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第16回 オンライン診療でインフルエンザと診断してよいか?

政府から示されたオンラインスキームインフルエンザ流行るぞ!という意見が台頭してきましたが、未来のことは誰にもわかりません。しかし、新型コロナ第8波とインフルエンザ流行がかぶると、発熱外来の逼迫は必至です。そのため、政府としても、医療が必要な人以外はできるだけ病院に来ないよう策を講じる必要がありました。ここで示されたのが、「新型コロナ自己検査+インフルエンザオンライン診断」の流れです1)。病院に来なくても、新型コロナとインフルエンザが診断できる「かもしれない」、というスキームです。具体的には図のようになります。オンライン診療というのが結構カッコイイ感じになっていますが、Zoomなどの診療を整備している施設は少数派で、実際には電話診療が多いと思います。電話って個人的には「オンライン」じゃなくて「オフライン」だと思っているのですが…。まあいいでしょう。画像を拡大する図. 新型コロナ・インフルエンザ同時流行時のスキーム(筆者作成:イラストは看護roo!、イラストACより使用)遠隔でインフルエンザ診断さて、このフローで気になるのは、検査なしでオンライン診療によるインフルエンザの確定診断が可能という点です。必要があれば、オセルタミビルなどのインフルエンザ治療薬を遠隔で処方することができます。確かにインフルエンザは、(1)突然の発症、(2)高熱、(3)上気道炎症状、(4)全身倦怠感などの全身症状がそろっていれば、医師の判断でそうであると診断することができるので、検査が必須というわけではありません。インフルエンザだと典型的な症状で類推できるとは思いますが、新型コロナ陰性ならインフルエンザだ!というロジックです。オンライン診療という名の電話診察だけでも抗ウイルス薬を処方してしまってよいのか、少しモヤモヤが残ります。限られた医療資源で対応していくしかないのでしょうが、どんどんフローが複雑化していき、一体病気になった時どこに連絡していいのかわからないという患者さんが増えていくのではないかという懸念もあります。インフルエンザ治療薬の考え方日本は医療資源が潤沢ですから、インフルエンザと診断されれば抗ウイルス薬がほぼルーティンで投与されます。今シーズン(2022年10月~2023年3月)の供給予定量(2022年8月末日現在)は約2,238万人分とされています2)。タミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 中外製薬)約462万人分オセルタミビル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 沢井製薬)約240万人分リレンザ(一般名:ザナミビル水和物 グラクソ・スミスクライン)約215万人分イナビル(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 第一三共)約1,157万人分ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル 塩野義製薬)約137万人分ラピアクタ(一般名:ペラミビル水和物 塩野義製薬)約28万人分現状、インフルエンザの特効薬のような位置付けになっていますが、合併症のリスクが高くない発症48時間以内に治療を行ったとしても、有症状期間が約1日短縮される程度の効果であることは知っておきたいところです。■オセルタミビル20試験・ザナミビル46試験を含むレビューでは、オセルタミビルは成人インフルエンザの症状が緩和されるまでの時間を16.8時間(95%信頼区間[CI]:8.4~25.1)、ザナミビルは0.60日(14.4時間)(95%CI:0.39~0.81)短縮した3)。■バロキサビル マルボキシルまたはプラセボによる治療を受けた12歳以上の外来のインフルエンザ2,184例を含んだランダム化試験において、バロキサビル マルボキシル治療は症状改善までの期間を中央値で29.1時間(95%CI:14.6~42.8)短縮した4)。参考文献・参考サイト1)厚生労働省 新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース2)厚生労働省 令和4年度 今冬のインフルエンザ総合対策について3)Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in adults and children. Cochrane Database Syst Rev . 2014 Apr 10;2014(4):CD008965.4)Ison MG, et al. Early treatment with baloxavir marboxil in high-risk adolescent and adult outpatients with uncomplicated influenza (CAPSTONE-2): a randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Infect Dis. 2020 Oct;20(10):1204-1214.

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ブースター接種はオミクロン関連入院に有効/BMJ

 米国では2022年の当初半年間における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのブースター接種者は、オミクロン変異株関連のCOVID-19の入院について、プライマリシリーズのみ接種者を上回るベネフィットを得ていたことが、米国疾病予防管理センター(CDC)のKatherine Adams氏らによる検査陰性デザイン・ケースコントロール試験の結果、示された。ブースター接種が推奨される中で、オミクロン変異株は2021年12月26日時点でSARS-CoV-2の優勢な変異株となっており、ブースター接種の有効性に関するデータ提示が必要とされていた。BMJ誌2022年10月11日号掲載の報告。オミクロン株優勢時の入院患者対象にケースコントロール試験 研究グループは、2021年12月26日~2022年6月30日の新型コロナウイルス・オミクロン変異株が優勢だった期間に、米国内18州の21病院を通じて、急性呼吸器症状で入院した成人4,760例を対象にケースコントロール試験を行った。被験者のうち2,385例(50.1%)がCOVID-19の検査確定例(ケース群)で、2,375例(49.9%)が検査陰性のSARS-CoV-2例(コントロール群)だった。 主要なアウトカムは、コロナワクチンのプライマリ+ブースター接種者とプライマリシリーズのみ接種者のCOVID-19関連入院に関する有効性。ケース群vs.コントロール群において、それぞれのレジメンでワクチンを受けた場合とワクチン未接種の場合のオッズ比を比較しワクチンの有効性を評価した。ワクチン有効性の解析は、免疫状態(免疫能正常、免疫不全)で層別化した。主要解析は、すべての種類のコロナワクチンの組み合わせで評価し、副次解析は特定のワクチンについて評価した。免疫状態を問わず、ブースターで対COVID-19関連入院の有効性増大 全被験者4,760例の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:52~75)で、994例(20.8%)が免疫不全だった。プライマリシリーズ+ブースター2回接種者が85例(1.8%)、プライマリシリーズ+ブースター1回接種者が1,367例(28.7%)、プライマリシリーズのみ接種者が1,875例(39.3%)、ワクチン未接種者が1,433例(30.1%)だった。 免疫能正常群において、オミクロン変異株関連COVID-19入院の予防に関するワクチンの有効性は、プライマリシリーズ+ブースター2回接種群が63%(95%信頼区間[CI]:37~78)、プライマリシリーズ+ブースター1回接種群が65%(58~71)、プライマリシリーズのみ接種群が37%(25~47)だった(プライマリシリーズのみ接種群と比較したブースターレジメンプール群のp<0.001)。 ワクチンの有効性は、ワクチンの種類別にみてもプライマリシリーズのみ接種群よりもプライマリシリーズ+ブースター接種群で高かった。BNT162b2(ファイザー製)での有効性は、ブースター2回接種群73%(95%CI:44~87)、ブースター1回接種群64%(55~72)、プライマリシリーズのみ接種群36%(21~48)だった(p<0.001)。mRNA-1273(モデルナ製)でも、それぞれ、68%(17~88)、65%(55~73)、41%(25~54)だった(p=0.001)。 免疫不全群においても、ワクチン有効性はプライマリシリーズ+ブースター1回接種群が69%(95%CI:31~86)、プライマリシリーズのみ接種群が49%(30~63)で有意差が認められた(p=0.04)。

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第131回 ワクチン偽装接種で51歳医師逮捕、偽装を依頼した人だけではなく、接種希望者にも生理食塩水接種の言語道断

