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2021.

ブレークスルー感染も、ワクチンが変異株の重症化を抑制か/CDC

 新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株は感染性が高く、このほど米国でワクチン接種完了者によるブレークスルー感染が報告された。しかし、この報告からワクチンの効果がないと言えるのだろうかー。 CDC COVID-19 Response TeamのCatherine M. Brown氏らによると、マサチューセッツ州バーンスタブル群で発生した大規模クラスターの74%はファイザー製ワクチン接種完了者であったことが明らかになった。ただし、入院患者の割合は1.2%と、ワクチンが普及する前の既存株による重症化率と比較すると少ない傾向であることも示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)8月6日号での報告。 2021年7月3~17日、マサチューセッツ州バーンスタブル郡の町において、複数のイベントや大規模な集会に関連した新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)469例が確認された。この症例はマサチューセッツ州公衆衛生局(MADPH)が同州のCOVID-19監視システムを利用して7月10〜26日の旅行履歴データから特定したもので、追加症例は調査を通じて地域の保健管轄区域で特定された。クラスター関連の症例は、居住者または7月3日からバーンスタブル郡の町への旅行滞在者で、新型コロナウイルス検査(リアルタイムPCR[PT-PCR法]または抗原検査)で陽性判定が行われた。 主な結果は以下のとおり。・469件の新型コロナ症例が確認され、陽性検体の採取日付は7月6~25日までの期間だった。・感染者の大半が男性(85%)で、年齢中央値は40歳だった。・199例(42%)はバーンスタブル郡の町の居住者だった。・感染者のうち346例(74%)は新型コロナワクチンの接種完了者(ブレークスルー感染)だった。・ブレークスルー感染者346例のうち男性は301例(87%)、年齢中央値は42歳だった。・5例が入院したが、7月27日の時点で死亡例はなかった。・入院患者5例(年齢範囲:50〜59歳)のうち4例がワクチン接種完了者で、2名は基礎疾患を有していた。・ブレークスルー感染者が接種していたワクチンは、ファイザー製が159例(46%)、モデルナ製が131例(38%)、J&J製(米国ではヤンセン)が56例(16%)だった。・274例(79%)で新型コロナの感染徴候または症状を報告し、主な症状は咳、頭痛、喉の痛み、筋肉痛、および発熱だった。・ブレークスルー感染者において、ワクチン2回目接種後14日以降から症状発症までの期間中央値は86日だった(範囲:6〜178日)。・ワクチン完了者(127例)、ワクチン未接種者とワクチン1回目完了/接種状況不明者84例のリアルタイムPCRのCt値(中央値)は、それぞれ22.77、21.54だった。・133例から採取した検体を遺伝子解析したところ、119例(89%)でデルタ株関連が同定された。 以上の報告からCDCは、デルタ株は非常に感染性が高く、新型コロナワクチンの予防接種は“重度の病気や死を防ぐための最も重要な戦略”としている。また、7月27日からはすべてのワクチン接種完了者にも“新型コロナ感染が高い地域の屋内・公共の場でのマスク着用を推奨する”としている。

2022.

コロナワクチン、1回目でアレルギー出現も2回目接種できる?

 海外では新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン接種後のアレルギー反応は2%も報告され、アナフィラキシーは1万人あたり最大2.5人に発生している。国内に目を向けると、厚生労働省の最新情報1)によれば、アナフィラキシー報告はファイザー製で289件(100万回接種あたり7件)、モデルナ製で1件(100万回接種あたり1.0件)と非常に稀ではあるが、初回投与後に反応があった場合に2回目の接種をどうするかは、まだまだ議論の余地がある。 今回、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMatthew S Krantz氏らは、ファイザー製またモデルナ製ワクチンの初回接種時にアナフィラキシーまたは遅発性のアレルギー反応を経験した被接種者において、2回目接種の安全性を検証するため投与耐性について調査を行った。その結果、2回目の接種を受けた患者の20%で軽度の症状が報告されたが、2回目接種を受けたすべての患者が安全に一連のワクチン接種を完了したことを明らかにした。また、必要に応じて将来も新型コロナのmRNAワクチンを使用できることも示唆した。JAMA Network Open誌2021年7月26日号のリサーチレターでの報告。 本研究は、2021年1月1日~3月31日に米・マサチューセッツ総合病院、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院、ヴァンダービルト大学医療センター、イェール大学、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターが合同で後ろ向き研究を実施。ファイザー製またはモデルナ製ワクチンに対してアナフィラキシー反応を示し、(1)初回投与4時間以内に発症 (2)少なくとも1つ以上のアレルギー症状を有した(3)アレルギー/免疫専門医へ紹介された人が患者として定義づけられた。アナフィラキシーはブライトン分類およびNIAID/FAAN(米国・国立アレルギー感染症研究所/ Food Allergy and Anaphylaxis Network criteria)の基準のうち、1つ以上を満たすものとした。 主要評価項目は2回目接種の耐性で、(1)2回目の投与後アナフィラキシー症状がない(2)症状が軽度、自然治癒したおよび/または抗ヒスタミン薬のみで解消した症状、のいずれかと定義した。 主な結果は以下のとおり。・参加者は189例(平均年齢±SD:43±14歳、女性:163例[86%])だった。・評価されたmRNAワクチンの初回投与反応のうち、モデルナ製を投与したのは130例(69%)、ファイザー製は59例(31%)だった。・最も頻繁に報告された初回投与反応は、紅潮または紅斑で53例(28%)、めまい・立ちくらみは49例(26%)、接種部位のうずき・ヒリヒリ感は46例(24%)、喉の圧迫感は41例(22%)、じんましんは39例(21%)、喘鳴または息切れは39例(21%)だった。・32例(17%)はアナフィラキシーの基準を満たしていた。・参加者のうち159例(84%)が2回目の接種を受け、前投薬として抗ヒスタミン薬(30%)を投与したのは47例(30%)だった。・初回投与後にアナフィラキシーと診断された19例を含む159例が2回目の投与に耐えられた。・32例(20%)は2回目の接種によるアナフィラキシーや遅発性のアレルギーを報告したが、自然治癒・症状軽度および/または抗ヒスタミン薬のみで解決した。 研究者らは、「今回の報告は初回投与後にアナフィラキシーや遅発性のアレルギー反応を報告する患者に対し、ファイザー製またはモデルナ製ワクチンの2回目の投与の安全性を支持する。初回投与後に反応を示した多くの被接種者がすべて真のアレルギー反応ではないか、または非IgE依存性アレルギー反応だったため、症状が前投薬で軽減できた」と主張した。

2023.

第69回 コロナワクチン接種者の74%がブレークスルー感染!一体どんな状況だった?

