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マンガ喫茶で結核集団感染!ぱくたそより使用私は普段から結核を診療していますが、たまに集団感染・集団発病があります。とくに、睡眠や生活を同じ空間で過ごしている場合や、換気の悪い空間で長時間接触した場合は、感染・発病リスクが上昇します。多剤耐性結核の韓国人女性が飛行機に乗っていて、その後座席が近い乗客に空気感染した事例もあります1)。感染というのは、結核菌の感染を受けた状態のことで、発病は体内で結核菌が増殖して他人に感染させる状態になることを指します。感染から発病まで、半年~70年と幅があります。「集団感染」とは周囲への感染リスクが高い発病患者さんが大量発生したという事態ではありませんのでご注意を。さて、今日紹介する論文は、マンガ喫茶で起こった集団感染・発病の報告です。Endo M, et al.A tuberculosis outbreak at an insecure, temporary housing facility, manga cafe, Tokyo, Japan, 2016-2017.Epidemiol Infect. 2019 Jan;147:e222.2016年11月のことでした。新宿駅近くのマンガ喫茶で1年ほど寝泊まりしていた30代女性が、塗抹陽性の肺結核であることが判明したのです。ゲゲップ!マンガ喫茶は、なんというか、モワっとしていてあまり換気がよいとは思えません。また、体調が悪い人もゴホゴホ咳をしながら同じ空間で生活しているので、1人結核の発病者が出れば、感染リスクはかなり高いと言えるでしょう。実際、過去の臨床研究で、狭い閉鎖空間のほうが感染リスクは高いことが示されています2)。さて、マンガ喫茶のスタッフ31人に接触者健診が行われました。すると、31人のうち、肺結核を発病したのは6人(19.3%)でした。発病はしていないけど感染があった(インターフェロンγ遊離試験が陽性:潜在性結核感染)のは、7人(22.6%)でした。なんと、マンガ喫茶店員の半数近くが結核に感染してしまったということになります※。マンガ喫茶の利用者はどうだったでしょうか。1年ものあいだ、2,000人を超える利用者がいましたが、当然ながら1人1人調べていくわけにはいきません。それでも長期滞在利用者を11人ピックアップし、3人から同意が得られたそうです。ラッキーなことに、その3人は誰も結核に感染していませんでした。しかし、上述した30代の女性よりも前に長期滞在していた50代の男性が、実はすでに肺結核にかかっていることがわかりました。おや?つまり、この50代の男性を発端にして、30代の女性に感染し、その後スタッフに集団感染したというストーリーになっていたのです(図)。画像を拡大する漫画喫茶で寝泊まりするのはもちろん自由ですが、罹患率が高い地域(日本では大阪や東京)では、こういうリスクがあることも知っておく必要があります。※発病者の1人は、縦列反復配列多型(VNTR)検査の結果、別の結核菌だったようです。1)Kenyon TA, et al. Transmission of multidrug-resistant Mycobacterium tuberculosis during a long airplane flight. N Engl J Med 334:933-8, 1996.2)Bailey WC, et al. Predictive model to identify positive tuberculosis skin test results during contact investigations. JAMA 287:996-1002, 2002.