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ALK陽性肺がん、ロルラチニブの1次治療が有効性示す、とくに脳転移(CROWN試験)/ESMO2020

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてロルラチニブとクリゾチニブを比較する多施設非盲検無作為化第III相CROWN試験の中間解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)にて、オーストラリア・Peter MacCallumがんセンターのB. Solomon氏により発表された。・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mgx2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性CROWN試験の結果はALK陽性非小細胞肺がんでのロルラチニブ使用を支持するもの CROWN試験の中間解析の主な結果は以下のとおり。・対象患者296例は、無作為にロルラチニブ群(n=149)とクリゾチニブ群 (n=147)に割り付けられた。・BICR評価のPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.1ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に延長された(HR:0.28、95%CI:0.19〜0.41、p<0.001)。12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・治験担当医によるPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.3ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に改善された(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.31、p<0.001)12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・OSは両群とも中央値未達であった。・BICR評価のORは、ロルラチニブ群76%、クリゾチニブ群58%であった。・BICR評価のIC-ORは、ロルラチニブ群66%、クリゾチニブ群20%、測定可能病変だけ見るとロルラチニブ群71%、クリゾチニブ群8%と、その差はさらに大きかった。・Grade3/4の有害事象(AE)は、ロルラチニブ群では72%、クリゾチニブ群56%であった。そのうちロルラチニブ群で最も頻度の高かった項目は脂質異常であった。AEのため中止に至った割合はロルラチニブ群7%、クリゾチニブ群9%であった。 Solomon氏は、CROWN試験の結果は、ALK陽性非小細胞肺がん1次治療でのロルラチニブ使用を支持するものであると述べた。

962.

非扁平上皮NSCLC1次治療、化学療法+ベバシズマブ+ニボルマブの4併用がPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/ESMO2020

 ONO-4538-52/TASUKI-52試験は、非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療治療において、プラチナ化学療法とベバシズマブの併用にニボルマブを上乗せした初の無作為化二重盲検第III相試験である。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、その初回解析の結果を韓国・ソウル国立大学ブンダン病院のJong Seok Lee氏が発表した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対象群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目 ]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・日本、韓国、台湾の患者550例が1:1で無作為にニボルマブとプラセボに割り付けられた。 ・データカットオフ(2020年2月10日)での最低追跡期間は7.4ヵ月であった。・PFS中央値は二ボルマブ群12.1ヵ月に対しプラセボ群8.1ヵ月と、ニボルマブ群で有意に長かった(HR:0.56、96.37%CI:0.43〜0.71、p<0.0001)。12ヵ月PFS率は二ボルマブ群50.1%、プラセボ群30.2%であった。・PD-L1発現別のPFS HRは、PD-L1<1%で0.55、PD-L1 1〜49%で0.63、PD-L1≧50%で0.55であった。・ OSは評価に達していないが、ニボルマブ群の中央値は25.4ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月であった(HR:0.85、95%CI:0.63〜1.14)。・ ORRは、ニボルマブ群61.5%、プラセボ群50.5%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ群で73.6%、プラセボ群で72.0%、治療中止につながるTRAEは二ボルマブ群16.5%、プラセボ群4.4%と、二ボルマブ群で多く観察されたが、治療関連死は二ボルマブ群1.8%、プラセボ群1.5%と同程度であった。 カルボプラチン・パクリタキセルとベバシズマブへのニボルマブの併用はPFSを有意に延長し、その効果はPD-L1発現に関係なく認められた。非扁平上皮NSCLCの1次治療となる可能性が示唆されると、Lee氏は述べた。

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NSCLCの脳転移に対するペムブロリズマブの効果/Lancet Oncol

 ペムブロリズマブが非小細胞肺がん(NSCLC)の脳転移に有効である可能性が示された。米国・イェール大学医学大学院のSarah B. Goldberg氏らは、NSCLCまたは悪性黒色腫の患者を対象としたペムブロリズマブの非盲検第II相試験において、脳転移病変に対する抗PD-1抗体の効果を検討しており、これまでに中間解析結果を報告している。今回、同試験のNSCLCコホートを対象とした最新の解析を行い、ペムブロリズマブは、PD-L1発現が1%以上のIV期NSCLC患者における脳転移病変に対して有効であり、安全性も確認されたことを報告した。著者は、「NSCLCによる中枢神経系(CNS)疾患に対する免疫療法のさらなる検討が必要である」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年5月号掲載の報告。 研究グループは、18歳以上のIV期NSCLCで、1つ以上の脳転移(5~20mm大)を有し、脳転移巣未治療または放射線療法後に増悪した患者を対象に、ペムブロリズマブ10mg/kgを2週間間隔で静脈内投与した。 CNS疾患の評価には、mRECISTを用いた。また、患者をPD-L1発現が1%以上(コホート1)、PD-L1発現が1%未満または評価不能(コホート2)の2つのコホートに分けた。 主要評価項目は、脳転移病変の奏効率(部分奏効または完全奏効を達成した患者の割合)であった。治療を受けたすべての患者を有効性および安全性の解析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・2014年3月31日~2018年5月21日までの間に42例が治療を受けた。・追跡期間中央値8.3ヵ月において、脳転移病変の奏効が得られた患者は、コホート1で37例中11例(奏効率29.7%、95%信頼区間[CI]:15.9~47.0)、コホート2では0例であった。・Grade3~4の治療関連有害事象は、肺臓炎が2例、全身症状、大腸炎、副腎機能障害、高血糖および低カリウム血症が各1例であった。・重篤な治療関連有害事象は42例中6例(14%)に発現し、肺臓炎が2例、急性腎障害、大腸炎、低カリウム血症および副腎機能障害が各1例であった。・治療に関連した死亡は認められなかった。