現在、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の変異株であるデルタ株。従来の新型コロナウイルスの基本再生産数が1.4~3.5と言われるなか、米国疾患予防管理センター(CDC)がデルタ株に関しては水痘と同程度の5~9.5との内部資料を作成していたことが明らかになった。日本でも東京都をはじめとする首都圏を中心に過去最高を更新する感染者数の報告が続いているが、国立感染症研究所によると7月27日時点で新型コロナ陽性検体に占めるデルタ株の割合は関東地方で75%を占めると推定されている。現在、アメリカでもデルタ株による感染は急増中と伝わってきているが、そんな最中、ぎょっとする以下のようなニュースを目にした。多くの皆さんも目にしていると思われる。「米東部クラスター、ワクチン接種者が74% 当局分析 「重症化防ぐ」接種は推奨」(日本経済新聞)まず、記事から読める事実関係を箇条書きする。マサチューセッツ州バーンスタブル郡でクラスターが発生同郡では7月初旬、数千人の観光客が訪れた大規模イベントを開催報告された感染者は469人感染者のうち74%(346人)がワクチン接種を終えたブレークスルー感染ブレークスルー感染者346人のうち79%(274人)はせき、頭痛、のどの痛み、筋肉痛、熱といった通常のコロナ感染と同じ症状27日時点で死者はいないブレークスルー感染者346人の接種ワクチンはファイザー製が46%、モデルナ製が38%、J&J製が16%デルタ型に感染したワクチン接種者からは、未接種者と同等のウイルス量これらから、CDCは「ワクチン接種完了者も屋内でマスクを着用するよう推奨」をしたという。正直、私も一瞬は見出しにあった「74%」という数字の大きさにぎょっとした。そしてSNS上ではワクチン忌避者を中心に「それみたことか」とばかりにこの記事の引用が目についた。しかし、どうにもすっきりしない。そこで実際、CDCのホームページを訪れたら詳細な報告が掲載されていた。新たに分かった情報を以下に箇条書きで追記する。イベント開催は7月3~17日感染者133人から採取した検体の遺伝子解析ではデルタ株関連が89%入院者5人のうち4人はワクチン接種完了者ワクチン接種完了者の入院4人は20~70歳、うち2人は基礎疾患あり死亡例なしワクチン接種完了者127人、ワクチン未接種者・部分接種者・ワクチン接種状況不明者84人の各リアルタイムPCR(RT-PCR法)の Ct値(中央値)は22.77、21.54でほぼ同様感染者はバー、レストラン、ゲストハウス、レンタルホームなどで行われる屋内外の密集したイベントに参加症例の多くは男性(85%)で年齢中央値は40歳感染者の半数近い199人(42%)がバーンスタブル郡の町に居住ブレークスルー感染者のうち87%は男性で、年齢中央値は42歳ブレークスルー感染者346人の接種ワクチンはファイザー製が159人、モデルナ製が131人、J&J製が56人ブレークスルー感染者でのワクチン接種完了14日後以降から発症するまでの期間の中央値は86日(範囲:6~178日)ただ、そこはやはりCDCと言うべきか、この報告にはリミテーションが4つ記述されていた。 簡単に要約して記述すると(1)集団レベルでのワクチン接種率が上昇すればブレークスルー感染が新型コロナ感染者のより大きな割合を占めるようになる、(2)検出バイアスのために無症候性のブレークスルー感染が過小評価されている可能性がある、(3)成人男性を対象としたイベントで感染者の属性は一般的な市中感染の属性を反映していない、(4)RT-PCR法で得られたCt値はサンプル中に存在するウイルス量との粗い相関関係を示す可能性があり、ウイルス量以外の要因にも影響される可能性がある、というものだ。まず、私は(1)の要素は見逃せないと考える。今回、クラスターでの全感染者報告数の約4分の3(346人)がブレークスルー感染者という数字だけを見て驚いたのは私だけではないと思う。しかし、確かにワクチン接種が進むほど見かけ上のブレークスルー感染者数の絶対値が大きくなるのは確かだ。そこでこのブレークスルー感染がどの程度の頻度で起きるかだが、最近、イスラエルから報告された日本でのコミナティ筋注、すなわちファイザー製のワクチン接種完了14日後以降、PCR検査で追跡が可能だった医療従事者1,497例での研究からは、ブレークスルー感染(無症候を含む)発生率は2.6%と分かっている。もっともこの2.6%は、一般人よりも感染対策がソフィストケートされている医療従事者での数字あり、しかもアルファ株流行時のもの、さらにファイザー製に限定した結果という点は注意する必要がある。それでも仮としてこの確率を使うと、ワクチン接種完了者が100人ならばブレークスルー感染者は2~3人発生することになるが、1万人ならば260人。つまり母集団の規模によって評価は変わる。前述のように今回のマサチューセッツ州のクラスターではファイザー製ワクチン接種者でのブレークスルー感染者は159人で、ブレークスルー感染率2.6%を援用すれば、母集団のワクチン接種完了者が6,115人以上ならば何も問題はない数字である。では今回のクラスター事案は母集団がどれくらいになるかだが、前述のように全米から観光客だけで数千人が集まったことが明らかになっている。開催地のマサチューセッツ州バーンスタブル郡の人口は約21万6,000人だが、調べていくうちにこのイベントの開催地は人口約3,000人のプロビンスタウンと判明した。この町に全米から数千人が押し寄せたことになるわけで、ほぼ町全体を巻き込んだイベントだろうと考えられた。そこでまず数千人を5,000人と仮定し、ワクチン接種完了率をマサチューセッツ州の約70%、全米の約50%という数字を使って計算すると、ワクチン接種完了者はプロビンスタウン住民で2,100人、参加者で2,500人、合計4,600人となる。この数字から逆に今回のブレークスルー感染率を逆算すれば約10%となる。やや高めにも思えるが、一般人では医療従事者ほど日常的な感染対策が徹底されていない、基本再生産数から見るデルタ株の感染力が従来株の3倍弱、アルファ株との比較でデルタ株の感染力が約1.6倍と言われていること、J&J製はファイザー製やモデルナ製と比べ、有効率が低いことなどを考慮すればあり得ない数字ではない。もっともブレークスルー感染率が仮に10%だったとしても、その他大勢はワクチンによって守られていることになるし、入院以上を重症と考えた場合、今回のブレークスルー感染者での重症化率は1.2%という計算になり、一般的な新型コロナの重症化率の20%からはかなり低く、重症化予防効果は十分にある。ワクチン接種のメリットはまだまだ高いと言えるだろう。そんなこんなを考えながら、そもそもこのイベントとは何なのだという疑問が浮かんできた。答えはインターネット上の検索で容易に判明した。すでに前述した発生地の地名を見て気づいていた人もいるかもしれない。私は検索でようやく知ったのだが、プロビンスタウンは世界的にも有名なゲイ・タウンで同性婚も認められており、感染者多発の原因になったイベント自体がゲイ向けのもの。全米から駆け付ける参加者も例年は1万人超で、前述の数千人=5,000人という設定も過少かもしれない。過去の同様のイベント写真なども見つけたが、肩が触れ合うほど密集した場所で連日ダンスなどをして楽しむなど、誤解を恐れずに言えば三密・濃厚接触前提。ワクチン接種完了者全員が同一のブレークスルー感染率ならば、当然三密状態にある人はそうでない人に比べ、感染リスクは高まる。もっともCDCがリミテーションで指摘しているように無症候感染者が十分にカウントされていないため、そこまで補足すればさらにブレークスルー感染率は上昇するだろう。だが、いずれにせよこれまで指摘した諸条件から考えれば今回のクラスター発生そのものは特段不思議なものではないし、ワクチンの信頼性を低下させるようなものではないと考えられるだろう。

2024.

ファイザー製とシノバック製ワクチン、中和抗体価に差はあるのか

 中国・シノバック製の新型コロナワクチンの有効性について、ファイザー製やモデルナ製のmRNAワクチンより低いとする報告が多いが、免疫原性に違いはあるのか。今回、香港の医療従事者を対象に、ファイザー製のBNT162b2ワクチンまたはシノバック製の不活化ウイルス(vero細胞)ワクチンを2回接種し中和抗体価を測定したところ、ファイザー製ワクチンのほうが大幅に上昇していた。WHO協力センターである中国・香港大学のWey Wen Lim氏らが、Lancet Microbe誌オンライン版2021年7月16日号で報告した。 本研究の対象は、香港の公立および私立病院と診療所における1,442人の医療従事者。ワクチン接種前、初回接種後(2回目接種前)、2回目接種後(21〜35日後)に採血し、ELISAでスパイクタンパク質受容体結合ドメインに結合する抗体価を、また代替ウイルス中和試験(sVNT)およびプラーク減少中和試験(PRNT)で中和抗体価を測定した。ここでは、ワクチン接種前、初回接種後、2回目接種後のデータが揃っている93人における予備的な試験結果を報告した。 主な結果は以下のとおり。・93人の医療従事者のうち、ファイザー製ワクチン接種したのは63人(男性55.6%、年齢中央値37歳[範囲26〜60歳])、シノバック製ワクチン接種したのは30人(男性23.3%、年齢中央値47歳[範囲31〜65歳])であった。・ファイザー製ワクチンを接種した医療従事者では、ELISAおよびsVNTで測定した抗体価は、初回接種後に大幅に上昇し、2回目接種後に再上昇した。PRNTの結果が得られた12人のサブセットにおいて、2回目接種後のPRNT50力価の幾何平均値は269、PRNT90力価の幾何平均値は113だった。・一方、シノバック製ワクチンを接種した医療従事者では、ワクチン接種後にELISAおよびsVNTで測定された抗体価は低く、2回目接種後に中程度に上昇した。PRNTの結果も得られた12人のサブセットにおいて、2回目接種後のPRNT50力価の幾何平均値は27、PRNT90力価の幾何平均値は8.4だった。 著者らは「中和抗体価と新型コロナワクチンにおける防御との関連が提案されている。ここで示された中和抗体価の差は、ワクチンの有効性の差につながる可能性がある」と考察している。なお、本研究では、T細胞や抗体依存性細胞傷害抗体などの防御の関連については検討されていない。

2026.

