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聖路加GENERAL 【内分泌疾患】

第1回「脳卒中から自殺未遂まで」第2回「消化性潰瘍、高血圧、便秘から見つかった内分泌疾患」第3回「あなたのせいではありません」 第1回「脳卒中から自殺未遂まで」内分泌疾患は発見が難しいと言われています。それは、ホルモンを産生する場所に症状が現れるとは限らないからです。他の疾患と間違って診断をされて、発見が遅れることもしばしばあります。まずは、次の症例の状況からどのように内分泌疾患を見つけ出せるかを考えてみてください。・朝、床に倒れているところを家族に発見された女性は、右足に麻痺もあり、脳梗塞疑いで入院した。・呼吸苦と下肢の浮腫で内科を受診した女性は、心不全疑いでラシックス静注し、帰宅した。・周囲とのトラブルが多く、自殺未遂まで起こした女性は、動悸、胸痛で検査を受けたが、問題なく、経過観察になった。ここでまず重要なのは問診です。内分泌疾患の症状は、なかなか患者自身が訴えることがありませんから、積極的に訊くことが診断の第一歩です。問診の際、どのような症状から疑うのか、どのような手順で診断するのか、どのような治療をすればよいのかを、症例をもとに具体的に解説します。第2回「消化性潰瘍、高血圧、便秘から見つかった内分泌疾患」「ある女性患者は、10年前からさまざまな症状に悩まされ、入退院を繰り返していた。大腿骨頚部骨折をきっかけに骨粗鬆症の検査を受けたところ、副甲状腺機能亢進症と診断。結局、10年間に発症した消化性潰瘍や膵炎は、副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症が原因だったことがわかった」副甲状腺の異常を見つけるためには、カルシウムを測るのが最も簡単な方法です。ところが、一般の健康診断の項目にカルシウムが入っていることは少ないようです。アメリカでは、カルシウムを標準的に測るようにしてから、副甲状腺機能亢進症が7倍も多く見つかったというデータがあります。副甲状腺異常を発見・治療するための勘所を解説します。第3回「あなたのせいではありません」第3回は甲状腺機能低下症について解説します。第1回の甲状腺機能亢進症と同様に、重要なのは問診です。「禁煙したら太ってキーボードが打てなくなった男性」、「言葉がはっきりしなくなったアルコール性肝障害患者」、「両手にしびれが出てきた欝患者」など、今回はさらにバラエティに富んだ症例が出ますが、このような状況から、内分泌疾患をどのように見つけ出せばよいでしょうか。特に、最近急増しているうつなどの精神疾患の中にも内分泌疾患が隠れている場合があります。どのような症状から疑うのか、そして診断の手順、治療法について症例をもとに具体的に解説します。

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プライマリ・ケアでの肺塞栓症の除外、WellsルールとDダイマー検査の併用が有用/BMJ

 プライマリ・ケアでの肺塞栓症の除外診断において、Wellsルールとポイント・オブ・ケア診断としてのDダイマー検査を併用するアプローチは安全で効果的な方法であることが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのGeert-Jan Geersing氏らが実施したAMUSE-2試験で示された。原因不明の息切れや胸膜炎性胸痛は診断が困難な症状であり、これらの患者と最初に遭遇するプライマリ・ケア医は気道感染症などの自己管理が可能な一般的な疾患と、肺塞栓症のような生命を脅かす疾患を鑑別する必要に迫られる。WellsスコアとDダイマー検査の併用により、肺塞栓症が疑われる患者の約3分の1が安全に除外可能なことが分かっているが、プライマリ・ケアにおける有用性は検証されていなかったという。BMJ誌2012年10月27日号(オンライン版2012年10月4日号)掲載の報告。プライマリ・ケアにおける有用性を前向きコホート試験で検証 AMUSE-2(Amsterdam Maastricht Utrecht Study on thrombo-Embolism)試験は、プライマリ・ケアにおいて肺塞栓症を安全に除外する診断戦略として、Wellsルールとポイント・オブ・ケア診断としてのDダイマー検査の併用の有用性を検証するプロスペクティブなコホート試験。 2007年7月1日~2010年12月31日までにオランダの3都市(アムステルダム、マーストリヒト、ユトレヒト)のプライマリ・ケア施設を受診した18歳以上の肺塞栓症疑いの患者598例を対象とした。 Wellsルールの7項目について患者の病態をスコア化し、Dダイマー検査を実施した。診断は個々の施設の基準に従って行われた。スパイラルCTおよび3ヵ月のフォローアップなどによる複合的な標準的基準に準拠して、肺塞栓症を確定または否定した。偽陰性率1.5%、感度94.5%、特異度51.0% 73例(12.2%)が肺塞栓症と確定された。「Wellsスコア≦4かつDダイマー検査陰性」を閾値とすると、598例中272例が「低リスク」と判定された(有効率:45.5%)。低リスク判定例のうち4例が実際には肺塞栓症だった[偽陰性率:1.5%、95%信頼区間(CI):0.4~3.7]。 この併用診断アプローチの感度は94.5%(95%CI:86.6~98.5%)、特異度は51.0%(同:46.7~55.4%)だった。 著者は、「プライマリ・ケアでは、『Wellsスコア≦4かつDダイマー検査陰性』を判定基準とすれば、肺塞栓症の安全で効果的な除外が可能と考えられる」と結論し、「今後は、この併用診断に基づく患者管理が、医療費や患者負担の軽減の観点から実行可能か否かを評価する必要がある」としている。

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第5回 損害の評価、素因減額:医師の責任を金銭にすると?

