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結節性硬化症〔TS : tuberous sclerosis, Bourneville-Pringle病〕

1 疾患概要■ 概念・定義主に間葉系起源の異常細胞が皮膚、中枢神経など全身諸臓器に各種の過誤腫性病変を起こす遺伝性疾患である。従来、顔面の血管線維腫、痙攣発作、知能障害が3主徴とされているが、しばしば他に多くの病変を伴い、また患者間で症状に軽重の差が大きい。疾患責任遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。■ 疫学わが国の患者は約15,000人と推測されている。最近軽症例の報告が比較的多い。■ 病因・発症機序常染色体性優性の遺伝性疾患で、浸透率は不完全、突然変異率が高く、孤発例が60%を占める。軽微な症例は見逃されている可能性もある。本症の80%にTSC1(9q34)遺伝子とTSC2(16p13.3)遺伝子のいずれかの変異が検出される。TSC1遺伝子変異は生成蛋白のtruncationを起こすような割合が高く、また家族発症例に多い。TSC2遺伝子変異は孤発例に、また小さな変異が多い。一般に臨床症状と遺伝子異常との関連性は明らかではない。両遺伝子産物はおのおのhamartin、tuberinと呼ばれ、前者は腫瘍抑制遺伝子産物の一種で、低分子量G蛋白Rhoを活性化し、アクチン結合蛋白であるERMファミリー蛋白と細胞膜裏打ち接着部で結合する。後者はRap1あるいはRab5のGAP(GTPase-activating protein)の触媒部位と相同性を有し、細胞増殖抑制、神経の分化など多様で重要な機能を有する。Hamartinとtuberinは複合体を形成してRheb(Ras homolog enriched in brain)のGAPとして作用Rheb-GTPを不活性化し、PI3 kinase/S6KI signaling pathwayを介してmTOR(mammalian target of rapamycin)を抑制、細胞増殖や細胞形態を制御している。Hamartinとtuberinはいずれかの変異により、m-TOR抑制機能が失われることで、本症の過誤腫性病変を惹起すると推定されている。近年、このm-TOR阻害薬(エベロリムスなど)が本症病変の治療に使われている。■ 臨床症状皮膚、中枢神経、その他の諸臓器にわたって各種病変がさまざまの頻度で経年齢的に出現する(表1)。画像を拡大する1)皮膚症状学童期前後に出現する顔面の血管線維腫が主徴で80%以上の患者にみられ頻度も高い。葉状白斑の頻度も比較的高く、乳幼児期から出現する木の葉状の不完全脱色素斑で乳幼児期に診断価値の高い症候の1つである。他に結合織母斑の粒起革様皮(Shagreen patch)、爪囲の血管線維腫であるKoenen腫瘍、白毛、懸垂状線維腫などがある。2)中枢神経症状幼小児早期より痙攣発作を起こし、精神発達遅滞、知能障害を来すことが多く、かつての3主徴の2徴候である。2012年の“Consensus Conference”で(1)脳の構造に関与する腫瘍や皮質結節病変、(2)てんかん(痙攣発作)、(3)TAND(TSC-associated neuropsychiatric disorders)の3症状に分類、整理された。(1)高頻度に大脳皮質や側脳室に硬化巣やグリア結節を生じ、石灰化像をみる。数%の患者に上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が発生する。SEGAは小児期から思春期にかけて急速に増大することが多く、脳圧亢進症状などを来す。眼底の過誤腫や色素異常をみることもあり、通常は無症状であるが、時に視力障害を生ずる。(2)TSC患者に高頻度にみられ、生後5、6ヵ月頃に気付かれ、しばしば初発症状である。多彩な発作で、治療抵抗性のことも多い。点頭てんかんが過半数を占め、その多くが精神発達遅滞、知能障害を来す。(3)TSCに合併する攻撃的行動、自閉症・自閉的傾向、学習障害、他の神経精神症状などを総括した症状を示す。3)その他の症状学童期から中年期に後腹膜の血管筋脂肪腫で気付かれることもある。無症候性のことも多いが、時に増大して出血、壊死を来す。時に腎嚢腫、腎がんが出現する。周産期、新生児期に約半数の患者に心臓横紋筋腫を生ずるが、多くは無症候性で自然消退すると言われる。まれに、腫瘍により収縮障害、不整脈を来して突然死の原因となる。成人に肺リンパ管平滑筋腫症(lymphangiomyomatosis:LAM)や多巣性小結節性肺胞過形成(MMPH)を生ずることもある。前者は気胸を繰り返し、呼吸困難が徐々に進行、肺全体が蜂の巣状画像所見を呈し、予後不良といわれる。経過に個人差が大きい。後者(MMPH)は結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。■ 予後と経過各種病変がさまざまな頻度で経年的に出現する(表1)。それら病変がさまざまに予後に影響するが、中でも痙攣発作の有無・程度が患者の日常生活、社会生活に大きく影響する。従来、生命的予後が比較的短いといわれたが、軽症例の増加や各種治療法・ケアの進展によって生命的、また生活上の予後が改善方向に向かいつつあるという。死因は年代により異なり、10歳までは心臓横紋筋腫・同肉腫などの心血管系異常、10歳以上では腎病変が多い。SEGAなどの脳腫瘍は10代に特徴的な死因であり、40歳以上の女性では肺のLAMが増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)遺伝子診断が確実であり、可能であるが、未知の遺伝子が存在する可能性、検査感度の問題、遺伝子変異と症状との関連性が低く、変異のホットスポットもない点などから一般的には通常使われない。遺伝子検査を受けるときは、そのメリット、デメリットをよく理解したうえで慎重に判断する必要がある。実際の診断では、ほとんどが臨床所見と画像検査などの臨床検査による。多彩な病変が年齢の経過とともに出現するので、症状・病変を確認して診断している。2018年に日本皮膚科学会が、「結節性硬化症の新規診断基準」を発表した(表2)。画像を拡大する■ 診断のポイント従来からいわれる顔面の血管線維腫、知能障害、痙攣発作の3主徴をはじめとする諸症状をみれば、比較的容易に診断できる。乳児期に数個以上の葉状白斑や痙攣発作を認めた場合は本症を疑って精査する。■ 検査成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので、定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。顔面の結節病変、血管線維腫は、通常病理組織検査などはしないが、多発性丘疹状毛包上皮腫やBirt-Hogg-Dube syndromeなどの鑑別に、また、隆起革様皮でも病理組織学的検査で他疾患、病変と鑑別することがある。痙攣発作を起こしている患者あるいは結節性硬化症の疑われる乳幼児では、脳波検査が必要である。大脳皮質や側脳室の硬化巣やグリア結節はMRI検査をする。CTでもよいが精度が落ちるという。眼底の過誤腫や色素異常は眼底検査で確認できる。乳幼児では心エコーなどで心臓腫瘍(横紋筋腫)検査を、思春期以降はCTなどで腎血管筋脂肪腫を検出する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 基本治療方針多臓器に亘って各種病変が生ずるので複数の専門診療科の連携が重要である。成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。本症の治療は対症療法が基本であるが、各種治療の改良、あるいは新規治療法の開発が進んでいる。近年本症の皮膚病変や脳腫瘍、LAMに対し、m‐TOR阻害薬(エベロリムス、シロリムス)の有効性が報告され、治療薬として使われている。■ 治療(表3)画像を拡大する1)皮膚病変顔面の血管線維腫にはレーザー焼灼、削皮術、冷凍凝固術、電気凝固術、大きい腫瘤は切除して形成・再建する。最近、m-TOR阻害薬(シロリムス)の外用ゲル製剤を顔面の血管線維腫に外用できるようになっている。シャグリンパッチ、爪囲線維腫などは大きい、機能面で問題があるなどの場合は切除する。白斑は通常治療の対象にはならない。2)中枢神経病変脳の構造に関与する腫瘍、結節の中では上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が主要な治療対象病変である。一定の大きさがあって症状のない場合、あるいは増大傾向をみる場合は、外科的に切除、あるいはm-TOR阻害薬(エベロリムス)により治療する。急速進行例は外科的切除、頭蓋内圧軽減のためにシャント術も行う。本症の重要な症状である痙攣発作の治療が重要である。点頭てんかんにはビガバトリン(同:サブリル)、副腎皮質(ACTH)などが用いられる。ケトン食治療も試みられる。痙攣発作のフォーカス部位が同定できる難治例に、外科的治療が試みられることもある。点頭てんかん以外のてんかん発作には、発作型に応じた抗てんかん薬を選択し、治療する。なお、m-TOR阻害薬(エベロリムス)は、痙攣発作に対して一定の効果があるとされる。わが国での臨床使用は今後の課題である。精神発達遅滞や時に起こる自閉症に対しては、発達訓練や療育などの支援プログラムに基づいて適切にケア、指導する。定期的な受診、症状の評価などをきちんとすることも重要である。また、行動の突然の変化などに際しては、結節性硬化症の他病変の出現、増悪などがないかをチェックする。3)その他の症状(1)後腹膜の血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)腫瘍径が4cm以上、かつ増大傾向がある場合は出血や破裂の可能性もあり、腫瘍の塞栓療法、腫瘍切除、腎部分切除などを考慮する。希少疾病用医薬品としてm-TOR阻害薬(エベロリムス)が本病変に認可されている。無症候性の病変や増大傾向がなければ検査しつつ経過を観察する。(2)周産期、新生児期の心臓横紋筋腫収縮障害、伝導障害など心障害が重篤であれば腫瘍を摘出手術する。それ以外では心エコーや心電図で検査をしつつ経過を観察する。(3)呼吸器症状LAMで肺機能異常、あるいは機能低下が継続する場合は、m-TOR阻害薬(エベロリムス)が推奨されている。肺機能の安定化、悪化抑制が目標で、治癒が期待できるわけではない。一部の患者には、抗エストロゲン(LH-RHアゴニスト)による偽閉経療法、プロゲステロン療法、卵巣摘出術など有効ともいわれる。慢性閉塞性障害への治療、気管支拡張を促す治療、気胸の治療など状態に応じて対応する。時に肺移植が検討されることもある。MMPHは、結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。4 今後の展望当面の期待は治療法の進歩と改良である。本症病変にm-TOR阻害薬(エベロリムス)が有効であることが示され、皮膚病変、SEGAとAMLなどに使用できる。本症治療の選択肢の1つとしてある程度確立されている。しかしながら効果は限定的で、治癒せしめるにはいまだ遠い感がある。病態研究の進歩とともに、新たな分子標的薬剤が模索され、より効果の高い創薬、薬剤の出現を期待したい。もとより従来の診断治療法の改善・改良の努力もされており、今後も発展するはずである。患者のケアや社会生活上の支援体制の強化が、今後さらに望まれるところである。5 主たる診療科小児科(神経)、皮膚科、形成外科、腎泌尿器科、呼吸器科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本結節性硬化症学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)結節性硬化症のひろば(主に患者と患者家族向けの診療情報)患者会情報TSつばさ会(患者とその家族および支援者の会)1)金田眞理ほか. 結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン-改訂版.日皮会誌. 2018;128:1-16.2)大塚藤男ほか. 治療指針、結節性硬化症. 厚生科学研究特定疾患対策研究事業(神経皮膚症候群の新しい治療法の開発と治療指針作成に関する研究).平成13年度研究報告書.2002:79.3)Krueger DA, et al. Pediatric Neurol. 2013;48:255-265.4)Northrup H, et al. Pediatric Neurol. 2013;49:243-254.公開履歴初回2013年2月28日更新2019年2月5日(謝辞)本稿の制作につき、日本皮膚科学会からのご支援、ご協力に深甚なる謝意を表します(編集部)。