第69回 コロナ中等症自宅療養、AZワクチン接種推進―政策転換に求められるエビデンスある説明

東京都の新型コロナウイルスの新規感染者が4,000人台を突破、自宅療養者も1万人超となる中、政府は中等症以上の患者の「原則入院」を見直し、重症以外は自宅療養を基本とする方針に突然転換した。これに対し、医療現場からは「重症化リスクを誰がどう管理するのか」「患者を見捨てる政策ではないか」といった批判の声が上がっている。中等症自宅療養で懸念される重症化新型コロナ感染者は、発症からの日数と経過を概括すると、1週間は軽症(約80%)、1週間~10日位は中等症(15%)、10日以降は重症(約5%)となる。中等症はIとIIに分かれるが、自宅療養だと、中等症I(息切れ、肺炎所見)の場合、入院していれば投与できる抗ウイルス薬「レムデシビル」が使用できなくなり、中等症II(呼吸不全)の場合、重症化を防ぐ抗炎症薬の使用が遅れると、救える命も救えなくなる可能性が出てくる。中等症感染者を見捨てないためには、入院の必要性がある人を早く見つけ、入院させる体制を構築するのが急務だ。今後、感染者が爆発的に増えて、自宅療養中に重症化する人が増加した場合、発見が遅れたり、入院先も見つからなかったりするケースも増えるだろう。実際このような状況は、第3波では東京で、第4波では大阪ですでに起きている。とくに今回の新型コロナ第5波では、若年者の中等症IIが増えている点が問題になっている。感染層として一番多い年代が中等症化しており、背景にあるのは、感染力の強いインド型変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大である。インドでは、感染者が酸素を求めて病院に押し寄せるなど、医療用酸素の不足も深刻化しており、日本においても危機感を感じている医療人は少なくない。ある医療人は「新型コロナ第5波では、いつ重症化するかわからない中等症患者の予備軍が大勢いる。感染状況を正確に把握しないかぎり根本的に解決しない問題だ。政府はどのようなエビデンスに基づいて、方針転換したのだろうか」と疑問を呈する。AZ製ワクチンではプラス情報が不足十分な説明のない新型コロナ政策の転換は、アストラゼネカ(AZ)製ワクチン接種を原則40歳以上に進める方針にも言える。AZ製ワクチンは接種後、まれに血栓症が生じる懸念が報告され、国民の間にはマイナスイメージが強い。自治体からは「住民の接種に使わない」との声も上がっているという。接種のめどが立たない中、コロナ感染が急拡大してワクチンが不足した台湾に、日本政府はAZ製ワクチンを供給したが、一部の台湾国民からは「日本人が使わないワクチンを台湾人に使わせるのか」といった批判も出た。今後、国内においてもAZ製ワクチンの接種を進めるならば、マイナスイメージを払拭するプラスの情報が必要なはずだ。安全性のエビデンスや副反応対策を示すほか、2回目接種にAZ製ワクチンを打つと、抗体がより多くできるといった研究をスルーせず、真摯に検証してみることも必要だろう。新型コロナ政策を巡っては、休業要請や緊急事態宣言などをとってみても、論理的根拠を示せないまま国民に要請するばかり。エビデンスを示し、納得のいく説明と強いメッセージを発することで医療人や国民に行動を促すのは、なにもコロナに限ったことではない、きわめてシンプルな政治の基本だと思う。

2027.

グルココルチコイド抵抗性の慢性GVHD、ルキソリチニブが有効/NEJM

 中等度~重度グルココルチコイド抵抗性/依存性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対し、JAK1-JAK2阻害薬ルキソリチニブの24週時点の全奏効割合は49.7%と、従来の治療法の25.6%に比べ有意に高率で、治療成功生存期間の中央値も18.6ヵ月vs.5.7ヵ月と大幅に延長し、症状改善の割合も有意に高率(オッズ比[OR]:2.62)だった。ドイツ・フライブルク大学のRobert Zeiser氏らが、329例を対象に行った第III相非盲検無作為化試験の結果、明らかにされた。安全性については、ルキソリチニブ群で血小板減少と貧血の発現頻度が高率だった。慢性GVHDは同種造血幹細胞移植の主要な合併症で、患者の約50%でグルココルチコイド抵抗性/依存性を示す。これまでに、慢性GVHDの2次治療を評価した第III相無作為化試験の確固たるデータは不足しているが、後ろ向きサーベイで、同患者に対してルキソリチニブが有効である可能性が示されていた。NEJM誌2021年7月15日号掲載の報告。 24週時点の全奏効、治療成功生存期間、修正Lee症状尺度スコアなどを比較 研究グループは、中等度~重度グルココルチコイド抵抗性/依存性の慢性GVHDを有する12歳以上の患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはルキソリチニブ(10mg、1日2回)を、もう一方には、10通りの一般的治療選択肢のリストから、担当医の判断で利用可能な最善の治療が行われた(対照群)。 主要エンドポイントは、24週時点の全奏効(完全奏効・部分奏効)だった。主な副次エンドポイントは、治療成功生存期間と、24週時点の修正Lee症状尺度スコアの改善だった。いずれのエンドポイントも、ルキソリチニブ群で大幅に改善 被験者総数は329例で、ルキソリチニブ群165例、対照群164例だった。 24週時点の全奏効割合は、対照群25.6%に対し、ルキソリチニブ群は49.7%に上った(OR:2.99、p<0.001)。治療成功生存期間の中央値についても、対照群5.7ヵ月に対し、ルキソリチニブ群は18.6ヵ月超と、有意に延長した(ハザード比[HR]:0.37、p<0.001)。症状改善の割合は、それぞれ11.0%、24.2%とルキソリチニブ群で有意に高率だった(OR:2.62、p=0.001)。 24週目までにみられたGrade3以上の有害事象で発現頻度が10%以上だったのは、血小板減少(ルキソリチニブ群:15.2%、対照群:10.1%)と、貧血(12.7%、7.6%)だった。サイトメガロウイルス感染の発生率と再活性化率は、両群で同程度だった。

2028.

コロナのブレークスルー感染、感染前の中和抗体価と関連か/NEJM

 BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)を完全接種した健康な医療従事者1,497例のうち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)へのブレークスルー感染が認められたのは39例で、いずれの感染者も非感染者に比べて、感染前(SARS-CoV-2検出前1週間以内)の中和抗体価が低いことが、イスラエル・Sheba Medical Center Tel HashomerのMoriah Bergwerk氏らによる検討で示された。また、ブレークスルー感染者のほとんどが軽症か無症状だったが、持続的な症状を呈するという。BNT162b2 mRNAワクチンはSARS-CoV-2に対する高い有効性にもかかわらず、まれなブレークスルー感染が報告されている。研究グループは、これらの感染を特徴付け、ブレークスルーと感染性の相関関係を調べた。NEJM誌オンライン版2021年7月28日号掲載の報告。ケース・コントロールで感染相関関係要因を検証 研究グループは、イスラエル最大の医療センターに勤務する医療従事者を対象に、無症状者も含め、ワクチン完全接種後のブレークスルー感染者の特定を行った。ブレークスルー感染の定義は、ワクチンの2回目接種後11日以降のRT-PCR検査によるSARS-CoV-2の検出で、最初の6日以内に明らかな曝露や症状があった場合には除外した。 症候性(軽症を含む)、あるいは感染者との接触が確認された被験者について、疫学的調査、RT-PCR検査、抗原迅速診断法(Ag-RDT)、血清検査、ゲノム解析など詳細な検査を行った。 感染者と非感染者についてケース・コントロール解析を行い、ブレークスルー感染との相関関係要因を検証した。具体的には、SARS-CoV-2検出前1週間以内に抗体価を測定したブレークスルー感染者と、非感染者のマッチング・コントロール4~5例について、一般化推定方程式を用いて、感染群とコントロール群の幾何平均抗体価と両群抗体価の比率を予測した。感染と中和抗体価、N遺伝子増幅に必要なサイクル数(Ct値)との関連性についても検証した。ほとんどのブレークスルー感染者が軽症・無症状、19%は6週間以上症状継続 ワクチン完全接種者でRT-PCR検査結果が得られた1,497例の医療従事者のうち、SARS-CoV-2のブレークスルー感染が認められたのは39例だった。 感染群のSARS-CoV-2検出前1週間以内の中和抗体価は、非感染のコントロール群に比べ低値だった(感染群のコントロール群に対する率比:0.361、95%信頼区間[CI]:0.165~0.787)。感染前の中和抗体価の高値は、感染性の低下(Ct値がより高い)と関連していた。 ほとんどのブレークスルー感染者が軽症か無症状だったが、うち19%で症状が6週間以上続いた。 検査を行った85%が、B.1.1.7(α)株だった。 感染群の74%が、感染中のウイルス負荷が高かった(Ct値30未満)が、同時に行ったAg-RDTで陽性結果が出たのはそのうち59%(17例)だった。2次感染は認められなかった。

2029.