■今回のテーマのポイント1.身体損害の金銭への評価は、〔1〕治療費等積極的損害 +〔2〕逸失利益(消極的損害) + 〔3〕慰謝料で求められる2.不法行為の被害者が疾患を有する場合の損害額の減額方法として、逸失利益の減額(損害額の算定)と素因減額の方法がある3.良性疾患等回復可能な疾患においては、素因減額の方法をとる必要がある事件の概要患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷し、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去しました。創部の痛みが強かったため、2日後の同月25日にXは、A病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しましたが、心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたため、Y1医師は、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いと診断して精査加療のため、B病院に転院を指示しました。B病院転院後、医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。原審(熊本地裁)では、Y1医師、Y2医師が肺塞栓症を疑わなかったことに過失は認められないとして、Xの遺族の請求を棄却しました。これに対し、福岡高裁は、Y1医師、Y2医師の過失を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷したため、同日勤務終了後、近医を受診しました。レントゲン写真上、右膝に異物が認められたことから、異物の摘出を試みるも、うまくいかなかったため、A病院に紹介しました。同日夕方、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去し、ペンローズドレーンを留置し、外来フォローアップとしました。しかし、創部の痛みが強く、2日後の同月25日に患者X希望にてA病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、心電図を施行し、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しました。同日午前9時頃に内科(医師Y1)紹介受診したところ、先に施行した心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたことから、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いにて精査加療のため、B病院に転院することとなりました。同日午前10時頃にB病院に到着。医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。事件の判決判決では、遅くとも6月1日午前5時半頃の意識消失時(前医であるA病院入院時)には、Xが肺塞栓症を発症していたと認定し、「Y1医師が、Xの6月1日の意識消失等を虚血性心疾患によるものであると診断したのは、客観的には誤りであったものといわなければならない」とした上で、「もっとも、症状や心電図のみでは、肺塞栓症とその他の疾患、特に心疾患と鑑別診断することは極めて困難であるというのであるから、Y1医師が、6月1日午前9時ころまでにXにかかる上記のような所見を得ていたからといっても、Xが肺塞栓症に罹患していると診断することまで期待するのは無理である。とはいえ、急性肺血栓塞栓症においては、診断がつかず適切な治療が行われない場合には死亡の確率が高いこと、他方で、適切な治療がなされれば死亡率が顕著に低下することが知られていたのであるから、Y1医師としては、上記時点で、少なくとも肺塞栓症に罹患しているのではないかとの疑いを持つことが必要であり、それは十分可能であったといわなければならない」として、Y1が肺塞栓症を疑わず、その結果B病院転院時の診療情報提供書に肺塞栓症疑いと記載しなかったことを過失としました。Y2についても、「6月1日午後10時ころに至り、再び胸痛を訴えるに及び、また、その際行われた心電図検査の結果は、搬送された際に実施したものと同様に、肺塞栓症と考えても矛盾しないものであったということからすれば、遅くともこの時点では肺塞栓症を疑うべきであったといわなければならない」「しかるに、Y2医師は、上記Y1医師の診断結果を認識した後、もっぱらその疑いを念頭に置いて冠動脈造影検査、エルゴノビン負荷テストを施行したものであり、また、胸痛が持続する場合にはニトロペンを舌下投与すべき旨を指示しただけで、肺塞栓症を鑑別対象に入れることは6月2日朝に至るまでなかったというのであるから、この点につき、Y2医師には上記注意義務に違反した過失があるというべきである」として過失を認めました。その上で、「このような事情を考慮するならば、上記のとおり、Y1医師及びY2医師がともに過失責任を免れないとしても、直ちに全責任を負わしめるのはいかにも酷というべきである。そうであれば、結果に寄与したXの素因ないしは被害者(患者)側の事情として上記の諸事情を考慮し、上記不法行為と相当因果関係を有する損害額を一定の割合で減額するのが相当である」と判示し、過失相殺の法理を類推適用し、損害額の4割を控除し、約4,080万円の損害賠償責任を認めました。(福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁)ポイント解説不法行為責任が成立した場合、加害者は、当該過失によって生じた損害を金銭に評価した額を賠償する責任を負います。(1) 過失(2) 損害(3) (1)と(2)の間の因果関係↓不法行為責任成立↓生じた損害を金銭に評価↓当該評価額を賠償する責任を負う医療過誤訴訟においては、通常、「患者の死傷」が損害となります。この「人の死傷」という損害の金銭的評価は難しく、各国によって異なっているのですが、わが国においては、〔1〕積極的損害:入院・治療費、看護費用、交通費、葬祭費、弁護士費用等〔2〕消極的損害:逸失利益(被害者が生存していれば得たであろう利益(収入))〔3〕精神的損害:慰謝料の3つが認められることとなっています。この中で、最も高額となりがちなのが〔2〕の逸失利益であり、産科医療訴訟の賠償額が高額化する原因はここにあります(被害者の就労可能期間が最も長いため)。しかし、病院に治療に来る患者は、何らかの疾患を抱えています。したがって、たとえ医療過誤が発生し、患者が死亡した場合であっても、当該疾患により、就労不能であった場合には、逸失利益は“0”になります(損害額の算定の問題)。また、交通事故と被害者の疾患が競合して死亡という結果が生じた事案において、裁判所は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定※1を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである」(最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁)と判示しています。これは、「素因減額」と言われている考え方です。被害者が疾患を有していた場合の損害額の減額方法はこれら2つの方法がありますが、医療過誤訴訟においては、多くの場合、損害額の算定の方法で処理されています。たとえば、がん患者が医療過誤によって死亡した場合には、損害額の算定による方法では、「医療過誤がなかったとしても余命は○年であり、その間、就労することは不可能であるので逸失利益は認められない」となり、素因減額の方法では、「医療過誤とがんがともに原因となって死亡という損害を発生させており、加害者に損害の全部(健康な同年代と同額の逸失利益等損害)を賠償させることは公平を失するので、過失相殺の規定を類推適用して、損害額を減額する」となり、どちらの方法をとっても、結果として、同程度の損害額の減額が認められることとなります。しかし、進行がんなどの治療困難な疾患については、どちらの方法でも同程度の結果となりますが、本件のように、うまく治療がなされれば根治可能な良性疾患等に関しては結果が異なってきます。すなわち、「医療過誤がない」=「肺塞栓症と早期に診断」ができていれば、健康な状態で長期就労可能となりますので、損害額の算定の方法では、減額ができないからです。本判決では、Y1、Y2に過失があるといえるかはともかく、このような場合には、素因減額の方法をとり、損害額を減額することができるということを示した判決です。世界中で、民事医療訴訟を原因とした医療崩壊が生じており、その対応のため、無過失補償制度を各国が導入してきています。無過失補償制度を導入するにあたり、最大の鍵となるのが、補償額の多寡であり、訴訟を行った場合に得られる金額に近い額の補償額を給付しなければ、結局、訴訟が選択されてしまいます。逆相続※2を認めるわが国においては、損害賠償額が高額となるため、無過失補償制度の運営が困難といわれています。また、そもそも、医療提供体制においては、低額の皆保険制度をとっているにもかかわらず、紛争が生じると、他の一般民事事件と同様に高額な損害賠償額となるのは公平を失するといえます。今後、医療過誤訴訟は増加の一途をたどることが予想されます。訴訟による医療崩壊が生ずる前に速やかに無過失補償制度を作る必要があり、その前提として、素因減額の適用拡大が必要となるものと思われます。 ※1民法第722条2項:被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。※2子供が不法行為により死亡した場合に、子供の逸失利益を親に相続させること。子供が生存していた場合、親が子の財産を相続することは通常ないこと等から、EU諸国では認められていない。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁

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新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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心筋梗塞、女性は胸痛少なく、若年の院内死亡率は高率

