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身近な血圧計から心房細動の早期発見に寄与する新システム発表/オムロン

 オムロンヘルスケアは、血圧測定時に同時に得られるバイタルデータを解析することで「脈の乱れ」を検知するシステムの完成に合わせ、プレスセミナーを開催した。 セミナーでは、心房細動(AF)におけるバイタルデータの重要性や開発された血圧測定でAFのリスクを検出する次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”の説明が行われた。大きな循環器、脳血管障害の予防に日常生活でみつけたいAF 「脳・心血管イベントの抑制における心房細動管理の重要性」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野 教授)がAFの発症リスクと家庭におけるバイタルデータ計測の重要性について、説明を行った。 2017(平成29)年の人口動態統計によれば死因の第1位は「悪性新生物」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」となっている。循環器系疾患で全体の約1/4を占め、医療費と介護費では1番費用がかかり全体の約1/5を占め、介護が必要となる原因でも約1/5を循環器系疾患が占めている。 AFは加齢とともに増加する最も頻度が高い不整脈であり、患者の健康寿命や生命予後に大きく影響する。そのためAFに伴う心原性脳梗塞、心不全、認知症の予防が健康寿命延伸の鍵となる。 わが国のAFの有病率は、年齢に比例し、男性ほど多く、80代では男性の約4.5%で、女性の約2%でAFという研究報告もあり1)、有病率は年々増加している。とくに問題となるのは、脳卒中の前症状でAFが診断されないケースであり、“Fukuoka Stroke Registry”によれば、脳卒中の発症前にAFの診断なしが45.9%だったという報告もある2)。 そのため、早期にAFを発見することが、その後の大きな循環器、脳血管障害の予防に寄与するが、発見のアプローチとしてはさまざまなものがある。日常、簡単にできるものでは、自分で脈をチェックする「検脈」のほか、血圧計、ウェアラブルデバイスがあり、AFスクリーニング能は高くないが簡単にできる。また、家庭では携帯型心電計、24時間ホルター心電計などAFの可能性を検出できるデバイスもあり、これらの機器を駆使して早期に発見されることが期待される。 AFのリスクファクターでは、年齢、糖尿病、喫煙のほかに高血圧も指摘されている。とくに高血圧患者では非高血圧患者と比べて、未治療のAFが約3倍検出されたことが報告されており、早期発見の重要なターゲットといわれている3)。 次にAFの治療の最新動向について触れ、『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』(日本循環器学会/日本不整脈心臓学)から内容を引用しつつ、説明を行った。 同ガイドラインでは、リズムコントロールの有効性を高めるために生活習慣(肥満、喫煙、アルコール多飲など)の改善、併存疾患(高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など)の治療も重要と示すとともに、早期発見のAF患者ではリズムコントロール療法を考慮することが記載されている。 また、わが国では年間10万例を超えるカテーテルアブレーションの治療が行われており、その適応も拡大されるとともに、従来の焼灼ではなく高周波の電気で患部に作用するパルスフィールドアブレーションも使用できるなど治療機器の進化の一端も説明した。そのほか、抗凝固療法について、すべての直接経口抗凝固薬(DOAC)がCHAD2スコア1点以上で推奨されていること、高リスク高齢者では、腎機能障害や認知症などがあっても積極的にDOACを使用するべきと述べ、レクチャーを終えた。高血圧患者の圧脈波をAIが解析し、AFを発見 血圧を測るだけでAFの早期発見をサポートする「次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”とは」をテーマに、同社の技術開発統轄部の濱口 剛宏氏がシステムの説明を行った。 同社は累計3.5億台の血圧計を製造・販売しており、高血圧患者が、毎日の血圧測定で意識せず、AFを早期にみつける「新しい機会」の創出を模索していた。そして、今回開発された“Intellisense AFib”は、心臓が拍動するときに生じる動脈内の圧力変化である圧脈波のデータを取得することで、これをAIが解析し、AFの検出を可能にするという。 Intellisense AFibは、同社が蓄積してきた50年に及ぶ膨大な圧脈波のデータと最新のAIによるアルゴリズム、そして、心電図・脈波解析の専門チームの融合により、高精度なAF検出アルゴリズムを実現したものである。このシステムは2024年8月から中国をはじめ、欧州で発売を開始し、25年に米国で発売を、本年度中にはわが国でも薬事取得を目指すという。 同社では「Intellisense AFibが搭載された血圧計が普及し、1人でも多くの高血圧のAF患者の早期発見を実現したい」と今後に期待を寄せている。

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人工甘味料の摂取は非健康的な食生活と関連

 人工甘味料の摂取量が多い人ほど、食生活が非健康的であるという関連性を示すデータが報告された。米ジョージ・ワシントン大学のAllison Sylvetsky氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に11月25日掲載された。 砂糖などの添加糖の代わりに人工甘味料が使われることがあるが、それが人々の食生活の質を高めているのか、または反対に食生活の質の低下と関連しているのかという点は、よく分かっていない。これを背景としてSylvetsky氏らは横断的研究により、人工甘味料の摂取と食生活の質との関連を検討した。 研究には、米国がん協会(ACS)が行っているがん予防に関するコホート研究の参加者のデータを用いた。精度検証済みの食品摂取頻度質問票を用いて、人工甘味料入り飲料・食品・ヨーグルトの摂取量を推測。その結果に基づき参加者全体を、人工甘味料非摂取群、1日1サービング未満群、1日1〜2サービング未満群、1日2サービング以上群という4群に分類した。食事の質は、ACS食事スコアと健康的な食事指数(HEI-2015)を用いて評価した。解析対象者は16万3,679人で、年齢中央値53歳(四分位範囲45~60)、女性78.9%であり、1日当たりの人工甘味料摂取頻度は1.0±1.5回、HEI-2015は75.4±10.2だった。 ACS食事スコアは、人工甘味料非摂取群が6.8±0.03であったのに対し、1日1サービング未満の群は6.5±0.03、1〜2サービング未満の群6.3±0.03、2サービング以上の群6.1±0.03と、摂取量が多いほどスコアが低いという有意な関連が認められた。また、HEI-2015についても同順に、76.3±0.1、76.7±0.1、75.6±0.2、72.7±0.2と、同様の関連が認められた(いずれも傾向性P<0.0001)。 次に、食事の質が低いと判定されるオッズを多変量ロジスティック回帰分析で検討した結果、人工甘味料の摂取量が多いほどそのオッズが増加する傾向が認められた。具体的には、人工甘味料を摂取していない群に比較して、摂取量が1日1サービング未満の群では3%、1〜2サービング未満の群では17%、2サービング以上の群では43%のオッズ上昇が認められた。 これらの結果について論文の筆頭著者であるSylvetsky氏は、「人工甘味料は添加糖の代替として摂取されているが、われわれの研究では人工甘味料を多く摂取している人は、飽和脂肪、食塩、添加糖など、健康上の懸念のある成分の含有量が多い食品や飲料を大量に摂取していることが分かった。米国成人の大規模コホートにおいて、人工甘味料摂取者の食事の質は概して低いと言える」と総括している。

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服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の患者に対して、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージを提供しても、通常のケアと比較して12ヵ月後のアドヒアランスを改善しなかった(解説:名郷直樹氏)

