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新型コロナ感染の川崎病様小児患者、大半で心機能障害/NEJM

 米国ニューヨーク州では5月上旬時点で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められた小児発症性多系統炎症症候群(MIS-C)は95例に上ったことが、米国・ニューヨーク州保健局(New York State Department of Health:NYSDOH)のElizabeth M. Dufort氏らによる調査により明らかにされた。そのほとんどで、C反応性蛋白(CRP)値、Dダイマー値、トロポニン値が上昇し、心機能障害との関連が認められたという。MIS-Cは、皮膚・皮膚粘膜症状、消化器系症状を伴うhyperinflammatory syndromeで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が示唆されており、NYSDOHでは、同症状を呈した入院患者の記述的サーベイランスを州全体で強化していたという。NEJM誌オンライン版2020年6月29日号掲載の報告。川崎病、MIS-C疑い例など21歳未満の入院患者を対象に調査 研究グループは、2020年3月1日~5月10日にNYSDOHに報告された川崎病、毒素性ショック症候群、心筋炎、およびMIS-Cが疑われる21歳未満の入院患者を対象に調査を行った。 NYSDOHのMIS-C症例基準に適合した患者について、臨床症状、合併症、アウトカムを要約した記述的分析を行った。ICU治療は80%、昇圧剤サポートは62% 2020年5月10日時点で191例の症例がNYSDOHに報告された。 このうち、MIS-Cと診断(急性または最近のSARS-CoV-2感染が検査で確認)されたのは95例、また臨床・疫学的基準に適合しMIS-Cの疑いがあると判断された症例が4例で、54%(53例)が男性だった。人種別では、31/78例(40%)が黒人、31/85例(36%)がヒスパニック系だった。年齢別では、0~5歳が31例(31%)、6~12歳が42例(42%)、13~20歳が26例(26%)だった。 全例で主観的な発熱または寒気があり、頻拍は97%、消化器系症状は80%、発疹は60%、結膜充血は56%、粘膜変化は27%にそれぞれ認められた。 CRP値、Dダイマー値、トロポニン値の上昇は、それぞれ100%、91%、71%で認められた。昇圧剤サポートを要したのは62%、心筋炎のエビデンスが認められたのは53%、集中治療室(ICU)での治療を要したのは80%、死亡は2例だった。 入院期間の中央値は6日だった。

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第14回 新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?

<先週の動き>1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?6月26日、厚生労働省より2020年4月までの人口動態統計が発表された。これによると、今年4月の死亡者数は11万3,362人で前年度4月の11万2,939人と比べると423人・0.4%の増加だった。今年1~4月の累積死亡者数を前年同時期と比較すると、1万444人・2.1%の減少となり、コロナウイルス感染拡大に伴う超過死亡は、欧米と比較してほぼなかったと考えられる。海外、とくに欧米においてはコロナウイルス感染拡大による超過死亡が報告されているが、我が国ではPCRの実施体制の不備が懸念されていたものの、幸いにも超過死亡が記録されることはなく、第1波の感染拡大が収束した。今後、第2波の襲来や冬場のインフルエンザウイルスの流行期での感染拡大が懸念されるだけに早期の感染防御やPCRの検査体制拡充が求められる。(参考)人口動態統計速報Excess Deaths Associated with COVID-19(CDC)2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に政府は、7月3日の新型コロナウイルス感染症対策本部(持ち回り形式で開催)において、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の廃止を決定し、新たに特別措置法に基づいて「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を設置することを正式決定した。この初会合は7月6日に開かれることとなっており、構成員は18人、医師や保健所の代表、全国知事会、メディアの代表などが含まれ、専門家会議で副座長を努めた尾身 茂・地域医療機能推進機構理事長がトップを務める。初回は、東京都を中心とした感染状況や PCR検査の拡充、感染者データの取り扱いなどが取り上げられる予定。(参考)政府のコロナ対策分科会メンバー一覧 経済学者や知事、マスコミも産経新聞3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声7月2日に開催された第8回規制改革推進会議にて、「規制改革推進に関する答申」が取りまとめられ、デジタル分野の規制改革の提言を提出された。答申案では、新型コロナウイルスの感染拡大の中、新しい生活様式への転換が求められるため、デジタル技術を徹底的に活用できるよう規制改革を行う必要があるとしたうえでデジタル時代の規制・制度のあり方や書面・押印・対面規制の見直しを求めている。医療・介護分野では、初診も含めたオンライン診療の全面解禁やスイッチOTC化の促進に向けた推進体制の充実、介護アウトカムを活用した科学的介護の推進を求めており、今後、議論を重ねていく見込み。また、同日、自民党の行政改革推進本部(塩崎 恭久本部長)が首相官邸を訪れ、菅 義偉官房長官にデジタル分野の規制改革の提言を提出した。デジタル規制改革を求める中で、オンライン診療及び遠隔教育についての効果検証を行い、恒久化していくことが求められる。(参考)第8回規制改革推進会議 規制改革推進に関する答申自民党 行政改革推進本部 デジタル規制改革ワーキンググループ4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く7月2日に開かれた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚生労働省は医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けているのに対して2017年から行っているネットパトロールの結果を報告した。この中で、1万300サイトについて通報受付を受け、1,253施設の974サイトが審査対象となり、919サイトを運営する医療機関に対して、通知を行い、717サイトが改善したことを報告された。さらに、2018年6月の改正医療法施行後の医療法における広告規制の改正施行後の現状を踏まえ、全国一律の基準で運用できるよう監視指導体制の強化が必要としている。(参考)医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ7月2日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、医師偏在対策の一環として「医師少数区域等で一定期間勤務した医師」を厚生労働大臣が認定し、認定された医師である旨を広告することを可能とする、医療広告ガイドライン指針の追記について合意した。これは今年の4月1日から施行された改正医療法・医師法に伴う関係政令等の整備の一環で、地域の医師偏在の解消を目指して、医師少数区域(人口10万対医師数に地域住民や医師の年齢構成などを加味した新たな指標を用いて、医師配置が下位3分の1となる地域)等での勤務にインセンティブを付与し、医師偏在の解消を狙うもの。若手医師の場合、4月1日以降に初期臨床研修を開始した医師が対象となり、総合的な診療能力の獲得のために地域医療への参画が求められるなど、即効性は期待できない。一方、医師免許を取得から9年以上経過した医師については、断続する勤務合計が180日に達すれば条件を満たすため、医師偏在解消のきっかけとなることが期待される。(参考)医療法及び医師法の一部を改正する法律の施行について(通知)