女性の心筋梗塞は、男性に比べ胸痛のない割合が高く、若年での院内死亡率はより高いという特徴が明らかにされた。ただしこうした傾向は年齢によって変化し、65歳以上では、院内死亡率は男性のほうが高かった。米国・Watson Clinic and Lakeland Regional Medical CenterのJohn G. Canto氏らが、心筋梗塞の入院患者114万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22日合併号で発表した。胸痛のない心筋梗塞、女性が42%に対し男性は31%研究グループは、1994~2006年の心筋梗塞に関する全米の患者データベース、National Registry of Myocardial Infarctionに登録した、114万3,513人(女性48万1,581人、男性66万1,932人)について観察研究を行った。主要アウトカムは、胸痛のない心筋梗塞の予測因子と、年齢、性別と院内死亡率との関連だった。結果、胸痛のない心筋梗塞は、女性で42.0%(95%信頼区間:41.8~42.1)と、男性の30.7%(同:30.6~30.8)に比べ有意に高率だった(p<0.001)。この傾向は、年齢が若いほど顕著に認められた。女性の男性に対する、胸痛が認められない点に関する年齢毎の補正後オッズ比は、45歳未満で1.30(同:1.23~1.36)、45~54歳で1.26(同:1.22~1.30)、55~64歳で1.24(同:1.21~1.27)、65~74歳で1.13(同:1.11~1.15)、75歳以上で1.03(同:1.02~1.04)であり、性別と年齢の2要素の連関は、有意に胸痛のない心筋梗塞を予測した(P<0.001)。院内死亡率、54歳までは女性が、65歳以上は男性がそれぞれ高率院内死亡率は、女性が14.6%と、男性の10.3%より高率だった。若い女性で胸痛がない場合は、若い男性で胸痛がない場合に比べて院内死亡率は高く、年齢が上がるにつれてこの傾向は薄れ、55~64歳で同等にない、65~74歳と75歳以上では逆転した。胸痛がない場合の院内死亡に関する、女性の男性に対するオッズ比は、45歳未満が1.18(同:1.00~1.39)、45~54歳が1.13(同:1.02~1.26)、55~64歳が1.02(同:0.96~1.09)、65~74歳が0.91(同:0.88~0.95)、75歳以上が0.81(同:0.79~0.83)であり、性別と年齢、胸痛の3要素は、有意に死亡を予測した(p

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聖路加GENERAL 【Dr.香坂の循環器内科】

第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」第4回「ためらってはいけないCAB」 第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」地下鉄階段昇降時などに胸部圧迫感を感じるようになった50歳男性。他の領域の胸痛疾患に比べてリスクの高い場合が多い循環器疾患。まずは、この患者が循環器疾患かどうかを確かめることが重要です。胸痛の鑑別において大切なのは、1にも、2にも問診です。問診は、3つのポイントをおさえればOK。このような典型的な狭心症患者の他、顎が痛い、歯が痛いと訴えてくる患者さんも放散痛によるもので、実は心筋梗塞や狭心症だった、という非典型的な例もOPQRST3Aを使って解説していきます。また、胸痛においては、ACS(急性冠動脈症候群)という概念が重要になってきます。その診断方法についても詳しくお伝えします。第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」数年前から動悸を自覚していた44歳の男性。夜間に呼吸困難が出るようになり、起き上がってもすぐには改善しなくなってしまいました。呼吸困難の原因はさまざまですが、起き上がっても改善しないなど心疾患が疑われます。特に、発作性夜間呼吸困難や起座呼吸は、心不全である確からしさが高い症状です。頚静脈、心音などの身体所見、X線、心エコーなどの画像診断、血液検査として有用性の高いBNPによって心不全であるかどうかを確認した結果、この男性は心不全であることがわかりました。そして、その原因については驚くべき事実が・・・。III音の聞き分け方、薬剤の使い方については「北風と太陽」を引用するなど、香坂先生ならではのユニークな講義が展開されます。第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」長い間微熱が続いたため、病院を訪れた62歳の男性。健診で「心雑音がある」と言われましたが、スポーツもこなし元気に過ごしていました。心雑音をみたときには、まず経過観察でよいものか、それともすぐに処置が必要なものかを見分ける必要があります。最強点がどこにあるのか、収縮期か拡張期か、収縮期であれば駆出性か逆流性かという鑑別が重要になります。この患者は2年後に症状が出始め、重症のMRと診断され、手術を受けることになりました。重症のMRは、10年以内に死亡、または手術を実施する確率が90%と高く、フォローが重要となります。ポイントは、重症度によってスパンを短くして、心不全症状やEFの低下がないかなどを慎重に観察することです。また、僧帽弁、大動脈弁治療に関して、最新の弁膜症手術も紹介していきます。第4回「ためらってはいけないCAB」最近動悸がするということで診療所を訪れた32歳男性。待合室で診察を待っている時、突然倒れて心肺停止状態になってしまいました。今まで心肺停止というと、まずA(気道確保)、続いてB(人工呼吸)の後、C(心臓マッサージ)という手順が常識でしたが、ACLSのプロトコル改訂により、ABCからCABと変わってきました。すなわち、なにはなくとも即座に心臓マッサージを!ということです。そこで、本来求められる心肺蘇生法に対し、病院外で行われるCPRの現状や、心臓マッサージの基本原理をしっかりと見直していきます。また、改訂で変更された薬剤、その効果や投与のタイミングについても具体的に紹介します。心肺蘇生後は患者の状態をよくみて判断していくことが重要となりますが、具体的に何をすべきか、また、突然死を防ぐための方法、心電図から突然死の確率が高い疾患の読み方についてもご紹介します。