 ナッジ*やチャットボット**という新しい介入手段が出現し、患者の服薬アドヒアランスを改善できるのではないかという視点で行われたランダム化比較試験である。 服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の18歳から90歳までの患者を対象に、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージのそれぞれの提供を通常のケアと比較し、12ヵ月後のリフィルの処方箋の発行のギャップを服薬アドヒアランスのアウトカムとして検討している。 この研究は“pragmatic”と書かれているが、個々の患者に臨床試験に対する情報提供と同意を行う“opt in”のステップを踏まず、手紙の郵送によって参加者を募るという“opt out”の手法を用いているところに特徴がある。より幅広いリアルワールドでの患者を対象にしようとする配慮がなされており、これが“pragmatic”ということなのだろう。 結果は、テキストメッセージ群で62.0%、ナッジ追加群で62.3%、ナッジ+チャットボット群で63.0%、通常ケアで60.6%の順守率で、統計学的な差はない。順守率の差の多変量解析による結果も報告され、統計学的に有意な差が認められているが、順守率2%程度の差であり、統計学的な有意差が認められたとしても、臨床的に意味のある差とは言えないだろう。 服薬アドヒアランスを改善することは治療効果を上げるために重要である。アドヒアランスの低下が患者の予後に関連するという研究もある。しかし、アドヒアランスの評価そのものが困難である。毎回きちんと通院している患者が訪問診療に移行し、自宅を訪ねてみると、大量の残薬が発見されることは決して珍しくない。自己負担の少ない国民皆保険の日本で同様な研究を行うとしたら、さらに大きな困難があると思われる。*ナッジ:元の意味は「軽くつつく」というものであるが、ちょっとした本人の意識しない介入(ナッジ)を行動経済学の領域で経済的な利益を高めるための手法として利用したのが始まりである。それがさらに一般的な行動にも適用されるようになり、行動科学に基づいて、強制することなく、小さな介入により、本人に意識させることなく、人々の行動を改善する手法として利用されるようになった。この論文においてナッジの相殺については記載されていないが、サプリメントに記載されている。**チャットボット:「対話(chat)」と「ロボット(bot)」を組み合わせた造語であるが、AIと人との対話ということである。この論文に準じて言えば、アドヒアランスの改善についてAIと対話し、その結果をテキストメッセージとして提供するということであろう。

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歩くのが速いと自認している肥満者、代謝性疾患が少ない

 肥満者において、主観的歩行速度が代謝性疾患のリスクと関連のあることを示唆するデータが報告された。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の山本結子氏、石井好二郎氏らが行った横断的解析の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月15日掲載された。 歩行速度は、体温、脈拍、呼吸、血圧、酸素飽和度に続く“第6のバイタルサイン”と呼ばれ、死亡リスクと関連のあることが知られている。しかし、歩行速度を客観的に把握するにはスペースと時間が必要とされる。よって健診などでは、「あなたの歩く速度は同世代の同性と比べて速い方ですか?」という質問の答えを主観的歩行速度として評価することが多い。この主観的歩行速度も代謝性疾患リスクと関連のあることが報告されているが、疾患ハイリスク集団である肥満者での知見は限られている。これらを背景として山本氏らは健診受診者データを用いて、肥満者の主観的歩行速度が代謝性疾患の罹患状況と関連しているかを検討した。 解析対象は2011~2022年の武田病院健診センターにおける人間ドック受診者のうち、肥満または腹部肥満に該当し、データ欠落がない人。関連性を評価した代謝性疾患は、高血圧、糖尿病、脂質異常症の三つで、いずれも健診時データが診断基準を満たす場合、または治療薬が処方されている場合に「疾患あり」と判定した。解析に際しては、年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣の影響を統計学的に調整した。 まず、肥満(BMI25以上)については、該当者が8,578人(平均年齢53.7±8.6歳、男性63.0%)であり、45.3%が「歩行速度が速い」と回答していた。主観的歩行速度が速い群では、糖尿病が有意に少なかった(リスク比〔RR〕0.71〔95%信頼区間0.64~0.79〕)。高血圧と脂質異常症に関しては、リスク比が1未満だったが信頼区間が1をまたいでいた。なお、年齢と性別のみを調整因子とするモデルでの解析では、脂質異常症もRR0.97(同0.94~1.00)と有意に少なかった。ただし高血圧に関しては、このモデルでも非有意だった。 次に、腹部肥満(ウエスト周囲長が男性85cm以上、女性90cm以上)の該当者は9,626人(54.8±8.9歳、男性79.8%)であり、47.9%が「歩行速度が速い」と回答していた。主観的歩行速度が速い群では、高血圧(RR0.94〔0.90~0.97〕)、糖尿病(RR0.72〔0.65~0.79〕)、脂質異常症(RR0.97〔0.94~0.99〕)と、評価した全ての代謝性疾患が少なかった。 続いて、肥満および腹部肥満の定義を満たす6,742人(54.0±8.6歳、男性74.0%)で検討。この集団における主観的歩行速度が速い群(45.1%)も、腹部肥満者での解析結果と同様に、高血圧(RR0.95〔0.92~0.99〕)、糖尿病(RR0.71〔0.64~0.79〕)、脂質異常症(RR0.97〔0.94~1.00〕)という3疾患全てが少なかった。 著者らは、解析対象が人間ドック受診者であり健康リテラシーが高いと考えられ、かつ単一施設のデータであること、および横断的解析であることなどを解釈上の留意点として挙げた上で、「肥満者においても主観的な歩行速度が速い場合に、代謝性疾患のリスクが低い可能性が示された」と結論付けている。なお、BMI25以上のみの群では主観的歩行速度と高血圧リスクとの関連が非有意であったことの理由について、「血圧管理には歩行速度だけでなく、毎日の歩数が重要なことを示唆する報告がある」との考察が付け加えられている。

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CKDを有する高血圧患者にも厳格降圧は有益?

 SPRINT試験で認められた厳格降圧(収縮期血圧目標:120mmHg未満)および標準降圧(同:140mmHg未満)のリスク・ベネフィットが、慢性腎臓病(CKD)を有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用できるかどうかを調査した結果、SPRINT試験と同様に厳格降圧による予後改善効果は認められたものの、重篤な有害事象も多かったことを、米国・スタンフォード大学のManjula Kurella Tamura氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年1月7日号掲載の報告。 SPRINT試験において、糖尿病または脳卒中の既往がなく、心血管イベントリスクが高い高血圧患者では、厳格降圧のほうが標準降圧よりも死亡や心血管イベントなどのリスクが低減した。その一方で、急性腎障害などの特定の有害事象が増加したことや、進行したCKD患者では厳格降圧による心血管系へのメリットが減弱する可能性があることも示唆されている。そこで研究グループは、SPRINT試験の結果が、実臨床におけるCKDを有する高血圧患者にも適用可能かどうかを評価するために試験を実施した。 2019年1月1日~12月31日に米国退役軍人保健局(VHA)とカイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院(KPSC)の電子健康記録データベースから、CKDを有し、かつSPRINT試験の適格基準を満たす高血圧患者を抽出して、SPRINT試験のベースラインの共変量データ、治療データおよびアウトカムデータと、VHAとKPSC集団の共変量データを組み合わせ、治療効果を推定した。分析は2023年5月~2024年10月に実施された。主なアウトカムは、4年時点での主要な心血管イベント、全死因死亡、認知障害、CKD進行、有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・VHAからは8万5,938例(平均年齢:75.7[SD 10.0]歳、男性:95.0%)、KPSCからは1万3,983例(77.4[9.6]歳、38.4%)が抽出された。SPRINT試験の参加者9,361例(67.9[9.4]歳、64.4%)と比較すると、年齢が高く、心血管疾患の有病率が低く、アルブミン尿を有する割合が高く、スタチンの使用量が多かった。・厳格降圧および標準降圧と主要な心血管イベント、全死因死亡、有害事象との関連は、SPRINT試験からVHAおよびKPSC集団の両方に適用可能であった。・厳格降圧群は、標準降圧群と比較して、4年時点での主要な心血管イベントの絶対リスクがVHA集団で5.1%、KPSC集団で3.0%低かった。・全死因死亡の絶対リスクは、厳格降圧群のほうがVHA集団で2.8%、KPSC集団で2.3%低かった。・重篤な有害事象のリスクは、厳格降圧群のほうがVHA集団で1.3%、KPSC集団で3.1%高かった。・VHA集団においてのみ厳格降圧による腎臓関連アウトカムとeGFRの50%超低下のリスク低減が認められたが、信頼区間が広く、メリットがない可能性も考えられた。 これらの結果より、研究グループは「SPRINT試験で観察された厳格降圧および標準降圧のリスク・ベネフィットは、臨床におけるCKDを有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用可能であった。厳格降圧を実施する利点が示されたものの、有害事象のリスクは増大したことから、高血圧治療の決定では患者の希望を考慮することの重要性が強調された」とまとめた。

