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低分子ヘパリンによるVTE予防は小細胞肺がんのOSを改善するか/Ann Oncol

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、血液凝固活性化とともに悪性疾患の特徴であり、がん関連の死亡や疾患の主因となっている。スウェーデン・スコーネ大学病院のLars Ek氏らは、低分子量ヘパリン(LMWH)による凝固阻害が、VTEおよび腫瘍の進行を予防し小細胞肺がん(SCLC)患者の生存を改善するかについて、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「RASTEN試験」を実施した。追跡期間中央値41ヵ月において、VTE発生率は有意に減少したが、全生存期間(OS)は改善しなかった。著者は、「SCLC患者の管理において、LMWHの追加は一般的には勧められていないが、がん患者におけるVTEおよびLMWH関連出血の予測バイオマーカーは必要である」とまとめている。Annals Oncology誌2018年2月号掲載の報告。 研究グループは、新規に診断されたSCLC患者390例を、標準治療にLMWHとしてエノキサパリン1mg/kgを併用する群と併用しない群に無作為に割り付けた。 主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、VTE発生率および出血性イベントとした(試験期間:2008年7月~2016年3月)。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は377例。エノキサパリン併用群186例、非併用群191例であった。・OSは、エノキサパリン併用群10.6ヵ月、非併用群11.3ヵ月で、有意差は認められなかった(HR:1.11、95%CI:0.89~1.38、p=0.36)。・PFSも同様に、エノキサパリン併用による延長は認められなかった(HR:1.18、95%CI:0.95~1.46、p=0.14)・VTE発生率は、エノキサパリン併用群で有意に低下した(HR:0.31、95%CI:0.11~0.84、p=0.02)。・出血イベントは、エノキサパリン併用群で高頻度にみられたが、致死的出血は両群で発生した。

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食べられない、食べても痩せる…シリーズがん悪液質(1)【Oncologyインタビュー】第5回

がん患者の強力な予後因子である悪液質。十分に解明されていなかったそのメカニズムが明らかになりつつある。悪液質の機序や治療への影響といった最新かつ基本的な情報について、日本がんサポーティブケア学会 Cachexia部会部会長である京都府立医科大学 医学研究科 呼吸器内科学の髙山 浩一氏に聞いた。日本がんサポーティブケア学会には独立した悪液質部会がありますが、設立された背景を教えていただけますか。日本がんサポーティブケア学会では、がんに伴うさまざまな症状や副作用への支持療法に特化して各部会を立ち上げています。がん患者が痩せるのは、がんによる1つの症状です。そこに光を当てるべく、新たに悪液質を独立したカテゴリとして集中的に扱う部会にしました。その背景には、悪液質の病態が徐々に明らかになってきたこと、悪液質の基準がはっきりしてきたこと、それに伴う薬剤の開発が見えてきたという背景があります。がん患者における悪液質の合併頻度はどの程度なのでしょうか。がん患者が痩せるというのは昔から知られていたことですが、体重減少の頻度は、がんの種類によって異なります。最も多いのは消化器がんで、胃がんやすい臓がんでは80%を超えます。次いで多いのは肺がんの60%程度です。どちらも、かなり高い割合で合併します。現在の悪液質の定義について教えていただけますか。2011年、European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)は、がん悪液質の定義と診断基準のコンセンサスの中で、「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無に関わらず)を特徴とする多因子性の症候群」と定義しています。また、悪液質を前悪液質、悪液質、不応性悪液質の3つのステージに分類し、(1)過去6ヵ月間の体重減少5%以上(2)BMI 20未満では体重減少2%以上、(3)サルコペニアでは体重減少2%以上、これら(1)~(3)の3つのいずれかに該当するものを悪液質としています。また、前悪液質からの早期介入の必要性を推奨しています。CRPやアルブミン値に基づくグラスゴースコアなどもありますが、臨床で現実的に使うことを考えると、体重で決まるこのコンセンサスレポートが使いやすいと思います。がん悪液質のメカニズムが徐々に解明されつつあるとのことですが、現在わかってきたことを教えていただけますか。悪液質の本態として、がん細胞が自ら出している因子と、がんにより生じる全身炎症の結果、がん細胞周辺の正常組織が出している因子が、すべてタンパク質や脂肪の分解、食欲抑制という方向に働いて、痩せていくというメカニズムがわかってきました。がん細胞が自ら放出するタンパク質分解誘導因子(PIF)や脂質動員因子(LMF)などが、タンパク質を分解し骨格筋を減少させ、脂肪分解を促進します。がん細胞は、タンパク質や脂肪を分解することで出るアミノ酸やエネルギーなどを利用している可能性があります。また、がんによる全身性炎症は、がん細胞周辺の正常組織から炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)を放出させます。炎症性サイトカインは、食欲を抑制すると共にタンパク質分解と脂肪分解を促進します。また、肝臓の糖新生を亢進し、インスリン抵抗性を生じさせます。インスリン抵抗性があると糖が肝臓に取り込まれない、つまり頑張って食べても身にならないという状態になります。悪液質のきっかけとして、治療初期の抗がん剤による食欲低下で食べられなくなる。つまり、カロリー摂取ができなくなること、これが悪液質の引き金になっている可能性があると思います。1)日本がんサポーティブケア学会 がん悪液質ハンドブック

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がんゲノム解析と電カルの統合データが治療効果と関連/JAMA

