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コロナワクチン、高齢ほど感染・入院リスク低下/Lancet

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種プログラムの導入の初期段階に、高齢者におけるCOVID-19患者数やCOVID-19による救急診療部受診数、入院者数が減少し、ワクチン接種の寄与は不明なものの死者数も減少したことが、米国疾病予防管理センターのLucy A. McNamara氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月3日号で報告された。米国50歳以上を対象に生態学的研究 米国では、2020年12月中旬に、緊急使用許可(EUA)下に最初のCOVID-19ワクチンの使用が可能となった。2021年6月8日の時点で、全人口の52%が少なくとも1回のワクチン接種を受け、42%は2回の接種を完了しており、このうち65歳以上の接種率はそれぞれ86%および76%に達している。 本研究は、2020年11月1日~2021年4月10日の期間に、米国の初期段階のCOVID-19ワクチン接種プログラムが、全米の50歳以上の集団におけるCOVID-19患者、救急診療部受診、入院、死亡に及ぼした影響の評価を目的とする生態学的研究である(米国疾病予防管理センターの通常の運営資金で行われ、外部からの研究助成は受けていない)。 特定の年齢集団のワクチン接種率が初めて基準年齢集団(50~64歳または50~59歳)の接種率を1%以上上回った週を基点として、ワクチン接種前と接種後の高齢集団と若年の基準集団における各評価項目の発生率の相対的な変化を算出した。引き続き、ワクチン接種前と接種後の期間を比較して、これらの相対的な変化の比が両期間で異なるかを評価した。接種率向上の重要性を強調する結果 ワクチン接種後と接種前のCOVID-19患者の発生率比の変化を比較した相対的な変化の比は、50~64歳と比較して、65~74歳で53%(95%信頼区間[CI]:50~55)、75歳以上では62%(59~64)それぞれ減少した。 同様にCOVID-19による救急診療部受診者数は、50~64歳と比較して、65~74歳で61%(95%CI:52~68)、75歳以上では77%(71~78)減少した。また、COVID-19による入院者数は、50~59歳と比較して、60~69歳で39%(29~48)、70~79歳で60%(54~66)、80歳以上では68%(62~73)低下した。 COVID-19による死亡も、50~64歳と比較して、65~74歳で41%(95%CI:−14~69)、75歳以上では30%(-47~66)減少したが、ワクチン接種の普及が死亡にどの程度の影響を及ぼしたかは不明であった。 著者は、「本研究の結果は、既存のワクチンのすでに確立されている有効性のデータと一致しており、対象者全員の接種率を高めることの重要性を強調するものである」としている。

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避けたいワクチン接種時のケアレスミス/厚労省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国で順調に行われ、満12歳以上への接種も始まり、3回目の接種についても細部が決まりつつある。また、インフルエンザの流行を控え、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種というケースも散見されるようになってきた。こうした環境の中ではワクチン接種時の事故は避けたいものである。 厚生労働省は、令和3年9月30日までに報告された予防接種の間違いの概要をまとめた「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その3)」を10月29日に全国の自治体に発出し、注意を喚起した。 同省では、インフルエンザワクチンが多く接種される時期でもあり、これらの留意点を参考に、あらためて予防接種の手順を再確認することにより、間違いの発生防止とCOVID-19ワクチン接種の適切な実施に向けた取り組みを進めてほしいと記している。一番多い接種上の間違いは「接種間隔」1)間違いとして報告のあった回数(10万回当たり数)延べ接種回数163,738,220回のうち・間違い報告件数:1,805回(1.102)・重大な報告件数:739回(0.451)・上記以外の報告件数:1,066回(0.651)2)間違いの態様別の上位5つ(10万回当たり数)(1)接種間隔の間違い:526件(0.321)(2)接種器具の扱いが不適切:350件(0.214)(3)不必要な接種:246件(0.15)(4)血液感染を起こし得る間違い:170件(0.104)(5)接種量の間違い:99件(0.06)トレイを分ける、声を出すなどでミスを防ぐ COVID-19ワクチン接種の具体的な3つの事例と対策、これら問題の背景を下記に紹介する。〔事例1〕1日の同じ時間帯の中で、COVID-19ワクチンの接種と他のワクチンの接種の両方が行われていた。〔対策〕可能な限り、COVID-19ワクチンと他のワクチンを接種する曜日や時間帯を分ける。〔事例2〕次のようなさまざまな理由により、同一の診察室内に、COVID-19ワクチンと他のワクチンが持ち込まれ、接種者の手が届く範囲に複数種類のワクチンが置かれた。・同一の診察室で、新型コロナワクチンと他のワクチンの両方を接種している。・本来は、COVID-19と他のワクチンと接種用の診察室を分けていたが、院内の都合でCOVID-19ワクチン仕様になり他のワクチンが持ち込まれた。・本来は、ワクチンにより接種用の診察室を分けていたが、たまたま誘導員が間違えて誤った診察室に案内してしまった。〔対策〕1トレイに1種類(可能な限り、1トレイに1人分)のワクチンを準備することとし、診察室内において、接種者の手が届く範囲に異なる種類のワクチンを置かない。〔事例3〕接種者は、予診票の確認を行い他のワクチンの接種を受ける者であることを認識しながらも、無意識にCOVID-19ワクチンを手にとり接種してしまった。〔対策〕接種直前は一呼吸おき、接種者と被接種者とで接種するワクチン名を声に出して確認する。【間違いの背景】・同じ時間帯に新型コロナワクチンと他のワクチンの予約を受け付けており、物理的に患者が混在していた。・接種者の手が届く範囲に、複数の異なる種類のワクチンが置かれていた。・新型コロナワクチンの接種数が多く、接種に慣れてしまっていた(無意識、惰性で打ってしまった)。・接種者が、接種直前に接種するワクチン名を確認していなかった。※インフルエンザワクチンなどのバイアル製剤だけでなく、シリンジ製剤でも接種間違いは起こっている。

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ファイザー製ワクチン有効性、3回接種vs.2回接種/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の3回接種は、2回接種(5ヵ月以上前に接種完了)と比較して、COVID-19の重症化予防に有効であることが認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。多くの国でSARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株によるCOVID-19の再流行が発生しており、これらの国では、経時的に免疫が減弱しデルタ変異株に対する有効性が低下する可能性があるため、ワクチン3回目接種を検討している。Lancet誌オンライン版2021年10月29日号掲載の報告。イスラエルのデータを基に、COVID-19関連入院、重症化、関連死のリスクを解析 研究グループは、イスラエル国民の半数以上が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、2020年7月30日~2021年9月23日にBNT162b2ワクチンの3回目接種を受けた人(3回接種群)、ならびに人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせた3回目ワクチン未接種者(対照群)について解析した。 適格基準は、5ヵ月以上前に2回接種を完了しており、SARS-CoV-2感染歴がなく、直近3日以内に医療施設を受診していないこととし、医療従事者、長期療養施設の居住者および自宅療養者は除外された。 主要評価項目は、COVID-19関連の入院、重症化およびCOVID-19関連死であった。Kaplan-Meier法を用いて各アウトカムのリスクを推定し、リスク比とリスク差を算出、3回接種の有効性は1-リスク比(相対リスク減少率)として推定した。3回接種群、入院93%、重症化92%、COVID-19関連死81%減少 調査期間中の3回接種者は115万8,269例であった。マッチングの結果、解析には3回接種群および対照群それぞれ72万8,321例が含まれた。年齢中央値は52歳(IQR:37~68)、51%が女性で、3回目または2回目接種後の観察期間(接種後7日以降)は、両群とも中央値13日(IQR:6~21)であった。 3回接種群の有効性(3回目接種後7日以降に評価)は、対照群(5ヵ月以上前に2回目接種を受けたのみ)と比較し、入院を93%(95%信頼区間[CI]:88~97、イベント件数:3回接種群29 vs.対照群231)、重症化を92%(95%CI:82~97、イベント件数:17 vs.157)、COVID-19関連死を81%(95%CI:59~97、イベント件数:7 vs.44)減少すると推定された。

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ファイザー製ワクチン、18歳以上のブースター接種を厚労省が承認