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甲状腺疾患と円形脱毛症の間に遺伝的関連がある可能性

 甲状腺機能低下症、慢性甲状腺炎(橋本病)、亜急性甲状腺炎と円形脱毛症(AA)の間には有意な関連性があることを示す研究結果が、「Skin Research & Technology」に9月27日掲載された。 Heping Hospital Affiliated to Changzhi Medical College(中国)のYue Zhao氏らは、2標本のメンデルランダム化解析を用いた研究で、AAと甲状腺疾患の潜在的な因果関係を検証した。甲状腺機能低下症、橋本病、甲状腺機能亢進症、亜急性甲状腺炎、バセドウ病が曝露因子として選択され、AAが結果変数とされた。データはゲノムワイド関連解析(GWAS)から取得された。 解析の結果、甲状腺機能低下症(逆分散加重オッズ比1.40)、橋本病(同1.39)、亜急性甲状腺炎(同0.73)について、AAが統計的に有意な遺伝的予測を示すことが示された。多面性のエビデンスは見られなかった。関連の安定性と頑健性は、leave-one-outテストを使用して実証された。 著者らは、「私たちの研究結果は、甲状腺機能低下症、橋本病、亜急性甲状腺炎が、AAとの間に有意な関連性があることを示しており、内分泌の健康状態と皮膚病理の複雑な相互作用に関する新たな視点を示唆している。これらの発見は、甲状腺疾患とAAの発症機序との関係を示す新たなエビデンスを提供するだけでなく、特にAAの潜在的な治療法を探る上で、将来の研究に新たな方向性を示している」と述べている。

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3年ぶりのオンライン英会話【Dr. 中島の 新・徒然草】(563)

五百六十三の段 3年ぶりのオンライン英会話ここのところ、異常な寒さが続いています。表示される摂氏○度というのはそんなに低くないのですが。天気予報には実際の気温のほかに体感温度も示されます。それによれば、体感気温は実際の気温よりもかなり低く出ていました。やっぱり!さて、私にとって永遠の課題である英語です。久しぶりにオンライン英会話をやってみようと思って調べたら、最後のレッスンが2022年1月。一応休会手続きはしていたものの、実に3年間もの空白が!やはり生身の人間相手に場数を踏むことも大切ですね。そう思って再開しました。時々やってくる外国人患者さんの外来診療を想定してのレッスンです。今回の講師は60代の女性。中島「そちらが患者役で私が医師役ということで、ロールプレイをしてくれませんか?」講師「お医者さんといっても専門がいろいろあるんでしょう?」中島「私は脳外科ですが、主訴は何でもいいですよ」講師「難しいなあ」中島「良かったらご自身の健康問題の相談に乗りましょうか」講師「私、悪いところがいっぱいあるから」ということで、始まったのが講師自身の糖尿病の相談でした。薬をもらって飲んでいるのだそうです。でも、ご自分のHbA1cの数値なんかはまったく知らないようでした。中島「検査をしたら必ずHbA1cの値をチェックしてください」講師「わかったわ」中島「糖尿病を放置したらどうなるかご存じですか?」講師「知らなーい」中島「失明したり腎臓を悪くしたりして透析になってしまいますよ」講師「そうなの!」中島「週2回とか3回とか病院に行くことになりますから」講師「そうなったら旅行に行けないじゃない!」もはや英語のレッスンというよりも健康相談ですね。講師「何か食べてはいけない物とか、注意することある?」中島「ジュースばっかり飲むとか、ドカ食いするとかはやめたほうがいいですね」講師「フィリピンは果物が美味しいのよ。だからついたくさん食べてしまうんだけど」中島「マンゴーでもバナナでも、1口ずつ味わって食べましょう」講師「わかったわ。ほかに何かある?」中島「夕食を摂ったあと、まだもう少し欲しいと思うことがありますよね」講師「あるある!」中島「そんな時は10分だけ待ちましょう。そうしたら食べること自体に興味がなくなりますから」講師「そうなの?」中島「満腹になっても、そのことを脳が感じ取るまで少し時間がかかるんですよ」これをどう英語で表現したものか?後でChatGPTに聞いてみました。There is a time gap between your stomach being full and feeling full.うまいなあ!というわけで、60代の講師の場合は多くの健康問題を抱えている分、若い講師よりも診察ロールプレイには向いていたというお話です。目標としては、1回のレッスンで新しい英語の知識を最低3つ得る、というところにしたいと思います。読者の皆さんの参考になれば幸いです。最後に1句厳寒の 英語の授業は 糖尿病