 非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に、ルーチンの診療から得た電子健康記録(EHR)と網羅的ゲノム解析(CGP)をリンクしたデータが、治療選択などに有効であることが明らかにされた。遺伝子のドライバー変異と標的治療の有効性の関連や、遺伝子変異数(TMB)と抗PD-1/PD-L1療法反応性との関連などが確認されたという。米国企業Foundation MedicineのGaurav Singal氏らが、約2万9,000例のがん患者データベースの中から、NSCLC患者4,000例超について解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月9日号で発表した。今回の成果について著者は「ルーチンの診療に由来する臨床ゲノムデータベースの構築が可能であることを示すもので、オンコロジーにおけるこのようなアプローチを評価する、さらなる研究と発見があることを支持することが示された」とまとめている。 がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムなどを探索的解析 研究グループは、米国内275ヵ所のがん診療外来患者2万8,998例について、EHR臨床データとCGPをリンクしたデータを基に試験を行った。2011年1月~2018年1月のデータが入手できたNSCLC患者4,064例のデータについて、がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムを含む特徴との関連性を探索的に検証した。 具体的には、ドライバー変異を含む腫瘍CGP、TMB、EHRから得られた臨床的特徴と、全生存期間(OS)、治療を受けた期間、最大治療反応性(EHRの治療担当医による記録で確認)、治療の臨床的有効性(安定[SD]、部分奏効[PR]、完全奏効[CR]の患者割合)の関連を調べた。ドライバー変異、標的治療で生存期間7ヵ月超延長 NSCLC患者4,064例の年齢中央値は66.0歳、女性の割合は51.9%、喫煙歴ありは3,183例(78.3%)だった。3,153例(77.6%)が非扁平上皮NSCLCで、EGFR、ALK、ROS1に遺伝子変異が認められたのは、それぞれ701例(17.2%)、128例(3.1%)、42例(1.0%)だった。また、7年間で1,946例が死亡した。 ドライバー変異患者のうち、標的治療を受けた575例は受けなかった560例に比べ、OSが改善し、進行が診断されてからの生存期間中央値はそれぞれ18.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.2~21.7)、11.4ヵ月(9.7~12.5)だった(p<0.001)。 TMBは、喫煙者が8.7(IQR:4.4~14.8)と、非喫煙者の2.6(1.7~5.2)より有意に高かった(p<0.001)。また遺伝子変異のある人が、ない人に比べ有意に低く、EGFRに関しては変異あり群3.5(1.76~6.1)vs.なし群7.8(3.5~13.9)(p<0.001)、ALKは同2.1(0.9~4.0)vs.7.0(3.5~13.0)(p<0.001)、RETは4.6(1.7~8.7)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.004)、ROS1は4.0(1.2~9.6)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.03)だった。 抗PD-1/PD-L1療法を行った1,290例(31.7%)についてみると、TMB値が20以上群は20/Mb未満群に比べOSが延長し(16.8ヵ月[95%CI:11.6~24.9]vs.8.5ヵ月[7.6~9.7]、p<0.001)、長期間治療を受けていた(7.8ヵ月[5.5~11.1]vs.3.3ヵ月[2.8~3.7]、p<0.001)。臨床的有効となった患者割合も高率だった(80.7% vs.56.7%、p<0.001)。

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ペットと肺がん死亡率に意外な関連

 わが国でもペットを飼っている人は多く、ここ数年はネコがイヌを上回っている。今回、米国ジョージアサザン大学のAtin Adhikari氏らは、米国の全国コホートにおける18年間の追跡調査で、ネコを飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がん死亡率が2.85倍と有意に高かったことを報告した。ペットによるこの影響は、喫煙やアトピー性疾患の交絡によって説明されないという。Environmental Research誌2019年2月25日号に掲載。 この研究の対象は、1988~94年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)IIIにおいて、ペット所有に関する質問に回答した19歳以上の1万3,725人で、2010年12月31日まで追跡調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者の約43%がペットを飼っており、20.4%がネコ、4.6%が鳥を飼っていた。・18万3,094人年(unweighted)の追跡期間中に肺がんで213人死亡し、肺がん特異的死亡率は1,000人年当たり1.00であった。・喫煙・飲酒・身体活動・BMI・アトピー性疾患歴・血清中コチニンについて調整後、女性では、ペット所有者は非所有者に比べて、肺がん死亡率が2倍以上であった(ハザード比[HR]:2.31、95%信頼区間:1.41~3.79)。ペット別のHRは、ネコが2.85(1.62~5.01)、鳥が2.67(0.68~10.5)、イヌが1.01(0.57~1.77)で、ネコおよび鳥の所有がこの関連に大きく起因していた。・男性では、ペットの有無やペットの種類にかかわらず、有意な関連はみられなかった。

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EGFR変異肺がん1次治療におけるエルロチニブ+ベバシズマブの効果(NEJ026)/Lancet Oncol

 StageIVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)ではEGFR-TKIが標準療法であるが、1年程度で半数に耐性が起こる。そのため、さまざまな併用療法が試みられている。NEJ026はASCO2018で発表されたEGFR変異陽性NSCLCの1次治療に対するエルロチニブとベバシズマブの併用をエルロチニブ単剤と比較した第III相試験であるが、その中間解析の結果がLancet Oncology誌2019年4月8日号で発表された。・対象:化学療法歴のないStageIIIB~IVまたは再発のEGFR変異陽性NSCLC患者(PS 0~2)。・試験薬:ベバシズマブ3週ごと投与+エルロチニブ連日投与群(BE群)・対象薬:エルロチニブ単独連日投与群(E群)・主要評価項目:[主要評価項目]PFS、[副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間、安全性、QOLであった。 主な結果は以下のとおり。・228例の患者が登録され、BE群とE群に無作為に割り付けられた。(ともにn=114)。・追跡期間の中央値は12.4ヵ月であった。・主要評価項目であるPFS中央値は、BE群が16.9ヵ月(14.2~21.0ヵ月)、E群が13.3ヵ月(11.1~15.3ヵ月)で、BE群で有意な延長効果が確認された(HR:0.605、95%CI:0.417~0.877、p=0.016)。・副次評価項目のうち、ORRはBE群72%、E群66%、DCRはBE群95%、E群96%で両群間に有意差はなかった。・Grade3以上の有害事象発現率は、BE群88%、E群46%であった。■関連記事EGFR変異肺がんにおけるエルロチニブ・ベバシズマブ併用第III相試験(NEJ026)/ASCO2018

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がん患者の深部静脈血栓症、再発率は2倍以上/日本循環器学会

