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新型コロナワクチンによるアナフィラキシー、高齢者での管理は?

 COVID-19ワクチンによるアナフィラキシーの発生頻度は10万回に1回~100万回に5回程度と稀であるものの、高齢者のアナフィラキシーの管理はとくに慎重に対応する必要がある。欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)、欧州老年医学会(EuGMS)らは合同のワーキンググループを発足、COVID-19ワクチンによる高齢者のアナフィラキシーの管理に関する公式見解(position paper)を、Allergy誌オンライン版2021年 4月2日号に報告した。 position paperは下記5項目で構成され、それぞれ推奨事項が提案されている。1.COVID-19ワクチンとアナフィラキシー2.高齢者におけるアナフィラキシー症状3.高齢者における重度のアナフィラキシーのリスク因子4.高齢者におけるアナフィラキシーの管理5.臨床でのアナフィラキシー反応の予防と管理 本稿では、一部内容を抜粋して紹介する。「COVID-19ワクチンとアナフィラキシー」、頻度や傾向は? 米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)で報告されたデータの最初の分析では、ファイザー社のmRNAワクチン100万回投与当たり11.1例のアナフィラキシーが報告された。続く2021年1月18日のVAERSレポートでは、ファイザー社ワクチン接種者で100万回投与当たり5回、モデルナ社ワクチン接種者100万回投与当たり2.8回のアナフィラキシーが報告されている。ワクチンに使用されているポリエチレングリコール(PEG)がアレルギー反応を引き起こす可能性があると指摘されている。 ファイザー社ワクチンでのアナフィラキシー症例の年齢中央値は40歳(27~60歳)で、報告された症例の90%は女性。アレルギー反応は、常にではないものの、多くの場合、重度のアレルギー反応の既往歴のある人に発生した。 また、mRNAワクチンの臨床試験段階では、痛み、倦怠感、頭痛、発熱などの局所および全身性反応の発生数は、若年者よりも高齢者で少なかった。「高齢者におけるアナフィラキシー症状」、若年者との違い 2019年に報告がまとめられた欧州のアナフィラキシーレジストリでは、昆虫毒や鎮痛薬、抗生物資などによりアナフィラキシーを発症した65歳以上1,123人のデータが解析されている。発現したアナフィラキシー症状は若年成人と高齢者で類似していたが頻度は異なり、高齢者では心血管症状がより頻繁に発生していた(若年成人の75%に対して80%)。 主な心血管症状は意識喪失(33%)で、めまいと頻脈については若年成人に多くみられた。心停止は、高齢者の3%と若年成人の2%で発生。皮膚症状は最も頻繁にみられ、蕁麻疹と血管性浮腫は通常は他の症状の前に現れる。皮膚症状のない高齢患者のアナフィラキシー反応の重症度は、若年成人と比較して増加した。消化器症状は、両方のグループで同様の割合で発生していた。 呼吸器症状、とくに呼吸困難は、高齢者で頻繁にはみられていない(若年成人の70%に対して63%)。ただし、チアノーゼ、失神、めまいは、高齢者のショック発症を高度に予測していた。Ring and Messmer 分類のGrade III(47%)およびGrade IV(4%)を含む重度のアナフィラキシー反応は、65歳以上で多くみられた。 高齢患者の30%でアドレナリンが投与され、60%で入院が必要であり、19%が集中治療室(ICU)で治療された。Grade IIおよびIIIの症例では、若年および中年の成人と比較して、有意に多くの高齢者が入院およびICUケアを必要としていた。「高齢者における重度のアナフィラキシーのリスク因子」 高齢者における重度のアナフィラキシーのリスク因子として、「併存疾患」と「服用薬と多剤併用」を挙げている。併存疾患として、上述のレジストリでは高齢であることと肥満細胞症の併存が重度のアナフィラキシーのリスク増加の最も重要な予測因子であった。遺伝性α-トリプトファン血症もリスク因子となる。虚血性心筋症ではアナフィラキシーの重症化および死亡リスクが高くなる。アテローム性動脈硬化症の病変により、アナフィラキシー中の低酸素症および低血圧に対する耐性が低下することも報告されている。レジストリでは、心血管疾患、甲状腺疾患、およびがんが若年成人よりも多くみられた。 服用薬については、レジストリでは重度のアナフィラキシーリスクの補因子となる薬剤(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、アセチルコリン、プロトンポンプ阻害薬など)は、若年成人(18%)よりも高齢者(57%)で有意に多く処方されていた。年齢とは独立して、アレルゲン曝露と近い時期に投与されたβ遮断薬とACE阻害薬は、重度のアナフィラキシー発症リスクとの関連がみられたが、アスピリンとアンジオテンシンII受容体拮抗薬では確認されなかった。 そのほか、抗不安薬、抗うつ薬、催眠薬等中枢神経系に作用する薬で治療されており、アナフィラキシー症状や兆候に対する認識に影響を与えている可能性のある高齢者には、注意を払うことが重要となる。「高齢者におけるアナフィラキシーの管理」、アドレナリン使用の注意点は? EAACI および世界アレルギー機構のガイドラインでは、アナフィラキシーの第一選択療法としてアドレナリンの迅速な筋肉内注射が推奨されており、高齢者においてもアドレナリンが重度のアナフィラキシーに作用することが報告されている。ただし、アドレナリンの多くの心血管系有害事象は血管内経路を介して発生すると考えられ、血管内投与は原則として避ける必要がある。 心血管疾患の併存は、アナフィラキシー発症時のアドレナリンの使用を制限するものではない。これは、この救急措置において他の薬剤が救命効果を発揮しないためである。高齢患者やアナフィラキシーリスクがある心血管疾患のある患者においても、アドレナリン投与に絶対的な禁忌はない。アドレナリン投与後、心室性不整脈、高血圧、心筋虚血などの重篤な副作用は報告されていない。ただし、アナフィラキシー発症の高齢患者では、アドレナリン注射後に有害心イベントを経験する可能性が高く、80歳以上の患者が最もリスクが高いという報告がある。そのため、心血管疾患併存患者がアナフィラキシーを発症した場合、アドレナリン投与のリスクとベネフィットを迅速・慎重に比較検討する必要がある。

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市中肺炎入院の抗菌薬投与、3日間は8日間に非劣性/Lancet

