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ctDNA検出のMRDが術後NSCLCの再発予測バイオマーカーに?

 近年、非小細胞肺がん(NSCLC)における周術期治療において、さまざまな薬剤の臨床試験が進行しており、今後治療が変化していくことが予想される。しかし、アジュバントによるメリットを受ける患者層を特定するためには、再発リスクを評価するためのバイオマーカーが必要である。 中国・四川大学のLiang Xia氏らは、周術期の循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)が、分子残存病変(MRD)の早期発見と、術後再発予測のバイオマーカーとなりうるか、検討を行った。Clinical Cancer Research誌オンライン版2021年11月29日号掲載の報告。ctDNAベースのMRDはRFS予測への寄与率が高かった 本研究では、LUNGCA研究(手術適応となるNSCLC患者におけるctDNAの動的モニタリングに関する前向き多施設コホート)に基づき、StageI〜IIIのNSCLC患者330例の周術期3時点(術前、術後3日、術後1ヵ月)で得られた血漿サンプル950件を登録した。カスタマイズされた769遺伝子のパネルを用いて、腫瘍組織および血漿サンプル中の体細胞変異を次世代シーケンサーで同定し、ctDNAベースのMRD解析に活用した。 ctDNAがMRDの早期発見と術後再発予測のバイオマーカーとなりうるか検討を行った主な結果は以下のとおり。・術前のctDNA陽性は、無再発生存率(RFS)の低下と関連していた(ハザード比[HR]:4.2、p<0.001)。・MRDの存在(術後3日および/または術後1ヵ月時点のctDNA陽性)は、強力な再発予測因子であった(HR:11.1、p<0.001)。・ctDNAベースのMRDは、TNMを含む、どの臨床病理学的変数よりも、RFS予測への寄与率が高かった。・MRD陽性集団では、アジュバント治療を受けた患者は、アジュバント治療を受けなかった患者よりも、RFSが改善した(HR:0.3、p=0.008)。・MRD陰性集団では、アジュバント治療を受けた患者は、アジュバント治療を受けなかった患者よりも、RFSが低下した(HR:3.1、p<0.001)。・臨床病理学的変数で調整した後も、アジュバント治療の有無は、MRD陽性集団におけるRFSの独立因子であったが(p=0.002)、MRD陰性集団ではそうではなかった(p=0.283)。 周術期におけるctDNA解析は、NSCLCのMRDの早期発見と再発リスクの層別化に有効であり、NSCLC患者の管理に役立つ可能性がある、と著者らは結論付けている。

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肺がん2021Wrap Up (2)免疫チェックポイント阻害薬【肺がんインタビュー】 第74回

第74回 肺がん2021Wrap Up (2)免疫チェックポイント阻害薬出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2021年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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肺がん2021Wrap Up (1)標的治療薬【肺がんインタビュー】 第74回

第74回 肺がん2021Wrap Up (1)標的治療薬出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2021年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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JSMO2022の注目演題/日本臨床腫瘍学会

 2022年1月21日、日本臨床腫瘍学会はオンラインプレスセミナーを開催し、会長の国立がん研究センター中央病院の大江 裕一郎氏らが、第19回学術集会の注目演題などを発表した。 今回の学術集会のテーマは「Inspiring Asian Collaboration and the Next Generation in Oncology」。アジアとの協力関係と若手の活性化を目指したものだという。2022年2月17~19日に、現地(京都国際会館およびザ・プリンス京都宝ヶ池)開催を基本とし、webライブとオンデマンド配信を組み合わせたハイブリッド形式で行われる。演題数は1,000を超え、4分の1は海外からの演題とのこと。4つのPresidenstial Session 選ばれた優秀演題が発表されるPresidentialは1~4までのsessionで行われる。 Session1は乳がんと婦人科がんで2月17日午前、Session2は肺がんで2月17日午後、Session3は消化器がんで2月18日午前、Session4は造血器腫瘍と希少がんのトピックで2月19日の午前に開催される。COVID-19関連演題 COVID-19関連は、主に2つの合同シンポジウムと2つの一般演題セッションで取り上げられる。 同学会と日本癌学会/日本癌治療学会のがん関連3学会の合同シンポジウム「COVID-19流行のがんマネジメント」が2月17日午後に行われる。ここでは、新型コロナの流行によるがんのマネジメントへの影響について、さまざまな観点から議論する。 ESMO(欧州臨床腫瘍学会)との合同シンポジウム「Oncology Trial and Practice with/post COVID-19 era」が上記シンポジウムに引き続いて行われる。ここでは海外演者と日本の演者が登壇し、コロナ禍でのがん臨床および治療開発をどのように行うべきかディスカッションが行われる。 一般演題ではCOVID-19関連Mini Session1と2で国内外の演者による発表が行われる。HPV関連がん 2020年にワクチンの積極的勧奨が再開されたHPV関連がんについては、会長企画「HPV関連がんの予防と治療~日本とアジアの現状から見えてくるものとは~」で取り上げる。 ここではHPVワクチンの安全性や近年増加しているHPV関連中咽頭がんについての新たな知見が紹介される。