普通にワクチンの接種に来た人にも偽装を行っていた可能性こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週末は、MLBの試合観戦は諦め、茨城県桜川市で無農薬の農園を営む大学の先輩宅へ、泊りがけで農作業の支援に行ってきました。台風で被害があったビニールハウスの補修やトマトの支柱の撤去などを行ったのですが、キャベツ畑に多数のモンシロチョウが乱舞していたのが印象的でした。モンシロチョウは春のイメージですが、キャベツに卵を産み付けるため、秋までは活発に活動するのだそうです。というわけで虫食いだらけのキャベツもお土産にいただいて帰ってきました。しかし、キャベツの芯あたりにヨトウムシというグロテスクな蛾の幼虫が何匹も入り込んでいたのには参りました。スーパーで売られているキャベツには、当然ヨトウムシなど入り込んでいません。それは農薬のおかげと言えます。無農薬農業が“言うは易く行うは難し”であることを実感した次第です。さて今回は新型コロナウイルスのワクチンの接種偽装を行った医師の事件を取り上げます。この事件、接種偽装を、依頼してきた人に対してだけではなく、普通にワクチン接種を受けに来た人にも行っていた可能性もあり、その動機は複雑です。母子3人にワクチンを接種したと偽って接種委託料を詐取10月4日付の全国紙各紙は、愛知県稲沢市の母子3人に新型コロナウイルスワクチンを接種したと偽り同市から接種委託料を詐取した、として警視庁捜査2課が王子北口内科クリニック(東京都北区)のF院長(51)を詐欺と公電磁的記録不正作出及び同供用容疑で再逮捕した、と報じました。各紙報道によれば、F院長は昨年10~12月、稲沢市に住む40代女性と10代の娘2人の計3人について、ワクチン接種をしたとする虚偽の予診票(接種記録)を作成し、同市から接種委託料計約1万4,000円を詐取し、同市経由で国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の接種記録を登録させた疑いがある、とのことです。F院長と女性は、数年前にワクチンに否定的な人が集まる投資セミナーで知り合ったそうです。セミナーの仲間内でワクチンを「殺人ワクチン」、接種済み証を「なんちゃって証明」と呼んでいたとの報道もあります。女性は捜査官に対し「人体に悪影響を及ぼすと思っていた。ワクチンを打ったことにしなければ色々な不利益を被ると考え、(接種偽装を)お願いした」と話したとのことです。約230人の接種記録があり、7割以上が北区以外の住民F院長が再逮捕であるのは、今年9月にすでに逮捕されているからです。各紙報道によれば、F院長は、9月12日までに新型コロナウイルスのワクチン接種をしたように装い、自治体から接種委託料をだまし取った詐欺などの疑いで逮捕されています。この時の逮捕容疑は再逮捕の時と同じです。昨年8~12月、札幌市の50代の女性ら家族3人にワクチンを2回ずつ接種したとする予診票を偽造し、国のワクチン接種記録システムに虚偽の接種記録を登録させるなどして、接種委託料計約1万4,000円をだまし取った疑いです。この女性とも投資セミナーで知り合ったとのことです。新型コロナワクチンの接種は、原則、住民票のある自治体で受けることになっていますが、調べでは F院長のクリニックでは2021年7~12月に男女約230人の接種記録があり、7割以上が北区以外の住民で、北海道や広島県などの人が接種を受けた記録があったとのことです。再逮捕の愛知県稲沢市のケースも、北区以外の接種者の中から警視庁が事件としてピックアップしたものと見られます。「接種希望者には生理食塩水を打ったこともある」と供述この事件、一筋縄ではいかないのは、F医師が接種偽装を希望する人だけではなく、一般の人にも本人に伝えず接種偽装をした可能性がある、という点です。毎日新聞等の報道によれば、最初の逮捕後の取り調べで、「接種希望者には生理食塩水を打ったこともある」と供述していたとのことです。F医師は調べに対し「さまざまな人に頼まれてワクチンを打ったことにして予防接種済み証を作った。ワクチンを受けたいという人がいたら、危険性を説明し、それでも受けたい人には生理食塩水を打った」と話していたとのことです。実際、北区保健所には今年1月、同クリニックで接種を受けた複数の区民から「接種したのに抗体値が低い」「生理食塩水を打たれたようだ」といった相談があり、保健所が区民約50人に抗体検査の案内を送ったところ、受検した11人のうち3人は抗体値が低く、接種券を再発行して対応したとのことです。なお、健康被害は確認されていません。容疑は詐欺と公電磁的記録不正作出及び供用接種偽装を頼まれてそれを実行するだけではなく、普通にワクチン接種を希望して来た人にまで、自らの主義、信条を押し付け、黙って生理食塩水を打つとは、医師としては言語道断の行為だと言えるでしょう。キャベツの栽培に農薬を使うかどうかは栽培農家の自由ですが、その栽培農家が「農薬を一切使わないキャベツしか国民は食べてはいけない」と主張し、周囲に押し付けはじめたら、世の中は混乱するでしょう。私自身は、無農薬農法の先輩の手伝いはしますが、ヨトウムシが住んでいるキャベツはさすがに食べる気はしません。農薬の有無よりもキャベツの美味しさを選びます。今から20年ほど前、『買ってはいけない』(週刊金曜日別冊)という書籍がベストセラーになりました。「買ってはいけない」商品の中には、少々強引なロジックでその理由を解説していたものもあったように記憶しています。今回、事件の発端となったワクチン反対派の投資サークルも、『買ってはいけない』を熟読していた人たちなのかもしれません。ところで、F院長の容疑は詐欺と公電磁的記録不正作出及び供用です。詐欺は接種委託料の詐欺です。一方の公電磁的記録不正作出及び供用は、国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の接種記録を登録させたことによる罪です。この公電磁的記録不正作出及び供用罪、この連載でも度々登場していますが、皆さんご記憶でしょうか。それは、「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」でも書いた、三重大の准教授がカルテを改ざんして問われた罪です。他人の事務処理を誤らせる目的で、それに使う電磁的記録を不正に作ったり供したりする罪で、刑法第161条の2に規定されています。電磁的記録不正作出及び供用罪そのものは5年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。病院の電子カルテであろうが、国のワクチン接種のシステムであろうが、不正に電子データをいじったりするとこの罪に問われることになるので、皆さんも気をつけて下さい。なお、医師としての罪はどうなんだ、ということになりますが、最終的には厚生労働省の医道審議会にかけられ、医師免許取り消し・停止などの行政処分が行われることになるでしょう。それは、これらの罪が確定した後となります。

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FDA、小児へのモデルナとファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は10月12日、モデルナおよびファイザーのオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、緊急使用許可(EUA)を修正し、小児への単回追加接種の対象年齢を拡大したことを発表した。モデルナの2価ワクチンは、これまで18歳以上だったものが6~17歳にも承認され、ファイザーの2価ワクチンは、12歳以上だったものが5~11歳にも承認された。それぞれ初回シリーズから最低2ヵ月の接種間隔を経て接種が許可されている。 今回の小児への2価ワクチン承認拡大に伴い、ファイザーの従来の1価ワクチンは、5~11歳に対する追加接種としての使用ができなくなる。ただし、モデルナおよびファイザーの1価ワクチンは、初回シリーズとして、生後6ヵ月以上を対象とした接種は引き続き承認されている。 今回のFDAによる承認は、両社のBA.1対応2価ワクチンの成人における追加接種の臨床試験で評価された免疫反応と安全性に関するデータに依拠している。また、モデルナのBA.4/5対応2価ワクチン単回追加接種の安全性については、12~17歳(約1,300例)、6~11歳(約1,300例)が参加した同社の1価ワクチンの臨床試験に基づいている。追加接種後に最も多く報告された副反応は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、注射した腕のリンパ節腫脹、悪心/嘔吐、発熱などがあり、BA.4/5対応2価ワクチン接種者も、これと同様の副反応を経験する可能性がある。ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンについても、同社の1価ワクチン接種者と同様の副反応を経験する可能性があるとしている。 日本においては、ファイザーの日本法人が、10月13日付のプレスリリースにて、5~11歳の小児に対するBA.4/5対応2価ワクチンについて、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。

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第134回 コロナ感染から1年後も続く症状は1年半後もおよそ解消せず/オミクロン株ワクチンは無駄ではない

コロナ感染から1年後も続く症状は1年半時点でもおよそ解消せずそのまま新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状、いわゆるコロナ後遺症(コロナ罹患後症状)はジャニーズ事務所のアイドルも自身のその病状を今や公言するなど1)、世間に広く知られるようになりました。COVID-19流行は2019年の後半から始まっておよそ3年が経ち、コロナ罹患後症状の長期追跡の結果も報告されるようになりました。英国でのそのような長期追跡の新たな報告によると、コロナ罹患後症状が感染から1年後もあるようならその半年後までの解消はおよそ期待できず1年半時点でもそのまま持ち越されるようです2-4)。試験では英国・スコットランドの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者3万3,281人とそうでない6万2,957人が18ヵ月間追跡されました。発症した感染者3万1,486人のうち1,856人(6%)は最後の観察時点(most recent follow-up)で症状がまったく回復しておらず(非回復)、半数近い1万3,350人(42%)はある程度ましになったものの完全回復には至っていませんでした(部分回復)。感染後6ヵ月と12ヵ月時点での記録がある3,744人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は6ヵ月時点ではそれぞれ295人(8%)、1,766人(47%)、1,683人(45%)、12ヵ月時点でもほぼ変化なしのそれぞれ303人(8%)、 1705(46%)、1736人(46%)でした。また、感染後12ヵ月(1年)時点と18ヵ月(1年半)時点での記録がある197人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は1年時点ではそれぞれ21人(11%)、100人(51%)、76人(39%)、1年半時点ではそれぞれ21人(11%)、101人(51%)、75人(38%)でした。今回の結果によると感染から1年後に不調の人のほとんどはその半年後の1年半時点でも回復しないままのようです。無症状の感染と罹患後症状やその他の有害転帰(生活の支障、入院、救急受診、死亡)の関連は認められず、罹患後症状は感染症が重度だった人により生じていました。感染前のワクチン接種で罹患後症状を予防しうるとの一文で報告は締めくくられています2)。オミクロン株ワクチンは無駄ではないModerna社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株BA.1対応ワクチンmRNA-1273.529を追加接種した人の抗体を解析した試験報告5)によると、どうやらオミクロン株対応ワクチンは将来の新参株と戦う準備をも免疫系に備えさせる働きがあるようです6)。試験では26人のリンパ節検体と15人の骨髄検体が解析され、使いまわしのB細胞ではなく新品のB細胞をおそらく起源とするBA.1認識抗体が検出されました。その結果によると、BA.1のような変異株へのワクチン接種は先立つワクチン接種で備わったいわば使い古しのB細胞に免疫が固執(imprinting)してしまうのを乗り越え、新品のB細胞を手配して変異株に順応できるようにする働きがあるようです。また、元祖ワクチン接種を済ませたもののオミクロン株に感染した6人を調べた別の研究7)ではそういう順応が時を経るにつれて成熟していくことが示されています。オミクロン株感染から1ヵ月時点でのそれら6人の抗体はオミクロン株BA.1より元祖株にもっぱらより結合しましたが、感染から半年経つと6人のおよそ半数のB細胞は元祖株よりオミクロン株BA.1により結合する抗体を作るようになっていました6)。つまり感染後の免疫は時とともに成熟しました。新たな流行を引き起こす新参の次世代ウイルス株はその直前に流行った先代株やその先代株へのワクチンの抗原に元祖株より似通い、新参株に直面した免疫はその新参株に最も近い抗原に応じる既存のB細胞をまずは活性化します。よって、目下流行中のウイルス株へのワクチンを用意することは、その上手を行く新参株がやがて出現するにせよ価値があるでしょう6)。参考1)藤ヶ谷太輔、コロナ後遺症に悩むリスナーにメッセージ「僕も不安になりました」/マイナビニュース2)Hastie CE, et al. Nat Commun.2022;13:5663. 3)Long COVID at 12 months persists at 18 months, study shows / Reuters4)Long COVID Features Many Lasting Effects, Study Says / WebMed5)SARS-CoV-2 Omicron boosting induces de novo B cell response in humans. bioRxiv. September 22, 2022. 6)Omicron boosters could arm you against variants that don’t yet exist / Nature7)Evolution of antibody immunity following Omicron BA.1 breakthrough infection. bioRxiv. September 22, 2022.