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病院の水系による感染症の解析と克服は難しい課題である(解説:吉田敦氏)-995

 医療関連感染の中で、水を介した感染症を生じる微生物として、レジオネラや緑膿菌が有名である。しかしながらこの他にもアシネトバクターやステノトロホモナスといったブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌や非結核性抗酸菌が知られており、院内・施設内の水道・水系を介してこれらが集団発生した例も報告されている。今回、11年にわたり単一施設で分離され続けていたブドウ糖非発酵菌Sphingomonas koreensisが、院内の水系を介していたことが、全ゲノム解析を含む詳細な分子疫学的解析によって明らかにされた。なおSphingomonasは細胞壁にスフィンゴ脂質を含むことから本邦の薮内 英子らによって属として提唱されたもので、現在127菌種が含まれる1)。またS. koreensisは2001年に新種として発表されたが、これまで感染例として報告されたのは髄膜炎などごく少数にすぎない2,3)。 本検討では最終的に、患者の血液などから分離された菌株と、病室の流しの蛇口・水から採取した菌株が、きわめて近縁であることが明らかになった。さらには、シンクを分解して内部のバイオフィルムと汚れをぬぐい、その中の本菌のメタゲノム解析を行ったところ、同一のシンクであっても、本菌の複数のクローンの構成割合は、経時的に変化していることが判明した。病院に供給されている水道水からは本菌は検出されず、院内の水系・配管設備内の汚染が原因と判断し、院内供給水の塩素濃度を上げ、さらに温水の水温管理を行ったところ、本菌による感染症の発生と、臨床検体からの分離は認められなくなった。 新築した病院であっても、配管を介した水系感染は生じうる。一方で塩素濃度の低下と温水設備での水温の低下が、院内のレジオネラ感染症の発生と、病室の手洗い水からの分離に相関したという報告もある4)。ただし病院の配管は複雑であり、水系感染の究明と対策実行、実際の効果の確認までには相当の時間と非常に大きな手間がかかっていた。配管延長は長距離にわたり、その中のどこが汚染されているのかを把握するのは容易でないうえ、現実として、配管を広く交換するなど、病院の設備自体をどの程度まで改変できるかという課題も大きい。 本報告でさらに強調されるべきことは、Sphingomonas属のような環境水系に存在しやすい菌が多年にわたって臨床検体から検出されていたことを受けて(造血幹細胞移植患者が12例中9例を占めた)、環境分離株・過去の分離株まで含むゲノム解析の必要性に気付き、さらに環境中のメタゲノム解析までうまくなしえたことであろう。本研究で得られた知見は、感染症診断や治療そのものに直結するものとは異なり、また水系感染症の制御に有効な新たな感染対策の手法を提示するものではないが、われわれが日常気付きにくい現実の中にこのような事象が存在し、それがどのように医療関連感染に関与してくるかについて、重要性を垣間見せてくれたように思える。■参考文献はこちら1)LPSN:Genus Sphingomonas(2019年1月9日閲覧)2)Lee JS, et al. Int J Syst Evol Microbiol. 2001;51:1491-1498.3)Marbjerg LH, et al. J Clin Microbiol. 2015;53:1028-1030. 4)中村 麻子ほか. 日本環境感染学会誌. 2018;33:193-202.

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免疫再構築症候群(IRIS)による結核発症・悪化の予防にprednisoneが有効(解説:吉田敦氏)-973

 HIV感染者において、抗ウイルス療法(ART)開始後に併存している感染症が悪化することを経験するが、これはARTによって免疫再構築が生じることによるとされ、免疫再構築症候群(IRIS)と総称されている。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス感染症、結核、クリプトコッカス髄膜炎が代表的であり、これらの感染症を発症した後にARTを開始する際には、IRISによる悪化ないし発症を少なくするために、感染症治療からある程度の時間をおいてからARTを開始するのがよいとされてきた。 しかしながら、ART開始が遅れると免疫低下の強い期間がそれだけ長くなるために、全身状態の改善が遅れたり、他の日和見感染症の発症を招き、ひいては死亡につながる。このためART開始時期については、たとえばニューモシスチス肺炎では治療開始後2週間以内、クリプトコッカス髄膜炎では抗真菌薬開始後5週間以降が目安とされている。ただし結核については開始時期のみならず、IRIS発症予防ないし発症時に用いられるステロイド投与についても議論があった※。またその際、ステロイド投与を避けるべきとされるカポジ肉腫(KS)の合併や悪化にも懸念があった。 今回の試験では、結核治療開始後1ヵ月以内にARTを開始した、CD4陽性リンパ球数100個/μL以下の患者において、ARTと同時にprednisoneを開始し、28日間続け、結核によるIRIS発生率をプライマリーエンドポイントとして評価した。結果としてIRIS発生率はprednisone投与群で有意に低く、さらに合併した場合でもその程度は軽度であった。さらにKS合併率も増加しなかった。 prednisoneの初期投与量は40mg/日であったが、同時に投与されていたリファンピシンとの相互作用を鑑みると、実際の体内濃度はこの半分程度であろう。低用量であるといえ、この量でも効果がみられたことは興味深い。さらにCD4陽性リンパ球数が中央値49個/μLとかなり低下し、ARTをできる限り早く開始すべきである一方、ステロイド投与によるさらなる免疫低下と他の感染症の合併を容易に来しやすい患者群でありながら、日和見感染症を含む他の感染症もKSも増加せず、さらに抗結核薬の副作用の出現も少なかったことは、ステロイドによるIRIS抑制・アレルギー抑制というポジティブな効果が高く発揮された結果といえよう。 本検討の限界として筆者らは、今回の対象者が歩行可能な患者であったことと、死亡率の比較まで行えるほど集団が大きくなかったことを挙げている。入院患者では結核もさらに進行しているのが通常であり、より重症な患者でのIRISによる結核の悪化に対しては、ステロイドの効果は異なる可能性がある。また従来のコンセンサス※は生存率まで含んだものであったので、この点も今後の知見が待たれるところである。なお他論文ではART開始前のIL-6が結核のIRIS発症と相関することが報告されており1)、これをマーカーとしたIRISのハイリスク患者の区別と、ステロイド投与法の工夫も今後検討される課題であろう。※従来では、CD4リンパ球数<50ならば、結核治療開始後2週間以内にARTを開始すると生存率が改善、CD4>50ならば早期のART開始による生存率改善は認められず、中等症~重症結核では結核治療開始後2~4週、重症結核では8~12週でART開始、とされてきた。