 がんは深部静脈血栓症(VTE)の強力なリスク因子である。がん患者のVTE発症頻度は非がん患者に比べ高く、その発症率は近年増加している。しかし、がん関連VTEに関する研究は十分ではなく、適切な管理については明らかになっていない。天理よろづ相談所病院 循環器内科 坂本二郎氏らは、がん関連VTEの臨床的な特徴、管理、臨床的転帰をリアルワールドで評価する多施設後ろ向きコホート研究COMMAND-VTEレジストリを行い、その結果を第83回日本循環器学会学術集会で発表した。 COMMAND-VTEレジストリは、2010年1月~2014年8月、わが国の29施設において行われた。VTE疑い患者1万9,634例のうち、分析対象となった急性症候性VTE患者は3,027例であった。 全コホートをActive cancer群(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)695例、がん既往歴あり群243例、がん既往歴なし群2,089例の3つに分けて比較した。 主な結果は以下のとおり。・Active cancer群は他の2群に比べ、年齢が低く66.5歳であった。また重篤な出血(10%)、貧血の既往(76%)が他の2群に比べ高かった。・抗凝固薬累積中止率(1年間)はActive cancer群で最も高く44%、がん既往歴あり群、がん既往歴なし群はともに27.0%であった。・症候性VTE累積再発率(1年間)はActive cancer群で最も高く12%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ5%/3%であった。・重篤な出血累積発生率(1年間)はActive cancer群で最も高く15%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ6%/5%であった。・ワルファリンのコントロール指標である至適範囲内時間(TTR)はActive cancer群で最も低く61%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ67%/76%であった。・総死亡はActive cancer群で最も高く50%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ12%/6%であった。 Active cancer(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)はVTEの再発、重篤な出血、総死亡に関する予後不良因子であった。また、Active cancer群では抗凝固薬の投与中止が頻繁で、ワルファリンのコントロールも不良であった。

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がん患者の食欲不振にnabiloneが有効?

 カンナビノイドに由来する薬剤(nabiloneなど)は近年、食欲不振の改善効果があることが認められたが、がん患者の食欲不振の改善にも有効なのか。メキシコ・国立がん研究所のJenny G. Turcott氏らは、肺がん患者を対象にnabiloneの有効性を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照第II相臨床試験を行い、「nabiloneは食欲不振のがん患者に対する支持療法の選択肢となりうる」ことを示した。「肺がん患者における有効性を結論付けるために、さらなる大規模臨床試験を行う必要がある」とまとめている。進行肺がん患者では、半数以上が食欲不振を経験する。その高い発生率に加えて、がん誘発性食欲不振は臨床転帰不良と関連する食欲不振-悪液質症候群の発症を助長することが問題視されている。Supportive Care in Cancer誌2018年9月号掲載の報告。 研究グループは、メキシコの国立がん研究所において、進行非小細胞肺がんの外来患者を対象に、食欲、栄養状態およびQOLに対するnabiloneの有効性を検証する無作為化二重盲検プラセボ対照比較臨床試験を行った。 65例について適格性を評価し、47例がnabilone群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。最初の2週間は0.5mg/日、その後は1mg/日に増量して6週間投与した。 主な結果は以下のとおり。・8週後、nabilone群はプラセボ群と比較してカロリー摂取量が増加し(342kcal)、炭水化物摂取量が有意に高かった(64g、p=0.040)。・QOLについては、nabilone群では有意に改善したが(役割機能p=0.030、感情機能p=0.018、社会的機能p=0.036、疼痛p=0.06、不眠p=0.020)、プラセボ群では有意な変化は観察されなかった。

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がん終末期は減薬を/Cancer

 がん終末期における予防薬の投与はいつまで行われているのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLucas Morin氏らは、高齢の進行がん患者における降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬の継続について調査を行い、これらは死亡前1年間においても処方され、しばしば最後の数週間まで続けられていたことを明らかにした。著者は、「終末期の患者において、予防薬が臨床的有用性を達成する可能性は低い。死期が近づいたころの臨床的有用性が限られた薬剤の負担を減らすため、適切な減薬(deprescribing)戦略が必要である」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年3月25日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンのデータベースを用い、2007~13年に死亡した65歳以上の高齢固形がん患者について、患者が死亡する前1年間における予防薬の毎月の使用と費用を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は15万1,201例(平均年齢81.3歳)で、死亡前1年間において、平均投与薬剤数は6.9剤から10.1剤に増加していた。・降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬は、しばしば死亡月まで継続されていた。・1人当たりの薬剤費(中央値)は、1,482ドル(四分位範囲[IQR]:700~2,896ドル)に達し、そのうち213ドル(IQR:77~490ドル)が予防薬であった。・予防薬の費用は、肺がんで死亡した高齢患者(1人当たりの薬剤費[中央値]:205ドル、IQR:61~523ドル)と比較して、膵がん患者(補正後群間差:13ドル、95%CI:5~22ドル)、婦人科系がん患者(補正後群間差:27ドル、95%CI:18~36ドル)で高かった。・死亡前1年間を通して、予防薬の費用に関して減少は認められなかった。

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PD-L1陽性肺がん1次治療におけるペムブロリズマブ単剤の効果(KEYNOTE-042)/Lancet

 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表された、PD-L1発現1%以上の進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単剤の1次治療を評価する第III相試験KEYNOTE-042試験の結果が、Lancet誌オンライン版2019年4月4日号に掲載された。 KEYNOTE-042は32ヵ国、213施設で行われたオープンラベル第III相試験。・対象:PD-L1 TPS1%以上の進行または転移を有するNSCLC患者・試験薬:ペムブロリズマブ200mg/日3週ごと・対照薬:カルボプラチン+パクリタキセルまたはペメトレキセド3週ごと(治験担当医の選択による)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)。[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)と奏効率(ORR)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)、安全性(TPS1%以上) 主な結果は以下のとおり。・1,274例の患者が、ペムブロリズマブ単剤群(n=637)と化学療法群(n=637)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は12.1ヵ月であった。・TPS50%以上のOSは ペムブロリズマブ群20.0ヵ月、化学療法群12.2ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)。・TPS20%以上のOSはペムブロリズマブ群17.7ヵ月、化学療法群13.0ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.77、95%CI:0.64~0.92、p=0.0020)。・TPS1%以上のOSはペムブロリズマブ群16.7ヵ月、化学療法群12.1ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.81、95%CI:0.71~0.93、p=0.0018)。・探索的研究でのTPS1~49%のOSはペムブロリズマブ群13.4ヵ月、化学療法群12.1ヵ月であった(HR:0.92、95%CI:0.77~1.11)。・TPS50%以上のPFSは、ペムブロリズマブ群7.1ヵ月に対し化学療法群6.4ヵ月(HR:0.81、p=0.0170)、TPS20%以上では6.2ヵ月対6.6ヵ月(HR:0.94)、TPS1%以上では5.4ヵ月対6.5ヵ月であった(HR:1.07)。・Grade3以上の治療関連有害事象発現は、ペムブロリズマブ群18%に対して化学療法群41%であった。■参考KEYNOTE-042試験(Clinical Trials.gov)■関連記事肺がん1次治療、PD-L1低発現でもペムブロリズマブ単剤?(KEYNOTE-042)/ASCO2018