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基礎疾患がある若年者、コロナワクチン後の抗体陽性率高い/成育医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らによって、免疫抑制状態を含む基礎疾患を有する12~25歳の患者における新型コロナワクチン接種後の安全性と抗体価が調査された。その結果、基礎疾患のある患者であっても、ワクチン2回接種後の抗体陽性率は高く、その抗体価は12~15歳の患者のほうが16~25歳の患者よりも高いことが明らかになった。これまでの新型コロナワクチンに関する調査は主に健康な人を対象としており、基礎疾患を有する小児や青年での安全性や抗体価の情報は限られていた。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2022年9月21日掲載の報告。 本調査の対象は、何らかの基礎疾患のある12~25歳の患者で、2021年7~10月にBNT162b2(ファイザー製ワクチン)を2回接種した429例であった。年齢中央値は15.0歳(四分位範囲:13.0~18.0歳)、12~15歳が241例(56.2%)、16~25歳が188例(43.8%)、男性が204例(47.6%)であった。最も多かった基礎疾患は遺伝/染色体疾患/先天奇形(67例、15.6%)で、内分泌/代謝疾患(55例、12.8%)、神経疾患(47例、11.0%)、肝疾患(43例、10.0%)と続いた。なお、基礎疾患が複数ある場合は、主たる基礎疾患を研究者が1つ選択した。免疫抑制状態の患者は138例(32.2%)であった。 安全性は、接種後1週間以内の副反応を紙媒体もしくはウェブを用いたアンケートによって調査し、接種後1ヵ月以内の入院を要する副反応は電子カルテを用いて調査した。抗体価は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体をワクチン接種2週間~4ヵ月後に測定した。年齢(12~25歳、16~25歳)や免疫不全の有無などで比較検討を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン2回接種後、1週間以内の38℃以上の発熱は、12~15歳では35.7%、16~25歳では28.0%であった。免疫機能が正常な患者では36.2%、免疫抑制状態の患者では24.1%であった。・重篤な副反応で入院を要したのは、1回目接種後は0例、2回目接種後は12~15歳で1例(0.4%)、16~25歳で2例(1.1%)であった。いずれの患者も回復して退院した。・ワクチン2回接種後の抗体陽性率は、抗体価を測定した397例中393例(99.0%)であった。12~15歳では552例中221例(99.5%)、16~25歳では175例中172例(98.3%)、免疫機能が正常な患者では264例中264例(100%)、免疫抑制状態の患者では133例中129例(97.0%)であった。・抗体価の幾何平均抗体価は、12~15歳が1603.3 U/mL(95%信頼区間[CI]:1321.8~1944.7 U/mL)、16~25歳が949.4 U/mL(同:744.2~1211.1 U/mL)であった。免疫機能が正常な患者では2106.8 U/mL(同:1017.5~2314.7 U/mL)、免疫抑制状態の患者では467.9 U/mL(同:324.4~674.8 U/mL)であった。・ステロイドや生物学的製剤などの複数の免疫抑制薬を服用している患者では、より低い抗体価を示す傾向があった。 同氏らは、「BNT162b2は、基礎疾患のある小児や青年において、許容可能な安全性を有しつつ免疫原性を高めた。この集団におけるワクチン接種後のまれな副反応を評価するためにはさらに大規模な調査が必要である」とまとめた。

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第119回 健康保険証を2024年度の秋に廃止へ/厚労省

<先週の動き>1.健康保険証を2024年度の秋に廃止へ、丁寧な対応を求める声も/厚労省2.新型コロナ・インフル同時流行に向けタスクフォース立ち上げ/厚労省3.自治体による公立病院への財政補助の見直しを/財務省4.2024年度からの医療費適正化計画の見直しに着手/厚労省5.複数の医師の退職で腎移植が不可能に/京都府立医大6.第8次医療計画で、在宅医療でのリハビリや栄養指導との連携強化を/厚労省1.健康保険証を2024年度の秋に廃止へ、丁寧な対応を求める声も/厚労省河野太郎デジタル大臣が10月13日の記者会見において、再来年の秋までに健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードと一体化すると発表した。総務省によると、マイナンバーカードの申請枚数は7,072万枚余り(10月11日時点)で、申請率は56.2%となっている。岸田内閣では、今年6月に閣議決定した「骨太の方針」で、保険証の原則廃止を目指すとしていたが、廃止の期限を24年秋と明示し、事実上の義務化に踏み込んだ形。政府は、マイナ保険証によって利用者が個人向けの専用サイト「マイナポータル」で診療履歴や薬の使用歴などが確認できるようになるほか、確定申告の医療費控除が簡単になるなどメリットを訴え、普及を高めるよう働きかけている。(参考)マイナ・保険証一体化 デジタル化遅れに危機感(毎日新聞)河野デジタル相 健康保険証を24年秋に廃止 国民や医療従事者の理解得られるよう取り組む(ミクスオンライン)埼玉で「地域医療」崩壊の恐れ? 「マイナ保険証の資格確認」に開業医ら反対、廃業検討も…何が起きている(埼玉新聞)オンライン資格確認等システム参加「義務化の撤回」を求める(埼玉保険医新聞)2.新型コロナ・インフル同時流行に向けタスクフォース立ち上げ/厚労省厚生労働省は、今年の冬に新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行に向け、関係する団体・学会と国や地方の行政機関と連携しながら取り組むため、「新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース」を立ち上げ、第1回会合を10月14日に開催した。これに先立ち、10月13日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の後に開催された記者会見で、尾身茂会長は「『第8波』は第7波以上の高い波になる」として、「感染拡大時の対策のあり方について早急に議論をすべき」との見解を示しており、これに応える形で開催された。タスクフォースでは、同時感染が生じた場合、ピーク時には発熱患者の合計が1日75万人が想定されるとし、重症化リスクの高い人を優先し、低リスクの人は症状が軽ければ「すぐの受診」は避けて自宅で検査キットを活用するなど検討している。(参考)第1回新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース(厚労省)第19回 新型コロナウイルス感染症対策分科会(内閣府)加藤厚労相、新型コロナ・インフル同時流行対策を発表…オンライン診療の活用呼びかけ(読売新聞)「コロナ第8波、第7波以上に」 尾身氏、議論呼びかけ(毎日新聞)3.自治体による公立病院への財政補助の見直しを/財務省財務省は、財政制度等審議会の財政制度分科会を10月13日に開催した。この中で、政府が、新型コロナウイルス感染対策で、政府から地方自治体にさまざまな形で補助金が交付されており、このため地方自治体の財政はプライマリーバランスの黒字が続いている。このため、コロナ対策の補助金の支給で、公立病院の経営状況について、公立病院全体の経常損益はコロナ前の2019年度は984億円の赤字が、翌年度には黒字に転換し、2021年度に3,296億円の黒字となったことを指摘した。参加した委員からは、これ以上の国の財政悪化を防ぐためにも、地方における社会保障費の抑制や地方自治体の公立病院への財政の繰り出しを求めた。政府は公立病院の経営改善を求めており、多額の補助金によって、公立病院の経営改革が阻害されることがあってはならないとし、経営強化プランを踏まえた取組を着実に進めていく必要があると指摘した。(参考)財務省、公立病院への繰り出しを疑問視 黒字転換したのに同水準を維持(CB news)地方財政(財務省 財政制度分科会)地方財政 参考資料(財務省 財政制度分科会)4. 2024年度からの医療費適正化計画の見直しに着手/厚労省厚生労働省は、10月13日に社会保障審議会医療保険部会を開催した。この中で医療費適正化計画の見直しに関する論点を提案した。医療費適正化計画は医療費の抑制や医療の効率的な提供の推進を目的に、2008年度から開始されており、2024年度から新たに第4期が開始されることになっている。この中で、現行の第3期医療費適正化計画の目標に対する進捗状況では、最終年度の2023年に80%が目標とされていた後発医薬品の使用促進は2020年度に79.6%とほぼ達成されていたものの、目標値が70%であった特定健診の実施率は53.4%と伸び悩んでいた。厚生労働省は、第4期医療費適正化計画に向けた論点として、新たに取り組むべき目標として、2025年には団塊の世代が全員後期高齢者となることを背景に、複合的なニーズを有する高齢者への医療・介護の効果的・効率的な提供と医療資源の効果的・効率的な活用を挙げた。(参考)医療費適正化計画に高齢者保健事業・介護予防を 厚労省が医療保険部会に論点提案(CB news)医療費適正化計画の見直しについて(社会保障審議会医療保険部会)5.複数の医師の退職で腎移植が不可能に/京都府立医大京都府立医大病院で、腎臓移植手術を行なっていた医師6名のうち5名が退職したため、今年の春以降、移植が行えなくなっていることが明らかとなった。京都府内では腎臓移植手術のシェアの9割以上を占めており、国内有数の施設であった。退職した医師らは移植外科に所属しており、転職や留学などのため相次いで退職。今年5月には診療科のトップの准教授も退職したため、医師は残り1人となり、移植手術が実施不可能になった。大学側は「できるだけ早期に手術を再開できるよう努力したい」としている。(参考)「腎臓移植」手術数は府内トップの病院だが…医師5人退職、手術できない事態に(読売新聞)腎臓の移植手術担う医師5人が相次ぎ退職、手術できず 京都府立医科大病院(京都新聞)6.第8次医療計画で、在宅医療でのリハビリや栄養指導との連携強化を/厚労省厚生労働省は第8次医療計画の策定に向けて、在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループを10月14日に開催した。この中で、在宅医療の現場で、救急医療機関と消防機関など、地域でのネットワーク作りが十分ではなく、情報共有が難しい状況であることや、緊急時に、即座に入院が可能な病院が必要とされ、在宅療養後方支援病院のほか、在宅療養支援病院が役割を担っているケースもあるので、後方支援機能を検討することになった。このほか、在宅医療の提供体制に、訪問リハビリテーションや訪問栄養食事指導を加えることとし、これらの職種を含め、多職種の連携を加えることを了承した。(参考)次期指針での在宅医療提供体制、訪問リハなど項目追加 厚労省WG了承、次回取りまとめへ(CB news)第7回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料(厚生労働省)

