまで2型糖尿病かつ慢性腎臓病患者の心不全発生予防に対し有効性が示されていたが、2025年12月22日、新たに「慢性心不全」の適応を取得した。 これを受け、バイエル薬品は2月19日にプレセミナーを開催。昨年の第89回日本循環器学会学術集会で本剤の研究結果や日本人サブ解析データを発表した絹川 弘一郎氏(富山大学第二内科 教授/日本心不全学会理事長)と佐藤 直樹氏(かわぐち心臓呼吸器病院 副院長/循環器内科)が登壇し、心不全治療の課題やフィネレノン処方時の注意点などについて解説した。HFpEFに投与を考慮すべき、異例のスピードでガイドライン推奨 2025年3月発刊の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』において、フィネレノンの位置付けは大きく変貌を遂げた。従来の適応に加え、左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)や左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)における薬物治療の推奨とエビデンスが加わった(症候性のHFpEFに対して、心血管死または心不全増悪イベントの抑制を目的としてMRA(フィネレノン)の投与を考慮する[推奨クラスIIa・エビデンスレベルB-R])。この適応拡大に至った背景について、絹川氏は「FINEARTS-HF試験で予後改善効果が示された」と説明し、適応取得前にガイドラインに掲載された異例のスピード感について、「それだけ現場の期待が大きかったことの表れ」と述べた。非ステロイド骨格による炎症/線維化抑制への期待 上記を踏まえ、絹川氏は「心不全診療の現状と課題:左室駆出率の保たれた心不全とは?」と題し、HFpEF診療におけるフィネレノンの可能性を解説。これまで心不全診療の中心はHFrEFであり、心不全~全身臓器の機能低下や各種ホルモンの上昇といった多臓器連関をブロックするため、近年ではARNI(ACE阻害薬/ARB)、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬の4剤を併用するファンタスティック・フォーが基本治療とされてきた。その一方で、この20年で増加傾向にあるHFpEFには、HFrEFに準じた治療で有効性が見いだせていなかった。 また以前より、HFpEFの背景にある生活習慣病などのリスク因子を有する患者では、ミネラルコルチコイド受容体(MR)が過剰活性化を起こし、これが心不全の増悪・進行の原因であることは示されていたため、これまで、MRAの1つでステロイド骨格を有するスピロノラクトンでHFpEFに対する有効性が試験されるも、予後改善のエビデンスを得るには至らなかった。これに対して、非ステロイド骨格のフィネレノンは、FINEARTS-HF試験で有効性を示したのである。その理由について同氏は「ステロイド骨格の有無による効果の違いは現時点では明らかではないが、非ステロイド骨格のMRAは、炎症/線維化遺伝子発現を誘導するcofactor(共役因子)と結合しない点が大きいのではないか」と見解を示した。1年予後改善のため、安易な中止は逆効果に 続いて佐藤氏は、「心不全治療はケレンディアによってどう変わるのか?―ケレンディアの対象となる患者像は?―」と題し、フィネレノンのガイドラインでの推奨根拠となったFINEARTS-HF試験に基づき、日本人の適格患者を以下のように示した。<適格患者>―――――――――――――・年齢≧40歳・NYHA心機能分類 II~IV・左室駆出率≧40%・eGFR≧25mL/min/1.73m2・血清カリウム値≦5.5(5.0mmol/L)・SGLT2阻害薬併用可――――――――――――――――――― フィネレノンは、上述のようにガイドラインにおいて“投与を推奨すべき”という位置付けが示されたものの、腎機能やカリウム値のモニタリングが不可欠である。同氏は「除外基準としてeGFR、血清カリウム値について考慮する必要がある」と前置きし、「非ステロイド性MRAを開始できない、あるいはすぐに中止してしまうといった処方医の過度な慎重さが逆に患者の不利益につながりかねない」と注意喚起し、処方医らの不安を払拭する材料として、AHA2024で発表された知見に触れ、血清カリウム値が一時的に5.5mmol/Lを超えた症例においても、フィネレノンの臨床的効果が維持されていたデータを示した。また、FINEARTS-HF試験サブグループ解析結果から、フィネレノンをSGLT2阻害薬服用患者にアドオンすることによる利点、有効性・安全性についても言及した。 最後に同氏は「予後改善目的でフィネレノンを投与することを常に念頭に置いて処方検討を行うことが重要」とし、「フィネレノンは血清カリウム5.5mmol/Lまでは投与可能だが、フィネレノン、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬で血清クレアチニン値の急な上昇がみられることがある。ただし、これは必ずしも腎機能悪化を示すものではなく、これらの治療は腎機能改善と関連している。そして、心不全診療において、安易な反射的中止が課題になっており、診療ガイドラインに基づく薬物療法(GDMT)の中止が心不全の転帰悪化に影響する」と患者の利益を最優先した基準の順守ならびにモニタリングの実施をHFpEF診断にあたる医師に向けて訴えた。 

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CKDの早期診断・早期介入の重要性と「協力医」への期待/ベーリンガーインゲルハイム

 腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発することを目的として、毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー(World Kidney Day)」に制定されている。3月12日の本年の世界腎臓デーに先立ち、日本ベーリンガーインゲルハイムは3月5日に慢性腎臓病(CKD)の啓発を目的としたプレスセミナーを開催した。柏原 直樹氏(川崎医科大学 高齢者医療センター/日本腎臓病協会 理事長)が登壇し、CKDの早期診断・早期介入の意義について解説した。血清クレアチニン検査が健康診断の必須項目に わが国には約2,000万例のCKD患者がいると推定されており、新たな国民病ともいわれている。腎機能が低下しても自覚症状が乏しいため、多くの患者は気付かないまま生活している。しかし、病状が進行すると透析などの腎代替療法が必要となる。さらに、心不全・心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクも高く、寝たきりの原因にもなることから、早期診断・早期介入が非常に重要である。 CKDは、(1)蛋白尿やアルブミン尿などの尿異常、画像診断や病理所見などで腎障害が認められる状態、(2)血清クレアチニン値から算出した推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満の状態のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することで診断される。柏原氏は、「企業などの健康診断で尿検査は実施されているものの、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の必須項目に血清クレアチニン検査は含まれていない。クレアチニンを測定するか尿検査を行わなければCKDは発見できないため、これは大きな問題であった」と、これまでの早期診断の障壁を指摘した。そのうえで、「厚生労働省へ腎臓病のスクリーニングには尿検査と血清クレアチニン検査の両方が必要であることを説明・協議した結果、血清クレアチニン検査を来年度から必須項目にする方向で検討が進められている」と述べ、今後は早期診断の機会がより増えることに期待を寄せた。慢性透析患者数は減少傾向 CKDを早期に発見して適切に介入することで、透析導入を遅らせたり回避したりできる可能性があり、国の経済負担の軽減にもつながる。こうした背景のもと、2018年に厚生労働省に腎疾患対策検討会が設置され、日本の保険医療体制を維持するため、2018年以降の新規透析患者数を10%減らすという目標が掲げられた。目標達成のための活動が功を奏し、これまで増加を続けてきた慢性透析患者数は近年では減少傾向に転じている。 これは腎臓病の重症化が抑制でき、透析患者が減り始めているという世界でも珍しい例であり、柏原氏は「普及啓発や医療提供体制の整備などを草の根的に全国で続けてきたことに加え、腎臓病の進行を抑制する薬剤が登場してきたことなど多くの要因が相まって、当初は不可能だと思った新規透析患者の10%減という目標が2028年までに達成可能になってきた。これが日本の医療の力だと思っている」と早期診断・早期介入の成果と重要性を強調した。今後のCKD診療はかかりつけ医と協力医が中心 柏原氏は最後に、現在の腎臓病診療に関する課題について言及した。とくに問題となっているのが腎臓専門医の地域偏在で、腎臓専門医は6,578人(2025年6月30日時点)いるものの、CKD患者1万例当たりの腎臓専門医数は最も多い東京都と最も少ない県で4倍以上の差があるという。 こうした状況を踏まえ、日本腎臓病協会ではCKDの普及啓発や医療提供体制の整備を進めるとともに、専門医とかかりつけ医をつなぐ「協力医」を新たに設ける方針であり、すでに先行して始まっている地域もある。協力医はセミナーなどを受講することで、かかりつけ医以上の知識を習得することが求められる。現在では腎臓の難病の治療薬が増え、一部の腎疾患では治療薬の進歩により寛解が期待できるようになってきたことから、柏原氏は「CKD患者の多くをかかりつけ医と協力医が診ることにより、腎臓専門医は腎臓難病の診療に集中することができる」と今後の腎臓病診療の発展に期待を寄せ、講演を終えた。患者の立場からの早期介入の重要性 本プレスセミナーでは、CKD患者であり全国腎臓病協議会専務理事も務める宮本 陽子氏が登壇し、自身の経験やCKD患者の抱える困難について紹介した。透析導入に当たり、患者は違う世界に放り出されたような孤独感に陥ることに加え、仕事や生活への不安から現実から逃避してしまうことがあるという。宮本氏は、正しい知識を得ることの重要性とともに、早い段階で合併症の話をするなど専門医・かかりつけ医との連携の重要性を強調した。

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130mmol/L未満の低Na血症、積極補正vs.標準ケア