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T790M陽性NSCLCに対するオシメルチニブとベバシズマブの併用(WJOG 8715L)/ESMO2020

 EGFR-TKIに耐性となりT790M陽性が確認された進行肺腺がんに対して、オシメルチニブとベバシズマブの併用は、オシメルチニブ単独に比し、無増悪生存期間(PFS)の延長を示せなかった。日本のWest Japan Oncology Group(WJOG)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で仙台厚生病院の戸井 之裕氏から発表された。 このWJOG8715L試験は、日本国内で実施されたオープンラベルの無作為化第II相試験である。・対象:EGFR-TKIで進行後T790M変異陽性が確認されたEGFR変異陽性進行肺腺がん81例・試験群:オシメルチニブ+ベバシズマブ(OB群)・対照群:オシメルチニブ(O群)・評価項目[主要評価項目]主治医判定によるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、治療成功期間(TTF)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16ヵ月時点でのPFS中央値は、O群13.5ヵ月、OB群9.4ヵ月、HR1.44(95%CI:1.00~2.08)、p=0.20とOB群のほうが短かった。・ORRはO群55.0%、OB群71.8%と、OB群のほうが高かった。・抗VEGF薬投与歴のないO群のPFS中央値は13.7ヵ月、OB群のPFS中央値は11.1ヵ月であったが、抗VEGF薬の投与歴があったO群のPFS中央値は15.1ヵ月で、OB群のPFS中央値は4.6ヵ月と短かった。・TTF中央値はO群11.2ヵ月、OB群8.4ヵ月、HR1.54、p=0.12であった。・OS中央値は、O群22.1ヵ月で、OB群は未到達、HR1.02、p=0.96であった。・有害事象としての蛋白尿と高血圧は、有意にOB群で頻度が高く、貧血は有意にO群で高率であった。OB群に重篤な塞栓症や出血は認められなかった。

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切除不能StageIII NSCLC、デュルバルマブ地固め療法、半数が4年生存(PACIFIC)/ESMO2020

 同時化学放射線療法(cCRT)後に疾患進行のない切除不能StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)におけるデュルバルマブ地固め療法の第III相PACIFIC試験。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、デュルバルマブ群初とはる全生存期間(OS)を含む4年生存データを、英国・マンチェスター大学のC. Faivre-Finn氏が発表した。・対象:cCRT後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者・試験群:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月(473例)・対照群:プラセボ、2週ごと12ヵ月(236例)・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会(BICR)判定による無増悪生存期間(PFS)、OS[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までの時間、安全性などCRTの1~42日後に、被験者はデュルバルマブとプラセボに2対1に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・2020年3月20日現在、追跡期間中央値は34.2ヵ月であった。・OS中央値はデュルバルマブ群47.5ヵ月、プラセボ群29.1ヵ月であった(HR:0.71、95%CI:0.57〜0.88)。 ・4年OS率は、デュルバルマブ群49.6%、プラセボ群6.3%であった。・PFS中央値は、デュルバルマブ群17.2ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であった(HR:0.55、95%CI:0.44〜0.67)。・4年PFS率は、デュルバルマブ群35.3%、プラセボ群19.5%であった。

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肺がん1次治療におけるペムブロリズマブ単独治療の5年生存率、30%超(KEYNOTE-024)/ESMO2020