 臨床的安定性の基準を満たす市中肺炎入院患者の抗菌薬治療では、15日後の治癒に関して、βラクタム系抗菌薬の3日間投与は8日間投与に対し非劣性であり、30日時の治癒、死亡、治療関連有害事象などには両群間に差はないことが、フランス・パリ・サクレー大学のAurelien Dinh氏らが行った「Pneumonia Short Treatment(PTC)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年3月27日号に掲載された。成人の市中肺炎に関する米国のガイドラインでは、5日間以上の抗菌薬治療と臨床的安定性基準に準拠した治療中止が推奨されているのに対し、欧州では8日間投与が推奨されており、至適な治療期間は十分に確立されていない。市中肺炎入院患者の抗菌薬治療期間が短縮されれば、抗菌薬消費量の削減に役立ち、結果として薬剤耐性菌、有害事象、関連費用の削減がもたらされると考えられている。フランス16施設のプラセボ対照無作為化非劣性試験 本研究は、市中肺炎で入院し、3日間のβラクタム系抗菌薬の投与後に臨床的に安定した患者において、さらに5日間の追加投与の必要性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験であり、フランスの16施設が参加し、2013年12月~2018年2月の期間に参加者の適格基準の評価が行われた(フランス保健省の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、中等度の市中肺炎で入院(集中治療室[critical care unit]以外の病棟へ入院)し、3日間のβラクタム系抗菌薬による治療を受けた後、事前に規定された臨床的安定性基準を満たした患者であった。 被験者は、さらに5日間、βラクタム系抗菌薬(経口アモキシシリン1g+クラブラン酸125mg、1日3回)の投与を受ける群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抗菌薬の初回投与から15日後の治癒とした。治癒は、無熱(≦37.8°C)、呼吸器症状の消失または改善、原因を問わず抗菌薬の追加投与がないことと定義された。非劣性マージンは10%ポイント(群間差の95%信頼区間[CI]の下限値が-10%より大きい場合に非劣性と判定)とされた。15日治癒割合、ITT解析で77% vs.68%、PP解析で78% vs.68% βラクタム系抗菌薬を3日間投与後、適格基準を満たした310例のうち、157例がプラセボ群に、153例が追加投与群に割り付けられた。試験薬の投与を受ける前に、7例(プラセボ群5例、追加投与群2例)が同意を撤回した。intention-to-treat(ITT)集団の年齢中央値は73.0歳(IQR:57.0~84.0)で、41%(123/303例)が女性であり、24%(73例)が2つ以上の併存疾患を有していた。 ITT解析では、15日時の治癒の割合は、プラセボ群が77%(117/152例)、追加投与群は68%(102/151例)であり、群間差は9.42%(95%CI:-0.38~20.04)と、プラセボ群の追加投与群に対する非劣性が示された。また、per-protocol解析による15日治癒割合は、プラセボ群が78%(113/145例)、追加投与群は68%(100/146例)で、群間差は9.44%(95%CI:-0.15~20.34)であり、プラセボ群は追加投与群に対し非劣性であった。 副次評価項目である30日時の治癒、死亡、1つ以上の治療関連有害事象、1つ以上の重篤な治療関連有害事象、入院期間、回復(仕事または日常生活活動への復帰)までの期間には、両群間に差は認められなかった。 最も一般的な有害事象は消化器症状で、プラセボ群の11%(17/152例)、追加投与群の19%(28/151例)で報告された。30日までの死亡は、プラセボ群が3例(2%)(黄色ブドウ球菌による菌血症、急性肺水腫後の心原性ショック、急性腎不全に関連する心不全)、追加投与群は2例(1%)(再発肺炎、急性肺水腫疑い)であった。 著者は、「これらの知見により、抗菌薬消費量が実質的に削減される可能性が示唆される」としている。

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COVID-19、退院後もさまざまな臓器疾患リスクと関連/BMJ

 COVID-19元入院患者は一般集団と比較して、予想される多臓器の機能障害(とくに呼吸器と心血管代謝)のリスクが高いことが、英国国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らによる検討で明らかにされた。同リスクの増大は高齢者に限ったものではなく、また特定の人種・民族に認められるものでもないという。これまでに心血管系・代謝系・腎臓系・肝臓系に影響を与える肺外機能障害と、COVID-19との関連の可能性が指摘されており、最近のエビデンスとして、COVID-19で入院した患者は、退院後に死亡および再入院する割合が高いことが示されているが、多臓器疾患の長期疫学については定量化されていなかった。結果を踏まえて著者は、「post-covid syndromeの診断・治療・予防は、特定の臓器・疾患に限定することなく統合的なアプローチで臨むことが必要であるとともに、リスク因子を確定するための研究が急がれる」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。イングランドCOVID-19元入院患者4万7,780人と適合一般集団を比較 研究グループは、病院から退院したCOVID-19患者の臓器別の機能障害発生率を、適合対照の一般集団と比較し定量化する検討を、後ろ向きコホート研究で行った。 イングランドのNHS病院から2020年8月31日までに生存退院したCOVID-19元入院患者4万7,780人(平均年齢65歳、男性55%)を特定し、イングランド住民約5,000万人より過去10年の電子健康記録で個人的および臨床的特徴について正確にマッチさせた対照と比較検討した。 主要評価項目は、2020年9月30日までの再入院(対照群はあらゆる入院)率、全死因死亡率、呼吸器・心血管・代謝・腎・肝の各疾患診断率であった。それぞれ年齢、性別、人種・民族別の割合も算出した。元入院患者の再入院率は一般集団の4倍、退院後死亡率は8倍 平均追跡期間140日間で、生存退院したCOVID-19元入院患者の約3分の1(1万4,060/4万7,780人)が再入院し、退院後の死亡は10人に1人超(5,875人)であった。それぞれの発生頻度は適合対照群と比べて、再入院率は4倍、死亡率は8倍高かった。 呼吸器疾患(p<0.001)、糖尿病(p<0.001)、心血管疾患(p<0.001)の診断率も、COVID-19元入院患者で有意に上昇した。それぞれ1,000人年当たりの診断例は770(95%信頼区間[CI]:758~783)、127(122~132)、126(121~131)であった。 率比は、70歳以上よりも70歳未満の患者のほうが大きく、白人集団よりも少数人種・民族群で大きかった。最も大きな差がみられたのが、呼吸器疾患についてで、70歳未満10.5(95%CI:9.7~11.4)vs.70歳以上4.6(4.3~4.8)、非白人11.4(9.8~13.3)vs.白人5.2(5.0~5.5)であった。

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第52回 40~50代は必見!ワクチンオタクの筆者が薦める新型コロナ以外のワクチン4選