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ソトラシブのコンパニオン診断薬が承認/キアゲン

 キアゲンは、2022年1月27日、非小細胞肺がん(NSCLC)患者に向けたKRAS G12C阻害や薬ソトラシブ(製品名:ルマケラス)に対するコンパニオン診断薬therascreen KRAS変異検出キット RGQ 「キアゲン」の製造販売承認を取得したと発表。  KRAS変異は日本人肺がん患者の10%程度、欧米人では25%程度に見られると言われている。本(2022)年1月には、アムジェン社のソトラシブ(製品名:ルマケラス)が、NSCLCの KRAS変異のなかで最も頻度の高いKRAS G12C変異を有するNSCLCに承認された。 therascreen KRAS変異検出キットRGQ 「キアゲン」は、迅速性と定量性に優れたリアルタイムPCR技術を用いたもの。2021年12月に製造販売承認を受け、2022 年春の保険適用を予定している。

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心不全の患者さんに、病状経過を説明するなら…【非専門医のための緩和ケアTips】第20回

第20回 心不全の患者さんに、病状経過を説明するなら…この連載で繰り返しお伝えしてきたように、緩和ケアを提供する相手はがん患者に限りません。心不全や慢性呼吸器疾患など、臓器障害の経過についても知っておく必要があります。ここでも、前回のがんのケースで紹介した「病みの軌跡」と呼ばれる、疾患ごとの身体機能低下と時間軸を示したグラフが役立ちます。今日の質問かかりつけの心不全患者さん、昨年2回の緊急入院をしています。数年前と比べると徐々に身体機能が低下してきているものの、まだ外来通院は可能です。心不全は予後予測が難しいと聞くので、今後の対応に悩んでいます。非がん疾患の予後予測が難しいのは、おっしゃるとおりです。そして、一般の診療医が対応する疾患としては、がんよりも非がん疾患のほうが多いでしょう。心不全のような特定の臓器機能の低下に伴った疾患の経過の説明には、臓器障害パターンの「病みの軌跡」が有効です。2005年にBritish Medical Journal誌で発表された論文1)が基になっています。図:臓器障害の「病みの軌跡」原著論文を基に筆者作成この「臓器障害」には、心不全だけでなく、慢性閉塞性肺疾患のような呼吸不全を来す疾患や腎疾患なども含まれます。この疾患グループの特徴は、「増悪寛解を繰り返しながら、そのたびに身体機能が低下する」というものです。たとえば、心不全患者さんの多くが増悪での入院を経験します。質問者の患者さんも入退院を繰り返していますよね。そのほか、肺炎など感染症の併発といった、さまざまなきっかけで入院が必要となります。治療介入でいったんは改善するのですが、入院前と比べると廃用が進み、臓器機能がより低下するケースが多くなります。そういった経過を繰り返し、やがてはお看取りする、という経過です。時間軸としては数年単位というケースが多いでしょう。ポイントは、患者さんとご家族が「入院のたびに身体機能が低下している事実に気付いていない」ことです。治療後に回復したため、以前からの低下を実感できないケースが多く、本人の治療体験としても「悪くなってもまた治療できる」と感じやすい疾患群なのです。だからこそ、「増悪寛解を繰り返しながら、そのたびに身体機能が低下する」という「病みの軌跡」を共有することが有効です。悪化防止の重要性を理解することで、食事や薬物療法のアドヒアランスも向上するでしょう。今回のTips今回のTips臓器障害の「病みの軌跡」は、増悪寛解を繰り返しながら身体機能が低下する。1)Murray SA, et al. BMJ. 2005;330:1007-1011.

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KRAS G12C変異の非小細胞肺がんにソトラシブ国内承認/アムジェン

 アムジェンは、2022年1月20日、KRASG12C阻害薬ソトラシブ(製品名:ルマケラス)について、がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの効能・効果で、日本における製造販売承認を取得した。 日本における製造販売承認は国際共同第I/II相多施設共同単群非盲検試験(CodeBreaK100試験)の結果に基づいたもの。同試験の第II相パートでは、非小細胞肺がん(NSCLC)患者126例(日本人11例を含む)を対象に、ソトラシブ960mgが1日1回経口投与され、主要評価項目である奏効率は、有効性評価対象123例で37.4%であった。副作用は安全性評価対象190例(日本人13例を含む)中128例(67.4%)に認められ、主な副作用(発現率5%以上)は、下痢(27.9%)、悪心、ALT増加、AST増加(各16.3%)、疲労(11.1%)、血中アルカリホスファターゼ増加(7.9%)、嘔吐(7.4%)および腹痛(5.3%)である。 ソトラシブは2021年5月、KRASG12C阻害薬として世界で初めて米国で迅速承認を取得し、EU、英国、カナダ、スイスおよびアラブ首長国連邦でも承認されている。日本では2021年3月11日付で厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けていた。 KRASG12C変異は、NSCLCに高い頻度で認められるがんドライバー遺伝子変異の1つであり、米国では肺腺がんの約13%、日本では非扁平上皮がんの4.5%に認められると報告されている。KRASG12C変異の2次治療選択肢は限られており、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する。既存の治療法による予後は不良であり、KRASG12C変異を有するNSCLC患者の2次治療後の無増悪生存期間の中央値は約4ヵ月であると報告されている。販売名:ルマケラス錠120mg一般名:ソトラシブ効果又は効能:がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん用法及び用量:通常、成人にはソトラシブとして960mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する

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ゲフィチニブの非小細胞肺がんアジュバント、DFSとOSの結果(IMPACT)/JCO

