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中国で原因不明の肺炎59例、厚労省が注意呼び掛け

 中国・湖北省武漢市で、先月中旬から下旬にかけて、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されている。厚生労働省によると、現在までにヒト-ヒト感染は明らかになっておらず、爆発的な広がりが懸念される段階ではないが、引き続き情報収集を進めている。 国立感染症研究所などが今月5日時点でまとめた内容によると、症例数は59例で、臨床徴候と症状は主に発熱。いずれも2019年12月12日~29日に発症したとみられ、このうち7例が重症となっている。感染経路は不明であるが、ヒト-ヒト感染については明らかな証拠がなく、医療従事者における感染例も確認されていない。発生場所の疫学的な特徴としては、海鮮市場と関連した症例が多いとのこと。当該の海鮮市場(華南海鮮城)は、野生動物を販売する区画もあるが、現在は閉鎖中という。 なお、現段階でインフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)の可能性はいずれも否定されている。 日本は年末年始の休暇を利用した海外渡航者が一段落したところだが、中国では人の出入りが大きく増える春節(旧正月の大型連休)を2週間後に控えている。厚労省健康局結核感染症課は、「現段階においては、人から人への感染が確認されていないので、通常の診療で対応できると考える。ただし、咳や発熱等の症状がある患者が来院したら、直近の渡航歴はしっかり確認していただきたい。また、インフルエンザなどが否定され、原因が明らかでない肺炎患者を診察した際には、各自治体に報告してほしい」と話している。

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ワクチン接種における副反応、副反応疑い報告制度と救済制度【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第2回

はじめにワクチンの予防接種は、個人と集団(社会)を感染症から守るために重要な予防的措置である。しかし、ほかの医薬品と同様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、極めてまれではあるが、不可避的に健康被害が起こり得る。そのため、私たち医療者はワクチン接種における副作用(副反応)とその報告制度、健康被害時の救済制度について理解し、ワクチン接種を受ける方(被接種者)やその保護者に対して予診の際にこれらについて説明し、副反応や健康被害が発生した際にはサポートできるようにしておく必要がある。「有害事象」「副作用」「副反応」は何が違う?「有害事象」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される用語だが、使い分けができているだろうか(表1)。「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連した事象に限定して使用される。いずれも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される用語だが、しばしば混同されている。とくに一般の方やマスメディアでは、誤解して使用や理解されていることがあり、医療者として注意が必要である。(図1)1)有害事象因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(被接種者)に生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事のこと。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになる。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれる。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、一般の方がそのように誤解していることに注意する。2)副作用治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用という。広義の副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれる。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭義の副作用(adverse drug reaction)が用いられる。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また、副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになる。3)副反応ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付与することである。一方、ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応や接種行為による有害事象を副反応という。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭義の)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のことである。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになる。表1 有害事象、副作用、副反応の違い画像を拡大する図1 有害事象、副作用、副反応の概念図画像を拡大する副反応・有害事象の要因と症状副反応・有害事象の主な要因と症状を表2に示す。表2 副反応・有害事象の主な要因と症状画像を拡大する1)不活化ワクチン一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分などで誘起された炎症による局所反応(発赤、硬結、疼痛など)や全身反応(発熱、発疹など)がある。また、数10万〜100万分の1の確率とまれではあるが重篤な副反応として、アナフィラキシーや血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症などがある。医療者はこれらの副反応について、事前に被接種者や保護者に説明を行う。とくに頻度の高い一般的な副反応については、症状出現時の対応(表3)まで含めて説明する。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行う。2)生ワクチン弱毒化したワクチン株による感染、つまり病原性の再獲得によって生じる副反応がある。なお、局所の発赤や発熱などの高頻度な副反応は、軽微な症状であるため、単独では予防接種後副反応疑い報告基準(後述)における医療者の報告義務規定にはあたらない。表3 高頻度な副反応の経過と対応画像を拡大する予防接種後副反応疑い報告制度とは予防接種後副反応疑い報告制度とは、予防接種法に基づき、「医師などが予防接種を受けた者が一定の症状を呈していると知った場合に厚生労働大臣に報告しなければならない(報告義務がある)制度」である。この制度は、予防接種後に生じる種々の身体的反応や副反応疑いについて情報を収集し、ワクチンの安全性について管理・検討を行い、国民に情報を提供すること、および今後の予防接種行政の推進に資することを目的としている。本制度は、2013年の法改正により大幅に変更され、2014年11月から副反応疑い報告(予防接種法)と医薬品・医療機器等安全性情報報告(医薬品医療機器等法)の報告先は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に一元化され、報告の方法が簡素化された。報告基準1)定期接種の場合予防接種法に基づいて報告基準があり、ワクチン(対象疾患)ごとに報告すべき症状、症状発生までの時間(期間)が規定されている(表4)。この報告基準にある症状(「その他の反応」を除く)について、それぞれに定められている時間までに発症した場合は、因果関係の有無を問わず、医師などは報告する義務がある。「その他の反応」については(1)入院、(2)死亡または永続的な機能不全に陥るおそれがある場合で、それが予防接種との因果関係が疑われる症状について報告する。また、報告基準にある症状でこの時間を超えて発生した場合でも、因果関係が疑われるものについては「その他の反応」として報告する。2)任意接種の場合定期接種の場合のような報告基準はなく、医師などは予防接種後副反応疑い報告書に症状名を記載する。表4 報告基準の例(一部抜粋)画像を拡大する報告方法予防接種後副反応疑い報告書を厚生労働省のWebサイトよりダウンロードし記入、または国立感染症研究所のWebサイトより入力アプリをダウンロードし、報告書PDFを作成、印刷し、PMDAへFAX(FAX番号:0120-176-146)にて送信する。これら報告の流れを図2に示す。図2 予防接種後副反応疑い報告の流れ画像を拡大する救済制度についてきちんと説明していますか?インフルエンザワクチンの任意接種用の予診票の医師記入欄には「本人又は、保護者に対して、予防接種の効果、副反応及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済について説明しました。」と記載がある。あなたは被接種者や保護者に対して、ワクチン接種における救済制度についてきちんと説明ができているだろうか。予防接種後の健康被害に対する救済制度前述のとおり、予防接種は感染症から個人と社会を守るための重要な施策であるが、極めてまれに健康被害が起こり得る。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対する特別な配慮が必要であり、公的な救済制度が設けられている。救済制度は一律ではなく、定期接種、任意接種によって異なることに注意する。いずれの場合も給付の請求者は健康被害を受けた本人や家族であるため、医師は救済制度を紹介し、診断書や証明書の作成に協力する。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合に救済給付が実施される(表5)。表5 予防接種後の健康被害救済制度の違い画像を拡大する給付の種類には、(1)医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)、(2)障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金、(3)死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金があるが、各制度によって給付額は大きく異なる。なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もあるが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意する。1)定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度である。定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、厚生労働大臣が因果関係を認定した場合は、市町村長は健康被害に対する給付を行う。給付の内容は、定期接種のうちA類疾病(B型肝炎、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症)とB類疾病(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症)で異なる。B類疾病による健康被害の請求の期限は、その内容によって2年または5年となっているため、とくに留意する。なお、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り、責任を問われるものではない。2)任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度である。これらの制度は、医薬品などを適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費などの給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済(民事責任との切り離し)を図ることを目的としている。どちらの制度が適用されるかは、健康被害の内容や原因によって異なるが、申請窓口はいずれもPMDAであるため、患者や家族から健康被害の相談を受けた際にはPMDAの相談窓口(電話番号:0120-149-931)を紹介する。被接種者・保護者への説明資料以下のような一般の方向けの資料を活用する。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〔予防接種の副反応と有害事象〕医薬品副作用被害救済制度リーフレットまとめ「有害事象」「副作用」「副反応」はしばしば混同されて使用されており、医療者としてこれらの違いを理解する。医師などには予防接種後の副反応を疑った際に報告する義務がある。報告制度は定期接種、任意接種によって異なるが、報告先はPMDAに一元化されている。予防接種後の健康被害に対する公的な救済制度は、定期接種、任意接種によって異なるが、いずれもその請求は本人・家族が行うため、医療者はこれらの制度を紹介しサポートする。副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細については、「参考になるサイト」に示した、それぞれ厚生労働省やPMDAのWebサイトおよび『予防接種必携』1)を参照していただきたい。1)予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019).公益財団法人予防接種リサーチセンター.2019.2)藤岡雅司ほか. 予防接種マネジメント. 中山書店;2013.3)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂;2019.参考になるサイト1)予防接種後の有害事象.予防接種基礎講座〔2017年3月開催資料〕(厚生労働省)2)予防接種後副反応疑い報告制度(厚生労働省)[予防接種法に基づく医師等の報告のお願い][予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け)]3)予防接種後副反応疑い報告書〔別紙様式1〕(厚生労働省)4)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ(国立感染症研究所)5)予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)6)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕).[制度の概要][医療関係者向け][一般の方向け]7)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」予防接種の副反応と有害事象(日本小児科学会)講師紹介