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新たな胸痛評価法により、低リスク患者の早期退院が可能に

ニュージーランド・クライストチャーチ病院のMartin Than氏らが新たに開発したADPと呼ばれる胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクが低く、早期退院が相応と考えられる患者を同定可能なことが、同氏らが行ったASPECT試験で示された。胸痛を呈する患者は救急医療部の受診数の増加を招き、在院時間の延長や入院に至る可能性が高い。早期退院を促すには、胸痛患者のうち主要有害心イベントのリスクが短期的には低いと考えられる者を同定する必要があり、そのためには信頼性が高く、再現性のある迅速な評価法の確立が求められている。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月23日号)掲載の報告。ADPの有用性を検証する前向き観察試験ASPECT試験の研究グループは、急性冠症候群(ACS)が疑われる胸痛症状を呈し、救急医療部を受診した患者の評価法として「2時間迅速診断プロトコール(accelerated diagnostic protocol:ADP)」を開発し、その有用性を検証するプロスペクティブな観察試験を実施した。アジア太平洋地域の9ヵ国(オーストラリア、中国、インド、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、タイ)から14の救急医療施設が参加し、胸痛が5分以上持続する18歳以上の患者が登録された。ADPは、TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)リスクスコア、心電図、およびポイント・オブ・ケア検査としてのトロポニン、クレアチンキナーゼ MB(CK-MB)、ミオグロビンのバイオマーカーパネルで構成された。主要評価項目は、初回胸痛発作(初回受診日を含む)から30日以内の主要有害心イベントの発現とした。主要な有害心イベントは、死亡、心停止、緊急血行再建術、心原性ショック、介入を要する心室性不整脈、介入を要する重度の心房ブロック、心筋梗塞(初回胸痛発作の原因となったもの、および30日のフォローアップ期間中に発現したもの)と定義した。感度99.3%、特異度11.0%、陰性予測値99.1%3,582例が登録され30日間のフォローアップが行われた。この間に、421例(11.8%)で主要有害心イベントが発現した。ADPにより352例(9.8%)が低リスクで早期退院が適切と判定された。そのうち3例(0.9%)で主要有害心イベントが発現し、ADPの感度は99.3%(95%信頼区間:97.9~99.8)、陰性予測値は99.1%(同:97.3~99.8)、特異度は11.0%(同:10.0~12.2)であった。著者は、「この新たな胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクがきわめて低く早期退院が相応と考えられる患者を同定した」と結論し、「ADPを用いれば、全体の観察期間および胸痛による入院期間が短縮すると考えられる。ADPの実行に要する個々のコンポーネントは各地で入手可能であるため、健康サービスの提供に世界規模で貢献する可能性がある。より特異度の高い評価法のほうが退院数を増加させ得るが、安全性重視の観点から感度に重きを置くべきであろう」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。妊娠高血圧腎症の入院患者における重篤なアウトカムの予測モデル研究グループは、入院後48時間以内の妊娠高血圧腎症女性患者における死亡あるいは生命を脅かす合併症のリスクの同定を目的としたfullPIERSモデルを開発、検証するプロスペクティブな多施設共同試験を行った。対象は、妊娠高血圧腎症で三次産科施設に入院した女性あるいは入院後に妊娠高血圧腎症を発症した女性であった。対象としたアウトカムは妊産婦死亡あるいは妊娠高血圧腎症の重篤な合併症であった。これらの有害なアウトカムを予測するために、段階的変数減少重回帰(stepwise backward elimination regression)モデルを用いて、定期的に報告された変数の解析を行った。モデルのパフォーマンスは受信者動作特性(ROC)の曲線下面積(AUC)で評価し、過適合(overfitting)の評価には標準的なブートストラップ法を用いた。直接的な患者ケアの変更が可能に妊娠高血圧腎症患者2,023例のうち261例が、入院後に有害なアウトカムを発現した[入院後48時間以内の発現は106例(5%)]。有害な妊産婦アウトカムの予測因子として、妊娠期間、胸痛/呼吸困難、酸素飽和度、血小板数、クレアチニン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値が確認された。fullPIERSモデルは、入院後48時間以内の有害な妊産婦アウトカムの予測に有用であった(AUC ROC:0.88、95%信頼区間:0.84~0.92)。過適合は認めず、パフォーマンスは7日目まで良好であった(AUC ROC>0.7)。著者は、「fullPIERSモデルは、有害なアウトカムのリスクが高い妊娠高血圧腎症患者を、合併症発現前の7日間において同定し、その結果として分娩のタイミングやケアの場所を変えるなどの直接的な患者ケアの変更が可能となった」と結論し、「臨床試験のデザインの改善や、妊娠高血圧腎症関連の生物医学的研究に多くの情報もたらすことも可能にした」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高尿酸血症治療薬アロプリノール、慢性安定狭心症患者の運動能を改善

痛風・高尿酸血症の治療薬として用いられているアロプリノール(商品名:ザイロリックなど)の高用量投与により、慢性安定狭心症患者の運動能が有意に改善することが、イギリスDundee大学Ninewells病院のAwsan Noman氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。実験的な研究では、キサンチンオキシダーゼ阻害薬は1回拍出量当たりの心筋酸素消費量を低下させることが示されている。このような作用がヒトでも起きるとすれば、アロプリノールなどこのクラスのキサンチンオキシダーゼ阻害薬が狭心症患者における心筋虚血の新たな治療薬となる可能性があるという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月8日号)掲載の報告。高用量アロプリノールの運動能改善効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験研究グループは、高用量アロプリノールによる慢性安定狭心症患者の運動能の延長効果について検討する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー無作為化試験を行った。イギリスの1病院と2診療所に、血管造影にて冠動脈疾患を認め、運動負荷試験で冠動脈の狭窄が確認された18~85歳の慢性安定狭心症患者(2ヵ月以上が経過)65例が登録された。これらの患者が、アロプリノール600mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、6週間の治療ののち治療法のクロスオーバーが行われた。主要評価項目はST低下までの時間とし、副次評価項目は総運動時間および胸痛発現までの時間とした。ST低下までの時間が43秒、総運動時間が58秒、胸痛発現までの時間は38秒有意に延長クロスオーバー前の6週間の治療においては、アロプリノール群に割り付けられた31例のうち28例が、プラセボ群の34例のうち32例が評価可能であった。クロスオーバー後の治療では、60例全例で評価が可能であった。ST低下までの時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの232秒から6週後には298秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は249秒までであり、有意な差が認められた(p=0.0002)。両群間の絶対差は43秒(95%信頼区間:31~58秒)であった。総運動時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの301秒から393秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は307秒までであり、有意な差を認めた(p=0.0003)。両群間の絶対差は58秒であった(95%信頼区間:45~77秒)。胸痛発現までの時間の中央値は、アロプリノール群が234秒から304秒へ、プラセボ群は272秒まで延長し、やはり有意な差が確認された(p=0.001)。両群間の絶対差は38秒であった(95%信頼区間:17~55秒)。治療に関連した有害事象は両群ともにみられなかった。著者は、「アロプリノールは、狭心症患者の運動能の改善薬として有用であり、安価で耐用性にも優れ高い安全性を有する可能性が示唆された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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急性胸痛でICU治療、入室時の仰臥位収縮期血圧が高いほど1年死亡リスクは低い