 近年、非小細胞肺がん(NSCLC)のアジュバント療法として、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使用したさまざまな臨床試験が実施されている。 このたび、吹田徳洲会病院の多田 弘人氏らが、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した国内臨床試験、IMPACT試験の結果をJournal of Clinical Oncology誌2022年1月20日号で報告した。 IMPACT試験は、EGFR変異陽性患者に対する標準的なアジュバント療法であるシスプラチン+ビノレルビン療法を対照としたゲフィチニブのランダム化比較第III相試験であり、WJOG(西日本がん研究機構)が実施した。・対象:EGFR変異陽性(ex19delまたはL858R)でStageII〜IIIの完全切除後のNSCLC患者・試験群:ゲフィチニブ(250mg/日)を24ヵ月投与(Gef群)・対照群:シスプラチン(80mg/m2 day1)+ビノレルビン(25mg/m2 day1,8)を3週ごと4サイクル投与(CV群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性と忍容性、再発様式など 主な結果は以下のとおり。・2011年9月〜2015年12月に232例が登録され、116例ずつ無作為に割り付けられた。・DFS中央値はGef群35.9ヵ月、CV群25.1ヵ月であった。しかし、カプランマイヤー曲線は術後4年前後で交差し、統計学的に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.67〜1.28、p=0.63)。・OSにも差はなく(HR:1.03、95%CI:0.65〜1.65、p=0.89)、5年OS率はGef群78.0%、CV群74.6%であった。・治療関連死はGef群では0例、CV群では3例報告された。 アジュバント療法におけるゲフィチニブ投与は、DFSとOSを延長しなかったが、同等のDFS、OSが認められたことから、プラチナダブレットのアジュバント療法が不適となる患者には有用かもしれない、と著者らは結論付けている。 なお、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した海外の第III相試験として、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験などが報告されている。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例【Dr.山中の攻める!問診3step】第10回

第10回 咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例―Key Point―咳は重大な疾患の一つの症状であることがある詳細な問診、咳の持続時間、胸部レントゲン所見から原因疾患を絞り込むことができる慢性咳に対するアプローチを習得しておくと、患者満足度があがる症例:45歳 男性主訴)発熱、咳、発疹現病歴)3週間前、タイのバンコクに出張した。2週間前から発熱あり。10日前に帰国した。1週間前から姿勢を変えると咳がでる。38℃以上の発熱が続くため紹介受診となった。既往歴)とくになし薬剤歴)なし身体所見)体温:38.9℃ 血圧:132/75mmHg 脈拍:88回/分 呼吸回数:18回/分 SpO2:94%(室内気)上背部/上胸部/顔面/頭部/手に皮疹あり(Gottron徴候、機械工の手、ショールサインあり)検査所見)CK:924 IU/L(基準値62~287)経過)胸部CT検査で両側の間質性肺炎ありCK上昇、筋電図所見、皮膚生検、Gottron徴候、機械工の手、ショールサインから皮膚筋炎1)と診断された筋力低下がほとんど見られなかったので、amyopathic dermatomyositis(筋無症候性皮膚筋炎)と考えられるこのタイプには、急性発症し間質性肺炎が急速に進行し予後が悪いことがある2)本症例ではステロイドと免疫抑制剤による治療を行ったが、呼吸症状が急速に悪化し救命することができなかった◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性の咳(<3週間)では致死的疾患を除外することが重要である亜急性期(3~8週間)の咳は気道感染後の気道過敏または後鼻漏が原因であることが多い慢性咳(>8週間)で最も頻度が高い原因は咳喘息である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】緊急性のある疾患かどうか考えよう咳を伴う緊急性のある疾患心筋梗塞、肺塞栓、肺炎後の心不全悪化重症感染症(重症肺炎、敗血症)気管支喘息の重積肺塞栓症COPD (慢性閉塞性肺疾患)の増悪間質性肺炎咳が急性発症ならば、心血管系のイベントが起こったかをまず考える心筋梗塞や肺塞栓症、肺炎は心不全を悪化させる心筋梗塞や狭心症の既往、糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、男性、年齢が虚血性心疾患のリスクとなる3つのグループ(高齢、糖尿病、女性)に属する患者の心筋梗塞は非典型的な症状(息切れ、倦怠感、食欲低下、嘔気/嘔吐、不眠、顎痛)で来院する肺塞栓症のリスクは整形外科や外科手術後、ピル内服、長時間の座位である呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、間質性肺炎、結核)の既往に注意するACE阻害薬は20%の患者で内服1~2週間後に咳を起こす【STEP3-1】鑑別診断:胸部レントゲン所見と咳の期間で行う胸部レントゲン写真で肺がん、結核、間質性肺炎を確認する亜急性咳嗽(3~8週間)の原因の多くはウイルスやマイコプラズマによる気道感染である細菌性副鼻腔炎では良くなった症状が再び悪化する(二峰性の経過)。顔面痛、後鼻漏、前かがみでの頭痛増悪を確認する百日咳:咳により誘発される嘔吐とスタッカートレプリーゼが特徴的である2)【STEP3-2】鑑別診断3):慢性咳か否か8週間以上続く慢性咳の原因は咳喘息、上気道咳症候群(後鼻漏症候群)、逆流性食道炎、ACE阻害薬、喫煙が多い上記のいくつかの疾患が合併していることもある咳喘息が慢性咳の原因として最も多い。冷気の吸入、運動、長時間の会話で咳が誘発される。ほかのアレルギー疾患、今までも風邪をひくと咳が長引くことがなかったかどうかを確認する非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB:non-asthmatic eosinophilic bronchitis)が慢性咳の原因として注目されている3)上気道咳症候群では鼻汁が刺激になって咳が起こる。鼻咽頭粘膜の敷石状所見や後鼻漏に注意する夜間に増悪する咳なら、上気道咳症候群、逆流性食道炎、心不全を考える【治療】咳に有効な薬は少ないハチミツが有効とのエビデンスがある4)咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬上気道咳症候群:アレルギー性鼻炎が原因なら点鼻ステロイド、アレルギー以外の原因なら第一世代抗ヒスタミン薬3)逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬<参考文献・資料>1)Mukae H, et al. Chest. 2009;136:1341-1347.2)Rutledge RK, et al. N Engl J Med. 2012;366:e39.3)ACP. MKSAP19. General Internal Medicine. 2021. p19-21.4)Abuelgasim H, et al. BMJ Evid Based Med. 2021;26:57-64.