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コロナ・インフル同時流行時の対応策を発表/厚労省

 厚生労働省は2022年10月13日、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時流行した場合の外来受診の流れを発表した。重症化リスクに応じて受診方法が2つに分かれており、発熱外来の受診は原則として重症化リスクの高い患者(小学生以下の子供、妊婦、基礎疾患を有する人、高齢者など)に限られる。 重症化リスクの高い患者は、発熱外来、かかりつけ医、地域外来・検査センターを速やかに受診する。新型コロナ、インフルエンザの検査を実施し、陽性だった場合は自宅療養や入院となる。 一方、重症化リスクの低い患者は、まず新型コロナ検査キットで自己検査を行い、コロナ陰性だった場合はオンライン診療などでインフルエンザかどうかの診断を受け、インフルエンザと診断された場合は、必要に応じて抗インフルエンザ薬などの処方を受けて自宅療養となる。コロナ陽性だった場合は、健康フォローアップセンターに登録したうえで自宅療養となる。ただし、症状が重い場合や受診を希望する場合は、発熱外来やかかりつけ医の受診も可能とした。

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BA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験、7日後データ/ファイザー

 米国・Pfizerは10月13日付のプレスリリースで、同社のオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、18歳以上における臨床試験の初期データを発表した。2価ワクチン追加接種から7日後に被験者から採取した血清で、オミクロン株BA.4/5に対する中和抗体反応が、追加接種前よりも大幅に上昇したことが確認され、若年層と高齢者ともに、同社の起源株に対する1価ワクチンよりも、BA.4/5への予防効果が期待できることが示唆された。 同社が実施したBA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験では、55歳以上で1価ワクチン3回+2価ワクチン(30μg)で4回目接種して7日後の血清(40例)と、同年齢層で1価ワクチン3回+1価ワクチン(30μg)で4回目接種して7日後の血清(40例)とが比較された。また、18~55歳の1価ワクチン3回+2価ワクチンで4回目接種して7日後の血清(40例)も採取され、若年層と高齢者の2価ワクチンの反応も比較された。2価ワクチン接種群の3回目と4回目の接種間隔は約11ヵ月であったが、1価ワクチン接種群の3回目と4回目の接種間隔は約6ヵ月であった。この差にもかかわらず、中和抗体価のベースラインは各群でおおむね同程度だった。被験者のうち新型コロナの既往・現病歴がある人とない人は、各群で均等に層別化された。免疫原性は、SARS-CoV-2ライブウイルス蛍光焦点還元中和アッセイ(FFRNT)を用いて評価された。 主な結果は以下のとおり。・2価ワクチンの追加接種を受けた被験者は、追加接種前よりもオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体反応が大幅に増加し、18~55歳と55歳以上の両群で同等の反応が認められた。・55歳以上の4回目接種で、1価ワクチン群と2価ワクチン群を比べると、2価ワクチン群のBA.4/5に対する中和抗体反応がより増加していた。・2価ワクチンは忍容性が高く、初期データでは1価ワクチンと同等の良好な安全性プロファイルが示された。 同社は、2価ワクチンの追加接種から1ヵ月後の反応を測定した追加データについて、数週間以内に得られる見込みだとしている。

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4回目接種後、高齢者の入院予防効果はどれだけ上がるか/BMJ

 中等症~重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンの有効性は、3回目接種後に経時的に低下したが、4回目接種が推奨されたほとんどのサブグループで追加ブースター接種により改善することが、米国疾病予防管理センター(CDC)のJill M. Ferdinands氏らが実施した検査陰性デザインによる症例対照研究で示された。COVID-19のBNT162b2(ファイザー製)/mRNA-1273(モデルナ製)ワクチンは、有効性が経時的に低下し追加接種で上昇することが臨床研究で示唆されているが、この傾向が年齢、免疫不全状態、ワクチンの種類や接種回数でどのように変化するかは不明であった。今回の結果を受けて著者は、「3回目ワクチン接種の推奨と追加ブースター接種の検討が推奨される」とまとめている。BMJ誌2022年10月3日号掲載の報告。約89万人を対象とした検査陰性デザインによる症例対照研究 研究グループは、2021年1月17日~2022年7月12日の期間に、VISIONネットワークに参加している米国10州の病院261施設、272の救急診療部(ED)または救急診療所(UCC)119施設に入院または受診した、COVID-19様疾患のためSARS-CoV-2検査を受けた18歳以上の成人89万3,461例について解析した。 主要評価項目は、BNT162b2またはmRNA-1273ワクチンの有効性の低下であった。オミクロン変異株流行期、デルタ変異株流行期およびデルタ変異株流行前の期間に分け、暦週と地理的地域を条件とし、年齢、人種、民族、地域のウイルス循環、免疫不全状態、ワクチン接種について調整したロジスティック回帰モデルで推定した。オミクロン株流行期の有効性、3回目接種後<2ヵ月が最も高く4~5ヵ月後には低下 病院に入院したCOVID-19症例4万5,903例とSARS-CoV-2検査陰性のCOVID-19様疾患21万3,103例(対照)を、ED/UCCを受診したCOVID-19症例10万3,287例とSARS-CoV-2検査陰性のCOVID-19様疾患53万1,168例を比較した。 オミクロン株流行期において、病院に入院を要するCOVID-19に対するワクチンの有効性は、3回目接種後<2ヵ月では89%(95%信頼区間[CI]:88~90)であったが、4~5ヵ月後には66%(63~68)に低下した。また、COVID-19によるED/UCC受診に対するワクチンの有効性は、3回目接種後<2ヵ月で83%(82~84)であったが、4~5ヵ月後には46%(44~49)に低下した。 ワクチンの有効性の低下は、若年や免疫不全状態ではない集団などすべてのサブグループで認められたが、免疫不全状態の集団でより顕著であった。 ブースター接種が推奨されるほとんどの集団において、4回目接種後にワクチンの有効性は増加した。65歳以上における入院に対する有効性は、3回目接種後8ヵ月以上で45%であったのが、4回目接種後2ヵ月で76%に増加した。

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塩野義のコロナ治療薬、発症予防検証の第III相試験を12月に開始

 塩野義製薬は、10月11日に行われたR&D Day 2022にて、同社が開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)経口治療薬ensitrelvir(S-217622)について、症状の発生抑制効果を検証するため、SARS-CoV-2感染症患者(初発患者)の同居家族を対象とした第III相臨床試験(SCORPIO-PEP試験)を、日本と米国などで2022年12月より開始する予定であることを発表した。また、6~12歳未満の軽症・中等症を対象とした日本での第III相試験や、入院患者を対象とした米国、欧州などでの第III相試験を、ともに2022年11月から実施することなども明らかにした。 説明会資料によると、COVID-19発症予防効果の検証のための第III相試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて、日本と米国、そのほか数ヵ国の2,040例を対象に実施される。SARS-CoV-2に感染した初発患者の同居家族に対して、ensitrelvir投与群とプラセボ群とを比較し、投与開始から10日間後のCOVID-19症状の発症抑制効果を検証する。本試験は、2023年7~9月での症例集積完了を目指している。 なお、ensitrelvirのマウス感染モデルでの予防効果試験では、SARS-CoV-2感染24時間前に用量128mg/kg、64mg/kg、32mg/kgの3パターンで本剤を単回皮下投与して比較した結果、投与量64mg/kg以上(感染時血漿中濃度2.99μg/mL)で致死抑制効果が認められたとし、予防的にensitrelvirを投与することにより、SARS-CoV-2感染マウスの生存率が改善した。 ensitrelvirの小児への臨床試験については、6~12歳未満の軽症・中等症を対象に、錠剤投与による試験を国内で11月に開始するほか、0~6歳未満を対象として、顆粒製剤を使ったグローバル第III相試験を計画している。12~18歳未満については、国内とグローバルで実施中の第II/III相試験結果を基に、日米欧の適応取得を検討している。 また、同社の開発する新型コロナワクチン(S-268019)については、年内に承認申請を行う方針を明らかにした。変異株への対応として、S-268019臨床試験検体における追加免疫時の中和抗体価は、ファイザー製ワクチンによる追加免疫時の中和抗体価と同程度だという。なお、オミクロン株の遺伝子情報を基にした抗原製造プロセスの検討は最終段階にあるとしている。

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新型コロナワクチン未接種者の特徴とは?