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呼吸器疾患死亡率、英国vs.EU15+諸国/BMJ

 1985~2015年の期間に、英国、およびEU15+諸国(英国を除く欧州連合[EU]加盟15ヵ国に、オーストラリア、カナダ、米国を加えた国々)では、いずれも呼吸器疾患による死亡率が全体として低下したが、閉塞性・感染性・間質性呼吸器疾患死亡率については英国がEU15+諸国に比べて高いことが、米国・ハーバード大学のJustin D. Salciccioli氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年11月28日に掲載された。世界疾病負担(Global Burden of Disease)などの報告によれば、英国は、医療制度が同程度の他国に比べて呼吸器疾患死の割合が高い可能性が示唆されていた。全呼吸器疾患死とサブカテゴリー別の死亡を検討 研究グループは、英国における呼吸器疾患による年齢標準化死亡率を、医療制度が同程度のEU15+諸国と比較する観察研究を行った(研究助成元は申告されていない)。 1985~2015年の世界保健機関(WHO)の死亡データベースを用いて、英国、EU15+諸国の全19ヵ国のデータを収集した。EU15ヵ国はオーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、ノルウェー。 全呼吸器疾患死、および感染性(インフルエンザ、肺炎、結核を含む)、腫瘍性(気管支、肺、胸膜の悪性腫瘍を含む)、間質性(特発性肺線維症を含む)、閉塞性(慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症を含む)、その他(肺水腫、気胸を含む)の呼吸器疾患による死亡について解析を行った。 混合効果回帰モデルを用いて国別の差を経時的に解析し、局所的に重み付けされた散布図平滑化(locally weighted scatter plot smoother)で評価した呼吸器疾患のサブカテゴリーの傾向を検討した。英国の女性は全サブカテゴリーで死亡率が高い 1985~2015年の期間に、英国、およびEU15+諸国の全呼吸器疾患死は、男性では低下したが女性では変化せずに維持されていた。呼吸器疾患による年齢標準化死亡率(10万人当たりの死亡件数)は、英国では男性は151件から89件に低下したのに対し、女性は67件から68件と、ほとんど変化しなかった。EU15+諸国についても、男性は108件から69件へ低下したが、女性は35件から37件と、大きな変化はなかった。 英国はEU15+諸国に比べ、女性ではすべてのサブカテゴリー(感染性、腫瘍性、間質性、閉塞性、その他)の呼吸器疾患による死亡率が高く、男性では感染性、間質性、閉塞性、その他の呼吸器疾患による死亡率が高かった。 著者は、「これらの国々の呼吸器疾患患者の医療費、医療制度、健康行動の違いを明らかにするために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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第17回 内科からのレボフロキサシンの処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3 疑義照会する?しない・・・8人PRSPを想定? 荒川隆之さん(病院)しません。経口へのスイッチングの場合、わざわざブロードスペクトルであるレボフロキサシンにする必要性は低く、クラブラン酸/アモキシシリンなどでもよい気はするのですが、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)を想定されているのかもしれません。ガイドラインを参考に 奥村雪男さん(薬局)疑義照会しないと思います。JAID/JSC感染症治療ガイド2014でdefinitive therapyとして推奨される治療に、PSSP外来治療の第二選択と、PRSP外来治療の第一選択にレボフロキサシンが記載されています。投与期間については、「症状および検査所見の改善に応じて決定する。5~7日間が目安となる」とあるので、セフトリアキソン4日間+レボフロキサシン5日間で、不自然な日数ではないと思います。する・・・3人ガレノキサシンへの変更提案 清水直明さん(病院)発熱・呼吸器症状・食欲不振があるので、喘息発作ではなく呼吸器感染症と考えます。本来、肺炎球菌と確定しているのならば高用量ペニシリンを推奨すべきところですが、肺炎球菌の検査をしたかどうか、胸部レントゲンも撮ったかどうか不明確ですので、外来静注抗菌薬療法後のスイッチ療法としてはキノロン系抗菌薬もありだと思います。ただし、幾つかの成書から呼吸器感染症に対してはレボフロキサシンよりもガレノキサシンが有効性が高いと思いますし、特に、肺炎球菌に対してはレボフロキサシンとガレノキサシンのMICは結構異なっているので、「レボフロキサシン500mgでも特別問題ないかもしれませんが、より有効性を期待するという意味で、ジェニナック®錠 1回400mg 1日1回をお勧めします」と提案します。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与に JITHURYOUさん(病院)疑義照会します。喘鳴がなく、熱があることを考えると、喘息発作ではなく呼吸器感染症でいいと思います。食欲がない、発熱からも肺炎の可能性があると考えます。その場合、呼吸器学会の鑑別基準でいくと、1~5の項目で3項目が該当するため非定型肺炎の可能性があると思われます。喘息があることや、非定型のカバーを考えるとレボフロキサシン経口内服指示は理解できます。しかし、セフトリアキソン点滴に効果があることから非定型肺炎はカバーしなくてよいと思います。PRSPである場合は、レボフロキサシン投与もうなずけます。しかし、結核のリスクがあること、喘息の管理としてステロイド吸入やマクロライド系抗菌薬を使用していないこと、飲酒習慣などもなく耐性菌リスクが少ないのではないかと考えられるため、今回のレボフロキサシンの処方は一考した方がいいのではないかと考えました。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与(アドヒアランス考慮)を提案すると思います。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別1.年齢60 歳未満2.基礎疾患がない、あるいは軽微3.頑固な咳嗽がある4.胸部聴診上所見が乏しい5.喀痰がない、あるいは迅速診断で原因菌らしきものがない6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である1-6の6項目中4項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度77.9%、特異度93.0%。1-5の5項目中3項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度83.9%、特異度87.0%日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会.成人市中肺炎診療ガイドライン.東京、日本呼吸器学会、2007.Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?再受診のタイミングや他院受診時の注意 ふな3さん(薬局)必ず指示された日(3日後)から服用を開始すること食欲がなくても、食事が取れなくても、毎日必ず1錠服用すること症状が改善しても5 日分服用を続けること服薬して3日以上(=治療開始から7日以上)経過しても症状が改善しない場合には、すぐに医療機関を再受診すること他院(喘息治療など)に通院の際は、必ずレボフロキサシンを服用中であることを伝えることしっかり飲みきることと副作用について JITHURYOUさん(病院)耐性菌が出現しないよう、しっかり飲み切ること。確率は低いですが、アキレス腱炎や痙攣、光線過敏症などに気を付けること。患者さんへの説明例 清水直明さん(病院)「薬のせいでお腹が緩くなることがあります。我慢できる程度の軽い症状ならば抗菌薬をやめれば戻るので問題ありませんが、ひどい場合には服用を中止してご連絡ください」「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)と一緒に服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」併用薬はなしとのことですが、OTCやサプリメントを服用している可能性はあり、その中に相互作用を起こすアルミニウムやマグネシウムなどが入っていることがあるので、一応伝えておきます。結核検査をしていた場合 キャンプ人さん(病院)「4日間点滴後の内服薬なので、飲み始める日にちを間違えないようにしてください」と言います。結核の検査をしていたなら、病院から検査結果の連絡があれば必ず受診するなど、そのままほったらかしにしないよう説明します。車の運転について 柏木紀久さん(薬局)3日後からの服用を理解しているかの確認と、5日間きちんと服用してもらうこと。車や機械などの運転を極力控えること。Q5 その他、気付いたことは?肺炎球菌→レボフロキサシン? 中堅薬剤師さん(薬局)肺炎球菌にすぐレボフロキサシン、はオーバートリートメントかな、と個人的に思います。できれば、アモキシシリン5~7日の投与で十分とコメントしたいです。地域のアンチバイオグラムは? 荒川隆之さん(病院)原因菌も肺炎球菌とされているので、通常ならレボフロキサシンではなく、クラブラン酸/アモキシシリンなどの経口の方が適しているものと考えますが、原因菌がPRSPであった場合は、レボフロキサシンでもよいのかもしれません。PRSPかどうかは尿中抗原などでは診断が付かず、培養の結果を待たなければなりません。喀痰培養などで肺炎球菌は増殖しづらく、処方の時点でPRSPだと断定はできていないものと考えます。地域のアンチバイオグラムにおいてPRSPの頻度が高い地域なのでしょうか。処方タイミング ふな3さん(薬局)4日間の点滴での容体の変化を見て、その後の抗菌薬フォローアップを決めるのが一般的だと思うので、なぜこのタイミングで処方なのかは疑問です。GWや年末年始でクローズする調剤薬局が多いタイミングだったのでしょうか。治療後の残存症状として、喘息症状の遷延や悪化があった場合、喘息治療薬も必要になる可能性があるので、やはり点滴投与後の処方が望ましいと感じます。また、出勤などは控えるように伝えられているのではと思うので、その点も確認したいです。肺炎球菌の耐性度は、ほとんどが中等度まで 奥村雪男さん(薬局)薬剤耐性対策としては可能であれば、レボフロキサシンより高用量のアモキシシリンなどのペニシリンが好ましかったのではと思います。日常診療で遭遇するほとんどの肺炎球菌はせいぜい中等度耐性(MICが1~2μg/mL)であり、高用量のペニシリンで対応可能とされています1)。処方例としては、アモキシシリン500~1,000mgの1日3~4回経口が挙げられています。感受性の結果次第ではペニシリン系を提案 児玉暁人さん(病院)セフトリアキソンで効果があるようであれば、レボフロキサシンでなくてもよいかもしれません。喀痰培養で感受性結果が分かれば、自信を持ってペニシリン系を処方できると思います。判定が早いので迅速キットでの検査だったのかもしれません。検査室がありグラム染色ができれば、その日でも肺炎球菌を想定はできますが。初日に培養を出せば4日目の点滴時には感受性結果が出るはずですので、そこで抗菌薬を決めて処方箋を出すというのでもいいのでは。検査が外注だとそうはいかないのですが。喘息の定期受診と生活指導 JITHURYOUさん(病院)喘息で併用薬なしということですが、本当に定期的な受診をしているのかは不明です。日常生活の支障がないのでしょう。しかし、発作がなくてもステロイド吸入で気道リモデリングの予防と喘息死の予防をすることは欠かせないこと、感染症が発作の引き金になるので合わせて定期受診すべきであることを伝えたいです。男性一人暮らし、ハウスダストアレルギーなので定期的な部屋の掃除なども指導したいですね。また、患者の身長体重から、BMIは17.31となります。やせ型の若い男性で気胸のリスクがあるので、咳が続き胸痛や呼吸困難などの症状があれば受診するように指導します(登山や出張などで飛行機など乗ること、楽器演奏、激しい運動などは治療が終わるまでできれば避けること)。さらに可能であれば、運動を少しずつしていき筋肉や体力をつけていき、呼吸器感染症や喘息、気胸予防をしていくように指導したいです。後日談(担当した薬剤師から)翌週、無事に回復しましたと処方箋を持って来局。咳症状が少し残っていたのでしょう、デキストロメトルファン錠15mgとカルボシステイン錠250mgを1回2 錠 1日3回 毎食後7日分を受け取って帰られました。後日談について 中堅薬剤師さん(薬局)後日談の咳が残るという主訴(おそらく感染後咳嗽)に対して、デキストロメトルファンは微妙かなあと感じました。呼吸器門前で働いてきた経験から、むやみな鎮咳剤投与は無意味ではないか、と考えるようになったからです。本当につらい咳なら、コデイン投与で間欠的にするべきですし、そもそもの治療が奏功していない可能性もあります。そんなにひどくない咳であれば、麦門冬湯でもよいと思います。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.[PharmaTribune 2017年7月号掲載]

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ARTでリスク増、HIV患者の奇異性結核関連IRISの予防には?/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)は、結核菌感染を併発したCD4低値のHIV感染患者の死亡率を抑制するが、奇異性結核関連免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)のリスクを増加させる。南アフリカ共和国・ケープタウン大学のGraeme Meintjes氏らは、奇異性結核関連IRISの予防にprednisoneの4週間投与が有効であり、重症感染症やがんのリスクの上昇は認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年11月15日号に掲載された。奇異性結核関連IRISは、抗結核薬の投与を受けたHIV患者に対し、早期ARTを開始後に発現する結核の再発または新たな炎症所見で特徴付けられる免疫病理学的応答である。観察研究の統合解析では、HIV患者の18%にみられるとされる。ケープタウン市の1地区で行われたプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、低用量グルココルチコイドにより、早期ART中の結核関連IRIS発症の基盤となる異常な炎症反応を抑制することで、本症のリスクが低減されるとの仮説を立て、これを検証するために二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(欧州・開発途上国臨床試験プログラム[EDCTP]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、HIVに感染し、ART治療歴がなく、ARTを開始予定で、ART前の30日以内に結核治療を開始しており、CD4数が100/μL以下の患者であった。 被験者は、prednisone(40mg/日を14日間、その後は20mg/日を14日間)またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、ART開始から12週以内の結核関連IRISの発症とし、独立審査委員会による判定が行われた。 2013年8月~2016年2月の期間に、ケープタウン市カエリチャ地区のクリニックに240例が登録され、両群に120例ずつが割り付けられた。12週のフォローアップ期間中に、17例が追跡不能となり(このうち8例は12週以降に再受診)、1例が同意を撤回した。相対リスクが30%低下、安全性は同等 全体の年齢中央値は36歳(四分位範囲[IQR]:30~42)、60%が男性で、73%が微生物学的に結核への感染が確定されていた。CD4数中央値は49/μL(IQR:24~86)、HIV-1RNAウイルス量中央値は5.5 log10コピー/mL(IQR:5.2~5.9)であった。 12週時の結核関連IRISの発生率は、prednisone群が32.5%(39/120例)と、プラセボ群の46.7%(56/120例)に比べ有意に低かった(相対リスク[RR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96、p=0.03)。84日時の結核関連IRISの累積発生率のハザード比は0.61(95%CI:0.41~0.92)であり、prednisone群が有意に良好だった(p=0.02)。 結核関連IRISの治療を目的に、非盲検下にグルココルチコイドが処方された患者は、prednisone群が16例(13.3%)であり、プラセボ群の34例(28.3%)に比し少なかった(RR:0.47、95%CI:0.27~0.81)。 prednisone群の5例、プラセボ群の4例が死亡した(p=1.00)。有害事象は、Grade3がprednisone群で少なかったが、Grade4には差がなかった。重症感染症(新たな後天性免疫不全症候群[AIDS]の指標疾患または侵襲性細菌感染症)は、prednisone群の11例(9.2%)、プラセボ群の18例(15.1%)で発症した(p=0.23)。 1年後には18例(prednisone群:8例、プラセボ群:10例)が死亡し、プラセボ群の1例でカポジ肉腫が認められた。 著者は、「今後の検討として、免疫バイオマーカーに基づき結核関連IRISのリスクが高いと判定された患者において、高用量または至適用量のprednisoneによる予防治療の評価が考えられる」としている。