ワクチン接種後の感染例、疫学的・ウイルス学的特徴は?/感染研

 日本国内で確認されたワクチン接種後の感染例130例について、積極的疫学調査が実施され、2回目のワクチン接種後14日以降が経過した症例でも、一部で感染性のあるウイルスが気道検体中に検出された。7月21日開催の第44回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、国立感染症研究所感染病理部の鈴木 忠樹氏が、「新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と診断された症例に関する積極的疫学調査(第一報)」について報告した。 本調査の主な目的は、1)ワクチン接種後感染の実態把握、2)ワクチンにより選択された(可能性のある)変異株の検出、3)ワクチン接種後感染者間でのクラスターの探知であり、今回の報告は2021年6月30日時点における疫学的・ウイルス学的特徴の暫定的なまとめと位置付けられている。[調査方法]・2021年4月1日~6月30日までに1)医療機関・自治体からワクチン接種後感染として感染研に直接報告があった症例2)新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)に登録のあった感染者(ワクチン2回目接種日を0日として最初に検査陽性検体が採取された日まで14日以上経過)で、感染研から医療機関・自治体への問い合わせで協力が得られた症例について、患者・疫学情報や検体を収集した。・症例情報については本調査独自の症例報告書様式を作成し収集した。・気道検体は、N2領域のPCR再検での陽性例について、N501Y(アルファ株、ベータ株、ガンマ株等で認める)、E484K(ベータ株、ガンマ株等で認める)、L452R(デルタ株等で認める)変異を検出するPCRスクリーニング(変異検出PCR)およびウイルス分離試験を実施し、検体中のウイルスN2領域のPCRの結果、ウイルスRNA量が十分量あると判断された検体については、ウイルスゲノム解析を実施した。・1回目接種後14日~2回目接種後13日まで、2回目接種後14日以降について分けて解析した。※ただし現状では、集団の違い(医療従事者および高齢者の割合、接種時期、感染時期等)から、単純にこれらの2群を比較して解釈すべきではない。  主な結果は以下のとおり。・27都道府県から130例(うち2回目接種後14日以降67例)が報告された。医療従事者が106例(81.5%)を占める。・年齢中央値は44.5(20~98)歳、男性37例(28.5%)、女性93例(71.5%)であった。 ・免疫不全のある者(原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群など、[狭義の]免疫不全の診断を受けた者)はいなかったが、ステロイド等の免疫抑制剤の使用歴は3例(2.4%)で認めた。・接種していたワクチンは、121例(97.6%)がファイザー社製であった。・接触歴ありが92例(75.4%)を占めた(うち2回目接種後14日以降50例)。・症例報告書提出時点での重症度は、65例(50%)が無症状、60例(46.2%)が軽症、5例(3.8%)が中等症で、重症例はいなかった。・6月30日時点で、気道検体については101例(うち2回目接種後14日以降50例)が収集され、N2領域のPCR再検で68例が陽性となり、Ct値の中央値(範囲)は29.4(15.9~38.4)であった。・ウイルス分離可能であったのは分離を試行した58例中16例。変異検出PCRは68例で実施し、ウイルスゲノム解析が完了したのは39例であった。・ウイルスゲノム解析を実施した39例中、B.1.1.7系統(アルファ株)30例(うち2回目接種後14日以降12例)、R.1系統4例(0例)、B.1.617.2系統(デルタ株)4例(2例)、P.1系統(ガンマ株)1例(0例)を認めた。また、各系統特異的なスパイクタンパクの変異を除いては、免疫を逃避する可能性のあるスパイクタンパクへの新規の変異は認めなかった。 中間解析時点では、特殊な疫学的特徴はみられず 本報告では症例の大多数が優先接種対象の医療従事者であり、若年層が多く、無症状でも検査対象となる機会が比較的多いことなどもあり、多くが軽症および無症状であったと考察。高齢者への接種も現在では進んでおり、今後はそれらの知見も収集していくことが重要としている。 男女比については、内閣官房HPに公開されているワクチン接種記録システムの集計値において4月12日~4月25日の2週間で、(医療従事者が想定される)65歳未満の男女比は1:3程度と本報告の男女比と同程度であった。免疫不全や免疫抑制剤を使用している者は1割未満であった。 上記より、中間解析の時点では、特殊な疫学的特徴をもつ集団ではないことが示唆されたと考察されている。2回目接種後も感染性のあるウイルス検出 ワクチン1回目接種後のみならず2回目接種後14日以降においても、一部の症例では感染性のあるウイルスが気道検体中に検出されたことから、二次感染リスクも否定できないことがわかった。また、ワクチン接種後感染例から検出されたウイルスは、ワクチン接種により付与された免疫を回避できる新規の変異を有するウイルスではなく、同時期に国内各地域で流行しているウイルスであった。これらの結果より、ワクチン接種後であっても、その時点で流行しているウイルスに感染することがあること、および、ワクチン接種後感染例の一部では二次感染しうることが示唆され、ワクチン接種者における感染防止対策の継続は重要と考えられた。 今後は、ワクチン接種後であっても、新型コロナウイルス感染の疑いがある場合(有症状・接触者等)は積極的に検査を実施し、陽性検体の一部については、免疫逃避能を有する新たな変異ウイルスの出現の監視など、病原体解析を継続して実施していく必要があるとしている。

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HIV-1の2次治療、NRTI耐性患者でドルテグラビル+NRTI有効/NEJM

 HIV-1感染症の2次治療について、ドルテグラビルと逆転写酵素阻害薬(NRTI)の併用投与は、NRTIの活性が予測されない患者を含む広範なNRTI耐性患者において有効であることが、シンガポール国立大学のNicholas I. Paton氏らによる検討で示された。また、2つのNRTIについて、テノホビルはジドブジンに対して非劣性であることも示された。世界保健機関(WHO)はHIV-1感染症の2次治療について、ドルテグラビルと2つのNRTIとの併用投与を推奨しているが、薬剤耐性によりNRTIの活性が予測されない場合や、NRTIのテノホビルからジドブジンへの切り替え推奨に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌2021年7月22日号掲載の報告。2×2要因無作為化非盲検非劣性試験で検証 研究グループはHIV-1感染症の1次治療に失敗した患者(HIV-1ウイルス量≧1,000コピー/mL)を対象に、ドルテグラビルまたはダルナビル+テノホビルまたはジドブジンの併用投与について評価する、多施設共同の2×2要因無作為化非盲検非劣性試験を行った。 被験者を、ドルテグラビル投与群またはリトナビルでブーストしたダルナビルの投与を受ける群、および、テノホビル投与群またはジドブジン投与群に無作為に割り付けた。なお全被験者がラミブジンの投与を受けた。 主要アウトカムは、48週時点のウイルス量が400コピー/mL未満であることとし、米国食品医薬品局(FDA)のスナップショットアルゴリズム(非劣性マージンは、主要アウトカム達成患者割合の群間差で12ポイント)で評価した。NRTIの活性が予測されない患者でも併用薬の投与は有効 サハラ以南アフリカの7地点で、464例の被験者が登録された。 48週時点でウイルス量400コピー/mL未満を達成した患者の割合は、ドルテグラビル群90.2%(212/235例)、ダルナビル群91.7%(210/229例)であった。群間差は-1.5ポイント(95%信頼区間[CI]:-6.7~3.7、p=0.58)であり、ドルテグラビルのダルナビルに対する非劣性が示されたが、優越性は示されなかった。 また、テノホビル群は92.3%(215/233例)、ジドブジン群は89.6%(207/231例)であった。群間差は2.7ポイント(95%CI:-2.6~7.9、p=0.32)であり、テノホビルのジドブジンに対する非劣性が示されたが、優越性は示されなかった。 NRTIの活性が予測されないサブグループにおいて、ウイルス量400コピー/mL未満達成患者の割合は、ドルテグラビル群、ダルナビル群ともに90%超であった。 有害事象の発現頻度は、いずれの要因比較でも群間で実質的に差はなかった。