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マンガ喫茶で結核集団感染!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第151回

マンガ喫茶で結核集団感染!ぱくたそより使用私は普段から結核を診療していますが、たまに集団感染・集団発病があります。とくに、睡眠や生活を同じ空間で過ごしている場合や、換気の悪い空間で長時間接触した場合は、感染・発病リスクが上昇します。多剤耐性結核の韓国人女性が飛行機に乗っていて、その後座席が近い乗客に空気感染した事例もあります1)。感染というのは、結核菌の感染を受けた状態のことで、発病は体内で結核菌が増殖して他人に感染させる状態になることを指します。感染から発病まで、半年~70年と幅があります。「集団感染」とは周囲への感染リスクが高い発病患者さんが大量発生したという事態ではありませんのでご注意を。さて、今日紹介する論文は、マンガ喫茶で起こった集団感染・発病の報告です。Endo M, et al.A tuberculosis outbreak at an insecure, temporary housing facility, manga cafe, Tokyo, Japan, 2016-2017.Epidemiol Infect. 2019 Jan;147:e222.2016年11月のことでした。新宿駅近くのマンガ喫茶で1年ほど寝泊まりしていた30代女性が、塗抹陽性の肺結核であることが判明したのです。ゲゲップ!マンガ喫茶は、なんというか、モワっとしていてあまり換気がよいとは思えません。また、体調が悪い人もゴホゴホ咳をしながら同じ空間で生活しているので、1人結核の発病者が出れば、感染リスクはかなり高いと言えるでしょう。実際、過去の臨床研究で、狭い閉鎖空間のほうが感染リスクは高いことが示されています2)。さて、マンガ喫茶のスタッフ31人に接触者健診が行われました。すると、31人のうち、肺結核を発病したのは6人(19.3%)でした。発病はしていないけど感染があった(インターフェロンγ遊離試験が陽性:潜在性結核感染)のは、7人(22.6%)でした。なんと、マンガ喫茶店員の半数近くが結核に感染してしまったということになります※。マンガ喫茶の利用者はどうだったでしょうか。1年ものあいだ、2,000人を超える利用者がいましたが、当然ながら1人1人調べていくわけにはいきません。それでも長期滞在利用者を11人ピックアップし、3人から同意が得られたそうです。ラッキーなことに、その3人は誰も結核に感染していませんでした。しかし、上述した30代の女性よりも前に長期滞在していた50代の男性が、実はすでに肺結核にかかっていることがわかりました。おや?つまり、この50代の男性を発端にして、30代の女性に感染し、その後スタッフに集団感染したというストーリーになっていたのです(図)。画像を拡大する漫画喫茶で寝泊まりするのはもちろん自由ですが、罹患率が高い地域(日本では大阪や東京)では、こういうリスクがあることも知っておく必要があります。※発病者の1人は、縦列反復配列多型(VNTR)検査の結果、別の結核菌だったようです。1)Kenyon TA, et al. Transmission of multidrug-resistant Mycobacterium tuberculosis during a long airplane flight. N Engl J Med 334:933-8, 1996.2)Bailey WC, et al. Predictive model to identify positive tuberculosis skin test results during contact investigations. JAMA 287:996-1002, 2002.

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結核の家庭内接触、多剤耐性菌の感染リスクは?/BMJ

 肺結核患者の家庭内接触者では、多剤耐性菌は薬剤感受性菌に比べ結核感染リスクが高いが、結核症の発病リスクは両群に差はないことが、米国・ハーバード大学医学大学院のMercedes C. Becerra氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月24日号に掲載された。既報の分子疫学研究では、薬剤耐性結核菌株は感染可能であり、耐性株のクラスターは長期に存続可能であることが示されている。また、いくつかの研究では、家庭内接触による結核の感染リスクは薬剤耐性菌と感受性菌で差はないとされるが、最近の研究では、多剤耐性菌に曝露した家庭内接触者は薬剤感受性菌への曝露に比べ、結核症の発現の可能性が半減すると報告されている。ペルーのリマ市内106施設が参加した前向きコホート研究 研究グループは、肺結核患者の家庭内接触者における、薬剤耐性菌と結核感染/結核症発病リスクの関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 患者登録は、2009年9月~2012年9月の期間に、ペルーのリマ市内106ヵ所の健康センターで行われた。初発結核患者3,339例の家庭内接触者1万160例のうち、6,189例は薬剤感受性の結核菌株に曝露し、1,659例はイソニアジドまたはリファンピシンのいずれか一方に耐性の結核菌株、1,541例はこれら2剤の双方に耐性の結核菌株に曝露していた。 主要アウトカムは、結核感染(ツベルクリン反応検査陽性)と、12ヵ月後の活動性結核症の発病(喀痰塗抹陽性または胸部X線検査で診断)とした。多剤耐性菌は、感染リスクが8%高い 微生物学的に結核症と確定され、薬剤感受性検査を受けた初発患者3,339例のうち、1,274例(38%)が1剤以上に対し耐性で、538例(16%)が1剤のみに耐性(単剤耐性)、478例(14%)がイソニアジドとリファンピシンの双方に耐性(多剤耐性)、258例(7%)は複数の薬剤に耐性だが多剤耐性ではなかった(polyresistant、イソニアジドとリファンピシンの双方は含まない)。 登録時に、家庭内接触者のうち4,488例(44%)が結核菌に感染していた。イソニアジド単剤耐性結核の初発患者の家庭内接触者は、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者に比べ、12ヵ月後までの感染リスクが16%(95%信頼区間[CI]:8~24)高かった。また、多剤耐性結核に曝露した家庭内接触者は、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者と比較して、12ヵ月後までの感染リスクが8%(95%CI:4~13)高かった。 薬剤耐性結核に曝露した家庭内接触者と、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者の間に、新規結核症の発病の相対ハザードに差は認められなかった(イソニアジド単剤耐性結核:補正後ハザード比:0.17、95%CI:0.02~1.26、多剤耐性結核:1.28、0.9~1.83)。 著者は、「これらの知見は、ガイドライン策定者に対し、感染および発病の早期発見と効果的な治療などにより、薬剤耐性と感受性の結核を標的とする行動を取るよう促すエビデンスをもたらす」としている。

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新たな結核ワクチン、投与36ヵ月後の有効性は?/NEJM