 PD-L1 発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるペンブロリズマブ単剤治療は第III相KEYNOTE-024試験の追跡期間11.2ヵ月の解析で、化学療法と比較して有意な無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の改善が示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、同試験の5年追跡結果を、米国・Sidney Kimmel包括的がんセンターのJ.R. Brahmer氏が発表した。・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例)・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例)・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2020年6月1日)の追跡期間中央値は59.9ヵ月であった。・化学療法群のペムブロリズマブへのクロスオーバーは66.0%(99/150例)であった。 ・OS中央値はペムブロリズマブ群26.3ヵ月、化学療法群13.4ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48〜0.81)・5年OS率はぺムブロリズマブ群31.9% 、化学療法群16.3%であった。・全奏効率(ORR)はペムブロリズマブ群46.1%(CR4.5%、PR41.6%)に対し、化学療法群31.1%(CR0%、PR31.1%)であった・DORは、ペムブロリズマブ群29.2ヵ月に対し、化学療法群6.3ヵ月であった。・全Grade治療関連有害事象(TRAE)発現は、ペムブロリズマブ群76.6%に対し化学療法群90.0%、Grade3〜5のTRAEの発現は、ペムブロリズマブ群で31.2%に対し化学療法群53.3%であった。 ペムブロリズマブ単剤治療は、高いクロスオーバー率にもかかわらず、引き続きOSの改善を示している。5年OS率は、30%を超え、化学療法の約2倍であり、かつ持続的な効果を示している。ペムブロリズマブ単剤治療は、PD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLCの1次治療において有効な治療方法であることを、この試験結果は示していると、Brahmer氏は述べた。

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EGFR変異肺がんに新規抗HER3抗体薬物複合体U3-1402が有望/ESMO2020

 濃厚な治療歴を有するEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、HER3を標的とする抗体薬物複合体(ADC)が、臨床的に意義のある効果と管理可能な安全性を示した。この第I相試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのHelena A. Yu氏より発表された。・対象:EGFR変異陽性の転移を有するNSCLC患者57例(用量漸増パートから12例+用量拡大パートから45例)。PSは 0〜1・試験群:Patritumab Deruxtecan(U3-1402)を用量漸増パートでは3.2mg/kg~6.4mg/kg、用量拡大パートでは5.6mg/kgを3週間ごと点滴・評価項目:[主要評価項目]抗腫瘍効果(盲検下中央判定での奏効率、奏効期間など)[副次評価項目]安全性と忍容性 主な結果は以下のとおり。・症例の年齢中央値は65歳、女性が63%、アジア人が47%、白人が44%だった。脳転移も47%の症例で認められた。・前治療ライン数の中央値は4。全員がEGFR TKIの治療を受けており(オシメルチニブ86%含む)、90%でプラチナ化学療法が、40%で免疫チェックポイント阻害薬の投与歴があった。・追跡期間中央値は5ヵ月で全奏効率25%(CR 2%、PR 23%)、3例の未確定PR例があった。・病勢コントロール率は70%、奏効期間中央値は6.9ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TEAE)は、血小板減少28%、好中球減少19%、倦怠感9%、貧血9%であった。・TEAEによる治療中止は9%で、その要因は、倦怠感、食欲低下、間質性肺疾患、肺臓炎などであり、治療関連死はなかった。 最後に演者は「この抗HER3の新規ADCはEGFR C797S変異、MET増幅、HER2変異、BRAF融合、PIK3CA変異などのさまざまなEGFR-TKI耐性にも有効性を示した。次の第II相試験も計画されている」と結んだ。

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KRASG12C変異陽性肺がんにおけるsotorasib(CodeBreaK100)/ESMO2020

 KRAS p.G12C変異は固形がんの1〜3%、非小細胞肺がん(NSCLC)では13%に認められる。KRASG12C阻害薬sotorasib(開発コード:AMG510)は、KRASp.G12C変異陽性の進行固形腫瘍患者の第I相試験で良好な抗腫瘍活性と安全性プロファイルを示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、この国際オープンラベル第I相試験CodeBreaK100におけるNSCLCの結果を、米国・MDアンダーソンがんセンターのD. S. Hong氏が発表した。・対象:既治療の局所進行または転移を有するKRAS p.G12C変異陽性固形腫瘍患者・試験薬:sotorasibを進行または忍容できない有害事象が発現するまで投与(コホート1:180mg、2:360mg、3:720mg、4:960mg)・評価項目[主要評価項目]安全性[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・登録患者129例中NSCLCは59例であった。・患者の年齢中央値は68.0歳、女性35%、現・元喫煙者89.8%、前治療中央値は3、抗PD-1/L1薬投与89.8%、化学療法投与は全例、脳転移は30.5%であった。・データカットオフ時(2020年6月1日)の追跡期間中央値は11.7ヵ月であった。・用量制限毒性はなく、致死的有害事象の報告もなかった。・Grade3/4の有害事象発現率は18.6%であった。頻度の高い(5%以上)の治療関連有害事象は下痢(66.1%)、ALT・AST上昇(それぞれ20.3%)、疲労感(10.2%)、悪心( 10.2%)などであった。・NSCLC全集団のPFS中央値は6.9ヵ月であった。・ NSCLC全集団のORRは32.2%、DCRは88.1%、推奨用量960mg集団のORRは35.3%、DCRは91.2%であった。 ・DoRは10.9ヵ月であった。・全集団のPFS中央値は6.3ヵ月であった。 ・KRASp.G12Cアリル頻度、血漿腫瘍変異量、PD-L1発現の程度と効果に相関はなかった。