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初の軽症~中等症COVID-19の抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット300/1332」【下平博士のDIノート】第79回

初の軽症~中等症COVID-19の抗体カクテル療法「ロナプリーブ注射液セット300/1332」今回は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「カシリビマブ(遺伝子組み換え)/イムデビマブ(遺伝子組み換え)(商品名:ロナプリーブ注射液セット300/1332、製造販売元:中外製薬)」を紹介します。本剤は、2種類の中和抗体を組み合わせて投与する抗体カクテル療法であり、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害し、ウイルスの増殖を抑制すると考えられています。※本剤の販売名は、販売当初は「ロナプリーブ点滴静注セット300/1332」でしたが、2021年11月添付文書改訂による用法の変更に伴い、「ロナプリーブ注射液セット300/1332」と変更されました。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年7月19日に特例承認され、7月22日に発売されました。また、SARS-CoV-2による感染症の発症抑制の適応が2021年11月5日に追加されました。なお、本剤の適用は、臨床試験における経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者が対象となります。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組み換え)およびイムデビマブ(遺伝子組み換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注します。また、2021年11月の適応追加と同時に、単回皮下注射の用法が追加されました。臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないため、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与する必要があります。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症(頻度不明)、infusion reaction(0.2%)が現れることがあります。上記が認められた場合には、投与速度の減速、投与中断または投与中止し、アドレナリン、副腎皮質ステロイド薬、抗ヒスタミン薬を投与するなど適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察します。<患者さんへの指導例>1.本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬です。1回の点滴で2種類の中和抗体を投与し、ウイルスの増殖を抑えます。2.過去に薬剤などで重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方は必ず事前に申し出てください。3.投与中または投与後に、発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、脱力感、頭痛のほか、過敏症やアレルギーのような症状が現れた場合は、すぐに近くにいる医療者または医療機関に連絡してください。<Shimo's eyes>わが国ではこれまで、COVID-19治療薬としてレムデシビル(商品名:ベクルリー)、デキサメタゾン(同:デカドロン)、バリシチニブ(同:オルミエント)の3剤が承認されています。いずれも別の疾患で承認されていた薬剤が転用されたものであり、対象は重症患者に限られています。本剤は、国内で初めて軽症から中等症患者を対象とするCOVID-19治療薬です。2021年11月に「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」の適応が追加され、初の予防的治療薬となりました。患者との濃厚接触者や無症状陽性者に対して、静脈内投与および皮下投与で予防的に投与されます。ただし、COVID-19の予防の基本はワクチン接種であり、本剤はワクチンに置き換わるものではありません。COVID-19の原因となるSARS-CoV-2は、その表面に存在するスパイクタンパク質(Sタンパク質)が宿主細胞表面の酵素に結合することで宿主細胞に侵入し、感染に至ります。本剤は、このSタンパク質と宿主細胞表面の酵素との結合を阻害し、宿主細胞への侵入を阻害することでウイルスの増殖を抑制します。変異を繰り返すウイルスに対しては、抗体が1種類だけでは期待する効果が得られにくいことから、2種の抗体が組み合わされました(抗体カクテル療法)。本剤は、アルファ株(B.1.1.7系統)、ベータ株(B.1.351系統)、ガンマ株(P.1系統)、デルタ株(B.1.617.2系統)などのSタンパク質の主要変異にも中和活性を保持していることが示唆されています。投与対象者は「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者(軽症~中等症I)」とされています。厚生労働省の事務連絡により、当初は入院治療を要する患者に限られましたが、2021年8月より、対象が宿泊療養中の患者にも拡大されました。なお、臨床試験において、高流量酸素や人工呼吸器管理を要する患者では症状が悪化したという報告があり、重症患者は対象ではありません。《COVID-19の重症化リスク因子》65歳以上の高齢者悪性腫瘍慢性閉塞性肺疾患(COPD)慢性腎臓病2型糖尿病高血圧脂質異常症肥満(BMI30以上)喫煙固形臓器移植後の免疫不全妊娠後期引用:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き第5.1版より海外の第III相試験では、重症化リスク因子を有し、酸素飽和度93%(室内気)以上の患者が対象とされました。主要評価項目である入院または死亡に至った割合は、本剤群(736例)では1.0%、プラセボ群(748例)では3.2%であり、リスクが70.4%減少しました。症状消失までの期間短縮も示されています。なお、別の臨床試験では感染予防効果を示す報告もありますが、今回の適用は感染した患者への投与に限られています。薬剤調整時は、希釈前に約20分間室温に放置します。11.1mLバイアルには、2回投与分(1回5mL)の溶液が含まれ、1回分の溶液を抜き取った後のバイアルは、25℃以下の室温で最大16時間、または2~8℃で最大48時間保存可能で、最大保存期間を超えた場合は廃棄することとされています。新しいCOVID-19治療薬の登場により感染患者の重症化を防ぐことができ、ひいては医療機関の負担が軽減されることが期待されます。※2021年8月と11月、厚生労働省の情報などを基に、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ロナプリーブ注射液セット300/ロナプリーブ注射液セット1332

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第71回 デルタ株を警戒する米国がマスク着用へ方針転換

先月7月の初めから中旬(7月3日~17日)に米国・マサチューセッツ州バーンスタブル郡で開催された幾つかの催しに同国全域から数千人が訪れ、それらの催しの最中に同郡に居合わせた同州住民469人の新型コロナウイルス感染(COVID-19)が7月26日までに確認されており、必要な回数のワクチン投与後2週間以上過ぎて接種完了状態(fully vaccinated)の人がそれら感染者のほとんど74%(346人)を占めました1)。133人の検体のウイルス配列を調べたところほとんど(120人、90%)がデルタ変異株(デルタAY.3株を含む)でした。7月3日時点でのマサチューセッツ州のCOVID-19ワクチン接種完了者の割合は69%であり、感染者469人のワクチン接種完了者の割合74%とだいたい同じでした。配列解析から示唆されるように469人の感染のほとんどがデルタ変異株で、催しに接した人々が同州の人口統計と一致すると仮定するなら接種完了者とそうでない人のデルタ変異株の感染しやすさはほぼ同程度だったのでしょう。感染者469人のうち先月27日時点で死亡例はなく、入院したのは5人で、そのうち4人はワクチン接種を完了しており、残り1人は非接種でした。また、ワクチン接種完了者とそうでない人のウイルス量にどうやら差はないようでした。米国疾病予防管理センター(CDC)はこれまでワクチン接種完了者のマスク着用はおよそ不要との見解を示していましたが、MMWR掲載の上記の解析を含む情報を受け、COVID-19が相当またはかなり多発している郡(areas of substantial and high transmission)の公の場の室内ではワクチン接種が済んでいようといまいと誰もがマスク着用を要するとの方針を先月27日に新たに示しました2)。COVID-19が相当またはかなり多発している郡の割合は先月末31日時点で約79%3)ですので、米国のほとんどの地域はCDCの新たなマスク着用方針の対象になります。ワクチン接種完了者のCOVID-19はたとえ感染ウイルスがデルタ変異株でも全体のほんの一握りであり、たいてい軽症で済みます。しかし、MMWRの報告が示すようにデルタ変異株感染者のウイルス量はワクチン接種が完了していても非接種と同様に多くなり、接種完了者でもデルタ変異株にひとたび感染すれば他の人を感染させてしまう恐れがあります4)。それゆえ、知らぬ間にうっかりウイルスを他人に広めてしまわないようにするためにCDCは今回の新たなマスク着用方針を決めました。CDCのマスク着用方針はあくまでもCOVID-19が相当またはかなり多発している郡に限りますが、マスク着用を含む予防対策の実行はそうでない地域でも検討すべきかもしれないとMMWR報告の著者は言っています1)。米国ではデルタ変異株が感染の増加を助長していますが、同国感染症対策リーダーAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏によると感染のほとんどはワクチン非接種のおよそ1億人における出来事です5)。ワクチン普及はCOVID-19流行を消し去るほどのものではないが昨冬のような事態の回避に十分なレベルに達しているに違いなく、再度の足止め(ロックダウン)はしないと同氏は言っています。参考1)Outbreak of SARS-CoV-2 Infections, Including COVID-19 Vaccine Breakthrough Infections, Associated with Large Public Gatherings - Barnstable County, Massachusetts, July 2021. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR). July 30, 2021.2)When You’ve Been Fully Vaccinated / CDC3)COVID-19 Integrated County View / CDC4)Statement from CDC Director Rochelle P. Walensky, MD, MPH on Today’s MMWR / CDC5)U.S. will not lock down despite surge driven by Delta variant, Fauci says / REUTERS

