高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(1)

提供元:ケアネット

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公開日:2009/09/09

 



急性心筋梗塞は死および身体障害の主要な原因の1つだが、一方で米国やヨーロッパでは毎年約1,500万人の患者が、胸痛など急性心筋梗塞様の症状を呈し救急治療部に搬送されている。そのため、急性心筋梗塞の迅速で信頼性の高い診断が求められるが、こうした臨床上のニーズはまだ十分に満たされていない。バーゼル大学病院(スイス)のTobias Reichlin氏らは、新しい診断法として期待される高感度心筋トロポニン測定法(4つの測定法)の精度について、標準測定法との比較で検討を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。

718例の血液サンプルで新旧検査法を多施設盲検




Reichlin氏らは、急性心筋梗塞が疑われる症状を呈し救急治療部を受診した718例から得られた血液サンプルを用いて、新しい高感度心筋トロポニン測定法を用いた診断の精度を検討する多施設共同治験を行った。

心筋トロポニン・レベルは盲検形式で、4つの高感度測定法(アボット-Architect Troponin I、ロシュHigh-Sensitive Troponin T、ロシュTroponin I、シーメンスTroponin I Ultra)と標準測定法(ロシュTroponin T)を用いて判定した。最終診断は施設に所属していない2人の心臓専門医が下した。

胸痛発症後間もない急性心筋梗塞の早期診断に有効




123例の患者(17%)が急性心筋梗塞の最終診断を下された。ROC曲線解析による下部領域面積(AUC)の定量化によって、4つの高感度心筋トロポニン測定法のほうが標準測定法より、診断精度は有意に高かった。AUC、アボット-Architect Troponin Iは0.96(95%信頼区間:0.94~0.98)、ロシュHigh-Sensitive Troponin Tは0.96(同:0.94~0.98)、ロシュTroponin Iは0.95(同:0.92~0.97)、シーメンスTroponin I Ultraは0.96(同:0.94~0.98)に対し、標準測定法は0.90(同:0.86~0.94)だった。

胸痛症状から3時間以内の患者のAUCは、標準測定法の0.76(95%信頼区間:0.64~0.88)と比べて、高感度測定法ではそれぞれ、0.93(同:0.88~0.99)、0.92(同:0.87~0.97)、0.92(同:0.86~0.99)、0.94(同:0.90~0.98)であった。なお高感度トロポニン測定法の医学的管理に及ぼす影響は評価していない。

Reichlin氏らは、高感度心筋トロポニン測定法の診断パフォーマンスは優れており、これら測定法は特に胸痛発症後、間もない患者における急性心筋梗塞の早期診断を大いに改善できると結論づけている。

(医療ライター:朝田哲明)