 世界中で新型コロナワクチンの接種やブースター接種が進められる中、まだ1度もワクチンを接種していないワクチン未接種者が存在する。これらの人々には共通の特性があるのだろうか。スコットランドにおいて未接種者の特性を調べたPublic Health Scotland所属のSafraj Shahul Hameed氏らによる研究結果がLancet誌2022年9月24日号 CORRESPONDENCEに掲載された。 2022年8月10日までに、スコットランドに住む約440万人の成人のうち、349万7,208人がCOVID-19ワクチンの3回接種を完了している。Hameed氏らは、2019年1月1日以降にスコットランドの国民保健サービス(NHS)と少なくとも1回のやりとりがあった、ワクチン接種記録がない人を未接種者と定義した。 ワクチン接種対象者として記録された471万2,810例のうち、84万2,029例(17.9%)に接種の記録がなかった。このうち8万6,489例(10.3%)に免疫性の禁忌、接種の同意が得られない、体調不良、患者による接種拒否など、未接種の理由が記録されていた。記録された理由の約5分の1が免疫性の禁忌だった。 研究所の記録から、パンデミック開始以降に少なくとも1回COVID-19のPCR検査を受け、かつ接種記録のない25万4,049例が確認された。病院以外の処方記録から2019年1月1日以降に何らかの薬を処方された、接種記録のない41万6,499例を特定した。28万5,647例の未接種者が予定外の医療機関受診(NHS 24、家庭医の時間外診察、スコットランド救急サービスのいずれか1つ以上)をしており、13万3,569例の未接種者が少なくとも1回の入院を経験していた。上記のデータのいずれにもワクチン接種の記録がない26万8,740例が確認された。 スコットランドでCOVID-19ワクチン接種の記録がない57万3,289例の成人が、2019年1月1日以降にNHSと少なくとも1回接触していることが確認された。ワクチン接種プログラムの開始以降に死亡した人、および未接種の理由として免疫性の禁忌が記録されている人を除外し、2022年8月10日時点で、COVID-19のワクチン接種の記録がない49万4,288例を未接種者として特定した。 この未接種者コホートは、男女比がほぼ同じ、年齢分布も男女ともほぼ同じで、平均年齢は42.4歳であった。多くは都市部に住んでおり、29.0%がScottish Index of Multiple Deprivation(雇用や所得など7領域の総合指標)のスコアが最も低い地域に居住していた(接種者は18.7%)。 家庭医の記録によると、未接種者のうち29万8,866/49万4,288例(60.5%)が併存疾患を有していない(接種者は198万8,751/384万7789例[51.7%])一方で、5万5,122/49万4,288例(11.2%)が3つ以上の併存疾患を持っていた(接種者は48万1,019/384万7,789例[12.5%])。未接種者で最も多く報告された併存疾患は、慢性呼吸器疾患(15.7%)、うつ病(12.8%)、高血圧症(10.6%)であった。 未接種者の5人に1人(10万3,505例[20.9%])が中枢神経系に関連する疾患の薬を処方されており(接種者は65万5,531例[17.0%])、さらにうち3分の1以上(4万179/10万3,505例[38.8%])が抗うつ薬を処方されていた。 多変量ロジスティック回帰分析により、ワクチン接種動向を予測する可能性が最も高い因子を同定した。男性、貧困度が高い、大都市圏在住、中枢神経系疾患の薬を処方されている、3つ以上の併存疾患があることは未接種と最も関連していたが、いくつかの併存疾患(高血圧、糖尿病、慢性呼吸器疾患など)を持つ人は、ワクチン接種を受ける可能性が高かった。 英国の過去のデータでは、年齢の上昇と併存疾患はCOVID-19死亡率を上げる最も広く認識されているリスク要因の一つだが、併存疾患を多く持つ人々は、未接種のリスクが高いままであった。 著者らは「本分析により、人口規模の過大推定の可能性を考慮しても、スコットランドの成人人口のかなりの割合がワクチン未接種であることが明らかになった。また、ワクチン未接種状態の予測因子も明らかになり、国のワクチン接種戦略の改訂に役立てることができる」としている。

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第130回 BA.4/5対応2価ワクチン特例承認、予想された現場の混乱と大量廃棄が現実に

オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンを特例承認こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBも日本のプロ野球もいよいよポストシーズンに入りました。ダルビッシュ 有投手が所属するサンディエゴ・パドレスはナショナル・リーグでまだ生き残っており、12日(日本時間)からの地区シリーズでロサンゼルス・ドジャースと対戦します。予定では13日の第2戦に先発します。かつて所属し、苦い経験のあるドジャース(2017年に所属、ワールドシリーズで2回敗戦投手に)相手に、ねじ伏せるような好投を期待したいと思います。一方、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手は、15勝9敗、34本塁打、95打点で今シーズンを終え、シーズンの規定投球回数と規定打席数もクリアしました。それはそれでファンとしては大変喜ばしいのですが、やはりMLB選手の真価はワールドシリーズに進出し、勝ち切ってこそだと思います。来シーズンにはせめてポストシーズンまでは進出して欲しいですが、ジョー・マドン監督を追い出した自分勝手なペリー・ミナシアンGM(球場で携帯ばかりいじっています)や、監督代行から監督に昇格したフィル・ネピン監督(采配が淡白なわりに退場が多い)では、来年もそんなには期待できないかもしれません。さて、新型コロナウイルスのワクチンですが、厚生労働省は10月5日、米・ファイザーの従来株とオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の2価ワクチンを特例承認しました。そして、10月7日、厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会はこの2価ワクチンを、予防接種法上の特例臨時接種に位置付けることを承認しました(生後6ヵ月~4歳を対象としたファイザーのワクチン[従来型ワクチン]も5日に特例承認され、7日の同分科会で臨時接種とし、5歳以上と同じ「努力義務」に位置付けられています)。現在の感染の主流になっているBA.5に対応するワクチンなので、こちらも喜ばしいニュースではあります。しかし、確保可能となった新しいワクチンを、中長期的な戦略もなく税金を湯水のように投入し、次々と承認していく国の姿勢については少々首をかしげざるを得ません。「“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」新型コロナウイルスのワクチンについては今年の夏以降、本連載でも度々取り上げて来ました。「第122回 米国では使わない2価の“旧改良ワクチン”を日本は無理やり買わされる?国のコロナワクチン対策への素朴な疑問」(2022年8月17日公開)では、米国ではBA.4/5対応のワクチンにシフトしているのに、日本がBA.1対応の“旧改良ワクチン”をまず承認する方針であることに対し、「米国と比べて周回遅れ」と指摘しました。9月に入ると事態は動き、ファイザーが日本でもBA.4/5対応の“新改良ワクチン”の製造販売の承認を厚労省に申請しました。この“新改良ワクチン”が今回特例承認された2価ワクチンです。このときは、「第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」(2022年9月7日公開)で、「“新改良ワクチン”がもうすぐ出るのに、“旧改良ワクチン”を積極的に打とうという人が現れるでしょうか。また、“新改良ワクチン”を承認したら、国が契約して買ってしまった(と思われる)“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」と書きました。こうした危惧は、どうやら現実のものとなりそうです。「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と厚労省ファイザーの従来株とオミクロン型BA.4/5に対応した2価ワクチンは、10月13日以降、準備ができた自治体から順次接種が開始されるとのことです。2、3回目接種を終えた人の追加接種に使用可能で、対象は12歳以上、前回接種から少なくとも5ヵ月経過後に接種できる、とされました。ただ、厚労省は10月7日、新しいワクチンを含む新型コロナウイルスワクチンの接種間隔を短縮する案について、9月19日に開く専門部会で薬事審査すると発表しています。というわけで、早ければ10月中にも接種間隔は3ヵ月に短縮化される方向です(4回接種済みの60歳以上も3ヵ月後に接種可能に)。接種間隔短縮議論の背景には、高齢者にBA.4/5に対応したワクチンを早めに接種してもらいたいことや、若者を中心に相変わらず接種が進んでいないこと、ワクチン余りなどがあるようです。9月20日から高齢者に対する接種が始まったばかりのオミクロン型BA.1に対応したワクチンに続き、BA.4/5対応ワクチンも登場したことで、接種可能なワクチンの種類が増えることになります(モデルナもBA.4/5対応ワクチンを承認申請中)。厚労省は「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と呼びかける方針とのことですが、国民や現場の混乱は始まっています。BA.1対応ワクチンは廃棄か?頭悩ませる自治体10月7日付の毎日新聞は、「第8波、ワクチンに思わぬ課題」と題する記事で「厚労省はいずれも従来のワクチンを上回る重症化予防効果があると説明し、扱いに差を付けず、使用期限が早く来るものを優先して使うことを推奨する。ただ、住民がワクチンの種類を選べるようにするかどうかは自治体の判断に委ねる(中略)。東京都墨田区役所には、住民からの問い合わせが相次いでいる」と書いています。そして同記事は、「BA.5対応は10月中旬以降、自治体への配送が始まる。一方、BA.1対応ワクチンの在庫を使い切るには10月末までかかる可能性がある。担当者は『BA.5対応への切り替えが遅いと、区民が接種を先延ばしして接種率が下がりかねない』と懸念する。現在、接種の予約は半分程度しか埋まっていない。一方で『BA.1対応の在庫を余らせて廃棄するわけにはいかない」と頭を抱えている』」と自治体担当者の悩みを伝えています。オミクロン型未対応の従来型ワクチンは既に大量廃棄の道へ報道等によれば厚労省は自治体に対し、BA4/5対応ワクチンは約4,300万回分を供給する配分計画を示しています。既に約3,700万回分の供給が決まっているBA.1対応ワクチンと混在することになります。9月20日から使い始めたばかりのBA.1対応のワクチンはどうみても相当数廃棄になる可能性が高そうです。BA.1対応ワクチンの廃棄以前に、オミクロン型に対応していない従来型ワクチンも大量廃棄が始まっています。10月6日付の朝日新聞は「従来型ワクチン大量廃棄へ」と題する記事で、「朝日新聞が20の政令指定都市に取材したところ、9月下旬の(従来型ワクチンの)在庫は約220万回分。(中略)。予約は少なく、在庫の多くは使われないとみられている」と書いています。政治家の決断でお金をドブに捨てる政策が多過ぎるオミクロン対応型ワクチンの登場で、従来型のニーズがなくなるのは理解できます。しかし、今年8月の段階で米国においてBA.4/5対応ワクチンの実用化が近づいていたのに、BA.1対応ワクチンの承認をことさら急いだ理由がよくわかりません。8月時点ではBA.4/5対応ワクチンの日本での確保の目処が立ってなかったからでしょうか。だからといって、無駄になるかもしれないワクチンに巨額の税金を使っていいということにはなりません。喜ぶのはファイザーやモデルナなどの米国企業と米国政府だけです。新型コロナウイルスワクチンの予防接種はすべて国費で賄われます。「とにかく最善を最短で」というのもわかりますが、首相や内閣官房、厚労省ももう少し冷静で的確な判断ができなかったのかと思います。現状、自治体におけるBA.1対応ワクチンの接種予約は低調と言われています。BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンのうち、「どちらの方がオミクロン型BA.5に効果があるかの評価は定まっていないからどちらでも」と言われても、普通に考えればBA.4/5対応ワクチンでしょう。よりいい新製品がまもなく打てるのに、旧製品をわざわざ急いで打つ人はいません。国は国産コロナワクチンの開発や、国産の新薬開発に莫大な税金を投じ、ドブに捨ててきました。それらの政策の中には、「国民のため」なのか時の首相の「”やってる感”のため」なのかわからないものも多々ありました(コロナ対策に限らず、安倍 晋三元首相の国葬もそうした印象を受けました)。政治家(とくに首相)には、自分の決断で使うお金の出処が、自分の貯金ではなく税金である、という自覚をもっと持っていただきたいと思う今日この頃です。