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ラムシルマブ+エルロチニブ、EGFR陽性NSCLCの1次治療で主要評価項目を達成/リリー

 イーライリリーアンドカンパニーは、2019年3月12日、ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)の第III相試験(RELAY)で、サイラムザ+エルロチニブ併用療法がプラセボ+エルロチニブの併用に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長したことを発表。本試験は、転移のあるEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療で、サイラムザ+エルロチニブの併用療法をプラセボ+エルロチニブの併用と比較したもの。 RELAY試験で認められたラムシルマブ+エルロチニブの併用療法の安全性のプロファイルは、これまでラムシルマブおよびエルロチニブにおいて報告されている安全性のプロファイルと同様であった。プラセボと比較してラムシルマブ群で5%以上高く発現したGrade3以上の主な副作用は、高血圧、ざ瘡様皮膚炎、下痢であった。 有効性及び安全性の結果の詳細は2019年の医学学会で発表予定。

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肺がんの予後、正常組織の肺マイクロバイオームと関連

 腸内フローラなどとともに注目されている“ヒトマイクロバイオーム”が、肺がん予後に関わるという興味深い知見が示された。ヒトマイクロバイオームは、局所の発がんまたはがん進行に寄与する可能性のある多くの機能を有しているが、これまで肺がんの予後と肺マイクロバイオームとの関連は知られていなかった。米国・ニューヨーク大学のBrandilyn A. Peters氏らは、予備研究として少数例で解析を行い、正常な肺マイクロバイオームが肺がんの予後と潜在的に関連していることを初めて明らかにした。さらに大規模な研究が必要ではあるが、著者は「予後に関する細菌バイオマーカーを定義することが、肺がん患者の生存アウトカム改善につながる可能性がある」とまとめている。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2019年2月7日号掲載の報告。 研究グループは、非小細胞肺がん(NSCLC)19例を対象に予備研究を行った。 同一肺葉/区における腫瘍組織および遠隔正常組織のペア検体を用いて16S rRNA解析を施行し、腫瘍または正常組織のマイクロバイオーム多様性/構成と無再発生存(RFS)/無病生存(DFS)との関連を調べるとともに、腫瘍組織と正常組織のマイクロバイオーム多様性/構成を比較した。 主な結果は以下のとおり。・正常組織におけるマイクロバイオームの豊富さ(richness:操作的分類単位[OTU]数が高い)と多様性(diversity:Shannon指数が高い)が、RFS低下(OTU数に関するp=0.08、Shannon指数に関するp=0.03)およびDFS低下(それぞれp=0.03、p=0.02)と関連していた。・正常組織では、Koribacteraceae科の豊富さがRFSおよびDFSの上昇と関連していた。一方で、Bacteroidaceae科、Lachnospiraceae科およびRuminococcaceae科の豊富さはRFSおよびDFSの低下と関連していた(p<0.05)。・腫瘍組織におけるマイクロバイオームの多様性と全体の構成は、RFSおよびDFSと関連していなかった。・腫瘍組織では対応する正常組織と比較し、マイクロバイオームの豊富さと多様性が低かったが(p≦0.0001)、全体の構成に差はなかった。

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がんサバイバーのオピオイド使用、米国での実態/JCO

 オピオイド依存が深刻な米国では、疼痛マネジメントへの懸念も高いようだ。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのTalya Salz氏らは、「がんサバイバーは、オピオイド関連被害を受けるリスクが高い可能性がある」として、オピオイドの継続的使用と高用量使用について、大腸がん、肺がん、乳がんの高齢がんサバイバーと非がん対照集団の比較解析を行った。これまで、診断後のオピオイド使用の経時的傾向は知られていなかったという。解析の結果、がん種によって継続的使用の実態は異なること、診断後3~5年はサバイバーのほうが高用量の継続的使用が多い一方、診断後6年で継続的使用の差はみられないことなどが明らかになった。著者は「がん治療中および治療後の適切な疼痛マネジメント戦略では、オピオイドの高用量継続的使用のリスクを考慮しなければならない」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年2月28日号掲載の報告。 研究グループは、米国のがん登録データベース「SEER」と高齢者向け公的医療保険「メディケア」のデータを用いて、オピオイドの継続的使用(90日以上連続)について、2008~13年に大腸がん、肺がん、乳がんと診断されたオピオイド未使用サバイバーと、マッチングされた非がん対照を比較するマルチレベルロジスティック回帰分析を行った。 サバイバーと対照の継続的使用における、高用量(モルヒネ換算1日平均90mg以上)オピオイド使用の割合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析は、サバイバー4万6,789例、非がん対照13万8,136例で行われた。・3つ(大腸がん、肺がん、乳がん)の高齢がんサバイバーの大規模集団において、オピオイドの継続的使用傾向は、がん種により異なることが確認された。・診断日後の1年間において、大腸がんおよび肺がんサバイバーにおけるオピオイドの継続的使用は、対照のオピオイドのそれを上回っていた。大腸がんサバイバーのオッズ比(OR)は1.34(95%CI:1.22~1.47)、肺がんサバイバーのORは2.55(95%CI:2.34~2.77)であった。・上記の差は年々短縮した。・乳がん患者の継続的使用は対照の継続的使用と比べて、各年いずれも少なかった。・診断から3~5年の継続的使用において、サバイバーは対照よりも高用量使用が多い傾向がみられた。一方で、診断後6年におけるサバイバーの継続的使用者は対照よりも多い傾向はみられなかった。