 ファイザーは11月11日、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン「コミナティ」について、国内の18歳以上に対する追加接種(追加免疫)の承認を取得したと発表した。米国本社が先月発表したプレスリリースによると、3回目のブースター接種の効果を検証した第III相臨床試験の結果、95.6%の有効性を示したという。 コロナワクチンのブースター接種を巡っては、米国においてはコミナティが9月より、65歳以上および重症化リスクが高い18〜64歳、SARS-CoV-2への頻繁な曝露を伴う18〜64歳へのブースター接種が実施されており、11月9日には接種対象を全成人に拡大するようFDAに申請した。このほか、モデルナ社および米・ジョンソンエンドジョンソン社のワクチンについても10月に米国で追加接種が認められたところだ。<添付文書情報> ※下線部分が今回の主な追加・変更箇所6. 用法及び用量 本剤を日局生理食塩液1.8mLにて希釈する。 初回免疫の場合、1回0.3mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。 追加免疫の場合、1回0.3mLを筋肉内に接種する。7.2 追加免疫7.2.1 接種対象者 18歳以上の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.2.2 接種時期 通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。7.2.3 初回免疫として他のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した臨床試験は実施していない。

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中和抗体薬の発症抑制での投与時の注意など、コロナ薬物治療の考え方10版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、11月4日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第10版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回9版以降の新しい知見などの追加のほか、中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブに関しての追記が行われた。確認しておきたいカシリビマブ/イムデビマブの適用要件 主な改訂点は下記の通りである。抗ウイルス薬 レムデシビル 入手方法につき2021年10月18日より一般流通が開始されたこと。中和抗体薬 カシリビマブ/イムデビマブ【海外での臨床報告の追加】96時間以内に感染者と家庭内接触のあった被験者1,505例を対象としたランダム化比較試験で、カシリビマブ/イムデビマブの単回皮下投与により、発症に至った被験者の割合は、本剤群11/753例、プラセボ群59/752例であり、プラセボと比較し、発症のリスクが81.4%有意に減少。【発症抑制での投与時の注意点を追加】1)SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては下記のすべてに該当する者とされている。(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者 このうち、(1)の「濃厚接触者」(例:同居家族、共同生活者に加え、高齢者施設や医療機関勤務者など)および(3)の「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者」(例:ハイリスク患者のうち、免疫抑制状態[悪性腫瘍治療中、骨髄または臓器移植後、原発性免疫不全症候群など]にある患者など)は、中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。 なお、SARS-CoV-2の既感染やワクチン接種等により自己の抗体を有すると考えられる患者では中和抗体薬の必要性、有効性が低くなる可能性があると考えられるが、現時点ではその臨床的意義は必ずしも明らかではなく、国内で使用可能な抗体検査薬は承認されていないため、今後の知見が待たれる。 本稿の詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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新型コロナのブレークスルー感染リスク、既感染者 vs.非感染者/JAMA

 カタールにおいて、2020年12月21日~2021年9月19日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)接種者におけるブレークスルー感染リスクは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者が非感染者と比べて統計的に有意に低かった。同国・Weill Cornell Medicine-QatarのLaith J.Abu-Raddad氏らが、接種者約153万例について行った適合コホート試験の結果を、JAMA誌オンライン版2021年11月1日号で発表した。「BNT162b2」または「mRNA-1273」接種者を今年9月まで追跡 研究グループは、カタールで2020年12月21日~2021年9月19日にCOVID-19ワクチン「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種を受けた153万1,736例を対象に試験を行い、SARS-CoV-2感染歴の有無によるブレークスルー感染リスクを比較した。 被験者について、ワクチン2回目接種後14日以降、2021年9月19日まで追跡した。 SARS-CoV-2感染の定義は、鼻腔拭い液によるPCR検査で陽性であることとした。累積発生率は、Kaplan-Meier推定法で算出し比較評価した。既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染リスクは0.18~0.35倍 BNT162b2接種群のうち、既感染者(PCR検査で確認されたことがある)は9万9,226例、適合非感染者は29万432例だった(年齢中央値37歳、男性68%)。mRNA-1273接種群は、既感染者5万8,096例、適合非感染者16万9,514例だった(年齢中央値36歳、男性73%)。 BNT162b2接種群で、ワクチン2回目接種後14日以降の感染例は、既感染者では159例(再感染)、非感染者では2,509例だった。mRNA-1273接種群では、それぞれ43例、368例だった。 BNT162b2接種群の感染累積発生率(追跡期間120日)は、既感染者で0.15%(95%信頼区間[CI]:0.12~0.18)、非感染者は0.83%(0.79~0.87)と推定された(既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染に関する補正後ハザード比[HR]:0.18[95%CI:0.15~0.21]、p<0.001)。 同様にmRNA-1273接種群では、既感染者で0.11%(95%CI:0.08~0.15)、非感染者は0.35%(0.32~0.40)だった(同HR:0.35[0.25~0.48]、p<0.001)。 また、既感染者のうち、初回ワクチン接種が感染後6ヵ月以上経過後だった人のほうが6ヵ月未満だった人よりも、ブレークスルー感染リスクが低かった(BNT162b2接種群[補正後HR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02]、mRNA-1273接種群[0.40、0.18~0.91、p=0.03])。 なお著者は、本試験は観察試験デザインのため、2つのワクチン間の感染リスクの直接比較はできなかったとしている。

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子供へのマスクはどうするの?疑問に回答/成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会生活を混乱させただけでなく、子供たちの日常も奪った。12歳未満の子供にはCOVID-19ワクチンの接種も、現在わが国ではできないことから、今後の感染の増加について子供の保護者や学校関係者などは危惧をしている。また、この時期に妊娠した妊婦は情報が少ない中での生活に不安を抱えている。 こうした不安や心配の声に応えるべく国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)は、11月5日に同センターのホームページに「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」を公開し、COVID-19やそれ以外の感染症対策や症状、こころの問題について、情報発信を開始した。感染症、精神、耳鼻咽喉、産科のエキスパートが回答するQ&A このQ&Aでは、大きく4つの分野について、同センターの専門医が解説し、回答を行っている。 主な質問項目は次のとおり。【感染対策について】(感染症科)・コロナ禍になって2年。これまでのデータから分かるコロナウイルスについて教えてください(症状や感染対策、変異株、コロナ初期と変わったことなど)・マスクができない子どもへの感染症対策はどうすればいいですか?・医療的ケア児の感染対策で、特に気を付けた方がいいことはありますか?・子どものワクチン接種について教えてください(安全性や副反応、リスクについて、インフルエンザワクチンと一緒に打っていい?)・デルタ株で子どもの感染者も増えていましたが、子どもでも重症化するのでしょうか?【こころについて ~子どもとご家族~】(こころの診療部)・友達と話せなかったり、自由に外で遊べなかったり、コロナ禍のストレスは子どもの心に将来的にどんな影響を及ぼしますか?・フィジカルディスタンスやマスクを常につける生活で、子どもとのコミュニケーションがうまく取れないこともあります。どうしたらいいですか?・子どもが新型コロナウイルスをとても怖がっています。どうしたらいいですか?・子どもがコロナ太りを気にしてあまりご飯を食べてくれません。どうしたらいいですか?・保護者の不安やストレス解消法について教えてください【身体について】(眼科、耳鼻咽喉科)・オンライン授業になったり、また、ゲームをするためにスマホやタブレットばかり見ています。子どもの視力などに影響はありませんか?・子どもが部屋でゲームをするときなど、イヤホンを長時間使っています。聴力への影響はありますか?【妊婦さんについて】(妊娠と薬情報センター)・妊婦、また授乳中のワクチン接種について教えてください。・今、妊娠しても大丈夫でしょうか? なお、Q&Aの情報は2021年11月現在の情報で公開している。

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入院COVID-19の生存日数は?デキサメタゾン6mg vs.12mg/JAMA