 入院患者の低ナトリウム(Na)血症は、転倒や認知機能障害、死亡のリスク上昇と関連することが知られている。しかし、Na値の補正による臨床アウトカムの改善効果は不明である。そこで、Julie Refardt氏(スイス・バーゼル大学病院/オランダ・エラスムス医療センター)らの研究グループは、Na値の積極的な補正が30日以内の死亡または再入院に及ぼす影響を検討することを目的として、多施設共同無作為化比較試験「HIT試験」を実施した。その結果、慢性低Na血症を有する患者に対し、標的介入による積極的な補正を行っても、標準ケアと比較してリスクは低下しなかった。本研究結果は、NEJM Evidence誌2026年3月号に掲載された。 本研究は、欧州5ヵ国9施設で実施された。対象は、血漿Na値が130mmol/L未満の慢性の低Na血症を有する18歳以上の入院患者2,173例とした。対象患者は、専門チームによる連日の評価に基づいて原因疾患に応じた段階的な治療(水分制限、経口尿素、トルバプタンなど)を行う標的介入群(1,079例)、主治医の裁量による治療を行う標準ケア群(1,094例)に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日以内の死亡または再入院の複合アウトカムとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:63~81)、男性の割合は48%であった。ベースライン時の血漿Na値の中央値は127.0mmol/L(IQR:124.0~128.0)であった。重度の低Na血症(120mmol/L未満)の割合は6.2%であった。・治療期間中の血漿Na値の最大変化量(平均値±標準偏差)は、標的介入群10.0±5.6 mmol/L、標準ケア群8.7±5.6mmol/Lであった。・血漿Na値が正常値(135~145mmol/L)に到達した割合は、標的介入群60.4%に対し、標準ケア群46.2%であり、標的介入群が有意に高かった(絶対差14.3%、ハザード比:1.54、95%信頼区間[CI]:1.37~1.74)。・主要評価項目の30日以内の死亡または再入院の複合の発生は、標的介入群20.5%、標準ケア群21.8%であり、両群間に有意差は認められなかった(推定絶対差-1.3%、95%CI:-4.9~2.2、p=0.45)。・30日死亡率は両群共に8.0%であった。30日以内の再入院は、標的介入群13.2%、標準ケア群で14.1%であった。・両群の患者を統合したpost-hoc解析において、退院時に血漿Na値が正常値に到達していた集団は、未到達の集団と比較して30日以内の死亡または再入院の複合のリスクが低かった(オッズ比:0.74、95%CI:0.60~0.91)。・入院期間中央値は両群共に7日であった。また、退院時および30日時点の神経認知機能評価、QOL、転倒・骨折についても両群間で差はみられなかった。・過剰補正(24時間で12mmol/L超、または48時間で18mmol/L超の上昇)は標的介入群2.3%、標準ケア群1.4%に観察されたが、両群間に有意差はみられなかった。浸透圧性脱髄症候群はいずれの群でも観察されなかった。 本研究結果について、著者らは「慢性低Na血症を有する入院患者において、多角的な標的介入による積極的な補正は、標準ケアと比較してNa値の正常化を向上させたものの、30日以内の死亡や再入院といった臨床アウトカムの改善には寄与しなかった」とまとめた。また「本結果は慢性低Na血症を治療しない理由として解釈されるべきではなく、入院中の強化治療が、必ずしも短期的な予後やQOLの改善に結びつかないことを示唆するものである」と考察している。

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腎機能はアルツハイマー病血液バイオマーカーに影響するが認知症リスクとは関連しない

 アルツハイマー病(AD)関連の血液バイオマーカー(BBM)は脳病理を反映するだけでなく、腎機能低下によって変動することが知られている。ただし、その変動がクリアランスの低下によるものなのか、脳病理の変化を意味するものなのかは明らかにされていない。また、認知症リスクと腎機能との関連については矛盾するエビデンスが存在する。これらを背景に、カロリンスカ研究所(スウェーデン)およびストックホルム大学(同)のFrancesca Gasparini氏らは、同国で進行中の60歳以上の一般住民を対象とする加齢と介護に関する縦断研究(SNAC-K)のデータを用いた検討を実施。結果の詳細が「Neurology」に12月3日掲載された。 SNAC-K参加者のうちベースラインで認知症がなくデータ欠落のない2,279人(年齢中央値72歳〔四分位範囲61~81〕、女性62%)を解析対象とした。このうち24%が腎機能障害(血清クレアチニンに基づくeGFRが60mL/分/1.73m2未満)を有していた。 腎機能障害の有無で二分し各群のBBMの中央値を多変量分位点回帰分析で比較すると、全てに有意差が認められ、いずれも腎機能障害を有する群が高値(Aβ42/40は低値)だった。3次スプライン解析からは、eGFRとBBMのzスコアとの間に非線形の関連が示され、特に神経フィラメント軽鎖(NfL)はeGFRと強く関連していた。例えばeGFRが30mL/分/1.73m2のとき、NfLのzスコアに1標準偏差近くの差が認められた(β=0.88〔95%信頼区間0.80~0.95〕)。またNfLほど顕著ではないものの、eGFRが30mL/分/1.73m2に低下している場合、p-tau181(β=0.22〔同0.09~0.35〕)、p-tau217(β=0.20〔0.10~0.31〕)、t-tau(β=0.24〔0.05~0.42〕)、GFAP(β=0.10〔0.03~0.16〕)にも有意差が観察された。 この集団を最長16年(平均8.3±4.3年)追跡したところ、362人が新たに認知症を発症していた。100人年当りの認知症発症率は、腎機能障害のない群が1.46(1.28~1.67)、腎機能障害を有する群が3.72(3.16~4.39)と後者が高かったが、交絡因子(年齢、性別、BMI、教育歴、心臓脳血管疾患、APOEε4など)を調整後、有意なリスク差は認められなかった(ハザード比〔HR〕0.93〔0.72~1.21〕)。各BBMと認知症発症リスクの関連を腎機能障害の有無で層別化した検討では、NfLについては腎機能障害群において、より強い関連が認められた(腎機能障害のない群ではNfL低値に対して高値でHR1.84〔1.34~2.53〕、腎機能障害を有する群ではHR3.85〔1.87~7.95〕、交互作用P=0.064)。 Gasparini氏は、「腎機能の低下が認知症発症リスクを高めるという関連は見られなかったが、AD関連のBBMが高い人では腎機能障害が認知症の発症を促進する可能性が示された」と述べている。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q161

高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧Q161近年注目され始めており、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』でも取り上げられた高血圧の新しい表現型である起立性高血圧。その定義は?