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デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。デキサメタゾンまたはプラセボに小児患者を1対1で割り付け 本研究は、小児の心臓手術における、術中デキサメタゾン投与による重度合併症や死亡の抑制効果を評価する医師主導の二重盲検無作為化試験であり、3ヵ国(中国、ブラジル、ロシア)の4施設の参加の下、2015年12月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(各参加施設の研究助成のみで実施)。 対象は、生後12ヵ月以下で、CPBを伴う待機的心臓手術が予定されている患児であった。これらの患児は、麻酔導入後にデキサメタゾン(1mg/kg)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム水溶液)の静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、術後30日以内の死亡、非致死的心筋梗塞、体外式膜型人工肺の必要性、心肺蘇生法の必要性、急性腎障害、長期の機械的換気、神経学的合併症の複合とした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの個々の構成要素のほか、機械的換気の期間、変力指標、ICU入室期間、ICU再入室、入院期間など17項目であった。デキサメタゾンとプラセボは副次エンドポイントのすべてで有意差なし 小児患者394例(月齢中央値6ヵ月、男児47.2%)が登録され、全例が試験を完遂した。デキサメタゾン群に194例、プラセボ群には200例が割り付けられた。CPB時間中央値は、デキサメタゾン群が50分、プラセボ群は46分だった。 主要複合エンドポイントの発生は、デキサメタゾン群が74例(38.1%)、プラセボ群は91例(45.5%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(絶対リスク減少:7.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~15.3、ハザード比[HR]:0.82、95%CI:0.60~1.10、p=0.20)。事前に規定されたすべてのサブグループで、両群間に治療効果の差はみられなかった。 主要エンドポイントの個々の構成要素を含む副次エンドポイントのすべてで、両群間に有意差はなかった。デキサメタゾン群で2例(1.0%)、プラセボ群で4例(2.0%)の小児患者が死亡した。急性腎障害はそれぞれ10例(5.1%)および14例(7.0%)で発生し、長時間の換気(24時間以上)は70例(36.1%)および84例(42.0%)で認められ、神経学的イベントは6例(3.1%)および13例(6.5%)で発現した。 感染症は、デキサメタゾン群が4例(2.0%)、プラセボ群は3例(1.5%)で発生した。デキサメタゾン群の3例で肺炎、1例で縦隔炎がみられ、プラセボ群の2例で肺炎(1例は創感染を伴う)、1例で深部胸骨感染が発生した。敗血症は認めなかった。 著者は、「本試験は、治療効果を過大評価している可能性があり、主要エンドポイントの群間差の95%CIの範囲内に、臨床的に意義のある最小変化量(15%)が含まれていることから、検出力が十分でない可能性がある」としている。

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COVID-19と熱中症予防の両立にむけて/厚生労働省

 厚生労働省は、「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめ、ホームページで公開した。今回発表された熱中症予防行動のポイントでは、「マスクの着用・温度調節・暑さ対策・健康管理」の4つの点について詳しく言及し、新しい生活様式下の今夏の過ごし方を提言している。「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント(以下抜粋)(1)マスクの着用について マスクは飛沫の拡散予防に有効で、基本的な感染対策として着用をお願いしている。しかし、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにする。 マスクを着用する場合、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給を心がける。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要。(2)エアコンの使用について 熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効。ただし、新型コロナウイルス対策のためには、冷房時でも窓開放や換気扇によって換気を行う必要がある。換気により室内温度が高くなりがちなので、エアコンの温度設定を下げるなどの調整も必要。(3)涼しい場所への移動について 少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動することが、熱中症予防に有効。一方で、人数制限などにより屋内店舗などにすぐに入ることができない場合、屋外でも日陰や風通しの良い場所に移動する。(4)日頃の健康管理について 毎朝定時の体温測定、健康チェックは、熱中症予防にも有効。平熱を知っておくことで、発熱に早く気付くことができる。日頃の健康管理の充実のほか、体調が悪いと感じたときは、無理せず自宅で静養する。

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第13回 自由診療の抗体検査がもたらす市民の勘違い

本連載もようやく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から離れつつあったが、ちょっと再び戻らせてもらう。なぜかというと、最近、SNS上や報道で目にする抗体検査について不安を覚えるようになったからだ。自治体などが今後の対策のための疫学調査として抗体検査を行うことは何ら問題ないと考えている。しかし、企業が従業員に対して一斉実施したり、市中の医療機関が自由診療で抗体検査を行ったりすることに現時点では何ら意義を感じないからだ。そもそも抗体検査の結果が分かった時に人間はどんな反応を示すだろうか? まず、陰性だった場合は、「感染してなかった」と思いほっとする人、「まだ感染していないのか」とやや不安になる人の2つに分かれるだろう。だが、この陰性という結果が無駄な安心を与えてしまう事例も既に明らかになっている。6月10日に判明した名古屋市での女性の感染例だ。この女性は発熱の症状を訴え、COVID-19の抗体検査を受け陰性と判明した。その翌日は勤務先を休んだものの、解熱したとして翌々日から3日間勤務に復帰。その後、味覚・嗅覚の異常を訴え、最終的に抗体検査から1週間後にPCR検査で感染の事実が判明している。要は抗体検査で陰性の発熱だったのでCOVID-19ではないと勘違いしてしまった事例である。では陽性だったらどうだろう? そもそも市中の医療機関の自由診療でCOVID-19の抗体検査を受けに行く人の多くは、前述の名古屋の事例のような現在進行形の類似症状のあるケースよりも過去に類似の症状を経験したか、単に興味本位という人だろう。そうした人が陽性と分かったら、最初は驚き、思い当たる感染時期がないか振り返るに違いない。ただ、入院も必要もなく軽症あるいは無症状で済んだことに加え、抗体があるという事実から安心しきってしまう人がほとんどではないだろうか。ところがこの安心はかなり的外れである可能性が浮上している。新型コロナの抗体価は持続しにくい?先ごろ、nature medicineに発表された中国の重慶医科大学の研究グループによるCOVID-19感染者の血中抗体価を追跡した研究結果が明らかになった。それによると感染者の退院8週間後のCOVID-19特異的IgG抗体は、無症候者の93.3%、有症状者の96.8%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で71.1%、有症状者で76.2%。また、中和抗体量は無症候者の81.1%、有症状者の62.2%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で8.3%、有症状者で11.7%だった。この事実からすれば、抗体検査で陽性であっても長期的な「免疫パスポート」にはならない可能性が高いことになる。しかも、現時点では特異的な治療薬、ワクチンも存在しないという現実。つまるところ、抗体検査を受けた人は結果が陰性であれ、陽性であれ、今後注意すべきことは変わらないということである。にもかかわらず最近では大都市圏のクリニックを中心にこのCOVID-19の抗体検査を行う医療機関が増えている。少なくとも通常よりもややお金がかかる自由診療で検査を受けようとする人の心中は「何らかの安心を得たい」ことがほとんどだろう。しかし、医学的に見て何らかの安心が得られる状況ではないのは既に書いたとおりだ。逆にこうした医療機関には、自由診療で抗体検査を行うことで患者側にどんなメリットがあるのか、と問いたい。むしろ一時的かつ張りボテの安心感を与えることで、その後の感染リスクを高める害のほうが多いのではないかと考える。少なくとも私のオツムではどうしてもこの検査にメリットについて明快な答えを提示できないのである。

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次亜塩素酸水は物品消毒に有効、空間噴霧は勧められない

 6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価を踏まえ、経済産業省、厚生労働省、消費者庁が合同で、消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめた。次亜塩素酸水は、物品における新型コロナウイルスの消毒に対して、一定条件下での有効性を報告した一方、手指消毒や空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、まわりに人がいる中での空間噴霧はお勧めできないと注意喚起している。有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水が物品消毒に有効 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、アルコール消毒液が手に入りにくい状況が続いたことを受け、家庭や職場でアルコール以外による物品の消毒の選択肢を増やすため、経済産業省の要請を受けたNITEが消毒方法の有効性評価を進めていた。 新型コロナウイルスに対する消毒方法として新しく有効と判断されたのは、界面活性剤の純石けん分(脂肪酸カリウム 0.24%以上/脂肪酸ナトリウム 0.22%以上)と、有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水(電解型/非電解型)。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かす場合は、有効塩素濃度100ppm以上で有効とされる。 なお、検証結果を踏まえ、次亜塩素酸水の利用に当たっては(1)汚れ(手垢、油脂など)をあらかじめ除去すること、(2)対象物に対して十分な量を使用することなどの注意が必要だ。次亜塩素酸水の空間噴霧は勧められない 経済産業省の取りまとめサイトでは、新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法についてまとめた以下のポスターが公開されている。・次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)など既存の消毒・除菌方法について・界面活性剤の使い方について・次亜塩素酸水の使い方について なお、次亜塩素酸水に関しては、製造・販売事業者向けにも、有効性・使い方・販売方法などについてのお知らせが出されている。これによると、次亜塩素酸水の手指などへの影響、空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、利用する際の注意として「塩素に過敏な方は使用を控えるべきこと」、「飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意すること」、「次亜塩素酸水を、まわりに人がいる中で空間噴霧することはお勧めできないこと」が明記されている。 これ以外にも、次亜塩素酸ナトリウムとは異なることや、酸性の製品と混ぜると塩素ガスが発生して危険であることなど、適切な表示をするよう呼び掛けられている。国民一人ひとりが目的にあった製品を正しく選び、正しい方法で使用するために、情報の周知が重要だ。