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第11回 内科クリニックからのミノサイクリン、レボフロキサシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3疑義照会する?Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?抗菌薬を飲みきる キャンプ人さん(病院)母子ともに、指示された期間きちんと服用するように説明します。服用時の注意や改善しない場合の対処 清水直明さん(病院)レボフロキサシンもしくはミノサイクリンの処方が確定している場合の説明例です。「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)とともに服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」「3日ほど服用しても全く症状が改善しないか、悪化したと感じる時は、服用の途中でも一度ご相談ください」「ミノサイクリンを服用中は、めまい感があらわれることがあるので、車の運転など危険を伴う機械の操作、高所での作業などは行わないでください」「ミノサイクリンは、もしも食道にくっついてそこで溶けてしまうと食道に潰瘍ができることがありますので、多めの水でしっかり服用してください」尿の色 奥村雪男さん(薬局)ミノサイクリンは尿が青~緑に着色する場合があるので、あらかじめ伝えておいた方が無難だと思います。カルシウムと難溶性のキレートを形成するので、牛乳はミノマイシン服用後2時間程度あけて摂取するように、とも説明した方がよいでしょう。解熱鎮痛薬との併用について ふな3さん(薬局)母については、ひどいめまいや悪心・食欲不振が出た場合には、医師に相談するよう伝えます。子には抗菌薬を飲みきることと、服用期間に発熱・頭痛等が起きた場合、一部のNSAIDs で痙攣が誘発される可能性があるので、自己判断でのNSAIDsの使用を控え、重い症状であれば医師に相談するよう伝えます。飲み忘れた場合の対処 中西剛明さん(薬局)母には頭痛、めまい、倦怠感が起こる可能性について伝えます。おそらくすぐに良くなると思われるが、これらが起きたとしても途中で服用を中止しないこと、倦怠感の場合は、薬剤性肝障害の可能性もあるので受診をするように説明をしておきます。また、朝は乳製品の摂取をできるだけ控えることを伝えます。食道刺激作用があるため、服用後すぐに横にならないように、とも伝えます。子には短期間であれば関節障害の発症は心配いらないものの、アキレス腱などの腱断裂の危険があるので、治療中は激しい運動を避けるように説明します。また、朝の服用となっていますが、飲み忘れたときはすぐに飲むことと、夕から寝る前にかけて服用すると不眠や悪夢を経験する可能性があることを付け加えます。Q5 その他、気付いたことは?肺炎マイコプラズマの治療方針 奥村雪男さん(薬局)15歳以下の小児の場合日本マイコプラズマ学会の「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」では、マイコプラズマ感染症で、「マクロライド系薬が無効の肺炎には、使用する必要があると判断される場合は、トスフロキサシンあるいはテトラサイクリン系薬の投与を考慮する。ただし、8歳未満には、テトラサイクリン系薬剤は原則禁忌である」とされています。マクロライドが無効との判断は、服用2~3日で解熱しなかった場合でなされるようです。必要があると判断された場合と言うのは、年齢や流行状況、重症感で判断されるのではないかと思います。ちなみに、マクロライドで症状の改善が無い場合の耐性率は90%以上、一方でマクロライドの前投与がない場合の耐性率は50%以下に留まるとの報告があります(IASR Vol.33 p.267-268:2012年10月号)。他の医療機関で治療を受けていたとの事から、すでにクラリスロマイシンなどのマクロライドを服用していたのかも知れません。小児呼吸器感染症ガイドライン2011では、全身状態が良好で、チアノーゼがなく、呼吸数正常、努力呼吸なし、胸部X線陰影が片側の1/3以下、胸水なし、SpO2>96%、循環不全なし、人工呼吸器管理不要の全てを満たす場合、外来でフォロー出来る軽症と判断するようです。治療期間は、「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」に従うと、トスフロキサシン、テトラサイクリンの場合7~14日とされるようです。5日間はやや短く、治療への反応を見ているのかも知れません。成人の場合次に母親の方ですが、親子で同じような症状であり、息子さんからの感染が考えられます。「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」によれば、成人のマクロライド耐性マイコプラズマの第1選択はテトラサイクリンとされます。成人に対するマイコプラズマ肺炎の適切な治療期間についてはエビデンスに乏しいが、エキスパートオピニオンとして7~10日間が適当であると考えられるとしています。学校で広まっている可能性も キャンプ人さん(病院)乾いた咳はマイコプラズマ肺炎の初期症状でもあり、きちんと抗菌薬を服用すること。そして他の部員にも広がっている可能性があり、学校保健法を考慮して出席停止になる可能性もあることを伝えます。小児へのミノサイクリン投与について 中西剛明さん(薬局)本来は「肺炎の場合に抗菌薬を使う」が原則ですから、肺炎に至っていたのかどうかが気になるところです。おそらく、前医でマクロライドの投薬を受けてきたのでしょう。マイコプラズマは免疫系から逃れて増殖するので、免疫に作用するミノサイクリンは、最小発育阻止濃度(MIC)はマクロライド系抗菌薬に劣るものの、十分な効果が期待できます。小児の場合、1回の服用で歯の黄染の痕跡が残るとされているので、ミノサイクリンはできるだけ避けた方がよいと考えます。ニューキノロン系抗菌薬とのリスクとベネフィットのバランスを考えると、禁忌とはいえ、必要なこともあると思います。この症例ではレボフロキサシンが選択されていますが、本当は適応症を持っているトスフロキサシンの方がよいでしょう。ニューキノロン系抗菌薬は耐性ができやすいので、できるだけ避けたいですね。鎮咳薬は必要? 中堅薬剤師さん(薬局)母子ともにデキストロメトルファン2週間の処方は、必要なのかな? と思いました。咳喘息もあるようなら、吸入薬を導入するほうがよい気がします。子に抗菌薬は不要では JITHURYOUさん(病院)子は解熱しており、レボフロキサシンが必要か疑問です。必要な場合も当然あるとは思いますが、アキレス腱炎や断裂、また動物レベルで関節異常の副作用の報告があり、成長期の子供に使用が必要か吟味することを考えました。仮に肺炎マイコプラズマによる呼吸器感染であるならば、咳の症状は強いかもしれませんが解熱していること、改善しても咳症状のみ遷延することがあるからです。結核菌を考慮すると、症状をマスクするので菌の同定がされていないうちに投与することはリスクが高いのではないのかと考えました。加えて、マスク着用、水分補給をして安静を心がけることも指導したいです。後日談2週後の時点では来局なし。3 週間後、母にだけ「麦門冬湯9g 分3 毎食前 7日分」が処方された。抗菌薬の処方はなかった。聞き取りの結果、「割と早く咳は楽にはなった、咳は続くが特に抗菌薬によるトラブルはなかった」とのことだった。[PharmaTribune 2017年2月号掲載]

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第10回 内科クリニックからのミノサイクリン、レボフロキサシンの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・全員Bordetella pertussis(百日咳菌)・・・6名Chlamydophila pneumoniae(クラミジア・ニューモニエ)・・・4名Mycobacterium tuberculosis(結核菌)・・・3名マクロライド耐性の肺炎マイコプラズマ 奥村雪男さん(薬局)母子ともに急性の乾性咳嗽のみで他に目立った症状がないこと、およびテトラサイクリン、ニューキノロン系抗菌薬が選択されていることから、肺炎マイコプラズマ感染症、それもマクロライド耐性株による市中肺炎を想定しているのではないかと思います。「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」によれば、成人のマクロライド耐性マイコプラズマの第1選択はテトラサイクリンとされています。マイコプラズマと百日咳 中堅薬剤師さん(薬局)母子ともマイコプラズマか百日咳と予想します。しつこい乾性咳嗽(鎮咳薬が2週間も処方されていることから想像)もこれらの感染症の典型的症状だと思います。結核の可能性も わらび餅さん(病院)百日咳も考えましたが、普通に予防接種しているはずの13 歳がなる可能性は低いのではないでしょうか。症状からは結核も考えられますが、病歴など情報収集がもっと必要です。百日咳以外の可能性も? 清水直明さん(病院)発熱がなく2週間以上続く「カハっと乾いた咳」、「一度咳をし出すとなかなか止まらない」状態は、発作性けいれん性の咳嗽と考えられ、百日咳に特徴的な所見だと考えます。母親を含めた周囲の方にも咳嗽が見られることから、周囲への感染性が高い病原体であると予想されます。百日咳は基本再生産数(R0)※が16~21とされており、周囲へ感染させる確率がかなり高い疾患です。成人の百日咳の症状は小児ほど典型的ではないので、whoop(ゼーゼーとした息)が見られないのかもしれません。また、14日以上咳が続く成人の10~20%は百日咳だとも言われています。ただし、百日咳以外にもアデノウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどでも同様の症状が見られることがあるので、百日咳菌を含めたこれらが原因微生物の可能性が高いと予想します。※免疫を持たない人の集団の中に、感染者が1人入ったときに、何人感染するかを表した数で、この数値が高いほど感染力が高い。R0<1であれば、流行は自然と消失する。なお、インフルエンザはR0が2~3とされている。Q2 患者さんに確認することは?アレルギーやこれまでの投与歴など JITHURYOUさん(病院)母子ともにアトピー体質など含めたアレルギー、この処方に至るまでの投薬歴、ピロリ除菌中など含めた基礎疾患の有無、併用薬(間質性肺炎のリスク除外も含めて)、鳥接触歴を確認します。さらに、母親には妊娠の有無、子供には基礎疾患(喘息など)の有無、症状はいつからか、運動時など息苦しさや倦怠感の増強などがないかも合わせて確認します。併用薬・サプリメントについて  柏木紀久さん(薬局)車の運転や機械作業などをすることがあるか。ミノサイクリンやレボフロキサシンとの相互作用のあるサプリメントを含めた鉄、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの含有薬品の使用も確認します。結核の検査 ふな3さん(薬局)母には結核の検査を受けたか、結果確認の受診はいつかを聞きます。子にはNSAIDs などレボフロキサシンの併用注意薬の服用の有無、てんかん、痙攣などの既往、アレルギーを確認します。お薬手帳の確認 わらび餅さん(病院)母は前医での処方が何だったのか、お薬手帳などで確認したいです。Q3 疑義照会する?母の処方について疑義照会する・・・2人子の処方について疑義照会する・・・全員ミノサイクリンの用法 キャンプ人さん(病院)ミノサイクリンの副作用によるめまい感があるので、起床時から夕食後または眠前へ用法の変更を依頼します。疑義照会しない 中堅薬剤師さん(薬局)母については、第1選択はマクロライド系抗菌薬ですが、おそらく他で処方されて改善がないので第2 選択のミノサイクリンになったのでしょう。というわけで、疑義照会はしません。ミノサイクリン起床時服用の理由 ふな3さん(薬局)疑義照会はしません。ミノサイクリンが起床時となっているのは、相互作用が懸念される鉄剤や酸化マグネシウムを併用中などの理由があるのかもしれません。食事による相互作用も考えられるため、併用薬がなかったとしても、起床時で問題ないと思います。ミノサイクリンのあまりみない用法 中西剛明さん(薬局)母に関しては、疑義照会しません。初回200mgの用法は最近見かけませんが、PK-PD理論からしても、時間依存型、濃度依存型、どちらにも区分できない薬剤ですので、問題はないと考えます。加えて、2回目の服用法が添付文書通りなので、計算ずくの処方と考えます。起床時の服用も見かけませんが、食道刺激性があること、食物、特に乳製品との相互作用があることから、この服用法も理にかなっていると思います。レボフロキサシンは小児で禁忌 児玉暁人さん(病院)13歳は小児で禁忌にあたるので、レボフロキサシンについて疑義照会します。代替薬としてトスフロキサシン、ミノサイクリンがありますので、あえてレボフロキサシンでなくてもよいかと思います。キノロン系抗菌薬は切り札 キャンプ人さん(病院)最近の服用歴を確認して、前治療がなければマクロライド系抗菌薬がガイドラインなどで推奨されていることを伝えます。小児肺炎の各種原因菌の耐性化が進んでおり、レボフロキサシンはこれらの原因菌に対して良好な抗菌活性を示すため、キノロン系抗菌薬は小児(15 歳まで)では切り札としていることも伝えます。マクロライド系抗菌薬かミノサイクリンを提案 荒川隆之さん(病院)子に対して、医師がマイコプラズマを想定しているならクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬、マクロライド耐性を危惧しているなら、母親と同じくミノサイクリンを提案します。ミノサイクリンの場合、歯牙着色などもあり8 才未満は特に注意なのですが、お子さんは13才ですので選択肢になると考えます。そもそも抗菌薬は必要か JITHURYOUさん(病院)子の抗菌薬投与の必要性を確認します。必要なら小児の適応があるノルフロキサシンやトスフロキサシンなどへの変更を提案します。咳自体はQOLを下げ、体力を消耗し飛沫感染リスクを上げることに加え、患者が投与を希望することがあり、心情的に鎮咳薬の必要性を感じます。効果不十分なら他の鎮咳薬も提案します。子の服薬アドヒアランスについて わらび餅さん(病院)体重56kgと言っても、まだ13歳。レボフロキサシンは禁忌であることを問い合わせる必要があります。処方医は一般内科なので、小児禁忌であることを知らないケースは有り得ます。ついでに、なぜ母と子で抗菌薬の選択が異なるのか、医師からその意図をききだしたいです。母の前医での処方がマクロライド系抗菌薬だったら、その効果不良(耐性)のためだと納得できます。子供だけがキノロン系抗菌薬になったのは、1日1回の服用で済むため、アドヒアランスを考慮しての選択かと思いました。学童が1日2~3回飲むのは、難しいこともありますが、母子でミノマイシンにしても1日2回になるだけで、アドヒアランスは維持できるものと思います。あくまで第1選択はマクロライド系抗菌薬 清水直明さん(病院)母と子は基本的に同じ病原体によって症状が出ていると考えられるので、同一の抗菌薬で様子を見てもよいのではないでしょうか。ミノサイクリン、レボフロキサシンともにマイコプラズマ、クラミジアなどの非定型菌にも効果があると思いますが、百日咳菌をカバーしていないので、これらをカバーするマクロライド系抗菌薬であるクラリスロマイシンやアジスロマイシンなどへの変更を打診します。マイコプラズマのマクロライド耐性化が問題になっていますが、それでも第1選択薬はマクロライド系抗菌薬です。13歳の小児にレボフロキサシン投与は添付文書上、禁忌とされていますが、アメリカでは安全かつ有効な他の選択肢がない場合、小児に対しても使用されているようです。前治療が不明なので何とも言えませんが、他の医療機関でマクロライド系抗菌薬の投与を「適正に」受けていたとすると、第2選択肢としてミノサイクリン、レボフロキサシン(15歳以上)が選択されることは妥当かもしれません。他の医療機関でマクロライド系抗菌薬の投与を「不適切に」(過少な投与量・投与期間)受けていたとすると、十分な投与量・投与期間で仕切り直してもよいのではないでしょうか。後編では、抗菌薬について患者さんに説明することは?、その他気付いたことを聞きます。