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いざお見合いへ!オンラインvs.対面【アラサー女医の婚活カルテ】第6回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前回は、結婚相談所(以下、相談所)での婚活の事前準備についてご紹介しました。今回は、実際のお見合いでの経験をシェアしたいと思います。「長期戦」となったマイ婚活プロフィールページを見て、双方が「会ってみたい」と思えば、いよいよ次のステップ、すなわち「お見合い」に進みます。大手の「連盟」(連盟については第3回参照)であるIBJが発行した「2023年度版 成婚白書」を見てみましょう。「年齢別『お見合い数』比較」では、成婚に至った女性のお見合い数(中央値)は、25~29歳の場合は9.0回、30~34歳の場合は11.0回だったそうです1)。では、私自身のお見合い回数はどうだったか…というと、なんと自分自身も驚きの「31回」でした!婚活の「活動期間」としても、成婚に至った女性の「在籍日数」(中央値)が25~29歳が205.0日、30~34歳が252.0日であるのに対し、「約1年半」でしたから、同年代に比べて長めだったことがわかります。われながら、よく頑張ったものです。ちまたの婚活マニュアルや、SNS上の「婚活アドバイザー」たちは、短期間での成婚を推奨する傾向があるようです。年齢が上がれば上がるほど成婚しづらくなるため、「とにかく誰かと結婚すること」を最優先に考えるのであれば、私の活動は褒められたものではないでしょう。しかし、前回にも触れたように、私は結婚相手に求める条件が比較的多く、「とにかく結婚したい」というよりは「結婚はあくまで人生の通過点。子どもは欲しいけれど、合わない相手と無理して結婚するよりは、独身のままのほうが良い」と思っていました。また、相手を医師に限定せずに活動しており、相手よりも私のほうが高年収である場合、「合わない相手と結婚して、その後離婚したら、財産分与で多額のお金を支払う羽目になる」という懸念も、頭の片隅にありました(笑)。そのため、夫と出会うまで、結果的に長期戦の婚活をすることになりました。「オンラインお見合い」は使いよう婚活業界では、2020年、日本結婚相手紹介サービス協議会がコロナ禍を考慮して「『オンライン』で出来ることは、『オンライン』で実施しましょう」との声明2)を出したことで、多くの連盟・相談所でオンラインお見合いが活発化しました。私も、活動開始当初はオンラインお見合いを多く活用していました。私なりに、オンラインお見合いと、対面のお見合いとを比較してみます。オンラインのメリットオンラインお見合いのメリットその1は、「感染の心配がない」ことです。職業柄、コロナに感染したら欠勤などで周りに迷惑を掛けてしまいますし、患者さんを感染させてしまったともなれば大問題ですから、オンラインお見合いの仕組みがあって助かりました。メリットその2は、「移動の手間・交通費やお茶代がかからない」ことです。オンコールがない休日に、30分程度の短いインターバルを置いて、同じ日に複数件のお見合いを組んだこともありました(精神的に疲れるのであまりお勧めはしませんが……)。メリットその3は、「遠方の人とも会える」ことです。前回触れたように、私にとって「将来的に同じ県内で生活できること」が結婚相手に求める条件の1つだったため、基本的には遠方在住の方とお会いすることはあまりありませんでしたが、ありがたいことに「成婚すればこん野さんの職場近くに移住してもよい」と言ってくれる方が時々いて、何度かお見合いしました。一番遠かったのは、なんとシンガポール在住の方でした!(ご縁はありませんでしたが…)。オンラインお見合いのデメリット一方、私が思うオンラインお見合いの最大のデメリットは、対面で会うときに比べて「お相手の雰囲気がわかりづらい」ことです。オンラインお見合いは、対面のお見合いに比べて、次のステップである「仮交際」に進む確率が高い、という記事3)を読みましたが、おそらくオンラインお見合いでは、完全に「なし」と判定したお相手以外は、いったん「交際希望」を出す場合が多いのではないかと思います。私の場合も、オンラインお見合いで「あり」か「なし」かの判断に迷ったら、取りあえず仮交際に進んでみて、仮交際のデート1回目で判断する場合が多かったです。結果として、直接会うよりも時間が取られることが多いと感じます。デメリットその2は、「回線トラブルが起こりうる」ことでした。一度、お相手が予定時刻を30分過ぎてもお見合いのオンラインミーティングに入室してこなかったことがありました。後日、回線トラブルだったので日程の再設定をとの依頼が来ましたが、トラブル時の対応力もその方の一面だと思ったので、お断りしました。デメリットその3は、「追加料金が発生しうる」ことでした。お相手の相談所のシステム次第では、オンラインお見合いの場合、1回当たり数千円の追加料金が徴収されることがあったようで、お見合い後にお断りする際、申し訳ない気持ちになりました。上記のようなメリット、デメリットを踏まえ、オンラインお見合いと対面でのお見合いを使い分けると良いと思います。おまけ~オンラインお見合いのコツ余談ですが、オンラインお見合いの際は、画面に映る印象がとても大切ですから、服装やメイクだけではなく、部屋の調光やインテリアにも気を配ると良いようです。私は、顔を明るく照らしてくれる、いわゆる「女優ライト」を活用していました。学会のWeb発表などでも使えるので、なかなか良い買い物でした。いかがでしたか?今回は、筆者自身のお見合い回数や、オンラインお見合いと対面でのお見合いの比較について書きました。次回も引き続き、お見合いでの体験談をお届けしたいと思います。お楽しみに。参考1)成婚白書/IBJ1)新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けた結婚相手紹介サービス業界ガイドライン/JMIC 1)「オンラインお見合い」で約半数が仮交際へ。IBJ日本結婚相談所連盟、自宅での婚活を支援。/IBJ

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慢性疾患の増加は腎機能を低下させる

 高齢者における多疾患併存は腎機能低下と強く関連しており、慢性疾患の数が増えるほど腎機能の低下度も大きくなることが、新たな研究で明らかになった。研究論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のGiorgi Beridze氏は、「われわれの研究結果は、高齢者の腎機能低下のリスクを評価する際に、慢性疾患の全体的な負担だけでなく、疾患間の複雑な相互作用も考慮した包括的な評価の重要性を強調するものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society(JAGS)」に12月17日掲載された。 この研究でBeridze氏らは、老化研究(Swedish National study on Aging and Care in Kungsholmen;SNAC-K)の一環として、スウェーデンの高齢者3,094人(平均年齢73.9歳)の健康状態を15年間にわたって追跡調査した。多疾患併存として慢性疾患の数を調査してそのパターンを特定し、経時的な推算糸球体濾過量(eGFR)の絶対的変化および相対的変化(ベースラインからの25%以上の低下)との関連を検討した。対象者の87%が多疾患併存に該当した。 解析の結果、慢性疾患の数とeGFRの絶対的な低下および相対的な低下との間には独立した容量依存関係が認められることが明らかになった。具体的には、慢性疾患が1つ増えるごとに、eGFRは年平均0.05mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクは23%増加すると推定された。 多疾患併存には、「非特異的な低負荷パターン」「非特異的な高負荷パターン」「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」「精神疾患や呼吸器疾患を特徴とするパターン」「心代謝性疾患を特徴とするパターン」の5つが特定された。「非特異的な低負荷パターン」を基準として、それぞれのパターンとeGFRとの関連を解析した結果、「非特異的な高負荷パターン」および「心代謝性疾患を特徴とするパターン」は、eGFRの絶対的および相対的な低下と有意に関連することが示された。具体的には、「非特異的な高負荷パターン」では、慢性疾患が1つ増えるごとにeGFRは年平均0.15mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクが45%増加すると推定された。また、「心代謝性疾患を特徴とするパターン」では、eGFRは年平均0.77mL/分/1.73m2低下し、25%以上低下するリスクは245%増加すると推定された。さらに、「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」では、eGFRが25%以上低下するリスクが53%増加することも推定された。 研究グループは、「高血圧や心疾患などの慢性疾患は糖尿病と関連しているため、あるいは臓器にダメージを与える炎症を引き起こすため、腎臓にダメージを与える可能性がある」との見方を示している。そして、「加齢に伴うこのような疾患パターンを追跡し、慢性疾患を管理することが、腎臓の健康を維持するのに役立つ可能性がある」と結論付けている。 Beridze氏は、「高齢者で、高リスクの多疾患併存パターンに該当する患者には、腎機能のモニタリングを強化し、健康的なライフスタイルを推進し、タイムリーな薬理学的介入を行うことで患者にベネフィットがもたらされる可能性がある」と話している。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Intensive Blood-Pressure Control in Patients with Type 2 DiabetesBi Y, et al. N Engl J Med. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]<BPROAD試験>:2型糖尿病において、目標収縮期血圧を120mmHg未満にすることで心血管イベントリスクが低減2型糖尿病における至適な血圧目標値は、一般に130/80mmHg未満とされています。心血管疾患高リスクの2型糖尿病を有する中国人を対象とした本研究(RCT)では、収縮期血圧120mmHg未満を目標にすることにより、心血管イベントが統計学的に有意に低下することが示されました。Randomized Trial for Evaluation in Secondary Prevention Efficacy of Combination Therapy-Statin and Eicosapentaenoic Acid (RESPECT-EPA)Miyauchi K, et al. Circulation. 2024;150:425-434.<RESPECT-EPA>:EPAをスタチンに上乗せ投与しても心血管イベントリスクは低減しないEPA(eicosapentaenoic acid)は動脈硬化を抑制することが想定されています。しかしながら、ハイリスクの日本人冠動脈疾患患者にEPAをスタチンに上乗せ投与しても心血管イベントリスクは有意には低減しませんでした。一方、心房細動リスクが有意に上昇しました。Insulin Efsitora versus Degludec in Type 2 Diabetes without Previous Insulin TreatmentWysham C, et al. N Engl J Med. 2024;391:2201-2211.<QWINT-2>:肥満2型糖尿病において、efsitoraの効果はデグルデクに非劣性大きな期待がかけられているweeklyタイプのインスリン・efsitora。肥満2型糖尿病患者において、efsitoraの効果と安全性はインスリン・デグルデクと比較し非劣性であることが示されました。低血糖や体重増加は両剤とも同等でした。Once-weekly insulin efsitora alfa versus once-daily insulin degludec in adults with type 1 diabetes (QWINT-5): a phase 3 randomised non-inferiority trialBergenstal RM, et al. Lancet. 2024;404:1132-1142.<QWINT-5>:1型糖尿病において、efsitoraの効果はデグルデクに非劣性1型糖尿病患者を対象としたRCTで、インスリン・デグルデクに対するインスリン・efsitoraによる血糖降下作用の非劣性が示されたものの、中等度~重度の低血糖リスクが有意に上昇しました。1型糖尿病におけるインスリン・イコデク(weekly製剤)投与に伴う低血糖リスクも同様であったことが報告されています(Russell-Jones D, et al. Lancet. 2023;402:1636-1647.)The Effect of Denosumab on Risk for Emergently Treated Hypocalcemia by Stage of Chronic Kidney Disease : A Target Trial EmulationBird ST, et al. Ann Intern Med. 2024 Nov 19. [Epub ahead of print]<デノスマブによる低カルシウム血症>:重症低カルシウム血症リスクはCKD病期と関連CKD進展に伴い、ビスフォスフォネートと比較しデノスマブで重症低カルシウム血症のリスクが高まることが示唆されました。デノスマブを投与する際には、デノタス®(カルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤)の投与と血清カルシウム値のモニタリングが重要です。