 結核菌(M. tuberculosis)に感染した成人において、M72/AS01Eワクチン接種は免疫応答を誘導し、少なくとも3年間は肺結核の発症を予防することが認められた。米国・国際エイズワクチン推進構想のDereck R. Tait氏らが、結核菌に対するM72/AS01Eワクチンの有効性、安全性および免疫原性を検討したプラセボ対照第IIb相臨床試験の3年間の最終解析結果を報告した。初期解析の結果では、M72/AS01Eワクチンは結核菌に感染した成人において安全性に懸念はなく、活動性肺結核の発症を54%防ぐことが示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月29日号掲載の報告。結核菌潜伏感染成人を対象にM72/AS01Eの有効性をプラセボと比較 研究グループは2014年8月~2015年11月の期間に、ケニア、南アフリカ共和国、ジンバブエの医療施設において、結核菌に感染(インターフェロンγ遊離試験で陽性)しているが活動性結核症の徴候がない18~50歳の成人を登録し、M72/AS01E群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1ヵ月間隔で2回投与し、2回目の投与後3年間追跡した。 主要評価項目は、M72/AS01Eの有効性で、第一定義(ヒト免疫不全ウイルスと関連がない細菌学的に確認された肺結核症)による活動性肺結核症の予防で評価した。臨床的に結核が疑われた場合は、喀痰を用いたPCRまたはマイコバクテリア培養、あるいはその両方の検査で確認し、体液性および細胞性免疫反応は300例のサブグループにおいて36ヵ月まで評価した。安全性の解析は、M72/AS01Eまたはプラセボを少なくとも1回投与されたすべての被験者を対象とした。36ヵ月時点のワクチンの有効性は49.7% 計3,575例が無作為化され、そのうち3,573例が少なくとも1回のM72/AS01Eまたはプラセボの投与を受け、3,330例が計画された2回の投与を受けた。 according-to-protocol解析(有効性解析対象集団3,289例)の結果、M72/AS01E群では1,626例中13例、プラセボ群では1,663例中26例で、第一定義に合致した結核の発症を認めた(発症率0.3/100人年vs.0.6/100人年)。36ヵ月時点におけるワクチンの有効性は、49.7%であった(90%信頼区間[CI]:12.1~71.2、95%CI:2.1~74.2)。 M72/AS01E群では、M72特異的抗体の濃度とM72特異的CD4陽性T細胞の発現頻度が、初回投与後に増加し、追跡期間を通して維持された。重篤な有害事象、免疫の関与が疑われる疾患および死亡の発生頻度は、両群で同程度であった。 著者は「さまざまな地域、人種、年齢層で、インターフェロンγ遊離試験陰性例を組み込んだより大規模で長期的な試験で検証する必要がある」とまとめている。

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急性咽頭炎に対するアモキシシリンへの変更提案の論拠【うまくいく!処方提案プラクティス】第7回

 今回は、抗菌薬の処方提案について紹介します。抗菌薬の処方提案においては、(1)感染臓器、(2)想定される起炎菌(ターゲット)、(3)感受性良好な抗菌薬の理解が必要不可欠です。また、医師に提案する際は、上記の擦り合わせや治療方針の確認を心掛けましょう。患者情報40歳、男性(会社員)現 病 歴 :高血圧血圧推移:130/70台既 往 歴 :15歳時に虫垂炎にて手術主  訴:咽頭痛、発熱、頸部リンパ節の腫脹処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.レボフロキサシン錠500mg 1錠 分1 朝食後3.トラネキサム酸錠500mg 3錠 分3 毎食後4.ポビドンヨード含嗽剤7% 30mL 1日数回含嗽症例のポイントこの患者さんは、2日前より咽頭痛と発熱が生じたため、かかりつけの診療所を受診しました。来院時の発熱は38℃後半で、圧痛を伴う頸部リンパ節の腫脹から急性咽頭炎と診断され、上記の薬剤が処方されました。薬局でのインタビューでは、とくに咽頭の症状が強く、唾をのみ込むときに口の中や咽頭に強い痛みを感じていましたが、鼻汁や咳嗽はないということを聞き取りました。まず気になったのは、急性咽頭炎に対してレボフロキサシンが処方されていたことです。急性咽頭炎の大多数はウイルス性であり、細菌性の割合は10%程度と低めですので、抗菌薬が必要ないことも多くあります。この患者さんは下表のように細菌性も十分疑われますが、細菌性の場合に主にターゲットとなりうる起炎菌はA群β溶血性連鎖球菌(group A β-hemolytic streptococcus:GAS)です。レボフロキサシンは広域スペクトラムかつ肺結核をマスクするリスクなどもありますので、本症例においては特別な理由がなければ第1選択には挙がらない抗菌薬ではないかと考えました。咽頭感染かつGASがターゲットであればペニシリン系抗菌薬のアモキシシリンが第1選択薬となります。そこで、患者さんにペニシリンやほかのβラクタム系抗菌薬によるアレルギーがないことを確認したうえで、医師に疑義照会することにしました。<細菌性咽頭炎を疑うためのツール>(文献2より改変)処方提案と経過電話にて、本症例における処方医の考えるターゲットと治療方針を確認したところ、GAS迅速抗原検査は陽性であり、細菌性咽頭炎の診断はついているということがわかりました。そして、「GAS陽性=レボフロキサシン」という認識で薬剤選択をしたと回答がありました。確かにレボフロキサシンも感受性はありますが、今回の症例のように症状が咽頭に限局しているGASをターゲットとして治療する場合、アモキシシリンのほうがより狭域で感受性が高いことを提案しました。医師は、アモキシシリンはあまり使ったことがないからそれでよいのか判断に迷われていましたが、処方提案の承認を得ることができました。薬剤変更の結果、アモキシシリン錠250mg 4錠 分2 朝夕食後で10日間投与することとなりました。その後、患者さんは10日間のアモキシシリンの治療を終了し、咽頭炎は軽快しました。1)厚生労働省健康局結核感染症課 編. 抗微生物薬適正使用の手引き 第一版. 厚生労働省健康局結核感染症課;2017.2)岸田直樹. 総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!. じほう;2015.3)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019. 第49版. ライフサイエンス出版;2019.

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HIV感染妊婦、結核のイソニアジド予防療法開始は出産後に/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し抗レトロウイルス療法を受けている妊婦において、結核予防のためのイソニアジド療法の開始時期は、出産後に比べて妊娠中のほうが、リスクが大きいと思われることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のAmita Gupta氏らが、イソニアジド予防療法の開始時期を検証した多施設共同二重盲検プラセボ対照非劣性試験「IMPAACT P1078 TB APPRISE試験」の結果を報告した。抗レトロウイルス療法を受けているHIV感染妊婦の結核予防を目的とした、イソニアジド療法の安全性、有効性および適切なタイミングに関しては明らかになっていなかった。NEJM誌2019年10月3日号掲載の報告。イソニアジドの開始を、妊娠中(即時群)と産後3ヵ月時(遅延群)とで比較 研究グループは、18歳以上で妊娠14~34週のHIV感染妊婦を、妊娠中にイソニアジド予防療法を開始する即時群と、分娩後12週時点で開始する遅延群のいずれかに無作為に割り付けた。即時群では、イソニアジド(1日300mg)を試験参加時から登録後28週間毎日経口投与し、その後は分娩後40週までプラセボを投与した。遅延群では、試験参加時から分娩後12週までプラセボを投与し、その後の28週間イソニアジド(1日300mg)を毎日投与した。母親と乳児を、分娩後48週まで追跡した。 主要評価項目は、母親におけるGrade3以上の治療関連有害事象と、有害事象による治療レジメンの永続的中止の複合エンドポイントであった。非劣性マージンは、イベント発生率の群間差の95%信頼区間(CI)上限が5件/100人年未満とし、intention-to-treat解析を行った。 2014年8月~2016年4月の期間で計956例が登録された。有害妊娠アウトカムの発生が即時群で高率 主要評価項目のイベントは、即時群で477例中72例15.1%、遅延群で479例中73例15.2%に発生した。発生率はそれぞれ15.03件/100人年および14.93件/100人年で、発生率の群間差は0.10(95%CI:-4.77~4.98)であり、非劣性基準を満たしたことが確認された。 死亡は、即時群2例、遅延群4例であった(発生率は0.40/100人年、0.78/100人年、群間差:-0.39、95%CI:-1.33~0.56)。死亡はすべて出産後に起こり、4例は肝不全(うち2例[各群1例]はイソニアジドによる肝不全)が原因であった。結核は6例(各群3例)で確認され、発症率は即時群0.60/100人年、遅延群0.59/100人年であった(群間差:0.01、95%CI:-0.94~0.96)。有害妊娠アウトカムに含まれるイベント(死産または自然流産、低出生体重児、早産、乳児の先天異常)の発生率は、即時群が遅延群より高値であった(23.6% vs.17.0%、群間差:6.7ポイント[95%CI:0.8~11.9])。 なお著者は、妊娠初期の女性を除外したこと、器官形成に関するイソニアジドの影響を評価していなかったこと、最近結核に曝露した女性を除外したことなどを挙げて、研究結果は限定的であるとしている。

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12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」【下平博士のDIノート】第34回

