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BA.4/5対応ワクチンの中和抗体価とT細胞応答/NEJM

 2022年8月末に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可し、その後、日本の厚生労働省でも特例承認されたモデルナ製とファイザー製のオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンについて、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAi-ris Y. Collier氏らの研究グループが、これらのワクチンの追加接種における免疫原性について検証した。その結果、追加接種によって中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示され、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みの影響が示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月11日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、中央値でワクチンを3回接種したことのある被験者33例に対して、追加接種として1価ワクチンを接種した15例(年齢中央値50歳、ファイザー5例、モデルナ10例)と、追加接種として2価ワクチンを接種した18例(年齢中央値42歳、ファイザー8例、モデルナ10例)について、免疫応答を評価した。1価ワクチン群と2価ワクチン群共に33%の被験者がオミクロン株流行期にSARS-CoV-2陽性記録があり、また、2022年の夏から秋にかけてBA.5が感染拡大していたことから、そのほかの被験者の大多数も追加接種前にハイブリッド免疫を獲得していたと考えられている。 主な結果は以下のとおり。・1価ワクチンもしくは2価ワクチンの追加接種によって、起源株、BA.1、BA.2、BA.5のいずれに対する中和抗体価も上昇した。・起源株に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって5,197から21,507(4倍)に、2価ワクチンの追加接種によって3,633から40,515(11倍)に上昇した。・BA.5に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって184から2,829(15倍)に、2価ワクチンの追加接種によって212から3,693(17倍)に上昇した。・BA.5に対するCD8+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.027%から0.048%(1.8倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.024%から0.046%(1.9倍)に増加した。・BA.5に対するCD4+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.060%から0.130%(2.1倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.051%から0.072%(1.4倍)に増加した。・BA.5に対するメモリーB細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種で0.079%、2価ワクチンの追加接種で0.091%であった。 本結果により、1価ワクチンおよび2価ワクチンによる追加接種によって、中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示された。BA.5に対する中和抗体価は、2価ワクチンのほうが1価ワクチンの1.3倍となり、やや優位な結果となった。本結果は、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みが、ウイルスの変異に対する強固な免疫の誘導に大きな課題をもたらす可能性を示唆している。

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フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、フルボキサミン50mgの1日2回10日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。米国・Weill Cornell MedicineのMatthew W. McCarthy氏らが報告した。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、50mg1日2回10日間のフルボキサミン投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年1月24日号掲載の報告。外来患者で、持続的回復までの期間をフルボキサミンvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた完全遠隔法による分散型臨床試験で、参加者の募集は2021年6月11日に開始され、現在も継続中である。 研究グループは、米国の91施設において、SARS-CoV-2感染確認後10日以内で、COVID-19の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、吐き気、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常のいずれか)のうち2つ以上が発現してから7日以内の、30歳以上の外来患者を、フルボキサミン(50mgを1日2回10日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次アウトカムは28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合、28日死亡率、28日目までの入院または死亡などを含む7項目とした。持続的回復までの期間は12日vs.13日、有意差なし 2021年8月6日~2022年5月27日の期間に、計1,331例(年齢中央値47歳[四分位範囲[IQR]:38~57]、女性57%、SARS-CoV-2ワクチン2回以上接種67%)が無作為化され、このうち1,288例(フルボキサミン群674例、プラセボ群614例)が試験を完遂した。 持続的回復までの期間の中央値は、フルボキサミン群12日(IQR:11~14)、プラセボ群13日(IQR:12~13)であり、持続的回復までの期間の改善に関するハザード比(HR、HR>1が有益であることを示す)は0.96(95%信用区間[CrI]:0.86~1.06、事後解析のp=0.21)であった。 28日目までの入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルボキサミン群で26例(3.9%)、プラセボ群で23例(3.8%)確認された(HR:1.1、95%CrI:0.5~1.8、事後解析のp=0.35)。28日目までの入院はフルボキサミン群1例、プラセボ群2例で、いずれの群も死亡例はなかった。 試験薬を少なくとも1回服用した患者において、有害事象の発現率はフルボキサミン群4.7%(29/615例)、プラセボ群5.3%(30/565例)であった。

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コロナ抗体薬エバシェルドの緊急使用許可を停止/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は1月26日、新型コロナウイルス抗体薬のチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)について、緊急使用許可(EUA)を改訂し、本剤の使用を停止することを発表した1)。今回の改訂により、本剤に非感受性のSARS-CoV-2変異型が国内に占める割合が90%以下の場合に限り、使用が許可されることとなる。本改訂に基づき、エバシェルドはFDAから追って通知がない限り、米国での使用が許可されない。エバシェルドが有効なSARS-CoV-2変異型に備えて保持を推奨 エバシェルドは、オミクロン株XBBやBQ.1.1への有効性が期待できないことが研究で明らかにされている。米疾病対策センター(CDC)が発表したデータによると、現在米国では、これらの変異型に加え、その類似型のXBB.1.5やBQ.1が支配的となっている2)。エバシェルドの使用を制限することで、エバシェルドの使用によるアレルギー反応などの重篤な副作用を防ぐ目的もある。 FDAは、今後、米国でエバシェルドが有効なSARS-CoV-2変異型が広く流行した場合に備え、エバシェルドを使用している施設やプロバイダーが製品を保持しておくことを推奨している。

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腎移植後のコロナワクチン3回目接種、抗体陽性率は71%/名大