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第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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成人の潜在性結核感染症に対するINH、RFPの比較試験(解説:吉田敦氏)-916

 潜在性結核感染症(LTBI)に対する治療は、イソニアジドの単剤投与(6~9ヵ月)が第1選択となる。しかしながら小生も自ら経験があるが、これだけ長い期間内服のアドヒアランスを保つのは容易ではなく、さらに肝障害のリスクもある。これまで他剤についても多くの検討が行われてきたが、今回イソニアジド9ヵ月(INH、5mg/kg/日、最大300mg/日)とリファンピシン4ヵ月(RFP、10mg/kg/日、最大600mg/日)のランダム化オープンラベル比較試験が9ヵ国で行われ、その結果が発表された。 まずLTBIと診断された成人を無作為にこの2群に割り付け、ランダム化から28ヵ月間に活動性結核感染症(微生物学的あるいは組織学的に証明された「確定例」を指す)を発症したかどうかを観察した(プライマリーアウトカム)。次にセカンダリーアウトカムとしてこの2群を追跡し、結核の「確定例」と「臨床診断例」が100人年当たりどの程度発生したか、さらにGrade3以上(薬剤中止を要する程度)の副作用と完遂率、耐性結核の割合を調査した。なお対象例にはHIV感染者は含まれるが、耐性結核に接触して感染した例や、妊娠例、抗結核薬と相互作用のある薬剤を内服している例は含まれない。また実際に処方の80%以上を服用した場合を完遂とした。 結果として、対象例のおよそ半数は18~35歳、3割が36~50歳であり、男性は4割であった。治療適応としては、活動性結核患者との濃厚接触が7割を占め、HIVは4%、その他の免疫不全は3%であった。また胸部X線写真上正常範囲内にあったものは78%であった。このうちRFP投与群3,443例では、活動性結核「確定例」は4例、「臨床診断例」は7,732人年で4例であった。一方INH投与群3,416例では、「確定例」は4例であり、「臨床診断例」は7,652人年で5例であった。RFP群からINH群を差し引いた差は、「確定例」のみならず「確定例」に「臨床診断例」を含めても100人年当たり0.01例と非常に小さくなった。さらにこの差の95%信頼区間を算出すると、RFP群はINH群に劣らなかったが、それに勝ってもいなかった。なお「確定例」4例で薬剤感受性を測定できたが、2例はすべての薬剤に感性、1例はINH耐性(INH群の患者)、1例はRFP耐性関連遺伝子を有するものの、感受性試験ではRFP感性(RFP群の患者)であった。また完遂率はRFP群78.8%、INH群63.2%、投与薬と関連が疑われるGrade3以上の副作用はそれぞれ0.8%、2.1%、肝障害はそれぞれ0.3%、1.7%であった(いずれもp<0.001)。このためRFP 4ヵ月投与はINH 9ヵ月投与に比べ完遂しやすく、効果もほぼ同等で、かつ安全性にも勝っていると結論した。 今回の検討は、国際的かつ大規模な多施設研究であることが大きな利点である。そしてこれまで観察研究等で得られていたRFP投与の非劣性が、より豊富なデータと詳細な解析で裏付けられた。HIV感染者の割合が低かったこと、活動性結核発症例が両群とも少なかったことが限界として挙げられているが、免疫抑制者をどのくらい含むかによっておそらく両群の結果も変わってくるであろう。免疫不全者におけるデータはINHであっても少ない。さらに本邦のように生物学的製剤使用者、透析患者、移植・免疫抑制薬使用者といった集団で、RFPがどの程度の効果を有するかは、さらに情報が必要である。 本検討ではまた、薬剤耐性・低感受性との関連についても知見がそれほど多くなかった。なおLTBIではないが、活動性結核治療後において、治療前のINH、RFPの最少発育阻止濃度(MIC)が感性のレンジ内であってもやや上昇していた例は、そうでない例に比べて再発が多かったという報告が最近なされている1)。RFPは単剤投与で耐性出現が懸念される薬剤でもある。これら薬剤の感受性との関連を把握することは容易ではないが、本検討を踏まえ、今後よりクローズアップされる課題であろう。

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第5回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?(協力メンバー12名、複数回答)Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)・・・11名Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)・・・10名Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・9名Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラーリス)・・・6名Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)・・・5名Legionella 属(レジオネラ属)・・・2名Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)・・・2名細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性 奥村雪男オーグメンチン®配合錠が選択されていることから、S. pneumoniae、 H.influenzae(BLPAR※1を含む)、M. catarrhalis。クラリスロマイシンが選択されていることから、M.pneumoniae、 Legionella 属、 C. pneumoniae。市中肺炎であり原因菌が同定されていないため、細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性を考え、原因菌として主要な6つの病原体を全てカバーしていると考えます。点滴を行った時点では細菌性肺炎が強く疑われていたようですが、出張となるので非定型肺炎であった場合でも対応できるようにマクロライドが追加され、このような処方になったと考えます。肺炎の重症度は、「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)では、A-DROPシステム<表1>のスコアが0→外来治療、1~2→外来または入院、3→入院治療、4~5→ICU入院としているので、入院が望ましいが外来でも可とのことから、1~2に該当する中等度肺炎と予想されます。※1 BLPAR:β-lactamase-positive ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)非定型肺炎の鑑別診断も参考に 荒川隆之一般成人の市中肺炎なので、細菌性肺炎としてはS. pneumoniaeやH. influenzae、 M. catarrhalis、非定型肺炎としてはM. pneumoniaeやC. pneumoniae、Legionella 属などを想定します。「成人市中肺炎診療ガイドライン」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別<表2>を参照すると、この患者さんの場合、1~5の5項目中1、2、5を満たすと考えれば、非定型肺炎を疑う必要もあります。結核菌の可能性も 中西剛明外来なので市中肺炎の3 大原因菌( S. pneumoniae、 H. influenzae、 M.pneumoniae)の中から絞り込みます。尿検査をしているので、S. pneumoniaeの可能性は低い(尿中肺炎球菌抗原で原因菌の絞り込みが可能)、血液検査でマイコプラズマ抗体の検査が可能なこと、1週間点滴に通うようにと提案されている(M. pneumoniaeに感受性のある点滴はミノサイクリンくらいしか外来治療では使えない)ことから、H. influenzaeを疑います。それも、耐性菌の可能性を念頭に、BLPAR/BLNAR※2の線が濃厚です。処方日数が3日なのは、原因菌の特定が完全ではないこと、感受性試験の結果を見て薬剤を変更する余地を残していることが考えられます。加えて、結核の除外診断はついていないと予想できます。もし医師が結核の可能性がないと判断していれば、BLPAR/BLNARに対してレボフロキサシン単剤で処方2)していたでしょう。なお、結核疑いのままレボフロキサシンなどのキノロン系薬単剤で治療を開始することは、「結核診療ガイドライン」3)では禁忌事項に記載されています。※2 BLNAR:β-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)複数の原因菌が混合している可能性も 柏木紀久喀痰検査が行われず、血液検査、尿検査を行った上での処方なので、細菌性肺炎か非定型肺炎か明らかでなかったか、または混合感染の可能性も考えますが、セフトリアキソンの点滴を行っているので原因菌不明の細菌性肺炎を主に想定していると考えます。Q2 抗菌薬について、患者さんに確認することは?併用薬と抗菌薬での副作用歴 中堅薬剤師併用薬と、今まで抗菌薬で副作用がなかったか。アレルギーと抗菌薬服用による下痢の経験 柏木紀久ペニシリンアレルギーと、抗菌薬の服用で下痢になったことがあるか。再受診と毎食後に服用可能か ふな33日後の再受診についてどのように指示されているか。食欲・嘔気の有無、食事は規則的か=毎食後で飲めるか。検査結果、既往歴、抗菌薬使用歴 佐々木康弘検査結果について確認したいです。Legionella属、M. pneumoniae、S. pneumoniaeの検査結果は抗菌薬選択に大きく影響します。既往歴や抗菌薬使用歴も確認したいです。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があれば、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)も想定した抗菌薬治療が必要ですし、抗菌薬治療していて増悪している場合はニューキノロン系薬剤の使用も考慮します。インフルエンザウイルスへの先行感染 奥村雪男受診時期が冬季であれば、インフルエンザウイルスへの先行感染が無かったか確認したいです。その場合は原因菌としてS. aureusを想定する必要があります。ただ、メチシリン感受性S. aureusであれば、オーグメンチン®配合錠で治療可能と考えます。職業や活動範囲などの情報収集 JITHURYOU患者インタビューの質を上げて、できるだけ多くの情報を得られるよう努めます。喫煙習慣、職業温泉や湖や沼などに最近行ってないか?(Legionella属鑑別)家族など周囲に咳が強く出ている人がいないか?(患者の年齢だと10~20代の子供がいる可能性があり、その年代は比較的M. pneumoniaeが多いとされている)鳥との接触はあるか?(オウム病鑑別)併用している抗菌薬の確認のため、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法を受けているか、COPDなどの呼吸器系基礎疾患があるか(マクロライド長期療法を受けている可能性を考慮)後編では、本症例の患者さんに何を伝える、疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.[PharmaTribune 2015年12月号掲載]