12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」 今回は、ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤「リサンキズマブ(商品名:スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL)」を紹介します。本剤は、初回および4週時の後は12週ごとに皮下投与する薬剤です。少ない投与頻度で治療効果を発揮し、長期間持続するため、中等症から重症の乾癬患者のアンメットニーズを満たす薬剤として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月24日に発売されています。<用法・用量>通常、成人にはリサンキズマブとして、1回150mgを初回、4週後、以降12週間隔で皮下投与します。なお、患者の状態に応じて1回75mgを投与することができます。<副作用>尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の患者を対象とした国内外の臨床試験(国際共同試験3件、国内試験2件:n=1,228)で報告された全副作用は219例(17.8%)でした。主な副作用は、ウイルス性上気道感染27例(2.2%)、注射部位紅斑15例(1.2%)、上気道感染14例(1.1%)、頭痛12例(1.0%)、上咽頭炎10例(0.8%)、そう痒症9例(0.7%)、口腔ヘルペス8例(0.7%)などでした。150mg投与群と75mg投与群の間に安全性プロファイルの違いは認められていません。なお、重大な副作用として、敗血症、骨髄炎、腎盂腎炎、細菌性髄膜炎などの重篤な感染症(0.7%)、アナフィラキシーなどの重篤な過敏症(0.1%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となるIL-23の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.体内の免疫機能の一部を弱めるため、ウイルスや細菌などによる感染症にかかりやすくなります。感染症が疑われる症状(発熱、寒気、体がだるい、など)が現れた場合には、速やかに医師に連絡してください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.入浴時に体をゴシゴシ洗ったり、熱い湯船につかったりすると、皮膚に過度の刺激が加わって症状が悪化することがありますので避けてください。5.風邪などの感染症にかからないように、日頃からうがいと手洗いを心掛け、体調管理に気を付けましょう。インフルエンザ予防のため、流行前にインフルエンザワクチンを打つのも有用です。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、以前より副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売されている生物学的製剤は、本剤と標的が同じグセルクマブ(商品名:トレムフィア)のほか、抗TNFα抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)およびインフリキシマブ(同:レミケード)、抗IL-12/23p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)、抗IL-17A抗体のセクキヌマブ(同:コセンティクス)およびイキセキズマブ(同:トルツ)、抗IL-17受容体A抗体のブロダルマブ(同:ルミセフ)などがあります。また、2017年には経口薬のPDE4阻害薬アプレミラスト(同:オテズラ)も新薬として加わりました。治療の選択肢は大幅に広がり、乾癬はいまやコントロール可能な疾患になりつつあります。本剤の安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。本剤の投与は基本的に医療機関で行われると想定できますので、薬局では併用薬などの聞き取りや、生活指導で患者さんをフォローしましょう。本剤は、初回および4週後に投与し、その後は12週ごとに投与します。国内で承認されている乾癬治療薬では最も投与間隔が長い薬剤の1つとなります。通院までの間の体調を記録する「体調管理ノート」や、次回の通院予定日をLINEの通知で受け取れる「通院アラーム」などのサービスの活用を薦めるとよいでしょう。参考日本皮膚科学会 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年版)アッヴィ スキリージ Weekly 体調管理ノート

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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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「死なない・死ねない」時代が来る――その時、医師は?【Doctors' Picksインタビュー】第3回

各方面の医療の進化の概略を示し「人は死なない・死ねない時代に入りつつある。これからの時代を生きるうえで、それを踏まえた心と身体の準備をすべき」と呼び掛ける自著をまとめた奥 真也氏。その俯瞰的な視点には、放射線医というキャリアのスタート地点と、民間の医療関連企業で勤務した経験が大きく関わっているという。医療の急速な進化は、医師の仕事も変えていくはず、と奥氏は語る。最大の敵“がん”克服の道筋私は1988年、昭和最後の年に医師になりました。平成の30年間がそのまま医師のキャリアです。この期間に、医療は驚くほど変わりました。その代表格が「がん治療」です。私が医師のキャリアをスタートした20世紀後半には、がんは致死的疾患の主要な座を占めていました。部位ごとのみならず患者さんごとにまったく異なる特徴を示すがんに対し、人類はなかなか有効な手だてを見いだせずにいました。1990年代半ばから、その状況は変わり始めます。手術や放射線、抗がん剤治療が発達し、それらを組み合わせることでがんを克服できるケースが出てきました。さらに21世紀に入ると、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬という新しい治療法の開発が急速に進み、本当の意味で「がんに効く薬」が登場しました。さらに、光免疫療法や遺伝子ゲノム解析を用いた治療も実臨床の段階に入りつつあります。この30年間の各種がんの5年生存率の変化や、死亡率上位を占めるがん種の変遷を見ると、胃がんや大腸がん、肺がんといった、かつては不治と思われたいくつかのがんが、今や克服可能となっていることがわかります。現場で臨床に当たっている方は「克服」と断定してしまうことに違和感があるかもしれませんが、30年前と比較し、人類とがんとの戦いがまったく異なるフェーズに入っていることに異論はないでしょう。「医療の完成」までわずか、死の概念も変わるこれまでの人類の歴史は、病気との戦いの連続でした。ペスト、天然痘、結核、AIDS…、ある病気を克服してもすぐに次の病気が立ちはだかりました。しかし、「がん」という高い壁の乗り越え方が見えつつある今、私はすべての病気を治せる「医療の完成」の9合目の地点まで来た、と考えています。90%ではなく9合目と表現しているのは、最後の1合には、乗り越えるのが大変な「難敵」が待ち構えているからです。大別すると、(1)膵臓がんや胆管がんといった発見・アプローチが難しい病気、(2)筋ジストロフィー、脊髄側索硬化症(ALS)や種々の遺伝的な免疫不全症などの希少疾患、(3)大動脈解離やくも膜下出血などの急死につながりやすい疾患、これらが具体的な難敵でしょう。しかし、(1)のがんは前述のとおり有効なアプローチが増加し、(2)の希少疾患についても、筋ジストロフィーについては小児のうちに完治を目指すアプローチの新薬が登場するなど、克服の道が見えつつあるものが増えてきています。(3)の急死を含め、完全な克服には医療保険制度や社会の在り方なども含めて議論する必要があり、時間はかかるでしょうが、それでもアプローチは日進月歩で進化しています。克服困難だった病気が次々に治療可能となり、数十年前と比較して人類は「予期しないタイミングで死ぬ」ことが圧倒的に減りました。寿命は延び続け、日本をはじめ先進国では急速に高齢化が進んでいます。簡単には「死なない・死ねない時代」になりつつある今、「死」自体が、これまでに考えられてきたもの、長らく恐れられてきたものから変容するでしょう。死、そして人生そのものに対する向き合い方が根本的に変わっていくのです。これまで、私たち医師の役割は、目の前の人の病気を治し、1日でも長く生かすことでした。でも、その常識すらも変わっていくでしょう。私たち医師は、そうした患者さんや社会の変化に向き合う準備ができているでしょうか?画像診断・病理診断はAIの独擅場に医師の仕事を変えつつある、もう1つの大きな要因は人工知能(AI)の応用です。2016年、 Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ碁)」が世界のトップ棋士に勝ち越しました。1980年代には「複雑なルールの囲碁において、コンピュータが人間に勝つのは22世紀以降になる」といわれていたものが、21世紀早々のタイミングでいとも簡単に壁を越えていったのです。こうしたAIが医療の世界ですでに応用されているのは、皆さんもご存じのとおりです。私はよく、画像診断で病変を見つける作業を絵本の『ウォーリーをさがせ!』に例えるのですが、この絵本で要求される「似たような中から条件に当てはまる1人を見つける」という作業は、集中力を要し時間もかかるものです。しかも臨床現場では、「異常があるのかさえもわからない」「あっても確率は1万分の1」といった難しさも加わります。こうした作業は、AIが圧倒的に得意な分野です。たとえば、マンモグラフィの画像診断において、熟練医師が1人の画像を診断するのに10分かかるところ、AIは同じ10分で6万人分を診断します。1分で6,000人を診断して精度にも問題がないのですから、勝負にすらなりません。現在の放射線科医や病理医の仕事の一部は、急速にAIに替えられていくでしょう。そして、変化はややゆっくりかもしれませんが、どの診療科にも同じ流れはやってきます。人間の医師が不要になるわけではありませんが、5年、10年後の医師の仕事は、今とはまったく異なるものになることでしょう。この変化の影響を一番受けるのは医学生や若手医師の方でしょうが、今の医学教育や医師育成のシステムはこれらの変化に対応し切れていないように見えます。事実、こうした話を書籍*にまとめたところ、一般向けの書籍を目指したのにもかかわらず、医師や医学生から反応が多くあったり、大学の医学部から副読本・参考書として使いたいという話がきたりもしました。まったく異なるキャリアで視野を広げる私がこのように医療を俯瞰的に見る視点を持つようになったのは、キャリアのスタートが放射線医だったことが大きく影響しているのだと思います。放射線科は、複数の科の患者の画像診断を一手に引き受ける部門です。幅広い診療科の医師と一緒に仕事をしたことや、多岐にわたる患者の診断を受け持ったことが、自分の土台になっています。もう1つ、ほかの医師があまり持たないキャリア経験が、民間企業に所属したことでしょう。私は長らく大学で教鞭を執っていましたが、あるきっかけから民間企業に転じ、製薬会社や医療系コンサルティング会社、そして医薬機器メーカーに勤めました。それまで、医師として薬や診断機器のユーザー側だったものが、メーカーに入って提供する側に回ったのです。この両者の経験が、医療の全体感をつかむことに大きく役立ちました。私の場合、意図してのキャリアチェンジではありませんでしたが、まったく異なる環境で働き、異なる視点で医療の世界を見る経験は、長い医師人生の中で必ず役立つはずだと感じます。人生100年時代、医師がすべきことは?ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏は、共著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の中で「人生100年時代に備えよ」と呼び掛け、大きな話題を集めました。この問題はもちろん、医師自身にも当てはまります。大学で役職をもらい、定年まで勤め上げるといった、これまでの「上がり」のキャリアでは、長く延びつつある人生に対応し切れません。医療が大きく変化しつつある今は、医師にとって活躍の場が増えている時代でもあります。臓器再生や脳の記憶を保存するなど、「不死」の時代を見据えた新たな医療ビジネスがどんどん登場しています。まだ決定的な治療法が見つかっていない認知症に社会としてどう向き合っていくのか、というのも大きな論点でしょう。どのテーマにも、医療の専門知識とともに、高い倫理観が求められます。さらに、「死なない・死ねない」時代を迎えるにあたり、避けて通れないのが「安楽死」を巡る議論でしょう。安楽死(医療が介入する積極的安楽死)を法律で認めている国は、世界に8ヵ国(米国は州単位)あります。もちろん、簡単に答えを出せる問題ではありませんが、高い専門知識と死に向かう人の実情を知る医師だからこそ、この問題からも目を背けず、積極的に議論していくべきではないかと思います。*『Die革命 医療完成時代の生き方』(奥 真也/著. 大和書房. 2019年3月発行)※この記事は、奥氏の著書『Die革命 医療完成時代の生き方』(大和書房)と2019年7月に開催された同書の出版記念講演(「医療の完成による死なない・死ねない時代が来る!!~人生100年時代の生き方~」紀伊國屋書店 新宿本店)の内容を再構成したものです。このインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!私のPICKした記事がん遺伝子パネル検査後の治療をご希望される患者さんへ個人に対するがん治療を遺伝子検査によって最適化するパネル検査。春先に保険収載され始め、いよいよ本格的に動き出しました。本来はがんの標本自体が必要ですが、血液等で代用するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)の手法も大いに注目されます。このような追い風の中ですが、まだまだ、「遺伝子的な最適状況は判明しても、適切な治療が提供できない」ということが、パネル検査の概念について、大きな障碍になっているのが現状です。今後、パネル検査、リキッドバイオプシー由来のデータを基に、薬の開発法が新たな方法論に進んでいく時代が拓かれると思われます。仮説検証的な方法から、発見的(heuristic)な方法への転換です。