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COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。ICS標準用量/半量による3剤配合の有効性を2剤配合と比較 研究グループは、過去1年間に1回以上の増悪を認めた中等症~最重症のCOPD患者8,588例を、ブデソニド320μg/日+グリコピロレート(グリコピロニウム臭化物として18μg/日、以下、グリコピロニウム)+ホルモテロール(ホルモテロールフマル酸塩水和物9.6μg/日)(ブデソニド標準用量3剤配合群)、ブデソニド160μg/日+グリコピロニウム+ホルモテロール(ブデソニド半量3剤配合群)、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群、またはブデソニド(320μg/日)/ホルモテロール2剤配合群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回52週間吸入投与した。 主要評価項目は、52週間における中等度~重度増悪(中等度増悪:3日以上の全身性ステロイドまたは抗生物質の投与、重度増悪:入院または死亡)の年率(推定平均回数/患者/年)であった。標準用量・半量とも3剤配合吸入薬は、2剤配合吸入薬に比べ増悪頻度を有意に改善 無作為割り付けから治験薬投与中止までの間にデータが得られた8,509例(修正intention-to-treat:mITT集団)を主要評価項目の解析対象集団とした。 中等度~重度の増悪頻度は、ブデソニド標準用量3剤配合群(2,137例)が1.08回/患者/年、ブデソニド半量3剤配合群(2,121例)が1.07回/患者/年、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(2,120例)は1.42回/患者/年、ブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(2,131例)は1.24回/患者/年であった。 ブデソニド標準用量3剤配合群は、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(24%減少、率比:0.76、95%信頼区間[CI]:0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(13%減少、0.87、0.79~0.95、p=0.003)と比較して増悪頻度が有意に減少した。ブデソニド半量3剤配合群も同様に、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(25%減少、0.75、0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(14%減少、0.86、0.79~0.95、p=0.002)と比較して、増悪頻度が有意に減少した。 有害事象の発現頻度は治療群間で類似していた(範囲:61.7~64.5%)。独立評価委員会で確定された肺炎の発現頻度は、ブデソニドを用いた治療群で3.5~4.5%、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群で2.3%であった。

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COVID-19入院患者にバリシチニブ治験へ/リリー

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象に、インサイト(Incyte)社からライセンス供与されている経口JAK1/JAK2阻害剤バリシチニブの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験に、最初の患者が組み入れられたことを6月15日に発表した。試験の概要 本試験には400人の患者が組み入れられ、米国、欧州およびラテンアメリカで実施される予定。なお、患者はSARS-CoV-2感染により入院し、試験組み入れ時に、少なくとも1種類の炎症マーカーの上昇があるが侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要としない患者が対象となる。 本臨床試験の主要評価項目は、プラセボ投与群(基礎療法のみ)との比較における、バリシチニブ4mg 1日1回投与群(基礎療法と併用)の投与開始から28日目までに死亡もしくは非侵襲的換気/高流量酸素または侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要とした患者割合。本試験で患者は14日間または退院するまでバリシチニブまたはプラセボの投与を受ける。重要な副次的評価項目としては、治験薬投与後28日目までの期間における、複数の異なる時点で臨床的改善を示した患者割合、回復までの期間、入院期間、人工呼吸器を使用しない日数および死亡率が含まれる。 本試験の意義について、COVID-19では、疾患重症度は高度の炎症と関連している可能性があり、バリシチニブはJAK1およびJAK2を阻害することで、この感染症の合併症と関連するサイトカインストームを軽減する可能性があるという仮説が立てられている。また、バリシチニブは、ウイルスの増殖を促進する宿主細胞由来タンパク質を阻害し、感染細胞内のウイルス増殖を抑制する役割を担っている可能性があるという。 同社では、「この無作為化比較試験は、バリシチニブのCOVID-19治療薬としての可能性を解明する重要な一歩」と位置付けている。バリシチニブは関節リウマチ治療薬としてわが国で適応 バリシチニブ(商品名:オルミエント)は、中等度から高度疾患活動性の成人関節リウマチの治療薬として70ヵ国で承認され、使用されている。わが国では「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を適応症として承認されている1日1回経口投与のJAK阻害剤。

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COVID-19、がん患者の全死亡率への影響/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者のデータが不足している中、米国・Advanced Cancer Research GroupのNicole M. Kuderer氏らによる検討で、COVID-19に罹患したがん患者の30日全死因死亡率は高く、一般的なリスク因子(年齢、男性、喫煙歴など)、およびがん患者に特異な因子(ECOG PS、活動性など)との関連性が明らかにされた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる長期追跡を行い、がん患者の転帰へのCOVID-19の影響を、特異的がん治療の継続可能性も含めて、明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌2020年6月20日号掲載の報告。米国・カナダ・スペインの患者について分析 研究グループは、COVID-19罹患のがん患者コホートの転帰を特徴付け、死亡および疾患重症化の潜在的予測因子を特定するコホート研究を行った。 COVID-19 and Cancer Consortium(CCC19)データベースから、SARS-CoV-2感染確定例で、活動性がんおよびがん既往歴のある18歳以上の米国・カナダ・スペインの匿名化患者データを集めて分析した。各患者のデータは、2020年3月17日~4月16日の間にベースラインデータが入力され、フォローアップデータは5月7日まで入力されていた。 収集・分析したのは、ベースラインの臨床状態、治療歴、がんの診断・治療、COVID-19の経過。主要エンドポイントは、COVID-19診断後30日間の全死因死亡とした。 転帰と潜在予後変数の関連性を、年齢、性別、喫煙状態、肥満について補正後のロジスティック回帰分析を用いて評価した。人種、肥満、がん種、がん治療、直近手術は死亡と関連せず 試験期間中にCCC19データベースには1,035件の記録が入力され、解析の適格基準を満たした患者928例について分析した。被験者の年齢中央値は66歳(IQR:57~76)、279例(30%)が75歳以上で、男性患者は468例(50%)であった。 最も一般的にみられた悪性腫瘍は、乳がん(191例[21%])および前立腺がん(152例[16%])。366例(39%)の患者が抗がん剤の治療中で、396例(43%)が活動性(測定可能)がん患者であった。 2020年5月7日の解析時点で、死亡は121例(13%)であった。年齢等補正後ロジスティック回帰分析の結果、30日死亡増大の関連独立因子は、加齢(10歳増につき、年齢等補正後オッズ比[OR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.53~2.21)、男性(1.63、1.07~2.48)、喫煙状態(元喫煙者vs.非喫煙者の同1.60、1.03~2.47)、併存疾患数(2 vs.なしの同4.50、1.33~15.28)、ECOG PS 2以上(2 vs.0または1の同3.89、2.11~7.18)、活動性がん(進行vs.寛解の同:5.20、2.77~9.77)、アジスロマイシン+ヒドロキシクロロキン投与(vs.非投与の同:2.93、1.79~4.79、適応症による交絡は除外できなかった)であった。 また、米国北東部の住民と比較して、カナダの住民(年齢等補正後OR:0.24、95%CI:0.07~0.84)、米国中西部の住民(0.50、0.28~0.90)の30日全死因死亡率は低かった。人種・民族、肥満状態、がんのタイプ、抗がん剤治療のタイプ、直近の手術について死亡との関連は認められなかった。

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新型コロナウイルスの感染伝播防止に有効な対策(解説:小金丸博氏)-1252