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潰瘍性大腸炎〔UC : ulcerative colitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患の1つで、主に粘膜および粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。■ 疫学欧米に多く、白人とくにユダヤ系での発症が多いとされる。日本を含めた東アジアでも増加の一途をたどっている。難病であることから、わが国では指定難病に指定されており、患者数は20万人以上とされ、さらに毎年1万人程度増加している。性差はみられず、発症年齢は10代後半~30代に多く、25~29歳にピークがみられる。■ 病因発症原因はいまだ不明であるが、研究は飛躍的に進み、これまでの免疫学的な研究をはじめ、近年「genome-wide association study(GWAS)」により160以上の疾患関連遺伝子が特定され、また発症に関連する腸内細菌についても多くのことがわかり始めている。遺伝的素因、環境因子を背景に腸内細菌の影響の存在のうえで免疫異常を来し、腸管での免疫寛容が破綻することで慢性腸炎を誘導する。潰瘍性大腸炎ではクローン病とは対照的に、喫煙者の発症リスクは低い。発症自体とストレスの関連性は立証されていない。■ 症状主症状は粘血便(40%)、下痢(40%)、腹痛(30%)で、発熱や出血に伴う貧血もみられる。合併症は長期経過例での発がん、腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、仙腸関節炎や強直性脊椎炎などの関節炎、結節性紅斑や壊疽性膿皮症などの皮膚病変などがある。また、重症例では血栓傾向を認め、静脈血栓症のリスクがある。■ 分類治療法を選択するうえで、病期・病型(病変の広がり)・重症度を分類することが重要である。活動期か寛解期か、活動期であれば重症度(軽症〔63%〕・中等症〔28%〕・重症〔3%〕)(表1)および内視鏡所見(軽度・中等度・強度)(図1)はどうか、そして病型(直腸炎型〔22%〕、左側大腸炎型〔27%〕、全大腸炎型〔38%〕、右側あるいは区域性大腸炎)によっては局所製剤の適応を考慮することとなる。そのほか、臨床経過により再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分類される。難治性潰瘍性大腸炎の定義は、厳格なステロイド療法にありながらステロイド抵抗例あるいはステロイド依存例、またステロイド以外の厳密な内科治療下にありながら、再燃を繰り返すか慢性持続型を呈するものとされる。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後治療介入の影響があるため、潰瘍性大腸炎の自然史は不明な点が多いが、炎症性腸疾患の自然治癒率は10%とされる。また、長期経過において50%は病状が安定していく。全大腸切除率は、欧米のコホート研究では発症1年で10%、2年目で4%、以降1年ごとに1%増加し、わが国では10年後の累積手術率は15%、とくに全大腸炎型では40%と高率である。死亡率についてはメタ解析によると、標準化死亡率は1.1で一般と差がない。炎症型発がんに起因する大腸がんの発生は、発症8年で1.6%、20年で8%、30年で18%と増加し、全大腸炎型に多いが、治療の進歩により近年では発がん率が減少しているとする報告もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断において最も重要なのが、病歴の聴取である。慢性の下痢・粘血便で潰瘍性大腸炎を疑い、病歴や細菌検査などで腸結核やアメーバ性大腸炎を含めた感染性腸炎・放射線照射性大腸炎・薬剤性大腸炎・虚血性大腸炎などを除外する。次に大腸内視鏡検査を行い、特徴的な病変を確認し生検を併用する。内視鏡所見では、直腸から連続する全周性・びまん性の活動性炎症を認め、粘膜浮腫による血管透見消失から細顆粒状粘膜、膿性粘液が付着し、易出血性、びらん・潰瘍形成、広範な粘膜の脱落と炎症の強度が上がる。病理組織検査では、慢性炎症の所見があるかないかで炎症性腸疾患か否か判別し、そうであれば潰瘍性大腸炎かクローン病かを検討する。これらの所見で総合的に判断するが、クローン病や腸型ベーチェットの鑑別も重要である。診断の確定は診断基準(表2)に照らし合わせて行う(図2)。画像を拡大する画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は、寛解導入療法とその後の寛解維持療法の双方を考えながら選択していく。厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)の潰瘍性大腸炎治療指針を示す(表3)。寛解導入療法は、臨床的重症度と病型によって選択される(図3)。重症例や全身状態が不良な中等症では、入院のうえ、全身管理を行いながら治療をする。近年、重症例や難治例に対しタクロリムス(商品名:プログラフ)やインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)、ゴリムマブ(同:シンポニー)(図4)、さらには2018年にトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ベドリズマブ(同:エンタイビオ)と新たな治療の選択肢が増えたが、効果不十分な場合に次々と別の治療法を試すのには慎重であるべきで、外科治療のタイミングを誤らないようにすることが重要である。画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.重症例やステロイド抵抗例・依存例つまり難治例において、タクロリムスやインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、シクロスポリン、トファシチニブ、ベドリズマブを使用する際は、専門施設での施行が望ましい。ステロイド、抗TNFα抗体や免疫調節薬を使用する際は、肝臓学会のガイドラインに沿ってHBV再活性化に対するサーベイランスが必要である。また、入院中の絶食は治療効果に影響しないばかりでなく栄養状態の悪化を招き、回復の遅延や術後合併症のリスクとなるため、大量出血や高度な腹痛などの超急性期以外は安易に選択するべきではない。維持治療においては、十分量を長期に使用することが重要で、いずれの維持治療においても薬剤中止後1年で50%が再燃するため、特段の事情がない限りは中止するべきではない。また、再燃の最大のリスクは、服薬アドヒアランスの低下であり、十分な服薬指導と定期的な確認が重要である。1)5アミノサリチル酸(5-ASA)製剤サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール、リアルダ)が、わが国で使用できる5-ASA製剤である。炎症性腸疾患治療の基準薬であり、50~80%の寛解導入効果がある。また、寛解維持にも優れ、十分量を長期に使用することが重要である。4g/日以上の高用量導入が可能になり、ステロイドの投与を避けられる症例が増えた。まれに導入後・増量後に発熱・下痢を来すことがあるので5-ASAアレルギーを疑い、5-ASAでの維持が困難な場合は、後述の免疫調節薬にて維持治療を行うことになる。分割投与よりも1回または2回での投与のほうが、服薬アドヒアランスのみならず効果としても優れる可能性があり、2g/日では分1投与が認められている。また、リアルダは4.8g/日の1回投与製剤であり、より高用量の投与ができかつアドヒアランスの面でも有用である。直腸病変や遠位大腸病変には局所製剤の単独ないし併用が有用である。2)ステロイド寛解導入療法として中心的な薬剤であり、十分量の5-ASA製剤で効果不十分 な場合はステロイドの全身投与を行う。短期的には84%で有効である。しかし、離脱率は50%のみで、30%は手術、20%はステロイド依存となっていた。中等症では30~40mg経口投与を行い、1~2週間で効果判定を行う。重症潰瘍性大腸炎においては、ステロイド1~1.5mg/kgの静注療法を行うことで、約半数で寛解導入が可能である。さらに増量したとしても効果の増強は認めず副作用の危険のみが増すことが知られている。ステロイドが無効または効果不十分な場合は、ステロイド抵抗例として難治例の治療を行うことになる。維持療法としてのエビデンスはなく、寛解導入後は3~4ヵ月を目安に漸減・中止し、5-ASA製剤等での寛解維持療法へ移行する。漸減中の再燃または中止後早期の再燃を認める場合は、ステロイド依存例として免疫調節薬での寛解維持療法を行うことが望ましい。坐剤や注腸といった局所製剤は5ASA製剤が第1選択とされるが、ブデソニド注腸フォーム剤(同:レクタブル注腸フォーム)は他の注腸製剤より忍容性が高く、またブデソニドであるためステロイドによる副作用も軽減できるとされる。3)免疫調節薬アザチオプリン〔AZA〕(同:イムラン、アザニン)、メルカプトプリン〔6-MP〕(同:ロイケリン/保険適用外)。効果発現に1~3ヵ月を要するため、急速な寛解導入には向かず、主に寛解維持治療に使用する。約60%の良好な寛解維持率を認め、ステロイド減量効果も明らかとなっておりステロイド依存例の寛解維持治療に重要である。不耐症例があるため、導入初期は短期間でのモニタリングが必要である。適正投与量は個体によって異なるため、少量から開始し、WBC 3,000~4,000/μL程度への減少を目安にAZA 2~2.5mg/kg、6-MP 1~1.5mg/kgを目処に増量を試みる。感染症のリスクは、ステロイドに比較すると低い。4)タクロリムス(同:プログラフ)化合物としてはまったく異なるが、シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害剤として作用し、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生を抑制する。わが国で開発された薬剤で、中等症~重症の潰瘍性大腸炎においてRCT(無作為化比較試験)で68%と高い改善率が認められた。添付文書の導入法では、目標血中トラフに到達するのに比較的長期間を要するため、専門施設を中心に速やかに上昇させる工夫がなされている。食前や絶食下での経口投与、高用量導入、また一部施設では持続静注によって急速に血中濃度を上昇させ、速やかな効果発現を得ている。寛解維持効果も示唆されているが、原則として3ヵ月を目安に中止するため、寛解導入後は免疫調節薬での寛解維持が望ましい。5)シクロスポリン(同:サンディシュン、ネオーラル / 保険適用外)タクロリムス同様カルシニューリン阻害剤として作用する。シクロスポリン持続静注は、ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対し有効率は70~80%と高いが、長期成績は3年後の手術率50%、7年後88%と不良で、シクロスポリンで寛解導入した場合は、寛解維持に免疫調節薬が必要である。タクロリムスと異なり腸管からの吸収が安定しないため、経口投与での血中濃度の維持が困難であり、シクロスポリンでの寛解維持はできない。6)抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ〔レミケード®〕、アダリムマブ〔ヒュミラ®〕、ゴリムマブ〔シンポニー®〕)寛解導入および寛解維持に用いる。大規模なRCTの結果、抗TNFα抗体であるインフリキシマブがクローン病、関節リウマチなどに続き、認可された。既存治療抵抗性の中等症~重症潰瘍性大腸炎に対し、導入8週で69%の有効率、38.8%の寛解導入率を認め、30週で34%の寛解維持効果を示した。クローン病と同様に5mg/kgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。潰瘍性大腸炎においては、効果減弱の際の倍量投与は認められていない。また、2013年6月ヒト抗体のアダリムマブが、潰瘍性大腸炎にも認可され、初回は160mg、2週後に80mg、以降は2週毎に40mgの皮下注射を行うが、これは自己注射が可能である。さらに2017年3月に4週間毎の皮下注射製剤であるヒト抗体のゴリムマブが適用追加となった。いずれの薬剤も導入前に胸部単純X線検査(必要に応じて胸部CT検査)、ツ反、IFN-γ遊離試験(IFN-γ release assay 〔IGRA〕: クオンティフェロン、TSPOTなど)で結核の感染を否定する必要がある。7)JAK阻害薬(トファシチニブ〔同:ゼルヤンツ〕)寛解導入および寛解維持に用いる。シグナル伝達分子をターゲットとした経口JAK阻害薬である。低分子化合物で、抗体製剤ではないため抗薬物抗体の産生による効果減弱は回避でき、また製造コストの抑制も可能である。既存治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対する第3相試験において、8週で約60%の改善率と18%の寛解導入率という有効性が示され、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して適用拡大となった。寛解維持率は、寛解導入試験で有効性を示した症例で52週の時点で34~40%の症例で寛解維持が得られた。なお、抗TNFα抗体製剤未使用例では寛解導入率25%で無効・効果減弱・不耐例では12%で、寛解維持率はそれぞれ5mg1日2回で27%、41%、10mg1日2回で37%、45%であった。投与法は1回10mgを1日2回、8週間投与し、効果不十分な場合はさらに8週間投与が可能である。寛解維持療法としては1回5mgを1日2回投与だが10mgを1日2回に増量することができる。なお、治験ではアジア人の比較的高齢者においてヘルペス感染症の発症が多く、注意が必要である。8) 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ〔同:エンタイビオ〕)炎症細胞の腸管へのホーミングを阻害することで、炎症を抑制する。潰瘍性大腸炎に対する第3相試験であるGEMINI 1で47%の改善率と17%の寛解導入効果、52週において40~45%の寛解維持効果が示され、2014年に欧米で承認・発売となった。わが国においても臨床試験が行われ、2018年7月に承認された。300mgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。腸管選択性が高いため、全身の免疫への影響が低いと考えられており、安全性に期待されている。薬理機序上効果発現はやや遅い印象があるが、寛解維持率が高く寛解維持療法における新たな選択肢として期待される。9)血球成分除去療法わが国で開発された白血球除去療法は、ステロイド抵抗例・依存例で保険適用とされ、使用されている。高用量のステロイドを要するような症例では、白血球除去療法を併用することで、より高い効果が期待でき副作用も少ないことが報告されている。しかし、海外での質の高いエビデンスは少ない。10)外科治療大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、重症・劇症で内科治療抵抗例、大腸がんおよびhigh grade dysplasia合併例では摘出手術の絶対的手術適応である。相対的手術適応例は、内科治療では寛解維持困難でQOLが保てない、または薬剤不耐などの難治例、内科治療抵抗性の壊疽性膿皮症など腸管外合併症例、狭窄や瘻孔、low grade dysplasiaなどの大腸合併症例である。術式は、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)や大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)が標準術式である。術後に回腸嚢炎を合併することがある。多くの報告で術後のQOLを評価しているが、いずれも術後数年でのQOLは良好である。4 今後の展望現在、創薬業界では生物製剤をはじめ分子標的薬が花盛りであり、炎症性腸疾患の分野も同様である。インフリキシマブが口火を切った炎症性サイトカインをターゲットとした抗体製剤や、接着分子をターゲットとし病原性リンパ球の腸管へのホーミングを阻害し動態制御を行うことで腸炎を抑制する薬剤、また造血幹細胞移植などが注目されている。新薬の許認可において、これまでいわゆるドラッグ・ラグがあり、有効な薬剤が欧米で使用可能でも、わが国で認可されるのが数年先となるようなことも少なくなかった。しかし近年、炎症性腸疾患の分野においては、多くが国際共同治験となり、ドラッグ・ラグは解消される方向へ向かっている。クローン病でも多くの治験が行われているが、潰瘍性大腸炎に対する今後の展開について述べる。現在臨床試験中あるいは終了している薬剤は、以下のようなものがある。炎症性サイトカインを標的とした薬剤としてJAK阻害薬が開発されている。承認されたトファシチニブに引き続いてJAK1選択性を高めた第二世代のJAK阻害薬であるフィルゴチニブやウパダシチニブなどが開発中である。クローン病において承認された抗IL12/23 p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)は、潰瘍性大腸炎においても臨床試験が進んでおり、また抗IL23 p19抗体であるリサンキツマブやミリキツマブなども臨床試験が進んでいる。腸炎惹起性リンパ球の動態制御を目的とした薬剤も多数開発されている。抗α4β7インテグリン抗体であるベドリズマブに続き、AJM300は、わが国で開発された経口低分子化合物でα4インテグリンを阻害する。102例の潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験で、8週後の有効率62.7%、寛解率23.5%と有意に有効性を示した。低分子化合物であるため低コストで生産でき、抗体製剤のように免疫原性や効果減弱といったリスクを回避できる可能性がある。現在第3相試験中である。皮下注射製剤の抗MAdCAM抗体であるPF-00547659は、消化管組織中に発現するMAdCAMに結合し、インテグリンとの結合を阻害する。潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TURANDOTで、12週の寛解率24%と有意な結果が報告された。S1Pおよびその受容体の1つであるS1P1受容体は、リンパ球の二次リンパ組織からの移出に必須の分子であるが、S1P受容体アゴニストはS1P1受容体を強力かつ長期に内在化させることで、リンパ球の動態制御を行い、炎症を抑制する。S1P1およびS1P5受容体に作用するRPC1063が、潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TOUCHSTONEにおいて、8週で16.4%の寛解率、58.2%の有効率を示し、現在第3相試験へと移行している。その他、ブデソニドは、ステロイドの全身性の副作用の軽減を目的に、肝臓で速やかに代謝されるようデザインされた局所作用型のステロイドであり、欧米では一般に使用されているが、前述のようにわが国でもクローン病に対する経口薬に続き、本症で経肛門投与のフォーム薬が承認・発売された。また近年、腸内細菌研究の急速な進歩によってプロバイオティクスも再度注目されている。さらに、c.difficile関連腸炎において高い有効性を示し、欧米で認可された糞便微生物移植も炎症性腸疾患への応用が試みられているが、まだ有効性や投与法などに関する十分な大規模データは不足しているのが現状である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 潰瘍性大腸炎(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けの研究情報)CCFA - Crohn's and Colitis Foundation of America(米国のIBD団体のサイト:一般利用者向けと医療従事者向けの情報)ECCO - European Crohn's and Colitis Organisation(欧州のIBD団体のサイト:医療従事者向けの研究・診療情報)東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター(一般利用者向けの情報)厚生労働省 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報、最新の診断指針・治療指針が公開されている。会員登録をすると「一目でわかるIBD」の閲覧やe-learningも可能)患者会情報IBDネットワーク(IBD患者と家族向けの情報)1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.2)日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂; 2016.3)渡辺守 編. IBD(炎症性腸疾患)を究める. メジカルビュー社; 2011.4)炎症性腸疾患(第2版)-病因解明と診断・治療の最新知見. 日本臨牀社;2018.公開履歴初回2013年07月04日更新2018年08月28日