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NSCLC:ニボルマブ治療後のドセタキセル・ラムシルマブ併用の有効性

 肺がんへの免疫療法後の化学療法による有効性を評価した論文が、国内で報告された。 今回、埼玉医科大学国際医療センターの塩野 文子氏らによる後ろ向き研究で、非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、抗PD-1抗体ニボルマブによる治療に病勢増悪後、ドセタキセルとラムシルマブを併用投与した場合、ニボルマブ投与なしのレジメンと比較して高い奏効率が得られた。Thoracic Cancer誌オンライン版2019年2月27日号に掲載。 本試験では、2016年2月~2017年12月に当施設でニボルマブを投与されたNSCLC患者152例から、ニボルマブ治療後にドセタキセルとラムシルマブを投与された20例について、全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、および全生存期間(OS)を調査した。 患者の年齢中央値は70歳(範囲:55~77歳)で、男性12例、女性8例だった。そのうち、16例が腺がん、3例が扁平上皮がん、1例がその他であった。 主な結果は以下のとおり。・18例(90%)に予防的なG-CSF製剤の投与が行われた。・20例の患者のうち、12例が部分奏効(PR)を達成し、ORRは60%だった。・6例が安定(SD)を示し、病勢コントロール率は90%だった。・PFSは169日、OSは343日だった。・消化器系の有害事象が19例の患者で観察された。

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副作用の強い分子標的薬の開始用量は?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第6回

第6回 副作用の強い分子標的薬の開始用量は?1)Cho BC, et al. Efficacy and Safety of Ceritinib (450 mg/day or 600 mg/day) With Food vs 750 mg/day Fasted in Patients With ALK-Positive NSCLC: Primary Efficacy Results From ASCEND-8 Study. J Thorac Oncol. 2019 Mar 6. [Epub ahead of print]2)Cho BC, et al. ASCEND-8: A Randomized Phase 1 Study of Ceritinib, 450 mg or 600 mg, Taken with a Low-Fat Meal versus 750 mg in Fasted State in Patients with Anaplastic Lymphoma Kinase (ALK)-Rearranged Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC). J Thorac Oncol. 2017;12:1357-1367.EGFR・ALK陽性例など、1つのドライバー変異に対して複数の分子標的治療薬が承認されている状況は珍しくなくなりつつある。選択肢が広がった一方で、なかには有害事象が思ったより強い薬剤も散見される。支持療法の強化でマネジメントできれば言うことないのだが、それでも減量を強いられる症例は少なくない。ましてや事前に有害事象のデータがわかっていれば、なおさら最初から減量して開始したほうがよいのでは、という考えが生じるが、これまで成功例は少なかった。ALK阻害剤であるセリチニブは消化器毒性の発現が多く、当初の開始量では約8割が用量調整を要する薬剤として知られている(Soria JC, et al. Lancet. 2017;389:917-929.)。今回、セリチニブの投与法を工夫することで、減量しても同等の有効性・毒性の軽減を示すことに成功した臨床試験を紹介する。ASCEND-8試験は前向き・非盲検の3群試験。残念ながら日本は参加していないが、韓国・台湾などのアジア人患者が参加している。本試験は3群試験であり、従来の開始量である750mg/日・空腹時群に対して450mg/日・食後群、600mg/日・食後群が設定された。この試験の重要なポイントとして、PK解析が行われている点が挙げられる。2017年のJournal of Thoracic Oncology(JTO)誌に137例を対象にしたpart Iの結果が報告されているが、450mg/日・食後群のPKは750mg/日・空腹時群と同等で、消化器毒性が少ない可能性が示唆されていた。今回報告されたのは306例まで患者数を増して行ったpart 2の結果で、有効性・安全性を中心とした結果となっている(注:有効性は198例の未治療例に限ったデータ)。ORRは750mg/日・空腹時群:75.7%に対して、450mg/日・600mg/日の食後群では78.1%、72.5%であった。PFS中央値は750mg/日・空腹時群:12.2ヵ月に対して、450mg/日および600mg/日の食後群では未到達、17.0ヵ月であった。18ヵ月時点の無増悪生存率は同様に36.7%に対して52.9%、61.1%となっている。dose intensityは450mg/日・食後群が100%と最も優れていた。消化器毒性を呈した患者の割合は750mg/日・空腹時群の91.8%に対して、450mg/日および600mg/日・食後群では75.9%、82.6%であった。解説連日内服する分子標的薬の有害事象は、投与後、徐々に回復してくる細胞傷害性薬剤のそれとは異なり、持続してしまうことが厄介である。なので、患者の実際のしんどさは最悪時点のgradeのみでは測りにくく、減量率や休止率なども重要な指標となる。過去にこのような有害事象頻度の高い薬剤については、(1)減量した患者群でも有効性が同等である可能性を後方視的に検討したり(アファチニブ:Yang JC, et al. Ann Oncol. 2016;27:2103-2110.)、(2)減量開始による前向き試験(エルロチニブ:Yamada K, et al. Eur J Cancer. 2015;51:1904-1910.)が検討されてきた。ただしあくまで後付けであったり、後者のように主要評価項目にmetしなかった試験も報告されており、原則は「可能な限り、承認された開始用量で始める」というコンセンサスがあった。今回の試験が新しかったのは、きちんとPKを行い、これを基に投与時期の変更と用量調整を行っている点である。実際、本邦・海外において、この新しい用量設定が承認されていることは大変重要な成果だと思う。この試験の弱点を強いて言えば、300例超という大きな試験であるにもかかわらず、「この人数の設定には統計学的根拠がない」と記載されていることだろうか。また、非盲検試験であるため、dose intensityや毒性評価のデータはこれらを差し引いて読む必要があるかもしれない。前述したように、連日経口投与する分子標的薬の場合、従来の毒性評価は不十分かもしれず、今後検討の価値がある。一方そのような場合でも、いたずらな減量開始には注意が必要である。科学的根拠に基づいて用量の再設定をした本試験は非常に重要な意義を持つ。