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新型コロナワクチン、デルタ株への有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の2回接種後の有効性は、アルファ株とデルタ株で大きな差は認められなかった。ただし、初回接種後の両株に対するワクチンの有効性には顕著な差がみられ、デルタ株で低かった。英国・公衆衛生局のJamie Lopez Bernal氏らによる、診断陰性例コントロール試験の結果で、著者は結果を踏まえて、「したがって、脆弱な集団では2回のワクチン接種を最大化するよう努力する必要がある」と述べている。COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のB.1.617.2変異株(デルタ株)はインドでの感染者急増の一因で、現在、感染者の増加が顕著なイギリスを含め世界中で検出されている。この変異株に対するBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンの有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2021年7月21日号掲載の報告。診断陰性例コントロール試験によりワクチンの変異株に対する有効性を検討 研究グループは、ワクチン(BNT162b2またはChAdOx1 nCoV-19)接種によるデルタ株への影響を推定する目的で、診断陰性例コントロール試験により、デルタ株が流行し始めた期間における優勢株(B.1.1.7またはアルファ株)と比較したデルタ株の症候性疾患に対するワクチンの有効性を推定した。 検討では、症候性のCOVID-19患者のワクチン接種状況と、症状を有するPCR検査陰性者のワクチン接種状況を比較。また、英国におけるすべての症候性COVID-19患者の症例データを用い、患者のワクチン接種状況に応じた変異株保有症例の割合を推定した。 変異株は、全ゲノムシークエンス解析を用いるとともに、TaqPath PCR法によるスパイク遺伝子標的の状態(陽性の場合はデルタ株、陰性の場合はアルファ株を保有)に基づいて同定した。デルタ株に対するワクチンの有効性、2回接種後で67~88% ワクチン初回接種後の有効性は、アルファ株保有者で48.7%(95%信頼区間[CI]:45.5~51.7)、デルタ株保有者で30.7%(95%CI:25.2~35.7)であり、デルタ株保有者で低かった。この結果は、両ワクチンで同様であった。 一方、2回接種後の有効性は、BNT162b2ワクチンでアルファ株93.7%(95%CI:91.6~95.3)、デルタ株88.0%(95%CI:85.3~90.1)、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンでそれぞれ74.5%(95%CI:68.4~79.4)、67.0%(95%CI:61.3~71.8)であった。

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中和抗体薬などについて追加、COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 7月30日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.2版」を公開した。 今回の改訂では、以下の4点が追記・修正された。・「1 病原体・疫学」の「海外発生状況」の更新・「2 臨床像」の「合併症」に、心筋炎・心膜炎、真菌感染症について追記・「4 重症度分類とマネジメント」で「中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブ」を追記・「5 薬物療法」で「各種薬剤の項目」を一部追記 また、同省は7月26日、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(3.3版)」を改訂し、公開した。主に「海外在留邦人等に対するワクチン接種事業」、「ホームレス等の接種機会の確保」、「特設会場で一時的に同時期に複数種類のワクチンを使用する場合の取扱い」、「接種後の経過観察について、具体的な対応方法等」、「予防接種証明書」などが追記・修正された。 さらに、8月2日には「同(4版)」が公開され、本版では「アストラゼネカ社ワクチン用の予診票」、「接種不適当者」などが追記された。

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第65回 ワクチン完了者のコロナ感染死は0.001%未満/CDC

<先週の動き>1.ワクチン完了者のコロナ感染死は0.001%未満/CDC2.AZ製ワクチン、40歳以上などを対象に接種開始へ/厚労省3.医師働き方改革、宿日直許可のフローなど公表/厚労省4.マイナンバーカード保険証、9月末までに導入を/厚労省5.日本人の平均寿命、コロナ下でも延長し男女とも最高に/厚労省1.ワクチン完了者のコロナ感染死は0.001%未満/CDC米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国内で新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人のうち、コロナ感染により死亡した例は0.001%未満、重症化した例は0.004%未満に留まっていることを、最新データで明らかにした。各地からの報告によれば、新規感染者や入院患者の大半は未接種のグループに集中しているという。なお、世界中で感染が急拡大している変異株「デルタ株」については、接種済みでも感染を広げる可能性を指摘。7月27日、CDCはワクチン接種者に対するガイダンスを更新し、ワクチン接種の有無にかかわらず、感染率の高い地域の屋内公共施設では全員がマスクを着用することを推奨している。(参考)コロナ感染死、ワクチン接種済みなら0.001%未満 米CDC(CNN.co.jp)Statement from CDC Director Rochelle P. Walensky, MD, MPH on Today’s MMWR(CDC)When You’ve Been Fully Vaccinated How to Protect Yourself and Others(同)2.AZ製ワクチン、40歳以上などを対象に接種開始へ/厚労省厚生労働省は30日に、第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、アストラゼネカ(AZ)製の新型コロナウイルスワクチンについて、予防接種法に基づき、国内でも接種開始することを決めた。接種対象者は、原則40歳以上とするとともに、海外でAZ製ワクチンを1度打って帰国した人などとするが、他社製のワクチンでアレルギー反応が生じた場合や、他ワクチンの流通がストップした場合は、18歳以上40歳未満の人も対象となる。AZ製ワクチンは、今年5月に特例承認されたが、海外で接種後の血栓事例が報告され、国内での使用は見送られていた。血小板減少症を伴う血栓症は、イギリスにおいて1回目接種で100万回当たり14.8件と、アナフィラキシーの発症頻度(100万件当たり16.5件)とほぼ同程度であり、診断・治療の手引きを日本脳卒中学会と日本血栓止血学会が作成し、公表している。(参考)アストラ製ワクチン接種対象、40歳以上に決定(産経新聞)アストラゼネカワクチン 公的接種に追加 40歳未満は原則対象外(NHK)新型コロナワクチンの接種について[アストラゼネカ社ワクチン](厚労省)アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版(日本脳卒中学会、日本血栓止血学会)3.医師働き方改革、宿日直許可のフローなど公表/厚労省厚労省・医師等医療従事者の働き方改革推進室は、2024年度より勤務医に対する時間外労働上限規制が施行されることを踏まえ、医療機関における労働時間管理を適正に行うため、宿日直許可に関する必要書類やフローなどを公表した。申請前チェックシートもあり、医療機関の管理者らが、宿日直許可の取得申請を行う際の事務手続き等の参考になるだろう。(参考)宿日直許可、必要書類やフローなど周知 厚労省(キャリアブレインマネジメント)宿日直関係資料について(周知依頼)(厚生労働省)4.マイナンバーカード保険証、9月末までに導入を/厚労省厚労省は、29日の社会保障審議会医療保険部会で、「オンライン資格確認等システム」の導入準備状況について、カードリーダーなどの専用機器を導入し対応可能となった施設は1,664施設と、全体の1%未満に留まっていることを明らかにした。内訳は、病院159施設、医科診療所535施設、歯科診療所439施設、調剤薬局531施設。顔認証などによる手続きの自動化で待ち時間を短縮できるものの、院内システムの改修も必要であり、それらの準備が完了しているのは7,411施設。顔認証付きカードリーダーの申し込みは約13万施設(約6割)が行っており、そのうち約8割の施設が今年9月末までに導入予定であると回答している。このため、10月からの本格的な稼働に向け、医療関係団体や公的医療機関等に対して、導入加速を働きかける。なお、マイナンバーカードを保険証として使うには、利用者側でも事前登録が必要だが、登録者数は約470万人とカード発行の1割に留まり、更なる広報活動も必要だ。(参考)マイナ保険証への対応1%未満 医療機関、準備遅れ 10月開始、デジタル化基盤整わず(日経新聞)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)5.日本人の平均寿命、コロナ下でも延長し男女とも最高に/厚労省厚労省が30日に発表した「令和2年簡易生命表の概況」によれば、2020年の日本人の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳と、それぞれ2019年と比較して男性が0.22歳、女性は0.30歳延長し、過去最長を更新したことが明らかになった。男性、女性とも全年齢で平均余命は前年を上回っており、新型コロナウイルスにより、男性は-0.03歳、女性は-0.02歳の影響があったものの、男女とも悪性新生物、心疾患(高血圧性を除く)、脳血管疾患、肺炎および不慮の事故などの死亡率の減少によって、全体の平均寿命は延長した。同年の世界順位(香港を除く)は、男性では1位スイス(81.9歳)、2位日本(81.6歳)、3位シンガポール(81.5歳)、女性では1位日本(87.7歳)、2位韓国(86.3歳)、3位シンガポール(86.1歳)となった。なお、香港の平均寿命は男性が82.71歳、女性が88.14歳となっている。(参考)日本人の平均寿命 女性87.74歳、男性81.64歳 過去最高更新(毎日新聞)2020年の平均寿命、男女とも最高に 厚労省まとめ(日経新聞)令和2年簡易生命表の概況(厚労省)