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EGFR変異肺がんへのオシメルチニブのアジュバント、CNS含む再発を有意に減少(ADAURA)/ESMO2020

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブの術後療法については、第III相ADAURA試験の結果が本年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2020 Virtual Scientific Program)で発表され、主要評価項目である無病生存期間(DFS)についてはオシメルチニブ群の有意な改善が報告されていた(HR:0.17、95%CI:0.12~0.23、p<0.0001)。今回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、国立がん研究センター東病院の坪井 正博氏が同試験の再発に関するデータを発表した。・対象:EGFR変異陽性(Ex19del/L858R)のStage IB/II/IIIA非扁平上皮NSCLC完全切除患者682例(術後化学療法は許容)、PS 0〜1・試験群:オシメルチニブ80mg/日 最大3年間投与・対照群:プラセボ・評価項目:[主要評価項目]主治医判定によるStage II/IIIA患者のDFS(想定HR=0.70)[副次評価項目]全集団のDFS、2/3/4/5年時のDFS率、全生存期間(OS)、安全性、健康関連QOL今回の発表は、CNS転移を含む再発のパターンに関する探索的検討のデータである。 主な結果は以下のとおり。・DFSイベントの発生率はオシメルチニブ群で11%、プラセボ群で46%あった。・再発の内訳は、オシメルチニブ群では遠隔転移38%、局所再発62%、プラセボ群では遠隔転移61%、局所再発39%であった。・CNS転移の発生率は、オシメルチニブ群で1%(4例)、プラセボ群で10%(33例)であった。・CNS転移発生をイベントとしたCNS-DFSでは、HR:0.18、95%CI:0.10~0.33、p<0.0001で、2年DFS率は、オシメルチニブ群で98%、プラセボ群で85%であった。坪井氏は「アジュバント・オシメルチニブは、Stage IB/II/IIIAのEGFR変異陽性NSCLC患者の臨床治療を変更し得るような有効な治療法である」と結論付けている。 試験結果は、ESMO発表の同日(2020年9月19日)、NEJMにも公開された。

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EGFR変異陽性肺がんアファチニブ→オシメルチニブのシークエンシャル最終解析(GioTag)/ベーリンガー

 ベーリンガーインゲルハイムは、2020年9月2日、GioTagアップデート研究の最終解析結果を発表した。同研究は、T790M変異を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおいて、アファチニブの初回治療後にオシメルチニブを投与する治療法を評価したリアルワールド、レトロスペクティブ観察研究。 結果、解析患者203例におけるアファチニブからオシメルチニブへのシークエンシャル治療の全生存期間(OS)中央値は37.6ヵ月、治療成功期間(TTF)は27.7ヵ月に達した。  Del19変異陽性患者のOS中央値は41.6ヵ月、TTF中央値は37.1ヵ月であった。アジア人患者のOSは44.8ヵ月、TTFは37.1ヵ月。Del19陽性アジア人患者のOSは45.7ヵ月、TTFは40.0ヵ月となった。 また、安定した脳転移を有する患者群ではOS 31ヵ月、TTF 22.2ヵ月。65歳以上の患者群ではOS 36.9ヵ月、TTF 27.3ヵ月、ECOG PS2以上の患者群ではOS 32ヵ月、TTF 22.2ヵ月であった。

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奇跡を軌跡に。日本初の患者提案型医師主導治験:KISEKI trial【肺がんインタビュー】 第51回

第51回 奇跡を軌跡に。日本初の患者提案型医師主導治験:KISEKI trial出演:近畿大学医学部内科学 腫瘍内科部門 武田 真幸氏西日本がん研究機構(WJOG)と肺がん患者の会ワンステップが実現した日本初の患者提案型医師主導治験「KISEKI trial(WJOG12819L)」。このT790M変異を問わないEGFR変異陽性肺がん2次治療におけるオシメルチニブの第II相試験について、研究事務局の近畿大学の武田真幸氏に実施にいたる背景や試験デザインについて聞いた。

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ペムブロリズマブをMSI-High大腸がん1次治療にがん国内申請/MSD

 MSDは、2020年9月10日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名:キイトルーダ)について、切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんに対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。 今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、治療歴のない切除不能な進行・再発のMSI-Highまたはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する結腸・直腸がん患者を対象とする多施設共同無作為化非盲検対照薬比較試験であるKEYNOTE-177のデータ等に基づいたもの。 ペムブロリズマブは、2017年2月15日に国内販売を開始し、これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「がん化学療法後に増悪したPD-L1陽性の根治切除不能な進行・再発の食道扁平上皮癌」の効能・効果について承認を取得している。また、乳がん、前立腺がん、胃がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行性固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中である。