 大きな手術後の患者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した場合、抗体価にどのような変化があるのだろうか。この疑問に藤枝 久美子氏(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)らの研究グループは、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後から3回接種後の抗体価の変化を調査した。その結果、3回目のワクチン接種により抗体獲得率が上昇し、腎移植後の患者におけるワクチン追加接種の重要性が示された。ワクチンに差異なく、3回接種での抗体陽性は71% 腎臓移植後、免疫抑制剤を内服している患者などは、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体獲得率が低くなることが海外から報告されている一方で、わが国ではドナー不足からの生体腎移植、ABO血液型不適合腎移植などが行われ諸外国と環境が異なっている。 研究グループの前回の報告では、わが国の腎移植後の患者のSARS-CoV-2 mRNAワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月の抗体獲得率は、健康成人や海外の腎移植後の患者と比較して低い値だった。このような背景から、わが国と諸外国との抗体獲得率の違いや、抗体価の推移、ワクチンの追加接種の必要性について明らかにすることが目的。 主な結果は以下のとおり。1)患者背景と抗体獲得率の推移 SARS-CoV-2 mRNAワクチンを3回接種した62例の移植レシピエント(男性40例、女性22例)について調査。ワクチン3回目接種時の年齢中央値は54歳(四分位範囲[IQR]、49~67歳)、移植時の年齢中央値は50歳(IQR:38~58歳)。移植からワクチン接種までの期間の中央値は84ヵ月(IQR:34~154ヵ月)。BMIの中央値は22.9(IQR:21.4~26.2)、eGFRの中央値は42.8mL/分/1.73m2(IQR:34.1~51.4mL/分/1.73m2)。ワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは45%で、ワクチン2回接種後5〜6ヵ月で抗体陽性と判定されたのは50%だった。ワクチン2回接種5~6ヵ月後に抗体が陰転化したものはは1例、陽転化したものは4例だった。また、ワクチン3回目接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは71%と大幅に増加した。2)ワクチンの種類による抗体獲得率の比較 ファイザー製のワクチンのみを接種した患者、モデルナ製のワクチンのみを接種した患者、ファイザー製とモデルナ製の両方を接種した患者の比較を行った。その結果、接種した抗体の種類や組み合わせによる抗体獲得率の違いは認められなかった。3)抗体獲得に関連する要因の検討 統計学的な手法を用いて抗体獲得に関連する因子を検討した結果、さまざまな要因を統計学的に調整しても、BMIとeGFRが抗体獲得率と有意な相関があることが示唆された。 同研究グループは、今回の研究を受けて「わが国の腎移植後の患者において、SARS-CoV-2ワクチン3回接種により抗体獲得率が上昇することが示された。4回目以降の接種も進んでいるため、今後はワクチンの追加接種による抗体価の変化や時間が経つにつれて抗体の力価がどう変化していくのかを調べる必要がある」と展望を示している。

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短腸症候群〔SBS:Short bowel syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義先天性あるいは後天性のさまざまな病因により小腸が大量に切除され、栄養素・水分・電解質などの吸収が困難となる病態を総称して「短腸症候群」(SBS)という。75%以上の小腸が切除されると重度の消化吸収障害を呈することから、一般的には残存小腸長が、成人では150cm以下、小児では75cm以下の状態を指す。一方、わが国の小腸機能障害の障害者認定では、1級は小児30cm未満・成人75cm未満で必要栄養量の60%以上を常時中心静脈栄養にたよるもの、3級は小児30~75cm未満・成人75~150cm未満で30%以上を常時中心静脈栄養に頼るもの、4級は通常の経口からの栄養摂取では栄養維持が困難なために随時中心静脈栄養法または経腸栄養法が必要なものと定義されている。遺残腸管の部位や状態などのさまざまな要因により症状や病態が大きく異なるため、学問上は明確な定義はないのが現状である。■ 疫学発症率についてヨーロッパでは100万人当たり0.4~40人、米国では100万人当たり30人と国により大きな隔たりがみられる。これはすでに述べた通り明確な疾患定義がないことに起因するものと考える。わが国での平成28年の厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の報告では、小腸機能障害の障害者手帳の所持者数は約2,000人である。この中には炎症性腸疾患や吸収不良症候群などの機能性障害も含まれるが、実際には手帳の交付条件を満たさない短腸症例も多くみられるため、明確な実数は不明である。■ 病因病因は多彩であり、多い順に先天性の要因としては多発小腸閉鎖、腸回転異常症・中腸軸捻転症、壊死性腸炎などによるものがあり、その多くは小児期に発症する。一方、成人にみられる後天性のものとしては腸間膜動脈血栓症、クローン病、放射線腸炎、手術合併症、慢性特発性偽性腸閉塞症などがある。■ 症状SBS発症後の症状としては、消化吸収障害に起因する、下痢、腹痛や電解質を含む栄養障害(低カリウム・低マグネシウム血症に伴う筋力低下・不整脈など、必須脂肪酸欠乏に伴う皮膚炎・脱毛などが主たるものである。特に回腸を大量切除している症例では、ビタミンB12欠乏に伴う貧血、亜鉛欠乏に伴う味覚異常や皮膚炎など、そして腸管循環が傷害されたことによる胆汁鬱滞型肝機能障害や顕著な脂肪吸収障害もみられるようになる。一方、臨床上はSBSの固有の症状ではないが、身体的および心理社会的負担から生じる慢性疲労や無力感から生じる余暇活動・社会生活・家族生活・性生活の制限なども問題となる。■ 分類遺残腸管の状態に応じて、(1)末端空腸瘻型(typeI):口側の遺残空腸の断端に腸瘻が増設されている病態、(2)空腸結腸吻合術後(typeII):回腸の全域が切除された後に遺残腸管が吻合されている病態、(3)空腸回腸吻合術後(typeIII)の3つの型に大別される。■ 予後中心静脈栄養(PN)管理からの離脱の有無が予後に大きく関わる。長期にPN管理が必要とされる場合には、カテーテル関連血流感染症や腸管不全関連肝障害(IFALD)などの合併症の発症により、死亡率は約30~50%と非常に高い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は上記の概念・定義の通り。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 栄養療法腸管大量切除後の腸管馴化は、腸切除後24時間以内に始まり、成人では12~18ヵ月間、小児では5歳前後まで継続する。そのため、非常に長期間にわたり多職種が協力して集学的な腸管リハビリテーション(栄養療法)を継続することが肝要となる。この間、残存小腸に負荷される栄養素量が過負荷とならないよう(1)単位時間当たりの投与量および、(2)線維・脂質投与量の制限、(3)吸収能力の低下している栄養素の投与方法の工夫など、遺残腸管の安定化を図り、腸管馴化を促すことで治療がスムーズに進むよう調整することが重要となる。■ 手術小腸移植以外の外科的治療は、吸収面積を増やすと同時に腸内容物の停滞を減らし、腸内細菌の異常増殖を予防するために行われてきた。小腸を延長する外科的処置として2つの方法が考案されている。1)Longitudinal intestinal lengthening and tailoring(LILT)法これは、1990年にBianchiらにより報告された方法である。小腸の拡張部分を長軸方向に2つに切開してそれぞれを管腔状に縫合後、これらを吻合し腸管を延長する方法である。2)Serial transverse enteroplasty(STEP)法2003年にKimらにより報告された方法である。拡張腸管を短軸方向に斜めに、内腔を保つようにジグザグに切開縫合を加え、腸管径を細くすると同時に延長する方法である。現在これらの消化管再建手術は、主に小児期に行われることが多い。一方、重症のIFALDの発症や中心静脈へのアクセス血管が喪失した場合には、小腸移植が適応される。2018年よりわが国でも保険適応となったが、長期成績をみると生存率は1年89%、5年70%、10年53%であり、グラフト生着率は1年84%、5年59%、10年41%とまだ満足できる結果には至っていない。多職種からなる腸管不全対策チームによる腸管リハビリテーションによる予後は70~85%と高いことが報告されていることから、現段階では小腸移植は最終的な救命手段として行われる治療と考える。■ 薬物療法腸管を大量に切除すると、腸管内分泌ホルモンの1つであり、腸管上皮増殖能を有するGLP-2(グルカゴン様増殖因子)の分泌も低下する。その補充療法として、GLP-2アナログ製剤であるテデュグルチド(商品名:レベスティブ)が2021年にわが国でも医薬品として承認され、SBS患者への治療的介入が始まった。短~中期の成績では、中心静脈栄養依存率の低下や下痢症状の改善などの有用性が報告されているが、長期成績がいまだ明確になっておらず、今後の検討課題である。4 今後の展望現在、遺残腸管の自己再生を促すべくさまざまな研究が開始されている。LILT手術の応用で一部の腸管をコラーゲンシートで代用して腸管延長率を上げる方法、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)から新たに腸管を培養生成する腸オルガノイド培養技術など再生医療技術はめざましく発展してきている。加えて、2019年には腸管の恒常性維持を司る幹細胞を復活させて腸上皮再生を促進する独特の幹細胞(腸復活幹細胞[revival stem cell:revSC])が発見され、その臨床応用が期待されている。ただし、これらの新たな試みが実臨床に応用されるまでには、まだ長い時間が必要である。現状としては、今臨床ですでに利用されている治療法を先に見通しながら、どの時期にどのように組み合わせて利用すべきかの検討を行うことが、SBSの治療を有利に進めていくことにつながるものと考える。5 主たる診療科小児外科、小児科、消化器外科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報SBS Life(短腸症候群に関する基礎から治療までを網羅した情報や短腸症候群患者の生活をサポートするための情報)小児慢性特定疾病情報センター 短腸症(小児の本疾病に対する助成などの情報)患者会情報短腸症候群の会(患者とその家族および支援者の会)1)Jeppesen PB, et al. Gastroenterology. 2012;143:1473-1481.2)Klek S, et al. ClinNutr. 2016;35:1209-1218.3)Kocoshis SA, et al. JPEN. 2020;44:621-631.4)Chen MK, et al. J Surg Res. 2001;99:352-358.5)Workman MJ, et al. NatMed. 2017;23:49-59.6)Ayyaz A, et al. Nature. 2019;569:121-125.公開履歴初回2023年1月26日