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オリンピック空手の注目選手【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第4回

開催直前まですったもんだがありましたが、ようやく東京2020オリンピック競技大会が始まりました。コロナウイルス感染症のことも含め心配が尽きない大会となってしまいましたが、「盛り上がればいいな」と思います。さて、このエッセイが公開される頃には大会はだいぶ進んでいることと思いますが、私注目の「空手」は8月5〜7日の開催となっていますね。まあ、空手は残念ながらマイナースポーツですからね〜。どれだけの人の目に留まるかわかりませんが、始まったらきっと一気に注目を浴びると思います。何といっても、どの種目もメダル候補の選手ばかりですから!金メダル、最有力の喜友名 諒選手空手に限らず、全競技を合わせて最も金メダルに近いと言われているのが、「空手 男子形」の日本代表の喜友名 諒選手です。(出典:ウィキペディア[Wikipedia])喜友名選手は空手発祥の地である沖縄出身で、ちょうど私が空手を引退した直後に出てきた選手です。「劉衛流」という流派の選手なのですが、この劉衛流は最近まで一子相伝であったため、規模としては小さな流派です。しかし、門戸が開かれて以降、世界チャンピオンを輩出し続けていて、今や空手界でその名を知らぬ者のいない流派となりました。実はこの私、学生時代に学校を休んで沖縄へ行って劉衛流の道場に押しかけ、2週間ほど稽古をつけてもらった経験があります。当時も世界チャンピオンが何人も在籍していて、どんな稽古を、どれくらい積んでいるのか、どうしても知りたかったからです。アポも取らずに、いきなり道着片手に道場に押しかけてきた学生にも門戸を開いてくれて、本当にいい経験を積ませていただきました。結局、その流れで沖縄の病院で研修することを決めることになるのですが…、今となってはいい思い出です。綺麗かつ実戦的な形の演武を観戦して欲しい私は、喜友名選手は、世界王者を量産し続けている劉衛流の、恐らく最高傑作だと思っています。もうこの数年、国内外を問わず、すべての大会で優勝しています。不敗神話を提げてのオリンピック参戦というわけです。近年の空手の「形競技」は見栄え重視の流れが強くなっていて、「実際に使える技」よりも「綺麗にみえる技」の方が評価される傾向にあるのですが…。この喜友名選手の技は、実際に相手を倒すことを意識して練り上げられたものだとヒシヒシと感じます。なのに見栄えも決して悪くない。自分が現役時代にイメージしていた理想形がまさに体現されている感じです。このレベルに到達するまで、どれだけの稽古を積んだのだろうと思うと、胸が熱くなります。本番で足が滑った、などのアクシデントがない限り、間違いなく金メダルを獲ることになるでしょう。ぜひ1度は喜友名選手の形演武を観てもらいたいと思います。

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8月に都内1万人超も、爆発的拡大への緊急声明/日医

 29日、国内の新型コロナ新規感染者数は初めて1万人を超え、病床逼迫が現実に発生しつつある。日本医師会は、これを踏まえ、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の各団体と共に、「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を取りまとめた。 東京都の新規陽性者数は、7月25日1,763人、26日1,429人、27日2,848人、28日3,177人、29日3,865人と、1週間比1.5以上で推移しており、厚労省アドバイザリーボードが28日に出した感染予測では、このまま1週間比1.4以上が続けば、8月中にも新規陽性者数は東京都だけで1万人を超えるとされている。 日本医師会は、緊急要請として、以下の3つを政府に示した。1. 首都圏をはじめ感染者が急増している地域に対し、早急に緊急事態宣言を発令すること。あわせて、緊急事態宣言の対象区域を全国とすることについても検討に入ること。2. 感染収束の目途がつくまで、徹底的かつ集中的にテレワークや直行直帰を推奨すること。3. 40歳から64歳までとリスクの高い疾患を有する方のワクチン接種を推進し、できるだけ早く完了させること。 また、医療提供体制確保の取り組みとして、(1)重症者、中等症患者の入院病床の確保、(2)軽症者への対応、(3)新型コロナウイルス感染症における有事の医療と、通常の診療の両立への支援策を示し、ワクチン接種の推進については、デルタ株の影響により、これまで考えられていた集団免疫の獲得は6~7割の接種では難しく、できる限り多くの方が確実に2回接種する必要があることを説明している。 声明文として「われわれは行政と連携して、通常医療への影響を食い止めます。そして、COVID-19がなければ防ぎえた死は、何としても回避する覚悟です。すでに多くの医療従事者は必死の思いでコロナに立ち向かい、心身ともに限界です。医療者はできうる責務はすべてまっとうします。そのためにも、政府に対して、今あらためて、感染拡大を食い止めることに、あらゆる手立てを尽くすことを要請します」と強い言葉が記されている。 なお、今回の声明取りまとめに当たっては、尾身 茂新型コロナウイルス感染症対策分科会長、脇田 隆字新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長と、多角的な視点から意見交換を行ったという。

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第68回 コロナ感染数の報道に「いたずらに不安を煽るな」発言した人へ、返したい一言

先週、たまたま日本を代表する「夜の街」である新宿・歌舞伎町に、まさに夜に繰り出す機会があった。このように書くと「けしからん!」と言われそうだが、別に飲食をするために行ったわけではない。この町で夜を中心に活動する医療従事者に私が関係する組織での講演を依頼するための挨拶に行ったのだ。挨拶は無事終了したが、私は目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。あちこちで居酒屋やいわゆる「接待を伴う飲食店」と非常に分かりにくい言い回しをされるキャバクラやホストクラブなどが盛大に営業をしていたのだ。実は別な用件で1月の緊急事態宣言中にも歌舞伎町を通り過ぎたことはあった。街中に客引きがいることを見れば、キャバクラやホストクラブの一部が営業しているのは確かだったが、居酒屋などの営業はかなり限定的。この時と比べれば、現在はほぼ通常営業といってもいいほどだ。そして東京都で7月28日の新型コロナウイルス感染症の感染者報告数が過去最高の3,000人超えの3,177人となった現状には溜息しか出てこない。ここでは何度も繰り返し言っているが、それでも敢えて言うと6月に新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に移行したことは、痛恨の政治判断ミスだったと改めて思う。中には「そのまま緊急事態宣言を続けていても、みな営業再開したのではないか?」との意見もあるかとは思うが、それでも一旦解除しながら再発出するよりは、状況ははるかにましだったのではないかと個人的には思っている。そんな最中、以下の報道で頭の中にクエスチョンマークがいくつも浮かんでしまった。東京都 福祉保健局長「いたずらに不安あおらないで」(NHK)まあ、端的に言えば、感染者は増加しているものの、高齢者のワクチン接種も進んで重症者はそれほど増加しておらず、過去の流行とは中身が違うということらしい。報道は数の多さに騒ぐなということだろう。この発言については、小池 百合子都知事もフォローアップしている。小池都知事、感染者最多に「数だけの問題ではない」(日本経済新聞)もちろん、ワクチン接種の進展のなか報告される感染者の中身が従来とは異なっていることは同意する。だが、報道に向けた「いたずらに不安を煽るな」というのは福祉保健局長自身のほかの発言と矛盾する。具体的には局長発言の「30代以下は重症化率が極めて低く、100人いたら、せいぜい十数人しか入院しない」という発言だ。それだけ入院者が発生してしまうならば十分すぎるほど問題である。7月28日の感染者報告数3,177人のうち20代は1,078人、 30代が680人。局長の発言に沿えば、この中から200人弱は入院することになる。もちろん若年者は入院後の回復も早いだろう。とはいえ、現在の東京都のコロナ対応病床は6,406床。今の感染状況が10日も続けば、30代以下だけで軽く1,000床以上の病床を占有することになる。そして中等症以上などで入院に至るのは別に30代以下だけではない。この状況は医療現場に十分負荷をかけていると思うのだが。従来から感染者数を報じることについては否定的な意見もあるのは承知している。しかし、現在進行形で何が起きているのかを最も端的に表し、一般市民も理解しやすいファクトなのは間違いなく感染者数であり、メディアにとってはこれを報じないという選択肢は存在しない。「初の3,000人台」という言葉で「うわ、怖い」と思う市民が出て、感染制御に必要な外出自粛に向かう人が増える可能性は十分にあるからだ。むしろ、これまでほぼ確実に感染者数の減少効果が認められたはずの「緊急事態宣言」が、経済を横目で眺めながら中途半端な強度でダラダラと行われ過ぎたために十分な効果を示さなくなった今、ワクチン接種以外に感染者減少効果が見込めそうなものは、現在進行形で感染者が急増しているという感染者数の報道である。その意味では東京都福祉保健局長の発言には「いたずらに事態を軽視しないで」と返したい。