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ペムブロリズマブの非小細胞肺がん術後アジュバント、無病生存率を改善/Merck

 Merck社は、2022年1月10日、EORTCおよびETOPとともに、第III相KEYNOTE-091(EORTC-1416-LCG / ETOP-8-15 - PEARLS)試験の結果を発表した。  独立データモニタリング委員会による中間分析では、主要要評価項目の1つであるステージIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)全集団のDFS(無病生存期間)について、ペムブロリズマブ治療群はプラセボ群と比較して、PD-L1発現を問わず、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 ただし、もう1つの主要評価項目である高PD-L1発現(TPS≥50%)集団のDFSは、事前に指定された統計計画による統計的有意を示さなかった。高PD-L1発現患者のDFSは引き続き分析される、また副次的評価項目である全生存期間(OS)も評価される。 同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告されたものと一致していた。結果は、今後の医学会議で発表され、規制当局に提出される。 KEYNOTE-091試験は、ステージIB~IIIAの肺葉切除または肺切除後(±補助化学療法)のNSCLC患者の補助治療において、ペムブロリズマブをプラセボと比較する無作為化第III相試験。主要評価項目は、全集団および高PD-L1発現患者のDFSである。副次的評価項目は、OSおよび肺がん特異的死亡率など。

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患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ【非専門医のための緩和ケアTips】第19回

第19回 患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ今日の質問外来の進行がん患者さん。今のところ、内服オピオイドで疼痛を調整できていますが、徐々にADLが低下しています。いずれは在宅での緩和ケアも提供したいのですが、本人はもちろん、家族も今後の経過をイメージできていないようです。先行きを心配されているので、話し合いのよいタイミングだと思うのですが、どうすればうまく伝えられるでしょうか?今回頂いたご質問ですが、質問者の方が非常に丁寧に診療されていることが伝わりますね。おそらく、患者さんはもちろん、ご家族とも信頼関係を築けているからこそ、今が話し合いのタイミングだと判断されたのでしょう。緩和ケアの実践において、先行き予測と関係者との共有は大切です。将来の病状の変化に備えて、早めに準備することは大切ですからね。そのために必要な緩和ケア知識として、「病みの軌跡」を紹介しましょう。「病みの軌跡」は患者さんの疾患の進行に伴い、どのような時間経過で身体機能が低下するかを示したグラフです。2005年にBritish Medical Journal誌で発表された論文1)が基になっています。疾患ごとに経過は大きく異なりますが、今回の患者さんはがんの「病みの軌跡」が当てはまります。図:がんの「病みの軌跡」原著論文を基に筆者作成これを見ると、がん(悪性疾患)は初期から中期は比較的身体機能が保たれていますが、亡くなるタイミングが近づくにつれ、急激に身体機能が低下することがわかります。急な容態変化を経て寝たきりとなり、亡くなるがん患者さんを診た経験のある方も多いのではないでしょうか?私自身、診療の中で、患者さんやご家族にこのグラフを見せることがあります。もちろん、しっかり受け止められるコンディションと評価した相手に対し、伝え方にも配慮したうえでです。本人もご家族もゆっくり身体機能が低下する時期を経験しているので、そうした経過がずっと続くように感じています。そのため、私はよく「テレビで有名な方ががんで亡くなったとき、1ヵ月前くらいにテレビに出たりしているので突然亡くなったように感じますよね。でも、このグラフにあるように、がんは体力が落ちてから亡くなるまでの経過が早い病気なんです。だから、少し早めに感じるくらいのタイミングで先々の準備や心構えができるよう、お声掛けをさせてくださいね」といったように説明しています。イメージを共有する際、ビジュアルは非常に有効です。「病みの軌跡」を使って丁寧なコミュニケーションを図っていただければと思います。今回のTips今回のTips「病みの軌跡」のグラフを使うと、患者さんへの説明がラクになる。1)Murray SA, et al. BMJ. 2005;330:1007-1011.

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肺がんマルチ遺伝子PCRパネルAmoyDx発売/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、複数の抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」の日本国内での販売を2022年1月11日に開始する。  同製品は、非小細胞肺がん(NSCLC)の5種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET)をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異を1回の測定で同時に検出し、10種の抗がん剤の適応判定の補助が可能。保険点数は10,000点(5項目)。 リアルタイムPCR法を用いたマルチプレックスのコンパニオン診断薬が承認・保険適用されたのは本邦初であり、その感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。 製品概要・製品名:AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル(製品番号:A246)・承認番号:30300EZX00059000・使用目的:がん組織から抽出したDNA中の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異及びBRAF遺伝子変異)及びRNA中の融合遺伝子(ALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子)の検出NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる ・EGFR遺伝子変異 ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、オシメルチニブメシル酸塩 ・ALK融合遺伝子 クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ ・ROS1融合遺伝子 クリゾチニブ ・BRAF V600E変異 ダブラフェニブメシル酸塩とトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の併用投与 ・MET遺伝子 exon14スキッピング変異テポチニブ塩酸塩・検査原理:PCR法(リアルタイムPCR法およびRT-PCR法)・検体材料:腫瘍細胞の存在が確認されたFFPE組織、新鮮凍結組織・保険点数:10,000点(準用保険点数: D004-2 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査 イ 2項目4,000点と ロ 3項目6,000点を合算した10,000点)・包装 1キット(12テスト)・製造販売業者 株式会社理研ジェネシス・製造元 Amoy Diagnostics Co., LTD(中国)