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第29回 新型コロナワクチンは年1回の接種へ?

FDA(米国食品医薬品局)が先陣を切るかFDA(米国食品医薬品局)の本決定はまだですが(この記事が出る日に話し合われる予定)、新型コロナワクチンは、インフルエンザと同じく、健康な人は年1回の接種にする方針のようです。ただし、高齢者、子供の一部、免疫が低下している人については年2回の接種となる見込みです。基本的に2価ワクチンが勧奨される見込みです。年1回接種にするとしても、いつの変異ウイルスに合わせてワクチンを改変していくのか難しいところですが、mRNAワクチンはそういった改変を速やかに行えるメリットがあり、たとえば春~夏に流行した変異ウイルスに合わせて秋に接種などのような形が想定されています。エビデンスがあるというよりも、そういう落としどころでウィズコロナしましょうという側面が強く、年1回がベストとは限りません。今後の研究によっては、全員年2回のほうがよいというデータが出てくるかもしれません。FDAが勧奨するであろう2価ワクチンを提供しているのは、現在ファイザー社とモデルナ社の2社だけになると思われます。もう他の企業は追随できませんね、差が付いてしまった。XBB.1.5は日本ではまれご存じのとおりワクチンの感染予防効果は経時的に減衰していきますが、現在接種されているオミクロン株対応の2価ワクチンは、とりわけ高齢者では高い入院予防効果を有しています。イスラエルにおける65歳以上の高齢者に対するオミクロン株対応ワクチンは、入院予防効果81%、死亡予防効果86%と報告されています1)。オミクロン株対応ワクチンを追加接種しても、XBB.1株は免疫逃避が従来株やBA.5株よりかなり高いことが報告されています2)。また、中和活性についても従来株、BA.2系統、BA.5系統よりも顕著に低いことがわかっています3)。中和抗体の上昇が期待できるとされつつも3,4)、基本的にmRNAワクチンの改変が必要とされている状況です。XBB.1.5株は現在アメリカで猛威を振るっていますが、日本でもXBB.1.5株がいつか優勢になってくるかもしれません(図)。画像を拡大する図. ゲノム解析結果の推移(週別)(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料より5))mRNAワクチンは、新型コロナとインフルエンザの両方に適用可能な技術であるため、将来的には1本のワクチンで両方を予防できるなんて時代が来るかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)Arbel R, et al. Effectiveness of the Bivalent mRNA Vaccine in Preventing Severe COVID-19 Outcomes: An Observational Cohort Study. Preprints with The Lancet. 2023 Jan 3.2)Miller J, et al. Substantial Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Variants BQ.1.1 and XBB.1. N Engl J Med. 2023 Jan 18. [Epub ahead of print]3)Uraki R, et al. Humoral immune evasion of the omicron subvariants BQ.1.1 and XBB. Lancet Infect Dis. 2023 Jan;23(1):30-32.4)Davis-Gardner ME, et al. Neutralization against BA.2.75.2, BQ.1.1, and XBB from mRNA Bivalent Booster. N Engl J Med. 2023 Jan 12;388(2):183-185.5)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料 変異株調査(令和5年1月19日12時時点)