コロナ禍の影響で私自身が週刊誌などから新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)について取材を受ける機会が増えている。もちろん週刊誌なども最初はいわゆる「大御所」の医師にあの手この手でコンタクトを取ろうとするのだが、こうした医師たちは多忙なことに加え、取材を受ける場合でも新聞、テレビなどの大手メディアに予定を押さえられていることが多く、捕まえにくい。そんなことで第2候補、第3候補としてコロナ禍でのさまざまなテーマで取材依頼が舞い込んでくる。まあ、同じメディアに身を置くゆえに頼みやすいことも影響しているのだろう。先日もある取材依頼があったのだが、それは珍しく直接的にコロナに関連するものではなかった。たまたま、SNSのFacebookに書いた私の投稿に知人の編集者が目を止めて、取材をさせてほしいと連絡があったのだ。その投稿とは私のワクチン接種歴である。3月半ば、私は国立国際医療研究センターで国内未承認のダニ脳炎ウイルスに対する3回目のワクチン接種を完了。これにより過去約2年で20種類のワクチン接種を終了した。以下はこの間に私がワクチン接種を完了した感染症である。A型肝炎B型肝炎麻疹風疹ポリオジフテリア破傷風百日咳おたふく風邪帯状疱疹腸チフス狂犬病コレラヒトパピローマウイルス髄膜炎(B群も含む)インフルエンザダニ脳炎黄熱病肺炎球菌日本脳炎現在私は51歳。この年齢と照らし合わせておやっと思うものもあるだろう。たぶん、その筆頭は麻疹・風疹ではないだろうか。私の場合、どちらも罹患歴もなく、これまでワクチン接種歴もなかった。風疹に関しては男子がワクチン接種対象となっていなかった年代、なおかつたまたま罹患したことがなかった。麻疹は私の世代でも1歳時にワクチン接種を受けるはずだが、ある事情によりワクチン接種をスキップしてしまった。それは生後3ヵ月の頃、当時4歳だった姉が麻疹を発症、姉か私のいずれかを隔離するわけにもいかず、かかりつけ医が私に免疫グロブリンを注射。当時こうしたケースは1歳時点でのワクチン接種で抗体が作られにくいと考えられ、通常の接種をスキップされてしまっていたのである。また、学生時代にバックパッカーだったこともあり、当時は抗体価持続期間10年と言われていた黄熱病ワクチンを接種したことがある。現在では抗体持続期間は生涯とされている。しかし、当時のイエローカードは10年経過した段階で無効と思い廃棄してしまっていた。そんなこんなで再接種した次第である。そもそも、なぜこんなにワクチンを打ったのか? きっかけは2つある。最初のきっかけは2018年2月4日にさかのぼる。この日は語呂合わせで「風疹の日」で、たびたび流行していた風疹のワクチン接種を呼びかけるイベントが成田空港で行われていた。その取材に赴き、妊娠中に風疹に感染し、先天性風疹症候群の娘さんを出産した「風疹をなくそうの会『hand in hand』」共同代表の可児 佳代氏の講演を聞いた。可児氏の娘・妙子(たえこ)さんは先天性風疹症候群により生まれつき目、耳、心臓に重い障害を持ち、闘病の末に18歳で短い命を終えていた。妙子さんの写真を手に話す可児氏の姿に衝撃を受け、その後しばらくぼーっとしたまま空港内を徘徊したのを覚えている。この時のイベントで実施していた無料抗体検査を受け、後日郵送で届いた結果で私にはやはり抗体がないことが判明した。そこで知人の医師に相談し、麻疹・風疹混合ワクチンを接種した。多くの方がご存じのように、かつては麻疹も風疹もワクチン接種は1回のみだったが、その後ワクチン接種での抗体獲得状況に関する研究が進み、2回接種で抗体獲得がほぼ確実になることが分かった。今では麻疹、風疹ともワクチン接種は2回が原則となっている。この時は知人の医師と2回目をどうしようか話し合ったが、医師からは「流行地域に行くならばまた来月接種するというのもありかもしれないが、そうでなければ1~2年後でいいのではないか?」と提案され、そのようにすることになった。そうこうするうちに2019年に家族と南アジアのブータンを旅行することになったのが第2のきっかけだ。このとき渡航前に調べたところ、現地では狂犬病、腸チフス、日本脳炎、コレラといった感染症のリスクがあることが分かった。たまたま前述の知人の医師のところでは国内未承認のものも含め、これらのワクチンがすべて接種できることがわかり、早速接種することにした。その際に知人医師のところではかなり数多くのワクチンを接種できることが分かった。経歴にもある通り、私は災害現場や海外の紛争地の取材などもする。その意味では数多くのワクチンを接種しておいて損はない。ということで、次々に接種し始めたのである。知人医師のところで接種できなかったダニ脳炎、髄膜炎B群、帯状疱疹(シングリックス)は国立国際医療研究センターのトラベルクリニックで接種した。ちなみにこのうちヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関しては、接種を申し出た際に知人医師からは「もういいんじゃないの?」と笑われた。そりゃ50代の不活発なおじさんにはほぼ不要である。ただ、ご存じのようにHPVワクチンに関してはさまざまな問題が噴出している。その報道にかかわる際にこのワクチンに懐疑的な人たちから「じゃあ、あなたは接種したんですか?」と問われて、接種していないと答えればそれだけで揚げ足を取られかねない。ということで、少しでも説得力を付けるために接種したというのが実際だ。さて前置きが長くなったが、ではどんな取材を受けたかというと、端的に言えば「新型コロナをきっかけにワクチンに関する関心が高まっている今、一般の人に接種をお薦めするワクチンを教えて欲しい」というテーマだった。ちなみに取材依頼元の週刊誌のメイン購読層は40~50代の男性である。そこで私がお薦めしたのが麻疹・風疹ワクチン、HPVワクチン、おたふく風邪ワクチン、破傷風ワクチンである。麻疹・風疹ワクチンを薦めたのは、私のような公的に風疹ワクチンを接種する機会がなかった1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性は、近年の風疹流行の媒介者であることが明らかなため、国が2019年~2022年3月末までの3年間は無料で抗体検査と予防接種を受けられるクーポンを発行しており、一部の男性にとっては確実にお得だからだ。しかも、このクーポンで抗体がないと判定されてワクチンが接種される際は、基本的に麻疹・風疹混合ワクチンが選択される。つまり、主に空気感染し一度流行すると厄介な麻疹の阻止にもつながるという接種者個人はもちろん、社会全体にとっても「2度おいしい」のである。HPVに関しては、ご存じのように性感染症であり、男性ではオーラルセックスなどをきっかけに中咽頭がんに罹患するおそれがある。中咽頭がんは胃がんや大腸がんのように定期健診もなく、見つかった段階でかなり進行しているケースも少なくない。そして手術や化学放射線療法の合併症である発声困難や味覚障害でQOLが著しく低下するケースもあるほか、最悪は死に至る。それがワクチン接種で大幅にリスクを低下させることができる。おたふく風邪ワクチンは睾丸炎による男性不妊の予防、破傷風ワクチンは災害ボランティア活動などで比較的感染の機会が多いというのが推奨理由である。まあ、この辺は本サイトの読者である医療者の方々からは異論があるかもしれないが、少なくとも個人的には大きく外れてはいないと思っている。ちなみにこれまでこの接種にかかった費用は約40万円。もはや趣味の域であると言っても差し支えなく、私自身も最近では「趣味はワクチン接種」と公言している。実際、趣味の域を極めるべく、将来的には国内で接種が不可能なEU承認のエボラワクチン、中国のみで承認のE型肝炎ワクチン、アメリカのみで承認の炭疽菌ワクチンもコロナ禍終息後に機会があれば接種してみたいところ。これは冗談ではなく真面目な話。もちろん飛行機に乗って接種しに行きますので、何らかの情報や伝手がある方は編集部にご一報ください(笑)。ちなみにどの雑誌に掲載されるかというと、一部では男性でも購入しにくいと言われる数少ないカタカナ名の男性週刊誌である。まあ、どんな反応があるか、それともまったく反応がないのか、個人的にもちょっと興味がある。

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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英国のCOVID-19検査・追跡・隔離システム、順守率低調/BMJ

 COVID-19パンデミックの当初11ヵ月間における英国での検査・追跡・隔離システムの順守について調査した結果、経時的に多少の改善は認めるものの順守率は低調だったという。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLouise E. Smith氏らが、オンライン調査の結果を報告した。検査・追跡・隔離システムは全英のCOVID-19回復戦略の柱の1つであり、このシステムの成功は、症状が認められた場合は隔離し、発症した場合は検査し、感染が確認されたら濃厚接触者の情報提供を得ることに依存している。著者は、「実用的なサポートと金銭的補償がシステムの順守を改善する可能性がある。男性、若年層、医療福祉関連等の労働者を対象としたメッセージや政策も必要かもしれない」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。オンライン調査のデータを解析 研究グループは、英国保健省に代わりBMG Researchが実施したオンライン調査を用い、「COVID-19 Rapid Survey of Adherence to Interventions and Responses(CORSAIR)study」の一環として解析した。対象は、2020年3月2日~2021年1月27日(調査開始第6週~第42週の計37週)の調査データで、16歳以上の英国在住者5万3,880例から得られた7万4,697件の回答(37週、各週約2,000件)。 調査項目は、COVID-19の主な症状の有無(咳嗽、高熱/発熱、嗅覚/味覚消失)、症状を有する場合は自己隔離しているか、症状が現れた場合は自己隔離する意思があるか、症状を有する場合は検査を要請したか、症状が現れた場合は検査を要請する意思があるか、濃厚接触者について詳細を共有する意思があるか、であった(いずれも自己報告)。症状を有し自己隔離した人は42.5%、検査を自ら受けた人は18% 参加者の51.5%(95%信頼区間[CI]:51.0~51.9、2万6,030/5万570例)のみに、COVID-19の主な症状が認められた。最新の調査週(2021年1月25日~27日)に収集されたデータでは、50.8%であった(95%CI:48.6~53.0、1,019/2,007例)。 すべての調査週にわたる期間補正後完全自己隔離順守率は42.5%(95%CI:39.7~45.2%、515/1,213例)であり、最新の調査週では同51.8%(40.8~62.8、43/83例)であった。 COVID-19検査の要請は、全週で18.0%(95%CI:16.6~19.3%、552/3,068例)であり、最新の調査週では22.2%まで上昇した(14.6~29.9%、26/117例)。 濃厚接触者の詳細を共有する意思があると報告した人の割合は、全週で79.1%(95%CI:78.8~79.5%、3万6,145/4万5,680例)、最新週で81.9%(80.1~83.6、1,547/1,890例)であった。 非順守は、男性、若年、扶養の子供がいる世帯、社会経済的に低階級、パンデミック中の経済困難の大きさ、主要セクター(医療福祉関連等)での労働と関連していた。