急性胸痛により集中治療室(ICU)で治療を受けた患者のうち、入室時の仰臥位収縮期血圧が高い人ほど、1年後の死亡リスクは低下するようだ。スウェーデンLinkoping大学医学健康科学部門のUlf Stenestrand氏らが、約12万人の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表した。ICU入室時仰臥位収縮期血圧を四分位範囲に分類Stenestrand氏らは、1997~2007年にかけて、急性胸痛によりICUで治療を受けた11万9,151人について、入室時の仰臥位収縮期血圧を調べた。研究グループは被験者を同血圧の測定値によって、「Q1:128mmHg未満」「Q2:128~144mmHg」「Q3:145~162mmHg」「Q4:163mmHg以上」の四分位範囲に分類し、1年後死亡率との関係について分析した。追跡期間の平均値は、2.47年(標準偏差:1.5年、範囲:1~10年)だった。「163mmHg以上」群の1年死亡リスクは、「128~144mmHg」群の0.76倍補正は、年齢、性別、喫煙、拡張期血圧値、入・退院時の降圧薬の服用、退院時の高脂血症薬と抗血小板薬の服用について行った。その結果、入室時の仰臥位収縮期血圧「Q4:163mmHg以上」が、1年死亡リスクが最も低く、「Q2:128~144mmHg」群に対するハザード比は0.76(95%信頼区間:0.72~0.80)だった。Q2群に対するハザード比は、「Q1:128mmHg未満」群では1.46(同:1.39~1.52)、「Q3:145~162mmHg」群は0.83(同:0.79~0.87)だった。Q2群と比べた1年死亡絶対リスクは、Q4群が21.7%、Q3群が15.2%それぞれ低かった一方、Q1群は40.3%高かった。Q4群と比較したQ2群の予後悪化の独立因子は、BMI、前歴にあり、狭心症、急性心筋梗塞に患者を限定した場合も、Q2群と比べたQ4群の1年死亡絶対リスクのハザード比は、0.75(同:0.71~0.80)と低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

平山先生は循環器内科医を20年経験後、総合診療科の道に入る。医師が自分の専門領域しか診察しない今の医療体制を変化させるべく、総合的に診察して患者さんのメンタル面を含む治療アプローチを実践。東京医科大学病院における「総合診療科」の設立に尽力し現在活躍中である。プライマリ・ケアの重要性から総合診療へ大学病院での初期研修は、通常各診療科目をラウンドしますが、それだけではプライマリ・ケアの習得は困難です。専門診療科のラウンドでは入院患者ばかりを診察、外来患者を診察することがほとんどありません。大部分の患者さんは既に診断がついています。しかし、多くの患者さんは「疾患名」ではなく「主訴」で病院の外来を訪れます。そこでは患者さんの訴えから病気を診断していく重要なプロセスがあります。「症候論」といってもいいし、「診断学」「診断推論」と言っても構いませんが、この初期の段階では幅広い知識と技術が必要です。そして、この研修にはプライマリ・ケアを扱う部門が必要となります。例えば、循環器内科をラウンドすれば心筋梗塞の入院患者さんを診察。しかし、この患者さんが病院を訪れたのは「胸が痛かった」からであり、実際にはこの「胸痛」という症候から正しく診断しなければならないわけです。「胸痛」を主訴とする患者は心臓が原因であれば循環器科、肺が原因でならば呼吸器科、肋骨骨折ならば整形外科、帯状疱疹ならば皮膚科、心因性の胸痛ならば精神科に紹介することもあるわけです。循環器医は心臓由来の胸痛ではないと診断するだけではなく、その患者の胸痛の原因がなんであるのかを推論、院内でたらい回しをせずに適切な診療科に橋渡しするべきです。だからこそ専門治療のスぺシャリストを目指ししている医師にもプライマリ・ケアの知識が必要なのです。幅広いジェネラリストの上にスペシャリストが立つのです。ジェネラリストとしての地固めをしないと良いスペシャリストにはなれません。以前は、プライマリ・ケアを学ぶ場はあまりありませんでした。アクセスのよい都心にある東京医科大学は市民病院的な役割も果たしており、紹介状の有無に限らず、単なる風邪や下痢で来院する患者さんも比較的多く、プライマリ・ケアを学ぶ環境が揃っていました。それも総合診療科が育った要因です。また、この領域では全国的に有名な大滝純司教授をお迎えすることが出来たのも幸運でした。なぜ総合診療なのか東京医科大学病院総合診療科設立のきっかけは新医師臨床研修制度の始まりでした。新制度の目的がプライマリ・ケアの習得であるので、当院では初期研修医に総合診療科のラウンドが義務付けられています。最近では後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており、総合診療科が役に立つ診療科目であることを研修医たちが認知し始めているのを実感しています。総合診療科は、文字どおり総合的に患者さんを診る診療科であり、患者さんが訴えている症状を読み取り、身体所見や検査所見を加味して推論した診断で次なる専門診療科への道筋をつけるチーム医療と同時に、専門医の手を煩わせることもない一般的な疾患(Common disease)は総合診療科で治療をしています。また、総合診療では専門診療科との連携を図りながら、プライマリ・ケアを通して診療のの基礎を固めることができます。ですから、総合診療科の役割のひとつは、研修医に病気を診るのではなく患者さんを診るという態度を身に付けさせることでもあるのです。例えば、MUS(Medically unexplained symptom:医学的に説明できない症状)を訴えてくる患者さんにはメンタルな要因も多いわけですが、そのときに身体疾患がみつからなくとも"症状"まで否定することなく、その症状を現す意味について、患者さんの社会的環境要因も考えるぐらいのことが医師の頭の中にないといけません。いわゆる「全人的医療」、つまり病気を診るのではなく患者さんを診ることの教育が必要なのです。診療科目が細分化されすぎて専門的な知識のみで症状を追うのではなく、幅広いプライマリ・ケアの知識を持った上での診察が求められています。東京医科大学病院の研修医にこの意識を持たせることも総合診療科の重要な役割です。総合診療科という立場への理解不足総合診療科として専門診療科の医師と連携がうまくとれているかと言えば、必ずしもそうではありません。それは臓器専門医にプライマリ・ケアが十分に理解されてないからだと思います。総合診療科は初期診療の担い手ですが、決してスーパーマンではないので、専門診療科で診ないと言った患者さんを何でも引き受けることが出来るわけではありません。極端な例を挙げれば、原発不明がんの患者さんは、いくつかの臓器にがんが見つかっても原発巣が同定されないと、どの診療科も主治医になろうとはせず院内でたらい回しにされてしまう危険があります。だからといってプライマリ・ケアの総合診療科がこのような患者を受け持つことは適切ではありません。現に専門診療科からの患者さんの押し付けで疲弊している総合診療科も多々あるように聞いています。また、総合診療の場合、各診療科目との連携が重要となるのでコミュニケーション能力は極めて重要です。しかし、連携を図るのが容易でない時があります。その場合相手の診療科に患者さんを押し付けるのではなく「一緒に診てほしい」「相談に乗ってほしい」とお願いする心がけを指導しています。連携をとる苦労はどこにでもあると思いますが、難しいですね。総合医の果たす役割今の医療体制では、患者さんが自ら診療科を探すことが多いため、自ら選んだ診療科では病気が分からず帰宅するケースがあります。その意味では総合診療科は医療の玄関口として、その先に専門性の高い医師に依頼して先端治療へ導くなど役割は大きいです。また、プライマリ・ケアを通して診療の基本を研修医に教えるのも総合医であり総合診療科の役割です。現在では、総合的に診療ができるジェネラリストが求められています。総合診療科を目指すドクターがもう少し多くならなくては、今の医療体制の変革には限界があると思います。英国では家庭医制度が確立されており、患者がいきなり総合病院や大学病院に行くことはまずありません。家庭医に診てもらってから専門医へ紹介され診療を受けます。そのため家庭医になるためのプログラムが確立しています。我々の総合診療科でも家庭医養成プログラムを用意しており、何人かの後期研修医がそのプログラムに則って研修しています。家庭医はメンタル面を含めた総合的な診察をします。家族全員を診るため、大人は内科、子どもは小児科などの振り分けを行わず、家族に同じ症状があれば家庭内での原因も探ります。家族全体を診ていくという姿は医療の理想のひとつの型でもあります。もし、そういう家庭医を大学病院でも育てていくとしたら総合診療科がなくてはできないと思います。総合医認定制度がスタート総合診療科がしっかりとプライマリ・ケアを実践するには、専門医に委ねるべき患者を臓器別専門科がしっかり請け負ってくれることが大切です。総合診療と専門診療がうまく連携できていれば、より少ない専門医でも病院は機能するはずですし、それが本来の病院の姿だと私は思っています。厚生労働省も総合医を推進、「総合医認定制度」を視野に入れて検討しているようです。日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会、日本家庭医療学会の3学会は、今春にひとつにまとまって総合医(家庭や総合診療医)の育成プログラムと認定に向けてすでに準備が進んでいます。この認定制度により、首都圏はもとより地域医療も大きく変化、そして患者さん側の医療に対する意識も変化していくでしょうね。多くの総合医(ジェネラリスト)が活躍すれば患者さんは単なる風邪や下痢などの一般的な疾患で大病院を受診することも少なくなり、医療費削減にもつながります。私は東京医科大学病院において、総合診療科の第一線で活動してきました。現在取材も多く、注目を浴びている診療科目です。ぜひ、総合医(ジェネラリスト)を目指す人が多くなることを期待します。質問と回答を公開中!