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ヘモクロマトーシス、HFE C282Yホモ接合体は糖尿病リスク高い/BMJ

 トランスフェリン飽和度またはフェリチンが正常、あるいはこれら両方が正常のヘモクロマトーシス患者は、ほとんどのガイドラインでHFE遺伝子型の判定が推奨されていないという。デンマーク・コペンハーゲン大学のMathis Mottelson氏らが、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を有するヘモクロマトーシス患者は糖尿病のリスクが増加しており、糖尿病でC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、糖尿病でC282Yホモ接合体の保有者は死亡率が高く、この集団の死亡の3割近くは糖尿病に起因する可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年12月9日号で報告された。デンマークの3つの集団の前向きコホート研究 研究グループは、血漿中の鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度が正常であっても、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を保有するヘモクロマトーシス患者は、糖尿病、肝疾患、心疾患のリスクが高いか否かを検証し、これらの疾患を持つC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、保有者は死亡率が高いか否かについて検討する目的で、前向きコホート研究を行った(Capital Region of Denmarkなどの助成を受けた)。 解析には、デンマークの3つのコホート研究(Copenhagen City Heart Study、Copenhagen General Population Study、Danish General Suburban Population Study)のデータを用いた。 HFE遺伝子のC282Y変異およびH63D変異の有無を評価した13万2,542例(このうち422例がC282Yホモ接合体)を対象とし、研究への登録から最長27年間、前向きに追跡した。トランスフェリン飽和度、フェリチンが正常でも糖尿病リスクが高い C282Yホモ接合体の非保有者と比較した保有者の疾患別罹患率のハザード比(HR)は、糖尿病が1.72(95%信頼区間[CI]:1.24~2.39、p=0.001)、肝疾患が2.22(1.40~3.54、p<0.001)で、心疾患は1.01(0.78~1.31、p=0.96)であった。 年齢層別の5年間の糖尿病絶対リスクは、C282Yホモ接合体を保有する女性で0.54~4.3%、非保有女性で0.37~3.0%、保有男性で0.86~6.8%、非保有男性で0.60~4.8%であった。 試験登録時に得られた1回の血液サンプルの鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度の値に基づく解析では、C282Yホモ接合体を有する集団は、トランスフェリン飽和度が正常(HR:2.00、95%CI:1.04~3.84)、またはフェリチンが正常(3.76、1.41~10.05)であっても糖尿病のリスクが上昇しており、フェリチンとトランスフェリン飽和度の両方が正常(6.49、2.09~20.18)でも糖尿病リスクが高かった。糖尿病による死亡の人口寄与割合は27.3% 糖尿病でC282Yホモ接合体を保有する集団では、糖尿病で非保有の集団よりも全死因死亡のリスクが高かったが(HR:1.94、95%CI:1.19~3.18)、糖尿病のないC282Yホモ接合体保有集団では死亡率は増加しなかった。 C282Yホモ接合体を保有する集団の死亡のうち、特定の疾患を有する集団における超過死亡を除外した場合に理論的に予防が可能な死亡の割合(人口寄与割合)は、糖尿病で27.3%(95%CI:12.4~39.7)、肝疾患で14.4%(3.1~24.3)であった。 一方、糖尿病や肝疾患のリスクは、H63Dヘテロ接合体、H63Dホモ接合体、C282Yヘテロ接合体、C282Y/H63D複合ヘテロ接合体を保有する集団では増加しなかった。 著者は、「これらの結果は、将来の遺伝性ヘモクロマトーシスの診療ガイドラインでは、C282Yホモ接合体を保有する集団においては糖尿病の発見と治療を優先することが重要となる可能性を示すものである」としている。

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過去30年間の世界の糖尿病有病率と治療率の推移(解説:住谷哲氏)

 2024年に国連が発表した世界人口は約82億人で、今世紀中には100億人を突破するようだ。今から30年ほど前の1990年の世界人口は約53億人だったので、この30年間に約30億人増加したことになる。そこで、この30年間に世界の糖尿病患者数と治療率がどう推移したかを検討したのが本論文である。 世界中から収集した18歳以上の1億4,100万人のデータに基づく解析であるから、現時点での最も詳細な疫学データと思われる。従来実施された同様の研究では糖尿病の診断に主としてFPGが用いられたが、本解析ではHbA1cまたは糖尿病治療歴の有無も使用されているので精度の点でも優れている。 結果は、2022年の糖尿病患者数は8億2,800万例で有病率は女性13.9%、男性14.3%であった。これは1990年と比較すると約6億3000万例増加しており、過去30年間に世界の糖尿病患者数は約4倍以上増加したことがわかる。問題は中・低所得国での増加が著しく、その傾向がますます強くなっている点である。治療率の推移をみても同様の傾向であり、中・低所得国では患者数の増加に比較して治療率の上昇が認められていない。 健康の社会的決定要因(SDOH:social determinants of health)と糖尿病とが深く関係することは、すでに明らかとなっている1)。これは本論文が示す世界規模でも、われわれの日常臨床においても同様である。糖尿病患者一人ひとりが置かれた社会的環境を考慮したマネジメントが、ますます重要となっている。 

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高ナトリウム血症の治療【日常診療アップグレード】第21回