 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は人と人との密な接触で広がっていく。本稿執筆時点では、有効性が示された治療薬や予防ワクチンはなく、感染拡大をいかにして防止するかは重要なテーマである。今回、COVID-19、SARS、MERSの原因ウイルスの伝播防止に、身体的距離、マスクの着用、眼の防護が有効な対策となりうることを示したシステマティックレビューとメタ解析がLancet誌オンライン版より報告された。これまでのメタ解析は、季節性インフルエンザなどの呼吸器系ウイルスに関するランダム化試験や不正確なデータを基にし、医療施設内での予防効果に焦点を合わせたものであったが、本論文ではSARS-CoV-2を含むコロナウイルスのデータに絞り、医療施設内のみでなく市中での感染予防効果に関するデータを含んでいることが特徴である。 結果の概要は以下のとおりであった。身体的距離 人と人との距離が1m未満と1m以上を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ12.8%と2.6%であり、距離を1m以上とることで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-10.2%、調整オッズ比:0.18)。この感染予防効果はマスクの着用の有無にかかわらず認め、距離が1m離れるごとに2.02倍に増大した。マスクの着用 マスクを着用しない場合と着用する場合を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ17.4%と3.1%であり、マスクを着用することで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-14.3%、調整オッズ比:0.15)。N95マスクや同等の効果が期待できる類似のマスクは、サージカルマスクと比較して、強い感染防止効果を認めた。N95マスクの感染予防効果に関しては、医療施設内での評価を検討した論文のみ用いられた。マスク着用による感染伝播を防止する効果は、とくに医療施設内での使用で強い効果を示した。眼の防護 眼を防護しない場合と防護する場合を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ16.0%と5.5%であり、ゴーグルなどで眼を防護することで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-10.6%、非補正相対危険度:0.34)。眼の防護の感染予防効果を評価するために13本の論文が用いられたが、COVID-19に関する論文は1本のみであった。 新型コロナウイルスの流行がいつまで続くかわからない現状において、感染リスクを減らすために人と人との距離を最低1m(できれば2m以上)とることやマスク着用の根拠になりうる研究結果である。本論文で有効性を認めた対策に手指衛生などの対策を追加することで、さらなるウイルス伝播防止効果を期待できると考える。今回のメタ解析にはランダム化比較試験は一つも含まれておらず、より強固なエビデンスを得るためにはさらなる研究が待たれる。

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COVID-19重症化リスクのガイドラインを更新/CDC

 6月25日、米国疾病予防管理センター(CDC)はCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新し、サイトで公開した。 CDCは、重症化リスクの高い属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げ、それぞれのリスクに関する詳細や感染予防対策を提示している。また、今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加された。高齢者のリスクと推奨される対策 米国で報告されたCOVID-19に関連する死亡者の8割は65歳以上となっている。・他人との接触を避け、やむを得ない場合は手洗い、消毒、マスク着用などの感染予防策をとる。・疑い症状が出た場合は、2週間自宅に待機する。・イベントは屋外開催を推奨、参加者同士で物品を共有しない。・他疾患が進行することを防ぎ、COVID-19を理由に緊急を要する受診を遅らせない。・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンを接種する。・健康状態、服薬状況、終末期ケアの希望などをまとめた「ケアプラン」を作成する。基礎疾患を持つ人のリスクと推奨される対策【年齢にかかわらず、重症化リスクが高くなる基礎疾患】・慢性腎疾患・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・臓器移植による免疫不全状態(免疫システム減弱)・肥満(BMI:30以上)・心不全、冠動脈疾患、心筋症などの深刻な心臓疾患・鎌状赤血球症・2型糖尿病【重症化リスクが高くなる可能性がある基礎疾患】・喘息(中等度~重度)・脳血管疾患(血管と脳への血液供給に影響を与える)・嚢胞性線維症・高血圧または高血圧症・造血幹細胞移植、免疫不全、HIV、副腎皮質ステロイド使用、他の免疫抑制薬の使用による免疫不全状態・認知症などの神経学的状態・肝疾患・妊娠・肺線維症(肺組織に損傷または瘢痕がある)・喫煙・サラセミア(血液疾患の一種)・1型糖尿病 上記の基礎疾患を持つ人は高齢者同様の感染予防対策をとるほか、疾患治療を中断せず、1ヵ月分の処方薬を常備することが推奨されている。

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マスクの再利用、消毒後のウイルス遮断効果は?

 これまでの研究では、N95マスクを再利用するさまざまな滅菌方法の評価試験やN95マスクとサージカルマスクの比較試験などが行われてきた。しかし、現時点でKN95マスクやサージカルマスクの滅菌後のろ過効率の影響を調べた研究は乏しい。米国・オクラホマ大学のChangjie Cai氏らはKN95マスクとサージカルマスクが再利用可能かどうかを明らかにするための研究を実施。 その結果、滅菌プロセスが各マスクのろ過効率に影響を与えることが示唆された。ただし、研究者らは試験時の制限(マスクメーカーの種類が少ない、各マスクと条件のサンプルサイズが小さい、評価した滅菌技術が2つしかないなど)や1回より多く滅菌した場合にマスク劣化の可能性もあるため、これらを踏まえたさらなる調査が必要としている。2020年6月15日JAMA Network Open誌のリサーチレターに報告した。 本研究は、2020年3月25日~4月7日に3種類のマスク(N95マスク[モデル1860:3M社]、KN95マスク[Civilian Antivirus:Qingdao Sophti Health Technology社]、サージカルマスク[モデル1541:Dukal社])のろ過効率について調査を行った。すべてのマスクは38°C、相対湿度100%のインキュベーターで12時間前処理された。滅菌処理にはプラズマ状態の過酸化水素(H2O2)と二酸化塩素(ClO2)を使用し、各マスクのろ過効率と減圧についての平均値±SDが算出された。 主な結果は以下のとおり。・ろ過効率と減圧による滅菌効果を調べた結果、各未処理マスクの平均ろ過効率±SDはN95マスク群が97.3±0.4%、KN95マスク群が96.7±1.0%、サージカルマスク群が95.1±1.6%だった。・H2O2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が96.6±1.0%、KN95マスク群が97.1±2.4%、サージカルマスク群が91.6±1.0%で、N95マスク群とKN95マスク群は95%以上のろ過効率を維持したが、サージカルマスク群の効率は低下した。・ClO2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が95.1±1.6%、KN95マスク群が76.2±2.7%、サージカルマスク群が77.9±3.4%だった。・H2O2滅菌では、各マスク群全体のろ過効率の影響はわずかであったが、一方でClO2滅菌では、KN95マスク群とサージカルマスク群のろ過効率が著しく低下した。 圧力変化はすべて許容範囲内だった。・エアロゾルのサイズごと(16.8~514nm)に、ろ過効率による滅菌効果を調べた結果、サイズ別濾過効率はすべての未処理マスクで95%以上だった。・約300nm(0.3μm)の粒子において、ClO2滅菌後のN95マスク群の平均ろ過効率±SDは86.2±6.8%に低下したが、全体的なろ過効率は約95%に保たれていた。ただし、KN95マスク群では40.8±5.9%に、サージカルマスク群では47.1±14.4%に低下した。

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新型コロナウイルス感染症の重症化リスク解析について(解説:小林英夫氏)-1249