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高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(1)

急性心筋梗塞は死および身体障害の主要な原因の1つだが、一方で米国やヨーロッパでは毎年約1,500万人の患者が、胸痛など急性心筋梗塞様の症状を呈し救急治療部に搬送されている。そのため、急性心筋梗塞の迅速で信頼性の高い診断が求められるが、こうした臨床上のニーズはまだ十分に満たされていない。バーゼル大学病院(スイス)のTobias Reichlin氏らは、新しい診断法として期待される高感度心筋トロポニン測定法(4つの測定法)の精度について、標準測定法との比較で検討を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。718例の血液サンプルで新旧検査法を多施設盲検Reichlin氏らは、急性心筋梗塞が疑われる症状を呈し救急治療部を受診した718例から得られた血液サンプルを用いて、新しい高感度心筋トロポニン測定法を用いた診断の精度を検討する多施設共同治験を行った。心筋トロポニン・レベルは盲検形式で、4つの高感度測定法(アボット-Architect Troponin I、ロシュHigh-Sensitive Troponin T、ロシュTroponin I、シーメンスTroponin I Ultra)と標準測定法(ロシュTroponin T)を用いて判定した。最終診断は施設に所属していない2人の心臓専門医が下した。胸痛発症後間もない急性心筋梗塞の早期診断に有効123例の患者(17%)が急性心筋梗塞の最終診断を下された。ROC曲線解析による下部領域面積(AUC)の定量化によって、4つの高感度心筋トロポニン測定法のほうが標準測定法より、診断精度は有意に高かった。AUC、アボット-Architect Troponin Iは0.96(95%信頼区間:0.94~0.98)、ロシュHigh-Sensitive Troponin Tは0.96(同:0.94~0.98)、ロシュTroponin Iは0.95(同:0.92~0.97)、シーメンスTroponin I Ultraは0.96(同:0.94~0.98)に対し、標準測定法は0.90(同:0.86~0.94)だった。胸痛症状から3時間以内の患者のAUCは、標準測定法の0.76(95%信頼区間:0.64~0.88)と比べて、高感度測定法ではそれぞれ、0.93(同:0.88~0.99)、0.92(同:0.87~0.97)、0.92(同:0.86~0.99)、0.94(同:0.90~0.98)であった。なお高感度トロポニン測定法の医学的管理に及ぼす影響は評価していない。Reichlin氏らは、高感度心筋トロポニン測定法の診断パフォーマンスは優れており、これら測定法は特に胸痛発症後、間もない患者における急性心筋梗塞の早期診断を大いに改善できると結論づけている。(医療ライター:朝田哲明)

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高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(2)

心筋梗塞の早期診断は迅速な治療を促し、胸痛症状を示した患者のアウトカムを改善する。その意味で、緊急環境下で施行される心筋壊死マーカー検査は診断価値が高く、胸痛患者ケアに一里塚を築いたが、胸痛出現直後の精度は低い。これに代わって心筋トロポニン検査が急性心筋梗塞の診断の中心的役割を果たすようになっているが、ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のTill Keller氏ら研究グループは、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化について、高感度トロポニンI測定法の評価を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。診断精度は高感度トロポニンI測定法が最も高い本試験は多施設治験で、急性心筋梗塞が疑われる一連の1,818例の患者を対象に、入院時、入院後3時間、同6時間について、高感度トロポニンI測定法と、トロポニンT、従来の心筋壊死マーカーの3つで診断精度を比較した。入院時に得られたサンプルによる診断精度は、トロポニンT測定法(受信者動作特性曲線[AUC]:0.85)、従来の心筋壊死マーカーと比較して、高感度トロポニンI測定法が最も高かった(AUC:0.96)。入院時の高感度トロポニンI測定法(カットオフ値:0.04ng/mL)の臨床的感度は90.7%、特異度は90.2%だった。診断精度は、胸痛発症からの時間にかかわらず、ベースライン(入院時)と入院後の連続サンプルで実質的に変わらなかった。トロポニンI濃度0.04ng/mL超は発症後30日のリスク上昇と関連胸痛発症後3時間以内の患者において、1回の高感度トロポニンI測定法の陰性適中率は84.1%、陽性適中率は86.7%だった。これらの所見から、6時間以内にトロポニンIレベルが30%上昇すると予測された。0.04ng/mLを超えるトロポニンI濃度は、発症後30日における有害アウトカムのリスク上昇とそれぞれに関連していた(リスク比:1.96、95%信頼区間:1.27~3.05、P = 0.003)。研究グループは、高感度トロポニンI測定法の利用は、胸痛発症からの経過時間によらず、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化を向上させると結論づけた。(医療ライター:朝田哲明)