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NSCLCの新たなドライバー遺伝子CLIP1-LTK発見

 国立がん研究センター東病院が中心に進める肺がんの遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」が、非小細胞肺がん(NSCLC)の新しいドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」を世界で初めて発見した。また、このドライバー遺伝子変異には、治療薬としてALK-TKIのロルラチニブが有効である可能性が示されている。 試験結果は、Nature誌2021年11月14日号に掲載され、第62回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の松本慎吾氏により発表された。さらなるドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められるNSCLC NSCLCでは、ドライバー遺伝子が相次いで発見されるととも、それに対応する分子標的薬が登場することで治療成績が著しく向上している。  とはいえ、50〜60%のNSCLCではドライバー遺伝子が存在しない。そのため、新たなドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められている。  そのような中、CLIP1-LTK融合遺伝子は、新たなドライバー遺伝子を検索するためLC-SCRUM-Asiaが行った、既知のドライバー遺伝子陰性のNSCLC対象の全RNAシークエンス検査により世界で初めて発見された。CLIP1-LTK融合遺伝子の頻度は0.4%、他ドライバー遺伝子とは相互排他的 CLIP1-LTKはLC-SCRUM-Asiaがスクリーニングした542例中2例で検出された。発現頻度は0.4%である。 検出例はすべて腺がんで、既知のドライバー遺伝子とは相互排他的に認められた。 基礎的検討の結果、CLIP1-LTK融合タンパクはLTKキナーゼの恒常的な活性化を引き起こすドライバー遺伝子であることが明らかになった。CLIP1-LTKはアクショナブル、治療薬はロルラチニブか LTK遺伝子はALK遺伝子と相同性が高いため、ALKキナーゼ阻害薬の多くはLTKキナーゼを阻害すると報告されている。このことから、7種のALK阻害薬の効果を細胞実験で検討した。 その結果、とくにロルラチニブのキナーゼ活性抑制が明らかとなった。また、ロルラチニブの抗腫瘍効果は動物実験でも示されている。 これら基礎研究の結果に基づき、CLIP1-LTK陽性のNSCLC患者にロルラチニブを投与したところ、著名な効果を示した。 LC-SCRUM-Asiaでは今後、CLIP1-LTKのスクリーニングと治療薬の有効性を検証する臨床試験を計画中である。

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2021年、がん専門医に読まれた記事は?「Doctors’Picks」ランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)は、2021年にがん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。がん横断的なトピックスやCOVID-19とがんに関連する記事のほか、米国腫瘍学会(ASCO)関連の話題が多くランクインしている。【1位】おーちゃん先生のASCO2021肺がん領域・オーラルセッション/Doctors'Picks 6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)。4,500を超える演題から注目すべきものをエキスパート医師がピックアップして紹介。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が「CheckMate-9LA試験の2年アップデート」「IMpower130、IMpower132、IMpower150 の免疫関連の有害事象を分析」などを選定した。【2位】がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開/CareNet.com 3月末、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。【3位】ASCO 乳がん 注目演題まとめ(1)オーラル/周術期/Doctors'Picks ASCO注目演題、乳がん分野は寺田 満雄氏(名古屋市立大学)が全オーラル演題をチェックしたうえで注目すべき10演題を選定、サマリーと共に紹介した。【4位】リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査が国内で初承認/日経メディカル 3月、中外製薬は血液検体を用いて固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングを行う検査「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認獲得を発表。リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査は国内初承認となる。進行固形がん患者を対象に、血液中の循環腫瘍 DNA(ctDNA)を用いて324個のがん関連遺伝子を解析する。【5位】免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象…メカニズムと緩和戦略/Nature Reviews Drug Discovery チェックポイント阻害薬(ICI)治療に関連した免疫関連有害事象(irAE)の発生と、発生を予測するバイオマーカーを特定し、発症を抑制するメカニズムを解説する論文がNature Reviews Drug Discovery誌に掲載された。6~10位は以下のとおり。【6位】ASCO 消化器がん 注目演題まとめ/Doctors'Picks【7位】固形がん患者における新型コロナワクチン接種後の抗体価/Annals of Oncology【8位】がん免疫療法患者に対するCOVID-19ワクチン接種/SITC【9位】IMpower150試験、EGFR陽性・肝/脳メタ解析の最終報告/Journal of Thoracic Oncology【10位】「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用を了承/中医協

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抗HER3抗体薬物複合体HER3-DXd、EGFR変異陽性非小細胞肺がんでFDAブレークスルーセラピーに指定/第一三共

 第一三共は、2021年12月24日、パトリツマブ デルクステカン (U3-1402/HER3-DXd)が、米国食品 医薬品局(FDA)より、第3世代EGFR-TKIおよびプラチナ製剤併用療法の治療歴のあるEGFR遺伝子変異陽性で転移のある非小細胞肺がんを対象とした「ブレークスルーセラピー」指定を受けたと発表。 今回の指定は、2021年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2021)で発表された、EGFR遺伝子変異を有する転移または切除不能な非小細胞肺がんを対象とした第I相臨 床試験の結果に基づくものである。