 重度の低酸素血症を呈する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人入院患者において、デキサメタゾンの12mg投与は6mgと比較して、28日後の生命維持装置を使用しない生存日数を改善せず、28日と90日後の死亡率にも差はないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie W. Munch氏らCOVID STEROID 2 Trial Groupが実施した「COVID STEROID 2試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2021年10月21日号で報告された。欧州とインドの医師主導無作為化試験 本研究は、重度の低酸素血症を有するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mgと6mgの有効性の比較を目的とする医師主導の二重盲検無作為化試験であり、2020年8月27日~2021年5月20日の期間に、4ヵ国(デンマーク、インド、スウェーデン、スイス)の26病院で行われた(Novo Nordisk財団などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が確定されて入院し、(1)酸素補充療法(流量≧10L/分)、(2)低酸素血症に対する非侵襲的換気または持続陽圧呼吸療法、(3)侵襲的機械換気のいずれかを受けている患者であった。 被験者は、最長10日間、デキサメタゾン12mgを静脈内投与する群または同6mgを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、28日時点の生命維持装置(侵襲的機械換気、循環補助、腎代替療法)なしでの生存日数とし、層別変数で補正された。副次アウトカムは事前に8つが設定され、今回の解析では、そのうち5つ(90日時点の生命維持装置なしの生存日数、90日時点の生存退院日数、28日時点と90日時点の死亡、28日時点の1つ以上の重篤な有害反応)が評価された。重篤な有害反応にも差はない 982例(年齢中央値65歳[IQR:55~73]、女性31%)が解析に含まれ、デキサメタゾン12mg群に497例、同6mg群に485例が割り付けられた。このうち971例(12mg群491例、6mg群480例)で主要アウトカムのデータが得られた。介入期間中央値は両群とも7日で、12mg群の9例(1.8%)、6mg群の11例(2.3%)が医師の指示に反して28日以内に退院した。 28日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が22.0日(IQR:6.0~28.0)、6mg群は20.5日(4.0~28.0)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:1.3日、95%信頼区間[CI]:0~2.6、p=0.07)。 副次アウトカムである90日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が84.0日(IQR:9.3~90.0)、6mg群は80.0日(6.0~90.0)であった(補正後平均群間差:4.4日、99%CI:-1.6~10.4)。また、90日時点の生存退院日数は、それぞれ61.5日(0~78.0)および48.0日(0~76.0)だった(4.1日、-1.3~9.5)。 さらに、28日時点の死亡率は、12mg群が27.1%、6mg群は32.3%(補正後相対リスク[RR]:0.86、99%CI:0.68~1.08)、90日時点の死亡率は、それぞれ32.0%および37.7%(0.87、0.70~1.07)であり、いずれも有意差はみられなかった。 28日までに1つ以上の重篤な有害反応(敗血症性ショック、侵襲性真菌症、臨床的に重要な消化管出血、デキサメタゾンに対するアナフィラキシー反応)が発現した患者の割合は、12mg群が11.3%、6mg群は13.4%であり、両群間に差はなかった(補正後RR:0.83、99%CI:0.54~1.29)。体外式膜型人工肺(ECMO)は、12mg群が3例(0.6%)、6mg群は14例(2.9%)で使用された。 なお著者は結果について、「本試験は、有意差を同定するには、検出力が十分でなかった可能性がある」としている。

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ファイザーの経口コロナ治療薬、入院・死亡リスク89%減

 米国・ファイザーは11月5日付けのプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規経口治療薬であるPF-07321332・リトナビル配合剤(商品名:Paxlovid)について、入院していない成人のCOVID-19高リスク患者を対象にした第II/III相試験(EPIC-HR試験)の中間解析で、発症3日以内に治療を開始した場合、プラセボと比較して入院または死亡のリスクが89%減少したことを発表した。28日目までの全試験集団において、プラセボ投与群の死亡が10例に対して、本剤投与群で死亡例はなかったという。EPIC-HR試験の中間解析結果を受け、同社はこの研究への追加登録を中止し、今後米国での緊急使用許可を目指してFDAへ速やかにデータを提出する予定。 EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。今回のEPIC-HR試験の中間解析では、2021年9月29日までに登録された1,219例のデータを評価した。軽度~中等度の症状発現後5日以内でCOVID-19重症化リスクのある患者を、本剤またはプラセボ投与群に1:1で無作為に割り付け、12時間ごとに5日間経口投与した。EPIC-HR試験は発症後3日以内の内服で入院・死亡リスクを大幅減 EPIC-HR試験の中間解析の結果、発症から3日以内に治療を受けた患者において、プラセボと比較して、本剤が投与された群ではCOVID-19関連の入院または何らかの原因による死亡のリスクが89%減少したことが示された(主要評価項目)。無作為化後28日目までで、本剤群の0.8%(3/389例)が入院し、死亡例はなかったのに対し、プラセボ群の7.0%(27/385例)が入院し、その後7例が死亡した(p<0.0001)。 EPIC-HR試験では、発症5日以内に投与された集団においても同様の傾向が見られ、本剤群では0.01%(6/607例)が入院・死亡例なしに対し、プラセボ群では6.7%(41/612例)が入院し、その後10例が死亡した(p<0.0001)。 1,881例を対象とした安全性コホートにおいて、治療に起因する有害事象は本剤群19%、プラセボ群21%と同等であり、そのほとんどは軽症だった。評価可能症例の中で、本剤はプラセボと比較して重篤な有害事象が少なく(1.7% vs.6.6%)、有害事象による試験中断も少なかった(2.1% vs.4.1%)。 なお、今回のEPIC-HR試験以外に第II/III相EPIC-SR試験(標準リスクを有する患者における評価)およびEPIC-PEP試験(曝露後の予防における評価)が進行中という。

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第85回 経口レムデシビルがフェレットのCOVID-19に有効~感染伝播も阻止

近い将来には、手軽に投与しうる経口薬が発症後間もない外来の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療のおそらく主流となっていくことを予感させるニュースが先週末に相次ぎました。木曜日には米国・メルク社の経口COVID-19薬molnupiravir(モルヌピラビル)の世界初の承認を英国医薬品庁(MHRA)や同社が発表し1,2)、その翌日金曜日にはそれに負けじとファイザー社が同じく経口のCOVID-19薬Paxlovid(PF-07321332+ritonavir)が第II/III相試験でCOVID-19患者の入院または死亡リスクを89%低下させたことを報告しました3)。ギリアド社が世に送り出したCOVID-19治療薬の先駆けレムデシビル(日本での販売名:ベクルリー)はより重症の患者向けで、点滴静注を要し、メルク社やファイザー社の経口薬とは違って外来患者には不向きです4)。そこでギリアド社は米国・ジョージア州立大学と協力し、メルク社やファイザー社の経口薬と同様に外来の初期段階のCOVID-19患者に使えるようにレムデシビルに一工夫施した化合物GS-621763を開発しています。GS-621763は経口投与でより吸収されやすく、レムデシビル静注後と同一の活性代謝物(GS-443902)を体内で生み出します。その効果のほどをイタチ科の哺乳類・フェレットで検討した研究成果が先週金曜日にネイチャー姉妹誌Nature Communicationsに掲載されました5)。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はフェレットに感染可能で、SARS-CoV-2感染フェレットはヒトのSARS-CoV-2感染特徴の多くを呈します。フェレットにGS-621763を1日2回経口投与したところSARS-CoV-2量が検出不可能な水準近くまで減りました。GS-621763はSARS-CoV-2の複製を効率よく阻止し、より広まりやすい(high transmissibility)ことで知られるSARS-CoV-2変異株VOC γ感染フェレットにGS-621763を投与したところ感染フェレットと同居するフェレットへの伝播を完全に防ぐことができました。GS-621763のような経口の抗ウイルス薬は世間で幅を利かす感染しやすいSARS-CoV-2変異株への強力な対抗手段となりうると著者は言っています4)。一番乗りの見返りは大きいどこの世界でも同じだと思いますが、一番乗りというのはやはり大事なことのようで、COVID-19薬市場を切り開いたレムデシビルは依然として世界でよく使われています。ギリアド社の直近の業績発表によると、今年9月末までの3ヵ月間(第3四半期)の同剤の売り上げは74億ドルであり、需要の増加を受けて昨年同期より13%多い額となりました6)。一番乗りが得をするのはワクチンでも同様なようです。米国FDA認可に最初に漕ぎ着けたファイザー社のCOVID-19ワクチンの第3四半期売り上げは100億ドルの大台を軽々と超える130億ドルであり7)、僅か1週間ほど遅れて二番目にFDA認可に達したモデルナ社のワクチンの同期売り上げ48億ドル8)を3倍近く引き離しています。今後もその差は開いていくようです。ファイザー社が今年1年間のCOVID-19ワクチンの売り上げを360億ドルへと上方修正したのとは対照的にモデルナ社は今年1年間のCOVID-19ワクチン出荷量予想を8~10億回投与分から7~8億回投与分に下方修正しています。モデルナ社のワクチンは心筋炎リスクの懸念にも大いに巻き込まれており、12~17歳小児への同社COVID-19ワクチンのFDA認可審査がその安全性懸念を背景にして長引いていることが先月10月末に発表されました9)。ファイザー社のCOVID-19ワクチンの同年齢層の小児への使用はすでに取り急ぎ認可または承認されています10)。COVID-19ワクチンの開発は失敗したもののCOVID-19経口薬の一番手となったメルク社とそれに肉薄するファイザー社の域にギリアド社の経口レムデシビルが辿り着くのにあとどれだけの時間を要するのかはわかりませんが、実現したとすれば、よく知った薬と根本は同じという馴染みの力を頼りに活躍の場を得ることができそうです。参考1)First oral antiviral for COVID-19, Lagevrio (molnupiravir), approved by MHRA / MHRA 2)Merck and Ridgeback’s Molnupiravir, an Oral COVID-19 Antiviral Medicine, Receives First Authorization in the World / BUSINESS WIRE 3)Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk of Hospitalization or Death by 89% in Interim Analysis of Phase 2/3 EPIC-HR Study / BUSINESS WIRE4)Gilead Sciences Inc. partners with Center for Translational Antiviral Research to test oral Remdesivir variant / Eurekalert5)Cox RM,et al Nat Commun. 2021 Nov 5;12:6415.6)Gilead Sciences Announces Third Quarter 2021 Financial Results / BUSINESS WIRE7)PFIZER REPORTS THIRD-QUARTER 2021 RESULTS / BUSINESS WIRE8)Moderna Reports Third Quarter Fiscal Year 2021 Financial Results and Provides Business Updates / BUSINESS WIRE9)Moderna Provides Update on Timing of U.S. Emergency Use Authorization of its COVID-19 Vaccine for Adolescents / BUSINESS WIRE10)Comirnaty and Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine / FDA