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オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。BA.1対応1価・2価ワクチンとBNT162b2を30μgまたは60μgで比較 研究グループは、進行中の第III相試験で、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超を無作為化し、BNT162b2(30μgまたは60μg)、B.1.1.529変異株(オミクロン株)BA.1系統対応BNT162b2(BA.1対応1価ワクチン、30μgまたは60μg)、BA.1対応2価ワクチンを30μg(BNT162b2 15μg+BA.1対応1価ワクチン15μg)または60μg(BNT162b2 30μg+BA.1対応1価ワクチン30μg)をブースター投与した。 本試験の主要目的は、BA.1対応ワクチンの、BNT162b2(30μg)に対する優越性(対BA.1の50%中和抗体価[NT50]について)と非劣性(血清反応について)の評価。副次目的は、祖先株に対する中和活性について、BA.1対応2価ワクチンのBNT162b2(30μg)に対する非劣性の評価だった。 探索的データ解析を行い、オミクロン株の亜系統BA.4、BA.5、BA.2.75に対する免疫応答も評価した。BA.1対応2価ワクチン、祖先株に対しBNT162b2(30μg)と比べ非劣性 1,846例が無作為化を受けた(年齢中央値67歳、男性49.5%、白人86.6%)。 ワクチン接種後1ヵ月時点で、BA.1対応2価ワクチン(30μg/60μg)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、BA.1に対し、BNT162b2(30μg)より優れた中和活性を示した。NT50幾何平均比(GMR)は、それぞれ1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、1.97(1.45~2.68)、3.15(2.38~4.16)だった。 また、BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、対BA.1血清反応についても、BNT162b2(30μg)に対し非劣性を示した。群間差(%)は10.9~29.1ポイントに及んだ。 BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)は、祖先株に対する中和活性について、BNT162b2(30μg)に対し非劣性だった。NT50GMRは30μgが0.99(95%CI:0.82~1.20)、60μgが1.30(1.07~1.58)だった。 BA.4-BA.5、BA.2.75に対する中和抗体価は、BA.1対応2価ワクチン30μgが、BNT162b2(30μg)より数値が高かった。 安全性プロファイルについては、BA.1対応1価ワクチン、2価ワクチンのいずれの用量も、BNT162b2(30μg)と同様だった。有害事象の発生頻度は、BA.1対応1価ワクチン30μg群(8.5%)とBA.1対応2価ワクチン60μg群(10.4%)が、その他の群(3.6~6.6%)より高率だった。

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妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。18ヵ国41病院を通じて試験 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

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新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?

Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?頭痛、睡眠障害、認知障害、記憶力・集中力低下、脱毛、味覚・嗅覚障害、目・耳の異常胸痛、動悸、疲労・倦怠感腹痛、悪心、下痢、食欲低下咳、咽頭痛、喀痰、息切れ関節痛、筋肉痛、筋力低下勃起異常、生理不順、月経前症候群の悪化厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)って何ですか?新型コロナウイルス感染症にかかった後、ほとんどの患者さんは時間経過とともに症状が改善します。しかし、急性期の症状がずっと持続したり、回復した後に新たに/または再び出現したりする症状があることがわかっています。これら全般の症状を新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(後遺症)と言います。Q.罹患後症状(後遺症)はいつまで続くのですか?罹患後症状(後遺症)については、世界的に調査研究が進められている最中ですが、時間の経過とともに改善することが多いとされています。ただし、急性期の重症度に関係なく、新型コロナウイルスへの感染から約1年を経過しても、罹患後症状(後遺症)が約半数の方に残るという報告もあります。厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.

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第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」

岸田首相G7広島サミットを意識?今春にもコロナは5類にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載もまもなく3年を迎え150回近くとなりますが、その半分以上は新型コロウイルス感染症に対する国の対応について書いてきたのではないかと思います。そのコロナ対応も、いよいよ大きな転換期を迎えます。岸田 文雄首相が1月20日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、今春から5類に変更する方針を示し、23日から専門家らによる感染症部会で本格的な議論が開始されたためです。昨年11月、感染症法等を改正し、都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになったばかりですが、5類にすればそうした義務付けから外れることになります。これまでコロナを診てこなかった医療機関も、通常の風邪と同じように診療、入院させるようになると期待されていますが、本当にそうなるでしょうか。コロナ禍の中での多くの医療機関の消極的な対応を見てきた経験から言うと、はなはだ疑問です。あわせて気になったのは、1月19日に日本医師会の松本 吉郎会長が岸田総理と面会し、政府が新型コロナの感染症法上の見直しを行った場合でも、公費負担などを継続するよう要望したことです。報道等によれば松本会長は「患者さんに負担が掛からないように、それから医療機関の感染対応にもできる限り支援を継続していただきたいということをお話しした」と語ったそうです。5類に移行すれば医療費などの公費負担の法的根拠がなくなるのは当然です。なのに「公費負担は続けろ」とは、意味がわかりません。普通の風邪ならば、医療機関を受診したい人や重症化リスクが高い高齢者などは受診し、そうでない人は自力で治す(もともとほとんどの風邪は医療機関を受診しなくても治ります)というのが筋です。公費負担を続けるということは、受診不要と思われる軽症患者まで掘り起こすことになりそうです。医療機関の経営にはプラスでしょうが、結局、無駄な医療費の増加を招くだけではないでしょうか。松本会長の要請に岸田首相は「しっかりと検討したい」と応じたそうです。5月開催予定のG7広島サミットで海外首脳を迎える前に、5類にして屋内のマスク着用も不要にしておきたい、という少々自分勝手な考えもあるのではないでしょうか。未だ、マスク着用がルール化されている先進国は日本くらいだからです(エリザベス女王の国葬の時、日本の天皇陛下のマスク着用が話題となりました)。複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授に判決さて今回は、この連載でも何度(今回で7回目)も取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件を取り上げます(「第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート」ほか)。薬剤の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた、三重大学医学部附属病院の臨床麻酔部元教授(56歳)の判決公判が1月19日に津地方裁判所であり、柴田 誠裁判長は懲役2年6ヵ月・執行猶予4年と、元教授が代表理事を務める一般社団法人に追徴金200万円(求刑懲役4年、追徴金200万円)とする有罪判決を言い渡しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた2020年9月に発覚したこの事件、複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授の判決が出たことで、被告全員の公判が一通り終了したことになります。一連の事件では7人の有罪が既に確定この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から始まりました。ちなみに、一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わり2022年4月から始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、10月に結審した今回の公判、最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わりでした。小野薬品を巡る第三者供賄罪について元教授は、「オノアクトの効能に着目して積極的に使用していく方針を採用した」などと主張していました。また、詐欺罪についても無罪を主張し、寄付金の対価性(いわゆる見返り)が認定されるかどうかが争点となっていました。一方で元教授は、日本光電に200万円を振り込ませたとする第三者供賄罪は認めていました。報道等によれば、元教授は公判で「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量急増各紙報道等によれば、同日の判決で津地裁はオノアクトの積極使用と寄付の関連を認め、対価性があったとしています。具体的には、元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量が急増したこと、小野薬品の当時のMRの証言から元教授が「寄付金が必要だ頼むよ」「最初に世話になったところは忘れないよ」などと供述したこと、MRが作成した週報に「講演会活動を通じ三重大で『OA(オノアクト)をもっと出すための相談』が行えた。そのもっとを今後具体化していく段階に今後していこう」と記載していたことなどを指摘、「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断しました。「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きい」以上を踏まえ、柴田裁判長は判決理由で「寄附金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるを得ない」と指摘。さらに、「使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じる歪みを発生させ、診療報酬の搾取につながった」と非難したとのことです。ただ、量刑については「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるをえないが、前科のない被告人をただちに刑務所に収容するのは重きに過ぎる」などとして懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決としたとのことです。判決に対し、元教授の弁護士は「判決は不当で、控訴するかどうかは被告人と相談したい」と述べたとのことです。一方、三重大学病院の池田 智明病院長は「有罪判決が下されたことを真摯に受け止めます。今後も信頼回復に向け、全力を尽くします」とのコメントを出しています。新たなスタートを切った三重大麻酔科さて、元教授の逮捕によって、三重大病院の麻酔科は混乱に陥り、地域医療にも多大な影響を及ぼしました。さらに製薬会社が大学などに提供している奨学寄付金の是非についても議論が沸き起こり、奨学寄付金を廃止する動きも広まっているようです。その意味で、元教授は法律では罪に問われない部分でも、さまざまな“罪”を犯していたと言えるでしょう。三重大の麻酔科については、2022年4月には新教授が就任、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合するという組織改編も行われました。また、麻酔の専門医を育成する研修プログラムも2023年度からスタートするとのことです。元教授が控訴すれば、裁判は続くことになりますが、少なくとも三重大病院麻酔科の再スタートは喜ばしいことです。幾多の“黒歴史”から決別し、地域の麻酔科医療を牽引する存在になることを願います。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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厚労省の「解熱鎮痛薬等110番」は供給不足の解決にはならない!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第104回