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世界初、RET融合遺伝子TKIのセルペルカチニブ発売/日本イーライリリー

 2021年9月末にセルペルカチニブ(商品名:レットヴィモ)が「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」に対する治療薬として世界で初めて承認され、日本イーライリリーは発売に合わせ12月16日にプレスセミナーを開催した。セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性のがんでRETキナーゼを選択的に阻害 日本における肺がんの罹患全国推定数は約12万人(2017年)、がん種別の死亡数では男女とも1位(2019年)。従来の手術、化学療法、放射線療法に加え、近年の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、治療が著しく進化している。セミナーでは国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏が、肺がんにおける遺伝子治療の現状やセルペルカチニブ承認の基となったデータを解説した。 セルペルカチニブはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の1つで、RET融合遺伝子変異はNSCLCの約2%に発生する希少変異。RET融合遺伝子陽性のがんでは、がん細胞の増殖と生存がRETキナーゼの活性化に依存しており、活性化されたRETキナーゼを選択的に阻害することで腫瘍の増殖を阻害する、というのが作用機序となる。 現在NSCLCではEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRL、MET、そして今回のRETを含めた7つの変異をターゲットとした薬剤が承認済だが、発現頻度の高いEGFR、ALK変異等をターゲットにした薬剤が優先して開発されてきた経緯がある。後藤氏は「希少変異は製薬メーカー主導の開発が難しいため、国立がん研究センターを中心とした研究基盤であるLC-SCRUM-Asiaで遺伝子変異解析と医師主導治験を進めてきた」と説明した。 今回のセルペルカチニブの承認は、国際共同治験LIBRETTO-001の結果を受けたもの。後藤氏は「参加16ヵ国83施設746例中、日本からは13施設64例が参加し、大きな役割を果たした」と紹介した。LIBRETTO-001におけるセルペルカチニブの奏効率(CR+PR)は未治療例で70.5%(95%CI:54.8~83.2)、既治療例で56.9%(49.8~63.8)。「従来の化学療法の奏効率は30%程度、ICI単剤の場合15%程度なので、セルペルカチニブに限らずTKIは非常に奏効率が高い」(後藤氏)。さらにセルペルカチニブは中枢神経系に対する奏効率も82%と高く、脳転移に対する効果も期待される。 有害事象としては、高血圧36.6%(Grade3以上19.2%)、ALT増加32.6%(同9.8%)、AST増加32.6%(同8.3%)が高頻度だった。後藤氏は「セルペルカチニブはRETの選択性が高いために全体的に毒性が低く、外来でも十分マネジメントは可能と考える。発疹をはじめとした過敏症が認められるケースがあったが、そうしたケースも休薬・減薬とステロイド投薬で対応できており、投薬中止例はほとんどなかった」と解説した。 最後に「今後1、2年で肺がんではHER2、KRAS、EGFRエクソン20挿入変異に対するTKIも臨床応用されるようになり、遺伝子解析と個別化医療がさらに一般的なものとなるだろう」とした。

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緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには【非専門医のための緩和ケアTips】第18回

第18回 緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには緩和ケアといえば「がん」患者さんのためのもの、というイメージを持つ方は医療者にも多いのですが、近年、緩和ケアの概念はどんどん広がっています。まさに、パラダイムシフトを迎えている緩和ケアについて、少し紹介しましょう。今日の質問最近、末期心不全患者も緩和ケアの対象となり、診療報酬に収載されたと聞きました。以前から、がん患者にばかり緩和ケアが手厚く提供されるのは違和感があったのですが、今後の動きはどうなっていくのでしょうか?ここでいう診療報酬とは、入院時に緩和ケアチームが緩和ケアを提供した際に算定される「緩和ケア診療加算」のことです。長らく、がんとHIV感染症に限って算定可能だったものが、2018年の診療報酬改定で対象疾患が末期心不全にも拡大された、という背景があります。以前から、特定の疾患に限って緩和ケアを提供する制度設計には批判も多く、わが国の緩和ケア提供の課題の一つでした。なので、対象拡大は大きな一歩といえるでしょう。われわれのように現場で緩和ケアを実践する立場からすれば、重篤な疾患を抱えた患者さんやご家族に、疾患の種類を問わず、幅広くケアを提供したいのは当然の思いです。さらに最近のトピックスは、透析患者の透析中止や慢性呼吸器疾患に対する緩和ケアに対する議論が広まっています。日本呼吸器学会は「非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021」を公開、COPDなど非がん患者の終末期ケアの原則や考え方を提示しました。外来で呼吸器疾患の患者さんを見ているプライマリ・ケア医にとって、待望の指針でしょう。今後もこのような緩和ケアの対象疾患の拡大傾向は続くと思います。このように緩和ケアの概念が広がっていくことは、緩和ケアニーズがある方に広く緩和ケアを届ける、という意味で好ましいことです。そしてそれを実現するためには、外来診療などのプライマリ・ケアの場で緩和ケアを実践する人が増える必要があります。学会や勉強会などでこうした話をすると、「外来診療だけなので、緩和ケアは要らないんですよ」というコメントをいただくことがあります。でも、本当にそうでしょうか? 確かに外来に来られるくらいの患者さんであれば「すぐに対応が必要な症状」や「今日どうしても話し合わなければならない病状」はないかもしれません。しかし、そんな患者さんも、人生の最終段階についての気掛かりがあり、支援を必要としていながら、それを医療者に伝えられていないだけかもしれません。2017年に厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、「人生の最終段階における医療について話し合ったことがない」人の割合が55.1%と半数以上でした。一方で、その理由を尋ねたところ「話し合いたくない」という回答は5.8%にすぎず、「話し合うきっかけがなかった」との回答が最多の56%でした。病状が安定している方が多く、時間も取りにくい外来診療ですが、数年単位で患者さんとのお付き合いができることが強みです。ぜひ、疾患にとらわれない緩和ケアのニーズに目を向けてみてください。今回のTips今回のTips緩和ケアはがん患者だけのものではない。外来にも多くのニーズがあります。