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治療抵抗性高血圧症の新たな治療法「腎デナベーション」、適正使用指針も公表

 治療抵抗性高血圧症の新たな治療法として、日本メドトロニックの「Symplicity Spyral腎デナベーションシステム」*1ならびに大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」*2が、2026年3月1日に保険適用を取得し、順次発売された。*1:2025年9月1日に製造販売承認を取得、2026年3月1日発売*2:2025年8月25日に製造販売承認を取得、2026年3月2日発売 いずれのシステムも対象患者は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症で、2025年8月に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』においても、腎デナベーションは治療抵抗性高血圧に対する補助療法として新たな治療選択肢となり得ることが明記されていた(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B、合意率:100%)。 本システムの発売に先駆け、2026年2月4日に日本循環器学会などがホームページにて『腎デナベーションシステムの適正使用指針』を公開しており、以下に本指針で示された適応、患者条件を抜粋して示す。―――――――――――――――――――1. 適応(承認適応) 本品は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症患者の追加的治療として血圧を低下させるために使用する。※治療抵抗性高血圧の定義は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに基づく2. 患者条件(以下の条件を全て満たす患者) 腎デナベーション治療は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに準じて、生活習慣の改善と降圧薬の服薬指導など適切な治療を受けているにもかかわらず、血圧コントロールが不良である高血圧症患者の血圧管理を目的としているものであり、適応は高血圧症患者の病態を高血圧腎デナベーション治療(HRT:Hypertension Renal denervation Treatment)チームが多職種連携して検討の上、決定する。 本治療に適正な患者選択を行うため、別紙1に示す腎デナベーション治療適正使用チェックリストを用いてスクリーニングを行うこと。(1)血圧コントロール不良を判定する前に確認すべき事項生活習慣修正状況、服薬アドヒアランス関連状況、降圧薬の適切な処方、正しい血圧測定と降圧目標の理解、二次性高血圧の除外(2)コントロール不良の血圧基準(選択基準) (i)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつABPMで24時間血圧が130/80mmHg以上、若しくは昼間血圧が135/85mmHg以上、又は夜間血圧が120/70mmHg以上 又は  (ii)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつ早朝若しくは就寝前家庭血圧が135/85mmHg以上、又は夜間家庭血圧が120/70mmHg以上 (3) 治療抵抗性高血圧(選択基準) 利尿薬を含む異なったクラスの3剤以上の降圧薬治療でコントロール不良の高血圧 ただし利尿薬以外の降圧薬は原則、最大忍容量を用いる。(4)腎デナベーションが不適格な患者(除外基準)・腎動脈瘤、腎動脈狭窄や治療に不適格な腎動脈の解剖学的構造を有する患者(造影CT評価を基本とする)・eGFR<40mL/min/1.73m2・添付文書の禁忌、禁止事項に該当する患者――――――――――――――――――― このほか、施設条件、施行医師条件などは適正使用指針を参照されたい。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー6(TRPC6)の阻害は筋ジストロフィーのみならず巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の治療にも有効(解説:浦信行氏)

 FSGSは糸球体の一部に硬化が見られる疾患でネフローゼ症候群を示す。難治性であり、腎生存率は10年では85.3%、20年では33.5%となり、3人に1人が末期腎不全となって腎臓を失う。日本における患者数は約7,000人と推定されているが、現在FSGSに対する特異的な治療法はない。しかし、最近病態の一部が明らかにされ、TRPC6が注目されている。 これの経口阻害薬であるBI 764198の第II相試験の結果が報告され、約40%の症例で尿蛋白が25%以上の減少を示した。その詳細は本年2月5日配信のCareNet.comに紹介されているので参照されたい。FSGSの病態の一部はTRPC6が上昇してポドサイトの細胞内Caが上昇し、ポドサイトが糸球体基底膜から脱落してポドサイトの減少を招き、糸球体の瘢痕化と尿蛋白漏出を招く。この病態に対応するものがTRPC6阻害薬で、詳細は省くがデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬としても注目されている。マウスを用いた腎の基礎研究においてTRPC6阻害は炎症細胞、内皮細胞、線維芽細胞の転写プログラムを変化させることが機序の一部と考えられている。この試験では忍容性は良好で、有害事象の頻度はプラセボ群と差はなかったとのことである。しかし、実薬投与46例中ECGでのQT延長と水晶体混濁が各々1例あったことがやや気になる。