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医師がマスコットとしてSNSで発信する理由 コロワくん×コム太の犬対談

日米欧で活躍する日本人医師ら10人が、新型コロナワクチンに関する一般市民の不安や疑問を解決するために結成した「コロワくんサポーターズ」。代表は山田 悠史氏(米国内科専門医)が務め、LINEボット「コロワくんの相談室」などの情報提供プロジェクトを手掛ける。今回、プロジェクトの公式マスコット「コロワくん」と、ケアネットの公式マスコット「コム太」の対談が実現。ワクチンに関する真面目な話から、SNSで犬として発信する裏話まで、2人(匹)で語り合った。コロワくん「コロワくんサポーターズ」の公式マスコット。LINEボット「コロワくんの相談室」では、寄せられた疑問に日々真面目に答えている。秘めたる思いがあり、コム太に今回の対談を申し込んだ。好物は大福餅。コム太ケアネットの公式マスコット。主にTwitterに生息しているが、本サイトではとくに推されていない。バナーでの汎用性がウリで、社内に熱狂的なファンが数人いる。好物はサーロインステーキ。※いずれも、中の人は内科医ですが、この対談ではマスコットキャラクターになりきって話をしています。「コロワくんサポーターズ」公式HP副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット医師が主体のプロジェクトにマスコット犬がいる理由 コロワくんはじめまして、コム太さん!「コロワ」というワン。SNSで活躍している先輩として、尊敬しているワン!! 今日はよろしくワンワン!!  コム太こちらこそよろしくだわん!センパイだなんて照れるわん。コロワくんにさっそく質問なんだけど、「コロワくんサポーターズ」は医師たちのプロジェクトなのに、どうしてマスコットキャラクターがいるの? コロワくんそれはですね、一般的な注射やワクチンって、痛い、怖い、とがっている…など、どうしてもマイナスなイメージがありませんか?このプロジェクトでは、「注射やワクチンに対する不安の緩和につながるような、あたたかい存在が必要なんじゃないか」という話になったワン! コム太なるほど。それでマスコットキャラとして、コロワくんが生まれたわんね!でも、なんで犬なの? コロワくん実は、先に「コロワ」っていう名前が決まったワン。新型コロナワクチン…コロナワクチン…コロワ、みたいな。それで、「コロワ」っぽいキャラクターは犬だろうって、連想ゲーム的な発想で生まれたワン。コム太センパイは、なんで犬のアカウントになったワン? コム太コム太は実は最初から犬だったわけではなくて、3年前に中の人が変わって、「研修医や若い世代にもリーチできるように」って方針になったわんけど、アカウント自体はニンゲンで、最初は全然うまくいかなかったわん。 コロワくんどんな感じだったんですかワン? コム太キャラ作りに思いっきり迷走して、最初は「魁!!◯塾」の江◯島平八みたいなテイストにしてた時期もあったわん。「これが研修医にオススメなのである!見るべし!」みたいな。これがまぁ刺さらなくて…。そもそも世代的に合うわけがないわんけど(笑)。 コロワくん大変な時代もあったんですワンね。そこから犬アカウントに行き着いたのは? コム太キャラをつかみかねた結果、上から「昔作った犬のキャラがあるんで、今後はこれで」って、言われるがまま犬になったわん。だから、コロワくんみたいに、「不安を和らげよう」という立派な志があったわけではなく、要するに社内事情だわんね。 コロワくん「ケアネットの犬コム太」っていうアカウント名の裏事情を垣間見た気がしますワン…(笑)。 コム太幸運なことに、犬キャラがハマって、そこからフォロワー数が伸び始めたわん。まさに「自然体でのアカウント運営が一番よい」って、SNS運用ノウハウ本とかに書かれがちなとおりになったわん。とりあえず「〜わん」をつけておけば丸く収まるみたいなとこもあって助かってるわん(笑)。ところで、コロワくんの活動は順調ですかわん? コロワくんはい!! ありがたいことに、LINEボット「コロワくんの相談室」は、NHKをはじめとするテレビや朝日新聞などの全国紙、さらには米国のCNNやワシントン・ポスト、英国のBBC、ロイターなど海外のメディアでも紹介されたんですワン。 コム太すでに海外からも注目されているマスコット犬とは…!ところで、コロワくんは何犬なのかわん? コロワくん柴犬です!! 誕生当初、犬種は決まっていなかったのですが、Twitterで柴犬愛好家の方のアカウントにフォローされて(笑)、それから柴犬ということになりましたワン。CNNの記事にも「Corowa-kun is a Shiba Inu-inspired chatbot」と書かれています。参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN) コロワくん別の取材では、代表の山田先生に対して、「この犬はあなたをモチーフにしたの?」と聞かれたこともあります。イメージして作ったわけではないのですが、山田先生からは「毎日向かい合っているからか、だんだん似てきている気がする」って言われてちょっとうれしかったですワンワン! コム太「犬は飼い主に似る」ってことわざを体現しているわんね(笑)。ちなみにコム太の犬種は“純血種の社畜”って設定にしてるわんけど、愛好家の方にフォローしていただけるなら、今日から柴犬ってことでもいいかもしれないわん…!そういえば、先日、本の表紙でコロワくんを見つけたわん!2021年4月22日発売!! コロワくんそうなんです!! LINEボットやSNS公式アカウントには、日々たくさんの新型コロナワクチンに関する疑問が寄せられるので、その一部を一問一答形式でまとめましたワン。これをきっかけに、普段LINEを使わない人にも、正しい情報が届くといいなと思っています。LINEボットでは答えきれないことも書いているので、すでに使ってくださっている人にも役立つ内容になっていますワン!! コム太めちゃくちゃ社会貢献活動してるわん…!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提 コロワくんコム太さんは、もう3年ほどTwitterをやっているそうですが、SNSでのキャラクター作りで気を付けていることはありますかワン? コム太そうだわんねぇ…。一番大事にしてるのは、言いたいことを言うために、そうではない物事を否定しないこと。安易な「二項対立」にしないようにしてるわん。その分、表現がふんわりしてシャープさに欠けることもあるわんけど、傷つく人がなるべく少ない切り口を模索してるわん。 コロワくんそれって、日常的な患者さんとの対話で気を付けていることとも通じて、なんだか染みますワンね。僕も広く受け入れてもらえるキャラを目指していますが、ワクチン反対派からは辛辣なコメントがつくこともあって…。その言葉に僕たちが傷つくだけならまだいいのですが、「ワクチンを打とう」という前向きな気持ちを持っている人たちに対しても、ネガティブに響いてしまったらどうしようと思ってしまいますワン。 コム太ワクチンもそうだけど、人はそもそも「わからないもの」に対して不安を抱きやすいわん。確かに、そうやって不安が連鎖して、ワクチンの接種率が下がってしまうと困るけど、それに対する反論がストリクト(厳格)過ぎるのもよくないと思ってて。なぜなら、不安を抱えている人に正論を掲げても、わかり合えることってほとんどないからだわん。 コロワくんそうですよね。今の活動では、理論的なことやエビデンスを機械的に投げかけるようなことはしないように心掛けていますワン。 コム太うんうん。情報の正しさはもちろんだけど、相手の不安やいろんなネガティブな感情を理解しようとすることも同じくらい大事で、それがその先の相互理解につながる第一歩だと考えているわん。だから、コロワくんの活動にはとっても共感できるわん!まるっこいフォルムもやわらかいイメージにピッタリだわん!! コロワくんありがとうございます!!あと、これもぜひ聞いておきたいのですが、これまでSNSをやっていて、苦しい局面に出合ったことはありますかワン? コム太うーん、「これ絶対おもしろいだろ!」っていう渾身のボケツイートに、まったく「いいね」がつかなかったときだわん…(笑)。 コロワくん(苦笑) コム太幸い、これまで大きな炎上経験もなく、たまにコム太のイラストを描いてくれる人もいて、フォロワーさんとのコミュニケーションは今のところうまくいってると思えているわん。ときには、「この情報古いですよ」ってご指摘を頂くこともあるわんけど、すぐに謝罪・訂正ツイートで対応して、ツイ消しはしないようにしてるわん。 コロワくん勉強になりますワン!! コム太逆に、公式アカウントで犬キャラをやっていると、個人アカウントでもつい「わん」って言っちゃって、焦ったことは何度もあるわん(笑)。 コロワくんわかります!!以前、僕も個人アカウントで「ワン」をつけてつぶやいてしまって、慌てて消したのですが、数人には見られてしまいました(汗)。 コム太あるある(笑)。それでは最後に、今後の目標を聞かせてもらってもいいかわん? コロワくんLINE友達は数万人いるのに、Twitterのフォロワーが少ないので、SNS上での活動もしっかりやっていきたいと思っていますワン。今は時期的にもワクチン関係の活動に注力していますが、今後ワクチン接種が進んで活動が一段落したら、SNS上などでデマや誤情報が拡散されてしまうところにどうアプローチするかなど、もう少し手を広げて長期的な視野で考えていきたいと思っていますワンワン。 コム太いやぁ、大きくて素晴らしいビジョンだわんね!夢があるわん。コム太の目標はねぇ、そういう大きいのじゃなくて、まず「年内にフォロワー7,000人」っていう具体的な数値目標を果たさないと、中の人がクビになってしまうわん…(涙)。 コロワくん世知辛いですワン…。 コム太でも、今日の対談がとっても楽しかったから、これからも、このアカウントをきっかけに面白い人と対談する機会があればいいなと思うわん。仲良くなった証しに、顔交換するアプリで写真撮ろうわ〜ん! コロワくんいいですね!犬同士盛り上げていきましょう!! 今日はありがとうございましたワン!参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN)2021年4月22日発売!!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提