 昨年末、厚生労働省に「医療用解熱鎮痛薬等110番」という相談窓口が設置されました。解熱鎮痛薬などを入手できない医療機関や薬局のために設置された供給相談窓口ですが、開始1ヵ月ですでに混乱が生じているようです。厚生労働省が12月14日に開設した医療用薬の「供給相談窓口」(医療用解熱鎮痛薬等110番)に対し、約3週間で薬局や医療機関から500件もの相談が寄せられていることがわかった。(中略)一方、厚労省への相談件数が伸びるほど、卸側の負担は増大していくかたちとなり「お上からの重圧感が強いので対応せざるを得ないが、その後の対応や価格に関するトラブルも出てきている」(広域卸関係者)という。(2023年1月5日 RISFAX)この相談窓口の対象は、発熱外来や新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている医療機関やこれらの医療機関の処方せんを受け付けている薬局で、かつ下記をすべて満たす必要があります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、トラネキサム酸の在庫が少ない平時に取引のある卸売業者に連絡しても入手が困難である業務に支障を来たすとともに患者に迷惑を掛けてしまう恐れがある全国的に医薬品の供給が不足しているのは言わずもがなの状態で、何も困っていません!と言える薬局は少ないのではないでしょうか。本来であればありがたい話のはずなのですが、この窓口は厚生労働省の中に設置されているため、相談を受け付けても医薬品を製造して出荷することも、納入を早めることもできません。厚生労働省が医薬品調達に窮している薬局などの訴えを聞き、卸売業者へ納入調整を依頼するというものです。調整依頼と言っていますが、厚生労働省から連絡があった卸売業者は、その相談元の薬局などに医薬品を納入せざるを得ない状態になるのではないかと思います。卸売業者も在庫が限られていて精一杯の調整をしている中、厚生労働省がそこにプレッシャーをかけて優先順位を繰り上げるというのは、本質的にはなんの解決にもなっていないのでは…と思うのは私だけではないはずです。医薬品の供給量が減っている一方で、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの需要が高まっていることが原因なのに、なぜこのような窓口の設置が解決につながると思ったのかは不思議です。現場としては、どこか別のところにしわ寄せがいく納入調整ではなく、本質的な供給不足の解決や不適切処方に対する対応がとられることを期待したいと思います。

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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コロナに感染した医師はどれくらい?ワクチン接種回数別では?