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新たな結核菌ワクチンの第II相試験(解説:小金丸博氏)-901

 新たに開発中の結核菌に対するワクチン「H4:IC31」の第II相試験の結果が発表された。「H4:IC31」は、Toll様受容体9(TLR9)を介してシグナル伝達する組み換え融合タンパク質(H4)とIC31アジュバントからなるサブユニットワクチンである。このワクチンはインターフェロンγ放出試験(QFT)と交差反応を示さないマイコバクテリア抗原(Ag85BとTB10.4)を含んでいる。 本試験は、結核感染のリスクが高い南アフリカで、幼児期にBCGワクチンを接種していた12~17歳の青年を対象に行われた。結核感染の既往歴や治療歴がある者、家族内に結核患者がいる者、薬物乱用者、妊婦は試験から除外された。被験者をH4:IC31ワクチン接種群、BCGワクチン再接種群、プラセボ接種群の3群にランダムに割り付けて、安全性、QFT陽転の割合、QFT持続陽転の割合などを評価した。その結果、2年以内のQFT陽転化の割合は、H4:IC31ワクチン接種群が14.3%、BCGワクチン再接種群が13.1%、プラセボ接種群が15.8%であり、いずれのワクチンもQFTの初回陽転化を防ぐことはできなかった。ただし、BCGワクチン再接種群ではQFTの持続陽転の割合が低く、有効性は45.4%だった(p=0.03)。一方、H4:IC31ワクチンの有効性は30.5%(p=0.16)であり、BCGワクチン再接種群と比べて低率だった。 本試験では、とくにBCGワクチン再接種群でQFTの持続陽転の割合が減少していた。QFTの持続陽転は、一時的なQFT陽転より持続的な結核感染を示唆し、疾患進行のリスクが高いと考えられている。アフリカのような結核感染のリスクが高い地域においては、BCGワクチンの再接種によって結核発病のリスクを減らす可能性が示された。 開発中の新たな結核菌ワクチン「H4:IC31」は、軽度から中等度の注射部位反応がBCGワクチンより少なく、劇的な有効性を示すことはできなかったものの一定の効果は示した。新たな結核菌ワクチンの候補として、今後の展望を注視したい。

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結核予防にリファンピシン4ヵ月が有望/NEJM

 活動性結核の予防において、リファンピシンの4ヵ月投与の効果はイソニアジドの9ヵ月投与に対し非劣性であり、治療完遂率はリファンピシンのほうが高く、安全性も優れることが、カナダ・マギル大学のDick Menzies氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年8月2日号に掲載された。潜在性結核感染における活動性結核の予防では、WHOなどがイソニアジドの6ヵ月または9ヵ月投与を推奨しているが、このレジメンは肝毒性によりアドヒアランスが不良なことが知られている。リファンピシンの4ヵ月投与は、イソニアジドの9ヵ月投与に比べGrade3/4の薬剤関連有害事象が少なく、安価であり、治療完遂率が優れることが報告されている。9ヵ国が参加した無作為化試験 本研究は、活動性結核の予防における2つのレジメンの有用性を比較する非盲検無作為化対照比較試験であり、9ヵ国が参加し、2009年10月~2014年12月の期間に患者登録が行われた(カナダ健康研究所などの助成による)。 適格基準を満たした年齢18歳以上の潜在性結核感染患者が、リファンピシン(10mg/kg、最大600mg)を4ヵ月(120回)投与する群またはイソニアジド(5mg/kg、最大300mg)を9ヵ月(270回)投与する群にランダムに割り付けられた。 主要評価項目は、28ヵ月時の確定された活動性結核(培養で結核菌[Mycobacterium tuberculosis]が陽性または生検検体で乾酪性肉芽腫を同定)の発生率であり、非劣性および優越性の解析が行われた。副次評価項目は、臨床的に診断された活動性結核(3人の医師のうち2人以上が活動性結核の可能性ありと判定)、Grade3~5の有害事象、治療レジメンの完遂などであった。優越性は認めず、選択バイアスは最小化 リファンピシン群(3,443例)では、7,732人年のフォローアップ期間中に、確定された活動性結核が4例に発生し、臨床的に診断された活動性結核は4例に発生した。これに対し、イソニアジド群(3,416例)では、7,652人年のフォローアップ期間中に、それぞれ4例および5例に発生した。 発生率の差(リファンピシン群-イソニアジド群)は、確定された活動性結核が、100人年当たり0.01件未満(95%信頼区間[CI]:-0.14~0.16)であり、確定または臨床的に診断された結核は、100人年当たり0.01件未満(95%CI:-0.23~0.22)であった。 確定された結核と、確定または臨床的に診断された結核の発生率の差の95%CIの上限値は、事前に規定された累積発生率の非劣性マージンである0.75%を超えず、リファンピシン群のイソニアジド群に対する非劣性が確認された。一方、リファンピシン群のイソニアジド群に対する優越性は認めなかった。 また、治療完遂率は、リファンピシン群が78.8%と、イソニアジド群の63.2%に比べ有意に良好であった(群間差:15.1ポイント、95%CI:12.7~17.4、p<0.001)。 146日(リファンピシンの予定投与期間である4ヵ月の120%に相当)以内のGrade3~5の有害事象の発生率は、リファンピシン群が1.5%であり、イソニアジド群の2.6%に比べ有意に低かった(リスク差:-1.1ポイント、95%CI:-1.9~-0.4、p=0.003)。また、Grade3/4の肝毒性の発生率は、それぞれ0.3%、1.5%であり、リファンピシン群で有意に低かった(-1.2ポイント、-1.7~-0.7、p<0.001)。 著者は、「治療およびフォローアップが完遂できなかった患者における2群間の人口統計学的および臨床的な背景因子には差がなかったことから、本試験では選択バイアスが最小化されたと考えられる」としている。

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HIV関連結核の予後改善に、尿スクリーニング検査は有効か/Lancet