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変異株流行期はワクチン接種率高くても制限解除は難しい?/Lancet

 集会の中止・禁止や教育施設の閉鎖、出入国制限、個人の移動制限、都市封鎖、個人用保護具の供給量増などの非医薬品介入(NPI)時期とワクチン接種状況とのバランスを慎重に調整すれば、NPIの緩和が原因となる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者急増のリスクは大幅に軽減される可能性があるものの、デルタ変異株については、ワクチン接種率が高くても、イングランドでの入院や死亡の再急増(第3波)を招くことのないNPIの全面解除はできなかった可能性があることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRaphael Sonabend氏らが実施した数理モデル解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年10月27日号に掲載された。イングランドの後ろ向き疫学的数理モデル研究 研究グループは、英国のコロナ対策ロードマップ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株の影響、および将来に起こりうる感染流行の軌跡を評価する目的で、疫学的数理モデルを用いた後ろ向き研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成を受けた)。 本研究では、英国政府によるイングランドにおける都市封鎖の制限緩和の4つの段階(学校再開、屋外接客業や必須でない小売業の再開、屋内接客業再開、残る制限の全面解除)について検討が行われた。デルタ変異株の出現を明示的に捕捉するために、SARS-CoV-2のこれまでの感染モデルが拡張され、ワクチン接種状況と複数の変異株がモデルに組み込まれた。 英国の国民保健サービス(NHS)から得られた2021年3月8日までの入院、病床占有、血清学的検査、PCR検査などのデータが、ベイズ流のエビデンス統合の枠組みを用いて調整され、NPI緩和のためのさまざまなスケジュールに関して、将来に起こりうる感染流行の軌跡がモデル化された。 1日の感染者と入院者の数、および1日死者数と累積死者数が推算された。ワクチンの有効率、自然免疫の低下、過去の感染による交差防御能について、3つのシナリオ(楽観的、中間的、悲観的)の評価を行った。NPI全面解除の1ヵ月遅延で1日入院患者数が激減 最近のイングランドでのCOVID-19の感染状況と英国政府の対応の概要は次のとおり。 英国は全国的なワクチン接種キャンペーンを最初に開始した国だが、それにもかかわらずアルファ変異株(B.1.1.7)の出現で2020~21年の冬期に深刻な感染の第2波が発生した。そのため、イングランドでは2021年1月5日から3回目の都市封鎖が行われた。 英国政府は、この都市封鎖施策から脱却するためのコロナ対策ロードマップを発表し、2021年3月8日~7月19日に、ワクチン接種率の向上に伴い、NPIが段階的に解除された。7月19日の時点で、英国の成人のワクチン接種率は、少なくとも1回が87.5%、2回が68.2%だった。 この間の2021年4月中旬にデルタ変異株(B.1.617.2)が発生し、5月6日に「懸念される変異株」に指定された。イングランドでは、5月中旬から1日の感染者と入院者の数が増加し始め、6月中旬~7月中旬に指数関数的に急増し、7月15日にピークに達した後、予想に反して2週間で半減したが、8月には頭打ちとなり、再び緩徐な増加に転じている。 解析の結果、コロナ対策ロードマップの施策では、2021年3月8日に開始されたNPI解除による感染増加が、ワクチン接種による集団免疫の拡大によって相殺されていた。 一方、アルファ変異株と比較した伝播力の優位性(transmission advantage)が76%(95%信用区間[CrI]:69~83)と感染力が強いデルタ変異株の出現により、当初の計画どおり2021年6月21日にNPIの全面解除を行った場合、中間的シナリオではピーク時の1日入院者数が3,900人(95%CrI:1,500~5,700)に達する可能性が示された。そこで、NPIの全面解除を2021年7月19日まで遅らせたところ、ピーク時の1日入院者数は1,400人(700~1,700)にまで減少した。 感染流行の軌跡には、かなりの不確実性が認められ、とくにデルタ変異株の感染性やワクチン有効率の推定値などの不確実性が高かった。 著者は、「各国がCOVID-19大流行への対策を緩和する際は、懸念される変異株、その感染力、ワクチンの接種率と有効率を注意深く監視する必要がある」としている。

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ロナプリーブがコロナ発症抑制に適応追加、投与対象は?

 厚生労働省は11月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として今年7月、国内における製造販売を承認した「ロナプリーブ」について、患者との濃厚接触者および無症状のSARS-CoV-2陽性者の発症抑制を目的とした使用を新たに認めた(適応追加の特例承認)。併せて、すでに承認されているCOVID-19治療においても、静脈内投与が困難な場合に皮下投与が可能となった。ただ、予防投与の対象は、ワクチン未接種またはワクチンによる効果が不十分な濃厚接触者または無症状の陽性者(いずれも原則として重症化リスク因子を有する人)と限定的になっている。また、発症予防の基本はワクチン接種であり、添付文書には同薬剤が「ワクチンに置き換わるものではない」と明記されている。ロナプリーブ適応追加、国内外臨床試験に基づく 申請者の中外製薬によると、今回のロナプリーブ適応追加は、COVID-19患者との濃厚接触者(非感染者および無症状のSARS-CoV-2陽性者)を対象とした海外第III相臨床試験(REGN-COV 2069)の成績、投与量・投与方法の検討を目的とした海外第II相臨床試験(REGN-COV 20145)、および日本人における安全性と忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第I相臨床試験(JV43180)の成績に基づき承認された。 国内におけるロナプリーブの供給量は、日本政府と中外製薬との合意に基づき、2021年分が確保されている。<ロナプリーブ添付文書情報>※下線部分が今回の追加・変更箇所効能又は効果:SARS-CoV-2 による感染症およびその発症抑制用法及び用量:通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)及びイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注または単回皮下注射する。

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第77回 コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国