 2020年初頭から新型コロナウイルス感染症の国内での流行が始まり、3年が経過した。CareNet.comでは、これまでにどれくらいの医師が新型コロナに感染したのかを把握するため、会員医師1,000人を対象に『医師の新型コロナ感染状況に関するアンケート』を実施した。その結果、コロナ診療の有無や、年齢、診療科、病床数別、ワクチン接種回数別の感染状況が明らかとなった。また、回答者自身や周囲が感染した際に感じたさまざまな課題も寄せられた(2022年12月10~17日実施)。若い医師ほどコロナ診療・感染の割合が高い Q1では、コロナの診療に携わっているかについて聞いた。「診療している」が63%、「以前は診療していたが、今はしていない」が7%、「診療していない」が30%となり、全体の70%の医師がコロナの診療に携わっていた。年代別では、「診療している」もしくは「以前は診療していたが、今はしていない」と答えた回答者の割合は、年齢が若い医師ほど高く、20代は87%、30代は78%、40代は70%だった。診療科別では、割合が高い順に、救急科(100%)、呼吸器内科(90%)、腎臓内科、臨床研修医(87%)であった。 Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を医師に聞いた。感染したことがない医師は全体の74%で、1回感染が24%となり、2回が1.7%、3回以上が0.4%で、再感染の割合はごくわずかであり、全体の26%の医師が1回以上感染していた。 コロナ診療経験の有無と感染歴との相関では、「以前は診療していたが、今はしていない」と回答した医師において、1回以上の感染の割合が最も高く36%だった。「診療している」と回答した医師では29%、「診療していない」人では18%が、コロナに1回以上感染していた。 年代別では、Q1の結果と同様に、年齢が若い医師ほど感染の割合が高かった。1回以上の感染の割合は、20代と30代で同率の36%、40代では30%、50代で22%だった。病床数別では、200床以上の医師の感染の割合が最も高く30%で、次いで0床(診療所)が23%だった。診療科別では、感染の割合が最も高いのはQ1と同様に救急科(39%)、次いで糖尿病・代謝・内分泌内科(38%)、臨床研修医(37%)、循環器内科(35%)であった。 ちなみに、厚生労働省が1月16日に発表した「(2023年1月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」によると、これまでにコロナと診断されたのは、日本の全人口の約23.2%であった(2023年1月1日0時時点のデータ)1)。 Q3では、第1~8波の流行期別に感染した時期を医師に聞いた。本アンケート実施時点(2022年12月10~17日)で最も多かったのは、2022年7~10月の第7波(125人)、次いで2022年1~6月の第6波(55人)、2022年11以降の第8波(50人)だった。ワクチン接種回数が多い医師ほど感染率が低い Q4では、新型コロナのワクチンの接種回数を医師に聞いた。接種回数の割合が最も高かったのは4回(42%)、次いで5回(33%)、3回(19%)、1・2回(3%)だった。ワクチンの接種回数と感染の相関を調べたところ、感染していない割合は接種回数が多い医師ほど高く、5回接種者は85%、4回では71%、3回では66%が「感染していない」と答えた。ワクチン接種1・2回で感染していない医師の比率は44%で半数を下回っており、2回感染した人が18%と最も多かった。 Q5では、自らが感染したと思う場所について聞いた。多かったのは職場と家庭で、ともに約100人であった。医療者の人手不足がコロナ診療での最大の課題 Q6の自由回答のコメントでは、回答者自身や周囲が感染した際に感じた課題を聞いた。挙げられた課題は、主に以下の内容に分類された。・医療者の感染が相次ぎ、病院が人手不足になった(160件)・病院でクラスターが発生した(80件)・コロナに感染し、判断に迷った(61件)・家族内で感染者が出た(55件)・コロナ以外の診療について(21件)・感染対策について(14件)・収入に影響した(7件)・コロナの診療について(6件)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。どれくらいの医師がコロナに感染した?/医師1,000人アンケート

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コロナワクチン後の心筋炎、高濃度の遊離スパイクタンパク検出

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後、まれに心筋炎を発症することが報告されているが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループは、青年および若年成人の新型コロナワクチン接種後の血液を分析し、心筋炎発症例の血中では、切断を受けていない全長のスパイクタンパク質が、ワクチン接種により産生された抗スパイク抗体に結合していない“遊離”の状態で、高濃度に存在していたことを発見した。Circulation誌オンライン版2023年1月4日掲載の報告。遊離スパイクタンパク質が平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された 2021年1月~2022年2月にかけて、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)の新型コロナワクチン接種後に心筋トロポニンTの上昇を伴う胸痛を呈し、心筋炎により入院した患者16例、および年齢をマッチングさせた健康人45人を対象とし、血液をプロスペクティブに採取した。SARS-CoV-2特異的な細胞性免疫応答、自己抗体産生、血中のスパイクタンパク質濃度などを評価した。 SARS-CoV-2に対する適応免疫応答やT細胞応答は、心筋炎発症例と非発症例で差がなかった。また、自己抗体の産生や他のウイルス感染、新型コロナワクチン接種後の過剰な抗体反応も認められなかった。しかし、血中の遊離のスパイクタンパク質濃度には、大きな差がみられた。心筋炎非発症例では、抗スパイク抗体に結合していない遊離のスパイクタンパク質が全例で検出不可であったのに対し、心筋炎発症例では、平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された(p<0.0001)。また、心筋炎発症例の血漿について、抗体を変性させるdithiothreitolで処理しても、スパイクタンパク質濃度に変化がみられなかったことから、心筋炎発症例で検出されたスパイクタンパク質は、抗スパイク抗体に捕捉されなかったことが示唆された。 本論文の著者らは、「心筋炎発症の有無によって、新型コロナワクチン接種後の免疫応答に差がみられなかったのは、安心感を与える結果であった。心筋炎発症例の血中では、遊離のスパイクタンパク質がみられ、この知見についてより深く理解する必要はあるが、新型コロナウイルス感染症の重症化予防における新型コロナワクチン接種のベネフィットが、リスクを上回ることに変わりはない」とまとめた。

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米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