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IL-23p19阻害薬グセルクマブ、中等症~重症の乾癬に有効/Lancet

 中等症~重症の乾癬の治療において、インターロイキン(IL)-23p19阻害薬グセルクマブはIL-17A阻害薬セクキヌマブに比べ、約1年の長期的な症状の改善効果が良好であることが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが行ったECLIPSE試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月8日号に掲載された。乾癬治療薬の臨床試験では、最長でも12週または16週という短期的な有効性の評価に重点が置かれてきたが、乾癬は慢性疾患であるため、長期的なエンドポイントの評価が求められていた。2剤を直接比較する無作為化第III相試験 本研究は、グセルクマブとセクキヌマブを直接比較する二重盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月27日~2018年9月20日の期間に、9ヵ国(オーストラリア、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、スペイン、米国)の142施設で実施された(Janssen Research & Developmentの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬と診断され、光線療法または全身療法の適応とされた患者であった。中等症~重症は、乾癬面積重症度指数(Psoriasis Area and Severity Index:PASI、0~72、点数が高いほど重症)≧12、医師による全般的評価(Investigator's Global Assessment:IGA)≧3、6ヵ月以上持続するbody surface area involvement(BSA)≧10%と定義された。 被験者は、グセルクマブ(100mg、0、4週、その後は8週ごと)またはセクキヌマブ(300mg、0、1、2、3、4週、その後は4週ごと)を皮下投与する群に無作為に割り付けられ、44週の治療が行われた。フォローアップは56週まで実施された。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における48週時のベースラインから90%以上のPASIの改善(PASI 90)の達成割合とした。副次エンドポイントは、12週および48週時のPASI 75、12週時のPASI 90、12週時のPASI 75、48週時のPASI 100、48週時のIGAスコア0(皮膚病変なし)、48週時のIGAスコア0または1(軽度)の達成割合であった。安全性の評価は、0~56週に1回以上の投与を受けた患者で行った。48週時PASI 90達成割合 84% vs.70%、12/48週時PASI 75達成割合は非劣性 1,048例が登録され、グセルクマブ群に534例、セクキヌマブ群には514例が割り付けられた。全体の年齢中央値は46.0歳(IQR:36.0~55.0)、女性が33%含まれた。平均罹患期間は18.4(SD 12.4)年、平均BSAは24.1(13.7)%、IGAは3(中等度)が76%、4(重度)が24%、PASIは平均値20.0(7.5)、中央値18.0(15.1~22.3)であった。 48週時のPASI 90達成割合は、グセルクマブ群が84%(451例)と、セクキヌマブ群の70%(360例)に比べ有意に優れた(差:14.2ポイント、95%信頼区間[CI]:9.2~19.2、p<0.0001)。 主要な副次エンドポイントである12週および48週時のPASI 75の達成割合は、グセルクマブ群のセクキヌマブ群に対する非劣性(マージンは10ポイント)が確認された(85%[452例] vs.80%[412例]、p<0.0001)が、優越性は認めなかった(p=0.0616)。 そのため、他の副次エンドポイントの統計学的な検定は実施されなかった(12週時のPASI 90はグセルクマブ群69% vs.セクキヌマブ群76%、12週時のPASI 75は89% vs.92%、48週時のPASI 100は58% vs.48%、48週時のIGAスコア0は62% vs.50%、48週時のIGAスコア0または1は85% vs.75%)。 全Gradeの有害事象(グセルクマブ群78% vs.セクキヌマブ群82%)、重篤な有害事象(6% vs.7%)、感染症(59% vs.65%)の頻度は両群でほぼ同等であった。頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(22% vs.24%)と上気道炎(16% vs.18%)がみられた。活動性の結核や日和見感染は認めなかった。セクキヌマブ群でクローン病が3例報告された。 著者は「これらの知見は、乾癬治療の生物学的製剤の選択において、医療従事者の意思決定に役立つ可能性がある」としている。

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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アジアの非喫煙女性の肺腺がんの危険因子