<先週の動き>1.コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国2.COVID-19後遺症でも労災認定/兵庫県3.2018年度公立病院の廃止は前年度より4件減少/総務省4.2021年の出生数は昨年に続き85万人以下が確実/厚労省5.コロナ対策予算、35%の22兆円が未執行/会計検査院6.早期がんの診断件数が1年で8,000件減少/対がん協会1.コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は4日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬「molnupiravir」を世界で初めて承認した。本剤は米・メルクによって開発された。軽症~中等症COVID-19の重症化リスク因子を有する成人患者を対象にした第III相MOVe-OUT試験の中間解析で、molnupiravirは発症後5日以内に投与した場合、入院または死亡リスクを約50%低減し、早期承認を目指して欧州で申請していた。これを受け、磯崎 仁彦官房副長官は5日の記者会見で、有効性や安全性を確認ののち、速やかに承認を進めるとコメントしている。また、米・ファイザー社が開発中の「パクスロビド(PAXLOVID)」は、発症後3日以内の患者に投与することで、投与していない群と比較して入院・死亡リスクが89%減ったことを発表しており、今後わが国での承認も目指す。(参考)米メルクのコロナ経口薬「モルヌピラビル」、英が飲み薬では世界初の承認(読売新聞)米ファイザーのコロナ飲み薬、入院・死亡リスク9割減(日経新聞)コロナ飲み薬「年内実用化へ全力」 官房副長官(日経新聞)2.COVID-19後遺症でも労災認定/兵庫県COVID-19の後遺症で労働災害が認められたことを、ひょうご労働安全衛生センターが明らかにした。今回、兵庫県内の特別養護老人ホームで働く理学療法士の男性が新型コロナウイルスに感染し、職場に復帰した後も強い倦怠感などが続いたため、約4ヵ月後に医師により「新型コロナウイルス感染後遺症」と診断され、労災と認められた。COVID-19に関する労災請求件数は、2021年9月30日時点で、全国1万8,637件、そのうち労災と認められたのは1万4,567件。78.1%と高い認定率だが、国内のCOVID-19患者総数は172万人以上に上っており、労災請求が進んでいない可能性もある。国は後遺症も労災の対象になるとして、労働基準監督署に相談するよう呼び掛けている。(参考)新型コロナ 後遺症でも労災認定 国が労基署への相談呼びかけ(NHK)新型コロナウイルス感染後遺症で労災申請 監督署が労災と認定(ひょうご労働安全衛生センター)3.2018年度公立病院の廃止は前年度より4件減少/総務省総務省は公営企業の経営改革について抜本的な改革を進めているが、2018年度に廃止となった公立病院が5件となり、前年度より4件減ったことを明らかにした。うち公立病院から公営企業型地方独立行政法人と指定管理者制度への移行がそれぞれ1件で、PFI(民間資金等活用事業)などの民間委託は0件だった。公立病院数および病床数は、ピーク時2012年の1,007病院(病床数:23万9,921床)から2020年度には853病院(同:20万3,882床)と大きく減少している。今年10月に立ち上げられた「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会」では、これまで進めてきた再編・ネットワーク化・地域医療構想による改革について、公立病院が新型コロナ感染症対応において果たしている役割を考慮に入れつつ、引き続き第8次医療計画の策定スケジュールを踏まえて、公立病院改革の次期ガイドラインの策定について議論していく。(参考)公立病院の事業廃止4件、民営化・民間譲渡は1件 20年度(CBnewsマネジメント)公営企業における更なる経営改革の取組状況(総務省)持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会(総務省)4.2021年の出生数は昨年に続き85万人以下が確実/厚労省厚生労働省は、2021年8月分の人口動態統計速報で今年の1~8月の出生数の合計は55万5,080人と、前年の同期間と比べ、2万8,138人(4.8%)下回っていることを明らかにした。昨年のコロナウイルス感染拡大により、今年の1月の出生数は前年同月比で14.6%の減少となった。その後出生数は回復傾向だが、このまま推移すると、前年の出生数84万832人に続いて85万人を下回ることが確実となる。一方、死亡者数は前年の1~8月に比べて5万1,572人多く、前年の137万2,648人よりも3.7%ほど上回り、自然減が加速している。(参考)2021年の出生数・死亡数の見通しー新型コロナの影響は限定的だが、一部に見過ごせない動きも(日本総研)2021年の出生数、85万人割り込む恐れ コロナ禍での受診控えが“子づくり”にも影響(CBnewsマネジメント)人口動態統計速報(令和3年8月分)(厚労省)5.コロナ対策予算、35%の22兆円が未執行/会計検査院会計検査院は5日に提出した決算検査報告により、新型コロナウイルス対策で政府が計上した総額65兆4,165億円のうち3割超の22.8兆円余りが未執行となり、このうち21兆7,796億円が翌年度に繰り越されたことを明らかにした。コロナウイルスに関する個別事業については妥当性が検証され、接触確認アプリ「COCOA」の不具合やアベノマスク約8,200万枚が未配布のため、2020年8月~21年3月で保管費用の約6億円などが指摘され、会計検査院は適切な予算執行と国民への十分な説明を国に求めている。(参考)コロナ対策費22.8兆円使われず…検査院、国民への説明求める報告書(読売新聞)巨額投じた国の新型コロナ対策 浮かび上がるずさんな予算執行(朝日新聞)令和2年度決算検査報告の概要(会計検査院)6.早期がんの診断件数が1年で8,000件減少/対がん協会日本対がん協会は4日に、日本癌学会、日本鴈治療学会、日本臨床腫瘍学会と共同で実施した調査結果を発表した。調査はアンケートにより実施され、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象に、今年の7~8月に5種類のがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)の診断数、臨床ステージ、手術数、内視鏡治療件数などについて聞き取った。その結果、去年の胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの診断件数は8万660件と、一昨年より8,000件余り(9.2%)減少しており、コロナによる受診控えや検診受診者数の減少によって、がんの診断件数が減った可能性が明らかとなった。今後、進行がんの発見が増える恐れもあり、早期受診やがん検診受診率の向上を求めている。(参考)2020年のがん診断数9%減 コロナ禍で 日本対がん協会調査(毎日新聞)がん診断が1割減…コロナ禍で受診控え影響、進行がん増加懸念(読売新聞)“新型コロナで受診控え” がん診断件数 約9%減少(NHK)2020年のがん診断件数 早期が減少 進行期の増加を懸念 日本対がん協会とがん関連3学会が初の全国調査(日本対がん協会)

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がん治療用ウイルスG47Δテセルパツレブ発売/第一三共

 第一三共は、2021年11月1日、同社が東京大学医科学研究所の藤堂具紀氏と共同で開発したがん治療用ウイルス G47Δテセルパツレブ(製品名:デリタクト)を国内で発売した。 G47Δは、がん細胞でのみ増殖可能となるよう設計された人為的三重変異を有する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型で、藤堂氏らにより創製された。G47Δテセルパツレブは当面の間、治験実施施設のみ供給 G47Δテセルパツレブは、膠芽腫患者を対象とした国内第II相臨床試験(医師主導治験)の結果に基づき、2021年6月に悪性神経膠腫の治療を目的とした再生医療等製品として、国内で条件及び期限付承認に該当する製造販売承認を取得した。G47Δテセルパツレブは当面の間、治験実施施設のみへの供給となる。製品概要・販売名:デリタクト注・一般名:テセルパツレブ・効能、効果又は性能:悪性神経膠腫・用法及び用量又は使用方法:通常、成人には1回あたり1mL(1×109PFU)を腫瘍内に投与する。原則として、1回目と2回目は5~14日の間隔、3回目以降は前回の投与から4週間の間隔で投与する。投与は6回までとする。・承認条件及び期限 〈承認条件〉1.緊急時に十分対応できる医療施設において、悪性神経膠腫の治療及び脳神経外科手術手技に十分な知識・経験を持つ医師が、本品の臨床試験成績及び有害事象等の知識を十分に習得した上で、臨床検査等によるモニタリングや管理等の適切な対応がなされる体制下で本品を使用すること。2.条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと。3.「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)」に基づき承認された第一種使用規程を遵守して本品を用いるよう、その使用規程の周知等、必要な措置を講ずること。  〈期限〉7年・薬価:1mL 1瓶 143万1,918円・製造販売承認日:2021年6月11日・薬価基準収載日:2021年8月12日・発売日:2021年11月1日・製造販売元:第一三共株式会社

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治療薬にソトロビマブを追加した診療の手引き6版/厚労省

 11月2日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6版」を公開した。 第6版の主な改訂点は以下の通り。【1 病原体・疫学】・変異株について、VUM(監視下の変異株)を追加・感染経路・エアロゾル感染について更新・国内/海外発生状況を更新【2 臨床像】・重症化リスク因子に日本COVIREGI-JPの解析を追加(入院時酸素投与が必要である割合のリスクと入院中の死亡率が高い基礎疾患)・小児の重症度について、日本小児科学会のレジストリ調査を追加・妊婦例の特徴について、日本産婦人科学会の調査を追加・症状の遷延(いわゆる後遺症)について、国内の調査を追加【3 症例定義・診断・届出】・血清診断について国立医薬品食品衛生研究所の報告を追加・世界のインフルエンザ流行状況を追加【4 重症度分類とマネジメント】・CPAP使用時の感染対策についての注意喚起を追加【5 薬物療法】・ソトロビマブ(商品名:セビュディ)について追加(9月27日に特例承認)・妊婦に対する薬物療法を追加・国内で開発中の薬剤について整理【6 院内感染対策】・マスクのJIS規格を追加・職員の健康管理についてワクチンの効果を追加

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ミュー変異株、ワクチン接種者が持つ中和抗体にきわめて高い抵抗性/NEJM