高ナトリウム血症の治療問題82歳男性。頻回の下痢による高ナトリウム血症のため、3日前に入院となった。生理食塩水を3L点滴した。意識混濁があり、経口で水分を摂取することはできない。今日の血圧は132/76mmHg、脈拍は82/分である。他のバイタルサインには異常はない。血液検査所見はNa 157mEq/L、K 3.3mEq/Lである。胃管を挿入して水分を補給した。

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糖尿病と腎臓病の併発は心臓病発症を大幅に早める

 2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)は、ともに心臓病のリスク因子だが、両者が併存していると、心臓病発症が大幅に早まるとする研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学および同ボストン大学のVaishnavi Krishnan氏らが、米国心臓協会(AHA)の科学セッション(AHA Scientific Sessions 2024、11月16~18日、シカゴ)で発表した。 Krishnan氏らの研究には、AHAが構築した心血管疾患(CVD)イベント予測ツール「Predicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)」が用いられた。PREVENTは、2011~2020年の米国国民健康栄養調査のデータに基づき開発されたもので、糖尿病やCKD、または喫煙習慣の有無、降圧薬や脂質低下薬の服用などの情報を基に、向こう10年間のCVDイベントの発症リスクを予測できる。通常、リスクが7.5%以上の場合に「CVDハイリスク」状態と判定する。 このPREVENTを使い、30~79歳の各年齢の人が、推定糸球体濾過量44.5mL/分/1.73m2以下(CKDステージ3に該当)のCKDのみを有する場合、2型糖尿病のみを有する場合、および、それら両者を有する場合、両者とも有さない場合に、CVDハイリスクと判定される年齢を割り出した。 その結果、2型糖尿病とCKDをともに有さない場合にCVDハイリスクと判定される年齢は、女性68歳、男性63歳だった。それに対して、CKDのみを有する場合、女性は60歳、男性は55歳でハイリスクと判定され、女性・男性ともに8年早くリスクが高まると予測された。また、2型糖尿病のみを有する場合は、女性は59歳、男性では52歳でハイリスクと判定され、女性は9年、男性は11年早くリスクが上昇すると予測された。 そして、CKDと2型糖尿病が併存している場合は、女性は42歳、男性は35歳でハイリスクと判定されることが分かった。つまり、2型糖尿病とCKDを有さない人に比べて、女性は26年、男性は28年も早く、CVDリスクが高い状態になると予測された。 Krishnan氏は、「われわれの研究により、CVDリスク因子が組み合わさることによる影響の大きさが明らかになり、実際に何歳からハイリスク状態になるのかを分かりやすく理解することが可能になった」と述べている。また、「例えば、血圧や血糖値が境界域まで上昇し腎機能がやや低下しているものの、高血圧、糖尿病、CKDとは診断されていない状態では、本人は自分のCVDリスクの高さを認識していないことが少なくない。そのような場合に、本研究のような手法によってリスクをはっきり自覚することは、その後の疾患管理に役立つだろう」と付け加えている。 ただし、研究者らは、この結果が一般人口のデータに基づきシミュレーションされたものであることを、解釈上の留意点として挙げている。本研究を主導した米ノースウェスタン医科大学のSadiya Khan氏も、「今回の報告は、疾患リスクモデルがどのくらい有用かを理解する最初のプロセスに当たる」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

 膵臓がんは、膵臓自体が体の奥深くに位置しているため、生命を脅かすようになる前の早期段階で検出することは難しいことから、サイレントキラーと呼ばれている。しかし、拡散テンソル画像法(DTI)と呼ばれるMRI画像技術の一種が、膵臓がんのより早期の発見に役立つ可能性のあることが新たな研究で明らかになった。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の放射線科医であるCarlos Bilreiro氏らによるこの研究結果は、「Investigative Radiology」に12月13日掲載された。研究グループは、これらの結果は膵臓がんリスクがある人の早期診断につながる可能性があると述べている。 膵臓がんは、米国ではがん関連死の第3位の原因である。膵臓がんの5年生存率は、早期に発見できれば44%だが、他臓器に転移すると約3%にまで急落する。残念なことに、膵臓がんの症状は、原因不明の体重減少、糖尿病の発症、黄疸など、他の病気の症状と混同されやすい。 研究グループの説明によると、膵臓がんの約95%は膵管腺がん(PDAC)と呼ばれるものであり、その多くは膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と呼ばれる前駆病変から発生するが、これらの病変は、通常のスキャン方法では検出が容易ではない。しかし、研究グループは、DTIを使えばその検出が可能になるのではないかと考えた。論文の上席著者で、シャンパリモー・リサーチのNoam Shemesh氏は、「DTIは、組織内の水分子の拡散を利用する方法だ。これにより放射線科医は組織の微細構造を観察できる」と説明する。DTIは30年前に開発され、主に脳の画像診断に使用されている。Shemesh氏は、「DTIは新しい方法ではない。ただ、これまで膵臓がんの前駆病変の検出には使われていなかっただけだ」と話している。 この研究では、実験用マウス(PanINモデルマウス4匹、PDACモデルマウス6匹、対照6匹)のDTI画像によりPanINの検出とその特徴を識別できるかが検証された。まず、生体内でDTIを実施した後、膵臓組織を用いて超高磁場のMR顕微鏡でDTIおよびT2強調画像を取得し、組織学的な検証を行った。 その結果、DTIによりPanINとPDACを正確に検出できることが明らかになった。具体的には、拡散異方性の程度を表すFA(fractional anisotropy)、および主軸に垂直な方向への拡散性を表すRD(radial diffusivity)による判別能力を示す曲線下面積(AUC)は0.983(95%信頼区間0.932〜1.000)であった。また、平均拡散能を表すMD(mean diffusivity)および主軸方向への拡散性を表すAD(axial diffusivity)によるAUCは1.000(同1.000〜1.000)であった。さらに、MR顕微鏡と組織学的解析からは、MR画像で観察されるコントラストが、膵臓の微細構造の特徴に由来することが判明した。一方、DTIとT2強調画像との相関の検討では、特にADが病変の広がりや重症度と強い相関を示した。最後に、この結果を人に適応する可能性を検討するために、5人のヒトの膵臓組織を用いて観察を行った。その結果、マウスでの結果と同様に、PanINと正常膵臓との間に顕著なコントラストが確認された。 Shemesh氏は、「われわれは、患者から膵臓組織のサンプルを入手して調査し、マウスで得られた結果が人間にも当てはまることを確認した」と述べている。一方、Bilreiro氏は、「この研究は、膵臓がんの前駆病変の研究における画期的な出来事だと考えている」と話している。 ただし研究グループは、「人間の膵臓がんの検査にこの技術を適用できるようになるまでには、さらなる研究を行い、技術を磨く必要がある」との見方を示している。Shemesh氏は、「これは概念実証研究であり、すでに基本手段として用いられている方法を活用して実際に人間や患者を対象に試験を行うための基礎を提供したに過ぎない」と述べている。

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抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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肥満は服薬遵守と独立した負の関連因子―国内CVD患者対象研究