 アジアの非喫煙女性において、結核が肺がん発生の危険因子であることを支持する研究結果が、米国・国立がん研究所のJason Y. Y. Wong氏らにより報告された。この研究は、Female Lung Cancer Consortium in Asiaにおける結核ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を用いて、結核への遺伝的な感受性が非喫煙者の肺腺がん発生に影響するかどうか調査したものである。Genomics誌オンライン版2019年7月12日号に掲載。 本研究では、5,512例の肺腺がん症例と6,277例のコントロールのGWASデータを使用し、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連をadaptive rank truncated product法によるパスウェイ解析を用いて評価した。なお、遺伝子セットは、以前の結核GWASでの遺伝的変異体と関連が知られている、もしくは示唆される31個の遺伝子から成る。続いて、以前の東アジアの結核GWASでの3つのゲノムワイドの有意な変異体を用いて、メンデルランダム化により結核と肺腺がんとの関連を評価した。 その結果、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連が認められた(p=0.016)。さらに、メンデルランダム化で、結核と肺腺がんとの関連が示された(OR:1.31、95%CI:1.03~1.66、p=0.027)。

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難治性RA、filgotinibで短期アウトカムが改善/JAMA

 1種類以上の生物学的製剤の疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による治療が効果不十分または忍容性がない、中等度~重度の活動期関節リウマチ(RA)患者において、filgotinib(100mg/日または200mg/日)がプラセボとの比較において、12週時の臨床的アウトカムを有意に改善したことが示された。米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らによる、約450例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年7月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期の有効性・安全性を評価する必要がある」と述べている。filgotinibは、経口JAK1選択的阻害薬で、第II相治験で中等度~重度の活動期RAに対して、単独およびメトトレキサートとの併用の両療法において臨床的有効性が確認されていた。100mg/日または200mg/日、プラセボを投与しACR20達成率を比較 研究グループは2016年7月~2018年6月にかけて、世界114ヵ所の医療機関を通じて、1種類以上のbDMARDに効果不十分/忍容性のない中等度~重度の活動期RA患者449例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、filgotinibを200mg(148例)、filgotinibを100mg(153例)、プラセボ(148例)を、それぞれ1日1回、24週間投与した。被験者は、これまで服用していた従来の合成DMARD(csDMARD)も継続して服用した。 主要エンドポイントは、12週時の米国リウマチ学会基準で20%の改善(ACR20)の達成率だった。副次評価アウトカムは、12週時の低疾患活動性(疾患活動性スコア[DAS28-CRP]が3.2以下)、健康評価質問票による機能障害指数(HAQ-DI)、身体的側面のSF-36、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue(FACIT-Fatigue)スコアの変化、および24週時の寛解(DAS28-CRPが2.6未満で定義)達成患者割合、有害事象などだった。ACR20達成率、200mg群66%、100mg群58% 被験者のうち448例が実際に試験薬の投与を受けた。平均年齢56歳(SD 12)、女性が360例(80.4%)、平均DAS28-CRPスコアは5.9(SD 0.96)、3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者は105例(23.4%)だった。試験は381例(85%)が完了した。 12週時のACR20達成率は、プラセボ群31.1%に対し、filgotinib 200mg群が66.0%、100mg群が57.5%と、両filgotinib群が有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:34.9%[95%信頼区間[CI]:23.5~46.3]、100mg群:26.4%[15.0~37.9]、いずれもp<0.001)。 3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者についても、ACR20達成率はプラセボ群が17.6%に対し、filgotinib 200mg群が70.3%、100mg群が58.8%と有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:52.6%[95%CI:30.3~75.0]、100mg群:41.2%[17.3~65.0]、いずれもp<0.001)。 最も発生頻度が高かった有害事象は、filgotinib 200mg群が鼻咽頭炎(10.2%)、filgotinib100mg群が頭痛、鼻咽頭炎、上気道感染症(それぞれ5.9%)、プラセボ群がRA(6.1%)だった。日和見感染症、活動性結核、悪性腫瘍、胃腸穿孔、死亡の報告例はなかった。

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アジア・アフリカの小児重症肺炎、原因はRSVが最多/Lancet

 肺炎は、5歳未満の子供の主要な死因とされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKatherine L. O'Brien氏ら「Pneumonia Etiology Research for Child Health(PERCH)試験」の研究グループは、アフリカとアジアの子供を対象に、臨床所見と微生物学的所見を適用した最新の分析法を用いて検討を行い、入院を要する肺炎の多くはRSウイルス(RSV)などの少数の病原体群が主な原因であることを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年6月27日号に掲載された。7ヵ国の5歳未満を対象とする症例対照研究 研究グループは、アフリカとアジアの子供における肺炎の原因の解明を目的に、国際的な症例対照研究を実施した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。7ヵ国(バングラデシュ、ガンビア、ケニア、マリ、南アフリカ共和国、タイ、ザンビア)の9施設が参加した。 患者登録は、2011年8月15日~2014年1月30日の期間に、各施設で24ヵ月をかけて行われた。症例は、重症または超重症肺炎で入院した生後1~59ヵ月の子供であった。対照として、各施設の周辺に居住する、年齢をマッチさせた子供を無作為に選択した。 培養法またはマルチプレックスPCR法、あるいはこれら双方を用いて、鼻咽頭および中咽頭(NP-OP)、尿、血液、誘発喀痰、肺吸引物、胸水、胃吸引物の検査が行われた。 主解析の対象は、HIV感染がなく、かつX線画像所見で異常がみられる症例と、HIV感染のない対照に限定された。ベイジアン法による部分潜在クラス分析を用い、症例と対照を合わせた個人および住民レベルの病原体の可能性を推定した。全体ではウイルスが多く、超重症例では細菌が多い、約3割がRSV 症例群4,232例および対照群5,119例が登録された。主解析には、HIV感染がなく、かつX線画像所見で異常がみられる症例1,769例(41.8%、女児44.0%)と、HIV感染のない対照5,102例(99.7%、49.7%)が含まれた。 喘鳴は、症例群の31.7%(555/1,752例)(施設別の範囲10.6~97.3%)に認められた。30日致命率(case-fatality ratio)は6.4%(114/1,769例)だった。 血液培養陽性率は3.2%(56/1,749例)であり、分離された細菌のうち最も頻度が高かったのは肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae、33.9%[19/56例])であった。 NP-OP検体のPCR検査では、ほとんどの症例(98.9%)および対照(98.0%)で、1種以上の病原体が検出された。NP-OP検体におけるRSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、肺炎球菌(S. pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b:Hib)、H.インフルエンザ菌非b型(H. influenzae non-type b)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)の検出は、症例の病態と関連した。 病原体分析では、原因の61.4%(95%信用区間[CrI]:57.3~65.6)がウイルスであったのに対し、細菌は27.3%(23.3~31.6)で、結核菌が5.9%(3.9~8.3)であった。一方、超重症肺炎では、重症肺炎に比べウイルスが少なく(54.5%、95%CrI:47.4~61.5 vs.68.0%、62.7~72.7)、細菌が多かった(33.7%、27.2~40.8 vs.22.8%、18.3~27.6)。 全病原体のうち、最も病因割合(aetiological fraction)が高かったのはRSV(31.1%、95%CrI:28.4~34.2)であった。また、ヒトライノウイルス、ヒトメタニューモウイルスA/B、ヒトパラインフルエンザウイルス、肺炎球菌、結核菌、H.インフルエンザ菌は、病因分布が5%以上であった。 年齢によって病因割合に差がみられた病原体として、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラインフルエンザ1/3型、パレコウイルスおよびエンテロウイルス(parechovirus-enterovirus)、P.イロベチイ、RSV、ライノウイルス、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎球菌があり、重症度に差がみられた病原体として、RSV、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、パラインフルエンザ3型が挙げられた。各施設の上位10種の病原体が、施設の病因割合の79%以上を占めた。 著者は、「今後の肺炎研究では、複数の病原体の関与と、肺炎の発症におけるそれらの一連の役割という困難な問題への取り組みが必要である」としている。

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リファンピシン耐性結核の治療期間短縮トライアル(解説:吉田敦氏)-1038