 新型コロナウイルス感染症はWHOによるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂)ではCOVID-19とコードされ、その和訳は「コロナウイルス感染症2019」とする案、つまり「新型」が付記されない方向で厚労省にて現在審議中とのことである。 さて、日本と欧米や東アジア間ではCOVID-19への対応状況が異なるが、死亡者数・感染者数に明らかな差異が報告されている。その差異の理由はいかなるものかを解明していくことは今後の必須テーマで、京都大学の山中 伸弥教授はこの因子にファクターXと名付けている。現状では実態不明のファクターXであるが誰にでも予想できる要素として、人種別の遺伝的要素、ウイルス遺伝子変異、などは当然の候補となろう。そこで本論文では重症化、呼吸不全化のリスクについてゲノムワイド関連解析を行っている。その方向性は適正であろう。本論文の和訳は別途本サイトで掲載されるが、血液型によるリスク差に関する結果の一部だけを切り取ってマスメディアが過剰に喧伝しそうで気掛かりである。本論文はあくまでイタリアとスペインというラテン系民族が対象であり、日本人に該当するかどうかは未定である。もちろん、感染症に対して遺伝的素因・体質的素因が関与することは予想される事項であり、本邦でも罹患リスクや重症化リスクへのゲノム解析への取り組みに期待したい。 筆者はウイルス学や感染制御が本業ではないが、連日のようにCOVID-19関連論文が発表されるのを目にする。ただ、情報の迅速性を優先するためであったのだろうが、Lancet、NEJMといった一流ジャーナルにおいてさえ論文の掲載撤回というあまり経験のない事態も生じている。研究に迅速性が望まれている現状であるから、論文の解釈には常時以上の慎重さをもって読み込みたい。

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第13回 医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か

<先週の動き>1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か第二次補正予算に組み込まれた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」について、医療・介護従事者とその事業者に対する慰労金の支払いスケジュールなどが明らかになった。厚生労働省は、16日に各都道府県への事務連絡を行っており、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)実施要綱」、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)交付要綱」などに基づいて、7月17日までに追加交付申請を求めている。医療機関などに対する感染拡大防止の支援金と共に、8月下旬の交付を目指す。各医療機関の担当者は、医療保険、介護保険それぞれについて、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の交付要綱を確認する必要がある。なお、今回の慰労金は個人に対する交付であり、6月30日までの間に「10日以上」勤務した場合、雇用形態にかかわらず、申請時点で在職中でなくても給付対象となる。(参考)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の追加交付申請等について(同)新型コロナで医療者に慰労金、誰がいくらもらえるの?(看護roo!)医療者ら向け慰労金の交付、「8月下旬ごろから」で調整 厚労省(MEDIFAXweb)2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出任期満了に伴う日本医師会会長選挙が、27日に文京区の日医会館で行われた。今回は、現職の横倉 義武会長と中川 俊男副会長の一騎打ちとなり、投票の結果、中川氏が191票、横倉氏が174票で、中川氏が初当選として会長に選出された。任期は2年。副会長は、立候補者数が定数と同一のため信任投票となり、猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏が信任された。(参考)第147回日本医師会定例代議員会 選挙結果報告(日本医師会)3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動厚労省は26日、死因究明等推進本部を設置し、議事内容などを公表した。これは、2019年6月に衆議院本会議で可決・成立した「死因究明等推進基本法」の公布(本年4月1日)を受けたもの。加藤厚労大臣を本部長とする死因究明等推進本部では、来年の春ごろまでに議論を進め、死因究明等推進計画が閣議決定される見通し。(参考)第1回 死因究明等推進本部(厚労省)新たに始まる死因究明制度:死因究明等推進基本法について(新潟市医師会)死因究明等推進計画案、検討会設置し作成へ 厚労省、推進本部初会合の議事内容など公表(CBnewsマネジメント)4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り全世代型社会保障検討会議は、25日、感染症対策の視点も含めた持続可能な医療提供体制の整備を盛り込んだ「第2次中間報告」をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大に当たって、高市 早苗総務相から「公立病院が新型コロナ感染患者の受け入れで大きな役割を果たしていた」と意見が出され、地域医療構想の実現に当たってもこの視点を盛り込む必要性を求める意見が出た。75歳以上の医療費負担を原則1割から2割に引き上げる所得水準については結論を先送り、2020年末の最終報告で取りまとめることとした。また、新型コロナ感染拡大防止対策として、オンラインによる診療や面会など非接触サービスの提供を促進するため、医療機関や介護施設にタブレットやWi-Fiなどの導入支援の強化も打ち出されている。(参考)全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告(案)(首相官邸)5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出26日、総務省の第32次地方制度調査会から、「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」が安倍総理大臣に提出された。地方制度調査会は、これまで2年間にわたって審議を行ってきた。高齢者人口がピークを迎える2040年頃までに顕在化するさまざまな課題に対応する観点から、必要な地方行政体制のあり方について、人口構造、インフラ・空間、技術・社会などに分けて整理を行っている。医療については、地域の医療提供体制の確保や、困難に直面している人に対する生活支援などの社会機能の維持が必要である。住民の安心できる暮らしや地域の経済活動を支えるために、自治体が判断を主体的に行い、新しい技術の活用や地域の自治体との連携、ほかの地方公共団体、国と協力して対応することが求められている。(参考)2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申(案)(総務省)

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HER2+大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの成績(DESTINY-CRC01)/ASCO2020

 イタリア・Universita degli Studi di MilanoのSalvatore Siena氏は、HER2陽性転移大腸がんに対する抗HER2抗体薬物複合体製剤トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の多施設共同非盲検第II相試験DESTINY-CRC01の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。標準治療に抵抗性を示す転移大腸がんでは注目すべき活性を示すと報告した。・対象:2次治療以上の治療歴を有するHER2陽性切除不能・転移大腸がん患者78例  コホートA(53例):HER2 IHC3+またはIHC2+/ISH+  コホートB(7例):HER2 IHC2+/ISH-  コホートC(18例):HER2 IHC1+・介入:トラスツズマブ デルクステカン6.4mg/kg 3週ごと・評価項目:[主要評価項目]コホートAでの独立中央判定による確定奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、コホートBとCでのORR 主な結果は以下のとおり。・全治療のレジメン数中央値は4、全例がイリノテカン、フルオロウラシル、オキサリプラチンの投与歴を有した。また、全症例の20.5%、コホートAの30.2%で抗HER2療法の治療歴があった。・コホートAの確定ORRは45.3%で、うちCRは1例、DCRは83.0%であった。・コホートAのDoR中央値は未到達であった。・コホートAのPFS中央値は6.9ヵ月、OS中央値は未到達であった。・HER2低発現(IHC2+/1+)の2コホートにおいては、奏効が認められなかった。・全Gradeの治療関連有害事象(TEAE)発現率は症例全体、コホートA共に100%であった。Grade3以上のTEAEは全体が61.5%、コホートAが60.4%であった。・対象症例全体では薬剤関連の間質性肺炎は5例(6.4%)で認定され、Grade2が2例、Grade3が1例、Grade5が2例であった。・サブグループ解析では抗HER2療法の治療歴がある患者でも効果が認められた。 Siena氏は「進行HER2陽性大腸がんに対する治療オプションとしての潜在力を示している」との見解を表明した。