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食道腺がんに移行しやすいバレット食道、内視鏡的切除でリスクを減少

食道腺がんへの移行リスクが高い疾患として知られるバレット食道は、食道上皮の腸上皮化生を伴う。欧米の研究報告によると、慢性の逆流性食道炎患者の約10%に見られ、最近の住民スタディでは有病率1.6%、がん発病率は1970年代から500%以上増加、5年生存率は15%未満と高い致死率が報告されている。一方で、長期研究により、大半は非異形成か悪性度は低いままであることが明らかになってもいる。それでも悪性度の高い異形成に進行した場合、がん発病率は10%/人年以上で、現在まで異形成に対する最適な治療は明らかになっていない。米国ノースカロライナ大学食道疾患/嚥下センターのNicholas J. Shaheen氏らは、異形成を伴うバレット食道を、内視鏡的高周波アブレーションによって消失できるかどうか、それによってがん発病のリスクを低下することができるかどうかを多施設共同偽処置対照無作為化試験(米国内19施設)にて調査した。NEJM誌2009年5月28日号より。異形成を伴うバレット食道患者127例を、偽処置を対照とし無作為化被験者は、異形成(8cm以下)を伴う18~80歳の患者127例で、内視鏡的高周波アブレーションを施行する群(アブレーション群、84例)と偽処置施行群(対照群、43例)に無作為に割り付けられた。無作為化は、異形成の度合い(低群:64例、高群:63例)とバレット食道部位の長さ(4cm未満、4~8cm)で層別化し行われた。アブレーション群の施行は最大4回(基線、2、4、9ヵ月)。全患者は試験期間中、プロトンポンプ阻害薬esomeprazoleを1日2回40mg服用していた。主要転帰は、12ヵ月後の異形成または腸上皮化成の完全な消失とした。主要転帰に達した割合は、低度異形成患者群では、アブレーション群90.5%に対し対照群は22.7%(P<0.001)。高度異形成患者群では、アブレーション群81.0%、対照群19.0%で(P<0.001)で、いずれもアブレーション群のほうが高率だった。患者全体における腸上皮化成の完全な消失でも、アブレーション群が高く77.4%、対照群は2.3%だった(P<0.001)。アブレーション群の食道がん移行は1.2%、対照群は9.3%疾患進行および食道がんへの移行は、アブレーション群のほうがいずれも低く、疾患進行は3.6%対16.3%(P=0.03)、食道がん移行は1.2%対9.3%(P=0.045)だった。なお有害事象に関しては、アブレーション群のほうが術後に胸痛が多く報告された。また、上部消化管出血1例、食道狭窄5例(6.0%)が報告された。(朝田哲明:医療ライター)

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Dr.東田の病態生理学 自由自在! [循環器編] 1

第1回「正常解剖/生理学」第2回「臨床検査」第3回「高血圧」 [循環器編] 1病気の仕組みを理解し原因を解き明かす病態生理学。 「複雑で難しい・・・」と苦手意識がある人は多いでしょう。このDVDでは、患者ケアをする際に必要不可欠な病態生理について、わかりやすく、かつ楽しく、解説します。従来の病態生理学の教材にはない、病気の意外なエピソードから始まり、身近な物事や面白い例え話も交えた、まさに痒いところに手が届く、”究極”の講義!いつの間にか病気の本質や仕組みを面白いほど理解していて、丸暗記という苦痛から開放されているはずです。医師・看護師をはじめ,臨床現場に携わるすべての医療従事者にオススメします!第1回 正常解剖/生理学・循環器系における「循環」とは何なのか? (多細胞間での効率的な運搬システム)・心臓の構造と機能  (心臓に「部屋」は4つある?)・動脈と静脈について (動脈の血液はすべて「赤い」?)・毛細血管とリンパ系の構造と機能 (細胞間の物質交換に関わる二つの循環系)・動脈の分岐・分枝 (心臓も血管も左右非対称)・全身を巡る血液の循環経路 (解剖図では分かりにくい循環経路の概略)・弁膜症について (弁の機能障害が引き起こす疾患群)・心臓の収縮と拡張 (心室は経時的に拡張・収縮を繰り返す)・冠循環の機能と構造 (心臓自身に栄養を供給するしくみ)・まとめ 循環器の構造と機能 総論  (循環器系・心臓・弁膜症)第2回 臨床検査・循環器疾患の診断の流れ・臨床症状①ショック (全身性の急激な末梢循環障害)・血栓と塞栓 (全身性の急激な末梢循環障害)・臨床症状②心不全 (左心不全と右心不全は、症状が異なる)・臨床症状③呼吸困難 (末梢における酸素の需要と供給の不均衡)・臨床症状④胸痛 (胸に激痛をきたす代表的な3疾患)・臨床症状⑤失神 (一過性の脳循環障害による意識障害)・循環器疾患の診察について (五感を用いて患者の内部情報を得る)・循環器疾患の検査について① (主な検査:心電図・胸部X線・心エコー)・循環器疾患の検査について② (さらに精査が必要なとき)・循環器疾患における治療の概略 (一般的な治療から特殊なものまで)第3回 高血圧・血圧とは何か (上腕動脈で測定される動脈圧)・血圧を規定する諸因子 (オームの法則(電圧=電流×抵抗)と類似)・高血圧の重症度分類 (重症度に応じて動脈硬化等のリスクが上昇)・白衣高血圧と仮面高血圧 (外来血圧値が本来の血圧でない場合)・高血圧の原因と分類①~④ (原因不明の場合がほとんど)・眼底検査による重症度判定 (網膜では血管を直接観察できる)・悪性高血圧の診断 (ただちに治療すべき重症な高血圧)・本態性高血圧の治療 (血圧上昇を促す諸因子への対処療法)