 心血管疾患(CVD)患者を対象に、服薬遵守状況(アドヒアランス)を主観的指標と客観的指標で評価した研究結果が報告された。客観的指標に基づきアドヒアランス良好/不良に分けた2群間で主観的指標には有意差がないこと、および、肥満がアドヒアランス不良に独立した関連のあることなどが明らかにされている。福岡大学筑紫病院薬剤部の宮崎元康氏らの研究によるもので、詳細が「Pharmacy」に10月6日掲載された。 慢性疾患では服薬アドヒアランスが低下しやすく、そのことが予後不良リスクを高めると考えられる。しかし服薬アドヒアランスを評価する標準的な手法は確立されておらず、主観的な手法と客観的な手法がそれぞれ複数提案されている。例えば主観的評価法の一つとして国内では、12項目の質問から成るスケールが提案されている。ただし、そのスケールでの評価結果と、残薬数から客観的に評価した結果との関連性は十分検討されておらず、今回の宮崎氏らの研究は、この点の検証、およびCVD患者の服薬アドヒアランス低下に関連のある因子を明らかにするために実施された。 研究の対象は2022年6~12月に同院循環器科外来へ2回以上受診していて、残薬数に基づき客観的にアドヒアランスの評価が可能な患者のうち、研究参加協力を得られた94人。医師-患者関係の違いによる影響を除外するため、1人の医師の患者のみに限定した。 前述のように主観的な評価には12項目のスケールを採用。これは60点満点でスコアが高いほどアドヒアランスが良好と判断する。一方、客観的な評価に用いた残薬カウント法は、評価期間中の2回目の受診時の残薬数を前回の処方薬数から減算した値が、処方薬数に占める割合を算出して評価するもので、残薬がゼロであれば遵守率100%となる。本研究では100%をアドヒアランス良好、100%未満を不良と定義した。 解析対象者の主な特徴は、年齢中央値74歳(四分位範囲67~81)、男性55.3%、肥満(BMI25以上)36.2%であり、処方薬数は中央値4(同2~7)で、降圧薬(84.0%)、脂質低下薬(59.6%)、抗血栓薬(38.3%)、血糖降下薬(29.8%)などが多く処方されていた。また17.0%の患者への処方は、1包化(1回に服用する薬剤を1袋にすること)されていた。 94人のうち49人が、客観的手法である残薬カウント法により、アドヒアランス良好と判定された。アドヒアランス良好群の主観的評価スコアは中央値51点(四分位範囲44~56)であり、対してアドヒアランス不良群の主観的評価スコアは同50点(45~54)で、有意差が見られなかった(P=0.426)。 次に、残薬カウント法に基づくアドヒアランス良好群と不良群の背景因子を比較すると、単変量解析では肥満(P=0.014)と喫煙歴(P=0.043)に有意差が認められ、いずれもアドヒアランス不良群にそれらの該当者が多かった。この2項目のほかに、非有意ながら大きな群間差(P<0.1)が認められた因子(日常生活動作〔ADL〕、独居、狭心症治療薬の処方)、およびアドヒアランスの主観的評価スコアを独立変数とし、残薬カウント法によるアドヒアランス不良を従属変数として、ロジスティック回帰分析を施行。その結果、肥満のみが有意な関連因子として抽出された(オッズ比3.527〔95%信頼区間1.387~9.423〕)。喫煙歴(P=0.054)と狭心症治療薬の処方(P=0.052)の関連はわずかに有意水準未満であり、主観的評価スコアは関連が認められなかった(P=0.597)。 以上の総括として著者らは、「主観的な手法と客観的な手法による服薬アドヒアランスの評価が矛盾する結果となった。よって臨床においては双方の指標を使用したモニタリングが必要と考えられる。また、肥満は残薬カウント法で判定したアドヒアランス不良に独立した関連のある因子であり、肥満を有するCVD患者には特に入念なモニタリングが求められる」と述べている。

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乾癬性関節炎〔PsA:psoriatic arthritis〕

1 疾患概要■ 定義乾癬に関節炎(炎症性関節症)を伴ったもの。「関節症性乾癬」とも呼ばれる。乾癬は尋常性(局面型)乾癬が最も多いが、乾癬性紅皮症や汎発性膿疱性乾癬に関節炎が合併することもある。■ 疫学国内外でいくつもの疫学データがあり、乾癬患者の10%以下から多いものでは40%を超えるとする報告もある1)。日本乾癬学会の疫学データでは、乾癬患者の15.2%が2)、また、リウマチ科主導で行われた多施設共同のデータでは14.3%が乾癬性関節炎を有していた。 したがって、紹介患者を受け入れる基幹病院では、乾癬患者のおおよそ14~15%が乾癬性関節炎と推定される。東アジアにおける疫学をみると、乾癬患者における乾癬性関節炎の占める割合は、韓国は9~14.1% 、中国は5.3~7.1% と報告されている3)。働き盛りの青壮年期に多く、わが国では乾癬、乾癬性関節炎ともに男性が多い。■ 病因関節リウマチが滑膜炎であるのに対し、乾癬性関節炎は付着部炎がprimaryな変化と考えられている。付着部は、筋肉や腱が骨に付着する部位で、微細な外的刺激が繰り返し加わることにより付着部に炎症が惹起される。乾癬性関節炎でも二次的な滑膜炎がみられることもある。■ 症状皮膚症状と関節症状があり、皮膚症状は落屑性紅斑(乾癬)で、好発部位は頭、肘、膝、臍などだが、頭の先から足のつま先までどこにみられても不思議ではない。関節症状は末梢関節が侵される頻度が高いが、大関節(頸椎、腰椎、仙腸関節など)が侵されることもまれではない。末梢関節が侵されると、罹患関節の腫脹や変形がみられることもある。また、乾癬性関節炎の中には、皮膚症状が目立たない(非常に軽度の)場合もある。そのほか、爪乾癬(爪の点状陥凹、肥厚、白濁など)がみられることが多く、爪の変化とその近傍の第一関節の痛みや腫れが一緒にみられることもある。皮膚症状(乾癬)が先行、または皮膚症状と関節症状がほぼ同時期に出現する場合が9割以上を占め、関節炎が先行する頻度は少ない4)。■ 分類関節症状により、以下の5群に分けられている (Moll&Wrightの分類)5)。(1)非対称性関節炎型(Oligo-arthritis type)(2)関節リウマチ類似の対称性関節炎型(Poly-arthritis type)(3)定型的関節炎型(DIP type)(4)ムチランス型(5)強直性脊椎炎型(Ankylosing spondylitis[AS]type)■ 予後乾癬においてはさまざまな併存症がみられる。乾癬性関節炎においても、肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が多い。さらに、動脈硬化症や心筋梗塞の心血管病変が予後に影響することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CASPAR(Classification criteria for psoriatic arthritis)の分類基準がある。炎症性関節症があるのが前提で、3点以上で乾癬性関節炎と診断するとあるが、そもそも患者は皮膚症状がないと皮膚科を受診しないので、乾癬があれば2点、爪乾癬がある(1点)かリウマトイド因子が陰性(1点)であれば、それだけで3点を超えてしまう。他の項目に、指趾炎と呼ばれる手や足の指の芋虫状の腫れ(1点)と、手足の単純X線所見で関節周囲の骨新生像(1点)があるが、どちらも早期にみられる所見ではない。乾癬性関節炎を診断するいくつかの特徴的な症状に、付着部炎や指趾炎があるが、これらがみられるときはすでに早期ではない。したがって早期診断はきわめて難しい。■ 鑑別診断高齢者は膝や腰を始め関節の痛みを訴えることが多い。変形性関節症や関節リウマチを始め、リウマチ性多発筋痛症、痛風、偽痛風など関節の痛みや変形を来すさまざまな疾患との鑑別を要する。とくに手指の変形性関節症を鑑別する必要がある。変形性関節症は、手指DIP関節の変形だけのものは容易だが、痛みを伴うinflammatory osteoarthritis、 erosive osteoarthritisは、乾癬性関節炎との鑑別が難しい。関節リウマチ患者は女性に多く、罹患関節数が少ないこと、DIP関節が罹患することはまれで、同一レベルの関節が侵されるのに対し(横方向)、乾癬性関節炎では同じ指の異なる関節が縦方向に侵され、“Ray distribution”と呼ばれる。血清リウマチ因子や抗CCP抗体は、乾癬性関節炎の1割程度でも陽性にみられる。関節滑膜の増殖は関節リウマチの方が強く、それを反映し両者の差異を検出しうる関節エコーが有用とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)乾癬性関節炎は、皮膚症状が優位な症例、関節症状が優位な症例、どちらも症状が顕著な症例などがある。したがって、皮膚、関節それぞれの重症度をまず評価する。GRAPPAのガイドラインでは、乾癬性関節炎の症状を、末梢関節炎、体軸性関節炎、付着部炎、指趾炎、乾癬、爪病変の6つのドメインに分け、それぞれの症状ごとに、外用薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬、理学療法、ステロイド局注などでコントロール不十分な症例に対しての内服薬(synthetic DMARD)や注射薬(biologic DMARD)の治療法を提示している。内服薬は、通常の非ステロイド系消炎鎮痛薬に加え、メトトレキサートとアプレミラスト(商品名:オテズラ錠)が、乾癬性関節炎に使われる代表的な薬剤である。メトトレキサートは、骨髄抑制と肝障害が頻度の高い注意すべき副作用で、間質性肺炎やHBV再活性化なども頻度は少ないが注意しなくてはならない。アプレミラストは、消化器症状、頭痛の頻度の高い副作用ではあるが、重篤な症状は少ないので高齢者にも使いやすい。新規内服薬としてJAK阻害剤が登場したほか、乾癬性関節炎の関節変形の進行を抑制するには生物学的製剤が中心的に使用されている。生物学的製剤は、TNF、IL-17に対する抗体製剤が使われることが多いが、ほかにIL-23の標的薬もある。4 今後の展望乾癬の治療薬の進歩は目覚ましく、生物学的製剤やJAK阻害剤内服薬が、適応拡大も含めて今後も新規に参入してくると思われる。5 主たる診療科皮膚科、リウマチ内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報日本乾癬患者連合会(患者とその家族および支援者の会)1)山本俊幸. Visual Dermatology. 2017;16:690-693.2)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2017;44:e121.3)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2018;45:273-278.4)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2016;43:1193-1196.5)山本俊幸. 日皮会誌. 2022;132;19-25.公開履歴初回2025年1月8日