 米国のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受ける可能性について、人種・民族間で差異があるかを調べる検討が、同国・ノースカロライナ大学のLauren C. Zalla氏らにより行われた。HIVケア開始1ヵ月以内にARTが開始される確率について有意差はなかったが、インテグレーゼ阻害薬(INSTI)を含むARTを受ける可能性は、調査対象期間(2007~19年)の早期においては、白人と比べて黒人とヒスパニック系の患者で有意に低く、ガイドラインの見直しに伴いINSTIが大半のHIV感染者の初回治療として推奨されるようになって以降、有意差が見られなくなったという。著者は、「さらなる研究で、根底にある人種・民族間の差異を明らかにすること、また処方の差異が臨床アウトカムと関連するかどうかを調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2023年1月3日号掲載の報告。2007~19年の初期治療での処方確率を白人、黒人、ヒスパニック系で比較 研究グループは後ろ向き観察研究にて、米国でHIVケアを導入した新規成人感染者における、INSTIを含むARTの処方の人種および民族間の差異を推定し、それらの差異の変化を治療ガイドラインの変遷と関連付けて調べた。 米国内200超のクリニックが参加する最大規模のHIVケアコンソーシアムであるNorth American AIDS Cohort Collaboration on Research and Designの登録患者データから、INSTIが米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された2007年10月12日以降、2019年4月30日までにHIVケアを受けた成人4万2,841例のデータを調査した。 人種および民族の情報は、患者の医療記録から集め、「ヒスパニック系」「非ヒスパニック系黒人」「非ヒスパニック系白人」に集約して検討した。 主要アウトカムは、HIVケア開始1ヵ月以内にARTが最初に開始される確率と、INSTIを含むARTが処方される確率。ヒスパニック系・非ヒスパニック系黒人患者と非ヒスパニック系白人患者との差異を、治療開始時期と推奨初回治療レジメンに関する国のガイドラインが変更された暦年および期間ごとに推定し評価した。ARTの開始確率に差はないが、INSTI処方率に当初は有意差あり 4万1,263例が人種および民族の情報を有していた。1万9,378例(47%)が非ヒスパニック系黒人、6,798例(16%)がヒスパニック系で、1万3,539例(33%)が非ヒスパニック系白人。男性3万6,394例(85%)、年齢中央値42歳(IQR:30~51)であった。 2007~15年(CD4+細胞数ベースでの治療開始がガイドラインで推奨)では、ケア開始1ヵ月以内のART開始の確率は、白人患者45%、黒人患者45%(白人患者との差:0%、95%信頼区間[CI]:-1~1)、ヒスパニック系患者51%(5%、4~7)であった。 2016~19年(CD4+細胞数に関係なくすべての患者への治療を強くガイドラインで推奨)では、白人患者66%、黒人患者68%(白人患者との差:2%、95%CI:-1~5)、ヒスパニック系患者71%(5%、1~9)であった。 INSTIの処方率は、2009~14年(初回治療として承認されたが、ガイドラインでの推奨はなし)に、白人患者で22%であったのに対し、黒人患者で17%(白人患者との差:-5%、95%CI:-7~-4)、ヒスパニック系患者で17%(-5%、-7~-3)にとどまっていた。2014~17年(INSTIを含むARTを初回治療の選択肢としてガイドラインで推奨)では、白人患者と比較して黒人患者では有意な差があったが(-6%、-8~-4)、ヒスパニック系患者では有意な差はなかった(-1%、-4~2)。 2017~19年(INSTIを含むARTがほとんどのHIV感染者の唯一の初回治療として推奨)では、人種および民族による差異は統計学的に有意ではなくなっていた。

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Artemis欠損症に対するレンチウイルス形質導入細胞移植の効果/NEJM

 新たにArtemis欠損重症複合免疫不全症(ART-SCID)と診断された乳児において、薬理学的に標的化した低曝露のブスルファンによる前処置後、レンチウイルス遺伝子で修正した自己CD34+細胞注入移植により、遺伝子が修正された機能的T細胞およびB細胞数の上昇に結び付いたことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校Benioff小児病院のMorton J. Cowan氏らにより報告された。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。レンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞を10例に注入 ArtemisはDNA修復酵素で、T細胞およびB細胞レセプターの再構成に不可欠である。ART-SCIDは、ArtemisをコードするDCLRE1Cにおける変異に起因し、標準治療は同種造血幹細胞移植だが効果は限定的である。 研究グループは、ART-SCIDと診断された乳児10例において、DCLRE1Cを含むレンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞の注入移植に関する第I-II相臨床試験を行った。追跡期間中央値31.2ヵ月、全10例の患者は健康 レンチウイルス形質導入細胞移植時の年齢中央値は、生後2.7ヵ月(範囲:2.3~13.3)。移植後の追跡期間中央値は31.2ヵ月(範囲:10.0~48.9)であった。 骨髄採取、ブスルファンの前処置、およびレンチウイルス形質導入CD34+細胞の注入後に、Grade3または4の有害事象が発生したが、これらは想定されたものであった。注入後42日時点で、全処置が事前規定の実行可能性の基準を満たしていた。 遺伝子標識したT細胞は、全患者において注入後6~16週で検出された。6例のうち5例は、少なくとも24ヵ月間追跡され、中央値12ヵ月時点でT細胞の免疫再構築が認められた。T細胞レセプターβ鎖の多様性は6~12ヵ月までに正常化した。 少なくとも24ヵ月間追跡された4例では、IgG注入の中止が可能となる十分なB細胞数、IgM濃度、IgM同種血球凝集反応抗体価が認められた。これら4例のうち3例は、正常な免疫反応を示し、残る1例には予防接種が開始された。 ベクター挿入部位には、クローン増殖の証拠は認められなかった。1例の患者がサイトメガロウイルス感染症を呈し、ウイルス排除に十分なT細胞免疫を獲得するため、遺伝子修正細胞の注入は2回行われた。 注入4~11ヵ月後に4例で自己免疫性溶血性貧血が発現したが、T細胞免疫の再構成後に回復した。 本報告時点で、全10例の患者は健康である。

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第143回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(前編)