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AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。NAAT陽性サンプルをシークエンシング 試験は18歳以上のボランティアを登録して行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)が投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱といったCOVID-19症状を呈した際にも実施された。 採取したスワブについては、SARS-CoV-2に関する核酸増幅検査(NAAT)を行い、陽性サンプルは、COVID-19ゲノム英国コンソーシアムでシークエンシングを行った。生ウイルス・マイクロ中和抗体測定法によりB.1.1.7系統ウイルスに対する中和抗体反応と、標準的な非B.1.1.7系統ウイルス(Victoria)に対する中和抗体反応を測定した。 有効性の解析では、血清反応陰性でNAAT陽性者の、ワクチン2回目接種後14日以降の症候性COVID-19などが評価された。被験者が接種を受けたワクチン別の解析も実施。ワクチン有効性については、ポアソン回帰モデルを用いて算出した1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19群vs.MenACWY群)で評価した。実験室でのウイルス中和活性、B.1.1.7系統は非B.1.1.7系統より低値 有効性コホートの被験者は2020年5月31日~11月13日に集められ、同年8月3日~12月30日に2回目のワクチン接種を受けていた。主要有効性コホートの被験者数は8,534例で、うち6,636例(78%)が18~55歳、5,065例(59%)が女性だった。 2020年10月1日~2021年1月14日に、520例がSARS-CoV-2感染を呈した。これら感染者から1,466個のNAAT陽性スワブが採取され、401個のスワブ(311例)について、シークエンシングに成功した。 実験室でのワクチン誘導抗体に対するウイルス中和活性は、Victoria系統よりもB.1.1.7系統は低値だった(幾何平均値の比:8.9、95%信頼区間[CI]:7.2~11.0)。 症候性NAAT陽性感染者に対する臨床的ワクチン有効性は、B.1.1.7系統で70.4%(95%CI:43.6~84.5)、非B.1.1.7系統では81.5%(67.9~89.4)だった。

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新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

 当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。 欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。 新型コロナウイルスの血栓形成メカニズムはわからない。動脈硬化も経過の長いimmunothrombosisと考えれば、心筋梗塞などの動脈硬化・血栓性疾患の発症予防・治療に有効なスタチンも新型コロナウイルス感染のimmunothrombosisに有効かもしれない。このスタチンの有効性も探索的に検討された。 日本以外の諸国では静脈血栓症予防・治療の標準治療として低分子ヘパリンが確立されている。低分子ヘパリンのうち、エノキサパリンを1日40mgの固定用量として使用する群と、体重1kg当たり1mgにて使用する群にランダムに振り分けた。有効性の1次エンドポイントとして静脈あるいは動脈血栓症・ECMO使用・死亡の複合エンドポイントを用いた。ICUに入院する新型コロナウイルス感染は怖い。30日以内の1次エンドポイント発現率は予防量低分子ヘパリン群にて44.1%、用量を増やしても発現率は45.7%であった。圧倒的多数の有効性1次エンドポイントは死亡に直結した。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓が多いわけではない。病態の主因がimmunothrombosisであっても、現在われわれがもっている抗凝固介入では予後を大きく改善できない。 遠回りかもしれないが、新型コロナウイルス感染によるimmunothrombosisのメカニズムを解明し、予後不良に寄与する因子を解明し、その因子に対する選択的治療薬の開発が必要である。抗血栓薬開発は既存の心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓に対しては出揃った感があるが、新型コロナウイルスに対しては基本に立ち返って革新的創薬が必須であることを本研究は示したことになる。

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「アクテムラ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第46回