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FDA、がん種横断的遺伝子検査にリキッドバイオプシー承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年8月7日、Guardant HealthのGuardant360 CDxを、同年8月26日、Foundation MedicineのFoundationOne Liquid CDxを、固形がん患者に対する包括的ゲノムプロファイリング(CGP)用のリキッドバイオプシー検査として承認した。 Guardant360 CDxは、EGFR変異非小細胞肺がん患者におけるオシメルチニブのコンパニオン診断としても承認されていた。FoundationOne Liquid CDxについては、今回、プロファイリング検査に加え、BRCA1/2変異陽性去勢抵抗性前立腺がん患者におけるrucaparibを含む4種のPARP阻害薬、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん1次治療における3つのEGFR-TKIのコンパニオン診断薬としても承認された。

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selpercatinib、RET融合遺伝子陽性NSCLCに有望/NEJM

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、selpercatinibは、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者と未治療の患者の双方において、頭蓋内の効果を含む持続的な有効性をもたらし、主な毒性作用は軽度であることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが実施した「LIBRETTO-001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月27日号に掲載された。RET融合遺伝子は、NSCLCの1~2%にみられるがんドライバー遺伝子で、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者は脳転移のリスクが高いとされる。selpercatinibは、新規のATP競合的で高選択性の低分子RETキナーゼ阻害薬であり、中枢神経系にも到達するよう設計されており、前臨床モデルでは脳内での抗腫瘍活性が確認されている。selpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験 本研究は、RET融合遺伝子陽性NSCLCの治療におけるselpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験であり、日本を含む12ヵ国65施設が参加した(Loxo Oncologyなどの助成による)。 対象は、年齢12歳以上(規制当局や施設内倫理委員会の許諾が得られない場合は18歳以上)のRET融合遺伝子陽性進行NSCLCで、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者、または未治療の患者であった。 第I相用量漸増試験では、20mg(1日1回)~240mg(1日2回)の範囲でselpercatinibが経口投与(カプセルまたは液剤)された。第II相試験では、推奨用量(160mg、1日2回)のselpercatinibが投与された。治療は、28日を1サイクルとし、病勢進行、死亡、許容できない毒性作用、同意の撤回のいずれかが起きるまで継続された。 主要評価項目は、独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目には、奏効期間、無増悪生存、安全性などが含まれた。selpercatinibの奏効割合は既治療例64%、未治療例85% 2017年5月~2018年12月の期間に、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のあるRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者105例(年齢中央値61歳、女性59%、前治療レジメン数中央値3[範囲1~15]、脳転移あり38例[36%])が登録された。また、2017年12月~2019年6月の期間に、未治療のRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者39例(年齢中央値61歳、女性56%、脳転移あり7例[18%])が登録された。 プラチナ製剤ベースレジメンによる既治療例のselpercatinibの奏効割合は64%(95%信頼区間[CI]:54~73)であり、このうちCRが2%、PRは62%であった。奏効期間中央値は17.5ヵ月(12.0~評価不能)であり、フォローアップ期間中央値12.1ヵ月の時点で、奏効例の63%で奏効が持続していた。また、フォローアップ期間中央値13.9ヵ月の時点で、無増悪生存期間中央値は16.5ヵ月(13.7~評価不能)であり、1年無増悪生存率は66%(55~74)だった。 また、既治療例のベースライン時に脳転移を認めた38例のうち、11例が測定可能病変を有しており、このうち91%(10/11例)が客観的頭蓋内奏効(CR:3例[27%]、PR:7例[64%])を達成し、中枢神経系の奏効期間中央値は10.1ヵ月だった。 一方、未治療の39例では、selpercatinibの奏効割合は85%(95%CI:70~94)であり、CRはなく、PRが85%であった。6ヵ月の時点で、奏効例の90%で奏効が持続していた。また、奏効期間中央値(フォローアップ期間中央値7.4ヵ月)および無増悪生存期間中央値(同9.2ヵ月)には未到達で、1年無増悪生存率は75%だった。 全体で最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、高血圧症(14%)、ALT値上昇(12%)、AST値上昇(10%)、低ナトリウム血症(6%)、リンパ球減少症(6%)であった。Grade5の有害事象が6件(4%)(敗血症が2例、心停止、多臓器不全症候群、肺炎、呼吸器不全が1例ずつ)認められた。これらのイベントは、担当医によりselpercatinibとは関連がないと判定された。 selpercatinibの投与を受けた531例のうち、薬剤関連有害事象により160例(30%)が減量し、12例(2%)が投与を中止した。 著者は、「selpercatinibは、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に迅速で持続的な抗腫瘍効果をもたらし、以前にマルチキナーゼ阻害薬で達成されたアウトカムよりも優れたことから、RET融合遺伝子は肺がんにおいて実質的かつ臨床的に使用可能なドライバー遺伝子として確立された」と指摘している。