 新型コロナウイルスの注目すべき変異株の1つであるミュー株(B.1.621系統)が、新型コロナウイルスに感染した人およびワクチン接種した人の血清に含まれる中和抗体に対し、きわめて高い抵抗性を示したことが明らかになった。本結果は東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究によるもので、NEJM誌オンライン版2021年11月3日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 ミュー株の発生源はコロンビアで、最初に分離されたのは2021年1月11日。2021年8月30日時点で南米諸国など39ヵ国から検出されている。 本試験では、ミュー株のスパイクタンパク質を有するシュードウイルス*と、従来株の新型コロナウイルスに感染した人の回復後の血清(13例)、およびファイザー製ワクチン接種を完了した人の血清(14例)を用いた中和試験を実施。その結果、ミュー株は従来株に比して、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ファイザー製ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍の抵抗性を示した。これにより、ミュー株はベータ株よりも高い抵抗性を有する、既存の変異株の中で最も抵抗性の高い変異株であることが明らかとなった。*新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を被り、レポーター遺伝子を保有する擬似ウイルス ただし、研究者らは「本結果が“ワクチンが効かない”ことを短絡的に意味するものではないことに留意すべき」と注意を促すとともに「ワクチン接種の効果は、血液中に中和抗体を産生させることだけが目的ではない。ワクチンは、血液中への中和抗体の産生だけではなく、細胞性免疫や免疫の記憶を構築することにより、複合的に免疫力を獲得するために接種するもの。中和抗体が充分な効果を発揮できないとしても、ワクチン接種による感染予防効果、重症化を防ぐ効果は、ミュー株に対しても十分に発揮されるものと思われる」としている。

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ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下 - 3回目booster接種必要性の基礎的エビデンス (解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

ワクチン接種後の時間経過に伴う液性免疫の低下 Levin氏らはイスラエルにおいてBNT162b2を2回接種した一般成人におけるS蛋白IgG抗体価、野生株に対する中和抗体価の時間推移を6ヵ月にわたり観察した(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 6. [Epub ahead of print] )。その結果、S蛋白IgG抗体価はワクチン2回接種後30日以内に最大値に達し、それ以降、IgG値はほぼ一定速度で低下し、6ヵ月後には最大値の1/18.3まで減少することが示された。野生株に対する中和抗体価の低下はS蛋白IgGと質的に異なり、中和抗体価は、2回接種後3ヵ月間は一定速度で低下、それ以降は、低下速度が緩徐となりほぼ横ばいで推移、6ヵ月後には最大値の1/3.9まで低下した。高齢、男性、併存症(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心/腎臓/肝疾患)が2つ以上存在する場合にはS蛋白IgG抗体価ならびに中和抗体価の時間経過に伴う低下はさらに増強された。Levin氏らが示したのと同様の知見はShrotri氏らによっても報告された(Shrotri M, et al. Lancet. 2021;398:385-387. )。Shrotri氏らによると、BNT162b2の2回接種後70日(2.3ヵ月)以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は最大値の1/2まで低下していた。 Shrotri氏らは、AstraZenecaのChAdOx1接種後のS蛋白IgG抗体価の時間推移についても検証し、ChAdOx1の2回接種後のS蛋白IgG抗体価の最大値はBNT162b2接種後に比べ1/10と低く、かつ、ワクチン接種後70日以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は自らの最大値の1/5まで低下することを示した。 ModernaのmRNA-1273の2回接種後3ヵ月にわたるRBD-IgG抗体の低下速度は第I相試験の時に検討され、BNT162b2に比べ緩やかであることが示唆された(Widge AT, et al. N Engl J Med. 2021;384:80-82. )。さらに、mRNA-1273の2回接種後のRBD-IgG抗体価の最大値はBNT162b2の2回接種後の1.4~1.5倍高値であると報告された(Self WH, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1337-1343.、Richards NE, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2124331. )。以上より、コロナウイルスに対するIgG抗体形成能と時間経過に伴う抗体価低下の両者を鑑みた液性免疫原性の優越性はmRNA-1273>BNT162b2>ChAdOx1の順であると結論できる。以上のようなワクチンによる液性免疫原性の違いの結果、mRNA-1273のDelta株新規感染予防効果はBNT162b2よりも優れていることが示された(Puranik A, et al. medRxiv. 2021;2021.08.06.21261707. )。しかしながら、BNT162b2とmRNA-1273の免疫原性の差に関して考慮しなければならない事実は、ワクチン接種を介して生体に導入されるmRNA量の違いである。BNT162b2では30μg、mRNA-1273では100μgを1回の接種で筋注する。すなわち、投与されるmRNA量はmRNA-1273でBNT162b2に比べ約3倍多い。この投与量の差が液性免疫の差を規定している可能性が高く、mRNA-1273に比べBNT162b2がワクチンとして劣っていることを意味するものではない。この考えの妥当性を支持する知見として全身/局所における一般的副反応もmRNA-1273接種後により多く認められることが報告されている(Chapin-Bardales J, et al. JAMA. 2021;325:2201-2202. )。 BNT162b2の2回接種によるDelta株に対する中和抗体価の最大値は野生株に対する値の1/5.8と低い。さらに、Delta株に対する中和抗体価の時間経過に伴う低下率は野生株と大きな差を認めないが、時間経過の出発点である最大値が低いがために2回目接種後100日(3.3ヵ月)経過した時点でのDelta株に対する中和抗体価が検出限界以下まで低下する症例が免疫不全を有さない一般成人の中にも存在することが判明している(Wall EC, et al. Lancet. 2021;397:2331-2333. )。以上の事実から、まん延するコロナウイルスの中心がDelta株である場合には、ワクチン(BNT162b2あるいはmRNA-1273)2回接種後の中和抗体価が3~6ヵ月後には無効域近傍まで低下する人が少なからず存在する可能性を念頭におく必要がある。3回目booster接種 ワクチン接種後のウイルス中和抗体価の予想以上に速い低下によって招来される問題を打破するために世界のワクチン先進諸国では3回目の追加ワクチン接種(booster接種)が開始されつつある。3回目のbooster接種に関しては、次の論評(山口, 田中. ワクチンの3回目Booster接種は感染/重症化予防効果を著明に改善する)で詳細に論じるので、それを参照していただきたい。本邦ではなぜ夏場の第5波を克服することができたのか? PfizerのBNT162b2を中心にコロナ感染症に対するワクチン接種は2020年12月より世界各国で積極的に進められている。本邦においても2021年4月から一般成人に対するワクチン接種(Pfizer、Moderna)が開始され、10月29日現在、全人口の71.2%(65歳以上の高齢者が最も高く90.6%、12~19歳の若年者が最も低く47.8%)が2回目接種を終了し(首相官邸ホームページ. 新型コロナワクチンについて. Oct. 29, 2021)、本邦はワクチン接種先進国(優等国)の一つに数えられるようになっている(2回接種率:カナダ、イタリアに次ぎ世界第3位)。その結果として、本邦のコロナ第5波は9月初旬より急速に終焉に向かっている。しかしながら、7月以降、ワクチン接種先進国でワクチン接種者におけるDelta株新規感染の急激な増加という新たな問題が発生しており、本邦もこの問題に早晩直面するものと考えておかなければならない。Delta株による新規感染はワクチン接種開始が早かったイスラエル、カタールなどの中東諸国、英国などの欧州諸国、米国などを中心に顕著になっており、主たる原因は、前項で述べたワクチン接種後の液性免疫の経時的低下である。ワクチン接種を早期(2020年の12月)に開始した国では、ワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した国民の数が多くなり、これらの人々では、ワクチン接種により誘導された液性免疫が時間経過とともに低下し、Delta株を中心とする変異株感染に対する予防効果が低い状態に維持されているものと考えなければならない。一方、本邦では、ワクチン接種開始時期の遅延が幸いし、Delta株がまん延し出した2021年の6月以降になってもワクチン接種によって形成された液性免疫の低下が少なくDelta株に対する予防効果が有効域に維持されている国民が多く存在していたものと推測される。それ故、ワクチン接種を昨年の12月早々から開始した国々とは異なり、本邦では、夏場のDelta株による第5波を“運よく”乗り越えることができたものと考えることができる。しかしながら、2021年の12月以降になると、本邦でもワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人たちの数が増加し、3回目のワクチン接種など何らかの有効な施策を導入しない限り、液性免疫低下に起因するDelta株由来の第6波が必然的に発生するものと考えておかなければならない。ワクチン突破感染(BI:breakthrough infection)なる言葉について 最後に、ワクチン突破感染(BI)という言葉について一言コメントしておきたい。BIはワクチンの感染予防効果が十分に維持されている場合に意味ある言葉でBIを引き起こす個体の背景因子を探求するうえで重要である(山口, 田中. CareNet論評-1422)。しかしながら、ワクチンの予防効果が低下している場合には、BIは個体が有する背景因子とは無関係にワクチン予防効果の低下が“強制的に”規定因子として作用する。それ故、このような場合には、BIという言葉は不適切だと論評者らは考えている。BIの代わりに“ワクチン非接種者、不完全接種者、完全接種者における感染”と正確に記載すべきである。さらに、ワクチン接種後どの時点で発生した感染であるかを明記すべきである。BIに代わる言葉を定義するならば、ワクチン接種者における“液性免疫低下関連感染(DHIRI:decreased humoral immune response-related infection)”という言葉が適切ではないだろうか?