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COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。 TERAVOLTレジストリは、横断的および縦断的な多施設共同観察研究で、COVID-19と診断されたあらゆる胸部がん(非小細胞肺がん[NSCLC]、小細胞肺がん、中皮腫、胸腺上皮性腫瘍、およびその他の肺神経内分泌腫瘍)の患者(年齢、性別、組織型、ステージは問わず)が登録された。試験適格条件は、RT-PCR検査で確認された患者、COVID-19の臨床症状を有しかつCOVID-19が確認された人と接触した可能性のある患者、または、臨床症状があり肺画像がCOVID-19肺炎と一致する患者と定義された。 2020年1月1日以降の連続症例について臨床データを医療記録から収集し、人口統計学的または臨床所見と転帰との関連性について、単変量および多変量ロジスティック回帰分析(性別、年齢、喫煙状況、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患)を用いて、オッズ比(OR)およびその95%信頼区間(CI)を算出して評価した。なお、データ収集は今後WHOによるパンデミック終息宣言まで継続される予定となっている。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、2020年3月26日~4月12日に、8ヵ国から登録された最初の200例であった。・200例の年齢中央値は68.0歳(範囲:61.8~75.0)、ECOG PS 0~1が72%(142/196例)、現在または過去に喫煙81%(159/196例)、NSCLC 76%(151/200例)であった。・COVID-19診断時に、がん治療中であった患者は74%(147/199例)で、1次治療中は57%(112/197例)であった。・200例中、入院は152例(76%)、死亡(院内または在宅)は66例(33%)であった。・ICU入室の基準を満たした134例中、入室できたのは13例(10%)で、残りの121例は入院したがICUに入室できなかった。 ・単変量解析の結果、65歳以上(OR:1.88、95%CI:1.00~3.62)、喫煙歴(OR:4.24、95%CI:1.70~12.95)、化学療法単独(OR:2.54、95%CI:1.09~6.11)、併存疾患の存在(OR:2.65、95%CI:1.09~7.46)が死亡リスクの増加と関連していた。・しかし、多変量解析で死亡リスクの増加との関連が認められたのは、喫煙歴(OR:3.18、95%CI:1.11~9.06)のみであった。

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新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例が低カリウム血症 本研究は、2020年1月11日~2月15日までの期間に中国・Wenzhou Central Hospital とWenzhou No.6 People's Hospitalで実施。対象者は入院中Chinese Health Bureauの基準に従いCOVID-19の診断を受けた患者とした。患者を重症低カリウム血症(血漿カリウム濃度:<3mmol/L)、低カリウム血症(同:3~3.5mmol/L)、カリウム正常値(同:>3.5mmol/L)に分類し、臨床的特徴、治療、および臨床転帰について3群間で比較した。主要評価項目は低カリウム血症群の有病率とカリウム補充による治療への反応で、血漿と尿中カリウムの濃度を分析した。また、患者は抗ウイルス療法などを受け、研究者らはそれらの疫学的および臨床的特徴を収集した。 新型コロナウイルス感染症と低カリウム血症の関連を調査した主な結果は以下のとおり。・175例(女性:87例[50%]、平均年齢±SD:45±14歳)の内訳は、重症低カリウム血症:31例(18%)、低カリウム血症:64例(37%)、およびカリウム正常値:80例(46%)だった。・重症低カリウム血症群の患者は、低カリウム血症群の患者と比べ有意に高体温だった(平均体温±SD:37.6±0.9℃ vs. 37.2±0.7℃、差:0.4℃、95%信頼区間[CI]:0.2~0.6、p=0.02)。また、カリウム正常値群の患者体温は、平均体温±SD:37.1±0.8℃(差:0.5℃、95%CI:0.3~0.7、p= 0.005)だった。・重症低カリウム血症群の患者はクレアチンキナーゼ(CK)も高く、平均±SD:200±257U/L(中央値:113 U/L、四分位範囲[IQR]:61~242U/L)、 低カリウム血症群は同:97±85U/L、カリウム正常値群は同:82±57U/Lだった。・クレアチニンキナーゼMB分画タンパク量(CK-MB)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:32±39U/L(中央値:14 U/L、IQR:11~36U/L)、低カリウム血症群で同:18±15U/L、カリウム正常値群で同:15±8U/Lだった。・乳酸脱水素酵素(LDH)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:256±88U/L、低カリウム血症群では同:212±59U/L、およびカリウム正常値群は同:199±61U/Lだった。・C反応性タンパク(CRP)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:29±23mg/L、低カリウム血症群では平均±SD:18±20mg/L(中央値:12mg/L、IQR:4~25mg/L)およびカリウム正常値群では平均±SD:15±18mg/L(中央値:6U/L、IQR:3~17U/L)だった。・COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例(85%)は低カリウム血症だった。重症低カリウム血症の患者には、入院中に1日当たり40mEqのカリウムが投与され、平均総投与量±SDは塩化カリウムで453±53mEqだった。・回復において、カリウム補充への反応は良好だった。

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トラスツズマブ デルクステカン、既治療HER2+胃がんのOS改善/NEJM

 既治療HER2陽性胃がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)は医師が選択した化学療法と比較し、客観的奏効率(ORR)および全生存期間(OS)を有意に改善した。安全性については、骨髄抑制および間質性肺疾患の副作用が顕著であった。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らが、日本の48施設および韓国の18施設で実施した無作為化非盲検第II相試験「DESTINY-Gastric01試験」の結果を報告した。トラスツズマブ デルクステカンは、抗HER2抗体と新規トポイソメラーゼI阻害薬を、切断可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合させた抗体薬物複合体(ADC)である。第I相試験において既治療HER2陽性進行胃がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌2020年6月18日号掲載の報告。トラスツズマブ デルクステカンと、医師が選択した化学療法(イリノテカンまたはパクリタキセル)を比較 研究グループは2017年11月~2019年5月の期間に、トラスツズマブを含む2つ以上の治療を受けていたHER2陽性(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)の進行・転移を有する胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん患者188例を対象に試験を行った。被験者をトラスツズマブ デルクステカン群(6.4mg/kg、3週ごと)、または化学療法(医師がイリノテカンまたはパクリタキセルのどちらかを選択)群に2対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要評価項目は、独立中央委員会評価によるORR、副次評価項目はOS、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、確定した奏効(奏効が4週間以上持続)、安全性であった。 188例中187例が治療を受けた。内訳は、トラスツズマブ デルクステカン群125例、化学療法群62例(イリノテカン群55例、パクリタキセル群7例)。ORRは51% vs.14%、OSは12.5ヵ月 vs.8.4ヵ月と、いずれもADC群が有意に良好 ORRは、トラスツズマブ デルクステカン群51%、化学療法群14%であった(層別Cochran-Mantel-Haenszel検定のp<0.001)。OS中央値は、トラスツズマブ デルクステカン群12.5ヵ月、化学療法群8.4ヵ月で、トラスツズマブ デルクステカン群で有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.39~0.88、両側p=0.01、事前に規定したO'Brien-Fleming法による死亡数に基づいた有意水準p=0.0202を下回った)。 主なGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(トラスツズマブ デルクステカン群51%、化学療法群24%)、貧血(38%、23%)、白血球数減少(21%、11%)などであった。間質性肺疾患または肺臓炎(独立中央委員会による判定)の副作用が、トラスツズマブ デルクステカン群で12例に認められた(Grade1/2:9例、Grade3/4:3例)。治験薬に関連した死亡は、トラスツズマブ デルクステカン群でのみ1例(肺炎)報告された。

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ASCO2020レポート 消化器がん(上部消化管)