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BA.5の中和抗体高いのは?未感染の3回接種者vs.感染後の2回接種者/感染研

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔などさまざまな要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。国立感染症研究所が9月27日に発表した研究によると、ワクチン接種や感染による抗体保有者の血清を用いて、各種変異株に対する中和抗体価の比較試験を行った結果、未感染のワクチン3回接種者は、感染後にワクチンを2回接種し、接種から半年程度経過したハイブリッド免疫を持つ者よりも、優れた中和能を有することなどが明らかになったという。 本調査では、2021年12月~2022年2月に実施された「第三回および第四回新型コロナウイルス感染症に対する抗体保有率調査」に参加した1万6,296例から、ワクチン未接種の感染者(38例、0.2%)、感染後にワクチンを2回接種した者(146例、0.9%)、感染歴のない2回ワクチン接種者(1万2,019例、73.8%)、感染歴のない3回ワクチン接種者(1,255例、7.7%)が同定された。感染とワクチン接種回数、接種からの経過期間の組合せにより誘導される変異株に対する中和抗体価を評価するため、感染から5~7ヵ月経過した未接種感染者(19例)、最終ワクチン接種から5~7ヵ月経過した感染後2回接種者(19例)、最終ワクチン接種から1ヵ月以内のワクチン3回接種者(30例)の検体を選抜し、各種変異株に対する血清中和抗体価が比較された。中和試験では、2倍階段希釈した血清を分離ウイルス(祖先株、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.5、BA.2.75)と混合し、5日間培養後、細胞変性効果の有無により中和活性を評価した。また、中和試験の結果を用いて、祖先株およびオミクロンの各株の抗原性の違いを評価するために抗原地図が作成された。 主な結果は以下のとおり。・感染後2回接種者は、ワクチン未接種感染者に比べて、祖先株に対する中和抗体価だけでなく、BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても高い中和抗体価を示した。・未感染3回接種者は、祖先株およびBA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても、感染後2回接種者に比べて、高い中和抗体価を示した。・3回接種直後の者は、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者よりも、いずれの変異株に対しても高い中和抗体が誘導されていることが示された。・抗原地図によると、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5は、祖先株からの抗原距離が離れており、中でもBA.5は最も祖先株と抗原性が異なるウイルスであることが明らかになった。・3回接種者の血清において、BA.5に対する中和抗体価は、祖先株に対する中和抗体価に比べて10分の1ほど低くなっていた。 著者は本結果について、感染歴のある者にワクチンを接種することにより、感染ウイルス株やワクチン株だけでなく、直近のオミクロン亜系統株に対しても中和能を有する抗体を誘導できるとする一方で、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者のハイブリッド免疫の液性免疫は、未感染3回接種者よりも優れているとは限らないとしている。また、祖先株と抗原性が最も異なるBA.5は、ワクチン免疫を最も回避しやすいウイルスであると考えられるため、オミクロン株対応型ブースターワクチンの導入が有益である可能性が示唆された。今後の調査では、今回検体が入手できなかった3回目接種から5~7ヵ月経過した者や、4回目接種者の血清中和抗体価の評価も重要であると述べている。なお、デジタル庁ワクチン接種記録システムによると、国内におけるワクチン3回接種者の割合は、10月4日時点で全人口の約65%となっている。

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第133回 パキロビッド投与後のCOVID-19再燃は免疫障害に起因するのではなさそう

Pfizer社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)プロテアーゼ阻害薬・パキロビッドパック(Paxlovid、以下パキロビッド)投与が済んだ後のSARS-CoV-2感染(COVID-19)再燃(再発症やSARS-CoV-2再検出)は心配されていた免疫反応の障害によるのではないらしいことが米国政府研究者の試験で示唆されました1-3)。米国メリーランド州のNIH Clinical Centerや同国のその他の病院で進行中の試験の被験者を調べたその結果によるとパキロビッド投与5日間は短すぎてSARS-CoV-2への確実な免疫反応を引き出せないという仮説はどうやら的外れなようです2)。Clinical Infectious Diseases誌に先週6日に掲載されたその研究ではパキロビッド使用後にCOVID-19再燃を被った6例と再燃症状なしのCOVID-19患者6例が調べられました。COVID-19再燃患者6例はCOVID-19ワクチンの追加接種まで済ませており、最初の発症から4日以内にパキロビッドを使い始め、その後にCOVID-19症状が再発しました。比較対照群であるCOVID-19非再燃6例もワクチン追加接種済みでした。COVID-19再燃患者6例も対照群の6例も最初の感染や再燃の時に入院を要する重病には陥らずに済みました。それら12例の病状の経過や血液/鼻ぬぐい液を解析した結果、パキロビッドを効かなくすると思しき変異は幸いにもCOVID-19再燃患者に認められませんでした。SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体はどの患者でも豊富で、COVID-19再燃患者の抗体確立の遅れを示す所見はありませんでした。SARS-CoV-2特異的なT細胞反応も確かであり、COVID-19再燃患者のその反応は非再燃患者を上回っていました。昔ながらの手法の培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ自己免疫疾患で免疫不全の1例から感染可能なSARS-CoV-2が検出されました。また、ウイルスの細胞侵入をおよそ10倍高める成分・ポリブレン添加による培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ昔ながらの手法より多い4例からSARS-CoV-2が同定されました。それらの結果によると再燃症状はSARS-CoV-2の名残りのRNAへの確固たる細胞反応を一因とするのであって免疫反応の障害がウイルス複製を許してしまうことに起因するのではなさそうです。COVID-19再燃患者から感染可能なSARS-CoV-2が検出されたことから隔離を要する場合があるかもしれません。それに、免疫反応が不十分な免疫不全の人へのより長期のパキロビッド治療を検討する臨床試験が必要なようです2)。参考1)Epling BP, et al.Clin Infect Dis. 2022 Oct 6:ciac663. [Epub ahead of print]2)Findings suggest COVID-19 rebound not caused by impaired immune response / Eurekalert3)COVID rebound after Pfizer treatment likely due to robust immune response, study finds / Reuters

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コロナ陽性判定後の鼻洗浄で重症化リスクが1/8に!?