第46回 「アクテムラ」の名称の由来は?販売名アクテムラ®点滴静注用80mgアクテムラ®点滴静注用200mgアクテムラ®点滴静注用400mgアクテムラ®皮下注162mgシリンジアクテムラ®皮下注162mgオートインジェクター一般名(和名[命名法])トシリズマブ(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果【点滴静注用製剤】○既存治療で効果不十分な下記疾患関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、成人スチル病 ○キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性タンパク高値、フィブリノーゲン高値、 赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身けん怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。 ○腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群 【皮下注製剤】既存治療で効果不十分な下記疾患 ○関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) ○高安動脈炎、巨細胞性動脈炎用法及び用量【点滴静注用製剤】 〈関節リウマチ及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを4週間隔で点滴静注する。〈全身型若年性特発性関節炎、成人スチル病及びキャッスルマン病〉 通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを2週間隔で点滴静注する。なお、 症状により1週間まで投与間隔を短縮できる。〈サイトカイン放出症候群〉通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として体重30kg以上は1回8mg/kg、体重30kg未満は1回12mg/kgを点滴静注する。【皮下注製剤】〈関節リウマチ〉通常、成人には、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回162mgを2週間隔で皮下注射する。なお、効果不十分な場合には、1週間まで投与間隔を短縮できる。〈高安動脈炎、巨細胞性動脈炎〉通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回162mgを1週間隔で皮下注射する。警告内容とその理由【点滴静注用製剤:〈効能共通〉】【皮下注製剤】1.感染症本剤投与により、敗血症、肺炎等の重篤な感染症があらわれ、致命的な経過をたどることが ある。本剤はIL-6の作用を抑制し治療効果を得る薬剤である。IL-6は急性期反応(発熱、CRP増加等)を誘引するサイトカインであり、本剤投与によりこれらの反応は抑制されるため、感染症に伴う症状が抑制される。そのため感染症の発見が遅れ、重篤化することがあるので、本剤投与中は患者の状態を十分に観察し問診を行うこと。症状が軽微であり急性期反応が認められないときでも、白血球数、好中球数の変動に注意し、感染症が疑われる場合には、胸部X線、CT等の検査を実施し、適切な処置を行うこと。【点滴静注用製剤】〈効能共通〉2.治療開始に際しては、重篤な感染症等の副作用があらわれることがあること及び本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含めて患者に十分説明し、理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ本剤を投与すること。〈関節リウマチ及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉3.本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識といずれかの疾患の治療経験をもつ医師が使用すること。〈全身型若年性特発性関節炎及び成人スチル病〉4.本剤についての十分な知識といずれかの疾患の治療の経験をもつ医師が使用すること。〈サイトカイン放出症候群〉5.本剤についての十分な知識と腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群の治療の知識・経験をもつ医師が使用すること。【皮下注製剤】2.治療開始に際しては、重篤な感染症等の副作用があらわれることがあること及び本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含めて患者に十分説明し、理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ本剤を投与すること。3.本剤の治療を行う前に、各適応疾患の既存治療薬の使用を十分勘案すること。4.本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の知識・経験をもつ医師が使用すること。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)【点滴静注用製剤】【皮下注製剤】 1.重篤な感染症を合併している患者[感染症が悪化するおそれがある。]2.活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある。]3.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年4月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年1月改訂(第27版)医薬品インタビューフォーム「アクテムラ®点滴静注用80mg・アクテムラ®点滴静注用200mg・アクテムラ®点滴静注用400mg/アクテムラ®皮下注162mgシリンジ/アクテムラ®皮下注162mgオートインジェクター」2)中外製薬:PLUS CHUGAI

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ワクチン接種で役立つ筋肉注射の手技とコツ【今、知っておきたいワクチンの話】特別編

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、3月より医療者から始まり、4月からは高齢者、基礎疾患のある方、一般の方へと開始される予定です。現在、承認され接種可能なワクチンはファイザーの「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注)のみであり筋肉注射となっております。今後追加承認が予想されるモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンも筋肉注射による接種となっています。その理由として、「不活化ワクチンによる局所反応は、皮下注射より筋肉注射の方が腫れにくいこと」、「皮下注射よりも筋肉注射の方が痛みが少ないこと」、「皮下注射より血流が豊富な筋肉注射の方が免疫が付きやすいこと」などがあげられています。そこで、本稿では、日本プライマリ・ケア連合学会 予防医療・健康増進委員会ワクチンチームの協力により、同委員会の中山 久仁子氏の解説でこれから実際に臨床現場で接種する際の筋肉注射の手技について、その手順を動画で説明します。また、新型コロナワクチンでは、接種後に懸念されているアナフィラキシーショックでのアドレナリン注射の対応を説明いただきます。筋肉注射は、今回のCOVID-19ワクチンなど特別なものではなく、HPVワクチン、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどでも行われるものです。この機会に手技に慣れていただき、経験を深めてください。筋肉注射の接種方法のコツ筋肉注射の部位などについて部位:上腕三角筋(1)肩峰から下ろした線(2)前後の腋窩線の頂点を結んだ線(1)と(2)が交わる点または肩峰から3横指下針の長さ:長さ25mmの針を基本的に根元まで刺して注入する痩せ形の体形:ゆっくりと針を進め、確実に筋肉内に注入、または長さ16mmの針に付け替えて根元まで刺して注入高度肥満:長さ38mmの針に付け替えて根元まで刺して注入針の角度:90度、垂直吸引確認:不要筋肉注射の穿刺部位画像を拡大する筋肉注射の手順※接種では、接種者・被接種者ともに座位で行う1)シリンジにワクチンを入れ、溶液に異常がないか目視2)手を下に下ろしていただく(リラックス)3)三角筋の位置を確認する4)三角筋の辺縁を触って確認する注:筋肉をつままない5)アルコールで接種する部位を消毒する6)注射針を皮膚面に対して垂直(直角)に刺入する7)内筒を押しワクチン溶液を全量注入する注:内筒を引かない8)針を抜き、軽く圧迫する。揉まない注:抗凝固薬・抗血小板薬内服中の方は2分間圧迫対象者に痛みを感じさせない接種のために1)筋注は筋肉内に打つ(一般的に不活化ワクチンを皮下に打つと痛い)2)内筒(プランジャー)を引かない(逆血確認不要)3)ワクチンを素早く注入し、刺入中は針の先を動かさない4)接種後に接種部位を圧迫する5)気を紛らわせるように話しかけたり、演技する。接種者は笑顔で!アナフィラキシーショックでの対応:アドレナリン注射(商品名:エピペンなど)の使い方【注射部位】アドレナリンの筋肉注射は患者を横臥位で施行アドレナリンの筋肉注射の部位は大腿中央前外側【エピペン筋肉注射の手順】1)カバーキャップを指で押し開け、注射器を取り出す2)ニードルカバー(オレンジ色)を下に向け、注射器の真ん中を片手で保持、もう片方の手で青色の安全キャップを外し、ロックを解除3)注射器を太ももの前外側に垂直になるようにし、ニードルカバーの先端を「カチッ」と音がするまで強く押し付ける4)太ももに押し付けたまま、5まで数を数える5)注射器を太ももから抜き取る6)注射後、ニードルカバーが伸びているかどうか確認。ニードルカバーが伸びていれば注射は完了アドレナリン注射での注意1)アドレナリンの筋肉注射については、下記の厚生労働省の通知をご参照ください。「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について」「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について(その2)」2)エピペンの処方または使用する医師はマイランEPD合同会社が提供するエピペン登録医講習の受講が必要です。詳しくは「エピペンサイト」をご参照ください。使用に関して動画の解説もあります。参考となるサイト「新型コロナワクチン 今わかっていること まだわからないこと」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム制作)同講演 解説資料(PDF)「新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版 ダイジェスト版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)講師紹介

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新型コロナワクチン、予診票で確認すべきポイントは?/厚労省