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ALK陽性肺がん、アレクチニブ1次治療の5年生存は6割超(ALEX)/Ann Oncol

 未治療進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とする、アレクチニブとクリゾチニブの有効性を比較した「ALEX試験」の最終解析結果が、中国・香港中文大学のT. Mok氏らにより報告された。同試験については、初回データカットオフ(2017年2月9日)時点で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されていた。Annals of Oncology誌2020年8月31日号掲載の報告。 研究グループは、未治療のIII/IV期ALK陽性NSCLC患者を、アレクチニブ群(1回600mg、1日2回経口投与、152例)またはクリゾチニブ群(1回250mg、1日2回経口投与、151例)に無作為に割り付け、病勢進行、毒性発現、同意撤回または死亡まで投与を継続した。 主要評価項目は治験参加医師の評価によるPFS、副次評価項目は奏効率、全生存期間(OS)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・治験参加医師の評価によるPFSの中央値は、アレクチニブ群34.8ヵ月、クリゾチニブ群10.9ヵ月と、アレクチニブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~0.58)。・追跡期間中央値は、アレクチニブ群48.2ヵ月、クリゾチニブ群23.3ヵ月。OSイベントの発生が37%の時点でのOS中央値は、アレクチニブ群が未達、クリゾチニブ群は57.4ヵ月であった(層別化HR:0.67、95%CI:0.46~0.98)。・5年OS率は、アレクチニブ群62.5%、クリゾチニブ群45.5%であり、それぞれ34.9%、8.6%の患者が治療を継続していた。・OSに対するアレクチニブのベネフィットは、ベースラインで中枢神経系転移を有する患者(HR:0.58、95%CI:0.34~1.00)でも有していない患者(HR:0.76、95%CI:0.45~1.26)でも認められた。・治療期間中央値は、アレクチニブ群が長かった(28.1ヵ月 vs.10.8ヵ月)。・安全性に関する新たな所見は観察されなかった。

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第22回 急転直下の安倍首相辞任-振り返れば“異変”はアノ時からだった