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蛋白尿の進行が認知機能低下と独立して関連

 慢性腎臓病(CKD)患者を対象とした前向きコホート研究により、CKDの重症度が認知機能障害の発症リスク上昇と関連し、とくに蛋白尿の進行が注意力・処理速度および実行機能の低下と独立して関連することが、米国・Tulane University School of Public Health and Tropical MedicineのZhijie Huang氏らにより示された。JAMA Network Open誌2026年2月17日号掲載の報告。 これまでの研究により、CKDが認知症や認知機能低下のリスク因子となる可能性が指摘されているが、CKD患者のみを対象に前向きに検討した研究は限られている。そこで研究グループは、推算糸球体濾過量(eGFR)の低下と尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)の上昇が認知機能障害の発症率上昇と関連するという仮説を立て、eGFRおよびUPCRに基づくCKD重症度と認知機能障害の発症との関連を検討した。 対象は、Chronic Renal Insufficiency Cohort(CRIC)研究に2003~08年および2013~15年に登録された21~79歳のCKD患者5,607例であった。ベースラインで認知機能障害を有する患者は除外した。統計分析は2024年8月~2025年12月に実施した。 認知機能は、全般的認知機能をModified Mini-Mental State Examination、言語記憶・遅延再生をBuschke Selective Reminding Test、注意力・処理速度をTrail Making Test A、実行機能をTrail Making Test Bで年1回または2年ごとに評価した。各検査において、ベースライン時のコホート全体平均から1SD以上低い値を示した場合を認知機能障害の発症と定義した。Cox比例ハザードモデルを用い、人口統計学的因子や生活習慣、臨床因子を段階的に調整して解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・参加者5,607例のうち、男性は3,159例(56.3%)、平均年齢は59.6歳(SD 10.8)、追跡期間中央値は各検査で4~6年であった。・対数変換したUPCRが1SD上昇するごとに、注意力・処理速度障害のリスクは21%増加し(ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.05~1.41、p=0.01)、実行機能障害のリスクは16%増加した(HR:1.16、95%CI:1.02~1.31、p=0.02)。・eGFRが1SD低下するごとに、注意力・処理速度障害のリスクは21%増加した(HR:1.21、95%CI:1.05~1.38、p=0.006)。・CKDステージ別では、G4~5はG1~2と比較して、注意力・処理速度障害リスクが54%増加した(HR:1.54、95%CI:1.05~2.27、線形傾向のp=0.03)。・UPCRと認知機能障害との関連はeGFRで調整した後も維持された一方、eGFRと注意力・処理速度との関連はUPCRで調整した後に大きく減弱した。・eGFRとUPCRを組み合わせた統合解析では、両方が最も進行した群(eGFRが60mL/分/1.73m2未満かつUPCRが150mg/g以上)は、基準群(eGFRが60mL/分/1.73m2以上かつUPCRが150mg/g未満)と比較して、全般的認知機能障害のリスクが38%増加し(HR:1.38、95%CI:1.05~1.82、p=0.003)、言語記憶・遅延再生障害のリスクが54%(HR:1.54、95%CI:1.08~2.19、p=0.02)増加した。・これらの関連は、年齢、性別、人種、糖尿病の有無にかかわらず一貫して認められた。 これらの結果より、研究グループは「CKDの重症度が認知機能障害の発症率増加と前向きに関連することが示された。これらの知見は、CKDの重症度が認知機能低下の危険因子であることを強調するものである」とまとめた。

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第282回 初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協