 4月12日以降に予定されている高齢者への新型コロナワクチン接種開始を前に、厚生労働省は3月26日、新型コロナワクチン「予診票の確認のポイント」を公開した。予診票記載の14項目について接種前に確認すべき点がまとめられている。事務職員が確認可能な項目、最終的に医師の確認が必要な項目についても整理されている。既往症、現在の治療内容についての確認ポイント 予診票には、「現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか」という問いが設けられ、抗凝固薬(血をサラサラにする薬と表記)の利用状況を問う項目が設けられている。確認ポイントとしては、とくに以下に該当するかに注意して接種の判断をするよう求めている:・基礎疾患の状態が悪化している場合や全身状態が悪い場合 体調が回復してから接種することが大切なため、体調が悪いときの接種は控える。体調がよくなった頃に、改めて次の接種を相談するよう説明する。接種後の軽度の副反応が重篤な転帰に繋がることのないよう、とくに慎重に予防接種の適否を判断する必要がある。・免疫不全、血が止まりにくい病気のある場合や、抗凝固薬を服用している場合 免疫不全のある方は、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクが高いとされている。米国CDCの見解では、現時点で、有効性と安全性に関する確立されたデータはないが、他の接種不適当者の条件に該当しなければ、接種は可能としている。 血が止まりにくい病気のある方や、抗凝固薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクがあるため、接種後2分以上、強めに接種部位を圧迫してもらう必要はあるが、接種は可能(なお、抗血小板薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクではないとされているので、接種は可能。ただし、止血に時間がかかる可能性があることに留意が必要)※なお厚労省では、「血をサラサラにする薬を飲まれている方へ」と題した情報提供用資料も公開している。・アレルギー疾患のある方 アレルギー歴についての確認ポイントを参照。アレルギー歴についての確認ポイント 予診票には、「薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか」という問いが設けられ、「薬・食品など原因となったもの」が記載できる。ここでの確認のポイントとしては、下記のようにまとめられている:・接種するワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往のある人は、接種不適当者に該当・1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は、2回目の接種はできない・食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症含む)、蕁麻疹、アレルギー体質等だけでは、接種不適当者にはならず、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能・ただし、即時型のアレルギー反応の既往歴がある人は、接種要注意者として、接種後30分間の経過観察をする さらに、「接種するワクチンの成分」について、ファイザー社のワクチンに含まれるポリエチレングリコールや、交差反応性が懸念されているポリソルベートが含まれる製品例や、接種判断の考え方が解説されている。 今回発表された「予診票の確認のポイント」では、上記2項目を含め、下記の全14項目について、確認のポイントとその解説がまとめられている。1~4、13は事務職員等が確認可能とされ、その他の項目も、記入の有無などの確認は事務職員等が行うことができるとされている。5~12、14については、最終的に医師が確認した上で接種を判断する必要があるとしたうえで、これらの項目も、記載内容を医師以外の医療従事者があらかじめ確認することで、医師の予診の時間が短縮されると考えられるとしている。[確認のポイントが示された予診票記載の14項目]1.新型コロナワクチンの接種を初めて受けますか。2.現時点で住民票のある市町村と、クーポン券に記載されている市町村は同じですか。3.「新型コロナワクチンの説明書」を読んで、効果や副反応などについて理解しましたか。4.接種順位の上位となる対象グループに該当しますか。5.現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか。6.その病気を診てもらっている医師に今日の予防接種を受けてよいと言われましたか。7.最近1か月以内に熱が出たり、病気にかかったりしましたか。8.今日、体に具合が悪いところがありますか。9.けいれん(ひきつけ)を起こしたことがありますか。10.薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか。11.これまでに予防接種を受けて具合が悪くなったことはありますか。12.現在妊娠している可能性(生理が予定より遅れているなど)はありますか。または、授乳中ですか。13.2週間以内に予防接種を受けましたか。14.今日の予防接種について質問がありますか。

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COVID-19施設内感染対策案を発表/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療では、医療機関の施設内感染対策は重要な課題である。実際、院内感染によるクラスターの発生により通常の診療ができなくなった医療機関も全国に存在する。 こうした状況を鑑み、日本感染症学会(理事長:東邦大学医学部教授 舘田 一博氏)は、3月29日に「COVID-19施設内感染アンケート調査を踏まえた施設内感染対策案」を同学会のホームぺージで発表、公開した。 本対策案では、263施設(追加288施設)にアンケートを行い、実際に施設内伝播のあった42施設の回答をまとめた。この回答結果から反省点や今後の対策が示唆されている。8割の医療機関が2週間でクラスターを収束・500床以上の施設が40.5%を占め、COVID-19の入院管理を行っている施設が78.6%。COVID-19に対する基本的な院内感染対策のマニュアルの整備や教育などはほぼすべての施設で実施されていた。・院内伝播事例の発端者は、患者、職員の順。院内伝播に関連した罹患者は、看護師、患者、医師の3者が大半を占めた。・発端者の覚知から1日で感染対策を行ったのは19施設(45.2%)、3日以内が32施設(76.2%)。・発端者の確認から最終発症者までの数は、85%の施設で2週間以内に収まっていた。・施設内伝播の推定された要因は、患者-職員間、職員間、患者間が上位を占めた。・濃厚接触者からの発症のみでなく、それ以外からの発症者もみられた。・施設内伝播時の感染対策としては、患者および職員など接触者へのPCR検査が約90%の施設で実施され、職員の感染対策の徹底(マスク、手指衛生、食事など)も80%以上の施設で実施されていた。また、患者の感染対策(マスク、手指衛生)、環境整備の徹底(高頻度接触面の消毒)は半数以上の施設で実施された。新規入院や外来診療の制限は半数程度であった。「感染対策マニュアル」の整備、遵守、見直しが大事 COVID-19施設内感染アンケート結果からの考察として、1)施設内伝播を経験している施設は、COVID-19患者の入院管理を行い、感染対策マニュアルをすでに整備している施設が多いことから、マニュアル内容の見直し(クラスター発生時の対応が含まれているかなど)、マニュアルが形骸化していないか、遵守されているか定期的なチェックが必要2)施設内伝播事例での罹患者は医師、看護師、患者が大半であり、日頃からの症状サーベイランスが重要3)感染経路の大半は職員間、患者間、職員-患者間であり、濃厚接触者でなくとも感染伝播事例があることから、接触者でも濃厚接触者と同等の対応が必要である。また、誰が発症しても濃厚接触者とならないような対策が必要4)発端者を覚知後、即日に感染対策を行えている施設は半数にも満たない。COVID-19の特性から発端者を覚知した段階ですでに感染が広がっている可能性があるため、事前に初動をシミュレーションしておくとともに、施設内で発端者を覚知した時点で迅速な対応が必要5)施設内伝播覚知後の新型コロナウイルス感染症検査は、無症状の接触者(職員・患者とも)に実施している施設が大半であり、無症状感染者がいることや潜伏期間を考慮すると濃厚接触者に限らず広く接触者を対象とし、施設および施設規模に応じて適切なタイミングで新型コロナウイルス感染症検査(PCR検査や抗原定量検査)を行うことが有用の5点を列挙し、注意を喚起している。院内感染対策は「事前準備と発生時」の2本柱で 施設内クラスター発生時の行動として「事前準備」と「クラスター発生時」に分けて説明している。 事前準備としては、「職員・患者ともに手指衛生やサージカルマスク着用の徹底。職員は食事時間の個食を徹底し、食器やリネンなどの共有を避ける」、「施設内のCOVID-19感染対策マニュアルを策定する」、「COVID-19感染対策マニュアルが遵守できているか確認する」などを提案している。 また、クラスター発生時としては、「平日・休日・夜間に関わらず事例覚知後、直ちに疫学調査を行い、対応策を検討」、「施設内対策本部の設置、感染防止策の再確認ならびに強化、院内での情報共有、保健所と密に連携を取りつつ日々の方針を決定する」、「外来診療や入院の制限を検討する」などを提案している。今後の課題は「収束の目安」や「ワクチン接種」 最後に「COVID-19施設内クラスター発時の対応でわかっていないこと、これから解決すべきこと」として未解決の項目として「外来診療、リハビリ外来、外来透析、新規院診療をどの程度停止すべきか。停止した場合はいつまで停止とすべきか」、「クラスター収束の定義」「施設状況やフェーズに応じた職員の定期的なスクリーニング検査を行うべきか」、「ワクチンを接種していれば濃厚接触者とならないのか」などを列挙し、今後の課題と位置付けている。

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COVID-19ワクチン接種の準備状況は?医師アンケート