 多剤耐性結核(キードラッグであるイソニアジド[INH]とリファンピシン[RIF]の両者に耐性)の治療は非常に難しい。薬剤数が多く、期間も長くなり、副作用も多く経験する。WHOは2011年のガイドラインにおいて、遺伝子検査を含む早期の耐性検査の実施、フルオロキノロン薬の使い分け、初期に行われるintensive phaseの治療期間の延長と合計18ヵ月以上の治療を推奨しているが、一方でそれよりも短期間の治療レジメンで良好な成績を収めた報告(例:バングラデシュ研究1))も存在する。今回は、RIF耐性結核例(ただし、フルオロキノロンとアミノグリコシドは感性)を対象とし、バングラデシュ研究で多剤耐性結核に対して用いられたレジメンと同様の9~11ヵ月の短期療法と、WHOのガイドラインに従った20ヵ月の長期療法の2法について、第III相ランダム化比較試験が実施された(実施国はエチオピア、モンゴル、南アフリカ共和国、ベトナム)。 有効性の判定で「良好」という基準は、132週の時点で経過が良く、培養陰性である(または陰性のままである)ことと定めた。患者の33%はHIV陽性であり、77%は肺に空洞を有していたが、治療レジメンについて十分なアドヒアランスが確保できたのは、短期療法群で75%、長期療法群で43%であった。そして上記の基準を満足した割合は、両群で差はなかった。Grade3以上の副作用出現率にも差はなかったが、「良好」の基準を満たさない患者での結核菌再検出率、心電図上のQT延長、ALT上昇、120週までの死亡、フルオロキノロン・アミノグリコシドの耐性出現は短期療法群でやや多かった。 使用された抗結核薬の内訳をみると、短期療法では最初の16週はintensive phaseとしてカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミド、モキシフロキサシン(高用量)、クロファジミン、エサンブトール、ピラジナミドを投与、その後のcontinuation phaseではカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミドを除いた4剤を、開始から40週以上投与していた。一方で長期療法は国によって用いる薬剤が異なっており、intensive phaseは5剤以上で6ヵ月以上、continuation phaseも4剤となっていた。つまり短期療法は、モキシフロキサシンを重視し、薬剤数を多くした(しかし短めの)intensive phaseを採用することで、長期療法との違いを打ち出していることになる。 総じて、短期療法は治療期間の短縮と、アドヒアランスの維持には貢献するが、不整脈を含む心臓への副作用の増加と突然死・死因不明死、肝障害に関連しているようで、実際に主に短期療法群でQT延長を確認後、モキシフロキサシンを減量したり、レボフロキサシンに変更した例が存在した。短期療法でみられたこのような副作用・デメリットが、モキシフロキサシンによるのか、その用量によるのか、あるいは他剤との相互作用によるのか、具体的な情報はない。HIV重複感染率が高かったため、その影響が事象を複雑にもしている。なおバングラデシュ研究ではモキシフロキサシンでなくガチフロキサシンが用いられていたが、ガチフロキサシンは低血糖などの理由で、本邦・米国等では発売が中止となっている。また本邦ではシタフロキサシンが抗酸菌感染症に用いられることがあるが、本検討にはシタフロキサシンは含まれていない。 WHOは2018年末に多剤耐性結核およびRIF耐性結核のガイドラインを改訂した2)。この中で短期療法の章が新たに設けられ、本試験を含む臨床試験の結果を考慮した短期療法と適応についてのスタンスが述べられている。2011年に比べ大きな進歩があったが、必須な薬剤の絞り込み、耐性に関する遺伝子検査のさらなる導入、副作用の早期発見と対処・代替薬剤の変更など、課題はまだまだ多い。条件を設定した短期治療は、標準化、個別化それぞれへの一歩といえるだろうが、最終的に個々の治療をさらに向上させるには、今後も多大な努力が求められるであろう。■参考1)Van Deun A, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2010;182:684-692.2)WHO updates its treatment guidelines for multidrug- and rifampicin-resistant tuberculosis.

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結核のDOTにもスマートフォン導入か(解説:吉田敦氏)-1032

 抗結核療法は長期にわたる。不完全な内服は、治療効果を下げるばかりか、耐性出現と周囲への感染リスクを少なくするためにもできる限り避けるべきであり、アドヒアランスの保持を目的としたDOT(Direct observed therapy)は世界的にも主流となっている。しかし直接会って内服を確認するのは、患者、医療従事者双方にとって負担である。スマートフォンの普及がDOTにプラスに働くかどうか―スマートフォンとアプリを使って内服状況を本人がビデオ撮影し、医療従事者に送信してアドヒアランスを確認するVOT法が英国で試みられ、従来の対面によるDOTとVOT法のランダム化比較試験の結果が発表された。 本検討では、過去にホームレス、懲役刑、薬物乱用、アルコールやメンタルヘルスの問題の既往のある患者が約6割を占め、また多くが英国外出生であった。DOTは週3~5日の確認(約半数は家において)、VOTは毎日の確認であり、VOTでは何らかの症状がある場合それについても報告可能とした。プライマリーエンドポイントは、ランダム化後の2ヵ月でスケジュールどおりの内服率が80%以上に達することとしたが、DOT群ではアドヒアランスはランダム化後すみやかに低下してしまい、プライマリーエンドポイント達成割合はVOT群で70%、DOT群で31%であった。なお有症状報告患者数は両群ともほぼ同数であったが、報告数でみるとVOTのほうが多かった。またVOTに関わる時間は、医療従事者・患者ともにDOTよりも少なかったわけであるが、コストは週5回のDOTに比較して、VOTは3分の1以下となった。 アドヒアランスに支障が生じやすい患者を相当数含んだ今回の検討において、得られた達成率を鑑みるとVOTは評価できるとみてよいであろう。とくに(英国外生まれの)34歳以下の男性で差が大きく、いわばスマートフォンになじみやすい世代に有効であったことがうかがえる。アドヒアランスを高める“動機”はさまざまであることがわかっているが、より個人に合い、簡便で、かつ自発性を促すものが望まれるかもしれない。一方で提供されたVOTにはリマインドや内服確認、症状報告メッセージなど細かなサービスが要求されていた。VOTのサービスの質的改良はこれからも続き、それによるアドヒアランス向上も期待できると考えられるが、VOTが果たしうる役割は、文化的・社会的背景が異なるそれぞれの国によっても差があるであろう。ロンドンではすでに多剤耐性結核患者にもこのVOTが導入されたと聞く。世界各国での今後の展開と応用に期待したい。

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プレゼン下手の医師なんてもう卒業!【Dr.倉原の“俺の本棚”】第16回

【第16回】プレゼン下手の医師なんてもう卒業!ベテラン中堅医になっても、カンファレンスでプレゼンがヘタクソな人っているんですよ。提示されるのがいつも結核の症例ばかりだから、患者背景をすっ飛ばして、結核菌の感受性からプレゼンし始めて、「あれ、この人どこの国の人?」と聞かれて「あ、フィリピン人です」と答える14年目くらいの医師。……って、オレじゃねぇか!!というわけで、私もイチからプレゼンについて勉強し直すつもりで正座して読みました。結論から書くと、研修医は全員買うべし。カンファレンスやコンサルトの症例プレゼンから学会発表まで、うまくまとめられた本です。とにかく、完成度が高いのです。『あの研修医はすごい!と思わせる 症例プレゼン-ニーズに合わせた「伝わる」プレゼンテーション』松尾 貴公・水野 篤/著. 羊土社. 2019私が感銘を受けたのは、話す速度についてです。「1秒間に5文字」というNHKルールが紹介されていましたが、いやぁ、思ったよりゆっくりなんですね。私は研修医時代、1秒間に20文字くらい話す指導医たち(頭の回転が速すぎる神々)に囲まれていたので、いつの間にか症例プレゼンのスピードが速くなってしまったように思います。アメリカのITベンチャー企業の社長みたいに、ステージで身ぶり手ぶりして歩きながらプレゼンできるようになる必要はありませんが、少なくとも聴衆が退屈にならないようなプレゼンの仕方は本書でマスターできるはずです。この本の面白いところは、ナースや薬剤師などのコメディカルスタッフに対するプレゼンにまで触れている点です。普段から実際にプレゼン相手を意識しておられる方なのだとすぐにわかります。研修医だけでなく、何となくプレゼンを学ばずに成長してきた中堅以上のドクターに読んでもらいたい一冊です。今年、2019年の日本循環器学会では、ツイッターで学会情報を流すという日本初の試みがありましたが、その中心にいらしたのが、本書の著者の1人でいらっしゃる水野先生です。動画を拝見しましたが、話し方も堂々としておられ、ああなりたいなぁとうらやましい限りです。帰宅してから、「僕の話し方ってどこかヘン?」と妻に聞いたところ、「えーっとね、そもそも声がこもってて聞きにくいし、いつも語尾が消える。耳に残らない。あと目を合わせないよね」と1ラウンド開始数秒でノックアウトされました。カンカンカンカン!『あの研修医はすごい!と思わせる 症例プレゼン-ニーズに合わせた「伝わる」プレゼンテーション』松尾 貴公・水野 篤/著出版社名羊土社定価本体3,200円+税サイズA5判刊行年2019年■関連記事JCS2019で日循公式ツイッターが全力発信 #19JCSでタグ付けを■関連動画水野 篤氏のJCS2019告知動画(ツイッター)