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NSCLC1次治療のニボルマブ+低用量イピリムマブにおけるORR:PD-L1 1%以上 vs.1%未満(CheckMate-568)/JCO

 転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療として、ニボルマブと低用量イピリムマブ併用の効果と安全性を評価した、オープンラベル第II相CheckMate-568試験。 今回、米国・Duke University Medical CenterのNeal Ready氏らによる結果が、Journal of clinical oncology誌オンライン版2019年2月20日号に掲載された。ニボルマブ+低用量イピリムマブは、転移のある進行NSCLCの1次治療として有効かつ忍容性が高いことが示唆された。 本試験では、未治療StageIVまたは再発StageIIIBのNSCLC患者288例を対象として、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごと、イピリムマブ1mg/kgを6週間ごとに投与した。主要評価項目は、PD-L1の発現率が1%以上の患者および1%未満の患者における客観的奏効率(ORR)。副次的評価項目として、腫瘍変異負荷(TMB)に基づく有効性についても検討された。 主な結果は以下のとおり。・対象の患者群のうち、288例中252例(88%)でPD-L1が評価され、120例中98例(82%)でTMBが評価された。・PD-L1レベル別のORRは、PD-L1 1%以上群で41%、PD-L1 1%未満群で15%であり、PD-L1の発現レベルは、ORRに関与した。・TMB別でみると、TMB10mut/mB未満の群と比較して、TMB10mut/mB以上の群では、PD-L1の発現レベルにかかわらずORRが高かった(12% vs.44%)。・無増悪生存期間(PFS)も、TMB10mut/mB未満の群に対し、TMB10mut/mB以上の群でより延長がみられた(2.6ヵ月 vs.7.1ヵ月)。・Grade3~4の治療に関連する有害事象は、患者の29.2%に認められた。

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血液1滴で13がん種を同時診断、日本発miRNA測定技術

 血液中に含まれるマイクロRNA(miRNA)をマーカーとして、13種類のがんを同時診断する検査システムの開発が進み、実用化が近づいている。2019年3月1日、都内で「1滴の血液や尿で、がんが分かる時代へ」と題したメディアセミナーが開催された(共催:日本臨床検査薬協会、米国医療機器・IVD工業会)。落谷 孝広氏(国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野)が登壇し、自身が開発のプロジェクトリーダーを務めるmiRNAによるリキッドバイオプシーの精度や、実用化に向けた動きなどについて解説した。miRNAはctDNAと何が違うのか リキッドバイオプシーの解析対象としては、米国を中心に開発の進む血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が知られている。ctDNAなどの従来の腫瘍マーカーが、がん細胞のアポトーシスに伴って血液中で検出されることと比較し、miRNAはがん細胞の発生初期から血液中を循環するため、より早期の診断が可能だという。 本邦では、「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が2014年から始動。国立がん研究センター(NCC)、国立長寿医療研究センター(NCGG)が保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清等の検体を臨床情報と紐づけて解析、血中miRNAをマーカーとした検査システムの開発に取り組んできた。miRNA、13がん種について高い感度で診断可能なことを確認 日本人に多い13種類のがん(胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝がん、胆道がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、神経膠腫、肉腫)をターゲットとして、対照群を含めて約5万3,000検体(2019年2月現在)が解析された。その結果、たとえば乳がんの場合、5つのmiRNAの組み合わせによって、感度97%/特異度92%で診断できることが確認された1)。「特異度92%というのは、乳がんではない100人のうち、8人が乳がんと診断される(偽陽性)ということ」と落谷氏。「100%でない限り、もちろん過剰診断には留意しなければならない。しかし非侵襲的であることも含め、次の検査につなげる早期のスクリーニングツールとしては、非常に有力だといえる」と話した。 その他、卵巣がん(感度99%/特異度100%)2)、膵がん(98%/94%)、大腸がん(99%/89%)、膀胱がん(97%/99%)3)、前立腺がん(96%/93%)など、いずれもmiRNAのマーカーとしての高い感度が確認されている。miRNAは認知症や脳卒中のマーカーとしても有望 これらの研究成果をもとに、現在4社が実用化に向けて開発を進めている。血液検体から13種類のがんを全自動で検出するための機器、検査用試薬や測定キットなどが開発中だという。また、今回の研究結果とこれまでのmiRNA関連の研究結果を機械学習に入れ込み、全部で2,655種類あるmiRNAの中から、現状では、およそ500種類程度をチェックするがんの診断モデルが構築されている。このモデルは、判別精度をより高めるためのブラッシュアップが続けられているという。 miRNAはエクソソームに内包されており、エクソソームは分泌元となる細胞の特徴を反映することから、がん以外の疾患のマーカーとしても活用が期待される。本プロジェクトではすでに、認知症と脳卒中で有望な結果がでている。認知症では、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体認知症をmiRNAは高感度で判別した。また、症例数が少ないデータではあるが、軽度認知機能障害32例で、半年後の認知症への進行の有無が100%の確率で予測されている4)。さらに、これまで有力なマーカーが確認されていない脳卒中のリスクマーカーとしてもmiRNAは有用であることが確認され、近く発表が予定されている。(2019年12月25日 記事の一部を修正いたしました)