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急性胸痛を訴え救急外来を受診した患者へのアドバイス

急性胸痛を訴え救急外来を受診する患者の大半は、即時診断は困難で、さらなる診断評価を必要とする。通常はそのことを患者に口頭で伝えるだけだが、診断に対する不安を患者に与えることになったり、急性胸痛を繰り返すことになるなどQOLに重大な影響をもたらし、うまく伝えることが求められている。Northern General HospitalのJane Arnold氏らは、年間70万人(イングランドとウェールズで)に上る急性胸痛患者への有用な情報伝達方法として、循環器外来患者のコミュニケーションツールとして開発されたインフォメーションシートをアレンジ。患者の不安解消および健康QOL、治療満足度、二次的症状の改善に役立つか試験した。BMJ誌2009年3月21日号(オンライン版2009年2月26日号)より。診断評価の伝達を、口頭のみ群、+インフォメーションシート提示群とで比較試験は1施設のER胸痛ユニットで、非盲検無作為化試験で行われた。急性胸痛を訴え受診するも初発症状での診断がつかなかった患者を、診断評価後に、一般的な口頭でのアドバイスだけを与えるグループと、口頭でのアドバイスに加えインフォメーションシートを提示するグループに、無作為に割り付けた。主要転帰は、不安症(14の質問項目で評価するhospital anxiety and depression scale)。副次転帰は、うつ病(hospital anxiety and depression scaleで評価)、健康QOL(SF-36でセルフ評価)、患者満足度、1ヵ月以内の再度の急性胸痛の有無、ライフスタイルの変化(禁煙、食事、運動)、さらに他のソースから情報を得ようとしたり、疼痛へ備えた健康管理行動とした。インフォメーションシート提示はうつや不安予防に有効患者700例のうち試験に応じたのは494例(70.6%)だった。結果は、アドバイスが口頭のみだったグループに比べ、インフォメーションシートも受け取ったグループのほうが、主要転帰の不安症、副次転帰のうつ病の評価指標平均値(hospital anxiety and depression scale)が、より低く、シート提示が不安症やうつを減らすことが確認された。不安症のスコアは、7.61対8.63、群間差は1.02(95%信頼区間:0.20~1.84)。うつ病スコアは、4.14対5.28、群間差は1.14(0.41~1.86)。SF-36評価による精神面および健康状態についても、+インフォメーションシート群のほうが高く、健康QOLの面に有用なことが認められた。一方で、患者満足度、二次的症状、ライフスタイルの変化、さらなる情報探求行動や疼痛へ備えた健康管理行動に有意な変化は見られなかった。それでもArnold氏は、患者にインフォメーションシートを提供することの潜在的な有用性を強調し、さらなる改良開発が必要であるとまとめている。

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心電図検査の予後評価は病歴聴取の域を出ない

狭心症疑いの外来患者への心電図検査(ECG)の予後評価は、病歴聴取で得られる情報に基づく予後評価の域を出ず、将来的に虚血性心疾患を発症するか否かにECGは、ほとんど役に立たない、Newham University Hospital(イギリス)のNeha Sekhri氏らがコホート調査の結果として報告した。ECGはイギリスの胸痛クリニックでは59%の実施率、最近のEuro heart surveyでは76%と臨床現場では慣例化している。BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)掲載より。8,176例を登録し追跡調査はイギリスの6つの胸痛クリニックに狭心症疑いで紹介されてきた、心疾患の既往のない外来患者8,176例を登録し追跡した。全例に安静時ECGと、年齢、性別、症状の継続期間、喫煙有無、高血圧歴、服用薬など通常の臨床評価を行い記録。また運動負荷ECGも行った患者(4,873例)については、そのうち4,848例で結果(虚血性:陽性、陰性、不明)の「サマリー」を記録、1,422例では結果の「詳細」を記録し、追跡期間中央値2.46年の間の、虚血性心疾患による死亡、非致死性の急性冠動脈症候群発症との複合を評価した。もっと効果的な適用患者の層別化を検討すべきROC曲線解析によるC統計量での評価で、臨床評価のみのモデルと安静時ECGの結果を有するモデルとはほとんど違いが見られなかった。運動負荷ECGのC統計量については、「サマリー」記録群は0.74(同群で臨床評価のみの場合0.70)、「詳細」記録群は0.78(同0.74)であった。しかし、「臨床評価のみ」「臨床評価+安静時ECG」「臨床評価+安静時/運動負荷ECG」のいずれにおいても、1年時点、6年時点の主要エンドポイントのリスク層別化の累積確率はほとんど相違が示されなかった。Sekhri氏は「安静時ECGと運動負荷ECGの予後評価は、基本的な臨床評価の域を出ない」と結論。「ECG検査は広く一般的に行われているが、もっと有意義となるよう適用患者の層別化を検討するべきだ」と提言している。

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PCI前運動負荷試験、実施率は44.5%に留まる

安定した冠動脈性心疾患患者に対して、待機的な経皮的冠動脈形成術(PCI)を実施する前の、心筋虚血の検出を目的とした運動負荷試験の実施率は、44.5%に留まることが明らかになった。PCI前に同試験を実施することで、より良いアウトカムにつながることはこれまでの研究でも明らかになっており、米国の診療ガイドラインでも推奨している。これは、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGrace A. Lin氏らが、2万3,887人のメディケア(高齢者向け公的医療保険)加入者について調べたもの。JAMA誌2008年10月15日号にて掲載。地域格差大きく、PCI数の多い医師ほど実施率低い傾向調査の結果、PCI実施の前90日以内に運動負荷試験を行っていたのは、1万629人だった。地域別では、少ないところで22.1%、多いところでは70.6%と格差が大きかった。また、担当医の年間のPCI実施数が多いほど、術前の運動負荷試験の実施率は低くなっている。具体的には、年間実施数が60件未満の医師に比べ、実施数が60~94件、95~149件、150件以上の医師の運動負荷試験を実施するオッズ比は、それぞれ、0.91、0.88、0.84だった。医師の年齢によっても、格差があった。50~69歳の医師は、40歳未満の若い医師に比べ、同試験を実施しない傾向にあり、逆に70歳以上の医師は、40歳未満の医師よりも同試験を実施する傾向が見られた。人種別では黒人が、また胸痛歴のある人も実施率が高く、オッズ比はそれぞれ1.26と1.28だった。逆に女性や85歳以上、うっ血性心不全歴のある人、心カテーテル法実施歴のある人は実施率が低く、オッズ比はそれぞれ、0.91、0.83、0.85、0.45だった。実施したPCIの必然性に疑問Lin氏らはまた、民間保険加入者についてもPCIを行う1年前までの、運動負荷試験の実施率について調べたが、34.4%とさらに低かった。同氏らは、心筋虚血の検出を行わずにPCIを行うことで、PCIの実施が不適切な患者に対しても過剰に行っている可能性があると指摘している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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DUAAL試験、慢性安定狭心症においてリピトールが予想以上に狭心症発作を抑制

米ファイザーは、慢性安定狭心症(胸痛)患者において、リピトール(アトルバスタチンカルシウム)80mgが心筋虚血(心臓への血液供給と酸素が不十分な状態)に対する想定以上に強力な減少効果を示した、と発表した。それによると、リピトールは試験開始より第18週目までの虚血性の心臓発作数を平均70%近く減らし、心臓発作の総持続時間を60%以上減らした。また第26週まで維持した。リピトール治療群に割付けられた患者の60%は、すべての虚血性の心臓発作が試験終了まで全くなかった。その結果、狭心症の発作が実質的に減少し、ニトログリセリン治療の必要性も大きく減少した。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_07.html

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