レポーター紹介今年のASCOは史上初めてオンラインのみでの開催となった。もちろん大規模な移動や集会は、新型コロナウイルスの感染伝播のリスクとなるためであるが、この傾向は今後も続くと思われる。すでに9月にマドリードで開催予定であったESMO2020も、virtualで行われることが決定している。移動時間や、時差を気にせず自室のPCでプレゼンテーションを見ることができる一方、ポスター会場での海外の研究者との直接のやりとりや、世界中のオンコロジストが集まる、あの会場の雰囲気を味わえなくなるのは寂しいものである。さて、上部消化管がん領域から、5演題ほど紹介したいと思う。HER2陽性胃がんに対するDESTINY-Gastric01試験は、HER2陽性胃がんに新たな標準治療を提供し、ほぼ同日に臨床系で最も権威があるといわれているNew England Journal of Medicineに掲載される1)など、最も注目すべき発表となった。Trastuzumab deruxtecan (T-DXd; DS-8201) in patients with HER2-positive advanced gastric or gastroesophageal junction (GEJ) adenocarcinoma: A randomized, phase II, multicenter, open-label study (DESTINY-Gastric01).HER2陽性胃がん、接合部腺がんに対するT-DXdのランダム化第II相試験Shitara K et al.T-DXdは、トポイソメラーゼI阻害薬(deruxtecan)を抗HER2抗体に結合(conjugate)させたADC(antibody-drug conjugate)製剤であり、HER2を発現した細胞に結合し、内部に取り込まれたderuxtecanが細胞障害を来し、効果を発揮する。Phase I試験では、トラスツズマブに不応となった患者に対して、43.2%の奏効割合を示し、有効性が期待されていた薬剤である。日本の第一三共株式会社が開発した薬剤という意味でも注目される。DESTINY-Gastric01試験では、フッ化ピリミジンと、プラチナ製剤と、トラスツズマブを含む2レジメン以上の治療歴のあるHER2陽性(IHC3+、IHC2+/ISH+)胃がんを対象に、187名が日本と韓国より登録された。125名がT-DXd群、62名が医師選択治療群(PC群)に割り付けられた。全例トラスツズマブの投与歴があり、タキサン系薬剤の投与歴は、T-DXd群とPC群で、84%と89%、ラムシルマブ投与歴は75%と66%、免疫チェックポイント阻害薬の投与歴は、それぞれ35%と27%であった。主要評価項目は奏効割合で、T-DXd群で42.9%、PC群で12.5%と有意にT-DXd群で良好であった。無増悪生存期間中央値も、5.6ヵ月と3.5ヵ月(HR=0.47)、生存期間中央値も12.5ヵ月と8.4ヵ月(HR=0.59、p=0.0097)と有意にT-DXd群が良好であった。一方T-DXd群では、主に血液毒性が多く認められ、Grade3以上の好中球減少を51%認めたが、発熱性好中球減少は6名(4.8%)であり、治療関連死は両群に1名ずつ認められ、肺炎であった。注目すべき有害事象として、肺臓炎をT-DXd群にて9.6%に認めたが、多くはGrade2以下であった。T-DXdはすでに2020年4月に乳がんに対して適応承認を取得しているが、治療歴のあるHER2陽性胃がん患者に対しても、適応承認申請中であり、近いうちに実臨床にて使用可能になると思われる。HER2陽性の肺がんや、大腸がんに対しても有効性が示されており、アストラゼネカと第一三共が提携を結び、日本以外の地域においても、他がんや、HER2陽性胃がんへの1次治療への開発などが期待されている。FOLFIRI plus ramucirumab versus paclitaxel plus ramucirumab as second-line therapy for patients with advanced or metastatic gastroesophageal adenocarcinoma with or without prior docetaxel: Results from the phase II RAMIRIS Study of the AIO.胃がん2次治療における、FOLFIRI+ラムシルマブと、パクリタキセル+ラムシルマブのランダム化比較第II相試験Lorenzen S et al.RAINBOW試験の結果、胃がんの2次治療は、パクリタキセルとラムシルマブの併用療法が標準治療である。1次治療不応後だけでなく、術後補助化学療法中や終了後6ヵ月以内の再発の場合もフッ化ピリミジン不応と考えて、2次治療であるパクリタキセルとラムシルマブが投与される。しかし近年、術後のドセタキセル+S-1療法や、欧米では、術前後のFLOT療法など、周術期の化学療法でタキサン系薬剤が用いられる傾向にあり、術後早期再発にてタキサン系薬剤以外の薬剤とラムシルマブの併用療法の評価を行う必要が生じてきた。もともと欧州で胃がんの2次治療のひとつであるFOLFIRIにラムシルマブを併用した治療と、標準治療であるパクリタキセル+ラムシルマブを比較するRAMIRIS試験が計画された。フッ化ピリミジンとプラチナを含む化学療法から6ヵ月以内に進行が認められた胃がん患者を対象とし、ドセタキセルの使用については許容され、調整因子とされた。PTX+RAM群に38名、FOLFIRI+RAM群に72名が割り付けられ、約65%の患者がタキサン使用歴ありだった。奏効割合は、FOLFIRI+RAM群は22%、PTX+RAM群は11%、タキサン使用歴あり患者に絞ると、25%と8%と、FOLFIRI+RAM群で良好な傾向であった。生存期間中央値は、それぞれの群で、6.8ヵ月と7.6ヵ月、無増悪生存期間中央値は3.9ヵ月と3.6ヵ月、タキサン使用歴ありだと、7.5ヵ月と6.6ヵ月、4.6ヵ月と2.1ヵ月であった。現在第III相試験が進行中であり、とくにタキサン使用歴のある患者についてはFOLFIRI+RAMが標準治療になる可能性がある。日本ではCPT-11+RAMの結果も報告されており、FOLFIRIである必要があるのかなどいくつかの疑問もあり、今後の結果が注目される。Perioperative trastuzumab and pertuzumab in combination with FLOT versus FLOT alone for HER2-positive resectable esophagogastric adenocarcinoma: Final results of the PETRARCA multicenter randomized phase II trial of the AIO.切除可能HER2陽性胃がんに対して、周術期FLOT単独とFLOTとトラスツズマブとペルツズマブの併用療法を比較するランダム化第II相比較試験~PETRARCA試験最終解析Hofheinz RD et al.欧米では、切除可能胃がんの標準治療は術前術後のFLOT療法であるが、HER2陽性胃がんに対する周術期の分子標的治療薬の上乗せ効果については明らかではない。また、トラスツズマブとペルツズマブの併用については、乳がんでは上乗せ効果が示され、標準治療となっているが、胃がんの初回治療での化学療法とトラスツズマブに、ペルツズマブの上乗せ効果をみたJACOB試験では、ペルツズマブの上乗せは良好な傾向を示したものの、有意差を示さず、ネガティブな結果であった。PETRARCA試験ではFLOT単独群とFLOT+トラスツズマブ+ペルツズマブ(FLOT+TP)群にランダムに割り付けられ、主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)割合とされた。FLOT群に41名、FLOT+TP群に40名が割り付けられ、pCR割合は12%、35%とFLOT+TP群で有意に良好であった(p=0.02)。無病生存期間中央値はFLOT群で26ヵ月、FLOT+TP群で未達であった(HR=0.576、p=0.14)。生存期間中央値は両群で未達、HRは0.558、p=0.24と、観察期間は不十分ながら、FLOT+TP群で良好な傾向であった。術前術後化学療法での有害事象はFLOT+TP群でGrade3以上の下痢(5% vs.41%)、疲労(15% vs.23%)が多かったが、術後合併症は両群で差はなく、R0切除割合はFLOT群で90%、FLOT+TP群で93%、術後60日以内死亡も両群で1名ずつであった。本試験は、少ない症例数ながら、周術期でのHER2陽性胃がんに対する分子標的治療薬が有用な可能性を示した。ペルツズマブを併用することで、トラスツズマブの耐性機序のひとつであるHER3からのシグナルを抑え、短期的な有効性が上昇することを示した。JACOB試験で有意な差が出なかったのは、後治療などで効果が薄まったためと考えられるが、短期的な腫瘍縮小効果が差を生み出せる周術期でどうなのか、今後の検討が期待されるSintilimab in patients with advanced esophageal squamous cell carcinoma refractory to previous chemotherapy: A randomized, open-label phase II trial (ORIENT-2).治療歴のある食道扁平上皮がんに対するsintilimabのランダム化第II相試験ORIENT-2試験Xu J et al.近年食道扁平上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性が報告されており、ATTRACTION-3試験では、2次治療において、バイオマーカーにかかわらずタキサン系薬剤と比較してニボルマブが有意に生存期間を延長し、日本・韓国・台湾において、ニボルマブが食道扁平上皮がん既治療例に対して適応承認を得ている。KEYNOTE-181試験では、ペムブロリズマブが、CPS(combined positive score)10以上の食道がんにおいて、化学療法群と比較して生存期間延長を示し、米国では、CPS10以上の食道扁平上皮がんに対して適応承認が得られている。また、中国で行われた第III相試験であるESCORT試験では、抗PD-1抗体であるcamrelizumabが既治療例の食道扁平上皮がんに対して、化学療法群と比較して生存期間の延長を示している。ORIENT-2試験は、既治療例食道扁平上皮がんに対する、抗PD-1抗体であるsintilimab群と、医師選択化学療法群を比較した、ランダム化第II相試験であり、180名が登録され、それぞれの群に95名割り付けられた。医師選択化学療法では72名がイリノテカンで、15名がパクリタキセルを投与された。中国では、初回化学療法において、タキサン系とプラチナ系薬剤が併用されることが多く、そのため2次治療としてイリノテカンが用いられることが多い。主要評価項目である生存期間は、中央値がsintilimab群で7.2ヵ月、化学療法群で6.2ヵ月(HR=0.70、p=0.03)と有意にsintilimab群にて延長を認めた。奏効割合も12.6%と6.3%と、sintilimab群で良好な結果であったが、無増悪生存期間中央値では、sintilimab群で1.6ヵ月、化学療法群で2.9ヵ月という結果であった。曲線はクロスしており、後半でsintilimab群が持ち直し、HRでは1.0と両群で差を認めなかった。PD-L1の発現や、そのほかのサブグループの有効性の発表はなかったが、NLR(neutrophil-to-lymphocyte ratio)3未満の集団は、3以上の集団に比べて、sintilimabの有効性が上昇することが示された。安全性に新たな知見はなかった。sintilimabも過去の報告と同様の効果を食道扁平上皮がんに対して示したが、このラインではすでに複数のチェックポイント阻害薬が承認されており、差別化をどのように行うかが今後の課題と思われる。すでに初回化学療法での併用効果や、化学放射線療法との併用、周術期での効果など、食道扁平上皮がんにおける免疫チェックポイント阻害薬は、新たな局面を迎えている。Final analysis of single-arm confirmatory study of definitive chemoradiotherapy including salvage treatment in patients with clinical stage II/III esophageal carcinoma: JCOG0909.病期II/III食道がんに対する、根治的化学放射線療法と救済治療を含む単アームの検証的試験~JCOG0909最終解析Ito Y et al.切除可能食道がんに対する治療は、術前治療に引き続く食道切除術であり、日本では術前化学療法、欧米では術前化学放射線療法が主に行われている。食道扁平上皮がんは放射線感受性が高く、化学放射線療法のみでがんが消失、完全反応(CR)となるケースも少なくない。CRとなる患者は、比較的大きな侵襲となる食道切除術を行わずに根治が得られる可能性を考え、欧米でも、化学放射線療法を行い、CRが得られた患者に対して、切除を行う群と、慎重観察を行い、がんの再発が認められたら切除に行く群のランダム化比較試験が行われたりしている。ただ、化学放射線療法後にどのような基準で手術に行くのか、タイミングはいつがよいのか、その時のリスクがどの程度なのか、まだよくわかっていない。JCOG0909は、まず放射線線量50.4Gyにて、根治的化学放射線療法を行い、CRあるいは、腫瘍の縮小が良好な場合は治療継続と経過観察、明らかな遺残あるいは再発を来した場合は救済手術あるいは救済内視鏡を行うことをプロトコール治療に組み込んだ単アームの試験である。線量を60Gyとしていた時代に行われたJCOG9906では、救済手術での治療関連死が10%以上認められ、放射線後に行う救済手術のむつかしさが浮き彫りになった。JCOG0909ではその経験を踏まえ、線量を抑える代わりに、5-FUの投与量を増やし、また頻回に評価することで、腫瘍が増大する前に救済手術を試みるような設定がなされた。94名の食道扁平上皮がん患者が登録され、病期IIA/IIB/IIIの内訳は、22/38/34と比較的II期が多かった。完全奏効割合は58.5%と既報と比較して同等かやや低い傾向であったが、これは早めに救済手術に持ち込む戦略であることや、5-FUの増量により食道炎が増加し、CRの判定が遅れたことなどが影響していると思われる。5年の経過フォロー後の結果として、5年生存割合は64.5%、5年無増悪生存割合は48.3%と、既報の化学放射線療法のJCOG9906試験の36.8%と25.6%と比して大幅に改善された。術前化学療法と手術療法の組み合わせと比較しても、JCOG9907試験のB群の55%、44%と、引けを取らない結果であった。27名の患者で救済手術が行われ、R0切除となった21名では、3年生存48.3%と長期生存が得られている。食道気管肺の瘻孔形成による周術期死亡が認められたが、救済手術はおおむね安全に実施されていた。5年食道温存生存割合は54.9%と高い値を示し、根治的化学放射線療法により、食道温存をしたまま長期生存が期待できることを示した。また、仮に遺残や再発した場合でも切除可能な段階であれば、救済手術を行うことで、約半数の患者が長期生存を達成できることが示された。現在免疫チェックポイント阻害薬と根治的化学放射線療法の併用療法の検討が開始されており、より高いCR割合が得られるようになれば、まず化学放射線療法を行い、CRになれば、食道温存したまま経過観察、遺残すれば、救済手術を行う、という治療戦略が一般的になる可能性も秘めている。前向き試験の中で、救済手術の安全性と有効性をしっかりと示した例は世界的にもなく、食道がんの臨床に影響を与える結果と思われた。一方で、比較対象となる術前治療と手術のエビデンスであるJCOG9907などと比較して、II期が占める割合が多いため、治療成績については考慮する必要がある、食道がんの専門病院で、経験のある腫瘍内科医と、外科医が治療した結果のため、どこまで一般化できるのか、などの指摘もあるが、今後につながる内容であった。文献1.Shitara K, et al. N Engl J Med. 2020 May 29. [Epub ahead of print]