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医師の学会発表と急性心筋梗塞の院内死亡率が関連~日本の後ろ向き研究

 臨床医が日本循環器病学会で発表している病院で治療された心筋梗塞患者は、発表していない病院で治療された患者より院内死亡率が低く、また、エビデンスに基づく薬剤処方が多かったことが京都大学の高田 大輔氏らによる後ろ向き研究でわかった。PLoS One誌2024年12月9日号に掲載。 本研究では、QIP(Quality Indicator/Improvement Project)に参加している日本の急性期病院の管理データベースを解析した。2014年4月1日~2018年12月31日に急性心筋梗塞で入院した患者を、入院した病院の医師がその年の日本循環器学会年次学術集会で発表があった患者(学会発表群)と、学会発表のなかった病院に入院した患者(対照群)に分け比較した。5つのモデル(未調整モデル、モデル1:性別・年齢・Killip分類・喫煙・救急車の使用・高血圧・心房細動・陳旧性心筋梗塞・糖尿病・腎臓病・慢性閉塞性肺疾患で調整、モデル2:モデル1に加え、入院年と各病院の年間入院数で調整、モデル3:病院コードでクラスター化し、モデル1と同じ変数で調整したマルチレベル分析、モデル4:モデル1に加え、因果媒介分析によりEvidence-based Practiceで調整)における院内全死亡リスクを、多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・Killip分類または救急車の使用に関するデータがなかった3,544例を除外し、384の急性期病院における5万6,923例のデータを解析した。・エビデンスに基づく薬剤の処方は、学会発表群が対照群より有意に多かった。・モデル4を除いて、学会発表が低い院内死亡率と有意に関連していた。各モデルのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。 未調整モデル:0.68(0.65~0.72) モデル1: 0.73(0.68~0.79) モデル2:0.76(0.70~0.82) モデル3:0.84(0.76~0.92) モデル4:1.00(0.92~1.09) 著者らは「学会発表は院内死亡率の低下と関連しており、医師が学会発表を行う病院では患者がより多くのエビデンスに基づく診療の恩恵を受ける傾向がある」と結論した。一方、本研究の限界として、学会発表を日本循環器学会学術集会のみとしていること、今回調整していない組織文化や循環器医師のモチベーションなど、病院および個人の交絡因子があることを挙げている。

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炭水化物制限で糖尿病患者のβ細胞機能が改善

 2型糖尿病患者を対象に、炭水化物制限食と高炭水化物食で介入した結果、前者において膵β細胞機能が改善したとする論文が、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月22日掲載された。米アラバマ大学バーミンガム校のBarbara A. Gower氏らが行った、12週間にわたるランダム化比較試験の結果として報告された。 この研究は、エネルギー量が等しい炭水化物制限(carbohydrate-restricted;CR〔炭水化物由来のエネルギーが約9%、脂質由来が約65%〕)食と、高炭水化物(higher carbohydrate;HC〔炭水化物由来が約55%、脂質由来が約20%〕)食が、2型糖尿病患者のβ細胞機能に与える影響を比較するために実施された。対象は、糖尿病診断からの経過が10年以内でHbA1cが8%以下のインスリン療法を行っていない、アフリカ系米国人(African American;AA)および欧州系米国人(European American;EA)の成人2型糖尿病患者57人。なお、AAは人種的にβ細胞の脆弱性がEAより高いと考えられている。 介入前後のデータが欠落しておらず解析対象とされたのは51人(CR群25人、HC群26人)だった。ベースライン時において、年齢、性別の分布、BMI、HbA1c、およびβ細胞機能(disposition index;DI)に有意差はなかった。HbA1cは、CR群が6.9±0.72%、HC群が6.7±0.47%であり、糖代謝異常の程度は比較的軽度の患者群だった。 血糖降下薬は介入前に中止され、介入中に3日連続で空腹時血糖が200mg/dLを超えた場合には投薬が再開された。食事は全てを支給し、宅配サービスによって参加者の自宅に届けられた。ベースライン時点と介入12週間後に、75g経口ブドウ糖負荷試験およびアルギニンを用いたグルコースクランプ法にて、糖代謝と膵β細胞機能を評価した。 12週後、急性C-ペプチド反応(アルギニン投与開始30分以内の上昇)は、CR群ではHC群に比べて約2倍に増加し有意な群間差が認められたが、人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。最大C-ペプチド反応はCR群では22%有意に増加し、HC群との間に有意差が認められたが、人種別に見た場合、AAでは有意差がなかった。DIはCR群では32%有意に上昇したが、これを人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。 著者らは、「われわれの研究は、エネルギー量が等しいCR食が、HC食に比べて急性および最大C-ペプチド反応の双方を含む、β細胞機能の指標に有益な影響をもたらすことを示唆しており、臨床的に重要な結果と言える。CRの継続が困難な患者が存在する可能性がある点は否めないが、CR食によって、軽度の2型糖尿病患者は投薬を中止し食事を楽しみながら、β細胞機能を改善できるのではないか」と総括している。なお、AAとEAで反応に差が見られた点について、「この反応の差の一部は人種固有のβ細胞機能の違いに起因するものと考えられる」と説明している。

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