先週の本コラムで、私の脳内で展開する『世界びっくり人間コンテスト』の対象者の一人として取り上げた安倍首相が、コラム公開前日の8月27日夕刻から始まった記者会見で突如辞任を表明した。会見では持病の潰瘍性大腸炎の悪化がその理由だと説明された。私も一応職歴26年のニュース屋の端くれであり、この会見が決まった後に首相が何を話すつもりなのか、ちょこちょこ探りは入れていた。しかし、この日の午前中まで“辞任”の“じ”の字すら聞こえてこない状況。そこから急転直下の「辞任表明の見込み」の一報が流れ、まさに青天の霹靂だった。そしてこうしたニュースというのは、発表後に「実はあの時は…」と振り返ることができる事象があることも少なくない。「異変」は7月中旬から始まった既に約1年半にわたって原則毎日運動する習慣を取り入れていた私は、午後5時から始まった安倍首相の会見を所属しているスポーツジムのトレッドミル(いわゆるランニングマシン)に一体化されたテレビのディスプレイにイヤホンを差し込み、走りながら聞いていた。午後5時の会見開始2分前からトレッドミルで走り出し、9分くらいになる時だった。安倍首相が自身の健康問題に触れ始めた。その中で安倍首相が言った次の言葉に私はハッとした。「先月中頃から体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました」ここでいう先月中旬とは7月中旬である。この頃、今考えれば不思議なことが起きていた。というのもこの時期に旧知の大手新聞社の記者2人(それぞれ別々の会社)から「親族がかかったので潰瘍性大腸炎について教えて欲しい」と連絡があったのだ。当時は何も思わずに基礎的なことを話した。一般人は“難病”という言葉で“数の少ない病気”と先入観を持ってしまうようだが、国内の潰瘍性大腸炎患者は20万人超で、俗に3大がんといわれる胃がん、大腸がん、肺がんのそれぞれの年間新規診断者数よりも多い一般的な病気である。実際、私の周辺には、仕事に関係なく出会った6人と関連して出会った4人の合計10人の潰瘍性大腸炎患者がいる。ちなみに私が医療を取材するようになってから、この病気に関わった機会は結構多い。最初は1997年。ちょうど5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の中で、初めて大腸のみで成分が放出されるよう設計されたメサラジン(商品名:ペンタサ)の発売から約1年が経過し、その臨床での評価を取材して回ったのである。その後も折に触れてこの病気を取材する機会は少なくなかった。そんなこんなで新聞記者からの問い合わせにも5-ASA製剤、ステロイド、免疫抑制薬、免疫調節薬、生物学的製剤の特徴や日常生活での注意点などはとくに何も見なくとも一通り話すことはできた。突飛すぎる週刊誌記者からの依頼ところがそれから10日以上経った7月下旬、私の携帯電話にやはり旧知の週刊誌記者から着信があった。あいにく私は電話を受けることができなかったが、当人からすぐに「メールをお送りします」とのSMSが届いた。たまたま、メールは確認できる状態だったため、メーラーを立ち上げておいたところ、それから約15分後に次のようなメールが届いた。「首相が持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、9月にも退陣するという情報があるのですが、これに関連して、専門医に安倍首相の顔色や表情、皮膚の状態などから、病状を判断してもらおうかと考えています。そこでお願いですが、こうしたリクエストに応じてくれる医師をご存じないでしょうか。こちらも何人か当たっているのですが、なかなか応じてもらえません。心当たりがあれば、教えていただけませんでしょうか」旧知の記者なのに申し訳ないが、無茶苦茶な依頼である。そもそも潰瘍性大腸炎の診療経験値が極めて高い専門医でも、ぱっと見で重症度・病状が判断できるわけはない。私は次のように返信メールを書いた。「潰瘍性大腸炎は下痢や血便の頻度、血液検査、大腸内視鏡で病状を判断するものなので、ぱっと見で病状診断は無理です。見た目でこの病気の病状を診断するというのは、およそ星占いの1000倍以上当てにならない話です」また、潰瘍性大腸炎の専門医は国内に数百人程度で、大御所を中心にヒエラルキーが確立しているのは医療関係者なら周知のこと。その環境下でこの記者が要望するような非科学的コメントをする医師がいれば袋叩きにあってしまう。その旨も返信メールに記述し、協力は難しいと伝えた。そしてこの瞬間、私の記憶に蘇ってきたのは7月中旬の新聞記者からの問い合わせだ。一瞬、「もしかしてこのこと?」とは思ったものの、週刊誌記者からの依頼があまりにも突拍子もないものだったことの反動もあって、この時点では首相の体調悪化→辞任というシナリオもないだろうとの判断に傾いた。もっとも、やはり記者は自分が思うことでも一度は疑ってかかるもの。念のため、ある雑誌で長年政治取材をしている記者に8月上旬に連絡を取った。ちなみにこの頃、一部の週刊誌の誌面では「首相が官邸で吐血した」との情報が躍っていた。私が聞いた記者は次のように答えた。「あの吐血情報はどう考えても官邸から出てるんですよね。でももし事実ならば、絶対かん口令が敷かれるはずなんですが…」その後、2度にわたり安倍首相が慶應義塾大学病院を受診したことは報道されている通りである。まさかまさかの辞任表明そしてあの首相の辞任表明会見の前夜から、念のため何人かの記者や関係者に話を振ってみた。要は「辞任があるやなしや」という点である。皆一様に辞任を否定した。「いやいや、前回の政権投げ出し批判があるから、本人も周囲もことさら体調理由の辞任になることは絶対避けたいシナリオ。ここではないですよ」「結局、メディアがことさら騒いでいるだけで、会見も言ってしまえば『大山鳴動して鼠一匹』になりますよ」まあ、これで今回は何もないかと思った。28日午前にもある政治担当記者とやり取りすると、夕方の会見でも述べられた「指定感染症見直し」で厚生労働省と官邸側が話をつめているらしいとの情報のみで、やっぱり「今日はまず辞任はないと思います」との返事。実はかくいう私もそれらの情報を受け、原稿のやり取りをしている当コラムの担当編集者へのお昼直前のメールに次のように書いている。「本日の会見、今の時点でさすがに辞任はなさそうです」各種報道によると、安倍首相が辞意を明らかにしたのは、この日の閣議後に麻生副総理と2人で会談した場だったという。首相動静によれば午前11時過ぎ。それから2時間と経たずに空気は一変した。あとは冒頭に触れたとおりである。潰瘍性大腸炎と私の出会いちなみに首相の辞任表明会見後、7月中旬に私に電話をしてきた新聞社の記者に連絡を取ってみた。うち1人は「ノーコメ(ノーコメント)ということで…」とごまかし笑い。もう1人はいまだ電話を受けてくれていない(笑)。ちなみに私が初めてこの病気の患者と出会ったのは大学1年の時で、その患者は同級生である。彼とは実験などで同じ班だったが、時々、実験の最中に忽然と姿を消すことがあった。大学の実験はギリギリの人数でやっているので、そうそう姿を消してもらっては困る。姿を消した彼がひょっこり戻ってくると、同じ班のほかのメンバーが「おい、何してたんだよ」と詰める。彼はいつも苦笑いしながらぽつりと言った。「うん、ウンコ」そこで班内は爆笑になる。いつのまにか彼は陰で「ウンコ○○(○○は彼の名字)」と呼ばれるようになった。そんなある日、学食で私が一人で食事をしているとトレーを持った彼が「おう」と言いながら、向かいに座った。そして自らこう語り出した。「実はさ、しょっちゅうトイレ行くの病気なんだよね。潰瘍性大腸炎っていう」今のように医学の知識のなかった私はこう返した。「それって治るの」彼は私のほうも見ずにうどんをすすりながら言った。「いや、治らない」なんと返していいかわからなかった。彼はうどんを食べ終わると、私の前に大きなオレンジ色の錠剤を出して見せてくれた。「これが薬なんだ」当時は何もわからなかったが、今ならあれが初期の5-ASA製剤サラゾピリンだとわかる。男女問わず、尿や汗をオレンジ色にしてしまい、男性では精液にまで色を付けてしまうあの薬だ。そして今ならわかる。彼が堂々と笑いながら「ウンコ」と口にしたのは彼が身につけた防衛策だろうと。首相辞任会見を難病周知のきっかけに先週の安倍首相の辞任会見以来、この記事を執筆している今現在までに各紙・各週刊誌の記者とやり取りする中で、必ず話題になるのが首相の病気である潰瘍性大腸炎のことだ。そして20万人もの患者がいながら、案外この病気のことは知られていないことに驚く。ちなみにこの間、両手指を超える記者と話して、知り合いにこの病気の患者がいると答えたのは1人のみ。だが、そんなはずはない思う。身の回りで大腸がん、肺がん、胃がんの患者の話を聞いたことがない成人はいないと思う。潰瘍性大腸炎の患者はそうしたがんの患者よりも多いのだ。結局のところ排泄のことも関係するために多くの患者は周囲に言えないだけなのだろうと思う。その意味で私が仕事とは直接関係なく出会った潰瘍性大腸炎の患者の一部からはこういわれたことがある。「医療に詳しいみたいだから言っても問題ないかなと思って」そうした彼らの期待に今の自分が応えられているかと問われれば私も自信はない。だが、日本の国家元首自らのカミングアウトは、アンサングな患者たちのことに今一度思いをはせる良い機会ではないだろうか。もっともこの職業ゆえの余計な一言かもしれないが、安倍首相の政治的成果に対する評価は別途厳格に行わなければならないし、そこでは基本、鞭を打つ姿勢で臨むべきであり、手を緩める必要はまったくないと思っている。