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COVID-19、ABO血液型により重症化に違い/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化し呼吸不全を来すリスクについて、ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行い調べたところ、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高く、一方で血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に感染した患者にばらつきがみられることから、ドイツ・Christian-Albrechts大学のDavid Ellinghaus氏らの研究グループ「The Severe Covid-19 GWAS Group」が、イタリアとスペインの患者を対象にGWASを行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年6月17日号掲載の報告。イタリア・スペインの7ヵ所の病院の患者を対象に試験 研究グループは、欧州におけるSARS-CoV-2流行の中心地、イタリアとスペインの7ヵ所の病院を通じて、COVID-19患者で重症化(呼吸不全)が認められた1,980例について、GWAS試験を行った。 品質管理や外れ値の除外後、イタリアでは患者835例とその対照1,255例、スペインではそれぞれ775例と950例について、最終的な解析を行った。 合計858万2,968個の一塩基多型を解析し、2つのケースコントロールパネルについてメタ解析を行った。重症化リスク、A型は45%増、O型は35%減 COVID-19による呼吸不全との関連性(ゲノムワイドの有意水準でp<5×10-8)を示す、2遺伝子座の2つの一塩基多型、3p21.31遺伝子座のrs11385942と9q34.2遺伝子座のrs657152を検出した(それぞれのオッズ比[OR]:1.77[95%信頼区間[CI]:1.48~2.11、p=1.15×10-10]、1.32[95%CI:1.20~1.47、p=4.95×10-8])。 3p21.31遺伝子座に関連する遺伝子は、SLC6A20、LZTFL1、CCR9、FYCO1、CXCR6、XCR1だった。 一方9q34.2遺伝子座は、血液型ABOの遺伝子座と一致した。血液型に特異的な解析の結果、A型の人の重症化リスクが他の血液型の人に比べ高率だった(OR:1.45、95%CI:1.20~1.75、p=1.48×10-4)。一方で血液型O型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが低率だった(0.65、0.53~0.79、p=1.06×10-5)。

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