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最新鋭のがん患者用手引きHPで公開-静岡がんセンター

 近年、がん治療の分野では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新薬が次々に発売されている。また、多剤併用による治療、外来患者の増加により、治療・副作用対策の指導が複雑なものになりつつある。そんな折、2019年2月25日に静岡県立静岡がんセンターは、これらの問題を解決するべく、「処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】」をホームページ上に公表した。 この説明書は、抗がん剤治療の全貌がわかるように作成されている。そして、これを患者に渡すのは医師であり、がん薬物療法の決定後、治療前に患者へ手渡しされる。その後、薬剤師や看護師がその冊子を用いて、必要に応じて説明を行うそうだ。 今回作成されたのは、同センターにおいて使用頻度が高い70療法91冊(消化器、呼吸器、皮膚科)。ニボルマブなど新薬との併用療法についても公開されており、そのほかのがん種の冊子については、順次拡大を予定しているとのこと。<特長>◆その1:病気の種類別、使用する薬の組み合わせ別に冊子が作成されているこれからがん薬物療法を受ける、または、すでに受けている患者やその家族向けに、がん薬物療法の理解を深め副作用の対処が行えるよう、病気の種類・使用する薬の組み合わせ別に治療スケジュールや注意事項、副作用とその対処法、医療者に報告する目安などが1冊にまとめられている。◆その2:がん薬物療法を受ける際に患者・家族が心構えできる治療の概要、どんな副作用がいつ現れるのかなどを治療前に理解してもらえるよう、主な副作用の現れやすい時期や頻度が一覧表になっている。◆その3:副作用の対処法がわかる 副作用の対処と工夫(病院への連絡の目安、予防を含めた具体的対処法)が写真を交えて記載されているため、治療を行う前に、生活の見通しや副作用対策を患者自らが立てやすくなっている。◆その4:地域の医療関係者が患者への指導の参考として活用できるすべての冊子は同じ構成で作られているため、患者・家族、そして医療者が効率よく利用できるようになっている。 同センターの広報担当者によると、「これまでこのような類の手引きは存在していない。医師、看護師、薬剤師などの医療従事者が共通して使用することで、患者さんの抗がん剤治療の副作用に対する理解が深まるのではと考えている」。■参考静岡県立静岡がんセンター:処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】

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糖尿病患者への禁煙指導/糖尿病学の進歩

 喫煙は、血糖コントロール悪化や糖尿病発症リスク増加、動脈硬化進展、がんリスク増加などの悪影響を及ぼす。禁煙によりこれらのリスクは低下し、死亡リスクも減少することから禁煙指導は重要である。3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登 洋氏が「喫煙と糖尿病合併症」と題して講演し、喫煙と糖尿病発症・糖尿病合併症・がんとの関連、禁煙指導について紹介した。タバコ1日2箱で糖尿病発症リスクが1.5倍 糖尿病患者の喫煙率は、日本の成人における喫煙率とほぼ同様で、男性が31.9%、女性が8.0%と報告されている。男女ともに30代がピークだという。喫煙は、血糖コントロール悪化、糖尿病発症リスク増加、HDL-コレステロール低下、動脈硬化進展、呼吸機能悪化、がんリスク増加、死亡リスク増加といった悪影響を及ぼす。喫煙による糖尿病発症リスクは用量依存的に増加し、国内の研究では、1日当たり1箱吸う人は1.3倍、2箱吸う人は1.5倍、発症リスクが増加すると報告されている。また、受動喫煙でも同様の影響があり、受動喫煙による糖尿病発症リスクは、国内の研究ではオッズ比が1.8と報告されている。 喫煙による糖尿病発症機序としては、コルチゾールなどのインスリン抵抗性を増やすホルモンの増加や、不健康な生活習慣(過食や運動不足)で内臓脂肪の蓄積を引き起こしインスリン抵抗性が惹起されることが想定されている。さらに、喫煙者は飲酒する傾向があるため、それも発症に関わると考えられる。また喫煙は、脂肪組織から分泌されるサイトカインやリポプロテインリパーゼに影響を与え、糖代謝や脂質代謝にも直接悪影響を与える。さらに、ニコチンそのものがインスリン抵抗性を惹起することが想定されている。禁煙後の糖尿病発症リスクの変化、体重増加の影響は? では、禁煙した場合、糖尿病発症リスクはどう変化するのだろうか。禁煙後半年から数年は、ニコチンによる食欲抑制効果の解除、味覚・嗅覚の改善、胃粘膜微小循環系血行障害の改善により体重が増加することが多く、また数年後には喫煙時の体重に減少することが多い。体重増加は糖尿病のリスクファクターであるため、禁煙直後の体重増加による糖尿病リスクへの影響が考えられる。実際に禁煙後の糖尿病発症リスクを検討した国内外の疫学研究では、禁煙後5年間は、糖尿病発症リスクが1.5倍程度まで上昇するが、10年以上経過するとほぼ同レベルまで戻ることが報告されている。さらに、禁煙後の体重変動と糖尿病発症リスクを検討した研究では、禁煙後に体重が増加しなかった人は糖尿病発症リスクが減少し続け、体重が10kg以上増えた人は5年後に1.8倍となるも、その後リスクが減少して15~30年で非喫煙者と同レベルにまで下がること、また禁煙後の体重増加にかかわらず死亡率が大幅に減少することが示されている。能登氏は「禁煙して数年間は糖尿病が増加するリスクはあるが体重を管理すればそのリスクも減少し、いずれにしても死亡リスクが減少することから、タバコをやめるのに越したことはない。禁煙するように指導することは重要であり、禁煙直後は食事療法や運動療法で体重が増えないように療養指導するべき」と述べた。 喫煙と糖尿病合併症との関連をみると、とくに糖尿病大血管症リスクとの関連が大きい。また、糖尿病によってがんリスクが増加することが報告されているが、喫煙によって喫煙関連がん(膀胱、食道、喉頭、肺、口腔、膵臓がん)の死亡リスクが4倍、なかでも肺がんでは約12倍に増加するため、糖尿病患者による喫煙でがんリスクは一層高まる。また、糖尿病合併症である歯周病、骨折についても喫煙と関連が示されている。禁煙は「一気に」「徐々に」どちらが有効か 禁煙のタイミングについては、喫煙歴が長期間であったとしても、いつやめても遅くはない。禁煙半年後には、循環・呼吸機能の改善、心疾患リスクが減少し、5年後には膀胱がん、食道がん、糖尿病の発症リスクが減少することが示されている。 では、どのような禁煙方法が有効なのだろうか。コクランレビューでは、断煙法(バッサリやめる)と漸減法(徐々にやめる)の成功率に有意差はなかった。短期間(6ヵ月)に限れば断煙法の禁煙継続率が高いという報告があるが、個人差があるため、まず患者さんの希望に合わせた方法を勧め、うまくいかなければ別法を勧めるというのがよいという。代替法としてはニコチンガムやパッチなどがあるが、近年発売された電子タバコ*を用いる方法も出てきている。最近、禁煙支援で電子タバコを使用した場合、ニコチン代替法より禁煙成功率が1.8倍高かったという研究結果が報告された。能登氏は、「煙が出るタバコの代わりに電子タバコを吸い続けるというのは勧めないが、禁煙するときに電子タバコを用いた代替法もいいかもしれない」と評価した。 能登氏は最後に、「糖尿病とがんに関する日本糖尿病学会と日本癌学会による医師・医療者への提言」から、日本人では糖尿病は大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク増加と関連があること、糖尿病やがんリスク減少のために禁煙を推奨すべきであること、糖尿病患者には喫煙の有無にかかわらず、がん検診を受けるように勧めることが重要であることを説明した。がん検診については、聖路加国際病院では患者さんの目につく血圧自動測定器の前に「糖尿病の方へ:がん検診のお勧め」というポスターを貼っていることを紹介し、講演を終えた。*「電子タバコ」は「加熱式タバコ」(iQOS、glo、Ploom TECHなど)とは異なる