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見逃してはならない“しびれ”とその部位は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第9回

第9回 見逃してはならない“しびれ”とその部位は?―Key Point―しびれは重大な疾患の一つの症状のことがあるしびれの分布や部位から原因疾患を絞り込むことができる頻度が高い疾患は、症状の特徴を覚えておくと診断が容易である症例:68歳 女性主訴)右胸痛、呼吸苦現病歴)7日前、突然左指と左口唇がしびれたが数分で改善した。脳MRI検査を受けたが異常なし。昨夕から徐々に右胸痛と右背部痛が出現。体動時と深呼吸時に痛みは増悪。動くと息切れあり。本日、外出時に痛みの増悪を認め来院した。既往歴)COPD薬剤歴)なし社会歴)たばこ:20歳から45歳まで30本/日アルコール:飲まない経過)左指と左口唇のしびれからは視床の病変が連想される(手口感覚症候群)。視床では口唇と手指の感覚領域が近接して存在する息をすると胸が痛むという症状は胸膜に病変が及んでいることを示唆する胸部レントゲン写真で異常陰影を認めたので、胸部CT検査を行い原発性肺がん(S4) と右第7肋骨骨転移の診断となった肺がんのため過凝固となり手口感覚症候群を起こしたと考えられた◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者はしびれをよく訴える多発神経障害は臨床で遭遇する頻度が高い多発性単神経障害なら原因疾患を絞り込みやすい【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】見逃してはならないしびれかを考察する1)手口感覚症候群(視床の出血/梗塞)指先がしびれている時には、口もしびれていないか必ず確かめるWallenberg症候群(延髄外側症候群)病側の顔面温痛覚低下(V)+構音障害/嚥下障害(IX、X) + ホルネル症候群 + 小脳失調、反対側の体幹/上下肢の温痛覚低下(外側脊髄視床路)Guillain-Barre症候群数日から数週間で急速に進行する。カンピロバクター感染症による下痢が先行することがある。症状は下肢から始まる左右対称性弛緩麻痺、呼吸筋麻痺、自律神経障害(血圧変動、頻脈、徐脈)。感覚障害はなくてもよい。閉鎖孔ヘルニア患側大腿内側から下腿の痛み/しびれ(Howship-Romberg兆候)、やせ型の高齢女性に多いNumb chin syndrome顎がしびれる。悪性リンパ腫/乳がん/前立腺がんが三叉神経(V3下顎神経)に浸潤【STEP2-2】しびれの分布から考える多発神経障害(polyneuropathy)2)神経線維の長い足底から上方にしびれが進行。左右対称性<主な原因>DANG THERAPIST(ひどい療法士)*以下の各頭文字を表しているDM(糖尿病)Alcohol(飲酒)Nutritional(ビタミンB12、銅欠乏)Guillain-Barre(ギランバレー症候群)Toxic(中毒:重金属、薬剤)Hereditary(Charcot-Marie-Tooth)Renal(尿毒症)Amyloidosis(アミロイドーシス)Porphyria(ポルフィリン症)Infection(感染症:HIV、ライム病)Systemic(全身性:血管炎、サルコイドーシス、シェーグレン症候群)Tumor(腫瘍随伴症候群)多発性単神経障害(mononeuritis multiplex)いろいろな部位の単神経障害が左右非対称に進行糖尿病、血管炎、膠原病(SLE、関節リウマチ)、HIV【STEP3】部位から原因を鑑別する■母指~環指橈側のしびれ(正中神経支配)手根管症候群(最も頻度の高い末梢性絞扼神経障害)夜間に増悪、手を振ると軽快、リスクファクターは手を使う職業、甲状腺機能低下症、糖尿病、関節リウマチ、アミロイドーシス、末端肥大症、妊娠。猿手■環指尺側と小指のしびれ(尺骨神経支配)肘部管症候群変形性関節症、ガングリオン、スポーツ、小児期の骨折による外反肘が原因。鷲手変形■手背母指と示指のしびれ(橈骨神経支配)橈骨神経麻痺飲酒後に肘掛け椅子で寝て上腕内側を圧迫。下垂手■上肢のしびれ…頸椎症による神経障害3)神経根症頸部~肩甲骨部の痛み、デルマトームに沿った根性疼痛(しびれだけなら脊髄症)脊髄症手のしびれで発症し、手指が器用に動かせなくなる。10秒テスト: 手掌を下にしてできるだけ速く、グーとパーを繰り返す。10秒間で正常者では25~30回できる。胸郭出口症候群上肢のしびれ、肩/上肢/肩甲骨周囲の痛み、腕神経叢の障害■大腿外側のしびれ大腿外側皮神経痛体重増加、妊娠、きついベルトが原因。股関節の伸展/深い屈曲で症状増悪■腰痛+殿部や膝より末梢の下肢に放散痛3)椎間板ヘルニアSLR(straight leg raising)test陽性(感度80%、特異度40%)。95%はL5とS1の根が関与。膝蓋腱反射低下(L4)足関節/母趾背屈力低下(L5)アキレス腱反射低下/つま先立ちができない(S1)■下腿外側~足背のしびれ総腓骨神経麻痺右下肢外側腓骨頭での圧迫。外傷やギプス固定が原因。下垂足のため鶏様歩行■足底~つま先のしびれ足根管症候群内果後方の足根管で脛骨神経を圧迫閉塞性動脈硬化症下肢のしびれや痛み、冷感、間欠性跛行(休息で改善)ABI(ankle-brachial index)1.3<治療>原疾患の治療を行う。 <参考文献>1)塩尻俊明.非専門医が診る しびれ. 羊土社. 2018.2)Mansoor AM. Frameworks for Internal Medicine. 2019. p525-539.3)仲田和正. 手・足・腰診療スキルアップ. シービーアール. 2004.