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オピオイドから認知症在宅診療まで、「緩和ケア」の旬のトピックを学ぶ【非専門医のための緩和ケアTips】第8回

第8回 オピオイドから認知症在宅診療まで、「緩和ケア」の旬のトピックを学ぶ今日の質問開業してからは多忙で学術大会から足が遠ざかっています。参加するメリットはありますか?今回は2021年6月に開催された第26回日本緩和医療学会学術大会について、開催レポートを兼ねて紹介したいと思います。新型コロナウイルス流行下ということで、現地とオンライン参加のハイブリッド開催で行われました。緩和ケア学会、というとどんな内容をイメージするでしょうか? 医学系学会といえば、改定ガイドラインの解説や最新の研究分野の発表とシンポジウム、みたいなところがメジャーですよね。緩和ケア学会もそうした内容はあるのですが、他学会では見られないユニークな内容もあります。今回の学術大会のテーマは「初心忘るべからず(初心不可忘)」。私は知らなかったのですが、これは世阿弥が生み出した能の有名な言葉だそうです。大会ポスターも能のシーンを基に作られ、特別講演は能楽師をお招きしての「能楽の時代を超えた役割」。医学の学術大会になぜ能?と思った方も多いでしょう。ですが、緩和ケア系の学会でこうした文化的なトピックと緩和ケアの接点を探るセッションが開催されることは珍しくありません。これまでも音楽や地域づくりなど、文化人類学的な演題が行われてきました。緩和ケアという領域の特性として、文化・教育と医療の融合に関する議論は欠かすことができず、「死生観の醸成」といった議論を大切にされている方も多くいます。とはいえ、私たち臨床医がこうした分野を勉強する機会はあまりありませんから、学術大会だからこその学びでもあります。もちろん、緩和ケアの実践的な演題も多くあります。印象的だったのは「オピオイド」に関する発表です。がん治療の成績向上に伴い、オピオイドの使用が長期化する患者さんが増えてきました。読者の中にも、オピオイドを長期使用しているがん患者を外来でフォローされている方がいるのではないでしょうか。海外ではオピオイド依存症が大きな社会問題になっており、不適切使用を防ぐための指導がこれまで以上に重要になっています。発表でも慢性疼痛のマネジメントや長期使用のアセスメント、留意点の議論が活発に行われました。私が運営を手伝った「認知症BPSDの在宅緩和ケア成功の秘訣」のセッションも興味深いものでした。介護者の負担が大きい状況下にあって、医師は緩和ケアをどのように実践すべきか、薬物療法や各職種への働き掛けについて議論が交わされました。質問も活発で、がん以外の疾患に対する緩和ケアの重要性とその実践の難しさに多くの人が直面していると感じました。私は今回の学術大会の実行委員であり、現地で参加しました。オンラインは自宅でリラックスして参加できるメリットがありますが、各分野の第一人者や懐かしい仲間と直接会うことができる現地参加のメリットも再確認できました。コロナの影響で1年以上会えなかった先生方と言葉を交わすこともできました。こうした機会はバーンアウトを防ぐためにも有効だといわれています。開業されて1人で診療している先生も多いことでしょう。知識のアップデートのほか、ネットワーキングの機会としてもぜひ学術大会を有効活用していただければと思います。次の第27回日本緩和医療学会学術大会は2022年7月1日(金)~2日(土)、神戸で開催予定です!今回のTips今回のTips他分野とは一線を画したユニークなトピックに触れられる、緩和ケアの学術大会にぜひご参加ください!

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カナキヌマブ、重症COVID-19入院患者の生存を改善せず/JAMA

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者の治療において、抗インターロイキン(IL)-1β抗体カナキヌマブはプラセボと比較して、29日の時点での侵襲的機械換気(IMV)を要さない生存の可能性を向上させず、COVID-19関連死を抑制しないことが、米国・テンプル大学のRoberto Caricchio氏らが実施した「CAN-COVID試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年7月20日号で報告された。欧米39施設の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、重症COVID-19入院患者の治療におけるカナキヌマブの有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年4月30日~8月17日の期間に、欧州と米国の39施設で参加者の登録が行われた(スイス・Novartis Pharma AGの助成による)。 対象は、年齢12歳(米国)または18歳(欧州)以上で、低酸素症が認められるがIMVを必要とせず、直近7日以内に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染と診断、直近5日以内にX線またはCT検査で肺浸潤を伴う肺炎と診断され、全身性過剰炎症(血清C反応性蛋白[CRP]値≧20mg/Lまたは血清フェリチン値≧600μg/L)がみられる患者であった。 被験者は、カナキヌマブ(体重40~<60kgの患者:450mg、同60~80kg:600mg、同80kg超:750mg)を1回、2時間で静脈内投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、投与後3日から29日までのIMVなしの生存とされた。副次アウトカムは、COVID-19関連死、安全性などであった。有害事象の多くは基礎疾患関連 454例(年齢中央値59歳、女性187例[41.2%])が登録され、カナキヌマブ群に227例、プラセボ群に227例が割り付けられた。417例(91.9%)が29日間の試験を完了した。ベースラインで、患者の約半数が肥満(BMI>30)で、炎症性バイオマーカー(CRP、フェリチン、Dダイマー)が上昇しており、約7割が低流量酸素吸入を受けていた。 投与後3日から29日までIMVなしで生存した患者の割合は、カナキヌマブ群が88.8%(198/223例)と、プラセボ群の85.7%(191/223例)より高かったが、群間差は3.1%(95%信頼区間[CI]:-3.1~9.3)で、オッズ比(OR)は1.39(95%CI:0.76~2.54)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.29)。 また、COVID-19関連死は、カナキヌマブ群が4.9%(11/223例)、プラセボ群は7.2%(16/222例)であり、群間差は-2.3%(95%CI:-6.7~2.2)、ORは0.67(0.30~1.50)であった。 29日までに発現した有害事象のほとんどが基礎疾患に関連しており、試験薬との関連はみられなかった。重篤な有害事象は、カナキヌマブ群で16.0%(36/225例)、プラセボ群で20.6%(46/223例)に認められた。致死的な有害事象(COVID-19との関連の有無は問わない)は、カナキヌマブ群で7.6%(17/225例)、プラセボ群で9.4%(21/223例)に発現した。 著者は、「本試験は、重症COVID-19肺炎患者では、IL-1の阻害によりサイトカインの放出が抑制されるとの仮説に基づいて行われた。世界的流行の発生早期のプロトコール作成時に、主要アウトカムの15%の差を臨床的に意義のある最小の利益と定義したが、本試験ではこれは達成されなかったことから、得られた効果量とCIに基づいてこれらの結果を解釈すべきと考えられる」としている。

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