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ごく早期に発現するがん悪液質の食欲不振とグレリンの可能性/JSPEN

 本年(2019年)2月、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会(JSPEN2019)が開催された。その中から、がん悪液質に関する発表について、日本緩和医療学会との合同シンポジウム「悪液質を学ぶ」の伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏、教育講演「がんの悪液質と関連病態」の鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏の発表の一部を報告する。前悪液質状態の前から起きている食欲不振 伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏は「がん悪液質の病態評価と治療戦略」の中で次のように発表した。 がん悪液質の出現割合は全病期で50%、末期になると80%にもなる。また、がん患者の30%は悪液質が直接の原因で死亡する。EPCR(European Palliative Care Research Collaborative)のガイドラインでは、がん悪液質は前悪液質(Pre-Cachexia)、悪液質(Cachexia)、不可逆的悪液質(Refractory Cachexia)の3つのステージに分けられる。ESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:欧州静脈経腸栄養学会)のエキスパートグループは、食欲不振・食物摂取の制限は前悪液質となる前から現れると述べている。 この食欲不振の原因は全身性炎症反応である。McMahon氏らの研究では、未治療の肺がん患者のCRPは、手術侵襲のピーク時を超える高値で持続するとされる。全身性炎症反応の最も大きな原因は、腫瘍から放出されるTNFα、IL-6、IL-1などの炎症性サイトカイン。「炎症性サイトカインが中枢神経に働きかけて、まず食欲が失われ、それに伴って悪液質が始まり、代謝異化に向かい体重減少し、最後にはサルコペニアに至る」という。悪液質の発現で変わるがん治療効果 全身性炎症はまた、がんの治療効果にも影響を及ぼす。全身性炎症が亢進すると、薬物代謝酵素である肝臓のチトクロームP450活性が低下する。薬の代謝が抑制されるため薬物毒性が増える。一方、代謝を受けて薬効を示すプロドラッグなどは効果が減弱する。Carla氏らの報告では、非悪液質患者の抗がん剤の毒性出現頻度は約20%だが、悪液質患者では約50%と上昇する。抗がん剤の治療成功期間(Time to progression)も、非悪液質に比べ悪液質では約400日短縮する。 三木氏らは、伊賀市立上野総合市民病院で、5%以上の体重減少があるがん化学療法施行消化器がん患者179例に対して栄養療法(EPA 1g/日含有栄養剤:300kcal)のトライアルを行った。結果、栄養支持療法なし群だけをみると悪液質(体重減少5%以上かつCRP 0.5以上)は20%に発現し、この悪液質発現群では非発現群と同様の化学療法を受けていても全生存期間が有意に短かった(p<0.01)。また、栄養支持療法あり群では、がん化学療法施行時中もCRPは上昇せず、骨格筋量、除脂肪体重は増加した。栄養支持療法なし群ではCRPは上昇し、骨格筋量、除脂肪体重は増加しなかった。がん化学療法継続日数は栄養支持療法あり群で80日延長した(388.8日 vs.308.0日)。これら栄養支持療法による生命予後改善は、悪液質患者に限ってみられた(全患者:p=0.84、悪液質患者:p=0.0096)。「栄養支持療法をすることで、悪液質患者を非悪液質患者と同じ抗がん剤治療の土俵へ上げることができたことになる」と三木氏は述べる。がん悪液質におけるグレリンの役割 鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏は「がん悪液質と関連病態」の中でグレリンについて次のように述べた。 グレリンは胃から分泌され、摂食促進、エネルギー消費抑制に働く。グレリンはグレリン受容体(成長ホルモン分泌促進受容体)に結合し、食欲促進ペプチドである視床下部の神経ペプチドY(NPY)に作用し食欲を増やす。また、下垂体前葉において成長ホルモンの分泌を促進しサルコペニアを改善する。 がん悪液質では、グレリンの相対的分泌低下とレプチンの相対的上昇があり、食欲抑制系が優位状態となっていることが、動物実験で示されている。そのため「外部からグレリンを投与し補充することは理論的」と乾氏は言う。動物実験では実際に、グレリンを投与すると空腹期強収縮が起こり、胃の中に食物があっても空腹期様の強収縮を起こすことも示されている。 グレリン化合物には、多くの開発品がある。anamorelinは、グレリン受容体に強力な親和性を有する経口のグレリンアゴニストである。すでに4つの第II相試験と2つの第III相試験を実施している。StageIII/IVの悪液質を有する非小細胞肺がん患者174例を対象にした第III相試験においては、主要評価項目である除脂肪体重(p<0.0001)に加え、全体重も有意に改善した(p<0.001)。握力はp=0.08で有意な改善は示さなかったものの、「悪液質の診断がついて早期に使えば、より大きな効果を期待できるであろう」と乾氏。 さらに、グレリン・NPYを活性化するものに人参養栄湯がある。グレリン分泌の促進とグレリン非依存性のNPY活性化という2つの作用を有する。食欲、サルコペニア、疲労・抑うつの改善など、重症がん患者に対する支持療法としてさまざまな効果がある。「将来はグレリンアゴニストと人参養栄湯をドッキングして使われることもあると思う」と乾氏は言う。

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