 新型コロナウイルスの陽性判定後であっても、1日2回の鼻洗浄によって入院や死亡のリスクが低減することが、米国・Augusta UniversityのAmy L Baxter氏らにより報告された。新型コロナウイルスはACE2受容体に結合して細胞内に侵入することが知られているが、ACE2受容体にまだ結合していないウイルスを洗い流すことで、重症化を防ぐことができる可能性がある。Ear, Nose & Throat誌オンライン版2022年8月25日掲載の報告。 解析対象は、2020年9月24日~12月21日に実施された新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、24時間以内に登録された55歳以上のハイリスク患者79例。平均年齢64±8歳、女性が36例(46%)、非ヒスパニック系白人が71%、平均BMIが30.3であった。 参加者を、240mLの生理食塩水に、10%ポビドンヨード液(2.5mL)または重曹(2.5mL)を混和した群に無作為に割り付け、14日間、1日2回鼻洗浄を行った。ポビドンヨード群は37例、重曹群は42例であった。主要評価項目は登録28日以内の新型コロナウイルス感染による入院または死亡で、副次的評価項目は鼻洗浄による症状の軽減であった。対照群は、米疾病対策センター(CDC)のデータにより、同期間に新型コロナウイルス陽性が判明した50歳以上の296万2,541例であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者は、79例中62例が連日鼻洗浄を行った(1日平均1.8回)。・入院はポビドンヨード群で1例発生し、重曹群ではいなかった(1.27%)。死亡は両群ともいなかった。・対照群では、28万533例(9.47%)が入院し、入院データのない患者の死亡は4万4,773例(1.5%)であった。・対照群の入院・死亡リスクは、鼻洗浄を実施した人の8.57倍であった(標準誤差[SE]:2.74、p=0.06)。・鼻洗浄液の種類にかかわらず、1日2回の鼻洗浄を実施した人のほうが症状の軽減が早かった(x2=8.728、p=0.0031)。

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免疫抑制患者、ブースター接種50日以降に入院・死亡リスク増/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株とオミクロン変異株が優勢であった時期に、ワクチンの初回および追加接種を受けた集団では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院や死亡の発生率が低く、複数回接種により重症COVID-19関連疾患の予防効果がもたらされた可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJ. Daniel Kelly氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年9月26日号で報告された。米国の後ろ向きコホート研究 研究グループは、米国の退役軍人健康管理局で治療を受けた経験のある集団を対象に、ワクチンの初回接種と追加接種後における重症COVID-19関連疾患の発生の評価を目的に、後ろ向きコホート研究を行った(米国退役軍人省などの助成を受けた)。 試験期間は2021年7月1日~2022年5月30日で、参加者はワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製]、Ad26.COV2.S[ヤンセン製])の初回接種と追加接種を受けた。 161万719例が解析に含まれた。このうち男性が147万8,476例(91.8%)、女性は13万2,243例(8.2%)で、全体の年齢中央値は71歳(四分位範囲[IQR]:61~76)、110万280例(68.4%)が65歳以上で、113万3,785例(70.4%)は高リスクの併存疾患を有しており、15万8,684例(9.9%)は免疫抑制の状態であった。また、146万7,879例(91.1%)は、初回と追加で同じmRNAワクチンの接種を受けていた。免疫抑制状態の患者では経時的な効果が確認できず 24週の追跡期間中に、161万719例中2万138例でワクチン突破型(追加接種後に検査で確定された症候性COVID-19の診断と定義)のCOVID-19(125.0件[95%信頼区間[CI]:123.3~126.8]/1万人)が発現した。また、1,435例でCOVID-19に起因する肺炎による入院または死亡(8.9件[8.5~9.4]/1万人)が、541例で重症COVID-19肺炎による入院または死亡(3.4件[3.1~3.7]/1万人)が認められた。 高リスク集団におけるCOVID-19肺炎による入院または死亡の発生率は、65歳以上では1.9件(95%CI:1.4~2.6)/1万人であり、高リスクの併存疾患を有する集団では6.7件(6.2~7.2)/1万人、免疫抑制状態の集団では39.6件(36.6~42.9)/1万人であった。 COVID-19肺炎による入院または死亡の集団のサブグループ解析では、追加接種後24週までに、ワクチン接種の5つの組み合わせ(BNT162b2の3回接種、mRNA-1273の3回接種、Ad26.COV2.Sの2回接種、異なるmRNAワクチンの接種、Ad26.COV2.SとmRNAワクチンの接種)で、経時的な累積発生率に差はみられず、全般に発生率は低かった。 高リスク集団の経時的な解析では、免疫抑制状態の患者は免疫抑制のない患者と比較して、追加接種後51~100日(1~50日との比較でp=0.004)および101~150日(同p<0.001)のCOVID-19肺炎による入院または死亡のリスクが有意に高かった。この傾向は、BNT162b2の3回接種(追加接種後51~100日:p=0.02、同101~150日:p=0.002)およびmRNA-1273の3回接種(p=0.22、p=0.006)を受けた患者でも認められた。一方、65歳以上や高リスク併存疾患を有する集団では、このような傾向はみられず有効性が保持されていた。 著者は、「この研究は、デルタ変異株およびオミクロン変異株(BA.1、BA.2、BA.2.12.1)を含むSARS-CoV-2が米国で優勢であった時期に行われており、ワクチンの追加接種は、ウイルスが進化しても引き続きCOVID-19による重症疾患に対する予防効果をもたらしたことが示唆される」としている。

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第129回 国のコロナ治療薬支援は適正価格?現況を列挙してみると…

前回、興和が実施していた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する抗寄生虫薬のイベルメクチンの第III相臨床試験で有効性を示せなかったことについて触れた。その際に、私は厚生労働省が開発支援として同社に約61億円を拠出したことについては、日本にとってやむなしという見解を示している。ところで国の新型コロナ治療薬の開発支援にはどの程度のお金がこれまで使われたのか? 実はこれを正確に計算することはなかなか困難である。というのも、まず財布(支出元)が厚生労働省、国立感染症研究所、日本医療研究開発機構(AMED)、内閣府、経済産業省、文部科学省など多岐にわたるからだ。また、この中には正規の当初予算の中の予備費などを活用したものや補正予算で対応したものなどさまざま。支出先も製薬企業だけでなく、大学その他の研究機関なども少なくない。こうした中で最も分かりやすい厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症治療薬の実用化のための支援事業」で製薬企業に直接支出されたものは以下のようになる(金額は百万円単位を四捨五入)。エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ):82億2,000万円[?]イベルメクチン(商品名:ストロメクトール):61億6,000万円[試験未達]ファビピラビル(商品名:アビガン):14億8,000万円[試験終了、申請意向は不明]カモスタット(商品名:フオイパン):6億円[コロナ対象の開発中止]AT-527:4億6000万円[国内開発終了]カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ):3億2,000万円チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド):2億8,000万円ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ):2億6,000万円オチリマブ:1億9,000万円[開発中止]総額では約179億円になる。ちなみに各種報道によると、大学などへも含めた治療薬開発支援の総額は1,000億円超に上るという。現在までにこれらの中で上市に至ったものへの支援総額は8億6,000万円、支出総額の5%程度に過ぎない。開発が進行中で最多金額が支出されたエンシトレルビルは先日、第III相臨床試験でポジティブな結果が報告されたため、このままで行けば上市される可能性が高い。この分を含めると支援総額の半分はなんとか上市にこぎつけることになる。さて、この予算投入に対する評価は個人によってかなり変わるかもしれない。私はまずまずの結果と見ている。ただ、敢えて本音を言えば「ふーん、これが先進国である日本の有様?」とも考えてしまう。率直に言えば、支援額は「0が2つ足りない」とさえ思う。ご存じのように今や1つの新規成分を治療薬として上市するまでには、期間にして20年、費用にして200億円を要すると言われる。その中で抗ウイルス薬はかなり開発が難航する領域である。世界で初めて製品化された抗ウイルス薬といえば、ヘルペスウイルスに対するアシクロビルである。現在のグラクソ・スミスクラインの前身であるバローズ・ウエルカム社の研究所で1974年に開発され、開発者であるジョージ・H・ヒッチングスとガートルード・B・エリオンはその功績が評価され1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。念のため言うと、世界で初めて合成に成功した抗ウイルス薬はリバビリンだが、当初の開発目的であったインフルエンザ治療薬としての上市は成功せず、C型慢性肝炎治療薬として世に出るには1990年代まで待たなければならなかった。このように抗ウイルス薬は数ある疾患治療薬の中で、まだ半世紀にも満たない歴史しかなく、合成には数多くのペプチド結合などが必要となるため、開発は容易ではない。ヒト免疫不全ウイルスの登場とその戦いにより抗ウイルス薬の開発に弾みはついたものの、現在ある何らかの抗ウイルス薬のうち国産(国内開発)はインフルエンザに対するバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)とラニナミビル(商品名:イナビル)、ファビピラビル(商品名:アビガン)ぐらいである。また、今回の新型コロナでは感染症に抗体医薬品を用いるという新たな戦略が登場したが、抗体医薬品開発能力がある国内の製薬企業は限られている。さらにこの間、新型コロナに対する抗ウイルス薬や抗体医薬品の上市に成功した外資系製薬企業のほとんどが日本円換算で年間の研究開発費が1兆円超。かつ上市に成功した治療薬のほとんどは完全な自社創製ではなく導入品である。悪く言えば、札びらで横っ面をひっぱたきながら時間を買ったとも言えるが、もはやこれは製薬業界ではごく当たり前の開発プロセスの一つになっている。いずれにせよ、新型コロナ治療薬開発競争での日本のディスアドバンテージは大きく、実際、現在までに登場した国産治療薬はない。第8波を迎える前に、そろそろこの辺の総括に入っても良いのではないかと思っている。もっとも今後のパンデミックを見越してやらなければならないことは国と企業ではかなり違う。国がやるべきは、公的研究機関での創薬そのものと言うよりは創薬の基盤技術への大規模・持続的な投資である。もっとも創薬技術が長足の進歩で高度化している以上、すべての基盤技術を国内の公的研究機関で獲得することは困難である。私自身は以前の本連載でも触れたとおり、新薬開発の極端な国粋主義には批判的な立場である。その意味では海外の研究機関との人事交流も含めた提携も欠かせない。これらをいかに「年度主義」から脱して持続的に行えるかがカギである。そして公的研究機関もそれぞれの組織や個人によって特徴がある。その各機関の研究情報の集約と岸田首相が創設を打ち出した日本版CDCとの間のネットワーク化も整備しなければならない。一方、民間企業、すなわち製薬企業側に求められることの一つは日本を軸としたアジア圏での臨床試験実施体制の確立である。メガファーマと呼ばれる国際製薬大手の新型コロナ関連治療薬の臨床試験の多くは、被験者を集めやすいアメリカを中心にその地続きである近傍の北米のカナダや南米を中心に行われることが多い。製薬業界にとって巨大市場であるアメリカに対しては国内の製薬企業もある程度は進出しているが、ここで臨床試験実施競争に勝てる環境はない。その意味ではやはり距離的にも近いアジア圏内にネットワークを確立するほうが早道である。これは抗ウイルス薬の開発に限らないことである。そしてもちろん今回、新型コロナ関連治療薬の上市に成功した外資系の製薬企業各社のように社外のシーズを迅速に目利きすることは重要だが、何より先立つものは金である。有望なシーズを見つけてもそれを獲得する資金がなければ事は動かない。では、どうするのか? 言い古されたことになるが、規模の拡大、すなわち国内外を含めた業界再編が必要になる。ここは最も大きなハードルである。「何を理念的なことばかり言っているんだ」と各方面に叱責されるかもしれないが、次なる新興感染症、あるいは現在の新型コロナの新たな変異株の登場による状況の悪化を想定すれば、いずれも今から少しずつでも始めなければ「後の祭り」になりかねないのである。