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免疫チェックポイント阻害薬、1次治療は75歳以上の高齢者でも有効

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)について、75歳以上の高齢者にも有効であることが、フランス・ソルボンヌ・パリ・ノール大学のThierry Landre氏らによる無作為化比較試験のメタ解析の結果、示された。ICIの有効性に対する加齢の影響については議論の余地があり、75歳以上の高齢者についてはこれまでほとんど知られていなかった。なお結果について著者は、「生存に対するベネフィットは主に1次治療で観察されたものであり、2次治療については不明なままである」と述べている。Drugs & Aging誌オンライン版2020年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、75歳以上の高齢患者におけるICIの有効性を評価するメタ解析を実施した。進行固形がん患者を対象に、ICI(単独療法または併用療法)と標準治療を比較した無作為化比較試験のうち、2010年1月~2020年1月までの間に発表された論文を適格とした。 主要評価項目は、高齢患者(75歳以上)と非高齢患者(75歳未満)で比較した全生存(OS)期間。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)値を収集・プールして評価。副次評価項目は、1次治療および2次治療別のICI治療の影響とした。 主な結果は以下のとおり。・抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、アベルマブ)、または抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)を評価した、15件の第III相臨床試験を解析に組み込んだ。・登録患者は、非小細胞肺がん、腎細胞がん、悪性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、または胃がんであった。・15件のうち、1次治療に関する試験が8件、2次治療に関する試験が7件であった。・患者背景は、年齢中央値64歳、75歳以上が906例(1次治療552例、2次治療354例)、75歳未満が8,741例(1次治療4,992例、2次治療3,749例)であった。・1次治療における死亡HRは、75歳以上群0.78(95%CI:0.61~0.99)、75歳未満群0.84(95%CI:0.71~1.00)であった。・2次治療における死亡HRは、75歳以上群1.02(95%CI:0.77~1.36)、75歳未満群0.68(95%CI:0.61~0.75)であり、サブグループ間で統計学的に有意差が観察された(相互作用のp=0.009)。

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