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ワクチンの3回目Booster接種は感染/重症化予防効果を著明に改善する(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

 前論評(山口, 田中. ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下―3回目Booster接種必要性の基礎的エビデンス)で論じたように、ワクチン接種後の液性免疫は、野生株、従来株、Delta株を中心とする変異株の別なく、月単位で有意に低下する。この液性免疫の経時的低下によって、Delta株を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大(第6波)が今年の12月以降の冬場に発生する可能性を論評者らは危惧している。 第6波の発生を避けるためには、ワクチン接種後の時間経過と共に低下した液性免疫を再上昇させるためのワクチン3回目接種(Booster接種)、あるいは、Delta株を中心とするコロナ変異株抑制能力が高く効果持続期間がワクチンと同等、あるいは、それ以上に長いIgG monoclonal抗体をワクチン代替薬として考慮する必要がある(山口, 田中. 日本医事新報. 2021;5088:38.、山口, 田中. CareNet論評-1440)。ただし、現時点では、免疫不全を有さない一般成人に対してIgG monoclonal抗体を“pre-exposure and post-exposure prophylaxis”、すなわち、ワクチン代替薬として用いる方法は英国以外では承認されていない(Rubin R. JAMA Medical News & Perspectives. 2021 Oct 27.)。さらに、IgG monoclonal抗体の1回分の費用は20万円以上でワクチン2回接種の約100倍の高額治療であり、不特定多数の人に適用することは難しい。それ故、本論評では国民全体を対象としても医療経済面から施行可能な3回目のワクチンBooster接種に焦点を合わせ考えていくものとする。第6波の発生とその臨床的特徴 ワクチン3回目接種を考える前に、今冬季に発生が予想されるDelta株による第6波の臨床的特徴について考察する。 Chemaitellyらは、背景ウイルスがBeta株からDelta株に置換されつつあったカタ-ルにおける検討で、BNT162b2の2回接種後5~7ヵ月が経過するとワクチンの感染予防効果がピーク時の77.5%から20%前後まで低下するが、入院/死亡に対する重症化予防効果はワクチン接種後の時間経過とは無関係に90%前後に維持されることを示した(Chemaitelly H, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 6. [Epub ahead of print])。Tartofらは米国における検討で、BNT162b2の2回接種後のDelta株に対する感染予防効果が、ピーク時の75%から4ヵ月後には53%まで低下すると報告した(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)。Goldbergらはイスラエルにおける検討で、Delta株の感染率は年齢とは無関係にBNT162b2ワクチン2回接種後の時間経過に依存して上昇、重症感染者比率も60歳以上の高齢者にあってはワクチン2回接種後の時間経過が長いほど高いことを報告した(Goldberg Y, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 27. [Epub ahead of print])。しかしながら、高齢層で認められた重症感染に関する傾向は、59歳以下の若年/中年層では確認できなかった(若年/中年層における重症感染者数が少ないため統計処理が困難)。Grangeらはスコットランドにおける解析で、ワクチンの2回接種(BNT162b2、ChAdOx1)によって全体の死亡者数を軽減できるが、死亡者数は75歳以上の高齢者、男性、複数の併存症を有する人で有意に高いことを示した(Grange Z, et al. Lancet. 2021 Oct 28.)。この傾向は、非ワクチン接種者、不完全ワクチン接種者におけるDelta株感染に起因する死亡者の場合と質的に同じである。 今年の12月以降には、本邦においてもワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人たち(医療従事者を含む)の数が増加し、何らかの有効な施策を導入しない限り、液性免疫低下に起因するDelta株由来の第6波が必然的に発生するものと考えておかなければならない。この場合、Deltaは総称であり、原型(起源)のB.1.617.2に加え、それから派生したAY.1~AY.3、AY.4~AY.11(英国)ならびにAY.12(イスラエル)を含む(WHO. COVID-19 Weekly epidemiological update. 2021 Oct 19.)。これらのDelta株による第6波を阻止するための有効な医学的/社会的施策を講じる時間は2ヵ月ほどしか残されていない現実を、医療関係者ならびに為政者はもっと真摯に受け止める必要がある。 ただ、Delta株に起因する第6波は、国民の約70%以上がPfizer社あるいはModerna社のワクチンの2回接種を終了した状況下で発生するので、ワクチン未接種状態で発生するDelta株感染とは質的に異なる様相を呈するはずである。多くの国民がワクチンの2回接種を終了している時点で発生する第6波においては、感染者数はある程度の数に達するが、夏場の第5波よりも規模が小さいものと予想できる。第6波における感染者の重症度はワクチン未接種状況下で発生するDelta株感染に比べ、軽症者が多いという特徴を有するはずである。ワクチン接種者に発生する“液性免疫低下関連感染(DHIRI:Decreased humoral immune response-related infection)”では、ワクチンの抗ウイルス作用は完全に無効というわけではなく不完全ながらウイルスの病原性を抑制する。それ故、ワクチン接種後のDelta株感染にあっては、感染症状が弱く、症状持続期間が短く、重症化の頻度が低い比較的軽症患者が多くなるものと予想される。しかしながら、高齢層における死亡を含む重症患者数は、若年/中年層に比べ有意に多くなることも念頭に置く必要がある。ワクチン3回目Booster接種の効果 一般成人にPfizer社のBNT162b2を3回接種(2回接種後7.9~8.8ヵ月)した時のDelta株に対する中和抗体価は、2回接種後に比べ55歳以下の若年/中年者で5.5倍、65歳以上の高齢者で12.0倍高値になることが示された(Falsey AR, et al. N Engl J Med. 2021;385:1627-1629. )。Moderna社のmRNA-1273の3回接種(半量の50μg筋注、2回接種後5.9~7.5ヵ月)後の変異株(Beta株、Gamma株)に対する中和抗体価に関する検討でも、質的に同様の結果が報告されている(Wu K, et al. medRxiv. 2021 May 6.)。 本論評で取り上げたイスラエルの検討では、60歳以上の高齢者に対する3回目接種は2回目接種後と比較して新規感染リスクを11.3倍、重症化リスクを19.5倍低下させることが示された(Bar-On YM, et al. N Engl J Med. 2021;385:1393-1400.)。この結果を受け、イスラエルでは2021年7月30日以降、2回目接種後少なくとも5ヵ月以上経過した60歳以上の高齢者ならびに50歳以上の医療従事者を対象としてBNT162b2の3回目接種が開始されている(現在は、12歳以上を対象とすることに変更)。同様に、アラブ首長国連邦、ドイツ、フランスなどでも3回目接種が始まっている。 2021年9月17日、米国FDAは一般成人に対する3回目Booster接種に対してPfizer社のBNT162b2を使用することを緊急承認した。対象は、65歳以上の高齢者と16歳以上でコロナ感染による重症化因子を有する人とされた。後者には医療従事者、学校の教員など、コロナ患者との濃厚接触の確率が高い職業に従事する人たちも含まれる。Moderna社のmRNA-1273においても通常量の半量(50μg)を3回目接種に用いる緊急使用が10月14日に、Johnson & Johnson社のAdeno-vectored vaccineであるAd26.COV2.SのBooster接種(このワクチンの場合、2回目がBooster接種となる)が10月15日に承認された。さらに、米国FDAは、液性免疫原性が低いAd26.COV2.Sの代わりに、液性免疫原性が高いBNT162b2あるいはmRNA-1273をBooster接種時に使用してもよいと決定した(ハイブリッド・ワクチン)。 本邦においても、2021年9月17日、厚生労働省は3回目接種を認めることを決定し、実施の詳細について議論が開始されている。10月28日に開催された厚労省の分科会では12歳以上の国民全員を3回目接種(公費負担)の対象とすることが了承され、2回目接種後8ヵ月経過した人から順に3回目接種を施行する方向でまとまりつつある。3回目接種においてハイブリッド・ワクチンを認めるかどうかを含め、正式決定は11月中旬になされるとのことである(朝日新聞デジタル 2021年10月29日付)。 本論評では“3回目のワクチン接種”と記載したが、これはワクチン接種を3回施行すればすべての問題が解決することを意味しているわけではなく、必要に応じて4回目、5回目の接種をさらに追加する可能性を含んだ言葉だと解釈していただきたい。事実、フランス保健省は、2021年6月から臓器移植患者で3回目ワクチン接種に反応しない患者に対して4回目のワクチン接種を開始している(Rubin R. JAMA Medical News & Perspectives. 2021 Oct 27.)。 ワクチンの3回目接種による液性免疫の底上げは、免疫不全患者において絶対的に必要な手段であるが、紙面の都合上本論評では割愛する。この問題に関しては論評者らの総説を参照していただきたい(山口, 田中. 日本医事新報. 2021;5088:38.)。