<先週の動き> 1.初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協 2.末期腎不全も緩和ケア対象に、診療報酬改定で/厚労省 3.在宅医療にメス 頻回訪問を抑制、報酬体系を大幅見直し/厚労省 4.急性期A・B新設で何が変わる? 入院基本料再編の全体像/厚労省 5.ナースコールからランサムウェアが侵入、患者情報1万人流出/日医大武蔵小杉病院 6.医療行為が刑事裁判に 赤穂市民病院手術事故、指導体制も争点/神戸地裁 1.初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協中央社会保険医療協議会(中医協)は2月13日、2026年度診療報酬改定の内容を決定した。物価高騰と人件費上昇への対応を最重要課題に位置付け、診療報酬本体は3.09%引き上げられる。内訳は賃上げ対応1.70%、物価対応1.29%で、30年ぶりに「賃金・物価」を正面から評価する改定となった。外来では、初診料(291点)は据え置く一方で、再診料は1点引き上げられて76点とし、新設の「物価対応料」により初診・再診とも2点(20円)が加算される。これにより再診時は合計3点増となる。訪問診療でも物価対応料が上乗せとなり、いずれも1日単位で算定が可能とされた。さらに、今後の物価上昇を見据え、2027年6月以降は物価対応料を原則2倍とする方針が示されている。賃上げを実施する医療機関を評価する「ベースアップ評価料」も拡充される。外来・在宅では、初診時17点、再診時4点を基本とし、すでに賃上げを行っている医療機関ではより高い点数が付く。入院ベースアップ評価料も最大250点まで拡大され、医師・看護師に加え、事務職員や看護補助者など幅広い職種を対象に処遇改善を促す設計となった。2027年度には評価水準をさらに引き上げる。今回の改定の特徴は、外来よりも入院医療を厚く評価する点にある。急性期一般入院料は機能に応じて約8~11%引き上げられ、救急搬送件数や全身麻酔手術件数など実績を重視した評価体系が導入される。多職種協働体制を評価する新加算や、救急・外科医療体制を支援する加算も相次いで新設され、地域の急性期拠点を明確に選別する方向性が打ち出された。その一方で、入院時の食費は1食40円、光熱水費は1日60円引き上げられ、患者負担は増加する。医療DXでは、生成AIの活用を前提に医師事務作業補助体制加算の人員基準を柔軟化するなど、実績と効率化を重視する評価が強まった。総じて2026年度改定は、「賃上げを実行する医療機関」「急性期・救急機能を担う病院」「DXで生産性を高める施設」を重点的に評価する構造となった。算定の可否により病院経営への影響差は大きく、各医療機関には自院の機能定位と戦略的な届出判断が求められる。 参考 1) 個別改定項目について(厚労省) 2) 物価高・賃上げ対応で初診・再診料ともに引き上げへ…中医協が診療報酬改定内容を決定(読売新聞) 3) 物価高に対応、初診2点・再診3点引き上げ 26年度診療報酬改定、入院評価を重点化(CB news) 4) 診療報酬加算引き上げへ 中医協が改定案答申 患者窓口負担も増(NHK) 2.末期腎不全も緩和ケア対象に、診療報酬改定で/厚労省2026年度診療報酬改定で、緩和ケアの評価対象が大きく見直される。これまで診療報酬上、主にがん患者に限られてきた緩和ケアについて、末期の腎不全患者や呼吸器疾患が新たに対象に加えられることが決まった。ただし、「緩和ケア病棟」の入院料としては末期腎不全のみであり、末期呼吸器疾患は緩和ケア診療加算・外来緩和ケア管理料で算定可能となった。背景には、がん以外の疾患では十分な緩和ケアが提供されてこなかったという課題がある。とりわけ、人工透析を中断した末期腎不全患者は、呼吸困難や意識障害、強い吐き気などの重い症状に直面することが多く、苦痛緩和の必要性が指摘されてきた。今回の改定では、透析療法の開始や継続が困難な終末期の腎不全患者を、診療報酬上も正式に緩和ケアの対象として位置付ける。あわせて、高齢者を中心に問題となっている多剤服用や重複投薬への対策も強化される。病棟に勤務する薬剤師が、転院・退院時に服薬状況や副作用リスクについて患者や家族に指導した実績を適切に評価する仕組みを整える。さらに、在宅医療では医師と薬剤師が同時に訪問し服薬指導を行った場合、半年に1回3,000円を算定できる「訪問診療薬剤師同時指導料」が新設される。国の調査では、半数近くが飲み忘れや飲み残しによる残薬を自宅に保管しているとされ、60歳以上でとくに多い傾向が確認されている。処方・調剤時に残薬を確認し、調剤量を調整する取り組みを評価することで、患者の安全確保と医療費の適正化につなげる狙い。厚生労働省は、6月からの改定施行を通じ、がん以外の疾患も含めた幅広い終末期医療と薬物療法の質向上を後押ししたいとしている。 参考 1) 末期腎不全患者を緩和ケア対象に 残薬対策も 26年度診療報酬改定(毎日新聞) 2) 緩和ケアの診療報酬 末期の腎不全患者など対象の方針 中医協(NHK) 3.在宅医療にメス 頻回訪問を抑制、報酬体系を大幅見直し/厚労省2月13日に答申された、2026年度診療報酬改定では、在宅医療、とりわけ訪問看護や訪問診療を巡る報酬体系が大きく見直される。焦点となっているのは、高齢者住宅や有料老人ホームに併設された訪問看護ステーションによる「頻回訪問」や、いわゆるホスピス型住宅での過剰請求への対応だ。厚生労働省は、同一建物で多数の入居者に短時間・高頻度で訪問看護を行い、高額な報酬を得ている事例が増えているとして、包括的な評価方式を導入する。ホスピス型住宅では、従来の出来高払いに代えて定額制の包括払いを新設し、1人当たり月80~90万円に上るケースがあった報酬水準は、最大でも45万円程度に抑えられる。出来高払いを選択した場合でも、多人数への頻回訪問では報酬が引き下げられ、20分未満の訪問は算定不可となる。訪問診療についても、必要性の乏しい頻回訪問を抑制する方向が示された。要介護度や重症度の低い患者への月2回以上の訪問は原則とせず、月1回を標準と位置付ける。がんなど重症患者の割合が低い医療機関では、管理料を低い区分に制限する仕組みとし、通院可能な患者は外来対応へ誘導する。24時間往診体制の評価も、自院完結型か他院連携型かで差を設け、実質的な関与が乏しい場合の報酬を抑える。さらに、在宅医療を担う病院・診療所には、災害時の業務継続計画(BCP)の策定が施設基準として義務化される。新規開設は2026年度から、既存施設も2027年5月末までに策定が求められ、地域の訪問看護や介護事業者、行政との連携を前提とする。今回の改定では、在宅医療の「量」から「質」への転換を明確にし、高齢者の囲い込みや過剰な医療提供を抑制する一方で、真に必要な在宅・終末期医療の持続可能性を確保する狙いがある。 