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リファンピシン耐性結核に短期レジメンが有望/NEJM

 リファンピシン耐性結核の治療において、高用量モキシフロキサシンを含む9~11ヵ月の短期レジメンは、2011年のWHOガイドラインに準拠した長期レジメン(20ヵ月)に対し、有効性が非劣性で安全性はほぼ同等であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAndrew J. Nunn氏らが実施したSTREAM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月13日号に掲載された。バングラデシュのコホート研究では、多剤耐性結核患者において、2011年のWHOの推奨治療よりも治療期間が短いレジメンを用いた既存薬の投与により、有望な治癒率が得られたと報告されている。アフリカとアジア4ヵ国の非劣性試験 本研究は、多剤耐性結核の治療における、バングラデシュ研究と類似の短期レジメンの、2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメンに対する非劣性を検証する無作為化第III相試験である(米国国際開発庁[USAID]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、フルオロキノロン系およびアミノグリコシド系抗菌薬に感受性で、リファンピシン耐性の肺結核患者であった。被験者は、高用量モキシフロキサシンを含む短期レジメン(9~11ヵ月)または2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメン(20ヵ月)を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは132週時の「良好な状態」とした。その定義は、132週時の培養および試験期間中の培養でMycobacterium tuberculosisが陰性で、不良なアウトカム(割り付けレジメンに含まれない2剤以上による治療の開始、許容期間を超える治療の延長、死亡、直近の2つの検体のうち1つで培養陽性、76週以降の受診がない)を認めないこととした。群間差の95%信頼区間(CI)上限値が10%以下の場合に、非劣性と判定した。 2012年7月~2015年6月の期間に、424例(エチオピア:126例、モンゴル:33例、南アフリカ共和国:165例、ベトナム:100例)が割り付けの対象となり、383例(短期レジメン群:253例、長期レジメン群:130例)が修正intention-to-treat(mITT)解析に含まれた。mITT集団の主要アウトカム:78.8% vs.79.8% ベースライン時に全体の32.6%でHIV感染が、77.2%でcavitationが認められた。治療期間中央値は、短期レジメン群が40.1週(5パーセンタイル値37.0、95パーセンタイル値46.3)、長期レジメン群は82.7週(72.1、102.3)だった。 mITT解析による主要アウトカムは、短期レジメン群が78.8%(193例)、長期レジメン群は79.8%(99例)に認められ、HIV感染で補正した群間差は1.0(95%CI:-7.5~9.5)であり、非劣性が示された(非劣性:p=0.02)。また、per-protocol集団(321例)においても、短期レジメン群の長期レジメン群に対する非劣性が確認された(補正群間差:-0.7%、95%CI:-10.5~9.1、非劣性:p=0.02)。 Grade3~5の有害事象は、短期レジメン群が48.2%、長期レジメン群は45.4%に、重篤な有害事象は、それぞれ32.3%、37.6%にみられた。8.5%、6.4%が死亡した。 短期レジメン群で、QT間隔または補正QT間隔(Fridericia法で補正)の500msecまでの延長が多く認められたため(11.0% vs.6.4%、p=0.14)、厳重なモニタリングとともに、一部の患者では投薬の調整が行われた。フルオロキノロン系またはアミノグリコシド系抗菌薬への獲得耐性が、短期レジメン群の3.3%(8例)、長期レジメン群の2.3%(3例)にみられた(p=0.62)。 著者は、「今回の結果は有望だが、多剤耐性結核の治療では、薬剤感受性結核と同等の有効性と安全性をもたらす短期の簡便なレジメンを見つけ出すことが、依然として重要である」としている。

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結核治療、スマホによる監視が有望/Lancet

 直接監視下治療(DOT)は、1990年代初頭から結核の標準治療とされるが、患者や医療サービス提供者にとっては煩雑である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlistair Story氏らは、スマートフォンを利用するビデオ監視下治療(VOT)はDOTよりも有効であり、簡便で安価な結核治療の監視アプローチであることを示した。WHOは、2017年、DOTの代替法としてVOTを条件付きで推奨したが、無作為化対照比較試験がほとんどないためエビデンスのグレードは低いという。Lancet誌オンライン版2019年2月21日号掲載の報告。イングランドの22施設が参加、治療監視の完遂率を比較 本研究は、VOTのDOTに対する優越性の検証を目的とする解析者盲検無作為化対照比較試験であり、2014年9月~2016年10月の期間にイングランドの22施設で患者登録が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、年齢16歳以上、肺または肺外の活動性結核に罹患し、各施設の規定でDOTが適格と判定された患者であった。スマートフォンの充電設備がない患者は除外された。 被験者は、VOT(毎日、スマートフォンのアプリケーションを用いて遠隔監視を行う治療)またはDOT(週に3~5回、自宅、地域[薬局など]または診療所で直接監視下に行う治療)を受ける群に無作為に割り付けられた。DOTでは、医療従事者などが治療の監視を行い、患者は毎日、自分で薬剤を投与した。VOTは、ロンドンからの集中型の医療サービスにより提供された。 VOTでは、患者が動画を撮影して送信し、研修を受けた治療監視者が、パスワードで保護されたウェブサイトを介してこれらの動画を評価した。また、患者は、動画で薬剤の有害事象を報告するよう奨励された。スマートフォンとデータプランは担当医から無料で提供された。 主要アウトカムは、試験登録から2ヵ月の期間における予定された治療監視の80%以上の完遂とした。intention-to-treat(ITT)解析および限定解析(1週間以上の監視が行われた患者のみを含む)を行った。ITT解析:70% vs.31%、限定解析:77% vs.63% 226例が登録され、VOT群に112例、DOT群には114例が割り付けられた。全体として、英国以外の国で出生した若年成人が多かった。また、ホームレス、禁固刑、薬物使用、アルコールや精神的健康の問題の経歴を持つ患者の割合が高かった。1週間以上の監視を完遂した患者は、VOT群が101例(90%)と、DOT群の56例(49%)に比べ多かった。 ITT解析では、2ヵ月間に予定された治療監視の80%以上を完遂した患者の割合は、VOT群が70%(78/112例)と、DOT群の31%(35/114例)に比べ有意に良好であった(補正後オッズ比[OR]:5.48、95%信頼区間[CI]:3.10~9.68、p<0.0001)。 限定解析でも、80%以上を完遂した患者は、VOT群が77%(78/101例)であり、DOT群の63%(35/56例)と比較して有意に優れた(補正後OR:2.52、95%CI:1.17~5.54、p=0.017)。 VOT群は、試験期間を通じて80%以上の完遂率が高い状態が継続したが、DOT群は急速に低下した。また、最長6ヵ月の全フォローアップ期間における予定監視の完遂率は、VOT群が77%(1万2,422/1万6,230件)であったのに対し、DOT群は39%(3,884/9,882件)と、有意な差が認められた(p<0.0001)。限定解析でも、VOT群が有意に良好だった(83% vs.61%、p<0.0001)。 有害事象は、VOT群の32例から368件、DOT群の15例から184件が報告された。両群とも胃痛・悪心・嘔吐の頻度が高く、VOT群で16例(14%)、DOT群では9例(8%)に認められた。 1回の投与に要する時間は、医療サービス提供者および患者ともVOT群のほうが短く、患者1例当たりの6ヵ月間の費用はVOT群のほうが低額であった。 著者は、「VOTは、さまざまな状況にある多くの患者にとってDOTよりも好ましく、薬剤投与の監視において受け入れやすく有効であり、より安価な選択肢となる可能性がある」としている。

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