先日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ワクチンの4回目接種の体験について書いたが、その直後、ヒヤッとする出来事が起きた。接種を受けたのは年の瀬も迫った12月27日。周囲では新型コロナ感染者が急増し、Facebookなどでつながっている友人・知人の投稿では、「感染しました」報告が相次いでいた。それから3日後、私は軽い咽頭痛を自覚した。もっともこうした経験は、コロナ禍3年目になってから2度ほどあった。私の場合、年齢は壮年期だが、幸いにして今のところ新型コロナにかかった場合に重症化リスク因子となる基礎疾患はない。このため感染した場合でも原則自宅療養を選択しようと考えている。それに備えて自分の仕事場のアパートには複数回分の抗原検査キット、解熱鎮痛薬、パルスオキシメータや非常時用のインスタント系、レトルト系の食品の備蓄はある。余談だが、私はまるか食品の「ペヤングソース焼きそば」の大ファンで、消費税増税の時などに買い込んだペヤングが常に事務所では数十個ストックがあるので、とりあえずペヤングとお湯だけでも10日ほどは飢えをしのげる。ところが咽頭痛を感じたときは、山手線のとあるターミナル駅近くのビジネスホテルに娘とともに宿泊中だった。さらに個人的な事情を話すと、私には現在医学部受験生以外では希少価値ともいわれる大学受験浪人生の娘がいる。誰に似たのか昨年現役で合格した大学があったにもかかわらず、第一志望があきらめきれず、合格した大学の入学を辞退して浪人生の道を選んだ(実は私も現役時に同じことをしている)。義父が要介護のため、妻が実家に帰省して年末年始は私と娘しかいなくなること、娘が自宅では勉強に身が入らず、さすがの予備校も大みそかと元日は自習室も閉鎖されてしまうなどの事情があり、私と娘は30日から三が日明けまでホテルに泊まりこみ合宿と相成った。隣同士の部屋で私は仕事、娘は勉強にそれぞれ勤しむという計画だった。もっとも私は娘のパシリとして食事の購入や洗濯などを引き受けるつもりでもあった。ちなみに宿泊したホテルはチェーン展開しており、チェックインはほぼ自動化され、日中は受付すら無人、部屋の清掃は1週間を超える連泊者以外なしといういかにも今風なホテルである。さて咽頭痛を自覚したときは、すぐに危機感を感じたわけではない。それでも念のために実は5回分がセットになった抗原検査キット、解熱鎮痛薬、体温計、パルスオキシメータは持参していた。さらに娘より一足先にチェックインしてパックのご飯、それにかけるレトルト、カップ麺を買い込んでいた。これはいざという時の備えというよりは、娘には望む食事を多少高くても購入して、私のほうは節約に努めるという単なる貧乏根性である。―2022年12月30日(金)30日は喉のイガイガは軽く痰が絡んだような感じ。それほどは気にしなかった。大みそかの朝は調理パンと洋風のスープが食べたいとの娘の要望に応じ、朝6時過ぎにホテルを出て周囲のコンビニを回り、ようやく洋風スープと調理パンを見つけて渡し、昼はこれまた娘の希望に応じて近くのカフェでパスタを食べさせた。もっとも大学入試共通テストを約2週間後に控えていることもあり、娘と食事中でもなるべくマスクを着用していた。―2022年12月31日(土)その日の夕方近く、今年最後のオンライン取材を終え、少しでも正月らしい気分を娘に味あわせてあげたいと考え、デパ地下に赴き、2人で食べられそうな比較的小さめのおせち料理を購入し、ホテルに戻った。ところが夜7時過ぎくらいから咽頭痛はひどくなるばかり。まさかとの思いがよぎった。実はすでに前日に抗原検査キットで陰性は確認していた。もっともある程度ウイルス量が上がらないと抗原検査が偽陰性になってしまうのは周知のこと。そのために私は連日自宅や事務所などで検査ができるよう5回分のパックを備蓄し、気になったときは3日連続で検査し、すべて陰性だった場合は注意をしながらその後1週間程度を過ごしていた。再度、検査キットを使う。検体を流し込み、浸透していく様子を見ながらコントロール手前で色がうっすらでも変わるか凝視する。再び陰性である。体温は36.8℃。とはいえ、くどいようだが隣室には2週間後に共通テストを控えた娘がいる。すぐにLINEで隣室にいる娘に私に風邪様症状があり、現在のところ抗原検査は陰性だが油断はできず、とりあえず飲食物は置き配にする旨を伝えた。とはいえ困った。自分の食事は備蓄のおかげでどうにかなるが、娘の分はそうはいかない。だが、新型コロナ感染の疑いがある自分の外出は控えねばならない。そうすると娘の食事を手配する人間がいなくなる。「本人に買わせればいいじゃないか」と言われてしまいそうだが、宿泊先のホテルは娘が嫌うピンクのネオンが時おり目に入る歓楽街の一角にあり、そのため引っ込み思案な娘は一人で出歩こうとしない。ただ、ホテルから一番近い徒歩1分ほどのところにあるコンビニは店内が広く、セルフレジがあり、そのセルフレジも有人レジからかなり離れた位置にある。また、娘が食べたがるものの多くはコンビニで調達できる。ということで、できるだけ人の少ない時間帯に最大限の感染対策をしながら、このコンビニを利用することに決める。だが、その直後、ネットサーフィンをしていて、はたとあることに気づく。このコロナ禍でモバイルオーダーかつモバイル決済で飲食デリバリーのサービス提供が進んでいる。ネット上を調べると、大手ハンバーガーチェーンを含め、ホテルの近隣でこうしたサービスを提供している店舗は少なくない。これならばどうにか対応できそうだ。そうこうしているうちに、この日はいつの間にか寝入ってしまった。―2023年1月1日(日) 元旦翌朝、娘からのLINE着信の音で目が覚めた。体がほてっているのが自分でもわかる。熱を測ると37.1℃。元日のおめでたさもなく、朝方、おにぎりとインスタントではないみそ汁をコンビニで購入して娘に届けた。届ける際はドアノブにかける。これまた幸いなことに、このホテルでは各フロアに足踏み式の消毒薬が設置されているので、ドアノブに食事などの袋をかける際は念のため手指消毒をしてから。もちろんこれまでの研究で、新型コロナの接触感染はごくまれというのも知ってはいるが、やはり娘のことを考えると気にしてしまうため、そのようになってしまう。元日の熱は37℃台の前半と後半を行ったり来たり。一応、仕事のために椅子に座ってパソコンをさわるものの、症状のせいか30分程度が限界で、その後はベッドに横になる。そして毎日、娘の衣服の洗濯がある。実はそれを見越して館内にコインランドリーもあるホテルを選んでいた。1回にあるコインランドリーは常に人気がないので助かった。もっともこのコインランドリーの乾燥機は簡易なものなのでちょっとした洗濯物の乾燥でも1時間以上はかかった。その間は部屋でおとなしく待ち、時間を計って廊下に出て、目の前で開いたエレベーターに人が乗っていないことを確認してから乗降していた。この日は一日、体がだるめ。夕方、娘が某ハンバーガーチェーンのハンバーガーが食べたいと言い出す。これはモバイルオーダーやデリバリーサービスがあったので利用することにした。決済もモバイル決済が可能だったが、ホテル1階で私が受け取らなければならない。幸い1階エレベーター脇に消毒薬を設置した比較的広めのテーブルがあったので、そこに置いてもらうことにする。配達完了の電話連絡があり、私はマスクをつけ、1階に降りてピックアップして、隣室のドアノブにかけ、娘にLINEをする。ちなみにたまたま私のカバンには両面テープがあったため、部屋からの外出時はマスクの上下両端に両面テープを張り、顔にピッタリ密着させていた。気にし過ぎと思われるかもしれないが、自分の飛沫で他人に感染をさせたくないからである。もっともこれをするとマスク内が異様に暑くなる。この日は夜9時には就寝したが、深夜2時過ぎ、体のほてりがひどく目が覚める。体温計の数字は38.1℃。来たかという感じだった。(次回に続く)

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