参考 1) 「ホスピス型住宅」報酬引き下げ 訪問看護、厚労省6月から(共同通信) 2) 在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3) 高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 4) 在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 4.急性期A・B新設で何が変わる? 急性期医療の拠点化と実績重視/厚労省2026年度診療報酬改定では、急性期病院の入院基本料が大きく再編され、急性期医療の拠点化と実績重視の姿勢が鮮明になった。最大の特徴は、新たに創設された「急性期病院一般入院料A・B」である。急性期Aは1日1930点と、従来の急性期一般1より56点高く設定され、地域の基幹病院としての役割を強く評価する。急性期Bは1,643点だが、多職種7対1体制を整え「看護・多職種協働加算2(255点)」を算定すれば1,898点となり、急性期一般1を上回る水準に達する。従来の急性期一般入院料(1~6)も軒並み引き上げられ、とくに急性期一般1は1,874点へと大幅に増点された。結果として点数序列は「急性期A、次いで多職種体制を整えた急性期B、その下に急性期一般1」という構図が明確になった。単なる看護配置だけでなく、多職種協働体制の整備が収益に直結する設計となっている。さらに、総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合した「急性期総合体制加算」が新設された。最上位区分では入院7日以内に530点が上乗せされて、救急・高度医療を担う病院への重点配分が強化される。加えて、物価高への対応として入院でも物価対応料が加算され、2027年以降は原則倍増する見通し。今回の改定は、急性期病院に対し「どの機能を担い、どの水準を目指すのか」という戦略的選択を迫る内容であり、届出の有無が経営に大きな差を生む改定となった。 参考 1) 急性期Aは1,930点、多職種7対1急性期Bは1,898点、急性期1と多職種7対1急性期4は1,874点(Gem Med) 2) 地域包括医療病棟を「3,367-3,066点」の6区分に細分化、ADL低下割合などの基準柔軟化も(同) 3) 2026年度診療報酬改定の詳細が決定 急性期の病院機能を報酬で明確化へ(日経メディカル) 5.ナースコールからランサムウェアが侵入、患者情報1万人流出/日医大武蔵小杉病院日本医科大学武蔵小杉病院(川崎市、372床)は2月13日、ランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、患者約1万人分の個人情報が外部に流出したと公表した。流出したのは氏名、性別、住所、電話番号、生年月日、患者IDなどで、病名・病歴や電子カルテ、クレジットカード情報の漏洩は現時点で確認されていない。攻撃者は身代金として1億ドル(約150億円)を要求しているが、病院側は支払いに応じない方針を示している。病院によると、2月9日午前1時50分頃、病棟のナースコール端末が正常に作動しなくなり、システム障害が発覚。調査の結果、ナースコール用サーバーがランサムウェアに感染していたことが判明した。侵入経路は、医療機器保守用に設置されていたVPN装置とみられ、パスワード管理が脆弱だった可能性があるという。11日には攻撃者側とみられるサイト上で、患者情報の一部流出が確認された。診療体制への直接的な影響はなく、外来・入院・救急はいずれも通常通り継続している。ただし、ナースコールは完全復旧に至っておらず、看護師の増員や病室巡回の強化で安全確保を図っている。同院は、厚生労働省や文部科学省に報告し、神奈川県警に被害届を提出。対象患者には個別通知を開始し、相談窓口も設置した。今回の事案は、医療機関における周辺システムやVPN管理の脆弱性が、診療データ以外からも大規模な情報漏洩につながり得ることを示した。医療DXが進む中、電子カルテ以外を含むシステム全体のセキュリティ点検、BCPやインシデント対応体制の再確認が、改めて医療現場に突き付けられている。 参考 1) 当院へのサイバー攻撃による個人情報漏洩に関するご報告とお詫び(第日本医科大学武蔵小杉病院) 2) 患者1万人分の個人情報漏洩 日医大武蔵小杉病院にサイバー攻撃(朝日新聞) 3) 日本医科大武蔵小杉病院にサイバー攻撃 患者約1万人の情報漏洩(日経新聞) 4) またもVPNからランサム被害、日本医科大学武蔵小杉病院で約1万人の情報漏洩(日経クロステック) 6.医療行為が刑事裁判に 赤穂市民病院手術事故、指導体制も争点/神戸地裁兵庫県赤穂市民病院で2020年1月、腰椎手術中に患者の神経を損傷し重い後遺障害を負わせたとして、当時の執刀医の男性(47)が業務上過失傷害罪に問われた事件で、神戸地裁姫路支部は2月9日、初公判を開いた。被告は起訴内容をおおむね認め、「詳細は被告人質問で答える」と述べ、弁護側も「罪が成立することは争わない」とした。医師の医療行為が刑事裁判で審理されるのは異例とされる。起訴状などによると、被告は女性患者(80)の腰椎の一部を切除する手術で、出血が多く患部の視認が困難な状況にもかかわらず十分な止血を行わず、威力の高い医療用ドリルで骨を削る操作を継続。誤って神経(脊髄・馬尾周辺)を切断し、両下肢麻痺など全治不能の後遺障害を負わせたとされる。検察側は、「科長から止血を促されても血を吸引しただけで手技を続けた」と指摘し、「事故は容易に予見できた」と過失の程度を強調した。その一方で、弁護側は「手術は1人で遂行できず、経験の浅い被告だけに責任を負わせるのは相当でない」と主張。証人として出廷した指導医は止血を勧めたが執刀を止めなかった経緯を説明し、「1分1秒でも早く交代していればよかった」と後悔を口にした。この事故を巡っては民事でも、被告と赤穂市に約8,800~8,900万円の賠償を命じた判決が確定している。病院側は医療過誤と認定。被告が着任後約半年で関与した手術で医療事故が複数(後遺障害8件、計11件とも報道)起き、2人が死亡したとされる点も、管理体制を含めた再発防止策が問われている。公判では証拠として手術映像も法廷で取り調べられ、被害者側親族が被害者参加制度で出廷した。今後、被告人質問や求刑・弁論を経て結審する見通しで、量刑判断とともに、指導医の関与や病院の教育・監督体制が争点となる。医療安全と人材育成の両面で、現場に突き付けられた課題は重い。 参考 1) 赤穂市民病院の医療過誤 執刀医の男、起訴内容認める 神戸地裁姫路支部で初公判(神戸新聞) 2) 手術で重い障害残る医療過誤…業務上過失傷害罪の初公判で赤穂市民病院の元医師認める(読売新聞) 3) 市民病院医療事故多発 被告医師「私一人だけ悪いとなるのはおかしい」(赤穂民報)