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未診断のCOPDを放置しないで!早期診断・治療に質問票の活用も

 先日、アストラゼネカが「世界COPDデー(11月17日)」にセミナーを開催した。室 繁郎氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授)が、要介護の前段階“フレイル”の予防という視点から、COPDの早期診断・治療の重要性についての講演を行った。つづいて、山村 吉由氏(奈良県広陵町町長)が自治体として2014年度から取り組んでいるCOPD対策事業について講演した。また、セミナーの後半では、3年前にTV番組でCOPDの診断を受けた経験のある松嶋 尚美氏をゲストとして、トークセッションが設けられた。COPDによる死亡者は気管支喘息の約14倍 室氏は、はじめに正常肺組織の電子顕微鏡写真を示し、長期の喫煙が正常な肺にどのように影響を及ぼすのかを図示。COPDに生じる肺気腫や慢性気管支炎・細気管支病変などの病態を説明した。正常肺では、肺胞隔壁は弾性繊維を豊富に含み、吸気において肺は横隔膜筋の収縮により主に頭尾方向に伸長し、呼気では肺自身の弾性収縮力により呼気位に戻る。しかし、COPDでは肺の弾力性が失われており、呼気の気道の虚脱も生じるため、「頑張るほど息が吐けない(胸郭内圧が上昇すると気道虚脱を招いて呼出に時間が掛かる)」状態になるという。 また、COPDに罹患すると肺がん、心不全、心筋梗塞・狭心症、高血圧症、骨粗しょう症、糖尿病、不整脈、消化性潰瘍、胃食道逆流症、うつ病などが併存するリスクが上昇することがガイドラインに記載されている。2020年の人口動態統計では、わが国のCOPDによる死亡者数は1万6,125例で、気管支喘息による死亡者の約14倍だった。とくに男性では死亡原因の第10位となっている。 NICE studyで調査された日本のCOPD有病率は、日本人の全人口あたりでは8.6%だが、喫煙歴(過去も含む)のある高齢者を対象としたデータでは、60歳で15~20%、70歳を超えると35~45%がCOPDという報告もある。高齢喫煙者の5人に1人以上がCOPDを発症する一方で、GOLD日本委員会が一般人を対象に実施したCOPD認知度把握調査によると、COPDを「知らない」と答える人は7割を超えている。室氏は「COPDは、主に喫煙によって引き起こされるありふれた疾患であるにも関わらず、(一般社会や患者さんに)あまり認知されていない」と警鐘を鳴らした。COPDもフレイルも進行させないことが重要 続いて、室氏は「COPDは早期診断・早期治療が重要で、放置しておくと“フレイル”に陥ることも考えられるため、社会課題として取り組まなければいけない疾患だ」と説明。COPD患者の呼吸機能(FEV1)の経年低下は、病早期に最も大きいことをグラフで示した。なお、軽症のうちであれば、禁煙することで呼吸機能が回復する余地があるという。COPDの発症年齢の中央値は現喫煙者で55歳、過去喫煙者で65歳という疫学調査データもあるので、日本が長寿社会であることを踏まえると、早めにやめるほど健康上のメリットが大きい。 COPDによる呼吸機能障害は、身体活動性の低下や疲れやすさにつながり、ゆくゆくは筋肉の質・量の低下、栄養障害による体重減少を引き起こすなど、フレイルとの親和性が非常に高く、その進展をくい止めなければならない。室氏は、COPDやフレイルの簡易的なスクリーニングに「COPD-Q」「COPD-PS」「簡易フレイル・インデックス」など、診察室でも使える質問票の活用を勧めた。 COPDの受診勧奨を自治体として行っている山村町長は、「ハイリスクの方と治療中断者を特定し、受診勧奨のはがきを対象者に送付することで、受診率を上げることができた」と、実際の対策事例を紹介。 講演を聞いた松嶋氏は、診断後も本数は減ったものの喫煙は続いており、治療も受けていないことを明かした。「フレイルという言葉を今回初めて知ったので、COPDの治療を早く行うことが大事だと思いました。子供もいて、将来寝たきりになると困るので、すぐに受診します」と語った。また、その場でセルフチェックを行い、COPD-PSで5点だったことを踏まえ、「喫煙経験のある方はぜひ自分でチェックして、COPDの可能性がある場合は受診しましょう!」と呼び掛けた。

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