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第82回 今年のインフル流行危機は南半球ではなく南アジアから学べ!?その傾向と対策は

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新規感染者報告数は減少し、すでに全国での1日の新規感染者報告数は10月末から300人を切る日が続いている。危機はほぼ去りつつあるのかどうかは、現時点ではまったくわからない。もっとも政府が新型コロナワクチンの2回接種完了者全員を3回目接種対象者としたことからもわかる通り、当面は国を挙げての新型コロナ警戒態勢が継続することは確実だ。そうした最中、11月に入り私は娘と共に今季のインフルエンザワクチン接種を済ませた。いつもワクチン接種でお世話になっているクリニックで接種したのだが、旧知の院長からは「よく予約取れたね」と言われた。このクリニックではインフルエンザワクチン接種予約はwebでできる。例年だと10月に入ってすぐ予約を入れるのだが、今年はクリニック側が予約を開始したのが10月半ば。しかも予約ページを覗くと、例年と比べ予約枠がきわめて少なく、油断していたら10月中はすべて埋まっていた。1週間前の朝8時から予約が入れられるシステムなので、10月最終週のとある日、朝8時前からクリニックのホームページを開きスタンバイして予約を入れた。予約完了確認メールがすぐ送られてきて、ほっとして再度ページを確認すると、私が予約した日の枠はすでに完全に埋まっていた。時計を見ると午前8時4分だった。そんなこんなで済ませたインフルエンザワクチンだが、新型コロナが流行し始めた昨年は、冬期シーズンを前に「新型コロナとインフルの同時流行はあるのか?」と騒がれた。結局、昨年1年間のインフルエンザ定点報告数は約56万人、一昨年の約188万人からは激減し、同時流行の懸念は杞憂に終わった。では今シーズンはどうなるだろうか? 日本感染症学会の「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」が一番まとまっていてわかりやすい。端的に言えば、北半球の冬の流行予測の参考になる南半球の冬、すなわち北半球の夏の時期を見ると、インフルエンザ確定患者数はごく少数なため、北半球でも冬の流行の可能性は低いのではないかというのが大枠の見方だ。ただし、ここでは一つ不安要素を挙げている。それはアジアの亜熱帯地方、具体的には南アジアのインドやバングラデシュで夏季に流行が認められたこと。このことから今後の人流増加も加味すると、これら地域からのインフルエンザ「輸入」もありうるということだ。昨シーズンに流行がなかったことなどを加味すれば、日本国内は集団免疫が乏しいと考えられ、この観点からインフルエンザワクチンの接種を推奨している。さてここで気になるのがこの南アジアでのインフルエンザ流行状況だ。世界保健機関(WHO)によるインフルエンザのサーベイランス「FluNet」を参照すると、インドとネパールは今年の第25週あたりを機にインフルエンザの増加が見られ、第33週前後にピーク、それから徐々に減少している。当初はA(H1N1)pdm09が主流で、ピークを過ぎてからB(ビクトリア系統)が徐々に出現し、第37週以降はB(ビクトリア系統)が主流だ。一方、バングラデシュは今年の第20週あたりを境に増加し、第23週にピークを迎え、そこから徐々に減少して収束したかに見えたが、第35週を境に再び増加に転じ、第38週にピークを迎えて減少傾向となっているものの今も比較的高い水準の感染状況だ。こちらの流行株は当初、B(ビクトリア系統)が中心で第35週以降の第2波がA(H1N1)pdm09とインド、ネパールとは逆である。昨今の出入国管理統計の速報値を見ると、東京五輪関係の入国もあったとみられる7月と比較して、最新の9月時点はインドからの入国者が10%増(603人)、バングラデシュからは3.8倍(181人)、ネパールからは15倍(1,110人)と絶対数はまだまだ少ないものの明らかに増加傾向にある。感染症学会が指摘する「輸入」の危険は一定程度存在する。だが、それ以上に不気味なことがある。それはインフルエンザの流行動向がやや異なるインド・ネパールとバングラデシュ共に新型コロナの新規感染者報告数がピークを過ぎ、ほぼ収束に向かった時期にインフルエンザの流行が始まっているという共通点だ。新型コロナ収束の間隙を突いてインフルエンザが流行しやすいならば、まさに今の日本がその時期である。そしてその時期に前述のように流行地域からの人流は増加傾向にある。加えて日本国内では従来からインフルエンザワクチンの接種率は約3人に1人と決して高くない。さらに言えば、今年はワクチンの品薄の影響で高齢者でもまだ接種に至っていないケースは少なくない。かなり悪い条件が揃い過ぎていると言わざるを得ない。もっともインフルエンザに関しては、新型コロナに比べれば致死率も低く、流行地域などからの入国制限のような水際対策は非現実的である。結局、最終的な解決法としてはワクチン接種率をいかに上げるかに行き着かざるを得ない。まだまだ新型コロナの脅威が去ったわけではない今、致死率が低いとはいえ新型コロナと臨床診断で鑑別しにくいインフルエンザが流行すれば、医療現場はかなりの緊張と混乱を強いられる。昨年囁かれた「新型コロナ・インフルのダブルパンデミック」が現実とならなかったのは幸いだったが、その反作用として一般人からすると、私たちメディアも医療側も結果として「オオカミ少年」になってしまった。そうした雰囲気と「コロナ疲れ」がベースにある中で、一般人にいかにインフルエンザワクチン接種の重要性を認識してもらうか。私たちは昨年以上に心してかからねばならないだろうと思っている。

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ファイザー製ワクチン後、4ヵ月と6ヵ月で効果の差は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株に対する免疫は、2回目のワクチン接種から数ヵ月後には全年齢層において減弱したことが、イスラエル・Technion-Israel Institute of TechnologyのYair Goldberg氏らの研究で示された。イスラエルでは、2020年12月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の集団接種キャンペーンが開始され、大流行が急激に抑制された。その後、SARS-CoV-2の感染例がほとんどない期間を経て、2021年6月中旬にCOVID-19の流行が再燃。その理由として、デルタ(B.1.617.2)変異株に対するワクチンの有効性の低下と、免疫の減弱が考えられたが、イスラエルにおけるデルタ変異株に対するBNT162b2ワクチン免疫の減弱の程度は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。ワクチン接種完遂後の感染率と重症化率を接種時期別に比較 研究グループは、2021年6月以前にワクチン接種を完遂したすべてのイスラエル住民を対象として、全国データベースを用いて2021年7月11日~31日における、確認された感染および重症化に関するデータを収集した。 ポアソン回帰モデルを用いて、ワクチン接種時期別のSARS-CoV-2への感染と重症COVID-19の発生を、年齢で層別化し交絡因子を補正して比較検討した。ワクチン完遂が2ヵ月早い人の感染率は1.6~1.7倍 7月11日~31日における感染率は、60歳以上では、2021年1月(接種対象となった最初の時期)にワクチン接種を完遂した人のほうが、2ヵ月後の3月にワクチン接種を完遂した人より高率であった(率比:1.6、95%信頼区間[CI]:1.3~2.0)。 40~59歳でも、同年齢層の接種開始月である2月にワクチン接種を完遂した人のほうが、2ヵ月後の4月に接種した人より高率であった(率比:1.7、95%CI:1.4~2.1)。16~39歳でも、3月(同年齢層の接種開始月)にワクチン接種を完遂した人は、2ヵ月後の5月に接種した人と比較して感染率比が1.6(95%CI:1.3~2.0)であった。 重症COVID-19の発生率については同様の比較において、60歳以上では率比が1.8(95%CI:1.1~2.9)、40~59歳で2.2(0.6~7.7)であった。16~39歳では症例数が少なく率比を算出できなかった。

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