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腎不全リスク別にみたSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性

 2型糖尿病患者において、腎不全リスクの高低によるSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の腎不全や心血管アウトカムを調査した結果、GLP-1受容体作動薬は腎不全の中等度リスクの患者に、SGLT2阻害薬は高度リスクの患者にそれぞれより有益である可能性が、米国・ユタ大学のSydney E. Hartsell氏らによって報告された。Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。 研究グループは、2018年1月1日~2021年12月31日にSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(非エキセンジン系)またはインスリン グラルギンのいずれかを新たに開始した2型糖尿病を有する米国退役軍人コホートを用いて観察研究を行った。対象は16万428例で、治療確率逆重み付けを用いてベースライン特性のバランスを調整し、2023年3月31日までの追跡データを用いて各薬剤の新規使用者間でアウトカムを比較した。評価項目には、腎不全(慢性腎臓病のステージ5または腎代替療法)、主要心血管イベント(MACE[心不全、心筋梗塞、脳卒中])、心血管・腎・代謝(CKM)複合エンドポイント(腎不全またはMACE)、全死因死亡、死亡を含む複合アウトカムが含まれた。また、将来の腎不全発症リスクを推定する腎不全リスク方程式(Kidney Failure Risk Equation:KFRE)スコアを用いて、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性の差が腎不全リスクの高低によって異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・新規に使用開始した薬剤は、SGLT2阻害薬が53%、GLP-1受容体作動薬が14%、インスリン グラルギンが34%であった。・SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の死亡リスクは同程度であったが、SGLT2阻害薬群で腎不全リスクが低下する傾向にあった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06)。・SGLT2阻害薬群では、GLP-1受容体作動薬群と比較してMACE(HR:1.14、95%CI:1.09~1.20)およびCKM複合エンドポイント(HR:1.13、95%CI:1.08~1.19)の発生リスクが有意に高かった。・中等度の腎不全リスク(KFRE 2~6%未満)の患者ではGLP-1受容体作動薬が腎不全、MACEおよびCKM複合エンドポイントに対してより保護的であることが示唆された一方で、高度の腎不全リスク(KFRE 6%以上)の患者ではSGLT2阻害薬がより保護的であることが示唆された。

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コルヒチンによる死亡例発生、適正使用を呼びかけ/PMDA

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2月6日、「痛風発作の緩解及び予防」および「家族性地中海熱」の効能・効果を有するコルヒチン錠(商品名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)の適正使用のお願いを、同機構ホームページの「製薬企業からの適正使用等に関するお知らせ」で公開した。 2026年1月31日までに国内において、承認された用法・用量の範囲(1.8mg)を超える高用量を投与後に死亡に至った症例が報告されたことから、改めて添付文書の「効能又は効果」および「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」などの関連項目を確認するとともに、下記の留意点を踏まえ適正に使用するよう呼びかけている。<留意点>――――――――――――――●コルヒチンの1日量1.8mgを超える高用量投与により、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害など)をきたし、死亡に至る可能性があります。●1日量1.8mgを超える用量については、臨床上やむを得ない場合を除き投与は避けてください。●「痛風発作の緩解」の目的で本剤を使用した場合は、疼痛が改善したら速やかに中止してください。●患者が自身の判断で1日量3錠を超える用量を服用しないよう指導してください。――――――――――――――――――― また、本剤の禁忌(肝臓または腎臓に障害のある患者で、肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤またはP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の患者)についても併せて注意喚起した。添付文書での痛風発作緩解の1日量 添付文書における「痛風発作の緩解」の場合の用法及び用量は「1日3~4mgを6~8回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」とされているが、用法及び用量に関連する注意において「投与量の増加に伴い、下痢等の胃腸障害の発現が増加するため、1日量は1.8mgまでの投与にとどめることが望ましい」と記載されている。 なお、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)でも「低用量コルヒチン投与法が推奨される」および「コルヒチンは発症12時間以内に1mg、その1時間後に0.5mgを投与する」と示されている。

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ロジスティック回帰分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第61回

ロジスティック回帰モデルの基本的な考え方 その2オッズ比(odds ratio:OR)はロジスティック回帰モデルにおいて、ある事象の起こりやすさが説明変数の影響によって、どの程度変化するかを示す重要な指標として用いられます。今回は前回のオッズの解説に引き続き、ORについて説明します。オッズは「ある事象が起こる確率と起こらない確率の比」であり、Aという事象が起こる確率をp(A)とした場合、事象Aのオッズはでした。ORは2つの群のオッズの比であり、事象Aがある群で起こる確率をp(A)、別の群で起こる確率をq(A)とした場合、となり、ORの取りうる値の範囲はオッズと同様に0から∞になります(連載第60回参照)。ここからは、ロジスティック回帰モデルの考え方の説明に戻ります。前回解説したように、ロジスティック回帰モデルの基本的な形は、以下のような数式で表されます。今回も、われわれのResearch Question(RQ)を題材に具体的な事例で解説します(連載第60回参照)。たとえば、「厳格低たんぱく食の遵守あり」という事象Aの起こりやすさを、対象患者特性の1つである、糖尿病(DM)の有無でORを用いて比較することを考えてみます。DMありの場合に事象Aの起こる確率がp(A)、DMなしの場合の事象Aの起こる確率がq(A)だとした場合、そのロジットはそれぞれ下記の数式になります(連載第60回参照)。次に求めるのは、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)です。高校の数学で習った次の公式を用いると、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、下記のように計算できます。ORの値の取りうる範囲はオッズと同様に0から∞ですが、その対数(log OR)をとることで-∞から∞の範囲の値として扱えるようになります。上記の式のとおり、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、DMあり・なしの項以外はすべて相殺されて、DMの項の回帰係数b1となります。また、これも高校の数学で習った次の公式より、xの自然対数をyとした場合、xは自然対数の底eのy乗となります。したがって、DMの有無による事象AのORは、eb1として、計算で求めることができるのです。では、この計算式から得られるORはどのように解釈できるでしょうか。ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析により、交絡因子を調整して算出されたORは「調整OR」です。これは、注目している説明変数(DMの有無)以外の交絡因子(年齢、性別、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値)の影響を統計学的に制御し、それらがすべて同一であるとみなした条件下で、注目している説明変数(DMの有無)のみが変化した場合の事象AのORを示しています。そのため、単純な2群比較で求めたORよりも、交絡となりうる要因の影響をある程度取り除いた、より信頼性の高い指標として解釈できます。

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