 HIV関連結核の診断は不十分であり、見逃しは院内死亡率を高めるという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnkur Gupta-Wright氏らは、アフリカのHIV陽性入院患者において結核の迅速尿スクリーニング検査の有効性を検討し、全体の死亡率は抑制されないが、高リスク例ではベネフィットが得られる可能性があることを示した(STAMP試験)。研究の成果は、Lancet誌2018年7月28日号に掲載された。結核は、世界的にHIV患者の主要な死因であり、2016年には37万4,000例が死亡したと推定されている。HIV陽性入院患者では、結核の尿検査は診断率が良好であることが示唆されている。マラウイと南アフリカ共和国の入院患者で、標準治療と比較 本研究は、HIV陽性入院患者における、結核の尿スクリーニング検査によるアウトカムの改善効果を評価する、プラグマティックな多施設共同二重盲検無作為化対照比較試験である(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。 マラウイと南アフリカ共和国の2つの病院が参加した。対象は、年齢18歳以上で、結核治療を受けていないHIV陽性の入院患者であった。 被験者は、症状や臨床所見にかかわらず、標準治療を受ける群または尿スクリーニング検査を受ける群(介入群)に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。患者、医師、研究チームには、割り付け情報がマスクされた。喀痰検査は両群で、尿検査は介入群のみで行われた。 主要アウトカムは56日時の全死因死亡とし、ベースラインのCD4細胞数、ヘモグロビン量、臨床的な結核の疑いの有無などでサブグループ解析を行った。 2015年10月26日~2017年9月19日の期間に、4,788例のHIV陽性患者が登録され、このうち2,600例(54%)が無作為割り付けの対象となった(各群1,300例)。割り付け後に13例が除外され、残りの2,574例(各群1,287例)が最終的なintention-to-treat解析に含まれた。「低CD4細胞数」「重症貧血」「臨床的な結核疑い」の患者で死亡率低下 試験登録時の全体の平均年齢は39.6(SD 11.7)歳で、57%が女性であった。84%(2,168例)が入院前にHIVと診断され、そのうち86%(1,861例)が抗レトロウイルス療法(ART)を受けていた。CD4細胞数中央値は227/μL(IQR:79~436)で、29%(748例)がCD4細胞数<100/μLであり、23%(587例)に重症貧血(ヘモグロビン量<8g/dL)がみられた。90%(2,316例)がWHOの結核症状(咳嗽、発熱、体重減少、寝汗)の1つ以上を呈し、39%(996例)が入院時、臨床的に結核が疑われた。 56日までに507例(20%)が死亡した。56日死亡率は、標準治療群が21%(272/1,287例)、介入群は18%(235/1,287例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(補正リスク低下率[aRD]:-2.8%、95%信頼区間[CI]:-5.8~0.3、p=0.074)。 事前に規定された12のサブグループのうち、高リスクの3つのサブグループで、介入群の死亡率が標準治療群に比べ有意に低下した(CD4細胞数<100/μL[aRD:-7.1%、95%CI:-13.7~-0.4、p=0.036]、重症貧血[-9.0%、-16.6~-1.3、p=0.021]、臨床的な結核疑い例[-5.7%、-10.9~-0.5、p=0.033])。施設(マラウイ、南アフリカ共和国)および試験期間中の治療時期(6ヵ月ごとに4期間に分類)の違いによる差は認められなかった。 結核の診断から治療までの期間は短く(中央値:1日、IQR:0~1)、両群で同様であった。結核治療関連の有害事象も両群で類似していた。抗菌薬治療や、ART非投与例へのART開始についても両群間に差はなかったが、ART開始までの期間は介入群のほうが短かった。 著者は、「低CD4細胞数、重症貧血、臨床的な結核疑いの高リスクHIV陽性入院患者では、結核の尿スクリーニング検査によって死亡率が低下する可能性がある」とまとめ、「すべてのHIV陽性入院患者にこの検査を行うことで、結核が未診断のままの退院や死亡のリスクが低減される可能性がある」と指摘している。

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開発進む、新たな結核菌ワクチン/NEJM

 結核を発症させやすく、世界的な感染症による死亡の主因となっている近年の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する、開発中のワクチン「H4:IC31」の第II相試験の結果が発表された。南アフリカ共和国結核ワクチンイニシアチブ(SATVI)のElisa Nemes氏らによる検討で、伝播率の高い環境においてワクチン接種の効果を示す所見が得られたという。著者は「今回の結果は、新規ワクチン候補の臨床的開発を示すものといえるだろう」と述べている。H4:IC31はサブユニットワクチンの候補で、前臨床モデルでは結核発症への防御効果が示された。また観察研究において、カルメット-ゲラン菌(BCG)の初回ワクチン接種が、結核感染への部分的防御効果がある可能性が示唆されていた。NEJM誌2018年7月12日号掲載の報告。H4:IC31ワクチン vs.BCGワクチン再接種 vs.プラセボ 第II相試験は、新生児期にBCGワクチン接種を受けていた高リスク環境にある青少年990例を対象に行われた。被験者をH4:IC31ワクチン接種群、BCGワクチン再接種群、プラセボ接種群に無作為に割り付けて追跡評価した。なお被験者は全員、QuantiFERON-TB Gold In-tubeアッセイ(QFT)での結核菌感染検査、およびヒト免疫不全ウイルス検査の結果が陰性であった。 主要アウトカムは、ワクチン接種の安全性と、結核菌感染(6ヵ月ごと2年の間に行ったQFT検査での初回陽転で定義)とした。副次アウトカムは、免疫原性、QFT持続陽転(陰転を伴うことなく陽転後3、6ヵ月時の検査で陽転を確認)とした。ワクチンの有効性は、Cox回帰モデルからのハザード比(HR)に基づき推算し、各ワクチンについてプラセボと比較した。BCG、H4:IC31接種群はいずれも免疫原性を示す BCGワクチン再接種群、H4:IC31ワクチン接種群はいずれも免疫原性が認められた。QFT陽転は、H4:IC31群44/308例(14.3%)、BCG群41/312例(13.1%)、プラセボ群49/310例(15.8%)であった。陽転持続の割合は、それぞれ8.1%、6.7%、11.6%。 H4:IC31群、BCG群はいずれも初回陽転を防御できず、有効性推定値は、それぞれ9.4%(p=0.63)、20.1%(p=0.29)であった。BCGワクチンではQFT陽転持続率を低下したことが認められ、有効性は45.4%であった(p=0.03)。一方、H4:IC31の有効性は30.5%であった(p=0.16)。 重篤有害事象の発現頻度は、群間で臨床的有意差がみられなかったが、軽度~中等度の注射部位反応は、BCGワクチン再接種群で最も頻度が高かった。

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指導医が語る心得のような本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第5回

【第5回】指導医が語る心得のような本どうも、タイトルを見て「あたりまえ体操」を思い出したナウい呼吸器内科医です。本書のフランケンシュタインを例に挙げた奇抜なまえがきを読みながら、これは期待できそうだなと読みはじめました。『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』坂本 壮/著. シーニュ. 20172ページ目で「あ、これいい本だな」と思いました。なぜかといえば、最初の原則が、「焦ってはいけない!」だったのです。私は救急外来を専門にしているわけでも何でもないのですが、急変時に心掛けているのは焦らないことです。ある時、病棟で心肺停止になった患者さんがいました。そこに居合わせた若手医師は、「CPAだ! きゅ、救急カート持ってきてー! ルートとって! 除細動器ー! 挿管の準備してー!」と声を上げ、周囲のスタッフがドタバタになったことがありました。焦りが新たな焦りを生み、落ち着いてやれば1分で終わることに2分かかり、およそ実動的とは程遠い心肺蘇生でした。そんな時、10年目の循環器内科医が登場して、「落ち着け、おまえが焦ってたら進むものも進まない」とクールに決めながら、ルートがとれなくて難渋しているスタッフを横目に中心静脈をものの10秒で確保して、「この患者さんの基礎疾患を知っている人、教えてください」とつぶやきました。ほ、ほ、ほれてまうやろー!って……あれ、何の話だっけ。いや、書評をしているんだった。とにかく、最初の原則にその焦らないことを書いていたので、筆者のポリシーが五臓六腑に染みわたりました。もしこの本に結核のことが書かれていたら完璧だな…と上から目線で読んでいると、68ページにアッター! 「根拠のない楽観は禁物です」という名言が書いてあって、出典が『シン・ゴジラ』とかおしゃれなコラムに仕上がっています。最後の項目にDNARを持ってきたのは、筆者のこだわりでしょう。私も、DNAR=何もしないということではない、と常々感じており、筆者の意見に心から賛同しました。終末期の患者さんにDNARというタグをペタっと付けるのは簡単です。しかしタグを付けられた人への対応は決して一様ではありません。ケースバイケースに考えなければいけない。それは、救急であろうと緩和ケアであろうと同じです。この医学書は、マニュアル本ではありません。指導医が研修医とランチを食べながら話す、心得みたいなものです。かといって、左や右に極端に偏った意見をまとめたものではなく、ものすごくバランスがとれています。マニュアルとマインドの中間と思ってもらえればよいでしょう。不幸にも救急を研修していた時代に指導医に恵まれなかったすべての医師は、一読の価値あり!『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』坂本 壮/著出版社名シーニュ定価本体4,200円+税サイズA5版刊行年2017年内容の一部をご覧いただけます 関連コンテンツ(CareNet.com)困ったときに慌てない! 救急診療の基礎知識  BEST(Basic Emergency Safety Technique) approachJapan Physical Club 2015 セクション3 俺の必殺フィジカル~意識障害を左右差で診断!

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全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLEはSLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

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米国で死亡率が増えている感染症は?/JAMA

 1980~2014年の米国における感染症死亡の動向を調べた結果、ほとんどの感染症疾患で死亡は減少していたが、郡(county)レベルでみるとかなりの格差があった。さらに同期間中に下痢症の死亡は増大していたという。米国・ワシントン大学のCharbel El Bcheraoui氏らによる調査報告で、JAMA誌2018年3月27日号で発表された。感染症はほとんどが予防可能だが、米国ではいまだに公衆衛生上の脅威とみなされている。そうした中でこれまで、郡レベルの感染症死亡の推定値は把握されていなかった。1980~2014年の下気道感染症、下痢症、HIV/AIDS、髄膜炎、肝炎、結核死亡率を推算 研究グループは、1980~2014年の下気道感染症、下痢症、HIV/AIDS、髄膜炎、肝炎、結核による年齢標準化死亡率と郡レベルの動向を、全米保健医療統計センター(National Center for Health Statistics:NCHS)の非識別死亡記録、国勢調査局(US Census Bureau)やNCHS、Human Mortality Databaseの集団計数を用いて推定した。郡レベルの感染症死亡率は、これらのデータを小地域別推定モデル(small-area estimation model)に適用して検証した。 主要評価項目は、下気道感染症、下痢症、HIV/AIDS、髄膜炎、肝炎、結核による年齢標準化死亡率で、郡、年次、性別ごとに推算し評価した。2014年の感染症死亡の主因は下気道感染症、26.87/10万人 1980~2014年に米国で記録された感染症死亡は、408万1,546例であった。 2014年の感染症死亡は11万3,650例(95%不確定区間[UI]:10万8,764~11万7,942)で、死亡率は10万人当たり34.10(95%UI:32.63~35.38)であったのに対し、1980年はそれぞれ7万2,220例(95%UI:6万9,887~7万4,712)、41.95(95%UI:40.52~43.42)であった。全体では、18.73%(95%UI:14.95~23.33)減少していた。 2014年の感染症死亡の主因は下気道感染症で(全感染症死亡数の78.80%)、死亡率は10万人当たり26.87(95%UI:25.79~28.05)であった。 すべての感染症による死亡率について、郡間にかなりの差があった。絶対死亡率の郡間のばらつきが最も大きかったのは下気道感染症で、死亡率の分布区分の差(10thパーセンタイル区分と90thパーセンタイル区分の差)は、10万人当たり24.5であった。ただし、死亡率の相対比(分布区分の10thパーセンタイル区分と90thパーセンタイル区分の比)が最も高かったのはHIV/AIDSで、10.0であった。 髄膜炎、結核の死亡率は、対象期間中すべての郡で低下していた。 しかしながら唯一、下痢症による死亡率だけは、2000~14年にかけて上昇していた。死亡率は10万人当たり2.41(95%UI:0.86~2.67)に達しており、高死亡率の郡の大部分は、ミズーリ州から米国北東部の地域にわたっていた。

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