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コロナ診断1週目のリスク、心筋梗塞17倍・脳梗塞23倍/Circulation

 英国・国民保健サービス(National Health Service:NHS)のデータに基づき、ブリストル大学のRochelle Knight氏ら多施設共同による、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、およびその他の血管イベントの長期的な発生リスクについて大規模な後ろ向きコホート研究が実施された。その結果、COVID-19の既往がある人は既往がない人と比較して、COVID-19診断から1週目の動脈血栓塞栓症の発症リスクは21.7倍、静脈血栓塞栓症の発症リスクは33.2倍と非常に高く、27〜49週目でも、それぞれ1.34倍、1.80倍のリスクがあることが判明した。とくに患者数の多かった急性心筋梗塞と虚血性脳卒中では、COVID-19診断後1週目に、それぞれ17.2倍、23.0倍リスクが増加していた。Circulation誌2022年9月20日号掲載の報告。 本研究では、英国のイングランドおよびウェールズにて、全住民の電子カルテ情報を基に、2020年1月1日~12月7日(新型コロナワクチン導入以前)におけるCOVID-19診断後の血管疾患について検討された。COVID-19診断後の動脈血栓塞栓症イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中など)、静脈血栓塞栓症イベント(肺血栓塞栓症、下肢深部静脈血栓症、門脈血栓症、脳静脈血栓症など)、その他の血管イベント(心不全、狭心症、くも膜下出血など)の発生率を、COVID-19の診断を受けていない人との発生率を比較し、Cox回帰分析にて調整ハザード比(aHR)が推計された。 主な結果は以下のとおり。・イングランドおよびウェールズの成人約4,800万人のうち、COVID-19の診断から28日以内に入院したのは12万5,985人、入院しなかったのは131万9,789人であった。・イングランドでは、4,160万人年の追跡期間中に、26万279件の初回動脈血栓塞栓症と5万9,421件の初回静脈血栓塞栓症が発生した。・初回動脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:21.7(95%信頼区間[CI]:21.0〜22.4)、27〜49週目aHR:1.34(95%CI:1.21〜1.48)。・初回静脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:31.3~35.2)、27〜49週目aHR:1.80(95%CI:1.50~2.17)。・動脈血栓塞栓症の多くは、急性心筋梗塞(12万9,799件)、もしくは虚血性脳卒中(12万8,539件)であった。・急性心筋梗塞は、COVID-19診断後1週目aHR:17.2(95%CI:16.3~18.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.21(95%CI:1.03~1.41)となっている。・虚血性脳卒中は、COVID-19診断後1週目aHR:23.0(95%CI:22.0~24.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.62(95%CI:1.42~1.86)となっている。・静脈血栓塞栓症の多くは、肺血栓塞栓症(3万1,814件)、もしくは深部静脈血栓症(2万5,267件)であった。・肺血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:30.7~35.9)と非常に高く、2週目aHR:9.97まで低下するも、3~4週目aHR:10.5に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.61 (95%CI:1.23~2.12)となっている。・深部静脈血栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:10.8(95%CI:9.32~12.5)と非常に高く、2週目aHR:4.00まで低下するも、3~4週目aHR:4.80に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.99(95%CI:1.49~2.65)となっている。 さらに本研究では、COVID-19の重症度、人口統計学的特性、既往歴によるサブグループ解析も行われ、白人よりも黒人やアジア系のほうがハザード比が高く、過去に血栓塞栓症の既往がある人よりも既往がない人のほうが高いということが認められた。COVID-19診断後49週目における全人口の動脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.5%(7,200人相当)、静脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.25%(3,500人相当)だという。

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ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチン、6ヵ月~4歳用1価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は10月5日、ファイザーのオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の新型コロナウイルス2価ワクチンについて承認事項の一部変更の特例承認をしたこと、および同社の生後6ヵ月~4歳用の新型コロナウイルス1価ワクチンを特例承認したことを発表した。コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 接種対象者が12歳以上であるオミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンの販売名は「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」となる。一部変更承認の概要として、起源株およびオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む2価ワクチンが追加され、有効成分のトジナメランはSARS-CoV-2の起源株を、リルトジナメランはオミクロン株BA.1を、ファムトジナメランはオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAだとしている。9月12日に承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」の有効成分はトジナメランおよびリルトジナメラン、今回承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の有効成分はトジナメランおよびファムトジナメランとなっている。 本剤の用法・用量は、追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する。なお、接種間隔については、通常、前回の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を行うことができるとしているが、接種間隔の短縮について現在検討が成されており、10月下旬までに結論を得るという。 本剤の添付文書によると、変異株に対する中和抗体生産能として、マウスに1価(起源株)製剤を21日間隔で2回投与し、その1ヵ月後に1価(起源株)製剤、2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤または2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤を1回投与したところ、3回目投与から1ヵ月後、いずれの群でも起源株、デルタ株およびオミクロン株(BA.1、BA.2、BA.2.12.1およびBA.4/5)に対する中和抗体産生が認められ、オミクロン株BA.4/5に対する中和抗体価は、1価(起源株)製剤群および2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤群よりも2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤群で高値を示したとしている。コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 生後6ヵ月~4歳用1価ワクチンの一般名は「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(有効成分名:トジナメラン)」、販売名は「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」となる。用法・用量は、本剤を日局生理食塩液2.2mLにて希釈し、1回0.2mLを合計3回、筋肉内に接種する。2回目は通常、3週間の間隔で、3回目は2回目の接種から少なくとも8週間経過した後に接種するとしている。 本剤の添付文書によると、6ヵ月~4歳の小児(6~23ヵ月群:82例、2~4歳群:143例)を対象としたC4591007試験第II/III相パートにおいて、本剤3μgを3回目接種後1ヵ月のSARS-CoV-2血清中和抗体価を評価した結果、6~23ヵ月群の幾何平均抗体価(GMT):1,406.5(両側95%信頼区間[CI]:1,211.3~1,633.1)、2~4歳群のGMT:1,535.2(95%CI:1,388.2~1,697.8)となり、本剤30μgを2回接種した16~25歳群に対して免疫ブリッジングの成功基準を満たしたとしている。また、6~23ヵ月群1,776例、2~4歳群2,750例が参加した安全性の評価では、治験薬接種後7日間の主な副反応の発現状況として、6~23ヵ月群では注射部位圧痛、食欲減退、傾眠、易刺激性、発熱(38.0℃以上)、2~4歳群では注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱(38.0℃以上)が報告されている。 なお、オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンについては、10月5日に、モデルナ・ジャパンも同社の「mRNA-1273.222」を、18歳以上を対象とした追加接種用ワクチンとして、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことをプレスリリースにて発表した。

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