 有効な対応策が打ち出せない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、ワクチンの接種は重症化や死亡の予防に期待がもたれている。わが国でも2月から医療従事者にCOVID-19ワクチンの接種が行われている。 今後、一般向けに接種が拡大する中で、クリニックや病院などの医療機関ではどのような準備をし、どころからワクチンに関する情報を入手しているのか、3月11日にCareNet.comはWEBアンケートで会員医師500名にその現況を調査した。アンケートでは、0~19床と20床以上に分け、4つの質問に対して回答を募集した。76%の医療機関はワクチンを実施するまたはその予定 質問1として「勤務する病・医院ではCOVID19ワクチン接種を実施もしくは予定していまか」たずねたところ「実施するまたは実施予定」と回答した会員医師は76%、「実施予定はない」と回答した会員医師は24%だった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師で「実施予定はない」が42%に対し、20床以上のそれでは「実施予定はない」が6%と規模の差で大きく分かれた。 質問2として「勤務する病・医院では、COVID19ワクチン接種のためにどのような準備を実施もしくは予定されているか(複数回答)」たずねたところ全体で「自分を含めたスタッフへの教育」(226名)、「接種専用部屋の設置」(213名)、「冷凍庫の用意」(210名)の順で多かった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師では「接種実施予定がないため何もしていない」(105名)という回答が1位であり、ワクチン接種は比較的規模のある医療機関でなされることがうかがえた。 質問3として「COVID19ワクチンの接種関連情報を主にどこから入手しているか(3つまで選択)」とたずねたところ全体で「保健所などの行政機関」(266名)、「勤務先病院や医師会」(257名)、「CareNet.comなどのWEBサイト」(194名)の順で多かった。上位3つは病床数に関係なく同じであり、こうした社会情勢下では厚生労働省、保健所や行政機関からの連絡が第一義的にあり、速報性のある医療系WEBメディアで補完されている様子がうかがえた。 質問4では「COVID19の診療やワクチンの接種における当院の工夫」を自由記載でたずねたところ「職員がワクチン接種を受けた当日は特別休暇とする」、「患者向けの教育パンフレットの作成」、「アナフィラキシーショック対策として気管内挿管などの訓練、看護師への講義を実施」、「COVID19ワクチンに関するQ&Aを作成」、「職員全員へのワクチン接種訓練を実施」など患者、自院職員への啓発だけでなく、接種のエクササイズも実施している医療機関が見受けられた。

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COVID-19の低酸素血症にヘルメット型マスクは有用か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で中等度~重度の低酸素血症患者において、ヘルメット型非侵襲的換気法は高流量経鼻酸素療法と比較して、28日間のうち呼吸補助が不要だった日数について有意差はないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのDomenico Luca Grieco氏らによる無作為化試験「HENIVOT試験」の結果で示された。急性低酸素呼吸不全の初期治療に推奨されている高流量経鼻酸素療法は、COVID-19患者に広く適用されている。ヘルメット型非侵襲的換気法は最近提唱された急性低酸素呼吸不全の代替管理法だが、有効性に関するエビデンスはなく使用は限定的とされていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で、気管挿管の必要性など、その他のアウトカムへの影響も確認する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月25日号掲載の報告。28日間で呼吸補助が不要だった日数を主要アウトカムに評価 研究グループは、ヘルメット型マスクによる非侵襲的換気が高流量経鼻酸素療法単独と比較して、COVID-19患者の呼吸補助のない日数を増やせるか否かを評価するため、2020年10月~12月にイタリアの4つの集中治療室(ICU)で多施設無作為化臨床試験を実施した(フォローアップ終了は2021年2月11日)。対象は、COVID-19で中等度~重度の低酸素呼吸不全(動脈血分圧/吸気酸素濃度比が200以下)の患者109例。 参加者は、ヘルメット型非侵襲的換気(呼気終末陽圧10~12cm H2O、プレッシャーサポート10~12cm H2O)による継続治療を少なくとも48時間受け、その後に高流量経鼻酸素療法を受ける群(ヘルメット群:54例)、または高流量経鼻酸素療法(60L/分)のみを受ける群(高流量経鼻酸素群:55例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、登録後28日間で呼吸補助が不要だった日数とした。副次アウトカムは、登録後28日以内で気管挿管を必要とした患者の割合、28日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、60日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、ICU内死亡率、入院中死亡率、28日死亡率、60日死亡率、ICU入室期間、および入院期間などであった。高流量経鼻酸素療法と有意差なし 無作為化を受けた110例のうち、109例(99%)が試験を完了した(年齢中央値:65歳[IQR:55~70]、女性21例[19%])。 無作為化後28日間で呼吸補助が不要だった日数の中央値は、ヘルメット群20日(IQR:0~25)、高流量経鼻酸素群18日(IQR:0~22)であり、統計学的有意差はなかった(平均差:2日[95%信頼区間[CI]:-2~6]、p=0.26)。 事前規定の9つの副次アウトカムのうち7つで有意差はなかったが、気管挿管率は、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に低かった(30% vs.51%、群間差:-21%[95%CI:-38~-3]、p=0.03)。また、28日間で侵襲的人工換気を不要とした日数の中央値も、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に多かった(28日[IQR:13~28]vs.25日[4~28]、平均群間差:3日[95%CI:0~7]、p=0.04)。有意差はなかったが、院内死亡率はヘルメット群24%、高流量経鼻酸素群25%だった(絶対群間差:-1%[95%CI:-17~15]、p>0.99)。

720.

循環器疾患合併COVID-19入院患者の予後規定因子を検討/日本循環器学会

 循環器疾患およびリスク因子を合併している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の臨床的背景や転帰を明らかにすることを目的としたレジストリ研究「CLAVIS-COVID」の結果の一部について、第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)で松本 新吾氏(東邦大学医療センター大森病院)が発表した。循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が増加していることから、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることが示唆された。 COVID-19患者の予後については、昨年、中国から循環器疾患合併かつトロポニン陽性の患者の予後が悪いとの報告がJAMA Cardiology誌に掲載され、米国からは年齢・性別に加えて冠動脈疾患・心不全・不整脈などの循環器疾患合併患者で予後が悪いという論文がNEJM誌に掲載された。このような中、松本氏らは昨年3月時点で、わが国で進行しているレジストリ研究が見当たらなかったことから、循環器疾患およびリスク因子(CVDRF)合併COVID-19入院患者に関する多施設共同観察研究であるCLAVIS-COVIDを立ち上げ、日本循環器学会の公式なレジストリ研究として実施している。 本研究は後ろ向き観察研究で、2020年1月1日~5月31日にCOVID-19により入院した患者のうち、循環器疾患およびリスク因子(高血圧、糖尿病、高脂血症)を合併した患者を対象とし、主要エンドポイントは院内死亡とした。 最終的に国内49施設の1,518例のデータが解析対象となり、平均年齢は57±19歳、男性が58%、全体の死亡率は9.2%、CVDRF合併症例は693例(45.7%)であった。生存退院群(1,378例)と院内死亡群(140例)で比較すると、患者背景については、年齢、男性比率、ECMO使用、ICU入室、挿管管理で有意に院内死亡群が高かった。カプランマイヤー曲線は、CVDRF合併症例が非合併症例に比べて有意に死亡率が高く、海外と同様の傾向がみられた。 CVDRF合併症例について、生存退院例(585例、84.4%)と院内死亡例(108例、15.6%)で比較すると、患者背景については、院内死亡例でより高齢で、転院・介護/療養型施設からの入院が多かった。入院時に認められた合併症については、院内死亡例では慢性/急性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、中等度以上の弁膜症、不整脈、COPD、慢性腎臓病、がんの合併割合が有意に高かった。入院時の自覚症状については、全体で一番多かったのは咳嗽(52.0%)で、息切れ/呼吸困難、悪寒、心不全症状(末梢浮腫、肺うっ血)の発現割合が院内死亡例で有意に高い一方、咽頭痛、嗅覚異常、頭痛の発現割合は生存退院例で有意に高かった。バイオマーカーについては、CRP、D-ダイマー、プロカルシトニン、KL-6、トロポニンもしくは高感度トロポニン陽性、BNP、NT-proBNPが院内死亡例で有意に高かった。このバイオマーカーの結果について松本氏は、「日本のように日常臨床で細かく繰り返し数値を取得できる国は珍しいため、貴重なデータである」と述べた。 本研究の最終的な解析結果の論文は現在レビュー中で、まずは年齢に着目して報告をまとめているという。その中でもインパクトのある結果として松本氏は、循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が急増しているグラフを示し、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることを指摘した。

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